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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108238
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】塗料組成物、硬化物及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20240805BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20240805BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240805BHJP
   C08G 18/62 20060101ALI20240805BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20240805BHJP
   C08F 220/10 20060101ALI20240805BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240805BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20240805BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20240805BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240805BHJP
   C08G 18/79 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
C09D175/04
C09D7/20
C09D7/61
C08G18/62 016
C08G18/28
C08F220/10
C08K3/013
C08L75/04
C08K9/06
C08K3/36
C08G18/79 020
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012503
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】石鍋 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】浦 正敏
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
4J038
4J100
【Fターム(参考)】
4J002CF002
4J002CG002
4J002CK021
4J002DJ016
4J002FB096
4J002FD016
4J002GH00
4J002GL00
4J002GN00
4J002HA03
4J002HA06
4J034AA04
4J034BA01
4J034BA03
4J034DA01
4J034DA05
4J034DB05
4J034DB08
4J034DC02
4J034DF01
4J034DF02
4J034DP03
4J034DP12
4J034DP13
4J034DP18
4J034HA01
4J034HA07
4J034HA11
4J034HC03
4J034LA22
4J034LA33
4J034LB01
4J034MA04
4J034MA12
4J034QA03
4J034QB03
4J034QB05
4J034QB08
4J034QB11
4J034QB14
4J034QC05
4J034RA07
4J034RA10
4J034RA12
4J038CG141
4J038CH031
4J038CH121
4J038CJ031
4J038DG191
4J038HA446
4J038JA27
4J038JA55
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA09
4J038MA13
4J038MA14
4J038NA09
4J038PA19
4J038PB05
4J038PB07
4J100AB02R
4J100AJ02R
4J100AL03P
4J100AL09Q
4J100CA06
4J100DA01
4J100DA25
4J100DA30
4J100DA39
4J100EA06
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA01
4J100JA28
4J100JA67
(57)【要約】
【課題】塗膜の耐擦り傷性及び塗膜の外観等の各種性能を維持できる塗膜を形成できる塗料組成物、硬化物及び積層体の提供。
【解決手段】ポリオール(A)、架橋剤(B)、無機粒子(C)及び溶剤を含む塗料組成物であって、前記溶剤は、前記溶剤の総質量に対してアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートを50質量%以上100質量%以下含み、前記無機粒子(C)の含有量が、前記ポリオール(A)100質量部に対して1質量部以上100質量部以下である、塗料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(A)、架橋剤(B)、無機粒子(C)及び溶剤を含む塗料組成物であって、
前記溶剤は、前記溶剤の総質量に対してアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートを50質量%以上100質量%以下含み、
前記無機粒子(C)の含有量が、前記ポリオール(A)100質量部に対して1質量部以上100質量部以下である、塗料組成物。
【請求項2】
前記無機粒子(C)が、有機シリル化剤で修飾され、疎水性有機溶剤に分散したオルガノシリカゾルである、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記無機粒子(C)が、水酸基以外の反応性官能基を有さない無機粒子である、請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記アルキレングリコールアルキルエーテルアセテートが、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである、請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記架橋剤(B)が、ポリイソシアネートである、請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項6】
前記ポリオール(A)が、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールから選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項7】
前記ポリオール(A)の重量平均分子量が、900以上50000以下である、請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項8】
前記塗料組成物の固形分濃度が、前記塗料組成物の総質量に対して30質量%以上100質量%未満である、請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の塗料組成物の硬化物。
【請求項10】
請求項9に記載の硬化物からなる層を有する、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物、硬化物及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
外装建材、道路資材、自動車を含む車両、航空機などの塗装に使用される塗料には、耐擦り傷性、硬度、耐汚染性等の塗膜性能に優れ、かつ塗膜外観に優れる塗膜を形成できることが要求されている。
ところが、塗膜の耐擦り傷性と、塗膜に求められる他の塗膜性能とを同時に満足させることは困難である。すなわち、これらの個々あるいはいくつかの性能は、塗料に含まれる樹脂成分を改善することで達成可能であるが、全ての性能を同時に満足させることは、樹脂成分の改善だけでは困難である。例えば、耐擦り傷性を向上するために柔軟な樹脂を設計することはできるが、この場合硬度や耐水性・耐汚染性などの性能が悪化する傾向にある。
【0003】
この問題を解決するために無機粒子の利用が注目されている。
例えば特許文献1には、アクリルポリオール及びポリイソシアネートに、シリカ粒子を補強材として利用したウレタン塗料組成物と、それより形成される硬化塗膜を有する樹脂部材が記載されている。
