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特開2024-109102窒化チタンエッチング液、基板の処理方法および半導体素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109102
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】窒化チタンエッチング液、基板の処理方法および半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/308 20060101AFI20240805BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20240805BHJP
   C23G 1/10 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H01L21/308 F
H01L21/306 E
C23G1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024012174
(22)【出願日】2024-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2023012795
(32)【優先日】2023-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023130743
(32)【優先日】2023-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023130744
(32)【優先日】2023-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 康平
【テーマコード(参考)】
4K053
5F043
【Fターム(参考)】
4K053PA09
4K053QA07
4K053RA13
4K053RA18
4K053RA63
4K053SA06
5F043AA18
5F043BB18
5F043DD07
(57)【要約】
【課題】タングステンに対して窒化チタンを選択的に除去できるエッチング液を提供する。
【解決手段】リン酸、水、及び酸化剤を含む、タングステンに対して窒化チタンを選択的に除去するための窒化チタンエッチング液であって、前記リン酸の濃度が、72.5質量%以上99質量%以下である、窒化チタンエッチング液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸、水、及び酸化剤を含む、タングステンに対して窒化チタンを選択的に除去するための窒化チタンエッチング液であって、
前記リン酸の濃度が、72.5質量%以上99質量%以下である、窒化チタンエッチング液。
【請求項2】
前記酸化剤が過酸化水素である、請求項1に記載の窒化チタンエッチング液。
【請求項3】
前記酸化剤の濃度が0.1質量%以上30質量%以下である、請求項1に記載の窒化チタンエッチング液。
【請求項4】
さらに、カチオン化合物を含む、請求項1に記載の窒化チタンエッチング液。
【請求項5】
前記カチオン化合物がオニウムハライド、ビグアニド、アニリン類、及びπ過剰芳香族複素環化合物からなる群から選択される一種以上のカチオン化合物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の窒化チタンエッチング液。
【請求項6】
前記リン酸の濃度が80質量%以上96質量%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の窒化チタンエッチング液。
【請求項7】
水の含有量に対するリン酸の含有量の比が、質量比率で3.15以上60.00以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の窒化チタンエッチング液。
【請求項8】
タングステンおよび窒化チタンを含む基板の処理方法であって、
請求項1~4のいずれか一項に記載の窒化チタンエッチング液を用いて、前記基板からタングステンに対して窒化チタンを選択的に除去するエッチング処理を行うエッチング工程を含む、基板の処理方法。
【請求項9】
前記エッチング処理の温度が15℃以上80℃以下である、請求項8に記載の基板の処理方法。
【請求項10】
タングステンおよび窒化チタンを含む基板を用いた、半導体素子の製造方法であって、請求項1~4のいずれか一項に記載の窒化チタンエッチング液を用いて、前記基板からタングステンに対して窒化チタンを選択的に除去するエッチング処理を行うエッチング工程を含む、半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タングステンおよび窒化チタン(TiN)を含む材料のエッチングにおいて、タングステン(W)に対して窒化チタンを選択的にエッチングするためのエッチング液に関する。また、これを用いた基板の処理方法および半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造工程では種々の材料が用いられているが、その中で窒化チタンは、様々な分野に有用であることが知られており、例えば、ハードマスクやバリアメタルとして用いられている。タングステンおよび窒化チタンを含む半導体素子等の材料のエッチングにおいて、窒化チタンをハードマスクとして用いた場合、ウェットエッチングで除去する必要があるが、その場合、エッチング液がタングステンと接触する。
タングステンおよび窒化チタンを含む材料、例えば、これらが表面に共存する半導体基板においては、タングステンを腐食することなく窒化チタンを除去することが求められる。窒化チタンは過酸化水素を含有する組成物を用いれば、比較的容易に除去することができるが、過酸化水素はタングステンに対する腐食性が大きいため、上記のような用途では使用が困難である。また、窒化チタンはフッ化水素酸によっても除去可能だが、タングステンだけでなく、例えばSiO等、様々な材料を腐食するため、上記のような用途では使用が困難である。
【0003】
特許文献1には、タングステン含有金属およびTiN含有材料の両方に好適なエッチング溶液及びそれを用いた方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-2324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、窒化チタンのエッチングには、SC-1(過酸化水素とアンモニアの混合物)や、SPM(過酸化水素と硫酸の混合物)が用いられてきた。一方、上述したように、これらの過酸化水素を用いた薬液ではタングステンも溶解するため、TiNのハードマスクの除去等の用途で使用することができない。
また、特許文献1には、リン酸と過酸化水素とグリコールエーテル等を含むエッチング液が提案されている。これらのエッチング液では、窒化チタンと同等もしくは、それ以上にタングステンがエッチングされていることが記載されている。そのため、これらのエッチング液を用いた場合は、エッチング液がタングステンと接触する用途では使用できない。
【0006】
したがって、本発明の目的は、タングステンに対して窒化チタンを選択的に除去できるエッチング液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。そして、リン酸、酸化剤、及び水を含むエッチング液であって、さらにリン酸の濃度を調整することで、タングステンに対して窒化チタンを選択的に除去できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の構成は以下の通りである。
【0009】
項1 リン酸、水、及び酸化剤を含む、タングステンに対して窒化チタンを選択的に除去するための窒化チタンエッチング液であって、
前記リン酸の濃度が、72.5質量%以上99質量%以下である、窒化チタンエッチング液。
項2 前記酸化剤が過酸化水素である、項1に記載の窒化チタンエッチング液。
項3 前記酸化剤の濃度が0.1質量%以上30質量%以下である、項1又は2に記載の窒化チタンエッチング液。
項4 さらに、カチオン化合物を含む、項1~3のいずれか一項に記載の窒化チタンエッチング液。
項5 前記カチオン化合物がオニウムハライド、ビグアニド、アニリン類、及びπ過剰芳香族複素環化合物からなる群から選択される一種以上のカチオン化合物である、項1~4のいずれか一項に記載の窒化チタンエッチング液。
項6 前記リン酸の濃度が80質量%以上96質量%以下である、項1~5のいずれか一項に記載の窒化チタンエッチング液。
項7 水の含有量に対するリン酸の含有量の比が、質量比率で3.15以上60.00以下である、項1~6のいずれか一項に記載の窒化チタンエッチング液。
項8 タングステンおよび窒化チタンを含む基板の処理方法であって、
項1~7のいずれか一項に記載の窒化チタンエッチング液を用いて、前記基板からタングステンに対して窒化チタンを選択的に除去するエッチング処理を行うエッチング工程を含む、基板の処理方法。
項9 前記エッチング処理の温度が15℃以上80℃以下である、項8に記載の基板の処理方法。
項10 タングステンおよび窒化チタンを含む基板を用いた、半導体素子の製造方法であって、
項1~7のいずれか一項に記載の窒化チタンエッチング液を用いて、前記基板からタングステンに対して窒化チタンを選択的に除去するエッチング処理を行うエッチング工程を含む、半導体素子の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエッチング液を用いることで、タングステンに対して窒化チタンを選択的に除去できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。以下の説明は、本発明の一例(代表例)であり、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。
【0012】
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において「A又はB」の表現は、「A及びBからなる群から選択される少なくとも1つ」と読み替えることができる。
また、本明細書において、「濃度」とは、溶液に対する各成分の含有量を意味する。そのため、「濃度」は、溶液に対する溶質の含有量だけでなく、溶液に対する水などの溶媒の含有量も表現することができる。
また、本明細書において、「Aに対するBのエッチング選択比」の表現は、「Aを除去するエッチング速度に対するBを除去するエッチング速度の比率」(Bを除去するエッチング速度/Aを除去するエッチング速度)を表す。
【0013】
<エッチング液>
本発明の一実施形態において、エッチング液とは、タングステンおよび窒化チタンを含む材料のエッチングにおいて、タングステンに対して窒化チタンを選択的に除去する薬液の事を指し、リン酸、酸化剤、及び水を含む。さらに、該エッチング液は、エッチング液中のリン酸の濃度を調整することで、タングステンに対して窒化チタンを選択的に除去することができる。そのため、本実施形態のエッチング液は、タングステンとエッチング液とが接触する用途で好適に用いることができる。
【0014】
[リン酸]
本実施形態に係るエッチング液(以下、単に「エッチング液」とも称し、また「窒化チタンエッチング液」とも称する。)に含まれるリン酸は特に限定されず、化学式HPOで表わされるオルトリン酸;オルトリン酸を脱水縮合したピロリン酸(H)もしくはトリリン酸(H10)等のポリリン酸;トリメタリン酸(H)もしくはハイポリリン酸(HPO等のメタリン酸;モノ過リン酸(HPO)もしくはジ過リン酸(H)等の過リン酸;五酸化二リン(P)もしくは十酸化四リン(P10)等の無水リン酸等が挙げられ、これらの化合物はエッチング液中でリン酸として存在してもよく、また、リン酸イオンとして存在してもよく、また、無水リン酸は水和した状態で存在していてもよい。よって、リン酸を含むエッチング液とは、これらのリン酸が含有された溶液;又はこれらのリン酸を含む塩が含有された溶液等が挙げられる。
リン酸を含むエッチング液は、窒化チタンの除去効率の観点から、オルトリン酸;ピロリン酸等のポリリン酸;過リン酸;又は五酸化二リンもしくは十酸化四リン等の無水リン酸を含む溶液であることが好ましい。
エッチング液に含まれるリン酸は、1種であっても、複数種であってもよい。例えば、オルトリン酸とピロリン酸のように、複数種のリン酸が含まれることで、窒化チタンを効率よく除去できることがある。
【0015】
エッチング液におけるリン酸の濃度は、タングステンに対して窒化チタンを選択的に除去できる濃度であればよいが、基板、例えば半導体素子用の基板に含まれる窒化チタンやタングステン等の成分の存在量、存在部位、エッチング処理の処理条件、又は取扱上の安全性等を考慮して適宜調整することができる。窒化チタンの処理効率およびタングステンとの選択比の観点から、エッチング液中のリン酸の濃度は、72.5質量%以上、99質量%以下が好ましく、80質量%以上、96質量%以下がより好ましく、80質量%以上、94質量%以下が特に好ましい。該リン酸の濃度が上記範囲内であれば、窒化チタンを効率よく除去することができる。
【0016】
リン酸のpHについて測定可能な場合、特に制限されないが、リン酸は酸として働くため、タングステンに対して選択的に窒化チタンを効率的に除去する観点から、リン酸のpHは低い方が好ましい。
【0017】
また、原料としてのリン酸は、リン酸中の水分を除去する操作をして製造されたリン酸でもよい。このような操作としては、例えば、リン酸を加熱して水分を除去する操作、硫酸もしくは塩化カルシウムのような脱水剤をリン酸中に添加する操作、又はPもしくはP10といった無水リン酸をリン酸中に添加して加水分解させる操作等が挙げられる。これらの水分を除去する操作を適用することで、リン酸の濃度を調整することができる。また、これらの操作は、前記操作のうちの1つの操作であっても、複数の操作を組み合わせてもよい。複数の操作を組み合わせることで、リン酸中の水分を再現性良く除去したりできる場合がある。
【0018】
原料としてのリン酸は、蒸留、イオン交換処理、フィルター処理、各種吸着処理、又は各種精製処理などによって、金属イオン、有機不純物、または/およびパーティクル粒子
などが除去されたリン酸であることが好ましい。
【0019】
[酸化剤]
エッチング液に含まれる酸化剤は、窒化チタンのTi3+を酸化できる酸化剤であれば、どのようなものを用いてもよい。このような酸化剤としては、例えば、活性酸素、ハロゲン化合物、過酸、過酸化物、硝酸化合物、過マンガン酸塩、第二鉄塩、又はセリウム(IV)塩等が挙げられる。
活性酸素としては、例えば、過酸化水素、オゾン、又は一重項酸素等が挙げられる。
ハロゲン化合物としては、過ヨウ素酸、ヨウ素酸、亜ヨウ素酸、次亜ヨウ素酸、過臭素酸、臭素酸、亜臭素酸、次亜臭素酸、過塩素酸、塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、又はこれらの酸の塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、もしくはテトラメチルアンモニウム塩等)等が挙げられる。
過酸としては、過硫酸、過リン酸、過カルボン酸、又はこれらの酸の塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、もしくはテトラメチルアンモニウム塩等)等が挙げられる。
過酸化物としては、tert-ブチルヒドロペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、又はメチルエチルケトンペルオキシド等が挙げられる。なお、本明細書では、過酸化物と上記の活性酸素又は過酸とで重複する化合物は活性酸素又は過酸として扱う。
硝酸化合物としては、硝酸、亜硝酸、又はそれらの酸の塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、もしくはテトラメチルアンモニウム塩等)等が挙げられる。なお、硝酸化合物はタングステンを溶解し得るため、タングステンに対する窒化チタンの効率的な除去の観点からは、エッチング液は硝酸化合物を含まないこと(検出限界未満であること)が好ましい。
過マンガン酸塩としては、過マンガン酸カリウム等が挙げられる。
第二鉄塩としては、塩化第二鉄、又は硝酸第二鉄等が挙げられる。
セリウム(IV)塩等としては、塩化セリウム、又は硝酸セリウム等が挙げられる。
これらのなかでも、半導体製造において問題となる金属原子を含まない観点から、活性酸素、ハロゲン化合物、過酸、過酸化物、又は硝酸化合物が好ましく、窒化チタンの除去効率の観点から、活性酸素、過酸、過酸化物、又は硝酸化合物がより好ましく、タングステンの溶解を比較的抑制できる点から、活性酸素、過酸化物、又は過酸がさらに好ましく、取り扱い上の安全性の観点より、過酸化水素が特に好ましい。本実施形態に係るエッチング液の組成においては、通常、過酸化水素は酸化剤として機能する。
【0020】
なお、原料としての酸化剤は水を含んでいてもよい。
【0021】
リン酸は、様々な化合物や金属と錯体を形成したり、水素結合を引き起こしたりする。そのため、リン酸は、酸化剤とも相互作用して、安定化する働きが期待される。特に、リン酸は、過酸化水素の安定化剤として知られており、酸化剤として過酸化水素が用いられる場合、エッチング液の寿命の面においてもリン酸は優れた効果を発揮できると考えられる。
