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特開2024-10966放射線画像処理装置、その作動方法、及び放射線画像処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010966
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】放射線画像処理装置、その作動方法、及び放射線画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240118BHJP
【FI】
A61B6/00 333
A61B6/00 350S
A61B6/00 360Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112598
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001988
【氏名又は名称】弁理士法人小林国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧 伴子
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093AA26
4C093CA15
4C093DA03
4C093EA07
4C093FC26
4C093FD12
4C093FF34
4C093FG16
(57)【要約】
【課題】画質を定量化した上で調整したサブトラクション処理画像を容易かつ迅速に生成する放射線画像処理装置、その作動方法、及び放射線画像処理プログラムを提供する。
【解決手段】放射線画像処理装置10は、特定の被写体Objを撮影した互いに異なる2枚の放射線画像に対し第1強調処理を行って第1強調画像を生成し、2枚の放射線画像のうち少なくともいずれかの放射線画像を用いた第2強調処理を行って第2強調画像を生成し、第1強調画像と第2強調画像との相関情報を生成する。第1強調画像と第1パラメータの値に対応するレベル値と第1強調画像と第2強調画像との差異を定量化した画質指標とを表示し、レベル値の変更を受け付ける。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
プロセッサは、
互いに異なる2種類の放射線エネルギーをそれぞれ使用して特定の被写体を撮影した2枚の放射線画像を取得し、
2枚の前記放射線画像に対し、第1パラメータを含む演算式による第1強調処理を行うことにより第1強調画像を生成し、
2枚の前記放射線画像のうち少なくともいずれかの前記放射線画像を用いた第2強調処理を行うことにより第2強調画像を生成し、
前記第1強調画像と前記第2強調画像との相関を示す相関情報を生成し、
前記第1強調画像と、前記第1パラメータの値に対応するレベル値と、前記相関情報に基づいて前記第1強調画像と前記第2強調画像との差異の程度を定量化して示した画質指標とを表示部に表示する制御を行い、
前記レベル値の変更を受け付ける放射線画像処理装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記レベル値の変更を受け付けた場合、前記第1パラメータの値を更新し、
更新した前記第1パラメータの値を用いて、前記第1強調画像を生成し、
更新した前記第1パラメータの値に対応して更新した前記レベル値を前記表示部に表示する請求項1に記載の放射線画像処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、使用者による前記レベル値の変更を受け付けるユーザインタフェースを前記表示部に表示する制御を行う請求項1又は2に記載の放射線画像処理装置。
【請求項4】
前記放射線画像は、前記被写体の体厚に応じて推定された散乱線成分を画素毎に除去されたものである請求項1又は2に記載の放射線画像処理装置。
【請求項5】
前記第1強調処理は、サブトラクション処理である請求項1又は2に記載の放射線画像処理装置。
【請求項6】
前記被写体は、骨部と軟部とを含み、
前記第1強調画像は骨部画像であり、前記第2強調画像は軟部画像である請求項1又は2に記載の放射線画像処理装置。
【請求項7】
前記被写体は、骨部と軟部とを含み、
前記第1強調画像は軟部画像であり、前記第2強調画像は骨部画像である請求項1又は2に記載の放射線画像処理装置。
【請求項8】
前記第1強調処理は、2枚の前記放射線画像のうちの一方の前記放射線画像に対し前記第1パラメータを用いた重み付けを行った上で、他方の前記放射線画像から減算する処理を含む請求項1又は2に記載の放射線画像処理装置。
【請求項9】
前記第2強調処理は、2枚の前記放射線画像のうちの一方の前記放射線画像に対し前記第2パラメータを用いた重み付けを行った上で、他方の前記放射線画像から減算する処理を含む請求項1又は2に記載の放射線画像処理装置。
【請求項10】
前記被写体は、骨部と軟部とを含み、
前記第1強調画像は骨部画像であり前記第2強調画像は軟部画像であり、
2枚の前記放射線画像のうち、一方の前記放射線画像における座標(x,y)での画素値をG1(x,y)、他方の前記放射線画像における座標(x,y)での画素値をG2(x,y)、前記骨部画像における座標(x,y)での画素値をGb(x,y)、前記軟部画像における座標(x,y)での画素値をGt(x,y)、前記第1パラメータをα、前記第2パラメータをβとした場合、
前記骨部画像は、下記式(1)により生成し、前記軟部画像は、下記式(4)により生成する請求項1又は2に記載の放射線画像処理装置。
Gb(x,y)=G1(x,y)-α×G2(x,y) (1)
Gt(x,y)=G1(x,y)-β×G2(x,y) (4)
【請求項11】
前記第2強調処理は、2枚の前記放射線画像のうちのいずれかの前記放射線画像から前記第1強調画像を減算する処理である請求項1又は2に記載の放射線画像処理装置。
【請求項12】
前記被写体は、骨部と軟部とを含み、
前記第1強調画像は骨部画像であり前記第2強調画像は軟部画像であり、
2枚の前記放射線画像のうち、一方の前記放射線画像における座標(x,y)での画素値をG1(x,y)、他方の前記放射線画像における座標(x,y)での画素値をG2(x,y)とし、前記骨部画像における座標(x,y)での画素値をGb(x,y)、前記軟部画像における座標(x,y)での画素値をGt(x,y)、前記第1パラメータをαとした場合、
前記骨部画像は、下記式(1)により生成し、前記軟部画像は、下記式(2)又は式(3)により生成する請求項1又は2に記載の放射線画像処理装置。
Gb(x,y)=G1(x,y)-α×G2(x,y) (1)
Gt(x,y)=G1(x,y)-Gb(x,y) (2)
Gt(x,y)=G2(x,y)-Gb(x,y) (3)
【請求項13】
前記相関情報は、前記第1強調画像の画素値と前記第2強調画像の画素値との相関係数である請求項1又は2に記載の放射線画像処理装置。
【請求項14】
前記画質指標は、前記相関係数である請求項13に記載の放射線画像処理装置。
【請求項15】
前記プロセッサは、前記画質指標における特定の範囲を基準範囲として設定し、かつ、前記画質指標と前記基準範囲とを前記表示部に表示する制御を行う請求項1又は2に記載の放射線画像処理装置。
【請求項16】
前記プロセッサは、前記画質指標が前記基準範囲に含まれない場合、使用者に報知する制御を行う請求項15に記載の放射線画像処理装置。
【請求項17】
互いに異なる2種類の放射線エネルギーをそれぞれ使用して特定の被写体を撮影した2枚の放射線画像を取得するステップと、
2枚の前記放射線画像に対し、第1パラメータを含む演算式による第1強調処理を行うことにより第1強調画像を生成するステップと、
2枚の前記放射線画像のうち少なくともいずれかの前記放射線画像を用いた第2強調処理を行うことにより第2強調画像を生成するステップと、
前記第1強調画像と前記第2強調画像との相関を示す相関情報を生成するステップと、
前記第1強調画像と、前記第1パラメータの値に対応するレベル値と、前記相関情報に基づいて前記第1強調画像と前記第2強調画像との差異の程度を定量化して示した画質指標とを表示部に表示する制御を行するステップとを備える放射線画像処理装置の作動方法。
【請求項18】
互いに異なる2種類の放射線エネルギーをそれぞれ使用して特定の被写体を撮影した2枚の放射線画像を取得する機能と、
2枚の前記放射線画像に対し、第1パラメータを含む演算式による第1強調処理を行うことにより第1強調画像を生成する機能と、
2枚の前記放射線画像のうち少なくともいずれかの前記放射線画像を用いた第2強調処理を行うことにより第2強調画像を生成する機能と、
前記第1強調画像と前記第2強調画像との相関を示す相関情報を生成する機能と、
前記第1強調画像と、前記第1パラメータの値に対応するレベル値と、前記相関情報に基づいて前記第1強調画像と前記第2強調画像との差異の程度を定量化して示した画質指標とを表示部に表示する制御を行する機能とをコンピュータに実行させる放射線画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギーサブトラクション機能を提供する放射線画像処理装置、その作動方法、及び放射線画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野においては、X線等の放射線を用いて被写体を撮影する放射線撮影装置が普及している。例えば、被写体が人又は動物である場合、放射線撮影装置を用いて撮影された放射線画像は、診断又は治療等に使用される。近年においては、診断等に使用する放射線画像はいわゆる投影画像に限らず、投影画像を処理することにより得られるさまざまな画像も使用される。例えば、被写体の骨部を表示する骨部画像、被写体の軟部組織を表示する軟部画像、及び、血管を表示する血管画像等、被写体の特定の構造又は組織等を表す画像も使用される。
【0003】
骨部画像及び軟部画像は、いわゆるサブトラクション処理により生成することができる。サブトラクション処理は、撮影に使用した放射線のエネルギーが異なる少なくとも2種類の放射線画像に対して重み付けをして差分を算出する処理であり、被写体の組成ごとに放射線の減弱係数が異なることを利用した処理である。サブトラクション処理については、汎用パーソナルコンピュータ(Personal Computer、PC)を用いることにより低コストで行うエネルギーサブトラクションの方法及びシステムが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-165131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
