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特開2024-108228研磨処理用の治具、研磨処理方法、及び、鉱物試料分析方法
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  • 特開-研磨処理用の治具、研磨処理方法、及び、鉱物試料分析方法 図1
  • 特開-研磨処理用の治具、研磨処理方法、及び、鉱物試料分析方法 図2
  • 特開-研磨処理用の治具、研磨処理方法、及び、鉱物試料分析方法 図3
  • 特開-研磨処理用の治具、研磨処理方法、及び、鉱物試料分析方法 図4
  • 特開-研磨処理用の治具、研磨処理方法、及び、鉱物試料分析方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108228
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】研磨処理用の治具、研磨処理方法、及び、鉱物試料分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/32 20060101AFI20240805BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
G01N1/32 A
G01N1/28 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012481
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】檜垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 寛人
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA21
2G052AD32
2G052AD52
2G052DA33
2G052EC11
2G052EC22
2G052GA31
(57)【要約】
【課題】鉱物試料の分析の際に作業者の手作業によって行われている「樹脂包埋試料」の研磨処理について、研磨処理中の「樹脂包埋試料」の保持の安定性及び作業の安全性を向上させる。
【解決手段】柱状の外形を有する本体部11と、本体部11の底面及び/又は天面に形成されている試料嵌合用凹部12、13と、本体部11の側面において前記底面からの高さが等しい複数の位置に設けられている指かけ用突起部と、を備える、研磨処理用の治具とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の外形を有する本体部と、
前記本体部の底面及び/又は天面に形成されている試料嵌合用凹部と、
前記本体部の側面において前記底面からの高さが等しい複数の位置に設けられている指かけ用突起部と、を備える、
研磨処理用の治具。
【請求項2】
前記本体部の前記天面に形成されている第1の試料嵌合用凹部と、前記底面に形成されている第2の試料嵌合用凹部と、を備える、
請求項1に記載の研磨処理用の治具。
【請求項3】
前記第1の試料嵌合用凹部と前記第2の試料嵌合用凹部との開口径の大きさが異なる、
請求項2に記載の研磨処理用の治具。
【請求項4】
前記試料嵌合用凹部が形成されている面からの高さが前記本体部の高さの1/2を超える位置に、前記指かけ用突起部が設けられている、
請求項1から3の何れかに記載の研磨処理用の治具。
【請求項5】
前記本体部の外形が円柱状であり、
前記試料嵌合用凹部の内形が円筒状である、
請求項1から3の何れかに記載の研磨処理用の治具。
【請求項6】
前記本体部の側面において前記底面からの高さが等しい同一の外周円の円周上の2か所に前記指かけ用突起部が設けられていて、2つの前記指かけ用突起部の設置位置と、前記本体部の中心とを結ぶ直線のなす角の角度が120°である、
請求項1から3の何れかに記載の研磨処理用の治具。
【請求項7】
前記指かけ用突起部は棒状の突起部であって棒状の軸部と前記軸部の末端に形成されていて前記軸部よりも外径が大きい押圧用端部とを有する、
請求項1から3の何れかに記載の研磨処理用の治具。
【請求項8】
研磨処理対象物を請求項1から3の何れかに記載の研磨処理用の治具に嵌め込んだ状態で、研磨処理する工程を行う、
研磨処理方法。
【請求項9】
前記研磨処理対象物が、鉱物試料を包埋する樹脂包埋試料であって、請求項8の研磨処理方法によって研磨された前記樹脂包埋試料の研磨面を顕微鏡観察する工程を行う、
