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特開2024-109122呈味増強用組成物、その製造方法、及び、食品の呈味を増強する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109122
(43)【公開日】2024-08-13
(54)【発明の名称】呈味増強用組成物、その製造方法、及び、食品の呈味を増強する方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/14 20160101AFI20240805BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20240805BHJP
   A23L 23/00 20160101ALI20240805BHJP
【FI】
A23L27/14
A23L27/00 Z
A23L23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024087295
(22)【出願日】2024-05-29
(62)【分割の表示】P 2024512207の分割
【原出願日】2024-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2023013575
(32)【優先日】2023-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023013576
(32)【優先日】2023-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023013623
(32)【優先日】2023-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023074823
(32)【優先日】2023-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】713011603
【氏名又は名称】ハウス食品株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000111487
【氏名又は名称】ハウス食品グループ本社株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130443
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 真治
(72)【発明者】
【氏名】小林 瑠乃
(72)【発明者】
【氏名】坂根 久美
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 絹子
(72)【発明者】
【氏名】白水 崇
(72)【発明者】
【氏名】石川 千賀子
(72)【発明者】
【氏名】池田 真規
(72)【発明者】
【氏名】松原 啓子
【テーマコード(参考)】
4B036
4B047
【Fターム(参考)】
4B036LC01
4B036LF05
4B036LG02
4B036LK01
4B047LB02
4B047LE06
4B047LF08
4B047LF10
4B047LG11
4B047LG43
4B047LP05
(57)【要約】
【課題】本発明は、食品に配合することにより、前記食品の呈味を増強することができる呈味増強用組成物及びその製造方法、並びに食品の呈味を増強する方法を提供する。
【解決手段】本発明の、第1の実施形態は、加熱処理したクミン、パプリカ、アサフォエティダ及びマスタードシードから選択される1以上の香辛料を含有する呈味増強用組成物に関する。本発明の、第2の実施形態は、クミン、パプリカ、アサフォエティダ及びマスタードシードから選択される1以上の香辛料を所定の条件で加熱することを含む、前記呈味増強用組成物の製造方法に関する。本発明の、第3の実施形態は、前記呈味増強用組成物を、食品に配合することを含む、食品の呈味を増強する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱処理した、クミン、パプリカ、アサフォエティダ及びマスタードシードからなる群から選択される1以上を含有する、呈味増強用組成物。
【請求項2】
前記加熱処理したクミンを含有する、請求項1に記載の呈味増強用組成物。
【請求項3】
前記加熱処理したクミンが、クミンを、油脂を添加することなく加熱価が15以上となる条件で加熱することにより得られたものである、請求項2に記載の呈味増強用組成物。
【請求項4】
前記加熱価が60以上500以下である、請求項3に記載の呈味増強用組成物。
【請求項5】
前記加熱処理したクミンが、クミンを油脂とともに加熱価が1以上となる条件で加熱することにより得られたものである、請求項2に記載の呈味増強用組成物。
【請求項6】
前記加熱価が20以上4000以下である、請求項5に記載の呈味増強用組成物。
【請求項7】
前記加熱処理したクミンが、環状(Phe-Tyr)、環状(Phe-Ala)、環状(Tyr-Ser)、環状(Leu/Ile-Ser)、環状(Ala-Tyr)、環状(Gly-Tyr)、環状(Ala-Pro)、環状(Gly-Val)、環状(hyPro-Pro)及び環状(Glu-Glu)からなる群から選択される1以上を含有する、請求項2~6のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物。
【請求項8】
前記加熱処理したクミンが、前記加熱処理したクミンに47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩を添加し、下記方法による液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、L-リシン-13一塩酸塩に由来するピーク面積に対する比として、
(1)環状(Phe-Phe)に由来するピーク面積が0.024以上であり、
(2)環状(Phe-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.040以上であり、
(3)環状(Leu/Ile-Val)に由来するピーク面積が0.015以上であり、
(4)環状(Phe-Pro)に由来するピーク面積が0.020以上であり、
(5)環状(Phe-Tyr)に由来するピーク面積が0.0020以上であり、
(6)環状(Pro-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.040以上であり、
(7)環状(Val-Val)に由来するピーク面積が0.004以上であり、
(8)環状(Phe-Ala)に由来するピーク面積が0.002以上であり、
(9)環状(Tyr-Ser)に由来するピーク面積が0.002以上であり、
(10)環状(Pro-Val)に由来するピーク面積が0.013以上であり、
(11)環状(Pro-Tyr)に由来するピーク面積が0.009以上であり、
(12)環状(Pro-Pro)に由来するピーク面積が0.050以上であり、
(13)環状(Leu/Ile-Ser)に由来するピーク面積が0.010以上であり、
(14)環状(Arg-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.10以上であり、
(15)環状(Ala-Tyr)に由来するピーク面積が0.007以上であり、
(16)環状(Gly-Tyr)に由来するピーク面積が0.002以上であり、
(17)環状(Ala-Pro)に由来するピーク面積が0.020以上であり、
(18)環状(Gly-Val)に由来するピーク面積が0.001以上であり、
(19)環状(hyPro-Pro)に由来するピーク面積が0.010以上であり、
(20)環状(Thr-Pro)に由来するピーク面積が0.040以上であり、
(21)環状(Val-Arg)に由来するピーク面積が0.060以上であり、
(22)環状(Pro-Asp)に由来するピーク面積が0.040以上であり、
(23)環状(Arg-Pro)に由来するピーク面積が0.035以上であり、
(24)環状(Glu-Tyr)に由来するピーク面積が0.050以上であり、
(25)環状(Pro-His)に由来するピーク面積が0.020以上であり、
(26)環状(Glu-Asp)に由来するピーク面積が0.080以上であり、
(27)環状(Gly-Arg)に由来するピーク面積が0.50以上であり、
(28)環状(Gly-His)に由来するピーク面積が0.005以上であり、
(29)環状(Leu/Ile-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.070以上であり、
(30)環状(Glu-Glu)に由来するピーク面積が0.010以上であり、
(31) 環状(Leu/Ile-Asp)に由来するピーク面積が0.010以上であり、
(32)環状(Phe-Asp)に由来するピーク面積が0.012以上であり、
(33)スルフロール(4-メチル-5-チアゾールエタノール)に由来するピーク面積が0.30以上であり、
(34)酢酸スルフロールに由来するピーク面積が0.025以上である、
のうち1以上を満たす、請求項2~7のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物。
(LC-MS/MSの測定方法)
前記加熱処理したクミン200mgと水5mLとを収容した10mL容試験管を、80℃の恒温水浴中で30分間加温して、水抽出物を調製する。前記試験管中の前記水抽出物にアセトニトリル5mL及び前記加熱処理したクミンに対して47μg/gとなる量のL-リシン-13一塩酸塩を添加し、撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収して、検体試料を作成する。前記検体試料をLC-MS/MSにより分析してクロマトグラムを得る。
【請求項9】
前記加熱処理したクミンが、前記加熱処理したクミンに99μg/gのリビトールを添加し、下記方法による液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、リビトールに由来するピーク面積に対する比して、
(35)cis-アコニット酸に由来するピーク面積が0.180以上であり、
(36)trans-アコニット酸に由来するピーク面積が0.250以上であり、
(37)酒石酸に由来するピーク面積が0.550以上であり、
(38)リンゴ酸に由来するピーク面積が22.0以上であり、
(39)クエン酸に由来するピーク面積が35.0以上である、
のうち1以上を満たす、請求項2~8のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物。
(LC-MS/MSの測定方法)
前記加熱処理したクミン200mgと水5mLとを収容した10mL容試験管を、80℃の恒温水浴中で30分間加温して、水抽出物を調製する。前記試験管中の前記水抽出物にアセトニトリル5mL及び前記加熱処理したクミンに対して99μg/gとなる量のリビトールを添加し、撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収して、検体試料を作成する。前記検体試料をLC-MS/MSにより分析してクロマトグラムを得る。
【請求項10】
前記加熱処理したクミンが、前記加熱処理したクミンに625μg/gの4-メチルチアゾールを添加し、下記方法によるガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、4-メチルチアゾールに由来するピーク面積に対する比として、
(40)カルベオールに由来するピーク面積が0.05以上であり
(41)ネロリドールに由来するピーク面積が0.18以上であり、
(42)α-テルピネン-7-オールに由来するピーク面積が100以上である、
のうち1以上を満たす、請求項2~9のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物。
(GC-MSの測定方法)
前記加熱処理したクミン15mgと、前記加熱処理したクミンに対して625μg/gとなる量の4-メチルチアゾールと、アセトン5mLと、メタノール5mLとを収容した10mL容試験管を撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収し、前記液体成分0.1mLあたりアセトン1mLを加えて、GC-MS検体試料を作成する。前記GC-MS検体試料をGC-MSにより分析してクロマトグラムを得る。
【請求項11】
前記加熱処理したパプリカを含有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物。
【請求項12】
前記加熱処理したパプリカが、パプリカを、油脂を添加することなく加熱価が50以上となる条件で加熱することにより得られたものである、請求項11に記載の呈味増強用組成物。
【請求項13】
前記加熱価が200以上600以下である、請求項12に記載の呈味増強用組成物。
【請求項14】
前記加熱処理したパプリカが、パプリカを油脂とともに加熱価が0.3以上となる条件で加熱することにより得られたものである、請求項11に記載の呈味増強用組成物。
【請求項15】
前記加熱価が2.5以上450以下である、請求項14に記載の呈味増強用組成物。
【請求項16】
前記加熱処理したパプリカが、環状(Gly-His)、環状(Gly-Ser)、環状(hyPro-Pro)、環状(Gly-Val)、環状(Tyr-Asp)及び環状(Ala-Asp)からなる群から選択される1以上を含有する、請求項11~15のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物。
【請求項17】
前記加熱処理したパプリカが、前記加熱処理したパプリカに47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩を添加し、下記方法による液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、L-リシン-13一塩酸塩に由来するピーク面積に対する比として、
(1)環状(Phe-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.45以上であり、
(2)環状(Pro-Asn)に由来するピーク面積が0.020以上であり、
(3)環状(Leu/Ile-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.30以上であり、
(4)環状(Thr-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.014以上であり、
(5)環状(Phe-Ser)に由来するピーク面積が0.025以上であり、
(6)環状(Gly-His)に由来するピーク面積が0.0020以上であり、
(7)環状(Gly-Ser)に由来するピーク面積が0.0010以上であり、
(8)環状(Gly-Arg)に由来するピーク面積が0.080以上であり、
(9)環状(Ala-His)に由来するピーク面積が0.0140以上であり、
(10)環状(Glu-His)に由来するピーク面積が0.040以上であり、
(11)環状(Glu-Arg)に由来するピーク面積が0.21以上であり、
(12)環状(Ala-Arg)に由来するピーク面積が0.24以上であり、
(13)環状(Glu-Glu)に由来するピーク面積が0.020以上であり、
(14)環状(Glu-Gly)に由来するピーク面積が0.39以上であり、
(15)環状(Glu-Asp)に由来するピーク面積が0.19以上であり、
(16)環状(Pro-His)に由来するピーク面積が0.12以上であり、
(17)環状(Glu-Tyr)に由来するピーク面積が0.40以上であり、
(18)環状(Leu/Ile-Asp)に由来するピーク面積が0.100以上であり、
(19)環状(Pro-Asp)に由来するピーク面積が0.10以上であり、
(20)環状(Val-Arg)に由来するピーク面積が0.15以上であり、
(21)環状(Thr-Pro)に由来するピーク面積が0.40以上であり、
(22)環状(hyPro-Pro)に由来するピーク面積が0.020以上であり、
(23)環状(Gly-Val)に由来するピーク面積が0.010以上であり、
(24)環状(Ala-Pro)に由来するピーク面積が0.10以上であり、
(25)環状(Ala-Tyr)に由来するピーク面積が0.025以上であり、
(26)環状(Arg-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.60以上であり、
(27)環状(Leu/Ile-Ser)に由来するピーク面積が0.050以上であり、
(28)環状(Ala-Val)に由来するピーク面積が0.040以上であり、
(29)環状(Pro-Pro)に由来するピーク面積が0.30以上であり、
(30)環状(Gly-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.025以上であり、
(31)環状(Gly-Phe)に由来するピーク面積が0.060以上であり、
(32)環状(Pro-Tyr)に由来するピーク面積が0.060以上であり、
(33)環状(Phe-Asp)に由来するピーク面積が0.040以上であり、
(34)環状(Pro-Val)に由来するピーク面積が0.070以上であり、
(35)環状(Ala-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.080以上であり、
(36)環状(Val-Tyr)に由来するピーク面積が0.020以上であり、
(37)環状(Tyr-Ser)に由来するピーク面積が0.20以上であり、
(38)環状(Phe-Ala)に由来するピーク面積が0.025以上であり、
(39)環状(Val-Val)に由来するピーク面積が0.050以上であり、
(40)環状(Pro-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.45以上であり、
(41)環状(Phe-Tyr)に由来するピーク面積が0.160以上であり、
(42)環状(Phe-Thr)に由来するピーク面積が0.020以上であり、
(43)環状(Phe-Pro)に由来するピーク面積が0.45以上であり、
(44)環状(Leu/Ile-Val)に由来するピーク面積が0.09以上であり、
(45)環状(Val-Phe)に由来するピーク面積が0.010以上であり、
(46)環状(Tyr-Asp)に由来するピーク面積が0.020以上であり、
(47)環状(Ala-Asp)に由来するピーク面積が0.005以上であり、
(48)環状(Val-Ser)に由来するピーク面積が0.070以上であり、
(49)スルフロール(4-メチル-5-チアゾールエタノール)に由来するピーク面積が0.090以上であり、
(50)酢酸スルフロールに由来するピーク面積が0.011以上である、
のうち1以上を満たす、請求項11~16のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物。
(LC-MS/MSの測定方法)
前記加熱処理したパプリカ200mgと水5mLとを収容した10mL容試験管を、80℃の恒温水浴中で30分間加温して、水抽出物を調製する。前記試験管中の前記水抽出物にアセトニトリル5mL及び前記加熱処理したパプリカに対して47μg/gとなる量のL-リシン-13一塩酸塩を添加し、撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収して、検体試料を作成する。前記検体試料をLC-MS/MSにより分析してクロマトグラムを得る。
【請求項18】
前記加熱処理したパプリカが、前記加熱処理したパプリカに99μg/gのリビトールを添加し、下記方法による液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、リビトールに由来するピーク面積に対する比として、
(51)酒石酸に由来するピーク面積が0.60以上であり、
(52)trans-アコニット酸に由来するピーク面積が0.35以上である、
のうち1以上を満たす、請求項11~17のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物。
(LC-MS/MSの測定方法)
前記加熱処理したパプリカ200mgと水5mLとを収容した10mL容試験管を、80℃の恒温水浴中で30分間加温して、水抽出物を調製する。前記試験管中の前記水抽出物にアセトニトリル5mL及び前記加熱処理したパプリカに対して99μg/gとなる量のリビトールを添加し、撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収して、検体試料を作成する。前記検体試料をLC-MS/MSにより分析してクロマトグラムを得る。
【請求項19】
前記加熱処理したアサフォエティダを含有する、請求項1~18のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物。
【請求項20】
前記加熱処理したアサフォエティダが、アサフォエティダを、油脂を添加することなく加熱価が15以上となる条件で加熱することにより得られたものである、請求項19に記載の呈味増強用組成物。
【請求項21】
前記加熱処理したアサフォエティダが、アサフォエティダを油脂とともに加熱価が5以上となる条件で加熱することにより得られたものである、請求項19に記載の呈味増強用組成物。
【請求項22】
前記加熱処理したアサフォエティダが、環状(Val-Ser)、環状(Pro-Pro)及び環状(Pro-Glu)からなる群から選択される1以上を含有する、請求項19~21のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物。
【請求項23】
前記加熱処理したアサフォエティダが、前記加熱処理したアサフォエティダに47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩を添加し、下記方法による液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、L-リシン-13一塩酸塩に由来するピーク面積に対する比として、
(1)環状(Gly-Thr)に由来するピーク面積が0.028以上であり、
(2)環状(Gly-His)に由来するピーク面積が0.003以上であり、
(3)環状(Ala-Asp)に由来するピーク面積が0.022以上であり、
(4)環状(Val-Ser)に由来するピーク面積が0.040以上であり、
(5)環状(Gly-Arg)に由来するピーク面積が0.020以上であり、
(6)環状(Ala-His)に由来するピーク面積が0.005以上であり、
(7)環状(Glu-Asp)に由来するピーク面積が0.008以上であり、
(8)環状(Phe-Phe)に由来するピーク面積が0.050以上であり、
(9)環状(Leu/Ile-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.025以上であり、
(10)環状(Ala-Arg)に由来するピーク面積が0.025以上であり、
(11)環状(Leu/Ile-Val)に由来するピーク面積が0.020以上であり、
(12)環状(Phe-Pro)に由来するピーク面積が0.015以上であり、
(13)環状(Phe-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.040以上であり、
(14)環状(Pro-Pro)に由来するピーク面積が0.010以上であり、
(15)環状(Glu-Phe)に由来するピーク面積が0.050以上であり、
(16)環状(Arg-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.045以上であり、
(17)環状(Pro-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.080以上であり、
(18)環状(Pro-Glu)に由来するピーク面積が0.005以上であり、
(19)環状(Glu-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.015以上であり、
(20)環状(Ala-Pro)に由来するピーク面積が0.028以上であり、
(21)環状(Pro-Val)に由来するピーク面積が0.020以上であり
(22)環状(Pro-His)に由来するピーク面積が0.040以上であり、
(23)スルフロール(4-メチル-5-チアゾールエタノール)に由来するピーク面積が0.25以上である、
のうち1以上を満たす、請求項19~22のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物。
(LC-MS/MSの測定方法)
前記加熱処理したアサフォエティダ200mg(アサフォエティダ樹脂含量を12質量%として換算した質量)と水5mLとを収容した10mL容試験管を、80℃の恒温水浴中で30分間加温して、水抽出物を調製する。前記試験管中の前記水抽出物にアセトニトリル5mL及び前記加熱処理したアサフォエティダ(アサフォエティダ樹脂含量を12質量%として換算した質量)に対して47μg/gとなる量のL-リシン-13一塩酸塩を添加し、撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収する。前記液体成分を、オクタデシル基を保持する固相抽出担体に接触させた後、アセトニトリルによる溶出液を回収し、前記溶出液から検体試料を作成する。前記検体試料をLC-MS/MSにより分析してクロマトグラムを得る。
【請求項24】
前記加熱処理したアサフォエティダが、前記加熱処理したアサフォエティダに99μg/gのリビトールを添加し、下記方法による液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、リビトールに由来するピーク面積に対する比として、
(24)酒石酸に由来するピーク面積が0.12以上であり、
(25)リンゴ酸に由来するピーク面積が1.10以上であり、
(26)クエン酸に由来するピーク面積が1.00以上である、
のうち1以上を満たす、請求項19~23のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物。
(LC-MS/MSの測定方法)
前記加熱処理したアサフォエティダ200mg(アサフォエティダ樹脂含量を12質量%として換算した質量)と水5mLとを収容した10mL容試験管を、80℃の恒温水浴中で30分間加温して、水抽出物を調製する。前記試験管中の前記水抽出物にアセトニトリル5mL及び前記加熱処理したアサフォエティダ(アサフォエティダ樹脂含量を12質量%として換算した質量)に対して99μg/gとなる量のリビトールを添加し、撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収する。前記液体成分を、オクタデシル基を保持する固相抽出担体に接触させた後、アセトニトリルによる溶出液を回収し、前記溶出液から検体試料を作成する。前記検体試料をLC-MS/MSにより分析してクロマトグラムを得る。
【請求項25】
前記加熱処理したマスタードシードを含有する、請求項1~24のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物。
【請求項26】
前記加熱処理したマスタードシードが、前記加熱処理したマスタードシードに47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩を添加し、下記方法による液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、L-リシン-13一塩酸塩に由来するピーク面積に対する比として、
(1)環状(Glu-His)に由来するピーク面積が0.20以上であり、
(2)環状(Gly-Arg)に由来するピーク面積が0.29以上であり、
(3)環状(Glu-Gly)に由来するピーク面積が0.15以上であり、
(4)環状(Ala-His)に由来するピーク面積が0.12以上であり、
(5)環状(Ala-Arg)に由来するピーク面積が0.20以上であり、
(6)環状(Glu-Asp)に由来するピーク面積が0.13以上であり、
(7)環状(Leu/Ile-Asp)に由来するピーク面積が0.035以上であり、
(8)環状(Thr-Pro)に由来するピーク面積が0.50以上であり、
(9)環状(Pro-His)に由来するピーク面積が0.09以上であり、
(10)環状(Pro-Pro)に由来するピーク面積が0.50以上であり、
(11)環状(Glu-Tyr)に由来するピーク面積が0.070以上であり、
(12)環状(Arg-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.015以上であり、
(13)環状(Ala-Pro)に由来するピーク面積が0.70以上であり、
(14)環状(Pro-Val)に由来するピーク面積が0.65以上であり、
(15)環状(Phe-Ala)に由来するピーク面積が0.060以上であり、
(16)環状(Phe-Pro)に由来するピーク面積が0.070以上であり、
(17)環状(Phe-Tyr)に由来するピーク面積が0.18以上であり、
(18)環状(Tyr-His)に由来するピーク面積が0.02以上であり、
(19)環状(Leu/Ile-His)に由来するピーク面積が0.05以上であり、
(20)環状(Pro-Met)に由来するピーク面積が0.32以上であり、
(21)環状(Val-Glu)に由来するピーク面積が0.10以上である、
のうち1以上を満たす、請求項25に記載の呈味増強用組成物。
(LC-MS/MSの測定方法)
前記加熱処理したマスタードシード200mgと水5mLとを収容した10mL容試験管を、80℃の恒温水浴中で30分間加温して、水抽出物を調製する。前記試験管中の前記水抽出物にアセトニトリル5mL及び前記加熱処理したマスタードシードに対して47μg/gとなる量のL-リシン-13一塩酸塩を添加し、撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収して、LC-MS/MS検体試料を作成する。前記LC-MS/MS検体試料をLC-MS/MSにより分析してクロマトグラムを得る。
【請求項27】
前記加熱処理したマスタードシードが、前記加熱処理したマスタードシードに625μg/gの4-メチルチアゾールを添加し、下記方法によるガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、4-メチルチアゾールに由来するピーク面積に対する比として、
(22)アリルメチルジスルフィドに由来するピーク面積が0.006以上であり、
(23)2,5-ジメチルピラジンに由来するピーク面積が0.60以上であり、
(24)2-エチル-6-メチルピラジンに由来するピーク面積が0.15以上であり、
(25)2,3,5-トリメチルピラジンに由来するピーク面積が0.15以上であり、
(26)2,6-ジエチルピラジンに由来するピーク面積が0.01以上であり、
(27)2,5-ジエチルピラジンに由来するピーク面積が0.20以上であり、
(28)2,3-ジエチルピラジンに由来するピーク面積が0.03以上であり、
(29)アリルメチルトリスルフィドに由来するピーク面積が0.025以上であり、
(30)3-メチル-1,2,4-トリチアンに由来するピーク面積が0.70以上であり、
(31)2-ドデセナールに由来するピーク面積が0.10以上であり、
(32)スルフロールに由来するピーク面積が0.50以上である、
のうち1以上を満たす、請求項25又は26に記載の呈味増強用組成物。
(GC-MSの測定方法)
前記加熱処理したマスタードシード15mgと、前記加熱処理したマスタードシードに対して625μg/gとなる量の4-メチルチアゾールと、アセトン5mLと、メタノール5mLとを収容した10mL容試験管を撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収し、前記液体成分0.1mLあたりアセトン1mLを加えて、GC-MS検体試料を作成する。前記GC-MS検体試料をGC-MSにより分析してクロマトグラムを得る。
【請求項28】
請求項2~10のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物の製造方法であって、
クミンを、油脂を添加することなく加熱価が15以上となる条件で加熱して前記加熱処理したクミンを得ること、
を含む方法。
【請求項29】
前記加熱価が60以上500以下である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項2~10のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物の製造方法であって、
クミンを油脂とともに加熱価が1以上となる条件で加熱して前記加熱処理したクミンを得ること、
を含む方法。
【請求項31】
前記加熱価が20以上4000以下である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
請求項11~18のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物の製造方法であって、
パプリカを、油脂を添加することなく加熱価が50以上となる条件で加熱して前記加熱処理したパプリカを得ること、
を含む方法。
【請求項33】
前記加熱価が200以上600以下である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
請求項11~18のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物の製造方法であって、
パプリカを油脂とともに加熱価が0.3以上となる条件で加熱して前記加熱処理したパプリカを得ること、
を含む方法。
【請求項35】
前記加熱価が2.5以上450以下である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
請求項19~24のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物の製造方法であって、
アサフォエティダを、油脂を添加することなく加熱価が15以上となる条件で加熱して前記加熱処理したアサフォエティダを得ること、
を含む方法。
【請求項37】
請求項19~24のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物の製造方法であって、
アサフォエティダを油脂とともに加熱価が5以上となる条件で加熱して前記加熱処理したアサフォエティダを得ること、
を含む方法。
【請求項38】
請求項25~27のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物の製造方法であって、
マスタードシードを、加熱価が200以上となる条件で、開放系において加熱処理して前記加熱処理したマスタードシードを得ること、
を含む方法。
【請求項39】
請求項1~27のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物を、食品に配合することを含む、
食品の呈味を増強する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一以上の態様は、呈味増強用組成物、その製造方法、及び、食品の呈味を増強する方法に関する。
【0002】
本発明の別の一以上の態様は、加熱処理したマスタードシード、それを含む食品組成物、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
食塩(塩化ナトリウム)は食品に好ましい味を付与するとともに、生命の維持に不可欠な元素である塩素及びナトリウムの供給源として食品に用いられる。一方で、食塩の過剰摂取は高血圧症等の多くの疾患の原因であることが知られており、食塩の摂取量の抑制が望まれている。
【0004】
特許文献1は、パプリカ、柚子の果皮及び/又は陳皮、ジンジャー並びにオールスパイスを所定比率で含有し、更に赤唐辛子、クミン、コリアンダー及びセロリーシードから選択される少なくとも1種のスパイスを含有し得る、塩味増強用スパイスミックを開示する。特許文献1では、前記塩味増強用スパイスミックがスモークされたスパイスを含むことで塩味増強効果をより高めることができると記載されている。スモークされたスパイスの具体例として、スモークされたパプリカが記載されている。特許文献1によれば、前記塩味増強用スパイスミックスは、食塩と共に食品に添加することで、食品の塩味を増強する効果を奏する。
【0005】
特許文献2は、コショウ、ショウガ、クローブ及びシナモンの混合物を含有する塩味増強剤、及び、コショウ、ショウガ、クローブ、シナモン及びトウガラシの混合物を含有する塩味増強剤を開示する。
【0006】
特許文献3は、コリアンダー、クミン、陳皮、アニス、セロリ、ターメリック、フェヌグリーク、ガーリック、唐辛子、パプリカ、フェンネル、黒胡椒、ジンジャー及びアサフォエティダからなる群から選択される少なくとも1種の香辛料を、ゲージ圧0.05MPa以上の圧力下で、加熱価が15~170となる条件で加熱する工程を含むカラメル香増強香辛料の製造方法、並びに、ターメリック、唐辛子、フェヌグリーク、クミン、コリアンダー、陳皮、ガーリック、パプリカ、フェンネル、アニス、セロリ、黒胡椒、ジンジャー、フェヌグリークリーブス及び桂皮からなる群から選択される少なくとも1種の香辛料を、ゲージ圧0.05MPa未満の条件下で、加熱価が50~180となるように加熱する工程を含むアーモンド香増強香辛料の製造方法を開示する。特許文献3は更に、コリアンダーを、加熱価が800以上となる条件で加熱することにより、炭火香増強香辛料が得られることを開示する。
【0007】
マスタードシードは辛みを含む特有の風味を有する香辛料であり、カラシやドレッシングの原料として用いられる。また油中で焙煎したマスタードシードは、インド料理のスタータースパイスとして一般的に用いられる。
【0008】
特許文献4には、種実類及び/又はナッツ類と、カレーリーフ及び/又はその抽出物とを含む調味組成物が記載されている。特許文献4では、前記種実類及び/又はナッツ類の香ばしい風味を増強するために、前記調味組成物は、焙煎マスタードシードを更に含んでもよいことが記載されている。しかし特許文献4には、マスタードシードを焙煎する条件については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2018-102142号公報
【特許文献2】特開2012-239398号公報
【特許文献3】特開2020-103257号公報
【特許文献4】特開2020-202765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一以上の態様は、食品に配合することにより、前記食品の呈味を増強することができる呈味増強用組成物及びその製造方法を提供する。本発明の一以上の態様はまた、食品の呈味を増強する方法を提供する。
【0011】
本発明の別の一以上の態様は、甘み、香ばしさ等の風味が更に高められたマスタードシード、それを含む食品組成物、及び、甘み、香ばしさ等の風味が更に高められたマスタードシードの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、食品の呈味を増強することができる呈味増強用組成物及び呈味増強用組成物の製造方法、並びに、食品の呈味を増強する方法として以下の手段を見出した。
【0013】
本発明者らは、また、甘み、香ばしさ等の風味が更に高められたマスタードシード、それを含む食品組成物、甘み、香ばしさ等の風味が更に高められたマスタードシードの製造方法、呈味増強用組成物、及び、食品の呈味を増強する方法として以下の手段を見出した。
