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  • -起床時眠気軽減剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109484
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】起床時眠気軽減剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20240806BHJP
   A61K 36/899 20060101ALI20240806BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20240806BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20240806BHJP
   A21D 2/36 20060101ALI20240806BHJP
   A21D 2/38 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/899
A61K31/05
A61P25/20
A21D2/36
A21D2/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014305
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000226998
【氏名又は名称】株式会社日清製粉グループ本社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡 千尋
(72)【発明者】
【氏名】野出 純一
(72)【発明者】
【氏名】菊池 洋介
【テーマコード(参考)】
4B018
4B032
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018MD08
4B018MD49
4B018ME14
4B032DB01
4B032DG02
4B032DG05
4B032DG15
4B032DK03
4B032DK12
4B032DK18
4B032DL03
4B032DP26
4B032DP40
4C088AB74
4C088AC04
4C088BA11
4C088BA32
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA05
4C206AA02
4C206CA19
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA05
(57)【要約】
【課題】安価に且つ安全に、日常的に摂取できる新規な起床時眠気軽減剤を提供すること。
【解決手段】本発明は、イネ科植物の種子外皮を有効成分として含有する起床時眠気軽減剤を提供する。イネ科作物が小麦又はライ麦であることが好ましく、種子外皮が種子全粒又はふすま(ブラン)であることも好ましい。本発明の起床時眠気軽減剤が、アルキルレゾルシノールを含むことも好ましい。起床時眠気軽減用飲食品であることも好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イネ科植物の種子外皮を有効成分として含有する起床時眠気軽減剤。
【請求項2】
前記イネ科植物が特に小麦又はライ麦である、請求項1に記載の起床時眠気軽減剤。
【請求項3】
前記種子外皮が、種子全粒又はふすまである、請求項2に記載の起床時眠気軽減剤。
【請求項4】
アルキルレゾルシノールを含有する、請求項1~3の何れか1項に記載の起床時眠気軽減剤。
【請求項5】
起床時眠気軽減用飲食品である、請求項1~3の何れか1項に記載の起床時眠気軽減剤。





【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起床時眠気軽減剤に関する。
【0002】
近年、仕事や人間関係のストレスや昼夜逆転の生活等、様々な原因により、起床時において、頭がぼーとする、頭の働きが鈍い、集中力が低下している、ストレスを感じるといった眠気を訴える人が存在する。このような起床時眠気は睡眠時間が一定以上に長くても改善可能か不明である。起床時眠気を改善し、起床後の集中力向上、解放感向上、ストレス低減、仕事の効率向上につなげられれば、その日の生活の質に直結し、心身状態の向上、生活の充実が期待される。
【0003】
