(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107749
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】クリーニング装置、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20240802BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
G03G21/00 314
G03G15/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011838
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207181
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 朋
(72)【発明者】
【氏名】後藤 優
(72)【発明者】
【氏名】小暮 成一
(72)【発明者】
【氏名】菊地 裕
(72)【発明者】
【氏名】八田 浩孝
(72)【発明者】
【氏名】木村 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】石塚 脩之
(72)【発明者】
【氏名】秋山 拓也
(72)【発明者】
【氏名】青木 悠貴
【テーマコード(参考)】
2H134
2H200
【Fターム(参考)】
2H134GA06
2H134GB02
2H134HB01
2H134HB03
2H134HB09
2H134HB12
2H134HB16
2H134HB18
2H134KA12
2H134KA30
2H134KB04
2H134KB05
2H134KC01
2H200GA12
2H200JC03
2H200JC07
2H200JC12
2H200LB03
2H200LB08
2H200LB12
2H200LB17
2H200LB39
2H200PA05
2H200PA19
2H200PB14
2H200PB27
2H200PB28
(57)【要約】
【課題】本発明では、トナー像担持体上の未転写残トナーを適切に取り除くことを課題とする。
【解決手段】バイアスが印加され、中間転写体10に当接するクリーニング部材521,522,523を有するクリーニング装置520であって、画像形成装置による作像動作開始時に、未転写トナー用のバイアスをクリーニング部材521,522,523に印加することを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイアスが印加され、トナー像担持体に当接するクリーニング部材を有するクリーニング装置であって、
画像形成装置による作像動作開始時に、未転写トナー用のバイアスを前記クリーニング部材に印加することを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
複数のクリーニング部材を有する請求項1記載のクリーニング装置であって、
前記クリーニング部材の抵抗値に応じて、異なるバイアスを印加するクリーニング装置。
【請求項3】
環境温度あるいは湿度の少なくともいずれか一方に応じて、前記クリーニング部材に印加されるバイアスを変化させる請求項1記載のクリーニング装置。
【請求項4】
前記クリーニング部材は回転可能に設けられ、
前記クリーニング部材の線速あるいは前記トナー像担持体の線速の少なくともいずれか一方に応じて、前記クリーニング部材に印加されるバイアスを変化させる請求項1記載のクリーニング装置。
【請求項5】
請求項1から4いずれか1項に記載のクリーニング装置と、
前記トナー像担持体とを備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニング装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トナー像担持体としての中間転写ベルトの表面に対して、バイアスを印加したクリーニング部材を当接させ、静電的な力により中間転写ベルト上の転写残トナーを取り除くクリーニング装置が存在する。
【0003】
例えば特許文献1(特開2016-75949号公報)では、三つのクリーニング部材を有するクリーニング装置の構成が開示されている。第1クリーニング部材と第2クリーニング部材には異なる極性の電圧が印加され、それぞれ異なる極性のトナーを回収できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像形成装置内でジャム等が生じてトナー像担持体上に未転写トナーが残った場合には、通常よりもトナーの量が多く、帯電量も異なるため、クリーニング装置によりトナーを十分に取り除くことができないという問題があった。
【0005】
