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特開2024-108687X線透過検査装置及びX線透過検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024108687
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】X線透過検査装置及びX線透過検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/18 20180101AFI20240805BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20240805BHJP
【FI】
G01N23/18
G01N23/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013183
(22)【出願日】2023-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】松原 哲
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001AA10
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA06
2G001DA08
2G001GA01
2G001GA13
2G001KA03
2G001KA04
2G001KA05
2G001PA11
(57)【要約】
【課題】照射角度の差異が大きな透過像が得られ、異物位置の奥行きを高い精度で得ることができるX線透過検査装置及びX線透過検査方法を提供すること。
【解決手段】試料Sに対してX線を照射するX線源2A,2Bと、試料に対してX線源と反対側に設置されX線が試料を透過した際の透過X線を検出するX線センサ3A,3Bと、試料を特定の搬送方向に移動させる試料移動機構4と、X線センサで検出した透過X線に基づいて試料中の厚さ方向における異物の高さ位置を算出する演算部5とを備え、X線源とX線センサとが、互いに1対1で対応する組み合わせで複数対設けられ、複数対の各X線源が、試料の厚さ方向に対して互いに異なる照射角度でX線を試料に照射し、複数対の各X線センサが、対応するX線源から照射されたX線の透過X線だけを検出可能に配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に対してX線を照射するX線源と、
前記試料に対して前記X線源と反対側に設置され前記X線が前記試料を透過した際の透過X線を検出するX線センサと、
前記試料を特定の搬送方向に移動させる試料移動機構と、
前記X線センサで検出した前記透過X線に基づいて前記試料中の厚さ方向における異物の高さ位置を算出する演算部とを備え、
前記X線源と前記X線センサとが、互いに1対1で対応する組み合わせで複数対設けられ、
前記複数対の各X線源が、前記試料の厚さ方向に対して互いに異なる照射角度でX線を前記試料に照射し、
前記複数対の各X線センサが、対応する前記X線源から照射されたX線の前記透過X線だけを検出可能に配置されていることを特徴とするX線透過検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線透過検査装置において、
前記演算部が、前記複数対の各X線センサで検出した複数のX線透過像のずれ量から前記異物の高さ位置を算出することを特徴とするX線透過検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のX線透過検査装置において、
前記X線センサが、TDIセンサであることを特徴とするX線透過検査装置。
【請求項4】
請求項1に記載のX線透過検査装置において、
前記試料の表面に設置された基準片を備え、
前記演算部が、前記異物の高さ位置を前記基準片の高さ位置と比較して算出することを特徴とするX線透過検査装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のX線透過検査装置において、
前記複数対の各X線源が、各X線が交差する方向に照射することを特徴とするX線透過検査装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のX線透過検査装置において、
前記複数対の各X線源が、X線を前記搬送方向で互いに離間した領域に照射することを特徴とするX線透過検査装置。
【請求項7】
請求項1に記載のX線透過検査装置を用いたX線透過検査方法であって、
前記X線透過検査装置が、前記X線源と前記X線センサとの組み合わせを2対備え、
前記試料を前記搬送方向に移動させる移動ステップと、