【0014】
[1]加熱処理した、クミン、パプリカ、アサフォエティダ及びマスタードシードからなる群から選択される1以上を含有する、呈味増強用組成物。当該呈味増強用組成物において、前記呈味は、塩味及びコク味から選択される1以上の呈味であることができる。
[2]前記加熱処理したクミンを含有する、[1]に記載の呈味増強用組成物。
[3]前記加熱処理したクミンが、クミンを、油脂を添加することなく加熱価が15以上となる条件で加熱することにより得られたものである、[2]に記載の呈味増強用組成物。
[4]前記加熱価が60以上500以下である、[3]に記載の呈味増強用組成物。
[5]前記加熱処理したクミンが、クミンを油脂とともに加熱価が1以上となる条件で加熱することにより得られたものである、[2]に記載の呈味増強用組成物。
[6]前記加熱価が20以上4000以下である、[5]に記載の呈味増強用組成物。
[7]前記加熱処理したクミンが、環状(Phe-Tyr)、環状(Phe-Ala)、環状(Tyr-Ser)、環状(Leu/Ile-Ser)、環状(Ala-Tyr)、環状(Gly-Tyr)、環状(Ala-Pro)、環状(Gly-Val)、環状(hyPro-Pro)及び環状(Glu-Glu)からなる群から選択される1以上を含有する、[2]~[6]のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物。
[8]前記加熱処理したクミンが、前記加熱処理したクミン(前記加熱処理したクミンが、油脂とともに加熱処理したクミンである場合は、油脂を除いたクミンとして換算した質量を指す)に47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩を添加し、下記方法による液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、L-リシン-13一塩酸塩に由来するピーク面積に対する比として、
(1)環状(Phe-Phe)に由来するピーク面積が0.024以上であり、
(2)環状(Phe-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.040以上であり、
(3)環状(Leu/Ile-Val)に由来するピーク面積が0.015以上であり、
(4)環状(Phe-Pro)に由来するピーク面積が0.020以上であり、
(5)環状(Phe-Tyr)に由来するピーク面積が0.0020以上であり、
(6)環状(Pro-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.040以上であり、
(7)環状(Val-Val)に由来するピーク面積が0.004以上であり、
(8)環状(Phe-Ala)に由来するピーク面積が0.002以上であり、
(9)環状(Tyr-Ser)に由来するピーク面積が0.002以上であり、
(10)環状(Pro-Val)に由来するピーク面積が0.013以上であり、
(11)環状(Pro-Tyr)に由来するピーク面積が0.009以上であり、
(12)環状(Pro-Pro)に由来するピーク面積が0.050以上であり、
(13)環状(Leu/Ile-Ser)に由来するピーク面積が0.010以上であり、
(14)環状(Arg-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.10以上であり、
(15)環状(Ala-Tyr)に由来するピーク面積が0.007以上であり、
(16)環状(Gly-Tyr)に由来するピーク面積が0.002以上であり、
(17)環状(Ala-Pro)に由来するピーク面積が0.020以上であり、
(18)環状(Gly-Val)に由来するピーク面積が0.001以上であり、
(19)環状(hyPro-Pro)に由来するピーク面積が0.010以上であり、
(20)環状(Thr-Pro)に由来するピーク面積が0.040以上であり、
(21)環状(Val-Arg)に由来するピーク面積が0.060以上であり、
(22)環状(Pro-Asp)に由来するピーク面積が0.040以上であり、
(23)環状(Arg-Pro)に由来するピーク面積が0.035以上であり、
(24)環状(Glu-Tyr)に由来するピーク面積が0.050以上であり、
(25)環状(Pro-His)に由来するピーク面積が0.020以上であり、
(26)環状(Glu-Asp)に由来するピーク面積が0.080以上であり、
(27)環状(Gly-Arg)に由来するピーク面積が0.50以上であり、
(28)環状(Gly-His)に由来するピーク面積が0.005以上であり、
(29)環状(Leu/Ile-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.070以上であり、
(30)環状(Glu-Glu)に由来するピーク面積が0.010以上であり、
(31) 環状(Leu/Ile-Asp)に由来するピーク面積が0.010以上であり、
(32)環状(Phe-Asp)に由来するピーク面積が0.012以上であり、
(33)スルフロール(4-メチル-5-チアゾールエタノール)に由来するピーク面積が0.30以上であり、
(34)酢酸スルフロールに由来するピーク面積が0.025以上である、
のうち1以上を満たす、[2]~[7]のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物。
(LC-MS/MSの測定方法)
前記加熱処理したクミン200mg(前記加熱処理したクミンが、油脂とともに加熱処理したクミンである場合は、油脂を除いたクミンとして換算した質量を指す)と水5mLとを収容した10mL容試験管を、80℃の恒温水浴中で30分間加温して、水抽出物を調製する。前記試験管中の前記水抽出物にアセトニトリル5mL及び前記加熱処理したクミン(前記加熱処理したクミンが、油脂とともに加熱処理したクミンである場合は、油脂を除いたクミンとして換算した質量を指す)に対して47μg/gとなる量のL-リシン-13一塩酸塩を添加し、撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収して、検体試料を作成する。前記検体試料をLC-MS/MSにより分析してクロマトグラムを得る。ここで、分析試料として用いる前記加熱処理したクミンは、粉砕物であることが好ましい。
[9]前記加熱処理したクミンが、前記加熱処理したクミン(前記加熱処理したクミンが、油脂とともに加熱処理したクミンである場合は、油脂を除いたクミンとして換算した質量を指す)に99μg/gのリビトールを添加し、下記方法による液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、リビトールに由来するピーク面積に対する比して、
(35)cis-アコニット酸に由来するピーク面積が0.180以上であり、
(36)trans-アコニット酸に由来するピーク面積が0.250以上であり、
(37)酒石酸に由来するピーク面積が0.550以上であり、
(38)リンゴ酸に由来するピーク面積が22.0以上であり、
(39)クエン酸に由来するピーク面積が35.0以上である、
のうち1以上を満たす、[2]~[8]のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物。
(LC-MS/MSの測定方法)
前記加熱処理したクミン200mg(前記加熱処理したクミンが、油脂とともに加熱処理したクミンである場合は、油脂を除いたクミンとして換算した質量を指す)と水5mLとを収容した10mL容試験管を、80℃の恒温水浴中で30分間加温して、水抽出物を調製する。前記試験管中の前記水抽出物にアセトニトリル5mL及び前記加熱処理したクミン(前記加熱処理したクミンが、油脂とともに加熱処理したクミンである場合は、油脂を除いたクミンとして換算した質量を指す)に対して99μg/gとなる量のリビトールを添加し、撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収して、検体試料を作成する。前記検体試料をLC-MS/MSにより分析してクロマトグラムを得る。ここで、分析試料として用いる前記加熱処理したクミンは、粉砕物であることが好ましい。
[10]前記加熱処理したクミンが、前記加熱処理したクミン(前記加熱処理したクミンが、油脂とともに加熱処理したクミンである場合は、油脂を除いたクミンとして換算した質量を指す)に625μg/gの4-メチルチアゾールを添加し、下記方法によるガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、4-メチルチアゾールに由来するピーク面積に対する比として、
(40)カルベオールに由来するピーク面積が0.05以上であり
(41)ネロリドールに由来するピーク面積が0.18以上であり、
(42)α-テルピネン-7-オールに由来するピーク面積が100以上である、
のうち1以上を満たす、[2]~[9]のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物。
(GC-MSの測定方法)
前記加熱処理したクミン15mg(前記加熱処理したクミンが、油脂とともに加熱処理したクミンである場合は、油脂を除いたクミンとして換算した質量を指す)と、前記加熱処理したクミン(前記加熱処理したクミンが、油脂とともに加熱処理したクミンである場合は、油脂を除いたクミンとして換算した質量を指す)に対して625μg/gとなる量の4-メチルチアゾールと、アセトン5mLと、メタノール5mLとを収容した10mL容試験管を撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収し、前記液体成分0.1mLあたりアセトン1mLを加えて、GC-MS検体試料を作成する。前記GC-MS検体試料をGC-MSにより分析してクロマトグラムを得る。ここで、分析試料として用いる前記加熱処理したクミンは、粉砕物であることが好ましい。
[11]前記加熱処理したパプリカを含有する、[1]~[10]のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物。
[12]前記加熱処理したパプリカが、パプリカを、油脂を添加することなく加熱価が50以上となる条件で加熱することにより得られたものである、[11]に記載の呈味増強用組成物。
[13]前記加熱価が200以上600以下である、[12]に記載の呈味増強用組成物。
[14]前記加熱処理したパプリカが、パプリカを油脂とともに加熱価が0.3以上となる条件で加熱することにより得られたものである、[11]に記載の呈味増強用組成物。
[15]前記加熱価が2.5以上450以下である、[14]に記載の呈味増強用組成物。
[16]前記加熱処理したパプリカが、環状(Gly-His)、環状(Gly-Ser)、環状(hyPro-Pro)、環状(Gly-Val)、環状(Tyr-Asp)及び環状(Ala-Asp)からなる群から選択される1以上を含有する、[11]~[15]のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物。
[17]前記加熱処理したパプリカが、前記加熱処理したパプリカ(前記加熱処理したパプリカが、油脂とともに加熱処理したパプリカである場合は、油脂を除いたパプリカとして換算した質量を指す)に47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩を添加し、下記方法による液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、L-リシン-13一塩酸塩に由来するピーク面積に対する比として、
(1)環状(Phe-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.45以上であり、
(2)環状(Pro-Asn)に由来するピーク面積が0.020以上であり、
(3)環状(Leu/Ile-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.30以上であり、
(4)環状(Thr-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.014以上であり、
(5)環状(Phe-Ser)に由来するピーク面積が0.025以上であり、
(6)環状(Gly-His)に由来するピーク面積が0.0020以上であり、
(7)環状(Gly-Ser)に由来するピーク面積が0.0010以上であり、
(8)環状(Gly-Arg)に由来するピーク面積が0.080以上であり、
(9)環状(Ala-His)に由来するピーク面積が0.0140以上であり、
(10)環状(Glu-His)に由来するピーク面積が0.040以上であり、
(11)環状(Glu-Arg)に由来するピーク面積が0.21以上であり、
(12)環状(Ala-Arg)に由来するピーク面積が0.24以上であり、
(13)環状(Glu-Glu)に由来するピーク面積が0.020以上であり、
(14)環状(Glu-Gly)に由来するピーク面積が0.39以上であり、
(15)環状(Glu-Asp)に由来するピーク面積が0.19以上であり、
(16)環状(Pro-His)に由来するピーク面積が0.12以上であり、
(17)環状(Glu-Tyr)に由来するピーク面積が0.40以上であり、
(18)環状(Leu/Ile-Asp)に由来するピーク面積が0.100以上であり、
(19)環状(Pro-Asp)に由来するピーク面積が0.10以上であり、
(20)環状(Val-Arg)に由来するピーク面積が0.15以上であり、
(21)環状(Thr-Pro)に由来するピーク面積が0.40以上であり、
(22)環状(hyPro-Pro)に由来するピーク面積が0.020以上であり、
(23)環状(Gly-Val)に由来するピーク面積が0.010以上であり、
(24)環状(Ala-Pro)に由来するピーク面積が0.10以上であり、
(25)環状(Ala-Tyr)に由来するピーク面積が0.025以上であり、
(26)環状(Arg-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.60以上であり、
(27)環状(Leu/Ile-Ser)に由来するピーク面積が0.050以上であり、
(28)環状(Ala-Val)に由来するピーク面積が0.040以上であり、
(29)環状(Pro-Pro)に由来するピーク面積が0.30以上であり、
(30)環状(Gly-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.025以上であり、
(31)環状(Gly-Phe)に由来するピーク面積が0.060以上であり、
(32)環状(Pro-Tyr)に由来するピーク面積が0.060以上であり、
(33)環状(Phe-Asp)に由来するピーク面積が0.040以上であり、
(34)環状(Pro-Val)に由来するピーク面積が0.070以上であり、
(35)環状(Ala-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.080以上であり、
(36)環状(Val-Tyr)に由来するピーク面積が0.020以上であり、
(37)環状(Tyr-Ser)に由来するピーク面積が0.20以上であり、
(38)環状(Phe-Ala)に由来するピーク面積が0.025以上であり、
(39)環状(Val-Val)に由来するピーク面積が0.050以上であり、
(40)環状(Pro-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.45以上であり、
(41)環状(Phe-Tyr)に由来するピーク面積が0.160以上であり、
(42)環状(Phe-Thr)に由来するピーク面積が0.020以上であり、
(43)環状(Phe-Pro)に由来するピーク面積が0.45以上であり、
(44)環状(Leu/Ile-Val)に由来するピーク面積が0.09以上であり、
(45)環状(Val-Phe)に由来するピーク面積が0.010以上であり、
(46)環状(Tyr-Asp)に由来するピーク面積が0.020以上であり、
(47)環状(Ala-Asp)に由来するピーク面積が0.005以上であり、
(48)環状(Val-Ser)に由来するピーク面積が0.070以上であり、
(49)スルフロール(4-メチル-5-チアゾールエタノール)に由来するピーク面積が0.090以上であり、
(50)酢酸スルフロールに由来するピーク面積が0.011以上である、
のうち1以上を満たす、[11]~[16]のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物。
(LC-MS/MSの測定方法)
前記加熱処理したパプリカ200mg(前記加熱処理したパプリカが、油脂とともに加熱処理したパプリカである場合は、油脂を除いたパプリカとして換算した質量を指す)と水5mLとを収容した10mL容試験管を、80℃の恒温水浴中で30分間加温して、水抽出物を調製する。前記試験管中の前記水抽出物にアセトニトリル5mL及び前記加熱処理したパプリカ(前記加熱処理したパプリカが、油脂とともに加熱処理したパプリカである場合は、油脂を除いたパプリカとして換算した質量を指す)に対して47μg/gとなる量のL-リシン-13一塩酸塩を添加し、撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収して、検体試料を作成する。前記検体試料をLC-MS/MSにより分析してクロマトグラムを得る。ここで、分析試料として用いる前記加熱処理したパプリカは、粉砕物であることが好ましい。
[18]前記加熱処理したパプリカが、前記加熱処理したパプリカ(前記加熱処理したパプリカが、油脂とともに加熱処理したパプリカである場合は、油脂を除いたパプリカとして換算した質量を指す)に99μg/gのリビトールを添加し、下記方法による液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、リビトールに由来するピーク面積に対する比として、
(51)酒石酸に由来するピーク面積が0.60以上であり、
(52)trans-アコニット酸に由来するピーク面積が0.35以上である、
のうち1以上を満たす、[11]~[17]のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物。
(LC-MS/MSの測定方法)
前記加熱処理したパプリカ200mg(前記加熱処理したパプリカが、油脂とともに加熱処理したパプリカである場合は、油脂を除いたパプリカとして換算した質量を指す)と水5mLとを収容した10mL容試験管を、80℃の恒温水浴中で30分間加温して、水抽出物を調製する。前記試験管中の前記水抽出物にアセトニトリル5mL及び前記加熱処理したパプリカ(前記加熱処理したパプリカが、油脂とともに加熱処理したパプリカである場合は、油脂を除いたパプリカとして換算した質量を指す)に対して99μg/gとなる量のリビトールを添加し、撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収して、検体試料を作成する。前記検体試料をLC-MS/MSにより分析してクロマトグラムを得る。ここで、分析試料として用いる前記加熱処理したパプリカは、粉砕物であることが好ましい。
[19]前記加熱処理したアサフォエティダを含有する、[1]~[18]のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物。
[20]前記加熱処理したアサフォエティダが、アサフォエティダを、油脂を添加することなく加熱価が15以上となる条件で加熱することにより得られたものである、[19]に記載の呈味増強用組成物。
[21]前記加熱処理したアサフォエティダが、アサフォエティダを油脂とともに加熱価が5以上となる条件で加熱することにより得られたものである、[19]に記載の呈味増強用組成物。
[22]前記加熱処理したアサフォエティダが、環状(Val-Ser)、環状(Pro-Pro)及び環状(Pro-Glu)からなる群から選択される1以上を含有する、[19]~[21]のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物。
[23]前記加熱処理したアサフォエティダが、前記加熱処理したアサフォエティダに47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩を添加し、下記方法による液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、L-リシン-13一塩酸塩に由来するピーク面積に対する比として、
(1)環状(Gly-Thr)に由来するピーク面積が0.028以上であり、
(2)環状(Gly-His)に由来するピーク面積が0.003以上であり、
(3)環状(Ala-Asp)に由来するピーク面積が0.022以上であり、
(4)環状(Val-Ser)に由来するピーク面積が0.040以上であり、
(5)環状(Gly-Arg)に由来するピーク面積が0.020以上であり、
(6)環状(Ala-His)に由来するピーク面積が0.005以上であり、
(7)環状(Glu-Asp)に由来するピーク面積が0.008以上であり、
(8)環状(Phe-Phe)に由来するピーク面積が0.050以上であり、
(9)環状(Leu/Ile-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.025以上であり、
(10)環状(Ala-Arg)に由来するピーク面積が0.025以上であり、
(11)環状(Leu/Ile-Val)に由来するピーク面積が0.020以上であり、
(12)環状(Phe-Pro)に由来するピーク面積が0.015以上であり、
(13)環状(Phe-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.040以上であり、
(14)環状(Pro-Pro)に由来するピーク面積が0.010以上であり、
(15)環状(Glu-Phe)に由来するピーク面積が0.050以上であり、
(16)環状(Arg-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.045以上であり、
(17)環状(Pro-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.080以上であり、
(18)環状(Pro-Glu)に由来するピーク面積が0.005以上であり、
(19)環状(Glu-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.015以上であり、
(20)環状(Ala-Pro)に由来するピーク面積が0.028以上であり、
(21)環状(Pro-Val)に由来するピーク面積が0.020以上であり
(22)環状(Pro-His)に由来するピーク面積が0.040以上であり、
(23)スルフロール(4-メチル-5-チアゾールエタノール)に由来するピーク面積が0.25以上である、
のうち1以上を満たす、[19]~[22]のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物。
(LC-MS/MSの測定方法)
前記加熱処理したアサフォエティダ200mg(アサフォエティダ樹脂含量を12質量%として換算した質量)と水5mLとを収容した10mL容試験管を、80℃の恒温水浴中で30分間加温して、水抽出物を調製する。前記試験管中の前記水抽出物にアセトニトリル5mL及び前記加熱処理したアサフォエティダ(アサフォエティダ樹脂含量を12質量%として換算した質量)に対して47μg/gとなる量のL-リシン-13一塩酸塩を添加し、撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収する。前記液体成分を、オクタデシル基を保持する固相抽出担体に接触させた後、アセトニトリルによる溶出液を回収し、前記溶出液から検体試料を作成する。前記検体試料をLC-MS/MSにより分析してクロマトグラムを得る。ここで、分析試料として用いる前記加熱処理したアサフォエティダは、粉砕物であることが好ましい。
[24]前記加熱処理したアサフォエティダが、前記加熱処理したアサフォエティダに99μg/gのリビトールを添加し、下記方法による液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、リビトールに由来するピーク面積に対する比として、
(24)酒石酸に由来するピーク面積が0.12以上であり、
(25)リンゴ酸に由来するピーク面積が1.10以上であり、
(26)クエン酸に由来するピーク面積が1.00以上である、
のうち1以上を満たす、[19]~[23]のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物。
(LC-MS/MSの測定方法)
前記加熱処理したアサフォエティダ200mg(アサフォエティダ樹脂含量を12質量%として換算した質量)と水5mLとを収容した10mL容試験管を、80℃の恒温水浴中で30分間加温して、水抽出物を調製する。前記試験管中の前記水抽出物にアセトニトリル5mL及び前記加熱処理したアサフォエティダ(アサフォエティダ樹脂含量を12質量%として換算した質量)に対して99μg/gとなる量のリビトールを添加し、撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収する。前記液体成分を、オクタデシル基を保持する固相抽出担体に接触させた後、アセトニトリルによる溶出液を回収し、前記溶出液から検体試料を作成する。前記検体試料をLC-MS/MSにより分析してクロマトグラムを得る。ここで、分析試料として用いる前記加熱処理したアサフォエティダは、粉砕物であることが好ましい。
[25]前記加熱処理したマスタードシードを含有する、[1]~[24]のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物。
[26]前記加熱処理したマスタードシードが、前記加熱処理したマスタードシード(前記加熱処理したマスタードシードが、油脂とともに加熱処理したマスタードシードである場合は、油脂を除いたマスタードシードとして換算した質量を指す)に47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩を添加し、下記方法による液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、L-リシン-13一塩酸塩に由来するピーク面積に対する比として、
(1)環状(Glu-His)に由来するピーク面積が0.20以上であり、
(2)環状(Gly-Arg)に由来するピーク面積が0.29以上であり、
(3)環状(Glu-Gly)に由来するピーク面積が0.15以上であり、
(4)環状(Ala-His)に由来するピーク面積が0.12以上であり、
(5)環状(Ala-Arg)に由来するピーク面積が0.20以上であり、
(6)環状(Glu-Asp)に由来するピーク面積が0.13以上であり、
(7)環状(Leu/Ile-Asp)に由来するピーク面積が0.035以上であり、
(8)環状(Thr-Pro)に由来するピーク面積が0.50以上であり、
(9)環状(Pro-His)に由来するピーク面積が0.09以上であり、
(10)環状(Pro-Pro)に由来するピーク面積が0.50以上であり、
(11)環状(Glu-Tyr)に由来するピーク面積が0.070以上であり、
(12)環状(Arg-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.015以上であり、
(13)環状(Ala-Pro)に由来するピーク面積が0.70以上であり、
(14)環状(Pro-Val)に由来するピーク面積が0.65以上であり、
(15)環状(Phe-Ala)に由来するピーク面積が0.060以上であり、
(16)環状(Phe-Pro)に由来するピーク面積が0.070以上であり、
(17)環状(Phe-Tyr)に由来するピーク面積が0.18以上であり、
(18)環状(Tyr-His)に由来するピーク面積が0.02以上であり、
(19)環状(Leu/Ile-His)に由来するピーク面積が0.05以上であり、
(20)環状(Pro-Met)に由来するピーク面積が0.32以上であり、
(21)環状(Val-Glu)に由来するピーク面積が0.10以上である、
のうち1以上を満たす、[25]に記載の呈味増強用組成物。
(LC-MS/MSの測定方法)
前記加熱処理したマスタードシード200mg(前記加熱処理したマスタードシードが、油脂とともに加熱処理したマスタードシードである場合は、油脂を除いたマスタードシードとして換算した質量を指す)と水5mLとを収容した10mL容試験管を、80℃の恒温水浴中で30分間加温して、水抽出物を調製する。前記試験管中の前記水抽出物にアセトニトリル5mL及び前記加熱処理したマスタードシード(前記加熱処理したマスタードシードが、油脂とともに加熱処理したマスタードシードである場合は、油脂を除いたマスタードシードとして換算した質量を指す)に対して47μg/gとなる量のL-リシン-13一塩酸塩を添加し、撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収して、LC-MS/MS検体試料を作成する。前記LC-MS/MS検体試料をLC-MS/MSにより分析してクロマトグラムを得る。ここで、分析試料として用いる前記加熱処理したマスタードシードは、粉砕物であることが好ましい。
[27]前記加熱処理したマスタードシードが、前記加熱処理したマスタードシード(前記加熱処理したマスタードシードが、油脂とともに加熱処理したマスタードシードである場合は、油脂を除いたマスタードシードとして換算した質量を指す)に625μg/gの4-メチルチアゾールを添加し、下記方法によるガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、4-メチルチアゾールに由来するピーク面積に対する比として、
(22)アリルメチルジスルフィドに由来するピーク面積が0.006以上であり、
(23)2,5-ジメチルピラジンに由来するピーク面積が0.60以上であり、
(24)2-エチル-6-メチルピラジンに由来するピーク面積が0.15以上であり、
(25)2,3,5-トリメチルピラジンに由来するピーク面積が0.15以上であり、
(26)2,6-ジエチルピラジンに由来するピーク面積が0.01以上であり、
(27)2,5-ジエチルピラジンに由来するピーク面積が0.20以上であり、
(28)2,3-ジエチルピラジンに由来するピーク面積が0.03以上であり、
(29)アリルメチルトリスルフィドに由来するピーク面積が0.025以上であり、
(30)3-メチル-1,2,4-トリチアンに由来するピーク面積が0.70以上であり、
(31)2-ドデセナールに由来するピーク面積が0.10以上であり、
(32)スルフロールに由来するピーク面積が0.50以上である、
のうち1以上を満たす、[25]又は[26]に記載の呈味増強用組成物。
(GC-MSの測定方法)
前記加熱処理したマスタードシード15mg(前記加熱処理したマスタードシードが、油脂とともに加熱処理したマスタードシードである場合は、油脂を除いたマスタードシードとして換算した質量を指す)と、前記加熱処理したマスタードシード(前記加熱処理したマスタードシードが、油脂とともに加熱処理したマスタードシードである場合は、油脂を除いたマスタードシードとして換算した質量を指す)に対して625μg/gとなる量の4-メチルチアゾールと、アセトン5mLと、メタノール5mLとを収容した10mL容試験管を撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収し、前記液体成分0.1mLあたりアセトン1mLを加えて、GC-MS検体試料を作成する。前記GC-MS検体試料をGC-MSにより分析してクロマトグラムを得る。ここで、分析試料として用いる前記加熱処理したマスタードシードは、粉砕物であることが好ましい。
[28][2]~[10]のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物の製造方法であって、
クミンを、油脂を添加することなく加熱価が15以上となる条件で加熱して前記加熱処理したクミンを得ること、
を含む方法。
[29]前記加熱価が60以上500以下である、[28]に記載の方法。
[30][2]~[10]のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物の製造方法であって、
クミンを油脂とともに加熱価が1以上となる条件で加熱して前記加熱処理したクミンを得ること、
を含む方法。
[31]前記加熱価が20以上4000以下である、[30]に記載の方法。
[32][11]~[18]のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物の製造方法であって、
パプリカを、油脂を添加することなく加熱価が50以上となる条件で加熱して前記加熱処理したパプリカを得ること、
を含む方法。
[33]前記加熱価が200以上600以下である、[32]に記載の方法。
[34][11]~[18]のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物の製造方法であって、
パプリカを油脂とともに加熱価が0.3以上となる条件で加熱して前記加熱処理したパプリカを得ること、
を含む方法。
[35]前記加熱価が2.5以上450以下である、[34]に記載の方法。
[36][19]~[24]のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物の製造方法であって、
アサフォエティダを、油脂を添加することなく加熱価が15以上となる条件で加熱して前記加熱処理したアサフォエティダを得ること、
を含む方法。
[37][19]~[24]のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物の製造方法であって、
アサフォエティダを油脂とともに加熱価が5以上となる条件で加熱して前記加熱処理したアサフォエティダを得ること、
を含む方法。
[38][25]~[27]のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物の製造方法であって、
マスタードシードを、加熱価が200以上となる条件で、開放系において加熱処理して前記加熱処理したマスタードシードを得ること、
を含む方法。
[39][1]~[27]のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物を、食品に配合することを含む、
食品の呈味を増強する方法。該方法において、前記呈味は、塩味及びコク味から選択される1以上の呈味であることができる。
[40]食品の呈味を増強するための、加熱処理した、クミン、パプリカ、アサフォエティダ及びマスタードシードからなる群から選択される1以上の香辛料の使用。該使用において、前記呈味は、例えば塩味及びコク味から選択される1以上の呈味であることができる。
[41]前記香辛料が前記加熱処理したクミンを含み、
前記加熱処理したクミンが、[2]~[10]のいずれかで規定した加熱処理したクミンである、[40]に記載の使用。
[42]前記香辛料が前記加熱処理したパプリカを含み、
前記加熱処理したパプリカが、[11]~[18]のいずれかで規定した加熱処理したパプリカである、[40]又は[41]に記載の使用。
[43]前記香辛料が前記加熱処理したアサフォエティダを含み、
前記加熱処理したアサフォエティダが、[19]~[24]のいずれかで規定した加熱処理したアサフォエティダである、[40]~[42]のいずれかに記載の使用。
[44]前記香辛料が前記加熱処理したマスタードシードを含み、
前記加熱処理したマスタードシードが、[25]~[27]のいずれかで規定した加熱処理したマスタードシードである、[40]~[43]のいずれかに記載の使用。
[45]加熱処理した、クミン、パプリカ、アサフォエティダ及びマスタードシードからなる群から選択される1以上の香辛料を、食品に配合することを含む、食品の呈味を増強する方法。該方法において、前記呈味は、例えば塩味及びコク味から選択される1以上の呈味であることができる。
[46]前記香辛料が前記加熱処理したクミンを含み、
前記加熱処理したクミンが、[2]~[10]のいずれかで規定した加熱処理したクミンである、[45]に記載の方法。
[47]前記香辛料が前記加熱処理したパプリカを含み、
前記加熱処理したパプリカが、[11]~[18]のいずれかで規定した加熱処理したパプリカである、[45]又は[46]に記載の方法。
[48]前記香辛料が前記加熱処理したアサフォエティダを含み、
前記加熱処理したアサフォエティダが、[19]~[24]のいずれかで規定した加熱処理したアサフォエティダである、[45]~[47]のいずれかに記載の方法。
[49]前記香辛料が前記加熱処理したマスタードシードを含み、
前記加熱処理したマスタードシードが、[25]~[27]のいずれかで規定した加熱処理したマスタードシードである、[45]~[48]のいずれかに記載の方法。
[50]食品の呈味を増強する用途のための、加熱処理した、クミン、パプリカ、アサフォエティダ及びマスタードシードからなる群から選択される1以上の香辛料。該香辛料において、前記呈味は、例えば塩味及びコク味から選択される1以上の呈味であることができる。
[51]前記香辛料が前記加熱処理したクミンを含み、
前記加熱処理したクミンが、[2]~[10]のいずれかで規定した加熱処理したクミンである、[50]に記載の香辛料。
[52]前記香辛料が前記加熱処理したパプリカを含み、
前記加熱処理したパプリカが、[11]~[18]のいずれかで規定した加熱処理したパプリカである、[50]又は[51]に記載の香辛料。
[53]前記香辛料が前記加熱処理したアサフォエティダを含み、
前記加熱処理したアサフォエティダが、[19]~[24]のいずれかで規定した加熱処理したアサフォエティダである、[50]~[52]のいずれかに記載の香辛料。
[54]前記香辛料が前記加熱処理したマスタードシードを含み、
前記加熱処理したマスタードシードが、[25]~[27]のいずれかで規定した加熱処理したマスタードシードである、[50]~[53]のいずれかに記載の香辛料。
[55]食品の呈味を増強する用途のための添加物の製造における、加熱処理した、クミン、パプリカ、アサフォエティダ及びマスタードシードからなる群から選択される1以上の香辛料の使用。該使用において、前記呈味は、例えば塩味及びコク味から選択される1以上の呈味であることができる。
[56]前記香辛料が前記加熱処理したクミンを含み、
前記加熱処理したクミンが、[2]~[10]のいずれかで規定した加熱処理したクミンである、[55]に記載の使用。
[57]前記香辛料が前記加熱処理したパプリカを含み、
前記加熱処理したパプリカが、[11]~[18]のいずれかで規定した加熱処理したパプリカである、[55]又は[56]に記載の使用。
[58]前記香辛料が前記加熱処理したアサフォエティダを含み、
前記加熱処理したアサフォエティダが、[19]~[24]のいずれかで規定した加熱処理したアサフォエティダである、[55]~[57]のいずれかに記載の使用。
[59]前記香辛料が前記加熱処理したマスタードシードを含み、
前記加熱処理したマスタードシードが、[25]~[27]のいずれかで規定した加熱処理したマスタードシードである、[55]~[58]のいずれかに記載の使用。
