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  • 特開-液体分配装置 図1
  • 特開-液体分配装置 図2
  • 特開-液体分配装置 図3
  • 特開-液体分配装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109218
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】液体分配装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 4/00 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
B01J4/00 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013904
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 一俊
(72)【発明者】
【氏名】倉内 健人
【テーマコード(参考)】
4G068
【Fターム(参考)】
4G068AA03
4G068AB11
4G068AC07
4G068AD01
4G068AD42
(57)【要約】
【課題】供給液の低負荷時における液分配性能の低下を抑制することが可能な液分配装置を提供する。
【解決手段】充填塔の内側に位置し、当該充填塔内を下降する液体を分配して流下させる液体分配装置であって、充填塔の軸方向と垂直な平面上の第1方向に延在する主流路2と、主流路2の上方に位置し、軸方向に延在して主流路2と連通する液導入口3と、主流路2の下方に位置し、第1方向と交差する第2方向に延在して主流路2と連通する、互いに平行に配列された複数の副流路4と、主流路2に位置する1以上のバッフル板5とを備え、バッフル板5の下端は、主流路2の底面から離間し、かつ主流路2に貯留される液体の下限値における液面よりも下方に位置する、液体分配装置1を選択する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填塔の内側に位置し、当該充填塔内を下降する液体を分配して流下させる液体分配装置であって、
前記充填塔の軸方向と垂直な平面上の第1方向に延在する主流路と、
前記主流路の上方に位置し、前記軸方向に延在して前記主流路と連通する液導入口と、
前記主流路の下方に位置し、前記第1方向と交差する第2方向に延在して前記主流路と連通する、互いに平行に配列された複数の副流路と、
前記主流路に位置する1以上のバッフル板と、を備え、
前記バッフル板の下端は、前記主流路の底面から離間し、かつ前記主流路に貯留される前記液体の下限値における液面よりも下方に位置する、液体分配装置。
【請求項2】
前記バッフル板は、上端及び側端のうち、少なくとも1つの端部が前記主流路に固定される、請求項1に記載の液体分配装置。
【請求項3】
前記バッフル板は、一方の面と他方の面とにわたって設けられた1以上の開口部を有する、請求項1に記載の液体分配装置。
【請求項4】
前記副流路の底面に複数の分散孔が配置されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体分配装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体分配装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸留(精留)プロセスや吸収プロセスに広く用いられる充填塔では、気液を向流接触させることで気液間の物質移動を促進し、特定の成分を分離あるいは濃縮する。充填塔の内部には、充填物が充填された充填層が位置しており、充填層内では液が重力を推進力として充填物表面上を液膜あるいは液滴状に流下し、ガス(蒸気)が塔頂塔底の圧力差を推進力として充填層内を上昇する。この過程における気液接触により、気相あるいは液相中の特定の成分が分離/濃縮される。そして、この気液接触を効率的に行うため、流下液が充填層内を一様に流れるようにすることを目的として、充填塔内の充填層の上部に液体分配装置(ディストリビュータ)が設置される。
【0003】
特許文献1の図7には、空気分離するための蒸留塔の液体分配装置として、パイプ型ディストリビュータが開示されている。このパイプ型ディストリビュータは、少なくとも1つのメインチャネルと液を散布する為の開孔を有する複数のアームとを備えて構成されており、メインチャネル底と複数のアーム上部とは相互に重なりあうように配置されている。パイプ型ディストリビュータは、トラフ型に比べて液ホールドアップ量が小さく、蒸留塔の操業変更時に要する時間を抑制できる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5501079号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の構造では、通常はメインチャネルと比較して幅の狭い液導入口に運転液面がある。しかしながら、供給液の低負荷時には液面がメインチャネル内部まで低下する。この場合、メインチャネル内への供給液動圧によってメインチャネル内の液面が長く周期的に変動し、また、このような変動は、特に充填塔径が大きい場合に顕著となる。散布孔からの流出液量は、散布孔上の液深と関係があるため、通常液面位置と比較して多くのアームの液深に関わるメインチャネルでの液面変動は、ディストリビュータの液分配性能に影響を与えるという課題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、供給液の低負荷時における液分配性能の低下を抑制することが可能な液分配装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用する。
