(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108098
(43)【公開日】2024-08-09
(54)【発明の名称】ポリエーテルポリオール
(51)【国際特許分類】
C08G 2/10 20060101AFI20240802BHJP
C08G 65/331 20060101ALI20240802BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
C08G2/10
C08G65/331
C08G18/48 054
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117410
(22)【出願日】2023-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2023011515
(32)【優先日】2023-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】黒内 寛明
(72)【発明者】
【氏名】名倉 椋
(72)【発明者】
【氏名】山中 貴之
(72)【発明者】
【氏名】日置 優太
【テーマコード(参考)】
4J005
4J032
4J034
【Fターム(参考)】
4J005AA06
4J005AA08
4J005BB02
4J005BD03
4J032AA03
4J032AA36
4J032AB04
4J032AB06
4J032AC02
4J032AC23
4J032AD46
4J032AF00
4J032AF08
4J034BA03
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA15
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB05
4J034CB07
4J034CC03
4J034CC12
4J034CC26
4J034CC45
4J034CC52
4J034CC61
4J034CC62
4J034CC65
4J034CC67
4J034DA01
4J034DB04
4J034DC50
4J034DF01
4J034DF02
4J034DF12
4J034DG01
4J034DG06
4J034DG14
4J034FA02
4J034FB01
4J034FC01
4J034FD01
4J034HA01
4J034HA06
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA01
4J034JA02
4J034JA30
4J034JA32
4J034JA42
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KD02
4J034KD12
4J034KE02
4J034QA03
4J034QA05
4J034QC05
4J034RA02
4J034RA03
4J034RA07
4J034RA08
4J034RA09
4J034RA11
(57)【要約】
【課題】 ウレタン原料との相溶性に優れ、ウレタンの原料として反応性が良好で、ポリ
ウレタンとした際に、優れた引張耐性を発現できるポリエーテルポリオールを提供するこ
とを目的とする。
【解決手段】 下記式(1)で表されるポリエーテルポリオールであって、オキシメチレ
ン基の総量に対するオキシメチレン基同士が結合して存在する量の比が8.0%以下であ
り、且つ分子量分布が1.85以上である、ポリエーテルポリオール。
(上記式(1)において、Rは炭素数2~10の二価の炭化水素基を表し、nは1~40
の整数であり、mは1以上の整数であり、sは1~30の整数である。なお、式(1)中
、複数のRは同一であってもよく、異なるものであってもよい。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるポリエーテルポリオールであって、
オキシメチレン基の総量に対するオキシメチレン基同士が結合して存在する量の比が8
.0%以下であり、且つ分子量分布が1.85以上である、ポリエーテルポリオール。
【化1】
(上記式(1)において、Rは炭素数2~10の二価の炭化水素基を表し、nは1~40
の整数であり、mは1以上の整数であり、sは1~30の整数である。なお、式(1)中
、複数のRは同一であってもよく、異なるものであってもよい。)
【請求項2】
前記ポリエーテルポリオールの数平均分子量が600以上9900以下である請求項1
に記載のポリエーテルポリオール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエーテルポリオールに関する。詳しくは主鎖にオキシメチレン構造を有す
るポリエーテルポリオールに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエーテルポリオールは一般式HO-(RO)m-H(mは2以上の整数、Rはアル
キレン基を表す。) で示される両末端に一級水酸基を有するポリエーテルポリオールであ
り、一般的に環状エーテルの開環重合により製造される。中でも、テトラヒドロフラン(
以下、「THF」と略記する場合がある)の開環重合反応により得られるポリテトラメチ
レンエーテルグリコール(以下、「PTMG」と略記する場合がある)は、水酸基を両末
端に持つ直鎖ポリエーテルグリコールで、一般式HO-[(CH2)4O]n-H(nは
2以上の整数を表す。) で示され、伸縮性や弾力性が要求されるポリウレタンやポリエス
テルの原料として極めて有用である。
【0003】
近年、高弾性率、高強度のポリウレタンやポリエステルを必要とする分野では、高分子
量のPTMG等の使用が望まれている。しかしながら、高分子量のPTMG等はその粘度
が高く、取り扱いが不便であったが、該PTMGにオキシメチレン基を導入することによ
り粘度低下を実現している。特許文献1では、数平均分子量が650以上3000以下の
PTMG、または数平均分子量が650以上3000以下のPTMG及びグリコールと、
パラホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒドを原料とし、モンモリロナイト等の固体酸
触媒を使用し、水酸化カルシウムの存在下で水蒸気蒸留することで精製された、PTMG
にオキシメチレン基を導入したポリオールの製造法が記載されている。
【0004】
特許文献2では、数平均分子量が1000以上3000以下のPTMGとパラホルムア
ルデヒドまたはホルムアルデヒドを原料とし、Amberlyst等の固体酸触媒を使用
し、60℃以上110℃以下の温度で、PTMGにオキシメチレン基を導入した数平均分
子量2000以上13000以下のポリオールが記載されている。
【0005】
特許文献3には、ペンタンジオール等のアルキレンジオール又はPTMG等のポリオー
ルとパラホルムアルデヒドを原料とし、硫酸又はp-トルエンスルホン酸等の酸性触媒を
用い、130℃を超えない温度で、数平均分子量が少なくとも1270であり、ヒドロキ
シル基の数が200未満であり、オキシメチレン構造を有するポリエーテルポリオールを
製造することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平7-505176号公報
【特許文献2】特開昭57-53529号公報
【特許文献3】英国特許第850178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従前知られたオキシメチレン構造を有するポリエーテルポリオールでは
、該ポリエーテルポリオールを原料として用いてポリウレタンを製造すると、製造された
ポリウレタンの引張強さや切断時伸びが満足のいくものではなく、不十分なものであった
。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであって、ウレタン原料との相溶性に優れ、ウ
レタンの原料として反応性が良好で、ポリウレタンとした際に、優れた引張耐性を発現で
きるポリエーテルポリオールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のポリエーテルポリオー
ル中の、オキシメチレン基の総量に対するオキシメチレン基同士が結合して存在する量の
比が特定範囲であり、且つ分子量分布が特定範囲である、ポリエーテルポリオールとする
ことで、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は、以下の[1]~[2]に存する。
[1] 下記式(1)で表されるポリエーテルポリオールであって、オキシメチレン基の
総量に対するオキシメチレン基同士が結合して存在する量の比が8.0%以下であり、且
つ分子量分布が1.85以上である、ポリエーテルポリオール。
【0010】
【0011】
(上記式(1)において、Rは炭素数2~10の二価の炭化水素基を表し、nは1~40
の整数であり、mは1以上の整数であり、sは1~30の整数である。なお、式(1)中
、複数のRは同一であってもよく、異なるものであってもよい。)
[2] 前記ポリエーテルポリオールの数平均分子量が600以上9900以下である[
1]に記載のポリエーテルポリオール。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ウレタン原料との相溶性に優れ、ウレタンの原料として反応性が良好
で、ポリウレタンとした際に、優れた引張耐性を発現できるポリエーテルポリオールを提
供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を具体的に記載するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に記載