エッチング液は、リン酸を用いることで、タングステンに対して窒化チタンを選択的に除去することができる。特に酸化物として過酸化水素を用いた場合においては、上述したリン酸による過酸化水素の安定化の作用において、リン酸と過酸化水素が複合体を形成することに起因していると考えられる。リン酸が過酸化水素と複合体を形成することで、過酸化水素によるタングステンの酸化を抑制する効果を発揮できると考えられる。その結果、リン酸を用いた場合、例えば硫酸、メタンスルホン酸、塩酸、又は硝酸といった他の酸を用いた場合と比較して、タングステンに対して窒化チタンを効率的に選択的に除去できると本発明者は推測している。
【0022】
エッチング液中の酸化剤の濃度は、タングステンに対して窒化チタンを選択的に除去で
きる濃度であればよく、原料として用いる酸化剤の種類及び濃度、リン酸の濃度、窒化チタンやタングステン等の存在量、存在部位、エッチング処理の処理条件、又は取扱上の安全性等を考慮して適宜調整することができる。窒化チタンの除去効率の観点から、エッチング液中の酸化剤の濃度は、0.001質量%以上、50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上、30質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上、15質量%以下がさらに好ましく、経済性および取扱上の安全性の観点から、1質量%以上、10質量%以下が特に好ましい。
【0023】
酸化剤として過酸化水素を用いた場合、エッチング液中の過酸化水素の濃度は、タングステンに対して窒化チタンを選択的に除去できる濃度であればよく、原料として用いる過酸化水素の濃度、リン酸の濃度、窒化チタンやタングステン等の存在量、存在部位、エッチング処理の処理条件、又は取扱上の安全性等を考慮して適宜調整することができる。窒化チタンの除去効率の観点から、エッチング液中の過酸化水素の濃度は、0.1質量%以上、30質量%以下が好ましく、0.3質量%以上、15質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上、10質量%以下がさらに好ましく、経済性および取扱上の安全性の観点から、0.3質量%以上、7.5質量%以下が特に好ましい。該過酸化水素の濃度が上記範囲内であれば、窒化チタンを効率よく除去することができる。
【0024】
酸化剤を含有させる方法は特に限定されず、原料として用いる酸化剤の種類などを考慮して決定すればよい。一例を挙げれば、酸化剤をリン酸中に溶解させることで添加すればよい。酸化剤をリン酸に溶解させる方法は特に制限されず、酸化剤の性状などを考慮して決めればよく、酸化剤をリン酸に添加し、溶解及び混合させたり、酸化剤を含んだ溶液をリン酸に添加したりすればよい。また、必要に応じて撹拌、加熱等の処理を行ってもよい。また、酸化剤は、その一部が溶解すればよく、懸濁液の状態や分層している状態でもよい。
【0025】
酸化剤として過酸化水素を用いる場合の添加方法を例示すれば、液体の過酸化水素を直接リン酸に添加して混合したり、過酸化水素水等の過酸化水素を含む溶液をリン酸に添加して混合したりする方法が挙げられる。また、過酸化水素又は過酸化水素水に、直接リン酸を添加したりする方法が挙げられる。
【0026】
エッチング液に含まれる酸化剤は、1種であっても、複数種であってもよい。複数種含まれる事で、窒化チタンを除去する速度を安定化したりできる場合がある。
【0027】
[カチオン化合物]
エッチング液は、酸化剤によるタングステンの溶解をより抑制するために、カチオン化合物をさらに含むことが好ましいが、含まなくともよい。エッチング液中では、窒化チタン表面はカチオン性を示すと考えられ、カチオン化合物は吸着しない。一方で、タングステン表面はアニオン性を示すと見られる。よって、カチオン化合物がタングステンに選択的に吸着することで酸化剤による酸化を効率的に抑制していると推測される。
エッチング液に含まれるカチオン化合物は、タングステンに吸着して、酸化剤による酸化を抑制できる化合物であれば、どのようなものを用いてもよい。また、カチオン化合物は、それ自体は中性分子でいるなどカチオンではないが、処理液中でカチオンとなるような化合物も含む。このようなカチオン化合物としては、例えば、オニウムハライド等のオニウム塩、イミニウム塩、ジアゾニウム塩、グアニジン類、ビグアニド、アニリン類、又は芳香族複素環化合物等が挙げられる。
これらの中でも、タングステンの溶解抑制効果の観点から、オニウムハライド、ビグアニド、アニリン類、及びπ過剰芳香族複素環化合物からなる群から選択される一種以上のカチオン化合物が好ましく、ビグアニド、アニリン類、及びπ過剰芳香族複素環化合物からなる群から選択される一種以上のカチオン化合物がより好ましく、アニリン類、及びπ
過剰芳香族複素環化合物からなる群から選択される一種以上のカチオン化合物がさらに好ましく、π過剰芳香族複素環化合物からなる群から選択される一種以上のカチオン化合物が最も好ましい。
カチオン化合物として、オニウム塩を用いる場合、オニウム塩は、エッチング液中で解離して、オニウムイオン(オニウムカチオン)とアニオンが生じうる。アニオンの種類によっては、タングステンや窒化チタンに吸着して、ゼータ電位等の表面物性や、表面官能基を変える作用が考えられる。イミニウム塩やジアゾニウム塩についても同様に考えられる。そのため、タングステンに対して窒化チタンをより選択的に除去できる観点から、オニウム塩やイミニウム塩およびジアゾニウム塩は、オニウムハライド、イミニウムハライドおよびジアゾニウムハライドが好ましい。
【0028】
(オニウムハライド)
エッチング液は、カチオン化合物として、オニウムハライドを好適に含むことができ、該カチオン化合物の添加によりタングステンに対して窒化チタンを選択的に除去することができる。オニウムハライドは、オニウムイオン(オニウムカチオン)とハロゲンアニオンから形成される。オニウムハライドは、エッチング液中で解離して、カチオン部分がタングステンに選択的に吸着することで酸化剤による酸化を抑制していると推測される。
オニウムイオンとしては、例えば、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、フルオロニウムイオン、クロロニウムイオン、ブロモニウムイオン、ヨードニウムイオン、オキソニウムイオン、スルホニウムイオン、セレノニウムイオン、テルロニウムイオン、アルソニムイオン、スチボニウムイオン、又はビスムトニウムイオン等が挙げられる。これらの中でも、工業的に入手しやすいことから、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、又はスルホニウムイオンが好ましく、酸性条件でもカチオンとして存在できることから、第四級アンモニウムイオン、第四級ホスホニウムイオン、又は第三級スルホニウムイオンがより好ましく、エッチング液中で安定であり、タングステンの溶解の抑制効果の観点から、第四級アンモニウムイオンがさらに好ましい。つまり、オニウムハライドとしては、アンモニウムハライド、ホスホニウムハライド、又はスルホニウムハライドが好ましく、第四級アンモニウムハライド、第四級ホスホニウムハライド、又は第三級スルホニウムハライドがより好ましく、第四級アンモニウムハライドがさらに好ましい。第四級アンモニウムイオン、第四級ホスホニウムイオン、及び第三級スルホニウムイオンは、それぞれ、下記式(1)~(3)で示されるオニウムイオンがさらに好ましい。
【0029】
【化1】


【化2】


【化3】
【0030】
式(1)~(3)において、
、R、R、およびRは独立して、炭素数2~30のアルキル基もしくはアリル基、炭素数1~30のアルキル基を有するアラルキル基もしくはアリール基、フェニル基、又はベンジル基である。また、アラルキル基中のアリール基の環又はアリール基の環において少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数1~30のアルコキシ基、又は炭素数2~30のアルケニルオキシ基で置き換えられてもよく、これらの炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数1~30のアルコキシ基、又は炭素数2~30のアルケニルオキシ基において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素で置き換えられてもよい。
【0031】
式(1)~(3)において、R、R、R、Rで示される基に含まれる炭化水素基は、長鎖であるほど疎水性が高くなる。そのため、長鎖の炭化水素基を有するオニウムイオンを含むオニウムハライドほど、泡立ちやすく、エッチング液の取り扱いが困難となる。一方で、炭化水素鎖が短すぎると、オニウムハライドの効果である、タングステンの溶解抑制効果が比較的制限されてしまう。このような理由から、炭化水素基の炭素数は、上述の範囲内である事が好ましい。
式(1)で表される第四級アンモニウムイオンとしては、例えば、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオン、テトラヘプチルアンモニウムイオン、トリエチルメチルアンモニウムイオン、トリブチルメチルアンモニウムイオン、トリ-n-オクチルメチルアンモニウムイオン、ヘキシルトリメチルアンモニウムイオン、n-オクチルトリメチルアンモニウムイオン、ノニルトリメチルアンモニウムイオン、デシルトリメチルアンモニウムイオン、ラウリルトリメチルアンモニウムイオン、テトラデシルトリメチルアンモニウムイオン、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムイオン、ヘプタデシルトリメチルアンモニウムイオン、オクタデシルトリメチルアンモニウムイオン、フェニルトリメチルアンモニウムイオン、ベンジルトリメチルアンモニウムイオン、アリルトリメチルアンモニウムイオン、ビニルトリメチルアンモニウムイオン、コリンイオン、クロロコリンイオン、アセチルコリンイオン、メタコリンイオン、β-メチルコリンイオン、メタクロイルコリンイオン、ベンゾイルコリンイオン、チオトロピウムイオン、カルニチンイオン、トリメチルグリシンイオン、デカメトニウムイオン、ヘキサメトニウムイオン、スキサメトニウムイオン、1,10-ビス[4-アザ-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル]デカンジイオン、ジデシルジメチルアンモニウムイオン、ジドデシルジメチルアンモニウムイオン、ベンジルドデシルジメチルアンモニウムイオン、ベンジルテトラデシルジメチルアンモニウムイオン、ベンジルヘキサデシルジメチルアンモニウムイオン、ベンジルオクタデシルジメチルアンモニウムイオン、ベンジルジメチルフェニルアンモニウムイオン、又はジアリルジメチルアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0032】
式(2)で表される第四級ホスホニウムイオンとしては、テトラブチルホスホニウムイオン、テトラフェニルホスホニウムイオン、トリブチルヘキシルホスホニウムイオン、トリブチル-n-オクチルホスホニウムイオン、トリブチルヘキサデシルホスホニウムイオン、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムイオン、ブチルトリフェニルホスホニウムイオン、アリルトリフェニルホスホニウムイオン、ベンジルトリフェニルホスホニウムイオン、(1-ナフチルメチル)トリフェニルホスホニウムイオン、(3-メトキシベンジル)トリフェニルホスホニウムイオン、(3,4-ジメトキシベンジル)トリフェニルホスホニウムイオン、又は(2,4-ジクロロベンジル)トリフェニルホスホニウムイオン等が挙げられる。
【0033】
式(3)で表される第三級スルホニウムイオンとしては、トリブチルスルホニウムイオン、又はトリフェニルスルホニウムイオン等が挙げられる。
【0034】
さらに、これらのオニウムイオンの中でも、エッチング液中で安定であり、タングステンの溶解を抑制する効果も大きいことから、第四級アンモニウムイオンが好ましく、第四級アンモニウムイオンの中でも、テトラペンチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオン、テトラヘプチルアンモニウムイオン、トリ-n-オクチルメチルアンモニウムイオン、ヘキシルトリメチルアンモニウムイオン、n-オクチルトリメチルアンモニウムイオン、ノニルトリメチルアンモニウムイオン、デシルトリメチルアンモニウムイオン、ラウリルトリメチルアンモニウムイオン、テトラデシルトリメチルアンモニウムイオン、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムイオン、ヘプタデシルトリメチルアンモニウムイオン、オクタデシルトリメチルアンモニウムイオン、フェニルトリメチルアンモニウムイオン、ベンジルトリメチルアンモニウムイオン、アリルトリメチルアンモニウムイオン、ビニルトリメチルアンモニウムイオン、クロロコリンイオン、メタコリンイオン、ベンゾイルコリンイオン、カルニチンイオン、トリメチルグリシンイオン、デカメトニウムイオン、ヘキサメトニウムイオン、スキサメトニウムイオン、1,10-ビス[4-アザ-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル]デカンジイオン、ジデシルジメチルアンモニウムイオン、ジドデシルジメチルアンモニウムイオン、ベンジルドデシルジメチルアンモニウムイオン、ベンジルテトラデシルジメチルアンモニウムイオン、ベンジルヘキサデシルジメチルアンモニウムイオン、ベンジルオクタデシルジメチルアンモニウムイオン、ベンジルジメチルフェニルアンモニウムイオン、ジアリルジメチルアンモニウムイオンがより好ましく、テトラヘキシルアンモニウムイオン、テトラヘプチルアンモニウムイオン、トリ-n-オクチルメチルアンモニウムイオン、ヘキシルトリメチルアンモニウムイオン、n-オクチルトリメチルアンモニウムイオン、ノニルトリメチルアンモニウムイオン、デシルトリメチルアンモニウムイオン、ラウリルトリメチルアンモニウムイオン、テトラデシルトリメチルアンモニウムイオン、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムイオン、ヘプタデシルトリメチルアンモニウムイオン、オクタデシルトリメチルアンモニウムイオン、フェニルトリメチルアンモニウムイオン、ベンジルトリメチルアンモニウムイオン、デカメトニウムイオン、ジデシルジメチルアンモニウムイオン、ジドデシルジメチルアンモニウムイオン、ベンジルドデシルジメチルアンモニウムイオン、ベン
ジルテトラデシルジメチルアンモニウムイオン、ベンジルヘキサデシルジメチルアンモニウムイオン、ベンジルオクタデシルジメチルアンモニウムイオン、ベンジルジメチルフェニルアンモニウムイオン、又はジアリルジメチルアンモニウムイオンがさらに好ましい。
【0035】
オニウムハライドのハロゲンアニオン(ハライド)としては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、又はヨウ化物イオンを挙げることができる。これらの中でも、タングステンの溶解抑制効果が大きく、工業的に入手しやすいことから、塩化物イオン、又は臭化物イオンが好ましく、塩化物イオンが特に好ましい。
一方、オニウムイオンに対となるアニオンの例としては、ハロゲンアニオン以外に、例えば、水酸化物イオン、硫酸水素イオン、硫酸イオン、過硫酸イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、サリチル酸イオン、p-ニトロフェノールイオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、水素化ホウ素イオン、又は過塩素酸イオン等が挙げられるが、タングステンに対して選択的に窒化チタンをエッチングする用途では、アニオンをハロゲンアニオンに限定したオニウムハライドである必要がある。推定される理由として、アニオンの種類によっても異なるが、例えば、これらのアニオンの中で最も一般的な水酸化物イオンの場合は、エッチング液のpH変化を引き起こすため、タングステンおよび窒化チタンの表面の電気的性質が変化してしまい吸着特性が変わるためであると考えられる。
【0036】
(イミニウムハライド)
エッチング液は、カチオン化合物として、イミニウムハライドを好適に含むことができ、該カチオン化合物の添加によりタングステンに対して窒化チタンを選択的に除去することができる。イミニウムハライドは、イミニウムイオン(イミニウムカチオン)とハロゲンアニオンから形成される。イミニウムハライドは、エッチング液中で解離して、カチオン部分がタングステンに選択的に吸着することで酸化剤による酸化を抑制していると推測される。
イミニウムイオンとしては、例えば、N,N-ジメチルメチレンイミニウムイオン、N,N-ジメチル-N-(メチルスルファニルメチレン)イミニウムイオン、(クロロメチレン)ジメチルイミニウムイオン、ジクロロメチレンジメチルイミニウムイオン、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムイオン、アミノ(tert-ブチルチオ)メタンイミニウムイオン、N-tert-ブチル-N-メチル-1-フェニルメタンイミニウムイオン、N-(ジフェニルメチレン)-α-フェニルベンゼンメタンイミニウムイオン、6-(ジエチルアミノ)-N,N-ジエチル-9-[2-[(オクタデシルオキシ)カルボニル]フェニル]-3H-キサンテン-3-イミニウムイオン、又はN,N,N’,N’-テトラキス(4-ジブチルアミノフェニル)-1,4-ベンゾキノンジイミニウムイオン等が挙げられる。
