(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108587
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】樹脂粒子、トナー、トナー収容ユニット、画像形成装置、及び、画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/093 20060101AFI20240805BHJP
G03G 9/09 20060101ALI20240805BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20240805BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
G03G9/093
G03G9/09
G03G9/087 331
G03G9/097 375
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013027
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(72)【発明者】
【氏名】杉山 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 純一
(72)【発明者】
【氏名】溝口 由花
(72)【発明者】
【氏名】武井 章生
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA06
2H500AA09
2H500BA12
2H500CA06
2H500CA44
2H500CB06
2H500CB10
2H500CB12
2H500CB14
2H500EA42B
2H500EA60A
(57)【要約】
【課題】本発明は、環境負荷が少なく、着色度に優れた樹脂粒子を提供することを目的とする。
【解決手段】酸性カーボンブラックと、PET樹脂及びバイオマス由来樹脂を含有してなる結着樹脂と、を含有し、コア層とシェル層とからなるコアシェル構造を有することを特徴とする樹脂粒子。樹脂粒子は、結着樹脂と金属架橋を形成する金属架橋剤を含有することが好ましく、また、結着樹脂はPET樹脂を10質量%以上70質量%以下含むことが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性カーボンブラックと、PET樹脂及びバイオマス由来樹脂を含有してなる結着樹脂と、を含有し、コア層とシェル層とからなるコアシェル構造を有することを特徴とする樹脂粒子。
【請求項2】
前記結着樹脂と金属架橋を形成する金属架橋剤を含有する、請求項1に記載の樹脂粒子。
【請求項3】
前記金属架橋剤が二価以上の金属塩である、請求項2に記載の樹脂粒子。
【請求項4】
前記結着樹脂がPET樹脂を10質量%以上70質量%以下含む、請求項1に記載の樹脂粒子。
【請求項5】
請求項1に記載の樹脂粒子に外添剤が添加されてなることを特徴とするトナー。
【請求項6】
請求項5に記載のトナーを収容したことを特徴とするトナー収容ユニット。
【請求項7】
静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体上に形成された前記静電潜像を、トナーを用いて現像してトナー像を形成する、トナーを備える現像手段と、
前記静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着手段と、を含み、
前記トナーが、請求項5に記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
前記静電潜像担持体上に形成された前記静電潜像を、トナーを用いて現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着工程と、を含み、
前記トナーが、請求項5に記載のトナーであることを特徴とする画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子、トナー、トナー収容ユニット、画像形成装置、及び、画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トナーには環境への負荷低減が求められている。
そのために、製造でのエネルギー削減や、結着樹脂での植物由来樹脂の採用などが検討されている。しかしながら、植物由来樹脂を用いると顔料の分散性が下がってしまい、着色度などの不具合が発生することが知られている。
特許文献1では、結着樹脂中にバイオマス樹脂を含有する技術が開示されている。
また、特許文献2では、植物由来原料を使用したPETを用いることを提案されている。
【0003】
しかし、これらの技術は混練粉砕法で作製されたトナーである。混練粉砕法で作製されたトナーは、小粒径化が困難であると共に、その形状が不定形かつ粒径分布がブロードであることから出力画像の品質が十分ではないこと、定着エネルギーが高いことなどの問題点があった。
【0004】
そこで、混練粉砕法による上述の問題点を克服するために、重合法によるトナーの製造方法が提案されている。重合法で製造されたトナーは、小粒径化が容易であり、粒度分布も粉砕法で製造されたトナーの粒度分布に比べてシャープであり、更に、離型剤の内包化も可能である。
例えば、特許文献3では、重合法によるトナーの製造方法としては、低温定着性の改良及び耐高温オフセット性の改良を目的として、トナーバインダーとして、ウレタン変性されたポリエステルの伸長反応物からトナーを製造する方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3の技術は、近年要求される高いレベルの環境対応樹脂比率と着色度や定着品質の両立を達成することはできない。
本発明は、環境負荷が少なく、着色度に優れた樹脂粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下に記載する通りの樹脂粒子に係るものである。
酸性カーボンブラックと、PET樹脂及びバイオマス由来樹脂を含有してなる結着樹脂と、を含有し、コア層とシェル層とからなるコアシェル構造を有することを特徴とする樹脂粒子。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、環境負荷の少なく、着色度に優れた樹脂粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、プロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の樹脂粒子はトナーの母体粒子としての使用に適しているので、以下では、本発明の樹脂粒子をトナーの母体粒子に適用したものについて説明する。
【0010】
また、本発明の樹脂粒子はコアシェル構造を有する。
本明細書において、「コアシェル構造を有する」とは、コア層とシェル層とを有する構造を意味し、「シェル層」とは、前記樹脂粒子の最外層に存在する樹脂からなる層を意味し、「コア層」とは、前記シェル層を除く樹脂粒子内の領域を意味する。前記コア層と前記シェル層とは、互いに完全には相溶せずに不均質に形成されてなる。前記コアシェル構造において、前記コア層の表面は、前記シェル層によって被覆された形態であることが好ましい。前記コアシェル構造において、前記コア層の表面は、前記シェル層によって完全に被覆されていてもよく、前記シェル層によって完全に被覆されていなくてもよい。前記コア層の表面が前記シェル層によって完全に被覆されていない形態としては、例えば、前記コア層が前記シェル層に網目状に被覆されている形態、前記コア層が部分的に前記シェル層から露出した形態などが挙げられる。これらの中でも、耐フィルミング性の点から、前記コア層の表面が、前記シェル層によって完全に被覆されていることが好ましい。
【0011】
