(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107500
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】ポリオレフィン多孔質フィルム
(51)【国際特許分類】
H01M 50/489 20210101AFI20240801BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20240801BHJP
H01M 50/449 20210101ALI20240801BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20240801BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20240801BHJP
H01M 50/423 20210101ALI20240801BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20240801BHJP
【FI】
H01M50/489
H01M50/417
H01M50/449
H01M50/42
H01M50/426
H01M50/423
H01M50/414
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024099127
(22)【出願日】2024-06-19
(62)【分割の表示】P 2020093737の分割
【原出願日】2020-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127498
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100146329
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】阿部 玄之
(57)【要約】
【課題】TD方向の加熱形状維持率が向上した非水電解液二次電池用セパレータを提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る非水電解液二次電池用セパレータは、110℃にて1時間加熱したときのTD方向の加熱形状維持率が101%以上である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
110℃にて1時間加熱したときのTD方向の加熱形状維持率が101%以上である、
ポリオレフィン多孔質フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載のポリオレフィン多孔質フィルムの片面または両面に、多孔質層を積層させてなる、
非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【請求項3】
上記多孔質層は樹脂を含んでおり、
上記樹脂は、(メタ)アクリレート系樹脂、含フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂および水溶性ポリマーからなる群より選択される1種以上である、
請求項2に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【請求項4】
上記多孔質層はアラミド樹脂を含んでいる、
請求項3に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【請求項5】
正極と、請求項1に記載のポリオレフィン多孔質フィルムまたは請求項2~4のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータと、負極と、がこの順に積層されている、
非水電解液二次電池用部材。
【請求項6】
請求項1に記載のポリオレフィン多孔質フィルム、請求項2~4のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータまたは請求項5に記載の非水電解液二次電池用部材を備えている、
非水電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池用セパレータの製造方法およびポリオレフィン多孔質フィルムに関する。本発明はまた、非水電解液二次電池用積層セパレータおよびその製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解液二次電池、特にリチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高いのでパーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯情報端末などに用いる電池として広く使用され、また最近では車載用の電池として開発が進められている。
【0003】
非水電解液二次電池用セパレータとしては、ポリオレフィン多孔質フィルムが広く用いられている。これに関して、特許文献1は、ポリエチレンとポリプロピレンとのうちの少なくともどちらか一方を含み;圧縮弾性率および膜面の表面粗さが特定の範囲にあるポリオレフィン微多孔膜を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術には、ポリオレフィン多孔質フィルムの耐熱性において改善の余地が残されていた。具体的には、ポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向の加熱形状維持率に関して、改善の余地が残されていた。
【0006】
本発明の一態様は、TD方向の加熱形状維持率が向上した、非水電解液二次電池用セパレータの製造方法およびポリオレフィン多孔質フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成を包含している。
<1>
非水電解液二次電池用セパレータの製造方法であって、
少なくともMD方向に延伸されたポリオレフィン多孔質フィルムに対して、再度MD方向に張力を付与しながら加熱する加熱工程を含み、
上記加熱工程の前後における上記ポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向長さが、以下の関係を満たしている、製造方法:
(LA-LB)/LA>0.015
式中、
LA:加熱工程前におけるポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向長さ;
LB:加熱工程後におけるポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向長さ。
<2>
非水電解二次電池用セパレータの製造方法であって、
少なくともMD方向に延伸されたポリオレフィン多孔質フィルムに対して、再度MD方向に張力を付与しながら加熱する加熱工程と、
上記多孔質フィルムの片面または両面に多孔質層を形成する積層工程と、
を含み、
上記積層工程は、上記加熱工程よりも前および/または上記加熱工程と同時に行われ、
上記加熱工程の前後における上記ポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向長さが、以下の関係を満たしている、製造方法:
(LA-LB)/LA>0.015
式中、
LA:加熱工程前におけるポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向長さ;
LB:加熱工程後におけるポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向長さ。
