(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109331
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】原子吸光光度計の制御方法、および原子吸光光度計
(51)【国際特許分類】
G01N 21/31 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
G01N21/31 610B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014066
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 理志
(72)【発明者】
【氏名】戸辺 早人
(72)【発明者】
【氏名】山本 和子
(72)【発明者】
【氏名】西村 崇
(72)【発明者】
【氏名】石田 浩康
(72)【発明者】
【氏名】櫛田 芳昭
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB04
2G059CC02
2G059DD12
2G059DD16
2G059EE01
2G059EE11
2G059JJ01
2G059JJ05
2G059JJ06
2G059MM03
2G059MM04
2G059PP01
(57)【要約】
【課題】原子吸光光度計において複数の元素に対応して測定の制御パラメータの変更を行う際に、測定精度を維持しつつ、測定時間の最適化を自動的に行う。
【解決手段】試料に含まれる複数の元素の測定を行う原子吸光光度計の制御方法であって、前記複数の元素の測定順に従って、測定対象の元素に対応した制御パラメータに切り替える切り替え工程と、前記制御パラメータを切り替えた後、当該制御パラメータに対応する元素に対する吸光度の測定を開始する測定工程と、前記測定工程にて測定された吸光度の安定性を判定する第1の判定工程と、前記第1の判定工程にて安定していると判定された場合、前記測定にて測定される吸光度の記録を開始し、所定の時間、記録する記録工程と、を有し、前記測定順に従って、前記切り替え工程、前記測定工程、前記判定工程、および前記記録工程を繰り返す。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に含まれる複数の元素の測定を行う原子吸光光度計の制御方法であって、
前記複数の元素の測定順に従って、測定対象の元素に対応した制御パラメータに切り替える切り替え工程と、
前記制御パラメータを切り替えた後、当該制御パラメータに対応する元素に対する吸光度の測定を開始する測定工程と、
前記測定工程にて測定された吸光度の安定性を判定する第1の判定工程と、
前記第1の判定工程にて安定していると判定された場合、前記測定にて測定される吸光度の記録を開始し、所定の時間、記録する記録工程と、
を有し、
前記測定順に従って、前記切り替え工程、前記測定工程、前記判定工程、および前記記録工程を繰り返す、制御方法。
【請求項2】
前記制御パラメータは、少なくとも可燃性ガス流量を含む、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記測定順は、前記可燃性ガス流量を切り替えた際の変化量が大きい順、または、小さい順にて規定される、請求項2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記第1の判定工程の判定の際に用いられる第1の時定数と、前記記録工程にて記録を行っている際に用いられる第2の時定数は異なり、
前記第2の時定数は、前記第1の時定数よりも小さい、請求項1に記載の制御方法。
【請求項5】
前記測定工程にて測定された吸光度が、所定回数以上、閾値を超えたか否かを判定する第2の判定工程を更に有し、
前記記録工程は、前記第1の判定工程にて安定していると判定され、かつ、前記第2の判定工程にて前記閾値を超えたと判定された場合、吸光度の記録を開始する、請求項1に記載の制御方法。
【請求項6】
前記記録工程は、前記測定工程により測定が開始されてから所定の時間が経過した際に、吸光度の記録を開始する、請求項1に記載の制御方法。
【請求項7】
前記記録工程は、前記第1の判定工程にて安定していると判定されてから所定の時間が経過した後、吸光度の記録を開始する、請求項1に記載の制御方法。
【請求項8】
既知の試料を測定して基準値を導出する導出工程を更に有し、
前記測定工程は、前記基準値と、前記測定により測定される信号とを用いて、前記吸光度および前記吸光度の安定性を算出することを特徴とする、請求項1に記載の制御方法。
【請求項9】
試料に含まれる複数の元素の測定を行う原子吸光光度計であって、
前記測定を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、
前記複数の元素の測定順に従って、測定対象の元素に対応した制御パラメータに切り替えることと、
前記制御パラメータを切り替えた後、当該制御パラメータに対応する元素に対する吸光度の測定を開始することと、
前記測定された吸光度の安定性を判定することと、