本発明では、トナー像担持体上の未転写残トナーを適切に取り除くことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は、バイアスが印加され、トナー像担持体に当接するクリーニング部材を有するクリーニング装置であって、画像形成装置による作像動作開始時に、未転写トナー用のバイアスを前記クリーニング部材に印加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、トナー像担持体上の未転写残トナーを適切に取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】中間転写ユニット周辺の構成を示す概略構成図である。
【
図3】トナーの形状係数を説明するために模式的に表した図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るクリーニング装置の概略構成図である。
【
図6】クリーニング装置によるクリーニング後の残トナー量を示す実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
図1は、タンデム型中間転写方式を採用した画像形成装置の概略構成図であり、
図2は中間転写ユニットを含む要部の概略構成図である。
図2に矢印Aで示す方向が用紙の搬送方向である。
図1の画像形成装置は、プリンタ部100と、給紙部200と、スキャナ部300と、原稿搬送部400とを備えている。スキャナ部300はプリンタ部100上に取り付けられ、スキャナ部300の上に原稿自動搬送装置(ADF)からなる原稿搬送部400が取り付けられている。
【0011】
スキャナ部300は、コンタクトガラス32上に載置された原稿の画像情報を読取センサー36で読み取り、読み取った画像情報を制御部に送る。制御部は、スキャナ部300から受け取った画像情報に基づき、プリンタ部100の露光装置21内に配置されたレーザーや発光ダイオード(LED)等を制御してドラム状の4つの感光体101、102、103、104に向けてレーザー書込光Lを照射させる。この照射により、感光体の表面には静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経由してトナー像に現像される。
【0012】
プリンタ部100は、露光装置21の他、1次転写ローラ(501、502、503、504)、2次転写装置600、定着装置25、排紙装置、トナー供給装置、トナー供給装置等を備えている。
【0013】
像担持体として並列配置された4つのドラム状の感光体(101、102、103、104)は、それぞれ、図中反時計方向に回転可能に構成されている。各感光体(101、102、103、104)の回りには、各感光体上に各色トナー像を形成するトナー像形成手段が配置されている。なお、各トナー像形成手段は、扱うトナー(色材:例えば、イエロー・マゼンタ・シアン・ブラック)の色が異なる以外は、同じ構成である。
【0014】
感光体の周囲には、その表面を除電する除電装置、感光体の表面を一様に帯電する帯電装置(201、202、203、204)、形成された静電潜像を現像する現像装置(401、402、403、404)が順に配置される。また、トナー像転写後の感光体表面をクリーニングする感光体クリーニング手段(301、302、303、304)が配置される。
【0015】
感光体(101、102、103、104)の下方には、中間転写ユニット500が配置されている。中間転写ユニット500では、トナー像担持体としてのベルト状の中間転写体10が、駆動ローラと複数の支持ローラ(511、512、513、514、515、516、517)とに張架されて、図中時計回りに回転駆動される。
【0016】
中間転写体10を挟んで感光体(101、102、103、104)に対向する位置には、各感光体上に形成されたトナー像を中間転写体10に転写する1次転写ローラ(501、502、503、504)が配設される。また、中間転写体10上に残留する残留トナーを除去する本発明に係るクリーニング装置520が配設されている。クリーニング装置520については後述する。
【0017】
1次転写ローラ(501、502、503、504)よりも下流で、中間転写体10を挟んで2次転写対向ローラ512に対向する位置には、2次転写装置600が配設されている。なお、2次転写装置600は、
図2に示すように2次転写ローラからなるが、数本の支持ローラと駆動ローラにより掛け渡される2次転写ベルトからなるものであってもよい。
【0018】
給紙部200は、プリンタ部100の下方に配置された自動給紙部と、プリンタ部100の側面に配置された手差し部とを有している。そして、自動給紙部は、ペーパーバンク43内に多段に配置された2つの給紙カセット44、給紙カセットから記録媒体である用紙を繰り出す給紙ローラ42、繰り出した転写紙を分離して給紙路46に送り出す分離ローラ45等を有している。また、プリンタ部100の給紙路48に転写紙を搬送する搬送ローラ47等も有している。
【0019】
一方、手差し部は、手差しトレイ51、手差しトレイ51上の転写紙を手差し給紙路53に向けて一枚ずつ分離する分離ローラ52等を有している。プリンタ部100の給紙路48の末端付近には、レジストローラ対49が配置されている。このレジストローラ対49は、給紙カセット44や手差しトレイ51から送られてくる転写紙を受け入れた後、所定のタイミングで中間転写体10と2次転写装置600との間に形成される2次転写ニップに送る。