また特許文献2には、ポリオールと、ブロック化ポリイソシアネートと、特定のシランカップリング剤で修飾したシリカを含む熱硬化性樹脂組成物が記載され、特定のシランカップリング剤でシリカを修飾することで、塗膜の耐擦り傷性や耐摩耗性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-21111号公報
【特許文献2】特開2020-132751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のウレタン塗料組成物より形成される塗膜は、屋外で長時間使用される条件下での耐擦り傷性、耐摩耗性が不十分である。特に、シリカ粒子の凝集に伴う白化等の塗膜外観の低下を防ぐため、シリカ粒子の量を減らした場合の耐擦り傷性、耐摩耗性が不十分である。
特許文献2に記載の熱硬化性樹脂組成物はシリカの添加割合が極めて多いため、シリカの凝集によって熱硬化性樹脂組成物の可使時間が短く、また、白化等の塗膜外観が低下しやすい。さらには、樹脂に比べてコストの高いシリカを多量の用いるため、熱硬化性樹脂組成物の価格が高くなってしまうという課題がある。
【0006】
本発明はこれらの課題を解決することを目的とするものであって、塗膜の耐擦り傷性及び塗膜の外観等の各種性能を維持できる塗膜を形成できる塗料組成物、硬化物及び積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[10]を要旨とする。
[1] ポリオール(A)、架橋剤(B)、無機粒子(C)及び溶剤を含む塗料組成物であって、前記溶剤は、前記溶剤の総質量に対してアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートを50質量%以上100質量%以下含み、前記無機粒子(C)の含有量が、前記ポリオール(A)100質量部に対して1質量部以上100質量部以下である、塗料組成物。
[2] 前記無機粒子(C)が、有機シリル化剤で修飾され、疎水性有機溶剤に分散したオルガノシリカゾルである、前記[1]の塗料組成物。
[3] 前記無機粒子(C)が、水酸基以外の反応性官能基を有さない無機粒子である、前記[1]又は[2]の塗料組成物。
[4] 前記アルキレングリコールアルキルエーテルアセテートが、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである、前記[1]~[3]のいずれかの塗料組成物。
[5] 前記架橋剤(B)が、ポリイソシアネートである、前記[1]~[4]のいずれかの塗料組成物。
[6] 前記ポリオール(A)が、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールから選ばれる1種以上である、前記[1]~[5]のいずれかの塗料組成物。
[7] 前記ポリオール(A)の重量平均分子量が、900以上50000以下である、前記[1]~[6]のいずれかの塗料組成物。
[8] 前記塗料組成物の固形分濃度が、前記塗料組成物の総質量に対して30質量%以上100質量%未満である、前記[1]~[7]のいずれかの塗料組成物。
[9] 前記[1]~[8]のいずれかの塗料組成物の硬化物。
[10] 前記[9]の硬化物からなる層を有する、積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、塗膜の耐擦り傷性及び塗膜の外観等の各種性能を維持できる塗膜を形成できる塗料組成物、硬化物及び積層体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に発明の好ましい実施の形態を上げて本発明をさらに詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。
なお、本明細書において数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートの総称である。「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの総称である。「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの総称である。
また、以下の明細書において、「塗膜」とは、本発明の塗料組成物より形成される塗膜である。
【0010】
[塗料組成物]
以下、本発明の塗料組成物の一実施形態について説明する。
本実施形態の塗料組成物は、以下に示すポリオール(A)、架橋剤(B)、無機粒子(C)及び溶剤を含む。
塗料組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、必要に応じて、ポリオール(A)、架橋剤(B)、無機粒子(C)及び溶剤に加えて、以下に示す耐候性付与剤(D)をさらに含んでいてもよい。
また、塗料組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、必要に応じて、ポリオール(A)、架橋剤(B)、無機粒子(C)、溶剤及び耐候性付与剤(D)以外の成分(以下、「任意成分」ともいう。)をさらに含んでいてもよい。
【0011】
<ポリオール(A)>
ポリオール(A)としては、例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールが挙げられる。これらの中でも、形成される塗膜の耐擦り傷性がより向上する観点から、アクリルポリオールが好ましい。
ポリオール(A)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0012】
アクリルポリオールは、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマーと、水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能なその他の重合性不飽和モノマー(以下、「他の重合性不飽和モノマー」ともいう。)とを常法により共重合せしめることによって製造することができる。
【0013】
水酸基含有重合性不飽和モノマーは、一分子中に水酸基と重合性不飽和基とをそれぞれ1つ以上有する化合物である。
水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、具体的には、アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数2~10の2価アルコールとのモノエステル化物が好適であり、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プラクセルFM(株式会社ダイセル製、カプロラクトン付加モノマー)、及びプラクセルFA(株式会社ダイセル製、カプロラクトン付加モノマー)等の水酸基を有する重合性単量体が挙げられる。これらの中でも、塗膜の耐擦り傷性や耐磨耗性がより向上する点で、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。
水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ) アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル及び(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1~18のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル及び(メタ)アクリル酸エトキシブチル等のアクリル酸又はメタクリル酸のアルコキシアルキルエステル;グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートと、炭素数3~18のモノカルボン酸化合物(例えば、酢酸、プロピオン酸、オレイン酸、ステアリン酸又はラウリン酸)との付加物;カージュラE-10とアクリル酸等の不飽和酸との付加物;1-メタクリロキシトリメトキシシラン等のアルコキシシラン基を有するエチレン性不飽和モノマー;クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸及びフマル酸等の1-エチレン性不飽和カルボン酸;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート及びアリルグリシジルエーテル等のグリジシル基含有ビニル系単量体;アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド及びN-ブトキシメチルアクリルアミド等のアクリル酸又はメタクリル酸のアミド;スチレン;アクリロニトリル及びメタクリロニトリルが挙げられる。