前記2対のうち一方の前記X線センサで検出した前記透過X線に基づいて前記試料中の異物が検出された前記搬送方向の位置を第1通過点として検出する第1通過点検出ステップと、
前記2対のうち他方の前記X線センサで検出した前記透過X線に基づいて前記試料中の異物が検出された前記搬送方向の位置を第2通過点として検出する第2通過点検出ステップと、
前記第1通過点と前記第2通過点と前記2対の前記照射角度とに基づいて前記試料中の異物の高さ位置を算出する演算ステップとを有していることを特徴とするX線透過検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の金属異物等を検出可能なX線透過検査装置及びX線透過検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ニッケル水素系バッテリーよりもエネルギー密度の高いリチウムイオン二次電池は、非水電解質二次電池の一種で、電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担い、かつ金属リチウムを電池内に含まない二次電池であり、ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話機含め自動車,ハイブリッド車又は電気自動車等のバッテリーとして採用されている。
一般に、試料中の金属異物等を検出するために、試料にX線を照射して取得したX線透過像により検査を行うX線透過検査が用いられており、例えば上記リチウムイオン二次電池の材料中の異物検査にもX線透過検査が用いられている。
【0003】
従来、例えば特許文献1に記載されているように、異物混入の有無を透過X線像によって検出する異物検出方法が提案されている。
また、特許文献2のように複数のX線センサを用いて試料からの透過X線から複数の画像を得て、この複数の画像のずれ量を用いてX線源から試料の検査対象までの距離、つまり奥行き情報を得ることができる画像処理装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5813923号公報
【特許文献2】特開平5-34131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
従来の特許文献2に記載の装置では、複数のX線センサを用いているが、X線センサの間隔が狭く照射角度の変化が微小であるため、透過像間での試料中の異物のずれ量が小さくなってしまい、異物位置の奥行きの推定精度が低いという課題があった。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、照射角度の差異が大きな透過像が得られ、異物位置の奥行きを高い精度で得ることができるX線透過検査装置及びX線透過検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係るX線透過検査装置は、試料に対してX線を照射するX線源と、前記試料に対して前記X線源と反対側に設置され前記X線が前記試料を透過した際の透過X線を検出するX線センサと、前記試料を特定の搬送方向に移動させる試料移動機構と、前記X線センサで検出した前記透過X線に基づいて前記試料中の厚さ方向における異物の高さ位置を算出する演算部とを備え、前記X線源と前記X線センサとが、互いに1対1で対応する組み合わせで複数対設けられ、前記複数対の各X線源が、前記試料の厚さ方向に対して互いに異なる照射角度でX線を前記試料に照射し、前記複数対の各X線センサが、対応する前記X線源から照射されたX線の前記透過X線だけを検出可能に配置されていることを特徴とする。
【0008】
このX線透過検査装置では、複数対のX各線源が、互いに異なる照射角度でX線を試料に照射し、複数対の各X線センサが、対応するX線源から照射されたX線の透過X線だけを検出可能に配置されているので、各X線センサの間隔を大きく設定可能になり、X線の照射角度の差異が大きな透過像が得られる。したがって、異なる角度で照射された複数のX線による複数の透過像間で、試料中の異物のずれ量が異物の奥行き(厚さ方向の高さ位置)の位置で大きくなることで、異物位置の奥行きを高い精度で推定することが可能になる。
【0009】
第2の発明に係るX線透過検査装置は、第1の発明において、前記演算部が、前記複数対の各X線センサで検出した複数のX線透過像のずれ量から前記異物の高さ位置を算出することを特徴とする。
【0010】
第3の発明に係るX線透過検査装置は、第1又は第2の発明において、前記X線センサが、TDIセンサであることを特徴とする。
【0011】
第4の発明に係るX線透過検査装置は、第1の発明において、前記試料の表面に設置された基準片を備え、前記演算部が、前記異物の高さ位置を前記基準片の高さ位置と比較して算出することを特徴とする。