[60]前記加熱処理した、クミン、パプリカ、アサフォエティダ及びマスタードシードからなる群から選択される1以上は、種実類又はナッツ類と組み合わされていない、或いは、前記呈味増用組成物は、種実類又はナッツ類の風味を増強するものではない、[1]~[27]のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物、[40]~[44]のいずれか1項に記載の使用、[45]~[49]のいずれか1項に記載の方法、[50]~[54]のいずれか1項に記載の香辛料、或いは、[55]~[59]のいずれか1項に記載の使用。
[61]前記食品は、種実類又はナッツ類を含まない、[39]に記載の方法、[40]~[44]のいずれか1項に記載の使用、[45]~[49]のいずれか1項に記載の方法、[50]~[54]のいずれか1項に記載の香辛料、或いは、[55]~[59]のいずれか1項に記載の使用。
[62]加熱処理したマスタードシードであって、
前記加熱処理したマスタードシード(前記加熱処理したマスタードシードが、油脂とともに加熱処理したマスタードシードである場合は、油脂を除いたマスタードシードとして換算した質量を指す)に47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩を添加し、下記方法による液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、L-リシン-13一塩酸塩に由来するピーク面積に対する比として、
(1)環状(Glu-His)に由来するピーク面積が0.20以上であり、
(2)環状(Gly-Arg)に由来するピーク面積が0.29以上であり、
(3)環状(Glu-Gly)に由来するピーク面積が0.15以上であり、
(4)環状(Ala-His)に由来するピーク面積が0.12以上であり、
(5)環状(Ala-Arg)に由来するピーク面積が0.20以上であり、
(6)環状(Glu-Asp)に由来するピーク面積が0.13以上であり、
(7)環状(Leu/Ile-Asp)に由来するピーク面積が0.035以上であり、
(8)環状(Thr-Pro)に由来するピーク面積が0.50以上であり、
(9)環状(Pro-His)に由来するピーク面積が0.09以上であり、
(10)環状(Pro-Pro)に由来するピーク面積が0.50以上であり、
(11)環状(Glu-Tyr)に由来するピーク面積が0.070以上であり、
(12)環状(Arg-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.015以上であり、
(13)環状(Ala-Pro)に由来するピーク面積が0.70以上であり、
(14)環状(Pro-Val)に由来するピーク面積が0.65以上であり、
(15)環状(Phe-Ala)に由来するピーク面積が0.060以上であり、
(16)環状(Phe-Pro)に由来するピーク面積が0.070以上であり、
(17)環状(Phe-Tyr)に由来するピーク面積が0.18以上であり、
(18)環状(Tyr-His)に由来するピーク面積が0.02以上であり、
(19)環状(Leu/Ile-His)に由来するピーク面積が0.05以上であり、
(20)環状(Pro-Met)に由来するピーク面積が0.32以上であり、
(21)環状(Val-Glu)に由来するピーク面積が0.10以上である、
のうち1以上を満たす、前記加熱処理したマスタードシード。
(LC-MS/MSの測定方法)
前記加熱処理したマスタードシード200mg(前記加熱処理したマスタードシードが、油脂とともに加熱処理したマスタードシードである場合は、油脂を除いたマスタードシードとして換算した質量を指す)と水5mLとを収容した10mL容試験管を、80℃の恒温水浴中で30分間加温して、水抽出物を調製する。前記試験管中の前記水抽出物にアセトニトリル5mL及び前記加熱処理したマスタードシード(前記加熱処理したマスタードシードが、油脂とともに加熱処理したマスタードシードである場合は、油脂を除いたマスタードシードとして換算した質量を指す)に対して47μg/gとなる量のL-リシン-13一塩酸塩を添加し、撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収して、LC-MS/MS検体試料を作成する。前記LC-MS/MS検体試料をLC-MS/MSにより分析してクロマトグラムを得る。ここで、分析試料として用いる前記加熱処理したマスタードシードは、粉砕物であることが好ましい。
[63]前記加熱処理したマスタードシード(前記加熱処理したマスタードシードが、油脂とともに加熱処理したマスタードシードである場合は、油脂を除いたマスタードシードとして換算した質量を指す)に625μg/gの4-メチルチアゾールを添加し、下記方法によるガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、4-メチルチアゾールに由来するピーク面積に対する比として、
(22)アリルメチルジスルフィドに由来するピーク面積が0.006以上であり、
(23)2,5-ジメチルピラジンに由来するピーク面積が0.60以上であり、
(24)2-エチル-6-メチルピラジンに由来するピーク面積が0.15以上であり、
(25)2,3,5-トリメチルピラジンに由来するピーク面積が0.15以上であり、
(26)2,6-ジエチルピラジンに由来するピーク面積が0.01以上であり、
(27)2,5-ジエチルピラジンに由来するピーク面積が0.20以上であり、
(28)2,3-ジエチルピラジンに由来するピーク面積が0.03以上であり、
(29)アリルメチルトリスルフィドに由来するピーク面積が0.025以上であり、
(30)3-メチル-1,2,4-トリチアンに由来するピーク面積が0.70以上であり、
(31)2-ドデセナールに由来するピーク面積が0.10以上であり、
(32)スルフロールに由来するピーク面積が0.50以上である、
のうち1以上を満たす、[62]に記載の加熱処理したマスタードシード。
(GC-MSの測定方法)
前記加熱処理したマスタードシード15mg(前記加熱処理したマスタードシードが、油脂とともに加熱処理したマスタードシードである場合は、油脂を除いたマスタードシードとして換算した質量を指す)と、前記加熱処理したマスタードシード(前記加熱処理したマスタードシードが、油脂とともに加熱処理したマスタードシードである場合は、油脂を除いたマスタードシードとして換算した質量を指す)に対して625μg/gとなる量の4-メチルチアゾールと、アセトン5mLと、メタノール5mLとを収容した10mL容試験管を撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収し、前記液体成分0.1mLあたりアセトン1mLを加えて、GC-MS検体試料を作成する。前記GC-MS検体試料をGC-MSにより分析してクロマトグラムを得る。ここで、分析試料として用いる前記加熱処理したマスタードシードは、粉砕物であることが好ましい。
[64][62]又は[63]に記載のマスタードシードを含有する、食品組成物。
[65]加熱処理したマスタードシードを製造する方法であって、
マスタードシードを、加熱価が200以上となる条件で、開放系において加熱処理することを含む方法。
[66]製造される前記加熱処理したマスタードシードが、[62]又は[63]に記載のマスタードシードである、[65]に記載の方法。
【0015】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号特願2023-013575号、特願2023-013576号、特願2023-013623号及び特願2023-074823号の開示内容を包含する。
また本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一以上の実施形態に係る呈味増強用組成物は、食品に配合することにより、前記食品の呈味を増強することができる。
【0017】
本発明の一以上の実施形態に係る呈味増強用組成物の製造方法によれば、前記呈味増強用組成物を製造することができる。
【0018】
本発明の一以上の実施形態に係る食品の呈味を増強する方法によれば、前記呈味増強用組成物を、食品に配合することにより、前記食品の呈味を増強することができる。
【0019】
本発明の一以上の実施形態に係る加熱処理したマスタードシードは、甘み及び香ばしさが高められており、食品に配合することで呈味を増強することができる。
【0020】
本発明の一以上の実施形態に係る加熱処理したマスタードシードの製造方法は、上記のような好ましい性質を有するマスタードシードを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】未加熱のパプリカ(比較例201、202)及び所定条件で加熱処理したパプリカ(実施例201~216)中の、環状(Phe-Leu/Ile)(1)、環状(Pro-Asn)(2)環状(Leu/Ile-Leu/Ile)(3)及び環状(Thr-Leu/Ile)(4)の、内標準物質(47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図2】未加熱のパプリカ(比較例201、202)及び所定条件で加熱処理したパプリカ(実施例201~216)中の、環状(Phe-Ser)(5)、環状(Gly-His)(6)、環状(Gly-Ser)(7)及び環状(Gly-Arg)(8)の、内標準物質(47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図3】未加熱のパプリカ(比較例201、202)及び所定条件で加熱処理したパプリカ(実施例201~216)中の、環状(Ala-His)(9)、環状(Glu-His)(10)、環状(Glu-Arg)(11)及び環状(Ala-Arg)(12)の、内標準物質(47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図4】未加熱のパプリカ(比較例201、202)及び所定条件で加熱処理したパプリカ(実施例201~216)中の、環状(Glu-Glu)(13)、環状(Glu-Gly)(14)、環状(Glu-Asp)(15)及び環状(Pro-His)(16)の、内標準物質(47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図5】未加熱のパプリカ(比較例201、202)及び所定条件で加熱処理したパプリカ(実施例201~216)中の、環状(Glu-Tyr)(17)、環状(Leu/Ile-Asp)(18)、環状(Pro-Asp)(19)及び環状(Val-Arg)(20)の、内標準物質(47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図6】未加熱のパプリカ(比較例201、202)及び所定条件で加熱処理したパプリカ(実施例201~216)中の、環状(Thr-Pro)(21)、環状(hyPro-Pro)(22)、環状(Gly-Val)(23)及び環状(Ala-Pro)(24)の、内標準物質(47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図7】未加熱のパプリカ(比較例201、202)及び所定条件で加熱処理したパプリカ(実施例201~216)中の、環状(Ala-Tyr)(25)、環状(Arg-Leu/Ile)(26)、環状(Leu/Ile-Ser)(27)及び環状(Ala-Val)(28)の、内標準物質(47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図8】未加熱のパプリカ(比較例201、202)及び所定条件で加熱処理したパプリカ(実施例201~216)中の、環状(Pro-Pro)(29)、環状(Gly-Leu/Ile)(30)、環状(Gly-Phe)(31)及び環状(Pro-Tyr)(32)の、内標準物質(47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図9】未加熱のパプリカ(比較例201、202)及び所定条件で加熱処理したパプリカ(実施例201~216)中の、環状(Phe-Asp)(33)、環状(Pro-Val)(34)、環状(Ala-Leu/Ile)(35)及び環状(Val-Tyr)(36)の、内標準物質(47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図10】未加熱のパプリカ(比較例201、202)及び所定条件で加熱処理したパプリカ(実施例201~216)中の、環状(Tyr-Ser)(37)、環状(Phe-Ala)(38)、環状(Val-Val)(39)及び環状(Pro-Leu/Ile)(40)の、内標準物質(47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図11】未加熱のパプリカ(比較例201、202)及び所定条件で加熱処理したパプリカ(実施例201~216)中の、環状(Phe-Tyr)(41)、環状(Phe-Thr)(42)、環状(Phe-Pro)(43)及び環状(Leu/Ile-Val)(44)の、内標準物質(47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図12】未加熱のパプリカ(比較例201、202)及び所定条件で加熱処理したパプリカ(実施例201~216)中の、環状(Val-Phe)(45)、環状(Tyr-Asp)(46)、環状(Ala-Asp)(47)及び環状(Val-Ser)(48)の、内標準物質(47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図13】未加熱のパプリカ(比較例201、202)及び所定条件で加熱処理したパプリカ(実施例201~216)中の、スルフロール及び酢酸スルフロールの、内標準物質(47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比、並びに、酒石酸及びtrans-アコニット酸の、内標準物質(99μg/gのリビトール)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図14】未加熱のクミン(比較例301)及び所定条件で加熱処理したクミン(実施例301~319)中の、環状(Phe-Phe)(1)、環状(Phe-Leu/Ile)(2)及び環状(Leu/Ile-Val)(3)の、内標準物質(47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図15】未加熱のクミン(比較例301)及び所定条件で加熱処理したクミン(実施例301~319)中の、環状(Phe-Pro)(4)、環状(Phe-Tyr)(5)及び環状(Pro-Leu/Ile)(6)の、前記内標準物質に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図16】未加熱のクミン(比較例301)及び所定条件で加熱処理したクミン(実施例301~319)中の、環状(Val-Val)(7)、環状(Phe-Ala)(8)及び環状(Tyr-Ser)(9)の、前記内標準物質に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図17】未加熱のクミン(比較例301)及び所定条件で加熱処理したクミン(実施例301~319)中の、環状(Pro-Val)(10)、環状(Pro-Tyr)(11)及び環状(Pro-Pro)(12)の、前記内標準物質に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図18】未加熱のクミン(比較例301)及び所定条件で加熱処理したクミン(実施例301~319)中の、環状(Leu/Ile-Ser)(13)、環状(Arg-Leu/Ile)(14)及び環状(Ala-Tyr)(15)の、前記内標準物質に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図19】未加熱のクミン(比較例301)及び所定条件で加熱処理したクミン(実施例301~319)中の、環状(Gly-Tyr)(16)、環状(Ala-Pro)(17)及び環状(Gly-Val)(18)の、前記内標準物質に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図20】未加熱のクミン(比較例301)及び所定条件で加熱処理したクミン(実施例301~319)中の、環状(hyPro-Pro)(19)、環状(Thr-Pro)(20)及び環状(Val-Arg)(21)の、前記内標準物質に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図21】未加熱のクミン(比較例301)及び所定条件で加熱処理したクミン(実施例301~319)中の、環状(Pro-Asp)(22)、環状(Arg-Pro)(23)及び環状(Glu-Tyr)(24)の、前記内標準物質に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図22】未加熱のクミン(比較例301)及び所定条件で加熱処理したクミン(実施例301~319)中の、環状(Pro-His)(25)、環状(Glu-Asp)(26)及び環状(Gly-Arg)(27)の、前記内標準物質に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図23】未加熱のクミン(比較例301)及び所定条件で加熱処理したクミン(実施例301~319)中の、環状(Gly-His)(28)、環状(Leu/Ile-Leu/Ile)(29)及び環状(Glu-Glu)(30)の、前記内標準物質に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図24】未加熱のクミン(比較例301)及び所定条件で加熱処理したクミン(実施例301~319)中の、環状(Leu/Ile-Asp)(31)及び環状(Phe-Asp)(32)の、前記内標準物質に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図25】未加熱のクミン(比較例301)及び所定条件で加熱処理したクミン(実施例301~319)中の、スルフロール(上)、及び、酢酸スルフロール(中)の内標準物質(47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比、並びに、cis-アコニット酸(下)の、内標準物質(99μg/gのリビトール)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図26】未加熱のクミン(比較例301)及び所定条件で加熱処理したクミン(実施例301~319)中の、trans-アコニット酸(上)、酒石酸(中)及びリンゴ酸(下)の、内標準物質(99μg/gのリビトール)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図27】未加熱のクミン(比較例301)及び所定条件で加熱処理したクミン(実施例301~319)中の、クエン酸の、内標準物質(99μg/gのリビトール)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図28】未加熱のクミン(比較例301)及び所定条件で加熱処理したクミン(実施例301~319)中の、カルベオール(上)、ネロリドール(中)及びα-テルピネン-7-アール(下)の、内標準物質(625μg/gの4-メチルチアゾール)に対する、GC-MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図29】未加熱のアサフォエティダ(比較例401)及び所定条件で加熱処理したアサフォエティダ(実施例401~404)中の、環状(Gly-Thr)(1)、環状(Gly-His)(2)、環状(Ala-Asp)(3)及び環状(Val-Ser)(4)の、内標準物質(47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図30】未加熱のアサフォエティダ(比較例401)及び所定条件で加熱処理したアサフォエティダ(実施例401~404)中の、環状(Gly-Arg)(5)、環状(Ala-His)(6)、環状(Glu-Asp)(7)及び環状(Phe-Phe)(8)、の、内標準物質(47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図31】未加熱のアサフォエティダ(比較例401)及び所定条件で加熱処理したアサフォエティダ(実施例401~404)中の、環状(Leu/Ile-Leu/Ile)(9)、環状(Ala-Arg)(10)、環状(Leu/Ile-Val)(11)及び環状(Phe-Pro)(12)の、内標準物質(47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図32】未加熱のアサフォエティダ(比較例401)及び所定条件で加熱処理したアサフォエティダ(実施例401~404)中の、環状(Phe-Leu/Ile)(13)、環状(Pro-Pro)(14)、環状(Glu-Phe)(15)及び環状(Arg-Leu/Ile)(16)、の、内標準物質(47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図33】未加熱のアサフォエティダ(比較例401)及び所定条件で加熱処理したアサフォエティダ(実施例401~404)中の、環状(Pro-Leu/Ile)(17)、環状(Pro-Glu)(18)、環状(Glu-Leu/Ile)(19)及び環状(Ala-Pro)(20)の、内標準物質(47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図34】未加熱のアサフォエティダ(比較例401)及び所定条件で加熱処理したアサフォエティダ(実施例401~404)中の、環状(Pro-Val)(21)及び環状(Pro-His)(22)の、内標準物質(47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図35】未加熱のアサフォエティダ(比較例401)及び所定条件で加熱処理したアサフォエティダ(実施例401~404)中の、スルフロールの、内標準物質(47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比、並びに、酒石酸、クエン酸及びリンゴ酸の、内標準物質(99μg/gのリビトール)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図36】実施例及び比較例のマスタードシード中の、所定の環状ジペプチドの、内標準物質(47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図37】実施例及び比較例のマスタードシード中の、所定の環状ジペプチドの、内標準物質(47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図38】実施例及び比較例のマスタードシード中の、所定の環状ジペプチドの、内標準物質(47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図39】実施例及び比較例のマスタードシード中の、所定の環状ジペプチドの、内標準物質(47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図40】実施例及び比較例のマスタードシード中の、所定の環状ジペプチドの、内標準物質(47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図41】実施例及び比較例のマスタードシード中の、所定の環状ジペプチドの、内標準物質(47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩)に対する、LC-MS/MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図42】実施例及び比較例のマスタードシード中の、所定の成分の、内標準物質(625μg/gの4-メチルチアゾール)に対する、GC-MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図43】実施例及び比較例のマスタードシード中の、所定の成分の、内標準物質(625μg/gの4-メチルチアゾール)に対する、GC-MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
図44】実施例及び比較例のマスタードシード中の、所定の成分の、内標準物質(625μg/gの4-メチルチアゾール)に対する、GC-MSで得られた抽出イオンクロマトグラムでのピーク面積比を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書は、加熱処理した、クミン、パプリカ、アサフォエティダ及びマスタードシードからなる群から選択される1以上の香辛料、前記香辛料の用途、並びに、前記香辛料の製造方法について開示する。
【0023】
本明細書では、前記香辛料が、加熱処理したパプリカを含む本発明の一以上の態様を、本発明の第1態様として説明する。
【0024】
本明細書では、前記香辛料が、加熱処理したクミンを含む本発明の一以上の態様を、本発明の第2態様として説明する。
【0025】
本明細書では、前記香辛料が、加熱処理したアサフォエティダを含む本発明の一以上の態様を、本発明の第3態様として説明する。
【0026】
本明細書では、前記香辛料が、加熱処理したマスタードシードを含む本発明の一以上の態様を、本発明の第4態様として説明する。
【0027】
<呈味増強>
本明細書において「呈味」とは、食品が有する呈味を指し、例えば、塩味、甘味、酸味、苦味、旨味、コク味、甘旨味、辛味、渋味、味の広がり、及び、香ばしさから選択される1以上の呈味であることができる。そして呈味の「増強」とは、食品を喫食した時に感じられる呈味を増強することを指し、例えば、呈味成分を通常よりも低減した量で含む食品(例えば減塩食品)を喫食した時に感じられる弱い呈味を増強することを指す。
【0028】
本明細書において食品を喫食したときに感じられる呈味は、最初に感じられる「トップ」、続いて感じられる「ミドル」、最後に感じられる「ラスト」の三段階に分けることができる。本明細書における呈味の増強は、これらの呈味のうち少なくとも1種を増強することを指す。
【0029】
呈味のうち塩味とは、食塩(塩化ナトリウム)を喫食したときに感じられる味である。塩味は、食塩自体の呈味と、食塩以外の食材と食塩とが組み合わされて感じられる呈味とを包含する。例えば、食塩を含む食品のトップの呈味としては、食塩の刺激的な味である「塩角」が挙げられ、ミドルの呈味としては、「膨らみ」や「香ばしさ」が挙げられ、ラストの呈味としては、「金属様の複雑味」や「後伸び」が挙げられる。また塩味には、食塩以外の食材の味が食塩により高められる「呈味の押し上げ」による味も含まれ得る。本明細書における塩味の増強は、これらの塩味のうち少なくとも1種を増強することを指す。
【0030】
呈味のうちコク味とは、食品の喫食時に感じられる味の「厚み」、「ボディ感」と表現することもできる。このため「コク味増強」は、「厚み付与」、「ボディ感付与」と言い換えることもできる。
【0031】
本明細書において呈味の増強とは、より好ましくは食塩、ショ糖、クエン酸、酒石酸、ナリンギン、グルタミン酸又はその塩、アスパラギン酸又はその塩、コハク酸又はその塩、イノシン酸又はその塩、グアニル酸又はその塩、グリシン又はその塩、アラニン又はその塩、唐辛子、黒コショウ、動物又は植物由来エキス、及び、調味料から選択される1以上の呈味成分に由来する呈味の増強である。前記1以上の呈味成分における塩としては、それぞれ、ナトリウム塩が挙げられる。前記動物又は植物由来エキスとしてはビーフエキス、チキンエキス、ポークエキス、魚介エキス、ガーリックエキス、及び、オニオンエキスから選択される1以上のエキスが挙げられる。前記調味料としては、トマトペースト、バナナペースト、リンゴペースト、ハチミツ、醤油、味噌、ケチャップ、ウスターソース、マヨネーズ、チーズ、めんつゆ、脱脂大豆、脱脂粉乳、酵母エキス、タンパク質加水分解物、及び、カレーパウダーから選択される1以上が挙げられる。本明細書において呈味の増強は、より好ましくは、前記1以上の呈味成分を含む食品、特に、前記1以上の呈味成分を通常よりも少ない量で含む食品における、前記1以上の呈味成分に由来する呈味の増強を指す。
【0032】
<1.本発明の第1態様>
この章では、本発明の第1態様の好ましい実施形態について説明する。
【0033】
<呈味増強用組成物>
本発明の第1態様の第1の実施形態は、
加熱処理したパプリカを含有する呈味増強用組成物、
に関する。
【0034】
本実施形態に係る呈味増強用組成物は、食品に配合することにより、前記食品の呈味を増強することができる。例えば、本実施形態に係る呈味増強用組成物を配合した、上述のような1以上の呈味成分を通常よりも低減した量で含む食品(例えば食塩を通常の量よりも低減した量で含む減塩食品)は、それを配合していない食品に比べて、1以上の呈味成分を通常の量で含む食品に近い呈味を有することができ、より好ましくは、1以上の呈味成分を通常の量で含む食品と同等の呈味を有することができる。本実施形態に係る呈味増強用組成物は、より好ましくは、塩味増強用組成物である。
【0035】
本明細書において、パプリカとは、ナス科の多年草であるパプリカ(Capsicum annuum var. grossum)の果実の果皮及び果肉の部分を乾燥させ粉末状とした香辛料(パプリカ粉末)を指す。以下、パプリカとは、特に明示しない限り香辛料として利用できるパプリカ粉末を指す。
【0036】
加熱処理したパプリカの製造のための加熱処理は、パプリカを、油脂を添加することなく加熱することを含む加熱処理(以下「第1加熱処理」と称する場合がある)、又は、パプリカを油脂とともに加熱することを含む加熱処理(以下「第2加熱処理」と称する場合がある)であることが好ましい。
【0037】
前記第1加熱処理の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0038】
前記第1加熱処理では、パプリカのみ、又は、パプリカと水との混合物を加熱することを含むことができる。パプリカと水との混合物を加熱処理したパプリカは、呈味を増強する作用が特に強く好ましい。パプリカと水との混合物を加熱処理する場合の、パプリカと水との混合比は特に限定されないが、好ましくは加熱後のパプリカの水分活性が後述する範囲となるように前記混合比を設定する。
【0039】
前記第1加熱処理は、加熱価が好ましくは15以上、より好ましくは50以上、更に好ましくは130以上、更に好ましくは190以上、最も好ましくは200以上となるように、更に、加熱価が好ましくは15以上、1000以下、より好ましくは50以上、600以下、更に好ましくは130以上、600以下、更に好ましくは190以上、600以下、更に好ましくは200以上、600以下、更に好ましくは200以上、270以下となるように、温度及び時間を設定することが好ましい。油脂を添加しない条件下で加熱価が前記範囲となる条件で加熱処理したパプリカは、呈味を増強する作用が特に高いため好ましい。加熱価が前記範囲となる加熱条件は、好ましくは、後述する温度及び時間での加熱を含むことができる。
【0040】
ここで加熱価は、式によって表される値(以下「CV値」)を、加熱時間(分)で積分した値として求められる。
【0041】
(式):CV値=10[(品温-基準温度)/Z値]
本明細書において「基準温度」は110℃、「Z値」は30(℃)とする。
【0042】
前記加熱処理したパプリカを得るための前記第1加熱処理は、例えば110℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上、特に好ましくは128℃以上であり、例えば110℃以上、180℃以下、好ましくは120℃以上、160℃以下、より好ましくは125℃以上、150℃以下、特に好ましくは128℃以上、150℃以下の温度で行うことができる。前記第1加熱処理は、前記温度範囲での加熱時間が例えば20分間以上、好ましくは30分間以上、より好ましくは45分間以上、特に好ましくは55分間以上、例えば20分間以上、120分間以下、好ましくは30分間以上、90分間以下、より好ましくは45分間以上、75分間以下、最も好ましくは55分間以上、75分間以下の時間となるように行うことができる。好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上の温度で、45分間以上120分間以下の時間加熱する第1加熱処理で得られた加熱処理したパプリカは、呈味を増強する作用が特に高いため好ましい。
【0043】
前記第1加熱処理は、ゲージ圧が好ましくは0.05MPa以上、より好ましくは0.2MPa以上の圧力条件で行うことができる。加熱時の圧力の上限は特に限定されないが、装置の面から考えるとゲージ圧0.6MPa以下が好ましい。
【0044】
前記第1加熱処理には、加圧密閉加熱、過熱水蒸気加熱、オーブン加熱等の各種手段を用いることができるが、好ましくは加圧密閉加熱を用いる。加圧密閉加熱に使用する加熱装置としては、加圧密閉釜、レトルト殺菌機等が例示できる。加圧密閉加熱以外の他の加熱を利用する場合は、オーブン、平釜焙煎機、縦型加熱混合機、マイクロ波加熱装置、過熱水蒸気渦流混合機、過熱水蒸気殺菌機等を適宜用いることができる。
【0045】
次に、前記第2加熱処理の好ましい実施形態について説明する。
【0046】
前記第2加熱処理では、パプリカを油脂とともに加熱する。前記第2加熱処理により得られた加熱処理したパプリカは、呈味を増強する作用が特に強く好ましい。前記第2加熱処理における油脂の使用量は特に限定されないが、例えば、パプリカ100質量部に対し、例えば10質量部以上、500質量部以下、好ましくは50質量部以上、200質量部以下の油脂を使用できる。前記油脂としては、食品として許容される植物、動物等に由来する食用油脂であれば特に限定されない。油脂は、脂肪酸のエステル交換、水素添加等の技術により融点が調節されたものであってもよい。
【0047】
前記第2加熱処理は、加熱価が好ましくは0.3以上、より好ましくは2.5以上、更に好ましくは30以上となるように温度及び時間を設定することが好ましい。前記第2加熱処理における加熱価は例えば0.3以上、6000以下、好ましくは2.5以上、450以下、より好ましくは30以上、110以下が挙げられる。これらの条件で前記第2加熱処理を行ったパプリカは、呈味を増強する作用が特に高いため好ましい。加熱価が前記範囲となる加熱条件は、好ましくは、後述する温度及び時間での加熱を含むことができる。加熱価の定義は前記第1加熱処理に関して記載した通りである。
【0048】
前記第2加熱処理では、パプリカと油脂との混合物を、例えば90℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、特に好ましくは125℃以上であり、例えば90℃以上、190℃以下、好ましくは100℃以上、190℃以下、より好ましくは110℃以上、190℃以下、より好ましくは120℃以上、180℃以下、特に好ましくは125℃以上、180℃以下の温度で加熱することができる。前記第2加熱処理は、前記温度範囲での加熱時間が例えば1分間以上、好ましくは2分間以上、好ましくは3分間以上、例えば1分間以上、10分間以下、好ましくは2分間以上、7分間以下、より好ましくは3分間以上、7分間以下の時間となるように行うことができる。これらの条件での前記第2加熱処理で得られた加熱処理したパプリカは、呈味を増強する作用が特に高いため好ましい。
【0049】
前記第2加熱処理は開放系でも密閉系でも行うことができる。
【0050】
前記第2加熱処理は、過熱水蒸気を用いた加熱や、オーブンを用いた加熱により行うことができる。前記第2加熱処理に使用する加熱装置としては、オーブン、平釜焙煎機、縦型加熱混合機、マイクロ波加熱装置等が例示できる。
【0051】
続いて、前記加熱処理したパプリカのより好ましい実施形態について説明する。
【0052】
前記加熱処理したパプリカは、加熱処理後に更に熟成処理に供してもよい。前記熟成処理は、空気雰囲気下で室温よりも高い温度で保存する処理であり、例えば空気を封入した密閉容器中で、例えば30℃~50℃、好ましくは35℃~45℃で、例えば5日間~15日間、好ましくは7日間~10日間の時間保存する処理であることができる。
【0053】
前記加熱処理したパプリカは、25℃で測定した水分活性が好ましくは0.85以下、より好ましくは0.81以下、特に好ましくは0.80以下であり、下限は特に限定されないが例えば0.50以上である。前記加熱処理したパプリカは、加熱後の水分活性がこの範囲となる条件で、パプリカを加熱処理して調製することができる。
【0054】
前記加熱処理したパプリカは、より好ましい実施形態において、環状(Phe-Leu/Ile)、環状(Pro-Asn)、環状(Leu/Ile-Leu/Ile)、環状(Thr-Leu/Ile)、環状(Phe-Ser)、環状(Gly-His)、環状(Gly-Ser)、環状(Gly-Arg)、環状(Ala-His)、環状(Glu-His)、環状(Glu-Arg)、環状(Ala-Arg)、環状(Glu-Glu)、環状(Glu-Gly)、環状(Glu-Asp)、環状(Pro-His)、環状(Glu-Tyr)、環状(Leu/Ile-Asp)、環状(Pro-Asp)、環状(Val-Arg)、環状(Thr-Pro)、環状(hyPro-Pro)、環状(Gly-Val)、環状(Ala-Pro)、環状(Ala-Tyr)、環状(Arg-Leu/Ile)、環状(Leu/Ile-Ser)、環状(Ala-Val)、環状(Pro-Pro)、環状(Gly-Leu/Ile)、環状(Gly-Phe)、環状(Pro-Tyr)、環状(Phe-Asp)、環状(Pro-Val)、環状(Ala-Leu/Ile)、環状(Val-Tyr)、環状(Tyr-Ser)、環状(Phe-Ala)、環状(Val-Val)、環状(Pro-Leu/Ile)、環状(Phe-Tyr)、環状(Phe-Thr)、環状(Phe-Pro)、環状(Leu/Ile-Val)、環状(Val-Phe)、環状(Tyr-Asp)、環状(Ala-Asp)、環状(Val-Ser)、スルフロール(4-メチル-5-チアゾールエタノール)、酢酸スルフロール、酒石酸、及び、trans-アコニット酸から選択される1以上が、加熱前のパプリカよりも増加している。本発明者らは、前記加熱処理したパプリカに含まれる前記化合物の量が、呈味増強作用の強さと相関することを見出した。
【0055】
すなわち、前記加熱処理したパプリカは、より好ましい実施形態において、前記加熱処理したパプリカに47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩を添加し、下記方法による液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、L-リシン-13一塩酸塩に由来するピーク面積に対する比として、
(1)環状(Phe-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.45以上、好ましくは0.50以上であり、より好ましくは0.45以上、5.50以下、更に好ましくは0.50以上、5.50以下であり、
(2)環状(Pro-Asn)に由来するピーク面積が0.020以上、好ましくは0.030以上であり、より好ましくは0.020以上、0.35以下、更に好ましくは0.030以上、0.35以下であり、
(3)環状(Leu/Ile-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.30以上、好ましくは0.35以上であり、より好ましくは0.30以上、4.0以下、更に好ましくは0.35以上、4.0以下であり、
(4)環状(Thr-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.014以上であり、より好ましくは0.014以上、0.14以下であり、
