(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107830
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】光導波路素子及びそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置
(51)【国際特許分類】
G02B 6/122 20060101AFI20240802BHJP
G02F 1/035 20060101ALI20240802BHJP
G02B 6/30 20060101ALI20240802BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
G02B6/122
G02F1/035
G02B6/122 311
G02B6/30
G02B6/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011955
(22)【出願日】2023-01-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond 5G 超高速・超大容量無線通信システムのためのヘテロジニアス光電子融合技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】平田 章太郎
(72)【発明者】
【氏名】岡橋 宏佑
【テーマコード(参考)】
2H137
2H147
2K102
【Fターム(参考)】
2H137AB08
2H137AB11
2H137BA01
2H137BA44
2H137BA48
2H137BA52
2H137BA53
2H137BA54
2H137BA55
2H137BB02
2H137BC01
2H137BC50
2H137DA39
2H137EA04
2H147AA02
2H147AB02
2H147AB21
2H147AB24
2H147AC01
2H147BA05
2H147BA11
2H147BB02
2H147BD15
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2H147CA08
2H147CB01
2H147CB03
2H147CD04
2H147DA02
2H147DA10
2H147EA05C
2H147EA06C
2H147EA12C
2H147EA13A
2H147EA13C
2H147EA14B
2H147EA16B
2H147EA16C
2H147FA03
2H147FA06
2H147FA09
2H147FA20
2H147FC01
2K102AA21
2K102BA02
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA30
2K102DA05
2K102DB05
2K102DB08
2K102DC08
2K102DD01
2K102DD03
2K102DD05
2K102EB16
2K102EB20
2K102EB30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】光導波路を覆う低屈折率層の幅が狭くなった場合でも、低屈折率層の剥離を防止した光導波路素子を提供すること。
【解決手段】基板上に光導波路10を形成した光導波路素子において、基板表面に形成される突起部40と、該突起部上に配置され、該突起部の一部の幅よりも幅が大きく形成された光導波路10と該光導波路を覆い、かつ前記突起部の一部にも少なくとも接触するように配置され、該光導波路よりも屈折率の低い低屈折率層2を設けることを特徴とする。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に光導波路を形成した光導波路素子において、
基板表面に形成される突起部と、
該突起部上に配置され、該突起部の一部の幅よりも幅が大きく形成された光導波路と
該光導波路を覆い、かつ前記突起部の一部にも少なくとも接触するように配置され、該光導波路よりも屈折率の低い低屈折率層を設けることを特徴とする光導波路素子。
【請求項2】
請求項1に記載の光導波路素子において、該低屈折率層の幅は、5μm以下であることを特徴とする光導波路素子。
【請求項3】
請求項2に記載の光導波路素子において、該低屈折率層は、光導波路のスポットサイズ変換部の一部を構成することを特徴とする光導波路素子。
【請求項4】
請求項1に記載の光導波路素子において、該突起部の両脇に凹部が形成され、該凹部に接触するように該低屈折率層が配置されていることを特徴とする光導波路素子。
【請求項5】
請求項1に記載の光導波路素子において、該突起部の屈折率は、該光導波路の屈折率より低いことを特徴とする光導波路素子。
【請求項6】
