(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108199
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】切削装置、読取装置
(51)【国際特許分類】
B24B 49/12 20060101AFI20240805BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20240805BHJP
B24B 49/02 20060101ALI20240805BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20240805BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B24B49/12
B24B27/06 M
B24B49/02 Z
B23Q17/00 F
H01L21/78 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012429
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】渡瀬 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】笠井 剛史
【テーマコード(参考)】
3C029
3C034
3C158
5F063
【Fターム(参考)】
3C029EE13
3C029EE16
3C029EE20
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB73
3C034BB92
3C034BB93
3C034CA22
3C034CB13
3C034DD10
3C034DD20
3C158AA03
3C158AC02
3C158BA09
3C158BB06
3C158BB08
3C158BC03
3C158CB03
3C158CB04
5F063AA28
5F063AA43
5F063AA48
5F063BA43
5F063BA45
5F063BA48
5F063DD02
5F063DD03
5F063DD06
5F063DD17
5F063DD18
5F063DD19
5F063DE11
5F063DE16
5F063DE32
5F063EE21
5F063FF01
5F063FF05
(57)【要約】
【課題】装着された切削ブレードの種別情報を確実かつ容易に取得する。
【解決手段】切削装置であって、種別情報を示す識別コードが外面に付された切削ブレードで被加工物を切削できる切削ユニットと、該被加工物を保持するチャックテーブルと、検出ユニットと、コントローラと、を備え、該検出ユニットは、該切削ブレードが進入できる溝状のブレード進入部が形成されたベースと、該ベースの該ブレード進入部の一方の側壁に設けられ、該ブレード進入部に進入した該切削ブレードに向けて光を照射する発光部と、該ベースの該ブレード進入部の該一方の側壁に設けられ、該切削ブレードで反射した該光を受光する受光部と、を具備し、該コントローラは、該発光部で生じ、該切削ブレードに付された該識別コードに照射され、該切削ブレードで反射され、該受光部で受光された該光に基づいて該識別コードを読み取り、該切削ブレードの該種別情報を取得する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状の砥石部を備えるとともに種別情報を示す識別コードが外面に付された切削ブレードを装着可能であり、該切削ブレードを回転させて該砥石部で被加工物を切削できる切削ユニットと、
該切削ユニットで切削される該被加工物を保持するチャックテーブルと、
検出ユニットと、
該切削ユニットと、該チャックテーブルと、該検出ユニットと、を制御するコントローラと、を備え、
該検出ユニットは、
該切削ブレードが進入できる溝状のブレード進入部が形成されたベースと、
該ベースの該ブレード進入部の一方の側壁に設けられ、該ブレード進入部に進入した該切削ブレードに向けて光を照射する発光部と、
該ベースの該ブレード進入部の該一方の側壁に設けられ、該切削ブレードで反射した該光を受光する受光部と、を具備し、
該コントローラは、該発光部で生じ、該切削ブレードに付された該識別コードに照射され、該切削ブレードで反射され、該受光部で受光された該光に基づいて該識別コードを読み取り、該切削ブレードの該種別情報を取得し、取得した該切削ブレードの該種別情報を記憶することを特徴とする切削装置。
【請求項2】
該コントローラは、該受光部で受光された該光に基づく電気信号からデジタル信号を生成し、該デジタル信号に基づいて該識別コードを読み取ることを特徴とする請求項1に記載の切削装置。
【請求項3】
該コントローラは、該被加工物を切削するときに該切削ユニットが該切削ブレードを回転させる回転数に対応したサンプリング周波数で該電気信号をサンプリングすることにより該デジタル信号を生成することを特徴とする請求項2に記載の切削装置。
【請求項4】
該コントローラは、該識別コードから取得された該切削ブレードの該種別情報に基づいて、該切削ブレードが該被加工物の切削に適しているか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の切削装置。
【請求項5】
該検出ユニットは、該ベースの該ブレード進入部の他方の側壁に設けられ、該発光部から発せられた該光を受光する第2受光部を更に備え、
該コントローラは、該発光部で生じ、該切削ブレードの該砥石部に一部が遮られて、または、遮られずに該第2受光部で受光された該光の透過量に基づいて該切削ブレードの該砥石部の先端位置を検出する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の切削装置。
【請求項6】
該検出ユニットは、該ベースの該ブレード進入部の他方の側壁に設けられ、対面する該受光部に向けて光を照射できる第2発光部を更に備え、
該コントローラは、該第2発光部で生じ、該切削ブレードの該砥石部に一部が遮られて、または、遮られずに該受光部で受光された該光の透過量に基づいて該切削ブレードの該砥石部の先端位置を検出する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の切削装置。
【請求項7】
種別情報を示す識別コードを備えた移動体の該識別コードを読み取る読取装置であって、
移動している該移動体の該識別コードに向けて光を発光する発光部と、
該識別コードで反射した該光を受光する受光部と、