すなわち、このX線透過検査装置では、演算部が、異物の高さ位置を基準片の高さ位置と比較して算出するので、異物までの距離の基準が取れない場合や、試料の撓みが大きい場合など、検出した試料表面の基準片と比較することで、異物の試料表面からの深さ位置(高さ位置)を得ることができる。
【0012】
第5の発明に係るX線透過検査装置は、第1又は第2の発明において、前記複数のX線源が、各X線が交差する方向に照射することを特徴とする。
すなわち、このX線透過検査装置では、複数のX線源が、各X線が交差する方向に照射するので、複数のX線源から互いに異なる照射角度のX線を試料中の狭い領域に照射でき、狭い領域だけを検査する場合に、試料移動機構による試料の移動距離を小さくすることができる。
【0013】
第6の発明に係るX線透過検査装置は、第1又は第2の発明において、前記複数のX線源が、X線を前記搬送方向で互いに離間した領域に照射することを特徴とする。
すなわち、このX線透過検査装置では、複数のX線源が、X線を搬送方向で互いに離間した領域に照射するので、複数のX線源を互いに大きく離して配置することができ、互いに配置の制約を受け難く、設置自由度を高めることができる。
【0014】
第7の発明に係るX線透過検査方法は、第1の発明のX線透過検査装置を用いたX線透過検査方法であって、前記X線透過検査装置が、前記X線源と前記X線センサとの組み合わせを2対備え、前記試料を前記搬送方向に移動させる移動ステップと、前記2対のうち一方の前記X線センサで検出した前記透過X線に基づいて前記試料中の異物が検出された前記搬送方向の位置を第1通過点として検出する第1通過点検出ステップと、前記2対のうち他方の前記X線センサで検出した前記透過X線に基づいて前記試料中の異物が検出された前記搬送方向の位置を第2通過点として検出する第2通過点検出ステップと、前記第1通過点と前記第2通過点と前記2対の前記照射角度とに基づいて前記試料中の異物の高さ位置を算出する演算ステップとを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係るX線透過検査装置及びX線透過検査方法によれば、複数対の各X線源が、互いに異なる照射角度でX線を試料に照射し、複数対の各X線センサが、対応するX線源から照射されたX線の透過X線だけを検出可能に配置されているので、X線の照射角度の差異が大きな透過像が得られ、試料中の異物のずれ量が異物の奥行き(厚さ方向の高さ位置)の位置で大きくなり、異物位置の奥行きを高い精度で推定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るX線透過検査装置及びX線透過検査方法の第1実施形態を示す概略的な全体構成図である。
図2】第1実施形態において、撮像(検出)開始時の試料とX線センサとの相対位置を示す説明図であって、表面側にある異物を検出した際の通過点を示す図である。
図3】第1実施形態において、撮像(検出)開始時の試料とX線センサとの相対位置を示す説明図であって、裏面側にある異物を検出した際の通過点を示す図である。
図4】第1実施形態において、高さ方向の異物位置を求める計算方法を説明するための図である。
図5】第1実施形態において、試料に撓みがある場合の基準片と異物との高さ位置を示す模式図である。
図6】第1実施形態において、異物の3次元形状を検出する際の異物の高さ位置を示す模式図である。
図7】第1実施形態において、異物の3次元形状を検出する際の1スキャン目の画像例(a)と、2スキャン目の画像例(b)とを示す模式図である。
図8】本発明に係るX線透過検査装置及びX線透過検査方法の第2実施形態を示す概略的な全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るX線透過検査装置及びX線透過検査方法の第1実施形態を、図1から図6を参照しながら説明する。
【0018】
本実施形態のX線透過検査装置1は、図1に示すように、試料Sに対してX線(一次X線)を照射するX線源2A,2Bと、試料Sに対してX線源2A,2Bと反対側に設置されX線が試料Sを透過した際の透過X線を検出するX線センサ3A,3Bと、試料Sを搬送方向(試料Sの厚さ方向に直交する方向)Yに移動させる試料移動機構4と、X線センサ3A,3Bで検出した透過X線に基づいて試料S中の厚さ方向における異物の高さ位置を算出する演算部5とを備えている。
【0019】
上記演算部5は、複数対の各X線センサ3A,3Bで検出した複数のX線透過像のずれ量から異物の高さ位置を算出する機能を有している。
上記X線源2A,2BとX線センサ3A,3Bとは、互いに1対1で対応する組み合わせで複数対設けられている。
なお、本実施形態のX線透過検査装置1は、X線源2Aに対応したX線センサ3Aと、X線源2Bに対応したX線センサ3Bとの2組(2対)の組み合わせを備えている。
