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特開2024-107513回収装置、液体付与装置、多層セパレータ形成装置、電極製造装置、電気化学素子製造装置および回収方法
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  • 特開-回収装置、液体付与装置、多層セパレータ形成装置、電極製造装置、電気化学素子製造装置および回収方法 図1
  • 特開-回収装置、液体付与装置、多層セパレータ形成装置、電極製造装置、電気化学素子製造装置および回収方法 図2
  • 特開-回収装置、液体付与装置、多層セパレータ形成装置、電極製造装置、電気化学素子製造装置および回収方法 図3
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  • 特開-回収装置、液体付与装置、多層セパレータ形成装置、電極製造装置、電気化学素子製造装置および回収方法 図6
  • 特開-回収装置、液体付与装置、多層セパレータ形成装置、電極製造装置、電気化学素子製造装置および回収方法 図7
  • 特開-回収装置、液体付与装置、多層セパレータ形成装置、電極製造装置、電気化学素子製造装置および回収方法 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107513
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】回収装置、液体付与装置、多層セパレータ形成装置、電極製造装置、電気化学素子製造装置および回収方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 20/00 20060101AFI20240802BHJP
   B65H 20/06 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
B65H20/00 Z
B65H20/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011467
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】内田 公一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 靖司
【テーマコード(参考)】
3F103
【Fターム(参考)】
3F103AA05
3F103BB01
3F103EA11
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で液体付着部材の回収を可能にする。
【解決手段】
搬送部により搬送される基体とともに付与部により液体組成物を付与される前記搬送部上に設けられた液体付着部材を、前記搬送部から回収する回収装置であって、前記液体付着部材を前記搬送部から巻き取る巻取部材を備え、前記搬送部と前記巻取部材とで動力が連動している。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送部により搬送される基体とともに付与部により液体組成物を付与される前記搬送部上に設けられた液体付着部材を、前記搬送部から回収する回収装置であって、
前記液体付着部材を前記搬送部から巻き取る巻取部材を備え、
前記搬送部と前記巻取部材とで動力が連動していることを特徴とする回収装置。
【請求項2】
更に、前記液体付着部材を介して前記搬送部と接触し、前記搬送部の移動により従動回転する回転部材を備えることを特徴とする請求項1記載の回収装置。
【請求項3】
更に、前記回転部材の回転を前記巻取部材に伝達し、前記液体付着部材を巻き取る方向へ前記巻取部材を回転させる動力伝達部材を備えることを特徴とする請求項2記載の回収装置。
【請求項4】
前記回転部材が、前記搬送部に設けられたローラに対向して接触可能なよう設けられていることを特徴とする請求項2記載の回収装置。
【請求項5】
前記液体付着部材に対して前記回転部材を接離させる接離機構を備えることを特徴とする請求項2記載の回収装置。
【請求項6】
前記巻取部材は、前記液体付着部材における前記液体組成物を付与された側を巻き取り軸に対して内側にして前記液体付着部材を巻き取ることを特徴とする請求項1記載の回収装置。
【請求項7】
前記回転部材は、前記巻取部材による単位時間当たりの前記液体付着部材の巻取量が、前記搬送部による単位時間当たりの前記液体付着部材の搬送量を超えた場合に、前記液体付着部材との間でスリップを生じさせる材質からなることを特徴とする請求項2記載の回収装置。
【請求項8】
基体を搬送する搬送部と、
前記搬送部上に設けられる液体付着部材と、
前記基体と前記液体付着部材に対して液体組成物を付与する付与部と、
請求項1に記載の回収装置と、
を備えることを特徴とする液体付与装置。
【請求項9】
前記搬送部に前記液体付着部材を貼り付ける貼付装置を備え、
予め設定された貼付・回収位置に対して、前記回収装置による回収動作と前記貼付装置による貼付動作とが切り替え可能に設けられていることを特徴とする請求項8記載の液体付与装置。
【請求項10】
前記貼付・回収位置に対して前記貼付装置および前記回収装置を切り替える貼付・回収切替手段を備えることを特徴とする請求項9記載の液体付与装置。
【請求項11】
請求項8に記載の液体付与装置を備え、前記基体はセパレータであることを特徴とする多層セパレータ形成装置。
【請求項12】
請求項8に記載の液体付与装置と、前記液体付与装置の後段に設けられる後処理装置とを備え、前記基体は電極基体であることを特徴とする電極製造装置。
【請求項13】
請求項12に記載の電極製造装置と、前記電極製造装置の後段に設けられる電気化学素子化装置と、を備えることを特徴とする電気化学素子製造装置。
【請求項14】
基体を搬送する搬送部上に設けられ、前記基体とともに付与部により液体組成物を付与される液体付着部材を、前記搬送部から回収する回収方法であって、