他の重合性不飽和モノマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
ポリオール(A)のガラス転移温度の下限は好ましくは-40℃であり、より好ましくは-20℃であり、さらに好ましくは-10℃であり、特に好ましくは5℃である。またポリオール(A)のガラス転移温度の上限は好ましくは85℃であり、より好ましくは70℃であり、さらに好ましくは60℃である。ポリオール(A)のガラス転移温度が前記下限値以上であれば、塗膜の硬度が良好となる。ポリオール(A)のガラス転移温度が前記上限値以下であれば、塗料組成物がゲル化しにくく、ハンドリングを良好に維持できる。
ポリオール(A)のガラス転移温度の前記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。例えば、ポリオール(A)のガラス転移温度は、-40℃以上85℃以下であることが好ましく、より好ましくは-20℃以上70℃以下であり、さらに好ましくは-10℃以上60℃以下であり、特に好ましくは5℃以上60℃以下である。
ポリオール(A)のガラス転移温度(Tg)(単位:℃)は、下記式(1)で示されるFoxの計算式により算出した値である。
【0016】
【数1】
【0017】
式(1)中の略号は以下を意味する。
・Wi:単量体iの質量分率
・Tgi:単量体iの単独重合体のTg(℃)
なお、単独重合体のTgは、「ポリマーハンドブック第4版 John Wiley & Sons著」に記載の数値を用いることができる。
「ポリマーハンドブック第4版 John Wiley & Sons著」に記載のない単独重合体のTgは、JIS規格K-7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載の方法で測定した実測値を用いることができる。
【0018】
ポリオール(A)の溶解度パラメーター(SP値)は8.1(J/cm1/2以上12.5(J/cm1/2以下であることが好ましく、より好ましくは8.5(J/cm1/2以上12.0(J/cm1/2以下であり、さらに好ましくは9.0(J/cm1/2以上11.5(J/cm1/2以下である。ポリオール(A)のSP値が前記下限値以上であれば、後述の無機粒子(C)との相溶性が良好になる。また、ポリオール(A)のSP値が前記上限値以下であれば、塗膜の耐水性が良好となる。
【0019】
SP値はsolubility parameterの略であり、溶解性の尺度となるものである。SP値は、数値が大きいほど極性が高く、逆に数値が小さいほど極性が低いことを示す。SP値は、例えば、次の方法によって実測することができる[参考文献:SUH,CLARKE〔J.P.S.A-1,5,1671-1681(1967)]。
【0020】
サンプルとして、ポリオール(A)0.5gを100mlビーカーに秤量し、ホールピペットを用いて良溶媒10mlを加え、マグネティックスターラーにより溶解したものを使用する。溶媒としては、例えばアセトン又はジオキサンを用いる。
得られたサンプルに対して測定温度20℃で、50mlビュレットを用いて貧溶媒を滴下し、溶液に濁りが生じた点(濁点)を滴下量とする。貧溶媒は、高SP貧溶媒としてイオン交換水を用い、低SP貧溶媒としてn-ヘキサンを使用して、それぞれの貧溶媒を用いた場合の濁点の測定を行う。
下記式(2-1)~(2-5)より、ポリオール(A)のSP値(δ)(単位:(J/cm1/2)を求める。
ml=(V×V)/(φ×V+φa1×V) ・・・(2-1)
δml=φ×δ+φa1×δ ・・・(2-2)
mh=(V×V)/(φ×V+φa2×V) ・・・(2-3)
δmh=φ×δ+φa2×δ ・・・(2-4)
δ={(Vml1/2×δml+(Vmh1/2×δmh}/{(Vml1/2+(Vmh1/2} ・・・(2-5)
【0021】
式(2-1)~(2-5)中の略号は以下を意味する。
・V:n-ヘキサンのモル体積(cm/mol)
・V:イオン交換水のモル体積(cm/mol)
・V:良溶媒のモル体積(cm/mol)
・φ:濁点における良溶媒とn-ヘキサンとの和に対するn-ヘキサンの体積分率=n-ヘキサンの滴下量/(良溶媒の使用量+n-ヘキサンの滴下量)
・φ:濁点における良溶媒とイオン交換水との和に対するイオン交換水の体積分率=イオン交換水の滴下量/(良溶媒の使用量+イオン交換水の滴下量)
・φa1:濁点における良溶媒とn-ヘキサンとの和に対する良溶媒の体積分率=良溶媒の使用量/(良溶媒の使用量+n-ヘキサンの滴下量)
・φa2:濁点における良溶媒とイオン交換水との和に対する良溶媒の体積分率=良溶媒の使用量/(良溶媒の使用量+イオン交換水の滴下量)
・δ:n-ヘキサンのSP値
・δ:イオン交換水のSP値
・δ:良溶媒のSP値
【0022】
ポリオール(A)の重量平均分子量は900以上50000以下であることが好ましい。ポリオール(A)の重量平均分子量が前記下限値以上であれば、塗膜の硬度が良好となる。ポリオール(A)の重量平均分子量が前記上限値以下であれば、塗料組成物の粘度が適度に低くなり、ハンドリングが良好となる。ポリオール(A)の重量平均分子量は、好ましくは1000以上25000以下である。
【0023】
ポリオール(A)の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定される標準ポリスチレン換算の値である。詳しい測定条件は以下の通りである。
(GPC測定条件)
・カラム:「TSK-gel superHZM-M」、「TSK-gel HZM-M」、「TSK-gel HZ2000」
・溶離液:THF
・流量:0.35mL/min
・注入量:10μL
・カラム温度:40℃
・検出器:UV-8020
【0024】
ポリオール(A)の水酸基価は50mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが好ましく、120mgKOH/g以上220mgKOH/g以下であることがより好ましい。ポリオール(A)の水酸基価が前記下限値以上であれば、塗膜としての好ましい架橋密度が得られ、塗膜の硬度が良好となる。ポリオール(A)の水酸基価が前記上限値以下であれば、塗料組成物中での溶解性や塗膜とした際の塗膜の可とう性が良好となる。
ポリオール(A)の水酸基価は、下記式(3)により算出した値である。
水酸基価(mgKOH/g)=(f×M1/Mn/M2×〔KOH〕×1000) ・・・(3)
【0025】
式(3)中の略号は以下を意味する。
・f:ポリオール(A)を構成する水酸基含有モノマー(例えば上述した水酸基含有重合性不飽和モノマー)の水酸基の数
・〔KOH〕:KOHの分子量
・M1:水酸基含有モノマーの質量(g)
・M2:ポリオール(A)の固形分質量(g)
・Mn:水酸基含有モノマーの分子量(数平均分子量)
【0026】
塗料組成物中のポリオール(A)の含有量は、塗膜を形成する成分(以下、「塗膜形成成分」ともいう。)の総質量に対して、1質量%以上70質量%以下であることが好ましい。ポリオール(A)の含有量が前記下限値以上であれば、塗膜の耐擦り傷性がより向上する。また、ポリオール(A)の含有量が前記上限値以下であれば、後述する基材に対する塗膜の密着性が十分に得られる。また、塗膜にクラックが生じにくくなる。
ここで、「塗膜を形成する成分」とは、塗料組成物から溶剤を除いた残部のことである。
【0027】
<架橋剤(B)>
塗料組成物は、塗膜に靭性、強靭で、耐擦り傷性、耐薬品性、耐候性に優れる塗膜を形成する目的で、架橋剤(B)を含む。
架橋剤(B)としては、例えば、ポリイソシアネート、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アルキルシリケートが挙げられる。これらの中でも、ポリオール(A)と反応性の高いポリイソシアネート、メラミン樹脂が好ましく、その中でも特に、硬化温度が低温であり、硬化時間を短縮でき、硬化に必要なエネルギーを低減できる点で、ポリイソシアネートがさらに好ましい。
架橋剤(B)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
(ポリイソシアネート)
ポリイソシアネートとしては、2官能以上のイソシアネート化合物であることが好ましい。2官能以上のイソシアネート化合物としては、公知のものを用いることができる。