の態様に限定されない。
【0014】
<ポリエーテルポリオール>
本発明のポリエーテルポリオールは下記式(1)で表されるポリオールであって、オキ
シメチレン基の総量に対するオキシメチレン基同士が結合して存在する量の比(以下「オ
キシメチレン連続結合割合」と称する場合がある)が8.0%以下であり、且つ分子量分
布が1.85以上である、ポリエーテルポリオール(以下「ポリエーテルポリオールA」
と称する場合がある)である。
【0015】
【0016】
(上記式(1)において、Rは炭素数2~10の二価の炭化水素基を表し、nは1~40
の整数であり、mは1以上の整数であり、sは1~30の整数である。なお、式(1)中
、複数のRは同一であってもよく、異なるものであってもよい。)
【0017】
ポリエーテルポリオールAのオキシメチレン連続結合割合は5.0%以下が好ましく、
3.0%以下がより好ましく、2.0%以下がさらに好ましい。下限は特に限定されない
が、0.1%が好ましい。該オキシメチレン連続結合割合を前記範囲内とすることで、ポ
リエーテルポリオールAをウレタン原料とした際に、ウレタン原料との相溶性に優れ、ウ
レタンの原料として反応性が良好で、ポリウレタンとした際に、優れた引張耐性を発現で
きるポリエーテルポリオールを提供することが可能となる。
尚、該オキシメチレン連続結合割合は1H-NMR測定(プロトン型核磁気共鳴分光測
定)により求めることができる。
【0018】
ポリエーテルポリオールAの分子量分布は1.90以上が好ましく、2.00以上がよ
り好ましく、2.30以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、3.50が好
ましく、3.20がより好ましい。該分子量分布を前記範囲内とすることで、ポリエーテ
ルポリオールAをウレタン原料とした際に、ウレタン原料との相溶性に優れ、ウレタンの
原料として反応性が良好で、ポリウレタンとした際に、優れた引張耐性を発現できるポリ
エーテルポリオールを提供することが可能となる。
尚、該分子量分布は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定
することができる。
【0019】
ポリエーテルポリオールAの数平均分子量は600以上9900以下であることが好ま
しく、800以上5900以下であることがより好ましく、1000以上3900以下で
あることがさらに好ましい。該数平均分子量を前記範囲内とすることで、ポリエーテルポ
リオールAをウレタン原料とした際に、ウレタン原料との相溶性に優れ、ウレタンの原料
として反応性が良好で、ポリウレタンとした際に、優れた引張耐性を発現できるポリエー
テルポリオールを提供することが可能となる。
尚、該数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測
定することができる。
【0020】
前記式(1)におけるRとしては、ポリエーテルポリオールAをウレタン原料とした際
に、ウレタン原料との相溶性に優れ、ウレタンの原料として反応性が良好で、ポリウレタ
ンとした際に、優れた引張耐性を発現できるポリエーテルポリオールを提供することがで
きることより、炭素数2~10の二価の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素数
2~10の二価の非環式脂肪族炭化水素基がより好ましい。炭素数2~10の二価の非環
式脂肪族炭化水素基としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2
-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキ
サンジオール、1,7-へプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナン
ジオール、1,10-デカンジオール等の直鎖状ポリオールに由来する炭化水素基、2-
メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネ
オペンチルグリコール)、2-メチル-1,4-ブタンジオール、3-メチル-ペンタン
ジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2ーブチルー2―エチルー1,3-
プロパンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、3-ブチル-1,5-ペン
タンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジブチルー1,
5-ペンタンジオール、2,2-ジブチルー1,3-プロパンジオール等の分岐鎖状ポリ
ールに由来する炭化水素基が挙げられる。なかでも、1,3-プロパンジオール、1,2
-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール及び1,6-ヘ
キサンジオールからなる群より選ばれた少なくとも1種のポリオールに由来する炭化水素
基がさらに好ましい。
【0021】
炭素数2~10の二価の環式脂肪族炭化水素基としては、1,3-シクロペンタンジオ
ール、1,4-シクロヘキサンジオール、エリスリタン、イソソルビド、1,4-シクロ
ヘキサンジメタノール、2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン、1,3
-シクロヘキサンジメタノール、2,7-ノルボルナンジオール、トリシクロ[5.2.
1.02,6]デカンジメタノール等の脂環式ポリオールに由来する炭化水素基が挙げら
れる。なかでも、エリスリタン、イソソルビド及び1,4-シクロヘキサンジメタノール
からなる群より選ばれた少なくとも1種のポリオールに由来する炭化水素基がより好まし
い。
【0022】
(ポリエーテルポリオールAの製造)
<原料1>
本発明のポリエーテルポリオールを製造するための原料は、前記式(1)の基礎となる
原料を含む。該基礎となる原料はホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド及びトリオキ
サンからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物(以下「原料1」と称する場合があ
る)である。尚、ホルムアルデヒドは、ホルマリンとして水溶液として使用されるのが一
般的であり、ホルムアルデヒドを原料とした場合、ポリエーテルポリオール精製のために
、反応系から多量の水を除去する必要性が生じる。よって、効率的にポリエーテルポリオ
ールが製造できることより、原料1としてトリオキサン、パラホルムアルデヒドが好まし
く、パラホルムアルデヒドがより好ましい。
【0023】
原料1の量は、原料の総量に対し、0.1質量%以上35質量%以下であることが好ま
しく、0.5質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上25質
量%以下であることがさらに好ましい。
【0024】
<原料2>
原料は、原料1のほかに、原料1以外のポリオール(以下「原料2」と称する場合があ
る)を含む。原料2としては、原料1以外のポリエーテルポリオール及び/又は原料1以
外のポリオールである。
【0025】
原料1以外のポリエーテルポリオール(以下「原料2-1」と称する場合がある)とし
ては、ポリエーテルポリオールAをウレタン原料とした際に、ウレタン原料との相溶性に
優れ、ウレタンの原料として反応性が良好で、ポリウレタンとした際に、優れた引張耐性
を発現できるポリエーテルポリオールを提供することができることより、脂肪族ポリエー
テルポリオールが好ましく、非環式脂肪族ポリエーテルポリオールがより好ましい。非環
式脂肪族ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレング
リコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、3-メチルテトラヒドロフランとテ
トラヒドロフランの共重合ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ネオペンチルグリコ
ールとテトラヒドロフランの共重合ポリエーテルポリオール、エチレンオキサイドとテト
ラヒドロフランの共重合ポリエーテルポリオール、プロピレンオキサイドとテトラヒドロ
フランの共重合ポリエーテルグリコール等が挙げられる。中でも、ポリテトラメチレンエ
ーテルグリコールがさらに好ましい。環式脂肪族ポリエーテルポリオールとしては、1,
3-シクロペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、エリスリタン、1,4
-シクロヘキサンジメタノール、2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン
、1,3-シクロヘキサンジメタノール、2,7-ノルボルナンジオール及びトリシクロ
[5.2.1.02,6]デカンジメタノールからなる群より選ばれた少なくともポリオ
ールを重合して得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。中でも1,4-シクロヘ
キサンジメタノールを重合して得られるポリエーテルポリオールがより好ましい。
【0026】
原料2-1の数平均分子量としては、100以上4000以下が好ましく、150以上
1000以下がより好ましく、200以上900以下がさらに好ましい。ポリエーテルポ
リオールAをウレタン原料とした際に、ウレタン原料との相溶性に優れ、ウレタンの原料
として反応性が良好で、ポリウレタンとした際に、優れた引張耐性を発現できるポリエー