(5)環状(Phe-Ser)に由来するピーク面積が0.025以上、好ましくは0.030以上であり、より好ましくは0.025以上、0.35以下、更に好ましくは0.030以上、0.35以下であり、
(6)環状(Gly-His)に由来するピーク面積が0.0020以上であり、より好ましくは0.0020以上、0.050以下であり、
(7)環状(Gly-Ser)に由来するピーク面積が0.0010以上、好ましくは0.0030以上であり、より好ましくは0.0010以上、0.100以下、更に好ましくは0.0030以上、0.050以下であり、
(8)環状(Gly-Arg)に由来するピーク面積が0.080以上であり、より好ましくは0.080以上、1.20以下であり、
(9)環状(Ala-His)に由来するピーク面積が0.0140以上であり、より好ましくは0.0140以上、0.20以下であり、
(10)環状(Glu-His)に由来するピーク面積が0.040以上であり、より好ましくは0.040以上、0.50以下であり、
(11)環状(Glu-Arg)に由来するピーク面積が0.21以上であり、より好ましくは0.21以上、2.5以下であり、
(12)環状(Ala-Arg)に由来するピーク面積が0.24以上、好ましくは0.40以上であり、より好ましくは0.24以上、6.0以下であり、
(13)環状(Glu-Glu)に由来するピーク面積が0.020以上であり、より好ましくは0.020以上、0.25以下であり、
(14)環状(Glu-Gly)に由来するピーク面積が0.39以上、好ましくは0.40以上であり、より好ましくは0.39以上、4.5以下、更に好ましくは0.40以上、4.5以下であり、
(15)環状(Glu-Asp)に由来するピーク面積が0.19以上、好ましくは0.40以上であり、より好ましくは0.19以上、6.0以下、更に好ましくは0.40以上、6.0以下であり、
(16)環状(Pro-His)に由来するピーク面積が0.12以上、好ましくは0.15以上であり、より好ましくは0.12以上、1.9以下、更に好ましくは0.15以上、1.9以下であり、
(17)環状(Glu-Tyr)に由来するピーク面積が0.40以上、好ましくは0.60以上であり、より好ましくは0.40以上、9.0以下、更に好ましくは0.60以上、9.0以下であり、
(18)環状(Leu/Ile-Asp)に由来するピーク面積が0.100以上であり、より好ましくは0.100以上、1.50以下、更に好ましくは0.100以上、0.30以下であり、
(19)環状(Pro-Asp)に由来するピーク面積が0.10以上、好ましくは0.12以上であり、より好ましくは0.10以上、1.7以下、更に好ましくは0.12以上、1.7以下であり、
(20)環状(Val-Arg)に由来するピーク面積が0.15以上、好ましくは0.25以上であり、より好ましくは0.15以上、6.0以下、更に好ましくは0.25以上、6.0以下であり、
(21)環状(Thr-Pro)に由来するピーク面積が0.40以上であり、より好ましくは0.40以上、6.0以下であり、
(22)環状(hyPro-Pro)に由来するピーク面積が0.020以上であり、より好ましくは0.020以上、0.50以下、より好ましくは0.020以上、0.30以下であり、
(23)環状(Gly-Val)に由来するピーク面積が0.010以上、好ましくは0.020以上であり、より好ましくは0.010以上、0.40以下、更に好ましくは0.020以上、0.40以下であり、
(24)環状(Ala-Pro)に由来するピーク面積が0.10以上、好ましくは0.15以上であり、より好ましくは0.10以上、2.0以下、更に好ましくは0.15以上、2.0以下であり、
(25)環状(Ala-Tyr)に由来するピーク面積が0.025以上、好ましくは0.030以上であり、より好ましくは0.025以上、0.40以下、更に好ましくは0.030以上、0.40以下であり、
(26)環状(Arg-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.60以上であり、より好ましくは0.60以上、8.0以下であり、
(27)環状(Leu/Ile-Ser)に由来するピーク面積が0.050以上、好ましくは0.070以上であり、より好ましくは0.050以上、1.20以下、更に好ましくは0.070以上、1.20以下であり、
(28)環状(Ala-Val)に由来するピーク面積が0.040以上、好ましくは0.050以上であり、より好ましくは0.040以上、0.60以下、更に好ましくは0.050以上、0.60以下であり、
(29)環状(Pro-Pro)に由来するピーク面積が0.30以上、好ましくは0.40以上であり、より好ましくは0.30以上、5.0以下、更に好ましくは0.40以上、5.0以下であり、
(30)環状(Gly-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.025以上、好ましくは0.035以上であり、より好ましくは0.025以上、0.50以下、更に好ましくは0.035以上、0.50以下であり、
(31)環状(Gly-Phe)に由来するピーク面積が0.060以上であり、より好ましくは0.060以上、0.80以下であり、
(32)環状(Pro-Tyr)に由来するピーク面積が0.060以上、好ましくは0.080以上であり、より好ましくは0.060以上、1.0以下、更に好ましくは0.080以上、1.0以下であり、
(33)環状(Phe-Asp)に由来するピーク面積が0.040以上、好ましくは0.050以上であり、より好ましくは0.040以上、1.0以下、更に好ましくは0.050以上、0.30以下であり、
(34)環状(Pro-Val)に由来するピーク面積が0.070以上であり、より好ましくは0.070以上、0.80以下であり、
(35)環状(Ala-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.080以上、好ましくは0.10以上であり、より好ましくは0.080以上、1.20以下、更に好ましくは0.10以上、1.20以下であり、
(36)環状(Val-Tyr)に由来するピーク面積が0.020以上、好ましくは0.040以上であり、より好ましくは0.020以上、0.60以下、更に好ましくは0.040以上、0.60以下であり、
(37)環状(Tyr-Ser)に由来するピーク面積が0.20以上、好ましくは0.30以上であり、より好ましくは0.20以上、4.0以下、更に好ましくは0.30以上、4.0以下であり、
(38)環状(Phe-Ala)に由来するピーク面積が0.025以上、好ましくは0.030以上であり、より好ましくは0.025以上、0.40以下、更に好ましくは0.030以上、0.40以下であり、
(39)環状(Val-Val)に由来するピーク面積が0.50以上、好ましくは0.080以上であり、より好ましくは0.50以上、0.90以下、更に好ましくは0.080以上、0.90以下であり、
(40)環状(Pro-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.45以上、好ましくは0.50以上であり、より好ましくは0.45以上、6.0以下、更に好ましくは0.50以上、6.0以下であり、
(41)環状(Phe-Tyr)に由来するピーク面積が0.160以上であり、より好ましくは0.160以上、5.0以下、更に好ましくは0.160以上、1.70以下であり、
(42)環状(Phe-Thr)に由来するピーク面積が0.020以上であり、より好ましくは0.020以上、0.60以下であり、
(43)環状(Phe-Pro)に由来するピーク面積が0.45以上、好ましくは0.50以上であり、より好ましくは0.45以上、5.5以下、更に好ましくは0.50以上、5.5以下であり、
(44)環状(Leu/Ile-Val)に由来するピーク面積が0.09以上、好ましくは0.10以上であり、より好ましくは0.09以上、1.5以下、更に好ましくは0.10以上、1.5以下であり、
(45)環状(Val-Phe)に由来するピーク面積が0.010以上、好ましくは0.0130以上であり、より好ましくは0.010以上、0.20以下、更に好ましくは0.0130以上、0.20以下であり、
(46)環状(Tyr-Asp)に由来するピーク面積が0.020以上であり、より好ましくは0.020以上、0.50以下であり、
(47)環状(Ala-Asp)に由来するピーク面積が0.005以上であり、より好ましくは0.005以上、0.310以下であり、
(48)環状(Val-Ser)に由来するピーク面積が0.070以上、好ましくは0.080以上であり、より好ましくは0.070以上、2.0以下、更に好ましくは0.080以上、2.0以下であり
(49)スルフロール(4-メチル-5-チアゾールエタノール)に由来するピーク面積が0.090以上であり、より好ましくは0.090以上、1.10以下であり、
(50)酢酸スルフロールに由来するピーク面積が0.011以上、好ましくは0.020以上であり、より好ましくは0.011以上、0.25以下、更に好ましくは0.020以上、0.25以下である、
のうち1以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上、特に好ましくは30以上、特に好ましくは40以上、最も好ましくは全てを満たす。
【0056】
ここでLC-MS/MSの測定方法は以下の通りであり、より好ましくは、実施例に記載のLC-MS/MSの測定方法である。
【0057】
前記加熱処理したパプリカ200mg(前記加熱処理したパプリカが、油脂とともに加熱処理したパプリカである場合は、油脂を除いたパプリカとして換算した質量を指す)と水5mLとを収容した10mL容試験管を、80℃の恒温水浴中で30分間加温して、水抽出物を調製する。前記試験管中の前記水抽出物にアセトニトリル5mL及び前記加熱処理したパプリカ(前記加熱処理したパプリカが、油脂とともに加熱処理したパプリカである場合は、油脂を除いたパプリカとして換算した質量を指す)に対して47μg/gとなる量のL-リシン-13一塩酸塩を添加し、撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収して、検体試料を作成する。前記検体試料をLC-MS/MSにより分析してクロマトグラムを得る。ここで、分析試料として用いる前記加熱処理したパプリカは、粉砕物であることが好ましい。
【0058】
本明細書における、本発明の第1態様、第2態様、第3態様及び第4態様に関するそれぞれの開示において、環状(Phe-Phe)等は2つのアミノ酸からなる環状のジペプチドを表す。Leu/Ileは、ロイシン(Leu)及びイソロイシン(Ile)の一方または両方であることを表し、例えば、前記(1)の「環状(Phe-Leu/Ile)に由来するピーク面積」とは、環状(Phe-Leu)に由来するピーク面積と環状(Phe-Ile)に由来するピーク面積との合計を指す。本明細書における、本発明の第1態様、第2態様、第3態様及び第4態様に関するそれぞれの開示において「hyPro」とは、γ-ヒドロキシ-プロリンを指す。本明細書における、本発明の第1態様、第2態様、第3態様及び第4態様に関するそれぞれの開示において環状ジペプチドを構成するアミノ酸は、いずれも、L体であってもよいし、D体であってもよいし、L体とD体との混合物であってもよい。
【0059】
L-リシン-13一塩酸塩に由来するピーク面積及び前記(1)~(50)で記載の各化合物のピーク面積としては、それぞれ、実施例に記載のm/z値のプロダクトイオンの抽出イオンクロマトグラムのピーク面積が使用できる。
【0060】
前記第1加熱処理(油脂を添加せずに行う加熱処理)により得られた前記加熱処理したパプリカの、特に好ましい実施形態では、上記クロマトグラムにおいて、L-リシン-13一塩酸塩に由来するピーク面積に対する比として、
(1’)環状(Phe-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.55以上であり、より好ましくは0.55以上、5.50以下であり、
(2’)環状(Pro-Asn)に由来するピーク面積が0.035以上であり、より好ましくは0.035以上、0.35以下であり、
(3’)環状(Leu/Ile-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.40以上であり、より好ましくは0.40以上、4.0以下であり、
(4’)環状(Thr-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.014以上であり、より好ましくは0.014以上、0.14以下であり、
(5’)環状(Phe-Ser)に由来するピーク面積が0.035以上であり、より好ましくは0.035以上、0.35以下であり、
(6’)環状(Gly-His)に由来するピーク面積が0.0050以上であり、より好ましくは0.0050以上、0.050以下であり、
(7’)環状(Gly-Ser)に由来するピーク面積が0.0050以上であり、より好ましくは0.0050以上、0.100以下であり、
(8’)環状(Gly-Arg)に由来するピーク面積が0.120以上であり、より好ましくは0.120以上、1.20以下であり、
(9’)環状(Ala-His)に由来するピーク面積が0.020以上であり、より好ましくは0.020以上、0.20以下であり、
(10’)環状(Glu-His)に由来するピーク面積が0.050以上であり、より好ましくは0.050以上、0.50以下であり、
(11’)環状(Glu-Arg)に由来するピーク面積が0.25以上であり、より好ましくは0.25以上、2.5以下であり、
(12’)環状(Ala-Arg)に由来するピーク面積が0.60以上であり、より好ましくは0.60以上、6.0以下であり、
(13’)環状(Glu-Glu)に由来するピーク面積が0.025以上であり、より好ましくは0.025以上、0.25以下であり、
(14’)環状(Glu-Gly)に由来するピーク面積が0.45以上であり、より好ましくは0.45以上、4.5以下であり、
(15’)環状(Glu-Asp)に由来するピーク面積が0.60以上であり、より好ましくは0.60以上、6.0以下であり、
(16’)環状(Pro-His)に由来するピーク面積が0.19以上であり、より好ましくは0.19以上、1.9以下であり、
(17’)環状(Glu-Tyr)に由来するピーク面積が0.90以上であり、より好ましくは0.90以上、9.0以下であり、
(18’)環状(Leu/Ile-Asp)に由来するピーク面積が0.150以上であり、より好ましくは0.150以上、1.50以下であり、
(19’)環状(Pro-Asp)に由来するピーク面積が0.17以上であり、より好ましくは0.17以上、1.7以下であり、
(20’)環状(Val-Arg)に由来するピーク面積が0.30以上、好ましくは0.60以上であり、より好ましくは0.30以上、6.0以下、更に好ましくは0.60以上、6.0以下であり、
(21’)環状(Thr-Pro)に由来するピーク面積が0.50以上、より好ましくは0.60以上であり、より好ましくは0.50以上、6.0以下、更に好ましくは0.60以上、6.0以下であり、
(22’)環状(hyPro-Pro)に由来するピーク面積が0.030以上であり、より好ましくは0.030以上、0.30以下であり、
(23’)環状(Gly-Val)に由来するピーク面積が0.040以上であり、より好ましくは0.040以上、0.40以下であり、
(24’)環状(Ala-Pro)に由来するピーク面積が0.20以上であり、より好ましくは0.20以上、2.0以下であり、
(25’)環状(Ala-Tyr)に由来するピーク面積が0.040以上であり、より好ましくは0.040以上、0.40以下であり、
(26’)環状(Arg-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.80以上であり、より好ましくは0.80以上、8.0以下であり、
(27’)環状(Leu/Ile-Ser)に由来するピーク面積が0.120以上であり、より好ましくは0.120以上、1.20以下であり、
(28’)環状(Ala-Val)に由来するピーク面積が0.060以上であり、より好ましくは0.060以上、0.60以下であり、
(29’)環状(Pro-Pro)に由来するピーク面積が0.50以上であり、より好ましくは0.50以上、5.0以下であり、
(30’)環状(Gly-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.050以上であり、より好ましくは0.050以上、0.50以下であり、
(31’)環状(Gly-Phe)に由来するピーク面積が0.080以上であり、より好ましくは0.080以上、0.80以下であり、
(32’)環状(Pro-Tyr)に由来するピーク面積が0.10以上であり、より好ましくは0.10以上、1.0以下であり、
(33’)環状(Phe-Asp)に由来するピーク面積が0.100以上であり、より好ましくは0.100以上、1.0以下であり、
(34’)環状(Pro-Val)に由来するピーク面積が0.080以上であり、より好ましくは0.080以上、0.80以下であり、
(35’)環状(Ala-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.120以上であり、より好ましくは0.120以上、1.20以下であり、
(36’)環状(Val-Tyr)に由来するピーク面積が0.060以上であり、より好ましくは0.060以上、0.60以下であり、
(37’)環状(Tyr-Ser)に由来するピーク面積が0.40以上であり、より好ましくは0.40以上、4.0以下であり、
(38’)環状(Phe-Ala)に由来するピーク面積が0.040以上であり、より好ましくは0.040以上、0.40以下であり、
(39’)環状(Val-Val)に由来するピーク面積が0.090以上であり、より好ましくは0.090以上、0.90以下であり、
(40’)環状(Pro-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.60以上であり、より好ましくは0.60以上、6.0以下であり、
(41’)環状(Phe-Tyr)に由来するピーク面積が0.170以上であり、より好ましくは0.170以上、1.70以下であり、
(42’)環状(Phe-Thr)に由来するピーク面積が0.060以上であり、より好ましくは0.060以上、0.60以下であり、
(43’)環状(Phe-Pro)に由来するピーク面積が0.55以上であり、より好ましくは0.55以上、5.5以下であり、
(44’)環状(Leu/Ile-Val)に由来するピーク面積が0.15以上であり、より好ましくは0.15以上、1.5以下であり、
(45’)環状(Val-Phe)に由来するピーク面積が0.020以上であり、より好ましくは0.020以上、0.20以下であり、
(46’)環状(Tyr-Asp)に由来するピーク面積が0.050以上であり、より好ましくは0.050以上、0.50以下であり、
(47’)環状(Ala-Asp)に由来するピーク面積が0.014以上であり、より好ましくは0.014以上、0.310以下であり、
(48’)環状(Val-Ser)に由来するピーク面積が0.100以上、好ましくは0.160以上であり、より好ましくは0.100以上、2.0以下、更に好ましくは0.160以上、2.0以下であり、
(49’)スルフロール(4-メチル-5-チアゾールエタノール)に由来するピーク面積が0.110以上であり、より好ましくは0.110以上、1.10以下であり、
(50’)酢酸スルフロールに由来するピーク面積が0.025以上であり、より好ましくは0.025以上、0.25以下である、
のうち1以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上、特に好ましくは30以上、特に好ましくは40以上、最も好ましくは全てを満たす。
【0061】
前記第2加熱処理(油脂を添加して行う加熱処理)により得られた前記加熱処理したパプリカの、特に好ましい実施形態では、上記クロマトグラムにおいて、L-リシン-13一塩酸塩に由来するピーク面積に対する比として、
(1’’)環状(Phe-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.45以上であり、より好ましくは0.45以上、5.50以下であり、
(2’’)環状(Pro-Asn)に由来するピーク面積が0.035以上であり、より好ましくは0.035以上、0.35以下であり、
(3’’)環状(Leu/Ile-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.30以上であり、より好ましくは0.30以上、4.0以下であり、
(4’’)環状(Thr-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.014以上であり、より好ましくは0.014以上、0.14以下であり、
(5’’)環状(Phe-Ser)に由来するピーク面積が0.025以上であり、より好ましくは0.025以上、0.35以下であり、
(6’’)環状(Gly-His)に由来するピーク面積が0.0050以上であり、より好ましくは0.0050以上、0.050以下であり、
(7’’)環状(Gly-Ser)に由来するピーク面積が0.0030以上であり、より好ましくは0.0030以上、0.100以下であり、
(8’’)環状(Gly-Arg)に由来するピーク面積が0.100以上であり、より好ましくは0.100以上、1.20以下であり、
(9’’)環状(Ala-His)に由来するピーク面積が0.015以上であり、より好ましくは0.015以上、0.20以下であり、
(10’’)環状(Glu-His)に由来するピーク面積が0.040以上であり、より好ましくは0.040以上、0.50以下であり、
(11’’)環状(Glu-Arg)に由来するピーク面積が0.25以上であり、より好ましくは0.25以上、2.5以下であり、
(12’’)環状(Ala-Arg)に由来するピーク面積が0.30以上であり、より好ましくは0.30以上、6.0以下であり、
(13’’)環状(Glu-Glu)に由来するピーク面積が0.020以上であり、より好ましくは0.020以上、0.25以下であり、
(14’’)環状(Glu-Gly)に由来するピーク面積が0.45以上であり、より好ましくは0.45以上、4.5以下であり、
(15’’)環状(Glu-Asp)に由来するピーク面積が0.30以上であり、より好ましくは0.30以上、6.0以下であり、
(16’’)環状(Pro-His)に由来するピーク面積が0.13以上であり、より好ましくは0.13以上、1.9以下であり、
(17’’)環状(Glu-Tyr)に由来するピーク面積が0.70以上であり、より好ましくは0.70以上、9.0以下であり、
(18’’)環状(Leu/Ile-Asp)に由来するピーク面積が0.120以上であり、より好ましくは0.120以上、1.50以下であり、
(19’’)環状(Pro-Asp)に由来するピーク面積が0.12以上であり、より好ましくは0.12以上、1.7以下であり、
(20’’)環状(Val-Arg)に由来するピーク面積が0.15以上であり、より好ましくは0.15以上、6.0以下であり、
(21’’)環状(Thr-Pro)に由来するピーク面積が0.60以上であり、より好ましくは0.60以上、6.0以下であり、
(22’’)環状(hyPro-Pro)に由来するピーク面積が0.050以上であり、より好ましくは0.050以上、0.50以下であり、
(23’’)環状(Gly-Val)に由来するピーク面積が0.020以上であり、より好ましくは0.020以上、0.40以下であり、
(24’’)環状(Ala-Pro)に由来するピーク面積が0.20以上であり、より好ましくは0.20以上、2.0以下であり、
(25’’)環状(Ala-Tyr)に由来するピーク面積が0.030以上であり、より好ましくは0.030以上、0.40以下であり、
(26’’)環状(Arg-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.70以上であり、より好ましくは0.70以上、8.0以下であり、
(27’’)環状(Leu/Ile-Ser)に由来するピーク面積が0.050以上であり、より好ましくは0.050以上、1.20以下であり、
(28’’)環状(Ala-Val)に由来するピーク面積が0.050以上であり、より好ましくは0.050以上、0.60以下であり、
(29’’)環状(Pro-Pro)に由来するピーク面積が0.40以上であり、より好ましくは0.40以上、5.0以下であり、
(30’’)環状(Gly-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.050以上であり、より好ましくは0.050以上、0.50以下であり、
(31’’)環状(Gly-Phe)に由来するピーク面積が0.070以上であり、より好ましくは0.070以上、0.80以下であり、
(32’’)環状(Pro-Tyr)に由来するピーク面積が0.10以上であり、より好ましくは0.10以上、1.0以下であり、
(33’’)環状(Phe-Asp)に由来するピーク面積が0.100以上であり、より好ましくは0.100以上、1.0以下であり、
(34’’)環状(Pro-Val)に由来するピーク面積が0.080以上であり、より好ましくは0.080以上、0.80以下であり、
(35’’)環状(Ala-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.100以上であり、より好ましくは0.100以上、1.20以下であり、
(36’’)環状(Val-Tyr)に由来するピーク面積が0.040以上であり、より好ましくは0.040以上、0.60以下であり、
(37’’)環状(Tyr-Ser)に由来するピーク面積が0.30以上であり、より好ましくは0.30以上、4.0以下であり、
(38’’)環状(Phe-Ala)に由来するピーク面積が0.025以上であり、より好ましくは0.025以上、0.40以下であり、
(39’’)環状(Val-Val)に由来するピーク面積が0.080以上であり、より好ましくは0.080以上、0.90以下であり、
(40’’)環状(Pro-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.80以上であり、より好ましくは0.80以上、6.0以下であり、
(41’’)環状(Phe-Tyr)に由来するピーク面積が0.160以上であり、より好ましくは0.160以上、1.70以下であり、
(42’’)環状(Phe-Thr)に由来するピーク面積が0.10以上であり、より好ましくは0.10以上、0.60以下であり、
(43’’)環状(Phe-Pro)に由来するピーク面積が0.80以上であり、より好ましくは0.80以上、5.5以下であり、
(44’’)環状(Leu/Ile-Val)に由来するピーク面積が0.15以上であり、より好ましくは0.15以上、1.5以下であり、
(45’’)環状(Val-Phe)に由来するピーク面積が0.010以上であり、より好ましくは0.010以上、0.20以下であり、
(46’’)環状(Tyr-Asp)に由来するピーク面積が0.060以上であり、より好ましくは0.060以上、0.50以下であり、
(47’’)環状(Ala-Asp)に由来するピーク面積が0.015以上であり、より好ましくは0.015以上、0.310以下であり、
(48’’)環状(Val-Ser)に由来するピーク面積が0.070以上であり、より好ましくは0.070以上、2.0以下であり、
(49’’)スルフロール(4-メチル-5-チアゾールエタノール)に由来するピーク面積が0.150以上であり、より好ましくは0.150以上、1.10以下であり、
(50’’)酢酸スルフロールに由来するピーク面積が0.025以上であり、より好ましくは0.025以上、0.25以下である、
のうち1以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上、特に好ましくは30以上、特に好ましくは40以上、最も好ましくは全てを満たす。
【0062】
また、前記加熱処理したパプリカは、より好ましい実施形態において、環状(Gly-His)、環状(Gly-Ser)、環状(hyPro-Pro)、環状(Gly-Val)、環状(Tyr-Asp)及び環状(Ala-Asp)からなる群から選択される1以上、より好ましくは前記群の全て、を含有することを特徴とする。これらの環状ジペプチドは、未加熱のパプリカでは検出されない、呈味増強作用を有する加熱処理したパプリカに特徴的な成分である。
【0063】
前記加熱処理したパプリカは、より好ましい実施形態において、前記加熱処理したパプリカに99μg/gのリビトールを添加し、下記方法による液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、リビトールに由来するピーク面積に対する比として、
(51)酒石酸に由来するピーク面積が0.60以上であり、より好ましくは0.60以上、10.0以下、更に好ましくは0.60以上、7.0以下であり、
(52)trans-アコニット酸に由来するピーク面積が0.35以上であり、より好ましくは0.35以上、10.0以下、更に好ましくは0.35以上、4.0以下である、
のうち1以上、より好ましくは両方を満たす。
【0064】
ここでLC-MS/MSの測定方法は以下の通りであり、より好ましくは、実施例に記載のLC-MS/MSの測定方法である。
【0065】
前記加熱処理したパプリカ200mg(前記加熱処理したパプリカが、油脂とともに加熱処理したパプリカである場合は、油脂を除いたパプリカとして換算した質量を指す)と水5mLとを収容した10mL容試験管を、80℃の恒温水浴中で30分間加温して、水抽出物を調製する。前記試験管中の前記水抽出物にアセトニトリル5mL及び前記加熱処理したパプリカ(前記加熱処理したパプリカが、油脂とともに加熱処理したパプリカである場合は、油脂を除いたパプリカとして換算した質量を指す)に対して99μg/gとなる量のリビトールを添加し、撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収して、検体試料を作成する。前記検体試料をLC-MS/MSにより分析してクロマトグラムを得る。ここで、分析試料として用いる前記加熱処理したパプリカは、粉砕物であることが好ましい。
【0066】
リビトールに由来するピーク面積、酒石酸に由来するピーク面積及びtrans-アコニット酸に由来するピーク面積としては、それぞれ、実施例に記載のm/z値のプロダクトイオンの抽出イオンクロマトグラムのピーク面積が使用できる。
【0067】
前記第1加熱処理(油脂を添加せずに行う加熱処理)により得られた前記加熱処理したパプリカの、特に好ましい実施形態では、上記クロマトグラムにおいて、リビトールに由来するピーク面積に対する比として、
(51’)酒石酸に由来するピーク面積が0.70以上であり、より好ましくは0.70以上、7.0以下であり、
(52’)trans-アコニット酸に由来するピーク面積が0.40以上であり、より好ましくは0.40以上、4.0以下である、
のうち1以上、より好ましくは両方を満たす。
【0068】
前記第2加熱処理(油脂を添加して行う加熱処理)により得られた前記加熱処理したパプリカの、特に好ましい実施形態では、上記クロマトグラムにおいて、リビトールに由来するピーク面積に対する比として、
(51’)酒石酸に由来するピーク面積が1.50以上であり、より好ましくは1.50以上、10.0以下であり、
(52’)trans-アコニット酸に由来するピーク面積が1.00以上であり、より好ましくは1.00以上、10.0以下である、
のうち1以上、より好ましくは両方を満たす。
【0069】
本実施形態に係る呈味増強用組成物中の加熱処理したパプリカは、好ましくは粉末状であり、粒度は特に限定されないが、例えば1000μm以下、好ましくは500μm以下であることができる。ここで粒度はJISに規定される標準ふるいの目開きにより求めることができる。本実施形態に係る呈味増強用組成物中の加熱処理したパプリカはまた、加熱処理したパプリカと油脂との混合物の形態で提供されてもよい。前記混合物は、前記油脂の融点に応じて、常温で固体状であってもよいし、常温で液体状であってもよい。
【0070】
本実施形態に係る呈味増強用組成物は、加熱処理したパプリカのみからなるものであってもよいし、加熱処理したパプリカと他の成分とを含むものであってもよい。他の成分としては呈味増強作用を有する1以上の成分や、食品として許容される1以上の成分が例示できる。本実施形態に係る呈味増強用組成物は、加熱処理したパプリカを、好ましくは30質量%以上100質量%以下、より好ましくは50質量%以上100質量%以下、更に好ましくは80質量%以上100質量%以下、最も好ましくは95質量%以上100質量%以下の割合で含有することができる。本実施形態に係る呈味増強用組成物は、粉末、顆粒、ペースト、液体等の形態であることができ、所望の形態とするために必要に応じて、賦形剤、担体等の、食品として許容される1以上の成分を含むことができる。
【0071】
<呈味増強用組成物の製造方法>
本発明の第1態様の第2の実施形態の第1の例は、
本発明の第1態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物の製造方法であって、
パプリカを、油脂を添加することなく加熱価が50以上となる条件で加熱して前記加熱処理したパプリカを得ること、
を含む方法、
に関する。
【0072】
本実施形態の前記第1の例によれば、本発明の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物を製造することができる。
【0073】
本実施形態の前記第1の例において、パプリカを、油脂を添加することなく加熱価が50以上となる条件で加熱して前記加熱処理したパプリカを得る工程は、好ましくは、本発明の第1態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物の加熱処理したパプリカを得るための前記第1加熱処理に関して記載した特徴を備える。
【0074】
本発明の第1態様の第2の実施形態の第2の例は、
本発明の第1態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物の製造方法であって、
パプリカを油脂とともに加熱価が0.3以上となる条件で加熱して前記加熱処理したパプリカを得ること、
を含む方法、
に関する。
【0075】
本実施形態の前記第2の例によれば、本発明の第1態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物を製造することができる。
【0076】
本実施形態の前記第2の例において、パプリカを油脂とともに加熱価が0.3以上となる条件で加熱して前記加熱処理したパプリカを得る工程は、好ましくは、本発明の第1態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物の加熱処理したパプリカを得るための前記第2加熱処理に関して記載した特徴を備える。
【0077】
前記第1の例及び前記第2の例を包含する本実施形態(以下「本実施形態」)において、前記加熱処理したパプリカを更に熟成させてもよいし、粉砕してもよい。熟成工程は、好ましくは、本発明の第1態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物の前記加熱処理したパプリカを得るために行うことができる熟成工程に関して記載した特徴を備える。
【0078】
本実施形態に係る呈味増強用組成物の製造方法では、前記加熱処理したパプリカを粉砕することを更に含むことができる。粉砕後の前記加熱処理したパプリカの粒度の好ましい範囲は、本発明の第1態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物の前記加熱処理したパプリカに関して記載した通りである。
【0079】
本実施形態に係る呈味増強用組成物の製造方法は、前記加熱処理したパプリカをそのまま前記呈味増強用組成物としてもよいし、前記加熱処理したパプリカを他の成分と組み合わせて前記呈味増強用組成物を調製することを更に含んでもよい。前記他の成分の好ましい例は、本発明の第1態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物に関して説明した通りである。
【0080】
本実施形態に係る呈味増強用組成物の製造方法は、得られた呈味増強用組成物を、粉末、顆粒、ペースト、液体等の形態に加工することを含んでもよい。
【0081】
<呈味を増強する方法>
本発明の第1態様の第3の実施形態は、
本発明の第1態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物を、食品に配合することを含む、
食品の呈味を増強する方法、
に関する。
【0082】
本実施形態に係る方法は、食品の呈味を増強することができるため、上述のような1以上の呈味成分を通常よりも低減した量で含む食品(例えば食塩を通常の量よりも低減した減塩食品)における呈味の増強に好適に使用することができる。
【0083】
本発明の第1態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物の配合量は特に限定されず食品の形態に応じて適宜調整することができる。例えば塩味増強の目的では、食品の食塩相当量100gに対して、加熱処理したパプリカが例えば0.5g以上、好ましくは1g以上、好ましくは2g以上、より好ましくは4g以上、例えば0.5g以上、50g以下、好ましくは1g以上、20g以下、より好ましくは2g以上、10g以下、特に好ましくは4g以上、10g以下となるように本発明の第1態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物を配合することができる。
【0084】
前記食品の種類は限定されないが、例えば、カレーソース、シチューソース、畜肉食品、総菜類、菓子類等の食品が例示できる。前記食品は、上述のような1以上の呈味成分を通常よりも低減した量で含む食品であってもよい。前記食品は上述のような1以上の呈味成分、例えば食塩を含有する食品であってもよい。
【0085】
<一以上の更なる実施形態>
本発明の第1態様の、一以上の更なる実施形態は、
食品の呈味を増強するための、加熱処理したパプリカの使用、
加熱処理したパプリカを、食品に配合することを含む、食品の呈味を増強する方法、
食品の呈味を増強する用途のための、加熱処理したパプリカ、或いは、
食品の呈味を増強する用途のための添加物の製造における、加熱処理したパプリカの使用、
に関する。
本実施形態において、前記加熱処理したパプリカは、好ましくは、本発明の第1態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物に含まれる加熱処理したパプリカに関して説明した特徴を備える。
本実施形態において、前記加熱処理したパプリカは、好ましくは、本発明の第1態様の第2の実施形態に係る呈味増強用組成物の製造方法において説明した、加熱処理したパプリカを製造する方法により製造することができる。
本実施形態において、前記食品は、好ましくは、本発明の第1態様の第3の実施形態の方法に関して説明した特徴を備える。
【0086】
<2.本発明の第2態様>
この章では、本発明の第2態様の好ましい実施形態について説明する。
【0087】
<呈味増強用組成物>
本発明の第2態様の第1の実施形態は、
加熱処理したクミンを含有する呈味増強用組成物、
に関する。
【0088】