本発明の樹脂粒子は重合法によって製造することができるが、その製造方法は例えば以下の工程を含む。
・油相作製工程:少なくとも結着樹脂及び/又は結着樹脂の前駆体と着色剤とを有機溶媒に溶解または分散させた溶解液を作製する工程
・転相乳化工程:前記溶解液に水を添加して、油中水型分散液から水中油型分散液に転相させる工程
・脱溶剤工程:前記水中油型分散液から有機溶媒を除去して微粒子分散液を得る工程
・凝集工程:前記微粒子分散液の微粒子を凝集させて凝集粒子を得る工程
・シェル化工程:前記凝集工程で得られた凝集粒子にシェル層を形成する工程
・融着工程:前記シェル化工程で得られたシェル層を有する凝集粒子を熱処理によって融着させて凹凸を減らし、球形化を行う工程
・洗浄、乾燥工程:分散液から樹脂粒子を取り出すために洗浄及び乾燥を行う工程
以下では、上記の工程及び該工程で使用する材料について説明する。
【0012】
[油相作製工程]
まず有機溶媒中に樹脂、着色剤、架橋成分、ワックスなどを溶解あるいは分散させた油相を作製する。
油相作製方法としては、有機溶媒中に攪拌をしながら樹脂、着色剤などを徐々に添加していき、溶解あるいは分散させればよい。 分散に際しては公知のものが使用でき、例えばビーズミルやディスクミルなどの分散機を用いることができる。
油相作製工程で使用する材料について説明する。
【0013】
<環境対応樹脂>
本発明においては、バイオマス由来樹脂及びリサイクル由来樹脂を環境対応樹脂ということがある。
【0014】
<バイオマス由来樹脂>
バイオマス由来樹脂とは、植物由来の化合物を原料として含む樹脂である。アルコールと酸の成分を石油由来のものと植物由来のものとの比率を調整することで、環境対応比率とトナー品質を調整することができる。本発明のバイオマス樹脂量は、製造時のモノマー仕込量から算出したものである。
樹脂モノマー組成が不明な場合は下記のような方法によって、放射性炭素同位体14C濃度およびモノマーを特定することによってバイオマス樹脂量の算出が可能となる。
【0015】
<放射性炭素同位体14C濃度>
一実施形態に係る樹脂粒子の放射性炭素同位体14C濃度(以下、「14C濃度」と称することがある)は、10.8pMC以上であり、11pMC以上が好ましく、20pMC以上がより好ましく、30pMC以上がさらに好ましい。樹脂粒子の放射性炭素同位体14C濃度が10.8pMC未満であると、一般的に、後述するバイオマス度が低いと認知され易く、環境への負荷低減を実現できない。
【0016】
14C濃度は、自然界(大気中)に存在し、植物内が活動している間は光合成によって取り込まれ、大気中に存在する14C濃度と平衡(107.5pMC)となっている。
しかし、生物が生命活動を停止した段階から光合成による取り込みが停止し、14Cの半減期である5,730年に従い14C濃度は減少する。生物を源とする化石資源は、生命活動停止から数万年~数億年を経過しているため、14C濃度は殆ど検出されない。
【0017】
ここで、「pMC」とは、パーセントモダンカーボン(percent Modern Carbon)の略であり、1950年のバイオマス中の14Cと12Cとの比(14C/12C)を100pMCと定義したものである。ただし、現在の大気中の炭素14濃度は、年々増加しているため補正のためにこの値に係数をかけることが規定されている。補正係数はその年度に応じた係数を使用することとする。
【0018】
14C濃度は、下記式(1)で算出されるバイオマス度としても表すことができる。
バイオマス度(%)
=[14C濃度(pMC)/107.5(pMC)]×100・・・式(1)
14C濃度が10.8pMC以上であるとは、バイオマス度が10%以上であることを意味している。前記バイオマス度が10%以上であることは、カーボンニュートラルの観点からも要望される濃度である。
【0019】
14C濃度の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、放射性炭素年代測定法が特に好ましい。放射性炭素年代測定法の測定手順としては、樹脂粒子を燃焼させて、その二酸化炭素(CO2)を還元し、グラファイト(C)を得る。グラファイトの14C濃度を加速器質量分析装置(AMS:Accelerator Mass Spectroscopy、Beta Analytic社製)を用いて計測する。このAMSによる測定は、例えば、特許第4050051号等に開示されている。
【0020】
<リサイクル由来樹脂>
リサイクル由来樹脂としては、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)、ABS(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)がある。
このうち、トナーの材料として特に好ましいのはPET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)である。
【0021】
本発明で用いるリサイクル由来樹脂とは、原料の1つであるPET(ポリエチレンテレフタレート)のリサイクル品をフレーク状に加工したものであり、重量平均分子量(Mw)で30,000~90,000程度のものであるが、PETの分子量分布、組成、製造方法、使用する際の形態等に制限されることはない。また、リサイクル品に制限されることはなく、オフスペックの繊維クズやペレットを用いてもよい。ポリエステル樹脂合成時に、リサイクルPETを導入する比率を調整することで、環境対応比率とトナー品質を調整することができる。結着樹脂中のPET樹脂の含有量は10質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
【0022】
本発明で使用される非晶質樹脂としては、植物由来のアルコールモノマーを用いることが好ましい。
植物由来のアルコールモノマーとしてはプロピレングリコール、酸成分としてはテレフタル酸やコハク酸を使用することが好ましい。植物由来のアルコールモノマーはこれらに特に制限されることはなく、植物由来の成分であれば制限されない。
【0023】
(コア用樹脂)
コア用樹脂としては、低温定着に有利な非晶質ポリエステル樹脂が好ましく、中でも線状のポリエステル樹脂が好ましく、また未変性ポリエステル樹脂が好ましい。
前記未変性ポリエステル樹脂とは、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステルなどの多価カルボン酸又はその誘導体とを用いて得られるポリエステル樹脂であって、イソシアネート化合物などにより変性されていないポリエステル樹脂である。前記非晶質ポリエステル樹脂としては、ウレタン結合及びウレア結合を有しないことが好ましい。前記非晶質ポリエステル樹脂は、構成成分としてジカルボン酸成分を含み、前記ジカルボン酸成分が、テレフタル酸を50mol%以上含有することが好ましい。そうすることにより、耐熱保存性の点で有利である。
【0024】
前記多価アルコールとしては、例えば、ジオールなどが挙げられる。前記ジオールとしては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール;水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記多価カルボン酸としては、例えば、ジカルボン酸などが挙げられる。
前記ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸;ドデセニルコハク酸、オクチルコハク酸等の炭素数1~20のアルキル基又は炭素数2~20のアルケニル基で置換されたコハク酸などが挙げられる。
【0026】
