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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024107949
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】エッチング方法及びエッチング装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/302 20060101AFI20240802BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
H01L21/302 201A
H01L21/302 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012160
(22)【出願日】2023-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸田 聡
(72)【発明者】
【氏名】中込 健
(72)【発明者】
【氏名】今村 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】入江 伸次
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA05
5F004BA19
5F004BB18
5F004BB25
5F004BB26
5F004BC03
5F004BC06
5F004CA02
5F004DA00
5F004DA04
5F004DA18
5F004DA25
5F004DB01
5F004DB02
5F004EA28
5F004EA34
5F004EA37
(57)【要約】
【課題】シリコン層をエッチングするにあたり、エッチング後の当該シリコン層の形状を所望のものとする。
【解決手段】エッチング方法は、表面にシリコン層が形成された基板に、ハロゲン含有ガスとアミンガスとを供給して、前記シリコン層をエッチングするエッチング工程を含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にシリコン層が形成された基板に、ハロゲン含有ガスとアミンガスとを供給して、前記シリコン層をエッチングするエッチング工程を含むエッチング方法。
【請求項2】
前記ハロゲン含有ガスは、フッ素ガスである請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記基板には、前記シリコン層に隣接してゲルマニウム含有層が形成され、
前記シリコン層と前記ゲルマニウム含有層とが、各々の前記基板の表面に露出し、
前記エッチング工程は、前記シリコン層と前記ゲルマニウム含有層とのうちシリコン層を選択的にエッチングする工程である請求項2に記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記ゲルマニウム含有層は、シリコンゲルマニウム層である請求項3に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記基板には前記シリコン層と、前記シリコンゲルマニウム層と、が交互に積層されて設けられる請求項4に記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記エッチング工程は、前記ハロゲン含有ガスを供給する期間と、前記アミンガスを供給する期間とが互いに重なるように、当該ハロゲン含有ガス及び当該アミンガスを前記基板に供給する工程を含む請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記基板に供給するアミンガスの流量/前記基板に供給するハロゲン含有ガスの流量は、0.01以上である請求項6記載のエッチング方法。
【請求項8】
前記エッチング工程は、アンモニアガスを前記基板に供給する工程を含む請求項2に記載のエッチング方法。
【請求項9】
前記エッチング工程は、前記ハロゲン含有ガス、前記アミンガス、前記アンモニアガスを各々供給する期間が互いに重なるように、当該ハロゲン含有ガス、当該アミンガス、前記アンモニアガスを前記基板に供給する工程を含む請求項8に記載のエッチング方法。
【請求項10】
前記アミンガスは、トリメチルアミンガスである請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項11】
表面にシリコン層が形成された基板を格納する処理容器と、
前記シリコン層をエッチングするために、ハロゲン含有ガスとアミンガスとを前記処理容器内に供給するガス供給機構と、