本実施形態に係る呈味増強用組成物は、食品に配合することにより、前記食品の呈味を増強することができる。例えば、本実施形態に係る呈味増強用組成物を配合した、上述のような1以上の呈味成分を通常よりも低減した量で含む食品(例えば食塩を通常の量よりも低減した量で含む減塩食品)は、それを配合していない食品に比べて、1以上の呈味成分を通常の量で含む食品に近い呈味を有することができ、より好ましくは、1以上の呈味成分を通常の量で含む食品と同等の呈味を有することができる。本実施形態に係る呈味増強用組成物は、より好ましくは、塩味増強用組成物である。
【0089】
加熱処理したクミンとは、セリ科の一年草であるクミン(Cuminum cyminum)の種子を加熱処理したものである。
【0090】
加熱処理に供するクミン種子は、ホール種子であってもよいし、ホール種子を粉砕して得られた粉砕物であってもよい。
【0091】
前記加熱処理したクミンの製造のための加熱処理は、クミンを、油脂を添加することなく加熱することを含む加熱処理(以下「第1加熱処理」と称する場合がある)、又は、クミンを油脂とともに加熱することを含む加熱処理(以下「第2加熱処理」と称する場合がある)であることが好ましい。
【0092】
前記第1加熱処理の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0093】
前記第1加熱処理では、クミンのみ、又は、クミンと水との混合物、好ましくは、クミンと水との混合物を加熱処理に供することができる。クミンと水との混合物を加熱処理したクミンは、呈味を増強する作用が特に強く好ましい。クミンと水との混合物を加熱処理する場合の、クミンと水との混合比は特に限定されないが、好ましくは加熱後の水分活性が下記の範囲となるように前記混合比を設定する。ここで、前記第1加熱処理に供するクミンは、ホール種子の形態であることが好ましい。ホール種子のみ又はホール種子と水との混合物を加熱処理して得たクミンは、呈味を増強する作用が特に強い。
【0094】
前記第1加熱処理は、加熱価が好ましくは15以上、より好ましくは60以上、更に好ましくは100以上、更に好ましくは190以上、最も好ましくは200以上となるように、更に、加熱価が好ましくは15以上、1000以下、より好ましくは60以上、500以下、更に好ましくは100以上、410以下、更に好ましくは190以上、410以下、最も好ましくは200以上、410以下となるように、温度及び時間を設定することが好ましい。前記加熱価の別の好ましい態様は、例えば15以上、170以下、好ましくは60以上、170以下、より好ましくは100以上、170以下である。油脂を添加しない条件下で加熱価が前記範囲となる条件で加熱処理したクミンは、呈味を増強する作用が特に高いため好ましい。加熱価が前記範囲となる加熱条件は、好ましくは、後述する温度及び時間での加熱を含むことができる。
【0095】
ここで加熱価及びCV値の定義は、本発明の第1態様の第1の実施形態に関して記載した通りである。
【0096】
前記加熱処理したクミンを得るための前記第1加熱処理は、例えば110℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上、特に好ましくは128℃以上であり、例えば110℃以上、180℃以下、好ましくは120℃以上、160℃以下、より好ましくは125℃以上、150℃以下、最も好ましくは128℃以上、150℃以下の温度で行うことができる。前記第1加熱処理は、前記温度範囲での加熱時間が例えば15分間以上、好ましくは20分間以上、より好ましくは30分間以上、例えば15分間以上、120分間以下、好ましくは20分間以上、90分間以下、より好ましくは30分間以上、60分以下の時間となるように行うことができる。125℃以上の温度で加熱処理したクミンは、呈味を増強する作用が特に高いため好ましい。
【0097】
前記第1加熱処理は、ゲージ圧が好ましくは0.05MPa以上、より好ましくは0.2MPa以上の圧力条件で行うことができる。加熱時の圧力の上限は特に限定されないが、装置の面から考えるとゲージ圧0.6MPa以下が好ましい。
【0098】
前記第1加熱処理には、加圧密閉加熱、過熱水蒸気加熱、オーブン加熱等の各種手段を用いることができるが、好ましくは加圧密閉加熱を用いる。加圧密閉加熱に使用する加熱装置としては、加圧密閉釜、レトルト殺菌機等が例示できる。加圧密閉加熱以外の他の加熱を利用する場合は、オーブン、平釜焙煎機、縦型加熱混合機、マイクロ波加熱装置、過熱水蒸気渦流混合機、過熱水蒸気殺菌機等を適宜用いることができる。
【0099】
次に、前記第2加熱処理の好ましい実施形態について説明する。
【0100】
前記第2加熱処理では、クミンを油脂とともに加熱する。前記第2加熱処理により得られた加熱処理したクミンは、呈味を増強する作用が特に強く好ましい。前記第2加熱処理における油脂の使用量は特に限定されないが、例えば、クミン100質量部に対し、例えば10質量部以上、500質量部以下、好ましくは50質量部以上、200質量部以下の油脂を使用できる。前記油脂としては、食品として許容される植物、動物等に由来する食用油脂であれば特に限定されない。油脂は、脂肪酸のエステル交換、水素添加等の技術により融点が調節されたものであってもよい。ここで、前記第2加熱処理に供するクミンは、ホール種子の形態であってもよいし、クミン種子の粉砕物であってもよいが、クミン種子の粉砕物であることが好ましい。クミン種子の粉砕物を油脂とともに加熱処理したものは、呈味を増強する作用が特に強い。
【0101】
前記第2加熱処理は、加熱価が好ましくは1以上、より好ましくは20以上、より好ましくは100以上、更に好ましくは200以上となるように温度及び時間を設定することが好ましい。前記第2加熱処理における加熱価は、例えば1以上、6000以下、好ましくは20以上、4000以下、より好ましくは100以上、1000以下、特に好ましくは200以上、600以下であることができる。これらの条件で前記第2加熱処理を行ったクミンは、呈味を増強する作用が特に高いため好ましい。加熱価が前記範囲となる加熱条件は、好ましくは、後述する温度及び時間での加熱を含むことができる。加熱価の定義は前記第1加熱処理に関して記載した通りである。
【0102】
前記第2加熱処理では、クミンと油脂との混合物を、例えば90℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、より好ましくは140℃以上、より好ましくは150℃以上であり、例えば90℃以上、230℃以下、好ましくは100℃以上、220℃以下、より好ましくは120℃以上、220℃以下、より好ましくは130℃以上、210℃以下、より好ましくは150℃以上、210℃以下、特に好ましくは160℃以上、210℃以下の温度で加熱することができる。前記第2加熱処理は、前記温度範囲での加熱時間が例えば1分間以上、好ましくは2分間以上、好ましくは3分間以上、例えば1分間以上、10分間以下、好ましくは2分間以上、7分間以下、より好ましくは3分間以上、7分間以下の時間となるように行うことができる。これらの条件での前記第2加熱処理で得られた加熱処理したクミンは、呈味を増強する作用が特に高いため好ましい。
【0103】
前記第2加熱処理は開放系でも密閉系でも行うことができる。
【0104】
前記第2加熱処理は、過熱水蒸気を用いた加熱や、オーブンを用いた加熱により行うことができる。前記第2加熱処理に使用する加熱装置としては、オーブン、平釜焙煎機、縦型加熱混合機、マイクロ波加熱装置等が例示できる。
【0105】
続いて、前記加熱処理したクミンのより好ましい実施形態について説明する。
【0106】
前記加熱処理したクミンは、25℃で測定した水分活性が、好ましくは0.85以下、より好ましくは0.82以下であり、下限は特に限定されないが例えば0.50以上である。前記加熱処理したクミンは、加熱後の水分活性がこの範囲となる条件で、クミンを加熱処理して調製することができる。
【0107】
前記加熱処理したクミンは、加熱処理後に更に熟成処理に供してもよい。前記熟成処理は、空気雰囲気下で室温よりも高い温度で保存する処理であり、例えば空気を封入した密閉容器中で、例えば30℃~50℃、好ましくは35℃~45℃で、例えば5日間~15日間、好ましくは7日間~10日間の時間保存する処理であることができる。
【0108】
前記加熱処理したクミンは、より好ましい実施形態において、環状(Phe-Phe)、環状(Phe-Leu/Ile)、環状(Leu/Ile-Val)、環状(Phe-Pro)、環状(Phe-Tyr)、環状(Pro-Leu/Ile)、環状(Val-Val)、環状(Phe-Ala)、環状(Tyr-Ser)、環状(Pro-Val)、環状(Pro-Tyr)、環状(Pro-Pro)、環状(Leu/Ile-Ser)、環状(Arg-Leu/Ile)、環状(Ala-Tyr)、環状(Gly-Tyr)、環状(Ala-Pro)、環状(Gly-Val)、環状(hyPro-Pro)、環状(Thr-Pro)、環状(Val-Arg)、環状(Pro-Asp)、環状(Arg-Pro)、環状(Glu-Tyr)、環状(Pro-His)、環状(Glu-Asp)、環状(Gly-Arg)、環状(Gly-His)、環状(Leu/Ile-Leu/Ile)、環状(Glu-Glu)、環状(Leu/Ile-Asp)、環状(Phe-Asp)、スルフロール(4-メチル-5-チアゾールエタノール)、酢酸スルフロール、カルベオール、ネロリドール、α-テルピネン-7-アール、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、cis-アコニット酸、及び、trans-アコニット酸から選択される1以上が、加熱処理する前のクミンよりも増加している。本発明者らは、前記加熱処理したクミンに含まれる前記化合物の量が、呈味増強作用の強さと相関することを見出した。
【0109】
すなわち、前記加熱処理したクミンは、より好ましい実施形態において、前記加熱処理したクミンに47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩を添加し、下記方法による液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、L-リシン-13一塩酸塩に由来するピーク面積に対する比として、
(1)環状(Phe-Phe)に由来するピーク面積が0.024以上、好ましくは0.029以上であり、より好ましくは0.024以上、0.30以下、更に好ましくは0.029以上、0.30以下であり、
(2)環状(Phe-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.040以上、好ましくは0.050以上であり、より好ましくは0.040以上、1.10以下、更に好ましくは0.050以上、1.10以下であり、
(3)環状(Leu/Ile-Val)に由来するピーク面積が0.015以上、好ましくは0.020以上であり、より好ましくは0.015以上、0.60以下、より好ましくは0.020以上、0.60以下であり、
(4)環状(Phe-Pro)に由来するピーク面積が0.020以上、好ましくは0.030以上であり、より好ましくは0.020以上、1.00以下、更に好ましくは0.030以上、1.00以下であり、
(5)環状(Phe-Tyr)に由来するピーク面積が0.0020以上であり、より好ましくは0.0020以上、0.05以下であり、
(6)環状(Pro-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.040以上であり、より好ましくは0.040以上、1.50以下であり、
(7)環状(Val-Val)に由来するピーク面積が0.004以上であり、より好ましくは0.004以上、0.10以下であり、
(8)環状(Phe-Ala)に由来するピーク面積が0.002以上、好ましくは0.003以上であり、より好ましくは0.002以上、0.10以下、更に好ましくは0.003以上、0.10以下であり、
(9)環状(Tyr-Ser)に由来するピーク面積が0.002以上であり、より好ましくは0.002以上、0.15以下であり、
(10)環状(Pro-Val)に由来するピーク面積が0.013以上、好ましくは0.015以上であり、より好ましくは0.013以上、0.25以下であり、更に好ましくは0.015以上、0.25以下であり、
(11)環状(Pro-Tyr)に由来するピーク面積が0.009以上であり、より好ましくは0.009以上、0.25以下であり、
(12)環状(Pro-Pro)に由来するピーク面積が0.050以上であり、より好ましくは0.050以上、2.0以下であり、
(13)環状(Leu/Ile-Ser)に由来するピーク面積が0.010以上であり、より好ましくは0.010以上、0.20以下であり、
(14)環状(Arg-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.10以上であり、より好ましくは0.10以上、2.20以下であり、
(15)環状(Ala-Tyr)に由来するピーク面積が0.007以上であり、より好ましくは0.007以上、0.20以下であり、
(16)環状(Gly-Tyr)に由来するピーク面積が0.002以上であり、より好ましくは0.002以上、0.20以下、更に好ましくは0.002以上、0.09以下であり、
(17)環状(Ala-Pro)に由来するピーク面積が0.020以上であり、より好ましくは0.020以上、0.60以下であり、
(18)環状(Gly-Val)に由来するピーク面積が0.001以上であり、より好ましくは0.001以上、0.09以下であり、
(19)環状(hyPro-Pro)に由来するピーク面積が0.010以上、好ましくは0.020以上であり、より好ましくは0.010以上、0.50以下、より好ましくは0.020以上、0.50以下であり、
(20)環状(Thr-Pro)に由来するピーク面積が0.040以上であり、より好ましくは0.040以上、0.90以下であり、
(21)環状(Val-Arg)に由来するピーク面積が0.060以上であり、より好ましくは0.060以上、1.00以下であり、
(22)環状(Pro-Asp)に由来するピーク面積が0.040以上であり、より好ましくは0.040以上、0.90以下であり、
(23)環状(Arg-Pro)に由来するピーク面積が0.035以上であり、より好ましくは0.035以上、1.00以下であり、
(24)環状(Glu-Tyr)に由来するピーク面積が0.050以上であり、より好ましくは0.050以上、1.50以下であり、
(25)環状(Pro-His)に由来するピーク面積が0.020以上であり、より好ましくは0.020以上、0.90以下であり、
(26)環状(Glu-Asp)に由来するピーク面積が0.080以上であり、より好ましくは0.080以上、1.10以下であり、
(27)環状(Gly-Arg)に由来するピーク面積が0.50以上、好ましくは0.90以上であり、より好ましくは0.50以上、20.0以下、更に好ましくは0.90以上、20.0以下であり、
(28)環状(Gly-His)に由来するピーク面積が0.005以上、好ましくは0.007以上であり、より好ましくは0.005以上、0.18以下、更に好ましくは0.007以上、0.18以下であり、
(29)環状(Leu/Ile-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.070以上であり、より好ましくは0.070以上、1.30以下であり、
(30)環状(Glu-Glu)に由来するピーク面積が0.010以上、好ましくは0.015以上であり、より好ましくは0.010以上、0.30以下、更に好ましくは0.015以上、0.30以下であり、
(31) 環状(Leu/Ile-Asp)に由来するピーク面積が0.010以上であり、より好ましくは0.010以上、0.30以下であり、
(32)環状(Phe-Asp)に由来するピーク面積が0.012以上であり、より好ましくは0.012以上、0.25以下であり、
(33)スルフロール(4-メチル-5-チアゾールエタノール)に由来するピーク面積が0.30以上であり、より好ましくは0.30以上、4.00以下であり、
(34)酢酸スルフロールに由来するピーク面積が0.025以上であり、より好ましくは0.025以上、0.80以下である、
のうち1以上、より好ましくは10以上、特に好ましくは20以上、特に好ましくは30以上、最も好ましくは全てを満たす。
【0110】
ここでLC-MS/MSの測定方法は以下の通りであり、より好ましくは、実施例に記載のLC-MS/MSの測定方法である。
【0111】
前記加熱処理したクミン200mg(前記加熱処理したクミンが、油脂とともに加熱処理したクミンである場合は、油脂を除いたクミンとして換算した質量を指す)と水5mLとを収容した10mL容試験管を、80℃の恒温水浴中で30分間加温して、水抽出物を調製する。前記試験管中の前記水抽出物にアセトニトリル5mL及び前記加熱処理したクミン(前記加熱処理したクミンが、油脂とともに加熱処理したクミンである場合は、油脂を除いたクミンとして換算した質量を指す)に対して47μg/gとなる量のL-リシン-13一塩酸塩を添加し、撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収して、検体試料を作成する。前記検体試料をLC-MS/MSにより分析してクロマトグラムを得る。ここで、分析試料として用いる前記加熱処理したクミンは、粉砕物であることが好ましい。
【0112】
L-リシン-13一塩酸塩に由来するピーク面積及び前記(1)~(34)で記載の各化合物のピーク面積としては、それぞれ、実施例に記載のm/z値のプロダクトイオンの抽出イオンクロマトグラムのピーク面積が使用できる。
【0113】
前記第1加熱処理(油脂を添加せずに行う加熱処理)により得られた前記加熱処理したクミンの、特に好ましい実施形態では、上記クロマトグラムにおいて、L-リシン-13一塩酸塩に由来するピーク面積に対する比として、
(1’)環状(Phe-Phe)に由来するピーク面積が0.030以上であり、より好ましくは0.030以上、0.30以下であり、
(2’)環状(Phe-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.110以上であり、より好ましくは0.110以上、1.10以下であり、
(3’)環状(Leu/Ile-Val)に由来するピーク面積が0.060以上であり、より好ましくは0.060以上、0.60以下であり、
(4’)環状(Phe-Pro)に由来するピーク面積が0.100以上であり、より好ましくは0.100以上、1.00以下であり、
(5’)環状(Phe-Tyr)に由来するピーク面積が0.005以上であり、より好ましくは0.005以上、0.05以下であり、
(6’)環状(Pro-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.150以上であり、より好ましくは0.150以上、1.50以下であり、
(7’)環状(Val-Val)に由来するピーク面積が0.010以上であり、より好ましくは0.010以上、0.10以下であり、
(8’)環状(Phe-Ala)に由来するピーク面積が0.010以上であり、より好ましくは0.010以上、0.10以下であり、
(9’)環状(Tyr-Ser)に由来するピーク面積が0.015以上であり、より好ましくは0.015以上、0.15以下であり、
(10’)環状(Pro-Val)に由来するピーク面積が0.025以上であり、より好ましくは0.025以上、0.25以下であり、
(11’)環状(Pro-Tyr)に由来するピーク面積が0.025以上であり、より好ましくは0.025以上、0.25以下であり、
(12’)環状(Pro-Pro)に由来するピーク面積が0.20以上であり、より好ましくは0.20以上、2.0以下であり、
(13’)環状(Leu/Ile-Ser)に由来するピーク面積が0.020以上であり、より好ましくは0.020以上、0.20以下であり、
(14’)環状(Arg-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.220以上であり、より好ましくは0.220以上、2.20以下であり、
(15’)環状(Ala-Tyr)に由来するピーク面積が0.020以上であり、より好ましくは0.020以上、0.20以下であり、
(16’)環状(Gly-Tyr)に由来するピーク面積が0.009以上であり、より好ましくは0.009以上、0.09以下であり、
(17’)環状(Ala-Pro)に由来するピーク面積が0.060以上であり、より好ましくは0.060以上、0.60以下であり、
(18’)環状(Gly-Val)に由来するピーク面積が0.009以上であり、より好ましくは0.009以上、0.09以下であり、
(19’)環状(hyPro-Pro)に由来するピーク面積が0.050以上であり、より好ましくは0.050以上、0.50以下であり、
(20’)環状(Thr-Pro)に由来するピーク面積が0.090以上であり、より好ましくは0.090以上、0.90以下であり、
(21’)環状(Val-Arg)に由来するピーク面積が0.100以上であり、より好ましくは0.100以上、1.00以下であり、
(22’)環状(Pro-Asp)に由来するピーク面積が0.090以上であり、より好ましくは0.090以上、0.90以下であり、
(23’)環状(Arg-Pro)に由来するピーク面積が0.100以上であり、より好ましくは0.100以上、1.00以下であり、
(24’)環状(Glu-Tyr)に由来するピーク面積が0.150以上であり、より好ましくは0.150以上、1.50以下であり、
(25’)環状(Pro-His)に由来するピーク面積が0.090以上であり、より好ましくは0.090以上、0.90以下であり、
(26’)環状(Glu-Asp)に由来するピーク面積が0.110以上であり、より好ましくは0.110以上、1.10以下であり、
(27’)環状(Gly-Arg)に由来するピーク面積が2.00以上であり、より好ましくは2.00以上、20.0以下であり、
(28’)環状(Gly-His)に由来するピーク面積が0.018以上であり、より好ましくは0.018以上、0.18以下であり、
(29’)環状(Leu/Ile-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.130以上であり、より好ましくは0.130以上、1.30以下であり、
(30’)環状(Glu-Glu)に由来するピーク面積が0.030以上であり、より好ましくは0.030以上、0.30以下であり、
(31’) 環状(Leu/Ile-Asp)に由来するピーク面積が0.030以上であり、より好ましくは0.030以上、0.30以下であり、
(32’)環状(Phe-Asp)に由来するピーク面積が0.025以上であり、より好ましくは0.025以上、0.25以下であり、
(33’)スルフロール(4-メチル-5-チアゾールエタノール)に由来するピーク面積が0.400以上であり、より好ましくは0.400以上、4.00以下であり、
(34’)酢酸スルフロールに由来するピーク面積が0.080以上であり、より好ましくは0.080以上、0.80以下である、
のうち1以上、より好ましくは10以上、特に好ましくは20以上、特に好ましくは30以上、最も好ましくは全てを満たす。
【0114】
前記第2加熱処理(油脂を添加して行う加熱処理)により得られた前記加熱処理したクミンの、特に好ましい実施形態では、上記クロマトグラムにおいて、L-リシン-13一塩酸塩に由来するピーク面積に対する比として、
(1’’)環状(Phe-Phe)に由来するピーク面積が0.025以上であり、より好ましくは0.025以上、0.30以下であり、
(2’’)環状(Phe-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.100以上であり、より好ましくは0.100以上、1.10以下であり、
(3’’)環状(Leu/Ile-Val)に由来するピーク面積が0.080以上であり、より好ましくは0.080以上、0.60以下であり、
(4’’)環状(Phe-Pro)に由来するピーク面積が0.090以上であり、より好ましくは0.090以上、1.00以下であり、
(5’’)環状(Phe-Tyr)に由来するピーク面積が0.008以上であり、より好ましくは0.008以上、0.05以下であり、
(6’’)環状(Pro-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.200以上であり、より好ましくは0.200以上、1.50以下であり、
(7’’)環状(Val-Val)に由来するピーク面積が0.007以上であり、より好ましくは0.007以上、0.10以下であり、
(8’’)環状(Phe-Ala)に由来するピーク面積が0.010以上であり、より好ましくは0.010以上、0.10以下であり、
(9’’)環状(Tyr-Ser)に由来するピーク面積が0.015以上であり、より好ましくは0.015以上、0.15以下であり、
(10’’)環状(Pro-Val)に由来するピーク面積が0.030以上であり、より好ましくは0.025以上、0.25以下であり、
(11’’)環状(Pro-Tyr)に由来するピーク面積が0.040以上であり、より好ましくは0.040以上、0.25以下であり、
(12’’)環状(Pro-Pro)に由来するピーク面積が0.10以上であり、より好ましくは0.10以上、2.0以下であり、
(13’’)環状(Leu/Ile-Ser)に由来するピーク面積が0.020以上であり、より好ましくは0.020以上、0.20以下であり、
(14’’)環状(Arg-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.150以上であり、より好ましくは0.150以上、2.20以下であり、
(15’’)環状(Ala-Tyr)に由来するピーク面積が0.020以上であり、より好ましくは0.020以上、0.20以下であり、
(16’’)環状(Gly-Tyr)に由来するピーク面積が0.020以上であり、より好ましくは0.020以上、0.20以下であり、
(17’’)環状(Ala-Pro)に由来するピーク面積が0.060以上であり、より好ましくは0.060以上、0.60以下であり、
(18’’)環状(Gly-Val)に由来するピーク面積が0.005以上であり、より好ましくは0.005以上、0.09以下であり、
(19’’)環状(hyPro-Pro)に由来するピーク面積が0.060以上であり、より好ましくは0.060以上、0.50以下であり、
(20’’)環状(Thr-Pro)に由来するピーク面積が0.060以上であり、より好ましくは0.060以上、0.90以下であり、
(21’’)環状(Val-Arg)に由来するピーク面積が0.060以上であり、より好ましくは0.060以上、1.00以下であり、
(22’’)環状(Pro-Asp)に由来するピーク面積が0.110以上であり、より好ましくは0.110以上、0.90以下であり、
(23’’)環状(Arg-Pro)に由来するピーク面積が0.100以上であり、より好ましくは0.100以上、1.00以下であり、
(24’’)環状(Glu-Tyr)に由来するピーク面積が0.200以上であり、より好ましくは0.200以上、1.50以下であり、
(25’’)環状(Pro-His)に由来するピーク面積が0.060以上であり、より好ましくは0.060以上、0.90以下であり、
(26’’)環状(Glu-Asp)に由来するピーク面積が0.100以上であり、より好ましくは0.100以上、1.10以下であり、
(27’’)環状(Gly-Arg)に由来するピーク面積が1.00以上であり、より好ましくは1.00以上、20.0以下であり、
(28’’)環状(Gly-His)に由来するピーク面積が0.020以上であり、より好ましくは0.020以上、0.18以下であり、
(29’’)環状(Leu/Ile-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.130以上であり、より好ましくは0.130以上、1.30以下であり、
(30’’)環状(Glu-Glu)に由来するピーク面積が0.012以上であり、より好ましくは0.012以上、0.30以下であり、
(31’’) 環状(Leu/Ile-Asp)に由来するピーク面積が0.020以上であり、より好ましくは0.020以上、0.30以下であり、
(32’’)環状(Phe-Asp)に由来するピーク面積が0.018以上であり、より好ましくは0.018以上、0.25以下であり、
(33’’)スルフロール(4-メチル-5-チアゾールエタノール)に由来するピーク面積が0.400以上であり、より好ましくは0.400以上、4.00以下であり、
(34’’)酢酸スルフロールに由来するピーク面積が0.100以上であり、より好ましくは0.100以上、0.80以下である、
のうち1以上、より好ましくは10以上、特に好ましくは20以上、特に好ましくは30以上、最も好ましくは全てを満たす。
【0115】
また、前記加熱処理したクミンは、より好ましい実施形態において、環状(Phe-Tyr)、環状(Phe-Ala)、環状(Tyr-Ser)、環状(Leu/Ile-Ser)、環状(Ala-Tyr)、環状(Gly-Tyr)、環状(Ala-Pro)、環状(Gly-Val)、環状(hyPro-Pro)及び環状(Glu-Glu)からなる群から選択される1以上、より好ましくは前記群の全て、を含有することを特徴とする。これらの環状ジペプチドは、未加熱のクミンでは検出されない、呈味増強作用を有する加熱処理したクミンに特徴的な成分である。
【0116】
前記加熱処理したクミンは、より好ましい実施形態において、前記加熱処理したクミンに99μg/gのリビトールを添加し、下記方法による液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、リビトールに由来するピーク面積に対する比として、
(35)cis-アコニット酸に由来するピーク面積が0.180以上であり、より好ましくは0.180以上、2.50以下であり、
(36)trans-アコニット酸に由来するピーク面積が0.250以上であり、より好ましくは0.250以上、5.00以下であり、
(37)酒石酸に由来するピーク面積が0.550以上、好ましくは0.660以上であり、より好ましくは0.550以上、7.0以下、より好ましくは0.660以上、7.0以下であり、
(38)リンゴ酸に由来するピーク面積が22.0以上であり、より好ましくは22.0以上、230.0以下であり、
(39)クエン酸に由来するピーク面積が35.0以上であり、より好ましくは35.0以上、400.0以下である、
のうち1以上、より好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上、最も好ましくは全てを満たす。
【0117】
ここでLC-MS/MSの測定方法は以下の通りであり、より好ましくは、実施例に記載のLC-MS/MSの測定方法である。
【0118】
前記加熱処理したクミン200mg(前記加熱処理したクミンが、油脂とともに加熱処理したクミンである場合は、油脂を除いたクミンとして換算した質量を指す)と水5mLとを収容した10mL容試験管を、80℃の恒温水浴中で30分間加温して、水抽出物を調製する。前記試験管中の前記水抽出物にアセトニトリル5mL及び前記加熱処理したクミン(前記加熱処理したクミンが、油脂とともに加熱処理したクミンである場合は、油脂を除いたクミンとして換算した質量を指す)に対して99μg/gとなる量のリビトールを添加し、撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収して、検体試料を作成する。前記検体試料をLC-MS/MSにより分析してクロマトグラムを得る。ここで、分析試料として用いる前記加熱処理したクミンは、粉砕物であることが好ましい。
【0119】
リビトールに由来するピーク面積及び前記(35)~(39)で記載の各化合物のピーク面積としては、それぞれ、実施例に記載のm/z値のプロダクトイオンの抽出イオンクロマトグラムのピーク面積が使用できる。
【0120】
前記第1加熱処理(油脂を添加せずに行う加熱処理)により得られた前記加熱処理したクミンの、特に好ましい実施形態では、上記クロマトグラムにおいて、リビトールに由来するピーク面積に対する比として、
(35’)cis-アコニット酸に由来するピーク面積が0.250以上であり、より好ましくは0.250以上、2.50以下であり、
(36’)trans-アコニット酸に由来するピーク面積が0.500以上であり、より好ましくは0.500以上、5.00以下であり、
(37’)酒石酸に由来するピーク面積が0.70以上であり、より好ましくは0.70以上、7.0以下であり、
(38’)リンゴ酸に由来するピーク面積が23.00以上であり、より好ましくは23.00以上、230.0以下であり、
(39’)クエン酸に由来するピーク面積が40.00以上であり、より好ましくは40.00以上、400.0以下である、
のうち1以上、より好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上、最も好ましくは全てを満たす。
【0121】
前記第2加熱処理(油脂を添加して行う加熱処理)により得られた前記加熱処理したクミンの、特に好ましい実施形態では、上記クロマトグラムにおいて、リビトールに由来するピーク面積に対する比として、
(35’’)cis-アコニット酸に由来するピーク面積が0.200以上であり、より好ましくは0.200以上、2.50以下であり、
(36’’)trans-アコニット酸に由来するピーク面積が0.700以上であり、より好ましくは0.500以上、5.00以下であり、
(37’’)酒石酸に由来するピーク面積が0.55以上であり、より好ましくは0.55以上、7.0以下であり、
(38’’)リンゴ酸に由来するピーク面積が25.00以上であり、より好ましくは25.00以上、230.0以下であり、
(39’’)クエン酸に由来するピーク面積が37.00以上であり、より好ましくは37.00以上、400.0以下である、
のうち1以上、より好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上、最も好ましくは全てを満たす。
【0122】
本実施形態に係る加熱処理したクミンは、より好ましい実施形態において、前記加熱処理したクミン(前記加熱処理したクミンが、油脂とともに加熱処理したクミンである場合は、油脂を除いたクミンとして換算した質量を指す)に625μg/gの4-メチルチアゾールを添加し、下記方法によるガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、4-メチルチアゾールに由来するピーク面積に対する比として、
(40)カルベオールに由来するピーク面積が0.05以上であり、より好ましくは0.05以上、0.80以下であり、
(41)ネロリドールに由来するピーク面積が0.18以上であり、より好ましくは0.18以上、2.0以下であり、
(42)α-テルピネン-7-アールに由来するピーク面積が100以上であり、より好ましくは100以上、1500以下である、
のうち1以上、より好ましくは2以上、より好ましくは全て、を満たす。
【0123】
ここでGC-MSの測定方法は以下の通りであり、より好ましくは、実施例に記載のGC-MSの測定方法である。なお本明細書において、温度を明示していない操作は、室温、具体的には23℃、にて行うことができる。
【0124】
(GC-MSの測定方法)
前記加熱処理したクミン15mg(前記加熱処理したクミンが、油脂とともに加熱処理したクミンである場合は、油脂を除いたクミンとして換算した質量を指す)と、前記加熱処理したクミン(前記加熱処理したクミンが、油脂とともに加熱処理したクミンである場合は、油脂を除いたクミンとして換算した質量を指す)に対して625μg/gとなる量の4-メチルチアゾールと、アセトン5mLと、メタノール5mLとを収容した10mL容試験管を撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収し、前記液体成分0.1mLあたりアセトン1mLを加えて、GC-MS検体試料を作成する。前記GC-MS検体試料をGC-MSにより分析してクロマトグラムを得る。ここで、分析試料として用いる前記加熱処理したクミンは、粉砕物であることが好ましい。
【0125】
4-メチルチアゾールに由来するピーク面積、及び前記(40)~(42)で特定する成分に由来するピーク面積としては、それぞれ、実施例に記載の各成分の精密質量に対応するイオンの抽出イオンクロマトグラムのピーク面積が使用できる。
【0126】
前記第1加熱処理(油脂を添加せずに行う加熱処理)により得られた前記加熱処理したクミンの、特に好ましい実施形態では、上記クロマトグラムにおいて、625μg/gの4-メチルチアゾールに由来するピーク面積に対する比として、
(40’)カルベオールに由来するピーク面積が0.08以上であり、より好ましくは0.08以上、0.80以下であり、
(41’)ネロリドールに由来するピーク面積が0.20以上であり、より好ましくは0.20以上、2.0以下であり、
(42’)α-テルピネン-7-アールに由来するピーク面積が150以上であり、より好ましくは150以上、1500以下である、
のうち1以上、より好ましくは2以上、より好ましくは全て、を満たす。
【0127】
前記第2加熱処理(油脂を添加して行う加熱処理)により得られた前記加熱処理したクミンの、特に好ましい実施形態では、上記クロマトグラムにおいて、625μg/gの4-メチルチアゾールに由来するピーク面積に対する比として、
(40’’)カルベオールに由来するピーク面積が0.06以上であり、より好ましくは0.06以上、0.80以下であり、
(41’’)ネロリドールに由来するピーク面積が0.18以上であり、より好ましくは0.18以上、2.0以下であり、
(42’’)α-テルピネン-7-アールに由来するピーク面積が120以上であり、より好ましくは120以上、1500以下である、
のうち1以上、より好ましくは2以上、より好ましくは全て、を満たす。
【0128】
本実施形態に係る呈味増強用組成物は、加熱処理したクミンを、ホール種子の形態で含んでもよいし、ホール種子を粉砕した粉砕物の形態で含んでもよい。粉砕物の形態の加熱処理したクミンを含む本実施形態に係る呈味増強用組成物は、呈味の増強効果が特に高いため好ましい。粉砕物の形態の加熱処理したクミンは、好ましくは粉末状であり、粒度は特に限定されないが、例えば1000μm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下であることができる。ここで粒度はJISに規定される標準ふるいの目開きにより求めることができる。本実施形態に係る呈味増強用組成物中の加熱処理したクミンはまた、加熱処理したクミンと油脂との混合物の形態で提供されてもよい。前記混合物は、前記油脂の融点に応じて、常温で固体状であってもよいし、常温で液体状であってもよい。
【0129】
本実施形態に係る呈味増強用組成物は、加熱処理したクミンのみからなるものであってもよいし、加熱処理したクミンと他の成分とを含むものであってもよい。他の成分としては呈味増強作用を有する1以上の成分や、食品として許容される1以上の成分が例示できる。本実施形態に係る呈味増強用組成物は、加熱処理したクミンを、好ましくは30質量%以上100質量%以下、より好ましくは50質量%以上100質量%以下、更に好ましくは80質量%以上100質量%以下、最も好ましくは95質量%以上100質量%以下の割合で含有することができる。本実施形態に係る呈味増強用組成物は、粉末、顆粒、ペースト、液体等の形態であることができ、所望の形態とするために必要に応じて、賦形剤、担体等の、食品として許容される1以上の成分を含むことができる。
【0130】
<呈味増強用組成物の製造方法>
本発明の第2態様の第2の実施形態の第1の例は、
本発明の第2態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物の製造方法であって、
