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特開2024-107919足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具および足関節用創外固定器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107919
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具および足関節用創外固定器
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/64 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
A61B17/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012111
(22)【出願日】2023-01-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り URL:https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/kikiDetail/ResultDataSetPDF/510173_21B1X00003000077_A_01_01 令和4年11月2日 URL:https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/kikiDetail/ResultDataSetPDF/510173_21B1X00003000323_A_01_03 令和4年12月6日
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(71)【出願人】
【識別番号】592118103
【氏名又は名称】メイラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003111
【氏名又は名称】あいそう弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中佐 智幸
(72)【発明者】
【氏名】安達 伸生
(72)【発明者】
【氏名】生田 祥也
(72)【発明者】
【氏名】横山 賢二
(72)【発明者】
【氏名】石井 昂晴
(72)【発明者】
【氏名】安藤 久美子
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL21
4C160LL33
4C160LL42
4C160LL56
(57)【要約】
【課題】 より自由度が高く適切に創外固定ピンを配置でき、足関節の軟部組織(軟骨等)の治療や再生にも使用できる足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具および足関節用創外固定器を提供する。
【解決手段】 創外固定ピン保持具10は、脛骨に刺入された脛骨用創外固定ピンを保持する脛骨用創外固定ピン保持部22と、脛骨に沿って長手方向に延びる脛骨シャフト11と、脛骨シャフト11の遠位端部に取り付けられる足根骨ブロック12とを備え、足根骨ブロック12は、距骨に刺入された距骨用創外固定ピンを保持する距骨用創外固定ピン保持部33と、踵骨に刺入された踵骨用創外固定ピンを保持する踵骨用創外固定ピン保持部53とを備え、さらに、足根骨ブロック12は、距骨用創外固定ピン保持部33と踵骨用創外固定ピン保持部53との間の距離を調整可能な距踵関節距離調整機構60を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
足関節の損傷を治療するために骨に刺入される創外固定ピンを保持するための足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具であって、
前記創外固定ピン保持具は、脛骨に刺入された脛骨用創外固定ピンを保持する脛骨用創外固定ピン保持部と、前記脛骨に沿って長手方向に延びる脛骨シャフトと、前記脛骨シャフトの遠位端部に取り付けられる足根骨ブロックとを備え、
前記足根骨ブロックは、距骨に刺入された距骨用創外固定ピンを保持する距骨用創外固定ピン保持部と、踵骨に刺入された踵骨用創外固定ピンを保持する踵骨用創外固定ピン保持部とを備え、
さらに、前記足根骨ブロックは、前記距骨用創外固定ピン保持部と前記踵骨用創外固定ピン保持部との間の距離を調整可能な距踵関節距離調整機構を備えることを特徴とする足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具。
【請求項2】
前記足根骨ブロックは、前記距骨用創外固定ピン保持部を有する距骨ブロックと、前記踵骨用創外固定ピン保持部を有する踵骨ブロックとを備え、
前記距踵関節距離調整機構は、前記距骨ブロックと前記踵骨ブロックとを離間または近接するように移動させるものである請求項1に記載の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具。
【請求項3】
前記脛骨シャフトの遠位端部は、前記距骨ブロックに取り付けられている請求項2に記載の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具。
【請求項4】
前記距踵関節距離調整機構は、ねじ送り機構によって、前記距骨ブロックと前記踵骨ブロックとを離間または近接するように移動させるものである請求項2に記載の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具。
【請求項5】
