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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108020
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 9/00 20060101AFI20240802BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20240802BHJP
   F04B 15/00 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
F04B9/00 B
B81B3/00
F04B15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012268
(22)【出願日】2023-01-30
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】赤井 日出子
(72)【発明者】
【氏名】小川 直記
(72)【発明者】
【氏名】新竹 純
(72)【発明者】
【氏名】清水 敬太
【テーマコード(参考)】
3C081
3H075
【Fターム(参考)】
3C081AA00
3C081BA22
3C081BA23
3C081BA25
3C081CA01
3C081CA40
3C081DA06
3C081DA10
3C081DA25
3C081DA27
3C081DA30
3C081DA31
3C081EA32
3C081EA41
3H075AA01
3H075BB03
3H075DA02
3H075DB01
(57)【要約】
【課題】陽極と陰極との間に電圧を印加することで、絶縁性液体を流動させることができる、新規な構造を有するポンプを提供する。
【解決手段】ポンプ(100)は、絶縁性容器(10)と、実質的に分岐していない線状の陽極(11)と、実質的に分岐していない線状の陰極(12)とを備え、陽極及び陰極は、絶縁性容器の内側に、流れ方向に対して、陽極及び陰極の長さ方向が交互に交差するように配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が絶縁性液体の流路となる絶縁性容器と、実質的に分岐していない線状の陽極と、実質的に分岐していない線状の陰極とを備え、
前記陽極及び前記陰極は、前記絶縁性容器の内側に、前記流路で規定される流れ方向に対して、前記陽極及び前記陰極の長さ方向が交互に交差するように配置され、
前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加することで、前記絶縁性液体を流動させる、ポンプ。
【請求項2】
前記絶縁性容器は、筒状構造を有し、
前記陽極及び前記陰極は、前記絶縁性容器の内側にらせん状に配置されている、請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
内部が絶縁性液体の流路となる筒状構造を有する絶縁性容器と、線状の陽極と、線状の陰極とを備え、
前記陽極及び前記陰極は、前記絶縁性容器の内側に、前記流路で規定される流れ方向に対して、前記陽極及び前記陰極の長さ方向が交互に交差するようにらせん状に配置され、
前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加することで、前記絶縁性液体を流動させる、ポンプ。
【請求項4】
前記絶縁性容器は、絶縁性チューブである、請求項1~3のいずれか1項に記載のポンプ。
【請求項5】
前記絶縁性チューブの材質は、樹脂、鉱物、無機物、及び有機物からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項4に記載のポンプ。
【請求項6】
前記絶縁性チューブの内径は、0.1mm以上、100mm以下である、請求項4に記載のポンプ。
【請求項7】
前記電圧は、1V以上、20000V以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のポンプ。
【請求項8】
前記絶縁性液体は、分子量1000以下の絶縁性液体を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のポンプ。
【請求項9】
前記流れ方向における、1組の前記陽極と前記陰極との間の間隔1に対して、当該組と、当該組の隣の組との間の間隔は、1以上、20以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び非特許文献1には、電気流体力学(Electrohydrodynamic;EHD)効果を利用したポンプが記載されている。当該ポンプでは、くし形電極が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2014-512793号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Cacucciolo, V., et al., "Stretchable pumps for soft machines.", Nature, 572(7770), 516-519, 2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一態様は、陽極と陰極との間に電圧を印加することで、絶縁性液体を流動させることができる、新規な構造を有するポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るポンプは、内部が絶縁性液体の流路となる絶縁性容器と、実質的に分岐していない線状の陽極と、実質的に分岐していない線状の陰極とを備え、前記陽極及び前記陰極は、前記絶縁性容器の内側に、前記流路で規定される流れ方向に対して、前記陽極及び前記陰極の長さ方向が交互に交差するように配置され、前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加することで、前記絶縁性液体を流動させる。