出願人は先に、小麦由来アルキルレゾルシノールがノンレム睡眠時間を長期化する作用や、ノンレム睡眠中の徐波活動を促進する作用を有することを示している。(特許文献1及び2)。また特許文献3には寝起き改善剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-153387号公報
【特許文献2】特開2020-186214号公報
【特許文献3】再表2007/119503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有効な起床時眠気軽減剤には強い需要があり、安価に継続的に摂取できる新規な起床時眠気軽減剤がますます強く求められている。
しかしながら、従来の起床時眠気軽減剤には、日常的に摂取するにはコストが高い、あるいは健康面での影響が懸念される、起床時眠気軽減効果が十分でないなどの問題が存在した。
【0006】
従って、本発明の目的は、従来技術を有する課題を解決可能な起床時眠気軽減剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は鋭意検討した結果、驚くべきことに、イネ科植物の種子外皮を有効成分として含有する起床時眠気軽減剤を経口摂取することで、起床時の眠気を効果的に軽減することができることを見出した。
【発明の効果】
【0008】
本発明の起床時眠気軽減剤は、安全かつ安価であり、さらに風味が良く継続的な摂取に問題が無く、起床時の眠気を効果的に改善できることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例1と比較例1との起床時眠気のアンケート評価点の変化値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を説明する。以下では、本発明の起床時眠気軽減剤を「本発明の剤」とも記載する。本発明の剤は飲食品であってもよく、その場合、起床時眠気軽減用飲食品となる。
【0011】
本発明による起床時眠気の改善の例としては、集中力がある、解放感がある、頭がはっきりする、質問等にテキパキと回答できる、等の状態が挙げられる。このような起床時眠気の改善効果は、一般社団法人日本睡眠改善協議会が提供するOSA睡眠調査票MA版(引用論文:「山本由華吏, 田中秀樹, 高瀬美紀, 山崎勝男, 阿住一雄, 白川修一郎: 中高年・高齢者を対象としたOSA睡眠感調査票(MA版)の開発と標準化. 脳と精神の医学 10: 401-409, 1999.」、https://www.jobs.gr.jp/osa_ma.html、2022年12月13日検索)、以下「睡眠に関するアンケート(OSA-MA)」とも記載する。)により評価できる。
【0012】
本発明の剤は、イネ科植物の種子外皮を有効成分として含有する。イネ科植物としては、例えば、小麦、デュラム小麦、ライ麦、ライ小麦、大麦、オーツ麦、はと麦、トウモロコシ、イネ、ヒエ、アワ、キビ等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのイネ科植物の中でも、日常生活での手に入れやすさ、機能性の担保の点で小麦又はライ麦が好ましく、とりわけ機能性の担保の点で小麦が好ましい。本発明の剤では、その効果を高める点から、イネ科植物の葉や茎、根等を含む植物体全体よりも、種子外皮を含む植物体の一部を用いることが好ましい。このことに鑑み、以下では、種子外皮を含むイネ科植物体の一部を「イネ科植物素材」と記載する場合がある。
【0013】
本発明の剤では、イネ科植物の中でも、種子外皮を含有することにより、効果的に起床時眠気軽減作用を発揮でき、しかも、低コストで風味が良好なものとなる。種子外皮とは、表皮と呼ばれることもあるが、一般的には、種子の胚乳部や胚芽部から分離された、画分のことである。種子外皮を含む好適な例としては、ふすま(ブラン)、末粉、籾殻、ぬか等が挙げられる他、外皮を伴った種子も挙げられる。
【0014】
イネ科植物として種子外皮を用いるにあたり、種子外皮源となるイネ科植物種子の形態は、例えば、イネ科植物種子そのもの;当該イネ科植物種子又はその一部を切断、粉砕若しくは粉末化したもの;当該イネ科植物種子又はその一部を乾燥したもの;当該イネ科植物種子又はその一部を乾燥後粉砕若しくは粉末化したもの等を挙げることができる。中でも、本発明では、種子全粒又はふすま(ブラン)を乾燥後粉砕若しくは粉末化したものを用いることが、起床時眠気軽減作用に優れる点から好ましく、ふすま(ブラン)を乾燥後粉砕若しくは粉末化したものを用いることがより好ましい。