鉱物試料分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨処理用の治具、研磨処理方法、及び、鉱物試料分析方法に関する。本発明は、詳しくは、例えば、MLA(Mineral Liberation Analyzer)等の自動分析装置で使用する鉱物試料等の研磨処理を行う際に用いる研磨処理用の治具、それを用いて行う研磨処理方法及び鉱物試料分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上述したような鉱物試料分析を行う際には、粒状鉱石を硬化樹脂に包埋させた試料(本明細書において「樹脂包埋試料」と言う)を作成し、更に、当該「樹脂包埋試料」の一方の面を研磨処理した上で当該研磨面を各種の顕微鏡装置によって観察する分析方法が行われている(特許文献1参照)。
【0003】
上述の分析方法においては、観察する試料が禁水性物質であったり、微細に研磨されることで発火するリスクがある物質である場合があり、これらの場合には、研磨機を不活性雰囲気下のグローブボックス内に置き、通常、外径20mm~40mm程度の円柱形状に成型されている「樹脂包埋試料」を、作業者がグローブを装着した手で保持して、研磨機の研磨面に押さえつけるやり方で研磨処理が行われている。
【0004】
上記態様での研磨処理においては、作業者の手による「樹脂包埋試料」の保持の安定性は必ずしも十分ではなく、又、作業者の装着するグローブが研磨機に接触してグローブを破損させてしまう等の不具合もしばしば生じていた。鉱物試料の分析作業の現場においては、分析に先立つ必須の処理として行われている研磨処理の作業において、「樹脂包埋試料」の保持の安定性と作業の安全性を向上させることが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-1760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、鉱物試料の分析の際に作業者の手作業によって行われている「樹脂包埋試料」の研磨処理について、研磨処理中の「樹脂包埋試料」の保持の安定性及び作業の安全性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、以下に示す通りの独自の構成からなる研磨処理用の治具を用いて研磨処理を行うようにすることによって、上記課題を解決することができることに想到し、本発明を完成するに至った。
【0008】
(1) 柱状の外形を有する本体部と、前記本体部の底面及び/又は天面に形成されている試料嵌合用凹部と、前記本体部の側面において前記底面からの高さが等しい複数の位置に設けられている指かけ用突起部と、を備える、研磨処理用の治具。
【0009】
(1)の研磨処理用の治具によれば、作業者の手作業によって行われている「樹脂包埋試料」の研磨処理において、「樹脂包埋試料」を直接手で保持せずに、「樹脂包埋試料」を嵌め込んで固定した治具を手で保持するようにすることで、研磨処理中の「樹脂包埋試料」の保持の安定性及び作業の安全性を向上させることができる。
【0010】
(2) 前記本体部の前記天面に形成されている第1の試料嵌合用凹部と、前記底面に形成されている第2の試料嵌合用凹部と、を備える、(1)に記載の研磨処理用の治具。
【0011】
(2)の研磨処理用の治具によれば、治具に複数の試料嵌合用凹部を備えさせることができるので、それぞれの試料嵌合用凹部に独自の機能や用途を付加して治具の利用態様のバリエーションを増やすことができる。又、一方の試料嵌合用凹部に不具合が生じたときでも他方の試料嵌合用凹部を用いることができるので、治具の寿命を延長することもできる。
【0012】
(3) 前記第1の試料嵌合用凹部と前記第2の試料嵌合用凹部との開口径の大きさが異なる、(2)に記載の研磨処理用の治具。
【0013】
(3)の研磨処理用の治具によれば、「樹脂包埋試料」のサイズによって、より適合させやすい方の試料嵌合用凹部を選択して治具を用いることにより、研磨処理中の「樹脂包埋試料」の保持の安定性を更に高めることができる。
【0014】
(4) 前記試料嵌合用凹部が形成されている面からの高さが前記本体部の高さの1/2を超える位置に、前記指かけ用突起部が設けられている、(1)から(3)の何れかに記載の研磨処理用の治具。
【0015】
(4)の研磨処理用の治具によれば、作業者の手作業によって行われている「樹脂包埋試料」等の研磨処理において、研磨処理中の作業者の指(或いは、グローブ)が研磨機に接触する危険をより確実に回避して、安全性を更に向上させることができる。
【0016】
(5) 前記本体部の外形が円柱状であり、前記試料嵌合用凹部の内形が円筒状である、(1)から(3)の何れかに記載の研磨処理用の治具。
【0017】
(5)の研磨処理用の治具によれば、通常、円柱形状に成型されている様々なサイズの「樹脂包埋試料」を試料嵌合用凹部において安定的に保持しやすい治具とすることができる。