2官能のイソシアネート化合物(以下、「ジイソシアネート化合物」ともいう。)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン4,4-ジシクロヘキシルジイソシアネートが挙げられる。
ジイソシアネート化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
3官能以上のイソシアネート化合物としては、前記ジイソシアネート化合物を出発原料として合成されたものであって、ビュレット体、トリメチロールプロパンアダクト体、イソシアヌレート体、アロファネート体等が挙げられる。
3官能以上のイソシアネート化合物としては、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体(旭化成株式会社製の商品名「デュラネート24A-100」)、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体(旭化成株式会社製の商品名「デュラネートP-301-75E」)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(旭化成株式会社製の商品名「デュラネートTPA-100」)、ブロック型イソシアネート体(旭化成株式会社製の商品名「デュラネートMF-K60X」);1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのトリメチロールプロパンアダクト体(三井化学株式会社製の商品名「タケネートD-120N」)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌレート体(三井化学株式会社製の商品名「タケネートD-127N」)、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(三井化学株式会社製の商品名「タケネートD-140N」);ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体(住化バイエルウレタン株式会社製の商品名「デスモジュールXP2679」)等が挙げられる。
3官能以上のイソシアネート化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
塗膜の架橋密度を増加させ、塗膜の耐水性を向上させる観点からは、ポリイソシアネートは、3官能以上のイソシアネート化合物であることが好ましい。
【0030】
また、ポリイソシアネートとして、前記の2官能以上のイソシアネート化合物及びその誘導体中のイソシアネート基をブロック剤でブロックした化合物であるブロック化ポリイソシアネート化合物を使用することもできる。
ブロック化ポリイソシアネート化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチル等のフェノール系;ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピオラクタム等のラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコール等の脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール等のエーテル系;ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、2-メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N-フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等のアミン系;イミダゾール、2-エチルイミダゾール等のイミダゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素等の尿素系;N-フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリ等の亜硫酸塩系;アゾール系の化合物が挙げられる。前記アゾール系の化合物としては、例えば、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、3-メチル-5- フェニルピラゾール等のピラゾール又はピラゾール誘導体;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール又はイミダゾール誘導体;2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン誘導体が挙げられる。
【0032】
ブロック化を行う(ブロック剤を反応させる)にあたっては、必要に応じて溶剤を添加して行なうことができる。
ブロック化反応に用いる溶剤としては、イソシアネート基に対して反応性が低い又は反応しない溶剤が好ましい。このような溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;N-メチル-2-ピロリドン(NMP)が挙げられる。
ブロック化反応に用いる溶剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
ポリイソシアネートとポリオール(A)との配合比は、塗膜の性能の点からNCO/OH[ポリイソシアネートが有するイソシアネート基のモル数/ポリオール(A)が有する水酸基のモル数]が0.5以上2.0以下になるように配合することが好ましく、より好ましくは0.7以上1.8以下であり、さらに好ましくは0.8以上1.5以下である。NCO/OHが前記下限値以上であれば、塗料組成物の硬化速度をより速くすることができる。また、塗膜の架橋密度が高くなり、塗膜の硬度や耐水性が向上しやすい。NCO/OHが前記上限値以下であれば、塗料組成物を基材に塗装した後の乾燥性及び塗膜の基材に対する密着性が向上しやすい。
【0034】
(メラミン樹脂)
メラミン樹脂は、メラミン、グアナミン、尿素等のアミン化合物の、ホルムアルデヒドとの付加縮合により得られる樹脂、又は、このような樹脂の、アルコールとのさらなる付加縮合により得られる樹脂である。
メラミン樹脂としては、例えば、メチル化されたメラミン、ブチル化されたメラミン、メチル化されたベンゾグアナミン、ブチル化されたベンゾグアナミン等が挙げられる。特に、ヘキサメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、及びそれらの混合物などの、全面的に、又は部分的にメチロール化されたメラミン樹脂が好ましい。
【0035】
メラミン樹脂の具体例としては、Cytec社製の商品名「CYMEL 303」、「CYMEL 325」、「CYMEL 1156」;三井化学株式会社製の商品名「YUBAN 20N」、「YUBAN 20SB」、「YUBAN 128」;住友化学株式会社製の商品名「SUMIMAL M-50W」、「SUMIMAL M-40N」、「SUMIMA L M-30W」等が挙げられる。
メラミン樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂は、エポキシ化合物又はエポキシ樹脂であり、分子内に平均してグリシジル基(エポキシ基)を2つ以上有するものであれば、従来公知のものを制限なく使用できる。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂(例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等)、脂環式エポキシ樹脂(例えば3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等)、含窒素環状エポキシ樹脂(例えばトリグリシジルイソシアヌレート、ヒダントイン型エポキシ樹脂等)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロ環型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂が挙げられる。
エポキシ樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
塗料組成物中の架橋剤(B)の含有量は、ポリオール(A)100質量部に対して5質量部以上100質量部以下が好ましく、より好ましくは15質量部以上90質量部以下であり、さらに好ましくは30質量部以上70質量部以下である。架橋剤(B)の含有量が前記範囲内であれば、塗料組成物を基材に塗装した後の乾燥性及び塗膜の基材に対する密着性が向上しやすい。