さらに、これらのイミニウムイオンの中でも、タングステンの溶解を抑制する効果の観点から、N,N-ジメチル-N-(メチルスルファニルメチレン)イミニウムイオン、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムイオン、アミノ(tert-ブチルチオ)メタンイミニウムイオン、6-(ジエチルアミノ)-N,N-ジエチル-9-[2-[(オクタデシルオキシ)カルボニル]フェニル]-3H-キサンテン-3-イミニウムイオン、又はN,N,N’,N’-テトラキス(4-ジブチルアミノフェニル)-1,4-ベンゾキノンジイミニウムイオンが好ましく、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムイオン、又は6-(ジエチルアミノ)-N,N-ジエチル-9-[2-[(オクタデシルオキシ)カルボニル]フェニル]-3H-キサンテン-3-イミニウムイオンがより好ましい。
【0037】
(ジアゾニウムハライド)
エッチング液は、カチオン化合物として、ジアゾニウムハライドを好適に含むことができ、該カチオン化合物の添加によりタングステンに対して窒化チタンを選択的に除去する
ことができる。ジアゾニウムハライドは、ジアゾニウムイオン(ジアゾニウムカチオン)とハロゲンアニオンから形成される。ジアゾニウムハライドは、エッチング液中で解離して、カチオン部分がタングステンに選択的に吸着することで酸化剤による酸化を抑制していると推測される。
ジアゾニウムイオンとしては、例えば、ベンゼンジアゾニウムイオン、2-ナフタレンジアゾニウムイオン、又は1,4-ベンゼンビス(ジアゾニウム)イオン等が挙げられる。
【0038】
(グアニジン類)
エッチング液は、カチオン化合物として、グアニジン類を好適に含むことができ、該カチオン化合物の添加によりタングステンに対して窒化チタンを選択的に除去することができる。グアニジン類は、エッチング液中で酸によるプロトン化を受けてカチオン化して、タングステンに選択的に吸着することで酸化剤による酸化を抑制していると推測される。
グアニジン類としては、例えば、グアニジン、グアニジニウム塩、アルギニン、グアニジノ酢酸、1-メチルグアニジノ酢酸(別名:クレアチン)、グアニルチオ尿素、1-グアニジノ安息香酸、1-メチルグアニジン、1-アミノグアニジン、1-Boc-グアニジン、1-シアノグアニジン、ジシアンジアミジン、イミノクタジン、1,1-ジメチルグアニジン、1,3-ジアミノグアニジン、1,1-ジエチルグアニジン、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1,3-ジフェニルグアニジン、1,2,3-トリフェニルグアニジン、4-アミノベンゼンスルホニルグアニジン、N-1H-ベンズイミダゾール-2-イルグアニジン、ポリヘキサメチレングアニジン、又はシメチジン等が挙げられる。
さらに、これらのグアニジン類の中でも、タングステンの溶解を抑制する効果の観点から、アルギニン、ジシアンジアミジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1,3-ジフェニルグアニジン、1,2,3-トリフェニルグアニジン、4-アミノベンゼンスルホニルグアニジン、N-1H-ベンズイミダゾール-2-イルグアニジン、又はポリヘキサメチレングアニジンが好ましく、アルギニン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1,3-ジフェニルグアニジン、1,2,3-トリフェニルグアニジン、又はポリヘキサメチレングアニジンがより好ましく、アルギニン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1,2,3-トリフェニルグアニジン、又はポリヘキサメチレングアニジンがさらに好ましい。
【0039】
(ビグアニド)
エッチング液は、カチオン化合物として、ビグアニドを好適に含むことができ、該カチオン化合物の添加によりタングステンに対して窒化チタンを選択的に除去することができる。ビグアニドは、エッチング液中で酸によるプロトン化を受けてカチオン化して、タングステンに選択的に吸着することで酸化剤による酸化を抑制していると推測される。
このようなビグアニドとしては、例えば、1,1-ジメチルビグアニド(別名:メトホルミン)、1,1-ジエチルビグアニド、1,1,5,5-テトラメチルビグアニド、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-ブチルビグアニド(別名:ブホルミン)、1,1-ジブチルビグアニド、1-tert-ブチルビグアニド、1-プロピルビグアニド、1-オクチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-(2-エチルヘキシル)ビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、フェニルエチルビグアニド(別名:フェンホルミン)、1-(o-トリル)ビグアニド、1-ベンジルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、o-ビフェニルビグアニド、1-(1-ナフチル)ビグアニド、1-(3-メチルフェニル)ビグアニド、1-(4-メチルフェニル)ビグアニド、1-(4-メトキシフェニル)ビグアニド、1-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]ビグアニド、1-(4-ニトロフェニル)ビグアニド、1-モルホリノビグアニド(別名:モロキシジン)、3-モルホリノビグアニド、1-(2,3-キシリル)ビグアニド、1-(2,6-キシリル)ビグアニド、1-(2-クロロフェニル)ビグアニド、1-(3-クロロフェニル)ビグアニド、1-(4-クロロフェニル)ビグアニド、1-(4-ブロモフェニル)ビグアニド、1-(2-フルオロフェニル)ビグアニド、1-(3-フルオロフェニル)ビグアニド、1-(4-フルオロフェニル)ビグアニド、1-(4-クロロベンジル)ビグアニド、1-(4-クロロベンジルオキシ)ビグアニド、1-フェニル-1-メチルビグアニド、1-ベンジル-1-メチルビグアニド、1-(2,3-ジメチルフェニル)ビグアニド、1-(2,6-ジメチルフェニル)ビグアニド、1-(3-クロロ-2-フルオロフェニル)ビグアニド、1-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)ビグアニド、1-(2,5-ジクロロフェニル)ビグアニド、1-(2,6-ジクロロフェニル)ビグアニド、1-(3,5-ジクロロフェニル)ビグアニド、1-(2,4-ジフルオロフェニル)ビグアニド、1-(2,5-ジフルオロフェニル)ビグアニド、1-(3,4-ジフルオロフェニル)ビグアニド、1-(3,5-ジフルオロフェニル)ビグアニド、1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ビグアニド、1,5-エチレンビグアニド、1-n-ブチル-N2-エチルビグアニド、1-シクロヘキシル-5-フェニルビグアニド、1-(フェネチル)-5-プロピルビグアニド、1-ヘキシル-5-ベンジルビグアニド、1-[3-(ジエチルアミノ)プロピル]ビグアニド、1-[3-(ジブチルアミノ)プロピル]ビグアニド、1-(4-クロロフェニル)-5-(1-メチルエチル)ビグアニド、1-(4-クロロフェニル)-5-(4-メトキシ)フェニルビグアニド、1-(4-メチルフェニル)-5-オクチルビグアニド、1-(4-フェニルシクロヘキシル)ビグアニド、1,5-ビス(p-クロロフェニル)ビグアニド、1-イソプロピル-5-(4-クロロフェニル)ビグアニド(別名:プログアニル)、1-(イソプロピル-5-(3,4-ジクロロフェニル)ビグアニド、1-シクロペンチル-5-(4-メトキシフェニル)ビグアニド、1-(4-メチル)シクロヘキシル-5-フェニルビグアニド、1,1’-エチレンビスビグアニド、1,5-ビス(フェネチル)ビグアニド、1,5-ビス(3-クロロフェニル)ビグアニド、1,5-ビス(4-クロロフェニル)ビグアニド、1,5-ビス(4-ブロモフェニル)ビグアニド、1,5-ビス(3,4-ジクロロフェニル)ビグアニド、1,5-ビス(3,5-ジクロロフェニル)ビグアニド、1,1-ビス(3-クロロ-4-メトキシフェニル)ビグアニド、1,1’-ヘキサメチレンビス[5-(p-クロロフェニル)ビグアニド](別名:クロルヘキシジン)、1,1’-ヘキサメチレンビス[5-(2-エチルヘキシル)]ビグアニド(別名:アレキシジン)、又はポリヘキサメチレンビグアニド(別名:ポリヘキサニド)等が挙げられる。
さらに、これらのビグアニドの中でも、タングステンの溶解を抑制する効果の観点から、1,1-ジメチルビグアニド、フェニルエチルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド、1-ベンジルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、o-ビフェニルビグアニド、1-(1-ナフチル)ビグアニド、1-(3-メチルフェニル)ビグアニド、1-(4-メチルフェニル)ビグアニド、1-モルホリノビグアニド、3-モルホリノビグアニド、1-(2,3-キシリル)ビグアニド、1-(2,6-キシリル)ビグアニド、1-(2,3-ジメチルフェニル)ビグアニド、1-(2,6-ジメチルフェニル)ビグアニド、1-(4-フェニルシクロヘキシル)ビグアニド、1-イソプロピル-5-(4-クロロフェニル)ビグアニド、1,5-ビス(フェネチル)ビグアニド、1,1’-ヘキサメチレンビス[5-(p-クロロフェニル)ビグアニド]、1,1’-ヘキサメチレンビス[5-(2-エチルヘキシル)]ビグアニド、又はポリヘキサメチレンビグアニドが好ましく、1,1-ジメチルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド、o-ビフェニルビグアニド、1-(1-ナフチル)ビグアニド、1,5-ビス(フェネチル)ビグアニド、1,1’-ヘキサメチレンビス[5-(p-クロロフェニル)ビグアニド]、1,1’-ヘキサメチレンビス[5-(2-エチルヘキシル)]ビグアニド、又はポリヘキサメチレンビグアニドがより好ましく、1-(o-トリル)ビグアニド、o-ビフェニルビグアニド、1-(1-ナフチル)ビグアニド、又はポリヘキサメチレンビグアニドがさらに好ましい。
【0040】
(アニリン類、芳香族複素環化合物)
エッチング液は、カチオン化合物として、アニリン類、又は芳香族複素環化合物を好適に含むことができ、該カチオン化合物の添加によりタングステンに対して窒化チタンを選択的に除去することができる。これらの化合物は、エッチング液中では、主にヘテロ原子がプロトン化を受けてカチオン化して、タングステンに選択的に吸着することで酸化剤による酸化を抑制していると推測される。
【0041】
・アニリン類
アニリン類は、アニリン、アニリンを含む化合物、又はアニリン誘導体のことを指す。このようなアニリン類としては、例えば、アニリン、N-メチルアニリン、N-エチルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジベンジルアニリン、o-メチルアニリン(別名:o-トルイジン)、m-メチルアニリン(別名:m-トルイジン)、p-メチルアニリン(別名:p-トルイジン)、o-エチルアニリン、m-エチルアニリン、p-エチルアニリン、o-イソプロピルアニリン(別名:o-クミジン)、m-イソプロピルアニリン(別名:m-クミジン)、p-イソプロピルアニリン(別名:p-クミジン)、o-アミノフェノール、m-アミノフェノール、p-アミノフェノール、o-メトキシアニリン(別名:o-アニシジン)、m-メトキシアニリン(別名:m-アニシジン)、p-メトキシアニリン(別名:p-アニシジン)、o-エトキシアニリン(別名:o-フェネチジン)、m-エトキシアニリン(別名:m-フェネチジン)、p-エトキシアニリン(別名:p-フェネチジン)、o-ニトロアニリン、m-ニトロアニリン、p-ニトロアニリン、o-アミノ安息香酸(別名:アントラニル酸)、o-アミノ安息香酸メチル、o-アミノ安息香酸エチル、m-アミノ安息香酸、m-アミノ安息香酸メチル、p-アミノ安息香酸、p-アミノ安息香酸メチル、p-アミノ安息香酸エチル、o-アニリンスルホン酸(別名:オルタニル酸)、m-アニリンスルホン酸(別名:メタニル酸)、p-アニリンスルホン酸(別名:スルファニル酸)、o-アミノベンズアルデヒド、p-アミノベンズアルデヒド、3-イソプロポキシアニリン、2-アリルアニリン、2-シアノアニリン、3-シアノアニリン、4-シアノアニリン、2-メルカプトアニリン、3-メルカプトアニリン、4-メルカプトアニリン、2-(トリフルオロメチル)アニリン、3-(トリフルオロメチル)アニリン、4-(トリフルオロメチル)アニリン、4-アミノベンゾニトリル、2,3-ジメチルアニリン(別名:2,3-キシリジン)、2,4-ジメチルアニリン(別名:2,4-キシリジン)、2,5-ジメチルアニリン(別名:2,5-キシリジン)、2,6-ジメチルアニリン(別名:2,6-キシリジン)、3,4-ジメチルアニリン(別名:3,4-キシリジン)、3,5-ジメチルアニリン(別名:3,5-キシリジン)、3,4-ジアミノ安息香酸、3,5-ジアミノ安息香酸、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、o-ニトロ-p-クロロアニリン、4-メチル-2-ニトロアニリン、4-メトキシ-2-メチルアニリン(別名:m-クレシジン)、2-メトキシ-5-メチルアニリン(別名:p-クレシジン)、2,4,5-トリメチルアニリン、2,4,6-トリメチルアニリン(別名:メシジン)、2,3,4,6-テトラメチルアニリン、2,3,5,6-テトラメチルアニリン、N-フェニルベンゼン-1,2-ジアミン、N-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン、ビフェニル-2,2’-ジアミン、ビフェニル-4,4’-ジアミン、3,3’-ジメチルベンジジン(別名:o-トリジン)、2,2’-ジメチルベンジジン(別名:m-トリジン)、3,3’ージメトキシベンジジン(別名:o-ジアニシジン)、m-キシリレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、1,8-ナフタレンジアミン、1-アミノアントラセン、2-アミノアントラセン又はアクロニフェン等が挙げられる。
【0042】
さらに、これらのアニリン類の中でも、タングステンの溶解を抑制する効果の観点から、アニリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジベンジルアニリン、o-メチルアニリン、m-メチルアニリン、p-メチルアニリン、o-エチルアニリン、m-エチルアニリン、p-エチルアニリン、2-イソプロピルアニリン、3-イソプロピルアニリン、4-イソプロピルアニリン、o-アミノフェノール、p-アミノフェノール、o-メトキシアニリン、m-メトキシアニリン、p-メトキシアニリン、o-エトキシアニリン、m-エトキシアニリン、p-エトキシアニリン、o-ニトロアニリン、p-ニトロアニリン、o-アミノ安息香酸、o-アミノ安息香酸エチル、m-アミノ安息香酸、p-アミノ安息香酸、p-アミノ安息香酸エチル、o-アニリンスルホン酸、m-アニリンスルホン酸、p-アニリンスルホン酸、2-アリルアニリン、2-シアノアニリン、2-メルカプトアニリン、2,3-ジメチルアニリン、2,4-ジメチルアニリン、2,5-ジメチルアニリン、2,6-ジメチルアニリン、3,4-ジメチルアニリン、3,5-ジメチルアニリン、3,4-ジアミノ安息香酸、3,5-ジアミノ安息香酸、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、2,4,5-トリメチルアニリン、2,4,6-トリメチルアニリン、3,3’-ジメチルベンジジン、2,2’-ジメチルベンジジン、3,3’ージメトキシベンジジン、m-キシリレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、1,8-ナフタレンジアミン、又はアクロニフェンが好ましく、アニリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、o-メチルアニリン、m-メチルアニリン、p-メチルアニリン、o-メトキシアニリン、m-メトキシアニリン、p-メトキシアニリン、o-エトキシアニリン、m-エトキシアニリン、p-エトキシアニリン、p-ニトロアニリン、o-アミノ安息香酸、p-アミノ安息香酸、o-アニリンスルホン酸、m-アニリンスルホン酸、p-アニリンスルホン酸、2-シアノアニリン、2,3-ジメチルアニリン、3,4-ジアミノ安息香酸、3,5-ジアミノ安息香酸、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、2,4,6-トリメチルアニリン、3,3’-ジメチルベンジジン、又は2,2’-ジメチルベンジジンがより好ましく、アニリン、p-ニトロアニリン、o-アニリンスルホン酸、m-アニリンスルホン酸、又はp-アニリンスルホン酸がさらに好ましい。
【0043】
・芳香族複素環化合物
芳香族複素環化合物としては、π過剰芳香族複素環化合物、アゾール系芳香族複素環化合物、又はπ欠如芳香族複素環化合物等が挙げられる。これらの中でも、薬液中でよりカチオン化しやすいことから、π過剰芳香族複素環化合物が好ましい。なお、アゾール系芳香族複素環化合物は、π過剰芳香族複素環化合物に分類されることもあるが、タングステンへの吸着のしやすさの観点から、異なる分類とした。これは、アゾール系芳香族複素環化合物は、π過剰芳香族とπ欠如芳香族の中間的な性質を有することに起因していると、本発明者は推測している。
【0044】