【0020】
操作者は、カラー画像のコピーをとるときに、原稿搬送部400の原稿台30上に原稿をセットする。あるいは、原稿搬送部400を開いてスキャナ部300のコンタクトガラス32上に原稿をセットした後、原稿搬送部400を閉じて原稿を押さえる。そして、図示しないスタートスイッチを押す。すると、原稿搬送部400に原稿がセットされている場合には原稿がコンタクトガラス32上に搬送された後に、コンタクトガラス32上に原稿がセットされている場合には直ちに、スキャナ部300が駆動を開始する。そして、第1走行体33および第2走行体34が走行し、第1走行体33の光源から発せられる光が原稿面で反射した後、第2走行体34に向かう。さらに、第2走行体34のミラーで反射してから結像レンズ35を経由して読取センサー36に至り、画像情報として読み取られる。
【0021】
このようにして画像情報が読み取られると、プリンタ部100は、駆動モータで支持ローラの1つを回転駆動させながら他の支持ローラを従動回転させる。そして、これらローラに張架される中間転写体10を無端移動させる。さらに、上述のようなレーザー書き込みや、後述する現像プロセスを実施する。そして、感光体を回転させながら画像を形成する。これらは、感光体と中間転写体10とが当接する1次転写ニップで順次重ね合わせて静電転写されて4色重ね合わせトナー像になる。
【0022】
一方、給紙部200は、画像情報に応じたサイズの転写紙を給紙すべく、3つの給紙ローラのうちのいずれか1つを作動させて、転写紙をプリンタ部100の給紙路48に導く。給紙路48内に進入した転写紙は、レジストローラ対49に挟み込まれて一時停止した後、タイミングを合わせて、中間転写体10と2次転写装置600との接触部である2次転写ニップに送り込まれる。すると、2次転写ニップにおいて、中間転写体10上のトナー像と転写紙Pとが同期して密着する。そして、ニップに形成されている転写用電界やニップ圧などの影響によってトナー像が転写紙P上に2次転写される。
【0023】
2次転写ニップを通過した転写紙は定着装置25に送り込まれる。そして、定着装置25の加圧ローラ27による加圧力と、加熱ベルトによる加熱との作用によって画像が定着せしめられた後、排出ローラ56を経てプリンタ部100の側面に設けられた排紙トレイ57上に排出される。なお、2次転写装置および定着装置25の下には、転写紙Pの両面に画像を記録すべく転写紙Pを反転する反転装置を備える態様とすることもできる。
【0024】
中間転写体10としては、PVDF(フッ化ビニルデン)、ETFE(エチレン-四フッ化エチレン共重合体)、PI(ポリイミド)、PC(ポリカーボネート)等の材料を単層又は複数層に構成し、カーボンブラック等の導電性材料を分散させたものを用いることができる。中間転写体10の製造方法としては注型法、遠心成形法等が挙げられ、必要に応じてその表面を研磨しても良い。なお、必要に応じて中間転写体10の表面に離型層をコートすることもできる。その際、コートに用いる材料として、ETFE(エチレン-四フッ化エチレン共重合体)、PTFE(ポリ四フッ化エチレン)、PVDF(フッ化ビニルデン)、PEA(パーフルオロアルコキシフッ素樹脂)、FEP(四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体)、PVF(フッ化ビニル)、等のフッ素樹脂を使用できるが、これに限定されるものではない。
【0025】
中間転写体10は、体積抵抗率が108~1012Ωcm、かつ表面抵抗率が109~1013Ωcmの範囲となるように調整されていることが好ましい。中間転写体10の体積抵抗率が上述した範囲を超えると、転写に必要なバイアスが高くなるため、電源コストの増大を招くため好ましくない。また、転写工程、転写紙剥離工程などで中間転写体10の帯電電位が高くなり、かつ自己放電が困難になるため除電手段を設ける必要が生じる。一方、中間転写体10の体積抵抗率および表面抵抗率が上記範囲を下回ると、帯電電位の減衰が早くなるため自己放電による除電には有利となるが、転写時の電流が面方向に流れるためトナー飛び散りが発生してしまう。なお、上述の体積抵抗率および表面抵抗率は、高抵抗抵抗率計(三菱化学社製:ハイレスタIP)にHRSプローブ(内側電極直径5.9mm,リング電極内径11mm)を接続し、中間転写体10の表裏に100V(表面抵抗率は500V)の電圧を印加して10秒後の測定値である。
【0026】
1次転写ローラ(501、502、503、504)は、例えば、発泡樹脂材を金属(鉄、SUS、AI等)製の芯金に塗布したものが挙げられる。発泡樹脂材の肉厚としては2mm~10mmが挙げられるが、これに限定されない。
【0027】
次に、本実施形態の画像形成装置に好適に使用されるトナーについて説明する。
