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特開2024-107905水性分散体および該水性分散体から形成された樹脂膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107905
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】水性分散体および該水性分散体から形成された樹脂膜
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/26 20060101AFI20240802BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20240802BHJP
   C08F 255/00 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
C08L23/26
C08K5/17
C08F255/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012088
(22)【出願日】2023-01-30
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100172605
【弁理士】
【氏名又は名称】岩木 郁子
(72)【発明者】
【氏名】片岡 裕貴
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
【Fターム(参考)】
4J002BB041
4J002BB111
4J002BB121
4J002BB141
4J002BB171
4J002BB191
4J002BB201
4J002BN031
4J002BN061
4J002EU006
4J002EU026
4J002EU036
4J002GC00
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
4J002HA06
4J026AA11
4J026AA12
4J026AA13
4J026AA14
4J026BA24
4J026BA27
4J026BA35
4J026DB02
4J026DB13
4J026EA02
4J026GA09
(57)【要約】
【課題】基材との密着性に優れた樹脂膜を形成可能な水性分散体であって、該樹脂膜からのアルデヒド類の検出量が低減された水性分散体を提供する。
【解決手段】α,β-不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂(A)、および、式(I):
[式(I)中、Rは炭素数1~6の1価の有機基を表し、nは0~3の整数を表す]
で表されるアミン化合物(B)を含む、水性分散体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α,β-不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂(A)、および、式(I):
【化1】
[式(I)中、Rは炭素数1~6の1価の有機基を表し、nは0~3の整数を表す]
で表されるアミン化合物(B)を含む、水性分散体。
【請求項2】
ポリオレフィン系樹脂(A)の基本骨格であるポリオレフィンは、エチレン、プロピレンおよび1-ブテンからなる群から選択される少なくとも2つのオレフィンの共重合体を含む、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項3】
ポリオレフィン系樹脂(A)の基本骨格であるポリオレフィンにおいて、エチレン単位、プロピレン単位および1-ブテン単位の合計量に基づく、プロピレン単位の量は30~95mol%であり、エチレン単位の量は0~60mol%であり、1-ブテン単位の量は0~60mol%であり、かつ、エチレン単位および1-ブテン単位の合計量は70~5mol%である、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項4】
ポリオレフィン系樹脂(A)は、無水マレイン酸で変性されたポリオレフィン系樹脂である、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項5】
前記無水マレイン酸で変性されたポリオレフィン系樹脂は、直鎖アルキル基の炭素数が1~18である直鎖アルキル(メタ)アクリレートおよび/または分岐アルキル基の炭素数が3~18である分岐アルキル(メタ)アクリレートおよび/またはシクロアルキル基の炭素数が3~18であるシクロアルキル(メタ)アクリレートでさらに変性されたポリオレフィン系樹脂である、請求項4に記載の水性分散体。
【請求項6】
式(I)中のRは、炭素数1~6の直鎖状、分枝状または環状の1価の炭化水素基であり、該炭化水素基に含まれる少なくとも1つの水素原子が水酸基、ハロゲノ基およびアミノ基からなる群から選択される置換基で置換されていてよく、該炭化水素基に含まれる少なくとも1つの炭素原子が酸素原子に置き換わっていてもよい、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項7】
式(I)中のRは、-R-X-Rで表され、Rは、炭素数1~2の直鎖状または分枝状の2価の炭化水素基を表し、Xは単結合または-O-を表し、Rは、水素原子、または、少なくとも1つの水素原子が水酸基、ハロゲノ基およびアミノ基からなる群から選択される置換基で置換されていてよい、炭素数1~3の直鎖状、分枝状または環状の1価の炭化水素基を表す、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項8】
アミン化合物(B)の含有量は、ポリオレフィン系樹脂(A)中のカルボキシル基に対して0.5倍当量~3.0倍当量である、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項9】
ポリオレフィン系樹脂(A)とアミン化合物(B)の合計含有量は、水性分散体の固形分量に対して10~100質量%である、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項10】
アミン化合物(B)の沸点は300℃以下である、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項11】
ポリオレフィン系樹脂(A)の融点は50~150℃である、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項12】
ポリオレフィン系樹脂(A)の重量平均分子量は10,000~300,000である、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項13】
ポリオレフィン系樹脂(A)の酸価は2~100mgKOH/gである、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載の水性分散体から形成された樹脂膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性分散体および該水性分散体から形成された樹脂膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロピレン単独重合体やプロピレンとα-オレフィンとの共重合体といったポリオレフィン樹脂は、機械的物性、耐熱性、耐薬品性、耐水性などに優れると共に安価であることから、自動車部品や家電製品等の幅広い分野に用いられている。
【0003】
一般に、ポリオレフィン樹脂からなる基材は、ポリオレフィン樹脂以外の物質との接着性が低く、例えばポリウレタン樹脂等の極性が高い物質の接着や塗装が困難である。そこで、このような物質との接着や塗装を可能とすべく、基材に対して接着性を有する前処理剤(例えば接着剤、バインダー、プライマー等)を予め基材表面に塗工する方法などが採用されている。このような前処理剤としては、酸変性ポリオレフィン等の変性ポリオレフィン系樹脂を含む水性分散体が挙げられる。例えば、特許文献1には、互いに分子量の異なる2種類のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたポリオレフィンを含む水性分散体が記載されている。特許文献2には、芳香環を1個以上有する化合物で変性されているか、芳香環を1個以上有する化合物を含有する、ポリオレフィン系樹脂を含む水性分散体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/044920号
【特許文献2】特開2022-158661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
変性ポリオレフィン系樹脂を含む水性分散体から形成される樹脂膜に対し、基材との密着性向上の観点から、従来種々の検討がなされてはいるが、本発明者の検討によれば、水性分散体の組成によっては、形成される樹脂膜からアルデヒド類が検出される場合があることがわかった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、基材との密着性に優れた樹脂膜を形成可能な水性分散体であって、該樹脂膜からのアルデヒド類の検出量が低減された水性分散体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、α,β-不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂(A)と、特定の式で表されるアミン化合物(B)を含む水性分散体によって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明には、以下の好適な態様が含まれる。
【0008】
〔1〕α,β-不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂(A)、および、式(I):
【化1】
[式(I)中、Rは炭素数1~6の1価の有機基を表し、nは0~3の整数を表す]
で表されるアミン化合物(B)を含む、水性分散体。
〔2〕ポリオレフィン系樹脂(A)の基本骨格であるポリオレフィンは、エチレン、プロピレンおよび1-ブテンからなる群から選択される少なくとも2つのオレフィンの共重合体を含む、〔1〕に記載の水性分散体。
〔3〕ポリオレフィン系樹脂(A)の基本骨格であるポリオレフィンにおいて、エチレン単位、プロピレン単位および1-ブテン単位の合計量に基づく、プロピレン単位の量は30~95mol%であり、エチレン単位の量は0~60mol%であり、1-ブテン単位の量は0~60mol%であり、かつ、エチレン単位および1-ブテン単位の合計量は70~5mol%である、〔1〕または〔2〕に記載の水性分散体。
〔4〕ポリオレフィン系樹脂(A)は、無水マレイン酸で変性されたポリオレフィン系樹脂である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の水性分散体。
〔5〕前記無水マレイン酸で変性されたポリオレフィン系樹脂は、直鎖アルキル基の炭素数が1~18である直鎖アルキル(メタ)アクリレートおよび/または分岐アルキル基の炭素数が3~18である分岐アルキル(メタ)アクリレートおよび/またはシクロアルキル基の炭素数が3~18であるシクロアルキル(メタ)アクリレートでさらに変性されたポリオレフィン系樹脂である、〔4〕に記載の水性分散体。
〔6〕式(I)中のRは、炭素数1~6の直鎖状、分枝状または環状の1価の炭化水素基を表し、該炭化水素基に含まれる少なくとも1つの水素原子が水酸基、ハロゲノ基およびアミノ基からなる群から選択される置換基で置換されていてよく、該炭化水素基に含まれる少なくとも1つの炭素原子が酸素原子に置き換わっていてもよい、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の水性分散体。