を備えるエッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エッチング方法及びエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造するにあたり、基板である半導体ウエハ(以下、ウエハと記載する)の表面に形成されたSi層及びSiGe層のうちのSi層を選択的にエッチングする場合が有る。なお、特許文献1にはフッ素水素ガス及びトリメチルアミンガスを用いて、酸化シリコン層をエッチングすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-39965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、シリコン層をエッチングするにあたり、エッチング後の当該シリコン層の形状を所望のものとすることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のエッチング方法は、表面にシリコン層が形成された基板に、ハロゲン含有ガスとアミンガスとを供給して、前記シリコン層をエッチングするエッチング工程を含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示は、シリコン層をエッチングするにあたり、エッチング後の当該シリコン層の形状を所望のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の各実施形態における処理がなされるウエハの縦断正面図である。
図2】比較形態のエッチング処理による凹部の変化を示す説明図である。
図3】比較形態のエッチング処理による凹部の変化を示す説明図である。
図4】第1実施形態のエッチング処理による凹部の変化を示す説明図である。
図5】第1実施形態のエッチング処理による凹部の変化を示す説明図である。
図6】第1実施形態のエッチング処理後のウエハの縦断正面図である。
図7】第2実施形態のエッチング処理による凹部の変化を示す説明図である。
図8】第2実施形態のエッチング処理による凹部の変化を示す説明図である。
図9】第2実施形態のエッチング処理後のウエハの縦断正面図である。
図10】本開示の処理を行うエッチング装置の一例を示す縦断正面図である。
図11】評価試験の結果を示すグラフ図である。
図12】評価試験の結果を示すSEM画像である。
図13】評価試験前のウエハの表面を示すSEM画像である。
図14】評価試験の結果を示すSEM画像である。
図15】評価試験の結果を示すグラフ図である。
図16】評価試験の結果を示すSEM画像である。
図17】評価試験の結果を示すSEM画像である。
図18】評価試験の結果を示すSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(エッチングの概要及び基板における各層の構造)
本開示の一実施形態におけるエッチング方法(エッチング処理)についてについて説明する。このエッチング処理は、例えば各々数nmの厚みのSi(シリコン)層11とSiGe(シリコンゲルマニウム)層12とが多数積層された基板Wから、ナノシートまたはナノワイヤといったGAA(Gate all around)トランジスタを製造する過程で用いられ、基板Wの周囲にプラズマを形成せずに行われる。図1はウエハである基板Wの縦断正面図であり、エッチング処理を行う前の状態を示している。
【0009】
基板Wの表層を13として示している。この表層13上にて、基板Wの厚さ方向を縦方向とすると、この縦方向にSi層11及びSiGe層12が交互に繰り返し積層されている。従ってSiGe層12は、縦方向においてSi層11に接している。このSi層11、SiGe層12による繰り返しの最上段はSi層11により形成されており、当該Si層11上には、上方からの当該Si層11のエッチングを防ぐためのマスク膜14が積層されている。このように互いに積層されるマスク膜14、Si層11、SiGe層12を積層構造体10とすると、縦断面視で積層構造体10を横方向に分割するように、積層構造体10の上端から下端に亘る溝15が形成されており、この溝15は横方向に離れて複数形成されている。従って、Si層11、SiGe層12の各側面が、溝15を介して基板Wの表面に露出しており、基板Wの上方から供給されて溝15内に導入されたエッチングガスに曝される。
【0010】
本実施形態は、Si層11及びSiGe層12のうち、Si層11を側方から選択的にエッチングする。このエッチングは、各Si層11の一部が残留するように行われる。従ってエッチング後には、SiGe層12、Si層11により積層構造体10の幅中心へと向う凹部18が形成されることになるが、この凹部18については、縦断面視で矩形性が高いことが望ましい。この矩形性について詳しく説明すると、Si層11により形成される凹部18の側面(奥壁面)と、凹部18の上面、下面と、が正面視で90°の角をなす場合において凹部18が矩形であるものとする。そして、そのような凹部18に対して形状が近似する凹部18が、矩形性が高い凹部18である。