上記複数対の各X線源2A,2Bは、試料Sの厚さ方向に対して互いに異なる照射角度でX線を試料Sに照射する。すなわち、X線源2Aは、照射角度θ1でX線を照射し、X線源2Bは、照射角度θ2でX線を照射する。
【0020】
上記複数対の各X線センサ3A,3Bは、対応するX線源2A,2Bから照射されたX線の透過X線だけを検出可能に配置されている。
本実施形態では、複数対の各X線源2A,2Bが、X線を試料S中で互いに交差する方向に照射するように配置されている。
また、本実施形態のX線透過検査装置1は、X線源2A,2B,X線センサ3A,3B,試料移動機構4及び演算部5を制御する制御部CTを備えている。
なお、本実施形態では、試料Sの搬送方向をY、高さ方向(厚さ方向)をZ、検査幅方向をXとしている。
【0021】
上記試料Sは、例えば帯状に形成されたリチウムイオンバッテリー用の材料や医薬品系に用いられる材料である。
上記X線源2A,2Bは、X線を照射可能なX線管球であって、管球内のフィラメント(陰極)から発生した熱電子がフィラメント(陰極)とターゲット(陽極)との間に印加された電圧により加速されターゲットのW(タングステン)、Mo(モリブデン)、Cr(クロム)などに衝突して発生したX線Xをベリリウム箔などの窓から出射するものである。
なお、本実施形態のX線透過検査装置1は、X線源2A,2BからのX線の拡がりを制限するコリメータや、X線を平行X線に変換するポリキャピラリ等を備えてもよい。
【0022】
上記X線センサ3A,3Bは、試料Sが移動する搬送方向Yに対して垂直方向(検査幅方向X)に延在した、例えばTDI(Time Delay Integration)センサ等のラインセンサである。
TDIセンサは、対応するX線源に対向した面に複数のセル(センサ素子)を配置したものであって、検出面に配された蛍光体と、蛍光体下に複数の光ファイバを二次元的に縦横に複数列並べて配したFOP(ファイバオプティクスプレート)と、FOPの下に配されたSi受光素子とを備え、ラインセンサを複数列並べたような構成を有している。
X線センサ3A,3Bでは、例えば、試料Sの送り方向に200~1000段の単位ラインセンサが並んでTDIセンサが構成されている。
【0023】
上記制御部CTは、X線源2A,2B,X線センサ3A,3B,試料移動機構4及び演算部5等に接続され、これらを制御するCPU等で構成されたコンピュータである。
この制御部CTは、TDIセンサであるX線センサ3A,3Bの電荷転送の方向及び速度を、試料Sの移動方向及び速度に合わせると共に、受光面の検出領域においてX線センサ3A,3Bが受光したX線の輝度値を積算する機能を有している。
なお、制御部CTは、演算部5を含んでいても構わない。
【0024】
上記試料移動機構4は、X線センサ3A,3Bに対して、例えばシート状の試料Sの延在方向に相対的に移動可能なモータ等である。上記試料移動機構4は、例えば帯状の試料Sをロール・to・ロール方式で延在方向に移動させる少なくとも一対のローラ4a等を備えている。
上記演算部5は、検出された透過X線の強度の分布を示す透過像からコントラスト像を得る機能を有している。
【0025】
本実施形態のX線透過検査装置1を用いたX線透過検査方法は、図2から図4に示すように、試料Sを特定の搬送方向Yに移動させる移動ステップと、上記2対のうち一方のX線センサ3Aで検出した透過X線に基づいて試料S中の異物Aが検出された搬送方向Yの位置を第1通過点A1として検出する第1通過点検出ステップと、2対のうち他方のX線センサ3Bで検出した透過X線に基づいて試料S中の異物Aが検出された搬送方向Yの位置を第2通過点A2として検出する第2通過点検出ステップと、第1通過点A1と第2通過点A2と2対の照射角度θ1,θ2とに基づいて試料S中の異物Aの高さ位置を算出する演算ステップとを有している。
【0026】
上記X線透過検査方法を、試料Sの表面側(X線センサ3A,3B側)にある異物Aと、試料Sの裏面側(X線源2A,2B側)にある異物Bとを例にして以下で説明する。
【0027】
まず、上記移動ステップにおいて、試料Sが予め定められた搬送方向Yの撮像開始位置(検出開始位置)に到達すると、透過像の出力が開始される。この出力された透過像において、搬送方向Yの先頭を撮像開始(基準点)とする。
上記第1通過点検出ステップ及び第2通過点検出ステップにおいて、図2に示すように、試料Sが搬送方向Yに移動し、異物AがX線源2AとX線センサ3Aとの光軸を通過する位置を第1通過点A1とし、X線源2BとX線センサ3Bとの光軸を通過する位置を第2通過点A2とする。
また、図3に示すように、異物BがX線源2AとX線センサ3Aとの光軸を通過する位置を第1通過点B1とし、X線源2BとX線センサ3Bとの光軸を通過する位置を第2通過点B2とする。
【0028】
