(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109547
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】試験測定装置及びジッタ補正方法
(51)【国際特許分類】
G01R 13/20 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
G01R13/20 L
G01R13/20 N
G01R13/20 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024014099
(22)【出願日】2024-02-01
(31)【優先権主張番号】63/442,733
(32)【優先日】2023-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/407,266
(32)【優先日】2024-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】ムハンマド・サード・チュグタイ
(72)【発明者】
【氏名】マーク・エル・ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】パヴェル・アール・ジヴニー
(57)【要約】
【課題】波形のジッタをより正確に補正する。
【解決手段】試験測定装置10は、試験測定装置10をDUT24に接続可能にするポート13と、メモリ20と、DUT24から受信した波形信号を表示するディスプレイ及びユーザが試験測定装置10の設定を可能にする操作装置とを含むユーザ・インタフェース16と、プロセッサ12とを有する。試験測定装置10は、複数の信号レベル及び複数のジッタ閾値を有する信号をDUT24から受信し、プロセッサ12は、ジッタ閾値の夫々に関するジッタ補正値を用いて、DUT24からの信号の測定値を調整し、最終的な測定値を生成する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験測定装置であって、
該試験測定装置を被試験デバイス(DUT)に接続するための1つ以上のポートと、
メモリと、
上記DUTから受信した波形信号を表示できるディスプレイ及びユーザが上記試験測定装置の設定を選択できるようにする操作装置を有するユーザ・インタフェースと、
1つ以上のプロセッサと
を具え、
該1つ以上のプロセッサが、
複数の信号レベル及び複数のジッタ閾値を有する信号を上記DUTから受信する処理と、
上記ジッタ閾値の夫々に関するジッタ補正値を使用して上記DUTからの上記信号の測定値を調整し、最終測定値を生成する処理と
を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう構成される試験測定装置。
【請求項2】
上記1つ以上のプロセッサが、
上記ジッタ閾値の夫々の電圧値を特定する処理と、
上記ジッタ閾値の夫々におけるノイズを測定する処理と、
上記ノイズの測定値を用いて上記ジッタ閾値の夫々に関する上記ジッタ補正値を求める処理と
を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう更に構成される請求項1に記載の試験測定装置。
【請求項3】
上記1つ以上のプロセッサが、
ある電圧レベルにおいて静的なオフセット電圧を生成するか又は外部信号を受信するように上記試験測定装置を設定する処理と、
上記電圧レベルにおいてノイズを測定する処理と、
上記設定する処理及び上記測定する処理を繰り返して、多数の電圧レベルにおいてノイズ測定値を取得する処理と、
上記ノイズの測定値を用いて上記ジッタ閾値の夫々に関する上記ジッタ補正値を求める処理と
を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう更に構成される請求項1に記載の試験測定装置。
【請求項4】
上記信号の上記ジッタ閾値の夫々に関する上記ジッタ補正値を求める処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、上記ノイズ測定値を上記ジッタ閾値の夫々についての垂直のノイズで誘発されたジッタ成分値に変換する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む請求項3に記載の試験測定装置。
【請求項5】
上記ノイズ測定値を上記ジッタ閾値の夫々についての垂直のノイズで誘発されたジッタ成分値に変換する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、上記ジッタ閾値の夫々についての上記ノイズ測定値を上記信号のスルー・レートで割り算する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む請求項4に記載の試験測定装置。
【請求項6】
試験測定装置において、被試験デバイス(DUT)から複数の信号レベル及び複数のジッタ閾値を有する波形信号を受信する処理と、