【0015】
本発明の剤は、小麦ブラン又は小麦全粒粉を用いることが優れた起床時眠気軽減作用の点で好ましく、とりわけ小麦ブランを含有することが好ましい。小麦ブランとは小麦粒の外皮を主体とするものである。小麦ブランとしては、一般的な小麦粉の製造過程で生じる、小麦粒から胚乳を除去した残部、あるいはこの残部からさらに胚芽を除去したもの等を用いることができる。
【0016】
本発明の剤は、小麦ポリフェノールを含有することが好ましく、具体的には小麦ポリフェノールとしてアルキルレゾルシノールを含有することが好ましい。アルキルレゾルシノールは、例えば特開2016-153387号公報及び特開2019-104755号公報に記載されているように、1,3-ジヒドロキシ-5-n-アルキルベンゼンの骨格を有する化合物の総称である。アルキルレゾルシノールは下記一般式(I)で表される。
【化1】
【0017】
アルキルレゾルシノールは、穀物外皮に含まれ、穀物外皮のうち、特にアリューロン層に近い部位に局在している。一般的にアルキルレゾルシノールには、1,3-ジヒドロキシ-5-n-ペンタデシルベンゼン、1,3-ジヒドロキシ-5-n-ヘプタデシルベンゼン、1,3-ジヒドロキシ-5-n-ノナデシルベンゼン、1,3-ジヒドロキシ-5-n-ヘンイコシルベンゼン、1,3-ジヒドロキシ-5-n-トリコシルベンゼン及び1,3-ジヒドロキシ-5-n-ペンタコシルベンゼン等が含まれる。
【0018】
ブラン等のイネ科植物素材の乾燥質量に対するアルキルレゾルシノール含有量は、その合計量として、好ましくは0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.13質量%以上であることが更に好ましく、0.15質量%以上であることが特に好ましい。イネ科植物素材の乾燥質量に対するアルキルレゾルシノール含有量は高いほど好ましい。アルキルレゾルシノール含有量は、例えば特開2016-132641号公報に記載の方法に基づいて、エタノールで抽出した抽出液を、分配クロマトグラフィーを用いて測定することができる。具体的には、以下のように測定できる。
【0019】
試料を例えば特開2016-132641号公報の実施例に記載の方法でエタノール抽出し、得られたエタノール抽出物を当該実施例と同様の分析に供することができる。イネ科植物を含む食品を測定に供するにあたり抽出物を作製する場合は、J. Agric. Food Chem. 2003, vol.51, p4111-4118に記載の通りイソプロパノール法を用いることもでき、その場合は、抽出溶媒を75体積%イソプロパノール水溶液に変更することが出来る。また、測定にあたっては分配クロマトグラフィーのほか、中圧クロマトグラフィー、HPLCに変更することが出来る。詳細な方法は下記に記す。下記はエタノール抽出の場合であるが、イソプロパノール法も同様の方法にて行うことができる。これらの何れかの方法により本明細書のアルキルレゾルシノールの量に該当すればよい。
〈中圧クロマトグラフィー〉
エタノールで抽出した抽出液を試料とする。溶出開始後31~36分に出現するピーク成分を回収して、溶媒留去し、エタノール抽出物の分配クロマトグラフィーのピーク成分を得る。
(中圧クロマトグラフィーの条件)
・カラム:シリカゲル(インジェクトカラム3L、ハイフラッシュカラム5L、60Å、40μm、山善株式会社製)
・移動相:ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒(体積比)=90/10にて9分、80/20にて15分、60/40にて16分
・検出波長:254nm
〈HPLC〉
エタノール抽出物にメタノールを添加して該エタノール抽出物の濃度が200ug/mlのメタノール添加液を調製し、該メタノール添加液を、孔径0.45μmのフィルターを通過させ、その通過分を、HPLCの試料とする。HPLCの条件は下記の通り。
(HPLCの条件)
・カラム:シリカゲル(ODS-80A、5μm、4.6×250mm、ジーエルサイエンス株式会社製)
・ガードカラム:ODS-80A、5μm、4.6×50mm、
・カラム温度:30℃
・移動相:メタノール100%
・検出波長:215nm
【0020】
起床時眠気軽減の効果に優れる点から、本発明の剤中(飲食品の場合は飲食品中、以下同様)のアルキルレゾルシノールの含有量は、0.001質量%以上であることが好ましく、0.002質量%以上であることが好ましく、0.010質量%以上であることが更に好ましい。また起床時眠気軽減の効果に優れる点や、風味の点から、本発明の剤中のアルキルレゾルシノールの含有量は、0.1質量%以下が好ましい。
