(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109216
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
B24B 47/22 20060101AFI20240806BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20240806BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20240806BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B24B47/22
B24B49/10
B24B7/04 A
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013901
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】紙谷 丈
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA07
3C034BB92
3C034CA30
3C034CB20
3C043BA03
3C043CC03
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD05
3C043DD06
5F057AA37
5F057BA11
5F057BB03
5F057BB06
5F057BB12
5F057BC06
5F057CA11
5F057DA11
5F057DA17
(57)【要約】
【課題】センサを用いることなくセットアップを行うこと。
【解決手段】チャックテーブル10と、該チャックテーブル10を回転させるテーブル回転機構20と、ワークを加工する加工機構40と、加工機構40を垂直方向に移動させる垂直移動機構60と、保持面10aまたはワークに加工具43が接触したことを検知する接触検知部70と、該接触検知部70が加工具43の接触を検知した際に該加工具43の高さ位置を記憶する記憶部80を備える加工装置1において、接触検知部70は、テーブル回転機構20の軸の回転角度を検知するテーブルエンコーダ22と、スピンドル42の回転角度を検知するスピンドルエンコーダ45、の少なくとも一方を備え、加工具43が垂直移動機構60によって下降しているときに、テーブルエンコーダ22またはスピンドルエンコーダ45の少なくとも一方の値に変化が生じると加工具43が保持面10aまたはワークに接触したと判断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加工具で加工する加工装置であって、
保持面によってワークを保持するチャックテーブルと、
該保持面の中心を軸に該チャックテーブルを回転させるテーブル回転機構と、
スピンドルに装着された該加工具を回転させ該保持面に保持されたワークを加工する加工機構と、
該チャックテーブルと該加工機構とを相対的に該保持面に垂直方向に移動させる垂直移動機構と、
該保持面または該保持面に保持されたワークに該加工具が接触したことを検知する接触検知部と、
該接触検知部が該加工具の該保持面またはワークへの接触を検知した際に該加工具の該保持面に対する高さ位置を記憶する記憶部と、
を備え、
該接触検知部は、
該テーブル回転機構の該軸の回転角度を検知するテーブルエンコーダと、該スピンドルの回転角度を検知するスピンドルエンコーダ、の少なくとも一方を備え、
該チャックテーブルの回転軸心の径方向外側で該保持面の上方から該加工具と該チャックテーブルとを該垂直移動機構によって相対的に接触する方向に移動させているときに、該テーブルエンコーダまたは該スピンドルエンコーダの少なくとも一方の値に変化が生じると該加工具が該保持面またはワークに接触したと判断する、加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工具がチャックテーブルの保持面或いは該保持面に保持されたワークに接触した時点での該加工具の高さ位置を記憶するセットアップを行う加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ワークを保持したチャックテーブルを回転させながら、ワークの上面を研削砥石によって研削するロータリ平面研削装置においては、所定の厚みを有する研削砥石を回転させ、該研削砥石の外周面でワークの上面を研削することが行われている。このような研削においては、研削砥石の外周面がチャックテーブルの保持面に接触したときの該研削砥石の高さ位置を検出して記憶するセットアップが行われている。このようなセットアップは、ワークの上面を研削する研削装置以外に、ワークの上面を研磨する研磨装置、ワークの上面を切削する切削装置などにおいても同様に行われている。
【0003】
ところで、セットアップを行う方法としては、特許文献1において提案されているタッチセンサを用いるもの、特許文献2において提案されている背圧センサを用いるものなどが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-038867号公報