上記ジッタ閾値夫々のジッタ補正値を使用して上記DUTからの上記波形信号の測定値を調整し、最終的な測定値を生成する処理と
を具えるジッタ補正方法。
【請求項7】
上記ジッタ閾値の夫々の電圧値を特定する処理と、
上記ジッタ閾値の夫々におけるノイズを測定する処理と、
上記ノイズの測定値を用いて複数の上記ジッタ閾値の夫々に関する上記ジッタ補正値を求める処理と
を更に具える請求項6に記載のジッタ補正方法。
【請求項8】
ある電圧レベルで静的なオフセット電圧を生成するか又は外部信号を受信するように試験測定装置を設定する処理と、
上記電圧レベルにおいてノイズを測定する処理と、
上記設定する処理及び上記測定する処理を繰り返して、多数の電圧レベルでノイズ測定値を取得する処理と、
上記ノイズ測定値を用いて複数の上記ジッタ閾値の夫々に関する上記ジッタ補正値を求める処理と
を更に具える請求項6に記載のジッタ補正方法。
【請求項9】
上記ジッタ補正値を求める処理が、上記ノイズ測定値を上記ジッタ閾値の夫々に関する上記ノイズで誘発されたジッタ成分値に変換する処理を含む請求項7に記載のジッタ補正方法。
【請求項10】
上記ノイズ測定値を上記ジッタ閾値の夫々に関する上記ノイズで誘発されたジッタ成分値に変換する処理が、上記ジッタ閾値の夫々に関する上記ノイズの測定値を上記波形信号のスルー・レートで割り算する処理を含む請求項9に記載のジッタ補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試験測定装置に関し、より詳細には、試験測定装置のノイズで誘発されるジッタを正確に補正できる試験測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
信号のジッタとノイズを測定するオシロスコープなどの試験測定装置は、試験測定装置中の電圧ノイズの影響を補正する場合がある。この試験測定装置のノイズには、ランダム成分と確定的(デターミニスティック)成分が含まれる場合があるが、通常は、ガウス・ランダム・ノイズが大半を占める。このノイズは、通常、その標準偏差によって特性が評価されるが、既知の方法によって確定的ノイズが除外された後の場合もある。以下、確定的ノイズが排除されているか否かにかかわらず、ランダム・ノイズ(RN:Random Noise)とは、このノイズの標準偏差をいう。ノン・リターン・トゥ・ゼロ(NRZ)信号(ジッタ閾値が1つ)は、ジッタ測定を補正するために、オシロスコープ・ノイズの1つの値しか必要としない。PAM4(4値パルス振幅変調)などのマルチ・レベル信号には、いくつかのジッタ閾値がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「ジッタ」、山下勝巳の「これだけは知っておきたいアナログ用語」、EDNジャパン、2011年5月13日公開、[オンライン]、[2024年1月22日検索]、インターネット<https://edn.itmedia.co.jp/edn/articles/1003/03/news127.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在の手法は、ジッタ値の補正にオシロスコープのノイズの単一の値を使用する。この値を計算するために一般的に使用される方法には、電圧レンジの中心にあるノイズ値(例えば、0Vなど)を選択する方法や、電圧レンジに沿って複数のポイントを使用して平均ノイズ値を計算する方法などがある。この単純な形式のジッタ補正は、補正不足、過剰補正又はその両方などの問題を引き起こす可能性がある。補正不足が発生すると、試験測定装置は、より大きなジッタ値を報告し、指定された要件を満たさない可能性がある。過剰補正は、エッジに存在するノイズよりも多くのノイズを除去しようとする。これにより、負のジッタが報告されることがあるが、これは、存在し得ないことである。いずれの場合も、ジッタを決定する現在の方法では、測定の精度と信頼性が低下する可能性がある。
【0006】
本開示技術の実施形態は、従来の試験測定装置のこれら及び他の制限に取り組むものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示による実施形態は、PAM4(4値パルス振幅変調)信号などの複数のジッタ閾値を有する波形上のノイズで誘発されるジッタを補正するための、より正確なアプローチを提供する。波形の測定に使用している試験測定装置の全ての電圧レベルにおけるノイズの特性評価を行うことで、波形の各エッジに、どの程度のノイズが加わっているかをよりよく理解することができる。個々のエッジ形式のジッタを分析する場合に、このアプローチは、付加されるノイズの量を正確に補正する。この手順により、ジッタ測定の精度が向上し、過剰補正と補正不足を回避できる。具体的には、このプロセスは、複数のジッタ閾値を有する信号のジッタ閾値ごとに固有のシグマ(ノイズ)値を求める。
【0008】