【0021】
起床時眠気軽減の効果に優れる点から、本発明の剤の一日摂取量中、アルキルレゾルシノールの摂取量が、一日当たり、1mg以上であることが好ましく、3mg以上であることがより好ましく、5mg以上であることが更に一層好ましく、12mg以上であることが最も好ましい。また、起床時眠気軽減の効果に優れる点や、風味の点から、本発明の剤の一日摂取量中、アルキルレゾルシノールの摂取量が、50mg以下であることが好ましい。
【0022】
本発明の剤は、イネ科植物の種子外皮を含有するため、食物繊維を含有する。このことは、本発明の剤が起床時眠気改善効果に優れる理由の一つと本発明者は考えている。
【0023】
イネ科植物素材は、食物繊維量が、イネ科植物素材の乾燥質量に対して、例えば20.0~45.0質量%が好ましく例示され、20.0~40.0質量%がより好ましく、30.0~36.0質量%が特に好ましい。イネ科植物素材における食物繊維量は酵素―重量法(プロスキー変法)(AOAC991.43)や、AOAC2011.25法で測定できる。
【0024】
本発明の剤中、食物繊維の割合が2.3~12.0質量%であることが好ましく、2.5~8.8質量%であることが特に好ましく、2.8~7.5質量%であることが最も好ましい。本発明の剤の食物繊維量は、酵素―重量法(プロスキー変法)(AOAC991.43)や、AOAC2011.25法にて測定できる。
【0025】
本発明が小麦ブランを用いる場合、赤小麦及び白小麦のいずれに由来していてもよい。
【0026】
本発明でブランを用いる場合、加熱処理されたものであることが、酵素活性を失活でき、ブランを用いた加工適性を高められる点で好ましい。加熱処理としては、乾熱処理及び湿熱処理などが挙げられるが、乾熱処理は湿熱処理よりもより高温での処理が可能であり、ブラン特有のえぐみを除去する効果を期待することができる。その結果、ブランを継続的に多量摂取できることに繋がり、本発明の効果を高めることができるため好ましい。
【0027】
加熱処理として乾熱処理を行う場合、ブランの品温が好ましくは100~180℃、更に好ましくは120~160℃となるようにして、好ましくは0~120分間、更に好ましくは1~60分間処理を行う方法を例示できる。
【0028】
加熱処理として湿熱処理を行う場合、水蒸気を導入する密閉系容器内において、ブランの品温が、好ましくは80~130℃、更に好ましくは85~110℃となるようにして、好ましくは1~300秒間、更に好ましくは1~60秒間滞留させることにより行う方法を例示できる。
【0029】
ブランの形状としては、フレーク状、粒状、粉末状等が挙げられ特に限定されない。ブランの粒径は特に限定されないが、例えば10μm以上10mm以下であることが入手容易性の点や二次加工性の点で好ましい。ブランの粒径は例えばマイクロトラックMT3000IIシリーズ(マイクロトラック・ベル株式会社)を用いて測定できる。より好ましくは上記粒径に粉砕してから、上記の加熱処理を行ったものであることが好ましい。
【0030】
本発明の剤は、哺乳動物の起床時の眠気を軽減、抑制、低下又は改善するために用いられる。哺乳動物としては、ヒトの他に、例えばイヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、ウシ、ウマ、サル等が含まれる。即ち、本発明の起床時眠気軽減剤は、ヒトのみならず、ペット(愛玩動物)、家畜等に対しても適用可能である。本発明では、イネ科植物の種子外皮やそれを含むイネ科植物素材を哺乳動物全般に対して医療目的又は非医療目的で適用し得る。
【0031】
本発明の剤は、医薬品、医薬部外品又は食品として、あるいはそれらを製造するために使用することができる。ここでいう「食品」は、食品全般を包含し、いわゆる健康食品を含む一般食品の他、機能性表示食品や、厚生労働省の保健機能食品制度に規定される特定保健用食品や栄養機能食品等の保健機能食品、サプリメント等を包含し、さらには動物に給餌される家畜用飼料、ペットフードも包含する。本発明の剤は、イネ科植物の種子外皮を有効成分として含有し、且つ起床時眠気軽減を企図して、その旨を表示した医薬品、医薬部外品又は食品として使用することができる。
【0032】