前記吸光度が安定していると判定された場合、前記測定にて測定される吸光度の記録を開始し、所定の時間、記録することと、
を前記測定順に従って繰り返す、原子吸光光度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子吸光光度計の制御方法、および原子吸光光度計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、同一の試料を測定中に、測定対象となる元素を切り替えながら連続して多元素測定を行う原子吸光光度計が知られている。このような原子吸光光度計では、測定感度および測定精度を保つために、測定元素ごとに最適な制御パラメータが予め定義されている。
【0003】
測定精度を向上させるためには、その測定元素の測定条件に合わせて、測定の開始と終了のタイミングを切り替える必要がある。例えば、特許文献1では、フレーム原子吸光光度計において、測定開始の実行時機を、吸光度の増加量及び吸光度の安定性から自動的に決定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、特許文献1では、1つの未知試料に対して、測定元素を切り替えて測定を行う構成については考慮されていない。未知試料に含まれると想定される測定元素に応じて、測定に適した制御パラメータは異なるが、例えば、制御パラメータの1つである可燃性ガス流量については、測定に適した状態として安定化するまでに要する時間を予測することが困難であった。特に、切り替え前後の可燃性ガス流量の組み合わせによっても安定化までに要する時間が変動し得る。そのため、1つの未知試料の測定中において、制御パラメータを切り替えて測定を行う場合、ユーザが測定タイミングを適宜調整する必要があった。ユーザによる調整の結果、同じ測定元素の組み合わせであっても、ユーザに依存した測定時間を要してしまう。また、測定元素の数が増えるに応じて、ユーザの手間も増加してしまう。
【0006】
原子吸光光度計にて、1つの未知試料に対して複数の元素を測定する場合において、測定時間全体の最適化、およびユーザの利便性が求められている。特に、上述したような制御パラメータの切り替えの際の変更内容に応じて、測定の精度を維持するために要する時間に差異が生じる。そのため、測定精度を考慮しつつ、より効率的な変更を自動的に行う構成が求められている。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑み、原子吸光光度計において複数の元素に対応して測定の制御パラメータの変更を行う際に、測定精度を維持しつつ、測定時間の最適化を自動的に行う構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は以下の構成を有する。すなわち、試料に含まれる複数の元素の測定を行う原子吸光光度計の制御方法であって、
前記複数の元素の測定順に従って、測定対象の元素に対応した制御パラメータに切り替える切り替え工程と、
前記制御パラメータを切り替えた後、当該制御パラメータに対応する元素に対する吸光度の測定を開始する測定工程と、
前記測定工程にて測定された吸光度の安定性を判定する第1の判定工程と、
前記第1の判定工程にて安定していると判定された場合、前記測定にて測定される吸光度の記録を開始し、所定の時間、記録する記録工程と、
を有し、
前記測定順に従って、前記切り替え工程、前記測定工程、前記判定工程、および前記記録工程を繰り返す。
【0009】
また、本発明の別の形態は以下の構成を有する。すなわち、試料に含まれる複数の元素の測定を行う原子吸光光度計であって、
前記測定を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、
前記複数の元素の測定順に従って、測定対象の元素に対応した制御パラメータに切り替えることと、
前記制御パラメータを切り替えた後、当該制御パラメータに対応する元素に対する吸光度の測定を開始することと、
前記測定された吸光度の安定性を判定することと、
前記吸光度が安定していると判定された場合、前記測定にて測定される吸光度の記録を開始し、所定の時間、記録することと、
を前記測定順に従って繰り返す。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、原子吸光光度計において複数の元素に対応して測定の制御パラメータの変更を行う際に、測定精度を維持しつつ、測定時間の最適化を自動的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る原子吸光光度計を用いる測定装置の構成例を示す概略図。
【
図2】原子吸光光度計における測定の際の吸光度の安定化を説明するためのグラフ図。
【
図3A】原子吸光光度計における測定の際の吸光度の安定化の例を説明するためのグラフ図。
【
図3B】原子吸光光度計における測定の際の吸光度の安定化の例を説明するためのグラフ図。
【
図4】本発明の一実施形態に係る測定タイミングを説明するための図。
【
図5】本発明の一実施形態に係る判定に係るパラメータの例を示す表図。
【
図6】本発明の一実施形態に係る基準値導出処理のフローチャート。
【