撮影した放射線画像を用いて、例えばサブトラクション処理等により生成した処理画像については、目的の構造又は組織等を適切に表示する等の良好な画質を得るために、放射線技師等により、サブトラクション処理に用いる放射線画像に対する画質等の確認が行われ、さらに、生成した処理画像に対する画質等の確認及び画質調整等が行われる場合が多い。したがって、検診等によりサブトラクション処理を大量の放射線画像に対して多数回行う必要がある場合等には、放射線技師の多大な時間と労力が必要であった。
【0006】
本発明は、画質を定量化した上で調整したサブトラクション処理画像を容易かつ迅速に生成することができる放射線画像処理装置、その作動方法、及び放射線画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の放射線画像処理装置は、プロセッサを備える。プロセッサは、互いに異なる2種類の放射線エネルギーをそれぞれ使用して特定の被写体を撮影した2枚の放射線画像を取得し、2枚の放射線画像に対し、第1パラメータを含む演算式による第1強調処理を行うことにより第1強調画像を生成し、2枚の放射線画像のうち少なくともいずれかの放射線画像を用いた第2強調処理を行うことにより第2強調画像を生成し、第1強調画像と第2強調画像との相関を示す相関情報を生成し、第1強調画像と、第1パラメータの値に対応するレベル値と、相関情報に基づいて第1強調画像と第2強調画像との差異の程度を定量化して示した画質指標とを表示部に表示する制御を行い、レベル値の変更を受け付ける放射線画像処理装置。
【0008】
プロセッサは、レベル値の変更を受け付けた場合、第1パラメータの値を更新し、更新した第1パラメータの値を用いて、第1強調画像を生成し、更新した第1パラメータの値に対応して更新したレベル値を表示部に表示することが好ましい。
【0009】
プロセッサは、使用者によるレベル値の変更を受け付けるユーザインタフェースを表示部に表示する制御を行うことが好ましい。
【0010】
放射線画像は、被写体の体厚に応じて推定された散乱線成分を画素毎に除去されたものであることが好ましい。
【0011】
第1強調処理は、サブトラクション処理であることが好ましい。
【0012】
被写体は、骨部と軟部とを含み、第1強調画像は骨部画像であり、第2強調画像は軟部画像であることが好ましい。
【0013】
被写体は、骨部と軟部とを含み、第1強調画像は軟部画像であり、第2強調画像は骨部画像であることが好ましい。
【0014】
第1強調処理は、2枚の放射線画像のうちの一方の放射線画像に対し第1パラメータを用いた重み付けを行った上で、他方の放射線画像から減算する処理を含むことが好ましい。
【0015】
第2強調処理は、2枚の放射線画像のうちの一方の放射線画像に対し第2パラメータを用いた重み付けを行った上で、他方の放射線画像から減算する処理を含むことが好ましい。
【0016】
被写体は、骨部と軟部とを含み、第1強調画像は骨部画像であり第2強調画像は軟部画像であり、2枚の放射線画像のうち、一方の放射線画像における座標(x,y)での画素値をG1(x,y)、他方の放射線画像における座標(x,y)での画素値をG2(x,y)、骨部画像における座標(x,y)での画素値をGb(x,y)、軟部画像における座標(x,y)での画素値をGt(x,y)、第1パラメータをα、第2パラメータをβとした場合、骨部画像は、下記式(1)により生成し、軟部画像は、下記式(4)により生成することが好ましい。
【0017】
Gb(x,y)=G1(x,y)-α×G2(x,y) (1)
Gt(x,y)=G1(x,y)-β×G2(x,y) (4)
【0018】
第2強調処理は、2枚の放射線画像のうちのいずれかの放射線画像から第1強調画像を減算する処理であることが好ましい。
【0019】
被写体は、骨部と軟部とを含み、第1強調画像は骨部画像であり第2強調画像は軟部画像であり、2枚の放射線画像のうち、一方の放射線画像における座標(x,y)での画素値をG1(x,y)、他方の放射線画像における座標(x,y)での画素値をG2(x,y)とし、骨部画像における座標(x,y)での画素値をGb(x,y)、軟部画像における座標(x,y)での画素値をGt(x,y)、第1パラメータをαとした場合、骨部画像は、下記式(1)により生成し、軟部画像は、下記式(2)又は式(3)により生成することが好ましい。
【0020】
Gb(x,y)=G1(x,y)-α×G2(x,y) (1)
Gt(x,y)=G1(x,y)-Gb(x,y) (2)
Gt(x,y)=G2(x,y)-Gb(x,y) (3)
【0021】
相関情報は、第1強調画像の画素値と第2強調画像の画素値との相関係数であることが好ましい。
【0022】
画質指標は、相関係数であることが好ましい。
【0023】
プロセッサは、画質指標における特定の範囲を基準範囲として設定し、かつ、画質指標と基準範囲とを表示部に表示する制御を行うことが好ましい。
【0024】
プロセッサは、画質指標が基準範囲に含まれない場合、使用者に報知する制御を行うことが好ましい。
【0025】
本発明の放射線画像処理装置の作動方法は、互いに異なる2種類の放射線エネルギーをそれぞれ使用して特定の被写体を撮影した2枚の放射線画像を取得するステップと、2枚の放射線画像に対し、第1パラメータを含む演算式による第1強調処理を行うことにより第1強調画像を生成するステップと、2枚の放射線画像のうち少なくともいずれかの放射線画像を用いた第2強調処理を行うことにより第2強調画像を生成するステップと、第1強調画像と第2強調画像との相関を示す相関情報を生成するステップと、第1強調画像と、第1パラメータの値に対応するレベル値と、相関情報に基づいて第1強調画像と第2強調画像との差異の程度を定量化して示した画質指標とを表示部に表示する制御を行するステップとを備える。
【0026】
本発明の放射線画像処理プログラムは、互いに異なる2種類の放射線エネルギーをそれぞれ使用して特定の被写体を撮影した2枚の放射線画像を取得する機能と、2枚の放射線画像に対し、第1パラメータを含む演算式による第1強調処理を行うことにより第1強調画像を生成する機能と、2枚の放射線画像のうち少なくともいずれかの放射線画像を用いた第2強調処理を行うことにより第2強調画像を生成する機能と、第1強調画像と第2強調画像との相関を示す相関情報を生成する機能と、第1強調画像と、第1パラメータの値に対応するレベル値と、相関情報に基づいて第1強調画像と第2強調画像との差異の程度を定量化して示した画質指標とを表示部に表示する制御を行する機能とをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、画質を定量化した上で調整したサブトラクション処理画像を容易かつ迅速に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】放射線画像処理装置の機能を説明する説明図である。
図2】骨部画像Gbの生成と、骨部画像Gbを用いた軟部画像Gtの生成の一例を説明する説明図である。
図3】骨部画像Gbと軟部画像Gtとを独立して生成する一例を説明する説明図である。
図4】軟部画像Gtの生成と、軟部画像Gtを用いた骨部画像Gbの生成の一例を説明する説明図である。
図5】体厚と管電圧とによる変換係数を示すルックアップテーブルであり、管電圧がそれぞれ100kV、90kV、又は80kVの場合である。
図6】放射線画像処理装置による画面21の表示を説明する説明図である。
図7】ESレベル値の変更前におけるES画像の画質指標及びESレベル値の表示を説明する説明図である。
図8】ESレベル値の変更後におけるES画像の画質指標及びESレベル値の表示を説明する説明図である。
図9】ES画像の画質調整について説明する説明図である。
図10】放射線画像処理装置の処理の流れを説明するフローチャートである。
図11】放射線撮影システムの概略図である。
図12】コンソールの機能及び接続機器を説明する説明図である。
図13】画像処理部の機能を示すブロック図である。
図14】体厚分布取得部の機能を示すブロック図である。
図15】ESレベル値の変更前における基準範囲を示したES画像の画質指標及びESレベル値の表示を説明する説明図である。
図16】ESレベル値の変更後における基準範囲を示したES画像の画質指標及びESレベル値の表示を説明する説明図である。
図17】報知制御部を備える放射線画像処理装置の機能を説明するブロック図である。
図18】警告表示を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の基本的な構成の一例について説明する。本発明の放射線画像処理装置は、所定の機能を実現するためのアプリケーションプログラムがインストールされたパーソナルコンピュータ、又はワークステーション等のコンピュータである。コンピュータには、プロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、メモリ、及びストレージ等が備えられ、ストレージに記憶されたプログラム等により、各種機能を実現する。
【0030】
図1に示すように、本発明の放射線画像処理装置(以下、処理装置という)10は、画像取得部11と、画像処理部12と、相関情報生成部13と、表示制御部14と、変更受付部15と、表示部16と、操作部17とを備える。
【0031】
表示部16及び操作部17は、処理装置10を構成するコンピュータに接続された機器であればよい。接続は、直接の接続に限らず、各種のネットワークを介した接続であってもよい。したがって、処理装置10において、表示部16又は操作部17が、処理装置10を構成するコンピュータと離れた位置にあってもよい。
【0032】
画像取得部11は、特定の被写体を、互いに異なる2種類の放射線エネルギーをそれぞれ使用して撮影した、2枚の放射線画像を取得する。特定の被写体とは、同一の被写体であって、撮影した2枚の放射線画像において撮影部分及び撮影方向が共通する場合の被写体を意味する。互いに異なる2種類の放射線エネルギーをそれぞれ使用して撮影したとは、放射線画像の形成又は放射線の検出を少なくとも2回行う際に、実質的に放射線の線質(エネルギー分布(以下、単にエネルギーという))がそれぞれ異なることを意味し、放射線源が爆射する放射線の線質が互いに異なる場合の他、放射線エネルギー変換フィルタ等を介して線質が互いに異なる2種類の放射線のそれぞれを用いる場合を含む。したがって、2枚の放射線画像は互いに異なる。