【0018】
(6) 前記本体部の側面において前記底面からの高さが等しい同一の外周円の円周上の2か所に前記指かけ用突起部が設けられていて、2つの前記指かけ用突起部の設置位置と、前記本体部の中心とを結ぶ直線のなす角の角度が120°である、(1)から(3)の何れかに記載の研磨処理用の治具。
【0019】
(6)の研磨処理用の治具によれば、最小限の本数の試料固定用ボルトによって、研磨処理中の「樹脂包埋試料」の保持の安定性及び作業の安全性を良好な水準にまで向上させることができる。
【0020】
(7) 前記指かけ用突起部は棒状の突起部であって棒状の軸部と前記軸部の末端に形成されていて前記軸部よりも外径が大きい押圧用端部とを有する、(1)から(3)の何れかに記載の研磨処理用の治具。
【0021】
(7)の研磨処理用の治具によれば、作業中における作業者の手による治具の保持の安定性を更に高めることができる。
【0022】
(8) 研磨処理対象物を(1)から(3)の何れかに記載の研磨処理用の治具に嵌め込んだ状態で、研磨処理する工程を行う、研磨処理方法。
【0023】
(8)の研磨処理方法によれば、作業者の手作業によって行われている「樹脂包埋試料」の研磨処理について、研磨処理中の「樹脂包埋試料」の保持の安定性及び作業の安全性を向上させることができる。
【0024】
(9) 前記研磨処理対象物が、鉱物試料を包埋する樹脂包埋試料であって、(8)の研磨処理方法によって研磨された前記樹脂包埋試料の研磨面を顕微鏡観察する工程を行う、鉱物試料分析方法。
【0025】
(9)の鉱物試料分析方法によれば、鉱物試料の分析の際に作業者の手作業によって行われている「樹脂包埋試料」の研磨処理について、研磨処理中の「樹脂包埋試料」の保持の安定性及び作業の安全性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、鉱物試料の分析の際に作業者の手作業によって行われている「樹脂包埋試料」の研磨処理について、研磨処理中の「樹脂包埋試料」の保持の安定性及び作業の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の研磨処理用の治具の斜視図(一部透視図)である。
図2】本発明の研磨処理用の治具の平面図である。
図3】本発明の研磨処理用の治具の底面図である。
図4図2のA-A線断面図である。
図5】本発明の研磨処理用の治具の使用状態の説明に供する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について説明する。但し、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0029】
<研磨処理用の治具>
本発明の研磨処理用の治具は、研磨処理対象物を研磨機で研磨する際に使用される治具である。又、本発明の研磨処理用の治具は、より具体的には、顕微鏡等を用いて金属や鉱石等の組織を観察するために、樹脂に埋めて固結した試料(「樹脂包埋試料」)を研磨処理対象物とし、これを、紙やすりを貼り付けた回転する円盤と接触させて研磨する処理において、特に好ましく使用することができる。
【0030】
(全体構成)
本発明の研磨処理用の治具は、図5に例示するように、少なくとも一方の面(底面)に形成されている凹部(第2の13試料嵌合用凹部)の内部に、研磨処理対象物とする「樹脂包埋試料(試料S)」を嵌め込み、ボルト等の固定具でこれを安定的に固定した状態で使用される。尚、本発明の研磨処理用の治具の好ましい実施形態の一例である研磨処理用の治具1(図1~5参照)においては、この試料固定用ボルトの頭部側の一部が指かけ用突起部14、15として機能するように設計されている。
【0031】
以下、本発明の研磨処理用の治具の構成及び機能の詳細について説明する。図1は、本発明の研磨処理用の治具の好ましい実施形態の一例である研磨処理用の治具1の全体構成を示す斜視図である。図1に示す通り、研磨処理用の治具1は、円柱状の外形を有する本体部11に、第1の試料嵌合用凹部12と第2の試料嵌合用凹部13、及び、指かけ用突起部14、15が設けられてなる構成とされている。「樹脂包埋試料」を嵌め込むための凹部である、第1の試料嵌合用凹部12と第2の試料嵌合用凹部13は、本体部11の両面(天面及び底面)に、それぞれ形成されている。又、作業者の手による治具保持の安定性を高めるための突起部である指かけ用突起部14、15は、本体部11の側面に設けられている。
【0032】
(本体部)
尚、本発明の研磨処理用の治具の要部を構成する本体部は、図1に示すように、円柱状であることが好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではなく、その外形は円柱以外の多角柱状であってもよい。