実施形態は、複数の信号レベル及び複数のジッタ閾値を有する信号の取得したエッジの見かけ上のランダム・ジッタの合計を望ましくないほど増加させるオシロスコープ固有の(多くは、ランダム)ノイズの影響を調べることから始める。「ジッタ閾値」という用語は、波形の2つの信号レベルの中間点を指し、電圧閾値(VT:voltage thresholds)とも呼ばれる。このプロセスでは、アクイジション(波形データ取得)システムの挙動を原因とする試験測定装置の固有ノイズに関する情報を電圧レベルの関数として取得し、これを特定のジッタの補正を求めるのに利用できる。統計的な補正により、各エッジのジッタに対するノイズの変化の影響を正しく処理する。これにより、信号のジッタをより正確に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、水平成分と垂直成分から複合ジッタがどのように形成されるかを示している。
【
図2】
図2は、垂直方向のノイズが、スルー・レートによってジッタに変換される様子を示す。
【
図3】
図3は、オフセット電圧に対するノイズのプロットとしてプロットされたノイズのトレンド(傾向)を示す。
【
図4】
図4は、2つのプロットを示しており、第1プロット(左)は、PAM4信号について複数の立ち上がりエッジを揃えたものを示し、第2プロット(右)は、第1プロットに示した各電圧におけるランダム・ノイズを示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1が示唆するように、データ・エッジ上の複合ジッタ(composite jitter)は、概して、水平成分と、垂直方向のノイズから誘発された成分の「和」を含み、添え字h(水平)及びv(垂直)は、それぞれの根本原因を示す。この「和」は、単純な代数的なものではないことがある。これらの成分が無相関のガウス確率変数である場合、次のように、rms(二乗平均平方根)の観点で合計する必要がある。
【0011】
【数1】
ここで、2つのRJの夫々は、その成分の標準偏差(シグマ)を表す。
【0012】
RJ(v)は、その根本的な原因がノイズであるため、RJ(h)よりも重要ではないように思えるかもしれないが、これら両方ともに、結果として得られる信号に影響を与える、即ち、これら両方ともに、アイ・ダイヤグラムのアイ幅を減少させる。よって、データシートにおいてRJとして報告すべきもの、又は、システムのジッタ仕様で合格すべきものは、RJcompositeである。
【0013】
次に、このプロセスでは、特定の量の垂直ノイズが、結果として観測されるジッタと数学的にどのように関連しているかを示すモデルを生成する。
図2において、少なくとも閾値領域を通る所与のスルー・レートと、垂直ノイズの所与の振幅を有する波形エッジについて考えてみる。
【0014】
観察によると、RJ(v)の数値は、その根本原因に次の数式2に示すように関連している。
[数2]
RJ(v)=RN/スルー・レート
【0015】
試験測定装置のノイズは、通常、外部の信号源を接続しない状態で、入力信号の標準偏差として測定される。この入力信号には、例えば、試験測定装置内部の校正信号源を利用しても良い。このプロセスでは、電圧のオフセット又は位置設定を使用し、全ての電圧レベルにわたって信号トレースをシフトすることで、このようなノイズ測定を複数行うことができる。一実施形態では、試験測定装置の入力を終端し、試験測定装置のノイズを測定する。あるいは、内部的なオフセット電圧や同様の機能に代えて、外部の低ノイズ電圧源を使用して、電圧に対するノイズのトレンド(傾向)の特性を測定しても良い。特性測定は、試験測定装置にAC(交流)信号を入力することで、行うこともできる。特性を測定するための信号がAC(交流)の場合、信号の関連部分を選択するための何らかの後処理手段(例えば、矩形波の平坦な部分についての時間的なゲート処理、周波数領域での分離、ある程度の量のフィルタ処理、又は、ノイズ特性のインポートに適した同様の方法)が使用される。この結果として得られるデータは、
図3に示すように、オフセット電圧に対するノイズのプロットとして表すことができる。測定されるノイズのトレンド(傾向)は、デジタル化された電圧レンジにわたって変化することがある。このトレンドは、
図3では0で示されている電圧レンジの中心の周りで、対称である場合と対称でない場合がある。
【0016】
試験測定装置は、このプロットを試験測定装置のノイズ・プロファイル(profile:特性・傾向等の統計データ情報)として保存できる。ジッタ閾値夫々に関するジッタ補正値を求める処理が、このプロファイルにアクセスする処理を有していても良い。このノイズ・プロファイルは、ノイズ測定時の試験測定装置の制御の特定の設定に固有であっても良い。
【0017】
これら実施形態は、2つ以上のジッタ閾値を有する任意の信号に適用される。12種類のエッジを持つPAM4信号について考える。PAM4のシンボルは、集合{0,1,2,3}で表される。これらのシンボルを表す信号の電圧レベルは、それぞれ{V
0,V
1,V
2,V
