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特開2024-109820転写フィルム、感光性材料、パターン形成方法、回路基板の製造方法、タッチパネルの製造方法
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  • 特開-転写フィルム、感光性材料、パターン形成方法、回路基板の製造方法、タッチパネルの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109820
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】転写フィルム、感光性材料、パターン形成方法、回路基板の製造方法、タッチパネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/033 20060101AFI20240806BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240806BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20240806BHJP
   C08F 290/12 20060101ALI20240806BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G03F7/033
G03F7/004 512
G03F7/038 501
C08F290/12
G03F7/20 501
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024084047
(22)【出願日】2024-05-23
(62)【分割の表示】P 2022508426の分割
【原出願日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2020050199
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020217873
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】山口 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】児玉 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正弥
(57)【要約】
【課題】パターン形成性に優れ、且つ、低透湿性のパターンを形成できる転写フィルムを提供する。また、パターン形成性に優れる感光性材料を提供する。また、パターン形成方法、回路基板の製造方法、及びタッチパネルの製造方法を提供する。
【解決手段】転写フィルムは、仮支持体と、上記仮支持体上に配置された、酸基を有する化合物Aを含む感光性層と、を有し、活性光線又は放射線の照射によって上記感光性層中の上記酸基の含有量が減少する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮支持体と、前記仮支持体上に配置された、酸基を有する化合物Aを含む感光性層と、を有する転写フィルムであり、
活性光線又は放射線の照射によって前記感光性層中の前記酸基の含有量が減少する、転写フィルム。
【請求項2】
前記感光性層が、下記要件(V01)及び下記要件(W01)のいずれかを満たす、請求項1に記載の転写フィルム。
要件(V01)
前記感光性層が、前記化合物Aと、露光により前記化合物Aが含む前記酸基の量を減少させる構造を有する化合物βと、を含む。
要件(W01)
前記感光性層が、前記化合物Aを含み、且つ、前記化合物Aは、更に、露光により前記酸基の量を減少させる構造を含む。
【請求項3】
前記要件(V01)において、前記化合物βが、光励起状態において、前記化合物Aが含む前記酸基から電子を受容できる構造を有する化合物Bであり、
前記要件(W01)において、前記構造が、光励起状態において前記酸基から電子を受容できる構造である、請求項2に記載の転写フィルム。
【請求項4】
前記要件(V01)を満たし、且つ、前記化合物βが、光励起状態において、前記化合物Aが含む前記酸基から電子を受容できる構造を有する化合物Bであり、
前記感光性層中、前記化合物Bが含む前記電子を受容できる構造の合計数が、前記化合物Aが含む酸基の合計数に対して、1モル%以上である、請求項2又は3に記載の転写フィルム。
【請求項5】
前記化合物βの365nmにおけるモル吸光係数εが、1×10(cm・mol/L)-1以下である、請求項2~4のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項6】
前記化合物βの313nmにおけるモル吸光係数ε’に対する前記化合物βの365nmにおけるモル吸光係数εの比が、3以下である、請求項2~5のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項7】
前記化合物βの基底状態でのpKaが、2.0以上である、請求項2~6のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項8】
前記化合物βの基底状態でのpKaが、9.0以下である、請求項2~7のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項9】
前記化合物βが、置換基を有していてもよい芳香族化合物である、請求項2~8のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項10】
前記化合物βが、置換基を有する芳香族化合物である、請求項9に記載の転写フィルム。
【請求項11】
前記化合物Aが、重量平均分子量が50,000以下のポリマーを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項12】
前記化合物Aが、(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位を含むポリマーを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項13】
前記感光性層が、更に、重合性化合物を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項14】
前記感光性層が、更に、光重合開始剤を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項15】
活性光線又は放射線の照射によって前記感光性層の比誘電率が減少する、請求項1~14のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項16】
前記感光性層の365nmでの透過率が65%以上である、請求項1~15のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項17】
前記感光性層の313nmでの透過率に対する前記感光性層の365nm透過率の比が、1.5以上である、請求項1~16のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項18】
活性光線又は放射線の照射によって、前記感光性層中の前記酸基の含有量が5モル%以上の減少率で減少する、請求項1~17のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の転写フィルム中の前記感光性層の前記仮支持体側とは反対側の表面を基材に接触させて、前記転写フィルムと前記基材とを貼り合わせる工程と、
前記感光性層をパターン状に露光する工程と、
前記露光された感光性層を、現像液を用いて現像する工程と、を含み、
前記現像液が有機溶剤系現像液である場合、更に、前記現像工程の後に、現像により形成されたパターンを露光する工程を含む、パターン形成方法。
【請求項20】
請求項1~18のいずれか1項に記載の転写フィルム中の前記感光性層の前記仮支持体側とは反対側の表面を基材に接触させて、前記転写フィルムと前記基材とを貼り合わせる工程と、
前記感光性層をパターン状に露光する工程と、
露光された前記感光性層をアルカリ現像液を用いて現像して、パターン化された感光性層を形成する工程と、
前記パターン化された感光性層を露光する工程と、をこの順に含む、パターン形成方法。
【請求項21】
請求項1~18のいずれか1項に記載の転写フィルム中の前記感光性層の前記仮支持体側とは反対側の表面を、導電層を有する基板中の前記導電層に接触させて、前記転写フィルムと前記導電層を有する基板とを貼り合わせる工程と、
前記感光性層をパターン状に露光する工程と、
露光された前記感光性層をアルカリ現像液を用いて現像して、パターン化された感光性層を形成する工程と、
前記パターン化された感光性層を露光して、エッチングレジスト膜を形成する工程と、
前記エッチングレジスト膜が配置されていない領域における前記導電層をエッチング処理する工程と、をこの順に含む、回路配線の製造方法。
【請求項22】
請求項1~18のいずれか1項に記載の転写フィルム中の前記感光性層の前記仮支持体側とは反対側の表面を、導電層を有する基板中の前記導電層に接触させて、前記転写フィ
ルムと前記導電層を有する基板とを貼り合わせる工程と、
前記感光性層をパターン状に露光する工程と、
露光された前記感光性層をアルカリ現像液を用いて現像して、パターン化された感光性層を形成する工程と、
前記パターン化された感光性層を露光して、前記導電層の保護膜又は絶縁膜を形成する工程と、をこの順に含む、タッチパネルの製造方法。
【請求項23】
カルボキシ基を有する化合物Aを含む感光性材料であり、
前記化合物Aは、(メタ)アクリル酸由来の繰り返し単位を含むポリマーを含み、
活性光線又は放射線の照射によって、前記感光性材料から形成される感光性層中の前記カルボキシ基の含有量が減少する、感光性材料。
【請求項24】
前記ポリマーの重量平均分子量が、50,000以下である、請求項23に記載の感光性材料。
【請求項25】
下記要件(V02)及び下記要件(W02)のいずれかを満たす、請求項23又は24に記載の感光性材料。
要件(V02):前記感光性材料が、前記化合物Aと、露光により前記化合物Aが含む前記カルボキシ基の量を減少させる構造を有する化合物βと、を含む。
要件(W02):前記感光性材料が、前記化合物Aを含み、且つ、前記化合物Aは、露光により前記カルボキシ基の量を減少させる構造を含む。
【請求項26】
前記要件(V02)において、前記化合物βが、光励起状態において、前記化合物Aが含む前記カルボキシ基から電子を受容できる構造を有する化合物Bであり、
前記要件(W02)において、前記構造が、光励起状態において前記カルボキシ基から電子を受容できる構造である、請求項25に記載の感光性材料。
【請求項27】
前記要件(V02)を満たし、且つ、前記化合物βが、光励起状態において、前記化合物Aが含む前記カルボキシ基から電子を受容できる構造を有する化合物Bであり、
前記感光性材料中、前記化合物Bが含む前記電子を受容できる構造の合計数が、前記化合物Aが含むカルボキシ基の合計数に対して、1モル%以上である、請求項25又は26に記載の感光性材料。
【請求項28】
前記化合物βの365nmにおけるモル吸光係数εが、1×10(cm・mol/L)-1以下である、請求項25~27のいずれか1項に記載の感光性材料。
【請求項29】
前記化合物βの313nmにおけるモル吸光係数ε’に対する前記化合物βの365nmにおけるモル吸光係数εの比が、3以下である、請求項25~28のいずれか1項に記載の感光性材料。
【請求項30】
前記化合物βの基底状態でのpKaが、2.0以上である、請求項25~29のいずれか1項に記載の感光性材料。
【請求項31】
前記化合物βの基底状態でのpKaが、9.0以下である、請求項25~30のいずれか1項に記載の感光性材料。
【請求項32】
前記化合物βが、置換基を有していてもよい芳香族化合物である、請求項25~31のいずれか1項に記載の感光性材料。
【請求項33】