【0033】
(試料嵌合用凹部)
試料嵌合用凹部の内形は、汎用的な「樹脂包埋試料」の形状が円柱状であることから、通常は、円筒状とすることが好ましいが、円柱状以外の形状の試料を扱うことを想定して、他の形状(角柱状や半球状等)からなる凹部とすることもできる。
【0034】
又、試料嵌合用凹部は、本体部の天面及び底面の各面のうち、少なくとも何れか一方の面に形成されていればよいが、天面及び底面にそれぞれ形成されていることが好ましい。両面に試料嵌合用凹部を設けることにより、研磨処理を行う際に利用していない側の試料嵌合用凹部に配置されている試料固定用ボルトを指かけ用突起部として活用することができるようになるので、指かけ用突起部の態様の説明としても後述する通り、底面からの距離が十分に大きい指かけ用突起部に指をかけて作業するようにすることができ、研磨処理中の作業者の指が研磨機に接触する危険をより確実に回避して、安全性を更に向上させることができるからである。
【0035】
又、研磨処理用の治具1において、本体部11の両面、即ち、天面及び底面に、第1の試料嵌合用凹部12と第2の試料嵌合用凹部13をそれぞれ形成する場合、各試料嵌合用凹部の開口径R1、R2をそれぞれ異なる開口径とすることが好ましい(図2図3参照)。これにより、「樹脂包埋試料」のサイズによって、より適合させやすい方の試料嵌合用凹部を選択して治具を用いることにより、様々なサイズの「樹脂包埋試料」について研磨処理中の保持の安定性を更に高めることができる。又、それぞれの凹部の開口径は、一例として、第1の試料嵌合用凹部12の開口径R1を26mm~30mmとし、第2の試料嵌合用凹部13の開口径R2を31mm~35mm程度とする例を好ましい開口径の一例として挙げることができる。これにより、汎用的に用いられている外径25mm、30mmの定型サイズの円柱状の「樹脂包埋試料」を、それぞれ上下何れかの凹部に取付けて、試料固定用ボルトによって安定的に固定した状態で使用することができるため、鉱物試料分析方法に用いる治具としての汎用性を高めることができる。
【0036】
(指かけ用突起部)
指かけ用突起部14、15は棒状の突起部であって棒状の軸部と軸部の末端に形成されていて軸部よりも外径が大きい押圧用端部とを有する形状であることが好ましい。試料固定用ボルトの頭部側の一部が指かけ用突起部14、15として機能するように設計されている研磨処理用の治具1においては、試料固定用ボルトとして、六角ボルト等を用いることによって、結果的に指かけ用突起部14、15の形状をそのような好ましい形状とすることができる。
【0037】
指かけ用突起部14、15は、作業者の手による治具保持の安定性を高めるための突起部としての機能を発揮するために、本体部11の側面において本体部の底面及び天面からの高さが等しい同一の外周円の円周上の複数の位置に設けられる。又、各々の指かけ用突起部14、15は、研磨処理を行う使用時における本体部11の側面からの突出高さが15mm以上30mm以下程度となるように設けられていることが好ましい。上述した通り、研磨処理用の治具1においては、第1の試料嵌合用凹部12及び第2の試料嵌合用凹部13内に嵌め込んだ「樹脂包埋試料」を安定的に固定するために本体部11の側壁を貫通している試料固定用ボルトの頭部側の一部が、上記程度の長さで本体部11の側面から突出していることにより、この突出部分が指かけ用突起部14、15として機能するように設計されている。但し、本発明の研磨処理用の治具を構成する指かけ用突起部は必ずしも試料固定用ボルトの一部である必要はない。研磨処理用の治具を構成する指かけ用突起部は、本体部11の側面の適切な位置において適切な突出高さで突出している部分として、指かけ用の専用部分として、試料固定用ボルトとは別途に設けられた突起部であってもよい。
【0038】
又、指かけ用突起部14、15は、第2の試料嵌合用凹部13、第1の試料嵌合用凹部12が形成されている面からの高さ(距離)が本体部11の高さ(長さ)の1/2を超える位置に設けられていることが好ましい。例えば、本体部11の底面側のみに試料嵌合用凹部(第2の試料嵌合用凹部13)が形成されている場合であれば、当該試料嵌合用凹部(第2の試料嵌合用凹部13)が形成されている面(底面)からの高さが本体部11の高さの1/2を超える位置、即ち、本体部11の底面と天面の中間よりも天面側よりの位置に、指かけ用突起部14が設けられていることが好ましい。又、本体部11の天面側にも試料嵌合用凹部(第1の試料嵌合用凹部12)が形成されている場合であれば、これに対応させて当該試料嵌合用凹部(第2の試料嵌合用凹部13)が形成されている面(点面)からの高さが本体部11の高さの1/2を超える位置、即ち、天面と底面の中間よりも底面側よりの位置に、指かけ用突起部15が設けられていることが好ましい。これにより、例えば、本体部11の底面側の第2の試料嵌合用凹部13に「樹脂包埋試料」を嵌め込んで研磨処理を行う場合において、底面からの距離が十分に大きい指かけ用突起部14に指をかけて作業するようにすることによって、研磨処理中の作業者の指が研磨機に接触する危険をより確実に回避して、安全性を更に向上させることができる。