該受光部で受光した該光の受光量を電圧信号に変換する光電変換部と、
該光電変換部で変換された該光の該電圧信号をデジタル信号に変換するデジタル変換部と、を備え、
該デジタル信号から該移動体の該種別情報を取得することを特徴とする読取装置。
【請求項8】
種別情報を示す識別コードを備えた回転体の該識別コードを読み取る読取装置であって、
回転している該回転体の該識別コードに向けて光を発光する発光部と、
該識別コードで反射した該光を受光する受光部と、
該受光部で受光した該光の受光量を電圧信号に変換する光電変換部と、
該光電変換部で変換された該光の該電圧信号をデジタル信号に変換するデジタル変換部と、を備え、
該デジタル信号から該回転体の該種別情報を取得することを特徴とする読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を切削する切削ブレードが装着された切削ユニットを備え、切削ブレードに付された識別コードを読み取って種別情報を取得できる切削装置と、移動体に付された識別コードを読み取って種別情報を取得できる読取装置と、に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に搭載されて使用されるデバイスチップは、シリコンウェーハ等のウェーハやパッケージ基板、セラミックス基板等から形成される。交差する複数の分割予定ラインをウェーハ等の表面に設定し、分割予定ラインにより区画された各領域にデバイスを形成し、その後、ウェーハ等を分割予定ラインに沿って分割すると個々のデバイスチップを形成できる。
【0003】
ウェーハ等の分割には、例えば、円環状の切削ブレードが装着された切削ユニットを備える切削装置が用いられる(特許文献1参照)。切削ブレードは、例えば、アルミニウム等の金属材料で構成される円環状の基台を有する。そして、この基台の外周には、Niめっき等の方法で砥石部が形成されている。砥石部は、金属等の材料で構成された結合材と、結合材中に無数に分散固定されたダイヤモンド等で構成された砥粒と、を含む。
【0004】
切削装置では、多種多様な被加工物が加工される。そして、各種の被加工物にそれぞれ適した種別の切削ブレードが存在しており、切削ユニットには加工が予定された被加工物の切削に適した種別の切削ブレードが選択され装着される。切削装置のコントローラ(制御ユニット)には、装着された切削ブレードの種別に関する情報(種別情報)が登録される。そして、切削装置のコントローラは、装着された切削ブレードの種別に適した条件で各構成要素を動作させ、被加工物を最適な条件で切削する。
【0005】
従来、切削ブレードの種別情報をコントローラに入力する作業は、オペレータ(作業者)が手作業により実施していた。しかしながら、この方法ではオペレータが間違って正しくない情報を入力することがあり、切削ブレードの種別情報が正しくコントローラに入力されないことがあった。この場合、コントローラは不適切な条件で各構成要素を作動させて切削ブレードで被加工物を切削するため、所定の品質の加工結果が得られないとの問題があった。
【0006】
そこで、切削ブレード、または、切削ブレードを収納するブレードケースに切削ブレードの種別情報を示す識別コード(バーコード、2次元コード等)を付すとともに、切削装置の外面に識別コードの読取装置を設ける方法が開発された。この方法では、切削ブレードを切削ユニットに装着するときに識別コードを読取装置に読み取らせることにより、コントローラに切削ブレードの種別情報を自動で登録できる。(特許文献2,3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-87282号公報
【特許文献2】特開2001-144034号公報
【特許文献3】特開2014-143323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、識別コードを読取装置に読み取らせた後で誤って別の切削ブレードを切削ユニットに装着してしまうことがある。また、ブレードケースに付された識別コードが示す種別とは異なる種別の切削ブレードが誤ってそのブレードケースに収容されることがある。
【0009】
これらの場合でも、識別コードが示す種別の切削ブレードに適した条件で被加工物の切削が実施される。その結果、実際に切削ユニットに装着された切削ブレードに適さない条件で被加工物の切削が実施されることになる。また、そもそも識別コードを読み取らせる作業をオペレータが実施することは手間であり、識別コードの読取装置を切削装置の外面に組み込む際に少なくないコストがかかる。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、装着された切削ブレードの種別情報を確実かつ容易に取得できる切削装置と、移動体に付された識別コードを確実かつ容易に読み取れる読取装置と、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によると、円環状の砥石部を備えるとともに種別情報を示す識別コードが外面に付された切削ブレードを装着可能であり、該切削ブレードを回転させて該砥石部で被加工物を切削できる切削ユニットと、該切削ユニットで切削される該被加工物を保持するチャックテーブルと、検出ユニットと、該切削ユニットと、該チャックテーブルと、該検出ユニットと、を制御するコントローラと、を備え、該検出ユニットは、該切削ブレードが進入できる溝状のブレード進入部が形成されたベースと、該ベースの該ブレード進入部の一方の側壁に設けられ、該ブレード進入部に進入した該切削ブレードに向けて光を照射する発光部と、該ベースの該ブレード進入部の該一方の側壁に設けられ、該切削ブレードで反射した該光を受光する受光部と、を具備し、該コントローラは、該発光部で生じ、該切削ブレードに付された該識別コードに照射され、該切削ブレードで反射され、該受光部で受光された該光に基づいて該識別コードを読み取り、該切削ブレードの該種別情報を取得し、取得した該切削ブレードの該種別情報を記憶することを特徴とする切削装置が提供される。
【0012】
好ましくは、該コントローラは、該受光部で受光された該光に基づく電気信号からデジタル信号を生成し、該デジタル信号に基づいて該識別コードを読み取る。
【0013】
さらに、好ましくは、該コントローラは、該被加工物を切削するときに該切削ユニットが該切削ブレードを回転させる回転数に対応したサンプリング周波数で該電気信号をサンプリングすることにより該デジタル信号を生成する。
【0014】
または、好ましくは、該コントローラは、該識別コードから取得された該切削ブレードの該種別情報に基づいて、該切削ブレードが該被加工物の切削に適しているか否かを判定する。