・π過剰芳香族複素環化合物
π過剰芳香族複素環化合物とは環の炭素原子がπ電子過剰の状態である化合物であり、ピロール類縁物質、インドール類縁物質、チオフェン類縁物質、又はフラン類縁物質等が挙げられる。
【0045】
ピロール類縁物質は、ピロールもしくは、ピロリニウムカチオン、又は該カチオンを含む化合物、又はそれらの誘導体のことを指す。このようなピロール類縁物質としては、例えば、ピロール、ピロリニウム塩、1-メチルピロール、2-メチルピロール、3-メチルピロール、1-エチルピロール、2-エチルピロール、1-ベンジルピロール、2-ベンゾイルピロール、2-ヒドロキシピロール、3-ヒドロキシピロール、2-アミノピロール、3-アミノピロール、2-ニトロピロール、3-ニトロピロール、ピロール-2-カルボン酸、ピロール-2-カルボン酸メチル、ピロール-2-カルボン酸エチル、ピロール-2-カルボキシアルデヒド、ピロール-2-カルボキシアルデヒドオキシム、ピロール-3-カルボン酸、ピロール-3-カルボン酸エチル、2-アセチルピロール、3-アセチルピロール、2-プロピオニルピロール、1-トシルピロール、2-(トリクロロアセチル)ピロール、1-(4-クロロフェニル)ピロール、1-(3-ブロモフェニル)ピロール、1-(4-ブロモフェニル)ピロール、1-(2-アミノフェニル)ピロール、1-(4-メトキシフェニル)ピロール、1-フルフリルピロール、N-ベンゼンスルホニルピロール、N-Boc-ピロール、2,5-ジメチルピロール、ピロール-2,3-ジカルボン酸、2,4-ジフェニルピロール、2,5-ジアミノピロール、3,4-ジクロロピロール、1-メチル-2-ピロールカルボン酸、1-メチル-2-ピロールカルボキシアルデヒド、1-エチル-2-ピロールカルボン酸、1-エチル-2-ピロールカルボキシアルデヒド、4-ニトロピロール-2-カルボン酸、4-ニトロピロール-2-カルボン酸エチル、2-アセチル-1-メチルピロール、2-アセチル-1-エチルピロール、3-アセチル-1-(p-トリルスルホニル)ピロール、1-(ベンゼンスルホニル)-3-ブロモピロール、1-トシルピロール-2-カルボン酸、1-(4-ブロモフェニル)-2,5-ジメチルピロール、3-エチル-2,4-ジメチルピロール、ピロール-2,3,5-トリカルボン酸、3-エチル-2,4-ジメチルピロール、3,5-ジメチル-2-ピロールカルボン酸、3,5-ジメチル-2-ピロールカルボン酸エチル、3,5-ジメチル-2-ピロールカルボキシアルデヒド、5-ホルミル-2,4-ジメチル-3-ピロールカルボン酸、5-ホルミル-2,4-ジメチル-3-ピロールカルボン酸エチル、2,3,4,5-テトラフェニルピロール、ジピリルメタン、ジピリルメチン、ポルフィン、ポルフィリン、コロール、トルメチン、又はフタロシアニン等が挙げられる。
【0046】
さらに、これらのピロール類縁物質の中でも、タングステンの溶解を抑制する効果の観点から、ピロール、ピロリニウム塩、1-ベンジルピロール、2-ヒドロキシピロール、2-ニトロピロール、ピロール-2-カルボン酸、ピロール-2-カルボン酸エチル、ピロール-2-カルボキシアルデヒド、ピロール-3-カルボン酸、2-アセチルピロール、1-トシルピロール、2-(トリクロロアセチル)ピロール、1-フルフリルピロール、N-Boc-ピロール、2,5-ジメチルピロール、ピロール-2,3-ジカルボン酸、2,4-ジフェニルピロール、3,4-ジクロロピロール、1-メチル-2-ピロールカルボン酸、1-エチル-2-ピロールカルボン酸、4-ニトロピロール-2-カルボン酸、2-アセチル-1-エチルピロール、3-アセチル-1-(p-トリルスルホニル)ピロール、1-トシルピロール-2-カルボン酸、ピロール-2,3,5-トリカルボン酸、3,5-ジメチル-2-ピロールカルボン酸、2,3,4,5-テトラフェニルピロール、ポルフィン、又はコロールが好ましく、ピロール、2-ニトロピロール、ピロール-2-カルボン酸、ピロール-2-カルボン酸エチル、ピロール-2-カルボキシアルデヒド、ピロール-3-カルボン酸、2-アセチルピロール、2-(トリクロロアセチル)ピロール、2,5-ジメチルピロール、ピロール-2,3-ジカルボン酸、1-エチル-2-ピロールカルボン酸、4-ニトロピロール-2-カルボン酸、2-アセチル-1-エチルピロール、3-アセチル-1-(p-トリルスルホニル)ピロール、1-トシルピロール-2-カルボン酸、ピロール-2,3,5-トリカルボン酸、3,5-ジメチル-2-ピロールカルボン酸、2,3,4,5-テトラフェニルピロール、ポルフィン、又はコロールがより好ましく、ピロール、2-ニトロピロール、ピロール-2-カルボン酸、ピロール-3-カルボン酸、2-アセチルピロール、2-(トリクロロアセチル)ピロール、2-アセチル-1-エチルピロール、3-アセチル-1-(p-トリルスルホニル)ピロール、又はピロール-2,3,5-トリカルボン酸がさらに好ましい。
【0047】
インドール類縁物質は、インドール、インドリウムカチオン、イソインドール、イソインドリウムカチオン、インドリジン、もしくはインドリジニウムカチオン、又はこれらのうちのカチオンを含む化合物、又はそれらの誘導体のことを指す。
【0048】
このようなインドール類縁物質としては、例えば、インドール、インドリウム塩、イソインドール、イソインドリウム塩、インドリジン、インドリジニウム塩、オキシインドール、3H-インドレニン、2H-インドレニン、イサチン、インドリン、イソインドリン
、1-メチルインドール、2-メチルインドール、3-メチルインドール、4-メチルインドール、5-メチルインドール、6-メチルインドール、7-メチルインドール、3-アセチルインドール、2-ヒドロキシインドール、3-ヒドロキシインドール(別名:インドキシル)、2-アミノインドール、3-アミノインドール、インドール-2-カルボン酸、インドール-2-カルボキシアルデヒド、インドール-2-カルボン酸メチル、インドール-2-カルボン酸エチル、インドール-3-カルボン酸、インドール-3-カルボキシアルデヒド、インドール-3-カルボン酸メチル、インドール-3-カルボン酸エチル、インドール-3-プロピオン酸、インドール-5-カルボン酸、3-ニトロインドール、5-メトキシインドール、5-エトキシインドール、3-インドールメタノール、3-インドールグリセリン、3-インドールグリオキシル酸メチル、3-(ジメチルアミノメチル)インドール、3-シアノアセチルインドール、3-トリフルオロアセチルインドール、5,6-ジオキシインドール、1-メチルインドール-2-カルボン酸、1-メチルインドール-3-カルボン酸、1-メチルインドール-3-カルボキシアルデヒド、2-メチルインドール-3-カルボン酸、2-メチルインドール-3-カルボキシアルデヒド、2-フェニルインドール-3-カルボン酸、2-フェニルインドール-3-カルボキシアルデヒド、3-メチルインドール-2-カルボン酸、3-メチルインドール-2-カルボン酸メチル、3-クロロインドール-2-カルボン酸、3-ブロモインドール-2-カルボン酸、3-ブロモインドール-2-カルボン酸エチル、4-ブロモインドール-2-カルボン酸、4-ブロモインドール-2-カルボン酸メチル、4-ブロモインドール-3-カルボン酸、4-ブロモインドール-3-カルボキシアルデヒド、5-メトキシインドール-2-カルボン酸、5-メトキシインドール-3-カルボン酸、5-メトキシインドール-3-カルボキシアルデヒド、5-ニトロインドール-2-カルボン酸、5-ニトロインドール-2-カルボン酸エチル、5-ニトロインドール-3-カルボン酸、5-ニトロインドール-3-カルボキシアルデヒド、5-クロロインドール-2-カルボン酸、5-クロロインドール-2-カルボン酸エチル、5-クロロインドール-3-カルボン酸、5-クロロインドール-3-カルボキシアルデヒド、5-ブロモインドール-2-カルボン酸、5-ブロモインドール-2-カルボン酸エチル、5-ブロモインドール-3-カルボン酸、5-ブロモインドール-3-カルボキシアルデヒド、5-フルオロインドール-2-カルボン酸、5-フルオロインドール-2-カルボン酸エチル、6-ブロモインドール-2-カルボン酸、6-ブロモインドール-3-カルボン酸、6-ブロモインドール-3-カルボキシアルデヒド、6-フルオロインドール-2-カルボン酸、6-オキシ-3-フェニルインドール、N-Boc-3-ホルミルインドール、2,3,3-トリメチルインドレニン、4,5,6,7-テトラヒドロイソインドール-1-カルボン酸エチル、カルバゾール、β-カルボリン、トリプトファン、ジメチルトリプタミン、トリプトリン、ピノリン、ハルマン、ハルミン、ハルマリン、テトラヒドロハルマリン、セロトニン、メカルビナート、アルビドール、オンクラシン1、トロピセトロン、ドラセトロン、アロセトロン、オンダンセトロン、又はメラトニン等が挙げられる。
【0049】
さらに、これらのインドール類縁物質の中でも、タングステンの溶解を抑制する効果の観点から、インドール、インドリウム塩、イソインドール、イソインドリウム塩、インドリジン、インドリジニウム塩、オキシインドール、3H-インドレニン、2H-インドレニン、イサチン、インドリン、3-アセチルインドール、3-ヒドロキシインドール、インドール-2-カルボン酸、インドール-2-カルボン酸エチル、インドール-3-カルボン酸、インドール-3-カルボン酸メチル、インドール-3-カルボン酸エチル、インドール-3-プロピオン酸、インドール-5-カルボン酸、3-ニトロインドール、5-メトキシインドール、3-インドールグリオキシル酸メチル、3-シアノアセチルインドール、3-トリフルオロアセチルインドール、5,6-ジオキシインドール、1-メチルインドール-2-カルボン酸、1-メチルインドール-3-カルボン酸、2-メチルインドール-3-カルボン酸、2-フェニルインドール-3-カルボン酸、3-メチルインドール-2-カルボン酸、3-クロロインドール-2-カルボン酸、3-ブロモインドール-2-カルボン酸、4-ブロモインドール-2-カルボン酸、4-ブロモインドール-3-カルボン酸、5-メトキシインドール-2-カルボン酸、5-メトキシインドール-3-カルボン酸、5-ニトロインドール-2-カルボン酸、5-ニトロインドール-3-カルボン酸、5-クロロインドール-2-カルボン酸、5-クロロインドール-3-カルボン酸、5-ブロモインドール-2-カルボン酸、5-ブロモインドール-3-カルボン酸、5-フルオロインドール-2-カルボン酸、6-ブロモインドール-2-カルボン酸、6-ブロモインドール-3-カルボン酸、6-フルオロインドール-2-カルボン酸、カルバゾール、トリプトファン、ジメチルトリプタミン、セロトニン、メカルビナート、アルビドール、オンクラシン1、トロピセトロン、ドラセトロン、アロセトロン、オンダンセトロン、又はメラトニンが好ましく、インドール、イソインドール、インドリジン、インドリジニウム塩、オキシインドール、3H-インドレニン、2H-インドレニン、3-アセチルインドール、インドール-2-カルボン酸、インドール-2-カルボン酸エチル、インドール-3-カルボン酸、インドール-3-カルボン酸エチル、インドール-3-プロピオン酸、インドール-5-カルボン酸、3-ニトロインドール、3-インドールグリオキシル酸メチル、3-シアノアセチルインドール、3-トリフルオロアセチルインドール、1-メチルインドール-3-カルボン酸、2-メチルインドール-3-カルボン酸、2-フェニルインドール-3-カルボン酸、3-クロロインドール-2-カルボン酸、3-ブロモインドール-2-カルボン酸、4-ブロモインドール-3-カルボン酸、5-メトキシインドール-2-カルボン酸、5-メトキシインドール-3-カルボン酸、5-ニトロインドール-2-カルボン酸、5-ニトロインドール-3-カルボン酸、5-クロロインドール-2-カルボン酸、5-クロロインドール-3-カルボン酸、5-ブロモインドール-2-カルボン酸、5-ブロモインドール-3-カルボン酸、6-ブロモインドール-2-カルボン酸、6-ブロモインドール-3-カルボン酸、カルバゾール、トリプトファン、ジメチルトリプタミン、又はセロトニンがより好ましく、インドール、イソインドール、インドリジン、3-アセチルインドール、インドール-2-カルボン酸、インドール-3-カルボン酸、又はトリプトファンがさらに好ましい。
【0050】
チオフェン類縁物質は、チオフェンもしくはチオフェニウムカチオン、又は該カチオンを含む化合物や、それらの誘導体のことを指す。
【0051】
このようなチオフェン類縁物質としては、例えば、チオフェン、チオフェニウム塩、ベンゾチオフェン、2-ヒドロキシチオフェン、3-ヒドロキシチオフェン、2-アミノチオフェン、3-アミノチオフェン、2-ニトロチオフェン、3-ニトロチオフェン、2-メトキシチオフェン、3-メトキシチオフェン、チオフェン-2-カルボン酸(別名:2-テノ酸)、チオフェン-3-カルボン酸(別名:3-テノ酸)、チオフェン-3-カルボン酸フェニル、2,5-ジメチルチオフェン、2,5-チオフェンジカルボン酸、2-アセチル-5-メチルチオフェン、3,4-エチレンジオキシチオフェン、2-[4-(チオフェン-2-カルボニル)フェニル]プロパン酸(別名:スプロフェン)、2-(5-ベンゾイルチオフェン-2-イル)プロピオン酸(別名:チアプロフェン酸)、ブロチゾラム、又はテノキシカム等が挙げられる。
【0052】
さらに、これらのチオフェン類縁物質の中でも、タングステンの溶解を抑制する効果の観点から、チオフェン、チオフェニウム塩、ベンゾチオフェン、2-ヒドロキシチオフェン、2-ニトロチオフェン、2-メトキシチオフェン、チオフェン-2-カルボン酸、チオフェン-3-カルボン酸、チオフェン-3-カルボン酸フェニル、2,5-ジメチルチオフェン、2,5-チオフェンジカルボン酸、3,4-エチレンジオキシチオフェン、2-[4-(チオフェン-2-カルボニル)フェニル]プロパン酸、又は2-(5-ベンゾイルチオフェン-2-イル)プロピオン酸が好ましく、チオフェン、ベンゾチオフェン、2-ヒドロキシチオフェン、2-ニトロチオフェン、2-メトキシチオフェン、チオフェン-2-カルボン酸、2,5-ジメチルチオフェン、又は3,4-エチレンジオキシチオ
フェンがより好ましく、チオフェン、ベンゾチオフェン、又は3,4-エチレンジオキシチオフェンがさらに好ましい。
【0053】
フラン類縁物質は、フランもしくはフラニウムカチオン、又は該カチオンを含む化合物や、それらの誘導体のことを指す。
【0054】
このようなフラン類縁物質としては、例えば、フラン、フラニウム塩、ベンゾフラン、2-メチルフラン、2-ヒドロキシフラン、3-ヒドロキシフラン、2-アミノフラン、3-アミノフラン、2-ニトロフラン、2-クロロフラン、フラン-2-カルボン酸(別名:ピロムシン酸)、フラン-3-カルボン酸、2-フランカルボキシアルデヒド(別名:フルフラール)、2-フリルメタノール(別名:フルフリルメタノール)、2-アセチルフラン、フラン-2-イルメタンチオール(別名:フルフリルチオール)、2,5-ジメチルフラン、ジベンゾフラン、フラン-2,5-ジカルボン酸、2-アセチル-3-ヒドロキシ-2-フラン(別名:イソマルトール)、1,3-ジヒドロイソベンゾフラン(別名:フタラン)、2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン(別名:クマラン)、1-ベンゾフラン-2-カルボン酸(別名:クマリル酸)、カイネチン、イソベンゾフラン、又はニトロフラール等が挙げられる。
【0055】
さらに、これらのフラン類縁物質の中でも、タングステンの溶解を抑制する効果の観点から、フラン、フラニウム塩、ベンゾフラン、2-ヒドロキシフラン、2-ニトロフラン、2-クロロフラン、フラン-2-カルボン酸、フラン-3-カルボン酸、2-フリルメタノール、2-アセチルフラン、フラン-2-イルメタンチオール、2,5-ジメチルフラン、ジベンゾフラン、フラン-2,5-ジカルボン酸、1-ベンゾフラン-2-カルボン酸、又はイソベンゾフランが好ましく、フラン、ベンゾフラン、2-ヒドロキシフラン、2-ニトロフラン、2-クロロフラン、フラン-2-カルボン酸、フラン-3-カルボン酸、フラン-2,5-ジカルボン酸、又は1-ベンゾフラン-2-カルボン酸がより好ましく、フラン、又はベンゾフランがさらに好ましい。
【0056】
(アゾール系芳香族複素環化合物)
アゾール系芳香族複素環化合物は、ピラゾール、ピラゾリウムカチオン、インダゾール、インダゾリウムカチオン、イミダゾール、イミダゾリウムカチオン、オキサゾール、オキサゾリウムカチオン、イソオキサゾール、イソオキサゾリウムカチオン、チアゾール、チアゾリウムカチオン、イソチアゾール、イソチアゾリウムカチオン、トリアゾール、トリアゾリウムカチオン、オキサジアゾール、オキサジアゾリウムカチオン、チアジアゾール、チアジアゾリウムカチオン、テトラゾール、テトラゾリウムカチオン、オキサトリアゾール、オキサトリアゾリウムカチオン、チアトリアゾール、もしくはチアトリアゾリウムカチオン、又はこれらのカチオンを含む化合物や、それらの誘導体のことを指す。
【0057】