〔7〕式(I)中のRは、-R-X-Rで表され、Rは、炭素数1~2の直鎖状または分枝状の2価の炭化水素基を表し、Xは単結合または-O-を表し、Rは、水素原子、または、少なくとも1つの水素原子が水酸基、ハロゲノ基およびアミノ基からなる群から選択される置換基で置換されていてよい、炭素数1~3の直鎖状、分枝状または環状の1価の炭化水素基を表す、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の水性分散体。
〔8〕アミン化合物(B)の含有量は、ポリオレフィン系樹脂(A)中のカルボキシル基に対して0.5倍当量~3.0倍当量である、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の水性分散体。
〔9〕ポリオレフィン系樹脂(A)とアミン化合物(B)の合計含有量は、水性分散体の固形分量に対して10~100質量%である、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の水性分散体。
〔10〕アミン化合物(B)の沸点は300℃以下である、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の水性分散体。
〔11〕ポリオレフィン系樹脂(A)の融点は50~150℃である、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の水性分散体。
〔12〕ポリオレフィン系樹脂(A)の重量平均分子量は10,000~300,000である、〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の水性分散体。
〔13〕ポリオレフィン系樹脂(A)の酸価は2~100mgKOH/gである、〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の水性分散体。
〔14〕〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の水性分散体から形成された樹脂膜。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基材との密着性に優れた樹脂膜を形成可能な水性分散体であって、該樹脂膜からのアルデヒド類の検出量が低減された水性分散体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更をすることができる。また、特定のパラメータについて複数の上限値および下限値が記載されている場合、これらの上限値および下限値のうち任意の上限値と下限値とを組合せて好適な数値範囲とすることができる。
【0011】
本発明の水性分散体は、α,β-不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂(A)、および、式(I):
【化2】
[式(I)中、Rは炭素数1~6の1価の有機基を表し、nは0~3の整数を表す]
で表されるアミン化合物(B)を含む。
【0012】
<ポリオレフィン系樹脂(A)>
ポリオレフィン系樹脂(A)は、単独重合体または共重合体であってよい。単独重合体としては、例えばα-オレフィンの単独重合体が挙げられる。共重合体としては、2種以上のα-オレフィンの共重合体、α-オレフィンと他の単量体との共重合体が挙げられる。
【0013】
α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-へプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。これらの中でも、基材との密着性の観点から、エチレン、プロピレンおよび1-ブテンが好ましい。
【0014】
α-オレフィンと共重合し得る他の単量体としては、環状オレフィン、ビニル芳香族化合物、ポリエン化合物等が挙げられる。α-オレフィンと他の単量体との共重合体において、α-オレフィンと他の単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせ用いてもよい。共重合体の形態は、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等のいずれであってもよい。これらは過酸化物等で低分子量化、高分子量化したものであってもよい。
【0015】
環状オレフィンとしては、例えばノルボルネン、5-メチルノルボルネン、5-エチルノルボルネン、5-プロピルノルボルネン、5,6-ジメチルノルボルネン、1-メチルノルボルネン、7-メチルノルボルネン、5,5,6-トリメチルノルボルネン、5-フェニルノルボルネン、5-ベンジルノルボルネン、5-エチリデンノルボルネン、5-ビニルノルボルネン、1,4:5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-メチル-1,4:5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-エチル-1,4:5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2,3-ジメチル-1,4:5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-ヘキシル-1,4:5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-エチリデン-1,4:5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、1,5-ジメチル-1,4:5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-シクロへキシル-1,4:5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-イソブチル-1,4:5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、1,2-ジヒドロジシクロペンタジエン、5-メトキシノルボルネン、5,6-ジカルボキシルノルボルネンアンハイドレート、5-ジメチルアミノノルボルネン、5-シアノノルボルネン、シクロペンテン、3-メチルシクロペンテン、4-メチルシクロペンテン、3,4-ジメチルシクロペンテン、3,5-ジメチルシクロペンテン、シクロへキセン、3-メチルシクロへキセン、4-メチルシクロヘキセン、3,4-ジメチルシクロヘキセン、シクロへプテン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0016】
ビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルキシレン、p-tert-ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0017】
ポリエン化合物としては、例えば直鎖状または分枝状の脂肪族共役ポリエン化合物、脂環式共役ポリエン化合物、脂肪族非共役ポリエン化合物、脂環式非共役ポリエン化合物、芳香族非共役ポリエン化合物等が挙げられる。これらは、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0018】
脂肪族共役ポリエン化合物としては、例えば1,3-ブタジエン、イソプレン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-プロピル-1,3-ブタジエン、2-イソプロピル-1,3-ブタジエン、2-ヘキシル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ヘキサジエン、2-メチル-1,3-オクタジエン、2-メチル-1,3-デカジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-オクタジエン、2,3-ジメチル-1,3-デカジエン等が挙げられる。
【0019】
脂環式共役ポリエン化合物としては、例えば2-メチル-1,3-シクロペンタジエン、2-メチル-1,3-シクロヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-シクロペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-シクロヘキサジエン等が挙げられる。
【0020】
脂肪族非共役ポリエン化合物としては、例えば1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、1,8-ノナジエン、1,9-デカジエン、1,13-テトラデカジエン、1,5,9-デカトリエン、3-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-エチル-1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,5-ヘキサジエン、3,3-ジメチル-1,4-ヘキサジエン、3,4-ジメチル-1,5-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘプタジエン、5-エチル-1,4-ヘプタジエン、5-メチル-1,5-ヘプタジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、5-エチル-1,5-ヘプタジエン、3-メチル-1,6-ヘプタジエン、4-メチル-1,6-ヘプタジエン、4,4-ジメチル-1,6-ヘプタジエン、4-エチル-1,6-ヘプタジエン、4-メチル-1,4-オクタジエン、5-メチル-1,4-オクタジエン、4-エチル-1,4-オクタジエン、5-エチル-1,4-オクタジエン、5-メチル-1,5-オクタジエン、6-メチル-1,5-オクタジエン、5-エチル-1,5-オクタジエン、6-エチル-1,5-オクタジエン、6-メチル-1,6-オクタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、6-エチル-1,6-オクタジエン、6-プロピル-1,6-オクタジエン、6-ブチル-1,6-オクタジエン、4-メチル-1,4-ノナジエン、5-メチル-1,4-ノナジエン、4-エチル-1,4-ノナジエン、5-エチル-1,4-ノナジエン、5-メチル-1,5-ノナジエン、6-メチル-1,5-ノナジエン、5-エチル-1,5-ノナジエン、6-エチル-1,5-ノナジエン、6-メチル-1,6-ノナジエン、7-メチル-1,6-ノナジエン、6-エチル-1,6-ノナジエン、7-エチル-1,6-ノナジエン、7-メチル-1,7-ノナジエン、8-メチル-1,7-ノナジエン、7-エチル-1,7-ノナジエン、5-メチル-1,4-デカジエン、5-エチル-1,4-デカジエン、5-メチル-1,5-デカジエン、6-メチル-1,5-デカジエン、5-エチル-1,5-デカジエン、6-エチル-1,5-デカジエン、6-メチル-1,6-デカジエン、6-エチル-1,6-デカジエン、7-メチル-1,6-デカジエン、7-エチル-1,6-デカジエン、7-メチル-1,7-デカジエン、8-メチル-1,7-デカジエン、7-エチル-1,7-デカジエン、8-エチル-1,7-デカジエン、8-メチル-1,8-デカジエン、9-メチル-1,8-デカジエン、8-エチル-1,8-デカジエン、6-メチル-1,6-ウンデカジエン、9-メチル-1,8-ウンデカジエン、6,10-ジメチル-1,5,9-ウンデカトリエン、5,9-ジメチル-1,4,8-デカトリエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、13-エチル-9-メチル-1,9,12-ペンタデカトリエン、5,9,13-トリメチル-1,4,8,12-テトラデカジエン、8,14,16-トリメチル-1,7,14-ヘキサデカトリエン、4-エチリデン-12-メチル-1,11-ペンタデカジエン等が挙げられる。
【0021】