トナーの体積平均粒径は4~10μmが好ましい。体積平均粒径が4μmよりも小粒径の場合には現像時に地汚れの原因となったり、流動性が悪化して凝集しやすくなり、中抜け発生の原因となったりする問題がある。一方、10μmよりも大粒径の場合にはトナー飛び散りや、解像度の悪化により高精細な画像を得ることができないという問題がある。以下、本実施形態の画像形成装置において、体積平均粒径が6.5μmのトナーを使用した例について説明する。
【0028】
トナーの形状係数SF-1は100~180、形状係数SF-2は100~180の範囲にあることが好ましい。
【0029】
図3(A)は、形状係数SF-1を説明するためにトナーの形状を模式的に表した図である。形状係数SF-1は、トナー形状の丸さの割合を示すものであり、下記式(1)で表される。トナーを2次元平面に投影してできる形状の最大長MXLNGの二乗を図形面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。
SF-1={(MXLNG)2/AREA}×(100π)/4・・・式(1)
SF-1の値が100の場合トナーの形状は真球となり、SF-1の値が大きくなるほど不定形になる。
【0030】
図3(B)は、形状係数SF-2を説明するためにトナーの形状を模式的に表した図である。
形状係数SF-2は、トナー形状の凹凸の割合を示すものであり、下記式(2)で表される。トナーを2次元平面に投影してできる図形の周長PERIの二乗を図形面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。
SF-2={(PERI)2/AREA}×100/(4π)・・・式(2)
SF-2の値が100の場合トナー表面に凹凸が存在しなくなり、SF-2の値が大きくなるほどトナー表面の凹凸が顕著になる。
【0031】
形状係数の測定は、具体的には、走査型電子顕微鏡(S-800:日立製作所製)でトナーの写真を撮り、これを画像解析装置(LUSEX3:ニレコ社製)に導入して解析して計算した。トナーの形状が球形に近くなると、トナーとトナーあるいはトナーと感光体との接触状態が点接触になるために、トナー同士の吸着力は弱くなり従って流動性が高くなり、また、トナーと感光体との吸着力も弱くなって、転写率は高くなる。形状係数SF-1、SF-2のいずれかが180を超えると、転写率が低下するため好ましくない。
【0032】
以下、クリーニング装置520について説明する。
本実施形態の画像形成装置では、画像形成時に、2次転写装置600よりも下流の中間転写体10上に、中間転写体10上から記録紙に転写できなかった転写残トナーが付着する。クリーニング装置520は、このような転写残トナーや未転写トナーを静電的に除去する。
【0033】
クリーニング装置520の概略構成の一例を
図4に示す。
図4に示す矢印B方向が中間転写体10の周回方向である。
図4に示すように、本実施形態のクリーニング装置520は、複数のクリーニングユニットを備えている。具体的には、第1工程ユニット591、第2工程ユニット592、及び第3工程ユニット593の3つのクリーニングユニットで構成されている。各クリーニングユニットは、表面移動部材である中間転写体10に当接し、該表面移動部材のトナーを静電的に自らの表面に移動させて除去するクリーニング部材521、522、523と、クリーニング部材上のトナーを静電的に自らの表面に移動させて回収するトナー回収部材524、525、526と、トナー回収部材表面に摺擦し、該トナー回収部材上のトナーを掻き落として除去する除去部材527、528、529と、からなる。また、クリーニング装置520は、各トナー回収部材(回収ローラ)、各除去部材(回収ブレード)により回収したトナーを、プリンタ本体に備えられた廃トナータンクに搬送するための搬送手段としてのトナー排出コイル530、531を備えている。
【0034】
クリーニング部材521、522、523と中間転写体10を挟んで対向する位置には、クリーニング対向ローラ513、514、515がそれぞれ配置されている。クリーニング対向ローラ513、514、515は導電性であり、それぞれクリーニング部材521、522、523との間にクリーニング電界を形成するために接地されている。
【0035】
各クリーニング部材からトナーを回収するトナー回収部材524、525、526は、駆動手段により回転するローラ状の部材である。このトナー回収部材524、525、526は、対応する各クリーニング部材と同極性であり、クリーニング部材以上の電圧が印可されるのが望ましい。トナー回収部材の方が高い電位を印加することによって、トナーが回収部材側に引き寄せられるため、効率よく回収することができる。
【0036】
トナー回収部材524、525、526のトナーは、除去部材(回収ブレード)527、528、529により各トナー回収部材524、525、526上から掻き落とされ、トナー排出コイル530、531の回転により装置外に排出される。
【0037】
クリーニング部材としては、例えば、クリーニングブラシ及びクリーニングローラが挙げられる。クリーニングブラシとしては、ブラシ植毛密度、ブラシ抵抗、繊維径、印加電圧、繊維種類、ブラシ繊維の喰込量は特に限定されず、適宜選択することができる。また、使用できる繊維の種類としては、ナイロン、アクリル、ポリエステル等が挙げられる。クリーニングローラとしては、例えば、金属製ローラの表面に樹脂を被覆し、抵抗値を調整したものが挙げられる。表面は多孔質であっても、平滑であってもよい。本実施形態では、クリーニング部材521とクリーニング部材522は異なる材料により形成される。
