(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010749
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】基板保持装置、基板製造装置、および基板製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112217
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 正行
(72)【発明者】
【氏名】中西 正行
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA51
5F131BA60
5F131CA06
5F131CA09
5F131EB32
5F131EB57
(57)【要約】
【課題】基板に欠陥が生じることを防止することができる基板保持装置が提供される。
【解決手段】基板保持装置1は、保持ローラー51と、保持ローラー51に保持されたベベル部Bに加圧流体を吹き出す流体吹き出し装置60と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のベベル部を保持しつつ、前記基板を回転させる保持ローラーと、
前記保持ローラーに連結され、かつ前記保持ローラーに保持された前記ベベル部に加圧流体を吹き出す流体吹き出し装置と、を備える、基板保持装置。
【請求項2】
前記流体吹き出し装置は、
前記保持ローラーに形成された吹き出し口に連結された流体供給ラインと、
前記流体供給ラインに接続された流体供給装置と、を備えている、請求項1に記載の基板保持装置。
【請求項3】
前記基板保持装置は、前記保持ローラーの、前記ベベル部を挟持する第1挟持部および第2挟持部を互いに近接または離間させるクランプ装置を備えている、請求項1に記載の基板保持装置。
【請求項4】
前記基板保持装置は、前記ベベル部に接触する接触位置と前記ベベル部から離間する離間位置との間で前記保持ローラーを移動させるローラー移動装置を備えている、請求項1に記載の基板保持装置。
【請求項5】
第1基板および第2基板を貼り合わせて形成された積層基板を製造する基板製造装置において、
前記積層基板を保持しつつ、前記積層基板を回転させる保持ローラーと、
前記保持ローラーに連結され、かつ前記保持ローラーに保持された前記積層基板の隙間に加圧流体を吹き出す流体吹き出し装置と、
前記隙間に充填剤を塗布する塗布装置と、を備える、基板製造装置。
【請求項6】
前記流体吹き出し装置は、
前記保持ローラーに形成された吹き出し口に連結された流体供給ラインと、
前記流体供給ラインに接続された流体供給装置と、を備えている、請求項5に記載の基板製造装置。
【請求項7】
前記基板製造装置は、前記保持ローラーの、前記積層基板のベベル部を挟持する第1挟持部および第2挟持部を互いに近接または離間させるクランプ装置を備えている、請求項5に記載の基板製造装置。
【請求項8】
前記基板製造装置は、前記積層基板のベベル部に接触する接触位置と前記ベベル部から離間する離間位置との間で前記保持ローラーを移動させるローラー移動装置を備えている、請求項5に記載の基板製造装置。
【請求項9】
前記流体吹き出し装置は、前記積層基板のベベル部に吹き出すための流体を加熱するヒーターを備えている、請求項5に記載の基板製造装置。
【請求項10】
前記塗布装置は、前記隙間に向けて充填剤を供給する供給ノズルに供給される充填剤に加圧流体を噴射する噴射ノズルを備えている、請求項5に記載の基板製造装置。
【請求項11】
第1基板および第2基板を貼り合わせて形成された積層基板を製造する基板製造方法において、
保持ローラーによって、前記積層基板を保持しつつ、前記積層基板を回転させる工程と、
前記積層基板の隙間に充填剤を塗布する工程と、
前記保持ローラーに連結され、かつ前記隙間に加圧流体を吹き出す工程と、を含む、基板製造方法。
【請求項12】
前記加圧流体を吹き出す工程は、前記保持ローラーに形成された吹き出し口から前記加圧流体を吹き出す工程を含む、請求項11に記載の基板製造方法。
【請求項13】
前記基板製造方法は、前記保持ローラーの、前記積層基板のベベル部を挟持する第1挟持部および第2挟持部を互いに近接または離間させる工程を含む、請求項11に記載の基板製造方法。