脂環式非共役ポリエン化合物としては、例えばビニルシクロヘキセン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、シクロオクタジエン、2,5-ノルボルナジエン、2-メチル-2,5-ノルボルナジエン、2-エチル-2,5-ノルボルナジエン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、1,4-ジビニルシクロヘキサン、1,3-ジビニルシクロヘキサン、1,3-ジビニルシクロペンタン、1,5-ジビニルシクロオクタン、1-アリル-4-ビニルシクロヘキサン、1,4-ジアリルシクロヘキサン、1-アリル-5-ビニルシクロオクタン、1,5-ジアリルシクロオクタン、1-アリル-4-イソプロペニルシクロヘキサン、1-イソプロペニル-4-ビニルシクロヘキサン、1-イソプロペニル-3-ビニルシクロペンタン、メチルテトラヒドロインデン等が挙げられる。
【0022】
芳香族非共役ポリエン化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、ビニルイソプロペニルベンゼン等が挙げられる。
【0023】
これらの中でも、形成される樹脂膜の基材との密着性、および耐水性の観点から、ポリオレフィン系樹脂(A)は、好ましくはα-オレフィンの共重合体であり、より好ましくはプロピレン以外のα-オレフィンとプロピレンとの共重合体であり、さらに好ましくはエチレン-プロピレン系共重合体および/またはプロピレン-ブテン系共重合体(例えばプロピレン・1-ブテン共重合体)であり、さらにより好ましくはエチレン-プロピレン系共重合体である。なお、本明細書において、共重合体中のエチレンに由来する構成単位を「エチレン単位」と略称することがある。他の構成単位も同様に略称することがある。
【0024】
本発明の一実施態様において、ポリオレフィン系樹脂(A)の基本骨格であるポリオレフィンにおいて、エチレン単位、プロピレン単位および1-ブテン単位の合計量に基づく、プロピレン単位の量は、基材との密着性および耐水性の観点からの観点から、好ましくは30~95mol%、より好ましくは50~90mol%、さらに好ましくは60~85mol%である。エチレン単位の量は、低温造膜性向上の観点から、エチレン単位、プロピレン単位および1-ブテン単位の合計量に基づいて、好ましくは0~60mol%、より好ましくは5~40mol%、さらに好ましくは10~20mol%である。1-ブテン単位の量は、低温造膜性向上の観点から、エチレン単位、プロピレン単位および1-ブテン単位の合計量に基づいて、0~60mol%であり、より好ましくは0~40mol%、さらに好ましくは0~20mol%である。また、エチレン単位および1-ブテン単位の合計量は、基材との密着性、耐水性および低温造膜性向上の観点から、エチレン単位、プロピレン単位および1-ブテン単位の合計量に基づいて、好ましくは5~70mol%、より好ましくは8~50mol%、さらに好ましくは10~30mol%である。なお、エチレン単位、プロピレン単位および1-ブテン単位等の含有量は、例えば13C-NMRを用いて測定することができ、または、原料の仕込み比から算出することもできる。
【0025】
本発明の好ましい一実施態様において、ポリオレフィン系樹脂(A)の基本骨格であるポリオレフィンにおいて、エチレン単位、プロピレン単位および1-ブテン単位の合計量に基づく、プロピレン単位の量は30~95mol%であり、エチレン単位の量は0~60mol%であり、1-ブテン単位の量は0~60mol%であり、かつ、エチレン単位および1-ブテン単位の合計量は70~5mol%である。
【0026】
ポリオレフィン系樹脂(A)におけるプロピレン単位の含有量は、基材との密着性、および耐水性の観点から、ポリオレフィン系樹脂(A)を構成する構造単位の合計量に対して、好ましくは40モル%以上、より好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは60モル%以上、さらにより好ましくは70モル%以上であり、好ましくは99モル%以下、より好ましくは95モル%以下、さらに好ましくは90モル%以下である。
【0027】
本発明の一実施態様において、ポリオレフィン系樹脂(A)がα-オレフィンと他の単量体との共重合体である場合、他の単量体単位の含有量は、基材との密着性および耐水性の観点から、ポリオレフィン系樹脂(A)のモル量に対して、好ましくは50モル%以下、より好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下である。この態様において、他の単量体の含有量は、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは1モル%以上である。なお、他の単量体単位の含有量は、例えば13C-NMRを用いて測定することができ、または、原料の仕込み比から算出することもできる。
【0028】
ポリオレフィン系樹脂(A)は、従来から既知の重合方法、例えばラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、配位重合等により製造することが可能であり、それぞれリビング重合的であってよい。また、上記重合方法は、溶液重合、スラリー重合、バルク重合、固相重合、気相重合等いずれの重合形態であってもよい。溶液重合やスラリー重合の場合、溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒、塩化メチレン、四塩化炭素、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート等のエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メトキシプロパノール、2-エトキシプロパノール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶媒、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒などが挙げられる。これらの中でも、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、および脂環式炭化水素系溶媒が好ましく、より好ましくはトルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタンおよびシクロヘキサンである。これらの溶媒は、単独または二種以上組み合わせて使用できる。
【0029】
(α,β-不飽和カルボン酸および/またはその酸無水物)
本発明のポリオレフィン系樹脂(A)は、α,β-不飽和カルボン酸および/またはその酸無水物で変性されている。なお、ポリオレフィン系樹脂を変性するために使用される化合物を変性成分と称することがある。例えば、α,β-不飽和カルボン酸および/またはその酸無水物は変性成分である。
【0030】
本明細書において、「変性」には、変性成分が、ポリオレフィン系樹脂(A)と、グラフト反応によりグラフト変性した直接変性、並びに、変性成分が、ポリオレフィン系樹脂(A)を変性している変性基に付加している付加変性が含まれる。
【0031】
α,β-不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸等が挙げられ、これらの中でも、基材との密着性、および耐水性の観点から、(メタ)アクリル酸、マレイン酸が好ましい。本明細書において、アクリル酸およびメタクリル酸を総称して(メタ)アクリル酸という。他の記載も同様の意味である。
【0032】
α,β-不飽和カルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられ、これらの中でも、基材との密着性、および耐水性の観点から、無水マレイン酸が好ましい。
【0033】
α,β-不飽和カルボン酸および/またはその酸無水物による変性量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上、さらにより好ましくは2.0質量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。α,β-不飽和カルボン酸および/またはその酸無水物の変性量が上記の下限以上であると、基材に対する密着性を向上でき、また上記の上限以下であると、耐水性を向上できる。なお、α,β-不飽和カルボン酸および/またはその酸無水物の変性量は、例えばアルカリ滴定法もしくはフーリエ変換赤外分光法を用いて測定することができ、または、原料の仕込み比から算出することもできる。
【0034】
なお、変性ポリオレフィン系樹脂中のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその酸無水物単位は、酸無水物基が保持されたものであっても、開環したものであってもよく、保持されたものと開環したものとの双方であってもよい。また、α,β-不飽和カルボン酸および/またはその酸無水物は単独または二種以上組み合わせて使用できる。なお、α,β-不飽和カルボン酸および/またはその酸無水物は、変性成分として、少なくともポリオレフィン系樹脂の変性に使用されていれば、未変性成分として、変性ポリオレフィン系樹脂に含有されていてもよい。
【0035】
ポリオレフィン系樹脂(A)が無水マレイン酸で変性されたポリオレフィン系樹脂である本発明の好ましい一実施形態において、該ポリオレフィン系樹脂は、直鎖アルキル基の炭素数が1~18である直鎖アルキル(メタ)アクリレートおよび/または分岐アルキル基の炭素数が3~18である分岐アルキル(メタ)アクリレートおよび/またはシクロアルキル基の炭素数が3~18であるシクロアルキル(メタ)アクリレートでさらに変性されたポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。この態様において、上記の直鎖アルキル(メタ)アクリレート、分岐アルキル(メタ)アクリレートおよび/またはシクロアルキル(メタ)アクリレートによる変性量は、基材との密着性や乳化をし易くする観点から、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上、さらにより好ましくは2.0質量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。である。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0036】
直鎖アルキル基の炭素数が1~18である直鎖アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ) アクリレート、n-オクタデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
分岐アルキル基の炭素数が3~18である分岐アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばイソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
シクロアルキル基の炭素数が3~18であるシクロアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば2-エチルへキシルカルビトール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-メチルシクロへキシルメチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
ポリオレフィン系樹脂(A)の融点は、水性分散体の造膜性および基材に対する接着性向上の観点から、好ましくは50~150℃、より好ましくは50~110℃、さらに好ましくは50~90℃である。ポリオレフィン系樹脂(A)の融点は、示差走査熱量計により測定することができる。
【0040】
ポリオレフィン系樹脂(A)の重量平均分子量は、水性分散体の造膜性、水性分散体の安定性向上および基材に対する接着性向上の観点から、好ましくは10,000~300,000、より好ましくは20,000~250,000、さらに好ましくは40,000~200,000である。ポリオレフィン系樹脂(A)の重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーにより測定することができる。
【0041】