【0038】
次に、クリーニング部材に印加されるバイアスについて説明する。
【0039】
クリーニング装置520は、クリーニングユニットを複数備え、少なくとも一つのクリーニングユニットは、他のクリーニングユニットに含まれるクリーニング部材と異なる極性の電圧が印加されたクリーニング部材を有することが好ましい。すなわち、互いに異なる極性の電圧が印加されるクリーニング部材を少なくとも一つずつ有し、具体的には印加バイアスの極性がマイナスのクリーニング部材と、印加バイアスの極性がプラスのクリーニング部材とを少なくとも一つずつ備えることが好ましい。
【0040】
クリーニング部材521、522、523への電圧の印加は、回転部材であるクリーニング部材の軸芯金を介して行われているが、トナーが多く付着した場合には電位が低下してしまうことがある。このような電位低下を抑制するために、クリーニング部材521、522、523の表面に電荷を付与する電荷付与部材を備えていてもよい。電荷付与部材としては、例えば金属の丸棒や金属の板状部材等が挙げられる。
【0041】
中間転写体10上の転写残トナーおよび未転写トナーは、中間転写体10の移動により第1工程ユニット591を構成するクリーニング部材521の位置に移送される。第1工程ユニット591のクリーニング部材521には、電源によりトナーの正規帯電極性とは逆極性の電圧が印加されており、回転しながらトナーを静電的に吸着する。第2工程ユニット592を構成するクリーニング部材522には、第1工程ユニット591で回収されたものとは逆の極性のトナーを回収するための電圧が印加され、逆極性のトナーを静電的に吸着する。
【0042】
また本実施形態では、クリーニング部材521とクリーニング部材522とでその材料が異なっている。このため、それぞれのクリーニング部材521,522に合わせたバイアスが印加される。具体的には、抵抗値が大きい場合には大きなバイアスが印加され、抵抗値が小さい場合には小さなバイアスが印加される。なお、第3工程ユニット593は第1工程ユニット591および第2工程ユニット592により回収しきれなかったトナーの回収を目的としているため、本実施形態ではクリーニング部材523の材料に合わせたバイアスの印加は行っていないが、行ってもよい。また、クリーニング部材521,522が同じ材料により形成されていてもよい。
【0043】
また、クリーニング対象である中間転写体10の材料によってクリーニング部材521とクリーニング部材522に印加するバイアスを変更することができる。具体的には、中間転写体10の材料の抵抗値が大きい場合には印加するバイアスを大きくし、抵抗値が小さい場合には印加するバイアスを小さくする。
【0044】
以上のように、各クリーニング部材521、522に印加するバイアスの基礎値を設定する。この基礎値が、クリーニング時の環境条件などによって変化しない印加バイアスの設定値である。
【0045】
本実施形態では、立ち上げ時(作像動作開始時)には、以下の式(3)により、各クリーニング部材521、522に印加するバイアスの制御値が決定される。
制御値〔V〕=基礎値〔V〕×温度補正係数〔%〕/100×線速補正係数〔%〕/100×未転写用補正係数〔%〕/100・・・式(3)
【0046】
未転写用補正係数は、第1工程ユニット591のクリーニング部材521と第2工程ユニット592のクリーニング部材522とで異なる値を設定する。具体的には、クリーニング部材521にはその絶対値が大きくなるように未転写用補正係数を設定し、クリーニング部材522にはその絶対値が小さくなるように未転写用補正係数を設定する。このように、それぞれの工程で印加するバイアスを変更することで、異なる電荷のトナーを回収できる。
【0047】
また立ち上げ後には、以下の式(4)により、クリーニング部材521、522に印加するバイアスの制御値が決定される。
制御値〔V〕=基礎値〔V〕×温度補正係数〔%〕/100×線速補正係数〔%〕/100・・・式(4)
【0048】
ここで言う「立ち上げ時(作像動作開始時)」とは、作像動作を始めた時から所定の時間を経過するまでのことであり、この作像動作とは、全ての作像開始時のことであり、電源ON後1枚目の通紙、通紙をしないトナー濃度調整時などのマシン調整動作開始時、ジャムや即断などのエラー発生からの復帰動作開始時など全てを含むものである。「立ち上げ後」とは、「立ち上げ時」の後の時間のことであり、作像動作を始めた時から所定の時間を経過した後のことである。この所定の時間は、感光体からトナーが転写されて2次転写されるまでの時間よりも短く設定している。つまり、作像前に中間転写体10上に残されたトナーのみを対象とした時間設定であり、未転写補正係数を乗じた制御値でのクリーニングは、作像前に中間転写体10上に残されたトナーのみを対象とし、作像開始後の転写残トナーを対象としない時間設定になっている。