【0015】
より好ましくは、該検出ユニットは、該ベースの該ブレード進入部の他方の側壁に設けられ、該発光部から発せられた該光を受光する第2受光部を更に備え、該コントローラは、該発光部で生じ、該切削ブレードの該砥石部に一部が遮られて、または、遮られずに該第2受光部で受光された該光の透過量に基づいて該切削ブレードの該砥石部の先端位置を検出する。
【0016】
または、好ましくは、該検出ユニットは、該ベースの該ブレード進入部の他方の側壁に設けられ、対面する該受光部に向けて光を照射できる第2発光部を更に備え、該コントローラは、該第2発光部で生じ、該切削ブレードの該砥石部に一部が遮られて、または、遮られずに該受光部で受光された該光の透過量に基づいて該切削ブレードの該砥石部の先端位置を検出する。
【0017】
また、本発明の他の一態様によると、種別情報を示す識別コードを備えた移動体の該識別コードを読み取る読取装置であって、移動している該移動体の該識別コードに向けて光を発光する発光部と、該識別コードで反射した該光を受光する受光部と、該受光部で受光した該光の受光量を電圧信号に変換する光電変換部と、該光電変換部で変換された該光の該電圧信号をデジタル信号に変換するデジタル変換部と、を備え、該デジタル信号から該移動体の該種別情報を取得することを特徴とする読取装置が提供される。
【0018】
本発明のさらに他の一態様によると、種別情報を示す識別コードを備えた回転体の該識別コードを読み取る読取装置であって、回転している該回転体の該識別コードに向けて光を発光する発光部と、該識別コードで反射した該光を受光する受光部と、該受光部で受光した該光の受光量を電圧信号に変換する光電変換部と、該光電変換部で変換された該光の該電圧信号をデジタル信号に変換するデジタル変換部と、を備え、該デジタル信号から該回転体の該種別情報を取得することを特徴とする読取装置が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様に係る切削装置は、切削ユニットと、チャックテーブルと、検出ユニットと、これらを制御するコントローラ(制御ユニット)と、を備える。そして、検出ユニットは、切削ブレードが進入できる溝部が形成されたベースを備える。検出ユニットは、さらに、ベースの溝部の一方の側壁に設けられ溝部に進入した切削ブレードに向けて光を発光する発光部と、ベースの溝部のこの一方の側壁に設けられ切削ブレードで反射した光を受光する受光部と、を具備する。
【0020】
コントローラは、この発光部で生じ、切削ブレードに付された識別コードに照射され、切削ブレードで反射され、受光部で受光された光に基づいて識別コードを読み取る。そして、切削ブレードの種別情報を取得する。このように、本発明の一態様に係る切削装置は、切削ユニットに装着済みの切削ブレードに付された識別コードを自身で読み取って識別情報を取得できる。そのため、オペレータ等が特段の手間をかけることなく、切削ユニットに装着された切削ブレードの識別情報が容易かつ確実に取得される。
【0021】
また、識別情報の取得に使用される検出ユニットは切削ブレードの砥石部の先端の位置を検出する際にも使用可能である。そのため、本発明の一態様に係る切削装置は、検出ユニットのほかに刃先検出ユニットを備える必要がなく、検出ユニットと刃先検出ユニットの両方を備える場合と比較して、安価かつ容易な構成で実現できる。
【0022】
したがって、本発明の一態様によると、装着された切削ブレードの種別情報を確実かつ容易に取得できる切削装置と、移動体に付された識別コードを確実かつ容易に読み取れる読取装置と、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】
図2(A)は、切削ブレードの表側を模式的に示す斜視図であり、
図2(B)は、切削ブレードの裏側を模式的に示す平面図である。
【
図3】切削ユニットと、読取装置と、を模式的に示す斜視図である。
【
図4】切削ブレードに付された識別コードを読み取る読取装置を模式的に示す断面図である。
【
図5】切削ブレードの砥石部の先端位置の検出に使用されている読取装置を模式的に示す断面図である。
【
図6】切削ブレードの砥石部の先端位置の検出に使用されている他の例に係る読取装置。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。まず、
図1を用いて、本実施形態に係る切削装置について説明する。
図1は、シリコン、シリコンカーバイド(SiC)、ヒ化ガリウム(GaAs)若しくは、その他の半導体等の材料、または、サファイア、ガラス、石英等の材料からなる略円板状の基板等の被加工物11を切削する切削装置2である。
【0025】
被加工物11の表面にはIC(Integrated Circuit)等の複数のデバイスが形成されている。最終的に、被加工物11がデバイス毎に分割されることで、個々のデバイスチップが形成される。例えば、切削装置2に搬入される被加工物11は、予め、環状のフレーム15の開口を塞ぐようにフレーム15に貼られたテープ13に貼着される。そして、被加工物11はこの状態で切削される。被加工物11が適切に切削される場合、後述の切削ブレードの砥石部の刃先はテープ13に達するが、テープ13は完全には切断されない。
【0026】
図1に示す通り、切削装置2は、各構成要素を支持する装置基台4を備えている。装置基台4の中央上部には、X軸移動テーブル10と、X軸移動テーブル10をX軸方向(加工送り方向)に移動させるX軸移動機構6と、X軸移動機構6を覆う排水路20と、が設けられている。X軸移動機構6は、X軸方向に平行な一対のX軸ガイドレール8を備えており、X軸ガイドレール8には、X軸移動テーブル10がスライド可能に取り付けられている。
【0027】
X軸移動テーブル10の下面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、X軸ガイドレール8に平行なX軸ボールねじ12が螺合されている。X軸ボールねじ12の一端部には、X軸パルスモータ14が連結されている。X軸パルスモータ14でX軸ボールねじ12を回転させると、X軸移動テーブル10はX軸ガイドレール8に沿ってX軸方向に移動する。
【0028】
X軸移動テーブル10上には、被加工物11を吸引、保持するためのチャックテーブル18がテーブルベース16を介して設けられている。チャックテーブル18は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、チャックテーブル18の上面に垂直な回転軸の周りに回転可能である。また、チャックテーブル18は、上述したX軸移動機構6によりX軸方向に送られる。