テルポリオールを提供することが可能である。
【0027】
原料1以外のポリオール(以下「原料2-2」と称する場合がある)としては、ポリエ
ーテルポリオールAをウレタン原料とした際に、ウレタン原料との相溶性に優れ、ウレタ
ンの原料として反応性が良好で、ポリウレタンとした際に、優れた引張耐性を発現できる
ポリエーテルポリオールを提供することが可能であることより、脂肪族ポリオールが好ま
しく、非環式脂肪族ポリオールがより好ましい。非環式脂肪族ポリオールとしては、エチ
レングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタン
ジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-へプタンジ
オール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオー
ル、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオ
ール(ネオペンチルグリコール)、2-メチル-1,4-ブタンジオール、3-メチル-
ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2ーブチルー2―エチルー
1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、3-ブチル-1,
5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジブチ
ルー1,5-ペンタンジオール、2,2-ジブチルー1,3-プロパンジオール等が挙げ
られる。中でも、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタン
ジオール、1,5-ペンタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールからなる群より選ば
れた少なくとも1種のポリオールがさらに好ましい。環式脂肪族ポリオールとしては、1
,3-シクロペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、エリスリタン、イソ
ソルビド、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキ
シル)-プロパン、1,3-シクロヘキサンジメタノール、2,7-ノルボルナンジオー
ル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール等が挙げられる。中でも、
エリスリタン、イソソルビド及び1,4-シクロヘキサンジメタノールからなる群より選
ばれた少なくとも1種のポリオールがより好ましい。
【0028】
尚、原料2としては、効率的に所望のポリエーテルポリオールの数平均分子量とするこ
とができることより、原料2-1を含むことが好ましい。
【0029】
<触媒>
本発明で使用するポリエーテルポリオールAを製造するための触媒は、酸性イオン交換
樹脂触媒が好ましく、スルホン酸基を有する酸性イオン交換樹脂触媒がより好ましい。前
記触媒を使用することにより、製造されたポリエーテルポリオールAのオキシメチレン連
続結合割合を特定範囲に制御することが可能となる。
【0030】
前記触媒の量は、前記原料2の重量に対して、0.1重量%以上10重量%以下が好ま
しく、0.5重量%以上5重量%以下がより好ましく、1重量%以上、3重量%以下がよ
り好ましい。触媒の量が前記範囲内であることにより、原料2の酸分解を抑制するととも
に製造されたポリエーテルポリオールAのオキシメチレン連続結合割合を特定範囲に制御
することが可能となる。
【0031】
<反応工程>
原料1と、原料2とを原料とし、触媒の存在下、ポリエーテルポリオールAを製造する
反応は、以下の反応系において実施される。反応系はバッチ方式、連続式が挙げられるが
反応系で副生する水の除去が容易である点よりバッチ方式が好ましい。又、必要により反
応に影響を及ぼさない溶媒が反応系に存在していてもよい。該溶媒としては、テトラヒド
ロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキ
サン等が挙げられるが、触媒に対する安定性の観点より、トルエン、キシレン、シクロヘ
キサンが好ましい。
【0032】
原料1、原料2及び触媒が反応系に共存した時点を反応の開始とする。反応温度として
は60℃以上130℃以下が好ましく、70℃以上120℃以下がより好ましく、90℃
以上110℃以下がさらに好ましい。前記反応温度範囲とすることで反応系中に発生した
水分を常圧下においても、系外へ容易に除去することができる。又反応圧力は50kPa
以上1000kPa以下が好ましく、70kPa以上500kPa以下がより好ましく、
90kPa以上150kPa以下がさらに好ましい。前記反応圧力範囲とすることで原料
を反応系内に保持することができ、且つ、水分を効率的に除去できる可能性がある。
【0033】
反応開始から適度な時間が経過したのちに、所望とするポリエーテルポリオールAの数
平均分子量を勘案し、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の
触媒の失活剤を反応系に添加することにより系中に残存する微量の酸性不純物を失活させ
てもよい。また、失活剤を除去してもよい。失活剤の除去方法は濾別等が挙げられる。
【0034】
原料1が消費された、すなわち反応が終了したことが確認されたところで濾過等により
触媒を反応系外へ排出する。その後、溶媒と水分を反応系外へ除去する。温度としては6
0℃以上180℃以下が好ましく、90℃以上160℃以下がより好ましく、100℃以
上150℃以下がさらに好ましい。前記温度範囲とすることで反応中に発生した水分と溶
媒を効率的に反応系外へ除去することができる。又、圧力は1Pa以上50kPa以下が
好ましく、10Pa以上10kPa以下がより好ましく、50Pa以上1kPa以下がさ
らに好ましい。前記圧力範囲とすることで、溶媒と水分を効率的に除去できる可能性があ
る。
【0035】
溶媒および水分の除去後、必要に応じて減圧下での加熱を継続する。温度としては、後
述する解重合を促進する点で、100℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましく、
140℃以上がさらに好ましい。また、生成物の分解を防ぐ点で200℃以下が好ましく
、180℃以下がより好ましく、150℃以下がさらに好ましい。前記反応温度範囲とす
ることでポリエーテルポリオールA中のオキシメチレン基が連続して結合している部位を
解重合し、原料2に由来する構造単位とオキシメチレン基と交互に結合している構造に組
み替えることが可能となり、オキシメチレン連続結合割合を特定範囲とすることが可能と
なる。尚、残存する未反応の原料1及び原料2を反応系外へ除去する点で反応圧力は0.
1kPa以上500kPa以下が好ましく、0.5kPa以上100kPa以下がより好
ましく、1kPa以上10kPa以下がさらに好ましい。
【0036】
[ポリエーテルポリオールの用途]
本発明のポリエーテルポリオールは、その優れた反応性と引張耐性から、弾性繊維、熱
可塑性ポリウレタン、コーティング材などの用途に好適なポリウレタンの原料として有用
である。このような用途において、本発明のポリエーテルポリオールからポリウレタン溶
液や水系ポリウレタ ンエマルションを製造して用いることができる。本発明のポリエー
テルポリオールは、末端を変性させることによりUV硬化型塗料や電子線硬化型塗料、プ
ラスチックコーティング、レンズ等の成形剤、封止剤、接着剤等の原料として用いること
ができる。本発明のポリエーテルポリオールは、ナノファイバーセルロースやカーボンナ
ノファイバー、金属ナノ粒子等のナノ材料を分散するのに用いることができる。
【0037】
[ポリウレタン]
本発明のポリエーテルポリオールを用いてポリウレタンを製造することができる。
本発明のポリエーテルポリオールを用いてポリウレタンを製造する方法は、通常ポリウ
レタンを製造する公知のポリウレタン化反応条件が用いられる。
【0038】
例えば、本発明のポリエーテルポリオールとポリイソシアネート及び鎖延長剤を常温か
ら200℃の範囲で反応させることにより、ポリウレタンを製造することができる。
また、本発明のポリエーテルポリオールと過剰のポリイソシアネートとをまず反応させ
て末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを製造し、さらに鎖延長剤を用いて重合
度を挙げて、ポリウレタンを製造することができる。
【0039】
<ポリイソシアネート>
本発明のポリエーテルポリオールを用いてポリウレタンを製造する際に使用されるポリ
イソシアネートとしては、脂肪族、脂環族または芳香族の各種公知のポリイソシアネート
化合物が挙げられる。
例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサ
メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、
2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート及び
ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等
の脂肪族ジイソシアネート;1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイ
ソシアネート、1-メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1-メチル-2