ポリオレフィン系樹脂(A)の酸価は、水性分散体の安定性向上および基材との密着性向上の観点から、好ましくは2~100mgKOH/g、より好ましくは5~80mgKOH/g、さらに好ましくは10~60mgKOH/gである。ポリオレフィン系樹脂(A)の酸価は、樹脂を溶解した溶液の、指示薬を用いた滴定法により測定することができる。
【0042】
<アミン化合物(B)>
本発明の水性分散体は、α,β-不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂(A)と、式(I):
【化3】
[式(I)中、Rは炭素数1~6の1価の有機基を表し、nは0~3の整数を表す]
で表されるアミン化合物(B)を含む。本発明の水性分散体は、1種類のアミン化合物(B)を含有してもよいし、2種以上のアミン化合物(B)を含有してもよい。
【0043】
式(I)中のRは、炭素数1~6の1価の有機基を表す。炭素数1~6の1価の有機基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。炭素数1~6の1価の有機基が置換基を有する場合、置換基としては、水酸基、ハロゲノ基、アミノ基、ニトロ基、メルカプト基、ヒドロキシメチル基、カルボキシメチル基、およびホルミル基が挙げられる。ハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などが挙げられる。
【0044】
炭素数1~6の1価の有機基としては、置換基を有していてもよい、炭素数1~6の直鎖状、分枝状または環状の炭化水素基が挙げられ、例えば、置換基を有していてもよい、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-メチル-ブチル基、3-メチルブチル基、2-エチル-プロピル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のアルキル基が挙げられる。Rにおける炭素数1~6の1価の有機基の炭素数は、好ましくは1~5、より好ましくは1~4、さらに好ましくは1~3、さらにより好ましくは1~2である。
【0045】
上記の炭素数1~6の1価の有機基において、炭化水素基に含まれる少なくとも1つの炭素原子が酸素原子に置き換わっていてもよい。このような基としては、エトキシエチル基、エトキシプロピル基等のアルコキシアルキル基が挙げられる。該アルコキシアルキル基も置換基を有していてよい。
【0046】
式(I)中のRは、好ましくは、炭素数1~6の直鎖状、分枝状または環状の1価の炭化水素基を表し、該炭化水素基に含まれる少なくとも1つの水素原子が水酸基、ハロゲノ基およびアミノ基からなる群から選択される置換基で置換されていてよく、該炭化水素基に含まれる少なくとも1つの炭素原子が酸素原子に置き換わっていてもよい、炭素数1~6の直鎖状、分枝状または環状の炭化水素基であり、より好ましくは、-R-X-Rで表され、Rは、炭素数1~2の直鎖状または分枝状の2価の炭化水素基を表し、Xは単結合または-O-を表し、Rは、水素原子、または、少なくとも1つの水素原子が水酸基、ハロゲノ基およびアミノ基からなる群から選択される置換基で置換されていてよい、炭素数1~3の直鎖状、分枝状または環状の炭化水素基を表す。
【0047】
式(I)中のnは0~3の整数を表し、より好ましくは0~2の整数、さらに好ましくは0または1の整数を表す。
【0048】
アミン化合物(B)としては、具体的には、1-メチルピロリジン、1-エチルピロリジン、1-プロピルピロリジン等の1-アルキルピロリジン;1-メチルピペリジン、1-エチルピペリジン、1-プロピルピペリジン等の1-アルキルピペリジン;1-メチルアゼパン、1-エチルアゼパン、1-プロピルアゼパン等の1-アルキルアゼパン;1-ピロジンメタノール、1-ピロリジンエタノール、1-ピロリジンプロパノール、2-(2-(ピロリジン-1-イル)エトキシ)エタノール等の1-ピロリジンアルコール;1-ピぺリジンメタノール、1-ピペリジンエタノール、1-ピペリジンプロパノール、2-(2-(ピペリジン-1-イル)エトキシ)エタノール等の1-ピぺリジンアルコール;1-アゼパンメタノール、1-アゼパンエタノール、1-アゼパンプロパノール、2-(2-(アゼパン-1-イル)エトキシ)エタノール等の1-アゼパンアルコール等が挙げられる。
【0049】
水性分散体がα,β-不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂(A)と式(I)で表されるアミン化合物(B)を含むことにより、基材との密着性に優れた樹脂膜を形成可能であると共に、該樹脂膜からのアルデヒド類の検出量を低減することができる理由は明らかではないが、本発明のアミン化合物(B)がポリオレフィン系樹脂と相互作用することによって、水性分散体における分散質の分散性が良好になり、得られる樹脂膜と基材との密着性を向上できると共に、樹脂膜を製造する際のアルデヒド類、具体的にはホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドの発生を抑制できると考えられる。
【0050】
アミン化合物(B)の含有量は、基材との密着性向上の観点およびアルデヒド類の検出量低減の観点から、水性分散体に含まれるポリオレフィン系樹脂(A)中のカルボキシル基に対して0.5~3.0倍当量であることが好ましく、0.8~2.5倍当量であることがより好ましく、0.9~2.0倍当量であることがさらに好ましい。
【0051】
アミン化合物(B)の沸点は、基材との密着性向上の観点およびアルデヒド類の検出量低減の観点から、好ましくは300℃以下、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。沸点が300℃以下のアミン化合物(B)としては、例えば1-メチルピロリジン(76℃)、1-エチルピロリジン(105℃)、1-メチルピペリジン(107℃)、1-エチルピペリジン(131℃)、1-ピロリジンエタノール(187℃)、1-ピペリジンメタノール(170℃)、1-ピペリジンエタノール(198℃)、1-ピペリジンプロパノール(223℃)等が挙げられる。
【0052】
〔水性分散体〕
本発明の水性分散体は、上記のポリオレフィン系樹脂(A)およびアミン化合物(B)を少なくとも含有する。本発明の水性分散体に含まれるポリオレフィン系樹脂(A)とアミン化合物(B)の合計含有量は、基材との密着性向上の観点、アルデヒド類の検出量低減の観点、および、水性分散体の安定性および塗布性の観点から、水性分散体の固形分量に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらにより好ましくは40質量%以上である。本発明の水性分散体は、例えば、水性接着剤、プライマー、バインダー等であってもよいし、水性接着剤、プライマー、バインダー等を製造するために使用される原料としての水性分散体であってもよい。
【0053】
本発明の水性分散体は、少なくとも水を含有する。水としては、例えば水道水、イオン交換水等を用いてよい。水性分散体中の水の含有量は、分散質の分散性向上の観点から、水性分散体の質量に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、水性分散体の塗布性向上の観点から、好ましくは97質量%以下、より好ましくは90質%以下、さらに好ましくは80質量%以下、さらにより好ましくは70質量%以下である。
【0054】
本発明の水性分散体は、水以外の溶媒を含むこともできる。水以外の溶媒としては、ポリオレフィン系樹脂(A)の重合方法に関して上記に記載した溶媒が挙げられる。これらの溶媒は単独または二種以上組み合わせて使用できる。これらの中でも、水以外の溶媒としては、好ましくは水に1質量%以上溶解する溶媒が挙げられ、より好ましくは水に5質量%以上溶解する溶媒が挙げられ、具体的には、好ましくは、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、シクロヘキサノン、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、シクロヘキサノール、テトラヒドロフラン、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メトキシプロパノール、2-エトキシプロパノール、ジアセトンアルコールが挙げられる。
【0055】
水性分散体中の水以外の溶媒の比率は、水の質量に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、さらにより好ましくは1質量%以下であり、好ましくは0質量%以上である。なお、本明細書において、水性分散体に含有される溶媒を総称して分散溶媒ということがある。
【0056】
水性分散体中における分散質の体積基準のメジアン径は、水性分散体の物理的安定性の観点から、好ましくは30nm以上であり、好ましくは10,000nm以下、より好ましくは1,000nm以下、さらに好ましくは600nm以下、さらにより好ましくは400nm以下である。このメジアン径の値は、後述の実施例欄に記載するように、レーザー回折粒子径測定装置によって測定される値である。
【0057】
水性分散体の固形分量は、水性分散体の物理的安定性および被着体への接着性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。ここで固形分量の値は、上部径65mm、下部径54mmおよび深さ23mmのアルミカップに入れた水性分散体1gを、140℃に保たれた送風乾燥機中で30分間乾燥させて揮発成分を取り除いた後に残る残渣の重量を測定することによって得られる値である。
【0058】
本発明の水性分散体のpHは、水性分散体の物理的安定性の観点から、好ましくは6~12、より好ましくは7~11である。水性分散体のpHは、ガラス電極式水素イオン濃度指示計により測定できる。
【0059】
本発明の水性分散体は、その効果を損なわない範囲で、上記のポリオレフィン系樹脂(A)およびアミン化合物(B)と、水に加えて、他の成分をさらに含有していてもよい。他の成分としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂(A)とは異なる重合体、アミン化合物以外の塩基性化合物、架橋剤、有機溶媒、レベリング剤、粘度調整剤、安定剤、充填剤、顔料、顔料分散剤、染料、消泡剤、耐候剤、帯電防止剤、滑剤、核剤、難燃剤、油剤、芳香環を1個以上有する化合物(C)等が挙げられる。他の成分は、いずれも、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
ポリオレフィン系樹脂(A)とは異なる重合体としては、例えば、未変性のポリオレフィン、粘着付与樹脂等が挙げられる。未変性のポリオレフィンは、単独重合体でもよく、共重合体でもよい。単独重合体としては、例えば、炭素数2~20のα-オレフィンの単独重合体が挙げられる。共重合体としては、炭素数2~20のα-オレフィンの共重合体、炭素数2~20のα-オレフィンと他の単量体との共重合体が挙げられる。他の単量体としては、例えば、環状オレフィン、ビニル芳香族化合物、ポリエン化合物等が挙げられる。α-オレフィン、他の単量体等の説明は上述の通りである。
【0061】
未変性のポリオレフィンは、好ましくは炭素数2~20のα-オレフィンの単独重合体または共重合体であり、より好ましくはプロピレン単独重合体および/またはプロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィンとプロピレンとの共重合体であり、より一層好ましくはプロピレン単独重合体、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体およびエチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、さらに好ましくはプロピレン単独重合体、エチレン・プロピレン共重合体およびプロピレン・1-ブテン共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、さらに一層好ましくはプロピレン単独重合体、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体またはエチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体であり、特に好ましくはプロピレン単独重合体、エチレン・プロピレン共重合体またはプロピレン・1-ブテン共重合体であり、最も好ましくはプロピレン単独重合体である。