【0029】
チャックテーブル18の表面(上面)は、被加工物11を吸引、保持する保持面18bとなる。この保持面18bは、チャックテーブル18の内部に形成された流路(不図示)を介して吸引源(不図示)に接続されている。保持面18bの周囲には、テープ13を介して被加工物11を保持する環状のフレーム15を固定するためのクランプ18aが配設されている。
【0030】
装置基台4の上面には、被加工物11を切削する2つの切削ユニット42を支持する支持構造22が、X軸移動機構6を跨ぐように配置されている。支持構造22の前面上部には、2つの切削ユニット42をY軸方向(割り出し送り方向)と、Z軸方向(切り込み送り方向)と、に移動させる移動ユニット24が設けられている。
【0031】
支持構造22の前面には、Y軸方向に平行な一対のY軸ガイドレール26が設けられている。Y軸ガイドレール26には、切削ユニット42のそれぞれに対応する2つのY軸移動プレート28がスライド可能に取り付けられている。それぞれのY軸移動プレート28の裏面側(後面側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Y軸ガイドレール26に平行なY軸ボールねじ30が螺合されている。
【0032】
Y軸ボールねじ30の一端部には、Y軸パルスモータ32が連結されている。Y軸パルスモータ32でY軸ボールねじ30を回転させると、対応するY軸移動プレート28がY軸ガイドレール26に沿ってY軸方向に移動する。すなわち、Y軸ガイドレール26、Y軸移動プレート28、Y軸ボールねじ30、及びY軸パルスモータ32は、割り出し送りユニットを構成する。
【0033】
また、それぞれのY軸移動プレート28の表面(前面)には、Z軸方向に平行な一対のZ軸ガイドレール34が設けられている。それぞれのZ軸ガイドレール34には、Z軸移動プレート36がスライド可能に取り付けられている。Z軸移動プレート36の裏面側(後面側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Z軸ガイドレール34に平行なZ軸ボールねじ38が螺合されている。Z軸ボールねじ38の一端部には、Z軸パルスモータ40が連結されている。
【0034】
Z軸パルスモータ40でZ軸ボールねじ38を回転させれば、Z軸移動プレート36は、Z軸ガイドレール34に沿ってZ軸方向(切り込み送り方向)に移動する。すなわち、Z軸ガイドレール34、Z軸移動プレート36、Z軸ボールねじ38、及びZ軸パルスモータ40は、切り込み送りユニットを構成する。そして、割り出し送りユニットと、切り込み送りユニットと、により移動ユニット24が構成される。
【0035】
2つのZ軸移動プレート36のそれぞれの下部には、チャックテーブル18に保持された被加工物11を切削する切削ユニット42と、被加工物11を撮像できる撮像ユニット(カメラ)44と、が固定されている。Y軸移動プレート28をY軸方向に移動させれば、切削ユニット42及び撮像ユニット44はY軸方向(割り出し送り方向)に移動し、Z軸移動プレート36をZ軸方向に移動させれば、切削ユニット42及び撮像ユニット44はZ軸方向(切り込み送り方向)に移動する。
【0036】
切削ユニット42は、チャックテーブル18の保持面18bに平行な方向であるY軸方向に沿ったスピンドル47(
図4参照)と、スピンドル47の基端側に接続されたモータ等の回転駆動源(不図示)と、を備える。スピンドル47の先端には、円環状の砥石部74(
図2(A)等参照)を備える切削ブレード46が装着される。
【0037】
図2(A)は、切削ブレード46の表側を模式的に示す斜視図である。また、
図2(B)は、切削ブレード46の裏側を模式的に示す平面図である。
図4には、スピンドル47の先端に固定された切削ブレード46を模式的に示す側面図が模式的に示されている。
【0038】
切削ブレード46は、アルミニウム等の金属で形成された円盤状の基台70を有している。基台70の中央部には、この基台70を貫通する略円形の装着穴72が設けられている。基台70の外周には、砥石部74が固定されている。砥石部74は、ダイヤモンド等の砥粒と、該砥粒を分散固定する結合材と、を有する。結合材は、例えば、金属または樹脂等で形成される。
【0039】
スピンドル47の先端には、切削ブレード46を裏面70b側から支持するブレードマウント機構45が固定されている。ブレードマウント機構45は、中央に円柱状のボス部(不図示)を備え、ボス部の基端側の周囲にフランジ部を備える。
【0040】
切削ブレード46が切削ユニット42に装着されるとき、装着穴72にスピンドル47の先端に装着されたブレードマウント機構45のボス部が通される。そして、ボス部の先端には固定ナット43が締め込まれ、固定ナット43と、ブレードマウント機構45と、に挟まれて切削ブレード46が固定される。スピンドル47に接続された回転駆動源を作動させてスピンドル47を回転させると、切削ブレード46はスピンドル47の周りに回転する。
【0041】
被加工物11を切削する際には、予め撮像ユニット44により被加工物11の表面に形成されたデバイス、パターン等が検出されることで被加工物11の表面に設定された分割予定ラインの位置が認識される。そして、分割予定ラインの伸長方向が切削装置2の加工送り方向に合うように、チャックテーブル18を回転させる。そして、移動ユニット24を作動させて、被加工物11の分割予定ラインの延長線の上方に切削ブレード46を位置付ける。
【0042】
そして、切削ブレード46を回転させるとともに、切削ブレード46の砥石部74の下端が被加工物11の裏面(下面)よりも下方の高さ位置となるように切削ユニット42の高さを調整する。Z軸パルスモータ40を含む切り込み送りユニットは、例えば、切削ユニット42の切り込み送り方向における位置を認識する位置認識ユニット(不図示)をさらに備える。切削装置2は、スケール等を含む位置認識ユニットを用いて切削ユニット42を所定の高さ位置に位置付ける。
【0043】
そして、加工送りユニットを作動させてチャックテーブル18を加工送り方向に移動させて加工送りし、切削ブレード46を被加工物11に切り込ませて被加工物11を切削する。被加工物11を一つの分割予定ラインに沿って切削した後、割り出し送りユニットを作動させて切削ユニット42を割り出し送りし、その後、再びチャックテーブル18を加工送りして他の分割予定ラインに沿って被加工物11を切削する。切削装置2は、このように、被加工物11を次々に切削する。
【0044】