これらの中でも、植物由来の飽和脂肪族のコハク酸を含むことが好ましい。植物由来であることによりカーボンニュートラル性を高めることができる。飽和脂肪族は結晶性ポリエステル樹脂の再結晶化性を高める効果があり、結晶性ポリエステル樹脂のアスペクト比を高め、低温定着性を向上させることが出来る。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、酸価、水酸基価を調整する目的で、その樹脂鎖の末端に3価以上のカルボン酸及び3価以上のアルコールの少なくともいずれかを含んでいてもよい。前記3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、又はそれらの酸無水物などが挙げられる。前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0027】
前記非晶質ポリエステル樹脂の分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定において、重量平均分子量(Mw)3,000~10,000であることが好ましい。数平均分子量(Mn)は、1,000~4,000であることが好ましい。Mw/Mnは、1.0~4.0であることが好ましい。分子量が上記下限値以上の場合、トナーの耐熱保存性や現像機内での攪拌等のストレスに対する耐久性が低下することを抑制することができる。分子量が上記上限値以下の場合、トナーの溶融時の粘弾性が高くなることを抑え、低温定着性が低下することを抑制することができる。
【0028】
前記重量平均分子量(Mw)は、4,000~7,000がより好ましい。前記数平均分子量(Mn)は、1,500~3,000がより好ましい。前記Mw/Mnは、1.0~3.5がより好ましい。
【0029】
前記非晶質ポリエステル樹脂の酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。1mgKOH/g~50mgKOH/gが好ましく、5mgKOH/g~30mgKOH/gがより好ましい。
前記酸価が、1mgKOH/g以上であることにより、トナーが負帯電性となりやすく、更には、紙への定着時に、紙とトナーの親和性が良くなり、低温定着性を向上させることができる。前記酸価が、50mgKOH/g以下であることにより、帯電安定性、特に環境変動に対する帯電安定性が低下することを抑制することができる。
【0030】
前記非晶質ポリエステル樹脂Bの水酸基価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5mgKOH/g以上であることが好ましい。
前記非晶質ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、40℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上70℃以下がより好ましい。前記ガラス転移温度が、40℃以上であることにより、トナーの耐熱保存性、及び現像機内での攪拌等のストレスに対する耐久性が十分なものとなり、また、耐フィルミング性も良好となる。前記ガラス転移温度が、80℃以下であることにより、トナーの定着時における加熱及び加圧による変形が十分なものとなり、低温定着性が良好となる。
【0031】
前記非晶質ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液又は固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができる。簡便には赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1及び990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有しないものを非晶質ポリエステル樹脂として検出する方法が挙げられる。
【0032】
前記非晶質ポリエステル樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー100質量部に対して、50質量部~90質量部が好ましく、60質量部~80質量部がより好ましい。前記含有量が、50質量部以上であると、トナー中の顔料、離型剤の分散性が悪化することを抑制でき、画像のかぶりや乱れが生じることを抑制することができる。90質量部以下であると、結晶性ポリエステル樹脂、及び非晶質ポリエステル樹脂の含有量が少なくなることを防止し、低温定着性が低下することを抑制することができる。前記含有量が、前記のより好ましい範囲であると、高画質、及び低温定着性の全てに優れる点で有利である。
【0033】
(シェル用樹脂)
シェル用樹脂は前記の非晶質ポリエステル樹脂であることが好ましく、植物由来となる樹脂を含むことが好ましい。多価アルコールとしては、例えば、ジオールなどが挙げられる。前記ジオールとしては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物;水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。多価カルボン酸としては、例えば、ジカルボン酸などが挙げられるが、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられる。
【0034】
(結晶性樹脂)
本発明のトナーには、低温定着性向上のために、結晶性樹脂を添加することが好ましい。
結晶性樹脂としては、結晶性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ビニル樹脂、変性結晶性樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
以下、結晶性ポリエステル樹脂について説明する。
【0035】
(結晶性ポリエステル樹脂)
結晶性ポリエステル樹脂は、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステルなどの多価カルボン酸又はその誘導体から得られる。
なお、本発明において結晶性ポリエステル樹脂とは、上記のように、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸又はその誘導体とを用いて得られるものを指し、ポリエステル樹脂を変性したもの、例えばプレポリマー、及びそのプレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させて得られる樹脂は、前記結晶性ポリエステル樹脂には属さない。
【0036】
<<多価アルコール>>
前記多価アルコールとしては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、及び3価以上のアルコールが挙げられる。前記ジオールとしては、例えば、飽和脂肪族ジオールなどが挙げられる。前記飽和脂肪族ジオールとしては、直鎖飽和脂肪族ジオール、分岐飽和脂肪族ジオールが挙げられるが、これらの中でも、直鎖飽和脂肪族ジオールが好ましく、炭素数が2~12の直鎖飽和脂肪族ジオールがより好ましい。前記飽和脂肪族ジオールが分岐型であると、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が低下してしまうことがある。また、前記飽和脂肪族ジオールの炭素数が12を超えると、実用上の材料の入手が困難となる。
【0037】
前記飽和脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンデカンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、前記結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が高く、シャープメルト性に優れる点で、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが好ましい。
前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
<<多価カルボン酸>>