図7】本発明の一実施形態に係る測定処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面などを参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を説明するための一実施形態であり、本発明を限定して解釈されることを意図するものではなく、また、各実施形態で説明されている全ての構成が本発明の課題を解決するために必須の構成であるとは限らない。また、各図面において、同じ構成要素については、同じ参照番号を付すことにより対応関係を示す。
【0013】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について説明を行う。
【0014】
[装置構成]
図1は、本発明に係る制御方法を適用可能な原子吸光光度計100の構成例を示す概略図である。本実施形態に係る原子吸光光度計100は、バーナを用いて原子化を行うフレーム法を用いたフレーム原子吸光光度計である。
【0015】
中央処理装置10は、原子吸光光度計100全体の制御を司る。中央処理装置10は、例えば、各部位による試料の測定動作や、得られた測定結果に基づいて分析処理などを行う。中央処理装置10は、処理部や記憶部を含んで構成される。処理部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)のうち少なくとも1つを用いて構成されてよい。処理部が、記憶部に記憶された各種プログラムを読み出して実行することにより、中央処理装置10における各種機能を実現してよい。記憶部は、原子吸光光度計100における測定動作に用いられる各種プログラムや設定データ等が保持される記憶領域である。記憶部は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等の揮発性や不揮発性の記憶装置により構成される。
【0016】
また、中央処理装置10は、操作部11を介して設定パラメータや各種情報を受け付け、当該情報に基づいて原子吸光光度計100を動作させる。なお、本実施形態においては、原子吸光光度計100の各部位を制御するための中央処理装置10が、各部位を包括的に制御するものとして説明するが、部位ごとに別個の制御部を設け、それらが連携することで原子吸光光度計100が動作するような構成であってもよい。また、本実施形態では、中央処理装置10と、測定のための各部位が一体となった装置構成の例を示すが、これに限定するものではなく、中央処理装置(例えば、情報処理装置)と測定部が個々の装置として構成され、それらが連携して、後述する動作を実施するような構成であってもよい。
【0017】
操作部11は、原子吸光光度計100のユーザによる各種指示や設定を受け付けるためのインターフェースである。表示部12は、測定結果やUI(User Interface)を表示するための部位である。なお、操作部11と表示部12とが一体となったタッチパネルディスプレイなどが用いられてもよい。IF(Interface)部17は、外部装置(不図示)とデータの送受信を行うためのインターフェースであり、有線/無線の通信部にて構成されてもよい。
【0018】
更に、原子吸光光度計100は、複数のホロカソードランプ7、分光器8、検知器9、AD(Analog to Digital)変換器13、可燃性ガス流量制御部16、および原子化部20を含んで構成される。ホロカソードランプ7は、輝光光源として機能し、複数のホロカソードランプが切り替え可能に構成される。ホロカソードランプ7は、所定の波長の光を射出するために、複数種類の元素のうちのいずれかを利用するように構成され、測定元素に応じて利用するホロカソードランプが切り替えられる。ホロカソードランプ7は、中央処理装置10からの指示に基づき、射出する光の量やタイミングが制御される。ホロカソードランプ7から射出される光の光路上には、光の向きを調整するために複数の反射部材(不図示)が設置されてよい。
【0019】
分光器8は、スリット駆動部14、および、測定元素に適した分光素子(不図示)を移動させる波長駆動部15を含んで構成される。分光素子としては、例えば、回折格子を用いることが可能であるが、これに限定するものではなく、プリズム、光学フィルタなどが用いられてよい。回折格子は、所定の波長の単色光を得るために光を分離する。波長駆動部15は、中央処理装置10からの指示に基づき、回折格子を回転駆動させることで角度を切り替え、任意の波長の単色光を取り出す。波長駆動部15は、不図示のモータや減速機構などを含んで構成される。スリット駆動部14は、スリット(不図示)のスリット幅を調整することで光の分解能を調整する。
【0020】
可燃性ガス流量制御部16は、測定の際に用いられる可燃性ガスが収容された収容部(不図示)からの可燃性ガスの流量を、中央処理装置10の指示に基づいて制御する。
【0021】
原子化部20は、測定対象である試料1を燃やし、原子の状態にさせるための機能を有する、いわゆるフレーム法を用いた原子化部として動作する。試料1の原子化法として、フレーム法を例に挙げて説明するが、これに限定するものではなく、例えば、グラファイト炉法、水素化物発生法、または還元気化法などが用いられてもよい。
【0022】