【請求項14】
前記基板製造方法は、前記積層基板のベベル部に接触する接触位置と前記ベベル部から離間する離間位置との間で前記保持ローラーを移動させる工程を含む、請求項11に記載の基板製造方法。
【請求項15】
前記基板製造方法は、前記積層基板のベベル部に吹き出すための流体を加熱する工程を含む、請求項11に記載の基板製造方法。
【請求項16】
前記基板製造方法は、前記隙間に向けて充填剤を供給する供給ノズルに供給される充填剤に加圧流体を噴射する工程を含む、請求項11に記載の基板製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板保持装置、基板製造装置、および基板製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の基板を積層・集積化する3次元実装技術では、複数の基板のデバイス面同士を接合した後に、一方の基板の非デバイス面を研削している。基板は予めその周縁部に丸みを帯びた形状または面取りされた形状(ベベル部)を有する。
【0003】
したがって、研削によってベベル部が薄くなると、鋭利な端部(ナイフエッジ部)が形成されてしまい、結果として、割れや欠けなどの欠陥が生じるおそれがある。そこで、ベベルフィル技術では、積層基板におけるベベル部の間の隙間を充填剤により埋めることで、ナイフエッジ部を充填剤で支持し、欠陥の発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ベベル部の間の隙間に塗布された充填剤に気泡が混入していると、充填剤の内部における気泡(すなわち、空洞)に起因して、基板に欠陥が生じてしまうおそれがある。より具体的には、研削荷重がナイフエッジ部に加えられると、空洞部分におけるナイフエッジ部を充填剤で支持しきれなくなり、結果として、割れや欠けなどの欠陥が基板に生じるおそれがある。そこで、充填剤に混入した気泡を除去することは、基板に欠陥が生じることを防止する観点から重要である。
【0006】
加えて、基板のベベル部に付着した異物(例えば、液体やパーティクルなど)を除去することも、基板に欠陥が生じることを防止する観点から重要である。上述した積層基板に限らず、一般的な基板(すなわち、積層されていない基板)においても、異物が基板のベベル部に付着していると、基板が汚染され、結果として、基板に欠陥が生じるおそれがある。
【0007】
このように、充填剤に混入した気泡の除去および異物のベベル部からの除去を含めて、基板のベベル部を清浄に維持することは、基板に欠陥が発生することを防止する観点から重要である。
【0008】
そこで、本発明は、基板に欠陥が生じることを防止することができる基板保持装置、基板製造装置、および基板製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、基板のベベル部を保持しつつ、前記基板を回転させる保持ローラーと、前記保持ローラーに連結され、かつ前記保持ローラーに保持された前記ベベル部に加圧流体を吹き出す流体吹き出し装置と、を備える、基板保持装置が提供される。
【0010】
一態様では、前記流体吹き出し装置は、前記保持ローラーに形成された吹き出し口に連結された流体供給ラインと、前記流体供給ラインに接続された流体供給装置と、を備えている。
一態様では、前記基板保持装置は、前記保持ローラーの、前記ベベル部を挟持する第1挟持部および第2挟持部を互いに近接または離間させるクランプ装置を備えている。
一態様では、前記基板保持装置は、前記ベベル部に接触する接触位置と前記ベベル部から離間する離間位置との間で前記保持ローラーを移動させるローラー移動装置を備えている。
【0011】
一態様では、第1基板および第2基板を貼り合わせて形成された積層基板を製造する基板製造装置が提供される。基板製造装置は、前記積層基板を保持しつつ、前記積層基板を回転させる保持ローラーと、前記保持ローラーに連結され、かつ前記保持ローラーに保持された前記積層基板の隙間に加圧流体を吹き出す流体吹き出し装置と、前記隙間に充填剤を塗布する塗布装置と、を備える。
【0012】
一態様では、前記流体吹き出し装置は、前記保持ローラーに形成された吹き出し口に連結された流体供給ラインと、前記流体供給ラインに接続された流体供給装置と、を備えている。