前記多価カルボン酸としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2価のカルボン酸、及び3価以上のカルボン酸が挙げられる。前記2価のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の芳香族ジカルボン酸;などが挙げられる。更に、これらの無水物やこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルも挙げられる。
中でも、カーボンニュートラルの観点から、植物由来の炭素数が12以下の飽和脂肪族が好ましい。
【0039】
前記3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルなどが挙げられる。
これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数4~12の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸と、炭素数2~12の直鎖飽和脂肪族ジオールとから構成されることが好ましい。これにより、結晶性が高く、シャープメルト性に優れるため、優れた低温定着性を発揮できる。
【0041】
また、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性および軟化点を制御する方法として、ポリエステル合成時にアルコール成分にグリセリン等の3価以上の多価アルコールや、酸成分に無水トリメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸を追加して縮重合を行った非線状ポリエステルなどを設計、使用するなどの方法が挙げられる。
【0042】
本発明の結晶性ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液や固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができるが、簡便には赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1もしくは990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有するものを例としてあげることができる。
【0043】
分子量については、上記の分子量分布がシャープで低分子量のものが低温定着性に優れ、分子量が低い成分が多いと耐熱保存性が悪化するという観点から、鋭意検討した結果、o-ジクロロベンゼンの可溶分のGPCによる分子量分布で、横軸をlog(M)、縦軸を重量%で表した分子量分布図のピーク位置が3.5~4.0の範囲にあり、ピークの半値幅が1.5以下であり、重量平均分子量(Mw)で3,000~30,000、数平均分子量(Mn)で1,000~10,000、Mw/Mnが1~10であることが好ましい。
更には、重量平均分子量(Mw)で5,000~15,000、数平均分子量(Mn)で2,000~10,000、Mw/Mnが1~5であることが好ましい。
【0044】
結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、紙と樹脂との親和性の観点から、目的とする低温定着性を達成するためにはその酸価が5mgKOH/g以上、転相乳化法による微粒子の作製のためには、7mgKOH/g以上であることがより好ましく、一方、ホットオフセット性を向上させるには45mgKOH/g以下のものであることが好ましい。また、結晶性高分子の水酸基価については、所定の低温定着性を達成し、かつ良好な帯電特性を達成するためには0~50mgKOH/g、より好ましくは5~50mgKOH/gのものが好ましい。
【0045】
(顔料)
本発明における酸性カーボンブラックとは、その表面に酸性基を有するpHが5以下のカーボンブラックを指す。アルカリ性のカーボンブラックと比較し表面酸性基を多く持つ為、酸性のカーボンブラックは負に帯電し易い。トナーの結着樹脂として使われるポリエステル樹脂、PET樹脂は負帯電の荷電性を持つ為、酸性カーボンブラックは静電的に反発し易く、顔料の均一微分散が可能となり、結果的に印字濃度が上がると思われる。
【0046】
本発明におけるカーボンブラックのpHは、以下の測定法によって計測することができる。
即ち、カーボンブラック試料1g~10gをビーカーに量り採り、試料1gにつき10mgの割合で水を加え、時計皿で覆い、15分間煮沸する。
煮沸後室温まで冷却し、傾斜法又は遠心分離法によって上澄み液を除去して、泥状物を残す。
この泥状物中にガラス電極pH計の電極を入れ、JISZ8802によってpHを測定する。
この場合、電極の挿入位置により測定値が変化することがあるから、ビーカーを動かして電極の位置を変えて電極面の泥状面が十分に接触するように注意して量り、pH値が一定になったときの値を読む。
【0047】
本発明で使用される酸性カーボンブラックは、具体的な例としては、三菱化成社製のMA7、MA8、MA11、MA100、#1000、#2200B、#2350、#2400B、キャボット社製のMOGUL L、REGAL 400R、MONARCH 1000等、コロンビア社製のRAVENシリーズの1035、1040、1255、3500等が挙げられる。
【0048】
酸性カーボンブラック次のようにして製造することができる。
カーボンブラックは一般にチャンネルブラック法、ファーネスブラック法を用いて製造される。
チャンネルブラック法は天然ガス、タウンガスや炭化水素を原料として部分燃焼させて冷たい面に衝突させる。
ファーネスブラック法は天然ガスや石油留分を原料として高温雰囲気に保たれ密閉式反応炉中に原料を噴霧し、熱分解する。
これらのカーボンブラックを硝酸等で酸化処理を行い所望の酸性度を有する酸性カーボンブラックを得る。
【0049】
(有機溶媒)
有機溶媒は、沸点が100℃未満の揮発性であることが、後の有機溶媒除去が容易になる点から好ましい。
このような有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。
【0050】
有機溶媒中に溶解あるいは分散させる樹脂がポリエステル骨格を有する樹脂である場合、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系の溶媒もしくはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系の溶媒を用いたほうが溶解性が高く好ましく、このなかでは溶媒除去性の高い酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトンが特に好ましい。
油相には、帯電制御剤などを添加してもよい。
【0051】
(帯電制御剤)
帯電制御剤としては公知のものが全て使用でき、例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、四級アンモニウム塩(フッ素変性四級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。
【0052】
具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP-51、含金属アゾ染料のボントロンS-34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE-82、サリチル酸系金属錯体のE-84、フェノール系縮合物のE-89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP-302、TP-415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA-901、ホウ素錯体であるLR-147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。帯電制御剤は性能を発現し定着性などへの阻害がない範囲の量で用いられればよく、トナー中に0.5~5質量%、好ましくは0.8~3質量%含まれるのが良い。