前記液体付着部材を前記搬送部から巻き取る巻取部材を、前記搬送部の動力に連動して回転させて、前記液体付着部材を前記巻取部材に巻き取る巻取工程を含むことを特徴とする回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回収装置、液体付与装置、多層セパレータ形成装置、電極製造装置、電気化学素子製造装置および回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、剥離ユニットの第1把持部材に先鋭な先端部を備え、この先鋭な先端部をウエハと保護テープとの接着界面に進入させて、保護テープをウエハから剥離させる粘着テープ剥離装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-041051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような構成の場合、剥離ユニットを、テープ状の液体付着部材を剥がす方向へ移動させるための駆動機構が必要になるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、搬送部により搬送される基体とともに付与部により液体組成物を付与される前記搬送部上に設けられた液体付着部材を、前記搬送部から回収する回収装置であって、前記液体付着部材を前記搬送部から巻き取る巻取部材を備え、前記搬送部と前記巻取部材とで動力が連動していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、簡単な構成で液体付着部材を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る液体付与装置の一例を模式的に示した側面図。
図2】液体除去装置を説明する図。
図3】基体幅方向の説明図。
図4】実施形態に係る回収装置の一例を示す説明図。
図5】回収装置の動作の一例を示す説明図。
図6】回収時における液体付着部材の挙動を説明する図。
図7】液体付着部材の貼付・回収切替装置の概略構成を示す平面図。
図8】実施形態に係る電極製造装置および電気化学素子製造装置を模式的に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら発明を実施するための形態を説明する。図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
<液体付与装置の構成>
はじめに図1を用いて液体付与装置の構成について説明する。図1は、実施形態に係る液体付与装置の一例を模式的に示した側面図である。図1には、電極印刷装置が例示されている。
【0010】
液体付与装置の一例である電極印刷装置1は、機能層作製用インクとしての液体インクを用いて、基体としての電極基体の表面および活物質層の表面の少なくとも何れか一方に位置選択的に機能層を形成する。なお、本発明において、機能層とは、電気化学素子の製造および/または使用において、機能を発揮する層である。例えば、電極活物質上に絶縁性を有する樹脂層および/または無機層を設けた場合は、機能層は絶縁層として機能する。
【0011】
また、以降の実施形態においては、機能層が電極基体上に設けられる構成について説明するが、電極基体ではなくポリプロピレンなどの樹脂や不織布により形成されるセパレータが基体である多層セパレータ形成装置であってもよい。または、当該セパレータ上に当該セパレータとは異なる層が付与された多層セパレータが基体である多層セパレータ形成装置であってもよい。
【0012】
図1において、電極印刷装置1は、基体である電極基体2および/または電極基体2上に活物質層を有する電極を搬送する搬送部としての搬送装置3を備える。また、電極印刷装置1は、搬送装置3による電極基体2の搬送方向Xの上流側から下流側に沿って順に、画像認識装置7、ヘッド4A、光源5A、ヒータ6A、ヘッド4B、光源5B、ヒータ6B等を備える。
【0013】
電極基体2は、例えば、電池ケース内部の電極体に蓄えられた電力を、電池ケースの外部に取り出すための金属部品である集電体である。または、電極基体2は、例えば、集電体と、当該集電体上に形成された活物質層と、を有する電極素子である。電極基体2は、平面性を有する導電性箔であって、一般に蓄電デバイスである二次電池、キャパシタ、なかでもリチウムイオン二次電池に好適に用いることができる。導電性箔としては、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔、チタニウム箔、およびそれらをエッチングして微細な穴を開けたエッチド箔や、リチウムイオンキャパシタに用いられる穴あき電極基体などが用いられる。電極基体2は、燃料電池のような発電デバイスで用いられるカーボンペーパー繊維状の電極を不織または織状で平面状にしたものや、上記穴あき電極基体のうち微細な穴を有するものが使用できる。
【0014】
画像認識装置7は、搬送方向Xの最上流側に配置され、電極基体2上に形成された活物質層の表面の欠陥情報や位置情報を取得する情報取得手段として機能する。画像認識装置7は、例えば、カメラやラインセンサなどにより構成される。画像認識装置7は、電極基体2上に既に活物質層が存在する場合に用いられ、電極基体2上の活物質画像の位置や欠陥の位置を認識し記録するものであるため、必須の構成ではなく、必要に応じて設けられる。
【0015】
搬送装置3は、例えば、ベルト支持ローラ3bとベルト支持ローラ3cに支持された搬送ベルト3aを備え、電極基体2がヘッド4A、光源5A、ヒータ6A、ヘッド4B、光源5B、およびヒータ6Bの正面を順次通過するように電極基体2を搬送する。なお、搬送装置3は、上記構成に限るものではなく、空気浮上機構や搬送ローラを組み合わせて構成してもよい。また、搬送装置3には、電極基体2の移動を補助するガイド部材などをさらに設けてもよい。
【0016】
ヘッド4Aは、電極基体2上に樹脂層および/または無機層作製用インクである液体インクを付与してインク層を形成するインク層形成用のヘッドとして機能する。ここで、ヘッド4Aは付与部の一例であり、液体インクは液体組成物の一例である。ヘッド4Aは、インク層パターンとしての枠パターンを形成する情報に係る画像信号や、必要に応じて画像認識装置7により取得された欠陥情報に対応して電極基体2上に液体インクを付与し、樹脂層および/または無機層の前駆状態であるインク層を形成する。ヘッド4Aとしては、電極基体2の搬送方向Xと交わる方向(電極基体2の幅方向)の幅以上の幅を有するライン状に並べたヘッドを使用することができる。ヘッド4Aから液体インクを付与する手段および駆動方法に特に制限はない。例えば、発熱体の熱により発生する蒸気の圧力を利用して液体インク滴を飛翔させるサーマルアクチュエータ、圧電素子によって発生する機械的な圧力パルスを利用して液体インク滴を飛翔させる圧電アクチュエータ、あるいは振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用してもよい。さらには、必要に応じて液体インクの供給系を圧力オンオフして飛翔させてもよい。