[1] 充填塔の内側に位置し、当該充填塔内を下降する液体を分配して流下させる液体分配装置であって、
前記充填塔の軸方向と垂直な平面上の第1方向に延在する主流路と、
前記主流路の上方に位置し、前記軸方向に延在して前記主流路と連通する液導入口と、
前記主流路の下方に位置し、前記第1方向と交差する第2方向に延在して前記主流路と連通する、互いに平行に配列された複数の副流路と、
前記主流路に位置する1以上のバッフル板と、を備え、
前記バッフル板の下端は、前記主流路の底面から離間し、かつ前記主流路に貯留される前記液体の下限値における液面よりも下方に位置する、液体分配装置。
[2] 前記バッフル板は、上端及び側端のうち、少なくとも1つの端部が前記主流路に固定される、[1]に記載の液体分配装置。
[3] 前記バッフル板は、一方の面と他方の面とにわたって設けられた1以上の開口部を有する、[1]又は[2]に記載の液体分配装置。
[4] 前記副流路の底面に複数の分散孔が配置されている、[1]乃至[3]のいずれかに記載の液体分配装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の液体分配装置は、供給液の低負荷時における液分配性能の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る液体分配装置を模式的に示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る液体分配装置を示す側面図である。
図3】本発明の実施形態に係る液体分配装置を示す正面図である。
図4】本発明の実施形態に係る液体分配装置を構成するバッフル板の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について、添付の図面を参照し、実施形態を示して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0011】
<液体分配装置>
先ず、本発明を適用した一実施形態である液体分配装置の構成について、説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る液体分配装置を示す斜視図である。また、図2は、本発明の実施形態に係る液体分配装置を示す側面図である。また、図3は、本発明の実施形態に係る液体分配装置を示す正面図である。
図1図3に示すように、本実施形態の液体分配装置1は、主流路2と液導入口3と複数の副流路4と1以上のバッフル板5とを備えて、概略構成されている。
本実施形態の液体分配装置1は、充填塔の内側に位置し、当該充填塔内を下降する液体を分配して流下させる装置である。
【0012】
主流路(メインチャネル)2は、矩形の断面を持つ中空の筒状部材である。
主流路2は、充填塔の内部の、軸方向と垂直な平面上であって、この充填塔の中心を含む一の方向(第1方向)に延在されて設けられている。なお、充填塔の中心を含む一の方向とは、いずれか一の方向の直径を意味する。また、本明細書では、主流路2が延在する方向をX軸方向という。
【0013】
主流路2の底面は、X方向の幅(奥行)が蒸留塔の内径とほぼ同じであり、Y方向の幅(幅)が狭い、矩形の形状となっている。ここで、X方向の幅は、蒸留塔の内径から決定され、Y方向の幅は、後述する液導入口3に液体を供給する管8の径から決定される。
主流路2の形状により、液ホールドアップ量を低減させることができる。
【0014】
主流路2に供給された液体は、主流路2の下方に配置された各副流路(アーム)4に供給される。
【0015】
液導入口3は、主流路2の上方に位置し、蒸留塔の軸方向(Z方向)に延在して主流路2と連通する。液導入口3は、図1~3に示すように、主流路2の中央上部に接続されている。また、図1に示すように、液導入口3の上方には、液導入口3に液体を供給する管8が配置されている。
【0016】
副流路(アーム)4は、図1及び図2に示すように、矩形の断面を持つ中空の筒状部材である。複数の副流路4は、主流路2と直交する第2方向(Y方向)にそれぞれ延在している。また、副流路4は、主流路2の下方に位置し、主流路2の中央部で主流路2と内部空間が連通するように固定されている。複数の副流路4は、互いに平行にそれぞれ長さが異なるように設けられている。具体的には、両端部が短く、中央部が長く、中央部から両端部に向かって漸次短くなるように設けられている。