前記化合物βが、置換基を有する芳香族化合物である、請求項32に記載の感光性材料。
【請求項34】
活性光線又は放射線の照射によって、前記感光性材料から形成される感光性層中の前記カルボキシ基の含有量が5モル%以上の減少率で減少する、請求項23~33のいずれか1項に記載の感光性材料。
【請求項35】
活性光線又は放射線の照射によって前記カルボキシ基が脱炭酸する、請求項23~34のいずれか1項に記載の感光性材料。
【請求項36】
活性光線又は放射線の照射によって、前記感光性材料から形成される感光性層の比誘電率が減少する、請求項23~35のいずれか1項に記載の感光性材料。
【請求項37】
基材上に、請求項23~36のいずれか1項に記載の感光性材料を用いて感光性層を形成する工程と、
前記感光性層をパターン状に露光する工程と、
前記露光された感光性層を、現像液を用いて現像する工程と、を含み、
前記現像液が有機溶剤系現像液である場合、更に、前記現像工程の後に、現像により形成されたパターンを露光する工程を含む、パターン形成方法。
【請求項38】
基材上に、請求項23~36のいずれか1項に記載の感光性材料を用いて感光性層を形成する工程と、
前記感光性層をパターン状に露光する工程と、
露光された前記感光性層をアルカリ現像液を用いて現像して、パターン化された感光性層を形成する工程と、
前記パターン化された感光性層を露光する工程と、をこの順に含む、パターン形成方法。
【請求項39】
導電層を有する基材上に、請求項23~36のいずれか1項に記載の感光性材料を用いて感光性層を形成する工程と、
前記感光性層をパターン状に露光する工程と、
露光された前記感光性層をアルカリ現像液を用いて現像して、パターン化された感光性層を形成する工程と、
前記パターン化された感光性層を露光して、エッチングレジスト膜を形成する工程と、
前記エッチングレジスト膜が配置されていない領域における前記導電層をエッチング処理する工程と、をこの順に含む、回路配線の製造方法。
【請求項40】
導電層を有する基材上に、請求項23~36のいずれか1項に記載の感光性材料を用いて感光性層を形成する工程と、
前記感光性層をパターン状に露光する工程と、
露光された前記感光性層をアルカリ現像液を用いて現像して、パターン化された感光性層を形成する工程と、
前記パターン化された感光性層を露光して、前記導電層の保護膜又は絶縁膜を形成する工程と、をこの順に含む、タッチパネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写フィルム、感光性材料、パターン形成方法、回路基板の製造方法、及びタッチパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量型入力装置等のタッチパネルを備えた表示装置(表示装置としては、具体的には、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置及び液晶表示装置等)では、視認部のセンサーに相当する電極パターン、周辺配線部分、及び取り出し配線部分の配線等の導電パターンがタッチパネル内部に設けられている。
【0003】
一般的に、パターン化した層(以下、単に「パターン」ともいう。)の形成には感光性材料が使用されており、とりわけ、必要とするパターン形状を得るための工程数が少ないといったことから、仮支持体上と上記仮支持体上に配置された感光性材料を用いて形成される感光性層とを有する転写フィルムを用いた方法が広く使用されている。転写フィルムを用いてパターンを形成する方法としては、転写フィルムから任意の基材上に転写された感光性層に対し、所定のパターン形状を有するマスクを介して露光及び現像を実施する方法が挙げられる。このような方法により任意の基材上に形成されたパターンは、例えば、エッチングレジスト膜としての用途の他、導電パターンを保護する保護膜(具体的には、上述したタッチパネル内部に設けられた導電パターンを保護する保護膜(永久膜))としての用途等に供される場合があり、低透湿性であることが求められる。
【0004】
感光性材料及び転写フィルムとして、例えば、特許文献1では、「基材上に、酸価が75mgKOH/g以上のカルボキシル基を有するバインダーポリマーと、光重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する感光性樹脂組成物」及び「支持フィルムと、上記支持フィルム上に設けられた上記感光性樹脂組成物からなる感光層と、を備えた感光性エレメント」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/084886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、転写フィルムには、解像性に優れる(以下「パターン形成性に優れる」ともいう。)性能も、基本性能として求められている。
【0007】
本発明者らは、特許文献1に記載された感光性エレメント(転写フィルム)を用いてパターンを形成して検討したところ、低透湿性が昨今の要求を満たしていないことを知見した。すなわち、パターン形成性に優れつつ、低透湿性が改善された転写フィルムを検討する余地があることを明らかとした。
更に、本発明者らは、今般の転写フィルムの感光性層の検討に際して、感光性材料のパターン形成性をより改善させる検討も行った。
【0008】
そこで、本発明は、パターン形成性に優れ、且つ、低透湿性のパターンを形成できる転写フィルムを提供することを課題とする。
また、本発明は、パターン形成性に優れる感光性材料を提供することを課題とする。
また、本発明は、パターン形成方法、回路基板の製造方法、及びタッチパネルの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
〔1〕 仮支持体と、上記仮支持体上に配置された、酸基を有する化合物Aを含む感光性層と、を有する転写フィルムであり、
活性光線又は放射線の照射によって上記感光性層中の上記酸基の含有量が減少する、転写フィルム。
〔2〕 上記感光性層が、下記要件(V01)及び下記要件(W01)のいずれかを満たす、〔1〕に記載の転写フィルム。
要件(V01)
上記感光性層が、上記化合物Aと、露光により上記化合物Aが含む上記酸基の量を減少させる構造を有する化合物βと、を含む。
要件(W01)
上記感光性層が、上記化合物Aを含み、且つ、上記化合物Aは、更に、露光により上記酸基の量を減少させる構造を含む。
〔3〕 上記要件(V01)において、上記化合物βが、光励起状態において、上記化合物Aが含む上記酸基から電子を受容できる構造を有する化合物Bであり、
上記要件(W01)において、上記構造が、光励起状態において上記酸基から電子を受容できる構造である、〔2〕に記載の転写フィルム。
〔4〕 上記要件(V01)を満たし、且つ、上記化合物βが、光励起状態において、上記化合物Aが含む上記酸基から電子を受容できる構造を有する化合物Bであり、
上記感光性層中、上記化合物Bが含む上記電子を受容できる構造の合計数が、上記化合物Aが含む酸基の合計数に対して、1モル%以上である、〔2〕又は〔3〕に記載の転写フィルム。
〔5〕 上記化合物βの365nmにおけるモル吸光係数εが、1×10(cm・mol/L)-1以下である、〔2〕~〔4〕のいずれかに記載の転写フィルム。
〔6〕 上記化合物βの313nmにおけるモル吸光係数ε’に対する上記化合物βの365nmにおけるモル吸光係数εの比が、3以下である、〔2〕~〔5〕のいずれかに記載の転写フィルム。
〔7〕 上記化合物βの基底状態でのpKaが、2.0以上である、〔2〕~〔6〕のいずれかに記載の転写フィルム。
〔8〕 上記化合物βの基底状態でのpKaが、9.0以下である、〔2〕~〔7〕のいずれかに記載の転写フィルム。
〔9〕 上記化合物βが、置換基を有していてもよい芳香族化合物である、〔2〕~〔8〕のいずれかに記載の転写フィルム。
〔10〕 上記化合物βが、置換基を有する芳香族化合物である、〔9〕に記載の転写フィルム。
〔11〕 上記化合物Aが、重量平均分子量が50,000以下のポリマーを含む、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の転写フィルム。
〔12〕 上記化合物Aが、(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位を含むポリマーを含む、〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の転写フィルム。
〔13〕 上記感光性層が、更に、重合性化合物を含む、〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の転写フィルム。
〔14〕 上記感光性層が、更に、光重合開始剤を含む、〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の転写フィルム。
〔15〕 活性光線又は放射線の照射によって上記感光性層の比誘電率が減少する、〔1〕~〔14〕のいずれかに記載の転写フィルム。
〔16〕 上記感光性層の365nmでの透過率が65%以上である、〔1〕~〔15〕のいずれかに記載の転写フィルム。
〔17〕 上記感光性層の313nmでの透過率に対する上記感光性層の365nm透過率の比が、1.5以上である、〔1〕~〔16〕のいずれかに記載の転写フィルム。
〔18〕 活性光線又は放射線の照射によって、上記感光性層中の上記酸基の含有量が5モル%以上の減少率で減少する、〔1〕~〔17〕のいずれかに記載の転写フィルム。
〔19〕 〔1〕~〔18〕のいずれかに記載の転写フィルム中の上記感光性層の上記仮支持体側とは反対側の表面を基材に接触させて、上記転写フィルムと上記基材とを貼り合わせる工程と、
上記感光性層をパターン状に露光する工程と、
上記露光された感光性層を、現像液を用いて現像する工程と、を含み、
上記現像液が有機溶剤系現像液である場合、更に、上記現像工程の後に、現像により形成されたパターンを露光する工程を含む、パターン形成方法。
〔20〕 〔1〕~〔18〕のいずれかに記載の転写フィルム中の上記感光性層の上記仮支持体側とは反対側の表面を基材に接触させて、上記転写フィルムと上記基材とを貼り合わせる工程と、
上記感光性層をパターン状に露光する工程と、
露光された上記感光性層をアルカリ現像液を用いて現像して、パターン化された感光性層を形成する工程と、
上記パターン化された感光性層を露光する工程と、をこの順に含む、パターン形成方法。
〔21〕 〔1〕~〔18〕のいずれかに記載の転写フィルム中の上記感光性層の上記仮支持体側とは反対側の表面を、導電層を有する基板中の上記導電層に接触させて、上記転写フィルムと上記導電層を有する基板とを貼り合わせる工程と、
上記感光性層をパターン状に露光する工程と、
露光された上記感光性層をアルカリ現像液を用いて現像して、パターン化された感光性層を形成する工程と、
上記パターン化された感光性層を露光して、エッチングレジスト膜を形成する工程と、
上記エッチングレジスト膜が配置されていない領域における上記導電層をエッチング処理する工程と、をこの順に含む、回路配線の製造方法。
〔22〕 〔1〕~〔18〕のいずれかに記載の転写フィルム中の上記感光性層の上記仮支持体側とは反対側の表面を、導電層を有する基板中の上記導電層に接触させて、上記転写フィルムと上記導電層を有する基板とを貼り合わせる工程と、
上記感光性層をパターン状に露光する工程と、
露光された上記感光性層をアルカリ現像液を用いて現像して、パターン化された感光性層を形成する工程と、
上記パターン化された感光性層を露光して、上記導電層の保護膜又は絶縁膜を形成する工程と、をこの順に含む、タッチパネルの製造方法。
〔23〕 カルボキシ基を有する化合物Aを含む感光性材料であり、
上記化合物Aは、(メタ)アクリル酸由来の繰り返し単位を含むポリマーを含み、
活性光線又は放射線の照射によって、上記感光性材料から形成される感光性層中の上記カルボキシ基の含有量が減少する、感光性材料。
〔24〕 上記ポリマーの重量平均分子量が、50,000以下である、〔23〕に記載の感光性材料。
〔25〕 下記要件(V02)及び下記要件(W02)のいずれかを満たす、〔23〕又は〔24〕に記載の感光性材料。