<3>
上記多孔質層は樹脂を含んでおり、
上記樹脂は、(メタ)アクリレート系樹脂、含フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂および水溶性ポリマーからなる群より選択される1種以上である、<2>に記載の製造方法。
<4>
上記多孔質層はアラミド樹脂を含んでいる、<3>に記載の製造方法。
<5>
上記加熱工程前における、上記ポリオレフィン多孔質フィルムの目付は、4~20g/m2である、<1>~<4>のいずれかに記載の製造方法。
<6>
上記加熱工程の前後において、上記ポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向およびMD方向の加熱形状維持率の変化が、以下の関係を満たしている、<1>~<5>のいずれかに記載の製造方法:
XTD>XMD
式中、
XTD:加熱工程後におけるTD方向の加熱形状維持率(%)-加熱工程前におけるTD方向の加熱形状維持率(%);
XMD:加熱工程後におけるMD方向の加熱形状維持率(%)-加熱工程前におけるMD方向の加熱形状維持率(%)。
<7>
110℃にて1時間加熱したときのTD方向の加熱形状維持率が101%以上である、ポリオレフィン多孔質フィルム。
<8>
<7>に記載のポリオレフィン多孔質フィルムの片面または両面に、多孔質層を積層させてなる、非水電解液二次電池用積層セパレータ。
<9>
上記多孔質層は樹脂を含んでおり、
上記樹脂は、(メタ)アクリレート系樹脂、含フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂および水溶性ポリマーからなる群より選択される1種以上である、<8>に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
<10>
上記多孔質層はアラミド樹脂を含んでいる、<9>に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
<11>
正極と、<7>に記載のポリオレフィン多孔質フィルムまたは<8>~<10>のいずれかに記載の非水電解液二次電池用積層セパレータと、負極と、がこの順に積層されている、非水電解液二次電池用部材。
<12>
<7>に記載のポリオレフィン多孔質フィルム、<8>~<10>のいずれかに記載の非水電解液二次電池用積層セパレータまたは<11>に記載の非水電解液二次電池用部材を備えている、非水電解液二次電池。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、TD方向の加熱形状維持率が向上した、非水電解液二次電池用セパレータの製造方法およびポリオレフィン多孔質フィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】非水電解液二次電池用セパレータおよび電極の、典型的な大きさおよび位置関係を表す模式図である。
【
図2】本発明の一態様に係る製造方法において、加熱工程前後におけるポリオレフィン多孔質フィルムの形状の変化を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に関して以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態に関しても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0011】
本明細書において、「MD方向」とは、長尺状フィルムの製造における搬送方向を意味する。本明細書において、「TD方向」とは、長尺状フィルムの面に水平であり、かつ、MD方向に垂直な方向を意味する。長尺状フィルムの例としては、ポリオレフィン多孔質フィルム、非水電解液二次電池用セパレータ、非水電解液二次電池用積層セパレータが挙げられる。
【0012】
本明細書において「加熱形状維持率」とは、物体を加熱した際に、加熱前の形状をどの程度維持できるかを表すパラメータである。加熱形状維持率には、MD方向の加熱形状維持率およびTD方向の加熱形状維持率がある。加熱形状維持率の具体的な測定方法は、本願実施例を参照。
【0013】
本発明の一態様は、非水電解液二次電池用セパレータ(ポリオレフィン多孔質フィルム)のTD方向の加熱形状維持率の向上に関連している。非水電解液二次電池用セパレータの加熱形状維持率は、非水電解液二次電池が熱暴走した際の安全性に関わるパラメータとして重要である。これに関して本発明者らは、加熱形状維持率の中でもTD方向の加熱形状維持率が、非水電解液二次電池用セパレータを非水電解液二次電池に実装した際に重要でありうることを新たに見出した。
【0014】
円筒型電池、角型電池、つづら折り型電池などを製造する際には、非水電解液二次電池用セパレータのMD方向に張力を付与しながら、当該非水電解液二次電池用セパレータを含む部材(電極板およびセパレータの積層体)を積層し、張力が付与された状態で部材を固定する。それゆえ、これらの電池内における非水電解液二次電池用セパレータは、MD方向に拘束された状態にあるが、TD方向には拘束された状態にない。したがって、これらの電池内における非水電解液二次電池用セパレータは、MD方向への収縮が抑制されているが、TD方向への収縮は抑制されていない。
【0015】
また、電池を組み立てる際には、非水電解液二次電池用セパレータ100および電極200は、
図1のような大きさおよび位置関係にあることが一般的である(通常は複数の非水電解液二次電池用セパレータ100および複数の電極200が積層されているが、説明を容易にするために1枚ずつ描いている)。すなわち、MD方向においては、非水電解液二次電池用セパレータ100と電極200とが接触していない領域が比較的大きい(図中の矢印Xを参照)。そのため、非水電解液二次電池用セパレータ100がMD方向に収縮したとしても、複数の電極200の接触に起因する短絡は生じにくい。これに対して、TD方向においては、非水電解液二次電池用セパレータ100と電極200とが接触していない領域が相対的に小さく、
図1中の矢印Yの幅は、一般的には0.5mm~1.5mm程度である。そのため、非水電解液二次電池用セパレータ100がTD方向に収縮すると、複数の電極200の接触に起因する短絡が生じやすい。それゆえに、TD方向の加熱形状維持率の向上は、たとえ向上の程度が小さくとも好ましい(例えば、後述する実施例2-1を参照)。
【0016】
したがって、円筒型電池、角型電池、つづら折り型電池などに応用する場合には、熱暴走時の安全性を確保する観点から、TD方向の加熱形状維持率に優れた非水電解液二次電池用セパレータが好ましい。より好ましくは、非水電解液二次電池用セパレータのTD方向の加熱形状維持率は、100%を超えている(加熱するとTD方向に膨張する)。本発明の一態様は、このような非水電解液二次電池用セパレータ(ポリオレフィン多孔質フィルム)およびその製造方法を提供するものである。
【0017】
〔1.非水電解液二次電池用セパレータの製造方法〕
本発明の一態様に係る非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法は、
少なくともMD方向に延伸されたポリオレフィン多孔質フィルムに対して、再度MD方向に張力を付与しながら加熱する加熱工程を含み、
上記加熱工程の前後における上記ポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向長さが、(LA-LB)/LA>0.015を満たしている:
式中、LAは、加熱工程前におけるポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向長さである。また、LBは、加熱工程後におけるポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向長さである。
【0018】
[加熱工程]
図2を参照しながら、加熱工程についてより具体的に説明する。加熱工程前のポリオレフィン多孔質フィルム100aのTD方向の長さは、L
Aである。加熱工程においては、ポリオレフィン多孔質フィルムのMD方向に張力を付与しながら、ポリオレフィン多孔質フィルムを加熱する。その結果、加熱工程後のポリオレフィン多孔質フィルム100bは、TD方向の長さがL
Bになる。このとき、(L
A-L
B)/L
A>0.015の関係が成立している。つまり、L
A>L
Bであり、加熱工程後のポリオレフィン多孔質フィルム100bは、TD方向に縮んでいる。
【0019】
加熱工程後のポリオレフィン多孔質フィルム100bは、残留応力Sを有している。残留応力Sの方向は、加熱工程後のポリオレフィン多孔質フィルム100bをTD方向に膨張させる方向である。そのため、加熱工程後のポリオレフィン多孔質フィルムbが加熱されると、残留応力Sが解放され、TD方向に膨張する力が働く。この力は、加熱されたポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向へ収縮しようとする性質を抑制する。これによって、加熱工程後のポリオレフィン多孔質フィルム100b(非水電解液二次電池用セパレータ)は、加熱工程前よりもTD方向の加熱形状維持率が向上することになる。
【0020】
本明細書では、「{(LA-LB)/LA}×100」の値(%)を「幅減少率」と称する。本発明の一実施形態に係る製造方法において、幅減少率は1.5%超であり、3.5%以上が好ましく、5%以上がより好ましい。幅減少率が大きいほど、加熱形状維持率が向上する傾向にある。ただし、製品の歩留まりも考慮すると、幅減少率は25%以下が好ましく、20%以下がより好ましい。
【0021】
加熱工程を経ることによって、ポリオレフィン多孔質フィルムの加熱形状維持率は変化する。この変化は、TD方向の加熱形状維持率の変化の方が、MD方向の加熱形状維持率の変化よりも大きいことが好ましい。すなわち、XTD>XMDの条件を満たしていることが好ましい。ここで、XTDは、「加熱工程後におけるTD方向の加熱形状維持率(%)-加熱工程前におけるTD方向の加熱形状維持率(%)」で算出される値である。XMDは、「加熱工程後におけるMD方向の加熱形状維持率(%)-加熱工程前におけるMD方向の加熱形状維持率(%)」で算出される値である。
【0022】
本発明においては、加熱工程を施すことによって、TD方向の加熱形状維持率が向上する。XTDは0.1ポイント以上が好ましく、0.3ポイント以上がより好ましく、1.5ポイント以上がさらに好ましく、3.0ポイント以上がより一層好ましい。一方、MD方向の加熱形状維持率は、加熱工程を施すことによって低下しても構わない。XMDは-9.0ポイント以上が好ましく、-4.0ポイント以上がより好ましい。
【0023】
加熱工程における加熱温度は、50~140℃が好ましく、60~120℃がより好ましい。加熱工程における張力は、30~150N/mが好ましく、40~120N/mがより好ましい。加熱工程における加熱時間は、15~70秒間が好ましく、20~60秒間がより好ましい。加熱工程における各条件が上記の範囲内ならば、効率よくポリオレフィン多孔質フィルムを加工でき、かつ、ポリオレフィン多孔質フィルムの幅減少率を好適に制御することができる。
【0024】
[加熱工程に供されるポリオレフィン多孔質フィルム]
加熱工程に供されるポリオレフィン多孔質フィルムは、MD方向に少なくとも1回延伸されたポリオレフィン多孔質フィルムである。一実施形態において、上記ポリオレフィン多孔質フィルムは、MD方向にのみ延伸されている一軸延伸フィルムである。他の実施形態において、上記ポリオレフィン多孔質フィルムは、MD方向およびTD方向に延伸されている二軸延伸フィルムである。
【0025】
MD方向に少なくとも1回延伸されたポリオレフィン多孔質フィルムを加熱工程に供する理由は、以下の通りである。すなわち、MD方向に未延伸の原反フィルムを加熱工程に供すると、当該フィルムはMD方向に伸長しやすい。このようなフィルムは搬送性が低く、幅収縮率の制御が難しくなる。一方、MD方向に少なくとも1回延伸したフィルムを加熱工程に供すると、当該フィルムのMD方向への過度な伸長が抑えられる。このようなフィルムは搬送性が損なわれず、幅収縮率を制御しやすい。
【0026】
好ましくは、加熱工程に供されるポリオレフィン多孔質フィルムは、二軸延伸フィルムである。二軸延伸フィルムのMD方向の延伸率は、500~1000%が好ましく、500~700%がより好ましい。二軸延伸フィルムのTD方向の延伸率は、500~1000%が好ましく、500~700%がより好ましい。このような延伸率のポリオレフィン多孔質フィルムには、搬送張力によって伸長し難く、搬送性に優れると言う利点がある。
【0027】
MD方向に少なくとも1回延伸されたポリオレフィン多孔質フィルムは、フィルム捲回体として、巻芯に捲回された状態で保持されていることが好ましい。すなわち、本発明の一実施形態に係る製造方法においては、巻芯に捲回されたポリオレフィン多孔質フィルムを繰り出し、加熱工程に供することが好ましい。巻芯に捲回された状態で保持されたポリオレフィン多孔質フィルムは、塑性変形して延伸時の余分な残留応力が緩和されており、ハンドリング性および搬送性に優れる。フィルム捲回体の捲回長は特に限定されないが、生産性の観点から1000m以上が好ましい。また、ポリオレフィン多孔質フィルムを充分に塑性変形させる観点から、捲回体として24時間以上保持されたポリオレフィン多孔質フィルムが好ましい。
【0028】
ポリオレフィン多孔質フィルムは、内部に連結した細孔を多数有しており、一方の面から他方の面に気体および液体を通過させることできる。ポリオレフィン多孔質フィルムは、電池が発熱したときに溶融して細孔を閉塞させることにより、当該ポリオレフィン多孔質フィルムを用いた非水電解液二次電池用セパレータにシャットダウン機能を付与するものでありうる。
【0029】
ここで、「ポリオレフィン多孔質フィルム」とは、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする多孔質フィルムである。また、「ポリオレフィン系樹脂を主成分とする」とは、多孔質フィルムに占めるポリオレフィン系樹脂の割合が、当該多孔質フィルムを構成する材料全体の50体積%以上、好ましくは90体積%以上であり、より好ましくは95体積%以上であることを意味する。
【0030】
ポリオレフィン多孔質フィルムの主成分であるポリオレフィン系樹脂は、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂である、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンおよび/または1-ヘキセンなどの単量体が重合されてなる単独重合体および共重合体が挙げられる。すなわち、単独重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリブテンなどが、共重合体としてはエチレン-プロピレン共重合体などが挙げられる。ポリオレフィン多孔質フィルムは、これらのポリオレフィン系樹脂を単独にて含む層、または、これらのポリオレフィン系樹脂の2種以上を含む層でありうる。このうち、過大電流が流れることをより低温で阻止(シャットダウン)することができるため、ポリエチレンがより好ましく、特に、エチレンを主体とする高分子量のポリエチレンが好ましい。なお、ポリオレフィン多孔質フィルムは、その機能を損なわない範囲で、ポリオレフィン以外の成分を含むことを妨げない。