本発明の剤を医薬品又は医薬部外品として使用する場合、有効成分であるイネ科植物の種子外皮又はそれを含むイネ科植物素材を単独で含有していても良く、又は、さらに薬学的に許容される担体を含有していても良く、又は、イネ科植物の種子外皮又はそれを含むイネ科植物素材による起床時眠気軽減効果が損なわれない範囲でさらに他の有効成分や薬理成分を含有していても良い。斯かる担体としては、例えば、賦形剤、被膜剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、希釈剤、分散剤、緩衝剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、乳化剤、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、活性増強剤、抗炎症剤、殺菌剤、矯味剤、矯臭剤等が挙げられる。
【0033】
本発明の剤を医薬品又は医薬部外品として使用する場合、任意の投与形態で投与され得る。投与形態は、経口投与でも非経口投与でも良い。例えば、経口投与形態としては、錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤のような固形投薬形態、並びにエリキシル、シロップ及び懸濁液のような液体投薬形態が挙げられ、非経口投与形態としては、経腸投与等が挙げられる。このうち、経口投与形態が好ましい。
【0034】
本発明の剤を食品として使用する場合、イネ科植物の種子外皮又はそれを含むイネ科植物素材を単独で含有していても良く、又は、イネ科植物の種子外皮又はそれを含むイネ科植物素材による起床時眠気軽減効果が損なわれない範囲でさらに、医薬品、医薬部外品、食品の製造に用いられる種々の添加剤を含有していても良い。斯かる添加剤としては、例えば、各種油脂、生薬、アミノ酸、多価アルコール、天然高分子、ビタミン、食物繊維、界面活性剤、精製水、賦形剤、安定剤、pH調整剤、酸化防止剤、甘味料、呈味成分、有機酸などの酸味料、安定剤、フレーバー、着色料、香料等が挙げられる。
【0035】
イネ科植物の種子外皮又はそれを含むイネ科植物素材を食品として使用する場合、その形態は特に限定されないが、例えば、その形態としては、固形、半固形又は液状であり得、錠剤形態、丸剤形態、カプセル形態、液剤形態、シロップ形態、粉末形態、顆粒形態等が挙げられる。具体的な食品の形態としては、パン類、麺類、ゼリー状食品や各種スナック類、焼き菓子、ケーキ類、チョコレート、ガム、飴、タブレット、カプセル、スープ類、乳製品、冷凍食品、インスタント食品、天ぷら、フライ、から揚げ等の揚げ物の衣、サプリメント、その他加工食品及びそれらの材料等が挙げられる。
【0036】
とりわけ、本発明の剤は、イネ科植物の種子外皮又はそれを含むイネ科植物素材を含有し、且つイネ科植物の種子外皮又はそれを含むイネ科植物素材を加熱調理工程に供する工程を経る、起床時眠気軽減用飲食品の製造に用いられることが好ましい。
ブランを用いる場合、ここでいう加熱調理工程としては上記のブランに係る加熱処理とは異なるものとする。例えば加熱調理工程としては、煮る、蒸す、焼く、油調するといった各種の調理方法が挙げられる。加熱調理工程を経ることはブラン特有のえぐみを軽減できる点で有利である。加熱調理は例えば50~300℃であることが好ましく、80~220℃であることがより好ましい。また、加熱調理の時間は特に限定されないが、30秒~1時間が好ましく、1~30分であることがより好ましい。加熱調理工程の一例として例えばパン類、菓子類等のベーカリー食品や麺類の製造工程におけるものであってもよい。
【0037】
本発明の剤中のイネ科植物の種子外皮及び前記イネ科植物素材の割合は特に限定されないが、例えばブランの場合、1質量%以上30質量%以下、或いは2質量%以上25質量%以下、或いは、3質量%以上20質量%以下、或いは3.5質量%以上19.8質量%以下等の種々の割合が好適に挙げられる。
【0038】
本発明の剤は、日常的に摂取し続けることが可能であり、例えば7日以上継続して経口摂取することが可能であり、14日(2週間以上)継続して経口摂取することが可能である。1週間のうち、経口摂取は毎日であってもよく、1又は複数日、例えば3日以上、又は4日以上であってもよい。本発明の剤又は起床時眠気軽減用飲食品は、主食に含有させて喫食されることが可能である。
【0039】
本発明の剤は、15時以降に摂取させて用いることが起床時眠気軽減効果が高い点で好ましく、15時以降24時以前に摂食させることが好ましい。特に、夕飯の主食の一部として摂食させることが好ましい。このような摂食方法は、特に、剤の摂取日の睡眠開始が24時より前である条件において適用することが好ましい。
【0040】