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るポンプは、内部が絶縁性液体の流路となる筒状構造を有する絶縁性容器と、線状の陽極と、線状の陰極とを備え、前記陽極及び陰極は、前記絶縁性容器の内側に、前記流路で規定される流れ方向に対して、前記陽極及び前記陰極の長さ方向が交互に交差するようにらせん状に配置され、前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加することで、前記絶縁性液体を流動させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、陽極と陰極との間に電圧を印加することで、絶縁性液体を流動させることができる、新規な構造を有するポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1に係るポンプの構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態1に係るポンプを、流路の流れ方向に対して垂直方向から見たときの断面図である。
図3】本発明の実施形態1に係るポンプを、流路の流れ方向に対して垂直方向から見たときの模式図である。
図4】本発明の実施形態1に係るポンプを、アクチュエータとして利用したときの模式図である。
図5】本発明の実施形態1の変形例1に係るポンプを、流路の流れ方向に対して垂直方向から見たときの模式図である。
図6】本発明の実施形態1の変形例2に係るポンプを、流路の流れ方向に対して垂直方向から見たときの模式図である。
図7】本発明の実施形態2に係るポンプの構成を示す模式図である。
図8】本発明の実施形態3に係るポンプの構成を示す模式図である。
図9】本発明の実施形態4に係るポンプの構成を示す模式図である。
図10】本発明の実施形態5に係るポンプの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るポンプについて、図1~3を参照して以下に説明する。図1は、本発明の実施形態1に係るポンプ100の構成を模式的に示す図である。図2は、本発明の実施形態1に係るポンプ100を、流路の流れ方向(図1に示すAの矢印方向)に対して垂直方向(図1に示すBの矢印方向)から見たときの断面図である。図3は、本発明の実施形態1に係るポンプ100を、流路の流れ方向に対して垂直方向から見たときの模式図である。
【0011】
図1に示すように、ポンプ100は、絶縁性チューブ10(絶縁性容器)と、陽極11と、陰極12とを備えている。絶縁性チューブ10は、内部が絶縁性液体の流路となる筒状構造を有している。
【0012】
陽極11と陰極12との間に電圧を印加することで、絶縁性液体を流動させる。絶縁性チューブ10内に絶縁性液体を満たし、陽極11と陰極12との間に電圧を印加すると、絶縁性液体に電荷がチャージされ加速されることで流体となり、ポンプ100はマイクロポンプとして駆動する。すなわち、カソードから電子が絶縁性液体中へ投入され、その結果、イオン(X)が電界によって加速され、陽極11で放電し、液体を引きずりながら流れることで流体となる。このように、陽極11と陰極12との間に電圧を印加することで、絶縁性液体を流動させることができる。陽極11と陰極12との間に電圧を印加すると、絶縁性液体は、図1に示すAの矢印方向に流れる。
【0013】
ポンプ100は、絶縁性容器としてチューブ状の容器である絶縁性チューブ10を備え、陽極11及び陰極12がらせん状に配置されていることにより、流速を向上させることができる。また、ポンプ100は、絶縁性チューブ10の内側に陽極11及び陰極12が配置されているため、従来技術のポンプに比べてシンプルな構造となっており、流路と一体化されている。
【0014】
(陽極及び陰極)
陽極11及び陰極12は、実質的に分岐していない線状の電極である。「実質的に分岐していない」とは、電極として機能させるための分岐構造を必要としないことをいう。別の目的、例えば線状電極を内壁に固定するために、一部に分岐構造を設けて、絶縁性チューブ10の内壁との接着面積を増やすなどの目的で分岐するものは、本発明の範疇である。対となる陽極11と陰極12との間の間隔は一定であり、陽極11と陰極12とは交差していない。
【0015】
陽極11及び陰極12は、絶縁性チューブ10の内側に、流路で規定される流れ方向(図1に示すAの矢印方向)に対して、陽極11及び陰極12の長さ方向が交互に交差するようにらせん状に配置されている。具体的には、図2及び図3に示すように、陽極11及び陰極12は、絶縁性チューブ10の内壁に沿ってらせん状に配置されている。すなわち、ポンプ100において、絶縁性チューブ10の内径と、陽極21及び陰極22のらせんの外径とは一致している。本実施形態は、陽極11及び陰極12が絶縁性チューブ10の内壁と接触している態様であるが、本発明はこれに限定されず、後述する変形例に示すように、陽極11及び陰極30と、絶縁性チューブ10の内壁とは接触していなくてもよい。
【0016】