【0031】
ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレン(エチレン-α-オレフィン共重合体)および超高分子量ポリエチレンなどが挙げられる。このうち、超高分子量ポリエチレンがさらに好ましく、重量平均分子量が5×105~15×106の高分子量成分が含まれていることがさらに好ましい。特に、ポリオレフィン系樹脂に重量平均分子量が100万以上の高分子量成分が含まれていると、ポリオレフィン多孔質フィルムの強度が向上するのでより好ましい。
【0032】
加熱工程に供されるポリオレフィン多孔質フィルムの製造方法は、公知の手法を用いることができ、特に限定されない。例えば、日本国特許第5476844号公報に記載されたように、熱可塑性樹脂にフィラーを加えてフィルム成形した後、当該フィラーを除去する方法が挙げられる。
【0033】
具体的には、例えば、ポリオレフィン多孔質フィルムが、超高分子量ポリエチレンおよび重量平均分子量1万以下の低分子量ポリオレフィンを含むポリオレフィン系樹脂から形成されてなる場合には、製造コストの観点から、以下に示す工程(1)~(4)を含む方法により製造することが好ましい。
【0034】
(1)超高分子量ポリエチレン100重量部と、重量平均分子量1万以下の低分子量ポリオレフィン5重量部~200重量部と、炭酸カルシウムなどの無機充填剤100重量部~400重量部とを混練してポリオレフィン系樹脂組成物を得る工程、
(2)ポリオレフィン系樹脂組成物を用いてシートを成形する工程、
(3)工程(2)で得られたシート中から無機充填剤を除去する工程、
(4)工程(3)で得られたシートを延伸する工程。
その他、上述した各特許文献に記載の方法を利用してもよい。
【0035】
また、加熱工程に供されるポリオレフィン多孔質フィルムとして、上述の特徴を有する市販品を使用してもよい。
【0036】
加熱工程における各種加工条件以外に幅減少率を制御する方法としては、加熱工程に供されるポリオレフィン多孔質フィルムの単位面積当たりの重量目付を制御する方法がある。この観点から、ポリオレフィン多孔質フィルムの単位面積当たりの重量目付は、3~20g/m2であることが好ましく、4~9g/m2であることがより好ましい。
【0037】
〔2.ポリオレフィン多孔質フィルム(非水電解液二次電池用セパレータ)〕
本発明の一態様に係るポリオレフィン多孔質フィルムは、110℃にて1時間加熱したときのTD方向の加熱形状維持率が101%以上である。TD方向の加熱形状維持率は、好ましくは102%以上であり、より好ましくは103%以上である。TD方向の加熱形状維持率の上限は特に限定されないが、例えば、110%以下とすることができる。
【0038】
TD方向の加熱形状維持率が上記の範囲であるポリオレフィン多孔質フィルムは、加熱された際にTD方向に膨張する。したがって、例えば円筒型電池のように、TD方向の収縮が抑制されない状態で使用された場合にも、熱暴走時における十分な安全性を担保できる。
【0039】
ポリオレフィン多孔質フィルムの加熱形状維持率として、「101%以上」という数値範囲は、従来技術では達成できなかった。通常、ポリオレフィン多孔質フィルムは、加熱すると収縮する。仮に加熱時に僅かに膨張するとしても、その膨張率は精々0.1%オーダーであった。これに対して、本発明の一態様によれば、加熱時に1%以上膨張するポリオレフィン多孔質フィルムを提供することができる。
【0040】
本発明の一実施形態に係るポリオレフィン多孔質フィルムの、MD方向の加熱形状維持率は、特に限定されない。一実施形態において、MD方向の加熱形状維持率は、85%以上であり、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上である。MD方向の加熱形状維持率の上限は特に限定されないが、例えば、99%以下とすることができる。
【0041】
本発明の一実施形態に係るポリオレフィン多孔質フィルムの用途は、特に限定されない。一実施形態において、ポリオレフィン多孔質フィルムは、非水電解液二次電池用セパレータとして用いられる。
【0042】
なお、〔1〕節で説明した製造方法においては、幅減少率が大きくなるほどポリオレフィン多孔質フィルムの加熱形状維持率は向上する。それゆえ、〔1〕節で説明した製造方法において、幅減少率が大きくなるように製造条件を適宜設定すれば、加熱形状維持率が101%以上であるポリオレフィン多孔質フィルムを得ることができる。
【0043】
非水電解液二次電池用セパレータの膜厚は、3~16μmが好ましく、5~15μmがより好ましく、5~13μmがさらに好ましい。膜厚が3μm以上ならば、非水電解液二次電池用セパレータに要求される機能(シャットダウン機能など)が、充分に得られる。膜厚が16μm以下ならば、薄型化された非水電解液二次電池用積層セパレータが得られる。
【0044】
非水電解液二次電池用セパレータが有する細孔の孔径は、0.1μm以下であることが好ましく、0.06μm以下であることがより好ましい。これにより、十分なイオン透過性を得ることができ、かつ、電極を構成する粒子の入り込みを、より防止することができる。
【0045】
非水電解液二次電池用セパレータの透気度は、ガーレ値で30~500s/100mLであることが好ましく、50~300s/100mLであることがより好ましい。これにより、非水電解液二次電池用積層セパレータが十分なイオン透過性を得ることができる。
【0046】
非水電解液二次電池用セパレータの空隙率は、20~80体積%であることが好ましく、30~75体積%であることがより好ましい。これにより、電解液の保持量を高めると共に、過大電流が流れることをより低温で確実に阻止(シャットダウン)することができる。
【0047】
〔3.非水電解液二次電池用積層セパレータおよびその製造方法〕
本発明の一態様に係る非水電解液二次電池用積層セパレータは、上述のポリオレフィン多孔質フィルム(非水電解液用セパレータ)の片面または両面に、多孔質層を積層させてなる。一実施形態において、多孔質層は、フィラーおよび樹脂を含んでいる。
【0048】
[フィラー]
フィラーの種類としては、有機フィラーおよび無機フィラーが挙げられる。
【0049】
有機フィラーの例としては、スチレン、ビニルケトン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸メチルなどの単独あるいは2種類以上の共重合体;ポリテトラフルオロエチレン、4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合体、4フッ化エチレン-エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライドなどのフッ素系樹脂;メラミン樹脂;尿素樹脂;ポリオレフィン;ポリメタクリレートなどが挙げられる。有機フィラーは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いることもできる。これらの有機フィラーの中でも、化学的安定性の点で、ポリテトラフルオロエチレン粉末が好ましい。
【0050】