切削ユニット42は、チャックテーブル18に保持された被加工物11及び切削ブレード46に純水等の切削水を供給する切削水供給ノズル48を備える。切削ブレード46で被加工物11を切削すると、被加工物11と切削ブレード46の刃先との間に摩擦熱が生じる。また、被加工物11及び切削ブレード46から切削屑が発生する。被加工物11の切削時に被加工物11及び切削ブレード46に切削水を供給すると、摩擦熱や加工屑を除去できる。
【0045】
図1に示す通り、切削装置2は、コントローラ(制御ユニット)52をさらに備えている。コントローラ52は、切削ユニット42、チャックテーブル18、各移動機構、撮像ユニット44、検出ユニット(読取装置)50(後述)等の切削装置2の各構成要素を制御する機能を有する。
【0046】
コントローラ52の機能は、例えば、装置制御用コンピュータのソフトウェアとして実現される。すなわち、コントローラ52は、CPU等の処理装置や、フラッシュメモリ等の記憶装置を含むコンピュータによって構成される。記憶装置に記憶されるプログラム等のソフトウェアに従い処理装置を動作させることによって、コントローラ52は、ソフトウェアと処理装置(ハードウェア資源)とが協働した具体的手段として機能する。
【0047】
切削装置2では、多種多様な被加工物11が様々な目的で加工される。切削ブレード46にも多種多様な種別が存在しており、被加工物11や加工目的に合った適切な種別の切削ブレード46が選択されて切削ユニット42に装着される。コントローラ(制御ユニット)52には、装着された切削ブレード46の種別に関する情報(種別情報)が登録される。そして、切削装置2のコントローラ52は、装着された切削ブレード46の種別に適した条件で各構成要素を動作させ、被加工物11を最適な条件で切削する。
【0048】
従来、切削ブレード46の種別情報をコントローラ52に入力する作業は、オペレータ(作業者)が手作業により実施していた。しかしながら、この方法ではオペレータが間違って正しくない情報を入力することがあり、切削ブレード46の種別情報が正しくコントローラ52に入力されないことがあった。この場合、コントローラ52は不適切な条件で各構成要素を作動させて切削ブレード46で被加工物11を切削するため、所定の品質の加工結果が得られないとの問題があった。
【0049】
そこで、切削ブレード46に種別情報や個体情報、製造番号等を示す識別コード(バーコード、2次元コード等)を付すとともに、切削装置2の外面に、識別コードの読取装置を設けるとの方法が開発された。
図2(B)には、切削ブレード46の基台70の裏面70bに設けられた識別コード(バーコード)76が模式的に示されている。識別コード76が付された切削ブレード46を切削ユニット42に装着するときに識別コード76を読取装置に読み取らせることにより、コントローラ52に切削ブレード46の種別情報を自動で登録できる。
【0050】
また、識別コード76は、切削ブレード46ではなく、切削ブレード46を収容するブレードケースに付されても良い。この場合、ブレードケースに収容された切削ブレード46をブレードケースから取り出して切削ユニット42に装着する際、読取装置に識別コード76を読み取らせることにより、コントローラ52に切削ブレード46の種別情報を自動で登録できる。
【0051】
しかしながら、識別コード76を読取装置に読み取らせた後で誤って別の切削ブレード46を切削ユニット42に装着してしまうことがある。また、本来収容されるべきではない種別の切削ブレード46がブレードケースに収容されることがある。これらの場合でも、識別コード76が示す種別の切削ブレード46に適した条件で被加工物11の切削が実施される。そのため、実際に切削ユニット42に装着された切削ブレード46に適さない条件で被加工物11の切削が実施される。
【0052】
そこで、本実施形態に係る切削装置2は、切削ユニット42に装着された切削ブレード46に付された識別コード76を読み取り、切削ブレード46の識別情報を自動的に取得する。以下、切削ブレード46に付された識別コード76の読取装置に係る構成を中心に切削装置2の説明を続ける。
【0053】
図3には、検出ユニット50を模式的に示す斜視図が含まれており、
図4には、検出ユニット50を模式的に示す側面図が含まれている。検出ユニット50のベース(本体)54には、上方に開口した溝状のブレード進入部56が設けられている。検出ユニット50を使用する際には、切削ブレード46をブレード進入部56の上方に位置付け、切り込み送りユニットを作動させて切削ブレード46を下降させて、ブレード進入部56に切削ブレード46を進入させる。
【0054】
ブレード進入部56の一方の側壁には、ブレード進入部56に進入した切削ブレード46に向けて光を照射する発光部58が設けられている。例えば、発光部58は、LED等の光源78に光ファイバーを介して接続された投光窓であり、光源78で生じた光を切削ブレード46に向けて照射する。
【0055】
また、ブレード進入部56の同じ一方の側壁には、切削ブレード46で反射したこの光を受光する受光部68が設けられている。例えば、受光部68は、発光部58の投光窓を囲む受光窓と、受光窓に到達した光を検知する図示しない光センサと、を備える。光センサは、フォトダイオードを備える。光センサは、例えば、CMOSセンサ、CCDセンサ等である。ただし、光センサはこれに限定されない。
【0056】
この光センサは、例えば、検出ユニット50のベース54に内蔵される。または、光センサは、ベース54の外部に設けられ、光ファイバーにより受光窓に接続されてもよい。受光部68の光センサはコントローラ52に接続されており、受光部68は受光した光の強度に応じた電気信号をコントローラ52に送信する。例えば、受光部68で受光された光に基づく当該電気信号は、アナログ波形となる。
【0057】
例えば、切削ブレード46に付された識別コード76は、
図2(B)に示される通り切削ブレード46の周方向に沿って並ぶ複数のバーで構成されるバーコードである。この場合、識別コード76を構成する各バーでは光が比較的弱く反射され、各バーの間では光が強く反射される。そのため、切削ブレード46から反射される光には、識別コード76の形状が反映される。
【0058】
すなわち、回転する切削ブレード46に光が照射され切削ブレード46で反射される光を受光部68で観測する場合、観測される光の強度は、バーに光が当たるときに強度が低く、バーに光が当たらないときに強度が高くなる。そのため、一定の速度で切削ブレード46が回転する場合、受光部68で受光される光の強度の時間変化には、バーコードの形状がそのまま反映される。したがって、受光部68で受光される光からバーコードの形状を判別できる。