,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシア
ネート及び1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソ
シアナトメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ジイソシアネート;キシリレンジイソシア
ネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、
2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレン
ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニ
ルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、ジアルキ
ルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネー
ト、1,5-ナフチレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレ
ンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、フェニレンジイソシア
ネート及びm-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート
等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
これらの中でも得られるポリウレタンの物性のバランスが好ましい点、工業的に安価に
多量に入手が可能な点で、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレ
ンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びイソホロ
ンジイソシアネートが好ましい。
【0041】
<鎖延長剤>
ポリウレタンを製造する際に用いられる鎖延長剤は、後述するイソシアネート基を有す
るプレポリマーを製造する場合において、イソシアネート基と反応する活性水素を少なく
とも2個有する低分子量化合物であり、通常ポリオール及びポリアミン等を挙げることが
できる。
【0042】
その具体例としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタ
ンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタン
ジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジ
オール等の直鎖ジオール類;2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル
-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-メチ
ル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,4-ヘプタンジオール、1,4-ジ
メチロールヘキサン、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル
-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2
-エチル-1,3-プロパンジオール、ダイマージオール等の分岐鎖を有するジオール類
;ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のエーテル基を有するジオール類;1
,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ジヒド
ロキシエチルシクロヘキサン等の脂環構造を有するジオール類、キシリレングリコール、
1,4-ジヒドロキシエチルベンゼン、4,4’-メチレンビス(ヒドロキシエチルベン
ゼン)等の芳香族基を有するジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタ
エリスリトール等のポリオール類;N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノール
アミン等のヒドロキシアミン類;エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、ヘキサ
メチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミ
ン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジア
ミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレ
ンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエ
チレンジアミン、4,4’-ジフェニルメタンジアミン、メチレンビス(o-クロロアニ
リン)、キシリレンジアミン、ジフェニルジアミン、トリレンジアミン、ヒドラジン、ピ
ペラジン、N,N’-ジアミノピペラジン等のポリアミン類;及び水等を挙げることがで
きる。
【0043】
これらの鎖延長剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも
得られるポリウレタンの物性のバランスが好ましい点、工業的に安価に多量に入手が可能
な点で、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオー
ル、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、
1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ジヒドロキシエチルシクロヘキサン、エ
チレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、イソホロンジアミン、4,4’-ジアミノ
ジシクロヘキシルメタンが好ましい。
また、後述する水酸基を有するプレポリマーを製造する場合の鎖延長剤とは、イソシア
ネート基を少なくとも2個有する低分子量化合物であり、具体的には<ポリイソシアネー
ト>で記載したような化合物が挙げられる。
【0044】
<鎖停止剤>
ポリウレタンを製造する際には、得られるポリウレタンの分子量を制御する目的で、必
要に応じて1個の活性水素基を持つ鎖停止剤を使用することができる。
これらの鎖停止剤としては、一個の水酸基を有するメタノール、エタノール、プロパノ
ール、ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族モノオール類、一個のアミノ基を有するジエ
チルアミン、ジブチルアミン、n-ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノール
アミン、モルフォホリン等の脂肪族モノアミン類が例示される。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
<触媒>
ポリウレタンを製造する際のポリウレタン形成反応において、トリエチルアミン、N-
エチルモルホリン、トリエチレンジアミンなどのアミン系触媒又は酢酸、リン酸、硫酸、
塩酸、スルホン酸等の酸系触媒、トリメチルチンラウレート、ジブチルチンジラウレート
、ジオクチルチンジラウレート、ジオクチルチンジネオデカネートなどのスズ系の化合物
、さらにはチタン系化合物などの有機金属塩などに代表される公知のウレタン重合触媒を
用いる事もできる。ウレタン重合触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用し
てもよい。
【0046】
<本発明のポリエーテルポリオール以外のポリオール>
ポリウレタンを製造する際のポリウレタン形成反応においては、本発明のポリエーテル
ポリオールと必要に応じてそれ以外のポリオールを併用してもよい。ここで、本発明のポ
リエーテルポリオール以外のポリオールとは、通常のポリウレタン製造の際に用いるもの
であれば特に限定されず、例えば本発明以外のポリエーテルポリオール、ポリエステルポ
リオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオールが挙げられる。
ここで、本発明のポリエーテルポリオールとそれ以外のポリオールを合わせた重量に対す
る、本発明のポリエーテルポリオールの重量割合は70%以上が好ましく、90%以上が
さらに好ましい。本発明のポリエーテルポリオールの重量割合が少ないと、本発明の特徴
であるポリウレタン原料同士の相溶性や、ポリウレタンの強度、ハンドリング性が失われ
る可能性がある。
【0047】
ポリウレタンの製造には、上述の本発明のポリエーテルポリオールを変性して使用する
こともできる。ポリエーテルポリオールの変性方法としては、ポリエーテルポリオールに
エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のエポキシ化合物を付加さ
せてエーテル基を導入する方法や、ポリエーテルポリオールをε-カプロラクトン等の環
状ラクトンやアジピン酸、コハク酸、セバシン酸、テレフタル酸等のジカルボン酸化合物
並びにそれらのエステル化合物と反応させてエステル基を導入する方法がある。
【0048】
エーテル変性ではエチレンオキシド、プロピレンオキシド等による変性ではポリオール
の粘度が低下し、取扱い性等の理由で好ましい。また、本発明のポリエーテルポリオール