要件(V02):上記感光性材料が、上記化合物Aと、露光により上記化合物Aが含む上記カルボキシ基の量を減少させる構造を有する化合物βと、を含む。
要件(W02):上記感光性材料が、上記化合物Aを含み、且つ、上記化合物Aは、露光により上記カルボキシ基の量を減少させる構造を含む。
〔26〕 上記要件(V02)において、上記化合物βが、光励起状態において、上記化合物Aが含む上記カルボキシ基から電子を受容できる構造を有する化合物Bであり、
上記要件(W02)において、上記構造が、光励起状態において上記カルボキシ基から電子を受容できる構造である、〔25〕に記載の感光性材料。
〔27〕 上記要件(V02)を満たし、且つ、上記化合物βが、光励起状態において、上記化合物Aが含む上記カルボキシ基から電子を受容できる構造を有する化合物Bであり、
上記感光性材料中、上記化合物Bが含む上記電子を受容できる構造の合計数が、上記化合物Aが含むカルボキシ基の合計数に対して、1モル%以上である、〔25〕又は〔26〕に記載の感光性材料。
〔28〕 上記化合物βの365nmにおけるモル吸光係数εが、1×10(cm・mol/L)-1以下である、〔25〕~〔27〕のいずれかに記載の感光性材料。
〔29〕 上記化合物βの313nmにおけるモル吸光係数ε’に対する上記化合物βの365nmにおけるモル吸光係数εの比が、3以下である、〔25〕~〔28〕のいずれかに記載の感光性材料。
〔30〕 上記化合物βの基底状態でのpKaが、2.0以上である、〔25〕~〔29〕のいずれかに記載の感光性材料。
〔31〕 上記化合物βの基底状態でのpKaが、9.0以下である、〔25〕~〔30〕のいずれかに記載の感光性材料。
〔32〕 上記化合物βが、置換基を有していてもよい芳香族化合物である、〔25〕~〔31〕のいずれかに記載の感光性材料。
〔33〕 上記化合物βが、置換基を有する芳香族化合物である、〔32〕に記載の感光性材料。
〔34〕 活性光線又は放射線の照射によって、上記感光性材料から形成される感光性層中の上記カルボキシ基の含有量が5モル%以上の減少率で減少する、〔23〕~〔33〕のいずれかに記載の感光性材料。
〔35〕 活性光線又は放射線の照射によって上記カルボキシ基が脱炭酸する、〔23〕~〔34〕のいずれかに記載の感光性材料。
〔36〕 活性光線又は放射線の照射によって、上記感光性材料から形成される感光性層の比誘電率が減少する、〔23〕~〔35〕のいずれかに記載の感光性材料。
〔37〕 基材上に、〔23〕~〔36〕のいずれかに記載の感光性材料を用いて感光性層を形成する工程と、
上記感光性層をパターン状に露光する工程と、
上記露光された感光性層を、現像液を用いて現像する工程と、を含み、
上記現像液が有機溶剤系現像液である場合、更に、上記現像工程の後に、現像により形成されたパターンを露光する工程を含む、パターン形成方法。
〔38〕 基材上に、〔23〕~〔36〕のいずれかに記載の感光性材料を用いて感光性層を形成する工程と、
上記感光性層をパターン状に露光する工程と、
露光された上記感光性層をアルカリ現像液を用いて現像して、パターン化された感光性層を形成する工程と、
上記パターン化された感光性層を露光する工程と、をこの順に含む、パターン形成方法。
〔39〕 導電層を有する基材上に、〔23〕~〔36〕のいずれかに記載の感光性材料を用いて感光性層を形成する工程と、
上記感光性層をパターン状に露光する工程と、
露光された上記感光性層をアルカリ現像液を用いて現像して、パターン化された感光性層を形成する工程と、
上記パターン化された感光性層を露光して、エッチングレジスト膜を形成する工程と、
上記エッチングレジスト膜が配置されていない領域における上記導電層をエッチング処理する工程と、をこの順に含む、回路配線の製造方法。
〔40〕 導電層を有する基材上に、〔23〕~〔36〕のいずれかに記載の感光性材料を用いて感光性層を形成する工程と、
上記感光性層をパターン状に露光する工程と、
露光された上記感光性層をアルカリ現像液を用いて現像して、パターン化された感光性層を形成する工程と、
上記パターン化された感光性層を露光して、上記導電層の保護膜又は絶縁膜を形成する工程と、をこの順に含む、タッチパネルの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パターン形成性に優れ、且つ、低透湿性のパターンを形成できる転写フィルムを提供できる。
また、本発明によれば、パターン形成性に優れる感光性材料を提供できる。
また、本発明によれば、パターン形成方法、回路基板の製造方法、及びタッチパネルの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る転写フィルムの層構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0014】
また、本明細書中の「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。
【0015】
本明細書において、「透明」とは、波長400~700nmの可視光の平均透過率が、80%以上であることを意味し、90%以上であることが好ましい。従って、例えば、「透明樹脂層」とは、波長400~700nmの可視光の平均透過率が80%以上である樹脂層を指す。
また、可視光の平均透過率は、分光光度計を用いて測定される値であり、例えば、日立製作所株式会社製の分光光度計U-3310を用いて測定できる。
【0016】
本明細書において、「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、g線、h線、i線等の水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、及び電子線(EB)等を意味する。また、本発明において光とは、活性光線又は放射線を意味する。
【0017】
本明細書において、「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、及びEUV光等による露光のみならず、電子線、及びイオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
【0018】
本明細書において、特に断わりのない限り、ポリマーの各構造単位の含有比率はモル比である。
また、本明細書において、特に断りがない限り、屈折率は、波長550nmでエリプソメーターによって測定される値である。
【0019】
本明細書において、特に断りがない限り、分子量分布がある場合の分子量は重量平均分子量である。
本明細書において、樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算で求めた重量平均分子量である。
【0020】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の両方を包含する概念である。
【0021】
本明細書において、特に断りのない限り、層の厚み(膜厚)は、0.5μm以上の厚みについては走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定される平均厚みであり、0.5μm未満の厚みにつては透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定される平均厚みである。上記平均厚みは、ウルトラミクロトームを用いて測定対象の切片を形成し、任意の5点の厚みを測定して、それらを算術平均した平均厚みである。
【0022】
[転写フィルム]
本発明の転写フィルムは、仮支持体と、上記仮支持体上に配置された、酸基を有する化合物A(以下、単に「化合物A」ともいう。)を含む感光性層と、を有する。
本発明の転写フィルムの特徴点としては、活性光線又は放射線の照射(以下「露光」ともいう。)によって、上記感光性層中の上記酸基の含有量が減少する点が挙げられる。言い換えると、本発明の転写フィルムの特徴点としては、露光により化合物Aに由来する酸基の含有量が減少する機構を有する感光性層を備えている点が挙げられる。
上記感光性層の一例としては、カルボキシ基を有する化合物Aを含み、且つ、露光により上記カルボキシ基の脱炭酸反応を起こして、層中のカルボキシ基の含有量が減少する機構を有する感光性層(以下「感光性層X」ともいう。)が挙げられる。なお、感光性層Xについては後段で説明する。
上記構成を備えた本発明の転写フィルムは、現像液(特に、アルカリ現像液)に対して優れたパターン形成性を示す。また、本発明の転写フィルムから形成されるパターンは低透湿性であり、例えば、導電パターン等の保護膜(永久膜)として好適に使用され得る。
【0023】
本発明の転写フィルムの詳細な作用機序は明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
今般の本発明者らの検討によれば、パターン中に酸基が含まれることが、パターンの透湿性を高く至らしめている原因の一つであることを知見している。
これに対して、本発明の転写フィルムは、露光により化合物Aに由来する酸基の含有量が減少する機構を有する感光性層により、低透湿性のパターンの形成を可能としている。また、今般の発明者らの検討により、露光により化合物Aに由来する酸基の含有量が減少する機構を有する感光性層は、露光前と比べて、露光後の比誘電率も低下することも確認している。
【0024】
特に、本発明の転写フィルムは、アルカリ現像液を使用した現像方法に対してより好適である。
アルカリ現像液に対する良好なパターン形成性能を担保するためには、通常、例えば、特許文献1に開示されるように、感光性層中にアルカリ現像液に対する親和性の高い成分(例えば、アルカリ可溶性樹脂等の酸基を有する成分)を配合する必要がある。すなわち、形成されるパターンにはアルカリ現像液に対する親和性の高い成分の残存が避けられず、これが透湿性を高める原因となっていると推測される。
これに対して、本発明の転写フィルムは、露光により化合物Aに由来する酸基の含有量が減少する機構を有する感光性層により、アルカリ現像液に対する優れたパターン形成性を有しながら、低透湿性のパターンの形成が可能となる。
以下においては、転写フィルムを用いたパターン形成方法の一例を説明しながら、本発明の転写フィルムの推測される作用機構について述べる。
【0025】
〔転写フィルムを使用したパターン形成方法の実施形態と作用機構〕
<<<実施形態1のパターン形成方法>>>
実施形態1のパターン形成方法は、工程X1~工程X3を有する。なお、下記工程X2は、露光により、感光性層中の化合物Aに由来する酸基の含有量を減少させる工程に該当する。但し、工程X3の現像液が有機溶剤系現像液である場合、工程X3の後にさらに工程X4を有する。
工程X1:転写フィルム中の感光性層の仮支持体側とは反対側の表面を基材に接触させて、転写フィルムと基材とを貼り合わせる工程
工程X2:感光性層をパターン状に露光(パターン露光)する工程
工程X3:感光性層を、現像液を用いて現像する工程
工程X4:工程X3の現像工程の後に、更に、現像により形成されたパターンを露光する工程
【0026】
実施形態1のパターン形成方法においては、工程X1により、転写フィルムの感光性層と任意の基材とを貼り合わせて、基材と基材上に配置された感光性層とを有する積層体が形成される。次いで、得られた積層体の感光性層に対して工程X2(露光処理)を実施すると、露光部において酸基の含有量が減少する。一方で、未露光部においては、酸基の含有量は概ね変化しない。すなわち、上記工程X2を経ることで、感光性層の露光部と未露光部との間で現像液に対する溶解性の差(溶解コントラスト)が生じ得る。この結果、続く工程X3(現像工程)において、現像液がアルカリ現像液である場合、感光性層の未露光部がアルカリ現像液に溶解除去されてネガ型のパターンを形成できる。なお、上記工程X2を実施することにより露光部(残膜)における酸基の含有量が減少していることから、形成されるパターンは、残存する酸基を起因とした透湿性の低下が抑制されている。一方で、工程X3の現像液が有機溶剤現像液である場合、感光性層の露光部が現像液に溶解除去されてポジ型のパターンが形成されるので、続く工程X4により上記パターンを露光して酸基の含有量を減少させる処理を実施する。工程X4を経て形成されるパターンは、残存する酸基を起因とした透湿性の低下が抑制されている。