【0017】
光源5A,5Bは、電極基体2上に形成されたインク層に光を照射して、インク層を樹脂層に硬化させる硬化機能を有する。光源5A,5Bとしては、例えば、低,中,高圧水銀ランプのような水銀ランプ、タングステンランプ、アーク灯、エキシマランプ、エキシマレーザ、半導体レーザ、高出力UV-LED、YAGレーザ、レーザと非線形光学結晶とを組み合わせたレーザシステム、高周波誘起紫外線発生装置、EBキュアなどの電子線照射装置、X線照射装置などを使用することができる。なかでもシステムを簡便化できる上から、高周波誘起紫外線発生装置、高・低圧水銀ランプや半導体レーザなどを使用することが好ましい。また、光源5A,5Bに集光用ミラーや走引光学系を設けてもよい。
【0018】
ヒータ6A,6Bは、電極基体2上に形成された無機層作製用インクの付与によって形成されるインク層を加熱して、硬化を促進したり乾燥させたりする硬化・乾燥手段あるいは加熱手段・加熱機構としての機能を有する。ヒータ6A,6Bとしては、例えば、赤外ランプ、発熱体を内蔵したローラ(熱ローラ)、温風または熱風を吹き出すブロワ、水蒸気などを用いたボイラー型熱風を導入した炉などを使用することができる。
【0019】
ヘッド4Bは、先に樹脂層を設けた電極基体2に連続して活物質層を形成する場合、必要に応じてさら活物質を付与する付与手段として機能する。ヘッド4Bに代えて、間欠機能を有するダイヘッドや、高速ディスペンサ、ジェットノズル、スプレーノズル、あるいは上記と同様なヘッドなどを用い、活物質層作製用インクを付与してもよい。
【0020】
上記の場合、ヘッド4Bは、活物質を含有する活物質層作製用インクである液体インクを、電極基体2の表面に付与して活物質層を形成する活物質層作製用のヘッドとして機能する。ヘッド4Bは、適宜必要に応じて設けられるもので、画像認識装置7により取得された欠陥情報に基づき、活物質層の表面の欠陥部位などに、樹脂層および/または無機層作製用インクを付与する付与手段としても機能する。ここで、ヘッド4Bは付与部の一例であり、液体インクは液体組成物の一例である。なお、ヘッド4Bは、電極基体2上に樹脂層および/または無機層作製用インクである液体インクを付与してインク層を形成するヘッド4Aと同様のインク層形成用のヘッドとして機能させてもよい。
【0021】
<液体付与装置の動作>
次に、電極印刷装置1の動作について説明する。
【0022】
電極印刷装置1には、搬送装置3、画像認識装置7、ヘッド4A、光源5A、ヒータ6A、ヘッド4B、光源5B、ヒータ6B等の動作を制御する制御装置が搭載されている。
【0023】
電極印刷装置1の動作において、まず、電極印刷装置1の制御装置は、搬送装置3を駆動させて電極基体2を、図1中、右側から左側へ搬送方向Xに向けて搬送する。このときの電極基体2の搬送速度は、例えば、0.1m/min~数100m/minの範囲内とする。
【0024】
電極印刷装置1の制御装置は、画像認識装置7が電極印刷装置1の上流に設けられている場合には、画像認識装置7により電極表面を観察し、欠陥部位の位置情報を記録するカメラやラインセンサでの読み取りを実施し、欠陥部位およびその位置を認識して、以降のヘッド4Aによる液体インク付与・印刷へのフィードバックを行う。
【0025】
電極印刷装置1の制御装置は、電極基体2がヘッド4Aの正面まで搬送されると、画像信号に対応してヘッド4Aを制御して上記の液体インクを付与する。これにより、電極基体2上にインク層が形成される。
【0026】
次に、電極印刷装置1の制御装置は、インク層が形成された電極基体2を光源5Aの正面へと搬送する。電極基体2が光源5Aの正面を通過する際、電極印刷装置1の制御装置は、光源5Aを駆動して電極基体2上に形成されたインク層に向けて光を照射し、インク層を硬化させる。なお、インク層表面の位置における照射光強度は、使用する光源の波長などに応じて異なるが、通常、数mW/cm2~1KW/cm2の範囲内である。インク層への露光量は、液体インクの感度や被印刷面の移動速度(電極基体2の搬送速度)などに応じて適宜設定することができる。
【0027】
続いて、電極印刷装置1の制御装置は、硬化状態にあるインク層を担持した電極基体2を、ヒータ6A内あるいはその近傍へ搬送する。電極基体2がヒータ6A内あるいはその近傍を通過する際、電極印刷装置1の制御装置は、ヒータ6Aを駆動して電極基体2上に形成されたインク層を加熱して、インク層が含む溶媒を乾燥させることで絶縁層を形成する。ヒータ6Aは、インク層中の溶剤を除去するために十分な加熱が必要なため、搬送装置3の速度と溶剤の沸点などに依存して能力が決められる。そのため、ヒータ6Aでは、通常は最高到達温度が例えば200°C程度以下、好ましくは80°C~200°Cあるいは60°C~180°C程度の比較的高い温度となるように加熱を行ない、乾燥時間はインク層の厚さにも依存するが、通常0.5分~60分程度、より好ましくは1分~10分の加熱となることが好ましい。
【0028】
また、上記加熱中での架橋反応を促進してもよい。この場合、図1に示された電極印刷装置1においては、通常、ヒータ6Aによる加熱時間は数秒~数10秒程度と比較的短い。従って、ヒータ6Aによりインク層の硬化をほぼ完全に進行させる場合は、最高到達温度が例えば200°C程度以下、好ましくは80°C~200°Cあるいは60°C~180°C程度の比較的高い温度となるように加熱を行なう。
【0029】