【0059】
特に、識別コード76がバーコードである場合、バーコードを構成する各バーが切削ブレード46の回転中心を中心とした放射線状であることが好ましい。この場合、発光部58から発せられた光が識別コード76に当たる限り、切削ブレード46がいずれの高さに位置付けられていても受光部68で受光される光の強度の時間変化にはバーコードの形状が同様に反映される。
【0060】
コントローラ52は、受光部68から送られてきた電気信号をデジタル信号に変換して識別コード76を読み取り、情報を取得する変換部80を備える。換言すると、コントローラ52は、受光部68が受光した光に基づくデジタル信号を生成し、このデジタル信号に基づいて識別コード76を読み取る。識別コード76には切削ユニット42に装着された切削ブレード46の種別に関する情報(種別情報)が格納されているため、変換部80は識別コード76を読み取って切削ブレード46の種別情報を取得する。
【0061】
なお、後述の通り、検出ユニット50では識別コード76が読み取られるときに切削ブレード46の砥石部74の下端の位置が検出されてもよい。この場合、検出ユニット50のブレード進入部56に進入する切削ブレード46は、被加工物11の切削時と同様の回転速度で回転していることが望ましい。例えば、切削ブレード46は、被加工物11の切削時に毎分3万回転程度の回転数で回転する。そして、識別コード76は、この回転数の逆数にあたる時間毎に受光部68に対面する。
【0062】
そのため、コントローラ52は、被加工物11を切削するときに切削ユニット42が切削ブレード46を回転させる回転数に対応したサンプリング周波数で受光部68から送信された電気信号をサンプリングしてデジタル信号を生成する。ただし、サンプリング周波数は、識別コード76の適切な読み取りが可能な範囲で適宜決定されるとよい。
【0063】
ここで、識別コード76を検出ユニット50で検出する際の回転している切削ブレード46の実際の回転数は、実測することで求められる。例えば、識別コード76の付された領域の内部に、または、識別コード76に隣接して、専用のマーク(記号、図、絵、模様、文字等)を切削ブレード46に付しておく。このマークを検出ユニット50で検出し、その応答時間、検出周期等に基づいて切削ブレード46の回転数を算出する。
【0064】
コントローラ52は、各種の情報を記憶し、記憶する情報を要求に応じて提供できる記憶部84を備える。記憶部84には、例えば、切削装置2の各構成要素を制御するためのプログラムや、各構成要素の動作内容・条件等が記憶される。また、記憶部84は、切削装置2で切削できる被加工物11の種別を記憶し、各種の被加工物11に対して実施できる切削の条件等も記憶する。記憶部84は、切削ユニット42に装着された切削ブレード46の種別情報も記憶する。
【0065】
切削装置2の使用者は、被加工物11を切削装置2に搬入する際に被加工物11の切削条件を選択する。例えば、使用者は、記憶部84に記憶された複数の切削条件の中から適切な切削条件を選択し、記憶部84からこの切削条件を読み出す。または、切削装置2の各構成要素の動作内容の各項目を設定し、被加工物11の種別や切削に適した切削ブレード46の種別とともに新しい切削条件として記憶部84に登録する。
【0066】
また、コントローラ52は、識別コード76から取得された切削ブレード46の種別情報に基づいて、切削ブレード46が被加工物11の切削に適しているか否かを判定する判定部82を有してもよい。換言すると、コントローラ52は、切削ブレード46の識別情報に基づいて、切削ブレード46が被加工物11の切削に適しているか否かを判定してもよい。
【0067】
例えば、被加工物11を切削装置2で切削する際、コントローラ52では搬入される被加工物11の種別や被加工物11に実施される切削の条件等が記憶部84に登録され、または、記憶部84から読み出される。このとき、被加工物11の切削に使用されるべき切削ブレード46の種別が記憶部84に登録され、または、記憶部84から読み出される。
【0068】
そこで、コントローラ52の判定部82は、識別コード76から取得された切削ブレード46の種別情報と、被加工物11の切削に使用されるべき切削ブレード46の種別と、を照合する。そして、両者が一致するときに切削ユニット42に装着された切削ブレード46が適切であると判定し、両者が一致しないときに切削ユニット42に装着された切削ブレード46が不適切であると判定する。
【0069】
切削ユニット42に適切な種別の切削ブレード46が装着されていることが確認された場合、後述のセットアップ工程を実施して被加工物11の切削を準備し、チャックテーブル18に保持された被加工物11を切削ブレード46で切削する。
【0070】
その一方で、切削ユニット42に不適切な種別の切削ブレード46が装着されていることが確認された場合、切削装置2は、被加工物11の切削を実施しない。これにより、被加工物11が不適切な切削ブレード46により切削されることが防止されるため、被加工物11や切削装置2の損傷が抑制される。
【0071】
さらに、切削装置2は、切削ユニット42に不適切な切削ブレード46が装着されている場合、その旨を報知する警報を発出してもよい。例えば、切削装置2が表示パネルを備える場合、表示パネルに警告画面を表示する。また、切削装置2が警報ブザーを備える場合、警報ブザーに警報音を発生させる。警報を感知した切削装置2の使用者は、切削ブレード46の種別を確認し、不適切な種別の切削ブレード46を取り外し、適切な種別の切削ブレード46を装着できる。
【0072】
次に、切削ブレード46に付された識別コード76を検出ユニット50で読み取る際の切削装置2の動作について説明する。
図4は、識別コード76を読み取る検出ユニット50を模式的に示す断面図である。
図4では、検出ユニット50の断面に付されるべきハッチングを説明の便宜のために一部省略している。
【0073】
まず、切削ブレード46が検出ユニット50の上方に位置付けられるように切削ユニット42を移動させる。その後、スピンドル47を回転させて切削ブレード46を回転させる。その後、切削ユニット42を下降させ、切削ブレード46の砥石部74をブレード進入部56に進入させる。そして、切削ブレード46が所定の高さ位置に達し、回転する切削ブレード46に付されている識別コード76が周期的に発光部58及び受光部68に対面するとき、切削ユニット42の下降を停止する。
【0074】