つまり、実施形態1のパターン形成方法は、露光により化合物Aに由来する酸基の含有量が減少する機構を有する感光性層により、酸基の含有量が低減された低透湿性のパターンの形成を可能としている。
なかでも、実施形態1のパターン形成方法は、アルカリ現像液を使用した現像方法に対して好適である。露光により化合物Aに由来する酸基の含有量が減少する機構を有する感光性層により、アルカリ現像液に対する優れたパターン形成性を有しながら、酸基の含有量が低減された低透湿性のパターンの形成が可能となる。また、実施形態1のパターン形成方法がアルカリ現像液を使用した現像を実施する場合、感光性層は、更に重合性化合物(ラジカル重合性化合物)を含んでいるのも好ましい。
なお、上述したとおり露光により化合物Aに由来する酸基の含有量が減少する機構を有する感光性層としては、例えば、後述する感光性層Xを適用できる。
実施形態1のパターン形成方法の各工程の具体的な態様については、後段部にて説明する。
【0027】
<<<実施形態2のパターン形成方法>>>
実施形態2のパターン形成方法は、工程Y1、工程Y2P、及び工程Y3をこの順で有し、さらに、工程Y2Q(工程Y2Pにおいて露光された感光性層を、更に、露光する工程)を、工程Y3の前又は工程Y3の後に有する。
工程Y1:転写フィルム中の感光性層の仮支持体側とは反対側の表面を基材に接触させて、転写フィルムと上記基材とを貼り合わせる工程
工程Y2P:感光性層を、露光する工程
工程Y3:感光性層を、現像液を用いて現像する工程
【0028】
実施形態2のパターン形成方法としては、感光性層が、更に、光重合開始剤及び重合性化合物を含む場合に適用可能な態様に該当する。
実施形態2のパターン形成方法において、工程Y2P及び工程Y2Qにおいて露光処理を実施するが、露光処理のうちいずれかは、露光により化合物Aに由来する酸基の含有量を減少させるための露光であり、露光処理のうちいずれかは、光重合開始剤に基づく重合性化合物の重合反応を生起するための露光に該当する。また、露光処理は、全面露光及びパターン状の露光(パターン露光)のいずれであってもよいが、露光処理のうちのいずれかはパターン露光である。
例えば、工程Y2Pが露光により化合物Aに由来する酸基の含有量を減少させるためのパターン露光である場合、工程Y3で使用される現像液はアルカリ現像液であってもよく有機溶剤系現像液であってもよい。ただし、有機溶剤系現像液で現像をする場合、工程Y2Qは、通常、工程Y3の後に実施される。工程Y2Qを実施することで、現像された感光性層(パターン)において、光重合開始剤に基づく重合性化合物の重合反応を生起されるとともに、化合物Aに由来する酸基(好ましくはカルボキシ基)の含有量が減少する。
また、例えば、工程Y2Pが光重合開始剤に基づく重合性化合物の重合反応を生起するためのパターン露光である場合、工程Y3で使用される現像液は通常アルカリ現像液である。この場合、工程Y2Qは、工程Y3の前後のいずれで実施されてもよく、工程Y3の前に実施される場合の工程Y2Qは、通常パターン露光である。
【0029】
実施形態2のパターン形成方法としては、なかでも、工程Y1、工程Y2A、工程Y3、工程Y2Bをこの順に有しているのが好ましい。なお、工程Y2A及び工程Y2Bは、一方は、露光により化合物Aに由来する酸基の含有量を減少させるための露光工程であり、他方は、光重合開始剤に基づく重合性化合物の重合反応を生起するための露光工程に該当する。
工程Y1:転写フィルム中の感光性層の仮支持体側とは反対側の表面を基材に接触させて、転写フィルムと基材とを貼り合わせる工程
工程Y2A:感光性層をパターン状に露光(パターン露光)する工程
工程Y3:感光性層を、アルカリ現像液を用いて現像して、パターン化された感光性層を形成する工程
工程Y2B:パターン化された感光性層を露光する工程
【0030】
以下において、工程Y2Aが光重合開始剤に基づく重合性化合物の重合反応を生起するための露光工程であり、工程Y2Bが露光により化合物Aに由来する酸基の含有量を減少させるための露光工程である態様を一例として、実施形態2のパターン形成方法の構成及び作用機構について説明する。
【0031】
実施形態2のパターン形成方法においては、工程Y1により、転写フィルムの感光性層と任意の基材とを貼り合わせて、基材と基材上に配置された感光性層とを有する積層体が形成される。次いで、得られた積層体の感光性層に対して工程Y2Aの露光工程を実施すると、露光部において重合性化合物の重合反応(硬化反応)が進行し、続く工程Y3の現像工程において、感光性層の未露光部がアルカリ現像液に溶解除去されてネガ型のパターン状の感光性層(硬化層)が形成される。そして工程Y4において、工程Y3で得られたパターン状の感光性層を露光(好ましくは全面露光)し、感光性層中の酸基の含有量を減少させる。
つまり実施形態2のパターン形成方法においては、工程Y2Aのアルカリ現像工程の際には、感光性層中に所定量の酸基が存在することから、感光性層はアルカリ現像液に対する優れたパターン形成性を有する。更に、工程Y4において感光性層中の酸基の含有量を減少させることで、低透湿性のパターンを形成している。すなわち、実施形態2のパターン形成方法は、露光により化合物Aに由来する酸基の含有量が減少する機構を有する感光性層により、アルカリ現像液に対する優れたパターン形成性を有しながら、酸基の含有量が低減された低透湿性のパターンの形成を可能としている。
上記では工程Y2Aが、光重合開始剤に基づく重合性化合物の重合反応を生起するための露光工程であり、工程Y2Bが、露光により化合物Aに由来する酸基の含有量を減少させるための露光工程である態様を説明したが、工程Y2Aと工程Y2Bとを入れ替えた態様においても同様の作用機構が得られる。
なお、上述したとおり露光により化合物Aに由来する酸基の含有量が減少する機構を有する感光性層としては、例えば、後述する感光性層Xを適用できる。
実施形態2のパターン形成方法の各工程の具体的な態様については、後段部にて説明する。
【0032】
<<<感光性層X>>>
以下において、感光性層X及びその作用機構について説明する。
感光性層Xは、以下に示す要件(V1-C)及び下記要件(W1-C)のいずれかを満たす。なお、感光性層は、要件(V1-C)及び要件(W1-C)のいずれも満たす感光性層であってもよい。
要件(V1-C)
感光性層Xは、カルボキシ基を有する化合物Aと、光励起状態において、化合物A中のカルボキシ基から電子を受容できる構造(以下「特定構造S1」ともいう。)を有する化合物Bと、を含む。
要件(W1-C)
感光性層Xは、カルボキシ基を有する化合物Aを含み、且つ、上記化合物Aは、更に、光励起状態において化合物A中のカルボキシ基から電子を受容できる構造(特定構造S1)を含む。
【0033】
感光性層Xは、特定構造S1を起点とした以下に示す作用機構によって、露光により化合物Aに由来するカルボキシ基の含有量を減少させ得る。
【0034】
上記特定構造S1は、露光されると電子の受容性が増大し、化合物Aが有するカルボキシ基から電子を受け渡される。なお、電子を受け渡す際、上記カルボキシ基はアニオンになっていてもよい。
上記アニオンになっていてもよいカルボキシ基が、特定構造S1に電子を受け渡すと、上記カルボキシ基は不安定化し、二酸化炭素になって脱離する。酸基であるカルボキシ基が二酸化炭素になって脱離すると、その部分の極性が低下する。つまり、上記作用機構により、感光性層Xは、露光部で化合物Aのカルボキシ基が脱離することによる極性の変化が生じており、現像液に対する溶解性が変化している(露光部は、アルカリ現像液に対する溶解性が低下し、有機溶剤系現像液に対する溶解性が増大する)。一方で未露光部においては現像液に対する溶解性は概ね変化していない。この結果として、感光性層Xは、優れたパターン形成を有する。また、現像液がアルカリ現像液である場合、カルボキシ基の含有量が低減された低透湿性のパターンの形成が可能となる。更に、現像液が有機溶剤系現像液である場合、更に、現像後のパターンに露光処理を実施することで、カルボキシ基の含有量が低減された低透湿性のパターンの形成が可能となる。
なお、感光性層Xの各種成分及び形成方法については、後段部にて説明する。
【0035】
また、感光性層Xは、後述するとおり、重合性化合物を含んでいることも好ましい。
上述のように、上記カルボキシ基が、特定構造S1に電子が受け渡すと、上記カルボキシ基は不安定化し、二酸化炭素になって脱離する。この際、化合物A上の、カルボキシ基が二酸化炭素になって脱離した個所にはラジカルが生じており、このようなラジカルによって重合性化合物のラジカル重合反応が生起される。この結果として、露光後の感光性層Xは、特に、アルカリ現像液に対するパターン形成能がより向上し、且つ、膜強度にも優れる。
【0036】
更に、感光性層Xは、後述するとおり、重合性化合物と光重合開始剤とを含むことも好ましい。
感光性層Xが、光重合開始剤を含む場合、上述したような、カルボキシ基の脱離と、重合反応とを異なるタイミングで生じさせることができる。例えば、感光性層Xに、まず、カルボキシ基の脱離がほとんど生じないような波長又は露光量で第1の露光をし、光重合開始剤に基づく重合性化合物の重合反応を進行させて硬化させてもよい。その後、硬化させられた感光性層に第2の露光をし、カルボキシ基の脱離を生じさせてもよい。
【0037】
<<感光性層Xの実施形態>>
以下において、感光性層Xの実施形態の一例を示す。
<実施形態X-1-a1-Cの感光性層X>
要件(V1-C)又は要件(W1-C)のいずれかを満たし、且つ、重合性化合物及び光重合開始剤を実質的に含まない感光性層である。
<実施形態X-1-a2-Cの感光性層X>
要件(V1-C)又は要件(W1-C)のいずれかを満たし、且つ、光重合開始剤を実質的に含まない感光性層である。
<実施形態X-1-a3-Cの感光性層>
要件(V1-C)又は要件(W1-C)のいずれかを満たし、且つ、重合性化合物及び光重合開始剤を含む感光性層である。
【0038】
なお、実施形態X-1-a1-Cの感光性層Xにおいて、「感光性層Xが重合性化合物を実質的に含まない」とは、重合性化合物の含有量が、感光性層Xの全質量に対して、3質量%未満であればよく、0~1質量%であることが好ましく、0~0.1質量%であることがより好ましい。
また、実施形態X-1-a1-C及び実施形態X-1-a2-Cの感光性層Xにおいて、「感光性層Xが光重合開始剤を実質的に含まない」とは、光重合開始剤の含有量が、感光性層Xの全質量に対して、0.1質量%未満であればよく、0~0.05質量%であることが好ましく、0~0.01質量%であることがより好ましい。
【0039】
実施形態X-1-a1-C及び実施形態X-1-a2-Cの感光性層Xは、上述した実施形態1のパターン形成方法に適用されるのが好ましい。また、実施形態X-1-a3-Cの感光性層Xは、上述した実施形態2のパターン形成方法に適用されるのが好ましい。
【0040】
〔転写フィルムの構成〕
以下において、転写フィルムの構成について説明する。
本発明の転写フィルムは、仮支持体と、上記仮支持体上に配置された、酸基を有する化合物A(化合物A)を含む感光性層と、を有する。
【0041】
図1は、本発明の転写フィルムの実施形態の一例を示す断面模式図である。
図1に示す転写フィルム100は、仮支持体12と、感光性層14と、カバーフィルム16とがこの順に積層された構成である。
なお、図1で示す転写フィルム100はカバーフィルム16を配置した形態であるが、カバーフィルム16は、配置されなくてもよい。
以下において、転写フィルムを構成する各要素について説明する。
【0042】
<<<仮支持体>>>
仮支持体は、感光性層を支持し、感光性層から剥離可能な支持体である。
仮支持体は、感光性層をパターン露光する際に仮支持体を介して感光性層を露光し得る点で、光透過性を有することが好ましい。