このようなアゾール系複素環化合物としては、例えば、ピラゾール、ピラゾリウム塩、3-メチルピラゾール、5-メチルピラゾール、1,2-ベンゾピラゾール、2,1-ベンゾピラゾール、ピラゾール-4-カルボン酸、ピラゾール-4-カルボン酸エチル、3,5-ジメチルピラゾール、ピラゾール-3,5-ジカルボン酸、1-メチルピラゾール-5-カルボン酸、5-メチルピラゾール-3-カルボン酸、3-アミノ-5-ヒドロキシピラゾール、インダゾール、インダゾリウム塩、2,3-ジヒドロインダゾール、イミダゾール、イミダゾリウム塩、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、5-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-ブチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1-アリルイミダゾール、1-ビニルイミダゾール、イミダゾール-2-カルボン酸、イミダゾール-4-カルボン酸、ベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1,3-ジメチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、イミダゾール-4,5-ジカルボン酸、1-エチル-3-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ブチル-3-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1,2,3-トリメチルイミダゾール、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾール、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾール、2-アミノ-4,5-ジシアノイミダゾール、オキサゾール、オキサゾリウム塩、ベンゾオキサゾール、イソオキサゾール、イソオキサゾリウム塩、1,2-ベンゾイソオキサゾール、チアゾール、チアゾリウム塩、2-アミノチアゾール、ベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、イソチアゾール、イソチアゾリウム塩、1,2-ベンゾイソチアゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、トリアゾリウム塩、1-アミノ-1,2,3-トリアゾール、1-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、3-イソプロピル-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、1-アミノ-5-メチル-1,2,3-トリアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、1H-ベンゾトリアゾール、2H-ベンゾトリアゾール、4-メチルベンゾトリアゾール、5-メチルベンゾトリアゾール、4-エチルベンゾトリアゾール、5-エチルベンゾトリアゾール、4-プロピルベンゾトリアゾール、5-プロピルベンゾトリアゾール、4-イソプロピルベンゾトリアゾール、5-イソプロピルベンゾトリアゾール、4-n-ブチルベンゾトリアゾール、5-n-ブチルベンゾトリアゾール、4-イソブチルベンゾトリアゾール、5-イソブチルベンゾトリアゾール、4-ペンチルベンゾトリアゾール、5-ペンチルベンゾトリアゾール、4-ヘキシルベンゾトリアゾール、5-ヘキシルベンゾトリアゾール、5-n-オクチルベンゾトリアゾール、5-フェニルベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、1-アミノベンゾトリアゾール、4-ニトロベンゾトリアゾール、5-ニトロベンゾトリアゾール、5-メトキシベンゾトリアゾール、5-tert-ブチルベンゾトリアゾール、4-クロロベンゾトリアゾール、5-クロロベンゾトリアゾール、4-ブロモベンゾトリアゾール、5-ブロモベンゾトリアゾール、4-フルオロベンゾトリアゾール、5-フルオロベンゾトリアゾール、5-フェニルチオールベンゾトリアゾール、2-(5-アミノペンチル)ベンゾトリアゾール、5-(1’1’―ジメチルプロピル)ベンゾトリアゾール、5-(1’1’3’―トリメチルブチル)ベンゾトリアゾール、5-(1’1’3’3’―テトラメチルブチル)ベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、o-トリル-1H-[1,2,3]トリアゾール、m-トリル-1H-[1,2,3]トリアゾール、p-トリル-1H-[1,2,3]トリアゾール、ナフトトリアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、オキサジアゾリウム塩、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、チアジアゾリウム塩、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、5-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-2-チオール、1,2,3-ベンゾチアジアゾール、1,2,3,4-テトラゾール、テトラゾリウム塩、5-メチル-1H-テトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、5-フェニル-1H-テトラゾール、5-ベンジル-1H-テトラゾール、1H-テトラゾール-5-カルボン酸、1-メチル-5-メルカプト-1,2,3,4-テトラゾール、1-フェニル-5-メルカプト-1,2,3,4-テトラゾール、オキサトリアゾール、オキサトリアゾリウム塩、チアトリアゾール、チアトリアゾリウム塩、グアニン、アデニン、ヒポキサンチン、プリン、ヒスチジン、又はヒスタミン等が挙げられる。
【0058】
さらに、これらのアゾール系芳香族複素環化合物の中でも、タングステンの溶解を抑制する効果の観点から、ピラゾール、ピラゾリウム塩、1,2-ベンゾピラゾール、2,1-ベンゾピラゾール、ピラゾール-4-カルボン酸、1-メチル-ピラゾール-5-カル
ボン酸、5-メチル-ピラゾール-3-カルボン酸、インダゾール、インダゾリウム塩、イミダゾール、イミダゾリウム塩、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-ブチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1-アリルイミダゾール、1-ビニルイミダゾール、イミダゾール-2-カルボン酸、ベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、イミダゾール-4,5-ジカルボン酸、1,2,3-トリメチルイミダゾール、オキサゾール、オキサゾリウム塩、ベンゾオキサゾール、イソオキサゾール、イソオキサゾリウム塩、1,2-ベンゾイソオキサゾール、チアゾール、チアゾリウム塩、ベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、イソチアゾール、イソチアゾリウム塩、1,2-ベンゾイソチアゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、トリアゾリウム塩、1H-ベンゾトリアゾール、2H-ベンゾトリアゾール、5-メチルベンゾトリアゾール、ナフトトリアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、オキサジアゾリウム塩、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、チアジアゾリウム塩、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、5-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-2-チオール、1,2,3-ベンゾチアジアゾール、1,2,3,4-テトラゾール、テトラゾリウム塩、5-メチル-1H-テトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、5-フェニル-1H-テトラゾール、1-メチル-5-メルカプト-1,2,3,4-テトラゾール、1-フェニル-5-メルカプト-1,2,3,4-テトラゾール、オキサトリアゾール、オキサトリアゾリウム塩、チアトリアゾール、チアトリアゾリウム塩、グアニン、アデニン、プリン、ヒスチジン、又はヒスタミンが好ましく、ピラゾール、1,2-ベンゾピラゾール、2,1-ベンゾピラゾール、ピラゾール-4-カルボン酸、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-ベンゾイソオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、イソチアゾール、1,2-ベンゾイソチアゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、1H-ベンゾトリアゾール、2H-ベンゾトリアゾール、5-メチルベンゾトリアゾール、ナフトトリアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、5-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-2-チオール、1,2,3-ベンゾチアジアゾール、1,2,3,4-テトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、5-フェニル-1H-テトラゾール、1-フェニル-5-メルカプト-1,2,3,4-テトラゾール、オキサトリアゾール、チアトリアゾール、グアニン、アデニン、プリン、ヒスチジン、又はヒスタミンがより好ましく、ピラゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、オキサゾール、チアゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、1H-ベンゾトリアゾール、2H-ベンゾトリアゾール、5-メチルベンゾトリアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,3,4-テトラゾール、オキサトリアゾール、又はチアトリアゾールがさらに好ましい。
【0059】
・π欠如芳香族複素環化合物
π欠如芳香族複素環化合物とは環の炭素原子がπ電子不足の状態である化合物であり、ピリジン、ピリジニウムカチオン、ピリミジン、ピリミジニウムカチオン、ピラジン、ピラジニウムカチオン、ピリダジン、ピリダジニウムカチオン、トリアジン、トリアジニウムカチオン、テトラジン、テトラジニウムカチオン、キノリン、キノリニウムカチオン、イソキノリン、イソキノリニウムカチオン、キノキサリン、キノキサリニウムカチオン、キナゾリン、キナゾリニウムカチオン、シンノリン、シンノリニウムカチオン、フタラジン、フタラジニウムカチオン、プテリジン、プテリジニウムカチオン、ピリリウムカチオ
ン、チオピリリウムカチオン、クマリン、イソクマリン、クロモン、もしくはベンゾピラン、又はこれらのカチオンを含む化合物や、それらの誘導体のことを指す。
【0060】
このようなπ欠如芳香族複素環化合物としては、例えば、ピリジン、ピリジニウム塩、ピリジン-N-オキシド、2-メチルピリジン(別名:α-ピコリン)、3-メチルピリジン(別名:β-ピコリン)、4-メチルピリジン(別名:γ-ピコリン)、2-エチルピリジン、2-プロピルピリジン、2-フェニルピリジン、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-ヒドロキシピリジン、3-ヒドロキシピリジン、4-ヒドロキシピリジン、2-メトキシピリジン、4-メトキシピリジン、2-ニトロピリジン、3-ニトロピリジン、2-クロロピリジン、2-ブロモピリジン、3-ブロモピリジン、2-アミノピリジン、3-アミノピリジン、4-アミノピリジン、ピリジン-2-カルボン酸(別名:ピコリン酸)、2-ピリジンカルボキシアルデヒド(別名:ピコリンアルデヒド)、2-ピリジンカルボキシアミド(別名:ピコリン酸アミド)、ピリジン-3-カルボン酸(別名:ニコチン酸)、3-ピリジンカルボキシアルデヒド(別名:ニコチンアルデヒド)、3-ピリジンカルボキシアミド(別名:ニコチン酸アミド)、ピリジン-4-カルボン酸(別名:イソニコチン酸)、4-ピリジンカルボキシアルデヒド(別名:イソニコチンアルデヒド)、4-ピリジンカルボキシアミド(別名:イソニコチン酸アミド)、2-ピリジンメタノール、3-ピリジンメタノール、4-ピリジンメタノール、2-シアノピリジン、3-シアノピリジン、4-シアノピリジン、4-ピペリジノピリジン、4-ピロリジノピリジン、2,3-ジメチルピリジン(別名:2,3-ルチジン)、2,4-ジメチルピリジン(別名:2,4-ルチジン)、2,5-ジメチルピリジン(別名:2,5-ルチジン)、2,6-ジメチルピリジン(別名:2,6-ルチジン)、3,4-ジメチルピリジン(別名:3,4-ルチジン)、3,5-ジメチルピリジン(別名:3,5-ルチジン)、4-エチル-2-メチルピリジン(別名:α-コリジン)、3-エチル-4-メチルピリジン(別名:β-コリジン)、ピリジン-2,3-ジカルボン酸(別名:キノリン酸)、ピリジン-2,4-ジカルボン酸(別名:ルチジン酸)、ピリジン-2,5-ジカルボン酸(別名:イソシンコメロン酸)、ピリジン-2,6-ジカルボン酸(別名:ジピコリン酸)、ピリジン-3,4-ジカルボン酸(別名:シンコメロン酸)、ピリジン-3,5-ジカルボン酸(別名:ジニコチン酸)、2-アミノピリジン-3-カルボン酸、5-ブチル-2-ピリジンカルボン酸(別名:フサル酸)、2,3,5-トリメチルピリジン(別名:2,3,5-コリジン)、2,4,6-トリメチルピリジン(別名:2,4,6-コリジン)、2,4,6-ピリジントリオール、2,4,5-ピリジントリカルボン酸(別名:ベルベロン酸)、2,6-ジヒドロキシピリジン-4-カルボン酸(別名:シトラジン酸)、4-ヒドロキシピリジン-2,6-ジカルボン酸(別名:ケリダム酸)、2,2’-ビピリジル、4,4’-ビピリジル、1,7-フェナントロリン、1,8-フェナントロリン、1,9-フェナントロリン、1,10-フェナントロリン、2,7-フェナントロリン、2,8-フェナントロリン、2,9-フェナントロリン、3,7-フェナントロリン、3,8-フェナントロリン、4,7-フェナントロリン、2,9-ジメチル-1,10-フェナントロリン、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、2,2’-ジチオジピリジン、フェナントリジン、アクリジン、1H-ペリミジン、エチオナミド、ニコチン、コチニン、アナバシン、アナタビン、ピリミジン、ピリミジニウム塩、1-メチルピリミジン、2-メチルピリミジン、4-メチルピリミジン、5-メチルピリミジン、4-ヒドロキシピリミジン、6-ヒドロキシピリミジン、2,4-ピリミジンジオール、2,6-ピリミジンジオール、2,4,6-ピリミジントリオール、シトシン、ウラシル、チミン、ピラジン、ピラジニウム塩、2-メチルピラジン、2-ヒドロキシピラジン、2-アミノピラジン、ピラジン-2-カルボン酸(別名:ピラジン酸)、ピラジン-2-カルボン酸メチル、2-シアノピラジン、2,5-ジメチルピラジン、ピラジン-2,3-ジカルボン酸、5-メチルピラジン-2-カルボン酸、3-アミノピラジン-2-カルボン酸、5-クロロピラジン-2-カルボン酸、6-クロロピラジン-2-カルボン酸、2,3,5-トリメチルピラジン、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン、ピリダジン、ピリダジニウム塩、3-メチルピリダジン、4-メチルピリダジン、3-アミノピリダジン、ピリダジン-4-カルボン酸、1,2,3-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン、トリアジニウム塩、3-アミノトリアジン、トリアジン-3,5-ジオール、ジメチルトリアジン-3-オール、6-アミノトリアジン-2,4-ジオール、1,2,4-ベンゾトリアジン、1,2,4-ベンゾトリアジン-3-オール、2,4-ジアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン、1,2,4,5-テトラジン、テトラジニウム塩、キノリン、キノリニウム塩、2-メチルキノリン、4-メチルキノリン、5-ニトロキノリン、8-ニトロキノリン、2-アミノキノリン、2-ヒドロキシキノリン、3-ヒドロキシキノリン、4-ヒドロキシキノリン、8-ヒドロキシキノリン、キノリン-2-カルボン酸(別名:キナルジン酸)、キノリン-4-カルボン酸(別名:シンコニン酸)、キノリン-2,3-ジカルボン酸(別名:アクリジン酸)、キノリン-2,4-ジカルボン酸、5,8-キノリンジオン、4-ヒドロキシキノリン-2-カルボン酸(別名:キヌレン酸)、6-メトキシキノリン-4-カルボン酸(別名:キニン酸)、8-エトキシキノリン-5-スルホン酸、2-フェニルキノリン-4-カルボン酸、4,8-ジヒドロキシキノリン-2-カルボン酸(別名:キサンツレン酸)、6-アニリノ-5,8-キノリンジオン、2,2’-ビキノリン、イソキノリン、イソキノリニウム塩、5-ニトロイソキノリン、8-ニトロイソキノリン、イソキノリン-1-カルボン酸、イソキノリン-3-カルボン酸、キノキサリン(別名:1,4-ナフチリジン)、キノキサリニウム塩、2-ヒドロキシキノキサリン、2-アミノキノキサリン、キノキサリン-2-カルボン酸、キノキサリン-6-カルボン酸、2,3-キノキサリンジオール、キナゾリン(別名:1,3-ナフチリジン)、キナゾリニウム塩、シンノリン(別名:1,2-ナフチリジン)、シンノリニウム塩、1,5-ナフチリジン、1,6-ナフチリジン、1,7-ナフチリジン、1,8-ナフチリジン、フタラジン(別名:2,3-ナフチリジン)、フタラジニウム塩、2,6-ナフチリジン、2,7-ナフチリジン、1,9,10-アンチリジン、プテリジン、プテリジニウム塩、1,3,8-トリアザナフタレン、ピリリウム塩、チオピリリウム塩、ベンゾピリリウム塩、クマリン、イソクマリン、クロモン、2H-1-ベンゾピラン(別名:2H-クロメン)、4H-1-ベンゾピラン(別名:4H-クロメン)、1H-2-ベンゾピラン(別名:1H-イソクロメン)、又は3H-2-ベンゾピラン(別名:3H-イソクロメン)等が挙げられる。