【0017】
副流路4の底面には、副流路4が延在する方向(Y方向)に、所定の間隔で所定数の分散孔4aがそれぞれ設けられている。
なお、図1及び図2に例示された各副流路4の断面は矩形であるため、液体分配装置1の底面は平面となっている。すなわち、各副流路4に設けられた複数の分散孔4a(図1を参照)は、すべて同一平面上に配置されている。また、分散孔4aが配置された平面内において、分散孔4aが配置された各地点が、液散布点となる。
【0018】
バッフル板(邪魔板)5は、図1図3に示すように、主流路2内に位置する。バッフル板5は、主流路2の上面2bから垂直方向(Z方向)に垂れ下がったカーテン状の部材である。すなわち、バッフル板5の上端は、主流路2の上面2bに固定されている。一方、バッフル板5の下端は、主流路2の底面2aから離間するように設けられており、主流路2に貯留される液体の下限値(運転時の最低液面)よりも下方に位置する。
【0019】
ここで、本実施形態の液体分配装置1では、主流路2の高さと副流路4の高さとを含めた全高さをHmとし、主流路2の上面2bからバッフル板5の下端までの長さをHbとした場合に、少なくとも、Hb/Hm≦80(%)、好ましくは、Hb/Hm≦90(%)の関係を満たす。
上記関係を満たす場合、バッフル板5の下端は、主流路2に貯留される液体の下限値(運転時の最低液面)よりも下方に位置することとなる。
【0020】
バッフル板5は、X軸方向に垂直な面、すなわち、Y軸方向に平行な面となるように、主流路2内に配置されている。また、複数のバッフル板5は、X軸方向に所要の間隔で互いに平行な面となるように、主流路2内に配置されている。
【0021】
本実施形態の液体分配装置1では、液導入口3から主流路2内に液体が供給される。これにより、図1図3に示すように、この主流路2内は、液体で満たされる。次いで、主流路2内の液体は、主流路2から各副流路4内に分配される。そして、各副流路4において、それぞれの分散孔4aから液体が下方に排出されることになる。
【0022】
ところで、液体分配装置1において、高負荷(通常運転)時には液導入口3の中に液面(図2中に示すH)が位置する。この場合、X軸方向を移動するような液面変動は液導入口のみであり、各副流路4において均一な液分配が可能となる。
【0023】
これに対して、液体分配装置1において、低負荷時には主流路2の上面2bよりも下方に液面(図2中に示すH)が位置する。この場合、液導入口3から落下する液体の影響で主流路2内の液面が変動するため、主流路2のX軸方向を移動する液面の変動が発生する。この液面の変動は、ディストリビュータに取付けられた全ての副流路4の底面に設けられた散布孔から流出する液量に影響するため、液偏流の原因となる。
【0024】
本実施形態の液体分配装置1によれば、主流路2内に1以上のバッフル板5が設けられており、バッフル板5の下端が主流路2に貯留される液体の下限値(運転時の最低液面)よりも下方に位置する構成となっている。このため、低負荷時において、主流路2の上面2bよりも下方に液面が位置する場合であっても、液導入口3から落下する液体の影響で主流路2のX軸方向全体を行き来する液面変動の発生を抑制できる。この液面の変動を抑制することで、副流路4からの流出液量を安定させることができるので、液偏流を抑制できる。
【0025】
以上説明したように、本実施形態の液体分配装置1によれば、供給液の低負荷時における液分配性能の低下を抑制できる。
したがって、本実施形態の液体分配装置1を空気分離装置の蒸留塔に適用した場合、蒸留塔内を下降する液体の偏流を抑制できる。
【0026】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上述した実施形態の液体分配装置1によれば、バッフル板5が平板状である構成を一例として説明したが、これに限定されない。
【0027】
図4は、本発明の実施形態に係る液体分配装置を構成するバッフル板の変形例を示す平面図である。
図4に示すように、本実施形態の変形例である液体分配装置1’は、X軸方向に平面視した際、一方の面と他方の面とにわたって設けられた1以上の開口部5Aを有するバッフル板5’を備える。
【0028】
液体分配装置1’によれば、バッフル板5’が上端よりに複数の開口部5Aを有するため、主流路2内に滞留した気泡を排除するとともに、低負荷運転時において気相の連通が可能となるため、主流路2のX軸方向を移動する液面の変動をさらに抑制できる。
【0029】
また、上述した実施形態の液体分配装置1によれば、バッフル板5の上端が主流路2の上面2bに固定されている態様を一例として説明したが、これに限定されない。バッフル板5は、上端及び側端のうち、少なくとも1つの端部が主流路2に固定されていればよい。
例えば、バッフル板5の側端が主流路2の内周面に固定され、バッフル板5の上端と主流路2の上面2bとの間に隙間が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1,1’・・・液体分配装置
2・・・主流路
3・・・液導入口
4・・・副流路
5・・・バッフル板
5A・・・開口部
図1
図2
図3
図4