ここで「光透過性を有する」とは、露光(パターン露光でも全面露光でもよい)に使用する光の主波長の透過率が50%以上であることを意味する。露光に使用する光の主波長の透過率は、露光感度がより優れる点で、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。透過率の測定方法としては、大塚電子(株)製MCPD Seriesを用いて測定する方法が挙げられる。
【0043】
仮支持体としては、具体的には、ガラス基板、樹脂フィルム、及び紙等が挙げられ、強度及び可撓性等がより優れる点で、樹脂フィルムが好ましい。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、及びポリカーボネートフィルム等が挙げられる。なかでも、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0044】
仮支持体を介するパターン露光時のパターン形成性、及び、仮支持体の透明性の観点から、仮支持体に含まれる粒子や異物や欠陥の数は少ない方が好ましい。直径2μm以上の微粒子や異物や欠陥の数は、50個/10mm以下であることが好ましく、10個/10mm以下であることがより好ましく、3個/10mm以下であることが更に好ましい。下限は特に制限は無いが、1個/10mm以上とすることができる。
仮支持体は、ハンドリング性をより向上させる点で、感光性層が形成される側とは反対側の面に、直径0.5~5μmの粒子が1個/mm以上存在する層を有することが好ましく、1~50個/mm存在するのがより好ましい。
【0045】
仮支持体の厚みとしては特に制限されず、取扱い易さ及び汎用性に優れる点で、5~200μmが好ましく、10~150μmがより好ましい。
仮支持体の厚みは、支持体としての強度、回路配線形成用基板との貼り合わせに求められる可撓性、及び最初の露光工程で要求される光透過性等の点から、材質に応じて適宜選択し得る。
【0046】
仮支持体の好ましい態様としては、例えば、特開2014-085643号公報の段落0017~0018、特開2016-027363号公報の段落0019~0026、WO2012/081680A1公報の段落0041~0057、及びWO2018/179370A1公報の段落0029~0040に記載があり、これらの公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0047】
仮支持体としては、例えば、東洋紡(株)製のコスモシャイン(登録商標)A4100、東レ株式会社製のルミラー(登録商標)16FB40、又は、東レ株式会社製のルミラー(登録商標)16QS62(16KS40)を使用してもよい。
また、仮支持体の特に好ましい態様としては、厚さ16μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び、厚さ9μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。
【0048】
<<<感光性層>>>
感光性層は、酸基を有する化合物A(化合物A)を含み、露光により化合物Aに由来する酸基の含有量が減少する機構を有する。
なお、感光性層における化合物Aに由来する酸基の含有量の減少率は、露光前後における感光性層の酸基の量を測定することで算出できる。露光前の感光性層の酸基の量の測定に際しては、例えば、電位差滴定により分析定量できる。また、露光後の感光性層の酸基の量の測定に際しては、酸基の水素原子をリチウム等の金属イオンに置換し、この金属イオンの量をICP-OES((Inductivity coupled plasma optical emission spectrometer)により分析定量することで算出できる。
また、感光性層における化合物Aに由来する酸基の含有量の減少率は、露光前後における感光性層のIR(infrared)スペクトルを測定し、酸基に由来するピークの減少率を算出することでも得られる。なお、酸基がカルボキシ基である場合、カルボキシ基の含有量の減少率は、カルボキシ基のC=O伸縮のピーク(1710cm-1のピーク)の減少率を算出することで得られる。
【0049】
感光性層としては、以下に示す要件(V01)及び要件(W01)のいずれかを満たす感光性層であるのが好ましい。なお、感光性層は、要件(V01)及び要件(W01)のいずれも満たす感光性層であってもよい。
要件(V01)
感光性層が、酸基を有する化合物Aと、露光により上記化合物Aが含む上記酸基の量を減少させる構造(以下「特定構造S0」ともいう。)を有する化合物βと、を含む。
要件(W01)
感光性層が、酸基を有する化合物Aを含み、且つ、上記化合物Aは、更に、露光により上記酸基の量を減少させる構造(特定構造S0)を含む。
【0050】
上述の特定構造S0とは、露光されると、化合物A中に含まれる酸基の量を減少させる作用を示す構造である。特定構造S0としては、露光によって基底状態から励起状態へ遷移し、且つ、励起状態において化合物A中の酸基を減少させる作用を示す構造であるのが好ましい。特定構造S0としては、例えば、露光されて光励起状態となって、化合物A中に含まれる酸基から電子を受容できる構造(後述する特定構造S1)等が挙げられる。
【0051】
また、以下において、感光性層の実施形態の一例を示す。
<実施形態X-1-a1の感光性層>
要件(V01)又は要件(W01)のいずれかを満たし、且つ、重合性化合物及び光重合開始剤を実質的に含まない感光性層である。
<実施形態X-1-a2の感光性層>
要件(V01)又は要件(W01)のいずれかを満たし、且つ、光重合開始剤を実質的に含まない感光性層である。
<実施形態X-1-a3の感光性層>
要件(V01)又は要件(W01)のいずれかを満たし、且つ、重合性化合物及び光重合開始剤を含む感光性層である。
【0052】
なお、実施形態X-1-a1の感光性層において、「感光性層が重合性化合物を実質的に含まない」とは、重合性化合物の含有量が、感光性層の全質量に対して、3質量%未満であればよく、0~1質量%であることが好ましく、0~0.1質量%であることがより好ましい。
また、実施形態X-1-a1及び実施形態X-1-a2の感光性層において、「感光性層が光重合開始剤を実質的に含まない」とは、光重合開始剤の含有量が、感光性層の全質量に対して、0.1質量%未満であればよく、0~0.05質量%であることが好ましく、0~0.01質量%であることがより好ましい。
【0053】
実施形態X-1-a1及び実施形態X-1-a2の感光性層は、上述した実施形態1のパターン形成方法に適用されるのが好ましい。また、実施形態X-1-a3の感光性層は、上述した実施形態2のパターン形成方法に適用されるのが好ましい。
【0054】
上記要件(V01)としては、以下に示す要件(V1)であるのが好ましく、上記要件(W01)としては、以下に示す要件(W1)であるのが好ましい。つまり、上記要件(V01)において、上記化合物βは、光励起状態において、化合物Aが含む酸基から電子を受容できる構造を有する化合物Bであるのが好ましい。また、上記要件(W01)において、上記構造は、光励起状態において、化合物Aが含む酸基から電子を受容できる構造であるのが好ましい。
要件(V1):感光性層が、酸基を有する化合物Aと、光励起状態において、上記化合物Aが含む上記酸基から電子を受容できる構造(特定構造S1)を有する化合物Bと、を含む。
要件(W1):感光性層が、酸基を有する化合物Aを含み、且つ、上記化合物Aは、更に、光励起状態において上記酸基から電子を受容できる構造(特定構造S1)を含む。
【0055】
感光性層としては、なかでも、上述した要件(V1-C)及び要件(W1-C)のいずれかを満たす感光性層であるのがより好ましい。なお、要件(V1-C)は要件(V1)における酸基がカルボキシ基である態様に該当し、要件(W1-C)は要件(W1)における酸基がカルボキシ基である態様に該当する。
また、感光性層の実施形態としては、なかでも、上述した、実施形態X-1-a1-C~実施形態X-1-a3-Cの感光性層であるのがより好ましい。なお、実施形態X-1-a1-C~実施形態X-1-a3-Cは、実施形態X-1-a1~実施形態X-1-a3において、要件(V01)及び要件(W01)がそれぞれ要件(V1-C)及び要件(W1-C)である態様に該当する。
なお、露光により化合物Aに由来する酸基の含有量が減少する機構としては、後述する脱炭酸による手法に限られず、化合物Aに由来する酸基の含有量を減少可能な公知の手法を適宜選択できる。
【0056】
<<各種成分>>
<酸基を有する化合物A>
感光性層は、酸基を有する化合物A(化合物A)を含む。
化合物Aが含む酸基としては、pKaが12以下のプロトン解離性基であるのが好ましい。酸基としては、具体的には、カルボキシ基、スルホンアミド基、ホスホン酸基、スルホ基、フェノール性水酸基、及びスルホニルイミド基等が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。
化合物Aとしては、低分子化合物であっても、高分子化合物(以下「ポリマー」ともいう。)であってもよいが、ポリマーであるのが好ましい。
化合物Aが低分子化合物である場合、化合物Aの分子量としては、5,000未満が好ましく、2,000以下がより好ましく、1,000以下が更に好ましく、500以下が特に好ましく、400以下が最も好ましい。
化合物Aがポリマーである場合、化合物Aの重量平均分子量の下限値としては、感光性層の形成性に優れる(言い換えると、感光性層を形成するための製膜能に優れる)点で、5,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく、15,000以上が更に好ましい。上限値としては特に制限されないが、任意の基材と貼り合わせる際(転写の際)の密着性(ラミネート密着性)がより優れる点で、50,000以下であるのが好ましい。
【0057】
なお、化合物Aがポリマーである場合、上記ポリマーは、アルカリ可溶性樹脂である。
本開示において、「アルカリ可溶性」とは、以下の方法によって求められる溶解速度が0.01μm/秒以上であることをいう。
対象化合物(例えば、樹脂)の濃度が25質量%であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液をガラス基板上に塗布し、次に、100℃のオーブンで3分間加熱することによって上記対象化合物の塗膜(厚み2.0μm)を形成する。上記塗膜を炭酸ナトリウム1質量%水溶液(液温30℃)に浸漬させることにより、上記塗膜の溶解速度(μm/秒)を求める。
なお、対象化合物がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解しない場合は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート以外の沸点200℃未満の有機溶剤(例えば、テトラヒドロフラン、トルエン、又は、エタノール)に対象化合物を溶解させる。
【0058】
また、化合物Aがポリマーである場合、現像性の点から、ポリマーである化合物Aの酸価は、60~300mgKOH/gが好ましく、60~275mgKOH/gがより好ましく、75~250mgKOH/gが更に好ましい。
本明細書において、樹脂の酸価は、JIS K0070(1992)に規定される滴定方法で測定される値である。
【0059】
化合物Aは、露光により化合物Aが含む酸基の量を減少させる構造(特定構造S0)を含んでいるのも好ましい。なお、以下において、特定構造S0を含まない化合物Aを「化合物Aa」とも称し、特定構造S0を含む化合物Aを「化合物Ab」とも称する。なお、化合物Abは、ポリマーであるのが好ましい。
化合物Aが特定構造S0を含まないとは、化合物Aが特定構造S0を実質的に含んでいなければよく、例えば、化合物Aaが有する特定構造S0の含有量は、化合物Aaの全質量に対して、1質量%未満であればよく、0~0.5質量%であることが好ましく、0~0.05質量%であることがより好ましい。
化合物Abにおける特定構造S0の含有量は、化合物Abの全質量に対して、1質量%以上が好ましく、1~50質量%であることがより好ましく、5~40質量%である更により好ましい。
化合物Aが化合物Abを含む場合、化合物Abの含有量は、化合物Aの全質量に対して5~100質量%が好ましい。