【0062】
未変性のエチレン・プロピレン共重合体中のプロピレン単位の量は、ポリプロピレンに対する接着性の観点から、エチレン単位およびプロピレン単位の合計あたり、好ましくは50mol%以上、より好ましくは70mol%以上、さらに好ましくは80mol%以上であり、好ましくは99mol%以下、より好ましくは95mol%以下、さらに好ましくは90mol%以下である。
【0063】
未変性の1-ブテン・プロピレン共重合体中のプロピレン単位の量は、ポリプロピレンに対する接着性の観点から、プロピレン単位および1-ブテン単位の合計あたり、好ましくは50mol%以上、より好ましくは60mol%以上、さらに好ましくは70mol%以上であり、好ましくは99mol%以下、より好ましくは97mol%以下、さらに好ましくは90mol%以下である。
【0064】
未変性のエチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体中のプロピレン単位の量は、ポリプロピレンに対する接着性の観点から、エチレン単位、プロピレン単位および1-ブテン単位の合計あたり、好ましくは40mol%以上、より好ましくは50mol%以上、さらに好ましくは55mol%以上であり、好ましくは99mol%以下、より好ましくは70mol%以下、さらに好ましくは60mol%以下である。
【0065】
未変性のポリオレフィンの重量平均分子量は、水性分散体の接着性(特に高温時の被着体への接着性)の観点から、好ましくは30,000以上、より好ましくは50,000以上、さらに好ましくは100,000以上であり、好ましくは400,000以下、より好ましくは360,000以下、さらに好ましくは250,000以下である。
【0066】
未変性のポリオレフィンの融点は、水性分散体の接着性(特に高温時の被着体への接着性)の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上であり、好ましくは140℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは90℃以下である。
【0067】
未変性のポリオレフィンを使用する場合、水性分散体中のその含有量は、水性分散体の接着性(特に高温時の被着体への接着性)および水性分散体の分散性の観点から、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0068】
粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン類、テルペン系樹脂およびこの水素添加樹脂、炭素数5の石油留分を重合した石油系樹脂およびこの水素添加樹脂、炭素数9の石油留分を重合した石油系樹脂およびこの水素添加樹脂、変性石油系樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、塩素化パラフィン等が挙げられる。
【0069】
ロジン類としては、例えば、ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、水添ロジン、マレイン化ロジン、フマル化ロジンおよびこれらのグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル、メチルエステル、トリエチレングリコールエステル、フェノール変性物およびそのエステル化物等が挙げられる。テルペン系樹脂としては、例えば、テルペン重合体、テルペンフェノール、β-ピネン重合体、芳香族変性テルペン重合体、α-ピネン重合体等が挙げられる。変性石油系樹脂としては、例えば、マレイン酸変性石油系樹脂、フマル酸変性石油系樹脂等が挙げられる。
【0070】
テルペン系樹脂の市販品としては、例えば、ヤスハラケミカル株式会社製のYSレジンPX、PXN、YSポリスター、マイティエース、YSレジンTO、YSレジンTR、クリアロンP、クリアロンM、クリアロンK;荒川化学工業株式会社製のタマノル803L、タマノル901;日本テルペン化学株式会社製のテルタック80;等が挙げられる。テルペン系樹脂エマルションの市販品としては、例えば、荒川化学工業株式会社製のタマノルE-200NT、タマノルE100等が挙げられる。
【0071】
アミン化合物以外の塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、金属水酸化物等が挙げられる。金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0072】
なお、本発明の水性分散体における、アミン化合物(B)とは異なるアミン化合物、例えばアンモニア、トリエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、イソプロピルアミン、アミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、エチルアミン、ジエチルアミン、イソブチルアミン、ジプロピルアミン、3-エトキシプロピルアミン、3-ジエチルアミノプロピルアミン、sec-ブチルアミン、プロピルアミン、n-ブチルアミン、2-メトキシエチルアミン、3-メトキシプロピルアミン、2,2-ジメトキシエチルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、およびピロールからなる群から選択されるアミン化合物の量は、アルデヒド類の検出量低減の観点および基材との密着性向上の観点から、水性分散体の固形分量に基づいて、好ましくは3質量%未満、より好ましくは1質量%未満、さらに好ましくは0.5質量%未満、さらにより好ましくは0.1質量%未満であり、とりわけ好ましくは0.01質量%未満である。
【0073】
本発明において「架橋剤」とは、α,β-不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂(A)と架橋構造を形成し得る化合物を意味する。架橋剤は、好ましくはイソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジド系架橋剤、メラミン系架橋剤、メチロール系架橋剤、アミン系架橋剤、アルコキシシラン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、金属キレート系架橋剤および金属アルコキシド系架橋剤からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、より好ましくはイソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤およびエポキシ系架橋剤からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、さらに好ましくはカルボジイミド系架橋剤である。
【0074】
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)およびこれらのオリゴマーまたはポリマーが挙げられる。
【0075】
イソシアネート系架橋剤の具体例としては、住化コベストロウレタン株式会社製のスミジュール44V20、スミジュールN3200、スミジュールN3300、デスモジュールN3400、デスモジュールN3600、デスモジュールN3900、バイヒジュール304、バイヒジュール305、バイヒジュールXP-2655、バイヒジュールXP-2487、バイヒジュールXP-2547、バイヒジュール3100、バイヒジュール401-70、デスモジュールDN、デスモジュールDA-L等が挙げられる。
【0076】
カルボジイミド系架橋剤の具体例としては、日清紡ケミカル株式会社製のカルボジライトSV-02、カルボジライトV-02、カルボジライトV-02-L、カルボジライトV-04、カルボジライトV-10、カルボジライトSW-12G、カルボジライトE-01、カルボジライトE-02、カルボジライトE-03A、カルボジライトE-05、カルボジライトC-218等が挙げられる。
【0077】
エポキシ系架橋剤の具体例としては、ナガセケムテックス株式会社製のデナコールEX-313、デナコールEX-252、デナコールEX-512、デナコールEX-614、デナコールEX-614B、デナコールFCA-677、デナコールFCA-678等が挙げられる。
【0078】
架橋剤を使用する場合、水性分散体中のその含有量は、水性分散体の接着性(特に高温時の被着体への接着性)の観点から、水性分散体の不揮発分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下である。
【0079】
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メトキシプロパノール、2-エトキシプロパノール、ジアセトンアルコール等のアルコール、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式脂肪族炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0080】
有機溶媒を使用する場合、その使用量は、ポリオレフィン系樹脂(A)の分散性の観点から、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上であり、好ましくは300質量部以下、より好ましくは200質量部以下、さらに好ましくは150質量部以下である。有機溶媒として、アルコールおよび脂環式脂肪族炭化水素を用いることが好ましく、2-ブタノールおよびメチルシクロヘキサンを用いることがより好ましい。これらの有機溶媒は単独で用いてもよく、併用してもよい。
【0081】
有機溶媒を使用する場合、その後に、減圧蒸留等によって有機溶媒を除去することが好ましい。有機溶媒の除去後の水性分散体中の有機溶媒の残存量は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以下である。
レベリング剤としては、例えば、株式会社ADEKA製のアデカコールW-193、アデカコールW-287、アデカコールW-288、アデカコールW-304;BYK社製のBYK-333、BYK-345、BYK-346、BYK-347、BYK-348、BYK-349、BYK-378;サンノプコ株式会社のノプコウェット50、SNウェット366、ノプコ38-C、SNディスパーサンド5468、SNディスパーサンド5034、SNディスパーサンド5027、SNディスパーサンド5040、SNディスパーサンド5020等が挙げられる。
【0082】
粘度調整剤としては、例えば、BYK社製のBYK-420、BYK-425、株式会社ADEKA製のアデカノールUH-140S、アデカノールUH-420、アデカノールUH-438、アデカノールUH-450VF、アデカノールUH-462、アデカノールUH-472、アデカノールUH-526、アデカノールUH-530、アデカノールUH-540、アデカノールUH-541VF、アデカノールUH-550、アデカノールUH-752およびアデカノールH-756VF;サンノプコ株式会社製のSNシックナー920、SNシックナー922、SNシックナー924、SNシックナー926、SNシックナー929-S、SNシックナーA-801、SNシックナーA-806、SNシックナーA-812、SNシックナーA-813、SNシックナーA-818、SNシックナー621N、SNシックナー636、SNシックナー601、SNシックナー603、SNシックナー612、SNシックナー613、SNシックナー615、SNシックナー618、SNシックナー621N、SNシックナー630、SNシックナー634、SNシックナー636およびSNシックナー4050;第一工業製薬株式会社製のシャロールAN-103P、シャロールAN-144P、シャロールAH-103P、セロゲン5A、セロゲン6A、セロゲン7A、セロゲンPR、セロゲンWS-A、セロゲンPL-15、セロゲンWS-C、セロゲンWS-D、BS、セロゲンHH-T、セロゲン3H、セロゲン4H、セロゲンBSH-6、セロゲンBSH-12およびセロゲンEP;等が挙げられる。