【0038】
<無機粒子(C)>
無機粒子(C)としては、有機シリル化剤で修飾され、有機溶剤に分散したオルガノシリカゾルであることが好ましく、有機シリル化剤で修飾され、疎水性有機溶剤に分散したオルガノシリカゾルであることがより好ましい。
有機シリル化剤としては、水酸基以外の反応性官能基を有さない有機シリル化剤が好ましい。
【0039】
無機粒子(C)としては、表面に水酸基以外の反応性官能基を有さない無機粒子(以下、無機粒子(C1)」ともいう。)であってもよいし、無機粒子(C1)以外の無機粒子、すなわち、表面に水酸基以外の反応性官能基を有する無機粒子(以下、「反応性無機粒子」ともいう。)であってもよいが、ポリオール(A)などの成分と相互作用することで塗料の貯蔵安定性やポットライフが悪化することを避けることができる点から、無機粒子(C1)が好ましい。
ここで、「水酸基以外の反応性官能基」とは、水酸基以外の他の官能基と反応可能な官能基のことであり、具体的には、メルカプト基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、カルバモイル基等が挙げられる。
無機粒子(C)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
無機粒子(C1)としては、表面に水酸基以外の反応性官能基を有さないシリカ粒子が挙げられる。具体的には、日産化学株式会社製のメタノール(MA)分散シリカゾル(商品名「MA-ST」、「MA-ST-M」)、イソプロピルアルコール(IPA)分散シリカゾル(商品名「IPA-ST」、「IPA-ST-L」、「IPA-ST-ZL」、「IPA-ST-UP」)、エチレングリコール(EG)分散シリカゾル(商品名「EG-ST」、「EG-ST-L」)、ジメチルアセトアミド(DMAC)分散シリカゾル(商品名「DMAC-ST」、「DMAC-ST-L」)、キシレン/ブタノール(XBA)分散シリカゾル(商品名「XBA-ST」)、メチルエチルケトン(MEK)分散シリカゾル(商品名「MEK-ST」、「MEK-ST-L」、「MEK-ST-ZL」、「MEKST-UP」)、メチルイソブチルケトン(MIBK)分散シリカゾル(商品名「MIBK-ST」)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)分散シリカゾル(商品名「PMA-ST」)、トルエン分散シリカゾル(商品名「TOL-ST」)等の市販品を用いることができる。これらは、水酸基以外の反応性官能基を有さない有機シリル化剤で修飾され、親水性有機溶剤又は疎水性有機溶剤に分散したオルガノシリカゾルである。
これらの中でも、塗料組成物の凝集物が少なく、塗膜の外観がより良好となる点から、無機粒子(C1)としては疎水性有機溶剤に分散したオルガノシリカゾルが好ましく、PMA分散シリカゾル、MEK分散シリカゾル、MIBK分散シリカゾルであることがより好ましく、PMA分散シリカゾルであることがさらに好ましい。
無機粒子(C1)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
反応性無機粒子は、例えば、表面に水酸基以外の反応性官能基を有さないシリカ粒子等の無機粒子(C1)を、水酸基以外の反応性官能基を有するシランカップリング剤で表面処理することで得られる。こうして得られたシリカ粒子は、表面に水酸基以外の反応性官能基を有する反応性シリカ粒子である。
反応性シリカ粒子としては、具体的には、CIKナノテック株式会社製の商品名「SIRMEK20WT%-M70」、「SIRMEK50WT%-E86」、「SIRMIBK15WT%-M96」、「SIRMIBK30WT%-S39」;日産化学株式会社製の商品名「MEK-EC-2130Y」、「MEK-EC-6150P」、「MEK-EC-7150P」等の市販品を用いることができる。
反応性無機粒子は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
無機粒子(C)の粒子径の下限は好ましくは2nmであり、より好ましくは4nmである。また無機粒子(C)の粒子径の上限は好ましくは300nmであり、より好ましくは100nmであり、さらに好ましくは50nmである。無機粒子(C)の粒子径が前記下限値以上であれば、塗膜の耐擦り傷性がより向上する。無機粒子(C)の粒子径が前記上限値以下であれば、塗膜の透明性に優れる。
無機粒子(C)の粒子径の前記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。例えば、無機粒子(C)の粒子径は、2nm以上300nm以下が好ましく、より好ましくは4nm以上100nm以下であり、さらに好ましくは4nm以上50nm以下である。
無機粒子(C)の粒子径は、JIS Z 8830に準じた、BET吸着法による比表面積測定値から換算した値である。
【0043】
塗料組成物中の無機粒子(C)の含有量は、ポリオール(A)100質量部に対して1質量部以上100質量部以下であり、好ましくは2質量部以上50質量部以下であり、より好ましくは3質量部以上20質量部以下である。無機粒子(C)の含有量が前記範囲内であれば、塗膜の耐擦り傷性と、長期間の高外観を維持できる。加えて、塗料組成物の製造コストを下げることができる。
【0044】
<溶剤>
溶剤は、少なくともアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートを含む。
溶剤は、アルキレングリコールアルキルエーテルアセテート以外の溶剤(以下、「他の溶剤」ともいう。)をさらに含んでいてもよい。
【0045】
(アルキレングリコールアルキルエーテルアセテート)
アルキレングリコールアルキルエーテルアセテートとしては、例えば、メチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、メチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノブチルエーテルアセテートが挙げられる。これらの中でも、塗料組成物中での凝集物が少なく、塗膜の外観がより良好となる点から、アルキレングリコールアルキルエーテルアセテートとしてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
アルキレングリコールアルキルエーテルアセテートは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
塗料組成物中のアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートの含有量は、溶剤の総質量に対して50質量%以上100質量%以下であり、好ましくは55質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは60質量%以上100質量%以下である。アルキレングリコールアルキルエーテルアセテートの含有量が前記範囲内であれば、無機粒子(C)とポリオール(A)の相溶性が良好となり、塗膜の外観、耐擦り傷性、及び塗料組成物の安定性が良好となる。
【0047】
なお、前記のポリオール(A)は、その製造過程において、反応溶剤としてアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートを用いることがある。その場合、得られる反応生成物は、ポリオール(A)とアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートとを含むものであり、アルキレングリコールアルキルエーテルアセテートを除去することなくそのまま反応生成物を塗料組成物の製造に用いることができる。ポリオール(A)とアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートとを含む反応生成物を塗料組成物の製造に用いる場合は、ポリオール(A)由来で持ち込まれる、すなわち反応生成物に含まれるアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートも、塗料組成物中のアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートの含有量に含める。
また、無機粒子(C)として、例えばPMA分散シリカゾルを用いる場合、無機粒子(C)由来で持ち込まれる、すなわちPMA分散シリカゾルに含まれるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートも、塗料組成物中のアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートの含有量に含める。