ここで、特定構造S0とは、上述のとおり、露光されると、化合物A中に含まれる酸基の量を減少させる作用を示す構造である。特定構造S0としては、露光によって基底状態から励起状態へ遷移し、且つ、励起状態において化合物A中の酸基を減少させる作用を示す構造であるのが好ましい。
化合物Aが有する特定構造S0としては、光励起状態において化合物Aが含む酸基から電子を受容できる構造(特定構造S1)が挙げられる。
このような特定構造S1としては、複素芳香環が挙げられる。
【0060】
上記複素芳香環は、単環でも多環でもよく、多環であることが好ましい。多環の複素芳香環は、複数(例えば2~5つ)の芳香環構造が縮環してなっており、且つ、上記複数の芳香環構造のうちの少なくとも1つが環員原子としてヘテロ原子を有している。
複素芳香環は、環員原子としてヘテロ原子(窒素原子、酸素原子、硫黄原子等)を1以上有しており、1~4つ有することが好ましい。また、複素芳香環は、環員原子として窒素原子を1以上(例えば1~4つ)有することが好ましい。
上記複素芳香環の環員原子数は、5~15が好ましい。
【0061】
上記複素芳香環としては、例えば、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、及び、トリアジン環のような単環の複素芳香環;キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、及び、キナゾリン環のような2環が縮環した複素芳香環;アクリジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、及び、フェナジン環のような3環が縮環した複素芳香環が挙げられる。
【0062】
上記複素芳香環は1以上(例えば1~5個)の置換基を有していてもよく、上記置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、シアノ基、及び、ニトロ基が挙げられる。また、上記芳香環が2以上の置換基を有する場合、複数の置換基が互いに結合して非芳香環を形成していてもよい。
また、上記複素芳香環がカルボニル基と直接結合していることも好ましい。
上記複素芳香環がイミド基と結合して、複素芳香族イミド基を形成していることも好ましい。なお、複素芳香族イミド基におけるイミド基は、複素芳香環と共にイミド環を形成していてもよいし、形成していなくてもよい。
【0063】
なお、化合物A中で、複数の芳香環(例えば、2~5つの芳香環)が、単結合、カルボニル基、及び、多重結合(例えば、置換基を有してもよいビニレン基、-C≡C-、-N=N-等)からなる群から選択される構造で結合した一連の芳香環構造を形成しており、且つ、上記一連の芳香環構造を構成する複数の芳香環のうちの1以上が上記複素芳香環である場合、上記一連の芳香環構造全体で1つの特定構造S1とみなす。
【0064】
また、化合物Aが有する酸基の一部又は全部は、感光性層中でアニオン化していてもアニオン化していなくてもよく、アニオン化した酸基も、アニオン化していない酸基も共に含めて、酸基と称する。つまり、化合物Aは感光性層中で、アニオン化していてもアニオン化していなくてもよい。
【0065】
化合物Aとしては、感光性層のパターン形成性能がより優れる点及び製膜性により優れる点で、なかでも、カルボキシ基を有する化合物であるのが好ましい。
カルボキシ基を有する化合物としては、カルボキシ基を含むモノマー(以下「カルボキシ基含有モノマー」ともいう。)又はカルボキシ基を含むポリマー(以下「カルボキシ基含有ポリマー」ともいう。)であるのが好ましく、感光性層のパターン形成性能がより優れる点及び製膜性により優れる点で、カルボキシ基含有ポリマーであるのがより好ましい。
【0066】
なお、カルボキシ基含有モノマー及びカルボキシ基含有ポリマーが有するカルボキシ基(-COOH)の一部又は全部は、感光性層中でアニオン化していてもアニオン化していなくてもよく、アニオン化したカルボキシ基(-COO)も、アニオン化していないカルボキシ基も共に含めて、カルボキシ基と称する。
つまり、カルボキシ基含有モノマーは感光性層中で、アニオン化していてもアニオン化していなくてもよく、アニオン化したカルボキシ基含有モノマーも、アニオン化していないカルボキシ基含有モノマーも共に含めてカルボキシ基含有モノマーと称する。
つまり、カルボキシ基含有ポリマーは感光性層中で、アニオン化していてもアニオン化していなくてもよく、アニオン化したカルボキシ基含有ポリマーも、アニオン化していないカルボキシ基含有ポリマーも共に含めてカルボキシ基含有ポリマーと称する。
【0067】
上述のとおり、カルボキシ基を含む化合物Aは、特定構造S0(好ましくは特定構造S1)を含んでいてもよい。言い換えると、カルボキシ基含有モノマー及びカルボキシ基含有ポリマーは、特定構造S0(好ましくは特定構造S1)を含んでいてもよい。カルボキシ基を含む化合物Aが特定構造S0(好ましくは特定構造S1)を含む場合、なかでも、特定構造S0(好ましくは特定構造S1)を含むカルボキシ基含有ポリマーであるのが好ましく、特定構造S1を含むカルボキシ基含有ポリマーであるのがより好ましい。
【0068】
感光性層において、化合物Aの含有量の下限値としては、感光性層の全質量に対して、1質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、45質量%以上が更により好ましく、50質量%以上が特に好ましい。化合物Aの含有量の上限値としては、感光性層の全質量に対して、100質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましく、97質量%以下が更に好ましく、93質量%以下が特に好ましく、85質量%以下がより特に好ましく、75質量%以下が最も好ましい。なお、感光性層が要件W01を満たす場合、化合物Aの含有量の上限値としては、感光性層の全質量に対して、99質量%以下が好ましい。
化合物Aは、一種単独で使用してもよく、二種以上使用してもよい。
【0069】
(カルボキシ基含有モノマー)
カルボキシ基含有モノマーとしては、カルボキシ基を含み、且つ、エチレン性不飽和基を1つ以上(例えば1~15個)含む重合性化合物である。
エチレン性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、及びスチリル基が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
カルボキシ基含有モノマーとしては、製膜性がより優れる点で、カルボキシ基を含む2官能以上のモノマーが好ましい。なお、2官能以上のモノマーとは、一分子中にエチレン性不飽和基を2つ以上(例えば2~15個)有する重合性化合物を意味する。
カルボキシ基含有モノマーは、酸基として、カルボキシ基以外の酸基を更に有してもよい。カルボキシ基以外の酸基としては、例えば、フェノール性水酸基、リン酸基、及びスルホン酸基が挙げられる。
【0070】
カルボキシ基を含む2官能以上のモノマーは特に制限されず、公知の化合物の中から適宜選択できる。
カルボキシ基を含む2官能以上のモノマーとしては、例えば、アロニックス(登録商標)TO-2349(東亞合成(株)製)、アロニックスM-520(東亞合成(株)製)、及びアロニックスM-510(東亞合成(株)製)等が挙げられる。
【0071】
また、カルボキシ基を含む2官能以上のモノマーとしては、例えば、カルボキシ基を有する3~4官能の重合性化合物(ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート[PETA]骨格にカルボキシ基を導入したもの(酸価=80~120mgKOH/g))、及びカルボキシ基を含む5~6官能の重合性化合物(ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート[DPHA]骨格にカルボキシ基を導入したもの(酸価=25~70mgKOH/g))等も挙げられる。なお、上述のカルボキシ基を含む3官能以上のモノマーを使用する場合、製膜性がより優れる点で、カルボキシ基を含む2官能以上のモノマーを併用するのも好ましい。
【0072】
カルボキシ基を含む2官能以上のモノマーとしては、特開2004-239942号公報の段落0025~0030に記載の酸基を有する重合性化合物も挙げられる。この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0073】
(カルボキシ基含有ポリマー)
通常、カルボキシ基含有ポリマーは、アルカリ可溶性樹脂である。なお、アルカリ可溶性の定義及び測定方法については、既述のとおりである。
【0074】
カルボキシ基含有ポリマーは、酸基として、カルボキシ基以外の酸基を更に有してもよい。カルボキシ基以外の酸基としては、例えば、フェノール性水酸基、リン酸基、及びスルホン酸基が挙げられる。
【0075】
現像性の点から、カルボキシ基含有ポリマーの酸価は、60~300mgKOH/gが好ましく、60~275mgKOH/gがより好ましく、75~250mgKOH/gが更に好ましい。
【0076】
≪カルボキシ基を有する繰り返し単位≫
カルボキシ基含有ポリマーは、カルボキシ基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
カルボキシ基を有する繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(A)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0077】
【化1】
【0078】
一般式(A)中、RA1は、水素原子、ハロゲン原子、又はアルキル基を表す。
上記アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。上記アルキル基の炭素数は1~5が好ましく、1がより好ましい。
一般式(A)中、Aは、単結合又は2価の連結基を表す。
上記2価の連結基としては、例えば、-CO-、-O-、-S―、-SO-、―SO-、-NR-(Rは、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基)、炭化水素基(例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、フェニレン基のようなアリーレン基等)、及びこれらの複数が連結した連結基が挙げられる。
【0079】
カルボキシ基を有する繰り返し単位の由来となるモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、及びフマル酸が挙げられる。なかでも、パターニング性により優れる点で、(メタ)アクリル酸が好ましい。すなわち、カルボキシ基を有する繰り返し単位は、(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位であるのが好ましい。
【0080】
カルボキシ基含有ポリマー中、カルボキシ基を有する繰り返し単位の含有量は、カルボキシ基含有ポリマーの全繰り返し単位に対して、5~100モル%が好ましく、10~65モル%がより好ましく、15~45モル%が更に好ましい。
また、カルボキシ基含有ポリマー中、カルボキシ基を有する繰り返し単位の含有量は、カルボキシ基含有ポリマーの全繰り返し単位に対して、1~100質量%が好ましく、5~70質量%がより好ましく、12~50質量%が更に好ましい。
カルボキシ基を有する繰り返し単位は、一種単独で使用してもよく、二種以上使用してもよい。
【0081】
≪重合性基を有する繰り返し単位≫
カルボキシ基含有ポリマーは、上述の繰り返し単位以外に、重合性基を有する繰り返し単位を有することも好ましい。
重合性基としては、例えば、エチレン性不飽和基(例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、及びスチリル基等)、及び環状エーテル基(例えば、エポキシ基、オキセタニル基等)等が挙げられ、エチレン性不飽和基が好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