【0061】
さらに、これらのπ欠如芳香族複素環化合物の中でも、タングステンの溶解を抑制する効果の観点から、ピリジン、ピリジニウム塩、ピリジン-N-オキシド、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2-フェニルピリジン、2-ビニルピリジン、2-ヒドロキシピリジン、2-メトキシピリジン、2-ニトロピリジン、2-クロロピリジン、2-ブロモピリジン、ピリジン-2-カルボン酸、2-ピリジンカルボキシアミド、ピリジン-3-カルボン酸、3-ピリジンカルボキシアミド、ピリジン-4-カルボン酸、4-ピリジンカルボキシアミド、2-シアノピリジン、2,3-ジメチルピリジン、2,4-ジメチルピリジン、2,5-ジメチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン、3,4-ジメチルピリジン、3,5-ジメチルピリジン、4-エチル-2-メチルピリジン、3-エチル-4-メチルピリジン、ピリジン-2,3-ジカルボン酸、ピリジン-2,4-ジカルボン酸、ピリジン-2,5-ジカルボン酸、ピリジン-2,6-ジカルボン酸、ピリジン-3,4-ジカルボン酸、ピリジン-3,5-ジカルボン酸、5-ブチル-2-ピリジンカルボン酸、2,3,5-トリメチルピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、2,4,6-ピリジントリオール、2,4,5-ピリジントリカルボン酸、2,6-ジヒドロキシピリジン-4-カルボン酸、4-ヒドロキシピリジン-2,6-ジカルボン酸、2,2’-ビピリジル、4,4’-ビピリジル、1,7-フェナントロリン、1,8-フェナントロリン、1,9-フェナントロリン、1,10-フェナントロリン、2,7-フェナントロリン、2,8-フェナントロリン、2,9-フェナントロリン、3,7-フェナントロリン、3,8-フェナントロリン、4,7-フェナントロリン、2,9-ジメチル-1,10-フェナントロリン、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、2,2’-ジチオジピリジン、フェナントリジン、アクリジン、1H-ペリミジン、エチオナミド、ニコチン、コチニン、アナバシン、アナタビン、ピリミジン、ピリミジニウム塩、2-メチルピリミジン、シトシン、ウラシル、チミン、ピラジン、ピラジニウム塩、ピラジン-2-カルボン酸、2,5-ジメチルピラジン、ピラジン-2,3-ジカルボン酸、ピリダジン、ピリダジニウム塩、ピリダジン-4-カルボン酸、1,2,3-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン、トリアジニウム塩、1,2,4-ベンゾトリアジン、1,2,4,5-テトラジン、テトラジニウム塩、キノリン、キノリニウム塩、2-ヒドロキシキノリン、キノリン-2-カルボン酸、キノリン-4-カルボン酸、キノリン-2,3-ジカルボン酸、キノリン-2,4-ジカルボン酸、6-メトキシキノリン-4-カルボン酸、8-エトキシキノリン-5-スルホン酸、2-フェニルキノリン-4-カルボン酸、イソキノリン、イソキノリニウム塩、イソキノリン-1-カルボン酸、イソキノリン-3-カルボン酸、キノキサリン、キノキサリニウム塩、キノキサリン-2-カルボン酸、キノキサリン-6-カルボン酸、キナゾリン、キナゾリニウム塩、シンノリン、シンノリニウム塩、1,5-ナフチリジン、1,6-ナフチリジン、1,7-ナフチリジン、1,8-ナフチリジン、フタラジン、フタラジニウム塩、2,6-ナフチリジン、2,7-ナフチリジン、1,9,10-アンチリジン、プテリジン、プテリジニウム塩、1,3,8-トリアザナフタレン、ピリリウム塩、チオピリリウム塩、ベンゾピリリウム塩、クマリン、イソクマリン、クロモン、2H-1-ベンゾピラン、4H-1-ベンゾピラン、1H-2-ベンゾピラン、又は3H-2-ベンゾピランが好ましく、ピリジン、ピリジン-N-オキシド、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2-ニトロピリジン、ピリジン-2-カルボン酸、ピリジン-3-カルボン酸、ピリジン-4-カルボン酸、2-シアノピリジン、ピリジン-2,3-ジカルボン酸、ピリジン-2,4-ジカルボン酸、ピリジン-2,5-ジカルボン酸、ピリジン-2,6-ジカルボン酸、ピリジン-3,4-ジカルボン酸、ピリジン-3,5-ジカルボン酸、2,3,5-トリメチルピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、2,6-ジヒドロキシピリジン-4-カルボン酸、4-ヒドロキシピリジン-2,6-ジカルボン酸、2,2’-ビピリジル、4,4’-ビピリジル、1,7-フェナントロリン、1,8-フェナントロリン、1,9-フェナントロリン、1,10-フェナントロリン、2,7-フェナントロリン、2,8-フェナントロリン、2,9-フェナントロリン、3,7-フェナントロリン、3,8-フェナントロリン、4,7-フェナントロリン、ピリミジン、シトシン、ウラシル、チミン、ピラジン、ピラジン-2-カルボン酸、ピリダジン、1,2,3-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン、1,2,4-ベンゾトリアジン、1,2,4,5-テトラジン、キノリン、キノリン-2-カルボン酸、キノリン-4-カルボン酸、キノリン-2,3-ジカルボン酸、キノリン-2,4-ジカルボン酸、6-メトキシキノリン-4-カルボン酸、8-エトキシキノリン-5-スルホン酸、2-フェニルキノリン-4-カルボン酸、イソキノリン、イソキノリン-1-カルボン酸、イソキノリン-3-カルボン酸、キノキサリン、キノキサリン-2-カルボン酸、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、プテリジン、ピリリウム塩、チオピリリウム塩、ベンゾピリリウム塩、クマリン、イソクマリン、クロモン、2H-1-ベンゾピラン、4H-1-ベンゾピラン、1H-2-ベンゾピラン、又は3H-2-ベンゾピランがより好ましく、ピリジン、ピリジン-N-オキシド、ピリジン-2-カルボン酸、ピリジン-3-カルボン酸、ピリジン-4-カルボン酸、2,2’-ビピリジル、4,4’-ビピリジル、1,10-フェナントロリン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、1,2,3-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン、1,2,4-ベンゾトリアジン、1,2,4,5-テトラジン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、プテリジン、又はピリリウム塩がさらに好ましい。
【0062】
(カチオン化合物の濃度)
カチオン化合物の濃度は、タングステンに対して窒化チタンを選択的に除去できる濃度範囲であればよく、原料として用いる酸化剤の種類及び濃度、リン酸の濃度、カチオン化合物の種類、窒化チタンやタングステン等の存在量、存在部位、エッチング処理の処理条件、取扱上の安全性等を考慮して適宜調整することができる。窒化チタンの除去効率の観点から、エッチング液中のカチオン化合物の濃度は、0.00001質量%以上、20質量%以下が好ましく、0.00001質量%以上、10質量%以下がより好ましく、0.0001質量%以上、10質量%以下がさらに好ましく、0.0001質量%以上、5質量%以下が特に好ましく、経済性および取扱上の安全性の観点から、0.001質量%以上、5質量%以下が殊更特に好ましい。該カチオン化合物の濃度が上記範囲内であれば、窒化チタンを効率よく除去することができる。
以下、カチオン化合物として特定の化合物を用いた場合に特に好ましい濃度について説明する。
【0063】
カチオン化合物として第四級アンモニウムハライドを用いた場合、エッチング液中の第四級アンモニウムハライドの濃度は、タングステンに対して窒化チタンを選択的に除去できる濃度であればよく、原料として用いる酸化剤の種類及び濃度、リン酸の濃度、窒化チタンやタングステン等の存在量、存在部位、エッチング処理の処理条件、取扱上の安全性等を考慮して適宜調整することができる。窒化チタンの除去効率の観点から、エッチング液中の第四級アンモニウムハライドの濃度は、0.00001質量%以上、5質量%以下が好ましく、0.0001質量%以上、1質量%以下がより好ましく、0.001質量%以上、1質量%以下がさらに好ましく、経済性および取扱上の安全性の観点から、0.001質量%以上、0.5質量%以下が特に好ましい。
【0064】
カチオン化合物としてビグアニドを用いた場合、エッチング液中のビグアニドの濃度は、タングステンに対して窒化チタンを選択的に除去できる濃度であればよく、原料として用いる酸化剤の種類及び濃度、リン酸の濃度、窒化チタンやタングステン等の存在量、存在部位、エッチング処理の処理条件、取扱上の安全性等を考慮して適宜調整することができる。窒化チタンの除去効率の観点から、エッチング液中のビグアニドの濃度は、0.00001質量%以上、5質量%以下が好ましく、0.0001質量%以上、5質量%以下がより好ましく、0.001質量%以上、5質量%以下がさらに好ましく、経済性および取扱上の安全性の観点から、0.001質量%以上、2.5質量%以下が特に好ましい。
【0065】
カチオン化合物としてアニリン類を用いた場合、エッチング液中のアニリン類の濃度は、タングステンに対して窒化チタンを選択的に除去できる濃度であればよく、原料として用いる酸化剤の種類及び濃度、リン酸の濃度、窒化チタンやタングステン等の存在量、存在部位、エッチング処理の処理条件、取扱上の安全性等を考慮して適宜調整することができる。窒化チタンの除去効率の観点から、エッチング液中のアニリン類の濃度は、0.00001質量%以上、20質量%以下が好ましく、0.0001質量%以上、15質量%以下がより好ましく、0.001質量%以上、15質量%以下がさらに好ましく、経済性および取扱上の安全性の観点から、0.01質量%以上、10質量%以下が特に好ましい。
【0066】
カチオン化合物としてπ過剰芳香族複素環化合物を用いた場合、エッチング液中のπ過剰芳香族複素環化合物の濃度は、タングステンに対して窒化チタンを選択的に除去できる濃度であればよく、原料として用いる酸化剤の種類及び濃度、リン酸の濃度、窒化チタンやタングステン等の存在量、存在部位、エッチング処理の処理条件、取扱上の安全性等を考慮して適宜調整することができる。窒化チタンの除去効率の観点から、エッチング液中のπ過剰芳香族複素環化合物の濃度は、0.00001質量%以上、20質量%以下が好ましく、0.0001質量%以上、10質量%以下がより好ましく、0.001質量%以上、10質量%以下がさらに好ましく、経済性および取扱上の安全性の観点から、0.0
1質量%以上、5質量%以下が特に好ましい。
【0067】
エッチング液に含まれるカチオン化合物は、1種であっても、複数種であってもよい。複数種含まれる事で、タングステンの溶解をより抑制できる場合がある。
【0068】
エッチング液にカチオン化合物を含有させる方法は特に限定されず、原料として用いるカチオン化合物の種類などを考慮して決定すればよい。一例を挙げれば、カチオン化合物をリン酸中に溶解させることで添加すればよい。カチオン化合物をリン酸に溶解させる方法は特に制限されず、カチオン化合物の性状などを考慮して決めればよく、カチオン化合物をリン酸に添加し、溶解・混合させたり、カチオン化合物を含んだ溶液をリン酸に添加したりすればよい。また、必要に応じて撹拌、加熱等の処理を行ってもよい。また、カチオン化合物は、その一部が溶解すればよく、懸濁液の状態や分層している状態でもよい。
【0069】
[水]
エッチング液に含まれる水は特に制限されないが、蒸留処理、イオン交換処理、フィルター処理、又は各種吸着処理などの処理によって、金属イオンや有機不純物、パーティクル粒子などが除去された水が好ましく、特に純水、又は超純水が好ましい。このような水は、半導体製造等に広く利用されている公知の方法で得ることができる。
【0070】
エッチング液に含まれる水は、水単体で導入される水だけでなく、原料としてのリン酸又は酸化剤等に由来する水(原料としてのリン酸又は酸化剤等に含まれる水)も含まれる。例えば、酸化剤として過酸化水素を用いた場合を例にとると、原料として30%過酸化水素水を用いてエッチング液を調製した場合、エッチング液に含まれる水には、30%過酸化水素水中の水も含まれる。また、リン酸の原料として85%オルトリン酸水溶液を用いた場合を例にとると、エッチング液に含まれる水には、85%オルトリン酸水溶液中の水も含まれる。
【0071】
本実施形態に係るエッチング液において、リン酸の濃度だけでなく、リン酸と水の含有量の割合(比)を調整することで、タングステンの溶解をより抑制することができる。これは、タングステンの反応に水分子が関わっていると推測されるため、水の量を制御することで、反応の制御が容易になるためであると本発明者は推測している。よって、本実施形態に係るエッチング液を用いることによってタングステンの溶解をより抑えられて安定化できるため、半導体製造における歩留まりを改善できる。
リン酸と水の含有量の割合(比)は、タングステンに対して窒化チタンを選択的に除去できる割合であればよく、原料として用いる酸化剤の種類及び濃度、窒化チタンやタングステン等の存在量、存在部位、エッチング処理の処理条件、又は取扱上の安全性等を考慮して適宜調整することができる。窒化チタンの除去効率の観点から、水の含有量に対するリン酸の含有量の割合(比)(リン酸/水)は、質量基準で、2.50以上、100.00以下が好ましく、3.15以上、60.00以下がより好ましく、4.50以上、30.00以下がさらに好ましく、経済性および取扱上の安全性の観点から、4.50以上、21.00以下が特に好ましい。
また、タングステンの反応に水分子が関わっていると、本発明者は推測している。そこで、リン酸中の水分を除去する操作をして製造されたリン酸を用いることで、エッチング液に含まれる水を減らすことが可能であり、タングステンの溶解をより抑制することができる場合がある。
【0072】
エッチング液中の水の含有量は特段制限されないが、エッチング液の粘度や、取扱上の安全性等の観点からは、1.0質量%以上であることが好ましく、2.0質量%以上であることがより好ましく、4.5質量%以上であることがさらに好ましく、6.0質量%以上であることが特に好ましく、また、タングステンに対する窒化チタンの効率的な除去の
観点からは、28.0質量%以下であることが好ましく、23.6質量%以下であることがより好ましく、21.0質量%以下であることがさらに好ましく、19.8質量%以下であることが特に好ましい。
本発明者らは、タングステンの反応に水分子が関わっており、エッチング液中の水の含有量が上記範囲の上限以下であればタングステンの溶解をより抑制することが可能となると推測している。そこで、リン酸中の水分を除去する操作をして製造されたリン酸を用いることで、エッチング液に含まれる水の量を所望の範囲に調整しやすくなり、タングステンに対する窒化チタンの効率的な除去を達成し易くなる。
【0073】
[その他の成分]
エッチング液は、所望により本発明の目的を損なわない範囲で、上述した成分以外にも、従来から半導体用処理液に用いられている成分(以下、「その他の成分」とも称する。)を含んでいてもよい。例えば、その他の成分として、金属防食剤、有機溶媒、触媒、錯化剤、キレート剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、安定化剤、可溶化剤、活性化剤または析出防止剤などを用いることができる。これらのその他の成分は単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
[可溶化剤]
エッチング液は、カチオン化合物およびその他成分の溶解度を増加させるために、可溶化剤をさらに含んでいてもよい。エッチング液に含まれる可溶化剤は、エッチング液中でカチオン化合物およびその他成分の少なくともいずれかの溶解度を増加できる化合物であれば、どのようなものを用いてもよい。このような可溶化剤としては、例えば、カチオン化合物としてアニリン類、又は芳香族複素環化合物を用いた場合の可溶化剤を例示すると、スルホン酸等が挙げられる。このようなスルホン酸としては、例えば、メタンスルホン酸、メタンジスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、o-ベンゼンジスルホン酸、m-ベンゼンジスルホン酸、p-ベンゼンジスルホン酸、1,3,5-ベンゼントリスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、1,6-ナフタレンジスルホン酸、o-トルエンスルホン酸、m-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、o-フェノールスルホン酸、m-フェノールスルホン酸、p-フェノールスルホン酸、o-ニトロベンゼンスルホン酸、m-ニトロベンゼンスルホン酸、p-ニトロベンゼンスルホン酸、o-アミノベンゼンスルホン酸、m-アミノベンゼンスルホン酸、p-アミノベンゼンスルホン酸、o-スルホ安息香酸、m-スルホ安息香酸、p-スルホ安息香酸、トリフルオロメタンスルホン酸、スルホ酢酸、5-スルホサリチル酸、又はアミド硫酸等が挙げられる。
【0075】