【0011】
また、凹部18の矩形性を高くすることの他に、凹部18の奥壁を形成するSi層11の側面のラフネス(表面の荒れ)が抑えられていることが望まれる。さらに具体的には、当該側面について、凹凸の形成が抑えられて平滑性が高いものとされることが好ましい。なお、上記したエッチング後のシリコン層の形状を所望のものとすることには、当該ラフネスが抑えられた形状とすることが含まれる。
【0012】
(比較形態)
実施形態に係るエッチング処理を明確に説明すべく、先ず比較形態のエッチング処理について図2及び図3に基づいて説明する。図2及び図3は、図1に示す縦断正面図の部分拡大図に相当し、エッチング処理における基板Wの形状変化を示す説明図であり、図3は、エッチング処理終了時の基板Wの状態を示している。
【0013】
ハロゲン含有ガスであるF(フッ素)ガスとNHガスとをエッチングガスとして用いてSi層をエッチングする方法が知られており、比較形態におけるエッチング処理においては、これらのFガス及びNHガスを、上記した基板Wに同時に供給する。後に評価試験としても示すが、そのようなエッチングガスを供給することで、SiGe層12に対してSi層11が選択的にエッチングされる。しかし、Si層11におけるSiGe層12に対する界面付近の領域(以降、界面付近領域19とする)が、他の領域に比べて積層構造体10の幅中心へ向けて、大きくエッチングされてしまうことが確認された。従って、形成される凹部18としては縦方向に向けて見ると、各部での横方向における深さが異なるため、上記した矩形性については低い。
【0014】
このようにSi層11がエッチングされたのは、上記したSi層11における界面付近領域19では、隣接するSiGe層12からGe(ゲルマニウム)原子が拡散することに起因すると考えられる。さらに具体的には、その拡散により界面付近領域19は、Si層11の他の領域よりもGe原子濃度が高い組成となっていることで、図2図3に示すように、他の領域よりもエッチングレート(エッチング量/エッチング時間)が大きくなったと推定される。なお、Ge原子の拡散元となるSiGe層12はSi層11の界面付近領域19に比べてGe原子濃度が高いが、評価試験で示すようにエッチングは略なされない。SiGe層12についてはGe原子を比較的多く含むことで、拡散によってSi層中に微量にGeが含まれる界面付近領域19とは層の性質が異なり、そのために上記のエッチングガスに対する耐性が異なっていると考えられる。
【0015】
また、後述の評価試験の結果は、エッチング前に比べてエッチング後のSi層11のラフネスが大きくなることを示す。このラフネスの増大の理由としては、エッチングガスとSi層11との反応によって生成される副生成物に起因する。詳細には、エッチング中にこの副生成物としてケイフッ化アンモニウム((NHSiF)が生じ、この副生成物の層がSi層11上に形成されるが、Si層11上の各部でその厚さがばらつく。Si層11においてその副生成物の層の厚さが比較的大きい部位では、エッチングガスとの接触が妨害されることになり、エッチングが阻害される。つまり、Si層11の表面の各部でエッチング量がばらつくことになり、その結果として、上記したようにエッチング後のラフネスが大きくなると考えられる。
【0016】
(第1実施形態)
次に、図4から図6に基づいて、本実施形態に係るエッチング処理を説明する。図4図5は、図2図3と同様にエッチング処理における基板Wの形状変化を示す説明図であり、図5は、エッチング処理終了時の基板Wの状態を示している。図6図1と同じく、積層構造体10全体を示したエッチング処理後の縦断正面図であり、図5図6の一部を拡大して表したものである。
【0017】
本実施形態におけるエッチングガスは、Fガスと、アミンガスであるトリメチルアミン((CHN、以後TMAという)ガスにより構成され、これらのFガス及びTMAガスを基板Wに同時に供給する。Si層11における界面付近領域19と、他の領域との間でエッチング量が概ね揃うようにエッチングが進行すると考えられ(図4)、後に評価試験の結果としても示すように、エッチング終了後の凹部18としては矩形性が高いものとなる(図5図6)。即ち、本実施形態のエッチングガスを用いるにあたり、Si層11におけるGe原子の含有率が当該エッチングガスのエッチング性に影響を与え難い。
【0018】