前記距踵関節距離調整機構による前記距骨ブロックおよび前記踵骨ブロックの前記移動を案内するガイド機構を備える請求項2に記載の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具。
【請求項6】
前記ガイド機構は、前記距骨ブロックおよび前記踵骨ブロックの一方から突出する棒状部材と、前記距骨ブロックおよび前記踵骨ブロックの他方に設けられ、前記棒状部材が進退可能な凹部とからなる請求項5に記載の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具。
【請求項7】
前記ガイド機構は、前記距骨ブロックおよび前記踵骨ブロックの一方から突出する2本の棒状部材と、前記距骨ブロックおよび前記踵骨ブロックの他方に設けられ、前記棒状部材が進退可能な2つの凹部とからなり、前記2本の棒状部材および前記2つの凹部は、前記距踵関節距離調整機構の両側部に設けられている請求項5に記載の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具。
【請求項8】
前記棒状部材に、前記創外固定ピン保持具の外部から、前記距骨ブロックと前記踵骨ブロックとの間の距離を視認可能な目盛りが設けられている請求項6または請求項7に記載の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具。
【請求項9】
前記距踵関節距離調整機構によって離間された前記距骨ブロックと前記踵骨ブロックとの間に挿入可能なスペーサー部材を備える請求項2ないし請求項7のいずれかに記載の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具。
【請求項10】
足関節の損傷を治療するために骨に刺入される少なくとも3本の創外固定ピンと、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具とを備える足関節用創外固定器であって、
第1の前記創外固定ピンは、脛骨に刺入される脛骨用創外固定ピンであり、第2の前記創外固定ピンは、距骨に刺入される距骨用創外固定ピンであり、第3の創外固定ピンは、踵骨に刺入される踵骨用創外固定ピンであることを特徴とする足関節用創外固定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足関節の損傷を治療するために骨に刺入された創外固定ピンを保持するための足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具および足関節用創外固定器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、関節の損傷を治療するために、創外固定器が用いられている。創外固定器は、関節の損傷を治療するために骨に刺入される創外固定ピンと、体の外側において、それらの創外固定ピンを保持するための創外固定ピン保持具とを備えるものである。創外固定器を用いた治療法(創外固定法)は、体に対するダメージが少ない、すぐに体重をかけられるなどの利点がある。
特に、足関節用の創外固定器として、例えば、特許文献1(特許第4269067号公報)には、足首骨折を創外固定するためのアンクルクランプ器具を備えるものが開示されている。特許文献1に開示のアンクルクランプ器具(1)は、片側創外固定器具(2)の遠位端に取り付けられるものであり、左右両方の骨折した脚のために容易かつ直接に使用でき、固定器具(2)をそれに取り付けられるアンクルクランプ(遠位部分)(4)と同軸性で保持しながら、外科医が治療中の関節をあらゆる方向から制限されずに見ることができることを目的とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4269067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示のアンクルクランプ器具(1)においては、遠位部分(第2連接部分)(4)は、距骨および踵骨内に各々ねじ入れられる棒状スクリュー(9)によって取り外し可能に距骨に固定されている。
ここで、本発明者らは、足関節の形状が患者によって異なることや、足関節の損傷の状態が症例ごとに異なることに着目し、より自由度が高く適切に創外固定ピンを配置できる足関節用創外固定器について検討した。さらに、骨折のみならず、足関節の軟部組織(軟骨等)の治療や再生にも使用できる足関節用創外固定器についても検討した。
そこで、本発明は、より自由度が高く適切に創外固定ピンを配置でき、足関節の軟部組織(軟骨等)の治療や再生にも使用できる足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具および足関節用創外固定器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 足関節の損傷を治療するために骨に刺入される創外固定ピンを保持するための足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具であって、
前記創外固定ピン保持具は、脛骨に刺入された脛骨用創外固定ピンを保持する脛骨用創外固定ピン保持部と、前記脛骨に沿って長手方向に延びる脛骨シャフトと、前記脛骨シャフトの遠位端部に取り付けられる足根骨ブロックとを備え、
前記足根骨ブロックは、距骨に刺入された距骨用創外固定ピンを保持する距骨用創外固定ピン保持部と、踵骨に刺入された踵骨用創外固定ピンを保持する踵骨用創外固定ピン保持部とを備え、
さらに、前記足根骨ブロックは、前記距骨用創外固定ピン保持部と前記踵骨用創外固定ピン保持部との間の距離を調整可能な距踵関節距離調整機構を備える足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具。
【0006】