一態様では、前記基板製造装置は、前記保持ローラーの、前記積層基板のベベル部を挟持する第1挟持部および第2挟持部を互いに近接または離間させるクランプ装置を備えている。
一態様では、前記基板製造装置は、前記積層基板のベベル部に接触する接触位置と前記ベベル部から離間する離間位置との間で前記保持ローラーを移動させるローラー移動装置を備えている。
【0013】
一態様では、前記流体吹き出し装置は、前記積層基板のベベル部に吹き出すための流体を加熱するヒーターを備えている。
一態様では、前記塗布装置は、前記隙間に向けて充填剤を供給する供給ノズルに供給される充填剤に加圧流体を噴射する噴射ノズルを備えている。
【0014】
一態様では、第1基板および第2基板を貼り合わせて形成された積層基板を製造する基板製造方法が提供される。基板製造方法は、保持ローラーによって、前記積層基板を保持しつつ、前記積層基板を回転させる工程と、前記積層基板の隙間に充填剤を塗布する工程と、前記保持ローラーに連結され、かつ前記隙間に加圧流体を吹き出す工程と、を含む。
【0015】
一態様では、前記加圧流体を吹き出す工程は、前記保持ローラーに形成された吹き出し口から前記加圧流体を吹き出す工程を含む。
一態様では、前記基板製造方法は、前記保持ローラーの、前記積層基板のベベル部を挟持する第1挟持部および第2挟持部を互いに近接または離間させる工程を含む。
一態様では、前記基板製造方法は、前記積層基板のベベル部に接触する接触位置と前記ベベル部から離間する離間位置との間で前記保持ローラーを移動させる工程を含む。
【0016】
一態様では、前記基板製造方法は、前記積層基板のベベル部に吹き出すための流体を加熱する工程を含む。
一態様では、前記基板製造方法は、前記隙間に向けて充填剤を供給する供給ノズルに供給される充填剤に加圧流体を噴射する工程を含む。
【発明の効果】
【0017】
流体吹き出し装置は、基板のベベル部に加圧流体を吹き出すことによって、基板のベベル部を清浄に維持することができる。結果として、基板に欠陥が生じることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1(a)および
図1(b)は、基板の一例であるウエハの周縁部を示す拡大断面図である。
【
図2】
図2(a)は2枚のウエハを接合した積層ウエハの一例を示す模式図であり、
図2(b)は
図2(a)に示す第2ウエハを研削(薄化)した後の積層ウエハを示す模式図である。
【
図5】
図5(a)および
図5(b)は、積層ウエハの隙間に加圧流体を噴射する様子を示す図である。
【
図7】保持ローラーで積層ウエハをクランプするクランプ装置を示す図である。
【
図8】流体吹き出し装置の他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1(a)および
図1(b)は、基板の一例であるウエハの周縁部を示す拡大断面図である。より詳しくは、
図1(a)はいわゆるストレート型のウエハの断面図であり、
図1(b)はいわゆるラウンド型のウエハの断面図である。
図1(a)のウエハWにおいて、ベベル部は、上側傾斜部(上側ベベル部)P、下側傾斜部(下側ベベル部)Q、および側部(アペックス)Rから構成されるウエハWの最外周面(符号Bで示す)である。
【0020】
図1(b)のウエハWにおいては、ベベル部は、ウエハWの最外周面を構成する、湾曲した断面を有する部分(符号Bで示す)である。トップエッジ部E1は、ベベル部Bよりも半径方向内側に位置する領域であって、かつデバイスが形成される領域Dよりも半径方向外側に位置する平坦部である。トップエッジ部E1は、デバイスが形成された領域を含むこともある。ボトムエッジ部E2は、トップエッジ部E1とは反対側に位置し、ベベル部Bよりも半径方向内側に位置する平坦部である。これらトップエッジ部E1およびボトムエッジ部E2は、総称してニアエッジ部と呼ばれることもある。
【0021】
図2(a)は2枚のウエハを接合した積層ウエハの一例を示す模式図であり、
図2(b)は
図2(a)に示す第2ウエハを研削(薄化)した後の積層ウエハを示す模式図である。
図2(a)に示す積層ウエハWsは、
図1(b)に示すラウンド型の第1ウエハW1と第2ウエハW2とを接合することにより製造される。
【0022】