また後述する評価試験の結果は、本実施形態のエッチングガスを用いることで、エッチング後のSi層11のラフネスの増大は抑制され、比較形態のエッチングガスを用いる場合に比べてエッチング後の当該Si層11の側面が平滑化されることを示す。これは、本実施形態と比較形態とでは生成する副生成物が違うことによるものと考えられる。本実施形態における副生成物は、比較形態の副生成物であるケイフッ化アンモニウムに含まれるアンモニアの組成元素が、トリメチルアミンの組成元素と置き換えられた物質であると想定される。そして当該副生成物は、ケイフッ化アンモニウムよりも蒸気圧が高いために生成後、直ぐに気化してSi層11の側面から離れることで、エッチングガスとSi層11の側面との接触を妨害せず、Si層11の側面は均一性高くエッチングされることによるためと考えられる。
【0019】
以上のように、本実施形態におけるエッチング処理によれば、エッチングにより形成される凹部18の矩形性を高くすることができ、且つエッチング後のSi層11の側面のラフネスを抑える(平滑性を高くする)ことができる。また、評価試験で示すようにSi層11についてのエッチングレートを比較的高いものとすることができる。
【0020】
(第2実施形態)
図7から図9に基づいて、本実施形態におけるエッチング処理を説明する。尚、本実施形態の説明では、第1実施形態との差異点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。図7図1と同じく、積層構造体10全体を示したエッチング処理後の縦断正面図であり、図8図9の一部を拡大して表したものである。
【0021】
既述したように第1実施形態において形成される凹部18の矩形性は高いが、図5図6に示したように、Si層11における界面付近領域19が、Si層11における他の領域に比べてエッチング量が小さくなる場合が有る。即ち凹部18としては、上側あるいは下側に位置するSiGe層12に向うにつれて深さが小さくなり、縦断面視で奥側上部、奥側下部が弧を描くように当該凹部18が形成される場合が有る。これは一般に、ガスが隙間を流れるにあたり、隙間を形成する壁付近では流速が小さくなる傾向が有ることによるものと考えられる。つまり、凹部18内を奥側に向けてエッチングガスが流れるにあたり、凹部18の上壁、下壁寄りの位置ではエッチングガスの流速が小さいことで、このエッチングガスの作用も比較的小さくなることに起因して、界面付近領域19のエッチング量が小さくなったと考えられる。
【0022】
この第2実施形態では凹部18の矩形性について、より高くなるようにエッチング処理を行う。具体的に、本実施形態におけるエッチングガスは、Fガスと、TMAガスと、NHガスと、により構成され、これらF、TMAガス及びNHガスを基板Wに同時に供給する。
【0023】
比較形態で説明したように、エッチングガスとしてFガスとNHガスとが含まれていることで、界面付近領域19におけるエッチングレートは比較的高くなる。それにより、第1実施形態におけるエッチング処理に比べると、この第2実施形態のエッチング処理では、Si層11において界面付近領域19と他の領域とのエッチング量が、より揃った状態でエッチングが進行し(図7)、エッチング終了時において凹部18の矩形性がより高いものとなる(図8図9)。また、後に評価試験で示すように、この第2実施形態によれば第1実施形態に比べて、高いエッチングレートをもって、エッチング処理を行うことができる。
【0024】
次に、本開示に係るエッチング処理を行うエッチング装置1Aについて、図10の縦断正面図を参照して説明する。このエッチング装置1Aは、第1実施形態及び第2実施形態のうちの一方のエッチング方法を選択して実施することができる。図中71はエッチング装置1Aを構成する処理容器である。図中72は、処理容器71の側壁に開口する基板Wの搬送口であり、上記のゲートバルブ63により開閉される。処理容器71内には基板Wを載置するステージ81が設けられており、当該ステージ81には図示しない昇降ピンが設けられる。その昇降ピンを介して処理容器71の外に配置された基板搬送機構とステージ81との間で基板Wの受け渡しが行われる。
【0025】
ステージ81には温度調整部82が埋設されており、ステージ81に載置された基板Wが既述した温度とされる。この温度調整部82は、例えば水などの温度調整用の流体が流通する循環路の一部をなす流路として構成されており、当該流体との熱交換により基板Wの温度が調整される。ただし温度調整部82としては、そのような流体の流路であることに限られず、例えば抵抗加熱を行うためのヒーターにより構成されていてもよい。エッチングガスを供給する際の基板Wの温度(ステージ81の表面の温度)は例えば-50℃~200℃とする。
【0026】
また、処理容器71内には排気管83の一端が開口しており、当該排気管83の他端は圧力変更機構であるバルブ84を介して、例えば真空ポンプにより構成される排気機構85に接続されている。バルブ84の開度が調整されることによって、処理容器71内の圧力が所定の圧力とされて基板Wにエッチング処理が行われる。この圧力は、例えば0.133Pa~1.3×10Paである。