流路の流れ方向(図1に示すAの矢印方向)における、1組の陽極11と陰極12との間の間隔(図2に示すC)と、当該組と、当該組の隣の組との間の間隔(図2に示すD)との比は、次の範囲であることが好ましい。つまり、1組の陽極11と陰極12との間の間隔1に対して、当該組と、当該組の隣の組との間の間隔は、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。また、1組の陽極11と陰極12との間の間隔1に対して、当該組と、当該組の隣の組との間の間隔は、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましい。当該比がこのような範囲であることは、方向付けされた流れの発生及びらせん状電極の巻き数(長さ)の観点から好ましい。
【0017】
陽極11及び陰極12の径は、製造及び実装の観点から、次の範囲であることが好ましい。つまり、陽極11及び陰極12の径は、0.01mm以上であることが好ましく、0.05mm以上であることがより好ましく、0.1mm以上であることがさらに好ましい。また、陽極11及び陰極12の径は、10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることがさらに好ましい。
【0018】
流れ方向に対する陽極11及び陰極12の角度は、巻き数の観点から、次の範囲であることが好ましい。つまり、流れ方向に対する陽極11及び陰極12の角度は、5°以上であることが好ましく、15°以上であることがより好ましく、30°以上であることがさらに好ましい。また、流れ方向に対する陽極11及び陰極12の角度は、85°以下であることが好ましく、75°以下であることがより好ましく、60°以下であることがさらに好ましい。
【0019】
陽極11及び陰極12のらせんの外径は、製造及び実装の観点から、次の範囲であることが好ましい。つまり、陽極11及び陰極12のらせんの外径は、0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましく、0.5mm以上であることがさらに好ましい。また、陽極11及び陰極12のらせんの外径は、100mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましく、5mm以下であることがさらに好ましい。
【0020】
陽極11及び陰極12のらせんの径方向に発生する電気力線の密度は、対となる陽極11と陰極12との間の間隔(図2に示すC)から絶縁性チューブ10の中心方向へ向かって下がっていく。これは、絶縁性チューブ10内径(図2に示すE)の中心付近に近いほど絶縁性液体の動きが小さくなることを意味している。そのため、ポンプ100の単位体積当たりの出力が下がることを防ぐため、絶縁性チューブ10の内径Eが対となる陽極11と陰極12との間の間隔Cより極端に大きくなることを避けることが好ましい。このような観点から、絶縁性チューブ10の内径は、対となる陽極11と陰極12との間の間隔Cに対して、(絶縁性チューブ)の項に後述する範囲であることが好ましい。
【0021】
また、対となる陽極11と陰極12との間の電場強度は、高いほど出力が大きくなると考えられる。そのため、同じ電圧をかけた場合に、対となる陽極11と陰極12との間の間隔は短いほど高い電場となるため、出力が大きくなる。また、同じ電場強度を達成したい場合には、必要電圧は低くなる。このような観点から、対となる陽極11と陰極12との間の間隔は、50mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましく、2.5mm以下であることがさらに好ましい。
【0022】
陽極11及び陰極12の材質は、導電性及び耐腐食性の観点から、金属、導電性高分子、無機物、及び有機物からなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。陽極11の材質と、陰極12の材質とは、同じであっても、異なっていてもよいが、製造の観点から、同じであることが好ましい。
【0023】
陽極11及び陰極12は、それぞれ実質的に1つの電線から構成されていればよい。「実質的に1つの電線」とは、1つの電線であってもよいし、複数の電線を束ねた1つの束であってもよい。
【0024】
なお、電圧を印加するという観点から、陽極および陰極のいずれか一方をグランドとして構成しても、絶縁性液体を流動させることができる。
【0025】
陽極11と陰極12との間に印加する電圧は、電源の仕様の観点から、次の範囲であることが好ましい。つまり、陽極11と陰極12との間に印加する電圧は、1V以上であることが好ましく、10V以上であることがより好ましく、100V以上であることがさらに好ましい。また、陽極11と陰極12との間に印加する電圧は、20000V以下であることが好ましく、10000V以下であることがより好ましく、5000V以下であることがさらに好ましい。
【0026】
(絶縁性チューブ)
上述したように、絶縁性チューブ10は、筒状構造を有している。具体的には、絶縁性チューブ10は、円筒構造を有している。すなわち、絶縁性チューブ10の断面形状は円形である。これに限らず、絶縁性チューブ10は、楕円筒構造、角筒構造等であってもよい。つまり、絶縁性チューブ10の断面形状は、楕円形、多角形等であってもよい。
【0027】
絶縁性チューブ10の内径(図2に示すE)は、製造の観点から、0.1mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましく、1mm以上であることがさらに好ましい。また、絶縁性チューブ10の内径は、実装の観点から、100mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましく、5mm以下であることがさらに好ましい。
【0028】