クミンを、油脂を添加することなく加熱価が15以上となる条件で加熱して前記加熱処理したクミンを得ること、
を含む方法、
に関する。
【0131】
本実施形態の前記第1の例によれば、本発明の第2態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物を製造することができる。
【0132】
本実施形態の前記第1の例において、クミンを、油脂を添加することなく加熱価が15以上となる条件で加熱して前記加熱処理したクミンを得る工程は、好ましくは、本発明の第2態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物の加熱処理したクミンを得るための前記第1加熱処理に関して記載した特徴を備える。
【0133】
本発明の第2態様の第2の実施形態の第2の例は、
本発明の第2態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物の製造方法であって、
クミンを油脂とともに加熱価が1以上となる条件で加熱して前記加熱処理したクミンを得ること、
を含む方法、
に関する。
【0134】
本実施形態の前記第2の例によれば、本発明の第2態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物を製造することができる。
【0135】
本実施形態の前記第2の例において、クミンを油脂とともに加熱価が1以上となる条件で加熱して前記加熱処理したクミンを得る工程は、好ましくは、本発明の第2態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物の加熱処理したクミンを得るための前記第2加熱処理に関して記載した特徴を備える。
【0136】
前記第1の例及び前記第2の例を包含する本実施形態(以下「本実施形態」)において、前記加熱処理したクミンを更に熟成させてもよいし、粉砕してもよい。熟成工程は、好ましくは、本発明の第2態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物の前記加熱処理したクミンを得るために行うことができる熟成工程に関して記載した特徴を備える。
【0137】
本実施形態に係る呈味増強用組成物の製造方法では、前記加熱処理したクミンを粉砕することを更に含むことができる。粉砕後の前記加熱処理したクミンの粒度の好ましい範囲は、本発明の第2態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物の前記加熱処理したクミンに関して記載した通りである。
【0138】
本実施形態に係る呈味増強用組成物の製造方法は、前記加熱処理したクミンをそのまま前記呈味増強用組成物としてもよいし、前記加熱処理したクミンを他の成分と組み合わせて前記呈味増強用組成物を調製することを更に含んでもよい。前記他の成分の好ましい例は、本発明の第2態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物に関して説明した通りである。
【0139】
本実施形態に係る呈味増強用組成物の製造方法は、得られた呈味増強用組成物を、粉末、顆粒、ペースト、液体等の形態に加工することを含んでもよい。
【0140】
<呈味を増強する方法>
本発明の第2態様の第3の実施形態は、
本発明の第2態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物を、食品に配合することを含む、
食品の呈味を増強する方法、
に関する。
【0141】
本実施形態に係る方法は、食品の呈味を増強することができるため、上述のような1以上の呈味成分を通常よりも低減した量で含む食品(例えば食塩を通常の量よりも低減した減塩食品)における呈味の増強に好適に使用することができる。
【0142】
本発明の第2態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物の配合量は特に限定されず食品の形態に応じて適宜調整することができる。例えば塩味増強の目的では、食品の食塩相当量100gに対して、加熱処理したクミンが、例えば0.5g以上、好ましくは1g以上、好ましくは3g以上、例えば0.5g以上、50g以下、好ましくは1g以上、20g以下、より好ましくは3g以上、10g以下となるように本発明の第2態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物を配合することができる。
【0143】
前記食品の種類は限定されないが、例えば、カレーソース、シチューソース、畜肉食品、総菜類、菓子類等の食品が例示できる。前記食品は、上述のような1以上の呈味成分を通常よりも低減した量で含む食品であってもよい。前記食品は上述のような1以上の呈味成分、例えば食塩を含有する食品であってもよい。
【0144】
<一以上の更なる実施形態>
本発明の第2態様の、一以上の更なる実施形態は、
食品の呈味を増強するための、加熱処理したクミンの使用、
加熱処理したクミンを、食品に配合することを含む、食品の呈味を増強する方法、
食品の呈味を増強する用途のための、加熱処理したクミン、或いは、
食品の呈味を増強する用途のための添加物の製造における、加熱処理したクミンの使用、
に関する。
本実施形態において、前記加熱処理したクミンは、好ましくは、本発明の第2態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物に含まれる加熱処理したクミンに関して説明した特徴を備える。
本実施形態において、前記加熱処理したクミンは、好ましくは、本発明の第2態様の第2の実施形態に係る呈味増強用組成物の製造方法において説明した、加熱処理したクミンを製造する方法により製造することができる。
本実施形態において、前記食品は、好ましくは、本発明の第2態様の第3の実施形態の方法に関して説明した特徴を備える。
【0145】
<3.本発明の第3態様>
この章では、本発明の第3態様の好ましい実施形態について説明する。
【0146】
<呈味増強用組成物>
本発明の第3態様の第1の実施形態は、
加熱処理したアサフォエティダを含有する呈味増強用組成物、
に関する。
【0147】
本実施形態に係る呈味増強用組成物は、食品に配合することにより、前記食品の呈味を増強することができる。例えば、本実施形態に係る呈味増強用組成物を配合した、上述のような1以上の呈味成分を通常よりも低減した量で含む食品(例えば食塩を通常の量よりも低減した量で含む減塩食品)は、それを配合していない食品に比べて、1以上の呈味成分を通常の量で含む食品に近い呈味を有することができ、より好ましくは、1以上の呈味成分を通常の量で含む食品と同等の呈味を有することができる。本実施形態に係る呈味増強用組成物は、より好ましくは、塩味増強用組成物である。
【0148】
本明細書において、アサフォエティダとは、香辛料として利用される、セリ科植物のアサフォエティダ(Ferula assa-foetida)から採取される樹脂を乾燥させたものである。香辛料として利用されるアサフォエティダは、アサフォエティダ樹脂に加えて、アラビアガム、米粉等の添加物を更に含む場合がある。例えばアサフォエティダ樹脂と添加剤とを含む粉末状のアサフォエティダが香辛料として市販されている。本明細書において、アサフォエティダとは、特に明示しない限り、香辛料として利用される、前記添加物を含んでいてもよいアサフォエティダを指す。以下に説明する各実施形態に使用するアサフォエティダの質量は、アサフォエティダ樹脂の含量が12質量%であるとして換算した場合の質量で表す。例えば「加熱処理したアサフォエティダ200mg」とは、使用したアサフォエティダのアサフォエティダ樹脂含量が6質量%である場合には、アサフォエティダ樹脂含量を12質量%として換算した質量としては400mgとなる。加熱処理したアサフォエティダは、アサフォエティダを加熱したものである。
【0149】
前記加熱処理したアサフォエティダを得るための加熱処理は、アサフォエティダを、油脂を添加することなく加熱することを含む加熱処理(以下「第1加熱処理」と称する場合がある)、又は、アサフォエティダを油脂とともに加熱することを含む加熱処理(以下「第2加熱処理」と称する場合がある)であることが好ましい。
【0150】
前記第1加熱処理の好ましい態様について以下に説明する。
【0151】
前記第1加熱処理には、アサフォエティダのみを供してもよいし、アサフォエティダと水との混合物を供してもよい。
【0152】
前記第1加熱処理は、加熱価が好ましくは15以上、より好ましくは50以上、更に好ましくは100以上となるように、更に、加熱価が好ましくは15以上、1000以下、より好ましくは50以上、500以下、最も好ましくは100以上、300以下となるように、温度及び時間を設定することが好ましい。加熱価の好ましい範囲としては例えば50以上300以下が挙げられる。これらの条件で前記第1加熱処理を行ったアサフォエティダは、呈味を増強する作用が特に高いため好ましい。加熱価が前記範囲となる加熱条件は、好ましくは、後述する温度及び時間での加熱を含むことができる。
【0153】
ここで加熱価及びCV値の定義は、本発明の第1態様の第1の実施形態に関して記載した通りである。
【0154】
前記第1加熱処理では、例えば110℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上、特に好ましくは128℃以上であり、例えば110℃以上、180℃以下、好ましくは120℃以上、160℃以下、より好ましくは125℃以上、150℃以下、特に好ましくは128℃以上、150℃以下の温度で加熱を行うことができる。前記第1加熱処理は、前記温度範囲での加熱時間が例えば20分間以上、好ましくは30分間以上、例えば20分間以上、120分間以下、好ましくは30分間以上、90分間以下、より好ましくは30分間以上、60分間以下の時間となるように行うことができる。これらの条件での前記第1加熱処理で得られた加熱処理したアサフォエティダは、呈味を増強する作用が特に高いため好ましい。
【0155】
前記第1加熱処理は、ゲージ圧が好ましくは0.05MPa以上、より好ましくは0.2MPa以上の圧力条件で行うことができる。加熱時の圧力の上限は特に限定されないが、装置の面から考えるとゲージ圧0.6MPa以下が好ましい。
【0156】
前記第1加熱処理には、加圧密閉加熱、過熱水蒸気加熱、オーブン加熱等の各種手段を用いることができるが、好ましくは加圧密閉加熱を用いる。加圧密閉加熱に使用する加熱装置としては、加圧密閉釜、レトルト殺菌機等が例示できる。加圧密閉加熱以外の他の加熱を利用する場合は、オーブン、平釜焙煎機、縦型加熱混合機、マイクロ波加熱装置、過熱水蒸気渦流混合機、過熱水蒸気殺菌機等を適宜用いることができる。
【0157】
次に前記第2加熱処理の好ましい態様について以下に説明する。
【0158】
前記第2加熱処理では、アサフォエティダを油脂とともに加熱する。前記第2加熱処理により得られた加熱処理したアサフォエティダは、呈味を増強する作用が特に強く好ましい。前記第2加熱処理における油脂の使用量は特に限定されないが、例えば、アサフォエティダ100質量部に対し、例えば10質量部以上、500質量部以下、好ましくは50質量部以上、200質量部以下の油脂を使用できる。前記油脂としては、食品として許容される植物、動物等に由来する食用油脂であれば特に限定されない。油脂は、脂肪酸のエステル交換、水素添加等の技術により融点が調節されたものであってもよい。
【0159】
前記第2加熱処理は、加熱価が好ましくは5以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上となるように温度及び時間を設定することが好ましい。前記第2加熱処理における加熱価の上限としては例えば100以下、好ましくは50以下、より好ましくは40以下が挙げられる。すなわち前記加熱価は好ましくは5以上、100以下、より好ましくは10以上、50以下、更に好ましくは20以上、40以下であることができる。これらの条件で前記第2加熱処理を行ったアサフォエティダは、呈味を増強する作用が特に高いため好ましい。加熱価が前記範囲となる加熱条件は、好ましくは、後述する温度及び時間での加熱を含むことができる。加熱価の定義は前記第1加熱処理に関して記載した通りである。
【0160】
前記第2加熱処理では、アサフォエティダと油脂との混合物を、例えば90℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、特に好ましくは125℃以上であり、例えば90℃以上、180℃以下、好ましくは100℃以上、160℃以下、より好ましくは110℃以上、150℃以下、更に好ましくは120℃以上、150℃以下、特に好ましくは125℃以上、150℃以下の温度で加熱することができる。前記第2加熱処理は、前記温度範囲での加熱時間が例えば2分間以上、好ましくは3分間以上、例えば3分間以上、10分間以下、好ましくは3分間以上、7分間以下の時間となるように行うことができる。これらの条件での前記第2加熱処理で得られた加熱処理したアサフォエティダは、呈味を増強する作用が特に高いため好ましい。
【0161】
前記第2加熱処理は開放系でも密閉系でも行うことができる。
【0162】
前記第2加熱処理は、過熱水蒸気を用いた加熱や、オーブンを用いた加熱により行うことができる。前記第2加熱処理に使用する加熱装置としては、オーブン、平釜焙煎機、縦型加熱混合機、マイクロ波加熱装置等が例示できる。
【0163】
続いて、前記加熱処理したアサフォエティダのより好ましい実施形態について説明する。
【0164】
前記加熱処理したアサフォエティダは、25℃で測定した水分活性が好ましくは0.70以下、より好ましくは0.60以下、特に好ましくは0.50以下である。
【0165】
前記加熱処理したアサフォエティダは、より好ましい実施形態において、環状(Gly-Thr)、環状(Gly-His)、環状(Ala-Asp)、環状(Val-Ser)、環状(Gly-Arg)、環状(Ala-His)、環状(Glu-Asp)、環状(Phe-Phe)、環状(Leu/Ile-Leu/Ile)、環状(Ala-Arg)、環状(Leu/Ile-Val)、環状(Phe-Pro)、環状(Phe-Leu/Ile)、環状(Pro-Pro)、環状(Glu-Phe)、環状(Arg-Leu/Ile)、環状(Pro-Leu/Ile)、環状(Pro-Glu)、環状(Glu-Leu/Ile)、環状(Ala-Pro)、環状(Pro-Val)、環状(Pro-His)、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、及び、スルフロール(4-メチル-5-チアゾールエタノール)から選択される1以上が、加熱前のアサフォエティダよりも増加している。本発明者らは、前記加熱処理したアサフォエティダに含まれる前記化合物の量が、呈味増強作用の強さと相関することを見出した。
【0166】
すなわち、前記加熱処理したアサフォエティダは、より好ましい実施形態において、前記加熱処理したアサフォエティダに47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩を添加し、下記方法による液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、L-リシン-13一塩酸塩に由来するピーク面積に対する比として、
(1)環状(Gly-Thr)に由来するピーク面積が0.028以上であり、より好ましくは0.028以上、0.40以下であり、
(2)環状(Gly-His)に由来するピーク面積が0.003以上であり、より好ましくは0.003以上、0.40以下であり、
(3)環状(Ala-Asp)に由来するピーク面積が0.022以上であり、より好ましくは0.022以上、0.30以下であり、
(4)環状(Val-Ser)に由来するピーク面積が0.040以上であり、より好ましくは0.040以上、1.0以下であり、
(5)環状(Gly-Arg)に由来するピーク面積が0.020以上であり、より好ましくは0.60以下であり、
(6)環状(Ala-His)に由来するピーク面積が0.005以上であり、より好ましくは0.020以上、0.15以下であり、
(7)環状(Glu-Asp)に由来するピーク面積が0.008以上であり、より好ましくは0.008以上、0.15以下であり、
(8)環状(Phe-Phe)に由来するピーク面積が0.050以上であり、より好ましくは0.050以上、1.0以下であり、
(9)環状(Leu/Ile-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.025以上であり、より好ましくは0.025以上、0.40以下であり、
(10)環状(Ala-Arg)に由来するピーク面積が0.025以上であり、より好ましくは0.025以上、0.50以下であり、
(11)環状(Leu/Ile-Val)に由来するピーク面積が0.020以上であり、より好ましくは0.020以上、0.25以下であり、
(12)環状(Phe-Pro)に由来するピーク面積が0.015以上であり、より好ましくは0.015以上、0.30以下であり、
(13)環状(Phe-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.040以上であり、より好ましくは0.040以上、0.55以下であり、
(14)環状(Pro-Pro)に由来するピーク面積が0.010以上であり、より好ましくは0.010以上、0.30以下であり、
(15)環状(Glu-Phe)に由来するピーク面積が0.050以上であり、より好ましくは0.050以上、2.0以下であり、
(16)環状(Arg-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.045以上であり、より好ましくは0.045以上、0.55以下であり、
(17)環状(Pro-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.080以上であり、より好ましくは0.080以上、1.10以下であり、
(18)環状(Pro-Glu)に由来するピーク面積が0.005以上であり、より好ましくは0.005以上、0.20以下であり、
(19)環状(Glu-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.015以上であり、より好ましくは0.015以上、0.20以下であり、
(20)環状(Ala-Pro)に由来するピーク面積が0.028以上であり、より好ましくは0.028以上、0.35以下であり、
(21)環状(Pro-Val)に由来するピーク面積が0.020以上であり、より好ましくは0.020以上、0.40以下であり、
(22)環状(Pro-His)に由来するピーク面積が0.040以上であり、より好ましくは0.040以上、0.80以下であり、
(23)スルフロール(4-メチル-5-チアゾールエタノール)に由来するピーク面積が0.25以上であり、より好ましくは0.25以上、3.5以下である、
のうち1以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上、特に好ましくは30以上、特に好ましくは40以上、最も好ましくは全てを満たす。
【0167】
ここでLC-MS/MSの測定方法は以下の通りであり、より好ましくは、実施例に記載のLC-MS/MSの測定方法である。
【0168】
前記加熱処理したアサフォエティダ200mg(アサフォエティダ樹脂含量を12質量%として換算した質量)と水5mLとを収容した10mL容試験管を、80℃の恒温水浴中で30分間加温して、水抽出物を調製する。前記試験管中の前記水抽出物にアセトニトリル5mL及び前記加熱処理したアサフォエティダ(アサフォエティダ樹脂含量を12質量%として換算した質量)に対して47μg/gとなる量のL-リシン-13一塩酸塩を添加し、撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収する。前記液体成分を、オクタデシル基を保持する固相抽出担体に接触させた後、アセトニトリルによる溶出液を回収し、前記溶出液から検体試料を作成する。前記検体試料をLC-MS/MSにより分析してクロマトグラムを得る。ここで、分析試料として用いる前記加熱処理したアサフォエティダは、粉砕物であることが好ましい。
【0169】
L-リシン-13一塩酸塩に由来するピーク面積及び前記(1)~(23)で記載の各化合物のピーク面積としては、それぞれ、実施例に記載のm/z値のプロダクトイオンの抽出イオンクロマトグラムのピーク面積が使用できる。
【0170】
前記加熱処理したアサフォエティダの、特に好ましい実施形態では、上記クロマトグラムにおいて、L-リシン-13一塩酸塩に由来するピーク面積に対する比として、
(1’)環状(Gly-Thr)に由来するピーク面積が0.040以上であり、より好ましくは0.040以上、0.40以下であり、
(2’)環状(Gly-His)に由来するピーク面積が0.004以上であり、より好ましくは0.004以上、0.40以下であり、
(3’)環状(Ala-Asp)に由来するピーク面積が0.030以上であり、より好ましくは0.030以上、0.30以下であり、
(4’)環状(Val-Ser)に由来するピーク面積が0.10以上であり、より好ましくは0.10以上、1.0以下であり、
(5’)環状(Gly-Arg)に由来するピーク面積が0.060以上であり、より好ましくは0.060以上、0.60以下であり、
(6’)環状(Ala-His)に由来するピーク面積が0.015以上であり、より好ましくは0.015以上、0.15以下であり、 (7’)環状(Glu-Asp)に由来するピーク面積が0.012以上であり、より好ましくは0.012以上、0.15以下であり、
(8’)環状(Phe-Phe)に由来するピーク面積が0.10以上であり、より好ましくは0.10以上、1.0以下であり、
(9’)環状(Leu/Ile-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.040以上であり、より好ましくは0.040以上、0.40以下であり、
(10’)環状(Ala-Arg)に由来するピーク面積が0.050以上であり、より好ましくは0.050以上、0.50以下であり、
(11’)環状(Leu/Ile-Val)に由来するピーク面積が0.025以上であり、より好ましくは0.025以上、0.25以下であり、
(12’)環状(Phe-Pro)に由来するピーク面積が0.030以上であり、より好ましくは0.030以上、0.30以下であり、
(13’)環状(Phe-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.055以上であり、より好ましくは0.055以上、0.55以下であり、
(14’)環状(Pro-Pro)に由来するピーク面積が0.030以上であり、より好ましくは0.030以上、0.30以下であり、
(15’)環状(Glu-Phe)に由来するピーク面積が0.20以上であり、より好ましくは0.20以上、2.0以下であり
(16’)環状(Arg-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.055以上であり、より好ましくは0.055以上、0.55以下であり、
(17’)環状(Pro-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.100以上であり、より好ましくは0.100以上、1.10以下であり、
(18’)環状(Pro-Glu)に由来するピーク面積が0.020以上であり、より好ましくは0.020以上、0.20以下であり、
(19’)環状(Glu-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.020以上であり、より好ましくは0.020以上、0.20以下であり、
(20’)環状(Ala-Pro)に由来するピーク面積が0.035以上であり、より好ましくは0.035以上、0.35以下であり、
(21’)環状(Pro-Val)に由来するピーク面積が0.040以上であり、より好ましくは0.040以上、0.40以下であり、
(22’)環状(Pro-His)に由来するピーク面積が0.080以上であり、より好ましくは0.080以上、0.80以下であり、
(23’)スルフロール(4-メチル-5-チアゾールエタノール)に由来するピーク面積が0.35以上であり、より好ましくは0.35以上、3.5以下である、
のうち1以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上、最も好ましくは全てを満たす。
【0171】
また、前記加熱処理したアサフォエティダは、より好ましい実施形態において、環状(Val-Ser)、環状(Pro-Pro)及び環状(Pro-Glu)からなる群から選択される1以上、より好ましくは前記群の全て、を含有することを特徴とする。これらの環状ジペプチドは、未加熱のアサフォエティダでは検出されない、呈味増強作用を有する加熱処理したアサフォエティダに特徴的な成分である。
【0172】
前記加熱処理したアサフォエティダは、より好ましい実施形態において、前記加熱処理したアサフォエティダに99μg/gのリビトールを添加し、下記方法による液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、リビトールに由来するピーク面積に対する比として、
(24)酒石酸に由来するピーク面積が0.12以上であり、より好ましくは0.12以上、1.5以下であり、
(25)リンゴ酸に由来するピーク面積が1.10以上であり、より好ましくは1.10以上、13.0以下であり、
(26)クエン酸に由来するピーク面積が1.00以上であり、より好ましくは1.00以上、20.0以下である、
のうち1以上、より好ましくは2以上、最も好ましくは全てを満たす。
【0173】
ここでLC-MS/MSの測定方法は以下の通りであり、より好ましくは、実施例に記載のLC-MS/MSの測定方法である。
【0174】
前記加熱処理したアサフォエティダ200mg(アサフォエティダ樹脂含量を12質量%として換算した質量)と水5mLとを収容した10mL容試験管を、80℃の恒温水浴中で30分間加温して、水抽出物を調製する。前記試験管中の前記水抽出物にアセトニトリル5mL及び前記加熱処理したアサフォエティダ(アサフォエティダ樹脂含量を12質量%として換算した質量)に対して99μg/gとなる量のリビトールを添加し、撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収する。前記液体成分を、オクタデシル基を保持する固相抽出担体に接触させた後、アセトニトリルによる溶出液を回収し、前記溶出液から検体試料を作成する。前記検体試料をLC-MS/MSにより分析してクロマトグラムを得る。ここで、分析試料として用いる前記加熱処理したアサフォエティダは、粉砕物であることが好ましい。
【0175】
リビトールに由来するピーク面積、酒石酸に由来するピーク面積、リンゴ酸に由来するピーク面積及びクエン酸に由来するピーク面積としては、それぞれ、実施例に記載のm/z値のプロダクトイオンの抽出イオンクロマトグラムのピーク面積が使用できる。
【0176】
前記加熱処理したアサフォエティダの、特に好ましい実施形態では、上記クロマトグラムにおいて、リビトールに由来するピーク面積に対して、
(24’)酒石酸に由来するピーク面積が0.15以上であり、より好ましくは0.15以上、1.5以下であり、
(25’)リンゴ酸に由来するピーク面積が1.30以上であり、より好ましくは1.30以上、13.0以下であり、
(26’)クエン酸に由来するピーク面積が2.00以上であり、より好ましくは2.00以上、20.0以下である、
のうち1以上、より好ましくは2以上、最も好ましくは全てを満たす。
【0177】
本実施形態に係る呈味増強用組成物中の加熱処理したアサフォエティダは、好ましくは前記添加剤を含んだ形態として粉末状であり、粒度は好ましくは1000μm以下である。ここで粒度はJISに規定される標準ふるいの目開きにより求めることができる。本実施形態に係る呈味増強用組成物中の加熱処理したアサフォエティダはまた、加熱処理したアサフォエティダと油脂との混合物の形態で提供されてもよい。前記混合物は、前記油脂の融点に応じて、常温で固体状であってもよいし、常温で液体状であってもよい。
【0178】
本実施形態に係る呈味増強用組成物は、加熱処理したアサフォエティダのみからなるものであってもよいし、加熱処理したアサフォエティダと他の成分とを含むものであってもよい。他の成分としては呈味増強作用を有する1以上の成分や、食品として許容される1以上の成分が例示できる。本実施形態に係る呈味増強用組成物は、加熱処理したアサフォエティダを、好ましくは30質量%以上100質量%以下、より好ましくは50質量%以上100質量%以下、更に好ましくは80質量%以上100質量%以下、最も好ましくは95質量%以上100質量%以下の割合で含有することができる。本実施形態に係る呈味増強用組成物は、粉末、顆粒、ペースト、液体等の形態であることができ、所望の形態とするために必要に応じて、賦形剤、担体等の、食品として許容される1以上の成分を含むことができる。
【0179】
<呈味増強用組成物の製造方法>
本発明の第3態様の第2の実施形態は、
本発明の第3態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物の製造方法であって、
アサフォエティダを、油脂を添加することなく加熱価が15以上となる条件で加熱して前記加熱処理したアサフォエティダを得ること、
を含む方法、
に関する。
【0180】
本発明の第3態様の第3の実施形態は、
本発明の第3態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物の製造方法であって、
アサフォエティダを油脂とともに加熱価が5以上となる条件で加熱して前記加熱処理したアサフォエティダを得ること、
を含む方法、
に関する。
【0181】
本発明の第3態様の第2の実施形態又は第3の実施形態によれば、本発明の第3態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物を製造することができる。
【0182】
本発明の第3態様の第2の実施形態において、アサフォエティダを、油脂を添加することなく加熱価が15以上となる条件で加熱して前記加熱処理したアサフォエティダを得る工程は、好ましくは、本発明の第3態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物の加熱処理したアサフォエティダを得るための前記第1加熱処理に関して記載した特徴を備える。
【0183】
本発明の第3態様の第3の実施形態において、アサフォエティダを油脂とともに加熱価が5以上となる条件で加熱して前記加熱処理したアサフォエティダを得る工程は、好ましくは、本発明の第3態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物の加熱処理したアサフォエティダを得るための前記第2加熱処理に関して記載した特徴を備える。
【0184】
本発明の第3態様の第2の実施形態又は第3の実施形態に係る呈味増強用組成物の製造方法では、前記加熱処理したアサフォエティダを粉砕することを更に含むことができる。粉砕後の前記加熱処理したアサフォエティダの粒度の好ましい範囲は、本発明の第3態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物の前記加熱処理したアサフォエティダに関して記載した通りである。
【0185】
本発明の第3態様の第2の実施形態又は第3の実施形態に係る呈味増強用組成物の製造方法は、前記加熱処理したアサフォエティダをそのまま前記呈味増強用組成物としてもよいし、前記加熱処理したアサフォエティダを他の成分と組み合わせて前記呈味増強用組成物を調製することを更に含んでもよい。前記他の成分の好ましい例は、本発明の第3態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物に関して説明した通りである。
【0186】
本実施形態に係る呈味増強用組成物の製造方法は、得られた呈味増強用組成物を、粉末、顆粒、ペースト、液体等の形態に加工することを含んでもよい。
【0187】
<呈味を増強する方法>
本発明の第3態様の第4の実施形態は、
本発明の第3態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物を、食品に配合することを含む、
食品の呈味を増強する方法、
に関する。
【0188】
本実施形態に係る方法は、食品の呈味を増強することができるため、上述のような1以上の呈味成分を通常よりも低減した量で含む食品(例えば食品を通常の量よりも低減した減塩食品)における呈味の増強に好適に使用することができる。
【0189】
本発明の第3態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物の配合量は特に限定されず食品の形態に応じて適宜調整することができる。例えば塩味増強の目的では、食品の食塩相当量10,000gに対して、加熱処理したアサフォエティダが例えば0.5g以上、好ましくは1g以上、より好ましくは3g以上、例えば0.5g以上、50g以下、好ましくは1g以上、20g以下、より好ましくは3g以上、10g以下となるように本発明の第3態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物を配合することができる。
【0190】
食品の種類は限定されないが、例えば、カレーソース、シチューソース、畜肉食品、総菜類、菓子類等の食品が例示できる。前記食品は、上述のような1以上の呈味成分を通常よりも低減した量で含む食品であってもよい。前記食品は1以上の呈味成分、例えば食塩を含有する食品であってもよい。
【0191】
<一以上の更なる実施形態>
本発明の第3態様の、一以上の更なる実施形態は、
食品の呈味を増強するための、加熱処理したアサフォエティダの使用、
加熱処理したアサフォエティダを、食品に配合することを含む、食品の呈味を増強する方法、
食品の呈味を増強する用途のための、加熱処理したアサフォエティダ、或いは、
食品の呈味を増強する用途のための添加物の製造における、加熱処理したアサフォエティダの使用、
に関する。
本実施形態において、前記加熱処理したアサフォエティダは、好ましくは、本発明の第3態様の第1の実施形態に係る呈味増強用組成物に含まれる加熱処理したアサフォエティダに関して説明した特徴を備える。
本実施形態において、前記加熱処理したアサフォエティダは、好ましくは、本発明の第3態様の第2の実施形態に係る呈味増強用組成物の製造方法において説明した、加熱処理したアサフォエティダを製造する方法により製造することができる。
本実施形態において、前記食品は、好ましくは、本発明の第3態様の第3の実施形態の方法に関して説明した特徴を備える。
【0192】
<4.本発明の第4態様>
この章では、本発明の第4態様の好ましい実施形態について説明する。
<加熱処理したマスタードシード>
本発明の第4態様の第1の実施形態は、
加熱処理したマスタードシードであって、
前記加熱処理したマスタードシード(前記加熱処理したマスタードシードが、油脂とともに加熱処理したマスタードシードである場合は、油脂を除いたマスタードシードとして換算した質量を指す)に47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩を添加し、下記方法による液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、L-リシン-13一塩酸塩に由来するピーク面積に対する比として、
(1)環状(Glu-His)に由来するピーク面積が0.20以上であり、より好ましくは0.20以上、10.0以下、さらに好ましくは0.20以上、3.0以下であり、
(2)環状(Gly-Arg)に由来するピーク面積が0.29以上であり、より好ましくは0.29以上、6.0以下であり、さらに好ましくは0.29以上、2.0以下であり、
(3)環状(Glu-Gly)に由来するピーク面積が0.15以上であり、より好ましくは0.15以上、6.0以下であり、さらに好ましくは0.15以上、2.0以下であり、
(4)環状(Ala-His)に由来するピーク面積が0.12以上であり、より好ましくは0.12以上、3.0以下であり、さらに好ましくは0.12以上、1.0以下であり、
(5)環状(Ala-Arg)に由来するピーク面積が0.20以上であり、より好ましくは0.20以上、5.0以下であり、さらに好ましくは0.20以上、1.5以下であり、
(6)環状(Glu-Asp)に由来するピーク面積が0.13以上であり、より好ましくは0.13以上、5.0以下であり、さらに好ましくは0.13以上、1.5以下であり、
(7)環状(Leu/Ile-Asp)に由来するピーク面積が0.035以上であり、より好ましくは0.035以上、1.0以下であり、さらに好ましくは0.035以上0.30以下であり、
(8)環状(Thr-Pro)に由来するピーク面積が0.50以上であり、より好ましくは0.50以上12.0以下であり、さらに好ましくは0.50以上、4.0以下であり、
(9)環状(Pro-His)に由来するピーク面積が0.09以上であり、より好ましくは0.09以上、3.0以下であり、さらに好ましくは0.09以上、1.0以下であり、
(10)環状(Pro-Pro)に由来するピーク面積が0.50以上であり、より好ましくは0.50以上、13.0以下であり、さらに好ましくは0.50以上、4.0以下であり、
(11)環状(Glu-Tyr)に由来するピーク面積が0.070以上であり、より好ましくは0.070以上、4.5以下であり、さらに好ましくは0.070以上、1.5以下であり、
(12)環状(Arg-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.020以上であり、より好ましくは0.020以上、3.6以下であり、さらに好ましくは0.020以上、1.2以下であり、
(13)環状(Ala-Pro)に由来するピーク面積が0.70以上であり、より好ましくは0.70以上、15.0以下であり、さらに好ましくは0.70以上、4.0以下であり、
(14)環状(Pro-Val)に由来するピーク面積が0.65以上であり、より好ましくは0.65以上、25.0以下であり、さらに好ましくは0.65以上、8.0以下であり、
(15)環状(Phe-Ala)に由来するピーク面積が0.015以上、好ましくは0.060以上であり、より好ましくは0.015以上、1.7以下であり、さらに好ましくは0.060以上、0.5以下であり、
(16)環状(Phe-Pro)に由来するピーク面積が0.070以上であり、より好ましくは0.070以上、2.4以下であり、さらに好ましくは0.070以上、0.8以下であり、
(17)環状(Phe-Tyr)に由来するピーク面積が0.18以上であり、より好ましくは0.18以上、3.0以下であり、さらに好ましくは0.18以上、0.9以下であり、
(18)環状(Tyr-His)に由来するピーク面積が0.02以上であり、より好ましくは0.02以上、0.60以下であり、さらに好ましくは0.02以上、0.15以下であり、
(19)環状(Leu/Ile-His)に由来するピーク面積が0.05以上であり、より好ましくは0.05以上、0.6以下であり、さらに好ましくは0.05以上、0.2以下であり、
(20)環状(Pro-Met)に由来するピーク面積が0.32以上であり、より好ましくは0.32以上、7.5以下であり、さらに好ましくは0.32以上、2.5以下であり、
(21)環状(Val-Glu)に由来するピーク面積が0.10以上であり、より好ましくは0.10以上、9.0以下であり、さらに好ましくは0.10以上、3.0以下である、
のうち1以上、より好ましくは5以上、より好ましくは10以上、より好ましくは15以上、より好ましくは20以上、最も好ましくは全て、を満たす、前記加熱処理したマスタードシード、