無機フィラーの例としては、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、炭酸塩、硫酸塩などの無機物からなる材料が挙げられる。具体的に例示すると、アルミナ、ベーマイト、シリカ、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、または炭酸カルシウムなどの粉末が挙げられる。無機フィラーは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いることもできる。これらの無機フィラーの中でも、化学的安定性の点で、アルミナ粉末が好ましい。
【0051】
フィラーの形状については、略球状、板状、柱状、針状、ウィスカー状、繊維状などが挙げられ、何れの粒子も用いることができる。均一な孔を形成しやすいことから、略球状粒子であることが好ましい。
【0052】
多孔質層におけるフィラーの含有率は、1~60重量%が好ましく、より好ましくは10~50重量%であり、さらに好ましくは20~50重量%である。なお、多孔質層におけるフィラーの含有率は、当該多孔質層の総重量を100重量%として算出する。フィラーの含有率を上述の範囲にすることで、多孔質層の重量の増加が抑制でき、かつイオン透過性が良好なセパレータを得ることができる。
【0053】
[樹脂]
多孔質層に含まれている樹脂は、多孔質層を構成する各成分同士を接着したり、多孔質層-ポリオレフィン多孔質フィルム間および/または多孔質層-電極板間を接着したりする機能を有している。
【0054】
多孔質層に用いられる樹脂は、電池の電解液に不溶であり、また、その電池の使用範囲において電気化学的に安定であることが好ましい。
【0055】
多孔質層に用いられる樹脂としては、例えば、ポリオレフィン;(メタ)アクリレート系樹脂;含フッ素樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;ポリエステル系樹脂;ゴム類;融点またはガラス転移温度が180℃以上の樹脂;水溶性ポリマー;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。
【0056】
上述の樹脂のうち、(メタ)アクリレート系樹脂、含フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂および水溶性ポリマーが好ましい。
【0057】
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、及びエチレン-プロピレン共重合体等が好ましい。
【0058】
含フッ素樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-トリクロロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-フッ化ビニル共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、及びエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等、並びに、前記含フッ素樹脂の中でもガラス転移温度が23℃以下である含フッ素ゴムを挙げることができる。
【0059】
ポリアミド系樹脂としては、芳香族ポリアミドおよび全芳香族ポリアミドなどのアラミド樹脂が好ましい。
【0060】
アラミド樹脂としては、具体的には、例えば、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)、ポリ(パラベンズアミド)、ポリ(メタベンズアミド)、ポリ(4,4’-ベンズアニリドテレフタルアミド)、ポリ(パラフェニレン-4,4’-ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(メタフェニレン-4,4’-ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(パラフェニレン-2,6-ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(メタフェニレン-2,6-ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(2-クロロパラフェニレンテレフタルアミド)、パラフェニレンテレフタルアミド/2,6-ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体、メタフェニレンテレフタルアミド/2,6-ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体等が挙げられる。このうち、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)がより好ましい。
【0061】
ポリエステル系樹脂としては、ポリアリレートなどの芳香族ポリエステルおよび液晶ポリエステルが好ましい。
【0062】
ゴム類としては、スチレン-ブタジエン共重合体およびその水素化物、メタクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリ酢酸ビニル等を挙げることができる。
【0063】
融点又はガラス転移温度が180℃以上の樹脂としては、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルアミド等を挙げることができる。
【0064】
水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸等を挙げることができる。
【0065】
なお、多孔質層に用いられる樹脂としては、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
[非水電解液二次電池用積層セパレータの製造方法]
本発明の一態様に係る非水電解液二次電池用積層セパレータは、ポリオレフィン多孔質フィルムの片面はまたは両面に、多孔質層を形成することによって製造できる。
【0067】
一実施形態においては、(i)加熱工程が施され、その後、(ii)ポリオレフィン多孔質フィルムの片面または両面に多孔質層が形成される積層工程が施される。すなわち、上述の非水電解液二次電池用セパレータの製造方法によって製造された非水電解液二次電池用セパレータの片面または両面に、多孔質層が形成される。
【0068】
他の実施形態においては、(i)ポリオレフィン多孔質フィルムの片面または両面に多孔質層が形成される積層工程が施され、その後(または、それと同時に)、(ii)加熱工程が施される。すなわち、片面または両面に多孔質層が形成されたポリオレフィン多孔質フィルムに対して、上述の非水電解液二次電池用セパレータの製造方法を適用する。
【0069】
この実施形態における製造方法は、
少なくともMD方向に延伸されたポリオレフィン多孔質フィルムに対して、再度MD方向に張力を付与しながら加熱する加熱工程と、
上記多孔質フィルムの片面または両面に多孔質層を形成する積層工程と、を含み
上記積層工程は、上記加熱工程よりも前および/または上記加熱工程と同時に行われ
上記加熱工程の前後における上記ポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向長さが、(LA-LB)/LA>0.015の関係を満たしている:
式中、LAは、加熱工程前におけるポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向長さである。また、LBは、加熱工程後におけるポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向長さである。
【0070】
加熱工程については、〔1〕節の説明が援用されるので、再度の記載は省略する。
【0071】
積層工程においては、ポリオレフィン多孔質フィルムの片面または両面に、多孔質層が積層される。積層工程において使用される樹脂およびフィラーの好ましい態様は、上述した通りである。