【0053】
(ワックス)
ワックスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、融点が50℃~120℃の低融点の離型剤が好ましい。低融点の離型剤は、前記樹脂と分散されることにより、離型剤として効果的に定着ローラとトナー界面との間で働き、これによりオイルレス(定着ローラにオイルの如き離型剤を塗布しない)でもホットオフセット性が良好となる。離型剤としては、例えば、ロウ類、ワックス類、等が好適に挙げられる。ロウ類及びワックス類としては、例えば、カルナウバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス;オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス;などの天然ワックスが挙げられる。また、これら天然ワックスのほか、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス;などが挙げられる。更に、12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド;低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ-n-ステアリルメタクリレート、ポリ-n-ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n-ステアリルアクリレート-エチルメタクリレートの共重合体等);側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子、などを用いてもよい。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。カーボンニュートラルの観点からは、植物系ワックスが好ましい。
【0054】
ワックスの融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃~120℃が好ましく、60℃~90℃がより好ましい。
融点が、50℃以上であれば、ワックスが耐熱保存性に悪影響を与えるのを防止でき、120℃以下であれば、低温での定着時にコールドオフセットを起こすという問題を有効に防止できる。
ワックスの溶融粘度としては、該ワックスの融点より20℃高い温度での測定値として、5cps~1,000cpsが好ましく、10cps~100cpsがより好ましい。溶融粘度が、5cps以上であれば、離型性の低下を防止でき、1,000cps以下であれば、耐ホットオフセット性、低温定着性の効果が十分発揮できる。
ワックスの前記トナーにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0質量%~40質量%が好ましく、3質量%~30質量%がより好ましい。前記含有量が、40質量%以下であれば、トナーの流動性悪化を防止することができる。
【0055】
[転相乳化工程]
次に、油相作製工程で得られた油相を微粒子化する。
本発明では、前期油相を水酸化ナトリウムやアンモニア水などのアルカリで中和した後、それにイオン交換水を添加していき、油中水型分散液から水中油型分散液に転相させる転相乳化によって着色微粒子分散体を得る。
【0056】
[脱溶剤工程]
得られた着色微粒子分散体から有機溶媒を除去するためには、着色微粒子分散体を攪拌しながら徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。あるいはまた、得られた着色微粒子分散体を攪拌しながら乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の有機溶媒を完全に除去することも可能である。
もしくは、着色微粒子分散体を攪拌しながら減圧し、有機溶媒を蒸発除去しても良い。
後の2つの手段は、最初の手段と併用することも可能である。
着色微粒子分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。
スプレイドライヤー、ベルトドライヤー、ロータリーキルンなどの短時間の処理で十分目的とする品質が得られる。
以上の方法で、着色微粒子分散液を得ることが出来る。
【0057】
[凝集工程]
次に、得られた着色微粒子分散液を攪拌しながら任意の粒径になるまで凝集させる。凝集させるためには、凝集剤を添加したり、pH調整を行う等、既存の方法が使用できる。凝集剤を添加する場合、そのまま添加してもよいが、凝集剤の水溶液にしたほうが局所的な高濃度化を避けることができるため好ましい。また、凝集塩は着色粒子の粒径を見ながら、徐々に添加することが好ましい。凝集時の分散液の温度は、使用する樹脂のTg付近であることが好ましい。液温が低すぎると凝集があまり進まないため効率が悪く、液温が高すぎると凝集速度が速くなり、粗大粒子が発生するなど粒径分布が悪化する。
【0058】
狙いの粒径に達したら、凝集を停止させる。凝集を停止させる方法としては、イオン価数の低い塩やキレート剤を添加する方法や、pHを調整する方法、分散液の温度を下げる方法、水系媒体を多量に添加して濃度を薄める方法などが使用できる。
【0059】
以上の方法により、着色凝集粒子の分散液を得ることが出来る。凝集工程においては、離型剤としてワックスを添加したり、低温定着性のために結晶性樹脂を添加してもよい。その場合、ワックスを水系媒体に分散させた分散液や、同様に結晶性樹脂の分散液を用意し、前期着色微粒子分散液と混合した上で凝集させていくことで、均一にワックスや結晶性樹脂が分散した凝集粒子を得ることが出来る。
以下、凝集剤、について説明する。
【0060】
(凝集剤)
凝集剤としては、公知ものが使用できる。例えば、ナトリウム、カリウム等の1価の金属の金属塩や、カルシウム、マグネシウム等の2価の金属の金属塩、鉄、アルミニウム等の3価の金属の金属塩などが使用できる。
【0061】
[融着工程]
次に、得られた前記凝集粒子を熱処理によって融着させて凹凸を減らし、球形化を行う。
融着は、着色凝集粒子の分散液を攪拌しながら加熱すればよい。液の温度は、使用している樹脂のTgを超えた温度付近が好ましい。
【0062】
[洗浄、乾燥工程]
上記の方法で得られたトナー粒子分散液には、トナー粒子のほかに凝集塩などの副材料が含まれているため、分散液からトナー粒子のみを取り出すために洗浄を行う。
トナー粒子の洗浄方法としては、遠心分離法、減圧濾過法、フィルタープレス法などの方法があるが、本発明においては特に限定されるものではない。
【0063】
いずれの方法によってもトナー粒子のケーキ体が得られるが、一度の操作で十分に洗浄できない場合は、得られたケーキを再度水系溶媒に分散させてスラリーにして上記のいずれかの方法でトナー粒子を取り出す工程を繰り返しても良いし、減圧濾過法やフィルタープレス法によって洗浄を行うのであれば、水系溶媒をケーキに貫通させて着色樹脂粒子が抱き込んだ副材料を洗い流す方法を採っても良い。
【0064】
この洗浄に用いる水系溶媒は水あるいは水にメタノール、エタノールなどのアルコールを混合した混合溶媒を用いるが、コストや排水処理などによる環境負荷を考えると、水を用いるのが好ましい。洗浄されたトナー粒子は水系媒体を多く抱き込んでいるため、乾燥を行い水系媒体を除去することでトナー粒子のみを得ることができる。
【0065】
乾燥方法としては、スプレイドライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動槽乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機などの乾燥機を使用することができる。