図2(b)に示すように、第2ウエハW2を薄化すると、第2ウエハW2の周縁部にナイフエッジ部NEが形成される。このナイフエッジ部NEは、物理的な接触により欠けやすく、結果として、積層ウエハWsに割れや欠けなどの欠陥が生じるおそれがある。そこで、積層ウエハWsの第1ウエハW1と第2ウエハW2との間に充填剤を塗布し、この充填剤を硬化させることで、ナイフエッジ部NEを効果的に保護する。
【0023】
しかしながら、充填剤に気泡が混入していると、ナイフエッジ部NEに割れや欠けなどの欠陥が生じるおそれがある。充填剤に混入した気泡を除去することは、積層ウエハWsに欠陥が生じることを防止する観点から重要である。
【0024】
上述したように、ウエハWのベベル部Bに付着した異物(例えば、液体やパーティクルなど)を除去することも、ウエハWに欠陥が生じることを防止する観点から重要である。そこで、以下、ウエハW(積層ウエハWsを含む)に欠陥が生じることを防止することができる基板製造装置について、図面を参照して説明する。
【0025】
図3は、基板製造装置の一実施形態を示す図である。基板製造装置は、第1ウエハW1および第2ウエハW2を貼り合わせて形成された積層ウエハWsを製造(すなわち、処理)する装置である。したがって、基板製造装置は、基板処理装置と呼ばれてもよい。
【0026】
基板製造装置は、積層ウエハWsを保持する基板保持装置1と、第1ウエハW1のベベル部Bと第2ウエハW2のベベル部Bとの間の隙間(すなわち、積層ウエハWsの隙間)に充填剤Fを塗布する塗布装置2と、を備えている。
【0027】
塗布装置2は、鉛直方向に保持された積層ウエハWsの上方に配置されている。より具体的には、積層ウエハWsは、その平面が水平面に対して垂直な状態で保持される。言い換えれば、積層ウエハWsは、縦置き状態で保持される。塗布装置2は、積層ウエハWsの隙間に向けて充填剤Fを供給する供給ノズル4と、供給ノズル4を支持する支持アーム3と、を備えている。
【0028】
図4は、基板保持装置の一実施形態を示す図である。
図4に示すように、基板保持装置1は、積層ウエハWsの周縁部を保持しつつ、積層ウエハWsを回転させる保持ローラー51と、保持ローラー51に連結され、かつ保持ローラー51に保持された積層ウエハWsの周縁部に加圧流体を吹き出す流体吹き出し装置60と、を備えている。
【0029】
加圧流体は、運動エネルギーが付与された流体である。本実施形態では、加圧流体は、充填剤Fから気泡を除去するのに必要な圧力まで加圧された気体を意味する。
【0030】
積層ウエハWsの周縁部を保持ローラー51で保持することにより、異物の、積層ウエハWsの表面(および裏面)への付着を防止することができる。
図4に示す実施形態では、基板保持装置1は、4つの保持ローラー51を備えているが、積層ウエハWsを保持することができれば、保持ローラー51の数は本実施形態には限定されない。本実施形態では、基板保持装置1は、積層ウエハWsを鉛直方向に保持しているが、水平方向に保持してもよい。
【0031】
図4に示すように、各保持ローラー51は、積層ウエハWsの周縁部を挟持する第1挟持部53Aおよび第2挟持部53Bと、第1挟持部53Aと第2挟持部53Bとの間に配置された軸部54と、を備えている。
【0032】
基板保持装置1は、保持ローラー51を回転させるローラー回転装置70を備えている。ローラー回転装置70は、保持ローラー51(より具体的には、第1挟持部53A(または第2挟持部53B))に接続された接続ロッド71と、接続ロッド71を回転させるモーター72と、を備えている。
【0033】
流体吹き出し装置60は、軸部54の外周面に形成された吹き出し口52に連結された流体供給ライン61と、流体供給ライン61に接続された流体供給装置62と、流体供給ライン61を開閉する開閉弁63と、を備えている。
図4に示す実施形態では、複数の吹き出し口52が形成されているが、少なくとも1つの吹き出し口52が形成されてもよい。吹き出し口52は保持ローラー51の軸部54の外周面に形成されている。したがって、保持ローラー51が積層ウエハWsを保持すると、吹き出し口52は積層ウエハWsの隙間に対向する。
【0034】
積層ウエハWsの隙間に加圧流体を供給することができれば、吹き出し口52は、必ずしも軸部54に形成される必要はない。一実施形態では、流体吹き出し装置60は、挟持部53A,53Bの少なくとも1つに形成された吹き出し口52を備えてもよい。