(2) 前記足根骨ブロックは、前記距骨用創外固定ピン保持部を有する距骨ブロックと、前記踵骨用創外固定ピン保持部を有する踵骨ブロックとを備え、
前記距踵関節距離調整機構は、前記距骨ブロックと前記踵骨ブロックとを離間または近接するように移動させるものである上記(1)に記載の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具。
(3) 前記脛骨シャフトの遠位端部は、前記距骨ブロックに取り付けられている上記(2)に記載の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具。
(4) 前記距踵関節距離調整機構は、ねじ送り機構によって、前記距骨ブロックと前記踵骨ブロックとを離間または近接するように移動させるものである上記(2)または(3)に記載の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具。
(5) 前記距踵関節距離調整機構による前記距骨ブロックおよび前記踵骨ブロックの前記移動を案内するガイド機構を備える上記(2)ないし(4)のいずれかに記載の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具。
(6) 前記ガイド機構は、前記距骨ブロックおよび前記踵骨ブロックの一方から突出する棒状部材と、前記距骨ブロックおよび前記踵骨ブロックの他方に設けられ、前記棒状部材が進退可能な凹部とからなる上記(5)に記載の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具。
(7) 前記ガイド機構は、前記距骨ブロックおよび前記踵骨ブロックの一方から突出する2本の棒状部材と、前記距骨ブロックおよび前記踵骨ブロックの他方に設けられ、前記棒状部材が進退可能な2つの凹部とからなり、前記2本の棒状部材および前記2つの凹部は、前記距踵関節距離調整機構の両側部に設けられている上記(5)に記載の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具。
(8) 前記棒状部材に、前記創外固定ピン保持具の外部から、前記距骨ブロックと前記踵骨ブロックとの間の距離を視認可能な目盛りが設けられている上記(6)または(7)に記載の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具。
(9) 前記距踵関節距離調整機構によって離間された前記距骨ブロックと前記踵骨ブロックとの間に挿入可能なスペーサー部材を備える上記(2)ないし(8)のいずれかに記載の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具。
【0007】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(10) 足関節の損傷を治療するために骨に刺入される少なくとも3本の創外固定ピンと、上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具とを備える足関節用創外固定器であって、
第1の前記創外固定ピンは、脛骨に刺入される脛骨用創外固定ピンであり、第2の前記創外固定ピンは、距骨に刺入される距骨用創外固定ピンであり、第3の創外固定ピンは、踵骨に刺入される踵骨用創外固定ピンである足関節用創外固定器。
【発明の効果】
【0008】
本発明の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具および足関節用創外固定器においては、足根骨ブロックは、距骨用創外固定ピン保持部と踵骨用創外固定ピン保持部との間の距離を調整可能な距踵関節距離調整機構を備える。これにより、より自由度が高く適切な位置において創外固定ピン(脛骨用創外固定ピン、距骨用創外固定ピン、踵骨用創外固定ピン)を保持することができる。
【0009】
また、本発明の創外固定ピン保持具および足関節用創外固定器の距踵関節距離調整機構は、創外固定ピン(脛骨用創外固定ピン、距骨用創外固定ピン、踵骨用創外固定ピン)を保持した状態であっても、距骨用創外固定ピン保持部と踵骨用創外固定ピン保持部との間の距離を調整可能となっている。これにより、距踵関節距離調整機構を備える創外固定ピン保持具および足関節用創外固定器を、骨折の治療中もしくは治療後、または骨折の治療とは別に、足関節の軟部組織(軟骨等)の治療や再生にも使用することができる。すなわち、距骨と脛骨の間の関節における軟部組織(軟骨等)の再生を目的として、再生状況に応じて適切に、関節に付加される荷重を調整(免荷)することができ、軟部組織の再生を適切に導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具の実施例を示す正面図である。
図2図2は、図1に示す足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具を構成する脛骨シャフトを示す拡大正面図である。
図3図3は、図1に示す足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具を構成する足根骨ブロックを示す拡大正面図である。
図4図4は、図3に示す足根骨ブロックの底面図である。
図5図5は、図4のA-A線一部断面図である。
図6図6は、図3に示す足根骨ブロックに対して、距骨ブロックと踵骨ブロックとの間にスペーサー部材を挿入した状態を示す正面図である。
図7図7は、図6に示すスペーサー部材を示す正面図である。
図8図8は、図7に示すスペーサー部材の右側面図である。
図9図9は、図3に示す足根骨ブロックにおいて、距骨ブロックと踵骨ブロックとを近接するように移動させた状態を示す正面図である。
図10図10は、本発明の足関節用創外固定器において用いられる創外固定ピンの実施例を示す正面図である。