絶縁性チューブ10の内径は、流量及び圧力を最大化する観点から、対となる陽極11と陰極12との間の間隔の0.1倍以上であることが好ましく、0.5倍以上であることがより好ましく、1倍以上であることがさらに好ましい。また、絶縁性チューブ10の内径は、流量及び圧力を最大化する観点から、対となる陽極11と陰極12との間の間隔の10倍以下であることが好ましく、5倍以下であることがより好ましく、2倍以下であることがさらに好ましい。
【0029】
絶縁性チューブ10の外径(図2に示すF)は、絶縁性チューブ10の内径よりも大きければよく、製造の観点から、0.1mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましく、1mm以上であることがさらに好ましい。また、絶縁性チューブ10の外径は、実装の観点から、100mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましく、8mm以下であることがさらに好ましい。
【0030】
なお、絶縁性チューブ10の「外径」及び「内径」とは、本実施形態のように絶縁性チューブ10の断面形状が円形の場合は、直径であり、絶縁性チューブ10の断面形状が円形以外の場合は、断面の径の内最も長い径を指す。
【0031】
絶縁性チューブ10の壁の厚さ(図2に示すG)は、製造の観点から、0.01mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であることがより好ましく、0.2mm以上であることがさらに好ましい。また、絶縁性チューブ10の壁の厚さは、実装の観点から、10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましく、3mm以下であることがさらに好ましい。
【0032】
絶縁性チューブ10の材質は、絶縁性の観点から、樹脂、鉱物、無機物、及び有機物からなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0033】
絶縁性チューブ10の材質と、陽極11及び陰極12(まとめて「電極」とも称する)の材質との組み合わせは、所望の特性に応じて適宜選択すればよい。絶縁性チューブ10及び電極の一方が柔らかい材料であり、他方が硬い材料であってもよく、絶縁性チューブ10も電極も共に、柔らかい材料又は硬い材料であってもよい。これらの組み合わせ方により、様々な形状変形が可能となる。また、部分的に別の材料を用いていてもよいため、特定の方向にだけ変形可能な態様としてもよい。
【0034】
絶縁性チューブ10の柔らかい材料としては、例えば、シリコーンゴム、天然ゴム、合成ゴム等のゴム類、低密度ポリエチレン、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。絶縁性チューブ10の硬い材料としては、例えば、ガラス、サファイア、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、及びテフロン等のフッ素樹脂等が挙げられる。また、電極の柔らかい材料としては、例えば、導電性高分子、薄いあるいは細い金属(例えば、金、銅等)等が挙げられる。電極の硬い材料としては、例えば、炭素系材料等が挙げられる。しかしながら、これらの柔らかい材料及び硬い材料に限定されず、相対的に、絶縁性チューブ10が電極より柔らかくてもよく、硬くてもよく、同程度の硬さであってもよい。各材料は、所望の特性に応じて適宜組み合わせればよい。変形することが好ましくない場合には、絶縁性チューブ10を変形しにくい硬い材料とすることが好ましい。また、大きな温度変化が予想される場合には、絶縁性チューブ10及び電極の少なくとも一方を柔らかい材料とすることが好ましい。また、使用中に変形することが好ましい場合には、絶縁性チューブ10及び電極の両方とも柔らかい材料、すなわち容易に変形可能な材料を使うことが好ましい。
【0035】
(ポンプの用途)
ポンプ100は、例えば、アクチュエータ、送液ポンプ、加熱液又は冷却液の循環等に利用することができる。
【0036】
図4は、本実施形態1に係るポンプ100の、アクチュエータとして利用したときの模式図である。図4に示すように、ポンプ100の陽極11及び陰極12のらせんの内側に弾性ロッド14を入れた状態で陽極11と陰極12との間に電圧を印加すると、絶縁性液体の圧力によって弾性ロッド14が流路の流れ方向に移動する。
【0037】
ポンプ100において、陽極11と陰極12とを逆に電圧を印加した場合、絶縁性液体は図1に示すA方向と反対方向に流れる。そのため、アクチュエータにおいて、極性を入れ替えることにより、弾性ロッド14をポンプ100から押し出すことも、ポンプ100内に引き込むことも可能となる。したがって、このようなポンプ100と弾性ロッド14とを備えたアクチュエータは、例えば、筋繊維のように1軸上の収縮を再現することができる。複数のアクチュエータを束ねたり、特定の方向に配向したりすることによって、新たな人工筋肉として利用することができる。
【0038】
(絶縁性液体)
絶縁性液体は、電気流体力学(Electrohydrodynamic;EHD)効果によって流動する。すなわち、絶縁性液体は、EHD液体である。絶縁性液体としては、従来から知られているEHD効果によって流動するEHD液体を用いることができる。
【0039】
絶縁性液体は、分子量1000以下の絶縁性液体を含むことが好ましい。また、絶縁性液体は、分子量1000以下の絶縁性液体に加えて、高分子化合物をさらに含むことが好ましい。高分子化合物は、数平均分子量10000以上であることが好ましい。本明細書中において、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算である。