に関する。
【0193】
本発明者らは、前記加熱処理したマスタードシードに含まれる前記環状ジペプチドの量が、甘み及び香ばしさ、並びに、呈味の増強作用の強さと関係することを見出した。本実施形態に係る加熱処理したマスタードシードは、甘み及び香ばしさが高められており、食品に配合することで呈味を増強することができる。前記呈味は例えばコク味である。
【0194】
本明細書において、マスタードシードとは、ブラウンマスタード(Brassica juncea)、ブラックマスタード(Brassica nigra)又はシロガラシ(Sinapis alba)の種子であり、好ましくは、ブラウンマスタードの種子である。本実施形態に係る加熱処理したマスタードシードは、ホールの形体のマスタードシードを加熱処理することにより製造することができ、加熱処理後に適宜粉砕したものであってもよい。
【0195】
本実施形態において、LC-MS/MSの測定方法は以下の通りであり、より好ましくは、実施例に記載のLC-MS/MSの測定方法である。なお本明細書において、温度を明示していない操作は、室温、具体的には23℃、にて行うことができる。
(LC-MS/MSの測定方法)
加熱処理したマスタードシード200mg(前記加熱処理したマスタードシードが、油脂とともに加熱処理したマスタードシードである場合は、油脂を除いたマスタードシードとして換算した質量を指す)と水5mLとを収容した10mL容試験管を、80℃の恒温水浴中で30分間加温して、水抽出物を調製する。前記試験管中の前記水抽出物にアセトニトリル5mL及び前記加熱処理したマスタードシード(前記加熱処理したマスタードシードが、油脂とともに加熱処理したマスタードシードである場合は、油脂を除いたマスタードシードとして換算した質量を指す)に対して47μg/gとなる量のL-リシン-13一塩酸塩を添加し、撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収して、LC-MS/MS検体試料を作成する。前記LC-MS/MS検体試料をLC-MS/MSにより分析してクロマトグラムを得る。ここで、分析試料として用いる前記加熱処理したマスタードシードは、粉砕物であることが好ましい。
【0196】
L-リシン-13一塩酸塩に由来するピーク面積及び前記(1)~(21)で記載の各環状ジペプチドのピーク面積としては、それぞれ、実施例に記載のm/z値のプロダクトイオンの抽出イオンクロマトグラムのピーク面積が使用できる。
【0197】
前記加熱処理したマスタードシードの、特に好ましい実施形態では、上記クロマトグラムにおいて、L-リシン-13一塩酸塩に由来するピーク面積に対する比として、
(1’)環状(Glu-His)に由来するピーク面積が0.30以上であり、より好ましくは0.30以上、10.0以下、さらに好ましくは0.30以上、3.0以下であり、
(2’)環状(Gly-Arg)に由来するピーク面積が0.30以上であり、より好ましくは0.30以上、6.0以下であり、さらに好ましくは0.30以上、2.0以下であり、
(3’)環状(Glu-Gly)に由来するピーク面積が0.30以上であり、より好ましくは0.15以上、6.0以下であり、さらに好ましくは0.15以上、2.0以下であり、
(4’)環状(Ala-His)に由来するピーク面積が0.20以上であり、より好ましくは0.20以上、3.0以下であり、さらに好ましくは0.20以上、1.0以下であり、
(5’)環状(Ala-Arg)に由来するピーク面積が0.30以上であり、より好ましくは0.30以上、5.0以下であり、さらに好ましくは0.30以上、1.5以下であり、
(6’)環状(Glu-Asp)に由来するピーク面積が0.20以上であり、より好ましくは0.20以上、5.0以下であり、さらに好ましくは0.20以上、1.5以下であり、
(7’)環状(Leu/Ile-Asp)に由来するピーク面積が0.060以上であり、より好ましくは0.060以上、1.0以下であり、さらに好ましくは0.060以上、0.30以下であり、
(8’)環状(Thr-Pro)に由来するピーク面積が0.60以上であり、より好ましくは0.60以上、12.0以下であり、さらに好ましくは0.60以上、4.0以下であり、
(9’)環状(Pro-His)に由来するピーク面積が0.60以上であり、より好ましくは0.60以上、3.0以下であり、さらに好ましくは0.60以上、1.0以下であり、
(10’)環状(Pro-Pro)に由来するピーク面積が0.80以上であり、より好ましくは0.80以上、13.0以下であり、さらに好ましくは0.80以上、4.0以下であり、
(11’)環状(Glu-Tyr)に由来するピーク面積が0.090以上であり、より好ましくは0.090以上、4.5以下であり、さらに好ましくは0.090以上、1.5以下であり、
(12’)環状(Arg-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.020以上であり、より好ましくは0.020以上、3.6以下であり、さらに好ましくは0.020以上、1.2以下であり
(13’)環状(Ala-Pro)に由来するピーク面積が0.80以上であり、より好ましくは0.80以上、15.0以下であり、さらに好ましくは0.80以上、4.0以下であり、
(14’)環状(Pro-Val)に由来するピーク面積が1.50以上であり、より好ましくは1.50以上、25.0以下であり、さらに好ましくは1.50以上、8.0以下であり、
(15’)環状(Phe-Ala)に由来するピーク面積が0.10以上であり、より好ましくは0.10以上、1.7以下であり、さらに好ましくは0.10以上、0.5以下であり、
(16’)環状(Phe-Pro)に由来するピーク面積が0.10以上であり、より好ましくは0.10以上、2.4以下であり、さらに好ましくは0.10以上、0.8以下であり、
(17’)環状(Phe-Tyr)に由来するピーク面積が0.19以上であり、より好ましくは0.19以上、3.0以下であり、さらに好ましくは0.19以上、0.9以下であり、
(18’)環状(Tyr-His)に由来するピーク面積が0.04以上であり、より好ましくは0.04以上、0.60以下であり、さらに好ましくは0.04以上、0.15以下であり、
(19’)環状(Leu/Ile-His)に由来するピーク面積が0.15以上であり、より好ましくは0.15以上、0.6以下であり、さらに好ましくは0.15以上、0.2以下であり、
(20’)環状(Pro-Met)に由来するピーク面積が0.40以上であり、より好ましくは0.40以上、7.5以下であり、さらに好ましくは0.40以上、2.5以下であり、
(21’)環状(Val-Glu)に由来するピーク面積が0.30以上であり、より好ましくは0.30以上、9.0以下であり、さらに好ましくは0.30以上、3.0以下である、
のうち1以上、より好ましくは5以上、より好ましくは10以上、より好ましくは15以上、より好ましくは20以上、最も好ましくは全て、を満たす。
【0198】
本実施形態に係る加熱処理したマスタードシードは、より好ましい実施形態において、前記加熱処理したマスタードシード(前記加熱処理したマスタードシードが、油脂とともに加熱処理したマスタードシードである場合は、油脂を除いたマスタードシードとして換算した質量を指す)に625μg/gの4-メチルチアゾールを添加し、下記方法によるガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、4-メチルチアゾールに由来するピーク面積に対する比として、
(22)アリルメチルジスルフィドに由来するピーク面積が0.006以上であり、より好ましくは0.006以上、0.20以下、さらに好ましくは0.006以上、0.60以下であり、
(23)2,5-ジメチルピラジンに由来するピーク面積が0.60以上であり、より好ましくは0.60以上、10.0以下、さらに好ましくは0.60以上、3.0以下であり、
(24)2-エチル-6-メチルピラジンに由来するピーク面積が0.15以上であり、より好ましくは0.15以上、3.0以下、さらに好ましくは0.15以上、1.0以下であり、
(25)2,3,5-トリメチルピラジンに由来するピーク面積が0.15以上であり、より好ましくは0.15以上、3.0以下、さらに好ましくは0.15以上、1.0以下であり、
(26)2,6-ジエチルピラジンに由来するピーク面積が0.01以上であり、より好ましくは0.01以上、0.30以下、さらに好ましくは0.01以上、0.10以下であり、
(27)2,5-ジエチルピラジンに由来するピーク面積が0.20以上であり、より好ましくは0.20以上、10.0以下、さらに好ましくは0.20以上、3.0以下であり、
(28)2,3-ジエチルピラジンに由来するピーク面積が0.03以上であり、より好ましくは0.03以上、0.70以下、さらに好ましくは0.03以上、0.25以下であり、
(29)アリルメチルトリスルフィドに由来するピーク面積が0.025以上であり、より好ましくは0.025以上、1.0以下、さらに好ましくは0.025以上、0.30以下であり、
(30)3-メチル-1,2,4-トリチアンに由来するピーク面積が0.70以上であり、より好ましくは0.70以上、15.0以下、さらに好ましくは0.70以上、4.5以下であり、
(31)2-ドデセナールに由来するピーク面積が0.10以上であり、より好ましくは0.10以上、2.0以下、さらに好ましくは0.10以上、0.6以下であり、
(32)スルフロールに由来するピーク面積が0.50以上であり、より好ましくは0.50以上、10.0以下、さらに好ましくは0.50以上、3.0以下である、
のうち1以上、より好ましくは5以上、より好ましくは10以上、最も好ましくは全て、を満たす。
【0199】
ここでGC-MSの測定方法は以下の通りであり、より好ましくは、実施例に記載のGC-MSの測定方法である。なお本明細書において、温度を明示していない操作は、室温、具体的には23℃、にて行うことができる。
【0200】
(GC-MSの測定方法)
前記加熱処理したマスタードシード15mg(前記加熱処理したマスタードシードが、油脂とともに加熱処理したマスタードシードである場合は、油脂を除いたマスタードシードとして換算した質量を指す)と、前記加熱処理したマスタードシード(前記加熱処理したマスタードシードが、油脂とともに加熱処理したマスタードシードである場合は、油脂を除いたマスタードシードとして換算した質量を指す)に対して625μg/gとなる量の4-メチルチアゾールと、アセトン5mLと、メタノール5mLとを収容した10mL容試験管を撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収し、前記液体成分0.1mLあたりアセトン1mLを加えて、GC-MS検体試料を作成する。前記GC-MS検体試料をGC-MSにより分析してクロマトグラムを得る。ここで、分析試料として用いる前記加熱処理したマスタードシードは、粉砕物であることが好ましい。
【0201】
4-メチルチアゾールに由来するピーク面積、及び前記(22)~(32)で特定する成分に由来するピーク面積としては、それぞれ、実施例に記載の各成分の精密質量に対応するイオンの抽出イオンクロマトグラムのピーク面積が使用できる。
【0202】
本発明者らは、前記加熱処理したマスタードシードに含まれる前記(22)~(32)で特定する各成分の量が、甘み、香ばしさ、及び、コク味を含む呈味の増強作用の強さと関係していることを見出した。前記(22)~(32)の1以上を満たす加熱処理したマスタードシードは、甘み及び香ばしさが特に高められており、食品に配合することでコク味等の呈味を増強する作用が特に強い。
【0203】
前記加熱処理したマスタードシードの、特に好ましい実施形態では、上記クロマトグラムにおいて、625μg/gの4-メチルチアゾールに由来するピーク面積に対する比として、
(22’)アリルメチルジスルフィドに由来するピーク面積が0.010以上であり、より好ましくは0.010以上、0.20以下、さらに好ましくは0.010以上、0.60以下であり、
(23’)2,5-ジメチルピラジンに由来するピーク面積が0.70以上であり、より好ましくは0.70以上、10.0以下、さらに好ましくは0.70以上、3.0以下であり、
(24’)2-エチル-6-メチルピラジンに由来するピーク面積が0.19以上であり、より好ましくは0.19以上、3.0以下、さらに好ましくは0.19以上、1.0以下であり、
(25’)2,3,5-トリメチルピラジンに由来するピーク面積が0.20以上であり、より好ましくは0.20以上、3.0以下、さらに好ましくは0.20以上、1.0以下であり、
(26’)2,6-ジエチルピラジンに由来するピーク面積が0.015以上であり、より好ましくは0.015以上、0.30以下、さらに好ましくは0.015以上、0.10以下であり、
(27’)2,5-ジエチルピラジンに由来するピーク面積が0.30以上であり、より好ましくは0.30以上、10.0以下、さらに好ましくは0.30以上、3.0以下であり、
(28’)2,3-ジエチルピラジンに由来するピーク面積が0.04以上であり、より好ましくは0.04以上、0.70以下、さらに好ましくは0.04以上、0.25以下であり、
(29’)アリルメチルトリスルフィドに由来するピーク面積が0.030以上であり、より好ましくは0.030以上、1.0以下、さらに好ましくは0.030以上、0.30以下であり、
(30’)3-メチル-1,2,4-トリチアンに由来するピーク面積が0.90以上であり、より好ましくは0.90以上、15.0以下、さらに好ましくは0.90以上、4.5以下であり、
(31’)2-ドデセナールに由来するピーク面積が0.12以上であり、より好ましくは0.12以上、2.0以下、さらに好ましくは0.12以上、0.6以下であり、
(32’)スルフロールに由来するピーク面積が0.60以上であり、より好ましくは0.60以上、10.0以下、さらに好ましくは0.60以上、3.0以下である、
のうち1以上、より好ましくは5以上、より好ましくは10以上、最も好ましくは全て、を満たす。
【0204】
本実施形態に係る加熱処理したマスタードシードは、25℃で測定した水分活性が好ましくは0.50以下、より好ましくは0.20以下であり、下限は特に限定されないが例えば0.02以上である。
【0205】
本実施形態に係る加熱処理したマスタードシードはホール種子の形態で提供されてもよいし、粉末の形態で提供されてもよい。粉末の形態とする場合、粒度は特に限定されないが、例えば1000μm以下、好ましくは500μm以下であることができる。ここで粒度はJISに規定される標準ふるいの目開きにより求めることができる。
【0206】
本実施形態に係る加熱処理したマスタードシードは、他の成分とともに食品中に配合して、食品組成物とすることができる。他の成分は、食品として許容される1以上の成分であればよい。前記食品組成物は、本実施形態に係る加熱処理したマスタードシードを、好ましくは30質量%以上100質量%以下、より好ましくは50質量%以上100質量%以下、更に好ましくは80質量%以上100質量%以下、最も好ましくは95質量%以上100質量%以下の割合で含有することができる。前記食品組成物は、粉末、顆粒、ペースト、液体等の形態であることができ、所望の形態とするために必要に応じて、賦形剤、担体等の、食品として許容される1以上の成分を含むことができる。
【0207】
<加熱処理したマスタードシードの製造方法>
本発明の第4態様の第2の実施形態は、
加熱処理したマスタードシードを製造する方法であって、
マスタードシードを加熱価が200以上となる条件で、開放系において加熱処理することを含む方法、
に関する。
【0208】
本実施形態によれば、甘み及び香ばしさが高められた、食品に配合することでコク味等の呈味を増強することができるマスタードシードを製造することができる。本実施形態により製造される加熱処理したマスタードシードは、好ましくは、本発明の第4態様の第1の実施形態に係る加熱処理したマスタードシードである。
【0209】
本実施形態における、マスタードシードの加熱処理は、加熱価が200以上、より好ましくは600以上、更に好ましくは800以上、最も好ましくは950以上となるように加熱温度及び時間を設定する。更に、加熱価が好ましくは200以上、10000以下、より好ましくは600以上、6000以下、更に好ましくは800以上、6000以下、最も好ましくは950以上、6000以下となるように、温度及び時間を設定することが好ましい。加熱価が前記範囲となる条件で、開放系において加熱処理したマスタードシードは、加熱価が200未満となる条件で加熱処理したマスタードシードと比較して、甘み及び香ばしさが顕著に高められており、食品に配合することでコク味等の呈味を増強することができる。加熱価が前記範囲となる加熱条件は、好ましくは、後述する温度及び時間での加熱を含むことができる。
【0210】
ここで加熱価及びCV値の定義は、本発明の第1態様の第1の実施形態に関して記載した通りである。
【0211】
本実施形態における加熱処理において、マスタードシードの温度(品温)の最高到達温度が、例えば130℃以上、好ましくは140℃以上、より好ましくは160℃以上であり、例えば130℃以上、200℃以下、好ましくは140℃以上、200℃以下、より好ましくは160℃以上、200℃以下であることができる。本実施形態において、上記の温度範囲での加熱時間は、加熱価が所定の範囲となるように適宜調節することができ、例えば3分間以上、30分間以下の時間の範囲内とすることができる。
【0212】
本実施形態において加熱処理に供するマスタードシードは、ホールの形体のマスタードシードであることが好ましい。
【0213】
本実施形態におけるマスタードシードの加熱処理は、開放系において行う。ここで開放系における加熱処理とは、密閉されておらず、加熱処理時に水分や香気成分を含む揮発性成分が周囲の雰囲気中に揮発できる環境での加熱処理を指す。マスタードシードを油脂中で加熱する処理(油中焙煎)は、マスタードシードからの水分や揮発性成分の揮発が油脂により妨げられるため、開放系における加熱処理には該当しない。本発明者らは、加熱価200以上となる条件で、開放系において加熱処理したマスタードシードは、密閉容器中で加熱処理したマスタードシード又は油中焙煎したマスタードシードと比較して、甘み及び香ばしさが優れており、食品に配合することでコク味等の呈味を増強する作用が特に強いことを見出した。本実施形態における開放系での加熱処理に用いることができる加熱処理装置としては、平釜、回転式円筒釜、鍋等の開放式容器を備える焙煎機や、庫内が密閉されていないオーブン、熱風焙煎機等が例示できる。このような開放系における加熱処理は「焙煎」と称することができる。開放系における加熱処理は、非加圧条件で行うことができる。
【0214】
本実施形態におけるマスタードシードを、開放系において加熱処理する工程は、より好ましくは、マスタードシードに、油脂、水等の液体成分を混合せずに加熱処理する乾式の加熱処理工程であり、更に好ましくはマスタードシードのみを加熱処理する工程である。
【0215】
本実施形態に係る加熱処理したマスタードシードを製造する方法は、前記加熱処理したマスタードシードを粉砕することを更に含むことができる。粉砕後の前記加熱処理したマスタードシードの粒度の好ましい範囲は、本発明の第4態様の第1の実施形態に係る加熱処理したマスタードシードに関して記載した通りである。
【0216】
<呈味増強用組成物>
本発明の第4態様の第3の実施形態は、
加熱処理したマスタードシードを含有する、呈味増強用組成物、
に関する。
【0217】
本発明者らは、加熱処理したマスタードシードは、未加熱のマスタードシードと比較して甘み及び香ばしさが高められており、食品のコク味等の呈味を増強する作用が強いことを見出した。本実施形態に係る呈味増強用組成物は、より好ましくは、コク味増強用組成物である。
【0218】
上記の通り、本明細書において「コク味」とは、食品の喫食時に感じられる味の「厚み」、「ボディ感」と表現することもできる。
【0219】
本実施形態に係る呈味増強用組成物に含まれる加熱処理したマスタードシードは、好ましくは加熱価が100以上、より好ましくは150以上、特に好ましくは200以上となるように加熱処理したマスタードシードであり、より好ましくは、本発明の第4態様の第2の実施形態に係る方法により製造された加熱処理したマスタードシードである。ここで加熱価の定義及び加熱処理のより好ましい方法は、本発明の第4態様の第2の実施形態について説明した通りである。
【0220】
本実施形態に係る呈味増強用組成物に含まれる加熱処理したマスタードシードは、特に好ましくは、本発明の第4態様の第1の実施形態に係る加熱処理したマスタードシードである。
【0221】
<呈味を増強する方法>
本発明の第4態様の第4の実施形態は、
食品に、本発明の第4態様の第3の実施形態に係る呈味増強用組成物を配合することを含む、食品の呈味を増強する方法、
に関する。
【0222】
本実施形態に係る方法は、食品のコク味等の呈味を増強することができるため、上述のような1以上の呈味成分の使用量を通常の量よりも低減した薄味の食品におけるコク味等の呈味の増強に好適に使用することができる。
【0223】
本実施形態に係る方法において、第3の実施形態に係る呈味増強用組成物の配合量は特に限定されず食品の形態に応じて適宜調整することができる。例えば、食品100gに対して、加熱処理したマスタードシードが例えば0.1g以上、好ましくは1g以上、より好ましくは2g以上、例えば0.1g以上、50g以下、好ましくは1g以上、20g以下、より好ましくは2g以上、10g以下となるように、第3の実施形態に係る呈味増強用組成物を配合することができる。
【0224】
呈味を増強する食品の種類は限定されないが、例えば、カレーソース、シチューソース、畜肉食品、総菜類、菓子類等の食品が例示できる。
【0225】
<一以上の更なる実施形態>
本発明の第4態様の、一以上の更なる実施形態は、
食品の呈味を増強するための、加熱処理したマスタードシードの使用、
加熱処理したマスタードシードを、食品に配合することを含む、食品の呈味を増強する方法、
食品の呈味を増強する用途のための、加熱処理したマスタードシード、或いは、
食品の呈味を増強する用途のための添加物の製造における、加熱処理したマスタードシードの使用、
に関する。
本実施形態において、前記加熱処理したマスタードシードは、好ましくは、本発明の第4態様の第1の実施形態に係る加熱処理したマスタードシード、或いは、本発明の第4態様の第3の実施形態に係る呈味増強用組成物に含まれる加熱処理したマスタードシードに関して説明した特徴を備える。
本実施形態において、前記加熱処理したマスタードシードは、好ましくは、本発明の第4態様の第2の実施形態に係る加熱処理したマスタードシードの製造方法により製造することができる。
本実施形態において、前記食品は、好ましくは、本発明の第4態様の第4の実施形態の方法に関して説明した特徴を備える。
【実施例0226】
下記の実験1は、本発明の第1態様に関する。
下記の実験2は、本発明の第2態様に関する。
下記の実験3は、本発明の第3態様に関する。
下記の実験4は、本発明の第4態様に関する。
【0227】
1.実験1:加熱処理したパプリカによる呈味増強作用
1.1.加熱処理したパプリカの調製
パプリカ粉末を下記表に示す条件で加熱処理したパプリカを調製した。加熱価は、既述の通り前記式(「基準温度」は110℃、「Z値」は30(℃))によるCV値を加熱時間(分)で積分した値である。加熱条件の欄に記載の温度及び時間は最高到達温度及びその保持時間であるのに対し、加熱価は、温度上昇時及び降下時の温度及び時間を含む温度の経時変化に基づき計算した。
【0228】
【表1】
【0229】
比較例201は加熱殺菌を含む加熱処理をしていないパプリカ粉末である。
【0230】
比較例202は、比較例201のパプリカ粉末を、下記の実施例207~210と同じ方法により、40℃で8日間加温して熟成させたものである。
【0231】
パプリカ粉末の所定の温度及び時間の「加水無」の加熱は以下の手順で行った。
100gのパプリカ粉末をアルミ箔パウチに充填し、密封した。密封したパウチを、所定の温度及び時間でレトルト式殺菌器にて加熱処理し、水冷した。レトルト式殺菌器での加熱処理は、ゲージ圧0.2MPaの加圧下で行った。
【0232】
パプリカ粉末の所定の温度及び時間の「加水有」の加熱は以下の手順で行った。
100gのパプリカ粉末と10gの水をアルミ箔パウチに充填し、密封した。密封したパウチを、所定の温度及び時間でレトルト式殺菌器にて加熱処理し、水冷した。レトルト式殺菌器での加熱処理は、ゲージ圧0.2MPaの加圧下で行った。
【0233】
実施例207~210のパプリカ粉末は、所定の条件で加熱したパプリカ粉末を、アルミ箔パウチに充填し、空気を含むように密封した。密封したパウチを40℃で8日間保存し熟成した。
【0234】
実施例211~216のパプリカ粉末は、以下の手順で油中加熱したものである。
100gのパーム油(融点45℃)を加熱し、80℃に達した時点で、100gのパプリカ粉末を混合し、得られた混合物を撹拌しながら、上記表に示す所定の温度まで加熱し、当該温度で所定の時間保持したのち、混合物を冷却した。冷却は、60℃程度まではパプリカ粉末が混合物中で分離しない程度に撹拌しながら行い、その後は冷蔵庫中で固化するまで行った。なお実施例211~213の「達温」とは、混合物が所定の温度に到達した時点で直ちに加熱を停止し冷却を開始したことを意味する。
【0235】
比較例201及び実施例201~210のパプリカ粉末の水分活性(Aw)を、それぞれ上記表に記載の温度条件で測定した。
【0236】
1.2.呈味増強効果
(1)通常のカレールウの作成
小麦粉20gと牛脂30gを鍋に入れ、120℃で加熱撹拌し、小麦粉ルウを作成した。この小麦粉ルウに塩10g、砂糖10g、コーンスターチ10g、カレーパウダー5g、その他の調味原料(野菜・果物エキス、酵母エキス、魚介エキス)15gを加え、105℃に加熱処理後、冷却固化させ、ブロック状の通常のカレールウを作成した。
【0237】
このカレールウの100gあたりの食塩相当量は10.6gであった。
【0238】
(2)減塩カレールウの作成
(1)の通常のカレールウから塩の量を7gにした以外は同じ手順で、減塩カレールウを作成した。
【0239】
この減塩カレールウの100gあたりの食塩相当量は7.7gであった。
【0240】
(3)官能評価時のスパイス添加量の設定
香辛料の特徴香がカレールウの風味に影響が出ない範囲、かつ呈味増強効果が感じられるスパイスの添加量の設定を行った。
【0241】
(2)の減塩カレールウを湯に溶解し、撹拌しながら沸騰させたものをベースソースとした。
【0242】
これに、実施例203の加熱処理したパプリカ粉末を終濃度が0.062質量%となるように添加し、官能評価を行った。前記濃度から、香辛料の特徴香がルウの風味に影響しない量まで落としていき、終濃度0.0464質量%をパプリカの添加量として設定した。
【0243】
(4)官能評価
(2)の減塩カレールウ44gを300gの熱湯に溶いたものを2つ準備した。
【0244】
そのうちの1つに(3)で設定した濃度となるように比較例又は実施例のパプリカ粉末を添加した。
【0245】
(1)の通常のカレールウ44gを300gの熱湯に溶いた。
【0246】
減塩カレールウの湯溶き品と通常のカレールウの湯溶き品を比較対象とし、呈味の強さを「ミドルの膨らみ」の観点から、以下の評価基準で3名の評価者(評価者1、2、3)が評価した。本実験での「呈味(ミドルの膨らみ)」は、食塩とカレールウの他の食材とが組み合わされて奏されるミドルの呈味であり、「塩味」の一態様である。このため本実験での「呈味(ミドルの膨らみ)」は「塩味(ミドルの膨らみ)」と表現することもできる。
【0247】
呈味(ミドルの膨らみ)の1点、2点、3点、4点、5点をそれぞれ以下のように定め、各サンプルの呈味を3名の評価者が0.1点刻みで評価し、平均点を求めた。
1点:減塩カレールウと同程度の呈味
2点:減塩カレールウよりもやや強い呈味
3点:減塩カレールウよりも強い呈味
4点:減塩カレールウよりもかなり強い呈味
5点:通常のカレールウと同程度の呈味の強さである
【0248】
評価点の平均が、比較例201及び202を上回り且つ2.0以下を「C」、2.1以上2.5以下を「B」、2.6以上3.0以下を「A」、3.1以上5.0以下を「AA」とした。
【0249】
評価結果を下記表に示す。実施例201~216の加熱処理したパプリカは、比較例201、202のパプリカと比較して、呈味の「ミドルの膨らみ」を増強する作用が高いことが確認された。
【0250】
【表2】
【0251】
1.3.成分分析
比較例201~202及び実施例201~216のパプリカ試料に含まれる成分を以下の手順で分析した。
【0252】
(1)LC-MS/MS検液調製
10mL容試験管にパプリカ試料200mg(前記パプリカ試料が、油脂とともに加熱処理したパプリカ試料である場合は、油脂を除いたパプリカ試料として換算した質量を指す)を採取し、超純水5mLを加えた。試験管を80℃に設定した恒温水槽で30分間加温後、室温になるまで静置した。試験管にアセトニトリル(富士フイルム和光純薬)5mLを添加し、更にPositiveモードの内標準としてL-リシン-13一塩酸塩(富士フイルム和光純薬)、及び、Negativeモードの内標準としてリビトール(富士フイルム和光純薬)を添加した。パプリカ試料(パプリカとして換算した質量)に対して、L-リシン-13一塩酸塩は47μg/g、リビトールは99μg/gとなるように添加した。試験管を高速振とう機(CM-1000、東京理化器械)で室温、1,800rpm、30分間撹拌し、遠心分離後に試験管内の溶液0.5mLを限外濾過フィルター(ナノセップ遠心ろ過デバイス3K、日本ポール)に移した。限外濾過フィルターを室温、15,000rpm×20分間遠心後、フィルター下のろ液に超純水0.5mL加え、10秒間ボルテックスした。0.2μmフィルターに負荷後の溶液をLC-MS/MS検体とした(n=2)。上記のパプリカ試料200mgとは、油脂を除いたパプリカ試料として換算した質量を意味し、パプリカのみ又はパプリカと水との混合物を加熱処理した実施例201~210の加熱処理パプリカ試料の質量としては200mgを意味し、パプリカと油脂との混合物を加熱処理した実施例211~216の加熱処理パプリカ試料の質量としては400mgを指す。
【0253】
(2)LC-MS/MS分析条件
LC-orbitrap-MSの分析条件を下記に示す。
分析装置:
LC:Vanquish Flex(Thermo Fisher Scientific)
MS:ID-X(Thermo Fisher Scientific)
分析カラム:Unison UK-C18,3μm[粒子径]、250mm[長さ]×4.6mm[内径](Imtakt)
LC条件:
カラム温度:40℃
注入量:5μL
モード:ESI positive、ESI Negative
流速:0.3mL/分
移動相:
A液 0.1%ギ酸水溶液(ギ酸:LCMSグレード、富士フイルム和光純薬)
B液 アセトニトリル(LCMSグレード、富士フイルム和光純薬)
移動相組成-分析時間70分間
【0254】
【表3】
【0255】
MS条件:
イオン源温度:230℃、コリジョンエネルギー:30eV
モニタリングイオン:下記の表に示す。
【0256】
(3)データ解析
LC-MS/MSクロマトグラムから、各成分のプリカーサーイオン>プロダクトイオンの精密質量(下記表)を抽出し、ピーク面積を得た。各検体中の成分は、プロダクトイオンのピーク面積比(=各成分のプロダクトイオンのピーク面積/内標準のプロダクトイオンのピーク面積)を算出して比較した。下記表においてA1、A2は、各環状ジペプチドを構成する2つのアミノ酸を示す。
【0257】
【表4】
【0258】
【表5】
【0259】
【表6】
【0260】
各試料から調製されたLC-MS/MS検体中で検出された環状ペプチド類、有機酸(酒石酸及びtrans-アコニット酸)、スルフロール及び酢酸スルフロールの内標準に対するピーク面積比を図1~13に示す。図中のバーは標準偏差を表す。
【0261】
図1~13に示す結果は、加熱処理した実施例201~216のパプリカが、加熱していない比較例201及び比較例202のパプリカと比較して、環状(Phe-Leu/Ile)、環状(Pro-Asn)、環状(Leu/Ile-Leu/Ile)、環状(Thr-Leu/Ile)、環状(Phe-Ser)、環状(Gly-His)、環状(Gly-Ser)、環状(Gly-Arg)、環状(Ala-His)、環状(Glu-His)、環状(Glu-Arg)、環状(Ala-Arg)、環状(Glu-Glu)、環状(Glu-Gly)、環状(Glu-Asp)、環状(Pro-His)、環状(Glu-Tyr)、環状(Leu/Ile-Asp)、環状(Pro-Asp)、環状(Val-Arg)、環状(Thr-Pro)、環状(hyPro-Pro)、環状(Gly-Val)、環状(Ala-Pro)、環状(Ala-Tyr)、環状(Arg-Leu/Ile)、環状(Leu/Ile-Ser)、環状(Ala-Val)、環状(Pro-Pro)、環状(Gly-Leu/Ile)、環状(Gly-Phe)、環状(Pro-Tyr)、環状(Phe-Asp)、環状(Pro-Val)、環状(Ala-Leu/Ile)、環状(Val-Tyr)、環状(Tyr-Ser)、環状(Phe-Ala)、環状(Val-Val)、環状(Pro-Leu/Ile)、環状(Phe-Tyr)、環状(Phe-Thr)、環状(Phe-Pro)、環状(Leu/Ile-Val)、環状(Val-Phe)、環状(Tyr-Asp)、環状(Ala-Asp)、環状(Val-Ser)、スルフロール、酢酸スルフロール、酒石酸及びtrans-アコニット酸を多く含んでいたことを示す。これらの成分の量は、呈味の増強作用の強さと相関する傾向が認められた。特に、環状(Gly-His)、環状(Gly-Ser)、環状(hyPro-Pro)、環状(Gly-Val)、環状(Tyr-Asp)及び環状(Ala-Asp)は、未加熱のパプリカには含まれない(検出限界以下)、加熱処理したパプリカに特異的な成分である。
【0262】
1.4.各種の食材に対する呈味増強効果
(1)試料の調製
下記表の「基本味」、「出汁原料」、「調味料」、「原料」の欄に記載の食材を、それぞれ、下記表に示す濃度(%(w/w))となるように水に加えて希釈し、食材希釈液を調製した。前記食材希釈液の各々に、実施例203の加熱処理パプリカ粉末を、終濃度が0.05%(w/w)となるように混合したものを試料として調製した。パプリカ粉末を添加していない前記食材希釈液を陰性対照試料とした。また、陽性対照試料として、各食材について、下記表に示す濃度の約1.2倍の濃度の食材希釈液を調製した。
【0263】
下記表の「食品」の欄に示すカレー等の食品を、市販の即席食品のキットを用いて調製した。各食品は、呈味増強の評価を容易にするために、前記キットで指定されている量の約1.2倍の量の水を用いて調製した。調製された食品の各々に、実施例203の加熱パプリカ粉末を、終濃度として0.03~0.07%(w/w)の範囲となるようにそれぞれ混合したものを試料として調製した。パプリカ粉末を添加していない前記各食品を陰性対照試料とした。また、陽性対照試料として、前記キットで指定されている量の水を用いて各食品を調製した。
【0264】
(2)官能評価
各食材から調製した試料の味の強さを、3名の評価者(評価者1、2、3)が食して評価した。
【0265】
1点、2点、3点、4点、5点をそれぞれ以下のように定めた。各試料の味の強さを3名の評価者が0.5点刻みで評価し、平均点を求めた。
1点:陰性対照試料と同程度の味
2点:陰性対照試料よりもやや強い呈味
3点:陰性対照試料よりも強い呈味
4点:陰性対照試料よりもかなり強い呈味
5点:陽性対照試料と同程度の呈味
【0266】
評価点の平均が、1.0点(陰性対照試料)を上回り且つ2.0以下を「C」、2.1以上2.5以下を「B」、2.6以上3.0以下を「A」、3.1以上5.0以下を「AA」とした。
【0267】
評価結果を下記表に示す。実施例203の加熱処理したパプリカ粉末は、さまざまな食材の味を増強する作用が高いことが確認された。
【0268】
【表7】
【0269】
2.実験2:加熱処理したクミンによる呈味増強作用
2.1.加熱処理したクミンの調製
クミンのホール種子(クミンシード)を下記表に示す条件で加熱処理した。加熱価は、既述の通り前記式(「基準温度」は110℃、「Z値」は30(℃))によるCV値を加熱時間(分)で積分した値である。加熱条件の欄に記載の温度及び時間は最高到達温度及びその保持時間であるのに対し、加熱価の計算には温度上昇時及び降下時の温度及び時間を含む温度の経時変化も考慮した。
【0270】
【表8】
【0271】
比較例301は加熱殺菌を含む加熱処理をしていないクミンシードである。
【0272】
クミンシードの所定の温度及び時間の「加水無」の加熱は以下の手順で行った。
100gのクミンシードをアルミ箔パウチに充填し、密封した。密封したパウチを、所定の温度及び時間でレトルト式殺菌器にて加熱処理し、水冷した。レトルト式殺菌器での加熱処理は、ゲージ圧0.2MPaの加圧下で行った。
【0273】
クミンシードの所定の温度及び時間の「加水有」の加熱は以下の手順で行った。
100gのクミンシードと10gの水をアルミ箔パウチに充填し、密封した。密封したパウチを、所定の温度及び時間でレトルト式殺菌器にて加熱処理し、水冷した。レトルト式殺菌器での加熱処理は、ゲージ圧0.2MPaの加圧下で行った。
【0274】
実施例307、308、313、314のクミンシードは、加熱後に、以下の手順で粉砕及び熟成を行った。
加熱後のクミンシードを、スタンプミルを用いて20gあたり3分間粉砕して粉末化した。アルミ箔パウチに充填し、空気を含むように密封した。密封したパウチを40℃で8日間保存し熟成した。
【0275】
実施例307、308、313、314以外の比較例、実施例のクミンも、同様の条件で粉砕して粉末化し、以下の水分活性測定、呈味増強作用の確認、及び、成分分析における試料として用いた。実施例307、308、313、314のクミンは熟成後そのまま試料として用いた。
【0276】
実施例315~319は、以下の手順でクミンシードの粉砕物を油中加熱したものである。
【0277】
未加熱のクミンシードを、スタンプミルを用いて75gあたり5分間粉砕して粉末化した。
【0278】
100gのパーム油(融点45℃)を加熱し、80℃に達した時点で、100gのクミンシード粉砕物を混合し、得られた混合物を撹拌しながら、上記表に示す所定の温度まで加熱し、当該温度で所定の時間保持したのち、混合物を冷却した。冷却は、60℃程度まではクミンシード粉砕物が混合物中で分離しない程度に撹拌しながら行い、その後は冷蔵庫中で固化するまで行った。なお実施例315の「達温」とは、混合物が所定の温度に到達した時点で直ちに加熱を停止し冷却を開始したことを意味する。
【0279】
比較例301及び実施例301~314のクミンの水分活性(Aw)を、それぞれ上記表に記載の温度条件で測定した。
【0280】
2.2.呈味増強効果
上記1.2.(1)、(2)に記載の手順で通常のカレールウ及び減塩カレールウを調製した。
【0281】
前記減塩カレールウを湯に溶解し、撹拌しながら沸騰させたものをベースソースとした。
【0282】
これに、実施例305の加熱処理したクミンを終濃度が0.062質量%となるように添加し、官能評価を行った。前記濃度から、香辛料の特徴香がルウの風味に影響しない量まで落としていき、終濃度0.0619質量%をクミンの添加量として設定した。
【0283】
前記減塩カレールウ44gを300gの熱湯に溶いたものを2つ準備した。
【0284】
そのうちの1つに上記で設定した濃度となるように、比較例又は実施例のクミンを添加した。
【0285】
前記通常のカレールウ44gを300gの熱湯に溶いた。
【0286】