【0083】
安定剤としては、例えば、フェノール系安定剤、フォスファイト系安定剤、アミン系安定剤、アミド系安定剤、老化防止剤、耐候安定剤、沈降防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤等が挙げられる。
【0084】
充填剤としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、ウオラストナイト、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、タルク、ガラスフレーク、硫酸バリウム、クレー、カオリン、微粉末シリカ、マイカ、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、アルミナ、セライト等が挙げられる。
【0085】
顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄、酸化クロム、紺青、ベンガラ、黄鉛、黄色酸化鉄等の無機顔料、アゾ系顔料、アントラセン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、インジゴ系顔料、フタロシアニン系顔料等が挙げられる。
【0086】
顔料分散剤としては、例えば、BASFジャパン社製のジョンクリル等の水性アクリル系樹脂;BYK社製のBYK-190等の酸性ブロック共重合体;スチレン-マレイン酸共重合体;エアプロダクツ社(エアープロダクト社)製のサーフィノールT324等のアセチレンジオール誘導体;イーストマンケミカル社製のCMCAB-641-0.5等の水溶性カルボキシメチルアセテートブチレート等が挙げられる。
【0087】
本発明の水性分散体は、芳香環を1個以上有する化合物(C)を含有してもよい。なお、芳香環を1個以上有する化合物(C)は、ポリオレフィン系樹脂(A)を変性する状態で含まれていてもよい。この態様において、芳香環を1個以上有する化合物(C)は、芳香環を1個以上含んでいれば、特に限定されず、芳香環とは単環式芳香環を示す。そのため、成分(C)のうち、芳香環を1個有する化合物は、単環式芳香環を有する化合物である。単環式芳香環としては、単環式芳香族炭化水素環、好ましくは炭素数6~15の単環式芳香族炭化水素環、例えばベンゼン環等;硫黄原子、窒素原子および酸素原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む単環式芳香族複素環、好ましくは炭素およびヘテロ原子数5~15の単環式芳香族複素環、例えばピリジン環、ジアザベンゼン環、トリアジン環、フラン環、チオフェン環、アゾール環、ジアゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環等が挙げられる。これらの中でも、ベンゼン環が好ましい。
【0088】
本発明の好適な実施態様では、芳香環を1個以上有する化合物(C)は、例えば、メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、フェノール、ベンジルメルカプタン、フェニルエチルメルカプタン(フェネチルメルカプタン)、フェニルメルカプタン、1-メトキシナフタレン、2-メトキシナフタレン、1-エトキシナフタレン、2-エトキシナフタレン、1-ナフトール、2-ナフトール、1-ナフチルメチルチオール、2-ナフチルメチルチオール、1-ナフチルエチルチオール、2-ナフチルエチルチオール、1-ナフチルチオール、2-ナフチルチオール等が挙げられる。これらの中でも、基材との密着性、および耐水性の観点から、芳香環を1個以上有する化合物(C)は、メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、フェノール、1-メトキシナフタレン、2-メトキシナフタレン、1-ナフトールおよび2-ナフトールからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。成分(C)は単独または二種以上組み合わせて使用できる。
【0089】
芳香環を1個以上有する化合物(C)を含有する場合、その含有量は、水性分散体に含まれるポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上、さらにより好ましくは2質量部以上、特に好ましくは3質量部以上であり、好ましくは70質量部以下、より好ましくは60質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下、さらにより好ましくは20質量部以下、特に好ましくは15質量部以下である。芳香環を1個以上有する化合物(C)の含有量が上記の範囲内であると、基材との密着性、および耐水性を向上できる。なお、成分(C)の含有量は、成分(C)による変性量と成分(C)として含有される量の両方を含む。成分(C)の含有量は、例えばフーリエ変換赤外分光法もしくはN-NMRを用いて測定することができ、または、原料の仕込み比から算出することもできる。成分(C)による変性量と成分(C)として含有される量との割合は、変性ポリオレフィン系樹脂をキシレン等に溶解させ、次いで溶解液をメタノール等に撹拌しながら滴下して変性ポリオレフィン系樹脂を再沈殿させて回収した後、回収したサンプルを真空乾燥する洗浄工程を行った後に、フーリエ変換赤外分光法あるいはN-NMRにより成分(C)の変性量を測定し、これを洗浄工程前の測定値(成分(C)の変性量と含有量の両方を含む)と比較して求めることができる。
【0090】
〔水性分散体の製造方法〕
本発明の水性分散体の製造方法は、特に限定されないが、例えば、変性ポリオレフィン系樹脂(A)を製造する工程(「樹脂製造工程」と称する)、および該変性ポリオレフィン系樹脂(A)をアミン化合物(B)と、必要に応じて他の成分と共に、水性溶媒中に分散させる工程(「分散工程」と称する)を含む方法が挙げられる。本発明の水性分散体の製造方法において、樹脂製造工程後に分散工程を行ってもよく、樹脂製造工程と分散工程とを同時に行ってもよい。
【0091】
樹脂製造工程は、変性ポリオレフィン系樹脂(A)を製造する工程である。変性ポリオレフィン系樹脂(A)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、未変性のポリオレフィンに、α,β-不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を反応させて製造してもよいし、未変性のポリオレフィンにα,β-不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を反応させて変性ポリオレフィン系樹脂(A1)を製造した後、該変性ポリオレフィン系樹脂(A1)にさらに未変性のポリオレフィンを混合し、さらに、α,β-不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を反応させて製造してもよい。
【0092】
変性ポリオレフィン系樹脂(A)を製造する工程において、ラジカル開始剤を添加してよい。ラジカル開始剤は、例えば有機過酸化物であり、好ましくは半減期が1時間となる分解温度が50~160℃である有機過酸化物である。分解温度が50℃以上であると変性量が向上する傾向にあり、分解温度が160℃以下であるとポリオレフィン系樹脂の分解が低減される傾向にある。これらの有機過酸化物は、分解してラジカルを発生した後、ポリオレフィン系樹脂から水素原子を引き抜く作用を有することが好ましい。
【0093】
半減期が1時間となる分解温度が50~160℃である有機過酸化物としては、ジアシルパーオキサイド化合物、ジアルキルパーオキサイド化合物、パーオキシケタール化合物、アルキルパーエステル化合物、パーカーボネート化合物等が挙げられる。かかる有機過酸化物の具体例としては、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジ-3-メトキシブチル パーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピル パーオキシジカーボネート、t-ブチル パーオキシイソプロピルカーボネート、ジミリスチル パーオキシカーボネート、ジイソプロピルペロキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルネオデカノエート、α-クミル パーオキシ ネオデカノエート、t-ブチル パーオキシ ネオデカノエート、t-ブチルペロキシネオヘプタノエート、1,1ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブテン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)ペロキシード、n-ブチル-4,4-ビス(t-ベルオキシ)バレラート、ジ-t-ブチルペルオキシイソフタレート、ジクミルパーオキサイド、α-α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3等が挙げられる。これらの中でも、有機過酸化物は、ジアルキルパーオキサイド化合物、ジアシルパーオキサイド化合物、パーカーボネート化合物またはアルキルパーエステル化合物であることが好ましい。
【0094】
ラジカル開始剤の添加量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.2~5質量部である。ラジカル開始剤の添加量が上記の下限以上であると、ポリオレフィン系樹脂(A)の変性量を高めやすく、またラジカル開始剤(M)の添加量が上記の上限以下であると、未反応のラジカル開始剤の含有量が低減されやすい。
【0095】
ポリオレフィン系樹脂(A)を溶融させる方法としては、特に限定されず、例えば、バンバリーミキサー、プラストミル、ブラベンダープラストグラフ、一軸または二軸の押出機等の混練機を用いる方法が挙げられ、連続生産が可能であり、生産性を向上させやすい観点からは、押出機を用いる方法が好ましい。本発明の一実施態様では、押出機を用いて、加熱下でポリオレフィン系樹脂(A)を予め溶融混練し、他の成分を、押出機の供給口より供給して混練を行う方法が好ましく用いられる。
【0096】
成分(A)を溶媒に溶解させる方法としては、特に限定されず、例えば、ポリオレフィン系樹脂(A)を加熱下で溶媒に溶解し、他の成分を添加して混合する方法が挙げられる。
【0097】
溶媒としては、ポリオレフィン系樹脂(A)の製造方法に関して上記に記載した溶媒が挙げられる。これらの中でも、溶解性の観点から、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、脂環式炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒が好ましく、芳香族炭化水素系溶媒および/またはエステル系溶媒がより好ましい。溶媒は単独または二種以上組み合わせて使用できる。
【0098】
他の成分を添加する順序は、特に限定されず、全て同時に添加してもよく、一部の成分を添加した後、残りの成分を添加してもよく、複数回にわけて順次添加してもよい。
【0099】
分散工程は、変性ポリオレフィン系樹脂を水性溶媒中に分散させる工程である。水性溶媒としては、水、水以外の溶媒が挙げられる。また、水および水以外の溶媒の添加量は、それぞれ、水性分散体に関して記載した水の含有量、水以外の溶媒の比率と同様の範囲から選択できる。
【0100】