さらに、これらのスルホン酸の中でも、アニリン類、又は芳香族複素環化合物の溶解度を増加する効果の観点から、メタンスルホン酸、p-ベンゼンジスルホン酸、1,3,5-ベンゼントリスルホン酸、o-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、p-フェノールスルホン酸、m-ニトロベンゼンスルホン酸、p-アミノベンゼンスルホン酸、又はo-スルホ安息香酸が好ましく、メタンスルホン酸、o-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、又はp-フェノールスルホン酸がより好ましく、メタンスルホン酸、又はp-トルエンスルホン酸がさらに好ましい。
【0076】
(可溶化剤の濃度)
可溶化剤の濃度は、カチオン化合物およびその他成分がエッチング液中に溶解する濃度範囲であればよく原料として用いる酸化剤の種類及び濃度、リン酸の濃度、カチオン化合物の種類、可溶化剤の種類、窒化チタンやタングステン等の存在量、存在部位、エッチング処理の処理条件、取扱上の安全性等を考慮して適宜調整することができる。窒化チタンの除去効率の観点から、エッチング液中の可溶化剤の濃度は、0.01質量%以上、25
質量%以下が好ましく、0.5質量%以上、20質量%以下がより好ましく、1.0質量%以上、20質量%以下がさらに好ましく、経済性および取扱上の安全性の観点から、2.5質量%以上、10質量%以下が特に好ましい。該可溶化剤の濃度が上記範囲内であれば、窒化チタンを効率よく除去することができる。
エッチング液に含まれる可溶化剤は、1種であっても、複数種であってもよい。複数種含まれる事で、カチオン化合物およびその他成分の溶解度をより増加できる場合がある。
【0077】
エッチング液に可溶化剤を含有させる方法は特に限定されず、原料として用いる可溶化剤の種類などを考慮して決定すればよい。一例を挙げれば、可溶化剤をリン酸中やカチオン化合物中に溶解させることで添加すればよい。可溶化剤をリン酸やカチオン化合物に溶解させる方法は特に制限されず、可溶化剤およびカチオン化合物の性状などを考慮して決めればよく、可溶化剤をリン酸やカチオン化合物に添加し、溶解・混合させたり、可溶化剤を含んだ溶液をリン酸やカチオン化合物に添加したりすればよい。また、必要に応じて撹拌、加熱等の処理を行ってもよい。また、可溶化剤は、その一部が溶解すればよく、懸濁液の状態や分層している状態でもよい。
【0078】
[有機溶媒]
エッチング液は、カチオン化合物およびその他成分の少なくともいずれかの溶解度を増加させるために、有機溶媒をさらに含んでいてもよい。エッチング液に含まれる有機溶媒は、エッチング液中でカチオン化合物およびその他成分の少なくともいずれかの溶解度を増加できる溶媒であれば、どのようなものを用いてもよいが、エッチング液に水が含まれ得るため、水溶性有機溶媒を用いることが好ましい。このような水溶性有機溶媒としては、例えば、アルコール、ケトン、ニトリル、エーテル、エステル、カルボン酸、含硫黄化合物、又は含窒素化合物等の水溶性有機溶媒等が挙げられる。
【0079】
アルコールの水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、エチレングリコール、又はグリセリン等が挙げられる。
ケトンの水溶性有機溶媒としては、例えば、アセトン等が挙げられる。
ニトリルの水溶性有機溶媒としては、例えば、アセトニトリル、又はプロパンニトリル等が挙げられる。
エーテルの水溶性有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、又はトリエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
エステルの水溶性有機溶媒としては、例えば、酢酸メチル、又は酢酸エチル等が挙げられる。
カルボン酸の水溶性有機溶媒としては、例えば、ギ酸、又は酢酸等が挙げられる。
含硫黄化合物の水溶性有機溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン、3-メチルスルホラン、又は2,4-ジメチルスルホラン等が挙げられる。
含窒素化合物の水溶性有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトアミド、又はニトロメタン等が挙げられる。
これらの有機溶媒でも、酸化剤や酸への耐性が大きいことから、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン、3-メチルスルホラン、2,4-ジメチルスルホラン、又はN-メチル-2-ピロリドンが好ましく、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン、又はN-メチル-2-ピロリドンがより好ましく、スルホランがさらに好ましい。
【0080】
(有機溶媒の濃度)
有機溶媒の濃度は、カチオン化合物およびその他成分がエッチング液中に溶解する濃度範囲であればよく、原料として用いる酸化剤の種類及び濃度、リン酸の濃度、カチオン化合物の種類、有機溶媒の種類、窒化チタンやタングステン等の存在量、存在部位、エッチング処理の処理条件、取扱上の安全性等を考慮して適宜調整することができる。窒化チタンの除去効率の観点から、エッチング液中の有機溶媒の濃度は、0.1質量%以上、50質量%以下が好ましく、2.5質量%以上、45質量%以下がより好ましく、5.0質量%以上、45質量%以下がさらに好ましく、経済性および取扱上の安全性の観点から、7.5質量%以上、40質量%以下が特に好ましい。該有機溶媒の濃度が上記範囲内であれば、窒化チタンを効率よく除去することができる。
エッチング液に含まれる有機溶媒は、1種であっても、複数種であってもよい。複数種含まれる事で、カチオン化合物およびその他成分の溶解度をより増加できる場合がある。
【0081】
エッチング液に有機溶媒を含有させる方法は特に限定されず、原料として用いる有機溶媒の種類などを考慮して決定すればよい。一例を挙げれば、有機溶媒剤をリン酸中やカチオン化合物中に含有させることで添加すればよい。有機溶媒をリン酸やカチオン化合物に含有させる方法は特に制限されず、有機溶媒およびカチオン化合物の性状などを考慮して決めればよく、有機溶媒をリン酸やカチオン化合物に添加し、溶解・混合させたり、有機溶媒を含んだ溶液をリン酸やカチオン化合物に添加したりすればよい。また、必要に応じて撹拌、加熱等の処理を行ってもよい。また、有機溶媒は、その一部が溶媒として機能していればよく、懸濁液の状態や分層している状態でもよい。
【0082】
[安定化剤]
エッチング液は、酸化剤の分解を抑制するために、安定化剤を含んでいてもよい。例えば、酸化剤として過酸化水素を用いた場合の安定化剤を例示すると、尿酸、バルビツール酸、馬尿酸、シアヌル酸、もしくはアセトアニリド等のアミド系化合物、炭酸アルカリ金属塩、又は炭酸水素アルカリ金属塩等が挙げられる。
【0083】
上記のリン酸に由来して、また、エッチング液の製造上の都合などにより、エッチング液には、リン酸類縁物質等が含まれていてもよい。このようなリン酸類縁物質としては、例えば、リン酸エステル、ホスフィン、亜リン酸、ホスホン酸、次亜リン酸、又はホスフィン酸等が挙げられる。
リン酸エステルとしては、例えば、リン酸二水素フェニル、リン酸二水素ベンジル、リン酸二水素エチル、もしくはリン酸二水素メチル等のリン酸モノエステル;リン酸ジフェニル、リン酸ジベンジル、リン酸ジエチル、もしくはリン酸ジメチル等のリン酸ジエステル;又はリン酸トリフェニル、リン酸トリベンジル、リン酸トリエチル、もしくはリン酸トリメチル等のリン酸トリエステル等が挙げられる。
【0084】
上述したリン酸、酸化剤、カチオン化合物、またはその他の成分等に由来して、また、エッチング液の製造上の都合などにより、エッチング液には、上述したアルカリ金属塩に含まれるアルカリ金属イオン以外のアルカリ金属イオン、又はアルカリ土類金属イオン等が含まれていてもよい。しかし、これらのアルカリ金属イオン、又はアルカリ土類金属イオン等は、半導体ウエハ上に残留した場合、半導体素子の歩留まり低下等を及ぼす。
【0085】
さらに、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、モリブデン、又はタングステン等の金属イオン等がエッチング液に含まれることで、酸化剤等の分解を引き起こす場合がある。そのため、エッチング液中における金属(金属イオンを含む)の濃度としては、具体的には、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、銀、カドミウム、バリウム、錫、亜鉛、モリブデン、タングステン及び鉛から選択されるいずれの金属も質量基準で1ppb以下であることが好ましく、0.5ppb以下であることがより好ましく、0.2ppb以下であることがさらに好ましく、0.1ppb以下であることが特に好ましい。また、特に、エッチング液における鉄、銅、マンガン、クロム、及び亜鉛から選択されるいずれか一つの金属の濃度は質量基準で、0.01ppt以上1ppb以下であることが好ましく、0.01ppt以上0.5ppb以下であることがより好ましく、0.01ppt以上0.2ppb以下であることがさらに好ましく、0.01ppt以上0.1ppb以下であることが特に好ましい。さらに上記の説明にて、エッチング液に含まれてもよい金属としてイオン性メタルを取り上げたが、これに限らず、非イオン性メタル(粒子性メタル)が含まれていてもよく、その濃度は上記の範囲である事が好ましい。
【0086】
上述した酸化剤またはその他の成分等に由来して、また、エッチング液の製造上の都合などにより、エッチング液には、水素または酸素等の気体が含まれていてもよい。
【0087】
上述したリン酸、または酸化剤等に由来して、また、エッチング液の製造上の都合などにより、エッチング液には、活性酸素種または過リン酸等の過酸が含まれていてもよい。このような活性酸素種としては、例えば、ペルヒドロキシアニオン(O)もしくはペルオキシドアニオン(・O 2-)等の求核性化学種、ヒドロキソニウムカチオン(OH)等の求電子性化学種、又はペルヒドロキシラジカル(・OH)、ヒドロキシラジカル(・OH)、もしくはスーパーオキシドアニオンラジカル(・O )等のラジカルや一重項酸素等が挙げられる。
【0088】
エッチング液は、フッ化水素酸等のフッ素化合物を含まないことが好ましい。フッ素化合物が含まれない場合(フッ素化合物の含有量が検出限界以下である)、Si化合物および窒化チタンを含む材料のエッチングにおいて、Si化合物に対しても選択的に窒化チタンをエッチングすることができる。
【0089】
上述したエッチング液を製造する方法は特段制限されず、上述した各成分を所望の量で配合することにより調製することができる。
【0090】
<基板の処理方法の第1の態様>
本発明の別の実施形態に係る基板の処理方法の第1の態様(以下、単に「基板の処理方法の第1の態様」とも称する。)は、タングステンおよび窒化チタンを含む基板の処理方法であって、上述したエッチング液を用いて、前記基板からタングステンに対して窒化チタンを選択的に除去するエッチング処理を行うエッチング工程を含む、基板の処理方法である。
基板の処理方法の第1の態様は、タングステンに対して窒化チタンを選択的に除去することができるという効果が得られる範囲で、上記のエッチング工程以外の工程を含むことができる。
第1の態様では、カチオン化合物による処理と窒化チタンのエッチングを同時に行えるため、後述する第2の態様と比較して効率的に処理を行うことができる。
【0091】
[エッチング工程]
基板の処理方法の第1の態様は、上述したエッチング液を用いて、タングステンに対して窒化チタンを選択的に除去するエッチング処理を行うエッチング工程を含む。このエッチング工程では、タングステンに対して窒化チタンが選択的に除去されていればよく、窒化チタンが全て除去されている場合のみならず、その一部が除去されている場合も含まれる。
エッチング液は、上述した様に、フッ化水素酸等のフッ素化合物を含まないことが好ましく、フッ素化合物が含まれない場合、Si化合物および窒化チタンを含む材料のエッチングにおいて、Si化合物に対しても選択的に窒化チタンをエッチングすることができる
【0092】
エッチング処理の温度(エッチング処理時のエッチング液の温度)は、タングステンに対して窒化チタンを選択的に除去できる温度であればよく、エッチング液の原料として用いる酸化剤の種類及び濃度、リン酸の濃度、カチオン化合物の種類及び濃度、基板中の窒化チタンやタングステン等の存在量、存在部位、温度以外のエッチング処理の処理条件、又は取扱上の安全性等を考慮して適宜調整することができる。窒化チタンの除去効率の観点から、エッチング処理の温度は、10℃以上、150℃以下が好ましく、15℃以上、80℃以下がより好ましく、30℃以上、80℃以下がさらに好ましく、取扱上の安全性の観点から40℃以上、78℃以下が特に好ましい。
【0093】
エッチング処理の時間は、タングステンに対して窒化チタンを選択的に除去できる時間であればよく、原料として用いる酸化剤の種類及び濃度、リン酸の濃度、カチオン化合物の種類及び濃度、基板中の窒化チタンやタングステン等の存在量、存在部位、時間以外のエッチング処理の処理条件、又は取扱上の安全性等を考慮して適宜調整することができる。窒化チタンの除去効率の観点から、エッチング処理の時間は、0.1分以上、100時間以下が好ましく、0.1分以上、50時間以下がより好ましく、0.1分以上、15時間以下がさらに好ましく、経済性の観点から0.1分以上、90分以下が最も好ましい。該時間が上記範囲内であれば、窒化チタンを有する樹脂を、効率よく除去することができる。
【0094】
(エッチング速度)
窒化チタンを除去する速度(以下、窒化チタンのエッチング速度)とは、エッチング工程において窒化チタンを除去する速度を指す。
窒化チタンのエッチング速度は、窒化チタンの除去効率の観点から、速いほうが好ましい。窒化チタンのエッチング速度は、窒化チタンの成膜方法、存在量、又は存在部位などにより変わるが、具体的には、10Å/min以上が好ましく、30Å/min以上がより好ましく、40Å/min以上がさらに好ましい。
一方、タングステンのエッチング速度に関しては、窒化チタンのエッチング速度がタングステンのエッチング速度より大きいことが求められ、タングステンを腐食しないことが最も好ましい。
基板中の窒化チタンやタングステンの存在量、又は存在部位などにより変わるが、エッチング速度比(タングステンのエッチング速度に対する窒化チタンのエッチング速度の割合)は1.0より大きいことが必要であり、1.2以上であることが好ましく、1.5より大きいことがより好ましく、3.0以上がさらに好ましい。
【0095】
エッチング処理時の雰囲気は、特に限定されず、大気中でも、窒素、又はアルゴン等の不活性気体中でもよい。
また、エッチング処理の圧力は、特に限定されず、常圧下、減圧下または加圧下のいずれで処理を行ってもよいが、処理を行う際の安全性の観点から、常圧下で処理することが好ましい。
【0096】
エッチング処理方法は、特に限定されず、エッチング液に対象物(基板)を浸漬することで行ってもよいし、枚葉式洗浄機又はスプレー等でエッチング液を対象物に吹き付けてもよい。また、高温で処理する場合等に、水や酸化剤等の揮発を防ぐために、処理時に冷却器等を取り付けたり、還流下で処理を行ったりしてもよい。
【0097】
<基板の処理方法の第2の態様>
本発明の別の実施形態に係る基板の処理方法の第2の態様(以下、単に「基板の処理方法の第2の態様」とも称する。)は、タングステンおよび窒化チタンを含む基板の処理方
法であって、カチオン化合物を含む表面処理剤で処理をした後に、リン酸、酸化剤、及び水を含むエッチング液で処理するエッチング工程を含む、基板の処理方法である。この処理方法によっても、タングステンに対して窒化チタンを選択的に除去することができる。
第2の態様で用いるリン酸、酸化剤、水、及びカチオン化合物等の各材料は、第1の態様で説明したものと同様の材料を用いることができる。
なお、基板の処理方法の第2の態様は、タングステンに対して窒化チタンを選択的に除去することができるという効果が得られる範囲で、上記のエッチング工程以外の工程を含むことができる。
【0098】
表面処理剤は、カチオン化合物を含んでいれば特段制限されず、カチオン化合物以外の成分を含んでいてもよい。カチオン化合物以外の成分としては、例えば、上述した水、酸、有機溶媒、可溶化剤、及びその他の成分等が挙げられる。
表面処理剤中のカチオン化合物の濃度は特段制限されないが、タングステンへの吸着効率およびカチオン化合物の析出防止の観点から、0.00001質量%以上、50質量%以下が好ましく、0.00001質量%以上、20質量%以下がより好ましく、0.0001質量%以上、20質量%以下がさらに好ましく、経済性および取扱上の安全性の観点から、0.0001質量%以上、10質量%以下が特に好ましい。
【0099】
第2の態様で用いるエッチング液は、リン酸、酸化剤、及び水を含んでいれば特段制限されず、これらの必須成分以外の成分を含んでいてもよい。これらの必須成分以外の成分としては、例えば、上述したその他の成分等が挙げられる。
第2の態様で用いるエッチング液中のリン酸の濃度は特段制限されないが、窒化チタンの除去効率の観点から、72.5質量%以上、99質量%以下が好ましく、80質量%以上、96質量%以下がより好ましく、80質量%以上、94質量%以下がさらに好ましい。
第2の態様で用いるエッチング液中の酸化剤の濃度は特段制限されないが、窒化チタンの除去効率の観点から、0.001質量%以上、50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上、30質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上、15質量%以下がさらに好ましく、経済性および取扱上の安全性の観点から、1質量%以上、10質量%以下が特に好ましい。