請求項1に記載の光導波路素子において、該基板は、保持基板と該保持基板上に形成された薄膜層とを有し、該突起部が該薄膜層に形成されていることを特徴とする光導波路素子。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の光導波路素子は筐体内に収容され、
該光導波路に光波を入力又は出力する光ファイバを備えることを特徴とする光変調デバイス。
【請求項8】
請求項7に記載の光変調デバイスにおいて、
該制御電極は、該光導波路を伝搬する光波を変調するための変調電極であり、
該変調電極に入力する変調信号を増幅する電子回路を該筐体の内部に有することを特徴とする光変調デバイス。
【請求項9】
請求項8に記載の光変調デバイスと、
該光変調デバイスに光波を入力する光源と、
該光変調デバイスに変調信号を出力する電子回路とを有することを特徴とする光送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路素子及びそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置に関し、特に、基板上に光導波路を形成した光導波路素子及びそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光計測技術分野や光通信技術分野、特に、高速/大容量光ファイバ通信システムにおいては、基板上に光導波路を形成した光導波路素子で光変調器を構成し、該光変調器を組み込んだ光送信装置が多く用いられている。近年、情報量の増大に伴い、長距離間、または都市間やデータセンター間に用いている光通信の高速化や大容量化が望まれている。また、基地局のスペースによる制限もあることから、光変調器の高速化及び小型化が必要となっている。
【0003】
光変調器などの光導波路素子の小型化には、光閉じ込め効果を強くすることで、光導波路の曲げ半径を小さくし、小型化が可能であることから、光導波路の微細化が有効である。例えば、電気光学効果を有するLiNbO3(以下、LNという。)は、電気信号を光信号に変換する際に、歪みが少なく、光損失が低いことから、長距離向け光変調器として用いられている。LN光変調器では、従来の光導波路のモードフィールド径(MFD)は10μmφ程度であり、曲げ半径は数10mmφと大きいことから、小型化が困難であった。
【0004】
最近では、研磨技術、貼り合わせ技術の向上によりLN基板の薄板化が可能となり、1μmφ程度のLN光導波路の研究開発が進んでいる。
一方、光ファイバのMFDは3μmφであり、このMFDよりも小さいMFDを有する微細光導波路を含む光導波路素子では、素子端面より光を入射する際に、光ファイバを直接接合した場合には大きな挿入損失が発生する。このため、特許文献1に示すように、低屈折率層とLN層とを組み合わせたスポットサイズ変換部をチップ内に設けることが検討されている。
【0005】
図1は、基板1上に光導波路10を形成した光導波路素子である。光導波路10は、例えば基板1の表面に凹凸を形成したリブ型導波路であり、光導波路10を覆うように低屈折率層2(永久レジスト、SiO
2層など)が配置されている。この低屈折率層2は光導波路10より屈折率が低く、透明な材料で構成されているため、リブ型導波路の表面の荒れによる光波の散乱を抑制する効果が期待される。また、光導波路10の端部にはスポットサイズ変換部SSCが配置される。
図1では入射光L1と出射光(L21,L22)を同じ基板1の側面に位置するよう構成しているが、入射光と反射光が対向する側面に位置するよう構成することも可能である。
【0006】
図1の点線枠Xで示したスポットサイズ変換部SSCの拡大図を、
図2に示す。
図2は、スポットサイズ変換部SSCの一例を示す平面図であり、一点鎖線A-A’、B-B’における断面図を、
図3と
図4に各々示す。光導波路10であるリブ型導波路の先端をテーパー状に形成するのに合わせて、リブ型導波路の下側の基板1もテーパー状に形成される。また、光導波路を覆う低屈折率層2の幅も徐々に幅を狭く形成している。基板には、保持基板3上にLNなどの薄板を直接接合した基板や保持基板3上にLN層を積層した基板を利用している。
【0007】
スポットサイズ変換部でのMFDは低屈折率層2の幅を調整することで所望のMFDを得ることが可能である。その結果、スポットサイズ変換部の端部のMFDを調整し、光挿入損失を低減することが可能となる。
図3に示すように、低屈折率層と光導波路10(又は基板1)との接合強度が低い場合には、低屈折率層の幅が狭くなるに従い、両者の密着性が低下し、低屈折率層2の剥離や割れが発生する。
【0008】
図5は、
図1の点線枠Yにおける光導波路の拡大図であり、一点鎖線E-E’における断面図を