図11図11は、図1に示す足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具を用いた創外固定術の一工程を示す正面説明図である。
図12図12は、図11に示す工程に続く創外固定術の一工程を示す正面説明図である。
図13図13は、図12に示す工程に続く創外固定術の一工程を示す正面説明図である。
図14図14は、図13に示す工程に続く創外固定術の一工程を示す正面説明図である。
図15図15は、本発明の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具の他の実施例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具を図面に示した実施例を用いて説明する。
本発明の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具10は、図1ないし図9に示すように、足関節の損傷を治療するために骨に刺入される創外固定ピンを保持するための創外固定ピン保持具10であって、脛骨に刺入された脛骨用創外固定ピン(以下、脛骨用ピンとも言う)を保持する脛骨用創外固定ピン保持部22と、脛骨に沿って長手方向に延びる脛骨シャフト11と、脛骨シャフト11の遠位端部に取り付けられる足根骨ブロック12とを備える。創外固定ピン保持具10の足根骨ブロック12は、距骨に刺入された距骨用創外固定ピン(以下、距骨用ピンとも言う)を保持する距骨用創外固定ピン保持部32と、踵骨に刺入された踵骨用創外固定ピン(以下、踵骨用ピンとも言う)を保持する踵骨用創外固定ピン保持部52とを備える。さらに、足根骨ブロック12は、距骨用創外固定ピン保持部32と踵骨用創外固定ピン保持部52との間の距離を調整可能な距踵関節距離調整機構60を備える。
【0012】
本発明の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具10は、脛骨に沿って長手方向に延びる脛骨シャフト11と、脛骨シャフト11の遠位端部に取り付けられる足根骨ブロック12とを備える。この実施例では、足根骨ブロック12は、距骨用創外固定ピン保持部32を有する距骨ブロック30と、踵骨用創外固定ピン保持部52を有する踵骨ブロック50とを備える。
【0013】
図2に示すように、創外固定ピン保持具10の脛骨シャフト11は、近位側シャフト部20と遠位側シャフト部27とを有する。遠位側シャフト部27は近位側シャフト部20内に進退可能に挿入されている。近位側シャフト部20に取り付けられたシャフト長調整用ボルト26を緩めて、遠位側シャフト部27を出し入れすることにより、脛骨シャフト11全体の長手方向寸法(長さ)を調整することができる。
【0014】
脛骨シャフト11(近位側シャフト部20)の近位側部分(図2における上側部分)には、脛骨用創外固定ピン保持部22が設けられている。本実施例では、脛骨用創外固定ピン保持部22は3つの脛骨用ピン保持用孔部23を有し、1本ないし3本の脛骨用ピンを保持することができる。より具体的には、脛骨シャフト11(近位側シャフト部20)は、近位側シャフト本体21と、2つの脛骨用ピン保持用ボルト24によって近位側シャフト本体21に取り付けられる脛骨用ピン保持片25とを備え、近位側シャフト本体21と脛骨用ピン保持片25との間に3つの脛骨用ピン保持用孔部23が形成されている。脛骨用創外固定ピン保持部22の2つの脛骨用ピン保持用ボルト24を緩めた状態(一時的に脛骨用ピン保持片25を外してもよい)で、脛骨用ピン保持用孔部23に脛骨用ピンを挿入し、脛骨用ピン保持用ボルト24を締め付けることで脛骨用ピンを保持することができる。
【0015】
脛骨シャフト11(遠位側シャフト部27)の遠位端部は、足根骨ブロック12に取付可能となっている。具体的には、脛骨シャフト11(遠位側シャフト部27)の遠位端部には、球状のボール部28が設けられており、ボール部28を被包するように六角ナット29が配設されている。後述するように、脛骨シャフト11(遠位側シャフト部27)の遠位端部は、ボール部28および六角ナット29を介して(所謂、ボールジョイントによる連結によって)、距骨ブロック30(脛骨シャフト取付部40)に、取り付けられている。六角ナット29による締付力を調整することで、距骨ブロック30(脛骨シャフト取付部40)を、脛骨シャフト11(遠位側シャフト部27)に対して、回動可能または不可とすることができる。
【0016】
図3ないし図9に示すように、本実施例の足根骨ブロック12は、距骨用創外固定ピン保持部32を有する距骨ブロック30と、踵骨用創外固定ピン保持部52を有する踵骨ブロック50とを備える。
【0017】
本実施例では、距骨ブロック30は、距骨用創外固定ピン保持部32を備える距骨ブロック本体31と、距骨ブロック本体31に固定用ボルト38を介して回動可能に取り付けられた脛骨シャフト取付部40とを備える。固定用ボルト38を締め付けるまたは緩めることで、脛骨シャフト取付部40を、距骨ブロック本体31に対して回動可能または回動不可とすることができる。
【0018】
図3に示すように、脛骨シャフト取付部40は、上方(図3における上方向)に開口するボール部受け用凹部41と、外面に形成された雄ねじ部42とを備える。ボール部受け用凹部41に脛骨シャフト11(遠位側シャフト部27)のボール部28を載置した状態で、六角ナット29と雄ねじ部42とを螺合することで、脛骨シャフト11の遠位端部を、距骨ブロック30(足根骨ブロック12)に取り付けることができ、所謂、ボールジョイントによる連結を構成している。
【0019】