試料Sが搬送方向Yに移動すると、異物Aはまず第1通過点A1の後に第2通過点A2を通過し、異物Bはまず第2通過点B2の後に第2通過点B1を通過する。なお、第1通過点A1と第2通過点A2との距離をA12とし、第1通過点B1と第2通過点B2との距離をB12とする。
X線センサ3AとX線センサ3Bとの撮像を同時に開始した場合、異物Aが第1通過点A1と第2通過点A2とを通過するタイミングの違いが、透過像において撮像開始から異物Aまでの搬送方向Yの距離の差(距離A12)として表れる。同様に、透過像において撮像開始から異物Bまでの搬送方向Yの距離の差が距離B12として表れる。
【0029】
透過像において撮像開始から異物Aまでの搬送方向Yの距離は、X線センサ3BよりもX線センサ3Aの方が短く、撮像開始から異物Bまでの搬送方向Yの距離は、X線センサ3BよりもX線センサ3Aの方が長い。
このように、異物A,Bが混入している試料Sの厚み方向の高さ位置に応じて、異物A,Bが光軸を通過するタイミングが変化するため、撮像開始などの透過像のある基準点から異物A,Bまでの距離の差から、異物A,Bが混入している試料Sの厚み方向の高さ位置を見積もることができる。
【0030】
すなわち、上記演算ステップにおいて、X線センサ3A、3Bの透過像に基づいて、ある基準点から異物A,Bまでの距離の差から異物A,Bが混入している高さを見積もる際の計算を、図4を用いて説明する。なお、この計算は演算部5により行われる。
撮像開始位置は、試料Sの検査領域が透過像として出力されるように、任意に設定するタイミングに基づき、画像出力が開始される位置である。
【0031】
異物AがX線センサ3Aの直下に達したときの位置を基準点A3とし、X線センサ3Aまでの高さ(距離)ZAとする。
また、基準点A3と通過点A1との距離をY1とし、基準点A3と通過点A2との距離をY2とする。
ちなみに、試料Sの進行方向(搬送方向Y)に対して、X線源2AとX線センサ3Aとの垂直方向の高さ(距離)と、X線源2BとX線センサ3Bとの垂直方向の高さ(距離)とは同じである必要はない。
また、X線源2BはX線センサ3Aの直下に配置する必要はない。
【0032】
X線源から異物までの距離は、以下のように設定することで計算することができる。
X線源2AからX線センサ3AへのX線の照射角度:θ1
X線源2BからX線センサ3BへのX線の照射角度:θ2
X線源2AからX線センサ3Aまでの高さ方向の距離:Z1
X線源2BからX線センサ3Bまでの高さ方向の距離:Z2
ここで、Z1=Z2=Zとする。
X線センサ3Aから異物Aまでの高さ方向の距離:ZA1
X線センサ3Bから異物Aまでの高さ方向の距離:ZA2
ここで、ZA1=ZA2=ZAとする。
異物AからX線センサ3Aの撮像開始までの搬送方向の距離:Y1
異物AからX線センサ3Bの撮像開始までの搬送方向の距離:Y2
Y1=ZA・tanθ1
Y2=(Z-ZA)tanθ2
よって
A12=Y1-Y2=(tanθ1+tanθ2)ZA-Z?tanθ2 ・・・式1
ZAに比例してY1-Y2が増加する。
そのため、Y1-Y2をX線透過像から求めることで、X線源2A,2Bから異物A,Bまでの距離を算出することができる。
【0033】
なお、|θ1|=|θ2|の場合、照射角度が大きいほど、高さ位置の推定精度が向上する。
例えば、解像度を10μmとして、|θ1|=|θ2|=45°(θ1=-45°、θ2=45°)の時、高さ位置の推定精度は±10μmであるのに対して、|θ1|=|θ2|=30°(θ1=-30°、θ2=30°)の時、高さ位置の推定精度は±17.3μmとなる。
なお、特許文献2の技術では、照射角度の変化が微小であるため、高さ位置の推定精度が低い。
【0034】
上記式1を変形したものが次の式であり、高さ位置の推定精度は照射角度が小さくなるほど悪くなる。
【数1】
距離Y1と距離Y2との精度がそれぞれ±1pixelであるとすると、Y1-Y2は最大±2pixelの誤差含む。
解像度を10μmとすると、最大誤差は±20μmとなる。
誤差も含めて式で表すと、次の式となる。
【数2】
【0035】
例えば、|θ1|=|θ2|=45°の場合の誤差計算は、次のように算出される。
【数3】
例えば、|θ1|=|θ2|=30°の場合の誤差計算は、次のように算出される。
【数4】
【0036】
なお、特許文献2では微小角度としか記載がない為、想定している角度はわからないが、仮に|θ1|=|θ2|=1°として、同様の条件で高さ位置の推定精度誤差を計算すると、±573μmとなる。
【0037】
次に、透過像で異物までの距離の基準が取れない場合や、試料Sの撓みが大きい場合は、図5に示すように、試料S表面に基準片9を置くことで試料S表面からの異物Cの深さ位置を推定することができる。
すなわち、撮像開始位置が安定せず、撮像開始位置を異物までの距離の基準できない、かつ、試料Sの端など透過像から基準となる特徴点を決定できない場合や、試料Sが撓み、X線センサ3A,3Bと試料S表面との距離が一定ではない場合でも、異物の深さ位置を推定することができる。