図6に示す。光導波路10を覆う低屈折率層2の幅が広い場合には余り問題とならないが、光導波路10の近傍のみに低屈折率層を配置する場合には、スポットサイズ変換部と同様に、低屈折率層2の剥離の問題が生じる。なお、
図5の両側に配置される符号11の部材は、光導波路10を形成した際に残った基板1の一部を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、光導波路を覆う低屈折率層の幅が狭くなった場合でも、低屈折率層の剥離を防止した光導波路素子を提供することである。さらには、その光導波路素子を用いた光変調デバイスと光送信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の光導波路素子及びそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置は、以下の技術的特徴を有する。
【0012】
(1) 基板上に光導波路を形成した光導波路素子において、基板表面に形成される突起部と、該突起部上に配置され、該突起部の一部の幅よりも幅が大きく形成された光導波路と該光導波路を覆い、かつ前記突起部の一部にも少なくとも接触するように配置され、該光導波路よりも屈折率の低い低屈折率層を設けることを特徴とする。
【0013】
(2) 上記(1)に記載の光導波路素子において、該低屈折率層の幅は、5μm以下であることを特徴とする。
【0014】
(3) 上記(2)に記載の光導波路素子において、該低屈折率層は、光導波路のスポットサイズ変換部の一部を構成することを特徴とする。
【0015】
(4) 上記(1)に記載の光導波路素子において、該突起部の両脇に凹部が形成され、該凹部に接触するように該低屈折率層が配置されていることを特徴とする。
【0016】
(5) 上記(1)に記載の光導波路素子において、該突起部の屈折率は、該光導波路の屈折率より低いことを特徴とする。
【0017】
(6) 上記(1)に記載の光導波路素子において、該基板は、保持基板と該保持基板上に形成された薄膜層とを有し、該突起部が該薄膜層に形成されていることを特徴とする。
【0018】
(7) 上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の光導波路素子は筐体内に収容され、
該光導波路に光波を入力又は出力する光ファイバを備えることを特徴とする光変調デバイスである。
【0019】
(8) 上記(7)に記載の光変調デバイスにおいて、該制御電極は、該光導波路を伝搬する光波を変調するための変調電極であり、該変調電極に入力する変調信号を増幅する電子回路を該筐体の内部に有することを特徴とする。
【0020】
(9) 上記(8)に記載の光変調デバイスと、該光変調デバイスに光波を入力する光源と、該光変調デバイスに変調信号を出力する電子回路とを有することを特徴とする光送信装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、基板上に光導波路を形成した光導波路素子において、基板表面に形成される突起部と、該突起部上に配置され、該突起部の一部の幅よりも幅が大きく形成された光導波路と該光導波路を覆い、かつ前記突起部の一部にも少なくとも接触するように配置され、該光導波路よりも屈折率の低い低屈折率層を設けるため、光導波路と低屈折率層との接触面積を大きくでき、両者の密着性を高めることが可能となる。しかも、光導波路の下面側に回り込むように低屈折率層が配置され、アンカー効果を発揮し、低屈折率層の剥離を効果的に抑制することが可能となる。
さらに、このような優れた特性を備えた光導波路素子を用いることで、同様の効果を奏する光変調デバイスや光送信装置も提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】
図1の点線枠Xのスポットサイズ変換部の一例を示す平面図である。
【
図3】
図2の一点鎖線A-A’における従来例を示す断面図である。
【
図4】
図2の一点鎖線B-B’における従来例を示す断面図である。
【
図5】
図1の点線枠Yの光導波路の一例を示す平面図である。
【
図6】
図5の一点鎖線E-E’における従来例を示す断面図である。
【
図7】本発明の光導波路素子の一例を示す、
図2の一点鎖線A-A’における断面図である。
【
図8】本発明の光導波路素子の一例を示す、
図2の一点鎖線B-B’における断面図である。
【
図9】本発明の光導波路素子の一例を示す、
図5の一点鎖線E-E’における断面図である。
【
図10】本発明の光導波路素子の第2の実施例を示す断面図である。
【
図11】本発明の光導波路素子の第3の実施例を示す断面図である。
【
図12】本発明の光導波路素子の第4の実施例を示す断面図である。
【
図13】本発明の光導波路素子の第5の実施例を示す断面図である。