【0033】
画像取得部11は、2枚の放射線画像を取得する際に、3枚以上の複数の放射線画像を取得してもよい。例えば、特定の被写体を互いに異なる3種類以上の複数の放射線エネルギーをそれぞれ使用して撮影した、互いに異なる3枚以上の複数の放射線画像のうちの2枚の放射線画像を取得する等により、互いに異なる2枚の放射線画像を取得してもよい。
【0034】
画像取得部11は、2枚の放射線画像を取得する際に、いわゆる原画像(画像処理等を施していない画像)だけでなく、散乱線補正処理又はその他の画像処理等の各種処理を施した放射線画像を取得してもよい。また、画像取得部11を、取得する2枚の放射線画像のうち少なくとも1枚を、散乱線補正処理等を施した放射線画像にすることができるように構成してもよい。散乱線補正処理とは、放射線の被写体その他による散乱線を低減する補正する画像処理である。散乱線補正処理は、被写体の厚さに応じて推定された散乱線成分を画素毎に除去する処理であってもよい。散乱線補正処理は、画像処理部12において行っても良い。散乱線補正処理については、後述する。
【0035】
画像処理部12は、画像取得部11が取得した2枚の放射線画像に対し、第1パラメータを含む演算式による第1強調処理を行うことにより第1強調画像を生成する。また、画像処理部12は、画像取得部11が取得した2枚の放射線画像のうち少なくともいずれかの放射線画像を用いた第2強調処理を行うことにより第2強調画像を生成する。強調処理とは、画像処理により、放射線画像が含む構造物、エッジ等を強調する処理である。強調処理には、特定の構造物、ノイズ等を放射線画像から消去する減算処理を含む。なお、放射線画像には、画像処理後の放射線画像も含む。
【0036】
第1強調処理は、本実施形態では、2枚の放射線画像である第1放射線画像G1と第2放射線画像G2とに対し、第1パラメータを含む演算式により行う処理である。なお、後に説明する変更受付部15は、第1パラメータの値に対応するレベル値の変更を受け付ける。変更受付部15がレベル値の変更を受け付けることにより、第1パラメータの値が更新される。処理装置10は、第1パラメータの値が更新される毎に処理装置10による一連の処理を繰り返し行う。
【0037】
第1強調処理は、サブトラクション処理(以下、ES(Energy Subtraction)処理という)であることが好ましい。本実施形態では、2枚の放射線画像である第1放射線画像G1と第2放射線画像G2とに対し、第1パラメータを含む演算式によるES処理を行う。具体的には、画像取得部11が取得した、特定の被写体を人の胸部として撮影した第1放射線画像G1と第2放射線画像G2とに基づきES処理を行うことにより、骨部画像Gbである第1強調画像を生成する。なお、ES処理により生成した画像を、ES画像という。骨部画像Gbは、ES画像である。
【0038】
サブトラクション処理では、2枚の放射線画像のうちの一方の画像を、他方の画像に対して重み付けをして差し引く重み付け演算により、重み付けの係数であるパラメータに応じて、演算処理等の処理画像において骨部又は軟部といった特定の組織による信号を低減することができる。本実施形態では、サブトラクション処理は、放射線画像G1と放射線画像G2との2枚の放射線画像を用いた第1パラメータα又は第2パラメータβを含む演算式による処理として実行することができる。
【0039】
放射線画像G1と放射線画像G2との2枚の放射線画像に対し、それぞれ対応する画素間で第1パラメータを用いた重み付け減算を行う場合、例えば、以下の式(1)に示すように、骨部画像Gbの特定位置の座標(x,y)の画素値Gb(x,y)は、放射線画像G1の対応する画素値G1(x,y)から、放射線画像G2の対応する画素値G2(x,y)を、重み付けの係数である第1パラメータαで重み付けした上で減算することにより得られる。この場合、第1パラメータαの値は、骨部画像Gbにおいて、軟部を示す画素値がほぼ0となるように設定することが好ましい。なお、放射線画像G1及び放射線画像G2は特定の被写体を撮影したものであり、対応する画素である放射線画像G1及び放射線画像G2の座標(x,y)は被写体のほぼ同じ位置に対応する。また、「対応する画素」とは、複数の画像において、被写体のほぼ同じ位置に対応する位置の画素であることを意味する。
【0040】
Gb(x,y)=G1(x,y)-α×G2(x,y) ・・・(1)
【0041】
なお、2枚の放射線画像のうち、どちらの放射線画像から減算するかを選択するにあたっては、どちらの放射線画像でも選択することができるが、骨部画像Gbにおいては、撮影に用いた放射線エネルギーが低い放射線画像から減算することが好ましい。一般的に、放射線エネルギーが低いほうの放射線画像は、放射線エネルギーが高いほうの放射線画像よりも、骨部のコントラストが高い画像が得られるためである。本実施形態では、放射線画像G1は、放射線画像G2よりも、放射線画像生成のために用いたエネルギーが低いものとする。
【0042】
なお、第1パラメータαについては、はじめに、予め所定の値を設定する。したがって、第1パラメータαは、予め所定の値を設定し、まずは、所定の値の第1パラメータαを用いた演算式により、第1放射線画像G1と第2放射線画像G2とに対して処理を行う。これにより、第1強調画像として骨部画像Gbを生成する。
【0043】
第2強調処理は、2枚の放射線画像のうち少なくともいずれかの放射線画像を用いた処理である。したがって、第2強調処理は、放射線画像G1又は放射線画像G2と、第1強調画像とを用いる減算処理と、放射線画像G1及び放射線画像G2を用いるサブトラクション処理との2種類を含む。
【0044】
第2強調処理が減算処理である場合、減算処理は、2枚の放射線画像のうちの一方から第1強調画像を除く処理である。画像を除くとは、対応する画素において画素値の減算を行うことを意味する。減算を行った結果の画素値により、第2強調画像が生成される。本実施形態では、第1強調画像は骨部画像Gbである。したがって、第2強調処理において、2枚の放射線画像である放射線画像G1及び放射線画像G2のうちの一方から骨部画像Gbを除くことにより、第2強調画像として軟部画像Gtを生成する。
【0045】
具体的には、減算処理において、以下の式(2)又は(3)に示すように、第2強調画像である軟部画像Gtの特定位置の画素値Gt(x,y)は、放射線画像G1の対応する画素値G1(x,y)又は放射線画像G2の対応する画素値G2(x,y)から、第1強調画像である骨部画像Gb(x,y)を減算することにより得られる。
【0046】
Gt(x,y)=G1(x,y)-Gb(x,y) ・・・(2)
Gt(x,y)=G2(x,y)-Gb(x,y) ・・・(3)
【0047】
したがって、第2強調処理が減算処理である場合の骨部画像Gbと軟部画像Gtの導出方法は、図2に示すように、骨部画像Gbを導出し、元の放射線画像G1又は放射線画像G2から、導出した骨部画像Gbを除くことにより、軟部画像Gtを導出する方法である。骨部画像Gbを導出する際に、以下の式(1)を用い、軟部画像Gtを導出する際に、以下の式(2)又は式(3)を用いる。
【0048】
Gb(x,y)=G1(x,y)-α×G2(x,y) ・・・(1)
Gt(x,y)=G1(x,y)-Gb(x,y) ・・・(2)
Gt(x,y)=G2(x,y)-Gb(x,y) ・・・(3)
【0049】
第2強調処理がサブトラクション処理である場合、第2強調処理は、2枚の放射線画像に対する第2パラメータを含む演算式による処理である。この場合の第2強調処理は、パラメータが異なる以外は、第1強調処理と同様の処理である。したがって、この場合の第2強調処理は、第1強調処理と同様のES処理であることが好ましく、2枚の放射線画像のうちの一方の放射線画像に対し、第2パラメータを用いた重み付けを行った上で、他方の放射線画像から減算する処理であることが好ましい。
【0050】
例えば、以下の式(4)に示すように、第2強調画像である軟部画像Gtの特定位置の画素値Gt(x,y)は、放射線画像G2の対応する画素値G2(x,y)から、放射線画像G1の対応する画素値G1(x,y)を第2パラメータβで重み付けした上で減算することにより得られる。この場合、第2パラメータβは、軟部画像Gtにおいて、骨部を示す画素値がほぼ0となるように設定することが好ましい。なお、パラメータα及び第2パラメータβを区別しない場合、ES係数という。
【0051】
Gt(x,y)=G1(x,y)-β×G2(x,y) ・・・(4)
【0052】
したがって、第2強調処理がサブトラクション処理である場合の骨部画像Gbと軟部画像Gtの導出方法は、図3に示すように、第1強調処理と第2強調処理とのそれぞれにおいて、放射線画像G1及び放射線画像G2を用いて、第1強調処理により骨部画像Gbを、第2強調処理により軟部画像Gtを、独立に導出する処理である。第1強調処理において、骨部画像Gbを導出する際に、第1パラメータαを用いる以下の式(1)を用い、第2強調処理において、軟部画像Gtを導出する際に第2パラメータβを用いる以下の式(4)を用いる。
【0053】
Gb(x,y)=G1(x,y)-α×G2(x,y) ・・・(1)
Gt(x,y)=G1(x,y)-β×G2(x,y) ・・・(4)
【0054】
なお、上記実施形態では、第1強調処理により骨部画像Gbを導出したが、第1強調処理により軟部画像Gtを導出し、第2強調処理により骨部画像Gtを導出してもよい。したがって、第1強調処理において第1強調画像として軟部画像Gtを導出し、第2強調処理において、2枚の放射線画像である放射線画像G1及び放射線画像G2のうちの一方から軟部画像Gbを除くことにより、第2強調画像として骨部画像Gbを導出してもよい。
【0055】
第1強調処理により軟部画像Gtを導出する方法としては、第1強調処理により骨部画像Gbを導出した場合と同様である。すなわち、放射線画像G1と放射線画像G2との2枚の放射線画像に対し、それぞれ対応する画素間で第2パラメータを用いた重み付け減算を行う。これは、上記にて、以下の式(4)を用いて軟部画像Gtを導出した場合と同様である。
【0056】
Gt(x,y)=G1(x,y)-β×G2(x,y) ・・・(4)
【0057】