距骨ブロック30(距骨ブロック本体31)の距骨用創外固定ピン保持部32は1つの距骨用ピン保持用孔部33を有し、1本の距骨用ピンを保持することができる。より具体的には、距骨ブロック30は、1つの距骨用ピン保持用ボルト34によって距骨ブロック本体31に取り付けられる距骨用ピン保持片35とを備え、距骨ブロック本体31と距骨用ピン保持片35との間に1つの距骨用ピン保持用孔部33が形成されている。距骨用創外固定ピン保持部32の1つの距骨用ピン保持用ボルト34を緩めた状態(一時的に距骨用ピン保持片35を外してもよい)で、距骨用ピン保持用孔部33に距骨用ピンを挿入し、距骨用ピン保持用ボルト34を締め付けることで距骨用ピンを保持することができる。
【0020】
本実施例では、距骨ブロック30(距骨ブロック本体31)の距骨用創外固定ピン保持部32は1つの距骨用ピン保持用孔部33を有し、1本の距骨用ピンを保持するものとなっている。これにより、後述するように、先に距骨に刺入した距骨用創外固定ピン(距骨用創外固定ピン保持部32)を支点として、足根骨ブロック12を回動できるため、後に刺入する踵骨用創外固定ピンの刺入位置(踵骨用創外固定ピン保持部52の位置)を適切に決定することができる。
【0021】
なお、本実施例の距骨用ピン保持片35に対しては、距骨用ピン保持用孔部33の一方側の側部(図3における左側部分)に距骨用ピン保持用ボルト34が取り付けられており、距骨用ピンを保持した状態(距骨用ピン保持用ボルト34を締め付けた状態)で、距骨用ピン保持片35の他方側の側部(図3における右側部分)は、距骨ブロック本体31と楔状に係合することにより固定されている(楔状係合部36)。
【0022】
踵骨ブロック50の踵骨用創外固定ピン保持部52は2つの踵骨用ピン保持用孔部53を有し、1本または2本の踵骨用ピンを保持することができる。より具体的には、踵骨ブロック50は、踵骨ブロック本体51と、1つの踵骨用ピン保持用ボルト54によって踵骨ブロック本体51に取り付けられる踵骨用ピン保持片55とを備え、踵骨ブロック本体51と踵骨用ピン保持片55との間に2つの踵骨用ピン保持用孔部53が形成されている。踵骨用創外固定ピン保持部52の1つの踵骨用ピン保持用ボルト54を緩めた状態(一時的に踵骨用ピン保持片55を外してもよい)で、踵骨用ピン保持用孔部53に踵骨用ピンを挿入し、踵骨用ピン保持用ボルト54を締め付けることで踵骨用ピンを保持することができる。なお、本実施例の踵骨用ピン保持片55に対しては、2つの踵骨用ピン保持用孔部53の略中間部に踵骨用ピン保持用ボルト54が取り付けられており、2本の踵骨用ピンを略同等の荷重で保持することができる。
【0023】
本実施例では、踵骨ブロック50の踵骨用創外固定ピン保持部52は2つの踵骨用ピン保持用孔部53を有し、2本の踵骨用ピンを保持するものとなっている。これにより、距骨に対して比較的大きく安定した骨である踵骨に対して、安定して創外固定ピン保持具10(足根骨ブロック12)を取り付けることができる。
【0024】
なお、図3に示すように、踵骨ブロック50には、踵骨用ピン保持用孔部53以外にも、ガイドピン(細く先の尖った金属製のピン。Kワイヤやキルシュナー鋼線とも呼ばれる。)を挿通可能な小孔が複数形成されている。これにより、ガイドピンを用いた踵骨ブロック50(足根骨ブロック12)の仮固定が可能となる。
【0025】
図3ないし図5に示すように、足根骨ブロック12は、距骨用創外固定ピン保持部32と踵骨用創外固定ピン保持部52との間の距離を調整可能な距踵関節距離調整機構60を備える。本実施例では、距踵関節距離調整機構60は、距骨ブロック30と踵骨ブロック50とを離間または近接するように移動させるものであり、より具体的には、距踵関節距離調整機構60は、ねじ送り機構によって、距骨ブロック30と踵骨ブロック50とを離間または近接するように移動させるものである。
【0026】
図5に示すように、本実施例の距踵関節距離調整機構60は、距踵関節距離調整用ボルト61(以下、単に距離調整用ボルト61と言う)を備える。距離調整用ボルト61は、距骨ブロック30(距骨ブロック本体31)に形成された距離調整用ボルト収容孔37に、回動可能かつ軸方向に移動不可に保持されている。具体的には、図5に示すように、距離調整用ボルト61の軸部62の基端側部分(ねじ非形成部)に、全周に亘って規制用凹部63が形成されており、距骨ブロック30(距骨ブロック本体31)に取り付けられた規制用ねじ67が、距離調整用ボルト61の規制用凹部63と係合することにより、距離調整用ボルト61は、距骨ブロック30に対して回動可能かつ軸方向へ移動不可となっている。
【0027】
距離調整用ボルト61の軸部62の先端側部分には雄ねじ部64が形成されている。雄ねじ部64は、踵骨ブロック50に設けられた距離調整用ボルト収容凹部56の内面に形成された雌ねじ部(56)と螺合している。距離調整用ボルト61の頭部65は、距骨ブロック30の外部に露出しており、外部に開口する工具用凹部66が形成されている。
【0028】
距離調整用ボルト61の工具用凹部66に対応する工具(例えば、六角レンチ)を用いて、距離調整用ボルト61を回動することにより、距離調整用ボルト61の雄ねじ部64が距骨ブロック30の距離調整用ボルト収容凹部(雌ねじ部)56に螺出または螺入する。このような、距離調整用ボルト61、規制用ねじ67、および雌ねじ部56を有する距踵関節距離調整機構60(ねじ送り機構)により、距骨ブロック30(距骨用創外固定ピン保持部32)と踵骨ブロック50(踵骨用創外固定ピン保持部52)とを離間または近接するように移動させることができる。なお、本実施例では、距離調整用ボルト61の頭部65は、距骨ブロック30側において外部に露出している。これにより、創外固定ピン保持具10を取り付けた際に、距骨側(前方側)から距離調整用ボルト61を操作(回動)できるようになっている。
【0029】
