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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107759
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】接着剤組成物及び接着体
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/02 20060101AFI20240802BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
C09J4/02
C09J163/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011852
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】川口 亜季子
(72)【発明者】
【氏名】松永 昌大
(72)【発明者】
【氏名】川守 崇司
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040EC001
4J040EC002
4J040EC021
4J040EC041
4J040EC061
4J040EC071
4J040EC091
4J040EC111
4J040EC261
4J040FA131
4J040FA141
4J040FA151
4J040FA161
4J040FA171
4J040FA201
4J040FA241
4J040FA261
4J040GA01
4J040GA09
4J040GA11
4J040GA16
4J040GA31
4J040HB41
4J040HC01
4J040HD33
4J040HD35
4J040JA02
4J040JA12
4J040JB02
4J040KA11
4J040KA12
4J040KA13
4J040KA16
4J040KA17
4J040LA08
4J040MA02
4J040MA05
4J040MA06
4J040MA08
4J040MA10
4J040MA11
4J040MA12
4J040MB09
4J040PA34
(57)【要約】
【課題】低温硬化性に優れる接着剤組成物を提供すること。
【解決手段】(メタ)アクリレート化合物と、有機過酸化物と、エポキシ化合物と、熱酸発生剤とを含有する、接着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレート化合物と、有機過酸化物と、エポキシ化合物と、熱酸発生剤とを含有する、
接着剤組成物。
【請求項2】
前記熱酸発生剤が、第四級アンモニウム塩を含む、
請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記エポキシ化合物が、脂環式エポキシ化合物を含む、
請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
第一の被着体と、第二の被着体と、前記第一の被着体及び前記第二の被着体を互いに接着する接着部とを備え、
前記接着部が、請求項1~3のいずれか一項に記載の接着剤組成物の硬化物を含有する、
接着体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接着剤組成物及び接着体に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤組成物として、(メタ)アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含有する組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-075906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
接着剤組成物には、より低温で硬化性が発現すること(例えば、発熱反応が始まる温度であるオンセット温度が100℃以下であること)が求められている。
【0005】
そこで、本開示は、低温硬化性に優れる接着剤組成物を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、(メタ)アクリレート化合物及び有機過酸化物を含有し、エポキシ化合物及び熱酸発生剤をさらに含有する接着剤組成物が、低温硬化性に優れることを見出し、本開示の発明を完成するに至った。
【0007】
本開示は、[1]~[3]に記載の接着剤組成物及び[4]に記載の接着体を提供する。
[1](メタ)アクリレート化合物と、有機過酸化物と、エポキシ化合物と、熱酸発生剤とを含有する、接着剤組成物。
[2]前記熱酸発生剤が、第四級アンモニウム塩を含む、[1]に記載の接着剤組成物。
[3]前記エポキシ化合物が、脂環式エポキシ化合物を含む、[1]又は[2]に記載の接着剤組成物。
[4]第一の被着体と、第二の被着体と、前記第一の被着体及び前記第二の被着体を互いに接着する接着部とを備え、前記接着部が、[1]~[3]のいずれかに記載の接着剤組成物の硬化物を含有する、接着体。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、低温硬化性に優れる接着剤組成物が提供される。また、本開示によれば、このような接着剤組成物を用いた接着体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。数値範囲「A~B」という表記においては、両端の数値A及びBがそれぞれ下限値及び上限値として数値範囲に含まれる。本明細書において、例えば、「10以上」という記載は、「10」と「10を超える数値」とを意味し、数値が異なる場合もこれに準ずる。また、例えば、「10以下」という記載は、「10」と「10未満の数値」とを意味し、数値が異なる場合もこれに準ずる。