【0027】
処理容器71内の上部側には、ステージ81に対向するようにガスシャワーヘッド86が設けられている。ガスシャワーヘッド86には、ガス供給路91~94の下流側が接続されており、ガス供給路91~94の上流側は流量調整部95を各々介して、ガス供給源96~99に接続されている。各流量調整部95は、バルブ及びマスフローコントローラを備えている。ガス供給源96~99から供給される各ガスについては、当該流量調整部95に含まれるバルブの開閉によって下流側への給断が行われる。また当該各ガスについて、各流量調整部95により、下流側へ供給される流量が調整される。ガスシャワーヘッド86、流量調整部95及びガス供給源96~99により、ガス供給機構が構成される。
【0028】
ガス供給源96、97、98、99からは、Fガス、TMAガス、Nガス、NHガスが夫々供給され、これらの各ガスはガスシャワーヘッド86を介して処理容器71内に供給される。各流量調整部95により、これらの各ガスの供給は互いに独立して行うことができる。不活性ガスであるNガスはキャリアガスとして、エッチングガスと共にガスシャワーヘッド86を介して処理容器71内に供給される。第1実施形態のエッチング方法を実施する場合には、エッチングガスとしてFガス、TMAガスをガスシャワーヘッド86に供給し、第2実施形態のエッチング方法を実施する場合には、エッチングガスとしてFガス、TMAガス、NHをガスシャワーヘッド86に供給する。
【0029】
また、エッチング装置1Aは、コンピュータである制御部50を備えており、この制御部50は、プログラム、メモリ、CPUを備えている。プログラムには、既述した基板Wの処理及び基板Wの搬送が行われるように命令(各ステップ)が組み込まれており、このプログラムは、記憶媒体、例えばコンパクトディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、DVD等に格納され、制御部50にインストールされる。制御部50は当該プログラムによりエッチング装置1Aの各部に制御信号を出力し、各部の動作を制御する。具体的には、そのように制御される上記のエッチング装置1Aの動作としては、例えばステージ81に供給される流体の温度、ガスシャワーヘッド86からの各ガスの給断、バルブ84による排気流量の調整などの各動作が含まれる。
【0030】
(変形例)
第1及び第2実施形態のエッチング方法は、図1で説明した構造の基板Wに対して適用されることには限られない。例えばSi層11及び各SiGe層12が横方向に隣接し、各々表面に露出する基板Wについて、Si層11を選択的にエッチングする場合にも適用することができる。この場合においても、比較形態のエッチングを行う場合に比べてSi層11の界面付近領域19のエッチングレートが大きくなることを防止し、エッチング後のSi層11の形状を制御することができる。つまり、Si層11、SiGe層12の隣接方向は、縦方向であることに限られない。
【0031】
また、SiGe層12の代わりにGe層などの他のゲルマニウム含有層がSi層11に隣接し、Si層11の界面付近領域19のGeの含有率が比較的高くなったとしても、第1または第2実施形態のエッチング方法により、界面付近領域19のエッチングレートを抑えることができると考えられる。つまり、Si層11にSiGe層12以外のゲルマニウム含有層が隣接する場合も、本技術によってSi層11の形状を制御できると考えられる。なお、このように他の種類の層に隣接するSi層をエッチングすることに限られず、例えば基板Wの表面の概ね全域に露出するSi層11のみを単にエッチングしてもよい。その場合には、エッチング後のSi層11のラフネスを抑制することができることになる。また、後述の評価試験ではシリコン層としてポリシリコン層をエッチングしているが、本技術でエッチングされるシリコン層としてはポリシリコンに限られず、アモルファスシリコンであってもよい。また、リンなどのドーピング元素を含んだシリコン層であってもよい。
【0032】
また、第1及び第2の実施形態においては、エッチングガスを構成する複数のガスを同時に供給することで、基板Wの周囲におけるエッチングガスの分圧を高くし、エッチングレートが高くなるようにしている。しかしながら、エッチングガスを構成する各ガスは、同時に供給されることに限らず、順番に行ってもよい。具体的には、第1実施形態においてはFガス、TMAガスを順番に、第2実施形態においてはFガス、TMAガス、NHガスの順番に、夫々処理容器71内に繰り返し供給するようにしてもよい。このように順番にエッチングガスを構成する各ガスを供給する場合、エッチングガスを構成する一のガスと他のガスとを供給する合間に、Nガスなどの不活性ガスをパージガスとして処理容器内に供給し、処理容器71内に残留するガスのパージを行ってもよい。