さらに、本実施例の創外固定ピン保持具10は、図3ないし図5に示すように、距踵関節距離調整機構(ねじ送り機構)60による距骨ブロック30および踵骨ブロック50の移動を案内するガイド機構70を備える。具体的には、図4に示すように、本実施例のガイド機構70は、距骨ブロック30および踵骨ブロック50の一方(ここでは、距骨ブロック30)から突出する棒状部材71と、距骨ブロック30および踵骨ブロック50の他方(ここでは、踵骨ブロック50)に設けられ、棒状部材71が進退可能な凹部72とからなるものである。
【0030】
より具体的には、図4に示すように、本実施例のガイド機構70は、距骨ブロック30および踵骨ブロック50の一方(ここでは、距骨ブロック30)から突出する2本の棒状部材71と、距骨ブロック30および踵骨ブロック50の他方(ここでは、踵骨ブロック50)に設けられ、棒状部材71が進退可能な2つの凹部72とからなり、2本の棒状部材71および2つの凹部72は、距踵関節距離調整機構(ねじ送り機構)60(距離調整用ボルト61および雌ねじ部56)の両側部(図4における上側および下側部分)に設けられている。ガイド機構70によって、すなわち、棒状部材71が凹部72内を進退する動きに沿って、距骨ブロック30と踵骨ブロック50とが離間または近接するような移動が、がたつきなくスムーズに案内される。
【0031】
また、本実施例では、図3および図4に示すように、棒状部材71に、創外固定ピン保持具10の外部から、距骨ブロック30と踵骨ブロック50との間の距離を視認可能な目盛り73が設けられている。これにより、距骨ブロック30と踵骨ブロック50との間の距離を正確に認識でき、距骨ブロック30と踵骨ブロック50とを所望の距離において配置できる。また、創外固定ピン保持具10の取り付け後であっても、距骨ブロック30と踵骨ブロック50とを所望の距離だけ移動させることができる。
【0032】
本実施例では、距骨ブロック30と踵骨ブロック50の向かい合う面は、それぞれ、下端から、距離調整用ボルト61の中心軸にほぼ直交する直交面と、直交面の上端から、踵骨ブロック50側方向(図3における右方向)に傾斜した傾斜面を備えるものとなっている。これにより、距骨ブロック30において、脛骨シャフト11の取付部(固定用ボルト38や脛骨シャフト取付部40)を形成するためのスペースを確保しつつ、創外固定ピン保持具10全体をコンパクトにすることができる。また、直交面と傾斜面とをともに視認することで、距踵関節距離を把握し易くなる。
【0033】
図6ないし図8に示すように、足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具10は、距踵関節距離調整機構60によって離間された距骨ブロック30と踵骨ブロック50との間に挿入可能なスペーサー部材80を備えることが好ましい。スペーサー部材80は、例えば、樹脂材料、エラストマ材料、ゴム材料等からなるものである。距骨ブロック30と踵骨ブロック50との間にスペーサー部材80を挿入することで、距骨ブロック30と踵骨ブロック50とを所望の距離において維持することができる。
【0034】
本実施例では、図7および図8に示すように、スペーサー部材80は、距骨ブロック30と踵骨ブロック50との間に形成される隙間に対応した形状となっている。スペーサー部材80には、距離調整用ボルト61や棒状部材71との干渉を回避できるよう切欠81が形成されている。これにより、創外固定ピン保持具10の外部から容易にスペーサー部材80を距骨ブロック30と踵骨ブロック50との間に挿入することができる。なお、創外固定ピン保持具は、厚さの異なる複数のスペーサー部材を備えることが好ましい。
【0035】
本実施例の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具10においては、足根骨ブロック12は、距骨用創外固定ピン保持部32と踵骨用創外固定ピン保持部52との間の距離を調整可能な距踵関節距離調整機構60を備える。これにより、より自由度が高く適切な位置において創外固定ピン(脛骨用創外固定ピン、距骨用創外固定ピン、踵骨用創外固定ピン)を保持することができる。
【0036】
また、本実施例の距踵関節距離調整機構60は、創外固定ピン(脛骨用創外固定ピン、距骨用創外固定ピン、踵骨用創外固定ピン)を保持した状態であっても、距骨用創外固定ピン保持部32(距骨ブロック30)と踵骨用創外固定ピン保持部52(踵骨ブロック50)との間の距離を調整可能となっている。これにより、距踵関節距離調整機構60を備える創外固定ピン保持具10を、骨折の治療中もしくは治療後、または骨折の治療とは別に、足関節の軟部組織(軟骨等)の治療や再生にも使用することができる。すなわち、距骨と脛骨の間の関節における軟部組織(軟骨等)の再生を目的として、再生状況に応じて適切に、関節に付加される荷重を調整(免荷)することができ、軟部組織の再生を適切に導くことができる。
【0037】
そして、本発明の足関節用創外固定器1は、図1ないし図9に示すような創外固定ピン保持具10と、足関節の損傷を治療するために骨に刺入される少なくとも3本の創外固定ピンとを備える(図14参照)。そして、そのような少なくとも3本の創外固定ピンは、第1ないし第3の創外固定ピンを含み、第1の創外固定ピンは、脛骨に刺入される脛骨用創外固定ピンであり、第2の創外固定ピンは、距骨に刺入される距骨用創外固定ピンであり、第3の創外固定ピンは、踵骨に刺入される踵骨用創外固定ピンである。
【0038】
図10に、足関節用創外固定器1において用いられる創外固定ピンの一例を示す。図10に示すように、本実施例の創外固定ピン90は、全体として細長い略丸棒状の部材であり、先端側部分(図10における下側部分)にスクリュー部91が形成されている。創外固定ピン90(スクリュー部91)の先端にはセルフタップ部92が形成されている。創外固定ピン90の基端部には、創外固定ピン90を骨に刺入する際に用いられる器具と係合可能な係合部93が形成されている。