【0040】
[分子量1000以下の絶縁性液体]
分子量1000以下の絶縁性液体としては、芳香族又は脂肪族のエステル体が好適であり、モノエステル体として、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PMA)、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、9,10-エポキシブチルステアレート、1-エトキシ-2-アセトキシプロパン等が挙げられる。ジエステル体としては、ジブチルアジペート(DBA)、ジエチルサクシネート、ジエチルアジペート、ジブチルサクシネート、ジブチルセバケート、ジエチルへキシルアジペート、ジエチルヘキシルセバケート、フマル酸ジブチル(DBF)、メチルアセチルリシノレート(MAR-N)、ジブチルイタコネート(DBI)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート、テトラヒドロフタル酸ジオクチルエステル、ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジエチルヘキシルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソドデシルフタレート、1,4-ジアセトキシブタン、1,5-ジアセトキシペンタン、1,6-ジアセトキシヘキサン等が挙げられる。トリエステル体としては、トリアセチン、アセチルクエン酸トリブチル等が挙げられる。これらの1種又は2種以上が例示されるが、中でもジブチルアジペート、ジブチルセバケート、1,6-ジアセトキシヘキサン、ジエチルへキシルアジペート、ジエチルへキシルフタレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート、又はアセチルクエン酸トリブチルなどが好適であり、特にジブチルアジペートが好適である。この理由は、電気流体力学(EHD)を利用した絶縁性液体として導電率及び粘度が適切な範囲にあり、また、合わせて用いる高分子化合物との親和性が高く、溶解性がよいためである。
【0041】
分子量1000以下の絶縁性液体の導電率は、1×10-5S/m以下、特に1×10-6S/m以下であることが好ましい。また、1×10-11S/m以上、特に1×10-10S/m以上であることが好ましい。
【0042】
[数平均分子量10000以上の高分子化合物]
数平均分子量10000以上の高分子化合物としては、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ペンタフルオロアルコキシフッ素樹脂などのハロゲンを含む高分子化合物、ならびに、ポリビニルブチラール、ポリメタクリル酸メチル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン6、ポリビニルアルコール、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレート、及びポリアクリロニトリル、シリコーンゴム等が例示される。
【0043】
数平均分子量10000以上の高分子化合物は、好ましくはハロゲン、より好ましくは、塩素又は臭素、もっとも好ましくは塩素を含む。この理由は、絶縁性液体との親和性が高く溶解性が高いためである。
【0044】
数平均分子量10000以上の高分子化合物は、特にポリハロゲン化ビニルとりわけポリ塩化ビニル(PVC)が、構造が簡単で粘度も低くしやすいため好ましい。
【0045】
数平均分子量10000以上の高分子化合物の数平均分子量は、特に15000以上、とりわけ20000以上が好ましく、また、200000以下、特に150000以下、とりわけ100000以下が好ましい。この理由は、数平均分子量が低すぎると高分子化合物添加による効果が発現しにくくなり、数平均分子量が高すぎると粘度が増加し、流動性は落ちるためである。
【0046】
分子量1000以下の絶縁性液体と、数平均分子量10000以上の高分子化合物との合計量における数平均分子量10000以上の高分子化合物の含有率は、0.01wt%以上、好ましくは0.02wt%以上であり、10wt%以下、好ましくは5wt%以下、より好ましくは1wt%以下、特に好ましくは0.5wt%以下である。この理由は、添加量が少なすぎると高分子化合物添加による効果が発現しにくくなり、添加量が多すぎると粘度が増加し、流動性は落ちるためである。
【0047】
[その他の成分]
絶縁性液体は、その他の成分として、熱安定剤等を含んでいてもよい。熱安定剤としては、燐系熱安定剤、フェノール系熱安定剤、アミン系熱安定剤、硫黄系熱安定剤、Mg、Ba、Zn、Sn等の無機化合物などが例示される。マイクロポンプ用動作液体中のこれらのその他成分の含有率は0.01wt%以下、特に0.001wt%以下であることが好ましい。
【0048】
[絶縁性液体の導電率と粘度]
絶縁性液体の導電率及び粘度については、目的によって異なるため特に限定されない。例えば、導電率は1×10-5S/m以下、特に1×10-6S/m以下で、1×10-11S/m以上、特に1×10-10S/m以上であることが好ましい。また、粘度は23℃の温度において、1Pa・s以下、特に0.1Pa・s以下で、1×10-4Pa・s以上、特に1×10-3Pa・s以上であることが好ましい。
【0049】
(製造方法)
ポンプ100は、例えば、以下の製造方法により、製造することができる。
【0050】
製造方法は、電線巻き付け工程、ディッピング工程、及び熱硬化工程を含んでいることが好ましい。
【0051】