【特許文献2】特開2016-182651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2において提案されているようなタッチセンサや背圧センサを用いるセットアップにおいては、タッチセンサや背圧センサが故障や破損した場合には、センサの交換や調整作業が必要になり、セットアップを行って加工を開始するまでに長時間を要するという問題が発生する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、センサを用いることなくセットアップを行うことによって、センサの故障などに伴う時間的ロスが発生することがない加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明は、ワークを加工具で加工する加工装置であって、保持面によってワークを保持するチャックテーブルと、該保持面の中心を軸に該チャックテーブルを回転させるテーブル回転機構と、スピンドルに装着された該加工具を回転させ該保持面に保持されたワークを加工する加工機構と、該チャックテーブルと該加工機構とを相対的に該保持面に垂直方向に移動させる垂直移動機構と、該保持面または該保持面に保持されたワークに該加工具が接触したことを検知する接触検知部と、該接触検知部が該加工具の該保持面またはワークへの接触を検知した際に該加工具の該保持面に対する高さ位置を記憶する記憶部と、を備え、該接触検知部は、該テーブル回転機構の該軸の回転角度を検知するテーブルエンコーダと、該スピンドルの回転角度を検知するスピンドルエンコーダ、の少なくとも一方を備え、該チャックテーブルの回転軸心の径方向外側で該保持面の上方から該加工具と該チャックテーブルとを該垂直移動機構によって相対的に接触する方向に移動させているときに、該テーブルエンコーダまたは該スピンドルエンコーダの少なくとも一方の値に変化が生じると該加工具が該保持面またはワークに接触したと判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、チャックテーブルの回転軸心の径方向外側で該チャックテーブルの保持面の上方から加工具とチャックテーブルとを垂直移動機構によって相対的に接触する方向に移動させているときに、テーブルエンコーダまたはスピンドルエンコーダの少なくとも一方の値に変化が生じると加工具が保持面またはワークに接触したと判断し、そのときの加工具の保持面に対する位置を記憶してセットアップを行うようにしたため、タッチセンサや背圧センサなどのセンサを用いることなくセットアップを行うことができる。この結果、センサの故障などに伴う時間的ロスが発生することがなく、ワークの加工を効率よく行うことができる。因みに、加工具がチャックテーブルの保持面またはワークに接触すると、テーブル回転機構の軸やスピンドルが負荷を受けて僅かに傾く(軸ブレする)ため、テーブルエンコーダとスピンドルエンコーダの値(出力電流値)に変化が生じる。したがって、テーブルエンコーダやスピンドルエンコーダの値(出力電流値)の変化によって加工具のチャックテーブルの保持面またはワークへの接触を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る加工装置の基本構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係る加工装置のセットアップ時の状態を示す要部平面図である。
【
図5】本発明に係る加工装置におけるセットアップの手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
[加工装置の全体構成]
まず、本発明に係る加工装置1の全体構成を
図1に基づいて以下に説明する。なお、以下の説明においては、
図1の前後方向を「X軸方向」、左右方向を「Y軸方向」、上下方向を「Z軸方向」とする。
【0012】
図1に示す加工装置1は、アルミナセラミックなどの硬度の高い薄い円板状の不図示のワークの上面を研削するロータリ平面研削装置であって、チャックテーブル10と、テーブル回転機構20と、テーブルエンコーダ22と、加工機構40と、スピンドルエンコーダ45と、水平移動機構50と、垂直移動機構60と、接触検知部70と、記憶部80を主要な構成要素として備えている。なお、加工対象であるワークは、シリコン、ガリウム砒素などの半導体ウェーハ、セラミック、ガラス、サファイア系の光デバイスウェーハなどであってもよい。
【0013】
次に、加工装置1の主要な構成要素であるチャックテーブル10と、テーブル回転機構20と、テーブルエンコーダ22と、加工機構40と、スピンドルエンコーダ45と、水平移動機構50と、垂直移動機構60と、接触検知部70と、記憶部80の各構成についてそれぞれ説明する。
【0014】
(チャックテーブル)
チャックテーブル10は、X軸移動機構30の後述のベース32によって回転可能に支持された円板状の部材であって、その下方に配された後述のテーブル回転機構20によって垂直な軸中心回りに水平面内を回転することができる。ここで、チャックテーブル10の上面である円形の保持面10aには、2重リング状の吸引溝11,12と、これらの吸引溝11,12に連通する直線状の吸引溝13が形成されており、保持面10aの中心には、円孔状の吸引孔14が開口している。なお、これらの吸引溝11~13と吸引孔14は、真空ポンプなどの不図示の吸引源に選択的に接続される。