次に、発光部58の光源78を作動させ、切削ブレード46の基台70の裏面70bに向けて光を照射する。切削ブレード46の基台70に照射された光は、反射されて受光部68に到達する。受光部68は、この光を受光して電気信号に変換し、コントローラ52に送る。コントローラ52では、変換部80が電気信号に基づいて識別コード76を読み取り、識別コード76が示す切削ブレード46の種別情報を取得する。変換部80は、読み取った切削ブレード46の種別情報を記憶部84に記憶させる。
【0075】
すなわち、切削装置2のコントローラ52は、発光部58で生じ、切削ブレード46に付された識別コード76に照射され、切削ブレード46で反射され、受光部68で受光された光に基づいて識別コード76を読み取り、切削ブレード46の種別情報を取得する。そして、取得した切削ブレード46の種別情報を記憶する。
【0076】
また、判定部82は、識別コード76が示す切削ブレード46の種別情報と、被加工物11の切削に使用されるべき切削ブレード46の種別と、を照合し、切削ユニット42に装着された切削ブレード46の適否を判定する。
【0077】
なお、本実施形態に係る切削装置2では、識別コード76の読取装置として使用される検出ユニット50により、切削ユニット42のセットアップ工程が実施されてもよい。被加工物11を十分な品質で切削するには、切削ブレード46の砥石部74の下端が被加工物11の下面より低い高さ位置に到達するように切削ユニット42の高さが調整される必要がある。
【0078】
しかしながら、切削ユニット42に切削ブレード46を装着した直後では、切削ブレード46の回転中心から砥石部74の外周の距離にはばらつきがあり、一定ではない。また、切削ブレード46を使用した被加工物11の切削を繰り返すと、切削ブレード46の砥石部74が徐々に消耗し、切削ブレード46の径は徐々に減少する。
【0079】
そこで、切削ブレード46の砥石部74の下端を被加工物11の裏面(下面)よりも下方の高さ位置に位置付けられるように、所定のタイミングでセットアップ工程が実施される。セットアップ工程では、切削ブレード46の砥石部74の下端の高さが被加工物11の裏面(下面)よりも下方の高さ位置に位置付けられるときの切削ユニット42の高さ位置が切削に適した高さ位置として検出される。
【0080】
図4及び
図5には、セットアップ工程に使用される検出ユニット50の断面図が模式的に示されている。検出ユニット50は、ベース54のブレード進入部56の発光部58が設けられた一方の側壁とは反対側の他方の側壁に設けられた第2受光部57を更に備える。特に、第2受光部57は、発光部58に対向する位置に設けられている。すなわち、発光部58及び第2受光部57は、ブレード進入部56を挟んで互いに対面する。
【0081】
第2受光部57は、受光部68と同様に構成される。第2受光部57は、発光部58で生じた光を受光して電気信号を生成してコントローラ52に電気信号を送信する。
図5には、セットアップ工程を実施している検出ユニット50を模式的に示す断面図が含まれている。
図5においても、説明の便宜のため、検出ユニット50の断面図に付されるべきハッチングの一部が省略されている。
【0082】
コントローラ52は、先端位置検出部86を有する。コントローラ52の先端位置検出部86は、発光部58で生じ、切削ブレード46の砥石部74に一部が遮られて、または、遮られずに第2受光部57で受光された光の透過量に基づいて切削ブレード46の砥石部74の先端位置(下端の高さ位置)を検出する。
【0083】
セットアップ工程を実施する際には、切削ブレード46の識別コード76を検出ユニット50で読み取った後、切削ユニット42を一度上昇させて回転する切削ブレード46をブレード進入部56から退出させる。その後、発光部58を作動させて光を第2受光部57に向けて照射し続ける。この状態でブレード進入部56に向けて切削ブレード46を下降させる。
【0084】
切削ブレード46を下降していくと、発光部58から放射された光が切削ブレード46の砥石部74に当たるようになる。そして、この光が徐々に切削ブレード46の砥石部74により遮られるようになり、第2受光部57で受光される光の受光量(強度)が徐々に減少する。第2受光部57で受光される光の受光量は砥石部74の下端の高さ位置により決まるため、この光の受光量に基づいて砥石部74の下端の高さ位置を特定できる。
【0085】
そして、第2受光部57で受光される光の受光量が所定の高さ位置に砥石部74の下端が到達したことを確認できる基準の受光量になるときの切削ユニット42の高さ位置が基準高さ位置として検出される。検出された切削ユニット42の基準高さ位置は、記憶部84に記憶されるとよい。そして、基準高さ位置を基に、被加工物11を切削する際に切削ユニット42が位置付けられるべき高さ位置が算出される。
【0086】
なお、このようなセットアップ工程は、切削ブレード46をスピンドル47の周りに回転させながら実施されるのが好ましい。例えば、切削ブレード46の回転数は、被加工物11の切削を実施する際の切削ブレード46の回転数に合わせられるとよい。これは、切削ブレード46を高速で回転させると切削ブレード46に遠心力が働き、切削ブレード46の径が大きくなるためである。セットアップ工程の実施時と、被加工物11の切削時と、で切削ブレード46の回転数を合わせると、遠心力による影響を相殺できる。
【0087】
そして、セットアップ工程を円滑に実施できるように、セットアップ工程の前に識別コード76を検出ユニット50で読み取る際にも切削が実施される際の回転数で切削ブレード46が回転しているとよい。
【0088】
なお、本実施形態に係る切削装置2において、セットアップ工程にも使用できる検出ユニット50はこれに限定されない。すなわち、検出ユニット50は、発光部58に対面する第2受光部57を備えなくてもよい。
図6は、変形例に係る検出ユニット88でセットアップ工程を実施する様子を模式的に示す概念図である。
図6には、セットアップ工程を実施できる変形例に係る検出ユニット88を模式的に示す断面図が含まれている。
【0089】
図6においても、検出ユニット88の断面図に付されるべきハッチングの一部が省略されている。そして、上述の検出ユニット50から変更のない構成要素については、説明を省略する。
【0090】
検出ユニット88は、ベース54のブレード進入部56の受光部68が設けられた一方の側壁とは反対側の他方の側壁に設けられた第2発光部90を更に備える。特に、第2発光部90は、受光部68に対向する位置に設けられており、対面する受光部68に向けて光を照射できる。すなわち、受光部68及び第2発光部90は、ブレード進入部56を挟んで互いに対面する。
【0091】