測定の際には、試料1が試料導入管2から連続的に吸引され、噴霧器3により霧状態となってチャンバ4内で可燃性ガスおよび助燃ガスと混合された上で、バーナ5に導入される。ここでの吸引の条件は、測定に応じて切り替えられてよいが、例えば、約5ml/minにて行われてよい。導入された霧状態の試料1は、バーナ5により加熱され、フレーム6中で原子化される。そして、バーナ5にて原子化された試料1に対して、ホロカソードランプ7による輝光が照射される。
【0023】
中央処理装置10は、試料1に対するデータを取得する前に、波長駆動部15、スリット駆動部14、可燃性ガス流量制御部16、ホロカソードランプ7、検知器9の設定を行う。そして、原子化部20にて試料1を原子化させ、原子化された試料1の原子蒸気にホロカソードランプ7からの測定光を照射させる。原子蒸気により吸収された測定光は、分光器8に入り、測定する波長の光のみが検知器9に導かれる。検知器9では、光の強度を電気信号に変換してAD変換器13に出力する。AD変換器13は、検知器9から得た電気信号をデジタル信号として中央処理装置10に出力する。中央処理装置10では、デジタル信号に測定用の時定数処理を行い、吸光度を算出する。算出された吸光度は、操作部11に出力され表示部12に表示される。
【0024】
原子吸光光度計100においては、上記のように吸引された試料1の測定が行われるが、測定結果を記憶部(不図示)に記憶する際には、測定結果全てを記憶させるのではなく、測定結果として適した部分のみを記憶する。中央処理装置10により記憶タイミングが特定され、記憶部へのデータの書き込みが開始される。測定結果としてのデータ取得は、予め設定された時間にわたって行われ、この時間が経過後にデータ取得完了となる。
【0025】
(吸光度の安定化)
1の試料に対し、複数の元素を順番に測定する場合、測定対象の元素に適した波長、スリット幅、可燃性ガス流量、ホロカソードランプの種類、検知器9の検出電圧を切り替える。これらの切り替えには、切り替え内容に応じた時間を要する。
【0026】
ここで、可燃性ガス流量を変化させることを考える。上述したように、原子化部20において、試料1の吸引、試料1の霧状態への変換、ガスとの混合、バーナ5での加熱といった一連の流れで原子化が行われる。このとき、可燃性ガス流量を瞬時に切り替えたとしても、試料1に対する原子化の影響が現れるまでには一定の時間を要する。ここで安定化に要する時間は、波長、スリット幅、ホロカソードランプ、検知器9の電圧の切り替えよりも長い時間を要するものとして説明する。
【0027】
原子吸光光度計100においては、測定の際に、その測定に適した時定数処理を行い、吸光度を算出している。
図2は、時定数を1秒とした場合において、測定時の可燃性ガス流量を、2.0L/minから2.5L/minに変更した際の吸光度の変化の例を示す。
図2において、横軸は時間[秒]を示し、縦軸は吸光度[abs]を示す。
【0028】
0~3秒の期間では、可燃性ガス流量2.0L/minにて測定を行い、3秒の時点で、可燃性ガス流量2.5L/minに瞬時に切り替えたとする。グラフ200に示すように、吸光度が徐々に増加し、10秒の時点で吸光度が略安定した状態となっている。すなわち、3~10秒の期間T1(=7秒)が安定化のために必要となっている。より精度の高い測定を行う場合には、吸光度の値が安定した以降、すなわちT2の範囲にてデータの記録を行ことが好ましい。
【0029】
図3Aおよび
図3Bは、吸光度の安定化を説明するための別の例を示すグラフ図である。
図3Aおよび
図3Bにおいて、横軸は時間[秒]を示し、縦軸は吸光度[abs]を示す。
図3Aでは、時定数を0.02秒とした場合において、測定時の可燃性ガス流量を、2.0L/minから2.2L/minに変更した場合における吸光度の変化の例を示す。
【0030】
0~4.5秒の期間では、可燃性ガス流量2.0L/minにて測定を行い、4.5秒の時点で、可燃性ガス流量2.2L/minに瞬時に切り替えたとする。グラフ300に示すように、吸光度が徐々に増加し、7.5秒の時点で略吸光度が安定している。すなわち、4.5~7.5秒の期間T1(=3秒)が安定化のために必要となっている。
図3の例と比較して、可燃性ガス流量の変化量は大きく変わらないが(
図2の場合では変化量は0.5L/minであり、
図3Aの場合では変化量は0.2L/minである)、吸光度が安定するまでの時間には差異が生じている。
【0031】
図3Bでは、時定数を0.02秒とした場合において、測定時の可燃性ガス流量を、2.0L/minから4.5L/minに変更した場合における吸光度の変化の例を示す。
【0032】
0~3.2秒の期間では、可燃性ガス流量2.0L/minにて測定を行い、3.2秒の時点で、可燃性ガス流量4.5L/minに瞬時に切り替えたとする。グラフ310に示すように、吸光度が一旦増加してその後低下し、7.2秒の時点で略吸光度が安定している。すなわち、3.2~7.2秒の期間T1(=4秒)が安定化のために必要となっている。
【0033】
設定の切り替えによって生じる待ち時間(所要時間)に関し、例えば、波長やスリット幅の調整は、機械的な動作状態を監視することで正確な完了タイミングを特定することができる。一方、可燃性ガス流量を変化させた際の影響は、その切り替えタイミングを監視するのみでは十分では無い。