【0033】
ところで本明細書において各ガスを同時に基板Wに供給するとは、各ガスの基板Wへの供給開始のタイミングが互いに揃い、且つ各ガスの基板Wへの供給終了のタイミングが互いに揃うことである。従って、各ガスを同時に供給することには、各ガスを基板Wに供給する期間が互いに重なることが含まれる。上記したように基板Wの周囲におけるエッチングガスの圧力を高くするために、各ガスを同時に供給することが好ましいが、エッチングガスを構成する各ガス間で供給開始のタイミング、及び/または供給終了のタイミングがずれるようにしてもよい。つまりエッチングガスを構成する一のガスを供給する期間と、エッチングガスを構成する他のガスを供給する期間と、について一部のみが重なるようにしてもよい。
【0034】
また、既述したエッチングガスは、ハロゲン含有ガスとしてフッ素含有ガスであるFガスを含んでいるが、このハロゲン含有ガスとしてはフッ素含有ガスに限らずCl(塩素)やBr(臭素)などの他のハロゲン分子を含むハロゲン含有ガスを用いてもよい。また、フッ素含有ガスとしてはFガスを用いることに限られず、例えばIFガス、IFガス、ClFガス、SFガスを用いてもよい。
【0035】
また、既述したエッチングガスはTMAガスを含んでいるが、これに限らず他のアミンガスを含むようにしてもよい。他のアミンガスとしては、1級、2級、3級いずれのアミンからなるガスであってもよい。具体的には、1級アミンであるモノメチルアミン(CHNH)、2級アミンであるジメチルアミン((CHNH)、3級アミンであるトリエチルアミン((CHCHN)などを使用することができる。
【0036】
ところで、エッチングガスについてはF、アミン、NHなどの成分が含有され得ること、エッチング対象のSi層に隣接する層(膜)の成分としてGeが含有され得ることを述べてきた。本明細書で、そのようにガスや膜がある成分を含有するとは、当該成分を不純物として含有するという意味では無く、構成成分として含有する意味である。
【0037】
本開示に係る上述の各実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の各実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更、組み合わせがなされてもよい。
【0038】
〔評価試験〕
以下、本開示におけるエッチング処理に関して行われた評価試験について説明する。
〈評価試験1〉
評価試験1として、図1で説明した層構造を有する試験用の基板B1に対してエッチング装置1Aを用いて、比較形態のエッチング処理を行った。即ち、評価試験1では、エッチングガスとして、Fガス及びNHガスを用いた。基板B1は複数用意し、基板B1毎に異なるエッチング時間(エッチングガスの供給時間)を設定して処理を行った。具体的に、このエッチング時間は、60秒、120秒、175秒に設定した。基板B1間で、エッチング時間以外の処理条件は同様に設定した。処理容器71内の圧力、基板B1の温度については実施形態で説明した範囲内の値に設定し、基板Wに供給する(即ち、処理容器71内に供給する)Fガス、NHガスの流量については、NHガスの流量/Fガスの流量=0.02に設定して処理を行った。そしてエッチング処理の前後で取得した基板B1のSEM画像を比較して、複数のSi層11について側壁のエッチング量を検出し、その平均値を算出した。また、SiGe層12についてもSi層11と同様に複数の層から側壁のエッチング量を検出し、平均値を算出した。なお、基板Wに供給するNガス、Fガスについては、Nガスの流量/Fガスの流量=1.6に設定しており、以降の他の評価試験でも同様である。
【0039】
図11のグラフに評価試験1の結果を示している。グラフの横軸はエッチング時間を示し、グラフの縦軸はSi層11のエッチング量の平均値、SiGe層12のエッチング量の平均値を夫々示している。Si層11の縦軸の目盛り、SiGe層12の縦軸の目盛りは、各々一定のエッチング量の刻みで付している。ただし、この刻みの大きさは互いに異なっている。つまり、Si層11の1目盛り間でのエッチング量の大きさ(Anmとする)と、SiGe層12の1目盛り間でのエッチング量の大きさ(Bnmとする)と、は異なり、Anm>Bnmである。グラフで同じ高さに位置するSi層11の目盛り、SiGe層12の目盛りを夫々α、βとして示しているが、αは、βの約3.3倍である。
【0040】