電線巻き付け工程では、所望のらせんの外径の大きさと同一の内径を有する柱状構造物に、当該柱状構造物の外壁に沿って電線を二重らせんに巻き付ける。柱状構造物は、筒状であっても、棒状であってもよい。柱状構造物の材質は、後述するディッピング工程及び硬化工程において変形しないものであればよい。柱状構造物の材質としては、例えば、真鍮、炭素繊維強化プラスチック、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
【0052】
ディッピング工程では、電線が巻き付けられた柱状構造物を、ディッピング液に浸して引き上げる。ディッピング液は、電線及び柱状構造物の材質に応じて適宜選択すればよい。例えば、ディッピング液は、製造の観点から、シリコーン、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0053】
硬化工程では、ディッピングされた、電線が巻き付けられた柱状構造物を、加熱して電線を硬化させる。加熱は、例えば、オーブン等を用いて行うことができる。
【0054】
加熱温度は、熱硬化の確保の観点から、30℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、60℃以上であることがさらに好ましい。また、加熱温度は、材料の変質防止の観点から、200℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることがさらに好ましい。
【0055】
加熱時間は、熱硬化の確保の観点から、15分以上であることが好ましく、30分以上であることがより好ましく、60分以上であることがさらに好ましい。また、加熱時間は、材料の変質防止の観点から、600分以下であることが好ましく、300分以下であることがより好ましく、150分以下であることがさらに好ましい。
【0056】
ディッピング工程及び硬化工程は、操作性の観点から、片端ずつ行うことが好ましい。また、ディッピング工程及び硬化工程は、それぞれ複数回繰り返すことが好ましい。例えば、構造の均質性の観点から、ディッピング工程及び硬化工程は、2回以上繰り返すことが好ましく、3回以上繰り返すことがより好ましく、4回以上繰り返すことがさらに好ましい。また、製造の観点から、ディッピング工程及び硬化工程は、20回以下繰り返すことが好ましく、15回以下繰り返すことがより好ましく、10回以下繰り返すことがさらに好ましい。
【0057】
硬化工程の後、柱状構造物をとりはずすことで、ポンプとして使用することができる。
【0058】
〔実施形態1の変形例1〕
本実施形態の他の変形例について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0059】
本変形例に係るポンプ200の構成について、図5を参照して説明する。図5は、ポンプ200の構成を模式的に示す図である。
【0060】
図5に示すように、ポンプ200は、陽極11及び陰極12の代わりに、絶縁性チューブ10の内径よりも、らせんの外径が小さい陽極21及び陰極22を備えている点で実施形態1に係るポンプ100と異なる。それ以外は、実施形態1に係るポンプ100と同様に構成されている。
【0061】
陽極21及び陰極22は、絶縁性チューブ10の内径よりも、らせんの外径が小さく、かつ、絶縁性チューブ10の内壁とは接触していない。ポンプ200が絶縁性チューブ10の内径よりも、らせんの外径が小さい陽極21及び陰極22を備えることは、電極の周囲の絶縁性液体の流速がより速くなる観点から好ましい。
【0062】
〔実施形態1の変形例2〕
本実施形態の他の変形例について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0063】
本変形例に係るポンプ300の構成について、図6を参照して説明する。図6は、ポンプ300の構成を模式的に示す図である。
【0064】
図6に示すように、ポンプ300は、巻き付け用絶縁性柱状構造物35をさらに備えている点で、実施形態1の変形例1に係るポンプ200と異なる。それ以外は、実施形態1の変形例1に係るポンプ200と同様に構成されている。柱状構造物は、筒状であっても、棒状であってもよい。
【0065】
巻き付け用絶縁性柱状構造物35の外径は、絶縁性チューブ10の内径よりも小さい。また、巻き付け用絶縁性柱状構造物35の外径は、陽極21及び陰極22のらせんの内径と一致している。陽極21及び陰極22は、巻き付け用絶縁性柱状構造物35の外壁に接触している。このような構成は、ディッピングの必要性を除外することが可能となるため、ポンプ300の製作が容易となる場合がある。
【0066】
巻き付け用絶縁性柱状構造物35の外径は、製造の観点から、0.01mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であることがより好ましく、0.5mm以上であることがさらに好ましい。また、巻き付け用絶縁性柱状構造物35の外径は、実装の観点から、50mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましく、2.5mm以下であることがさらに好ましい。
【0067】
巻き付け用絶縁性柱状構造物35の材質は、絶縁性チューブ10の好ましい材質をして列挙した材質を用いることが好ましい。絶縁性チューブ10と同一であっても、異なっていてもよい。
【0068】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、その説明を繰り返さない。
【0069】
本実施形態に係るポンプ400の構成について、図7を参照して説明する。図7は、ポンプ400の構成を模式的に示す図である。
【0070】