乾燥されたトナー粒子は最終的に水分が1%未満になるまで乾燥を行うのが好ましい。
また、乾燥後の着色樹脂粒子は軟凝集をしており使用に際して不都合が生じる場合には、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、コーヒーミル、オースターブレンダー、フードプロセッサーなどの装置を利用して解砕を行い、軟凝集をほぐしても良い。
【0066】
[アニーリング工程]
結晶性樹脂を添加した場合、乾燥後にアニーリング処理を行うことで、非結晶性樹脂と結晶性樹脂とが相分離し、定着性が向上する。具体的には、Tg付近の温度で10時間以上保管すればよい。
【0067】
[外添工程]
本発明で得られたトナー粒子には、流動性、帯電性、クリーニング性などを持たせるために、無機微粒子や高分子系微粒子、クリーニング助剤などを添加、混合してもよい。
具体的な混合手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。
装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などがあげられる。
【0068】
(外添剤)
無機微粒子の一次粒子径は、5nm~2μmであることが好ましく、特に5nm~500nmであることが好ましい。
また、BET法による比表面積は、20~500m2/gであることが好ましい。
この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01~5質量%であることが好ましい。無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
【0069】
高分子系微粒子としては、例えばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
【0070】
このような流動化剤は表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。
例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコンオイル、変性シリコンオイルなどが好ましい表面処理剤として挙げられる。
【0071】
感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩、例えばポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合などによって製造された、ポリマー微粒子などを挙げることかできる。
ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01から1μmのものが好ましい。
【0072】
(トナー収容ユニット)
本発明におけるトナー収容ユニットとは、トナーを収容する機能を有するユニットに、トナーを収容したものをいう。ここで、トナー収容ユニットの態様としては、例えばトナー収容容器、現像器、プロセスカートリッジ等があげられる。
トナー収容容器とは、トナーを収容した容器をいう。
現像器は、トナーを収容し現像する手段を有するものをいう。
プロセスカートリッジとは、少なくとも像担持体と現像手段とを一体とし、トナーを収容し、画像形成装置に対して着脱可能であるものをいう。前記プロセスカートリッジは、更に帯電手段、露光手段、クリーニング手段のから選ばれる少なくとも一つを備えてもよい。
【0073】
(画像形成装置)
次に、本発明の画像形成装置により画像を形成する方法を実施する一の態様について、
図1を参照しながら説明する。本実施形態の画像形成装置としては、プリンターが例として示されているが、画像形成装置は、複写機、ファクシミリ、複合機等のトナーを用いて画像を形成することが可能であれば、特に限定されない。
画像形成装置は、給紙部210と、搬送部220と、作像部230と、転写部240と、定着器250とを備えている。
給紙部210は、給紙される紙Pが積載された給紙カセット211と、給紙カセット211に積載された紙Pを一枚ずつ給紙する給紙ローラ212を備えている。
【0074】
搬送部220は、給紙ローラ212により給紙された紙Pを転写部240の方向へ搬送するローラ221と、ローラ221により搬送された紙Pの先端部を挟み込んで待機し、紙を所定のタイミングで転写部240に送り出す一対のタイミングローラ222と、カラートナー像が定着した紙Pを排紙トレイ224に排出する排紙ローラ223を備えている。
【0075】
作像部230は、所定の間隔をおいて、図中、左方から右方に向かって順に、イエロートナーを有した現像剤を用いて画像を形成する画像形成ユニットYと、シアントナーを有した現像剤を用いる画像形成ユニットCと、マゼンタトナーを有した現像剤を用いる画像形成ユニットMと、ブラックトナーを有した現像剤を用いる画像形成ユニットKと、露光器233を備えている。
なお、画像形成ユニット(Y,C,M,K)のうち、任意の画像形成ユニットを示す場合には、画像形成ユニットという。
【0076】
また、現像剤は、トナーとキャリアを有する。4つの画像形成ユニット(Y,C,M,
K)は、それぞれに用いられる現像剤が異なるのみで、機械的な構成は実質的に同一である。
【0077】
転写部240は、駆動ローラ241及び従動ローラ242と、駆動ローラ241の駆動に伴い、図中、反時計回りに回転することが可能な中間転写ベルト243と、中間転写ベルト243を挟んで、感光体ドラム231に対向して設けられた一次転写ローラ(244Y,244C,244M,244K)と、トナー像の紙への転写位置において中間転写ベルト243を挟んで対向して設けられた二次対向ローラ245及び二次転写ローラ246を備えている。
【0078】
定着器250は、ヒータが内部に設けられており、紙Pを加熱する定着ベルト251と、該定着ベルト251に対して回転可能に加圧することによりニップを形成する加圧ローラ252とを備えている。これにより、紙P上のカラートナー像に熱と圧力が印加されて、カラートナー像が定着する。カラートナー像が定着した紙Pは、排紙ローラ223により排紙トレイ224に排紙され、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0079】
(プロセスカートリッジ)
本発明に関するプロセスカートリッジは、各種画像形成装置に着脱可能に成型されており、静電潜像を担持する静電潜像担持体と、静電潜像担持体上に担持された静電潜像を本発明の現像剤で現像してトナー像を形成する現像手段を少なくとも有する。なお、本発明のプロセスカートリッジは、必要に応じて、他の手段をさらに有していてもよい。
【0080】
前記現像手段としては、本発明の現像剤を収容する現像剤収容部と、現像剤収容部内に収容された現像剤を担持するとともに搬送する現像剤担持体を少なくとも有する。なお、現像手段は、担持する現像剤の厚さを規制するため規制部材等をさらに有してもよい。
【0081】
図2に、本発明に関するプロセスカートリッジの一例を示す。プロセスカートリッジ110は、感光体ドラム10、コロナ帯電器58、現像器40、転写ローラ80及びクリーニング装置90を有する。
【実施例0082】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」及び「%」は、特に断りのない限り、「質量部」及び「質量%」を示し、各原材料における固形分の配合量を示す。
【0083】
<非晶質ポリエステル樹脂1の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌機及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、