グラフに示されるようにエッチング時間が長くなるにつれてSi層11のエッチング量の平均値は大きくなり、このエッチング時間とこのSi層11のエッチング量の平均値とが、概ね比例関係となっている。その一方で、SiGe層12のエッチング量の平均値は概ね一定である。そして、設定したエッチング時間の中で最も短い60秒でのSi層11のエッチング量の平均値は、各エッチング時間におけるSiGe層12のエッチング量の平均値よりも大きい。このように評価試験1においては、Si層11及びSiGe層12のうち、Si層11の選択的なエッチングがなされた結果となった。
【0041】
しかし、実施形態で述べたようにこの評価試験1では、凹部18の矩形性は低いものとなった。図12は、エッチング時間を175秒に設定して処理された基板B1のSEM画像を示している。この画像から、図2図3で説明したようにSi層11の界面付近領域19が他の領域に比べて大きくエッチングされたことが確認された。
【0042】
〈評価試験2〉
表面にポリシリコン層が形成された基板B2に対して所定の時間、評価試験1と同様にエッチング処理を行った。エッチング時間以外の処理条件は、評価試験1の処理条件と同じである。エッチング処理の前後で基板B2の表面を撮像して、観察を行った。なお、上記のポリシリコン層は、パターンが形成されていない平坦な基板B2上に形成した。従って、当該基板B2には図1で説明した積層構造体10は形成されていない。
【0043】
図13はエッチング処理前の基板B2の表面、図14はエッチング処理後の基板B2の表面を夫々示している。図13、14より、エッチング処理によって、表面に凹凸が多く形成され、ラフネスが大きくなったことが分かる。実施形態で述べたように、エッチング中に副生成物が生成し、ポリシリコン層がこの副生成物に被覆された状態でエッチングされることから、このようにラフネスが大きくなったと考えられる。積層構造体10を構成するSi層11をエッチングするにあたっても同様に副生成物が生じるので、エッチング後のSi層11のラフネスが大きくなると考えられる。
【0044】
〈評価試験3〉
評価試験3として、第1実施形態で説明したFガス及びTMAガスを用いて、試験用の基板B1にエッチングを行い、評価試験1と同様にSi層11、SiGe層12のエッチング量の平均値を算出した。従って、この評価試験3では、エッチングガスを構成するガスとして、評価試験1で用いたNHガスの代わりに、TMAガスを用いている。この評価試験3での各基板に対するエッチング時間は、60秒、90秒、120秒である。以上のようにエッチング時間を設定したこと、及びエッチングガスとしてTMAガスを用いることを除き、評価試験3では評価試験1と同様にエッチング処理を行った。なお、この評価試験3における基板Wに供給するTMAガスの流量/Fガスの流量は、評価試験1におけるNHガスの流量/Fガスの流量の流量と同じく、0.02である。
【0045】
図15のグラフに評価試験3の結果を示している。この図15のグラフの縦軸、横軸は、評価試験1における図13のグラフの縦軸、横軸と同様に設定している。グラフに示されるようにエッチング時間が長くなるにつれてSi層11のエッチング量の平均値は大きくなり、このエッチング時間とこのSi層11のエッチング量の平均値とが、概ね比例関係となっている。その一方で、SiGe層12のエッチング量の平均値は概ね一定である。そして、設定したエッチング時間の中で最も短い60秒でのSi層11のエッチング量の平均値は、各エッチング時間におけるSiGe層12のエッチング量の平均値よりも大きい。以上の結果から、NHガスの代わりにTMAガスを用いてもSi層11及びSiGe層12のうちのSi層11に対するエッチング選択性は、担保されていることが分かる。
【0046】
また、図15のグラフと、図13のグラフとを比較すると、エッチング時間が同じである場合に、評価試験1よりも評価試験3の方がSiのエッチング量の平均値が大きいことが分かる。つまり、この評価試験3では、NHガスに代えてTMAガスをエッチングガスとして用いることで、Si層11のエッチングレートを高めることができることが確認された。なお、エッチング時間が60秒、120秒における、評価試験1でのSi層11のエッチング量の平均値に対する評価試験3でのSi層11のエッチング量の平均値は、夫々1.67倍、2.67倍であった。図16は、評価試験3でエッチング時間を90秒としてエッチングした基板B1のSEM画像を示している。この画像に示すように形成された凹部18の矩形性は高い。
【0047】
〈評価試験4〉