例えば、本発明の剤の特に好ましい用途としては、寝起きに眼が覚めない、頭がぼーとする、頭の働きが鈍い、集中できない、ストレスを感じるといった等の自覚症状の改善のほか、起床後の集中力向上、解放感向上、ストレス低減、仕事の効率向上、寝起きの改善等が含まれる。また本発明には、健康維持、美容等の非医療目的でこれらの起床時眠気軽減作用を図る各種の方法が含まれる。
【実施例0041】
(実施例1、比較例1)
表1の組成に基づき、パンを製造した。
表1に記載の中種の副資材とは、乳化剤等である。
表1に記載の本種の副資材とは砂糖、ショートニング、食塩等である。
下記表1に記載の中種全ての原材料を用い、中種法で生地を作成し、得られた生地を100gごとに分割し丸め、オーブンで焼成し、各試験食品を得た。焼成温度、焼成時間はそれぞれ80~220℃、1~30分の範囲内であった。
【0042】
実施例1で用いた小麦ブランとしては、赤小麦由来の小麦ブランを、上記粒径範囲に粉砕し、120~150℃、60分間の乾熱処理を施したものを用いた。加熱処理後の小麦ブランの乾燥質量中のアルキルレゾルシノール含量は0.16質量%であった。小麦ブランの乾燥質量中の食物繊維量は33.2質量%であった。
実施例1の食品における小麦ブラン含量は10.7質量%、アルキルレゾルシノール含量は0.015質量%(1日の摂取量が24.9~27.9mg)、食物繊維は5.1質量%であった。
比較例1の食品における小麦ブラン含量は0質量%、アルキルレゾルシノール含量は0.002質量%(1日の摂取量が3.3~3.7mg)、食物繊維は2.5質量%であった。
【0043】
【表1】
【0044】
(評価)
睡眠に不満のある20歳以上65歳未満の日本人男女16名を対象とし、小麦ブラン含有食品を2週間継続摂取した際の起床時眠気改善作用を二重盲検交差法比較試験で評価した。
スクリーニングを実施し、試験責任医師が本試験への参加は適当であると判断した者16名を試験に組み入れ、16名で試験を行った。スクリーニング時の検査項目は下表の通りである。
【0045】
【表2】
【0046】
1週間の前観察期間において、睡眠に関するアンケート(OSA-MA)調査を行った。
被験者は、年齢、睡眠に関するアンケート(OSA-MA、https://www.jobs.gr.jp/osa_ma.html、2022年12月12日検索)の第2因子(入眠と睡眠維持)のスコアが均一になるよう2群に割付けた。
各食品の摂取方法としては、15時以降に2個摂取させ、そのうち少なくとも1個は主食(炭水化物)と置き換えて摂取させた。なお実施例1食品及び比較例1食品はいずれも冷凍したパンとして提供し、加熱(推奨電子レンジ500W50秒)させて摂取させた。食品(パン)は、1日2個ずつ摂取させた。なお試験期間中、各被験者は24時までに就寝してもらった。
【0047】
実施例1食品先行摂取群には、実施例1食品を2週間摂取させ、2週間の休止期間を挟んだのち、比較例1食品を2週間摂取させた。比較例1食品先行摂取群には、比較例1食品を2週間摂取させ、2週間の休止期間を挟んだのち、実施例1食品を2週間摂取させた。なお、休止期間をはさむため持ち越し効果は無かった。
【0048】
試験食品摂取開始前、および試験食品摂取開始から12、13日目における、起床時眠気に関するアンケート調査を行った。なおアンケートへの記入は起床時すぐに行わせた。
【0049】
・睡眠に関するアンケート(OSA-MA)の起床時眠気についての各項目について、以下の評価基準にて評価させた。16人の評価点を求めた。各人の評価点は、4項目の点を平均したものとした。各人の評価点の平均値を更に平均して、求めた。得られた結果を図1に示す。
・「集中力がある。」
35点:非常に集中力がある。
22点:やや集中力がある。
12点:やや集中力がない。
0点:非常に集中力がない。
【0050】
・「解放感がある。」
33点:非常に解放感がある。
21点:やや解放感がある。
11点:ややストレスを感じる。
0点:非常にストレスを感じる。
【0051】
・「頭がはっきりしている。」
32点:非常に頭がはっきりしている。
20点:やや頭がはっきりしている。
10点:やや頭がボーとしていた。
0点:非常に頭がボーとしていた。
【0052】
・「テキパキこたえられる。」
29点:非常にテキパキこたえられる。
18点:ややテキパキこたえられる。
10点:答えるのはややめんどうである。
0点:答えるのは非常にめんどうである。
【0053】
図1に示す通り、小麦ブランの摂取によって起床時の眠気が軽減されたことが判る。

図1