は高い引張耐性を持つことから、通常エチレンオキシドやプロピレンオキシド変性するこ
とで低下する引張強度を高く保持することが可能である。さらに、エチレンオキシド変性
の場合は、エチレンオキシド変性ポリエーテルポリオールを用いて製造されたポリウレタ
ンの吸水性や透湿性が増加する為に人工皮革・合成皮革等としての性能が向上することが
ある。エチレンオキシドやプロピレンオキシドの付加量は、機械強度、耐熱性、耐薬品性
等の観点から、ポリエーテルポリオールに対する付加量としては5~50重量%が好適で
あり、好ましくは5~40重量%、さらに好ましくは5~30重量%である。
【0049】
エステル基を導入する方法では、ε-カプロラクトンによる変性でポリエーテルポリオ
ールの粘度が低下し、取扱い性等の理由で好ましい。ポリエーテルポリオールに対するε
-カプロラクトンの付加量は、得られるポリウレタンの耐加水分解性、耐薬品性、引張耐
性等の観点から5~50重量%が好適であり、好ましくは5~40重量%、さらに好まし
くは5~30重量%である。
【0050】
<溶剤>
ポリウレタンを製造する際のポリウレタン形成反応には溶剤を用いてもよい。
好ましい溶剤としては、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセ
トアミド,N-メチルピロリドンなどのアミド系溶剤;ジメチルスルホキシドなどのスル
キシド系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のト
ン系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチ
ル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;及びトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤
等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上の混合溶媒として用い
てもよい。
【0051】
これらの中で好ましい有機溶剤は、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、ジメ
チルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン及びジメチルスルホキ
シド等である。
また、本発明のポリエーテルポリオール、ポリイソシアネート、及び前記の鎖延長剤が
配合されたポリウレタン組成物から、水分散液のポリウレタンを製造することもできる。
【0052】
<ポリウレタン製造方法>
上述の反応試剤を用いてポリウレタンを製造する方法としては、一般的に実験ないし工
業的に用いられる製造方法が使用できる。
その例としては、本発明のポリエーテルポリオール、それ以外のポリオール、ポリイソ
シアネート及び鎖延長剤を一括に混合して反応させる方法(以下、「一段法」と称する場
合がある)や、まず本発明のポリエーテルポリオール、それ以外のポリオール及びポリイ
ソシアネートを反応させて両末端がイソシアネート基のプレポリマーを調製した後に、そ
のプレポリマーと鎖延長剤を反応させる方法(以下、「二段法」と称する場合がある)等
がある。
【0053】
二段法は、本発明のポリエーテルポリオールとそれ以外のポリオールとを予め1当量以
上のポリイソシアネートと反応させることにより、ポリウレタンのソフトセグメントに相
当する部分の両末端イソシアネート中間体を調製する工程を経るものである。このように
、プレポリマーを一旦調製した後に鎖延長剤と反応させると、ソフトセグメント部分の分
子量の調整が行いやすい場合があり、ソフトセグメントとハードセグメントの相分離を確
実に行う必要がある場合には有用である。
【0054】
<一段法>
一段法とは、ワンショット法とも呼ばれ、本発明のポリエーテルポリオール、それ以外
のポリオール、ポリイソシアネート及び鎖延長剤を一括に仕込むことで反応を行う方法で
ある。
一段法におけるポリイソシアネートの使用量は、特に限定はされないが、本発明のポリ
エーテルポリオールとそれ以外のポリオールとの総水酸基数と、鎖延長剤の水酸基数とア
ミノ基数との総計を1当量とした場合、下限は、好ましくは0.7当量、より好ましくは
0.8当量、さらに好ましくは0.9当量、特に好ましくは0.95当量であり、上限は
、好ましくは3.0当量、より好ましくは2.0当量、さらに好ましくは1.5当量、特
に好ましくは1.1当量である。
【0055】
ポリイソシアネートの使用量が下限以上であれば、ポリウレタンの分子量が十分に大き
くなりポリウレタンの強度が良好となり、上限以下であれば、未反応のイソシアネート基
による副反応を抑えられ、得られるポリウレタン溶液の取り扱い性や、柔軟性が良好とな
る。
また、鎖延長剤の使用量は、特に限定されないが、本発明のポリエーテルポリオールと
それ以外のポリオールの総水酸基数をポリイソシアネートのイソシアネート基数から引い
た数を1当量とした場合、下限は、好ましくは0.7当量、より好ましくは0.8当量、
さらに好ましくは0.9当量、特に好ましくは0.95当量であり、上限は好ましくは3
.0当量、より好ましくは2.0当量、さらに好ましくは1.5当量、特に好ましくは1
.1当量である。鎖延長剤の使用量が下限以上であれば、得られるポリウレタンの強度、
硬度、耐熱性、弾性回復性能や弾性保持性能が良好となり、上限以下であれば、得られる
ポリウレタンの加工性が良好となる。
【0056】
<二段法>
二段法は、プレポリマー法ともよばれ、主に以下の方法がある。
(a)予め本発明のポリエーテルポリオール及びそれ以外のポリオールと、過剰のポリイ
ソシアネートとを、ポリイソシアネート/(本発明のポリエーテルポリオール及びそれ以
外のポリオール)の反応当量比が1を超える量から10.0以下で反応させて、分子鎖末
端がイソシアネート基であるプレポリマーを製造し、次いでこれに鎖延長剤を加えること
によりポリウレタンを製造する方法。
(b)予めポリイソシアネートと、過剰のポリエーテルポリオール及びそれ以外のポリオ
ールとを、ポリイソシアネート/(本発明のポリエーテルポリオール及びそれ以外のポリ
オール)の反応当量比が0.1以上から1.0未満で反応させて分子鎖末端が水酸基であ
るプレポリマーを製造し、次いでこれに鎖延長剤として末端がイソシアネート基のポリイ
ソシアネートを反応させてポリウレタンを製造する方法。
【0057】
二段法は無溶媒でも溶媒共存下でも実施することができる。
二段法によるポリウレタン製造は以下に記載の(1)~(3)のいずれかの方法によっ
て行うことができる。
(1) 溶媒を使用せず、まず直接ポリイソシアネートとポリエーテルポリオールとそれ
以外のポリオールとを反応させてプレポリマーを合成し、そのまま鎖延長反応に使用する
。
(2) (1)の方法でプレポリマーを合成し、その後溶媒に溶解し、以降の鎖延長反応
に使用する。
(3) 初めから溶媒を使用し、ポリイソシアネートとポリエーテルポリオールとそれ以
外のポリオールとを反応させ、その後鎖延長反応を行う。
【0058】
(1)の方法の場合には、鎖延長反応にあたり、鎖延長剤を溶媒に溶かしたり、溶媒に
同時にプレポリマー及び鎖延長剤を溶解したりするなどの方法により、ポリウレタンを溶
媒と共存する形で得ることが重要である。
二段法(a)の方法におけるポリイソシアネートの使用量は、特に限定はされないが、
ポリエーテルポリオールとそれ以外のポリオールの総水酸基の数を1当量とした場合のイ
ソシアネート基の数として、下限が好ましくは1.0当量を超える量、より好ましくは1
.2当量、さらに好ましくは1.5当量であり、上限が好ましくは10.0当量、より好
ましくは5.0当量、さらに好ましくは3.0当量の範囲である。
【0059】
このポリイソシアネート使用量が下限以上であれば得られるポリウレタンの分子量が十
分に大きくなり、強度や熱安定性が良好となり、上限以下であれば、過剰のイソシアネー
ト基による副反応を抑制でき、得られるウレタンの取り扱い性や柔軟性が良好となる。
鎖延長剤の使用量については特に限定されないが、プレポリマーに含まれるイソシアネ
ート基の数1当量に対して、下限が、好ましくは0.1当量、より好ましくは0.5当量
、さらに好ましくは0.8当量であり、上限が好ましくは5.0当量、より好ましくは3
.0当量、さらに好ましくは2.0当量の範囲である。
【0060】
上記鎖延長化反応を行う際に、分子量を調整する目的で、一官能性の有機アミン類やア
ルコール類を共存させてもよい。
また、二段法(b)の方法における末端が水酸基であるプレポリマーを作成する際のポ
リイソシアネートの使用量は、特に限定はされないが、ポリエーテルポリオールとそれ以
外のポリオールの総水酸基の数を1当量とした場合のイソシアネート基の数として、下限
が好ましくは0.1当量、より好ましくは0.5当量、さらに好ましくは0.7当量であ
り、上限が好ましくは0.99当量、より好ましくは0.98当量、さらに好ましくは0
.97当量である。
【0061】
このポリイソシアネート使用量が下限以上であれば、続く鎖延長反応で所望の分子量を
得るまでの工程を短縮でき生産効率が良好となり、上限以下であれば、得られるポリウレ
タンの取り扱い性や柔軟性が良好となる。
鎖延長剤の使用量については特に限定されないが、プレポリマーに使用したポリエーテ
ルポリオールとそれ以外のポリオールの総水酸基の数を1当量とした場合、プレポリマー
に使用したイソシアネート基の当量を加えた総当量として、下限が好ましくは0.7当量
、より好ましくは0.8当量、さらに好ましくは0.9当量であり、上限が好ましくは1
.0当量未満、より好ましくは0.99当量、さらに好ましくは0.98当量の範囲であ