【0039】
なお、足関節用創外固定器を構成する創外固定ピンとしては、上述のような創外固定ピン90の他、公知の種々の創外固定ピンを用いることができる。また、創外固定ピンは、創外固定スクリューと呼ばれることもある。創外固定ピンの先端側部分にはスクリュー部が形成されていなくてもよい。創外固定ピンの先端部にはセルフタップ部が形成されていなくてもよい。創外固定ピンの先端部は骨に刺入し易いように尖っていてもよい。創外固定ピンは、その先端側部分において先端部が尖っており、それよりも基端側の部分にスクリュー部やセルフタップ部が形成されていてもよい。創外固定ピンの基端部に形成される係合部の形状は、用いられる器具により適宜設計される。創外固定ピンの基端部には上述のような係合部が形成されていなくてもよい。また、脛骨用創外固定ピン、距骨用創外固定ピン、および踵骨用創外固定ピンとしては、同一の創外固定ピンを用いてもよく、それぞれ、異なる創外固定ピンを用いてもよい。
【0040】
上述のような足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具10または足関節用創外固定器1を使用する方法の一例について、図11ないし図14に示した実施例を用いて説明する。
【0041】
(創外固定ピン保持具分割工程)
まず、創外固定ピン保持具10を、脛骨シャフト11と足根骨ブロック12とに分割する。
【0042】
(距骨用創外固定ピン刺入工程および足根骨ブロック取付工程)
次いで、距骨2に距骨用創外固定ピン90を刺入する。そして、距骨2に刺入した距骨用創外固定ピン90を基準として、足根骨ブロック12を取り付ける。具体的には、図11に示すように、距骨用創外固定ピン保持部32の距骨用ピン保持用ボルト34を緩めた状態(距骨用ピン保持片35を一時的に外してもよい)で、距骨用ピン保持用孔部33に距骨用創外固定ピン90を挿入し、適切な位置で距骨用ピン保持用ボルト34を締め付けて、距骨用創外固定ピン保持部32(距骨用ピン保持用孔部33内)において、距骨用創外固定ピン90を保持させる。なお、本工程では、距骨用ピン保持用ボルト34の締め付けは、足根骨ブロック12が、距骨用創外固定ピン90(距骨用創外固定ピン保持部32)を支点に回動可能な程度の締め付けとすることが好ましい。
【0043】
(踵骨用創外固定ピン刺入および保持工程)
次いで、踵骨3に踵骨用創外固定ピン90を刺入する。ここでは、足根骨ブロック12において距骨ブロック30と踵骨ブロック50とを接触させた状態で、先に距骨2に刺入した距骨用創外固定ピン90(距骨用創外固定ピン保持部32)を支点に適切な刺入位置を決定する。具体的には、図12に示すように、足根骨ブロック12を、距骨用創外固定ピン90(距骨用創外固定ピン保持部32)を支点に回動させ、適切な位置において、踵骨用創外固定ピン保持部52(2つの踵骨用ピン保持用孔部53)を介して、1本または2本(ここでは、2本)の踵骨用創外固定ピン90を刺入する。本実施例では、踵骨用創外固定ピン保持部52が2つの踵骨用ピン保持用孔部53を有するため、そのいずれかまたは両方を選択して、踵骨用創外固定ピン90を刺入することができる。そして、踵骨用ピン保持用ボルト54を締め付けて、踵骨用創外固定ピン保持部52(踵骨用ピン保持用孔部53内)において、踵骨用創外固定ピン90を保持させる。また、必要であれば、本工程において、距骨用ピン保持用ボルト34を締め付けて、距骨用創外固定ピン保持部32(距骨用ピン保持用孔部33内)において、距骨用創外固定ピン90を確実に保持させることが好ましい。
【0044】
(距踵関節距離調整工程)
次いで、距踵関節距離調整機構60を用いて、距踵関節距離の調整を行なう。具体的には、図13に示すように、距踵関節距離調整機構60の距離調整用ボルト61を回動し、距骨ブロック30と踵骨ブロック50とを離間または近接するように移動(ここでは、離間するように移動)させて、両者を所望の距離(関節に付加される荷重が所望の荷重)となるように調整する。なお、図13では明確に表示されてはいないが、このような距踵関節距離の調整により、距骨2と踵骨3との距離(距踵関節距離)および/または距骨2と脛骨4との距離が調整される。また、距踵関節距離の調整後、調整した距離を維持するためにスペーサー部材80を挿入する。
【0045】
また、本実施例の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具10または足関節用創外固定器1においては、距離調整用ボルト61の頭部65が、距骨ブロック30側(図13における左側であって、患者の前側)において外部に露出している。そのため、距踵関節距離調整工程において、距骨2側(患者の前方側)から距離調整用ボルト61を操作(回動)し易い。
【0046】
また、本実施例の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具10または足関節用創外固定器1においては、距骨ブロック30(距骨ブロック本体31)の距骨用創外固定ピン保持部32は1つの距骨用ピン保持用孔部33を有し、1本の距骨用ピンを保持するものとなっており、かつ、踵骨ブロック50の踵骨用創外固定ピン保持部52は2つの踵骨用ピン保持用孔部53を有し、1本または2本の踵骨用ピンを保持するものとなっている。これにより、特に、2本の踵骨用ピンを保持した場合、踵骨ブロック50を回動不可に位置させつつ、距骨2と踵骨3との距離(距踵関節距離)および/または距骨2と脛骨4との距離を調整することができる。
【0047】
(脛骨シャフトの取付工程)
次いで、足根骨ブロック12(距骨ブロック30)に、脛骨シャフト11を取付ける。上述したように、距骨ブロック30(脛骨シャフト取付部40)のボール部受け用凹部41に脛骨シャフト11(遠位側シャフト部27)のボール部28を載置した状態で、六角ナット29と雄ねじ部42とを螺合することで、脛骨シャフト11の遠位端部を、距骨ブロック30(足根骨ブロック12)に取り付ける。