減塩カレールウの湯溶き品と通常のカレールウの湯溶き品を比較対象とし、呈味の強さを「トップの塩角」と「ミドルの膨らみ」の観点から、以下の評価基準で3名の評価者(評価者1、2、3)が評価した。本実験での「呈味(トップの塩角)」及び「呈味(ミドルの膨らみ)」は、それぞれ、食塩とカレールウの他の食材とが組み合わされて奏されるトップ及びミドルの呈味であり、「塩味」の一態様である。このため本実験での「呈味(トップの塩角)」及び「呈味(ミドルの膨らみ)」は、それぞれ、「塩味(トップの塩角)」及び「塩味(ミドルの膨らみ)」と表現することもできる。
【0287】
呈味(「トップの塩角」及び「ミドルの膨らみ」)の1点、2点、3点、4点、5点をそれぞれ以下のように定め、各サンプルの呈味を3名の評価者が0.1点刻みで評価し、平均点を求めた。
1点:減塩カレールウと同程度の呈味
2点:減塩カレールウよりもやや強い呈味
3点:減塩カレールウよりも強い呈味
4点:減塩カレールウよりもかなり強い呈味
5点:通常のカレールウと同程度の呈味の強さである
【0288】
「トップの塩角」及び「ミドルの膨らみ」のどちらの評価項目についても、評価点の平均が、比較例301を上回り且つ2.0以下を「C」、2.1以上2.5以下を「B」、2.6以上3.0以下を「A」、3.1以上5.0以下を「AA」とした。
【0289】
評価結果を下記表に示す。実施例301~319の加熱処理したクミンは、比較例301のクミンと比較して、「トップの塩角」及び「ミドルの膨らみ」のどちらの観点からも呈味を増強する作用が高いことが確認された。
【0290】
【表9】
【0291】
【表10】
【0292】
2.3.成分分析
比較例301及び実施例301~319のクミン(クミン試料)に含まれる成分を以下の手順で分析した。
【0293】
2.3.1.LC-MS/MSによる成分分析(1)LC-MS/MS検液調製
10mL容試験管にクミン試料200mg(前記クミン試料が、油脂とともに加熱処理したクミン試料である場合は、油脂を除いたクミン試料として換算した質量を指す)を採取し、超純水5mLを加えた。試験管を80℃に設定した恒温水槽で30分間加温後、室温になるまで静置した。試験管にアセトニトリル(富士フイルム和光純薬)5mLを添加し、更にPositiveモードの内標準としてL-リシン-13一塩酸塩(富士フイルム和光純薬)、及び、Negativeモードの内標準としてリビトール(富士フイルム和光純薬)を添加した。クミン試料(前記クミン試料が、油脂とともに加熱処理したクミン試料である場合は、油脂を除いたクミン試料として換算した質量を指す)に対して、L-リシン-13一塩酸塩は47μg/g、リビトールは99μg/gとなるように添加した。試験管を高速振とう機(CM-1000、東京理化器械)で室温、1,800rpm、30分間撹拌し、遠心分離後に試験管内の溶液0.5mLを限外濾過フィルター(ナノセップ遠心ろ過デバイス3K、日本ポール)に移した。限外濾過フィルターを室温、15,000rpm×20分間遠心後、フィルター下のろ液に超純水0.5mL加え、10秒間ボルテックスした。0.2μmフィルターに負荷後の溶液をLC-MS/MS検体とした(n=2)。上記のクミン試料200mgとは、油脂を除いたクミン試料として換算した質量を意味し、クミンのみ又はクミンと水との混合物を加熱処理した実施例301~314の加熱処理クミン試料の質量としては200mgを意味し、クミンと油脂との混合物を加熱処理した実施例315~319の加熱処理クミン試料の質量としては400mgを指す。
【0294】
(2)LC-MS/MS分析条件
上記1.3.(2)に記載の条件でLC-MS/MS分析を行った。
【0295】
(3)データ解析
LC-MS/MSイオンクロマトグラムから、各成分のプリカーサーイオン>プロダクトイオンの精密質量(下記表)を抽出し、ピーク面積を得た。各検体中の成分は、プロダクトイオンのピーク面積比(=各成分のプロダクトイオンのピーク面積/内標準のプロダクトイオンのピーク面積)として算出して比較した。下記表においてA1、A2は、各環状ジペプチドを構成する2つのアミノ酸を示す。
【0296】
【表11】
【0297】
【表12】
【0298】
【表13】
【0299】
2.3.2.GC-MSによる成分分析(1)GC-MS検液調製
10mL容試験管にクミン試料15mg(前記クミン試料が、油脂とともに加熱処理したクミン試料である場合は、油脂を除いたクミン試料として換算した質量を指す)を採取し、アセトン5mL(富士フイルム和光純薬)、メタノール5mL(富士フイルム和光純薬)を加えた。内標準として4-メチルチアゾール(東京化成)を、クミン試料(クミンとして換算した質量)に対して625μg/gとなるように添加した。試験管を高速振とう機(CM-1000、東京理化器械)で室温、1,800rpm、30分間撹拌した。撹拌後に遠心分離を行い、遠心分離後に試験管内の溶液0.1mLをGC-MSバイアルに採取し、更に、アセトン1mLを加えてGC-MS検体とした(n=2)。上記のクミン試料15mgとは、油脂を除いたクミン試料として換算した質量を意味し、クミンのみ又はクミンと水との混合物を加熱処理した実施例301~314の加熱処理クミン試料の質量としては15mgを意味し、クミンと油脂との混合物を加熱処理した実施例315~319の加熱処理クミン試料の質量としては30mgを指す。
【0300】
(2)GC-MS分析条件
GC-orbitrap-MSの分析条件を下記に示す。
分析装置:
GC:TRACE1310(Thermo Fisher Scientific)
MS:QExactiveGC(Thermo Fisher Scientific)
分析カラム:TG-WAXMS[長さ]60m[内径]0.25mm[膜厚]0.25μm(Thermo Fisher Scientific)
オートサンプラー:TRIPLUS RSH(Thermo Fisher Scientific)、
GC条件:
注入方式:液打ち
注入量:1μL
ガス:ヘリウム、130kPa(圧力)
注入口温度:240℃
オーブン温度:40℃(1分保持)-10℃/分-110℃-2℃/分-180℃-3℃/分-240℃-10℃/分-250℃(6分保持)、計70分
MS条件:
トランスファー温度:240℃
イオン源温度:230℃
イオン化法:EI positive
MSスキャン:m/z30-450
モニタリングイオン:下記の表に示す。
【0301】
(3)データ解析
GC-MSクロマトグラムから、各成分の精密質量(下記表)を抽出し、ピーク面積を得た。各検体中の成分は、ピーク面積比(=各成分のピーク面積/内標準のピーク面積)を算出して比較した。
【表14】
【0302】
2.3.3.成分分析の結果
【0303】
各試料から調製された検体中で検出された環状ペプチド類、有機酸(酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、cis-アコニット酸及びtrans-アコニット酸)、スルフロール、酢酸スルフロール、カルベオール、ネロリドール及びα-テルピネン-7-アールの内標準に対するピーク面積比を図14~28に示す。図中のバーは標準偏差を表す。
【0304】
図14~28に示す結果は、加熱処理した実施例301~319のクミンが、加熱していない比較例301のクミンと比較して、環状(Phe-Phe)、環状(Phe-Leu/Ile)、環状(Leu/Ile-Val)、環状(Phe-Pro)、環状(Phe-Tyr)、環状(Pro-Leu/Ile)、環状(Val-Val)、環状(Phe-Ala)、環状(Tyr-Ser)、環状(Pro-Val)、環状(Pro-Tyr)、環状(Pro-Pro)、環状(Leu/Ile-Ser)、環状(Arg-Leu/Ile)、環状(Ala-Tyr)、環状(Gly-Tyr)、環状(Ala-Pro)、環状(Gly-Val)、環状(hyPro-Pro)、環状(Thr-Pro)、環状(Val-Arg)、環状(Pro-Asp)、環状(Arg-Pro)、環状(Glu-Tyr)、環状(Pro-His)、環状(Glu-Asp)、環状(Gly-Arg)、環状(Gly-His)、環状(Leu/Ile-Leu/Ile)、環状(Glu-Glu)、環状(Leu/Ile-Asp)、環状(Phe-Asp)、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、cis-アコニット酸、trans-アコニット酸、スルフロール、酢酸スルフロール、カルベオール、ネロリドール及びα-テルピネン-7-アールを多く含んでいたことを示す。なかでも130℃又は140℃で加熱処理を行った実施例305~314のクミンは前記成分の増加が特に顕著であった。特に、環状(Phe-Tyr)、環状(Phe-Ala)、環状(Tyr-Ser)、環状(Leu/Ile-Ser)、環状(Ala-Tyr)、環状(Gly-Tyr)、環状(Ala-Pro)、環状(Gly-Val)、環状(hyPro-Pro)及び環状(Glu-Glu)は、未加熱のクミンには含まれない(検出限界以下)、加熱処理したクミンに特異的な成分である。
【0305】
2.4.各種の食材に対する呈味増強効果
(1)試料の調製
下記表に示す食材の希釈液又は食品に、実施例305の加熱処理したクミンを添加した試料、並びに、それらの陰性対照試料及び陽性対照試料を、上記1.4.(1)に記載の方法において、実施例203の加熱処理したパプリカ粉末の代わりに、実施例305の加熱処理したクミンを、食材希釈液試料中の終濃度が0.05%(w/w)、食品試料中の終濃度が0.03~0.07%(w/w)となるように添加する方法により調製した。
【0306】
(2)官能評価
各食材から調製した試料の味の強さを、3名の評価者が喫食して評価した。評価の基準及び方法は上記1.4.(2)に記載の通り。
【0307】
評価結果を下記表に示す。実施例305の加熱処理したクミンは、さまざまな食材の味を増強する作用が高いことが確認された。
【0308】
【表15】
【0309】
3.実験3:加熱処理したアサフォエティダによる呈味増強作用3.1.加熱処理したアサフォエティダの調製
以下の実験で使用したアサフォエティダ粉末は、アサフォエティダ(樹脂)12質量%、アラビアガム60質量%及び米粉28質量%を含む。当該アサフォエティダ粉末は、アサフォエティダを溶解し、アラビアガム及び米粉と混合し、乾燥後、粉末化したものである。
前記アサフォエティダ粉末を、下記表に示す条件で加熱処理した。加熱価は、既述の通り前記式(「基準温度」は110℃、「Z値」は30(℃))によるCV値を加熱時間(分)で積分した値である。加熱条件の欄に記載の温度及び時間は最高到達温度及びその保持時間であるのに対し、加熱価の計算には温度上昇時及び降下時の温度及び時間を含む温度の経時変化も考慮した。
【0310】
【表16】
【0311】
比較例401は加熱殺菌を含む加熱処理をしていないアサフォエティダ粉末である。
【0312】
アサフォエティダ粉末の実施例401の加熱(130℃30分、加水無)は以下の手順で行った。
100gのアサフォエティダ粉末をアルミ箔パウチに充填し、密封した。密封したパウチを、所定の温度及び時間でレトルト式殺菌器にて加熱処理し、水冷した。レトルト式殺菌器での加熱処理は、ゲージ圧0.2MPaの加圧下で行った。
【0313】
実施例402、403、404におけるアサフォエティダ粉末の油中加熱は以下の手順で行った。
アサフォエティダ粉末(うちアサフォエティダ12質量%)と、パーム油(融点45℃)とを、50:50の質量比で混合し、撹拌しながら所定の温度及び時間で加熱したのち冷却して、常温で固形カレールウ状の、油中加熱アサフォエティダを得た。
【0314】
比較例401のアサフォエティダ粉末の水分活性(Aw)を、上記表に記載の温度条件で測定した。
【0315】
3.2.呈味増強効果
上記1.2.(1)、(2)に記載の手順で通常のカレールウ及び減塩カレールウを調製した。
【0316】
前記減塩カレールウを湯に溶解し、撹拌しながら沸騰させたものをベースソースとした。
【0317】
これに、実施例403の油中加熱アサフォエティダを終濃度が0.0031質量%となるように添加し、官能評価を行った。前記濃度から、香辛料の特徴香がルウの風味に影響しない量まで落としていき、終濃度0.00077質量%を、比較例401のアサフォエティダ粉末、実施例401のアサフォエティダ粉末、或いは、実施例402、403又は404の油中加熱アサフォエティダ(油脂を含む)の添加量として設定した。
【0318】
前記減塩カレールウ44gを300gの熱湯に溶いたものを2つ準備した。
【0319】
そのうちの1つに上記で設定した濃度となるように比較例又は実施例のアサフォエティダを添加した。
【0320】
前記通常のカレールウ44gを300gの熱湯に溶いた。
【0321】
減塩カレールウの湯溶き品と通常のカレールウの湯溶き品を比較対象とし、呈味の強さを「ミドル及びラストの呈味の押し上げ」の観点から、以下の評価基準で3名の評価者(評価者1、2、3)が評価した。本実験での「呈味(ミドル及びラストの呈味の押し上げ)」は、食塩とカレールウの他の食材とが組み合わされて奏されるミドル及びラストの呈味であり、「塩味」の一態様である。このため本実験での「呈味(ミドル及びラストの呈味の押し上げ)」は、「塩味(ミドル及びラストの呈味の押し上げ)」と表現することもできる。
【0322】
呈味(ミドル及びラストの呈味の押し上げ)の1点、2点、3点、4点、5点をそれぞれ以下のように定め、各サンプルの呈味を3名の評価者が0.1点刻みで評価し、平均点を求めた。
1点:減塩カレールウと同程度の呈味
2点:減塩カレールウよりもやや強い呈味
3点:減塩カレールウよりも強い呈味
4点:減塩カレールウよりもかなり強い呈味
5点:通常のカレールウと同程度の呈味の強さである
【0323】
評価点の平均が、比較例401を上回り且つ2.0以下を「C」、2.1以上2.5以下を「B」、2.6以上3.0以下を「A」、3.1以上5.0以下を「AA」とした。
【0324】
評価結果を下記表に示す。実施例401~404の加熱処理したアサフォエティダは、比較例401のアサフォエティダと比較して、呈味の「ミドル及びラストの呈味の押し上げ」を増強する作用が高いことが確認された。
【0325】
【表17】
【0326】
3.3.成分分析
比較例401及び実施例401~404のアサフォエティダに含まれる成分を以下の手順で分析した。
【0327】
(1)LC-MS/MS検液調製
10mL容試験管に、比較例401又は実施例401のアサフォエティダ200mg、或いは、実施例402、403又は404の油中加熱アサフォエティダ400mg(アサフォエティダ樹脂含量を12質量%として換算した質量として200mg)を採取し、超純水5mLを加えた。試験管を80℃に設定した恒温水槽で30分間加温後、室温になるまで静置した。試験管にアセトニトリル(富士フイルム和光純薬)5mLを添加し、更にPositiveモードの内標準としてL-リシン-13一塩酸塩(富士フイルム和光純薬)、及び、Negativeモードの内標準としてリビトール(富士フイルム和光純薬)を添加した。アサフォエティダ(実施例402、403、404の油中加熱アサフォエティダについては、アサフォエティダ樹脂含量を12質量%として換算した質量)に対して、L-リシン-13一塩酸塩は47μg/g、リビトールは99μg/gとなるように添加した。試験管を高速振とう機(CM-1000、東京理化器械)で室温、1,800rpm、30分間撹拌し、遠心分離後に試験管内の溶液0.5mLを限外濾過フィルター(ナノセップ遠心ろ過デバイス3K、日本ポール)に移した。限外濾過フィルターを室温、15,000rpm×20分間遠心後、フィルター下のろ液0.3mLを固相抽出カラムInertSep C18(100mg/1mL,GLサイエンス)に負荷し、溶出液を採取した。InertSep C18はろ液を負荷する前に50%(w/w)アセトニトリル水1mLでコンディショニングを行った。さらにアセトニトリル0.5mLをInertSep C18に負荷し、溶出液を採取した。溶出液に超純水1.5mL加え、10秒間ボルテックスした。0.2μmフィルターに負荷後の溶液をLC-MS/MS検体とした(n=2)。
【0328】
(2)LC-MS/MS分析条件
上記1.3.(2)に記載の条件でLC-MS/MS分析を行った。
【0329】
(3)データ解析
LC-MS/MSクロマトグラムから、各成分のプリカーサーイオン>プロダクトイオンの精密質量(下記表)を抽出し、ピーク面積を得た。各検体中の成分は、プロダクトイオンのピーク面積比(=各成分のプロダクトイオンのピーク面積/内標準のプロダクトイオンのピーク面積)を算出して比較した。下記表においてA1、A2は、各環状ジペプチドを構成する2つのアミノ酸を示す。
【0330】
【表18】
【0331】
【表19】
【0332】
【表20】
【0333】
各試料から調製されたLC-MS/MS検体中で検出された環状ペプチド類、有機酸(酒石酸、リンゴ酸、クエン酸)及びスルフロールの内標準に対するピーク面積比を図29~35に示す。図中のバーは標準偏差を表す。
【0334】
図29~35に示す結果は、実施例401~404の加熱処理したアサフォエティダが、加熱していない比較例401のアサフォエティダと比較して、環状(Gly-Thr)、環状(Gly-His)、環状(Ala-Asp)、環状(Val-Ser)、環状(Gly-Arg)、環状(Ala-His)、環状(Glu-Asp)、環状(Phe-Phe)、環状(Leu/Ile-Leu/Ile)、環状(Ala-Arg)、環状(Leu/Ile-Val)、環状(Phe-Pro)、環状(Phe-Leu/Ile)、環状(Pro-Pro)、環状(Glu-Phe)、環状(Arg-Leu/Ile)、環状(Pro-Leu/Ile)、環状(Pro-Glu)、環状(Glu-Leu/Ile)、環状(Ala-Pro)、環状(Pro-Val)、環状(Pro-His)、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、及びスルフロールを多く含んでいたことを示す。特に、呈味増強作用の強い油中加熱した実施例402~404のアサフォエティダにおいて前記成分が顕著に増加した。これらの成分の量は、呈味の増強作用の強さと相関する傾向が認められた。特に、環状(Val-Ser)、環状(Pro-Pro)及び環状(Pro-Glu)は、未加熱のアサフォエティダには含まれない(検出限界以下)、加熱処理したアサフォエティダに特異的な成分である。
【0335】
3.4.各種の食材に対する呈味増強効果
(1)試料の調製
下記表に示す食材の希釈液又は食品に、実施例403の加熱処理したアサフォエティダを添加した試料、並びに、それらの陰性対照試料及び陽性対照試料を、上記1.4.(1)に記載の方法において、実施例203の加熱処理したパプリカ粉末の代わりに、実施例403の加熱処理したアサフォエティダを、食材希釈液試料中の終濃度が0.025%(w/w)、食品試料中の終濃度が0.015~0.035%(w/w)となるように添加する方法により調製した。
【0336】
(2)官能評価
各食材から調製した試料の味の強さを、3名の評価者が喫食して評価した。評価の基準及び方法は上記1.4.(2)に記載の通り。
【0337】
評価結果を下記表に示す。実施例403の加熱処理したアサフォエティダは、さまざまな食材の味を増強する作用が高いことが確認された。
【0338】
【表21】
【0339】
4.実験4:加熱処理したマスターシードによる呈味増強作用4.1.加熱処理したマスタードシードの調製
ホールのマスタードシード(ブラウンマスタード(Brassica juncea)の種子)を、下記に示す実施例501~505及び比較例501~506の条件で加熱処理した。加熱価は、前記式(「基準温度」は110℃、「Z値」は30(℃))によるCV値を加熱時間(分)で積分した値である。加熱条件の欄に記載の温度及び時間は最高到達温度及びその保持時間であるのに対し、加熱価の計算には温度上昇時及び降下時の温度及び時間を含む温度の経時変化も考慮した(ただし実施例502のオーブン加熱は、出来上がり品温で4分間保持されたとみなして加熱価を計算した)。なお、以下に記載の実験は、温度を明示しない限り、設定温度23℃の空調により、概ね22℃~25℃の範囲内に温度調節された室内で行ったため、室温とは22℃~25℃、例えば23℃を指す。
【0340】
実施例501
(1)家庭用珈琲焙煎機(株式会社山益製、小さな焙煎職人)(開放系)にホールのマスタードシードを200g投入した。
(2)釜を18.5rpm(最大回転数)で回転させ、撹拌した。
(3)点火し、マスタードシードの品温が190℃になるまで撹拌しながら加熱した(昇温まで9分間)。
(4)続いて、品温190℃で8分間、撹拌しながら加熱した。このとき焙煎機の壁面温度は230℃であった。マスタードシードの品温は放射温度計で測定した。
(5)加熱処理したマスタードシードをバットに取り出し、室温まで放冷した。
【0341】
実施例502
(1)常温の天板にクッキングシートを引き、ホールのマスタードシード50gを重ならないように並べた。
(2)予熱した250℃オーブン下段に前記天板を収容した。
(3)前記250℃オーブン内で4分間加熱処理した。加熱処理完了時のマスタードシードの品温(出来上がり品温)は195℃であった。品温は放射温度計で測定した。
(4)加熱処理したマスタードシードをバットに取り出し、室温まで放冷した。
【0342】
実施例503
(1)電磁加熱式平釜(開放系)にホールのマスタードシード100kgを投入した。
(2)釜を20rpmで回転させて撹拌しながら、品温169℃になるまで24分間加熱した。
(3)加熱を止め、同釜で撹拌しながら品温90℃になるまで冷却した。
【0343】
実施例504
(3)にてマスタードシードを品温160℃まで6分間加熱し、(4)にて品温160℃で13分間加熱したことを除いて実施例501に記載の手順で加熱処理したマスタードシードを実施例504とした。(3)及び(4)での加熱の際の焙煎機の壁面温度は180℃とした。
【0344】
実施例505
(3)にてマスタードシードを品温140℃まで7分間加熱し、(4)にて品温140℃で20分間加熱したことを除いて実施例501に記載の手順で加熱処理したマスタードシードを実施例505とした。(3)及び(4)での加熱の際の焙煎機の壁面温度は160℃とした。
【0345】
比較例501
実施例501~505及び比較例502~506にて原料として用いたホールのマスタードシードを、未加熱の比較例501とした。
【0346】
比較例502
(3)にてマスタードシードを品温130℃まで6分間加熱し、(4)にて品温130℃で15分間加熱したことを除いて実施例501に記載の手順で加熱処理したマスタードシードを比較例502とした。(3)及び(4)での加熱の際の焙煎機の壁面温度は140℃とした。
【0347】
比較例503
(1)1kg容量のレトルトパウチにホールのマスタードシードを100g入れ、密閉した。
(2)レトルト殺菌機で庫内温度130℃まで16分間加熱し、庫内温度を130℃に保持したまま30分間(スプレー式、圧力0.2MPa)加熱した。なお、加熱温度は庫内の温度センサーの数値である。
(3)加熱後に10分間水冷した後、パウチを殺菌機から取り出した。
【0348】
比較例504
(1)にて1kg容量のレトルトパウチにホールマスタードシード100gと水10gを入れ均一に混合し密閉したことを除いて比較例503に記載の手順で加熱処理したマスタードシードを比較例504とした。
【0349】
比較例505
(2)にて130℃60分間加熱したことを除いて比較例503に記載の手順で加熱処理したマスタードシードを比較例505とした。
【0350】
比較例506
(1)家庭用鍋中で、常温で固体のパーム由来油脂100gを加熱して溶融させた後、60℃まで放冷した。
(2)ホールのマスタードシード100gを前記溶融油脂に加え、弱めの中火で、撹拌しながら180℃になるまで加熱した(達温まで8分間)。品温は、溶解した油脂に温度センサーを差し込み測定した。
(3)加熱後、鍋ごと水冷し、撹拌しながら均一なペースト状物を得た。
(4)前記ペースト状物をビニール袋に入れ、平らに伸ばし、冷凍庫で急冷した。
【0351】
各実施例比較例のマスタードシードの水分活性(Aw)を、それぞれ下記表に記載の温度条件で測定した。
【0352】
【表22】
【0353】
上記の実施例501~505及び比較例501~506のマスタードシードを、家庭用ミル(岩谷産業株式会社製、クラックミルサー)を用いて、30g/20秒間粉砕して、以下の香り及び呈味の評価、並びに、成分分析に用いた。
【0354】
4.2.香りの評価(単純系)
粉砕した各実施例比較例のマスタードシードのサンプル1.0gを、200mLビーカーに入れ、ステンレス製の蓋をして静置した。2名の評価者が、蓋を外して香りを嗅ぎ、「甘い香り」及び「香ばしい香り」を以下の基準で評価した。蓋を外すのは評価者が香りを嗅ぐときのみとした。
【0355】
特有風味、すなわち、「甘い香り」及び「香ばしい香り」を、それぞれ以下の基準で点数付けした。3点までが焙煎マスタードシードとして好ましいと評価した。
【0356】
5点:強く特有風味を有している
4点:特有風味を有している
3点:やや弱いが特有風味を有している
2点:特有風味が弱い
1点:特有風味がかすかにある
0点:特有風味がない
【0357】
上記基準による2名の評価者による「甘い香り」及び「香ばしい香り」の評価点の平均値を求めた。結果及び評価者によるコメントを下記表に示す。また、2名の評価者が「甘い香り」と「香ばしい香り」のバランスを、最も良好な場合を5点、最も悪い場合を0点として、点数付けし、その平均値を「総合」の欄に示す。
【0358】
【表23】
【0359】
4.3.呈味の評価(単純系)
粉砕した各実施例比較例のマスタードシードのサンプル1.0gを、200mLビーカーに入れ、熱湯を200mL添加して撹拌した。2名の評価者が、喫食して「甘味」及び「香ばしい風味」を上記4.2.と同じ基準(「甘味」及び「香ばしい風味」を上記4.2.における「特定風味」とする)で評価し点数付けした。
【0360】
上記基準による2名の評価者による「甘味」及び「香ばしい風味」の評価点の平均値を求めた。結果及び評価者によるコメントを下記表に示す。また、2名の評価者が「甘味」と「香ばしい風味」のバランスを、最も良好な場合を5点、最も悪い場合を0点として、点数付けし、その平均値を「総合」の欄に示す。
【0361】
【表24】
【0362】
4.4.カレーのコク味の増強効果
市販のカレールウ44.5gを、熱湯300mLに溶解して調製したサンプルを、ポジティブコントロールとした。
【0363】
前記市販のカレールウ44.5gを、熱湯330mLに溶解して調製したサンプル(すなわちポジティブコントロールの90%濃度)をネガティブコントロールとした。
【0364】
前記市販のカレールウ44.5gを、熱湯330mL(ネガティブコントロールと同量)に溶解し、さらに、実施例501、実施例503、実施例505、比較例501または比較例502のマスタードシードの粉砕物0.11gを添加して調製したサンプルを、各実施例比較例のサンプルとした。
【0365】
3名の評価者が、それぞれ、ポジティブコントロール、ネガティブコントロール及び各実施例比較例のサンプルを喫食して、以下の基準で、ポジティブコントロールを5点、ネガティブコントロールを1点としたときの、各実施例比較例のサンプルのコク味を点数付けした。
【0366】
5点:ポジティブコントロールと同等
4点:強い
3点:やや強い
2点:弱い
1点:ネガティブコントロールと同等
【0367】
上記基準による3名の評価者によるコク味の評価点の平均値を求めた。結果及び各評価者によるコメントを下記表に示す。
【0368】
【表25】
【0369】
4.5.環状ジペプチドの分析
(1)LC-MS/MS検液調製
10mL容試験管に、実施例501、502、503、504、505又は比較例501、502、503、504、505のマスタードシード試料の粉砕物200mg、或いは、粉砕した比較例506の油中加熱マスタードシード400mg(マスタードシードとして換算した質量として200mg)を採取し、超純水5mLを加えた。試験管を80℃に設定した恒温水槽で30分間加温後、室温になるまで静置した。試験管にアセトニトリル(富士フイルム和光純薬)5mLを添加し、内標準としてL-リシン-13一塩酸塩(富士フイルム和光純薬)をマスタードシードに対して47μg/gとなるように添加した。試験管を高速振とう機(CM-1000、東京理化器械)で室温、1,800rpm、30分間撹拌した。撹拌後に遠心分離を行い、遠心分離後に試験管内の溶液0.5mLを限外濾過フィルター(ナノセップ遠心ろ過デバイス3K、日本ポール)に移した。限外濾過フィルターを室温、15,000rpm×20分間遠心後、フィルター下のろ液に超純水0.5mL加え、10秒間ボルテックスした。0.2μmフィルターに負荷後の溶液をLC-MS/MS検体とした(n=3)。
【0370】
(2)LC-MS/MS分析条件
上記1.3.(2)に記載の条件でLC-MS/MS分析を行った。
【0371】
(3)データ解析
LC-MS/MSクロマトグラムから、各成分のプリカーサーイオン>プロダクトイオンの精密質量を抽出し、ピーク面積を得た。各検体中の成分は、プロダクトイオンのピーク面積比(=各成分のプロダクトイオンのピーク面積/内標準のプロダクトイオンのピーク面積)として算出して比較した。下記表においてA1、A2は、各環状ジペプチドを構成する2つのアミノ酸を示す。
【0372】
【表26】
【0373】
【表27】
【0374】
各試料から調製されたLC-MS/MS検体中で検出された環状ペプチド類の内標準に対するピーク面積比を図36~41に示す。図中のバーは標準偏差を表す。
【0375】
図36~41に示す結果は、実施例501~505のマスタードシードが、比較例501~506のマスタードシードと比較して、環状(Glu-His)、環状(Gly-Arg)、環状(Glu-Gly)、環状(Ala-His)、環状(Ala-Arg)、環状(Glu-Asp)、環状(Leu/Ile-Asp)、環状(Thr-Pro)、環状(Pro-His)、環状(Pro-Pro)、環状(Glu-Tyr)、環状(Arg-Leu/Ile)、環状(Ala-Pro)、環状(Pro-Val)、環状(Phe-Ala)、環状(Phe-Pro)、環状(Phe-Tyr)、環状(Tyr-His)、環状(Leu/Ile-His)、環状(Pro-Met)、及び、環状(Val-Glu)を多く含んでいたことを示す。これらの環状ジペプチドの量は、マスタードシードの、甘み及び香ばしさ、並びに、コク味の増強作用の強さと関係していると考えられる。
【0376】
4.6.環状ジペプチド以外の成分の分析
(1)GC-MS検液調製
10mL容試験管に、実施例501、502、503、504、505又は比較例501、502、503、504、505のマスタードシード試料の粉砕物15mg、或いは、粉砕した比較例506の油中加熱マスタードシードの粉砕物30mg(マスタードシードとして換算した質量として15mg)を採取し、アセトン5mL(富士フイルム和光純薬)、メタノール5mL(富士フイルム和光純薬)を加えた。内標準として4-メチルチアゾール(東京化成)を、マスタードシードに対して625μg/gとなるように添加した。試験管を高速振とう機(CM-1000、東京理化器械)で室温、1,800rpm、30分間撹拌した。撹拌後に遠心分離を行い、遠心分離後に試験管内の溶液0.1mLをGC-MSバイアルに採取し、更に、アセトン1mLを加えてGC-MS検体とした(n=3)。
【0377】
(2)GC-MS分析条件
GC-orbitrap-MSの分析条件は上記2.3.2の(2)に記載の通りである。ただし、モニタリングイオンの精密質量は下記表に示す通り。
【0378】
(3)データ解析
GC-MSクロマトグラムから、各成分の精密質量(下記表)を抽出し、ピーク面積を得た。各検体中の成分は、ピーク面積比(=各成分のピーク面積/内標準のピーク面積)を算出して比較した。
【0379】
【表28】
【0380】
各試料から調製されたGC-MS検体中で検出された各成分の内標準に対するピーク面積比を図42~44に示す。図中のバーは標準偏差を表す。
【0381】
図42~44に示す結果は、実施例501~505のマスタードシードが、比較例501~506のマスタードシードと比較して、アリルメチルジスルフィド、2,5-ジメチルピラジン、2-エチル-6-メチルピラジン、2,3,5-トリメチルピラジン、2,6-ジエチルピラジン、2,5-ジエチルピラジン、2,3-ジエチルピラジン、アリルメチルトリスルフィド、3-メチル-1,2,4-トリチアン、2-ドデセナール、及びスルフロールを多く含んでいたことを示す。これらの化合物の量は、マスタードシードの、甘み及び香ばしさ、並びに、コク味の増強作用の強さと関係していると考えられる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16
図17
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図19
図20
図21
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図23
図24
図25
図26
図27
図28
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図30
図31
図32
図33
図34
図35
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図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
【手続補正書】
【提出日】2024-05-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱処理したアサフォエティダを含有する、呈味増強用組成物。
【請求項2】
前記加熱処理したアサフォエティダが、アサフォエティダを、油脂を添加することなく加熱価が15以上となる条件で加熱することにより得られたものである、請求項に記載の呈味増強用組成物。
【請求項3】
前記加熱処理したアサフォエティダが、アサフォエティダを油脂とともに加熱価が5以上となる条件で加熱することにより得られたものである、請求項に記載の呈味増強用組成物。
【請求項4】
前記加熱処理したアサフォエティダが、環状(Val-Ser)、環状(Pro-Pro)及び環状(Pro-Glu)からなる群から選択される1以上を含有する、請求項1に記載の呈味増強用組成物。
【請求項5】
前記加熱処理したアサフォエティダが、前記加熱処理したアサフォエティダに47μg/gのL-リシン-13一塩酸塩を添加し、下記方法による液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、L-リシン-13一塩酸塩に由来するピーク面積に対する比として、
(1)環状(Gly-Thr)に由来するピーク面積が0.028以上であり、
(2)環状(Gly-His)に由来するピーク面積が0.003以上であり、
(3)環状(Ala-Asp)に由来するピーク面積が0.022以上であり、
(4)環状(Val-Ser)に由来するピーク面積が0.040以上であり、
(5)環状(Gly-Arg)に由来するピーク面積が0.020以上であり、
(6)環状(Ala-His)に由来するピーク面積が0.005以上であり、
(7)環状(Glu-Asp)に由来するピーク面積が0.008以上であり、
(8)環状(Phe-Phe)に由来するピーク面積が0.050以上であり、
(9)環状(Leu/Ile-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.025以上であり、
(10)環状(Ala-Arg)に由来するピーク面積が0.025以上であり、
(11)環状(Leu/Ile-Val)に由来するピーク面積が0.020以上であり、
(12)環状(Phe-Pro)に由来するピーク面積が0.015以上であり、
(13)環状(Phe-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.040以上であり、
(14)環状(Pro-Pro)に由来するピーク面積が0.010以上であり、
(15)環状(Glu-Phe)に由来するピーク面積が0.050以上であり、
(16)環状(Arg-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.045以上であり、
(17)環状(Pro-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.080以上であり、
(18)環状(Pro-Glu)に由来するピーク面積が0.005以上であり、
(19)環状(Glu-Leu/Ile)に由来するピーク面積が0.015以上であり、
(20)環状(Ala-Pro)に由来するピーク面積が0.028以上であり、
(21)環状(Pro-Val)に由来するピーク面積が0.020以上であり
(22)環状(Pro-His)に由来するピーク面積が0.040以上であり、
(23)スルフロール(4-メチル-5-チアゾールエタノール)に由来するピーク面積が0.25以上である、
のうち1以上を満たす、請求項1に記載の呈味増強用組成物。
(LC-MS/MSの測定方法)
前記加熱処理したアサフォエティダ200mg(アサフォエティダ樹脂含量を12質量%として換算した質量)と水5mLとを収容した10mL容試験管を、80℃の恒温水浴中で30分間加温して、水抽出物を調製する。前記試験管中の前記水抽出物にアセトニトリル5mL及び前記加熱処理したアサフォエティダ(アサフォエティダ樹脂含量を12質量%として換算した質量)に対して47μg/gとなる量のL-リシン-13一塩酸塩を添加し、撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収する。前記液体成分を、オクタデシル基を保持する固相抽出担体に接触させた後、アセトニトリルによる溶出液を回収し、前記溶出液から検体試料を作成する。前記検体試料をLC-MS/MSにより分析してクロマトグラムを得る。
【請求項6】
前記加熱処理したアサフォエティダが、前記加熱処理したアサフォエティダに99μg/gのリビトールを添加し、下記方法による液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)により分析して得られるクロマトグラムにおいて、リビトールに由来するピーク面積に対する比として、
(24)酒石酸に由来するピーク面積が0.12以上であり、
(25)リンゴ酸に由来するピーク面積が1.10以上であり、
(26)クエン酸に由来するピーク面積が1.00以上である、
のうち1以上を満たす、請求項1に記載の呈味増強用組成物。
(LC-MS/MSの測定方法)
前記加熱処理したアサフォエティダ200mg(アサフォエティダ樹脂含量を12質量%として換算した質量)と水5mLとを収容した10mL容試験管を、80℃の恒温水浴中で30分間加温して、水抽出物を調製する。前記試験管中の前記水抽出物にアセトニトリル5mL及び前記加熱処理したアサフォエティダ(アサフォエティダ樹脂含量を12質量%として換算した質量)に対して99μg/gとなる量のリビトールを添加し、撹拌した後、固体成分を除去し液体成分を回収する。前記液体成分を、オクタデシル基を保持する固相抽出担体に接触させた後、アセトニトリルによる溶出液を回収し、前記溶出液から検体試料を作成する。前記検体試料をLC-MS/MSにより分析してクロマトグラムを得る。
【請求項7】
請求項1、2及び4~6のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物の製造方法であって、
アサフォエティダを、油脂を添加することなく加熱価が15以上となる条件で加熱して前記加熱処理したアサフォエティダを得ること、
を含む方法。
【請求項8】
請求項1及び3~6のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物の製造方法であって、
アサフォエティダを油脂とともに加熱価が5以上となる条件で加熱して前記加熱処理したアサフォエティダを得ること、
を含む方法。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の呈味増強用組成物を、食品に配合することを含む、
食品の呈味を増強する方法。