【0011】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、及び、それに対応するメタクリレートの少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル酸」等の他の類似の表現においても同様である。また、「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。
【0012】
以下で例示する材料は、特に断らない限り、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0013】
[接着剤組成物]
一実施形態の接着剤組成物は、(メタ)アクリレート化合物(以下、「(A)成分」という場合がある。)と、有機過酸化物(以下、「(B)成分」という場合がある。)と、熱酸発生剤(以下、「(C)成分」という場合がある。)とを含有する。本実施形態の接着剤組成物は、熱硬化性を示す接着剤であり得る。また、本実施形態の接着剤組成物は、一液型接着剤であり得る。また、いくつかの形態の接着剤組成物は、保存安定性にも優れる傾向がある。
【0014】
(A)成分:(メタ)アクリレート化合物
(A)成分は、ラジカルによって反応する(メタ)アクリロイル基を1個以上有する化合物である。(A)成分としては、(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0015】
このような単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;3-ブテニル(メタ)アクリレート等のアルケニル基を有するアルケニル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族基を有する(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環式基を有する(メタ)アクリレート;4-(メタ)アクリロイルモルホリン等の複素環基を有する(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート;メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシオクタエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクタプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;シロキサン骨格を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0016】
このような多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、エトキシ化2-メチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート;エトキシ化ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールF型ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールF型ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールF型ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0017】
これらの中でも、(A)成分は、単官能(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。(A)成分は、一実施形態において、アルキル(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。(A)成分は、一実施形態において、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。(A)成分は、一実施形態において、アルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。(A)成分は、一実施形態において、アクリレートを含んでいてもよい。
【0018】
アルキル(メタ)アクリレートの含有量は、(A)成分の総量を基準として、60質量%以上、70質量%以上、又は80質量%以上であってよく、100質量%以下、97質量%以下、又は95質量%以下であってよい。ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートの含有量は、(A)成分の総量を基準として、0質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、又は10質量%以上であってよく、40質量%以下、30質量%以下、又は20質量%以下であってよい。
【0019】
(A)成分の含有量は、(A)成分及び(C)成分の総量を基準として、20~80質量%であってよい。(A)成分の含有量は、(A)成分及び(C)成分の総量を基準として、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、又は40質量%以上であってもよく、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、又は60質量%以下であってもよい。
【0020】
(B)成分:有機過酸化物
(B)成分は、加熱によってラジカルを発生する化合物である。(B)成分は、主に(A)成分の高分子量化を促進する化合物である。(B)成分は、-O-O-結合を有するものであれば特に制限なく用いることができる。(B)成分としては、例えば、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル等が挙げられる。これらの中でも、(B)成分は、例えば、ジアシルパーオキサイドであってよい。