図2、
図3A、
図3Bに示すように、安定化までの時間は、条件等に応じて様々である。そのため、吸光度が安定するまでの時間を正確に予測することは困難である
【0034】
例えば、予め待ち時間を定義する構成が考えられる。しかし、予め待ち時間を定義した場合には、測定時間において無駄な時間を含んでしまったり、待ち時間が不足してしまったりする慮がある。結果として、所定の待ち時間が無駄な時間を含む場合には、測定時間が長くなったり、試料1や可燃性ガスの消費が増大したりしてしまう。また、所定の待ち時間にて測定時間が不足する場合には、吸光度が安定する前にデータ取得を開始することとなり、分析精度を低下させてしまう要因となる。例えば、80の試料それぞれに対して、4つの元素測定を行う場合、予め規定された待ち時間に余裕となる時間を2秒として設定すると、640秒(=80×4×2)の測定時間の増加が生じてしまう。
【0035】
本実施形態では、上記のような制御パラメータを切り替えた際に、測定に適した状態である安定化したタイミングを特定することで、精度の高い測定と、測定時間の最適化を自動的に行うことを可能とする構成を実現する。
【0036】
[制御処理]
図4は、本実施形態に係る測定時におけるデータ取得の際のタイミングを説明するための図である。
図4において、横軸は時間[秒]を示し、縦軸は吸光度[abs]を示す。t1のタイミングにて各種部位の切り替え動作を開始し、t2のタイミングにて切り替え動作が完了したものとする(期間T0)。切り替え動作が完了したタイミングt2にて、
図7に示す処理を開始する。そして、吸光度が安定化したと判定されたタイミングt3にて、測定結果としてのデータの記録を開始する。その後、タイミングt4までデータの記録を継続する。
【0037】
なお、
図2の例では時定数を1秒とし、
図3Aおよび
図3Bの例では時定数を0.02として設定して測定を行っている。この例に示すように、時定数を短く設定することで、安定化を判定するまでの時間を短縮することができる。そこで、本実施形態では、安定化を判定するための時定数(「第1の時定数」とも称する)は、測定時の時定数(「第2の時定数」とも称する)よりも短く設定する。時定数の設定変更について、より具体的には、後述するフローチャートと併せて説明する。なお、本明細書にて、「第1の」、「第2の」といった表現を用いることがあるが、これは他の要素と区別するために用いているに過ぎず、限定的に解釈されるべきではない。
【0038】
図5は、本実施形態に係る処理の判定の際に利用される閾値を説明するための表図である。なお、
図5に示す各値は一例であり、これに限定するものではない。各閾値の具体的な利用については、
図7にて後述するフローチャートと併せて説明する。
【0039】
本実施形態では、4種類の閾値を用いる。閾値Aは、試料1の有無、すなわち、試料1を検出したか否かを判定するための閾値である。閾値Bは、測定している試料1の検出値が安定しているか否かを判定するための閾値である。閾値Cは、データの取り込みを開始するための時間が経過したか否かを判定するための閾値である。閾値Dは、測定開始から所定の時間が経過したか否かを判定するための閾値である。各閾値に対して、初期値、および設定可能な範囲が予め規定される。
【0040】
なお、各閾値は、試料1に対する複数の元素の測定において、共通的に同じ値を用いてもよいし、元素ごとに変更してもよい。ここでは、いずれの元素の測定においても、共通的に同じ値を用いるものとして説明する。
【0041】
以下、本実施形態に係る制御処理について、
図6、
図7を用いて説明する。まず、本実施形態では、測定の際に基準値となる値を検出する処理を行う。そして、その基準値を用いて、試料1に対する複数の元素の測定を行う。
【0042】
(基準値検出処理)
図6は、本実施形態に係る原子吸光光度計100における基準値検出処理のフローチャートである。本実施形態において、本処理フローは、中央処理装置10において、処理部が記憶部に記憶されたプログラムを読み出して実行し、各部位を制御することで実現されてよい。本処理フローは、原子吸光光度計100が起動した際に実行されてよいし、ユーザの指示に起因して実行されてもよい。また、本処理フローを開始する前に、基準値検出用の試料が原子化部20にて原子化可能に設置されているものとする。
【0043】
S601にて、中央処理装置10は、時定数を基準判定用の時定数に設定する。すでに測定用の時定数が設定されていた場合には、基準用の時定数に変更する。基準用の時定数は、例えば、0.02秒が用いられてよい。
【0044】
S602にて、中央処理装置10は、基準判定用の試料を装置内に導入し、原子化部20による原子化を開始させる。基準判定用の試料は特に限定するものでは無いが、例えば、精製水を用いてよい。
【0045】
S603にて、中央処理装置10は、所定の時間間隔ごとに、所定のデータ数を取得する。例えば、20msごとに、50のデータが取得される構成であってよい。ここでのデータ取得のためのパラメータは、原子吸光光度計100のユーザが任意に設定可能であってもよい。
【0046】