続いて、電極印刷装置1の制御装置は、電極基体2上にまだ活物質層が形成されていない場合、ヘッド4Bなどによって活物質層作製用インクを電極基体2の表面に付与して活物質層を形成し、ヒータ6Bでそれを乾燥させる。ヒータ6Bは、活物質中の溶剤を除去するために十分な加熱が必要なため、搬送装置3の速度と溶剤の沸点などに依存して能力が決められる。そのため、ヒータ6Bでは、通常は最高到達温度が例えば200°C程度以下、好ましくは80°C~200°Cあるいは60°C~180°C程度の比較的高い温度となるように加熱を行ない、乾燥時間は活物質層の厚さにも依存するが、通常0.5分~60分程度、より好ましくは1分~10分の加熱となることが好ましい。
【0030】
その後、電極印刷装置1の制御装置は、電極基体2が長尺に連続した帯状の形態である場合は、電極基体2を巻き取り、電極印刷が完了する。または、電極基体2が一定サイズに裁断された板状の形態である場合は、電極基体2(薄膜電極)を収納する収納装置(スタッカ)へ排出し、電極印刷が完了する。
【0031】
インク層を加熱するための加熱手段は、通常熱源として知られ、制御可能なものであれば如何なる物でも構わないが、光源5A,5Bとして、例えば可視光に加えて赤外光を発生し得るものを使用した場合には、光照射と同時に加熱を行なうことができる。この場合は、硬化を促進させることができるのでより好ましい。
【0032】
インク層に光を照射すると、光源5A,5Bから発生する熱によってインク層が加熱されるため、加熱手段は、ヒータ6A,6Bのように必ずしも独立した部材として設ける必要はない。しかし、光源5A,5Bからの熱のみで常温で放置してインク層を完全に硬化させるには長時間を要する。従って、常温放置は、完全硬化までに充分に長い時間を確保できる用途に適用することが望まれる。例えば、翌日に配布される新聞広告のような印刷物は、硬化までに要する時間を一昼夜程度と長く確保することができるので、常温放置でも完全硬化させることができる。
【0033】
かかる光源の例として、例えば、ライトハンマーシリーズ(フュージョンUVシステムズ社製)などが例示される。また、日亜化学工業株式会社に代表されるLEDメーカーから1W以上の高輝度のUV-LEDやレーザーダイオードなどが販売されており、これらを線または平面上に並べることによって好適に用いることができる。また、活物質粉体が隙間に染み込んだりして、光が届きにくい場合には、電子線やX線照射装置を光源として用いることができ、例えば岩崎電気株式会社製の小型EB装置等が好適に用いられる。
【0034】
本実施形態の電極印刷装置1においては、異なる液体インク(例えば、樹脂層および無機層の両方の液体インク層)を付与する2つ以上のヘッドを設けて、多層同時印字や着弾点での液体インク同士の混合に適用することができる。
【0035】
また、上述の電極印刷装置1においては、ヘッド4Aあるいはヘッド4Bなどに対して電極基体2を相対移動させるために、所望の厚さの樹脂層および/または無機層を形成するために電極基体2を搬送する搬送装置3を設けて電極基体2を移動させているが、ヘッド4A,4Bなどを必要に応じて搬送方向Xに移動させてもよい。また、電極基体2とヘッド4Aあるいはヘッド4Bなどとの双方を移動させてもよい。
【0036】
さらに、本実施形態で説明した技術を適宜利用することにより、重ね印刷や比較的厚みのある樹脂層および/または無機層パターンを形成することも可能となる。即ち、電極基体の所定の領域内で液体インクの付与と、それにより得られるインク層の硬化とを複数回繰り返すことによって、数10μm以上の厚さを有する樹脂層および/または無機層などを形成することも可能である。
【0037】
電極活物質層が電極基体2上に形成されていて、ヘッド4Aあるいはヘッド4Bを用いて、樹脂層または無機層を形成する際に、電極印刷装置1の制御装置は、画像認識装置7を用いて、得られた電極活物質層の不具合をフィードバックして、ヘッド4Aあるいはヘッド4Bでそれぞれ付与する濃度、厚みまたは液体種を変更する等により、電極活物質層の不具合を活物質、樹脂層、無機層、および無機層をパターンニングする際に、良化させるものである。
【0038】
本実施形態において、電極印刷装置1で得られる薄膜電極は、その単体の厚さが典型的には1mm以下、より好ましくは500μm以下のものを対象としている。厚さの下限は、特に規定していないが、現在の製箔技術の限界から1μm程度である。上記厚さの薄膜電極を実現し提供することで、種々のデバイス(特にはリチウムイオン二次電池)に対して、性能が高くより軽量で小型化に寄与できる。
【0039】
ところで、電極印刷装置1においては、付与部であるヘッド4A,4Bから液体インク(液体組成物)を付与して電極基体2上にインク層または活物質層を形成する際に、電極基体2の搬送方向Xと交わる方向(電極基体2の幅方向)の端部を超えてインクを付与するフチなし印刷を実行する。ここで、本実施形態におけるフチなし印刷は、電極基体2の表面のみならず電極基体2の側面も印刷することを意味し、一般に表面全体に印刷するフチなし印刷とは異なるものである。そして、このようにフチなし印刷を実行すると、電極基体2の外に付与された液体インクによって搬送装置3を構成する搬送ベルト3aなどが汚れるという問題がある。
【0040】
そこで、本実施形態に係る電極印刷装置1においては、電極基体2の外に付与された液体インクを除去装置で除去するようにしている。これについて、以下に説明する。
【0041】
<除去装置>
以下、図2および図3を用いて除去装置の構成について説明する。図2は、除去装置を説明する図であり、図2(a)は概略側面図、図2(b)は概略平面図である。図3は、基体幅方向の説明図であり、図3(a)は搬送部の断面を搬送方向下流側から見た状態を示す図、図3(b)は図3(a)のA部の拡大図である。
【0042】
除去装置8は、図2に示すように、例えば、搬送ベルト3aの搬送方向Xの下流側においてベルト支持ローラ3bの近傍に配置されている。除去装置8は、搬送ベルト3a上に設けられた液体付着部材10上の液体インクLを液体付着部材10から除去するための除去部材を備える。除去部材については特に制限しないが、例えば、液体付着部材10上のインクLをブラシで掻きとり、かつ、吸引することにより、液体付着部材10に付与された液体インクLを除去する。なお、液体付着部材10上の液体インクLは、上述のフチなし印刷の実行によってヘッド4A,4Bから付与された液体インクである。
【0043】