そして、第2強調処理である減算処理において、以下の式(5)又は(6)に示すように、第2強調画像である骨部画像Gbの特定位置の画素値Gb(x,y)は、放射線画像G1の対応する画素値G1(x,y)又は放射線画像G2の対応する画素値G2(x,y)から、第1強調画像である軟部画像Gt(x,y)を減算することにより得られる。
【0058】
Gb(x,y)=G1(x,y)-Gt(x,y) ・・・(5)
Gb(x,y)=G2(x,y)-Gt(x,y) ・・・(6)
【0059】
したがって、第2強調処理が減算処理である場合の骨部画像Gbと軟部画像Gtの導出方法は、図4に示すように、軟部画像Gtを導出し、元の放射線画像G1又は放射線画像G2から、導出した軟部画像Gtを除くことにより、骨部画像Gbを導出する方法であってもよい。軟部画像Gtを導出する際に、以下の式(4)を用い、軟部画像Gtを導出する際に、以下の式(5)又は式(6)を用いる。
【0060】
Gt(x,y)=G1(x,y)-β×G2(x,y) ・・・(4)
Gb(x,y)=G1(x,y)-Gt(x,y) ・・・(5)
Gb(x,y)=G2(x,y)-Gt(x,y) ・・・(6)
【0061】
なお、減算処理において、2枚の放射線画像のうち、どちらの放射線画像から減算するかを選択するにあたっては、どちらの放射線画像でも選択することができるが、撮影に用いた放射線エネルギーが高い放射線画像を選択する場合は、骨部がよりよく除かれた画像が得られるため好ましい。一般的に、放射線エネルギーが高いほうの放射線画像は、放射線エネルギーが低いほうの放射線画像よりも、骨部コントラストが低い画像が得られるためである。
【0062】
なお、パラメータについては、はじめに、予め所定の値を設定する。したがって、パラメータβは、予め所定の値を設定し、まずは、所定の値のパラメータβを用いた演算式により、第1放射線画像G1と第2放射線画像G2とに対して処理を行う。これにより、第2強調画像として軟部画像Gtを生成する。軟部画像Gtは、ES画像である。
【0063】
なお、画像処理部12は、取得した放射線画像がコントラスト補正処理を行っていないものである場合、取得した放射線画像に対し、2枚の放射線画像の撮影時の管電圧に応じたコントラストの相違、及びビームハードニングの影響によるコントラストの低下を補正するコントラスト補正処理を行うことが好ましい。コントラスト補正処理は、公知の方法を採用することができる。
【0064】
図5に、骨部画像Gbにおける、撮影時の管電圧に応じたコントラストの相違、およびビームハードニングの影響によるコントラストの低下を補正するための補正係数を取得するためのルックアップテーブルを示す。補正係数は、骨部画像Gbの各画素値Gb(x,y)を補正するための係数である。基準撮影条件を、管電圧90kVに設定したルックアップテーブルLUT20が例示されている。
【0065】
図5に示すようにルックアップテーブルLUT20において、管電圧が大きいほど、かつ被写体の体厚が大きいほど、大きい補正係数が設定されている。なお、図5において、ルックアップテーブルLUT20を2次元で示しているが、補正係数は骨部領域の画素値に応じて異なる。このため、ルックアップテーブルLUT20は、実際には骨部領域の画素値を表す軸が加わった3次元のテーブルとなる。
【0066】
軟部画像Gtについても、骨部画像Gbと同様にして、コントラスト補正処理として、軟部画像Gtに応じた補正係数を得るためのルックアップテーブル(図示せず)を用いることにより、軟部画像Gtの画素値Gt(x,y)の変動の補正を行うことができる。
【0067】
相関情報生成部13は、第1強調画像と第2強調画像との相関を示す相関情報を生成する。相関が低い場合、第1強調画像と第2強調画像とが互いに異なる程度が高い画像であり、相関が高い場合、第1強調画像と第2強調画像とが同じである程度が高い画像であるといえるから、相関情報に基づく画質指標によれば、第1強調画像と第2強調画像との差異の程度を定量化することができる。したがって、相関情報は、第1強調画像と第2強調画像との相関が低いほどES画像としての画質が高く、また、第1強調画像と第2強調画像との相関が高いほどES画像としての画質が低くなるような画質指標に変換することが好ましい。
【0068】
このような相関情報としては、相関値が挙げられる。具体的には、統計学的に算出された相関係数、又は、テンプレートマッチングの技術に用いられるSAD(Sum of Absolute Difference)、SSD(Sum of Squared Difference)、NCC(Normalized Cross-Correlation)若しくはZNCC(Zero-mean Normalized Cross-Correlation)における相関値等、画像の相関の程度を示す相関値であれば、いずれの算出方法で算出された相関値でも用いることができる。
【0069】
第1強調画像と第2強調画像とに関する相関情報を相関値として生成することにより、第1強調画像と第2強調画像との差異の程度が定量化される。したがって、第1強調画像と第2強調画像とが互いに異なるものであることが好ましい場合、相関値は、定量化された差異の程度において、差異が最大である程度を示す相関値である場合が最も好ましい。
【0070】
本実施形態では、相関の程度を示す相関値である相関情報として、第1強調画像の画素値と第2強調画像の画素値とを用いて算出した、統計学において用いられる相関係数を用いる。相関係数は、第1強調画像と第2強調画像の全体に対して算出してもよいが、第1強調画像の注目領域と第2強調画像の対応する注目領域に対して算出してもよい。
【0071】
第1強調画像の注目領域の画素値と第2強調画像の対応する注目領域の画素値との相関係数rは、具体的な算出方法を例示すると以下のとおりである。第1強調画像である骨部画像Gbの注目領域における第1画素値と、第2強調画像である軟部画像Gtの対応する注目領域の第2画素値との相関係数rは、第1画素値の標準偏差saと、第2画素値の標準偏差sbと、第1画素値と第2画素値との共分散sabとから、以下の式(7)により算出される。
【0072】
【数1】
【0073】
第1画素値の標準偏差sa、第2画素値の標準偏差sb、及び第1画素値と第2画素値との共分散sabは、それぞれ以下の式(8)、(9)又は(10)により算出される。なお、骨部画像Gbの注目領域における各座標の画素値を第1画素値ai(iは整数)とし、第2強調画像である軟部画像Gtの注目領域における各座標の画素値の数値を第2画素値bi(iは整数)とする。そして、第1画素値aiの平均値を平均値A、第2画素値biの平均値を平均値B、及び、第1画素値aiと第2画素値biとの個数の総数を総数nとする。
【0074】
【数2】
【0075】
【数3】
【0076】
【数4】
【0077】
したがって、第1画素値aiと第2画素値biとの相関係数rは、以下の式(11)により算出できる。
【0078】
【数5】
【0079】
相関係数rは、1から-1の範囲内の値をとり、1に近いほど第1画素値aiと第2画素値biとは正の相関が強く、-1に近いほど負の相関が強く、0に近いほど相関がないといえる。骨部画像Gbと軟部画像Gtとは、2枚の放射線画像を用いて、それぞれ軟部又は骨部の画像信号を差し引いて生成したものであるため、骨部画像Gbの第1画素値aiと軟部画像Gtの第2画素値biとは、相関係数rが0に近いほど、特定の位置における同様の画素値を共通して持つ程度が低く、互いに異なる画像である程度が高いといえる。したがって、骨部画像Gbと軟部画像Gtとが互いに異なる画像である程度が高い場合、骨部画像Gbとしての画質が高く、また、軟部画像Gtとしての画質が高いとすることができる。なお、本明細書において、ES画像についての「画質」は、ES画像における目的の構造物又は組織等以外に基づく画像又は画素値の有無に関するものとする。以上のように、骨部画像Gbの第1画素値aiと軟部画像Gtの第2画素値biとの相関係数rは、骨部画像Gb及び軟部画像Gtの画質指標として適当であり、相関係数rが0に近い、すなわち、画質指標が0に近いほど、骨部画像Gb又は軟部画像Gtの画質が高いということができる。
【0080】
なお、骨部画像Gbの第1画素値aiと軟部画像Gtの第2画素値biとの相関係数rは、骨部画像Gb及び/又は軟部画像Gtが変更されることにより変化する。骨部画像Gbが変更される場合は、第1パラメータαがそれまでの値から更新された場合である。軟部画像Gtが変更された場合は、軟部画像Gtを生成した際の第2強調処理の内容により二つの場合があり、骨部画像Gbが変更した場合と、第2パラメータβがそれまでの値から更新された場合とである。相関情報生成部13は、ES画像の生成毎に相関情報を生成することが好ましい。したがって、本実施形態では、相関情報生成部13は、骨部画像Gb及び/又は軟部画像Gtが変更される毎に、相関係数rを算出することが好ましい。
【0081】
表示制御部14は、第1強調画像と、第1強調画像を生成した際に用いた第1パラメータの値に対応するレベル値と、相関情報に基づいて第1強調画像と第2強調画像との差異の程度を定量化して示した画質指標とを、表示部16に表示する制御を行う。処理装置10の使用者は、表示部16に表示された第1強調画像と、レベル値と、画質指標とを、表示部16の画面により確認することができる。
【0082】
表示部16は、例えば、液晶等のディスプレイ等であり、撮影した放射線画像及び放射線画像処理装置10が生成した処理画像等を表示する。本実施形態では、表示部16はディスプレイである。操作部17は、例えば、処理装置10を操作するためのキーボード及び/又はポインティングデバイス等である。表示部16及び操作部17はタッチパネルで構成することができる。本実施形態では、操作部17により、ディスプレイに表示されたGUI(Graphical User Interface)を介して、入力、選択、又は変更等の各種の指示を行う。
【0083】
相関情報に基づいて第1強調画像と第2強調画像との差異の程度を定量化して示した画質指標であるES画質指標は、相関情報に基づくものであって、第1強調画像と第2強調画像との画質を定量化して表すものを用いる。ES画質指標は、画質指標の値の高低により第1強調画像又は第2強調画像の画質の優劣が理解しやすいものであることが好ましい。ES画質指標は、相関情報の種類に応じて、相関情報の相関値を変換等することにより得た値としてもよいし、相関情報の相関値そのものとしてもよい。