【0035】
基板製造装置は、ローラー回転装置70の動作を制御する制御装置40(
図3参照)を備えている。制御装置40は、ローラー回転装置70に電気的に接続されており、ローラー回転装置70を通じて保持ローラー51を回転させるように構成されている。積層ウエハWsが保持ローラー51に保持された状態で保持ローラー51が回転すると、積層ウエハWsは、保持ローラー51とともに回転する。
【0036】
制御装置40は、流体吹き出し装置60の動作を制御するように構成されている。制御装置40が開閉弁63を開いた状態で流体供給装置62を駆動すると、加圧流体は、流体供給ライン61を通じて吹き出し口52から吹き出す。
【0037】
制御装置40は、塗布装置2の動作を制御するように構成されている。制御装置40は、ローラー回転装置70を動作させることにより、保持ローラー51を通じて積層ウエハWsを回転させ、かつ塗布装置2を動作させることにより、供給ノズル4を通じて積層ウエハWsの上方から充填剤Fを供給させる。積層ウエハWsを回転させながら、充填剤Fを供給させることにより、積層ウエハWsの隙間は、積層ウエハWsの全周にわたって、充填剤Fで満たされる。
【0038】
図3および
図4に示す実施形態では、基板保持装置1は、保持ローラー51を積層ウエハWsの周縁部に接触させる接触位置と、保持ローラー51を積層ウエハWsの周縁部から離間させる離間位置と、の間で保持ローラー51を移動させるローラー移動装置80を備えている。
【0039】
一実施形態では、ローラー移動装置80は、ローラー回転装置70に連結されたリニアアクチュエーターを備えてもよい。ローラー移動装置80は、ローラー回転装置70を介して保持ローラー51を移動するように構成されている。ローラー移動装置80の構成要素は、保持ローラー51を接触位置と離間位置との間で移動させることができれば、特に、限定されない。一実施形態では、ローラー移動装置80は、ボールねじとリニアガイドとの組み合わせであってもよい。
【0040】
図示しない搬送装置によって、基板保持装置1に搬送された積層ウエハWsを保持ローラー51で保持するとき、ローラー移動装置80は、保持ローラー51を接触位置に移動させる。その後、流体吹き出し装置60は、積層ウエハWsの隙間上に塗布された充填剤Fから気泡を除去する。気泡を除去した後、ローラー移動装置80は、積層ウエハWsを保持ローラー51から離間させるとき、保持ローラー51を離間位置に移動させる。その後、積層ウエハWsは、図示しない搬送装置によって、後処理のモジュールに搬送される。
【0041】
図5(a)および
図5(b)は、積層ウエハの隙間に加圧流体を噴射する様子を示す図である。
図5(a)に示すように、保持ローラー51から積層ウエハWsの隙間上の充填剤Fに加圧流体を噴射することにより、充填剤Fが圧縮される。
【0042】
図5(b)に示すように、充填剤Fに混入する気泡は、充填剤Fとともに圧縮され、やがて、ナイフエッジ部NEに悪影響を及ぼさない程度まで小さくなる。加圧流体の噴射により縮小された気泡のサイズは、元のサイズに戻ることはない。このようにして、流体吹き出し装置60は、積層ウエハWsの隙間に塗布された充填剤Fから気泡を除去することができる。
【0043】
本実施形態によれば、流体吹き出し装置60は、積層ウエハWsの隙間に塗布された充填剤Fから気泡を除去することができる。したがって、基板製造装置は、充填剤Fに混入した気泡に起因して、ナイフエッジ部NEに割れや欠けなどの欠陥が生じることを防止することができる。
【0044】
本実施形態によれば、流体吹き出し装置60は、ウエハWのベベル部Bに付着した異物(例えば、液体やパーティクルなど)を除去し、ベベル部Bを清浄に維持することができる。したがって、基板製造装置は、ウエハWのベベル部Bに付着した異物に起因して、ウエハWに欠陥が生じることを防止することができる。
【0045】
図6は、積層ウエハの積層工程を示す図である。
図6に示すように、ウエハW1およびウエハW3(W4,W5)を貼り合わせた状態で、ウエハW3(W4,W5)の裏面を研削(薄化)して、研削プロセスを実行する。このような研削プロセスを繰り返して、ウエハW3(W4,W5)をウエハW1に積層することにより、積層ウエハWsの厚さ方向の厚さが大きくなる。