第2の態様で用いるエッチング液中の水の濃度は特段制限されないが、水は、上述したエッチング液におけるリン酸と水の割合(比)の条件を満たす範囲で含まれることが好ましい。
【0100】
<半導体素子の製造方法>
本発明の別の実施形態に係る半導体素子の製造方法の第1の態様は、タングステンおよび窒化チタンを含む基板を用いた、半導体素子の製造方法であって、上述したエッチング液を用いて、前記基板からタングステンに対して窒化チタンを選択的に除去するエッチング処理を行うエッチング工程を含む、半導体素子の製造方法である。
上記の半導体素子の製造方法の第1の態様におけるエッチング工程の条件は、上述した基板の処理方法の第1の態様におけるエッチング工程の条件を同様に適用することができる。
上記の半導体素子の製造方法の第1の態様は、上記のエッチング工程以外の工程を含んでいてもよく、例えば、ウエハ作製工程、酸化膜形成工程、トランジスタ形成工程、配線形成工程およびCMP工程から選択される1以上の工程など、半導体素子の製造方法に用いられる公知の工程が挙げられる。
【0101】
本発明の別の実施形態に係る半導体素子の製造方法の第2の態様は、タングステンおよび窒化チタンを含む基板を用いた、半導体素子の製造方法であって、カチオン化合物を含む表面処理剤で処理をした後に、リン酸、酸化剤、及び水を含むエッチング液で処理する
エッチング工程を含む、半導体素子の製造方法である。
上記の半導体素子の製造方法の第2の態様におけるエッチング工程の条件は、上述した基板の処理方法の第2の態様におけるエッチング工程の条件を同様に適用することができる。
上記の半導体素子の製造方法の第2の態様は、上記のエッチング工程以外の工程を含んでいてもよく、例えば、ウエハ作製工程、酸化膜形成工程、トランジスタ形成工程、配線形成工程およびCMP工程から選択される1以上の工程など、半導体素子の製造方法に用いられる公知の工程が挙げられる。
【0102】
<処理液の再利用>
上述したエッチング液を用いたエッチング工程を含む半導体素子の製造方法により半導体素子を製造した場合、該エッチング工程におけるエッチング処理後に得られる使用済み液は、該エッチング処理とは別のエッチング処理で再利用することができる。ここで、使用済み液とは、例えば半導体素子の製造において少なくとも1回、窒化チタンの除去等の処理に用いたエッチング液のことである。また、使用済み液の再利用において、使用済み液を循環して再利用を行ってもよいし、使用済み液に酸化剤やカチオン化合物等の成分を新たに添加して再利用を行ってもよいし、使用済み液中のリン酸を濃縮して水分を減らして再利用を行ってもよい。
【0103】
<処理対象物>
上述したエッチング液の処理対象物は、タングステンおよび窒化チタンを含有する材料であり、例えば、タングステンおよび窒化チタンを含有する基板等が挙げられる。該処理対象物の態様は特段制限されないが、窒化チタンの除去効率の観点から、窒化チタンが表面に存在するものであることが好ましい。また、本明細書において、「窒化チタン」および「TiN」は、純粋な窒化チタンだけでなく、様々な化学量論および酸素含有量を含む窒化チタン「TiO」(xは、例えば0.00~2.00であり、yは、例えば0.50~2.00である。)として存在しているものも含む。さらに、本明細書において、「タングステン」および「W」は、純粋なタングステンだけでなく、様々な酸素含有量を含むタングステン「WO」(zは、例えば0.00~4.50である。)、又はタングステンを含む合金に含まれるタングステンであってもよい。
処理対象物が基板である場合、通常、窒化チタンおよびタングステンは膜の形状で構成される。窒化チタンおよびタングステンを成膜する方法は特段制限されず、半導体素子の製造で広く公知の方法、例えば、CVD、ALD、PVD、スパッタ、又はめっき等を利用する方法であってよい。
【0104】
(Si化合物)
上記の処理対象物である基板等の材料はSi化合物を含んでもよい。上述したエッチング液は、窒化チタンを、タングステンだけでなく、Si化合物に対しても選択的に基板から除去することができるため、low-k材料、絶縁材料、誘電材料等のSi化合物を含む材料に対しても有利に作用する。Si化合物が膜として構成されている場合、Si化合物は、いかなる方法によって成膜されていてもよく、半導体素子の製造で広く公知の方法、例えば、熱酸化、CVD、ALD、PVD、スパッタ、またはめっき等を利用できる。Si化合物としては、Si、SiO、Si(OC(TEOS)、ケイ素含有有機ポリマー、有機ケイ酸塩ガラス、SiOC、SiCN、SiON、SiN、又はSi等が挙げられる。
また、上述したように、上述したエッチング液は、窒化チタンを、Si化合物に対しても選択的に基板から除去することができるため、処理対象物である基板等の材料としては、タングステンをSi化合物に変更した材料、つまり、Si化合物および窒化チタンを含む材料を採用することもできる。
【0105】
(High-k材料)
上記の処理対象物である基板等の材料はHigh-k材料を含んでもよい。上述したエッチング液は、窒化チタンを、タングステンだけでなく、HfO等のHfO(lは、例えば0.00~2.50である。)、AlO(mは、例えば0.00~2.00である。)、又はZrO(nは、例えば0.00~2.50である。)等のHigh-k材料に対しても選択的に基板から除去することができる。High-k材料が膜として構成されている場合、High-k材料は、いかなる方法によって成膜されていてもよく、半導体素子の製造で広く公知の方法、例えば、熱酸化、CVD、ALD、PVD、スパッタ、またはめっき等の方法を利用できる。
また、上述したように、上述したエッチング液は、窒化チタンを、High-k材料に対しても選択的に基板から除去することができるため、処理対象物である基板等の材料としては、タングステンをHigh-k材料に変更した材料、つまり、High-k材料および窒化チタンを含む材料を採用することもできる。
【実施例0106】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0107】
(成膜方法)
シリコンウエハ上にバッチ式熱酸化炉を用いて酸化膜を5000Åの厚さで形成し、その上にスパッタ法を用いて窒化チタン(TiN)を1000Å(±10%)の厚さで成膜した。
また、別のシリコンウエハを準備し、上記と同様の方法で熱酸化膜を形成し、その上にCVD法を用いてタングステン(W)を2000Åの厚さで成膜した。
また、別のシリコンウエハを準備し、上記と同様の方法で熱酸化膜を形成し、その上にLPCVD法を用いて窒化ケイ素(SiN)を1000Åの厚さで成膜した。
また、別のシリコンウエハを準備し、該シリコンウエハ上にバッチ式熱酸化炉を用いて酸化膜を形成することにより5000ÅのSiOを成膜した。
成膜が行われた上記の各シリコンウエハを、10×20mmにカットしたものを試験片として評価に用いた。また、上記の各膜の厚さは、後述する膜厚評価方法により評価した。
【0108】
(膜厚評価方法)
四探針抵抗測定器(ロレスタ‐GP、三菱ケミカルアナリテック社製)によりシート抵抗を測定して膜厚に換算し、エッチング処理前の膜厚とした。エッチング処理後も同様に四探針抵抗測定器によりシート抵抗を測定して膜厚に換算し、エッチング処理後の膜厚とした。エッチング処理後の膜厚とエッチング処理前の膜厚の差を、エッチング処理前後の膜厚変化量とした。
【0109】
(エッチング速度の算出方法)
実施例及び比較例で調製したエッチング液60mLを、蓋付きフッ素樹脂製容器(AsOne製、PFA容器94.0mL)に加えた。次いで、上記の10×20mmの各試験片を、エッチング液中に表1に示す所定の温度で、5分間浸漬して、窒化チタン、タングステン、SiN、およびSiOのエッチング処理を行った。エッチング処理前後の膜厚変化量を、浸漬した時間で除した値をエッチング速度として算出した。この結果を表1に示す。また、エッチング処理前後の膜厚変化量が5Å未満である場合は、表1で「0Å/min」と表記した。
【0110】
(原料のリン酸濃度の評価)
原料のリン酸濃度は、以下の方法で、リン酸中の水の濃度を評価し、100質量%から
減算することで求めた。
リン酸中の水の濃度は、水分測定装置(三菱化学アナリテック製、CA-200)を用いて、以下の条件で評価した。
・測定方法:カールフィッシャー滴定容量法
・滴定剤:アクアミクロンSS-Z 3mg(三菱ケミカル製)
・脱水溶剤:アクアミクロンGEX(三菱ケミカル製)
・試料量:約50mg
【0111】
(エッチング液の調製、基板の処理方法)
<実施例1>
蓋付きフッ素樹脂製容器(AsOne製、PFA容器94.0mL)に、リン酸(リン酸濃度85質量%、富士フイルム和光社製)を加え、リン酸濃度が82質量%になるように水を加えて、原料のリン酸を得た。続いて、表1に記載された組成になるように、過酸化水素水(過酸化水素濃度30質量%、富士フイルム和光社製)を加え、エッチング液を得た。調製したエッチング液を50℃まで昇温させた後に、上記、試験片を投入し、5分間浸漬させた後、試験片を取り出し、エッチング処理を行った。このエッチング処理の前後で、上記の膜厚評価を行い、エッチング速度を算出した。この算出結果を表1に示す。また、タングステンのエッチング速度に対する窒化チタンのエッチング速度の比を表1に示す。
【0112】
<実施例2>
蓋付きフッ素樹脂製容器(AsOne製、PFA容器94.0mL)に、リン酸(リン酸濃度85質量%、富士フイルム和光社製)を加えた。その後、表1に記載された組成になるように、過酸化水素水(過酸化水素濃度30質量%、富士フイルム和光社製)を加え、エッチング液を得た。調製したエッチング液を50℃まで昇温させた後に、上記、試験片を投入し、5分間浸漬させた後、試験片を取り出し、エッチング処理を行った。このエッチング処理の前後で、上記の膜厚評価を行い、エッチング速度を算出した。この算出結果を表1に示す。また、タングステンのエッチング速度に対する窒化チタンのエッチング速度の比を表1に示す。
【0113】
<実施例3、実施例8>
三ツ口フラスコの内に回転子(AsOne社製、全長30mm×径8mm)を入れ、一つの開口部に温度計保護管(コスモスビード社製、底封じ型)と温度計を投入し、もう一つの開口部に窒素ガスボンベに接続されたPFA製チューブ(フロン工業株式会社製、F-8011-02)を接続し、残りの一つの開口部に三角フラスコに接続されたPFA製チューブ(フロン工業株式会社製、F-8011-02)を接続した。上記の三ツ口フラスコに、リン酸(リン酸濃度85質量%、富士フイルム和光社製)を加え、120℃まで昇温して30分間維持した。その後、25℃まで冷却した後、リン酸濃度が90質量%になるように水を加えて、原料のリン酸を得た。なお、原料のリン酸濃度は、上記の(原料のリン酸濃度の評価)によって評価した。続いて、表1に記載された組成になるように、過酸化水素水(過酸化水素濃度30質量%、富士フイルム和光社製)を加え、エッチング液を得た。調製したエッチング液を50℃まで昇温させた後に、上記、試験片を投入し、5分間浸漬させた後、試験片を取り出し、エッチング処理を行った。このエッチング処理の前後で、上記の膜厚評価を行い、エッチング速度を算出した。この算出結果を表1に示す。また、タングステンのエッチング速度に対する窒化チタンのエッチング速度の比を表1に示す。
【0114】
<実施例4~7、実施例9~12>
三ツ口フラスコの内に回転子(AsOne社製、全長30mm×径8mm)を入れ、一つの開口部に温度計保護管(コスモスビード社製、底封じ型)と温度計を投入し、もう一
つの開口部に窒素ガスボンベに接続されたPFA製チューブ(フロン工業株式会社製、F-8011-02)を接続し、残りの一つの開口部に三角フラスコに接続されたPFA製チューブ(フロン工業株式会社製、F-8011-02)を接続した。上記の三ツ口フラスコに、リン酸(リン酸濃度85質量%、富士フイルム和光社製)を加え、180℃まで昇温して30分間維持した。その後、25℃まで冷却した後、リン酸濃度が97質量%になるように水を加えて、原料のリン酸を得た。なお、原料のリン酸濃度は、上記の(原料のリン酸濃度の評価)によって評価した。続いて、表1に記載された組成になるように、過酸化水素水(過酸化水素濃度30質量%、富士フイルム和光社製)を加え、エッチング液を得た。調製したエッチング液を表1に記載された温度まで昇温させた後に、上記、試験片を投入し、5分間浸漬させた後、試験片を取り出し、エッチング処理を行った。このエッチング処理の前後で、上記の膜厚評価を行い、エッチング速度を算出した。この算出結果を表1に示す。また、タングステンのエッチング速度に対する窒化チタンのエッチング速度の比を表1に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
<比較例1~2>
比較例1~2は、表2に記載された濃度になるように、リン酸(リン酸濃度85質量%、富士フイルム和光社製)に水を加えて、原料のリン酸を得たこと以外は、実施例1と同様にしてエッチング液を得た。次いで、実施例1と同様にしてエッチング処理を行い、エッチング速度を算出した。この算出結果を表2に示す。また、タングステンのエッチング速度に対する窒化チタンのエッチング速度の比を表2に示す。
【0117】
<比較例3~4>
比較例3~4は、表2に記載された組成を使用したこと以外は、実施例2と同様にしてエッチング液を得た。次いで、実施例2と同様にしてエッチング処理を行い、エッチング速度を算出した。この算出結果を表2に示す。また、タングステンのエッチング速度に対する窒化チタンのエッチング速度の比を表2に示す。
【0118】
【表2】
【0119】
<実施例13>
三ツ口フラスコの内に回転子(AsOne社製、全長30mm×径8mm)を入れ、一つの開口部に温度計保護管(コスモスビード社製、底封じ型)と温度計を投入し、もう一つの開口部に窒素ガスボンベに接続されたPFA製チューブ(フロン工業株式会社製、F-8011-02)を接続し、残りの一つの開口部に三角フラスコに接続されたPFA製チューブ(フロン工業株式会社製、F-8011-02)を接続した。上記の三ツ口フラスコに、リン酸(リン酸濃度85質量%、富士フイルム和光社製)を加え、120℃まで昇温して30分間維持した。その後、25℃まで冷却した後、リン酸濃度が90質量%になるように水を加えて、原料のリン酸を得た。なお、原料のリン酸濃度は、上記の(原料のリン酸濃度の評価)によって評価した。続いて、表3に記載された組成になるように、過酸化水素水(過酸化水素濃度30質量%、富士フイルム和光社製)およびピロールを加え、エッチング液を得た。調製したエッチング液を50℃まで昇温させた後に、上記、試験片を投入し、5分間浸漬させた後、試験片を取り出し、エッチング処理を行った。このエッチング処理の前後で、上記の膜厚評価を行い、エッチング速度を算出した。この算出結果を表3に示す。また、タングステンのエッチング速度に対する窒化チタンのエッチング速度の比を表3に示す。
【0120】
<実施例14~19>
三ツ口フラスコの内に回転子(AsOne社製、全長30mm×径8mm)を入れ、一つの開口部に温度計保護管(コスモスビード社製、底封じ型)と温度計を投入し、もう一つの開口部に窒素ガスボンベに接続されたPFA製チューブ(フロン工業株式会社製、F-8011-02)を接続し、残りの一つの開口部に三角フラスコに接続されたPFA製チューブ(フロン工業株式会社製、F-8011-02)を接続した。上記の三ツ口フラスコに、リン酸(リン酸濃度85質量%、富士フイルム和光社製)を加え、180℃まで昇温して30分間維持した。その後、25℃まで冷却した後、リン酸濃度が97質量%になるように水を加えて、原料のリン酸を得た。なお、原料のリン酸濃度は、上記の(原料のリン酸濃度の評価)によって評価した。続いて、表3に記載された組成になるように、過酸化水素水(過酸化水素濃度30質量%、富士フイルム和光社製)および表3に記載のカチオン化合物を加え、エッチング液を得た。調製したエッチング液を表3に記載された温度まで昇温させた後に、上記、試験片を投入し、5分間浸漬させた後、試験片を取り出し、エッチング処理を行った。このエッチング処理の前後で、上記の膜厚評価を行い、エッチング速度を算出した。この算出結果を表3に示す。また、タングステンのエッチング速度に対する窒化チタンのエッチング速度の比を表3に示す。
【0121】
表3におけるカチオン化合物は以下のものを用いた。
A:ピロール:富士フイルム和光純薬社製
B:アニリン:富士フイルム和光純薬社製
C:1-(o-トリル)ビグアニド:富士フイルム和光純薬社製
D:テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド:東京化成工業株式会社製
【0122】
【表3】
【0123】
表1から、本発明の実施形態に係るエッチング液は、エッチング速度比TiN/Wが1より大きい、つまり、タングステンに対して窒化チタンを選択的に除去することが分かった。一方で、表2から、リン酸濃度が、72.5質量%以上99質量以下の範囲に入らないエッチング液は、エッチング速度比TiN/Wが1以下である、つまり、窒化チタンに対してタングステンを選択的に除去することが分かった。
また、本発明の実施形態に係るエッチング液は、Si化合物に対しても窒化チタンを選択的に除去することが分かった。
また、表1と表3の比較から、エッチング液にカチオン化合物を含有させることにより、エッチング速度比TiN/Wをさらに向上させることができることが分かった。
【0124】
以上より、本発明のエッチング液を用いることで、タングステンに対して窒化チタンを選択的に除去することができるが分かった。