【0048】
(他の溶剤)
他の溶剤としては、例えば、メタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、ジアセトンアルコール、2-メトキシエタノール(メチルセロソルブ)、2-エトキシエタノール(エチルセロソルブ)、2-ブトキシエタノール(ブチルセロソルブ)、ターシャリーアミルアルコール等のアルコール系溶剤;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸ブチル、ギ酸ブチル等のカルボン酸エステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤;ジエチルエーテル、メトキシトルエン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、1,1-ジメトキシメタン、1,1-ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;ヘキサン、ペンタンキシレン、トルエン、ベンゼン、トリメチルベンゼン、クメン、キシレン等の脂肪族又は芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
他の溶剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
塗料組成物中の他の溶剤の含有量は、溶剤の総質量に対して0質量%以上50質量%以下であり、好ましくは0質量%以上45質量%以下であり、より好ましくは0質量%以上40質量%以下である。
無機粒子(C)として、アルキレングリコールアルキルエーテルアセテート以外の有機溶剤に分散したオルガノシリカゾルを用いる場合、無機粒子(C)由来で持ち込まれるアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートも、塗料組成物中の他の溶剤の含有量に含める。
【0050】
<耐候性付与剤(D)>
耐候性付与剤(D)は、塗膜に耐候性を付与する成分である。
耐候性付与剤(D)としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤が挙げられる。
耐候性付与剤(D)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸フェニル系化合物又は安息香酸フェニル系化合物等から誘導された化合物が好ましく、塗料組成物に多量に含有させることが可能という点からベンゾフェノン系化合物が好ましく、ポリカーボネート等の基材の黄変を防ぐことができるという点からトリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。
紫外線吸収剤としては、紫外線吸収剤の最大吸収波長が240nm以上380nm以下の範囲にあるものがさらに好ましい。
【0052】
紫外線吸収剤の具体例としては、2-[4-(2-ヒドロキシ-3-ドデシロキシ-プロピル)オキシ-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-[ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン]及び2-[4-(2-ヒドロキシ-3-トリデシロキシ-プロピル)オキシ-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-[ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン]の混合物(BASF社製の商品名「チヌビン400」)、2-[4-(オクチル-2-メチルエタノエート)オキシ-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-[ビス(2,4-ジメチルフェニル)]-1,3,5-トリアジン(BASF社製の商品名「チヌビン479」)、トリス[2,4,6-[2-{4-(オクチル-2-メチルエタノエート)オキシ-2-ヒドロキシフェニル}]-1,3,5-トリアジン](BASF社製の商品名「チヌビン777」)、2-ヒドロキシベンゾフェノン、5-クロロ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクチロキシベンゾフェノン、4-ドデシロキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、フェニルサリシレート、p-tert-ブチルフェニルサリシレート、p-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニルサリシレート、3-ヒドロキシフェニルベンゾエート、フェニレン-1,3-ジベンゾエート、2-(2-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾ-ル物等が挙げられる。
紫外線吸収剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
塗料組成物中の紫外線吸収剤の含有量は、ポリオール(A)、架橋剤(B)及び無機粒子(C)の合計質量(100質量部)に対し、0.1質量部以上40質量部以下が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上30質量部以下である。紫外線吸収剤の含有量が前記下限値以上であれば、塗膜の耐候性が向上する傾向にある。紫外線吸収剤の含有量が前記上限値以下であれば、塗料組成物の硬化性、塗膜の硬度、耐擦り傷性がより向上する傾向にある。
【0054】
(光安定剤)
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。ヒンダードアミン系光安定剤は、紫外線吸収剤と併用することで、塗膜の耐候性をより向上させることができる。
【0055】
光安定剤の具体例としては、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β,β-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5])ウンデカン)ジエタノールとの縮合物(株式会社ADEKA製の商品名「アデカスタブ(登録商標。以下同じ。)LA-63P」)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β,β-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5])ウンデカン)ジエタノールとの縮合物(株式会社ADEKA製の商品名「アデカスタブLA-68P」)、1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの縮合物、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル、1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物(BASF社製の商品名「チヌビン123」)、2-ブチル-2-[3,5-ジ(tert-ブチル)-4-ヒドロキシベンジル]マロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)(BASF社製の商品名「チヌビン144」)、2,4-ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキシロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミン)-1,3,5-トリアジン(BASF社製の商品名「チヌビン152」)、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)とセバシン酸メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)との混合物(BASF社製の商品名「チヌビン292」)等が挙げられる。
光安定剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