【0072】
樹脂、フィラーおよび任意で他の成分を、媒質に溶解または分散させた塗工液を用いて、多孔質層を形成することができる。塗工液の形成方法としては、例えば、機械攪拌法、超音波分散法、高圧分散法、メディア分散法などが挙げられる。媒質としては、例えば、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミドおよびN,N-ジメチルホルムアミドなどを使用することができる。
【0073】
多孔質層の形成方法としては、例えば、上述の塗工液を調製し、当該塗工液をポリオレフィン多孔質フィルムに塗布し、乾燥させることにより、多孔質層を析出させる方法が挙げられる。
【0074】
塗工液をポリオレフィン多孔質フィルムに塗工する方法としては、ナイフ、ブレード、バー、グラビア、またはダイなどの公知の塗工方法を用いることができる。
【0075】
溶媒(分散媒)の除去方法は、乾燥による方法が一般的である。乾燥方法としては、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥および減圧乾燥などが挙げられるが、溶媒(分散媒)を充分に除去することができるのであれば如何なる方法でもよい。また、塗料に含まれる溶媒(分散媒)を他の溶媒に置換してから乾燥を行ってもよい。溶媒(分散媒)を他の溶媒に置換してから除去する方法としては、具体的には水、アルコール、またはアセトンなどの低沸点の貧溶媒で置換、析出させ、乾燥を行う方法がある。
【0076】
〔4.非水電解液二次電池用部材および非水電解液二次電池〕
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用部材は、正極と、上述の非水電解液二次電池用積層セパレータ(または非水電解液二次電池用セパレータ)と、負極とがこの順で配置されてなる。また、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池は、上述の非水電解液二次電池用積層セパレータ(または非水電解液二次電池用セパレータ)を備える。上記非水電解液二次電池は、通常、負極と正極とが、上述の非水電解液二次電池用積層セパレータ(または非水電解液二次電池用セパレータ)を介して対向した構造体を有する。上記非水電解液二次電池では、当該構造体に電解液が含浸された電池要素が、外装材内に封入されている。例えば、上記非水電解液二次電池は、リチウムイオンのドープ・脱ドープにより起電力を得るリチウムイオン二次電池である。
【0077】
上述の通り、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータ(または非水電解液二次電池用積層セパレータ)は、TD方向の加熱形状維持率が向上している。それゆえ、上記非水電解液二次電池用セパレータは、TD方向の収縮が抑制されていない状態で加熱されても、収縮による電極間の短絡を防止できる。したがって、上記非水電解液二次電池用セパレータは、TD方向の収縮が抑制されない状態で用いると、特に有用である。このような状態である物品の例としては、非水電解液二次電池用セパレータのMD方向に捲回されている非水電解液二次電池用部材が挙げられる。また、このような非水電解液二次電池用部材を備えている非水電解液二次電池の形態の例としては、円筒型電池、角型電池、つづら折り型電池が挙げられる。
【0078】
[正極]
正極としては、例えば、正極活物質および結着剤を含む活物質層が集電体上に成形された構造を備える正極シートを使用することができる。なお、上記活物質層は、さらに導電剤を含んでもよい。
【0079】
上記正極活物質としては、例えば、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料が挙げられる。当該材料としては、例えば、V、Mn、Fe、Co、Niなどの遷移金属を少なくとも1種類含んでいるリチウム複合酸化物が挙げられる。
【0080】
上記導電剤としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維、有機高分子化合物焼成体などの炭素質材料などが挙げられる。
【0081】
上記結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンの共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンの共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデン-トリクロロエチレンの共重合体、フッ化ビニリデン-フッ化ビニルの共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレンの共重合体、熱可塑性ポリイミド、ポリエチレン、およびポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂、アクリル樹脂、ならびに、スチレンブタジエンゴムが挙げられる。なお、結着剤は、増粘剤としての機能も有している。
【0082】
正極集電体としては、例えば、Al、Ni、ステンレスなどの導電体が挙げられる。中でも、薄膜に加工し易く、安価であることから、Alがより好ましい。
【0083】
シート状の正極の製造方法としては、例えば、正極合剤となる正極活物質、導電剤および結着剤を正極集電体上で加圧成型する方法;適当な有機溶剤を用いて正極活物質、導電剤および結着剤をペースト状にして正極合剤を得た後、当該正極合剤を正極集電体に塗工し、これを乾燥して得られたシート状の正極合剤を加圧することにより、正極集電体に固着する方法などが挙げられる。
【0084】
[負極]
負極としては、例えば、負極活物質および結着剤を含む活物質層が集電体上に成形された構造を備える負極シートを使用することができる。なお、上記活物質層は、さらに導電剤を含んでもよい。
【0085】
上記負極活物質としては、例えば、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料、リチウム金属またはリチウム合金などが挙げられる。当該材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維および有機高分子化合物焼成体などの炭素質材料;正極よりも低い電位でリチウムイオンのドープ・脱ドープを行う酸化物および硫化物などのカルコゲン化合物;アルカリ金属と合金化するアルミニウム(Al)、鉛(Pb)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)およびシリコン(Si)などの金属、アルカリ金属を格子間に挿入可能な立方晶系の金属間化合物(AlSb、Mg2Si、NiSi2)、リチウム窒素化合物(Li3-xMxN(M:遷移金属))などが挙げられる。
【0086】
負極集電体としては、例えば、Cu、Ni、ステンレスなどが挙げられる。中でも、特にリチウムイオン二次電池においてはリチウムと合金を作り難く、かつ薄膜に加工し易いことから、Cuがより好ましい。
【0087】
シート状の負極の製造方法としては、例えば、負極合剤となる負極活物質を負極集電体上で加圧成型する方法;適当な有機溶剤を用いて負極活物質をペースト状にして負極合剤を得た後、当該負極合剤を負極集電体に塗工し、これを乾燥して得られたシート状の負極合剤を加圧することにより、負極集電体に固着する方法などが挙げられる。上記ペーストには、好ましくは上記導電剤および上記結着剤が含まれる。
【0088】
[非水電解液]