【0038】
本実施形態のX線透過検査装置1では、試料Sが撓んでいる場合、図5に示すように、試料Sの表面に設置された基準片9を備えることで、演算部5が、異物Cの高さ位置を基準片9の高さ位置と比較して算出することができる。
例えば、X線センサ3Aから金属等の基準片9(試料S表面)までの距離:Za、X線センサ3Aから異物Cまでの距離:Zcとした場合、基準片9(試料S表面)から異物Cまでの距離が、Za-Zcとなる。
【0039】
次に、本実施形態のX線透過検査装置1では、図6及び図7に示すように、複数の2次元画像から算出された異物サイズや形状の情報を統合することで、異物D,Eの3次元形状の推定精度が向上する。
すなわち、例えば、図6に示すように、試料S中に異物D,Eがあり、試料Sの表面(X線センサ側)に基準片9を設置した場合、1スキャン目のX線X1で検出した透過像が図7の(a)となり、2スキャン目のX線X2で検出した透過像が図7の(b)となる。
したがって、複数の2次元画像(1スキャン目の透過像と2スキャン目の透過像とから異物D,Eの異物サイズや形状の情報を得ることも可能になる。
【0040】
このように本実施形態のX線透過検査装置1では、複数対の各X線源2A,2Bが、互いに異なる照射角度θ1,θ2でX線を試料Sに照射し、複数対の各X線センサ3A,3Bが、対応するX線源2A,2Bから照射されたX線の透過X線だけを検出可能に配置されているので、各X線センサ3A,3Bの間隔を大きく設定可能になり、X線の照射角度θ1,θ2の差異が大きな透過像が得られる。したがって、異なる角度で照射された複数のX線による複数の透過像間で、試料S中の異物A~Eのずれ量が異物A~Eの奥行き(厚さ方向の高さ位置)の位置で大きくなることで、異物位置の奥行きを高い精度で推定することが可能になる。
【0041】
また、演算部5が、異物の高さ位置を基準片9の高さ位置と比較して算出するので、異物までの距離の基準が取れない場合や、試料Sの撓みが大きい場合など、検出した試料S表面の基準片9と比較することで、異物の試料S表面からの深さ位置(高さ位置)を得ることができる。
なお、複数対の各X線源2A,2Bが、X線を試料S中で互いに交差する方向に照射することで、複数対の各X線源2A,2Bから互いに異なる照射角度θ1,θ2のX線を試料S中の狭い領域に照射でき、狭い領域だけを検査する場合に、試料移動機構4による試料Sの移動距離を小さくすることができる。
【0042】
次に、本発明に係るX線透過検査装置及びX線透過検査方法の第2実施形態について、図8を参照して以下に説明する。なお、以下の実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0043】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、複数対の各X線源2A,2Bが、X線を試料S中で互いに交差する方向に照射しているのに対し、第2実施形態のX線透過検査装置21では、図8に示すように、複数対の各X線源2A,2Bが、X線を搬送方向Yで互いに離間した領域SA,SBに照射するように配置されている。
また、第2実施形態では、図8に示すように、X線源2AとX線源2Bとの間隔が、第1実施形態よりも大きく設定されている。
【0044】
第2実施形態では、試料移動機構4により、試料Sが、X線源2AからのX線が照射される領域SAを通過した際にX線センサ3Aにより透過像を検出し、さらに搬送方向Yに移動して、X線源2BからのX線が照射される領域SBを通過した際にX線センサ3Bにより透過像を検出する。
この領域SAで得た透過像と領域SBで得た透過像とに基づいて、第1実施形態と同様に演算部5によって異物の高さ位置を算出する。
【0045】
第2実施形態では、第1実施形態のようにX線源2AとX線源2BとのX線が交差する必要はなく、2対(2組)の検査位置は検査幅方向Xの位置が同一であれば、搬送方向Yにズレていてもよい。
このように第2実施形態のX線透過検査装置21では、複数対の各X線源2A,2Bが、X線を搬送方向Yで互いに離間した領域SA,SBに照射するので、複数対の各X線源2A,2Bを互いに大きく離して配置することができ、互いに配置の制約を受け難く、設置自由度を高めることができる。
【0046】
なお、本発明の技術範囲は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1,21…X線透過検査装置、2A,2B…X線源、3A,3B…X線センサ、4…試料移動機構、5…演算部、9…基準片、A,B,C,D,E…異物、S…試料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8