プロピレングリコール、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物、テレフタル酸、及び植物由来のコハク酸を、プロピレングリコールとビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物とが、モル比(プロピレングリコール/ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物)で40/60であり、テレフタル酸とコハク酸とがモル比(テレフタル酸/コハク酸)で86/14であり、水酸基とカルボキシル基とのモル比であるOH/COOHが1.3となるように仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1mol%になるよう入れ、180℃、常圧、3時間で反応させ、[非晶質ポリエステル樹脂1]を得た。
この[非晶質ポリエステル樹脂1]の植物由来アルコールモノマーの比率は33.5g/モルであった。
【0084】
<非晶質ポリエステル樹脂2の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌機及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、プロピレングリコール、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物、テレフタル酸、及び植物由来のコハク酸を、プロピレングリコールとビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物とが、モル比(プロピレングリコール/ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物)で30/70であり、テレフタル酸とコハク酸とが、モル比(テレフタル酸/コハク酸)で86/14であり、水酸基とカルボキシル基とのモル比であるOH/COOHが1.3となるように仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1mol%になるよう入れ、180℃、常圧、3時間で反応させ、[非晶質ポリエステル樹脂2]を得た。
この[非晶質ポリエステル樹脂2]の植物由来アルコールモノマーの比率は28.8g/モルであった。
【0085】
<非晶質ポリエステル樹脂3の合成>
冷却管、攪拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に,ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物562部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル 付加物75部,ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物87部、テレフタル酸143部、アジピン酸126部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ,常圧で230℃で8時間反応し、さらに10~15mmHgの減圧で5時間反応した後,反応容器に無水トリメリット酸69部を入れ、180℃、常圧で2時間反応し、[非晶質ポリエステル樹脂3]を得た。
この[非晶質ポリエステル樹脂3]の植物由来アルコールモノマーの比率は0g/モルであった。
【0086】
<結晶性ポリエステル樹脂の合成>
植物由来の1、12-ドデカン二酸、及び植物由来の1,9-ノナンジオールを、水酸基とカルボキシル基とのモル比であるOH/COOHが1.1、さらに無水トリメリット酸を0.047モル比となるように仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に、180℃で10時間反応させた後、200℃に昇温して3時間反応させ、更に8.3kPaの圧力にて2時間反応させて[結晶性ポリエステル樹脂]を得た。
【0087】
<結晶性ポリエステル樹脂分散液の作製>
[結晶性ポリエステル樹脂]350部と、メチルエチルケトン210部、イソプロピルアルコール61.8部をセパラブルフラスコに入れ、これを50℃で充分混合、溶解した後、10%アンモニア水溶液を16.24部滴下した。
加熱温度を65℃に下げ、攪拌しながらイオン交換水を、送液ポンプを用いて送液速度8g/minで滴下し、液が均一に白濁したのち、送液速度12g/minに上げ、総液量が1400部になったところで、イオン交換水の滴下を止めた。
その後、減圧下で溶媒の除去を行い、[結晶性ポリエステル樹脂分散液]を得た。
【0088】
<マスターバッチ1の調製>
水1,200部、カーボンブラック(REGAL400R、CABOT製)〔pH=4.0〕500部、及び[非晶質ポリエステル樹脂1]500部を加え、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)で混合し、混合物を2本ロールを用いて150℃で30分間混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕し、[マスターバッチ1]を得た。
【0089】
<マスターバッチ2の調製>
水1,200部、カーボンブラック(Nipex60、Degusa製)〔pH=10.0〕500部、及び[非晶質ポリエステル樹脂2]500部を加え、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)で混合し、混合物を2本ロールを用いて150℃で30分間混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕し、[マスターバッチ2]を得た。
【0090】
<マスターバッチ3の調製>
水1,200部、カーボンブラック(Nipex60、Degusa製)〔pH=10.0〕500部、及び[非晶質ポリエステル樹脂3]500部を加え、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)で混合し、混合物を2本ロールを用いて150℃で30分間混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕し、[マスターバッチ3]を得た。
【0091】
<マスターバッチ4の調製>
水1,200部、カーボンブラック(Nipex60、Degusa製)〔pH=6.0〕500部、及び[非晶質ポリエステル樹脂2]500部を加え、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)で混合し、混合物を2本ロールを用いて150℃で30分間混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕し、[マスターバッチ4]を得た。
【0092】
<マスターバッチ5の調製>
水1,200部、カーボンブラック(Nipex60、Degusa製)〔pH=7.0〕500部、及び[非晶質ポリエステル樹脂2]500部を加え、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)で混合し、混合物を2本ロールを用いて150℃で30分間混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕し、[マスターバッチ5]を得た。
【0093】
[実施例1]
(コアエマルション1の調製)
<油相の調製>
[非晶質ポリエステル樹脂1]830部、[顔料マスターバッチ1]100部、フレーク状のリサイクルPET 20部、を容器に入れ、TKホモミキサー(プライミクス株式会社製)で5,000rpmで60分間混合し、[油相1]を得た。
【0094】
<水相の調製>
水990部、ドデシル硫酸ナトリウム20部、及び酢酸エチル90部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを[水相1]とした。
【0095】
<転相乳化>