エッチングガスを評価試験3と同じくFガス及びTMAガスにしたことを除き、評価試験2と同様の処理条件で基板B2にエッチング処理を行い、処理後に基板B2の表面を撮像して、観察を行った。図17は、このエッチング処理後の基板B2の表面を示している。評価試験2で説明した、エッチング処理前における図13の画像と比較すると、図17の画像ではポリシリコン層の表面のラフネスに大きな変化が無いことが分かる。そして、評価試験2のエッチング処理後の図14の画像と比較すると、図17の画像では、ポリシリコン層の表面のラフネスが抑制されていることが分かる。これは実施形態で述べたように、TMAガスを用いた場合と、NHガスとを用いた場合とで生成する副生成物が異なり、その副生成物の昇華性が互いに異なることに起因すると考えられる。そのため、積層構造体10を構成するSi層11をエッチングするにあたっても、この評価試験4のポリシリコン層と同様にSi層11のラフネスを抑制することが予測される。
【0048】
以上のように評価試験1~4の結果から、エッチングガスとしてFガス及びTMAガスを用いることで、積層構造体10のSi層11をエッチングするにあたり、エッチングレート、形成される凹部18の矩形性、エッチング後のSi層の平滑性について、各々比較的高くすることができることが示された。
【0049】
〈評価試験5〉
評価試験5として、第2実施形態で説明したFガス、TMAガス及びNHガスを用いて、試験用の基板B1にエッチングを行い、評価試験1、3と同様にSi層11、SiGe層12のエッチング量の平均値を算出した。従って、この評価試験5では、エッチングガスを構成するガスの種類として、評価試験3で用いた各ガスに、評価試験1で用いたNHガスをさらに加えて用いている。この評価試験5ではエッチング時間は90秒に設定した。
【0050】
この評価試験5において基板Wに供給した各ガスの流量について述べると、Fガスの流量/(TMAガスの流量+NHガスの流量)は、評価試験1におけるFガスの流量/NHガスの流量、評価試験3におけるFガスの流量/TMAガスの流量と同じく0.02である。そしてこの評価試験5では、TMAガスの流量/NHガスの流量については1としている。なお、ガスの流量以外の基板B1の温度等の他の処理条件については、評価試験1、3で設定した処理条件と同じである。
【0051】
評価試験3中における評価試験5とエッチング時間が同じ90秒である試験結果と、この評価試験5の結果とを比較すると、評価試験3でのSi層11のエッチング量の平均値に対する評価試験5でのSi層11のエッチング量の平均値は、3.69倍であった。そして、評価試験3でのSiGe層12のエッチング量の平均値に対する評価試験5でのSiGe層12のエッチング量の平均値は、1.28倍であった。従って評価試験5の結果について評価試験3の結果と比べると、SiGe層12のエッチング量については大きな変化は無いが、Si層11のエッチング量については大きく上昇していることが分かる。つまり、Si層11及びSiGe層12のうちのSi層11に対するエッチング選択性が担保されつつ、Si層11のエッチングレートが評価試験3よりも高くなるという、好ましい結果となった。図18は、評価試験5のエッチング処理後の基板B1の画像を示している。評価試験3の図16の画像と比較して明らかなように、凹部18の矩形性がより高い。
【0052】
ところで、TMAガスの流量/Fガスの流量について、上記したように評価試験3では0.02として設定している。そして、評価試験5では、TMAガスの流量が評価試験3の1/2であるため、TMAガス/Fガスの流量は0.01である。これら評価試験3、5の各々で好ましくエッチング処理がなされたことから、TMAガス/Fガスの流量としては0.01以上とすることが好ましいことが分かる。
【0053】
また、評価試験5ではTMAガスを用いることによる界面付近領域19のエッチングが抑制される効果、NHガスを用いることによる界面付近領域19のエッチングが促進される効果のバランスが取られることで、図7図9で説明したようにエッチングが進行して凹部18の矩形性が高くなったと考えられる。上記したようにこの評価試験5では、TMAガスの流量/NHガスの流量=1として設定しているが、TMAガスの流量とNHガスの流量との割合が、この割合から若干ずれたとしても上記のバランスは大きく崩れないと考えられる。しかし、TMAガスの流量/NHガスの流量の値が小さすぎると、NHガスの作用が大きくなり、比較形態として述べた不具合が生じてしまうと考えられる。また、TMAガスの流量/NHガスの流量の値が大きすぎると、NHガスの作用が小さくなり、図7図9で説明したように界面付近領域19のエッチングレートが低下する。そのことを踏まえて、TMAガスの流量/NHガスの流量としては、例えば0.25~4.0とすることが好ましいと考えられる。
【符号の説明】
【0054】
W 基板
11 Si層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図11
図12
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図16
図17
図18