非水電解液としては、例えば、リチウム塩を有機溶媒に溶解してなる非水電解液を用いることができる。リチウム塩としては、例えば、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、Li2B10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩、LiAlCl4などが挙げられる。上記リチウム塩のうち、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2およびLiC(CF3SO2)3からなる群から選択される少なくとも1種のフッ素含有リチウム塩がより好ましい。
【0089】
有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4-トリフルオロメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,2-ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタンなどのカーボネート類;1,2-ジメトキシエタン、1,3-ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、γ-ブチロラクトンなどのエステル類;アセトニトリル、ブチロニトリルなどのニトリル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド類;3-メチル-2-オキサゾリドンなどのカーバメート類;スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3-プロパンサルトンなどの含硫黄化合物;並びに、上記有機溶媒にフッ素基が導入されてなる含フッ素有機溶媒などが挙げられる。上記有機溶媒のうち、カーボネート類がより好ましく、環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合溶媒、または、環状カーボネートとエーテル類との混合溶媒がさらに好ましい。環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合溶媒としては、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートを含む混合溶媒がさらに好ましい。当該混合溶媒は、作動温度範囲が広く、かつ、負極活物質として天然黒鉛または人造黒鉛などの黒鉛材料を用いた場合においても難分解性を示す。
【0090】
[非水電解液二次電池用部材および非水電解液二次電池の製造方法]
非水電解液二次電池用部材の製造方法としては、例えば、正極と、上述の非水電解液二次電池用積層セパレータ(または非水電解液二次電池用セパレータ)と、負極とをこの順で配置する方法が挙げられる。
【0091】
また、非水電解液二次電池の製造方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、非水電解液二次電池の筐体となる容器に当該非水電解液二次電池用部材を入れる。次いで、当該容器内を非水電解液で満たした後、減圧しつつ容器を密閉する。これにより、非水電解液二次電池を製造することができる。
【0092】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0093】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0094】
〔測定方法〕
[幅減少率]
加熱工程前におけるポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向長さをLAとし、加熱工程後におけるポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向長さをLBとした。次に、式「{(LA-LB)/LA}×100」により、幅減少率を算出した。
【0095】
[加熱形状維持率およびその向上]
(加熱工程前の加熱形状維持率)
加熱工程に供する前のポリオレフィン多孔質フィルムを切出して、5cm角の正方形の試験片を作製した。この試験片の中央に、4cm角の正方形の罫書き線を描いた。この罫書き線は、それぞれ、ポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向およびMD方向に描かれている。試験片を紙2枚の間に挟み、110℃のオーブン内で1時間加熱した。その後、試験片を取り出して正方形の罫書き線の寸法を測定した。得られた寸法から、加熱形状維持率を算出した。加熱形状維持率の計算方法は下記の通りである。
・加熱工程前のTD方向の加熱形状維持率(%):
(加熱後のTD方向の罫書き線の長さ/加熱前のTD方向の罫書き線の長さ)×100・加熱工程前のMD方向の加熱形状維持率(%):
(加熱後のMD方向の罫書き線の長さ/加熱前のMD方向の罫書き線の長さ)×100。
【0096】
(加熱工程後の加熱形状維持率)
加熱工程に供した後のポリオレフィン多孔質フィルムを切出して、5cm角の正方形の試験片を作製した。この試験片の中央に、4cm角の正方形の罫書き線を描いた。この罫書き線は、それぞれ、ポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向およびMD方向に描かれている。試験片を紙2枚の間に挟み、110℃のオーブン内で1時間加熱した。その後、試験片を取り出して正方形の罫書き線の寸法を測定した。得られた寸法から、加熱形状維持率を算出した。加熱形状維持率の計算方法は下記の通りである。
・加熱工程後のTD方向の加熱形状維持率(%):
(加熱後のTD方向の罫書き線の長さ/加熱前のTD方向の罫書き線の長さ)×100・加熱工程後のMD方向の加熱形状維持率(%):
(加熱後のMD方向の罫書き線の長さ/加熱前のMD方向の罫書き線の長さ)×100。
【0097】
(加熱形状維持率の変化量)
下記式により、TD方向およびMD方向の加熱形状維持率の変化量を算出した。
・TD方向の加熱形状維持率の変化量(ポイント):
加熱工程後のTD方向の加熱形状維持率-加熱工程前のTD方向の加熱形状維持率
・MD方向の加熱形状維持率の変化量(ポイント):
加熱工程後のMD方向の加熱形状維持率-加熱工程前のMD方向の加熱形状維持率。
【0098】
〔比較例1-1〕
ポリオレフィン多孔質フィルムAとして、二軸延伸されたポリエチレン多孔質フィルム(膜厚:12.0μm、空隙率:43%)を使用した。ポリオレフィン多孔質フィルムAのTD方向およびMD方向の加熱形状維持率を表1に示す。
【0099】
〔実施例1-1〕
ポリオレフィン多孔質フィルムAを、MD方向に60N/mの張力を付与しながら80℃にて1分間加熱した。幅減少率は2.3%であった。加熱工程の前後における、ポリオレフィン多孔質フィルムAのTD方向およびMD方向の加熱形状維持率を表1に示す。
【0100】
〔実施例1-2〕
ポリオレフィン多孔質フィルムAを、MD方向に60N/mの張力を付与しながら100℃にて1分間加熱した。幅減少率は6.9%であった。加熱工程の前後における、ポリオレフィン多孔質フィルムAのTD方向およびMD方向の加熱形状維持率を表1に示す。
【0101】
〔比較例2-1〕
ポリオレフィン多孔質フィルムBとして、二軸延伸されたポリエチレン多孔質フィルム(膜厚:10.5μm、空隙率:42%)を使用した。ポリオレフィン多孔質フィルムBのTD方向およびMD方向の加熱形状維持率を表1に示す。
【0102】
〔比較例2-2〕
ポリオレフィン多孔質フィルムBを、MD方向に60N/mの張力を付与しながら60℃にて10秒間加熱した。幅減少率は1.5%であった。加熱工程の前後における、ポリオレフィン多孔質フィルムBのTD方向およびMD方向の加熱形状維持率を表1に示す