【0084】
本実施形態では、ES画質指標は、相関係数rそのものとする。ES画質指標を相関係数rそのものとすることにより、相関値がマイナス1以上プラス1以下の範囲内の値をとるため、ES画像の画質の優劣を理解しやすい。このようなES画質指標によれば、ES画質指標の絶対値が小さく0に近いほどES画像の相関情報に基づく画質(以下、ES画質という)が良好であり、ES画質指標の絶対値が高くマイナス1又はプラス1に近いほどES画像のES画質は良好とは言えず、ES画質について画質調整の余地がある可能性が示される。
【0085】
図6に示すように、本実施形態では、ディスプレイの画面21には、第1強調画像である骨部画像Gbが表示される。画面21は、骨部画像Gbの他に、骨部画像Gbを生成する際の一般的な各種の調整等を行う画像調整部22と、画面21に表示するES画像又は放射線画像の種類等を切り替える指示を行うES画像切替部23と、表示している骨部画像GbのES画質指標を表示するES画質指標表示部24と、表示している骨部画像Gbを生成する際に用いたパラメータαの値に対応するレベル値を表示するESレベル表示部25とを有する。
【0086】
ES画像切替部23は、画面21に表示するES画像の種類を切り替える指示を行う。ES画像切替部23では、ES画像の切り替えに加え、放射線画像を切り替えて表示できるように構成しても良い。図7に示すように、ES画像の種類が、骨部画像Gb及び軟部画像Gtを含む場合、GUI等により、画面21に表示された「骨部」と「軟部」との選択肢のいずれかを選択することにより、画面21に表示するES画像の種類を選択する。ES画像切替部23において、ES画像の種類の選択に応じて、「骨部」と「軟部」との選択肢のうち選択された選択肢がいずれであるかが、例えば、選択されなかった選択肢を暗く表示し、選択された選択肢を明るく表示する等により、ひと目で把握可能な表示とすることが好ましい。選択されたES画像の種類は、画面21の向かって左部分に表示される。本実施形態では、ES画像切替部23により骨部画像Gbが選択されており、画面21には骨部画像Gbが表示される。
【0087】
ES画質指標表示部24は、ES画質指標を容易に把握できる形態で示すことが好ましい。ES画質指標の表示形態は、ES画像指標の種類に応じて設定する。ES画質指標の表示形態は、使用者がES画質指標を把握することができれば良い。
【0088】
本実施形態では、ES画質指標は相関係数rそのものであるため、原点の0に目盛りを付した-1から1までを示す数直線31の形態で表示する。画面21に表示する骨部画像GbのES画質指標は、数直線31上に点32により示す。これにより、画面21に表示する骨部画像GbのES画質指標が、ES画質として最も好ましい0の目盛りに比較的近いか遠いかを、ひと目で把握することができる。
【0089】
ES画質の調整は、ES画像を再度生成することにより行う。上述したように、ES画像は、画像処理部12が取得した2枚の放射線画像に対しES係数を含む演算式による処理を行うことにより生成される。したがって、ES画像を生成する際に用いたES係数を変更し、変更したES係数を用いてES画像を再生成することにより、画質が調整されたES画像を生成することができる。
【0090】
ES係数の変更については、ES画像の生成に用いたES係数の値をそのまま用いてもよいが、ES係数に対応するレベル値であるESレベル値に変換したものとすることが好ましい。ESレベル値は、例えば、ES係数に対応させた、予め設定した数値範囲とする。この場合の数値範囲は、例えば、0以上10以下の範囲内、又は、0以上100以下の範囲内等とすることができる。これにより、使用者がES係数の値の変更とES画質の調整の程度との関係を容易に認識できる。
【0091】
ESレベル表示部25は、ESレベル値表示部34と、ESレベル値変更部35とを有する。ESレベル値表示部34は、画面21に表示した骨部画像GbのESレベル値であるレベル値を数字で表示する。例えば、画面21に表示されている骨部画像Gbを生成した際のレベル値が「2.1」と表示される。本実施形態では、レベル値として、パラメータαの値を対応させた、1以上10以下の範囲内の数値を小数点一桁で示した値を用いる。ESレベル値変更部35は、GUIにより表示され、ESレベル値を変更するためのボタンを有する。ボタンは、例えば、「+」と表示したプラスボタンと「-」と表示したマイナスボタンとからなる。
【0092】
変更受付部15は、ESレベル値の変更を受け付ける。変更受付部15は、レベル値であるESレベル値の変更を受け付けた場合、ESレベル値に対応する第1パラメータの値を更新する。第1パラメータの値が更新された場合、更新した第1パラメータの値を用いる一連の処理を再度行い、それぞれ新たな第1強調画像、レベル値、及び画質指標を表示部16に表示する制御を行う。したがって、レベル値の変更を受け付ける毎に、上記した一連の処理を再度行う。
【0093】
具体的には、変更受付部15が、ESレベル値の変更を受け付けた場合、画像処理部12は、更新した第1パラメータの値を用いて第1強調処理を行うことにより第1強調画像を生成して更新し、場合により、更新した第1強調画像を用いて第2強調処理を行う。相関情報生成部13及び表示制御部14も、更新された第1強調画像を用いて再度処理を行い、表示部16には、更新した第1強調画像、更新した第1パラメータに対応するレベル値、及び更新した画質指標が表示部16に表示される。
【0094】
このように、変更受付部15が、ESレベル値の変更を受け付ける毎に、上記したような処理画像の生成から画質指標の表示までの処理が繰り返して行われる。使用者は、ディスプレイに表示された画質指標及び再度生成された第1強調画像を見て、再びESレベル値を変更してもよいし、ES画質が良好になったと考える場合には処理を終了してもよい。
【0095】
なお、変更受付部15がESレベル値の変更を受け付けるために、表示制御部14は、使用者によるESレベル値の変更を受け付けるユーザインタフェースを表示部16であるディスプレイに表示する制御を行うことが好ましい。ユーザインタフェース等は、使用者によるESレベル値の変更を受け付けることができるものであればよく、態様等は問わない。
【0096】
図8に示すように、本実施形態では、使用者がマウス又はキーボード等の操作部17によりESレベル値変更部35を操作することにより、ESレベル値を変更する。例えば、操作部17がマウスである場合、画面21に矢印型のカーソル36が表示され、カーソル36で選択したボタンをクリックすることにより、ESレベル表示部25に変更されたESレベル値を大きくしたり小さくしたりすることができる。図8では、それまで「2.1」であった値が「2.8」に変更されている。変更されたESレベル値がESレベル値変更部35に表示された際には、変更受付部15がESレベル値の変更を受け付け、上記したように、その後の処理が自動的に進められる。変更されたESレベル値に対応して再度生成された骨部画像Gbが表示され、また、ES画質指標表示部24に再度生成された骨部画像Gbの画質指標が点32として表示される。
【0097】
図9に示すように、再度生成された第1強調画像について画質指標が基準の0から遠くにある場合、使用者は、ESレベル値の変更を複数回繰り返すことにより、ES画質が改善された第1強調画像を生成することができる。変更受付部15が、ESレベル値の変更を受け付ける毎に、上記したような処理画像の生成から画質指標の表示までの処理が繰り返して行われる。最終的に、変更された骨部画像GbのES画質指標を示す点32が、ES画質指標の0の基準により近くなった場合、使用者は、画面21を見ることにより、再度生成された骨部画像GbはES画質として良好であり、さらに調整する必要がなく、ES画質の調整が完了したものとなったことがひと目で理解できる。
【0098】
このように、ESレベル値の変更を複数回繰り返す場合であっても、その都度変更されたES画質指標が表示されるため、ESレベル値をどのように変換させればES画質指標がどの程度向上又は悪化するのかの傾向を知ることができる。このように、使用者は、一つの画面21上でES画像を確認しながら一箇所の操作をすることでES画像の調整を行うことができるため、ES画質を基準の0に最も近くなるように調整することは容易であり、かつ、迅速に行うことができる。
【0099】
本実施形態では、第1強調画像は骨部画像Gbであるとして説明したが、第1強調画像を軟部画像Gtとし、第2強調画像を骨部画像Gbとしてもよい。
【0100】
また、本実施形態では、放射線画像はX線画像であり、第1強調画像と第2強調画像とが骨部画像Gbと軟部画像Gtとであるとして説明したが、2枚の放射線画像に対し減算等の処理を行うことにより、特定の構造又は組織等を抽出した画像を生成することができる放射線画像であれば、いずれの放射線画像であっても採用することができる。例えば、放射線画像はCT(Computed Tomography)画像等であってもよく、第1強調画像と第2強調画像とが血管画像と血管を除いた画像等であってもよい。
【0101】
次に、図10に示すフローチャートを用いて、本発明の処理装置10による処理の流れの一例を説明する。処理装置10は、互いに異なる2種類の放射線エネルギーをそれぞれ使用して、特定の被写体として、同じ被検者の胸部の同様の領域を、同様の向きにより撮影した第1放射線画像G1と第2放射線画像G2とを取得する(ステップST110)。取得した第1放射線画像G1と第2放射線画像G2とに対し、第1パラメータを含む演算式によりES処理を行うことにより骨部画像Gbを生成する。第2放射線画像G2から骨部画像Gbを減算する処理を行うことにより軟部画像Gtを生成し、骨部画像Gbと軟部画像Gtとの2種のES画像を生成する(ステップST120)。次に、骨部画像Gbと軟部画像Gtとの相関情報を算出する(ステップST130)。相関情報は、相関係数rである。そして、相関係数rの値をES画質指標とし、画質指標を生成する(ステップST140)。
【0102】
ここでは、骨部画像Gbと軟部画像Gtのうち、骨部画像Gbについて画質調整を行うものとする。したがって、ディスプレイに、骨部画像Gbと、ES画質指標と、骨部画像Gbを生成する際の演算式に用いた第1パラメータαに基づいたESレベル値であるレベル値とを表示する(ステップST150)。使用者である放射線技師は、ディスプレイの表示に基づき、ESレベル値を変更するか又は変更しないかを決定する。ESレベル値の変更があった場合(ステップST160でY)、変更したESレベル値に基づいた第1パラメータを含む演算式によりES処理を行うことにより、再度骨部画像Gbを生成する(ステップST180)。ESレベル値の変更がない場合(ステップST160でN)、骨部画像Gbの画質調整は完了とする(ステップST170)。