【0046】
図7は、保持ローラーで積層ウエハをクランプするクランプ装置を示す図である。
図7に示す実施形態では、ローラー回転装置70の図示は省略されている。
図7に示すように、基板保持装置1は、保持ローラー51の第1挟持部53Aおよび第2挟持部53Bを互いに近接または離間させるクランプ装置90を備えている。クランプ装置90は、第1挟持部53Aに連結された第1クランプアクチュエーター56Aと、第2挟持部53Bに連結された第2クランプアクチュエーター56Bと、を備えている。
【0047】
クランプアクチュエーター56A,56Bのそれぞれは、挟持部53A,53Bのそれぞれを、軸部54の軸方向に移動させるように構成されている。クランプアクチュエーター56A,56Bのそれぞれは、例えば、ピストンロッドである。制御装置40は、クランプアクチュエーター56A,56Bのそれぞれの動作を制御するように構成されている。
【0048】
制御装置40は、クランプアクチュエーター56A,56Bのそれぞれを動作させることにより、挟持部53A,53Bを互いに近接または離間させる方向に移動させることができる。このような構成により、クランプ装置90は、様々な厚さを有する積層ウエハWsを挟持することができる。
【0049】
図7に示す実施形態では、吹き出し口52は、挟持部53A,53Bの傾斜面のそれぞれに形成されている。一実施形態では、吹き出し口52は、軸部54に形成されてもよい。本実施形態においても、吹き出し口52は積層ウエハWsの隙間に対向しているため、流体吹き出し装置60は、積層ウエハWsの隙間上に塗布された充填剤Fから気泡を除去することができる。
【0050】
充填剤Fの性質として、加熱することによって硬化する性質を有する充填剤Fが知られている。このような充填剤Fを採用する場合、ナイフエッジ部NEを効果的に保護するために、充填剤Fから気泡を除去した後、充填剤Fに高温(すなわち、充填剤Fを硬化させるために必要な温度)の気体を供給して、充填剤Fを加熱することが望ましい。充填剤Fを硬化させるために必要な温度は、言い換えれば、硬化温度である。
【0051】
そこで、流体吹き出し装置60は、複数の保持ローラー51のうち、少なくとも1つから、硬化温度以上に加熱された加熱流体を供給するように構成されてもよい。例えば、流体吹き出し装置60は、流体供給ライン61に接続されたヒーター67を備えてもよい(
図7参照)。
【0052】
流体供給ライン61を流れる流体がヒーター67を通過することによって、硬化温度以上に加熱された加熱流体は、保持ローラー51の吹き出し口52から吹き出し、積層ウエハWsの隙間上に塗布された充填剤Fを硬化させる。一実施形態では、充填剤Fから気泡を除去するのに必要な圧力まで加圧された加圧流体を硬化温度以上に加熱し、この加熱された加圧流体を供給してもよい。このような構成により、流体吹き出し装置60は、気泡を除去するとともに、充填剤Fを硬化させることができる。
【0053】
図3に示す実施形態では、4つの保持ローラー51が配置されている。以下、積層ウエハWsの回転方向における塗布装置2の下流側に配置された、塗布装置2に隣接する保持ローラー51を第1保持ローラー51と呼ぶ。積層ウエハWsの回転方向における第1保持ローラー51の下流側に配置された、第1保持ローラー51に隣接する保持ローラー51を第2保持ローラー51と呼ぶ。積層ウエハWsの回転方向における第2保持ローラー51の下流側に配置された、第2保持ローラー51に隣接する保持ローラー51を第3保持ローラー51と呼ぶ。積層ウエハWsの回転方向における第3保持ローラー51の下流側に配置された、第3保持ローラー51に隣接する保持ローラー51を第4保持ローラー51と呼ぶ。
【0054】
この場合、流体吹き出し装置60は、第1保持ローラー51および第2保持ローラー51のそれぞれから加熱されていない加圧流体を供給して、充填剤Fから気泡を除去し、第3保持ローラー51および第4保持ローラー51から加熱流体を供給して、気泡が除去された充填剤Fを硬化させる。このような構成により、積層ウエハWsの隙間上に塗布された充填剤Fから気泡を除去した直後に、充填剤Fを硬化させることができる。したがって、充填剤Fの塗布、気泡の除去、および充填剤Fの硬化を短時間で行うことができ、結果として、積層ウエハWsのプロセス時間の短縮を実現することができる。一実施形態では、第3保持ローラー51および第4保持ローラー51から供給される加熱流体は、充填剤Fから気泡を除去するのに必要な圧力まで加圧されてもよい。