〔実施例2-1〕
ポリオレフィン多孔質フィルムBを、MD方向に60N/mの張力を付与しながら60℃にて25秒間加熱した。幅減少率は2.7%であった。加熱工程の前後における、ポリオレフィン多孔質フィルムBのTD方向およびMD方向の加熱形状維持率を表1に示す。
【0103】
〔実施例2-2〕
ポリオレフィン多孔質フィルムBを、MD方向に60N/mの張力を付与しながら60℃にて1分間加熱した。幅減少率は3.1%であった。加熱工程の前後における、ポリオレフィン多孔質フィルムBのTD方向およびMD方向の加熱形状維持率を表1に示す。
【0104】
〔実施例2-3〕
ポリオレフィン多孔質フィルムBを、MD方向に60N/mの張力を付与しながら80℃にて1分間加熱した。幅減少率は8.8%であった。加熱工程の前後における、ポリオレフィン多孔質フィルムBのTD方向およびMD方向の加熱形状維持率を表1に示す。
【0105】
〔実施例2-4〕
ポリオレフィン多孔質フィルムBを、MD方向に60N/mの張力を付与しながら90℃にて60秒間加熱した。幅減少率は15.4%であった。加熱工程の前後における、ポリオレフィン多孔質フィルムBのTD方向およびMD方向の加熱形状維持率を表1に示す。
【0106】
〔実施例2-5〕
ポリオレフィン多孔質フィルムBを、MD方向に60N/mの張力を付与しながら100℃にて60秒間加熱した。幅減少率は23.8%であった。加熱工程の前後における、ポリオレフィン多孔質フィルムBのTD方向およびMD方向の加熱形状維持率を表1に示す。
【0107】
〔比較例3-1〕
ポリオレフィン多孔質フィルムCとして、二軸延伸されたポリエチレン多孔質フィルム(膜厚:9.5μm、空隙率:48%)を使用した。ポリオレフィン多孔質フィルムCのTD方向およびMD方向の加熱形状維持率を表1に示す。
【0108】
〔実施例3-1〕
ポリオレフィン多孔質フィルムCを、MD方向に60N/mの張力を付与しながら100℃にて1分間加熱した。幅減少率は9.2%であった。加熱工程の前後における、ポリオレフィン多孔質フィルムAのTD方向およびMD方向の加熱形状維持率を表1に示す。
【0109】
〔比較例4-1〕
ポリオレフィン多孔質フィルムDとして、二軸延伸されたポリエチレン多孔質フィルム(膜厚:9.5μm、空隙率:50%)を使用した。ポリオレフィン多孔質フィルムDのTD方向およびMD方向の加熱形状維持率を表1に示す。
【0110】
〔実施例4-1〕
ポリオレフィン多孔質フィルムDを、MD方向に60N/mの張力を付与しながら100℃にて1分間加熱した。幅減少率は21.2%であった。加熱工程の前後における、ポリオレフィン多孔質フィルムAのTD方向およびMD方向の加熱形状維持率を表1に示す。
【0111】
〔実施例5-1〕
[塗工液の作製]
攪拌翼、温度計、窒素流入管および粉体添加口を有する、3リットルのセパラブルフラスコに、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を2200g、塩化カルシウム粉末を151g、それぞれ加えた。次に、セパラブルフラスコの内容物を100℃に昇温して、塩化カルシウム粉末を完全に溶解させた。次に、セパラブルフラスコの内容物を室温に冷却してから、パラフェニレンジアミンを68.23g加えて、完全に溶解させた。次に、テレフタル酸ジクロライドを124.97gセパラブルフラスコに加え、20℃にて1時間撹拌した。これにより、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の6重量%溶液を得た(以下、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)のことをPPTAと略記する)。得られたPPTA溶液100gに、NMPを300g加えて、PPTA濃度が1.5重量%である溶液を得た。得られた溶液に、アルミナC(日本アエロジル社製)およびアドバンスドアルミナAA-03(住友化学社製)を、それぞれ6gずつ加えて、240分間攪拌した。次に、炭酸カルシウムを0.73gさらに加えて240分間攪拌し、スラリー状塗工液を得た。
【0112】
[積層セパレータの作製]
捲回体から繰り出したポリエチレン多孔質フィルムA上に、乾燥後の多孔質層の目付が2.6g/m2となるようにスラリー状塗工液を連続塗工した。次に、形成した塗布膜を、50℃、相対湿度70%の雰囲気下に導き、PPTAを析出させた。次に、PPTAを析出させた塗布膜を水洗して、塩化カルシウムおよび溶媒を除去した。その後、60N/mの張力を付与しながら、105℃で25秒間加熱することで、積層セパレータを得た。幅収縮率は7.5%であった。
【0113】
〔実施例6-1〕
ポリエチレン多孔質フィルムAの代わりにポリエチレン多孔質フィルムBを用いた以外は、実施例5-1と同様の手順により、積層セパレータを得た。幅収縮率は11.0%であった。
【0114】
【0115】
〔結果〕
実施例と比較例との比較により、ポリオレフィン多孔質フィルムの種類に関係なく、加熱工程を経ることにより、TD方向の加熱形状維持率の変化量が見られることが判った。また、加熱工程における幅減少率が大きいほど、加熱形状維持率が向上することも判った。幅減少率が5%以上である場合には、加熱形状維持率の変化量の程度が特に大きい値となった。
【0116】
なお、実施例2-1におけるTD方向の加熱形状維持率の変化量(0.4ポイント)と、比較例2-2におけるTD方向の加熱形状維持率の変化量(0.1ポイント)との間には、技術的に意義のある差が存在する。ポリオレフィン多孔質フィルムのTD方向における収縮量の実際の変化に換算すると、実施例2-1に係るポリオレフィン多孔質フィルムは、比較例2-1に係るポリオレフィン多孔質フィルムよりも、約1.6mm収縮量が少なくなっている。一方、比較例2-2に係るポリオレフィン多孔質フィルムは、比較例2-1に係るポリオレフィン多孔質フィルムよりも、約0.4mm収縮量が少なくなっている。上述したように、非水電解液二次電池用部材において、非水電解液二次電池用セパレータと電極とがTD方向に接触していない領域(
図1の矢印Y)は、0.5mm~1.5mm程度である。そうすると、非水電解液二次電池の安全性の観点において、実施例2-1に係るポリオレフィン多孔質フィルムは、TD方向の加熱形状維持率が技術的意義を有する程度に改善されていると言える。一方、比較例2-2に係るポリオレフィン多孔質フィルムは、TD方向の加熱形状維持率が技術的意義を有する程度には足りないと言える。
【0117】
さらに、加熱工程を経ることにより、実施例2-4、2-5、3-1および4-1に係るポリオレフィン多孔質フィルムのような、従来技術では達成できない程度の加熱形状維持率を有するポリオレフィン多孔質フィルムを得ることができた。大多数のポリオレフィン多孔質フィルムは、加熱形状維持率は100%未満である(加熱により収縮する)。仮に加熱形状維持率が100%を超えたとしても、その値は、精々101%未満である(加熱による膨張率は1%未満である)。しかし、本実施例に係るポリオレフィン多孔質フィルムの加熱形状維持率は、最大で107.1%にも及んでいた(実施例2-5)。
【0118】
また、実施例5-1、6-1から判るように、ポリオレフィン多孔質フィルムの上に多孔質層を形成した積層セパレータにおいても、加熱工程における幅収縮率の制御により、TD方向の加熱形状維持率が向上することが確認された。ただし、積層セパレータにおいては、多孔質層によってポリオレフィン多孔質フィルムが拘束されるため、ポリオレフィン多孔質フィルム単独を加熱した場合とは挙動が多少異なっている。