3}である。任意の2つの信号レベル間を判定する閾値電圧は、通常、これら2つのレベルの平均値(つまり、2つの信号レベルの間の中間点)によって表され、これは、本願では、ジッタ閾値又は電圧閾値と呼ばれ、
図4では、VT
1、VT
2、VT
3、VT
4、VT
5として示される(例えば、IEEE802.3bsを参照)。2つの信号レベル間の遷移又はエッジは、水平ジッタと垂直ノイズによるジッタの両方が信号に注入される場所である。立ち上がりエッジは、表1に示すように全部で6種類ある。エッジ形式は、初期信号レベルから最終信号レベルへの遷移を表す。
【表1】
【0018】
全てのシンボル・レベル間の間隔が同じである理想的なケースでは、エッジ・ラベル3及び4の閾値電圧は同じになる(VT3)。また、理想的には、エッジ・ラベル1、4及び6のスルー・レートは、全て1つの信号レベルの遷移であるため、同じ(S1=S4=S6)になり、また、2つの信号レベルの遷移であるエッジ・ラベル2及び5のスルー・レートも同じ(S2=S5)になる。実際には、これらの値は、異なる場合がある。説明を簡単にするために、立ち下りエッジは、表1で説明した立ち上りエッジと同様であり、同じ閾値を共有すると仮定する。
【0019】
図4の左のプロットは、PAM4信号についての6つの立ち上がりエッジを揃えて示している。エッジの広がりは、水平ジッタと垂直ノイズの組み合わせによるものである。各エッジの特性を表1に示す。
図4の右のプロットは、オシロスコープのノイズ・プロファイルを示し、これは、
図3を回転させたものである。このノイズ値の集合は、信号を測定する前に取得され、後で後処理中に参照される。
【0020】
図4の左側の波形プロット上の複数の電圧閾値は、右側のノイズ・トレンド・プロットまで延長されている。これらの位置は、試験測定装置による各電圧のランダム・ノイズ(RN)にマーク(印)を付けたものである。この例では、各電圧閾値の一意のRN値を示すために、ノイズのトレンドが非対称に示されている。ノイズ+ジッタの広がりは、各エッジにおけるオシロスコープ・ノイズの影響を示すために、誇張されている。各エッジの水平ジッタRJ
(h)の量は、ほぼ同じであると仮定する。
図4は、0→1や2→3などのエッジが、1→2のエッジよりも、多くのノイズをジッタに変換する可能性があることを図示している。
【0021】
ノイズは、電圧レンジ全体に渡って変化するため、各エッジについて、ノイズの1つの推定値を使って、全ジッタ(RJcomposite)に対するそのノイズの寄与量を求めると、精度が低くなる。代わりに、より正確なアプローチは、任意の信号中の全てのエッジの閾値を特定し、それぞれの閾値に対応するオフセット電圧夫々におけるノイズを求めることである。これに基づいて、数式2は、次の数式に変形できる。このとき、PAM4信号について、エッジ・ラベルi={1,2,3,4,5,6}である。
【0022】
[数3]
RJi(v)=RNi/Si
【0023】
更に、数式1は、次のように変形できる。
【0024】
【0025】
数式4と、RJcompositeに関するエッジを特定した測定値と、数式3を用いたRJi(v)の算出値とを使用することで、エッジ・ラベルiを持つエッジ夫々についての個別のRJi(h)を、次式で計算できる。
【0026】
【0027】
水平方向のジッタと、垂直方向のノイズで誘発されるジッタ成分とに関する情報を様々な方法で組み合わせて、信号中のランダム・ジッタの合計量を求めることができる。更に、これらの要素により、試験測定装置で得られた測定値を調整して精度を高めることができる。上記の処理は、試験測定装置内の1つ以上のプロセッサで実装されても良い。
図5は、試験測定装置の実施形態を示す。
【0028】
図5は、被試験デバイス(DUT)のための試験セットアップの実施形態を示す。この試験セットアップは、オシロスコープ等の試験測定装置10を含む。試験測定装置10は、試験測定装置用プローブ26を介してDUT24からの信号を受信する。プローブ26は、1つ以上のポート13を介して、信号を試験測定装置10に送信する。この信号は、典型的には電気信号であるが、光信号であっても良い。差動信号には、2つのポートを使用しても良く、また、シングル・エンド信号には、1つのポートを使用しても良い。信号は、試験測定装置10によってサンプリングされ、デジタル化されて波形データ(本願では、単に、「波形」とも呼ぶ)となる。クロック・リカバリ・ユニット(CRU:clock recovery unit)18は、試験測定装置10が、例えば、サンプリング・オシロスコープから構成される場合、信号からクロック信号をリカバリしても良い。リアルタイム・オシロスコープでは、ソフトウェア・クロック・リカバリを使用しても良い。
【0029】
試験測定装置10には、プロセッサ12よって表される1つ以上のプロセッサ、メモリ20及びユーザ・インタフェース(U/I)16がある。メモリ20は、プロセッサ12によって実行されると、プロセッサ12にタスクを実行させるプログラム(又はコード)の形態で実行可能な命令を格納しても良い。メモリ20は、また、以下でより詳細に説明するように、試験測定装置10の1つ以上のノイズ・プロファイルを記憶しても良い。