【0039】
又、本体部11の側面において同一の外周円の円周上に設ける指かけ用突起部の本数は、2本以上であればよい。試料固定用ボルトの頭部側の一部が指かけ用突起部として機能するように設計されている場合には、研磨処理中における試料の安定性を担保することができる本数であればよく、一例としてその数は2本~4本程度である。尚、この場合において、本体部11の側面における試料固定用ボルトを通すボルト穴の付近を面取りして水平面としてもよい。これにより、試料固定用ボルトの取り付けがスムースに行えるようにすることができる。
【0040】
又、試料固定用ボルトの頭部側の一部が指かけ用突起部として機能するように設計されている場合における、指かけ用突起部の特に好ましい本数及び配置の態様として、図2及び図3に示す態様を挙げることができる。これらの各図に示す通り、試料固定用ボルトの頭部側の一部が指かけ用突起部として機能するように設計されている場合には、本体部11の側面において同一の外周円の円周上の2か所に指かけ用突起部を設け、尚且つ、これら2つの指かけ用突起部の設置位置と、本体部の中心とを結ぶ直線のなす角の角度(図2、3における角度α1、α2)が120°となるようにそれぞれの指かけ用突起部(即ち、試料固定用ボルト)を配置することが好ましい。これにより、最小限の本数の試料固定用ボルトによって、研磨処理中の「樹脂包埋試料」の保持の安定性及び作業の安全性を良好な水準にまで向上させることができる。又、このような試料固定用ボルトの配置により、試料の研磨方向を一定に維持することができ、研磨ムラを十分に抑制することもできる。尚、この場合、試料嵌合用凹部の内壁において2つの試料用固定用ボルト(指かけ用突起部)の位置から当角度(120°)となる位置に「樹脂包埋試料」を押し付けた場合に「樹脂包埋試料」を本体部11内の中心に保持できることとなる程度の高さの突起部を更に設けてもよい。
【0041】
<研磨処理方法>
本発明の研磨処理方法は、一例として、図5に示すように研磨処理用の治具1の本体部11の底面側に形成されている第2の試料嵌合用凹部13に樹脂包埋試料Sを嵌め込んで安定的に固定した状態で、天面側の指かけ用突起部14に作業者が指をかけて押圧することにより行うことができる。
【0042】
本発明の研磨処理方法の適用対象となる研磨処理の一例として、MLA等の自動分析装置による分析用の試料として製造される「樹脂包埋試料」の表面を研磨して、粒状鉱石の断面が露出した平滑な面(研磨面)を形成する研磨処理を挙げることができる。尚、具体的な研磨の方法は、特に限定されないが、例えば、バフ研磨や研磨紙を用いた研磨等の機械研磨により行う研磨処理を本発明の適用対象とする好ましい研磨の方法として挙げることができる。又、研磨処理の対象物となる「樹脂包埋試料」の好ましい具体例としては、特許文献1(特開2021-1760号公報)に開示されている「鉱物分析用試料」を挙げることができる。
【0043】
又、本発明の研磨処理用の治具を用いて行う研磨処理方法は、作業者が手で試料を保持して研磨機に当該試料を押圧するやり方で行わる処理全般に適用することが可能であるが、特には、研磨処理の対象となる試料が禁水性物質であったり、微細に研磨されることで発火するリスクがある物質である場合に特に有用である。
【0044】
<鉱物試料分析方法>
本発明の鉱物試料分析方法は、上記の本発明の研磨処理方法によって、鉱物試料を包埋する「樹脂包埋試料」の研磨処理を行い、このようにして研磨された「樹脂包埋試料」の研磨面を顕微鏡観察する工程が行われる分析方法である。このような鉱物試料の分析方法の具体例として、画像解析によって単体鉱であるか結合鉱であるかを識別して単体分離度を評価する、MLA(Mineral Liberation Analyzer)やQEMSCAN(Quantitative Evaluation of M inerals by SCANning)等の自動分析装置を用いる方法を挙げることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 研磨処理用の治具
11 本体部
12 試料嵌合用凹部(第1の試料嵌合用凹部)
13 試料嵌合用凹部(第2の試料嵌合用凹部)
14 指かけ用突起部
15 指かけ用突起部
S 樹脂包埋試料(試料)
図1
図2
図3
図4
図5