【0015】
また、チャックテーブル10は、X軸移動機構30によって後述のテーブル回転機構20と共にX軸方向に沿って往復移動することができる。ここで、X軸移動機構30は、基台2上にX軸方向に沿って互いに平行に敷設された左右一対のX軸ガイドレール31と、これらのX軸ガイドレール31に沿ってX軸方向に摺動可能に設置された矩形プレート状のベース32と、左右のX軸ガイドレール31の間にX軸方向に沿って配置された正逆転可能なX軸ボールネジ33と、該X軸ボールネジ33を正逆転させる回転駆動源であるX軸サーボモータ34を含んで構成されている。そして、ベース32上には、チャックテーブル10が垂直な中心軸回りに回転可能に支持されている。なお、図示しないが、ベース32の下面の幅方向中央には、ナット部材が下方に向かって突設されており、このナット部材には、X軸ボールネジ33が螺合挿通している。
【0016】
したがって、X軸サーボモータ34を起動してX軸ボールネジ33を正逆転させれば、該X軸ボールネジ33に螺合する不図示のナット部材が突設されたベース32が左右一対のX軸ガイドレール31に沿ってX軸方向に摺動するため、該ベース32と共にチャックテーブル10がテーブル回転機構20と共にX軸方向(前後方向)に沿って往復移動する。
【0017】
(テーブル回転機構)
テーブル回転機構20は、チャックテーブル10をその保持面10aの中心を軸に回転駆動する機構であって、X軸移動機構30のベース32上に縦置き状態で設置された回転駆動源であるテーブルモータ21を備えている。
【0018】
(テーブルエンコーダ)
テーブルエンコーダ22は、テーブル回転機構20の回転駆動源であるテーブルモータ21の軸の回転角度を光電的に検知するものであって、テーブルモータ21の下方に取り付けられている。そして、テーブルモータ21とテーブルエンコーダ22は、後述の接触検知部70に電気的に接続されており、テーブルエンコーダ22によって検知されたテーブルモータ21の軸の回転角度が接触検知部70に送信されるとともに、送信された回転角度に基づいてテーブルモータ21の駆動が制御される。また、接触検知部70には、後述の記憶部80が電気的に接続されている。
【0019】
(加工機構)
加工機構40は、チャックテーブル10の保持面10a上に吸引保持された不図示のワークの上面を加工(研削)するものであって、回転駆動源である加工具モータ(スピンドルモータ)41と、該加工具モータ41によって所定の速度で回転駆動されるスピンドル42と、該スピンドル42の先端に取り付けられた円板状の加工具(研削砥石)43を備えている。ここで、スピンドル42は、ハウジング44内にY軸方向に沿って回転可能に収容されており、該スピンドル42の先端部(-Y軸方向端部)に加工具43が取り付けられている。なお、加工具43は、所定の厚みを有する円板状の研削砥石であって、例えば、ダイヤモンド砥粒をレジンボンドで固めて円板状に成形されている。
【0020】
(スピンドルエンコーダ)
スピンドルエンコーダ45は、加工機構40の加工具43の回転駆動源である加工具モータ41によって回転駆動されるスピンドル42の回転角度を光電的に検知するものであって、加工具モータ41に取り付けられている。そして、スピンドルエンコーダ45は、後述の接触検知部70に電気的に接続されており、このスピンドルエンコーダ45によって検知されたスピンドル42の回転角度が接触検知部70に送信される。また、接触検知部70には、後述の記憶部80が電気的に接続されている。
【0021】
(水平移動機構)
水平移動機構50は、加工機構40をY軸方向に沿って往復移動させる機構であって、基台2の-X軸方向端部(後端部)に垂直に立設された門型のコラム3の正面にY軸方向(左右方向)に沿って互いに平行に配置された上下一対のY軸ガイドレール51と、これらのY軸ガイドレール51に沿って摺動可能に設置された矩形プレート状のスライド板52と、上下のY軸ガイドレール51の間にY軸方向に沿って配置された正逆転可能なY軸ボールネジ53と、該Y軸ボールネジ53を正逆転させる回転駆動源であるY軸サーボモータ54を備えている。なお、スライド板52の裏面には、不図示のナット部材が突設されており、このナット部材には、Y軸ボールネジ53が螺合挿通している。
【0022】
(垂直移動機構)
垂直移動機構60は、チャックテーブル10と加工機構40とを相対的にチャックテーブル10の保持面10aに垂直な方向(Z軸方向)に移動させる機構(本実施形態では、加工機構40をチャックテーブル10の保持面10aに垂直な方向に移動させる機構)であって、水平移動機構50の前記スライド板52にZ軸方向(上下方向)に沿って互いに平行に配置された左右一対のZ軸ガイドレール61と、これらのZ軸ガイドレール61に沿って昇降可能に設置された昇降板62と、左右一対のZ軸ガイドレール61の間にZ軸方向に沿って配置された正逆転可能なZ軸ボールネジ63と、該Z軸ボールネジ63を正逆転させる回転駆動源であるZ軸サーボモータ64を備えている。
【0023】