【0048】
(脛骨用創外固定ピン刺入および保持工程)
次いで、脛骨4に脛骨用創外固定ピン90を刺入する。具体的には、図14に示すように、まず、適切な位置に脛骨用創外固定ピンを刺入できるよう、脛骨シャフト11のシャフト長調整用ボルト26を用いて、脛骨シャフト11の長手方向寸法(長さ)を調整する。そして、脛骨用創外固定ピン保持部22(3つの脛骨用ピン保持用孔部23)を介して、1本ないし3本(ここでは、3本)の脛骨用創外固定ピン90を刺入する。本実施例では、脛骨用創外固定ピン保持部22が3つの脛骨用ピン保持用孔部23を有するため、そのいずれかまたは全てを選択して、脛骨用創外固定ピン90を刺入することができる。そして、2つの脛骨用ピン保持用ボルト24を締め付けて、脛骨用創外固定ピン保持部22(脛骨用ピン保持用孔部23内)において、脛骨用創外固定ピン90を保持させる。これにより、足関節の損傷を治療するために骨に刺入される創外固定ピン(脛骨用創外固定ピン、距骨用創外固定ピン、踵骨用創外固定ピン)の保持(足関節への創外固定ピン保持具10および足関節用創外固定器1の取り付け)が完了する。なお、必要であれば、最後に、各ボルト(距骨用ピン保持用ボルト34、踵骨用ピン保持用ボルト54、脛骨用ピン保持用ボルト24等)の増し締めを行なう。
【0049】
なお、実際に本実施例の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具10または足関節用創外固定器1を使用する際には、以上の各工程を同じ順序で実施する必要はなく、適宜、工程の順序を入れ替えることができる。また、一部の工程を追加または削除することもできる。特に、本実施例の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具10および足関節用創外固定器1においては、距骨用創外固定ピン保持部32(距骨ブロック30)と踵骨用創外固定ピン保持部52(踵骨ブロック50)との間の距離を調整可能な距踵関節距離調整機構60を備えており、そのような距踵関節距離調整機構60を用いた距踵関節距離の調整工程をいつ行なうかを、適宜選択することができる。
【0050】
例えば、踵骨用創外固定ピン刺入前に距踵関節距離調整工程を実施することもできる。すなわち、上述した踵骨用創外固定ピン刺入および保持工程において、距骨ブロック30と踵骨ブロック50とを接触させた状態では、適切な踵骨用創外固定ピンの刺入位置がない場合、適切な位置に踵骨用創外固定ピンを刺入できるよう、距踵関節距離調整機構60を用いて、踵骨用創外固定ピン保持部52の位置を変更することが有効である。
【0051】
また、例えば、一旦、創外固定ピン保持具10による創外固定ピン(脛骨用創外固定ピン、距骨用創外固定ピン、踵骨用創外固定ピン)の保持(足関節への創外固定ピン保持具10および足関節用創外固定器1の取り付け)が完了した後に、距踵関節距離調整工程を実施することもできる。これは、対象とする足関節の損傷の回復状況に応じて、適切に、関節に付加される荷重を調整(免荷)したい場合等に、有効である。
【0052】
本発明の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具は、上述した実施例の態様に限られるものではない。
例えば、図15に示す創外固定ピン保持具10aは、距骨用創外固定ピン保持部32aおよび/または踵骨用創外固定ピン保持部52(ここでは、距骨用創外固定ピン保持部32a)の位置を変更する距踵関節距離調整機構60aを備えている。具体的には、創外固定ピン保持具10aにおいては、距骨用創外固定ピン保持部32aにおいて、距骨用ピン保持片35aをある方向(図15においては左右方向;図中白抜き矢印で示す)にスライドすることで、距骨用ピン保持用孔部33aの位置を変更できるようになっている。これにより、距骨ブロック30aと踵骨ブロック50とを離間または近接するように移動させることなく、距骨用創外固定ピン保持部32aと踵骨用創外固定ピン保持部52との間の距離を調整可能となっている。なお、創外固定ピン保持具においては、このような距踵関節距離調整機構60aを、上述した距踵関節距離調整機構60と同時に設けてもよく、どちらか一方のみを設けてもよい。
【0053】
また、本実施例の足関節用創外固定器用の創外固定ピン保持具や足関節用創外固定器は、他の器具等と組み合わせて足関節用創外固定器器械セットとして用いることもできる。組み合わされる他の器具としては、例えば、一般的に、ガイドピン、キャニュレイティドドリル、創外固定ピンガイド、ドリルガイドスリーブ、ガイドピンスリーブ、ドリルガイド、固定ハンドル、六角スパナ、スペーサー、六角棒スパナ、創外固定ピンインサーター、ロッドハンドル、チャックキー等と呼ばれる器具が挙げられる。
【符号の説明】
【0054】
1 足関節用創外固定器
2 距骨
3 踵骨
4 脛骨
10 創外固定ピン保持具
11 脛骨シャフト
12 足根骨ブロック
22 脛骨用創外固定ピン保持部
23 脛骨用ピン保持用孔部
24 脛骨用ピン保持用ボルト
25 脛骨用ピン保持用片
30 距骨ブロック
32 距骨用創外固定ピン保持部
33 距骨用ピン保持用孔部
34 距骨用ピン保持用ボルト
35 距骨用ピン保持用片
50 踵骨ブロック
52 踵骨用創外固定ピン保持部
53 踵骨用ピン保持用孔部
54 踵骨用ピン保持用ボルト
55 踵骨用ピン保持用片
56 距離調整用ボルト収容凹部(雌ねじ部)
60 距踵関節距離調整機構
61 距離調整用ボルト
70 ガイド機構
80 スペーサー部材
90 創外固定ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15