液体付着部材10は、長尺に連続した帯状の形態をしており、具体的には貼り剥がしの可能なテープである。液体付着部材10は、搬送装置3を構成する搬送ベルト3a上の領域であって、電極基体2の搬送面と平行かつ搬送方向Xと交わる方向(電極基体2の幅方向)の片側端部(電極基体2の外に液体インクLが付与される位置)周辺の領域を覆うように設けられる。電極基体2の片側端部と搬送ベルト3aとの間には液体付着部材10の一部が介在するため、液体付着部材10の厚さ分、電極基体2の片側端部の位置が高くなり、電極基体2は、図3に示されるように、搬送ベルト3aの搬送面に対して傾斜することになる。
【0044】
図3において、電極基体2と液体付着部材10との隙間tが小さい場合、液体付着部材10上に付着した液体インクLが毛管現象により引き込まれ、電極基体2の裏面に液体付着部材10上に付着した液体インクLが回り込んでしまう。電極基体2の裏面に液体インクLが回り込んでしまうと、搬送ベルト3aや周辺の部品を汚してしまうことになる。そこで、本実施形態においては、電極基体2の端部より液体付着部材10に垂直に下した距離(隙間t)の中で最も長い距離は、30μm以上とする。このようにすることで、毛管現象によって液体付着部材10上に付着した液体インクLが電極基体2の裏面に回り込むことを防ぐことができる。
【0045】
液体付着部材10は、例えば、非浸透性材料で形成される。なお、非浸透性とは、液体インクLが液体付着部材10の内部に浸透せず、かつ、液体インクLが液体付着部材10の裏面に回らない特性をいう。具体的には、液体付着部材10は、例えば、フッ素樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)樹脂、PI(ポリイミド)フィルム等の合成樹脂で形成される。このように、液体付着部材10を非浸透性材料で形成することにより、電極基体2の外に付与された液体インクLが液体付着部材10に浸透しないので、搬送ベルト3aにおける電極基体2の搬送面を汚すことはない。
【0046】
なお、液体付着部材10は、搬送装置3における搬送方向Xの上流側に設けられる、後述の回収装置300により、搬送ベルト3aから剥して回収することが可能である。
【0047】
<回収装置の構成>
次に、図4を用いて回収装置の構成について説明する。図4は、実施形態に係る回収装置の一例を示す説明図であり、図4(a)は回収装置の側面図、図4(b)は図4(a)のB方向矢視側面図である。
【0048】
搬送ベルト3a上に設けられた液体付着部材10を回収するための回収装置300は、搬送ベルト3aの搬送方向上流側に設けられたベルト支持ローラ3cに対向して設けられている。ベルト支持ローラ3cは、搬送部(搬送装置3)を構成するローラの一例である。回収装置300は、回転部材の一例であるローラ310と、中継ギヤ320と、巻取部材の一例であるボビン330と、第一リンク341、第二リンク342、第三リンク343、第四リンク344、偏心カム350およびバネ360からなるリンク機構とを備える。
【0049】
ローラ310は、ローラ軸311を軸にして回転可能となるように第一リンク341に支持されている。また、ローラ軸311上にはローラギヤ312が設けられている。ローラ310とローラギヤ312は一体化されており、ローラ310が回転するとローラギヤ312も一緒に回転する。
【0050】
中継ギヤ320は、中継ギヤ軸321を軸にして回転可能となるようにベース板370に支持されている。中継ギヤ320は、ローラ310のローラギヤ312と噛み合うように設置される。また、中継ギヤ軸321は、第一リンク341を支持する軸でもあり、第一リンク341は、中継ギヤ軸321を軸として回動可能となるように設けられている。
【0051】
ボビン330は、ボビン軸331を軸にして回転可能となるように第一リンク341に支持されている。また、ボビン軸331上にはボビンギヤ332が設けられている。ボビンギヤ332は、中継ギヤ320と噛み合うように設置される。ボビン330とボビンギヤ332は一体化されており、ボビンギヤ332が回転するとボビン330も一緒に回転する。ここで、ローラギヤ312、中継ギヤ320、およびボビンギヤ332は、動力伝達部材の一例である。
【0052】
第一リンク341は、ローラ軸311を介してローラ310およびローラギヤ312を回転可能に支持するとともに、ボビン軸331を介してボビン330およびボビンギヤ332を回転可能に支持する。また、第一リンク341は、中継ギヤ軸321を軸としてベース板370に対して回動可能に支持される。
【0053】
第二リンク342は、一方が接続軸342aによって第一リンク341に接続され、もう一方が接続軸343aによって第三リンク343に接続されている。
【0054】
第三リンク343は、接続軸343aによって第二リンク342に接続されるとともに、一部が第四リンク344と接するように設けられている。
【0055】
第四リンク344は、第四リンク軸344aを軸としてベース板370に対して回動可能に支持されるとともに、一部が第三リンク343と接するように設けられている。
【0056】
偏心カム350は、カム軸351を軸として回転可能にベース板370に支持されている。偏心カム350は、第四リンク344と接触するカム面を備えている。なお、カム軸351の軸方向一端には、操作者が偏心カム350を回転させるための操作ハンドルが設けられる。
【0057】
バネ360は、第三リンク343と第四リンク344との間に介在して、第三リンク343と第四リンク344とを引っ張る方向の力を付与し、第四リンク344を偏心カム350のカム面に当接させる方向に付勢する。
【0058】
なお、本実施形態では、回収装置300を搬送ベルト3aの搬送方向上流側に設けられたベルト支持ローラ3cに対向して設ける例に基づいて説明したが、回収装置300は搬送方向下流側に設けられたベルト支持ローラ3bに対向して設ける構成としてもよい。
【0059】
<回収装置の動作>
次に、図5を用いて回収装置の動作について説明する。図5は、回収装置の動作の一例を示す説明図であり、図5(a)は初期位置状態、図5(b)は回収準備状態、図5(c)は回収開始状態を示す。
【0060】