塗料組成物中の光安定剤の含有量は、ポリオール(A)、架橋剤(B)及び無機粒子(C)の合計質量(100質量部)に対し、0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上5質量部以下である。光安定剤の含有量が前記下限値以上であれば、塗膜の耐候性が向上しやすい。光安定剤の含有量が前記上限値以下であれば、塗料組成物の硬化性、塗膜の硬度、耐擦り傷性がより向上しやすい。
【0057】
<任意成分>
任意成分としては、例えば、表面調整剤、硬化促進触媒、酸化防止剤、黄変防止剤、ブルーイング剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、帯電防止剤、防曇剤が挙げられる。
任意成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
(表面調整剤)
表面調整剤(レベリング剤)としては、例えば、シリコーン系表面調整剤(シリコーン系レベリング剤)、アクリル系表面調整剤(アクリル系レベリング剤)、フッ素系表面調整剤(フッ素系レベリング剤)が挙げられる。これらの中でも、シリコーン系表面調整剤が好ましい。
シリコーン系表面調整剤としては、例えば、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエステル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アクリル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
表面調整剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
(硬化促進触媒)
塗料組成物は、室温又は加熱して硬化させることができるが、硬化を促進させる目的で、必要に応じて硬化促進触媒を含んでいてもよい。
硬化促進触媒としては、例えば、トリエチルアミン、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、ジラウリル酸ジ-n-ブチルスズ及び1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンが挙げられる。
硬化促進触媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
<塗料組成物の製造方法>
塗料組成物は、ポリオール(A)、架橋剤(B)、無機粒子(C)及び溶剤を均一に混合することによって製造できる。混合の際に、必要に応じて任意成分の1つ以上を加えてもよい。
また、上述したように、ポリオール(A)とアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートとを含む反応生成物、及びPMA分散シリカゾルの少なくとも一方を用いる場合、これらに架橋剤(B)と必要に応じて任意成分の1つ以上とを加えて塗料組成物を製造してもよいし、所望の固形分濃度になるように、さらに溶剤で希釈してもよい。
【0061】
塗料組成物の固形分濃度は、塗料組成物の総質量に対して30質量%以上100質量%未満であることが好ましく、より好ましくは35質量%以上70質量%以下であり、さらに好ましくは35質量%以上60質量%以下であり、特に好ましくは40質量%以上55質量%以下である。塗料組成物の固形分濃度が前記下限値以上であれば、塗装の際の液だれを抑制でき外観が良好となる。塗料組成物の固形分濃度が前記上限値以下であれば、スプレー塗装などの一般的な塗装方法において膜厚の制御が容易となる。
なお、塗料組成物の固形分濃度は、塗料組成物の総質量に対する、塗料組成物から溶剤を除いた残部の質量割合であり、純分濃度ともいう。すなわち、塗料組成物中の溶剤の含有量と、塗料組成物の固形分濃度の合計が100質量%である。
【0062】
<作用効果>
以上説明した本実施形態の塗料組成物は、特定量の無機粒子(C)を含むので、塗膜の耐擦り傷性に優れる。加えて、本実施形態の塗料組成物は、特定量のアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートを含むので、無機粒子(C)が凝集しにくく、外観が良好な塗膜が得られる。
よって、本発明の塗料組成物であれは、塗膜の耐擦り傷性及び塗膜の外観等の各種性能を維持できる塗膜を形成でき、これらの性能は、外装建材、道路資材、自動車を含む車両、航空機などで長時間使用される条件下でも良好に維持できる。
【0063】
[硬化物]
以下、本発明の硬化物の一実施形態について説明する。
本実施形態の硬化物は、前記の本発明の塗料組成物の硬化物である。
なお、本発明の塗料組成物より形成される塗膜は、本発明の塗料組成物の硬化物である。
【0064】
硬化物は、本発明の塗料組成物を硬化させることで得られる。具体的には、塗料組成物を後述の基材に塗装した後に、基材上の塗料組成物を硬化させて硬化物を得る。
塗料組成物の塗装方法は、ハケ塗り、バーコート、スプレーコート、ディップコート、スピンコート及びカーテンコート等の公知の方法で行うことができる。
塗料組成物を硬化させる温度は、基材の耐熱性や熱変形性等を考慮して適宜設定すればよいが、例えば、20℃以上200℃以下が好ましく、より好ましくは60℃以上150℃以下である。
塗料組成物を硬化させる時間は、数分から数時間が好ましい。
【0065】
本実施形態の硬化物は、本発明の塗料組成物を硬化してなるものであり、耐擦り傷性及び外観等の各種性能を維持できる。
【0066】
[積層体]
以下、本発明の積層体の一実施形態について説明する。
本実施形態の積層体は、基材と、前記基材に積層された、前記の本発明の硬化物からなる層(以下、「硬化物層」又は「塗膜」ともいう。)とを有する。
なお、硬化物層は、本発明の塗料組成物より形成される塗膜である。
【0067】
基材の形状としては、例えば、フィルム状、板状、立体的な形状が挙げられる。
基材の材質としては、例えば、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金メッキ鋼、ステンレス鋼、錫メッキ鋼等の金属;ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ポリアリルジグリコールカーボネート樹脂等の樹脂が挙げられる。
なお、基材の硬化物層が積層される表面には、プライマー処理が施されていてもよい。
【0068】
積層体は、基材の表面に本発明の塗料組成物を塗装した後に、基材上の塗料組成物を硬化させて、基材上に硬化物層を形成することで得られる。
塗料組成物の塗装方法及び硬化条件は、本発明の硬化物の説明において先に記載した塗装方法及び硬化条件と同様である。
【0069】
硬化物層の厚さは、1μm以上50μm以下が好ましい。硬化物層の厚さが前記下限値以上であれば、本発明の塗料組成物の効果が得られやすい。硬化物層の厚さが前記上限値以下であれば、クラックを低減できる。
【0070】
なお、積層体は、硬化物層を複数有していてもよい。
例えば、硬化物層を2層有する積層体は、基材の表面に、本発明の塗料組成物(α)を塗装し、硬化させて第一の硬化物層(α)を積層した後に、第一の硬化物層(α)の基材とは反対側の表面に、塗料組成物(α)とは組成の異なる本発明の塗料組成物(β)を塗装し、硬化させて第二の硬化物層(β)を積層することで得られる。
【0071】
また、積層体は、基材上に、硬化物層以外の塗膜、すなわち、本発明の塗料組成物より形成される塗膜以外の塗膜(以下、「他の塗膜」ともいう。)をさらに有していてもよい。以下、硬化物層と他の塗膜とを総称して、「複層塗膜」ともいう。
硬化物層は耐擦り傷性及び外観等の各種性能に優れていることから、複層塗膜の最表層に適している。よって、積層体が他の塗膜を有する場合は、基材上に、他の塗膜及び硬化物層がこの順に積層していることが好ましい。
【0072】
複層塗膜の構成としては、例えば、着色ベース塗膜及びクリヤー塗膜からなる複層塗膜;第一の着色ベース塗膜、第二の着色ベース塗膜及びクリヤー塗膜からなる複層塗膜が挙げられる。上述したように、硬化物層は複層塗膜の最表層に適しており、本発明の塗料組成物は、これら複層塗膜の各塗膜のうち、クリヤー塗膜を形成するクリヤー塗料として特に有用である。
【実施例0073】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はそれぞれ特に記載のない限り「質量部」及び「質量%」を示す。
【0074】
[評価]
<塗膜の光沢性の評価>
(初期光沢)
塗膜の20°光沢値を光沢計(日本電色工業株式会社製、製品名「VG7000」)を用いて測定した。これを塗膜の初期光沢値とする。
【0075】
(擦り傷試験後の光沢)