[油相1]700部をTKホモミキサーで、回転数8,000rpmで撹拌しながら28%アンモニア水20部を加え、10分間混合した後、[水相1]1,200部を徐々に滴下していき、[油相1]を転相乳化して[乳化スラリー1]。を得た。
【0096】
<脱溶剤>
撹拌機及び温度計をセットした容器に、[乳化スラリー1]を投入し、30℃180分脱溶剤した後、[コアエマルション1]を得た。
【0097】
(シェルエマルション1の作製)
[コアエマルション1]の調製において、油相の調製における、[非晶質ポリエステル樹脂1]830部、[結晶性ポリエステル樹脂分散液]100部、[マスターバッチ1]を[非晶質ポリエステル樹脂1]500部とし、水相の調製における、ドデシル硫酸ナトリウム20部、及び酢酸エチル90部を、ドデシル硫酸ナトリウム0部、及びMEK90部とした以外は[コアエマルション1]の調製と同様にして[シェルエマルション1]を得た。
【0098】
<凝集及びシェル化>
[コアエマルション1]に3%硫酸マグネシウム溶液100部を滴下して更に5分攪拌した後、60℃に昇温し、粒径が5.0μmになったところで[シェルエマルション1]20部を滴下して30分攪拌した後、65℃に昇温し塩化ナトリウムを50部添加して凝集工程を終了し、[凝集スラリー1]を得た。
【0099】
<融着>
[凝集スラリー1]を攪拌しながら70℃に加熱して、所望の平均円形度である0.957になったところで冷却し、[分散スラリー1]を得た。
【0100】
<洗浄・乾燥>
[分散スラリー1]100部を減圧濾過した後、
(1):濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(2):(1)の濾過ケーキに10%水酸化ナトリウム水溶液100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。
(3):(2)の濾過ケーキに10%塩酸100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(4):(3)の濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過する、
という前記(1)~(4)の操作を2回行い[濾過ケーキ1]を得た。
[濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmのメッシュで篩い[樹脂粒子1]を得た。
【0101】
<外添剤処理工程>
[樹脂粒子1]100部に対して、外添剤として疎水性シリカ(HDK-2000、クラリアント株式会社製)2.0部をヘンシェルミキサーにて混合し、目開き500メッシュの篩を通過させ、[トナー1]を得た。
【0102】
添加する非晶質ポリエステル樹脂、マスターバッチ、PETの添加部数を、以下の表1に記載した通り変更し、かつ、シェルエマルションとして前記シェルエマルション1及び下記シェルエマルション2、3を使用した以外は[樹脂粒子1]と同様にして、[樹脂粒子2]~[樹脂粒子18]を作製し、また、これらの樹脂粒子に実施例1と同様にして外添剤処理工程を実施して[トナー2]~[トナー18]を得た。
【0103】
(シェルエマルション2)
[シェルエマルション1]の調製において[非晶質ポリエステル樹脂1]500部を[非晶質ポリエステル樹脂2]500部とした以外は[シェルエマルション1]の調製と同様にして[シェルエマルション2]を得た。
【0104】
(シェルエマルション3)
[シェルエマルション1]の調製において[非晶質ポリエステル樹脂1]500部を[非晶質ポリエステル樹脂3]500部とした以外は[シェルエマルション1]の調製と同様にして、シェルエマルション3]を得た。
これらのトナーを用いて、着色度、環境対応性、定着性の評価を行った。
表1に樹脂粒子の処方と評価結果を示す。
【0105】
(評価方法)
<環境対応性>
樹脂微粒子中の環境対応樹脂比率で、環境対応性を判断した。判断基準は以下の通りである。
◎、○、△を合格とし×を不合格とした。
-評価基準-
◎:結着樹脂に植物由来アルコールモノマーが20%以上導入され、かつシェル非晶質樹脂のPET割合が40%以上
○:コア結着樹脂に植物由来アルコールモノマーが30%以上導入され、かつシェル非晶質樹脂のPET割合が10%以下
×:結着樹脂に植物由来アルコールモノマーが5%以下であり、かつシェル非晶質樹脂のPET割合が5%以下
【0106】
<着色度評価>
-測定方法-
各二成分現像剤を用いてアルミ基板上にカスケード現像にてトナー付着量0.3mg/cm2となるように現像した後、アルミ基板から特菱アート両面紙へ静電転写し、ベルト定着機(線速282mm/sec、ニップ時間40.1msec,ニップ圧37N/cm2)にて、定着温度180℃で定着した画像を作成した。
前記画像について、着色度(X-Rite社製Model938にてID測定)を測定した。
ID値によって以下のようにランク分けした。
◎、○、△を合格とし×を不合格とした。
-評価基準-
ランク ID値
◎ : 1.55以上
○ : 1.50以上1.55未満
△ : 1.45以上1.50未満
× : 1.45未満
【0107】
<低温定着性>
複合樹脂粒子を紙面上に0.8mg/cm2となるように均一に載せる。
このとき粉体を紙面に載せる方法は、熱定着機を外したプリンターを用いる。
上記の重量密度で粉体を均一に載せることができるのであれば他の方法を用いてもよい。
この紙を加圧ローラに定着速度(加熱ローラ周速)213mm/sec、定着圧力(加圧ローラ圧)10kg/cm2の条件で通した時のコールドオフセットの発生温度(MFT)を測定した。
コールドオフセットの発生温度が低いほど、低温定着性に優れることを意味する。
◎、○を合格とし△、×を不合格とした。
〔コールドオフセット評価基準〕
ランク 定着下限温度
◎ : 130℃以下
○ : 130℃超 135℃以下
△ : 135℃超 140℃以下
× : 140℃超
【0108】
【0109】
本発明の態様は例えば以下のとおりである。
(1)酸性カーボンブラックと、PET樹脂及びバイオマス由来樹脂を含有してなる結着樹脂と、を含有し、コア層とシェル層とからなるコアシェル構造を有することを特徴とする樹脂粒子。
(2)前記結着樹脂と金属架橋を形成する金属架橋剤を含有する、上記(1)に記載の樹脂粒子。
(3)前記金属架橋剤が二価以上の金属塩である、上記(2)に記載の樹脂粒子。
(4)前記結着樹脂がPET樹脂を10質量%以上70質量%以下含む、上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の樹脂粒子。
(5)上記(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の樹脂粒子に外添剤が添加されてなることを特徴とするトナー。
(6)上記(5)に記載のトナーを収容したことを特徴とするトナー収容ユニット。
(7)静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体上に形成された前記静電潜像を、トナーを用いて現像してトナー像を形成する、トナーを備える現像手段と、
前記静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着手段と、を含み、
前記トナーが、上記(5)に記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置。
(8)静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
前記静電潜像担持体上に形成された前記静電潜像を、トナーを用いて現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着工程と、を含み、
前記トナーが、上記(5)に記載のトナーであることを特徴とする画像形成方法。