る。
【0062】
上記鎖延長化反応を行う際に、分子量を調整する目的で、一官能性の有機アミン類やア
ルコール類を共存させてもよい。
鎖延長反応は通常、0℃~250℃で反応させるが、この温度は溶剤の量、使用原料の
反応性、反応設備等により異なり、特に制限はない。温度が低すぎると反応の進行が遅く
なったり、原料や重合物の溶解性が低い為に製造時間が長くなることがあり、また高すぎ
ると副反応や得られるポリウレタンの分解が起こることがある。鎖延長反応は、減圧下で
脱泡しながら行ってもよい。
【0063】
また、鎖延長反応には必要に応じて、触媒や安定剤等を添加することもできる。
触媒としては例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジブチル錫ジラウレート、
オクチル酸第一錫、酢酸、燐酸、硫酸、塩酸、スルホン酸等の化合物が挙げられ、1種を
単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。安定剤としては例えば2,6-ジブチ
ル-4-メチルフェノール、ジステアリルチオジプロピオネート、N,N′-ジ-2-ナ
フチル-1,4-フェニレンジアミン、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト等の化
合物が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。尚、鎖延長剤
が短鎖脂肪族アミン等の反応性の高いものの場合は、触媒を添加せずに実施してもよい。
【0064】
<水系ポリウレタンエマルション>
本発明のポリエーテルポリオールを用いて、水系ポリウレタンエマルションを製造する
場合、本発明のポリエーテルポリオールを含むポリオールと過剰のポリイソシアネートを
反応させてプレポリマーを製造する際に、少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2
個のイソシアネート反応性の基とを有する化合物を混合してプレポリマーを形成し、親水
性官能基の中和塩化工程、水添加による乳化工程、鎖延長反応工程を経て水系ポリウレタ
ンエマルションとすることができる。
【0065】
ここで使用する少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2個のイソシアネート反応
性の基とを有する化合物の親水性官能基とは、例えばカルボキシル基やスルホン酸基であ
って、アルカリ性基で中和可能な基である。また、イソシアネート反応性基とは、水酸基
、1級アミノ基、2級アミノ基等の一般的にイソシアネートと反応してウレタン結合、ウ
レア結合を形成する基であり、これらが同一分子内に混在していてもかまわない。
【0066】
少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基とを有す
る化合物としては、具体的には、2,2’-ジメチロールプロピオン酸、2,2-メチロ
ール酪酸、2,2’-ジメチロール吉草酸等が挙げられる。また、ジアミノカルボン酸類
、例えば、リジン、シスチン、3,5-ジアミノカルボン酸等も挙げられる。これらは、
1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらを実際に用いる場合には
、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリブチルアミ
ン、トリエタノールアミン等のアミンや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニ
ア等のアルカリ性化合物で中和して用いることができる。
【0067】
水系ポリウレタンエマルションを製造する場合、少なくとも1個の親水性官能基と少な
くとも2個のイソシアネート反応性の基とを有する化合物の使用量は、水に対する分散性
能を上げるために、その下限は、本発明のポリエーテルポリオールとそれ以外のポリオー
ルとの総重量に対して、好ましくは1重量%、より好ましくは5重量%、更に好ましくは
10重量%である。一方、ポリエーテルポリオールの特性を維持するために、その上限は
好ましくは50重量%、より好ましくは40重量%、更に好ましくは30重量%である。
【0068】
水系ポリウレタンエマルションを製造する場合、プレポリマー工程においてメチルエチ
ルケトンやアセトン、あるいはN-メチル-2-ピロリドン等の溶媒の共存下に反応させ
てもよいし、無溶媒で反応させてもよい。また、溶媒を使用する場合は、水性エマルショ
ンを製造した後に蒸留によって溶媒を留去させるのが好ましい。
【0069】
本発明のポリエーテルポリオールを原料として、無溶媒で水系ポリウレタンエマルショ
ンを製造する際には、用いるポリエーテルポリオールの水酸基価から求めた数平均分子量
の上限は好ましくは5000、より好ましくは4500、更に好ましくは4000である
。また、ポリエーテルポリオールの数平均分子量の下限は好ましくは300、より好まし
くは500、更に好ましくは800である。水酸基価から求めた数平均分子量が上記範囲
内であれば、エマルション化が容易となる傾向がある。
【0070】
また、水系ポリウレタンエマルションの合成、あるいは保存にあたり、高級脂肪酸、樹
脂酸、酸性脂肪アルコール、硫酸エステル、スルホン酸高級アルキル、スルホン酸アルキ
ルアリール、スルホン化ひまし油、スルホコハク酸エステルなどに代表されるアニオン性
界面活性剤、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩、第四級アミン塩、ピ
リジニウム塩等のカチオン系界面活性剤、あるいはエチレンオキサイドと長鎖脂肪アルコ
ール又はフェノール類との公知の反応生成物に代表される非イオン性界面活性剤等を併用
して、乳化安定性を保持してもよい。
【0071】
また、水系ポリウレタンエマルションとする際に、プレポリマーの有機溶媒溶液に、必
要に応じて中和塩化工程なしに、乳化剤の存在下、水を機械的に高せん断で混合して、エ
マルションを製造することもできる。
このようにして製造された水系ポリウレタンエマルションは、様々な用途に使用するこ
とが可能である。特に、最近は環境負荷の小さな化学品原料が求められており、有機溶剤
を使用しない目的としての従来品からの代替が可能である。
【0072】
水系ポリウレタンエマルションの具体的な用途としては、例えば、コーティング剤、水
系塗料、接着剤、合成皮革、人工皮革への利用が好適である。特に本発明のポリエーテ
ルポリオールを用いて製造される水系ポリウレタンエマルションは、ポリエーテルポリオ
ールに起因する優れた引張耐性を有することから、コーティング剤等として従来のポリカ
ーボネートジオールやPTMGを使用した水系ポリウレタンエマルションに比べて有効に
利用することが可能である。特に、従来のPTMGを用いた水系ポリウレタンエマルショ
ンに比べて、親水基を持つため、水への親和性がよく、より高分子量の当該発明のポリエ
ーテルポリオールを使用することができるため、コーティング塗膜や合成皮革、人工皮革
等によりソフト感と透明性を付与できる。また、水への分散性に優れることから水系ポリ
ウレタンエマルションの分子設計の自由度が増すため、組成を調整することにより、マッ
ト性も出すことが可能である。
【0073】
有機溶剤および/又は水を使用し、本発明のポリエーテルポリオールを用いて製造した
ポリウレタン溶液および水系ポリウレタンエマルションの保存安定性は、該溶液もしくは
該エマルション中のポリウレタンの濃度(以下、「固形分濃度」と称する場合がある)を
1~80重量%に調整し、特定の温度条件で保管した上で、該溶液もしくは該エマルショ
ンの変化の有無を目視などで測ることができる。例えば、前述の二段法により、本発明の
ポリエーテルポリオール、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよびイ
ソホロンジアミンを用いて 製造されるポリウレタン溶液(N,N-ジメチルホルムアミ
ド/トルエン混合液、固形分濃度30重量%)の場合、10℃で保管した際に、目視でポ
リウレタン溶液に変化が見られない期間が好ましくは1か月、よりに好ましくは3か月以
上、さらに好ましくは6か月以上である。
【0074】
<ポリウレタンの用途>
本発明のポリエーテルポリオールを使用したポリウレタンは、ポリエーテルポリオール
の相溶性から透明性に優れ、良好な強度を有し、加工性にも優れることから、フォーム、
エラストマー、弾性繊維、塗料、繊維、粘着剤、接着剤、床材、シーラント、医療用材料
、人工皮革、合成皮革、コーティング剤、水系ポリウレタン塗料、粉体塗料、活性エネル
ギー線硬化性重合体組成物等に広く用いることができる。
【0075】
特に、人工皮革、合成皮革、水系ポリウレタン、接着剤、弾性繊維、医療用材料、コー
ティング剤等の用途に、本発明のポリエーテルポリオールを使用したポリウレタンを用い
ると、低温安定性、透明性、強度が良好になるため、低温環境下での取扱い性や、物性が
良好であり、物理的な衝撃などに強いウレタンを得ることができる。
【0076】
[ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂]
本発明のポリエーテルポリオールを、ポリイソシアネートとヒドロキシアルキル(メタ
)アクリレートを付加反応させることによりウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー
を製造することができる。その他の原料化合物であるポリオール、及び鎖延長剤等を併用
する場合は、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリイソシアネートに、更