塗膜の表面にサンドペーパー(砥粒:酸化アルミニウム、メッシュ:2000)を押し当て、学振式摩擦試験機を用いて荷重150gf/cmで10往復させて擦り傷試験を行った。擦り傷試験後の塗膜の20°光沢値を光沢計(日本電色工業株式会社製、製品名「VG7000」)を用いて測定した。これを塗膜の擦り傷試験後の光沢値とする。
【0076】
<塗膜の耐擦り傷性の評価>
光沢保持率(擦り傷試験後の光沢値/初期光沢値×100)を算出し、下記評価基準にて塗膜の耐擦り傷性を評価した。
〇:光沢保持率が85%以上。
×:光沢保持率が85%未満。
【0077】
<塗膜の外観の評価>
塗膜の外観を目視にて観察し、下記評価基準にて塗膜の外観を評価した。
〇:塗膜に異常がない。
×:塗膜にブツが認められる。
【0078】
<塗料組成物の外観の評価>
塗料組成物の外観を目視にて観察し、下記評価基準にて塗料組成物の外観を評価した。
〇:塗料組成物は均一であり、異常がない。
×:塗料組成物中に凝集物が認められる。
【0079】
[ポリオール(A)の製造]
<製造例1:アクリルポリオール含有物(A-1)の製造>
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた四つ口フラスコに、初期溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート55.7部を投入し、窒素ガス通気下で内温140℃となるよう加熱した。内温が安定した後、モノマーとしてスチレン5部、メタクリル酸イソブチル54.3部、メタクリル酸ヒドロキシエチル40部及びアクリル酸0.7部と、重合開始剤としてtert-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート(日本油脂株式会社製、商品名「パーブチル(登録商標)O」)6.5部との混合物(滴下仕込み)を3時間かけて滴下した。滴下終了後1時間保持した後、パーブチル(登録商標)Oの1.4部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート13部に溶解させ、添加した。その後、1時間保持した後、室温まで冷却して、アクリルポリオールを60%含むアクリルポリオール含有物(A-1)を得た。
アクリルポリオール含有物(A-1)中のアクリルポリオールのガラス転移温度(Tg)を前記式(1)より求め、SP値を前記式(2-1)~(2-5)より求め、水酸基価(OHV)を前記式(3)より求め、重量平均分子量(Mw)をGPC法より求めた。GPC測定条件は上述した通りである。これらの結果を表1に示す。
【0080】
<製造例2~7:アクリルポリオール含有物(A-2)~(A-7)の製造>
表1に示すモノマーを用いたこと以外は製造例1と同様にして、アクリルポリオールを60%含むアクリルポリオール含有物(A-2)~(A-7)を製造し、各種特性値を測定した。結果を表1に示す。
ただし、製造例2においては3時間かけて滴下する重合開始剤としてのパーブチル(登録商標)Oの量を6.5部から10部に変更して、アクリルポリオール含有物(A-2)を製造した。
【0081】
【表1】
【0082】
表1中の各略号はそれぞれ以下のものを意味する。なお、表中の空欄は、その成分が配合されていないこと(配合量0部)を意味する。
・St:スチレン(NSスチレンモノマー株式会社製、商品名「スチレンモノマー」)
・iBMA:メタクリル酸イソブチル(三菱ケミカル株式会社製、商品名「アクリエステルIB」)
・tBMA:メタクリル酸t-ブチル(三菱ケミカル株式会社製、商品名「アクリエステルTB」)
・EHMA:メタクリル酸2-エチルヘキシル(三菱ケミカル株式会社製、商品名「アクリエステルEH」)
・EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル(三菱ケミカル株式会社製、商品名「アクリル酸エチル」)
・HEMA:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(三菱ケミカル株式会社製、商品名「アクリエステルHO」)
・AA:アクリル酸(三菱ケミカル株式会社製、商品名「アクリル酸100%」)
【0083】
[実施例1]
<塗料組成物の調製>
ポリオール(A)として、アクリルポリオール含有物(A-1)を45部と、架橋剤(B)としてヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(旭化成株式会社製、商品名「デュラネートTPA-100」)を13.8部と、無機粒子(C)としてPMA分散シリカゾル(日産化学株式会社製、商品名「PMA-ST」、シリカ粒子の粒子径:10~15nm)を4部と、紫外線吸収剤として、チヌビン400(商品名、BASF社製)を0.5部と、光安定剤として、チヌビン152(商品名、BASF社製)を0.25部と、表面調整剤としてシリコ-ン系レベリング剤(BYK社製、商品名「BYK-333」)を0.1部とを均一に混合し、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを20部、SS100を9部用いて溶液を希釈し、塗料組成物を得た。
得られた塗料組成物の外観を評価した。結果を表2に示す。
【0084】
<塗膜の形成>
基材として黒塗り金属塗板上に、得られた塗料組成物を乾燥膜厚が30~40μmとなるよう塗装し、室温(25℃)で10分間の予備乾燥の後、100℃の乾燥機にて30分間、乾燥、硬化させて、基材上に、塗料組成物の硬化物からなる塗膜(硬化物層)が形成された積層体を得た。
得られた積層体の塗膜について、光沢、耐擦り傷性及び外観を評価した。結果を表2に示す。
【0085】
[実施例2~10、比較例1~8]
各成分の配合量が表2、3に示す組成となるように変更した以外は、実施例1と同様にして塗料組成物を調製し、得られた塗料組成物を用いて積層体を作製し、各種評価を行った。結果を表2、3に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
表2、3中の各略号はそれぞれ以下のものを意味する。なお、表中の空欄は、その成分が配合されていないこと(配合量0部)を意味する。また、表中のポリオール(A)の含有量は、塗膜形成成分の総質量に対するアクリルポリオールの含有量(%)である。架橋剤(B)の含有量は、アクリルポリオール100部に対するポリイソシアネートの含有量(部)である。無機粒子(C)の含有量は、アクリルポリオール100部に対するシリカ粒子の含有量(部)である。
・PMA-ST:PMA分散シリカゾル(日産化学株式会社製、シリカ粒子の粒子径:10~15nm、固形分30%)
・MEK-ST-L:MEK分散シリカゾル(日産化学株式会社製、シリカ粒子の粒子径:40~50nm、固形分30%)
・MEK-ST:MEK分散シリカゾル(日産化学株式会社製、シリカ粒子の粒子径:10~15nm、固形分30%)
・TOL-ST:トルエン分散シリカゾル(日産化学株式会社製、シリカ粒子の粒子径:10~15nm、固形分40%)
・MEK-EC-2130Y:MEK分散シリカゾル(日産化学株式会社製、シリカ粒子の粒子径:10~15nm、固形分30%)
・PMA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
・SS100:炭素数9の芳香族炭化水素(JXTGエネルギー株式会社製、商品名「SS-100」)
・EEP:エチル3-エトキシプロピオネート
・MIBK:メチルイソブチルケトン
・MEK:メチルエチルケトン
【0089】
表2から明らかなように、各実施例で得られた塗料組成物は、耐擦り傷性及び外観が良好な塗膜を形成できた。
一方、表3から明らかなように、比較例1~7で得られた塗料組成物は、全溶剤中のアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートの含有量が50質量%未満であるため、無機粒子(C)とポリオール(A)の相溶性が悪く、塗膜にブツが現れる外観異常が発生した。特に、比較例4~6の塗料組成物はアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートの質量割合が少ないため、塗膜の耐擦り傷性が不良であった。
比較例8で得られた塗料組成物は、無機粒子(C)を含有しないため、塗膜の耐擦り傷性が不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の塗料組成物より形成される塗膜は、外観、耐擦り傷性及び硬度等に優れているため、本発明の塗料組成物は、外装建材、道路資材、自動車を含む車両、航空機などの塗装に用いられる塗料として有用である。