【0030】
試験測定装置10のユーザ・インタフェース16により、ユーザは、設定の入力、試験の設定などについて、試験測定装置10をインタラクティブに操作することが可能になる。ユーザ・インタフェース16には、ユーザが試験測定装置10の設定を選択し、結果の波形を見ることを可能にするディスプレイ及び操作装置があっても良い。また、試験測定装置10には、基準イコライザ及び分析モジュール14があってもよい。1つ以上のプロセッサ12は、実施形態の方法を実現するためのプログラム(コード)を実行しても良い。
【0031】
上述したように、本開示による実施形態は、垂直方向のノイズ誘発ジッタを、より正確に補正するためのアプローチを提供する。多数の電圧レベルにおいてノイズの特性を測定することにより、波形の各エッジに、どの程度のノイズが付加されているかをよりよく理解できる。個別のエッジ形式のジッタを分析することで、対応する閾値において付加されるノイズの量を正確に補正できる。これは、オシロスコープ・ノイズの単一の値を使用することが、必ずしも最適ではないことを意味する。これは、オシロスコープ・ノイズの単一の値は、通常、複数の閾値のうち、最大で1つの閾値のみに対して正しい値になるためである。この改善されたアプローチにより、各エッジに存在するジッタの量をより正確に把握できる。
【0032】
本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0033】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでいても良い。
【0034】
コンピュータ記憶媒体とは、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Video Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は除外される。
【0035】
通信媒体とは、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気又は任意の他の媒体を含んでも良い。
実施例
【0036】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0037】
実施例1は、試験測定装置であって、該試験測定装置を被試験デバイス(DUT)に接続するための1つ以上のポートと、メモリと、上記DUTから受信した波形信号を表示できるディスプレイ及びユーザが上記試験測定装置の設定を選択できるようにする操作装置を有するユーザ・インタフェースと、1つ以上のプロセッサとを具え、該1つ以上のプロセッサが、複数の信号レベル及び複数のジッタ閾値を有する信号を上記DUTから受信する処理と、上記ジッタ閾値の夫々に関するジッタ補正値を使用して上記DUTからの上記信号の測定値を調整し、最終測定値を生成する処理とを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう構成される。
【0038】
実施例2は、実施例1の試験測定装置であって、上記1つ以上のプロセッサが、上記信号の上記ジッタ閾値の夫々に関する上記ジッタ補正値を求める処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう更に構成される。
【0039】
実施例3は、実施例2の試験測定装置であって、上記ジッタ閾値の夫々に関する上記ジッタ補正値を求める処理を上記1以上のプロセッサに行わせるプログラムが、上記ジッタ閾値の夫々に関する電圧値を特定する処理と、上記ジッタ閾値の夫々におけるノイズを測定する処理とを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む。
【0040】
実施例4は、実施例2の試験測定装置であって、上記信号の上記ジッタ閾値の夫々に関する上記ジッタ補正値を求める処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、ある電圧レベルにおいて静的なオフセット電圧を生成するか又は外部信号を受信するように上記試験測定装置を設定する処理と、上記電圧レベルにおいてノイズを測定する処理と、上記設定する処理及び上記測定する処理を繰り返して、多数の電圧レベルにおいてノイズ測定値を取得する処理とを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む。
【0041】
実施例5は、実施例4の試験測定装置であって、上記1つ以上のプロセッサが、上記ノイズ測定値を上記試験測定装置のノイズ・プロファイルとして上記メモリに保存する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう更に構成される。
【0042】