分散させる方法としては、例えば強制乳化法、自己乳化法、転相乳化法などの乳化法を用いてよい。具体的には、反応器において、水、ポリオレフィン系樹脂(A)、アミン化合物(B)および必要に応じて他の成分(例えば有機溶媒)の混合物を調製し、次いで混合物から水以外の溶媒を除去することにより水性分散体とする方法(I);混練機に、変性ポリオレフィン系樹脂(A)、アミン化合物(B)および必要に応じて他の成分を、変性ポリオレフィン系樹脂(A)が溶融する温度以上で混錬させた後に、水および必要に応じて他の成分を添加して水性分散体とする方法(II)などが挙げられる。これらの方法において混合物を調製する際には、必要に応じて加熱および/または撹拌を行ってよい。また、加熱は、例えば50~250℃、好ましくは60~200℃で行ってよく、撹拌機の回転数は、例えば50~16000rpm程度の回転数で行ってよい。
【0101】
方法(I)において、反応器としては、加熱可能な加熱装置と、内容物に対して剪断力等を与えることができる撹拌機とを備えた容器(好ましくは、密閉および/または耐圧容器)が用いられる。方法(II)において、混練器としては、例えばロールミル、ニーダー、押出機、インクロール、バンバリーミキサー等が挙げられる。特にスクリューを1本または2本以上ケーシング内に有する押出機または多軸押出機を用いてもよい。押出機を用いて乳化する方法としては、変性ポリオレフィン系樹脂、乳化剤を混合し、これを押出機のホッパーまたは供給口より連続的に供給し、これを加熱溶融混練し、更に押出機の圧縮ゾーン、計量ゾーンおよび脱気ゾーン等に設けられた少なくとも1つの供給口より、水を供給し、スクリューで混練した後、ダイから連続的に押出すことができる。
【0102】
本発明の水性分散体は、前記(I)の方法によって製造することが好ましい。以下、本発明の水性分散体の好ましい製造方法を記載するが、本発明はこれに限定されない。
【0103】
ポリオレフィン系樹脂(A)および溶媒として芳香族炭化水素を、場合により他の樹脂と共に混合し、得られた混合物を加熱して、樹脂(A)等を芳香族炭化水素に溶解させる。芳香族炭化水素の使用量は、樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上であり、好ましくは300質量部以下、より好ましくは200質量部以下、さらに好ましくは150質量部以下である。混合物の加熱温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは90℃以上であり、好ましくは140℃以下、より好ましくは110℃以下である。
【0104】
得られた混合物を加熱下で撹拌しながら、アルコール(好ましくは2-ブタノール)を添加し、次いで、アミン化合物の水溶液を添加する。この際の混合物の温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは90℃以上であり、好ましくは110℃以下である。撹拌機の回転数は、好ましくは10rpm以上、より好ましくは100rpm以上であり、好ましくは500rpm以下、より好ましくは200rpm以下である。アルコールの使用量は、樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上であり、好ましくは300質量部以下、より好ましくは200質量部以下、さらに好ましくは150質量部以下である。
【0105】
アルコールおよびアミン化合物(B)の水溶液の添加後、必要に応じて、得られた混合物を加熱下で撹拌しながら、加熱した水を添加して、水性分散体の不揮発分の量を調整してもよい。この際の混合物の温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下である。撹拌機の回転数は、好ましくは10rpm以上、より好ましくは100rpm以上であり、好ましくは500rpm以下、より好ましくは200rpm以下である。加熱した水の温度は、好ましくは20℃以上、より好ましくは70℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下である。
【0106】
エバポレーター等を用いた減圧蒸留により有機溶媒等の揮発成分を除去することが好ましい。その後に、得られた水性分散体の不揮発分を調整してもよい。
【0107】
上述のようにして得られた水性分散体に、必要に応じて架橋剤等の他の成分を添加してもよい。架橋剤等の添加後に得られた混合物を、例えば、自転公転撹拌機等を使用して、撹拌することが好ましい。自転公転撹拌機としては、例えば、株式会社シンキー製自転・公転ミキサーあわとり練太郎ARE-310等が挙げられる。自転公転撹拌機の撹拌条件は、好ましくは自転速度400~1,200rpmおよび公転速度1,000~3,000rpmである。
【0108】
本発明の水性分散体は、ポリオレフィンとの接着性に優れている。そのため、前記水性分散体を含む本発明の水性接着剤は、例えば、ポリオレフィンとポリオレフィンとを接着させるための、およびポリオレフィンと他の基材とを接着させるための水性接着剤(以下、「ポリオレフィン用の水性接着剤」と略称することがある)として特に有用である。但し、本発明の水性接着剤を、ポリオレフィン以外の物同士を接着させるために用いることもできる。本発明は、本発明の水性分散体から形成された樹脂膜も提供する。
【0109】
本発明の水性分散体を用いて接着させるポリオレフィンは、単独重合体でもよく、共重合体でもよい。単独重合体としては、例えば、炭素数2~20のα-オレフィンの単独重合体が挙げられる。共重合体としては、炭素数2~20のα-オレフィンの共重合体、炭素数2~20のα-オレフィンと他の単量体との共重合体が挙げられる。他の単量体としては、例えば、環状オレフィン、ビニル芳香族化合物、ポリエン化合物等が挙げられる。炭素数2~20のα-オレフィン、他の単量体等の説明は上述の通りである。接着させるポリオレフィンは、好ましくはポリプロピレンである。
【0110】
接着させる他の基材に特に限定は無く、例えば、アクリルウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ABS樹脂、EVA樹脂、ゴム、ガラス、紙、木材、織布、編布、不織布、金属(例、鉄、アルミ、銅、ニッケル、銀、金、白金、各種合金)、強化繊維(例、炭素繊維、ガラス繊維、セルロース繊維)、石材等が挙げられる。
【0111】
本発明の水性分散体を用いて、基材(ポリオレフィンを含む)を接着させる方法は特に限定されず、公知の方法を使用することができる。以下、本発明の水性分散体を用いた基材を接着させる方法を記載するが、本発明はこれに限定されない。
【0112】
本発明の水性分散体を、接着させる二つの基材の一方または両方に塗布する。塗布方法は特に限定されず、公知の方法を使用することができる。塗布方法としては、例えば、刷毛塗り、エアスプレー法、エアレススプレー法、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング等が挙げられる。
【0113】
水性分散体の塗布量は、その不揮発分の量で定められる。その不揮発分の量は、好ましくは1g/m以上、より好ましくは5g/m以上であり、好ましくは200g/m以下、より好ましくは20g/m以下である。
【0114】
水性分散体を塗布した基材を、大気雰囲気下で加熱して、水を揮発させて、本発明の樹脂膜を形成することが好ましい。加熱温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは100℃以下であり、その時間は、好ましくは1分以上、より好ましくは3分以上であり、好ましくは10分以下、より好ましくは5分以下である。
【0115】
水を揮発させた後に、「樹脂膜/基材」との構造を有する積層体をさらに加熱してもよい。加熱を行う場合、その温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは120℃以下であり、その時間は、好ましくは1分以上、より好ましくは3分以上であり、好ましくは10分以下、より好ましくは5分以下である。
【0116】
以上のようにして得られた「樹脂膜/基材」との構造を有する二つの積層体をそれらの樹脂膜が接するように、または「樹脂膜/基材」との構造を有する積層体と他の基材とを前記樹脂膜と他の基材とが接するように貼り合せ、プレスして、「基材/樹脂膜/基材」との構造を有する積層体を形成することが好ましい。プレスの温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下である。プレスの圧力は、好ましくは0.01MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上であり、好ましくは0.5MPa以下、より好ましくは0.3MPa以下である。プレスの時間は、好ましくは0.5分以上、より好ましくは1分以上であり、好ましくは10分以下、より好ましくは5分以下である。
【0117】
本発明の水性分散体は、フィルムまたはシートの原料としても有用である。また、本発明の水性分散体は、塗料、インキ用バインダー、塗料用バインダー、プライマー、ヒートシール剤、ガラス繊維のサイジング剤、炭素繊維のサイジング剤、セルロースナノファイバーの分散剤、フィラーの分散剤またはこれらの原料としても有用である。
【0118】
本発明の樹脂膜を含む積層体としては、例えば、第1の基材と、本発明の水性分散体または水性接着剤から形成される樹脂膜と、第2の基材とが、この順に積層されている積層体が挙げられる。本発明の水性分散体は、ポリオレフィンとの接着性(特に高温時の接着性)に優れているため、第1の基材はポリオレフィンであることが好ましい。樹脂膜は、単層でもよく、2層以上の多層でもよい。
【0119】
第2の基材は、ポリオレフィンでもよく、他の基材でもよい。他の基材としては、例えば、アクリルウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ABS樹脂、EVA樹脂、ゴム、ガラス、紙、木材、織布、編布、不織布、金属(例、鉄、アルミ、銅、ニッケル、銀、金、白金、各種合金)、強化繊維(例、炭素繊維、ガラス繊維、セルロース繊維)、石材等が挙げられる。
【0120】
本発明の水性分散体は、優れた密着性を有すると共に、アルデヒド類の検出量が低減されているため、自動車、家電、建材など各種工業部品に用いることができ、特に、薄肉化、高機能化、大型化された部品・材料として実用に十分な性能を有している。本発明の水性分散体、本発明の樹脂膜、および該樹脂膜を含む積層体は、例えばバンパー、インストルメントパネル、トリム、ガーニッシュなどの自動車部品、テレビケース、洗濯機槽、冷蔵庫部品、エアコン部品、掃除機部品などの家電機器部品、便座、便座蓋、水タンクなどのトイレタリー部品、浴槽、浴室の壁、天井、排水パンなどの浴室周りの部品などの各種工業部品用成形材料として用いることができる。
【実施例0121】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0122】
(1)重量平均分子量
ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法によって、下記の条件で測定を行った。
装置:東ソー株式会社製 HLC-8121GPC/HT
カラム:東ソー株式会社製 TSKgel GMHHR-H(S)HT 2本
温度:145℃
溶媒:o-ジクロロベンゼン
溶出溶媒流速:1.0ml/分
試料濃度:1mg/ml
測定注入量:300μl
分子量標準物質:標準ポリスチレン
検出器:示差屈折
重量平均分子量(Mw)の算出に際しては、標準試料として市販の単分散のポリスチレン標準試料を測定し、標準試料の保持時間と分子量から検量線を作成し算出を行った。
【0123】
(2)酸価
下記手順により変性ポリオレフィンの酸価をもとめた。
【0124】
(a)ブランク溶液の滴定
(i)キシレン100gおよびイオン交換水0.1gをビーカーにはかり取り、フェノールフタレイン指示薬数滴を添加して、ブランク溶液を調製した。
(ii)ビュレットを用いて0.02mol/LのKOHエタノール溶液を、ブランク溶液に滴下した。溶液の色が無色から赤色に変化し、赤色が1分間消えなくなった時点を終点とし、その時点の滴定量を読み取った。
【0125】
(b)試料溶液の滴定
(i)変性ポリオレフィン0.2g、イオン交換水0.1gおよびキシレン100gをナスフラスコに計り取り、得られた混合物を150℃で2時間加熱して、変性ポリオレフィンを溶解させるとともに、変性ポリオレフィン中の酸無水物構造を加水分解させた。