【0103】
ES画像は、放射線の出力値変動、又は、被写体のばらつき等によって誤差が生じ、画質が悪化する場合があった。例えば、生成した骨部画像Gbにおいて、骨部の消えすぎ、又は、骨部の消え残り等が発生することがあった。これらについて、2点の原因を挙げると、第1に、放射線画像撮影装置(図11参照)における放射線源及び/又は放射線撮影パネル等の経時変化が挙げられる。放射線源における管球の劣化等による経時変化では、放射線の線質及び/又は線量が変化する。また、放射線撮影パネルの劣化等による経時変化では、出力する画素値が変化する。
【0104】
また、コントラストの低下を補正するためのLUT20(図5参照)等を用いた補正係数は、設定した管電圧情報を使うために、実際の線質が変化すると、補正係数の誤差が生じる。また、体厚は、撮影において被写体が無い場合の画素値I0と被写体がある場合の画素値Iの差分から求める。しかし、画素値I0は、管電圧(kV値)、線量(mAs値)、SID(Source Image receptor Distance)等の設定した撮影条件情報を使って、予め取得しておいたキャリブレーションデータに基づいて算出している。そのため、キャリブレーションデータを取得した際と比較して、実際の放射線の線質、線量、又は放射線撮影パネルの出力値等が変化すると、算出した画素値I0に誤差が生じ、LUT20における体厚又は補正係数がずれることになる。これらのことから、生成する骨部画像Gb等のES画像に誤差が発生する場合がある。
【0105】
また、1次線又は散乱線を推定する場合、画素値Iと整合するように体厚を繰り返し求めていく。体厚は、被写体が無い場合の画素値I0と被写体がある場合の画素値Iの差分から求める。したがって、放射線の線質、線量、又は放射線撮影パネルの出力値等が変化すると、算出した画素値I0に誤差が生じて、体厚がずれ、求める1次線又は散乱線に誤差が含まれてしまう。そのため、誤差を含んだ1次線データである放射線画像の画素値を用いて、上記の方法により骨部画像Gbを算出するため、ES画像である骨部画像Gbに誤差が発生する場合がある。
【0106】
第2に、被写体厚がばらつく場合が挙げられる。例えば、LUT20(図5参照)では、被写体厚に依存して骨部画像Gbの画素値Gb(x,y)を補正している。しかし、この関係式の体厚は、標準的な脂肪率での体厚であり、被写体厚に依存してGb(x,y)を補正している。しかし、被写体、部位によって、脂肪率は標準的な値から変化する場合がある。すると、Gb(x,y)の補正係数にもずれが生じ、ES画像としては、骨の消え過ぎ、消え残りが発生してしまう。そのため、例えば、骨部画像Gbの画素値Gb(x,y)の補正係数にもずれが生じ、ES画像である骨部画像Gbとしては、骨の消え過ぎ、消え残りが発生してしまう場合がある。
【0107】
以上のような、ES画像において、ES画像の誤差、目的の構造等の消え過ぎ又は消え残り等が生じていると考えられる場合、放射線技師によるES画像に対する画像調整が必要であった。放射線技師は、ES画像を目視確認して画質調整をしている。検診等、大量の放射線撮影が必要な場合、放射線技師は、短時間に次々と撮影を完了しなければならない。そのため、通常の放射線画像だけ画質を確認し、放射線画像に基づいて作成されたES画像の画質まで確認する時間が不足する場合があり、撮影時にES画像の画質を保証できない場合があった。
【0108】
このような問題に対しては、画質調整を行うシステム又は機器の処理手順もしくは処理速度等を向上させる等の解決方法が考えられるが、例えば、解決後においても放射線技師が放射線画像又はES画像の目視評価により画質調整を行うシステムである場合では、依然として放射線技師に対して負荷がかかることが考えられる。また、この場合、画質調整には放射線技師等の個人差のばらつきが生じる可能性がある。
【0109】
処理装置10等によれば、ES画質を表すES画質指標が定量化されてディスプレイに表示される。したがって、放射線技師は少なくとも画質指標を確認すればよく、ES画像の画像確認又は画質調整の負荷を低減することができる。また、定量化された画質と、場合によりその基準が表示されるため、放射線技師の個人差による目視評価のばらつきを低減することができる。
【0110】
また、画質を調整する場合は、ESレベル値をクリック等で変更する操作のみにより、迅速にES画質を調整することができるため、画質調整の負荷が低減可能であり、撮影時であっても迅速にES画質の調整が可能である。したがって、使用者である放射線技師は、大量の放射線画像の処理に対応することができ、また、写損等による再撮影の頻度を低減することが可能である。
【0111】
以上のように、処理装置10によれば、ES画質を定量化して示すことにより、放射線技師による画質確認負荷が低減できる。また、放射線技師の個人差による目視評価のばらつきを低減できる。また、ES画質指標は、ES画像の生成と関連しており、ES画質を調整する場合には、ESレベル値を変更する操作のみで行えるため、容易により確実に画質調整を行える。したがって、処理装置10によれば、より良い画質のES画像を容易にかつ迅速に生成することができる。したがって、処理装置10等によれば、撮影時に放射線技師が行うES画像の画質確認負荷も大きく低減される。
【0112】
次に、処理装置10を含む放射線撮影システム等について実施形態の一例を説明する。図11に示すように、本実施形態の放射線撮影システム40は、放射線源41、放射線撮影パネル42、及びコンソール43、処理装置10と、を備える。放射線源41、放射線撮影パネル42、及び、コンソール43は、放射線撮影装置を構成する。
【0113】
放射線撮影装置では、特定の被写体の全体を撮影することができる。したがって、放射線撮影装置は、特定の被写体である人の胸部の全体を撮影することができる放射線源41及び放射線撮影パネル42等により構成されている。
【0114】
放射線源41は、撮影に必要な放射線Raを発生する装置であり、放射線Raを発生する放射線管と、放射線管が放射線Raを発生するために必要な高電圧を発生する高電圧発生回路等からなる。放射線源41は、放射線管の管電圧及び管電流等を調節することにより、線質(エネルギー分布(以下、単にエネルギーという))が異なる複数種類の放射線を発生できる。本実施形態においては、放射線源41はX線を発生するX線源である。このため、放射線撮影システム40はX線を用いて被写体Objを撮影することにより、被写体ObjのX線画像を取得するX線撮影システムである。被写体Objは例えば人であり、本実施形態では、人の胸部を特定の被写体Objとして撮影する。
【0115】
放射線撮影パネル42は、放射線源41が発生した放射線Raを用いて被写体Objを撮影する。すなわち、放射線撮影パネル42は、いわゆるFPD(Flat Panel Detector)であり、被写体Objを透過した放射線Raを検出して電気信号に変換することにより、被写体Objの放射線画像を出力する。放射線撮影パネル42を用いた撮影においては、必要に応じてグリッド(図示しない)を併用できる。グリッドは、放射線の散乱線成分を除去する装置であり、例えば、静止型のリスホルムブレンデ、又は、移動型のブッキーブレンデ等である。
【0116】
放射線撮影パネル42は、本実施形態においては、第1放射線検出器44と第2放射線検出器45の2個の検出器を備える。第1放射線検出器44及び第2放射線検出器45のうち、相対的に被写体Obj及び放射線源41の近くに配置する検出器が第1放射線検出器44であり、被写体Obj及び放射線源41から相対的に遠くに配置する検出器が第2放射線検出器45である。第1放射線検出器44及び第2放射線検出器45は、被写体Objを透過した放射線Raを画素ごとに検出する。また、第1放射線検出器44と第2放射線検出器45は被写体Objの放射線画像をそれぞれ出力する。
【0117】
但し、放射線撮影パネル42は、第1放射線検出器44と第2放射線検出器45の間に放射線エネルギー変換フィルタ46を備える。放射線エネルギー変換フィルタ46は、例えば銅板等であり、放射線Raの低エネルギー成分を吸収する。このため、放射線Raは、第1放射線検出器44を透過した後、第2放射線検出器45に到達するまでにエネルギーが変化する。したがって、放射線撮影パネル42は、特定の被写体Objを同じ撮影条件(同じ放射線Ra)で同時に撮影するが、第1放射線検出器44が出力する第1放射線画像G1(図1参照)と第2放射線検出器45が出力する第2放射線画像G2(図1参照)は、実質的に互いに異なる2種類の放射線Raのエネルギーをそれぞれ使用して特定の被写体を撮影した放射線画像となる。なお、このような方法は、1ショットエネルギーサブトラクション(1ショットES)と呼ばれる場合がある。
【0118】
なお、第1放射線検出器44及び第2放射線検出器45は、間接変換型の検出器又は直接変換型の検出器のいずれでもよく、第1放射線検出器44と第2放射線検出器45とで異なるタイプの検出器を採用できる。間接変換型の検出器とは、CsI(ヨウ化セシウム)等からなるシンチレータを用いて放射線Raを可視光に変換し、その可視光を光電変換することにより、間接的に電気信号を得る検出器である。直接変換型の検出器とは、アモルファスセレン等からなるシンチレータを用いて放射線Raを直接的に電気信号に変換する検出器である。また、第1放射線検出器44及び第2放射線検出器45は、それぞれPSS(Penetration Side Sampling)方式の検出器でもよく、ISS(Irradiation Side Sampling)方式の検出器でもよい。PSS方式とは、電気信号の読み出しを行うTFT(Thin Film Transistor)に対してシンチレータを被写体Obj側に配置する方式である。ISS方式とは、PSS方式とは逆に、シンチレータとTFTを、被写体Obj側からTFT、シンチレータの順に配置する方式である。
【0119】
また、放射線源41が、放射線管の管電圧及び管電流等を調節することにより、線質が異なる2種類以上の放射線を発生する場合は、放射線撮影パネル42は、少なくとも1個の放射線検出器を備える。この場合の放射線検出器は、第1放射線検出器44又は第2放射線検出器45等と同様とすることができる。