にこれらのその他の原料化合物も付加反応させることにより製造することができる。ウレ
タン (メタ)アクリレートは、他の原料とブレンドすることにより、活性エネルギー線
硬化性樹脂組成物を与える。この活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、各種表面加工分
野おび注型成型品用途に広く用いることができる。この活性エネルギー線硬化性樹脂組成
物は、硬化させて硬化膜とした場合に、硬度と伸度のバランス、耐溶剤性、ハンドリング
性に優れるという特徴を有し、UV硬化型塗料、電子線硬化型塗料、フレキソ印刷版用の
感光性樹脂組成物および光硬化型の光ファイバー被覆材組成物などの原料として用いるこ
とが できる。
【0077】
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、本発明のポリエーテルポリオールの他
に、ポリイソシアネートおよびヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート並びに必要に応
じて 他化合物を添加して製造することができる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリ
ゴマーを製造する際に使用可能なポリイソシアネートとしては、前記有機ジイソシアネー
トの他、トリス(イソシアナトヘキシル)イソシアヌレートなどのポリイソシアネートも
挙げられる。また、使用可能なヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、2-
ヒドロキシ エチル(メタ)アクリレートに代表される様に、1個以上のヒドロキシル基
と1個以上の (メタ)アクリロイル基とを併せ持つ化合物であれば特に限定されない。
さらに本発明のポリエーテルポリオールに加えて、必要に応じて他のポリオール及び/又
はポリアミンなど活性水素を少なくとも2個有する化合物を添加してもよく、また、これ
らを任意に組み合わせ用いてもよい。
【0078】
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物
には、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー以外の活性エネルギー線反応性モノマ
ー、活性エネルギー線硬化性オリゴマー、重合開始剤および光増加剤並びに他の添加剤な
どを混合してもよい。
【0079】
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物
の硬化膜は、インキおよびエタノールなどの一般家庭汚染物に対する耐汚染性および保護
性に優れる膜とすることが可能である。前記硬化膜を各種基材への皮膜として用いた積層
体は、意匠性および表面保護性に優れ ており、塗装代替用フィルムとして用いることが
でき、例えば、内装または外装用の建装 材並びに自動車および家電などの各種部材など
に有効に適用することが可能である。
【0080】
[(メタ)アクリル樹脂]
本発明のポリエーテルポリオールは末端水酸基の一方あるいは両方を(メタ)アクリレ
ート化することにより(メタ)アクリレートに誘導することができる。(メタ)アクリレ
ートの 製造方法は、該当する(メタアクリレート)の無水物、ハロゲン化物、エステル
体のいずれを用いても構わない。この(メタ)アクリレートは他の原料とブレンドするこ
とにより、活性エネルギー線重合性組成物((メタ)アクリル樹脂)を与える。
【0081】
この活性エネルギー線重合性組成物は、紫外線などの活性エネルギー線により短時間で
重合により硬化する特性を持ち、ポリエーテルポリオールの高い相溶性から透明性に優れ
、硬化物に強靭性、柔軟性、耐擦傷性、耐薬品性等の優れた特性を持たせることが可能に
なる。この点から、プラスチックへのコーティング剤や、レンズの成型剤、封止剤、接着
剤等の様々な分野に用いることができる。
【0082】
[ポリエステル系エラストマー]
本発明のオキシメチレン基を含むポリエーテルポリオールは、ポリエステル系エラスト
マーとして使用することができる。
ポリエステル系エラストマーとは、主として芳香族ポリエステルからなるハードセグメ
ントと、主として脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル又は脂肪族ポリカーボネート
からなるソフトセグメントから構成される共重合体である。
【0083】
本発明のオキシメチレン基を含むポリエーテルポリオールをソフトセグメントの構成成
分として使用すると、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステルを用いた場合に比べて、
柔軟性、耐水性、機械強度等の物性が優れる。また、公知のポリエーテルジオールと比較
しても、溶融時の流動性、つまりブロー成形、押出成形に適したメルトフローレートを有
し、且つ機械強度その他の物性とのバランスに優れたポリエーテルエステルエラストマー
となり、繊維、フィルム、シートをはじめとする各種成形材料、例えば弾性糸及びブーツ
、ギヤ、チューブ、パッキンなどの成形材料に好適に用いることができる。具体的には自
動車、家電部品等などのジョイントブーツや、電線被覆材等の用途に有効に適用すること
が可能である。
【0084】
[ポリエステル系樹脂]
本発明のオキシメチレン基を含むポリエーテルポリオールは、ポリエステル系樹脂の原
料として使用することができる。
ポリエステル系樹脂とは、熱可塑性ポリエステル樹脂(a1)由来の構造単位、多価カ
ルボン酸類由来 の構造単位、ポリオール由来の構造単位を含有するものであり、とりわ
け、熱可塑性ポリエステル樹脂、多価カルボン酸類、ポリオールを含む重合成分を重合さ
せることにより得られるものである。本発明のオキシメチレン基を含むポリエーテルポリ
オールは、ポリオール(a3)として使用することが可能である。本発明のオキシメチレ
ン基を含むポリエーテルポリオールは相溶性、引張耐性に優れることから、ポリオール(
a3)として使用すると、ポリエステル系樹脂の各原料成分と良好な相溶性を示すことで
均一に反応させることができ、得られるポリエステル系樹脂に良好な引張強度を付与する
ことが可能となる。
【0085】
また、本発明のオキシメチレン基を含むポリエーテルポリオールは、ガラス転移点が低
いため、これを原料として使用した上記ポリエステル系樹脂のガラス転移点を低くするこ
とができ、ポリエステル系樹脂と基材との密着性を向上させることができる。
上記ポリエステル系樹脂は粘着剤、粘着剤シートなどの粘着剤組成物、グラビアインキ
、フレキソインキ、オフセットインキ、スクリーンインキ等のインキ用バインダー、1液
系接着剤、2液系接着剤、ホットメルト型接着剤、湿気硬化型ホットメルト接着剤等の接
着剤組成物用途に適した樹脂組成物として調製することができる。すなわち、本ポリエス
テル系樹脂組成物は、上記ポリエステル系樹脂とともに、好ましくは、加水分解抑制剤(
B)、架橋剤(C)を含有するものであり、顔料(D)、ウレタン化触媒(E)、酸化防
止剤(F)等を含有するものであってもよい。なお、上記顔料(D)は、特に、上記ポリ
エステル系樹脂組成物をインキ用途に用いるときに好適に含有される。
【0086】
[コーティング用ポリエステル樹脂]
本発明のオキシメチレン基を含むポリエーテルポリオールは、コーティング用ポリエス
テル樹脂の原料として使用することができる。
コーティング用ポリエステル樹脂とは、カルボン酸、あるいはそのアルキルエステル化
合物(例えばメチルエステルなど)と、ポリアルコール化合物を用い、重縮合を行い得ら
れる重合体である。
【0087】
上記方法で得られるコーティング用ポリエステル樹脂は、コーティング用ポリエステル
樹脂と、架橋剤を有機溶剤に溶解した状態で使用される。使用する有機溶剤としては、使
用する有機溶剤としてはトルエン、キシレン、ソルベッソなどの芳香族系炭化水素類、酢
酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテ
ート等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン
、イソホロン等のケトン類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのエーテル類、等
が挙げられる。
【0088】
本発明のオキシメチレン基を含むポリエーテルポリオールは、相溶性に優れるため、コ
ーティング用ポリエステル樹脂の原料として使用すると、得られるポリエステル樹脂の種
々の有機溶剤に対する溶解性を向上させることができる。加えて、種々の有機溶媒への溶
解性が向上することから、これまでは溶解性が足りず使用できなかった環境負荷の低い溶
媒の選択も可能となる。
このようにして得られたコーティング用ポリエステル樹脂は、飲料缶、食品用缶、その
蓋、キャップ等に用いることができ る 金属板であればいずれへも、その内外面に塗装し
使用でき、例えばブリキ板、スズフリースチール、アルミ等を挙げることができる。これ
らの金属板にはあらかじめリン酸処 理、クロメート処理、リン酸クロメート処理、その
他の防錆処理剤などの防食、塗膜の密着性向上を目的とした表面処理を施したものを使用
しても良い。
【実施例0089】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に
限定されるものではない。
【0090】
<ポリエーテルポリオールの分子量及び分子量分布>
製造されたポリエーテルポリオールをGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ
ー)測定装置(東ソー株式会社製、HLC-8220GPC)により数平均分子量(Mn