そして、Z軸サーボモータ64には、該Z軸サーボモータ64によって回転駆動されるZ軸ボールネジ63の回転角度、つまり、垂直移動機構60によって加工機構40が上下方向(Z軸方向)に移動する移動量(加工具43の高さ位置)を検知するための垂直移動エンコーダ65が取り付けられており、この垂直移動エンコーダ65は、記憶部80に電気的に接続されている。
【0024】
また、昇降板62の下端部には、加工機構40が取り付けられている。なお、昇降板62の裏面には、不図示のナット部材が突設されており、このナット部材には、Z軸ボールネジ63が螺合挿通している。
【0025】
したがって、Y軸サーボモータ54を起動してY軸ボールネジ53を正逆転させると、該Y軸ボールネジ53が螺合挿通する不図示のナット部材が突設されたスライド板52が昇降板62と共にY軸方向に沿って往復移動するため、昇降板62の下端部に取り付けられた加工機構40もY軸方向に沿って往復移動する。
【0026】
また、Z軸サーボモータ64を起動してZ軸ボールネジ63を正逆転させると、該Z軸ボールネジ63が螺合挿通する不図示のナット部材が突設された昇降板62が左右のZ軸ガイドレール61に沿ってZ軸方向(上下方向)に昇降するため、該昇降板62の下端部に取り付けられた加工機構40がZ軸方向に沿って往復移動する。
【0027】
(接触検知部)
接触検知部70は、チャックテーブル10の保持面10a(または該保持面10aに保持されたワーク)に加工具43が接触したことを検知するものであって、具体的には、チャックテーブル10の回転軸心の径方向外側で該チャックテーブル10の保持面10aの上方から加工具43とチャックテーブル10とを垂直移動機構60によって相対的に接触する方向に移動(本実施形態では、加工具43をチャックテーブル10の保持面10aに向かって下降)させているときに、テーブルエンコーダ22またはスピンドルエンコーダ45の少なくとも一方(本実施形態では、テーブルエンコーダ22)の値(出力電流値)に変化が生じると、該加工具43がチャックテーブル10の保持面10aまたは保持面10aに保持されたワーク(本実施形態では、チャックテーブル10の保持面10a)に接触したものと判断するものであって、その詳細については後述する。
【0028】
(記憶部)
記憶部80は、接触検知部70がチャックテーブル10の保持面10aまたは保持面10aに保持されたワーク(本実施形態では、チャックテーブル10の保持面10a)に加工具43が接触したことを検知した際、該加工具43のチャックテーブル10の保持面10aに対する位置(高さ位置)を記憶するものであって、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリなどを備えている。そして、加工具43がチャックテーブル10の保持面10aまたはワークに接触(本実施形態では、チャックテーブル10の保持面10aに接触)した時点において、垂直移動エンコーダ65によって検知された加工具43の高さ位置を記憶部80が記憶することによってセットアップが行われる。
【0029】
[セットアップの方法]
次に、本発明に係る加工装置1において実施されるセットアップの方法と手順を
図2~
図5にしたがって以下に説明する。
【0030】
セットアップに際しては、
図2~
図4に示すように、垂直移動機構60が駆動され、加工機構40の加工具43がチャックテーブル10の回転軸心の径方向外側において、チャックテーブル10の保持面10aの上方から該保持面10aに向かって下降せしめられ(
図5のステップS1)、そのときの加工機構40のテーブルエンコーダ22の出力が接触検知部70によって検知される(
図5のステップS2)。なお、このとき、チャックテーブル10と加工具43は共に回転駆動されておらず、停止状態にある。
【0031】
そして、接触検知部70は、テーブルエンコーダ22の出力に変化が生じたか否かを判断し(
図5のステップS3)、テーブルエンコーダ22の出力に変化が生じていない場合(
図5のステップS3:No)には、加工具43の下降(ステップS2)と、テーブルエンコーダ22の出力に変化が生じたか否かの判断(
図5のステップS3)を継続する。因みに、加工具43がチャックテーブル10の保持面10aに接触していない場合には、加工機構40のスピンドル42は、無負荷状態にあるために傾くことなく直線状態を維持するため、テーブルエンコーダ22の出力(出力電流値)に変化が生じない。このため、接触検知部70は、加工具43がチャックテーブル10の保持面10aに接触していないものと判断する。なお、接触検知部70による加工具43のチャックテーブル10の保持面10aへの接触の有無の判断は、テーブルエンコーダ22の出力の変化量の幅が所定の閾値を超えたか否かによって判断するようにしてもよい。
【0032】
他方、接触検知部70がテーブルエンコーダ22の出力の変化を検知した場合(
図5のステップS3:Yes)には、該接触検知部70は、加工具43がチャックテーブル10の保持面10aに接触したものと判断する(