S604にて、中央処理装置10は、S603にて取得したデータに基づいて、平均吸光度、最大吸光度、および最小吸光度を導出する。
【0047】
S605にて、中央処理装置10は、S604にて導出した平均吸光度、最大吸光度、および最小吸光度から、ノイズ高さ値、およびノイズ幅値を算出する。各値は以下の式(1)、式(2)を用いて算出する。以下、これらのデータを「ブランクデータ」とも称する。
(ノイズ高さ値)=(平均吸光度) ・・・(1)
(ノイズ幅値)=(最大吸光度)-(最小吸光度) ・・・(2)
そして、中央処理装置10は、算出したノイズ高さ値、およびノイズ幅値を記憶部に記憶する。
【0048】
S606にて、中央処理装置10は、時定数を測定用の時定数に設定する。測定用の時定数は、例えば、1秒が用いられてよい。S601にて測定用の時定数が設定されていた場合、その値へ戻す。そして、本処理フローを終了する。
【0049】
(測定処理)
図7は、本実施形態に係る原子吸光光度計100における測定処理のフローチャートである。本実施形態において、本処理フローは、中央処理装置10において、処理部が記憶部に記憶されたプログラムを読み出して実行し、各部位を制御することで実現されてよい。本処理フローが開始される前に、
図6による処理フローが実行されて基準値が取得されているものとする。
【0050】
また、本実施形態に係る原子吸光光度計100は、1つの試料1に対して複数の元素の測定が可能である。各元素に対する測定時の制御パラメータは予め規定され利用可能に定義されているものとする。制御パラメータは様々な項目が含まれてよく、例えば、測定波長、スリット幅、可燃性ガスの流量、測定に利用するホロカソードランプ7の種類、ホロカソードランプ7の点灯電流、検知器9の電圧などが挙げられる。
【0051】
S701にて、中央処理装置10は、試料1の測定において、複数の元素に対する測定順を示す情報を取得する。ここでの測定順は、ユーザにより指定されてもよいし、中央処理装置10側にて任意の条件に基づいて決定されてもよい。測定元素については特に限定するものではないが、例えば、金属元素である69の元素(Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Th、U)のうちの少なくとも2つが指定されてよい。また、測定順についても特に限定するものでは無いが、制御パラメータを切り替えた際の可燃性ガス流量の変化が少ない順に、元素の測定が行われることが好ましい。
【0052】
S702にて、中央処理装置10は、S701にて取得した測定順に基づき、未測定の元素のうちの次に測定する元素の測定条件を取得する。測定条件、すなわち、測定の際の制御パラメータは、測定元素に応じて予め規定され、データベースとして記憶部に記憶されている。
【0053】
S703にて、中央処理装置10は、S702にて取得した測定条件に基づいて、各部位を制御し、測定可能な状態に切り替える。この時点が、
図4に示したタイミングt1に相当する。
【0054】
S704にて、中央処理装置10は、判定用の時定数を設定する。判定用の時定数は、0.02秒が用いられてよく、これは、
図6の処理フローにて用いた基準判定用の時定数と同一であってよい。
【0055】
S705にて、中央処理装置10は、タイムアウト判定のために、計時部(不図示)により経過時間のカウントを開始する。既にカウントされていた場合には、中央処理装置10は、初期化を行った上で、カウントを開始する。
【0056】
S706にて、中央処理装置10は、測定動作を開始する。なお、S705とS706の処理は略同時に行われてよい。この時点が、
図4に示したタイミングt2に相当する。
【0057】
S707にて、中央処理装置10は、測定された信号に基づいて、吸光度を算出する。吸光度は、基準値検出処理にて算出されたブランクデータであるノイズ高さ値を用いて、以下の式(3)により算出されてよい。
(吸光度算出値)=(現在の測定された吸光度値)-(ノイズ高さ値) ・・・(3)
【0058】
S708にて、中央処理装置10は、S707にて算出された吸光度算出値と、判定値Aを比較する。判定値Aは、
図5に示すように予め規定されているものとする。吸光度算出値が判定値A以上である場合(S708にてYES)、中央処理装置10の処理はS709へ進む。吸光度算出値が判定値A未満である場合(S708にてNO)、中央処理装置10の処理はS712へ進む。
【0059】
S709にて、中央処理装置10は、吸光度算出値が所定回数以上連続して、判定値A以上となったか否かを判定する。つまり、所定回数以上にて判定値Aを超えたことにより、ノイズではなく、吸光度が確実に判定値Aを超えたと判定する。ここでの所定回数は例えば、2回が用いられてよいが、特に限定するものではない。要求される検出精度に応じて、所定回数が変更されてよい。また、ここでは、連続して判定値Aを超えた回数を判定したが、単に判定値Aを超えた回数をカウントして用いてもよい。所定回数以上連続して判定値Aを超えた場合(S709にてYES)、中央処理装置10の処理はS710へ進む。一方、所定回数よりも判定値Aを超えた回数が少ない場合(S709にてNO)、中央処理装置10の処理はS712へ進む。
【0060】