実施例6は、実施例4の試験測定装置であって、上記信号の上記ジッタ閾値の夫々に関する上記ジッタ補正値を求める処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、上記ノイズ測定値を上記ジッタ閾値の夫々についての垂直のノイズで誘発されたジッタ成分値に変換する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む。
【0043】
実施例7は、実施例6の試験測定装置であって、上記ノイズ測定値を上記電圧レベル夫々についての垂直のノイズで誘発されたジッタ成分値に変換する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、上記電圧レベル夫々についての上記ノイズ測定値を上記信号のスルー・レートで割り算する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む。
【0044】
実施例8は、実施例1から7のいずれかの試験測定装置であって、上記ジッタ閾値の夫々に関する上記ジッタ補正値は、上記試験測定装置の特定の制御設定のセット(set:組)に固有である。
【0045】
実施例9は、実施例5の試験測定装置であって、上記信号の上記ジッタ閾値の夫々に関する上記ジッタ補正値を求める処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、上記試験測定装置の保存された上記ノイズ・プロファイルにアクセスする処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む。
【0046】
実施例10は、方法であって、試験測定装置において、被試験デバイス(DUT)から複数の信号レベル及び複数のジッタ閾値を有する波形信号を受信する処理と、上記ジッタ閾値夫々のジッタ補正値を使用して上記DUTからの上記波形信号の測定値を調整し、最終的な測定値を生成する処理とを具える。
【0047】
実施例11は、実施例10の方法であって、複数の上記ジッタ閾値の夫々に関する上記ジッタ補正値を求める処理を更に具える。
【0048】
実施例12は、実施例11の方法であって、上記ジッタ閾値の夫々に関する上記ジッタ補正値を求める処理が、上記ジッタ閾値の夫々の電圧値を特定する処理と、上記ジッタ閾値の夫々におけるノイズを測定する処理とを有する。
【0049】
実施例13は、実施例11の方法であって、上記信号の上記ジッタ閾値の夫々に関する上記ジッタ補正値を求める処理が、ある電圧レベルで静的なオフセット電圧を生成するか又は外部信号を受信するように試験測定装置を設定する処理と、上記電圧レベルにおいてノイズを測定する処理と、上記設定する処理及び上記測定する処理を繰り返して、多数の電圧レベルでノイズ測定値を取得する処理とを有する。
【0050】
実施例14は、実施例12の方法であって、上記ノイズの測定値を上記試験測定装置のノイズ・プロファイルとして保存する処理を更に具える。
【0051】
実施例15は、実施例12の方法であって、上記ジッタ補正値を求める処理が、上記ノイズの測定値を上記ジッタ閾値の夫々に関する上記ノイズで誘発されたジッタ成分値に変換する処理を含む。
【0052】
実施例16は、実施例15の方法であって、上記ノイズの測定値を上記ジッタ閾値の夫々に関する上記ノイズで誘発されたジッタ成分値に変換する処理が、上記ジッタ閾値の夫々に関する上記ノイズの測定値を上記波形信号のスルー・レートで割り算する処理を含む。
【0053】
実施例17は、実施例11の方法であって、上記ジッタ補正値を求める処理が、上記試験測定装置の保存されたノイズ・プロファイルにアクセスする処理を含む。
【0054】
実施例18は、実施例10から17のいずれかの方法であって、上記ジッタ閾値の夫々に関する上記ジッタ補正値が、上記試験測定装置の特定の制御設定のセットに基づく。
【0055】
加えて、本願の説明は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例との関連においても利用できる。
【0056】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0057】
明細書、特許請求の範囲、要約書及び図面に開示される全ての機能、並びに開示される任意の方法又はプロセスにおける全てのステップは、そのような機能やステップの少なくとも一部が相互に排他的な組み合わせである場合を除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。明細書、要約書、特許請求の範囲及び図面に開示される機能の夫々は、特に明記されない限り、同じ、等価、又は類似の目的を果たす代替の機能によって置き換えることができる。
【0058】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0059】
10 試験測定装置
12 プロセッサ
13 ポート
14 基準イコライザ及び分析モジュール
16 ユーザ・インタフェース
18 クロック・リカバリ・ユニット(CRU)
20 メモリ
24 被試験デバイス (DUT)
26 プローブ