【0120】
この場合、放射線撮影パネル42は、特定の被写体Objを、線質が異なる以外は同じ撮影条件によりそれぞれの線質を用いて少なくとも2回撮影する。1回目の放射線検出器が出力する第1放射線画像G1(図1参照)と2回目の放射線検出器が出力する第2放射線画像G2(図1参照)は、互いに異なる2種類の放射線Raのエネルギーをそれぞれ使用して特定の被写体を撮影した放射線画像となる。なお、このような方法は、2ショットエネルギーサブトラクション(2ショットES)と呼ばれる場合がある。
【0121】
コンソール43は、放射線源41及び放射線撮影パネル42等の動作を制御する制御装置(コンピュータ)であり、例えば、所定の機能を実現するためのアプリケーションプログラムがインストールされたパーソナルコンピュータ、又はワークステーション等のコンピュータである。図12に示すように、コンソール43は、RIS47(Radiology Information Systems)、HIS48(Hospital Information Systems)、PACS49(Picture Archiving and Communication Systems)、又は、PACS49が含むDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)サーバ(図示せず)と接続されていてもよく、これらか放射線画像の撮影に関する撮影オーダー等の撮影情報を取得し、また、撮影した画像を送信する。
【0122】
コンソール43は、表示部47及び操作部48を備える。表示部47は、例えば液晶ディスプレイ等であり、撮影した放射線画像その他操作又は設定等に係る必要な表示をする。操作部48は、撮影条件等の設定入力、放射線源41及び放射線撮影パネル42の操作に用いる、例えばキーボード及び/又はポインティングデバイス等である。表示部47及び操作部48はタッチパネルで構成することができる。
【0123】
本実施形態においては、処理装置10は、コンソール43とは別体の装置であるが、処理装置10の一部又は全部をコンソール43に設けることができる。この場合、処理装置10の表示部16及び/又は操作部17には、コンソール43の表示部47及び/又は操作部48を使用できる。また、処理装置10の全部をコンソール43に設ける場合、コンソール43が処理装置10を構成する。
【0124】
処理装置10は、上記したように、画像取得部11と、画像処理部12と、相関情報生成部13と、表示制御部14と、変更受付部15と、表示部16と、操作部17とを備える(図1参照)。表示部16は、コンソール43の表示部47と共用してもよい。処理装置10には、各種処理に関するプログラムがプログラム用メモリ(図示せず)に格納されている。処理装置10においては、プロセッサ等によって構成される中央制御部(図示せず)により、プログラム用メモリ内のプログラムが動作することによって、画像取得部11、画像処理部12、相関情報生成部13、表示制御部14、変更受付部15、表示部16、操作部17、および中央制御部等の機能が実現される。
【0125】
処理装置10は、コンソール43と直接的に接続し、画像取得部11は、被写体Objを撮影した放射線画像をリアルタイムに取得して画像処理に使用できる。なお、処理装置10は、コンソール43に直接的に接続する他、RIS47、HIS48、PACS49、又は、PACS49が含むDICOMサーバ(図示せず)等を介して間接的に放射線画像を取得して画像処理に使用してもよい。また、処理装置10は、処理装置10により調整した骨部画像Gb又は軟部画像Gt等の処理画像を、調整途中の画像等も含め、DICOMサーバー等の外部装置に送信及び保存等をしてもよい。
【0126】
なお、上記したように、画像処理部12は、散乱線補正処理を行う場合、図13に示すように、体厚分布取得部61を備えてもよい。被写体Objの体厚分布は、計測値であっても推定値であってもよいから、体厚分布取得部61は、被写体Objの体厚分布の計測値を取得するか、又は、被写体Objの体厚分布の推定値を取得する。体厚分布取得部61は、取得した体厚分布に基づいて、散乱線を、補正を行う補正対象画像の画素ごとに推定し、補正対象画像の画素からそれぞれ散乱線を除去する。散乱線の除去を完了した補正対象画像は、その後の処理にすすめられる。
【0127】
なお、本実施形態では、補正対象画像は、いずれも特定の被写体を撮影した画像であり、第1放射線画像G1及び第2放射線画像G2は、いわゆる1ショットES法によりほぼ同時に得られた放射線画像である。したがって、補正対象画像のいずれかに基づいて被写体のObjの体厚分布を推定し、得られた推定値をそのまますべての補正対象画像の体厚分布とすることができる。
【0128】
図14に示すように、体厚分布取得部61は、体厚分布測定値取得部62、体厚分布推定値取得部63、及び散乱線除去部64を備える。体厚分布測定値取得部62は、測定した体厚分布を取得する。体厚分布測定値取得部62は、体厚分布を実測して得られた測定値を取得し、これを被写体Objの体厚分布とする。
【0129】
体厚分布測定値取得部62は、撮影条件に含まれるSID(Source Image receptor Distance)とSOD(Source Object Distance)に基づいて、被検体Hの体厚分布T(x、y)を算出する。SODについては、例えば、TOF(Time Of Flight)カメラで取得することが好ましい。SIDについては、例えば、ポテンショメーター、超音波距離計、レーザー距離計などで取得することが好ましい。
【0130】
体厚分布は、SIDからSODを減算することにより求めることが好ましい。また、体厚分布は、第1及び第2の放射線画像G1、G2に対応して画素毎に算出する。なお、SID及びSODに基づいて体厚分布を算出することに代えて、第1及び第2放射線画像G1、G2の少なくともいずれかから体厚分布を算出するようにしてもよい。また、第1放射線画像G1及び第2放射線画像G2に対して、それぞれ対応する画素間で重み付け減算を行うことにより得られる被写体Hの軟部画像から、体厚分布を算出してもよい。なお、体厚分布を求める場合において、第1及び第2の放射線検出器44、45が、被写体Objが載せられる撮影台(図示しない)の中に設けられている場合には、放射線源41と、被写体Objが接する撮影台の表面までの距離を、SIDとして用いることが好ましい。
【0131】
体厚分布推定値取得部63は、公知の方法を用いて、被写体の体厚分布の推定値を取得する。体厚分布の推定値を取得する方法、又は、取得した体厚分布の推定値を用いて散 乱線除去の画像処理を行う方法としては、上記したLUT(図5)を用いる方法の他、例えば、特開2015-043959号公報に記載された仮想モデルを用いる手法も採用することができる。
【0132】
仮想モデルを用いる手法は、まず、所定の体厚分布を有する仮想モデルを取得し、仮想モデルの放射線撮影により得られる推定一次線画像及び推定散乱線画像とを合成した推定画像を生成する。次に、被写体Objの放射線撮影により得られる被写体画像と、推定画像とから、各対応する位置の画素の画素値の違いを表すエラー値が小さくなるように、仮想モデルの体厚分布を修正する。修正した仮想モデルの体厚分布を被写体の体厚分布として決定する。このようにして、例えば、グリッドを用いないで撮影した被写体であっても、散乱線の影響を抑え、体厚分布のより正確な推定値を得ることができる。取得した体圧分布は、コントラスト補正処理、散乱線補正処理等に用いる。
【0133】
散乱線除去部64は、取得した体圧分布を用いて、第1放射線画像G1又は第2放射線画像G2に対して散乱線補正処理により散乱線の除去を行った上で、骨部抽出又は軟部抽出等の画像処理を行うことにより、骨部画像Gb又は軟部画像Gtを生成することが好ましい。散乱線補正処理により、散乱線の影響を抑えて各種の画像処理を行うため、より画質が良好な骨部画像Gb又は軟部画像Gt等を生成することができる。
【0134】
なお、表示制御部14は、第1強調画像とレベル値と画質指標とを表示部16に表示する制御を行うが、画質指標における特定の範囲を基準範囲として設定し、かつ、画質指標と基準範囲とを表示部16に表示する制御を行うことが好ましい。基準範囲として設定する特定の範囲は、予め設定することができる。基準範囲は、例えば、ES画質指標がこの基準範囲内にある場合は、ES画像の画質が十分良好であるため、それ以上の画質調整を行なう必要がない場合のES画質指標の範囲を基準範囲とすることができる。また、基準範囲を設定することにより、ES画像のES画質が一定の基準内にあるか否かをひと目で把握するようにできる。
【0135】
図15に示すように、本実施形態では、数直線31上における基準範囲を、0の目盛りを中心とした特定の範囲として長方形33により示す。画面21に表示する骨部画像GbのES画質指標を示す点32が、基準範囲を示す長方形33の内部に無い場合は、画面21に表示する骨部画像GbのES画質が基準範囲外であり、ES画質指標が向上するようにES画質を調整する必要がある。したがって、画面21に表示する骨部画像GbについてES画質等の調整が必要であるか否かがひと目でわかる。
【0136】
図15に示すように、生成された第1強調画像について画質指標が基準範囲外である場合は、使用者は、ESレベル値の変更を複数回繰り返すことにより、ES画質が改善された第1強調画像を生成することができる。また、図16に示すように、生成された第1強調画像について画質指標が基準範囲内である場合は、画質調整を行う必要がないことがひと目でわかる。
【0137】
以上のとおり、画質指標における特定の範囲を基準範囲として設定してディスプレイに表示することにより、ES画像のそれぞれについて、画質が一定の基準以上であるか否かをひと目で把握することができる。また、画質が一定の基準に満たない場合であっても、ESレベル値の変更を複数回繰り返せば良く、その都度変更されたES画質指標が表示されるため、数値をどのように変換させればES画質指標がどの程度向上又は悪化するのかの傾向を知ることができる。したがって、ES画質を基準範囲内のものに調整することは容易であり迅速に行うことができる。
【0138】