第2発光部90は、発光部58と同様に構成される。すなわち、第2発光部90は、検出ユニット88のベース54の内部または外部に設けられた光源92を備える。例えば、第2発光部90は、LED等の光源92に光ファイバーを介して接続された投光窓であり、光源92で生じた光を切削ブレード46に向けて照射する。第2発光部90から発せられた光は、受光部68で受光される。
【0092】
コントローラ52の先端位置検出部86は、第2発光部90で生じ、切削ブレード46の砥石部74に一部が遮られて、または、遮られずに受光部68で受光された光の透過量に基づいて切削ブレード46の砥石部74の先端位置(下端の高さ位置)を検出する。検出ユニット88を利用したセットアップ工程については、上述の検出ユニット50を利用したセットアップ工程と同様の手順となるため、説明を省略する。
【0093】
このように、切削装置2は、検出ユニット50,88が発光部及び受光部の一方を少なくとも2つ備え、発光部及び受光部の他方を少なくとも1つ備えることにより、切削ブレード46に付された識別コード76の読み取りと、セットアップ工程と、を実施できる。そのため、セットアップ工程を実施するための専用の検出ユニットと、識別コード76の読み取りに使用される専用の読取装置と、の両方を切削装置2が備える必要はなく、比較的安価で簡単な構成により本実施形態に係る切削装置2が実現される。
【0094】
以上に説明するように、本実施形態に係る切削装置2によると、装着された切削ブレード46に付された識別コード76を読み取りが可能であり、切削ブレード46の種別情報を確実かつ容易に取得できる。そして、切削ブレード46の識別コード76を読み取った後に切削ブレード46を切削ユニット42に装着する場合とは異なり、切削ユニット42に装着された切削ブレード46に付された識別コード76を読み取れる。そのため、被加工物11の切削に適していない切削ブレード46で被加工物11を切削することがない。
【0095】
また、本実施形態に係る切削装置2では、装着された切削ブレード46の適否を判定しない場合においても利点がある。例えば、切削装置2は、識別コード76を読み取ることで加工に使用される切削ブレード46の種別情報や個体情報をログ情報としてコントローラ52の記憶部84に容易に登録できる。
【0096】
そのため、オペレータ等が切削ブレード46の種別情報等を自身で入力する等の手間をかけることなく、また、オペレータが識別コード76を読み取らせる作業を実施することなく、切削ブレード46の種別情報等が記憶部84に容易に登録できる。しかも、切削装置2の外装に識別コード76の読み取りに使用される読取装置等が設けられる必要もない。
【0097】
なお、上記実施形態では、高速で回転する切削ブレード46に付された識別コード76をセットアップ工程にも使用できる検出ユニット50,88で読み取る場合について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。読取装置として機能する検出ユニット50,88は、セットアップ工程の際に切削ブレード46の砥石部74の下端の高さ位置を検出する機能を有していなくてもよい。すなわち、切削装置2は、セットアップ工程に利用される当該機能を有するユニットを検出ユニット50,88の他に備えてもよい。
【0098】
また、読取装置として機能する検出ユニット50,88は切削装置2に組み込まれている必要はなく、他の装置から独立していてもよい。そして、読取装置として独立した検出ユニット50,88は、切削ブレード46に付された識別コード76以外の識別コードを読み取り可能でもよい。読み取りの対象となる識別コードは、移動する移動体、または、回転する回転体に付されているとよい。そして、本発明の一態様に係る読取装置は、移動する移動体、または、回転する回転体に付された識別コードを読み取る。
【0099】
例えば、本発明の一態様に係る読取装置は、種別情報を示す識別コードを備えた回転体の該識別コードを読み取る読取装置である。読取装置は、回転している回転体の識別コードに向けて光を発光する発光部と、識別コードで反射した光を受光する受光部と、を備える。また、受光部で受光した光の受光量を電圧信号に変換する光電変換部と、光電変換部で変換された光の電圧信号をデジタル信号に変換するデジタル変換部と、を備える。そして、このデジタル信号から回転体の種別情報を取得する。
【0100】
または、例えば、本発明の一態様に係る読取装置は、種別情報を示す識別コードを備えた移動体の該識別コードを読み取る読取装置である。読取装置は、移動している移動体の識別コードに向けて光を発光する発光部と、識別コードで反射した該光を受光する受光部と、を備える。また、受光部で受光した光の受光量を電圧信号に変換する光電変換部と、光電変換部で変換された光の電圧信号をデジタル信号に変換するデジタル変換部と、を備える。そして、このデジタル信号から移動体の種別情報を取得する。
【0101】
この読取装置の発光部は、上述の検出ユニット50の発光部58と同様に構成され、この読取装置の受光部は、上述の検出ユニット50の受光部68と同様に構成される。そして、この読取装置は、上述の切削装置2のコントローラ52と同様に構成されるコントローラ(制御ユニット)を備え、コントローラにより光電変換部及びデジタル変換部の機能が実現される。そのため、この光電変換部及びデジタル変換部の説明として、上述のコントローラ52の説明が適宜参照される。
【0102】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0103】
11 被加工物
13 テープ
15 フレーム
2 切削装置
4 装置基台
6 X軸移動機構
8 X軸ガイドレール
10 X軸移動テーブル
12 X軸ボールねじ
14 X軸パルスモータ
16 テーブルベース
18 チャックテーブル
18a クランプ
18b 保持面
20 排水路
22 支持構造
24 移動ユニット
26 Y軸ガイドレール
28 Y軸移動プレート
30 Y軸ボールねじ
32 Y軸パルスモータ
34 Z軸ガイドレール
36 Z軸移動プレート
38 Z軸ボールねじ
40 Z軸パルスモータ
42 切削ユニット
43 固定ナット
44 撮像ユニット
45 ブレードマウント機構
46 切削ブレード
47 スピンドル
48 切削水供給ノズル
50 検出ユニット
52 コントローラ
54 ベース
56 ブレード進入部
57 第2受光部
58 発光部
68 受光部
70 基台
70b 裏面
72 装着穴
74 砥石部
76 識別コード
78 光源
80 変換部
82 判定部
84 記憶部
86 先端位置検出部
88 検出ユニット
90 第2発光部
92 光源