【
図14】本発明の光導波路素子の一例を示す、
図2の一点鎖線C-C’における断面図である。
【
図15】本発明の光導波路素子の第6の実施例を示す断面図である。
【
図16】本発明の光導波路素子の第7の実施例を示す平面図である。
【
図18】
図11に示す実施例の各部分のサイズを説明する図である。
【
図19】本発明の光送信装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の光導波路素子について、好適例を用いて詳細に説明する。
本発明の光導波路素子の一例を示す断面図を
図7乃至9に示す。
図7は
図2の一点鎖線A-A’に対応する断面図、
図8は
図2の一点鎖線B-B’に対応する断面図、
図9は、
図5の一点鎖線E-E’に対応する断面図である。
本発明の光導波路素子は、基板上に光導波路10を形成した光導波路素子において、基板表面に形成される突起部40と、該突起部上に配置され、該突起部の一部の幅よりも幅が大きく形成された光導波路10と該光導波路を覆い、かつ前記突起部の一部にも少なくとも接触するように配置され、該光導波路よりも屈折率の低い低屈折率層2を設けることを特徴とする。
【0024】
本発明の光導波路素子に使用される基板としては、電気光学効果を有する基板が利用でき、具体的には、ニオブ酸リチウム(LN)やタンタル酸リチウム(LT)、PLZT(ジルコン酸チタン酸鉛ランタン)などの基板や、これらの基板材料にMgOなどをドープした基材が使用可能である。また、これらの材料をスパッタ法、蒸着法、又はCVD法などの気相成長法を利用して膜形成することも可能である。また、電気光学効果を有する基板を別の基板に接合した後に、電気光学基板を薄膜加工した基板(薄板)を用いることもできる。さらに、半導体基板やEOポリマーなどの有機材料の基板なども利用可能である。
【0025】
光導波路を形成した基板1は、機械的強度を高めるため、基板1の下側に、保持基板が接合されている。基板1と保持基板3とは、直接接合又は樹脂等の接着層を介して接着固定される。直接接合する保持基板としては、光導波路や光導波路を形成した基板よりも屈折率が低くいことが好ましいが、これに限定されるものではない。なお、直接接合に際しては、必要に応じて、接合界面にSiO2等の薄膜を形成しても良い。
基板1の屈折率よりも保持基板の屈折率が高い場合には、基板1と保持基板の間に基板1より低い屈折率の層が設けられる。また、保持基板は、基板1と熱膨張率が近い材料、例えば水晶やガラス等の酸化物層を含む基板が好適に利用される。さらに、基板1と同じLN基板やシリコン基板、さらにはSOI、LNOIと略されるシリコン基板上に酸化ケイ素層を形成した複合基板やLN基板上に酸化ケイ素層を形成した複合基板を利用することも可能である。
【0026】
本発明における「基板」とは、光導波路を形成する基板1のみを意味する場合だけでなく、基板1を薄板や薄膜で構成した場合には、上述したような保持基板や後述する突起部を形成する層を含んで「基板」と称している。
【0027】
光導波路10の形成方法としては、光導波路以外の基板1をエッチングしたり、光導波路の両側に溝を形成するなど、基板に光導波路に対応する部分を凸状としたリブ型導波路を利用することが可能である。さらに、リブ型の光導波路に合わせて、Tiなどを熱拡散法やプロトン交換法などで基板表面に拡散させることにより、屈折率をより高くすることも可能である。リブ型導波路のサイズとしては、光の閉じ込めを高めるため、1μm程度の幅や高さの微細な形状となっている。光導波路10は、光導波路以外の基板1を全て除去したチャネル型導波路でも良いし、一部を残したリブ型導波路でも良い。本発明における「リブ型」の説明は、チャネル型も含んで「リブ型」と称している。
【0028】
光導波路の断面の形状はリブ型で四角形、台形、三角形、半円など種々の形状が採用可能である。例えば、
図7に示すような、三角導波路の底辺の2つの角度が90度より小さい場合には、三角形は横方向に大きくなるのでTEモードを保持しやすくなる。
【0029】
光変調器など光導波路10に電界を印加する場合には、光導波路10上又はそれに近接して制御電極(不図示)が形成される。制御電極には、光導波路に変調信号を印加する変調電極やDCバイアス電圧を印加するDCバイアス電極がある。制御電極の形成方法は、下地電極をスパッタ法、蒸着法等で形成し、その後メッキ法で厚みのある電極に形成される。
【0030】
本発明の光導波路素子の特徴は、
図7乃至9に示すように、光導波路10を突起部40の上に形成することである。そして、突起部40の一部の幅よりも光導波路10の幅をより大きく構成することで、光導波路を覆う低屈折率層と光導波路との密着性を高め、さらに、光導波路と突起部との組み合わせでアンカー効果を生じさせることが可能となる。