搬送ベルト3a上に設けられた液体付着部材10を回収装置300に回収する際は、図5(a)に示された初期位置状態において、搬送ベルト3aに貼られている液体付着部材10をボビン330にセットする。液体付着部材10のボビン330へのセットは、操作者の手作業によって行われる。つまり、操作者は液体付着部材10の一端を搬送ベルト3aから剥し、液体付着部材10の一端を、例えば、ボビン330に設けられたスリットに差し込む。
【0061】
続いて、操作者は、カム軸351を回転させて偏心カム350を図5(b)の位置に移動させる。偏心カム350の図5(b)の位置への移動に伴い、第四リンク344は第四リンク軸344aを軸として下方向(反時計まわり方向)に回動する。すると、第四リンク344の変位は、第三リンク343および第二リンク342を介して第一リンク341に伝達される。
【0062】
第一リンク341は、第二リンク342との接続軸342aにおいて、図5中、左方向への力を受け、これにより第一リンク341は、中継ギヤ軸321を軸として上方向(時計まわり方向)に回動する。その結果、図5(b)に示されるように、ローラ310が、搬送ベルト3a上に設けられた液体付着部材10を介して搬送ベルト3aと接触した状態となる。
【0063】
ローラ310の接触状態を安定させるために、ローラ310は搬送装置3のベルト支持ローラ3cと対向するように液体付着部材10と接触させる。上述のようにローラ310のローラ軸311上には、ローラ310とローラギヤ312が備えられており、このうち液体付着部材10にはローラ310が接触し、中継ギヤ320にはローラギヤ312が噛み合って接触している。また、ボビン330のボビン軸331上には、ボビン330とボビンギヤ332が備えられており、このうち液体付着部材10にはボビン330が接触し、中継ギヤ320にはボビンギヤ332が噛み合って接触している。
【0064】
図5(b)の状態から搬送ベルト3aの駆動を開始させると、搬送ベルト3aの動力は液体付着部材10を介してローラ310に伝わり、これによりローラ310は連れ回り(従動回転)して時計まわり方向に回転する。ローラ310の回転は、ローラ310と同軸上に設けられたローラギヤ312によって中継ギヤ320に伝達され、中継ギヤ320を反時計まわり方向に回転させる。
【0065】
さらに、中継ギヤ320の回転は、ボビンギヤ332に伝達され、ボビンギヤ332と同軸上に設けられたボビン330を時計まわり方向に回転させる。このようにしてボビン330が回転することで、液体付着部材10はボビン330に巻き取られて回収される。搬送ベルト3a上の液体付着部材10がすべてボビン330に回収されたならば、操作者は、カム軸351を回転させて偏心カム350を図5(a)の位置に移動させ、ローラ310を搬送ベルト3aに対して離間させる。
【0066】
なお、実施形態において、動力伝達部材は、ローラギヤ312、中継ギヤ320およびボビンギヤ332からなる構成に限るものではない。例えば、中継ギヤ320を介さずにローラギヤ312の回転をボビンギヤ332にダイレクトに伝達する構成としてもよい。しかしながら、本実施形態のように中継ギヤ320を介在させてローラ310とボビン330の回転方向を同方向に揃えることで、液体インクを付与された側をボビン軸331(巻き取り軸)に対して内側にして液体付着部材10をボビン330に巻き取らせることが可能になる。これにより、操作者が、液体付着部材10を回収したボビン330を回収装置300から取り外す場合に、液体インクに触れて手などを汚すような不具合を低減することができる。
【0067】
また、実施形態において、リンク機構は、第一リンク341、第二リンク342、第三リンク343、第四リンク344、偏心カム350およびバネ360からなる構成に限るものではない。リンク機構は、搬送ベルト3a上に設けられた液体付着部材10に対してローラ310を接触/離間させることができる構成であればよく、装置構成に応じて適宜変更されてよい。ここで、上記リンク機構は、液体付着部材と、回転部材と、の間の接触及び離間を切り替える接離機構の一例である。
【0068】
上述のように本実施形態は、搬送装置3により搬送される電極基体2とともにヘッド4A,4Bにより液体インクを付与される搬送装置3上に設けられた液体付着部材10を、搬送装置3から回収する回収装置300であって、液体付着部材10を搬送装置3から巻き取るボビン330を備え、搬送装置3とボビン330とで動力が連動している。
【0069】
また、上述のように本実施形態は、更に、液体付着部材10を介して搬送装置3と接触し、搬送装置3の移動により従動回転するローラ310を備える。
【0070】
また、上述のように、更に、ローラ310の回転をボビン330に伝達し、液体付着部材10を巻き取る方向へボビン330を回転させるローラギヤ312、中継ギヤ320、およびボビンギヤ332を備える。
【0071】
これらにより、搬送装置3の搬送力を液体付着部材10の巻き取り(回収)にも利用することが可能になり、回収装置300のための専用の駆動源を設ける必要がなくなり、簡単な構成で液体付着部材10を回収することができる。なお、回収装置300のための専用の駆動源を設けてもよいが、搬送装置3の搬送力を液体付着部材10の巻き取り(回収)にも利用しているため、大きな駆動力を得るための駆動源を設ける必要がなくなり、簡単な構成で液体付着部材10を回収することができる。
【0072】
また、上述のように、ローラ310が、搬送装置3に設けられたベルト支持ローラ3b(またはベルト支持ローラ3c)に対向して接触可能なよう設けられている。
【0073】
また、上述のように、液体付着部材10に対してローラ310を接離させるリンク機構(第一リンク341、第二リンク342、第三リンク343、第四リンク344、偏心カム350およびバネ360等)を備える。
【0074】
これらにより、ローラ310の液体付着部材10に対する接触状態が安定し、搬送ベルト3aからの動力を動力伝達部材(ローラギヤ312、中継ギヤ320、ボビンギヤ332)に確実に伝達することができる。
【0075】
さらに、上述のように、ボビン330は、液体付着部材10における液体インクを付与された側を巻き取り軸(ボビン軸331)に対して内側にして液体付着部材10を巻き取る。
【0076】
これにより、液体付着部材回収後のボビン330を回収装置300から取り外す場合などに、操作者が液体インクに触れて手などを汚すような不具合を低減することができる。
【0077】