【0055】
図8は、流体吹き出し装置の他の実施形態を示す図である。
図8に示す実施形態では、流体吹き出し装置60は、加熱されていない加圧流体と、加熱された流体(加圧流体または加圧されていない流体)と、を切り替えるように構成されている。流体吹き出し装置60は、流体供給ライン61から分岐するバイパスライン66と、流体供給ライン61およびバイパスライン66に接続された切り替え弁65と、バイパスライン66に接続されたヒーター67と、を備えている。このように構成された流体吹き出し装置60は、複数の保持ローラー51のうち、少なくとも1つに接続されている。
【0056】
流体吹き出し装置60は、ヒーター67を通じて、積層ウエハWsの周縁部に吹き出すための流体を加熱するように構成されている。制御装置40は、流体吹き出し装置60の動作を制御するように構成されている。制御装置40は、切り替え弁65を動作させて、流体供給ライン61を開き、バイパスライン66を閉じる。このような動作により、流体供給装置62から供給された流体は、加熱されずに、吹き出し口52から供給される。
【0057】
制御装置40は、切り替え弁65を切り替えることにより、バイパスライン66を開き、流体供給ライン61の上流側(すなわち、切り替え弁65と流体供給装置62との間の流体供給ライン61)を閉じる。このような動作により、流体供給装置62から供給された流体は、ヒーター67により加熱され、加熱された加圧流体は、吹き出し口52から供給される。
【0058】
図9は、塗布装置の他の実施形態を示す図である。
図9に示すように、塗布装置2は、充填剤Fが充填されたシリンジ本体20と、支持アーム3を通じてシリンジ本体20内の充填剤Fを供給ノズル4に導入する導入部21と、導入部21内の充填剤Fを供給ノズル4に押し出すロッド22と、シリンジ本体20内の充填剤に加圧流体(例えば、窒素ガス)を噴射する噴射ノズル23と、を備えてもよい。
【0059】
シリンジ本体20内の充填剤Fには、すでに気泡が混入している場合がある。そこで、
図9に示す実施形態では、噴射ノズル23は、供給ノズル4に供給される充填剤F(すなわち、シリンジ本体20内の充填剤F)に加圧流体を噴射して、積層ウエハWsの隙間に塗布される前の充填剤Fから気泡を除去するように構成されている。
【0060】
制御装置40は、噴射ノズル23の動作を制御可能に構成されている。より具体的には、制御装置40は、噴射ノズル23を通じて加圧流体を供給する流体供給源(図示しない)に電気的に接続されている。加圧流体を噴射ノズル23から噴射することにより、シリンジ本体20内の充填剤Fに混入する気泡は、充填剤Fとともに圧縮され、やがて、ナイフエッジ部NEに悪影響を及ぼさない程度まで小さくなる(
図5(a)および
図5(b)参照)。
【0061】
上述した実施形態では、基板保持装置1を含む基板製造装置を積層ウエハWsに適用する実施形態について説明したが、本実施形態に係る基板製造装置は、積層ウエハWsのみならず、一般的なウエハW(すなわち、積層されていないウエハ)にも適用可能である。本実施形態における積層ウエハWsはウエハWに相当し、積層ウエハWsの周縁部は、ウエハWのベベル部Bに相当する。したがって、ウエハWのベベル部Bは、積層ウエハWsの周縁部を意味する。
【0062】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0063】
1 基板保持装置
2 塗布装置
3 支持アーム
4 供給ノズル
20 シリンジ本体
21 導入部
22 ロッド
23 噴射ノズル
40 制御装置
51 保持ローラー
52 吹き出し口
53A 第1挟持部
53B 第2挟持部
54 軸部
56A 第1クランプアクチュエーター
56B 第2クランプアクチュエーター
60 流体吹き出し装置
61 流体供給ライン
62 流体供給装置
63 開閉弁
65 切り替え弁
66 バイパスライン
67 ヒーター
70 ローラー回転装置
71 接続ロッド
72 モーター
80 ローラー移動装置
90 クランプ装置