(ii)得られた溶液を室温まで放冷した後、フェノールフタレイン指示薬数滴を添加して、試料溶液を調製した。
(iii)ビュレットを用いて0.02mol/LのKOHエタノール溶液を、試料溶液に滴下した。溶液の色が無色から赤色に変化し、赤色が1分間消えなくなった時点を終点とし、その時点の滴定量を読み取った。
(iv)下記式に従って、酸価を算出した(下記式中、FKOHは、KOHエタノール溶液のファクターを示す)。
酸価(mgKOH/g)=56.11(g/mol)×(FKOH×(試料溶液に対する滴定量(mL)-ブランク溶液に対する滴定量(mL))×0.02(mol/L)/変性ポリオレフィンの量(g)
【0126】
(3)融点
以下の条件で示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ(SII)社製、EXSTAR6000)を用いて、ポリオレフィンおよび変性ポリオレフィンの融点を測定した。
(i)試料約5mgを室温から30℃/分の昇温速度で200℃まで昇温し、昇温完了後、5分間保持した。
(ii)次いで、200℃から10℃/分の降温速度で-100℃まで降温し、降温完了後、5分間、保持した。
(iii)次いで、-100℃から10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温した。このときに観察された結晶の融解ピークのピークトップの温度を融点とした。融解ピークが複数観察された場合は、最も低い融解ピークのピークトップの温度を融点とした。
【0127】
(4)平均粒子径
HORIBA製作所製のレーザー回折粒子径測定装置LA-950V2を用いて、水性分散体中における分散質の平均粒子径として、体積基準のメジアン径を測定した。
【0128】
(5)固形分率
水性分散体の固形分率は、上部径65mm、下部径54mmおよび深さ23mmのアルミカップに入れた水性分散体1gを、140℃に保たれた送風乾燥機中で30分間乾燥させて揮発成分を取り除いた後に残る残渣の重量を測定することで測定した。
【0129】
(6)pH
水性分散体のpHは、GRT複合電極(HORIBA社製、9680S)を備えたガラス電極式水素イオン濃度指示計(HORIBA社製、D-53)により測定した。
【0130】
<変性ポリオレフィンの製造>
(製造例1)
撹拌機、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた1000mlセパラブルフラスコに、ポリオレフィン(a-1)[エチレン・プロピレン共重合体(エチレン:プロピレン=15mol%:85mol%)、Mw=56,000]400g、窒素雰囲気下、油浴中で撹拌を行いながら系内が170℃になるように油浴の温度を調整した。系内が溶融した後、撹拌を行い均一な状態としながら、2-エチルヘキシルアクリレート48gと無水マレイン酸24gをプロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート58gに溶解した溶液と、ジ-t-ブチルパーオキサイド4gプロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート10gに溶解した溶液を2時間かけて滴下した。滴下後、系内を170℃に保ったままさらに2時間反応を行った後、真空ポンプでフラスコ内を減圧しながら、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテートと未反応の2-エチルヘキシルアクリレートと無水マレイン酸などの低分子の揮発物質を除去した。減圧終了後、反応物を取り出し、冷却することで、変性ポリオレフィンの固形品(A―1)を得た(酸価=59mgKOH/g、Mw=59,000、融点=64℃)。
【0131】
(製造例2)
製造例1と同様の工程でポリオレフィンを(a-2)[エチレン・プロピレン・ブテン共重合体(エチレン:プロピレン:ブテン=20mol%:54mol%:26mol%)、Mw=88000]に変更し、さらに反応中の系内の温度を160℃に保つよう変更することで変性ポリオレフィンの固形品(A-2)を得た(酸価=47mgKOH/g、Mw=61,000、融点=64℃)。
【0132】
(製造例3)
撹拌機、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた1000mlセパラブルフラスコに、製造例2で得た変性ポリオレフィン(A-2)59.4g、ポリオレフィン(a-3)[エチレン・プロピレン共重合体(エチレン:プロピレン=18mol%:82mol%)、Mw=326,000]75.5gおよびキシレン154gを入れ、窒素雰囲気下、油浴中で撹拌を行いながら系内が140℃になるように油浴の温度を調整した。系内が溶解した後、撹拌を行い均一な状態としながら、2-エチルヘキシルアクリレート10.7gと無水マレイン酸5.7gをプロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート14.8gに溶解した溶液と、ジクミルパーオキサイド0.4gをプロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート2.4gに溶解した溶液を2時間かけて滴下した。滴下後、系内を140℃に保ったままさらに2時間反応を行った後、真空ポンプでフラスコ内を減圧しながら、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテートと未反応の2-エチルヘキシルアクリレートと無水マレイン酸などの低分子の揮発物質を除去した。減圧終了後、反応物を取り出し、冷却することで、変性ポリオレフィンの固形品(A―3)を得た(酸価=50mgKOH/g、Mw=185,000、融点=65℃)。
【0133】
上記の製造例で得られた変性ポリオレフィンを表1にまとめる。
【0134】
【表1】
【0135】
<変性ポリオレフィンの水性分散体の製造>
水性分散体(B-1)~(B-10)を、以下に示す調製方法Iもしくは調製方法IIによりそれぞれ製造した。
【0136】
[調製方法I]
卓上アジホモミクサー撹拌機(プライミクス株式会社製、製品名:アヂホモミクサー2M-03型、300mL容器)に変性ポリオレフィン(A-1)30gを入れ、140℃の油浴中で溶融させた。油浴温度を100℃として撹拌しながら2-ブタノール15gを入れて溶解混合させた。その後アミン化合物35mmol(変性ポリオレフィン(A-1)中のカルボン酸に対して1.1当量)とイオン交換水15gの混合液を加えて混合した後、100℃に保ちながら、イオン交換水67gを少量ずつ加えた。エバポレーターを用いて2-ブタノールを取り除き、水性分散体を製造した。
【0137】
[調製方法II]
卓上アジホモミクサー撹拌機(プライミクス株式会社製、製品名:アヂホモミクサー2M-03型、300mL容器)に変性ポリオレフィン(A-3)30gとポリオレフィン(a-4)[プロピレン単独重合体、Mw=235,000)]0.6g、粘着付与剤(ヤスハラケミカル製、YSレジンPX300N)13.1g、メチルシクロヘキサン24gを入れ、140℃の油浴中で溶解させた。油浴温度を100℃として撹拌しながら2-ブタノール15gを入れて溶解混合させた。その後アミン化合物30mmol(変性ポリオレフィン(A-3)中のカルボン酸に対して1.1当量)とイオン交換水15gの混合液を加えて混合した後、100℃に保ちながら、イオン交換水90gを少量ずつ加えた。エバポレーターを用いてメチルシクロヘキサンと2-ブタノールを取り除き、水性分散体を製造した。
【0138】
(実施例1)
調製方法Iの操作を、アミン化合物として1-ピロリジンエタノールを用いることで水性分散体(B-1)を得た。
【0139】
(実施例2)
調製方法Iの操作を、アミン化合物として1-ピペリジンエタノールを用いることで水性分散体(B-2)を得た。
【0140】
(実施例3)
調製方法Iの操作を、アミン化合物として1-メチルピペリジンを用いることで水性分散体(B-3)を得た。
【0141】
(実施例4)
調製方法Iの操作を、アミン化合物として1-メチルピロリジンを用いることで水性分散体(B-4)を得た。
【0142】
(実施例5)
調製方法Iの操作を、アミン化合物として1-エチルピロリジンを用いることで水性分散体(B-5)を得た。
【0143】
(実施例6)
調製方法IIの操作を、アミン化合物として1-ピペリジンエタノールを用いることで水性分散体(B-6)を得た。
【0144】
(比較例1)
調製方法Iの操作を、アミン化合物としてN,N-ジメチルエタノールアミンを用いることで水性分散体(B-7)を得た。
【0145】
(比較例2)
調製方法Iの操作を、アミン化合物としてN,N-ジエチルエタノールアミンを用いることで水性分散体(B-8)を得た。
【0146】
(比較例3)
調製方法Iの操作を、アミン化合物としてトリエチルアミンを用いることで水性分散体(B-9)を得た。
【0147】
得られた水性分散体を表2にまとめる。
【0148】
【表2】
【0149】
<水性分散体の評価>
(I)接着性評価
(a)試験片の作製
水性分散体(B-1)~(B-9)1重量部に対して、レベリング剤(サンノプコ株式会社製、BYK349)を0.01重量部添加し、自転速度800rpm、公転速度2000rpmおよび撹拌時間1分の条件で自転公転撹拌機(株式会社シンキー製自転・公転ミキサーあわとり練太郎ARE-310)を用いて撹拌し、混合溶液を得た。このようにして得られた水性分散体のいずれかを、その不揮発分の量が10g/mになるように、25mm幅で切断したポリプロピレン板にコットンを用いて塗布した。水性分散体を塗布したポリプロピレン板を、大気雰囲気下、50℃で5分間加熱して水を揮発させた。得られた積層体を25mm幅に切断した0.06mm厚のポリプロピレンシートと貼り合せ0.1MPa、100℃の条件で、30秒間熱プレスした。熱プレスで得られた積層体を、25℃および相対湿度50RH%の雰囲気下で24時間静置して、試験片を調製した。
【0150】
(b)剥離試験
上記のようにして得られた試験片の180°剥離試験を常温下、剥離速度100mm/分の条件で引張試験機を用いて実施した。剥離長さ30mmから80mmまでの平均試験力をその試験片の剥離強度とした。
【0151】
(II)アルデヒド含量評価
(a)試験サンプルの作製
水性分散体(B-1)~(B-9)を直径6cmのテフロン製シャーレに3g取り出し、大気雰囲気下、50℃で18時間乾燥することで樹脂フィルムを作製した。作製した樹脂フィルムをはさみで裁断し、裁断した試料0.1gにテトラヒドロフランを2mL 添加後、60℃~70℃の湯浴で加熱して溶解させた。溶解液に純水:アセトニトリル=1:1の混合溶液を加え10mL に定容後、回転数3000rpmで15 分間遠心分離をすることで上清を得た。得られた上清に2,4-ジニトロフェニルヒドラジン塩酸塩を加え、誘導体化処理したものを供試液とした。
【0152】
(b)含有アルデヒドの定量
標準溶液および供試液を液体クロマトグラフ(LC)で測定する。標準物質の濃度およびピーク面積値より、検量線を作成した。試料の評価対象物質のピーク面積値を検量線の傾きで除し、液中濃度(ng/mL)を求め、以下の式により定量値(μg/g)を算出した。
定量値(μg/g)=液中濃度(ng/mL)× 定容量(10mL)/試料量(0.1g)/1000
水性分散体を乾燥した樹脂中のホルムアルデヒド、もしくはアセトアルデヒド量が4μg/g未満の場合を評価「○」とし、4μg/g以上の場合を評価「×」とした。
【0153】
水性分散体の評価結果を表3にまとめる。
【0154】
【表3】
【0155】
上述のポリプロピレン板とポリプロピレンシートの接着試験において、実施例1~6および比較例1~3のいずれの水性分散体を用いた場合でも、良好な接着性を示した。
【0156】
実施例1~6の水性分散体を乾燥して得られる樹脂膜に含有されるホルムアルデヒド、もしくはアセトアルデヒドは4μg/g未満であった。一方、比較例1~3の水性分散体を乾燥して得られる樹脂膜に含有されるホルムアルデヒド、もしくはアセトアルデヒドは4μg/g以上であった。