図5のステップS4)。すると、記憶部80は、加工具43がチャックテーブル10の保持面10aに接触した時点における該加工具43の高さ位置を垂直移動エンコーダ65から受信する信号データによって把握し、その高さ位置を記憶部80に記憶することによってセットアップが完了する。因みに、加工具43がチャックテーブル10の保持面10aに接触すると、スピンドル42が負荷を受けて僅かに傾く(軸ブレする)ため、テーブルエンコーダ22の値(出力電流値)に変化が生じる。このため、このテーブルエンコーダ22の値の変化によって加工具43のチャックテーブル10の保持面10aへの接触を検知することができる。
【0033】
[加工装置の作用]
次に、以上のようにセットアップがなされた後に加工装置1によって実施されるワークの加工方法について説明する。
【0034】
図1に示す加工装置1においては、薄い円板状の不図示のワークがチャックテーブル10の保持面10a上にセットされる。すると、チャックテーブル10の保持面10a上に形成された吸引溝11~13と吸引孔14が不図示の吸引源に接続され、これらの吸引溝11~13と吸引孔14に負圧が発生し、この負圧に引かれてワークがチャックテーブル10の保持面10a上に吸引保持される。
【0035】
上述のように、ワークがチャックテーブル10の保持面10a上に吸引保持されると、チャックテーブル10とこれに保持されたワークがテーブル回転機構20によって垂直な軸心を中心として所定の速度で水平に回転駆動される。また、加工機構40においては、加工具モータ41によって加工具43が高速で回転駆動されながら垂直移動機構60によって所定の研削量分だけ下降するとともに、水平移動機構50によって加工具43がY軸方向(ワークの径方向)に移動しながらワークの上面全面を研削する。なお、このときの加工具43の下降量(研削量)は、垂直移動機構60の垂直移動エンコーダ65によって検出される。
【0036】
以上のように、本実施形態に係る加工装置1においては、チャックテーブル10の回転軸心の径方向外側で該チャックテーブル10の保持面10aの上方から加工具43を垂直移動機構60によって保持面10aに接触する方向に移動させているときに、テーブルエンコーダ22の値(出力電流値)に変化が生じると加工具43がチャックテーブル10の保持面10aに接触したと判断し、そのときの加工具43の保持面10aに対する位置を記憶部80が記憶してセットアップを行うようにしたため、タッチセンサや背圧センサなどのセンサを用いることなくセットアップを行うことができる。このため、センサの故障などに伴う時間的ロスが発生することがなく、ワークの加工を効率よく行うことができるという効果が得られる。
【0037】
また、本実施形態に係る加工装置1には、加工具43のチャックテーブル10の保持面10aへの接触を検知するためのタッチセンサや背圧センサなどが設けられていないため、加工具43がチャックテーブル10の保持面10aに接触したときの該加工具43の高さ位置を記憶するセットアップを無人で行うことができ、省力化を実現することができる。また、チャックテーブル10の保持面10aに加工具43が接触したときの該加工具43の高さをセットアップによって記憶することによって、以降に加工するワークに加工具43が接触されるまでに実施されるエアカットの時間を短縮することができ、加工効率の向上を図ることができる。
【0038】
なお、以上の実施形態では、加工具43がチャックテーブル10の保持面10aに接触したか否かをテーブルエンコーダ22の出力に変化が生じたか否かによって判断するようにしたが、加工具43がチャックテーブル10の保持面10aに保持された不図示のワークに接触したか否かをテーブルエンコーダ22の出力に変化が生じたか否かによって判断するようにしてもよい。
【0039】
また、以上の実施形態では、テーブルエンコーダ22の出力に変化が生じたか否かによって加工具43がチャックテーブル10の保持面10aに接触したか否かを判断するようにしたが、スピンドルエンコーダ45の出力に変化が生じたか否かによって加工具43がチャックテーブル10の保持面10aまたは該保持面10aに保持された不図示のワークに接触したか否かを判断するようにしてもよい。
【0040】
さらに、以上は、本発明に係る加工装置を円板状のワークの上面を研削するロータリ平面研削装置に対して適用した形態について説明したが、本発明は、ワークの上面を研削する研削装置以外に、ワークの上面を研磨する研磨装置、ワークの上面を切削する切削装置などに対しても同様に適用して前述と同様の効果を得ることができる。
【0041】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0042】
1:加工装置、2:基台、3:コラム、10:チャックテーブル、10a:保持面、
11~13:吸引溝、14:吸引孔、20:テーブル回転機構、
21:テーブルモータ、22:テーブルエンコーダ、30:X軸移動機構、
31:X軸ガイドレール、32:ベース、33:X軸ボールネジ、
34:X軸サーボモータ、40:加工機構、41:加工具モータ、
42:スピンドル、43:加工具、44:ハウジング、45:スピンドルエンコーダ、 50:水平移動機構、51:Y軸ガイドレール、52:スライド板、
53:Y軸ボールネジ、54:Y軸サーボモータ、60:垂直移動機構、
61:Z軸ガイドレール、62:昇降板、63:Z軸ボールネジ、
64:Z軸サーボモータ、65:垂直移動エンコーダ、70:接触検知部、
80:記憶部