重合性基を有する繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(B)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0082】
【化2】
【0083】
一般式(B)中、XB1及びXB2は、それぞれ独立に、-O-又は-NR-を表す。
は水素原子又はアルキル基を表す。上記アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素数は1~5が好ましい。
Lは、アルキレン基、又はアリーレン基を表す。上記アルキレン基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素数は1~5が好ましい。上記アリーレン基は、単環でも多環でもよく、炭素数は6~15が好ましい。上記アルキレン基及びアリーレン基は、置換基を有していてもよく、上記置換基としては、例えば、水酸基が好ましい。
B1及びRB2は、それぞれ独立に、水素原子、又はアルキル基を表す。上記アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。上記アルキル基の炭素数は1~5が好ましく、1がより好ましい。
【0084】
カルボキシ基含有ポリマー中、重合性基を有する繰り返し単位の含有量は、カルボキシ基含有ポリマーの全繰り返し単位に対して、3~60モル%が好ましく、5~40モル%がより好ましく、10~30モル%が更に好ましい。
カルボキシ基含有ポリマー中、重合性基を有する繰り返し単位の含有量は、カルボキシ基含有ポリマーの全繰り返し単位に対して、1~70質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましく、12~45質量%が更に好ましい。
重合性基を有する繰り返し単位は、一種単独で使用してもよく、二種以上使用してもよい。
【0085】
≪特定構造S0を有する繰り返し単位≫
カルボキシ基含有ポリマーは、上述の繰り返し単位以外に、特定構造S0(好ましくは特定構造S1)を有する繰り返し単位を有することも好ましい。
特定構造S0及び特定構造S1については、既述のとおりである。
特定構造S0(好ましくは特定構造S1)を有する繰り返し単位において、特定構造S0(好ましくは特定構造S1)は、主鎖に存在していてもよく、側鎖に存在していてもよく、側鎖に存在していることが好ましい。特定構造S0(好ましくは特定構造S1)が側鎖に存在している場合、特定構造S0(好ましくは特定構造S1)はポリマー主鎖と単結合又は連結基を介して結合している。
特定構造S0(好ましくは特定構造S1)を有する繰り返し単位は、例えば、複素芳香環を有する単量体(具体的にはビニルピリジン及びビニル(イソ)キノリン等のビニル複素芳香環、並びに、複素芳香環を有する(メタ)アクリレート単量体等)に基づく繰り返し単位である。
以下、特定構造S0(好ましくは特定構造S1)を有する繰り返し単位の具体例を例示するが、これに制限されない。
【0086】
【化3】
【0087】
カルボキシ基含有ポリマーが、特定構造S0(好ましくは特定構造S1)を有する繰り返し単位を有する場合、その含有量は、カルボキシ基含有ポリマーの全繰り返し単位に対して、3~75モル%が好ましく、5~60モル%がより好ましく、10~50モル%が更に好ましい。
カルボキシ基含有ポリマーが、特定構造S0(好ましくは特定構造S1)を有する繰り返し単位を有する場合、その含有量は、カルボキシ基含有ポリマーの全繰り返し単位に対して、1~75質量%が好ましく、3~60質量%がより好ましく、5~30質量%が更に好ましい。
特定構造S0(好ましくは特定構造S1)を有する繰り返し単位は、一種単独で使用してもよく、二種以上使用してもよい。
【0088】
≪芳香環を有する繰り返し単位≫
カルボキシ基含有ポリマーは、上述の繰り返し単位以外に、芳香環(好ましくは芳香族炭化水素環)を有する繰り返し単位を有することも好ましい。例えば、芳香環を有する(メタ)アクリレートに基づく繰り返し単位、スチレン及び重合可能なスチレン誘導体に基づく繰り返し単位が挙げられる。
芳香環を有する(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート、及びフェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
スチレン及び重合可能なスチレン誘導体としては、メチルスチレン、ビニルトルエン、tert-ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、4-ビニル安息香酸、スチレンダイマー、及びスチレントリマー等が挙げられる。
芳香環を有する繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(C)で表される繰り返し単位も好ましい。
【0089】
【化4】
【0090】
一般式(C)中、RC1は、水素原子、ハロゲン原子、又はアルキル基を表す。上記アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。上記アルキル基の炭素数は1~5が好ましく、1がより好ましい。
Arは、フェニル基又はナフチル基を表す。上記フェニル基及びナフチル基は、1種以上の置換基を有してもよく、上記置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子、及びヒドロキシ基が挙げられる。
芳香環を有する繰り返し単位を以下に例示する。
【0091】
【化5】
【0092】
芳香環を有する繰り返し単位としては、なかでも、以下の構造が好ましい。
【0093】
【化6】
【0094】
カルボキシ基含有ポリマー中、芳香環を有する繰り返し単位の含有量は、カルボキシ基含有ポリマーの全繰り返し単位に対して、5~80モル%が好ましく、15~75モル%がより好ましく、30~70モル%が更に好ましい。
カルボキシ基含有ポリマー中、芳香環を有する繰り返し単位の含有量は、カルボキシ基含有ポリマーの全繰り返し単位に対して、5~90質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましく、30~70質量%が更に好ましい。
芳香環を有する繰り返し単位は、一種単独で使用してもよく、二種以上使用してもよい。
【0095】
≪脂環式構造を有する繰り返し単位≫
カルボキシ基含有ポリマーは、上述の繰り返し単位以外に、脂環構造を有する繰り返し単位を有することも好ましい。脂環構造としては単環でも多環でも良い。
脂環式構造としては、例えば、ジシクロペンタニル環構造、ジシクロペンテニル環構造、イソボルニル環構造、アダマンタン環構造、及びシクロヘキシル環構造が挙げられる。
脂環式構造を有する繰り返し単位の由来となるモノマーとしては、例えば、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、及びシクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0096】
カルボキシ基含有ポリマー中、脂環式構造を有する繰り返し単位の含有量は、カルボキシ基含有ポリマーの全繰り返し単位に対して、3~70モル%が好ましく、5~60モル%がより好ましく、10~55モル%が更に好ましい。
カルボキシ基含有ポリマー中、脂環式構造を有する繰り返し単位の含有量は、カルボキシ基含有ポリマーの全繰り返し単位に対して、3~90質量%が好ましく、5~70質量%がより好ましく、25~60質量%が更に好ましい。
脂環式構造を有する繰り返し単位は、一種単独で使用してもよく、二種以上使用してもよい。
【0097】
≪その他の繰り返し単位≫
カルボキシ基含有ポリマーは、上述の繰り返し単位以外に、その他の繰り返し単位を有していてもよい。
上記その他の繰り返し単位の由来となるモノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、アルキル基としては、鎖状構造を有するアルキル基が挙げられる。鎖状構造としては、直鎖構造でも分岐構造でも良い。アルキル基にはヒドロキシ基などの置換基が合ってもよい。アルキル基の炭素数としては1~50が挙げられ、1~10がより好ましい。具体例としては、メチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
カルボキシ基含有ポリマー中、その他の繰り返し単位の含有量は、カルボキシ基含有ポリマーの全繰り返し単位に対して、1~70モル%が好ましく、2~50モル%がより好ましく、3~20モル%が更に好ましい。
カルボキシ基含有ポリマー中、その他の繰り返し単位の含有量は、カルボキシ基含有ポリマーの全繰り返し単位に対して、1~70質量%が好ましく、2~50質量%がより好ましく、5~35質量%が更に好ましい。
その他の繰り返し単位は、一種単独で使用してもよく、二種以上使用してもよい。
カルボキシ基含有ポリマーの重量平均分子量は、5000~200000が好ましく、10000~100000がより好ましく、11000~49000が最も好ましい。
【0098】
化合物A中におけるカルボキシ基含有ポリマーの含有量としては、化合物Aの全含有量に対して、75~100質量%が好ましく、85~100質量%がより好ましく、90~100質量%が更に好ましく、95~100質量%が特に好ましい。
【0099】
化合物A中におけるカルボキシ基含有モノマーの含有量としては、化合物Aの全含有量に対して、0~25質量%が好ましく、0~10質量%がより好ましく、0~5質量%が更に好ましい。
【0100】
なかでも、実施形態X-1-a1の感光性層においては、化合物Aの含有量は、感光性層の全質量に対して、40~98質量%が好ましく、50~96質量%がより好ましく、60~93質量%がより好ましい。
実施形態X-1-a2の感光性層においては、化合物Aの含有量は、感光性層の全質量に対して、30~85質量%が好ましく、45~75質量%がより好ましい。
実施形態X-1-a3の感光性層においては、化合物Aの含有量は、感光性層の全質量に対して、30~85質量%が好ましく、45~75質量%がより好ましい。
【0101】
<化合物β>
感光性層は、化合物βを含むのが好ましい。
化合物βは、露光により化合物Aが含む酸基の量を減少させる構造(特定構造S0)を有する化合物である。なお、特定構造S0については既述のとおりである。
化合物βが有する特定構造S0とは、化合物βの全体を構成する全体構造であってもよく、化合物βの一部分を構成する部分構造であってもよい。
化合物βは、高分子化合物でも低分子化合物でもよく、低分子化合物であることが好ましい。
低分子化合物である化合物βの分子量は、5,000未満が好ましく、1,000未満がより好ましく、65~300が更に好ましく、75~250が特に好ましい。
【0102】
特定構造S0としては、なかでも、光励起状態で化合物Aが含む酸基から電子を受容できる構造(特定構造S1)であるのが好ましい。つまり、化合物βとしては、光励起状態で化合物Aが含む酸基から電子を受容できる構造(特定構造S1)を有する化合物Bであるのが好ましい。
【0103】
以下において、化合物β(好ましくは化合物B)について説明する。
パターン形成能がより優れる点、及び/又は、形成されるパターンの透湿性がより低くなる点で、化合物β(好ましくは化合物B)は芳香族化合物が好ましい。
ここで、芳香族化合物とは、芳香環を1以上有する化合物である。
芳香環は、化合物β(好ましくは化合物B)中に1個のみ存在していてもよく、複数存在していてもよい。複数存在する場合、例えば、上記芳香環が樹脂の側鎖等に存在していてもよい。
化合物β(好ましくは化合物B)において、芳香環は、上記光励起状態で化合物Aが含む酸基から電子を受容できる構造(特定構造S1)として使用可能である。上記芳香環は、化合物β(好ましくは化合物B)の全体を構成する全体構造であってもよく、化合物β(好ましくは化合物B)の一部分を構成する部分構造であってもよい。
上記芳香環は、単環でも多環でもよく、多環であることが好ましい。多環の芳香環は、例えば、複数(例えば2~5つ)の芳香環構造が縮環してなる芳香環であり、上記複数の芳香環構造のうちの少なくとも1つが環員原子としてヘテロ原子を有していることが好ましい。