【0031】
突起部40を形成する薄膜層4は、SiO2等の薄膜層が利用可能である。突起部40を形成するには、突起部となる薄膜層を形成した後に、光導波路となる薄板や薄膜層を形成し、光導波路10を形成した後、ウエットエッチング等で薄膜層4に突起部40を形成する。このため、光導波路を構成する材料よりエッチング速度が速く、かつ、屈折率の低い材料(例えば、SiO2やAl2O3)であれば、薄膜層4の材料として使用が可能である。
【0032】
突起部を構成する材料の屈折率は、光導波路10を構成する材料よりも屈折率が低いことが好ましい。また、スポットサイズ変換部の一部のコア部を低屈折率層2が構成する場合には、突起部を構成する薄膜層4の屈折率は、低屈折率層2よりも低い屈折率であることがより好ましい。当然、スポットサイズ変換部以外では、薄膜層4の屈折率が、低屈折率層2よりも高くなっても良い。
【0033】
光導波路を覆うように配置する低屈折率層2としては、フォトレジストなどの樹脂材料の一部を基板上に残した永久レジストが好適に使用される。フォトレジストに使用されるノボラック樹脂を使用することが可能である。低屈折率層2には、光導波路10よりも低い屈折率であり、透明性が高く、光導波路10の表面の粗さによる伝搬光の散乱を抑制する効果があることが好ましい。また、突起部40が形成する隙間に入り込む流動性があり、硬化による膨張が殆ど無く、収縮も少ない材料が好ましい。
【0034】
一般的に、低屈折率層2の幅が狭い程、光導波路10含む基板との密着性は低下する。特に、光導波路10の幅が1μm前後に設定される場合には、低屈折率層2の幅をその数倍、例えば5μm以下に設定すると、光導波路と低屈折率層との密着性が低下し、光導波路素子の製造工程や使用中に容易に剥離する原因となる。特に、スポットサイズ変換部で低屈折率層2を使用する場合は、低屈折率層自体が光導波路の一部を構成するため、MFDに合わせて、例えば5μm以下、さらには3μm以下の幅に設定される。
なお、本発明は、スポットサイズ変換部の低屈折率層に使用されるだけでなく、光導波路10を覆う低屈折率層で、低屈折率層の幅が狭い部分には好適に利用可能である。
【0035】
図10乃至13には、
図7で示す光導波路部分における他の実施例を示す。
図10では、突起部41の側面が逆「ハ」の字になったものである。
図11は、突起部42の側面が曲線形状の「ハ」の字になったものであり、突起部の一部にくびれを形成したものである。
図10及び
図11の光導波路素子では、
図7に示す幅一定のものに比較し、低屈折率層との接触面積が増大し、アンカー効果も高くなる。
【0036】
図12は、突起部43の両脇に凹部44が形成され、該凹部に接触するように低屈折率層2を配置している。また、
図13では、突起部45の両脇に凹部46を形成すると共に、該凹部46の内面を曲面となるよう構成している。
図12及び
図13のように凹部(44,46)により、低屈折率層2との接触面積をより一層増加させることが可能となる。また、
図13に示すように、凹部の内面を曲面で構成することで、低屈折率層2が、例えば、熱硬化する際の収縮や膨張による内部応力の発生を緩和することができる。
【0037】
図14は、
図2に一点鎖線C-C’における断面図であり、テーパー状の先端部分においても突起部に対応して凹部47を形成することで、光導波路10(基板1)の端部における低屈折率層2の剥離を抑制することも可能となる。
【0038】
図15は、光導波路10の一部(主に上側部分)に散乱抑制膜5としてSiO
2膜を配置し、この散乱抑制膜5を覆うように低屈折率層2を配置したものである。SiO
2で形成した散乱抑制膜5と永久レジストで構成した低屈折率層とは密着性が悪いが、低屈折率層が光導波路10及び突起部40を覆うように配置されているため、アンカー効果により低屈折率層2の剥離を抑制することが可能となる。
【0039】
図16及び
図17は、基板端部付近に配置される補強部材の接着の様子を説明する図である。
図17は
図16の一点鎖線D-D’における断面図を示している。光導波路10を覆う低屈折率層2を配置し、その上に接着層6を介して補強部材7を配置している。スポットサイズ変換部を挟むようにLN層の一部11を残し、薄膜層4を用いてLN層11の下部にも、LN層の内側に入り込んだ突起部48を設けることで、接着層6と薄膜層4との接触面積を増加するだけでなくLN層11のアンカー効果により、接着層の剥離も防止することが可能となる。
【0040】
図18は、
図11に示した実施例を参考に、各部の寸法を示した図である。光導波路素子自体のサイズや基板に形成する光導波路の形状などにより、寸法は適宜調整される。特に、スポットサイズ変換部では光導波路10等の幅も場所によって異なるため、各部の寸法には一定の幅がある。
【0041】