S710にて、中央処理装置10は、測定された信号に基づいて、吸光度の安定性を算出する。吸光度の安定性は、基準値検出処理にて検出されたブランクデータであるノイズ幅値を用いて、以下の式(4)により算出されてよい。
(吸光度の安定性)={(所定の時間間隔における最大吸光度)-(所定の時間間隔における最小吸光度)-(ノイズ幅値)}/(所定の時間間隔における最大吸光度)×100 ・・・(4)
【0061】
式(4)において、「所定の時間間隔」は、特に限定するものでは無いが、例えば、120msが用いられてよい。また、「所定の時間間隔」は、
図6のS603の処理にてデータを取得する際の時間間隔や、後述するS713の工程における待機時間との関係に応じて規定されてもよい。
【0062】
S711にて、中央処理装置10は、S710にて算出した吸光度の安定性と、安定性判定値Bとを比較する。このとき、安定性判定値Bは、測定された吸光度に応じて切り替えられる。
図5の例の場合、以下の4つの条件に基づいて用いる安定性判定値Bが選択される。
0.5≦吸光度(abs)の場合:B1(=10%)
0.1≦吸光度(abs)<0.5の場合:B2(=10%)
0.01≦吸光度(abs)<0.1の場合:B3(=20%)
吸光度(abs)<0.01の場合:B4(=30%)
【0063】
そして、吸光度の安定性が判定値B以下である場合(S711にてYES)、中央処理装置10の処理はS712へ進む。一方、吸光度の安定性が判定値Bより大きい場合(S711にてNO)、中央処理装置10の処理はS714へ進む。
【0064】
S712にて、中央処理装置10は、現在のカウント時間が、タイムアウト時間D以上か否かを判定する。タイムアウト時間Dは、
図5に示す値(本例では、5秒)が参照される。現在のカウント時間がタイムアウト時間D以上である場合(S712にてYES)、中央処理装置10の処理はS714へ進む。一方、現在のカウント時間がタイムアウト時間D未満である場合(S712にてNO)、中央処理装置10の処理はS713へ進む。
【0065】
S713にて、中央処理装置10は、所定時間待機する。ここでの待機時間は、予め規定されているものとし、例えば、10msが用いられてよい。待機時間が経過後、中央処理装置10の処理は、S707へ進む。
【0066】
S714にて、中央処理装置10は、測定用の時定数を設定する。例えば、測定時の時定数として、1秒が用いられてよい。測定用の時定数は、予め規定されているものとする。なお、本実施形態において、判定時の時定数は、測定時の時定数よりも短いものとする。
【0067】
S715にて、中央処理装置10は、所定のデータ取り込み開始待ち時間Dの間、待機する。待ち時間Dは、測定された吸光度に応じて切り替えられる。
図5の例の場合、以下の2つの条件に基づいて、待ち時間Dが選択される。そして、待ち時間Dが経過後、中央処理装置10の処理はS716へ進む。
0.01≦吸光度(abs)の場合:C1(=0秒)
0.01>吸光度(abs)の場合:C2(=0秒)
【0068】
S716にて、中央処理装置10は、測定データを記憶部に記憶するように取り込みを開始する。このとき、取り込みを開始した際に取り込み時間のカウントを開始する。
【0069】
S717にて、中央処理装置10は、測定データの取り込みを開始してから所定の時間が経過後、取り込みを終了する。ここでの所定時間は予め規定されているものとする。そして、中央処理装置10の処理は、S718へ進む。
【0070】
S718にて、中央処理装置10は、試料1に対して未測定の元素があるか否かを判定する。未測定の元素がある場合(S718にてYES)、中央処理装置10の処理はS703へ戻り、未測定の元素を対象として処理を繰り返す。一方、未測定の元素が無い、すなわち、試料1に対する測定が完了した場合(S718にてNO)、中央処理装置10の処理はS719へ進む。
【0071】
S719にて、中央処理装置10は、測定結果の出力を行う。ここでの出力方法は特に限定するものではないが、例えば、表示部12にて測定結果を視認可能なように表示してもよいし、データファイルとして所定の格納先に出力してもよい。そして、本処理フローを終了する。
【0072】
以上、本実施形態により、原子吸光光度計において複数の元素に対応して測定の制御パラメータの変更を行う際に、測定精度を維持しつつ、測定時間の最適化を自動的に行うことが可能となる。
【0073】
<その他の実施形態>
上記の実施形態にて示した原子吸光光度計の構成は一例であり、測定精度や測定感度などを向上させるために更なる構成を備えていてもよい。例えば、原子吸光光度計は、更にゼーマン効果を発生させるための磁場発生部を備えてもよい。ゼーマン効果による補正を行うことで、信号の安定化時間を短縮し、その結果、測定時間(安定化に要する時間)の短縮とデータの安定性を確保することが可能となる。なお、ゼーマン効果を発生させる磁場発生部の構成については、公知の構成を用いてよいが、例えば、永久磁石を含んで構成されてよい。
【0074】
本発明において、上述した1つ以上の実施形態の機能を実現するためのプログラムやアプリケーションを、ネットワーク又は記憶媒体等を用いてシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。