本実施形態に係るポンプ400は、絶縁性チューブ40と、陽極41と、陰極42とを備えている。絶縁性チューブ40は、四角筒構造を有し、陽極41及び陰極42は、絶縁性チューブ40の内壁の全ての面に沿って配置されている。絶縁性チューブ40の断面形状は、正方形である。
【0071】
陽極41及び陰極42は、絶縁性チューブ40の内壁の各面において、流れ方向に対して斜めな平行な直線となっている。
【0072】
このような形状のポンプ400であっても、陽極41と陰極42との間に電圧を印加することで、絶縁性液体を流動させることができる。また、ポンプ400は、絶縁性容器としてチューブ状の容器である絶縁性チューブ40を備え、陽極41及び陰極42がらせん状に配置されていることにより、流速を向上させることができる。さらに、ポンプ400は、絶縁性チューブ40の内側に陽極41及び陰極42が配置されているため、従来技術のポンプに比べてシンプルな構造となっており、流路と一体化されている。
【0073】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、その説明を繰り返さない。
【0074】
本実施形態に係るポンプ500の構成について、図8を参照して説明する。図8は、ポンプ500の構成を模式的に示す図である。
【0075】
本実施形態に係るポンプ500は、絶縁性チューブ50と、陽極51と、陰極52とを備えている。絶縁性チューブ50は、四角筒構造を有し、陽極51及び陰極52は、絶縁性チューブ50の内壁の全ての面に沿って配置されている。絶縁性チューブ50の断面形状は、正方形である。
【0076】
陽極51及び陰極52は、それぞれ、流れ方向に対して垂直な直線と、流れ方向に対して平行な直線とが組み合わされて、1つの線状となっている。
【0077】
このような形状のポンプ500であっても、陽極51と陰極52との間に電圧を印加することで、絶縁性液体を流動させることができる。また、ポンプ500は、絶縁性容器としてチューブ状の容器である絶縁性チューブ50を備え、陽極51及び陰極52がらせん状に配置されていることにより、流速を向上させることができる。さらに、ポンプ500は、絶縁性チューブ50の内側に陽極51及び陰極52が配置されているため、従来技術のポンプに比べてシンプルな構造となっており、流路と一体化されている。
【0078】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、その説明を繰り返さない。
【0079】
本実施形態に係るポンプ600の構成について、図9を参照して説明する。図9は、ポンプ600の構成を模式的に示す図である。
【0080】
本実施形態に係るポンプ600は、絶縁性チューブ60と、陽極61と、陰極62とを備えている。絶縁性チューブ60は、四角筒構造を有している。絶縁性チューブ60の断面形状は、長方形である。
【0081】
陽極61及び陰極62は、絶縁性チューブ60の内壁のうちの1つの面において、流路で規定される流れ方向に対して、陽極61及び陰極62の長さ方向が交互に交差するように配置されている。具体的には、陽極61及び陰極62は、それぞれ、当該面において、流れ方向に対して垂直な直線と、流れ方向に対して平行な直線とが組み合わされて、1つの線状となっている。
【0082】
このような形状のポンプ600であっても、陽極61と陰極62との間に電圧を印加することで、絶縁性液体を流動させることができる。また、ポンプ600は、絶縁性チューブ60の内側に陽極61及び陰極62が配置されているため、従来技術のポンプに比べてシンプルな構造となっており、流路と一体化されている。
【0083】
〔実施形態5〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、その説明を繰り返さない。
【0084】
本実施形態に係るポンプ700の構成について、図10を参照して説明する。図10は、ポンプ700の構成を模式的に示す図である。
【0085】
本実施形態に係るポンプ700は、絶縁性円盤型容器70(絶縁性容器)と、陽極71と、陰極72とを備えている。
【0086】
絶縁性円盤型容器70は、入口76及び複数の出口77を備えている。絶縁性液体は、H方向から入口76に流入し、複数の出口77のそれぞれから放射状に流出する。例えば、絶縁性液体は、図10に示す出口77から、I方向へ流出する。
【0087】
陽極71及び陰極72は、絶縁性円盤型容器70の内側に、流路で規定される流れ方向に対して、陽極71及び陰極72の長さ方向が交互に交差するように配置されている。なお、本実施形態において、流れ方向とは、陽極71及び陰極72上を通過するときの絶縁性液体の流れる方向であることを意図する。具体的には、陽極71及び陰極72は、渦巻き状に配置されている。
【0088】
このような形状のポンプ700であっても、陽極71と陰極72との間に電圧を印加することで、絶縁性液体を流動させることができる。
【0089】
(まとめ)
本発明の態様1に係るポンプ(100、200、300、400、500、600、700)は、内部が絶縁性液体の流路となる絶縁性容器(10、40、50、60、70)と、実質的に分岐していない線状の陽極(11、21、41、51、61、71)と、実質的に分岐していない線状の陰極(12、22、42、52、62、72)とを備え、陽極及び前記陰極は、絶縁性容器の内側に、流路で規定される流れ方向に対して、陽極及び陰極の長さ方向が交互に交差するように配置され、陽極と陰極との間に電圧を印加することで、絶縁性液体を流動させる。
【0090】
本発明の態様2に係るポンプは、前記の態様1において、絶縁性容器は、筒状構造を有し、陽極及び陰極は、絶縁性容器の内側にらせん状に配置されていてもよい。
【0091】