ところで、図5(c)の状態において液体付着部材10の巻き取りが進んで行くと、ボビン330の径が大きくなり、ボビン330の1回転あたりの液体付着部材10の巻取量が変動してしまうという問題が生じる。この問題について図6を用いて説明する。
【0078】
図6は、回収時における液体付着部材の挙動を説明する図である。
【0079】
ボビン330の1回転(単位時間)あたりの液体付着部材10の巻取量が増えると、図6(a)に示されるように、液体付着部材10の剥離点Pの位置が次第にローラ310に近づく側へ移動する。そして、最終的に剥離点がローラ310に突き当たり、ボビン330は液体付着部材10を巻き取ることができなくなってしまう。巻き取りができない状態で無理に液体付着部材10を巻き取ろうとすると、液体付着部材10に負荷がかかり液体付着部材10が破断する恐れがある。
【0080】
そこで、ボビン330による単位時間当たりの液体付着部材10の巻取量が、搬送装置3(搬送ベルト3a)による単位時間当たりの液体付着部材10の搬送量を超え、液体付着部材10を巻き取ることができなくなった場合は、ローラ310をスリップさせる。つまり、ローラ310を液体付着部材10に対してスリップさせ、瞬間的に巻き取り動作が行われなくなるようにしている。
【0081】
ローラ310の安定したスリップ状態を実現するため、本実施形態では、液体付着部材10に、例えば、PTFEなどの摺動性の高い材質からなるテープを採用している。また、ローラ310の少なくともローラ表面にはシリコンゴムを採用している。ローラ310がスリップし、瞬間的に巻き取り動作が停止することで、図6(b)に示されるように、剥離点がローラ310から離れる側へ戻り、負荷状態が解除されるため、再び液体付着部材10の巻き取りが可能となる。
【0082】
上述のように本実施形態において、ローラ310は、ボビン330による単位時間当たりの液体付着部材10の巻取量が、搬送装置3による単位時間当たりの液体付着部材10の搬送量を超えた場合に、液体付着部材10との間でスリップを生じさせる材質からなる。
【0083】
これにより、ボビン330の径の増大に伴い液体付着部材10の巻き取りができなくなる問題を解消することができる。
【0084】
<変形例>
図7を用いて変形例について説明する。図7は、液体付着部材の貼付・回収切替装置の概略構成を示す平面図である。
【0085】
上述の回収装置300は、搬送ベルト3a上に液体付着部材10を貼り付けるための貼付装置100とともに電極印刷装置1に搭載してもよい。その場合、貼付装置100が搬送ベルト3aに液体付着部材10を貼り付ける貼付位置と、回収装置300が搬送ベルト3aから液体付着部材10を回収する回収位置とを操作者が簡単に切り替えられる構成であることが望ましい。図7に示された変形例では、電極印刷装置1に貼付・回収切替装置400を備えることで、液体付着部材10の貼付位置と回収位置の切り替えを簡単に行えるようにしている。貼付・回収切替装置400は、貼付・回収切替手段の一例である。
【0086】
貼付・回収切替装置400は、ガイドシャフト401a,401bと、位置調整部材402と、リンク機構403と、操作ノブ404を備える。ガイドシャフト401a,401bは、搬送ベルト3aの搬送方向Xと交わる方向Yに延びており、例えば、電極印刷装置1の筐体などに固定されている。貼付装置100、回収装置300および位置調整部材402は、ガイドシャフト401a,401bに対して摺動可能に設けられている。そのうち、位置調整部材402は、ガイドシャフト401a,401b上の任意の位置での固定も可能である。
【0087】
貼付装置100と位置調整部材402とはリンク機構403を介して接続されており、さらに貼付装置100と回収装置300とは連結されている。リンク機構403の一端には操作者がリンク機構403を動かすための操作ノブ404が設けられている。
【0088】
上記構成において、位置調整部材402をガイドシャフト401a,401bに固定し、操作者が操作ノブ404を図7(a)の位置から図7(b)の位置に移動させると、貼付装置100および回収装置300は位置調整部材402に近づく側へ移動する。この移動により、搬送ベルト3aへの液体付着部材10の貼付・回収位置に対する、貼付装置100および回収装置300の切り替えが行われる。
【0089】
搬送ベルト3aへの液体付着部材10の貼付・回収位置は、常に同じ位置とは限らず、使用する電極基体2の幅に応じて変わる。よって、貼付・回収位置を変える必要が生じた場合は、位置調整部材402の固定を一旦解除して、貼付装置100を変更後の貼付・回収位置に合わせた上で、位置調整部材402を再度固定する。
【0090】
上記構成によれば、回収装置300と貼付装置100とで個別に位置調整する必要がないため、操作者は簡単に貼付・回収位置を切り替えることができる。また、貼付位置から回収位置に切り替えた際に狙いの回収位置からの位置ズレを低減することができる。なお、上記構成ではリンク機構403を貼付装置100と接続させたが、回収装置300に接続させた構成としてもよい。
【0091】
上述のように本実施形態における電極印刷装置1は、電極基体2を搬送する搬送装置3と、搬送装置3上に設けられる液体付着部材10と、電極基体2と液体付着部材10に対して液体インクを付与するヘッド4A,4Bと、上述の回収装置300と、を備える。
【0092】
また、上述のように、搬送装置3に液体付着部材10を貼り付ける貼付装置100を備え、予め設定された貼付・回収位置に対して、回収装置300による回収動作と貼付装置100による貼付動作とが切り替え可能に設けられている。
【0093】
また、上述のように、貼付・回収位置に対して貼付装置100および回収装置300を切り替える貼付・回収切替装置400を備える。
【0094】
これらにより、液体付着部材10の貼付位置と回収位置とを簡単に切り替えることが可能な電極印刷装置1を提供することができる。
【0095】
<適用例>
次に、図8を用いて適用例について説明する。図8は、実施形態に係る電極製造装置および電気化学素子製造装置を模式的に示した図である。
【0096】
[電極製造装置]