【0049】
このように本実施形態では、立ち上げ時に、クリーニング部材521、522に印加するバイアスに、未転写トナー用の補正係数である未転写用補正係数を加える。つまり、ジャムや即断などにより画像形成装置の画像形成動作が途中で終了した場合には、中間転写体10に前回の画像形成動作時の未転写トナー像が残された状態のまま立ち上げ動作が行われる。このような場合には、通常の転写後と比較して、中間転写体10上に残るトナーの量が多く、未転写状態のため帯電量も異なっている。このため、クリーニング部材521、522により、十分なクリーニングができなくなってしまう。
【0050】
そこで本実施形態では、立ち上げ動作時に、未転写用補正係数を加えて印加するバイアスを変化させる。これにより、仮にジャムや即断などにより中間転写体10に未転写トナーが残った状態でクリーニング装置520によりクリーニングが行われた場合でも、未転写トナーに合わせたバイアスをクリーニング部材521、522に印加して、クリーニング部材521、522により中間転写体10上の未転写トナーを適切にクリーニングすることができる。従って、クリーニング部材521、522のクリーニング力を向上させることができる。また、立ち上げ動作時に必ずこのような制御とすることにより、例えばジャムが生じたか否かを画像形成装置が判断して未転写用補正係数を加える構成と比較すると、画像形成装置本体に認識されない要因で中間転写体10に未転写トナーが残った場合でも、クリーニング装置により中間転写体10を適切にクリーニングできる。
【0051】
次に、上記のトナー補正係数を加えた場合(実施例)と加えない場合(比較例)とのそれぞれについて、中間転写体10に未転写残トナーを残した状態で、クリーニング装置520によるクリーニング後の中間転写体10に残留したトナー量を調べた実験結果を
図6(a)および
図6(b)に示す。
図6の縦軸がクリーニング後の中間転写体10上の残留トナー量を示している。また、各図の左側に配置された白色の棒グラフが比較例の結果、黒色の棒グラフが実施例の結果を示している。
図6(a)は低温低湿状態での試験であり、
図6(b)は高温高湿状態での試験である。またそれぞれの図の「Black」がBlackのトナー残量を示し、「Cyan」がCyanのトナー残量を示している。
【0052】
図6(a)および
図6(b)に示すように、低温・低湿および高温高湿、Blackのトナー残量およびCyanのトナー残量の全ての結果で、実施例の方が、トナー残量が少なくなった。このように、上記未転写用補正係数を加えることにより、未転写残トナーに対するクリーニング力を向上させることができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0054】
以上の説明では、トナー像担持体として中間転写体を例示したが、本発明のクリーニング装置は、トナー像担持体としての感光体をクリーニングするクリーニング装置であってもよい。
【0055】
本発明に係る画像形成装置は、
図1に示すカラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置や、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であってもよい。
【0056】
記録媒体としては、用紙P(普通紙)の他、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、プラスチックフィルム、プリプレグ、銅箔等が含まれる。
【0057】
本発明の態様は、例えば以下の通りである。
<1>
バイアスが印加され、トナー像担持体に当接するクリーニング部材を有するクリーニング装置であって、
画像形成装置による作像動作開始時に、未転写トナー用のバイアスを前記クリーニング部材に印加することを特徴とするクリーニング装置である。
<2>
複数のクリーニング部材を有する<1>記載のクリーニング装置であって、
前記クリーニング部材の抵抗値に応じて、異なるバイアスを印加するクリーニング装置である。
<3>
環境温度あるいは湿度の少なくともいずれか一方に応じて、前記クリーニング部材に印加されるバイアスを変化させる<1>または<2>記載のクリーニング装置である。
<4>
前記クリーニング部材は回転可能に設けられ、
前記クリーニング部材の線速あるいは前記トナー像担持体の線速の少なくともいずれか一方に応じて、前記クリーニング部材に印加されるバイアスを変化させる<1>から<3>いずれか記載のクリーニング装置である。
<5>
<1>から<4>いずれか記載のクリーニング装置と、
前記トナー像担持体とを備えた画像形成装置である。
【符号の説明】
【0058】
1 画像形成装置
10 中間転写体(トナー像担持体)
520 クリーニング装置
521,522、523 クリーニング部材
591 第1工程ユニット
592 第2工程ユニット
593 第3工程ユニット
P 用紙(記録媒体)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】