【0075】
また、1つ以上の機能を実現する回路によって実現してもよい。なお、1つ以上の機能を実現する回路としては、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。
【0076】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 試料(例えば、1)に含まれる複数の元素の測定を行う原子吸光光度計(例えば、100)の制御方法であって、
前記複数の元素の測定順に従って、測定対象の元素に対応した制御パラメータに切り替える切り替え工程と、
前記制御パラメータを切り替えた後、当該制御パラメータに対応する元素に対する吸光度の測定を開始する測定工程と、
前記測定工程にて測定された吸光度の安定性を判定する第1の判定工程と、
前記第1の判定工程にて安定していると判定された場合、前記測定にて測定される吸光度の記録を開始し、所定の時間、記録する記録工程と、
を有し、
前記測定順に従って、前記切り替え工程、前記測定工程、前記判定工程、および前記記録工程を繰り返す、制御方法。
この構成によれば、原子吸光光度計において複数の元素に対応して測定の制御パラメータの変更を行う際に、測定精度を維持しつつ、測定時間の最適化を自動的に行うことが可能となる。
【0077】
(2) 前記制御パラメータは、少なくとも可燃性ガス流量を含む、(1)に記載の制御方法。
この構成によれば、原子吸光光度計にて用いられる可燃性ガスの流量の変化による吸光度の安定までの時間を考慮して測定時間の最適化を実現することが可能となる。
【0078】
(3) 前記測定順は、前記可燃性ガス流量を切り替えた際の変化量が大きい順、または、小さい順にて規定される、(2)に記載の制御方法。
この構成によれば、測定時間をより最適化可能なように、1つの試料における複数の元素の測定順を規定することができる。
【0079】
(4) 前記第1の判定工程の判定の際に用いられる第1の時定数と、前記記録工程にて記録を行っている際に用いられる第2の時定数は異なり、
前記第2の時定数は、前記第1の時定数よりも小さい、(1)に記載の制御方法。
この構成によれば、測定結果を記録するか否かの判定に用いる時定数と、記録している際の時定数を切り替えることで、効率的に記録の判定を行うことが可能となる。
【0080】
(5) 前記測定工程にて測定された吸光度が、所定回数以上、閾値を超えたか否かを判定する第2の判定工程を更に有し、
前記記録工程は、前記第1の判定工程にて安定していると判定され、かつ、前記第2の判定工程にて前記閾値を超えたと判定された場合、吸光度の記録を開始する、(1)に記載の制御方法。
この構成によれば、試料に対するより正確な吸光度の測定が可能となる。
【0081】
(6) 前記記録工程は、前記測定工程により測定が開始されてから所定の時間が経過した際に、吸光度の記録を開始する、(1)に記載の制御方法。
この構成によれば、測定が開始されてから一定時間が経過した場合には、強制的に記録を開始することで、無駄な待ち時間が生じないように制御することが可能となる。
【0082】
(7) 前記記録工程は、前記第1の判定工程にて安定していると判定されてから所定の時間が経過した後、吸光度の記録を開始する、(1)に記載の制御方法。
この構成によれば、より確実に安定した吸光度の測定結果を記録させることが可能となる。
【0083】
(8) 既知の試料を測定して基準値を導出する導出工程を更に有し、
前記測定工程は、前記基準値と、前記測定により測定される信号とを用いて、前記吸光度および前記吸光度の安定性を算出することを特徴とする、(1)に記載の制御方法。
この構成によれば、複数の基準を用いて吸光度の測定結果を判定することで、より精度良く吸光度を測定することが可能となる。
【0084】
(9) 試料(例えば、1)に含まれる複数の元素の測定を行う原子吸光光度計(例えば、100)であって、
前記測定を制御する制御手段(例えば、10)を備え、
前記制御手段は、
前記複数の元素の測定順に従って、測定対象の元素に対応した制御パラメータに切り替えることと、
前記制御パラメータを切り替えた後、当該制御パラメータに対応する元素に対する吸光度の測定を開始することと、
前記測定された吸光度の安定性を判定することと、
前記吸光度が安定していると判定された場合、前記測定にて測定される吸光度の記録を開始し、所定の時間、記録することと、
を前記測定順に従って繰り返す、原子吸光光度計。
この構成によれば、原子吸光光度計において複数の元素に対応して測定の制御パラメータの変更を行う際に、測定精度を維持しつつ、測定時間の最適化を自動的に行うことが可能となる。
【0085】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0086】
1…試料
2…試料導入管
3…噴霧器
4…チャンバ
5…バーナ
6…フレーム
7…ホロカソードランプ
8…分光器
9…検知器
10…中央処理装置
11…操作部
12…表示部
13…AD変換器
14…スリット駆動部
15…波長駆動部
16…可燃性ガス流量制御部
17…IF部
20…原子化部
100…原子吸光光度計