図8に示されるように、上述の電極印刷装置1の後段に、後処理装置20を備えることで電極製造装置50としてもよい。後処理装置20には、電極印刷装置1で付与された液体を乾燥させる乾燥装置、薄膜電極をプレスする手段としてのプレスロール、薄膜電極を切り分けるスリット刃やレーザなどのカット機構などが含まれる。
【0097】
[電気化学素子製造装置]
また、図8に示されるように、上述の電極製造装置50の後段に、更に、電気化学素子化装置30を備えることで電気化学素子製造装置60としてもよい。電気化学素子化装置60には、例えば、上述の電極製造装置50で製造された電極を積層または巻回する装置や、パッケージングする装置などが含まれる。
【0098】
以上説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0099】
[第1態様]
第1態様は、搬送部(例えば搬送装置3)により搬送される基体(例えば電極基体2)とともに付与部(例えばヘッド4A,4B)により液体組成物(例えば液体インク)を付与される前記搬送部上に設けられた液体付着部材(例えば液体付着部材10)を、前記搬送部から回収する回収装置(例えば回収装置300)であって、前記液体付着部材を前記搬送部から巻き取る巻取部材(例えばボビン330)を備え、前記搬送部と前記巻取部材とで動力が連動していることを特徴とするものである。
【0100】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、更に、前記液体付着部材を介して前記搬送部と接触し、前記搬送部の移動により従動回転する回転部材(例えばローラ310)を備えることを特徴とするものである。
【0101】
[第3態様]
第3態様は、第2態様において、更に、前記回転部材の回転を前記巻取部材に伝達し、前記液体付着部材を巻き取る方向へ前記巻取部材を回転させる動力伝達部材(例えばローラギヤ312、中継ギヤ320、ボビンギヤ332)を備えることを特徴とするものである。
【0102】
[第4態様]
第4態様は、第2態様または第3態様において、前記回転部材が、前記搬送部に設けられたローラ(例えばベルト支持ローラ3c、ベルト支持ローラ3b)に対向して接触可能なよう設けられていることを特徴とするものである。
【0103】
[第5態様]
第5態様は、第2態様乃至第4態様のいずれかにおいて、前記液体付着部材に対して前記回転部材を接離させる接離機構(例えば、第一リンク341、第二リンク342、第三リンク343、第四リンク344、偏心カム350、バネ360)を備えることを特徴とするものである。
【0104】
[第6態様]
第6態様は、第1態様乃至第5態様のいずれかにおいて、前記巻取部材は、前記液体付着部材における前記液体組成物を付与された側を巻き取り軸に対して内側にして前記液体付着部材を巻き取ることを特徴とするものである。
【0105】
[第7態様]
第7態様は、第2態様乃至第6態様のいずれかにおいて、前記回転部材は、前記巻取部材による単位時間当たりの前記液体付着部材の巻取量が、前記搬送部による単位時間当たりの前記液体付着部材の搬送量を超えた場合に、前記液体付着部材との間でスリップを生じさせる材質からなることを特徴とするものである。
【0106】
[第8態様]
第8態様は、基体(例えば電極基体2)を搬送する搬送部(例えば搬送装置3)と、前記搬送部上に設けられる液体付着部材(例えば液体付着部材10)と、前記基体と前記液体付着部材に対して液体組成物(例えば液体インク)を付与する付与部(例えばヘッド4A,4B)と、第1態様乃至第7態様のいずれかに係る回収装置(例えば回収装置300)と、を備えることを特徴とする液体付与装置(例えば電極印刷装置1)である。
【0107】
[第9態様]
第9態様は、第8態様において、前記搬送部に前記液体付着部材を貼り付ける貼付装置(例えば貼付装置100)を備え、予め設定された貼付・回収位置に対して、前記回収装置による回収動作と前記貼付装置による貼付動作とが切り替え可能に設けられていることを特徴とするものである。
【0108】
[第10態様]
第10態様は、第9態様において、前記貼付・回収位置に対して前記貼付装置および前記回収装置を切り替える貼付・回収切替手段(例えば貼付・回収切替装置400)を備えることを特徴とするものである。
【0109】
[第11態様]
第11態様は、第8態様に記載の液体付与装置を備え、前記基体はセパレータであることを特徴とするものである。
【0110】
[第12態様]
第12態様は、第8態様に記載の液体付与装置(例えば電極印刷装置1)と、前記液体付与装置の後段に設けられる後処理装置(例えば後処理装置20)とを備え、前記基体は電極基体であることを特徴とする電極製造装置(例えば電極製造装置50)である。
【0111】
[第13態様]
第13態様は、第12態様に記載の電極製造装置(例えば電極製造装置50)と、前記電極製造装置の後段に設けられる電気化学素子化装置(例えば電気化学素子化装置30)とを備えることを特徴とする電気化学素子製造装置(例えば電気化学素子製造装置60)である。
【0112】
[第14態様]
第14態様は、基体(例えば電極基体2)を搬送する搬送部(例えば搬送装置3)上に設けられ、前記基体とともに付与部(例えばヘッド4A,4B)により液体組成物(例えば液体インク)を付与される液体付着部材(例えば液体付着部材10)を、前記搬送部から回収する回収方法であって、前記液体付着部材を前記搬送部から巻き取る巻取部材(例えばボビン330)を、前記搬送部の動力に連動して回転させて、前記液体付着部材を前記巻取部材に巻き取る巻取工程を含むことを特徴とするものである。
【符号の説明】
【0113】
1 電極印刷装置
2 電極基体
3 搬送装置
3a 搬送ベルト
3b,3c ベルト支持ローラ
4A,4B ヘッド
5A,5B 光源
6A,6B ヒータ
7 画像認識装置
8 除去装置
10 液体付着部材
20 後処理装置
30 電気化学素子化装置
50 電極製造装置
60 電気化学素子製造装置
100 貼付装置
300 回収装置
310 ローラ
312 ローラギヤ
320 中継ギヤ
330 ボビン
332 ボビンギヤ
341 第一リンク
342 第二リンク
343 第三リンク
344 第四リンク
350 偏心カム
360 バネ
370 ベース板
400 貼付・回収切替装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8