【0021】
(B)成分の市販品としては、例えば、パーロイルL(ジラウロイルパーオキサイド、1分間半減温度:116℃、日油株式会社)、パーブチルO(t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1分間半減温度:134℃、日油株式会社)、パーブチルE(t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、1分間半減温度:161℃、日油株式会社)、パークミルH(クメンハイドロパーオキサイド、1分間半減温度:254℃、日油株式会社)等が挙げられる。これらの中でも、(B)成分は、硬化時間短縮及び保存安定性の観点から、1分間半減温度が270℃以下である有機過酸化物であってよい。(B)成分の1分間半減温度は、例えば、250℃以下、220℃以下、200℃以下、180℃以下、160℃以下、150℃以下、140℃以下、135℃以下、130℃以下、125℃以下、又は120℃以下であってもよい。(B)成分の1分間半減温度は、例えば、80℃以上、90℃以上、又は100℃以上であってよい。
【0022】
(B)成分の含有量は、(A)成分の総量を基準として、例えば、0.1~20質量%、1~15質量%、又は3~12質量%であってよい。
【0023】
(C)成分:エポキシ化合物
(C)成分は、エポキシ基を1個以上有する化合物である。(C)成分は、エポキシ基を2個以上有する化合物であってよい。(C)成分は、硬化物の耐熱性、透明性等に優れることから、脂環式エポキシ化合物(以下、「(C1)成分」という場合がある。)を含んでいてもよい。
【0024】
(C1)成分は、脂環式環を構成する2個の炭素原子とともに形成されるエポキシ基(例えば、エポキシシクロヘキシル基)を有する化合物である。(C1)成分の市販品としては、例えば、セロキサイド8010、セロキサイド2021P、セロキサイド2081(商品名、いずれも株式会社ダイセル製)等が挙げられる。また、(C1)成分は、芳香族環を有しないエポキシ化合物であってよい。
【0025】
(C1)成分の含有量は、(C)成分の総量を基準として、30~100質量%、50~100質量%、70~100質量%、又は90~100質量%であってよい。
【0026】
(C)成分は、(C1)成分に加えて、本開示の効果を阻害しない範囲で、その他のエポキシ化合物(以下、「(C2)成分」という場合がある。)を含んでいてもよい。その他のエポキシ化合物としては、例えば、脂肪族基を有するエポキシ化合物、芳香族環を有するエポキシ化合物等が挙げられる。
【0027】
脂肪族基を有するエポキシ化合物は、アルキレン基、オキシアルキレン基、及びシクロアルキレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪族基(連結基)を有する脂肪族ジグリシジルエーテルであってよい。また、脂肪族基を有するエポキシ化合物は、芳香族環を有しないエポキシ化合物であってよい。
【0028】
脂肪族ジグリシジルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等のアルキレン基を有するジグリシジルエーテル;ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等のオキシアルキレン基を有するジグリシジルエーテル;水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ジグリシジル-1,2-シクロヘキサンジカルボキシレート等のシクロアルキレン基を有するジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0029】
芳香族環を有するエポキシ化合物としては、例えば、フタル酸ジグリシジルエステル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0030】
(C2)成分の含有量は、(C)成分の総量を基準として、0~70質量%、0~50質量%、0~30質量%、又は0~10質量%であってよい。
【0031】
(C)成分の含有量は、(A)成分及び(C)成分の総量を基準として、20~80質量%であってよい。(C)成分の含有量は、(A)成分及び(C)成分の総量を基準として、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、又は40質量%以上であってもよく、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、又は60質量%以下であってもよい。
【0032】
(D)成分:熱酸発生剤
(D)成分は、加熱によって酸を発生する化合物である。(D)成分は、主に(C)成分の高分子量化を促進する化合物である。接着剤組成物が(D)成分を含有することにより、接着剤組成物は、低温硬化性に優れるものとなる。このような効果を奏する理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは、(D)成分が(B)成分の分解をより一層促進するためであると考えている。
【0033】
(D)成分は、カチオンとアニオンとから構成される塩化合物であってよい。(D)成分しては、例えば、BF 、BR (Rは、2個以上のフッ素原子又は2個以上のトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基を示す。)、PF 、SbF 、AsF 等のアニオンを有するオニウム塩などが挙げられる。オニウム塩としては、例えば、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、アンモニウム塩(第四級アンモニウム塩)、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、アニリニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。(D)成分は、第四級アンモニウム塩(又はアニリニウム塩)を含んでいてもよい。