また、処理装置10は、画質指標が基準範囲に含まれない場合、使用者に報知を行ってもよい。この場合、図17に示すように、処理装置10は、報知制御部71を備える。報知は、画質指標が基準範囲に含まれない場合に、その旨を使用者が理解できる態様であればよく、ディスプレイ等への表示による報知、音による報知、及び/又は処理装置10と通信するモバイル機器の振動による報知等、いずれの態様でもよい。
【0139】
本実施形態では、表示部16への表示により、報知を行う。図18に示すように、例えば、ES画質指標を表示する際に、生成された第1強調画像について画質指標が基準範囲外である場合は、ES画質指標表示部24に警告表示72を表示又は点滅させることができる。また、ES画質指標表示部24全体の背景色を通常と異なる色により表示する等であってもよい。これにより、使用者である放射線技師は、表示部16に特に注意を払っていない場合であっても、現在ディスプレイに表示されているES画像に対して、さらなる調整が必要であることを認識できる。
【0140】
以上のとおり、画質指標が基準範囲に含まれない場合、放射線技師に報知を行うことにより、放射線技師は、表示部16に特に注意を払っていない場合であっても、ES画質指標が基準範囲に含まれておらず、調整が必要であるということを認識できる。したがって、特に、使用者が大量のES画像を生成しなければならない場合等に効果的である。
【0141】
また、上記実施形態では、人の胸部を特定の被写体とした放射線画像を用いたが、ES画像であれば、特定の被写体はいずれであってもよく、人又は動物の他の部位又は血管等の組織を特定の被写体としても適用可能である。また、ES画像は、経時的な変化を見るためにも用いることができるため、経時的な変化を見るためのES画像に対しても適用可能である。したがって、特定の被写体は、人又は動物のみならず、配管又は構造物等のヒビ等の建築物等とすることができる。
【0142】
また、上記実施形態では、第1強調画像又は第2強調画像は、取得した放射線画像に基づいて生成した画像であるが、処理装置10により画質調整が完了した画像であってもよい。例えば、第1強調画像を生成する際に、処理装置10により画質調整が完了した第2強調画像を用いてもよい。これにより、より画質が向上したES画像を得ることができる。
【0143】
上記実施形態において、処理装置10に含まれる画像取得部11、画像処理部12、相関情報生成部13、表示制御部14、変更受付部15、報知制御部71、もしくは中央制御部(図示せず)又は、コンソール43に含まれる中央制御部(図示せず)等の処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウエア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、FPGA (Field Programmable Gate Array) などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、各種の処理を実行するために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0144】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合せ(例えば、複数のFPGAや、CPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウエアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0145】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた形態の電気回路(circuitry)である。
【0146】
上記記載から、以下の付記1ないし16に記載の放射線画像処理装置を把握することができる。
【0147】
[付記1]
プロセッサを備え、
プロセッサは、
互いに異なる2種類の放射線エネルギーをそれぞれ使用して特定の被写体を撮影した2枚の放射線画像を取得し、
2枚の前記放射線画像に対し、第1パラメータを含む演算式による第1強調処理を行うことにより第1強調画像を生成し、
2枚の前記放射線画像のうち少なくともいずれかの前記放射線画像を用いた第2強調処理を行うことにより第2強調画像を生成し、
前記第1強調画像と前記第2強調画像との相関を示す相関情報を生成し、
前記第1強調画像と、前記第1パラメータの値に対応するレベル値と、前記相関情報に基づいて前記第1強調画像と前記第2強調画像との差異の程度を定量化して示した画質指標とを表示部に表示する制御を行い、
前記レベル値の変更を受け付ける放射線画像処理装置。
【0148】
[付記2]
前記プロセッサは、前記レベル値の変更を受け付けた場合、前記第1パラメータの値を更新し、
更新した前記第1パラメータの値を用いて、前記第1強調画像を生成し、
更新した前記第1パラメータの値に対応して更新した前記レベル値を前記表示部に表示する付記1に記載の放射線画像処理装置。
【0149】
[付記3]
前記プロセッサは、使用者による前記レベル値の変更を受け付けるユーザインタフェースを前記表示部に表示する制御を行う付記1又は2に記載の放射線画像処理装置。
【0150】
[付記4]
前記放射線画像は、前記被写体の体厚に応じて推定された散乱線成分を画素毎に除去されたものである付記1ないし3のいずれか1つに記載の放射線画像処理装置。
【0151】
[付記5]
前記第1強調処理は、サブトラクション処理である付記1ないし4のいずれか1つに記載の放射線画像処理装置。
【0152】
[付記6]
前記被写体は、骨部と軟部とを含み、
前記第1強調画像は骨部画像であり、前記第2強調画像は軟部画像である付記1ないし5のいずれか1つに記載の放射線画像処理装置。
【0153】
[付記7]
前記被写体は、骨部と軟部とを含み、
前記第1強調画像は軟部画像であり、前記第2強調画像は骨部画像である付記1ないし5のいずれか1つに記載の放射線画像処理装置。
【0154】
[付記8]
前記第1強調処理は、2枚の前記放射線画像のうちの一方の前記放射線画像に対し前記第1パラメータを用いた重み付けを行った上で、他方の前記放射線画像から減算する処理を含む付記1ないし7のいずれか1つに記載の放射線画像処理装置。
【0155】
[付記9]
前記第2強調処理は、2枚の前記放射線画像のうちの一方の前記放射線画像に対し前記第2パラメータを用いた重み付けを行った上で、他方の前記放射線画像から減算する処理を含む付記1ないし8のいずれか1つに記載の放射線画像処理装置。
【0156】
[付記10]
前記被写体は、骨部と軟部とを含み、
前記第1強調画像は骨部画像であり前記第2強調画像は軟部画像であり、
2枚の前記放射線画像のうち、一方の前記放射線画像における座標(x,y)での画素値をG1(x,y)、他方の前記放射線画像における座標(x,y)での画素値をG2(x,y)、前記骨部画像における座標(x,y)での画素値をGb(x,y)、前記軟部画像における座標(x,y)での画素値をGt(x,y)、前記第1パラメータをα、前記第2パラメータをβとした場合、
前記骨部画像は、下記式(1)により生成し、前記軟部画像は、下記式(4)により生成する付記1ないし5のいずれか1つに記載の放射線画像処理装置。
【0157】
Gb(x,y)=G1(x,y)-α×G2(x,y) (1)
Gt(x,y)=G1(x,y)-β×G2(x,y) (4)
【0158】
[付記11]
前記第2強調処理は、2枚の前記放射線画像のうちのいずれかの前記放射線画像から前記第1強調画像を減算する処理である付記1ないし8のいずれか1つに記載の放射線画像処理装置。
【0159】
[付記12]
前記被写体は、骨部と軟部とを含み、
前記第1強調画像は骨部画像であり前記第2強調画像は軟部画像であり、
2枚の前記放射線画像のうち、一方の前記放射線画像における座標(x,y)での画素値をG1(x,y)、他方の前記放射線画像における座標(x,y)での画素値をG2(x,y)とし、前記骨部画像における座標(x,y)での画素値をGb(x,y)、前記軟部画像における座標(x,y)での画素値をGt(x,y)、前記第1パラメータをαとした場合、
前記骨部画像は、下記式(1)により生成し、前記軟部画像は、下記式(2)又は式(3)により生成する付記1ないし5のいずれか1つに記載の放射線画像処理装置。
【0160】
Gb(x,y)=G1(x,y)-α×G2(x,y) (1)
Gt(x,y)=G1(x,y)-Gb(x,y) (2)
Gt(x,y)=G2(x,y)-Gb(x,y) (3)
【0161】
[付記13]
前記相関情報は、前記第1強調画像の画素値と前記第2強調画像の画素値との相関係数である付記1ないし12のいずれか1つに記載の放射線画像処理装置。
【0162】
[付記14]
前記画質指標は、前記相関係数である付記13に記載の放射線画像処理装置。
【0163】
[付記15]
前記プロセッサは、前記画質指標における特定の範囲を基準範囲として設定し、かつ、前記画質指標と前記基準範囲とを前記表示部に表示する制御を行う付記1ないし14のいずれか1つに記載の放射線画像処理装置。
【0164】
[付記16]
前記プロセッサは、前記画質指標が前記基準範囲に含まれない場合、使用者に報知する制御を行う付記15に記載の放射線画像処理装置。
【符号の説明】
【0165】
10 放射線画像処理装置
11 画像取得部
12 画像処理部
13 相関情報生成部
14 表示制御部
15 変更受付部
16 表示部
17 操作部
20 LUT
21 画面
22 画像調整部
23 ES画像切替部
24 ES画質指標表示部
25 ESレベル表示部
31 数直線
32 点
33 長方形
34 ESレベル値表示部
35 ESレベル値変更部
36 カーソル
40 放射線撮影システム
41 放射線源
42 放射線撮影パネル
43 コンソール
44 第1放射線検出器
45 第2放射線検出器
46 放射線エネルギー変換フィルタ
47 表示部
48 操作部
51 RIS
52 HIS
53 PACS
61 体厚分布取得部
62 体厚分布測定値取得部
63 体厚分布推定値取得部
64 散乱線除去部
71 報知制御部
72 警告表示
G1 第1放射線画像
G2 第2放射線画像
Gb 骨部画像
Gt 軟部画像
Obj 被写体
Ra X線
ST110~ST180 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
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