例えば、光導波路10の幅aは、スポットサイズ変換部以外では、3μm以下であり、通常、1μm前後に設定される。スポットサイズ変換部内では、LN層などで構成した光導波路10の幅aは、3μm以下、より好ましくは1μm以下の範囲で変化する。
【0042】
光導波路10を覆う低屈折率層2の幅dは、スポットサイズ変換部以外では、4~50μmの範囲で適宜設定される。高さheは、2~5μm程度に設定される。ただし、低屈折率層2をスポットサイズ変換部の構成部分として利用する場合には、その高さに合わせて、例えば3μm前後の高さに設定される。スポットサイズ変換部での低屈折率層2の幅dは、使用場所に応じて1~10μmの範囲に設定される。特に、幅dが5μm以下の場合には、低屈折率層2の剥離を防止するため、本発明の突起部を用いた構成が不可欠となる。
【0043】
突起部を構成する薄膜層4は、突起部の高さhを考慮して、例えば5μm以下の厚みに設定される。突起部の高さは、低屈折率層2の永久レジストが入り込む隙間が確保できれば良く、例えば、10~500nmの範囲に設定される。
【0044】
突起部の形状は、アンカー効果を生じるには、光導波路の幅aに対し、突起部の頂部の幅bの比b/aは90%以下に設定することが好ましい。また、光導波路10を突起部が安定して支えるためには突起部の底部の幅cの比c/bは100%以上、比c/aも好ましくは100%以上である。
【0045】
次に、本発明の光導波路素子を、光変調デバイスや光送信装置に適用した例について説明する。以下では、広帯域幅コヒーレントドライバ変調器(HB-CDM:High Bandwidth-Coherent Driver Modulator)の一例を用いて説明するが、本発明はこれに限らず、光位相変調器、偏波合成機能を備えた光変調器やより多い又はより少ないマッハツェンダー型光導波路を集積した光導波路素子、シリコンなど他材料で構成した光導波路素子との接合デバイス、センサ用途のデバイスなどにも適用可能である。
【0046】
図19に示すように、光導波路素子は、光導波路基板1に形成された光導波路10と、該光導波路10を伝搬する光波を変調する変調電極などの制御電極(不図示)とを有しており、筐体CA内に収容される。さらに、光導波路に光波を入出力する光ファイバ(F)を設けることで、光変調デバイスMDを構成することができる。
図19では、光ファイバFは、光学レンズを備えた光学ブロックやレンズ鏡筒、偏波合波部OBなどを用いて光導波路素子内の光導波路10と光学的に結合されている。これに限らず、光ファイバを筐体の側壁を貫通する貫通孔を介して筐体内に導入し、光学部品又は基板と、光ファイバとを直接接合したり、または光ファイバ端部にレンズ機能を有した光ファイバを光導波路素子内の光導波路と光学的に結合しても良い。また、光ファイバや光学ブロックとの接合を安定的に行うため、光導波路基板1の端面に沿って補強部材(不図示)を重ねて配置することも可能である。
【0047】
光変調デバイスMDに変調動作を行わせる変調信号Soを出力する電子回路(デジタル信号プロセッサーDSP)を、光変調デバイスMDに接続することにより、光送信装置OTAを構成することが可能である。光導波路素子に印加する変調信号Sを得るためには、デジタル信号プロセッサーDSPから出力される変調信号Soを増幅する必要がある。このため、
図19では、ドライバ回路DRVを使用し、変調信号を増幅している。ドライバ回路DRVやデジタル信号プロセッサーDSPは、筐体CAの外部に配置することも可能であるが、筐体CA内に配置することも可能である。特に、ドライバ回路DRVを筐体内に配置することで、ドライバ回路からの変調信号の伝搬損失をより低減することが可能となる。
【0048】
光変調デバイスMDへの入力光L1は、光送信装置OTAの外部から供給されても良いが、
図19に示すように半導体レーザー(LD)を光源とすることも可能である。光変調デバイスMDで変調された出力光L2は、光ファイバFにより外部に出力される。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上説明したように、本発明によれば、光導波路を覆う低屈折率層の幅が狭くなった場合でも、低屈折率層の剥離を防止した光導波路素子を提供することが可能となる。さらには、その光導波路素子を用いた光変調デバイスと光送信装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 光導波路を形成する基板(薄板,膜体)
2 低屈折率層
3 誘電体層
4 突起部を形成する層(薄膜層)
10 光導波路(リブ型光導波路)
40~43、45 突起部
F 光ファイバ
LD 光源
CA 筐体
MD 光変調デバイス
DRV ドライバ回路
DSP デジタル信号プロセッサー
OTA 光送信装置