)、重量平均分子量(Mw)を測定し、重量平均分子量Mw(GPC)/数平均分子量M
n(GPC)で、分子量分布(D)で分子量分布を算出した。
【0091】
GPCでの測定方法:下記条件によるGPC測定によりポリスチレン換算の重量平均分子
量Mwと数平均分子量Mnをそれぞれ求めた。
装置 :東ソー社製 HLC-8220
カラム :TSKgel Super HZM-N
(4.6mmI.D.×15cmL×4本)
レファレンスカラム:TSKgel Super H-RC
(6.0mmI.D.×15cmL×1本)
溶離液 :THF(テトラヒドロフラン)
流速 :1.0mL/min
カラム温度:40℃
RI検出器:RI(装置 HLC-8220内蔵)
【0092】
<オキシメチレン連結結合割合>
製造されたポリエーテルポリオール50mgを0.75mLのCDCl3に溶解し、4
00MHz 1H-NMR(日本電子株式会社製ECZ-400S)を測定した。4.5
ppm~4.8ppmの間に観測されたシングレットピークの積分値の総和(以下「A」
)、及び、4.5ppm~4.8ppmの間に観測されたシングレットピークのうち、最
も高磁場で観測されたピークの積分値(以下「B」)を測定し、(A-B)/Aを算出し
た。該(A-B)/Aを、ポリエーテルポリオールにおけるオキシメチレン連結結合割合
とした。
【0093】
<ポリウレタンの分子量>
ポリウレタンを濃度が0.07重量%になるようにジメチルアセトアミド(臭化リチウ
ム(無水) 約0.3重量%含有)に溶解し、GPC測定用試料とした。GPC装置〔東ソー
社製、製品名「HLC-8420」(カラム:TSKgel SuperAWM-H×2
本)〕を用いて、試料注入量:約40μL、カラム温度:40℃、測定溶媒(移動相):
ジメチルアセトアミド(臭化リチウム(無水) 約0.3重量%含有)、流量:0.6mL/
minの測定条件でポリウレタンの分子量測定を実施した。尚、ポリウレタンの分子量は
、市販の単分散ポリスチレン溶液を標準試料として用い、標準ポリスチレン換算での数平
均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)とした。
【0094】
<ポリウレタンの引張試験評価>
ポリウレタン溶液を500μmのアプリケーターでフッ素樹脂シート(フッ素テープニ
トフロン900、厚さ0.1mm、日東電工株式会社製)上に塗布し、80℃で1時間、
続いて100℃で0.5時間乾燥させた。さらに100℃の真空状態で0.5時間乾燥さ
せた後、23℃、60%RHの恒温恒湿下で12時間以上静置し、得られたポリウレタン
フィルムから1cm×15cmの試験片を切り出し、この試験片について、JIS K6
301(2010)に準じ、引張試験機(株式会社島津製作所製、製品名「AGS-X」
)を用いて、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分にて、温度23℃又は-
10℃の温度条件、相対湿度60%で引張試験を実施し、試験片が100%伸長した時点
での応力:100%モジュラス及び試験片が300%伸長した時点での応力:300%モ
ジュラスを測定した。この100%モジュラスが5MPa以下のものは柔軟性に優れてお
り、300%モジュラスが7MPaよりも高いものは弾力性に優れているといえる。また
、試験片が破断した際の伸度と強度も測定した。伸度が大きく、強度が高いものほど柔軟
性と機械強度に優れている。
【0095】
〔化合物略号〕
実施例および比較例において使用した化合物の略号は以下の通りである。
PTMG:ポリオキシテトラメチレングリコール(数平均分子量 652) 三菱ケミカ
ル株式会社製PFA:パラホルムアルデヒド 東京化成株式会社製
BG:1,4-ブタンジオール 三菱ケミカル株式会社製
MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(製品名「MILLIONATE
MT」) 東ソー株式会社製
U-830:ネオスタンU-830 日東化成株式会社製
DMF:脱水N,N-ジメチルホルムアミド 和光純薬工業株式会社製
DIAION RCP160M:スルホン酸系強酸性陽イオン交換樹脂 三菱ケミカル株
式会社製
モンモリロナイトK10:アルドリッチ社製
【0096】
[実施例1]
(ポリエーテルポリオール)
メカニカルスターラー、ディーンスタークトラップを具備した300mLガラス製4口
フラスコにPTMGを130g、PFAを5.0g、DIAION RCP160Mを4
.4g、トルエンを40mL入れ、窒素ガスで置換した。120℃のオイルバスにて該フ
ラスコを加熱し、還流条件下で水を除去しながら4時間常圧で反応した。ろ紙により吸引
濾過することで反応液から触媒を除去した。次いで圧力を1mmHgとし、140℃を上
限に5時間加熱し溶媒を除去することでポリエーテルポリオールを得た。結果を表1に示
した。
【0097】
(ポリウレタン)
得られたポリエーテルポリオールを原料とし、以下の操作に従い溶剤系ワンショット法
でポリウレタンを製造した。60℃のオイルバス上に、熱電対、冷却管及び撹拌装置を具
備したセパラブルフラスコを設置し、該セパラブルフラスコに、80℃に加温したポリエ
ーテルポリオールを69.85g、BGを5.72g、DMFを231.77g入れ、ウ
レタン化触媒としてU-830を0.0183g添加した。次いで、MDI21.57g
を添加し、セパラブルフラスコ内を窒素雰囲気下、60rpmで撹拌しながら1時間程度
で70℃に昇温した。70℃となった後さらに0.5時間程度撹拌した。その後、MDI
を分割添加して分子量を調整し、ポリウレタンを得た。ポリウレタンの評価結果を表1に
示した。
【0098】
[比較例1]
(ポリエーテルポリオール)
特許文献3に記載の方法でポリエーテルポリオールを合成した。メカニカルスターラー
、ディーンスタークトラップを具備した1Lガラス製セパラブルフラスコにPTMGを3
08g、PFAを13.0g、パラトルエンスルホン酸1水和物を0.31g、トルエン
を107mL入れ、窒素ガスで置換した。120℃を上限としてオイルバスにて該1Lガ
ラス製セパラブルフラスコを加熱し、撹拌しながら、還流条件下で水を除去しながら2時
間常圧で反応した。次いで、酢酸エチルと純水を用いて分液処理を実施して触媒を除いた
。有機相を分取し、減圧下加熱し、水分および溶媒を除去することでポリエーテルポリオ
ールを得た。結果を表1に示した。
【0099】
(ポリウレタン)
得られたポリエーテルポリオールを原料とし、実施例1と同様にしてポリウレタンを得
た。ポリウレタンの評価結果を表1に示した。
【0100】
[比較例2]
(ポリエーテルポリオール)
特許文献1に記載の方法でポリエーテルポリオールを合成した。磁気攪拌子、ディーン
スタークトラップを具備した1Lガラス製4口フラスコにPTMGを250g、PFAを
11.6g、モンモリロナイトK10を13.9g、シクロヘキサンを193mL入れ、
窒素ガスで置換した。90℃を上限としたオイルバスにて該1Lガラス製4口フラスコを
加熱し、攪拌しながら、還流条件下で水を除去しながら4時間常圧で反応した。次いで、
グラスフィルターにて支えたセライト床を通した濾過にてモンモリロナイトK10を除去
し、反応液を得た。
【0101】
次に、オイルバス、磁気撹拌子、凝縮水トラップ付き蒸気源、窒素パージおよびリービ
ッヒ冷却器を具備した4つロフラスコに、90mLの脱イオン水および該反応液を入れた
。12.8gの水酸化カルシウムを加えながら、撹拌下、水蒸気を導入し、水蒸気蒸留に
より950mLの水を回収した。次いでフラスコの内容物を80℃まで冷却し、トルエン
50mLを添加し、ろ紙を用いた減圧濾過で固形分を除去し、分液ロートに移した。上相
を分取することにより、ポリエーテルポリオールを含有する有機相を得た。該有機相に対
し、120℃において窒素ガスでパージし、ロータリーエバポレーターにてトルエンと水
を減圧留去し、微量の水を含む粗ポリエーテルポリオールを得た。該粗ポリエーテルポリ
オールにトルエンを130mL、酸化カルシウムを10.3g加え、一晩撹拌し、スラリ
ーとした。該スラリーをセライト床を通して濾過し、120℃にて揮発成分を減圧留去す
ることでポリエーテルポリオールを得た。結果を表1に示した。
【0102】
(ポリウレタン)
得られたポリエーテルポリオールを原料とし、実施例1と同様にしてポリウレタンを得
た。ポリウレタンの評価結果を表1に示した。
【0103】
【0104】
上記表から明らかなように、本発明のポリエーテルポリオールは、該ポリエーテルポリ
オールを原料としてポリウレタンを製造すると、効率的にポリウレタンを製造することが
でき、製造されたポリウレタンは引張強さ、切断時伸び共に向上したポリウレタンとなる
、ポリエーテルポリオールである。一方、比較例のポリエーテルポリオールを原料として
ポリウレタンを製造すると、引張強さが低下しているか、又は切断時伸びが劣っているポ
リウレタンとなっている。さらに比較例1のポリエーテルポリオールの数平均分子量は実
施例1のポリエーテルポリオールの数平均分子量に比し99.7%でありほぼ同レベルで
あるが、それぞれのポリエーテルポリオールを使用して製造した比較例1のポリウレタン
の数平均分子量は実施例1のポリウレタンの数平均分子量に比し54%に低下している。
以上より、本発明のポリエーテルポリオールはウレタン原料との相溶性に優れ、ウレタン
の原料として反応性が良好で、数平均分子量も比較例1のポリエーテルポリオールを使用
したポリウレタンと比較して格段に上昇している。又、ポリウレタンとした際に、優れた
引張耐性を発現できる、ポリエーテルポリオールであることが明らかであり、弾性繊維、
人工皮革等の各種用途に使用されるポリウレタンやポリエステルの原料として期待できる
。