【0034】
第四級アンモニウム塩(又はアニリニウム塩)のカチオンとしては、例えば、N-ベンジル-N,N-ジメチルアニリニウムイオン、N-(4-ニトロベンジル)-N,N-ジメチルアニリニウムイオン、N-(4-メトキシベンジル)-N,N-ジメチルアニリニウムイオン、N-(α-フェニルベンジル)-N,N-ジメチルアニリニウムイオン、N-(α-メチルベンジル)-N,N-ジメチルアニリニウムイオン、N-(1-ナフチルメチル)-N,N-ジメチルアニリニウムイオン、N-シンナミル-N,N-ジメチルアニリニウムイオン等が挙げられる。
【0035】
(D)成分は、環境への配慮及び低温硬化性の観点から、例えば、構成元素としてホウ素を含むアニオン、すなわち、BF 又はBR (Rは、2個以上のフッ素原子又は2個以上のトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基を示す。)を有する塩化合物であってよい。構成元素としてホウ素を含むアニオンは、BR であってよく、より具体的には、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートであってもよい。
【0036】
(D)成分は、構成元素としてホウ素を含むアニオン、すなわち、BF 又はBR (Rは、2個以上のフッ素原子又は2個以上のトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基を示す。)を有する第四級アンモニウム塩であってよい。このような第四級アンモニウム塩としては、例えば、下記式(D1)で表される化合物等が挙げられる。
【0037】
【化1】
【0038】
構成元素としてホウ素を含むアニオンを有する第四級アンモニウム塩の市販品としては、例えば、「CXC-1821」(King Industries社製)が挙げられる。
【0039】
(D)成分の含有量は、(C)成分の総量を基準として、例えば、0.1~20質量%、0.3~18質量%、0.5~16質量%、1~14質量%、2~12質量%、又は3~10質量%であってよい。
【0040】
(A)成分及び(C)成分は、接着剤組成物の主成分であり得る。(A)成分及び(C)成分の総量の含有量は、接着剤組成物の総量を基準として、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、又は90質量%以上であってよく、99質量%以下、97質量%以下、又は95質量%以下であってよい。
【0041】
接着剤組成物は、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、カップリング剤、酸化防止剤、無機フィラー等が挙げられる。
【0042】
カップリング剤は、例えば、シランカップリング剤であってよい。シランカップリング剤は、例えば、加水分解性シリル基と、(メタ)アクリレート化合物又はエポキシ化合物のいずれかと反応し得る官能基とを有する化合物であってよい。加水分解性シリル基は、例えば、ケイ素原子と、当該ケイ素原子に結合している1~3個のアルコキシ基とを有する基である。ケイ素原子に結合しているアルコキシ基の炭素数は、例えば、1~4個であってよい。官能基としては、例えば、1級アミノ基、2級アミノ基等のアミノ基、エポキシ基、メルカプト基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。なお、本明細書において、加水分解性シリル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物、並びに、加水分解性シリル基及びエポキシ基を有する化合物は、シランカップリング剤に分類される。
【0043】
シランカップリング剤の市販品としては、例えば、KBM-303、KBM-402、KBM-403、KBE-402、KBE-403、KBM-4803、KBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103、KBM-5803、KBM-602、KBM-603、KBM-903、KBE-903、KBE-9103P、KBM-573、KBM-575、KBM-802、KBM-803(商品名、信越化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0044】
シランカップリング剤の含有量は、(A)成分及び(C)成分の総量を基準として、0.1~10質量%、0.2~8質量%、又は0.5~5質量%であってよい。
【0045】
酸化防止剤としては、例えば、ベンゾキノン、ハイドロキノン等のキノン誘導体、4-メトキシフェノール、4-t-ブチルカテコール等のフェノール誘導体(ヒンダードフェノール誘導体)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル等のアミノキシル誘導体、テトラメチルピペリジルメタクリレート等のヒンダードアミン誘導体などが挙げられる。
【0046】
酸化防止剤の含有量は、(A)成分及び(C)成分の総量を基準として、0.1~10質量%であってよい。
【0047】
接着剤組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分、並びに、その他の成分を混合(又は混練)することによって調製することができる。混合は、通常の撹拌機、自公転ミキサー等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。また、混合においては、適宜、真空脱気等によって脱泡処理を施してもよい。