本発明の態様3に係るポンプは、内部が絶縁性液体の流路となる筒状構造を有する絶縁性容器と、線状の陽極と、線状の陰極とを備え、陽極及び陰極は、絶縁性容器の内側に、流路で規定される流れ方向に対して、陽極及び陰極の長さ方向が交互に交差するようにらせん状に配置され、陽極と陰極との間に電圧を印加することで、絶縁性液体を流動させる。
【0092】
本発明の態様4に係るポンプは、前記の態様1~3のいずれか1つにおいて、絶縁性容器は、絶縁性チューブであってもよい。
【0093】
本発明の態様5に係るポンプは、前記の態様4において、絶縁性チューブの材質は、樹脂、鉱物、無機物、及び有機物からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0094】
本発明の態様6に係るポンプは、前記の態様4又は5において、絶縁性チューブの内径は、0.1mm以上、100mm以下であってもよい。
【0095】
本発明の態様7に係るポンプは、前記の態様1~6のいずれか1つにおいて、電圧は、1V以上、20000V以下であってもよい。
【0096】
本発明の態様8に係るポンプは、前記の態様1~7のいずれか1つにおいて、絶縁性液体は、分子量1000以下の絶縁性液体であってもよい。
【0097】
本発明の態様9に係るポンプは、前記の態様1~8のいずれか1つにおいて、流れ方向における、1組の陽極と陰極との間の間隔1に対して、当該組と、当該組の隣の組との間の間隔は、1以上、20以下であってもよい。
【0098】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0099】
本発明の一実施例について以下に説明する。
【0100】
[実施例1]
(ポンプの作製)
1.離型剤を塗布した真鍮丸棒(φ4mm)にスズメッキ線を二重らせんに巻き付けた。電極間隔は1mmに、巻き角度は45°に一定に保った。端部はカプトンテープで固定した。
2.Sylgard(登録商標)184(ダウコーニング社製):EcoFlex(登録商標)00-30(Smooth-On社製)=1:1の質量比で混合したディッピング液に、1の片端を浸して引き上げた(ディッピング)。
3.80℃のオーブンで10分間硬化させた。
4.2とは異なる片端をディッピング液に浸し、3の条件下で硬化させた。
5.2~4を5回繰り返した。
6.エタノールを真鍮棒とシリコーン樹脂の絶縁性チューブの間に浸透させ、離型した。
以上の操作により、陽極及び陰極が二重らせん状に配置された電極と、その外側にシリコーン樹脂の絶縁性チューブとを備えるポンプを得た。らせんになった電極の断面形状は、内径4mm、外径4.56mm、断面積12.6mmの円形であった。陽極径及び陰極径は、それぞれ0.28mmであった。流れ方向における、1組の陽極と陰極との間の間隔と、当該組と、当該組の隣の組との間の間隔との比は、1:3であった。
【0101】
得られたポンプの絶縁性チューブは、内径4mm、外径6mm、壁の厚さ1mmであった。ポンプ内の電極の流れ方向における長さは9cmであり、絶縁性チューブの長さは9cmであった。
【0102】
(測定)
流量の測定は、絶縁性チューブ内に含まれる気泡の移動速度から算出した。
【0103】
ジブチルアジペートを、作製したポンプに23℃にて給液し、電圧を5kV印加して送液し、流量を測定した。その結果、流量は1.05ml/s(62.7ml/min)であった。
【0104】
[比較例1]
実施例1のらせん状の電極を備えるポンプの代わりに、非特許文献1に記載のくし形電極を備えるポンプを用いた。
【0105】
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、カーボンブラックとPDMSの複合材料を厚さ30μmにブレードキャストし、これを80℃で2時間キュアして炭素系電極膜を得た。電極の上に400μmのPDMS膜をキャストし、80℃で1時間キュアした。試料を裏返し、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを除去し、電極膜を露出させた。
【0106】
電極膜をレーザー加工により、インターディジット型電極(くし形を向かい合わせに組み合わせた型)を形成した。(下部電極層)
【0107】
厚さ500μmにレーザーカットされたPDMS膜からなるチャネル層を下部電極層に、シリコーン接着フィルムで接着した。
【0108】
下部電極層と同様に作製し、レーザーカットされた2つの流体接続用穴がある上部電極層は、チャンネル層とシリコーン接着フィルムで接着した。
【0109】
モジュール式ポンプは、長さ75mm×幅19mm×厚さ1.3mm、流路は、長さ55mm×幅2mm×厚さ0.5mm、重量1.0gであった。
【0110】
上下電極はインターディジット化されており、逆極性のフィンガー間のギャップは0.5mm、フィンガーペア間の間隔は1mmであった。
【0111】
Novec 7100(3M社製)を、作製したポンプに23℃にて給液し、電圧を5.6kV印加して送液し、流量を測定したところ、流量は0.1ml/s(6ml/min)であった。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、ロボティクス分野等に利用することができる。
【符号の説明】
【0113】
100、200、300、400、500、600、700 ポンプ
10、40、50、60 絶縁性チューブ(絶縁性容器)
11、21、41、51、61、71 陽極
12、22、42、52、62、72 陰極
14 弾性ロッド
35 巻き付け用絶縁性柱状構造物
70 絶縁性円盤型容器(絶縁性容器)
76 入口
77 出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10