【0048】
調製された接着剤組成物は、所定の箇所に塗布することによって各種被着体に対する接着性に優れる接着部(接着剤層)を形成することができる。形成された接着部は、加熱することによって(A)成分及び(C)成分が高分子量化して硬化することから、例えば、被着体同士を接着する接着剤として作用する。このとき、接着部は、接着剤組成物の硬化物を含有する。
【0049】
所定の箇所に塗布する方法は、ナイフコーター、ロールコーター、アプリケーター、コンマコーター、ダイコーター、ディスペンサー等を用いる方法等の従来公知の方法を適用することができる。
【0050】
接着剤組成物を硬化させるための条件は、例えば、60~120℃の加熱温度であってよく、10秒~6時間の保持時間であってよい。
【0051】
[接着体]
一実施形態の接着体は、第一の被着体と、第二の被着体と、第一の被着体及び第二の被着体を互いに接着する接着部とを備える。接着部は、上記の接着剤組成物の硬化物を含有する。
【0052】
第一の被着体及び第二の被着体としては、例えば、ポリオレフィン樹脂(ポリプロピレン樹脂等)、ポリアミド樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、アクリル樹脂、透明樹脂等の有機材料;鉄鋼、ステンレス鋼、金属(アルミニウム、銅、ニッケル、クロム等)単体又はこれら金属の合金、ガラス、シリコンウエハ等の無機材料;木材;ゴムなどが挙げられる。また、第一の被着体及び第二の被着体としては、上記プラスチックと上記無機材料とが複合化された材料も挙げられる。
【0053】
第一の被着体及び第二の被着体の厚さは、例えば、0.1~2.0mm、0.1~1.0mm、又は0.1~0.5mmであってよい。
【0054】
接着体は、例えば、第一の被着体上に接着剤組成物を塗布して、接着剤組成物を含有する接着部を形成する工程と、接着部上に第二の被着体を配置して積層体を作製する工程と、積層体の接着部に対して光照射することによって、接着剤組成物の硬化物を含有する接着部を形成する工程と含む方法によって得ることができる。
【0055】
接着剤組成物は、ナイフコーター、ロールコーター、アプリケーター、コンマコーター、ダイコーター、ディスペンサー等を用いて塗布することができる。
【0056】
積層体の接着部を加熱する条件(加熱温度、保持時間等)は、上記の接着剤組成物を硬化させるための条件と同様であってよい。
【0057】
接着剤組成物の硬化物を含有する接着部の厚さは、例えば、0.01~1.0mm、0.01~0.5mm、又は0.01~0.2mmであってよい。
【実施例0058】
以下、本開示について、実施例を挙げてより具体的に説明する。ただし、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
【0059】
[接着剤組成物の調製]
表1に示す量(質量部)の(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を自公転ミキサー(5分/1500rpm)で混合して、実施例1~3及び比較例1の接着剤組成物を調製した。
【0060】
なお、各原料の詳細は以下のとおりである。
(A)成分:(メタ)アクリレート化合物
・A-1:MMA(メチルメタクリレート、富士フイルム和光純薬株式会社製)
・A-2:4HBA(4-ヒドロキシブチルアクリレート、大阪有機化学工業株式会社
製)
(B)成分:有機過酸化物
・B-1:パーロイルL(ジラウロイルパーオキサイド、1分間半減温度:116℃、日油株式会社)
(C)成分:エポキシ化合物
・C-1:3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名:セロキサイド2021P、株式会社ダイセル製)
(D)成分:熱酸発生剤
・D-1:CXC-1821(第四級アンモニウム塩、King Industries社製)
【0061】
[接着剤組成物の評価]
実施例1~3及び比較例1の接着剤組成物を用いて、以下の評価を行った。
【0062】
<硬化温度の測定>
実施例1~3及び比較例1の接着剤組成物の硬化温度を、示差走査熱量計(DSC)により、以下の条件で測定した。すなわち、接着剤組成物をアルミ液体用パン(株式会社リガク製)に4.5~5.5mg計りとり、窒素流量30mL/分、測定温度範囲30~200℃、及び昇温速度10℃/分の条件で、オンセット温度及びピークトップ温度を測定した。測定装置には、株式会社リガク製「Thermo plus DSC8230」を使用した。発熱反応が始まる温度であるオンセット温度及び熱量が最大となる温度であるピークトップ温度が低い(特に、発熱反応が始まる温度であるオンセット温度が低温、例えば、100℃以下である)ほど、低温硬化性に優れているといえる。結果を表1に示す。
【0063】
<保存安定性の評価>
実施例1~3及び比較例1の接着剤組成物を冷蔵庫内に保存し、接着剤組成物の保存安定性を評価した。すなわち、接着剤組成物をスクリュー管に入れ、空気雰囲気下、4℃で3か月間放置し、ゲル化の発生の有無を確認した。ゲル化が発生しなかった場合を保存安定性に優れるとして「A」を評価し、ゲル化が発生しなかった場合を「B」と評価した。結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
表1に示すとおり、所定の成分を含有する実施例1~3の接着剤組成物は、所定の成分を含有しない比較例1の接着剤組成物に比べて、発熱反応が始まる温度であるオンセット温度が低かった。また、実施例1~3の接着剤組成物は、熱量が最大となる温度であるピークトップ温度も低く、さらには、保存安定性も良好であることが判明した。以上より、本開示の接着剤組成物が、低温硬化性に優れることが確認された。