上記芳香環は、複素芳香環であってもよく、環員原子としてヘテロ原子(窒素原子、酸素原子、硫黄原子等)を1以上(例えば1~4つ)有することが好ましく、環員原子として窒素原子を1以上(例えば1~4つ)有することがより好ましい。
上記芳香環の環員原子数は、5~15が好ましい。
化合物β(好ましくは化合物B)は環員原子として窒素原子を有する6員環の芳香環を有する化合物であることが好ましい。
【0104】
上記芳香環としては、例えば、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、及びトリアジン環のような単環の芳香環;キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、及びキナゾリン環のような2環が縮環した芳香環;アクリジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、及びフェナジン環のような3環が縮環した芳香環が挙げられる。
【0105】
上記芳香環は1以上(例えば1~5個)の置換基を有していてもよく、上記置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、及びニトロ基が挙げられる。また、上記芳香環が2以上の置換基を有する場合、複数の置換基が互いに結合して非芳香環を形成していてもよい。
また、上記芳香環がカルボニル基と直接結合して、化合物β(好ましくは化合物B)中で、芳香族カルボニル基を形成していることも好ましい。複数の芳香環が、カルボニル基を介して結合していることも好ましい。
上記芳香環がイミド基と結合して、化合物β(好ましくは化合物B)中で、芳香族イミド基を形成していることも好ましい。なお、芳香族イミド基におけるイミド基は、芳香環と共にイミド環を形成していてもよいし、形成していなくてもよい。
なお、複数の芳香環(例えば、2~5つの芳香環)が、単結合、カルボニル基、及び、多重結合(例えば、置換基を有してもよいビニレン基、-C≡C-、-N=N-等)からなる群から選択される構造で結合した一連の芳香環構造を形成している場合、上記一連の芳香環構造全体で1つの特定構造S1とみなす。
また、上記一連の芳香環構造を構成する複数の芳香環のうちの1以上が上記複素芳香環であることが好ましい。
【0106】
パターン形成能がより優れる点、及び/又は、形成されるパターンの透湿性がより低くなる点で、化合物β(好ましくは化合物B)は、下記要件(1)~(4)の1以上(例えば1~4個)を満たす化合物であることが好ましい。なかでも、少なくとも要件(2)を満たすことが好ましく、複素芳香環が有するヘテロ原子としては少なくとも窒素原子を有することが好ましい。
(1)多環の芳香環を有する。
(2)複素芳香環を有する。
(3)芳香族カルボニル基を有する。
(4)芳香族イミド基を有する。
【0107】
化合物β(好ましくは化合物B)の具体例としては、ピリジン及びピリジン誘導体、ピラジン及びピラジン誘導体、ピリミジン及びピリミジン誘導体、並びに、トリアジン及びトリアジン誘導体のような単環の芳香族化合物;キノリン及びキノリン誘導体、イソキノリン及びイソキノリン誘導体、キノキサリン及びキノキサリン誘導体、並びに、キナゾリン及びキナゾリン誘導体のような2環が縮合して芳香環を形成している化合物;アクリジン及びアクリジン誘導体、フェナントリジン及びフェナントリジン誘導体、フェナントロリン及びフェナントロリン誘導体、並びに、フェナジン及びフェナジン誘導体のような3環以上が縮合して芳香環を形成している化合物が挙げられる。
なかでも、化合物β(好ましくは化合物B)は、ピリジン及びピリジン誘導体、キノリン及びキノリン誘導体、並びに、イソキノリン及びイソキノリン誘導体からなる群から選択される1種以上であることが好ましく、キノリン及びキノリン誘導体、並びに、イソキノリン及びイソキノリン誘導体からなる群から選択される1種以上であることがより好ましく、イソキノリン及びイソキノリン誘導体からなる群から選択される1種以上であることが更に好ましい。
これらの化合物及びその誘導体は更に置換基を有していてもよく、上記置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、又はニトロ基が好ましく、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、シアノ基、又はニトロ基がより好ましく、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、シアノ基、又はニトロ基が更に好ましく、アルキル基(例えば、炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基)が特に好ましい。
【0108】
また、パターン形成能がより優れる点、及び/又は、形成されるパターンの透湿性がより低くなる点で、化合物β(好ましくは化合物B)は、置換基を有する芳香族化合物(化合物β(好ましくは化合物B)が含む芳香環の構成原子に置換基を有する化合物)であるのが好ましく、上述の要件(1)~(4)の1以上(例えば1~4個)を満たし、且つ、更に置換基を有する化合物であるのがより好ましい。
置換基の位置としては、例えば、化合物β(好ましくは化合物B)がキノリン及びキノリン誘導体である場合、パターン形成能がより優れる点、及び/又は、形成されるパターンの透湿性がより低くなる点で、キノリン環上の少なくとも2位及び4位の位置に置換基を有しているのが好ましい。また、例えば、化合物β(好ましくは化合物B)がイソキノリン及びイソキノリン誘導体である場合、パターン形成能がより優れる点、及び/又は、形成されるパターンの透湿性がより低くなる点で、イソキノリン環上の少なくとも1位の位置に置換基を有しているのが好ましい。なお、置換基としては、アルキル基(例えば、炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基)が好ましい。
【0109】
化合物β(好ましくは化合物B)がポリマーである場合、特定構造S0(好ましくは特定構造S1)がポリマー主鎖と単結合又は連結基を介して結合しているポリマーでもよい。
ポリマーである化合物β(好ましくは化合物B)は、例えば、複素芳香環を有する単量体(具体的にはビニル複素芳香環、及び/又は、特定構造S0(好ましくは特定構造S1であり、より好ましくは複素芳香環)を有する(メタ)アクリレート単量体)を重合することにより得られる。必要に応じて他の単量体と共重合してもよい。
【0110】
パターン形成能がより優れる点、及び/又は、形成されるパターンの透湿性がより低くなる点で、化合物β(好ましくは化合物B)の波長365nmの光に対するモル吸光係数(モル吸光係数ε)は、例えば1×10(cm・mol/L)-1以下であり、1×10(cm・mol/L)-1以下であることが好ましく、5×10(cm・mol/L)-1未満であることがより好ましく、1×10(cm・mol/L)-1以下が更に好ましい。上記モル吸光係数εの下限に特に制限はなく、例えば、0(cm・mol/L)-1超である。
化合物β(好ましくは化合物B)のモル吸光係数εが上記範囲内であることは、仮支持体(好ましくはPETフィルム)越しに感光性層を露光する場合に、特に利点がある。
すなわち、酸基を有する化合物Aの酸基がカルボキシ基である場合、モル吸光係数εが適度に低いため、仮支持体越しに露光しても脱炭酸による泡の発生を制御でき、パターン形状の劣化を防ぐことができる。
また、感光性層を保護膜(永久膜)の作製用途に用いる場合、化合物β(好ましくは化合物B)のモル吸光係数εを上記範囲内とすることで、膜の着色を抑制できる。
このようなモル吸光係数εを有する化合物としては、上述の単環の芳香族化合物、又は2環が縮合して芳香環を形成している芳香族化合物が好ましく、ピリジン若しくはピリジン誘導体、キノリン若しくはキノリン誘導体、又はイソキノリン若しくはイソキノリン誘導体(イソ)キノリン誘導体が好ましい。
【0111】
また、パターン形成能がより優れる点、及び/又は、形成されるパターンの透湿性がより低くなる点で、化合物β(好ましくは化合物B)の313nmにおけるモル吸光係数(モル吸光係数ε’)に対する化合物β(好ましくは化合物B)の365nmにおけるモル吸光係数(モル吸光係数ε)の比(すなわち、モル吸光係数ε/モル吸光係数ε’で表される比)は、3以下であるのが好ましく、2以下であるのがより好ましく、1未満であるのが更に好ましい。下限値としては特に制限されず、例えば0.01以上である。
【0112】
なお、化合物β(好ましくは化合物B)の波長365nmの光に対するモル吸光係数(モル吸光係数ε)及び波長313nmの光に対するモル吸光係数(モル吸光係数ε’)は、化合物β(好ましくは化合物B)をアセトニトリル中に溶解して測定するモル吸光係数である。化合物β(好ましくは化合物B)がアセトニトリルに溶解しない場合、化合物β(好ましくは化合物B)を溶解させる溶媒は適宜変更してよい。
【0113】
化合物β(好ましくは化合物B)の具体例としては、5,6,7,8-テトラヒドロキノリン、4-アセチルピリジン、4-ベンゾイルピリジン、1-フェニルイソキノリン、1-n-ブチルイソキノリン、1-n-ブチル-4-メチルイソキノリン、1-メチルイソキノリン、2,4,5,7-テトラメチルキノリン、2-メチル-4-メトキシキノリン、2,4-ジメチルキノリン、フェナントリジン、9-メチルアクリジン、9-フェニルアクリジン、ピリジン、イソキノリン、キノリン、アクリジン、4-アミノピリジン、及び2-クロロピリジン等が挙げられる。
【0114】
化合物β(好ましくは化合物B)の基底状態でのpKaの下限値としては、0.5以上が好ましく、パターン形成能がより優れる点、及び/又は、形成されるパターンの透湿性がより低くなる点で、2.0以上がより好ましい。また、化合物β(好ましくは化合物B)の基底状態でのpKaの上限値としては、10.0以下が好ましく、パターン形成能がより優れる点、及び/又は、形成されるパターンの透湿性がより低くなる点で、9.0以下がより好ましい。パターン形成能がより優れる点、及び/又は、形成されるパターンの透湿性がより低くなる点で、化合物β(好ましくは化合物B)の基底状態でのpKaの上限値が小さい程好ましく、8.0以下が更に好ましく、7.0以下が特に好ましい。なお、化合物β(好ましくは化合物B)の基底状態でのpKaとは、化合物β(好ましくは化合物B)の励起していない状態でのpKaを意図し、酸滴定により求めることができる。なお、化合物β(好ましくは化合物B)が含窒素芳香族化合物である場合、化合物β(好ましくは化合物B)の基底状態でのpKaとは、化合物β(好ましくは化合物B)の共役酸の基底状態でのpKaを意図する。
【0115】
また、塗布により感光性層を形成する場合において、塗布プロセスでの揮発しにくく、感光性層中における残存率がより優れる点(ひいては、パターン形成能がより優れる点、及び/又は、形成されるパターンの透湿性がより低くなる点)で、化合物β(好ましくは化合物B)の分子量は120以上であるのが更に好ましく、130以上であるのがより好ましく、180以上であるのが更に好ましい。なお、化合物β(好ましくは化合物B)の分子量の上限値としては特に制限されないが、例えば、50,000以下である。
【0116】
また、化合物β(好ましくは化合物B)がカチオン状態を示す化合物(例えば、含窒素芳香族化合物)である場合、化合物β(好ましくは化合物B)のカチオン状態におけるHOMO(最高被占軌道)のエネルギー準位としては、-8.5eV以下が好ましく、パターン形成能がより優れる点、及び/又は、形成されるパターンの透湿性がより低くなる点で、-7.8eV以下であるのがより好ましい。なお、下限値としては、特に制限されないが、-13.6eV以上であるのがより好ましい。
本明細書中、化合物β(好ましくは化合物B)のカチオン状態におけるHOMO(第1電子励起状態におけるHOMO)のエネルギー準位は、量子化学計算プログラムGaussian09(Gaussian 09, Revision A.02, M. J. Frisch, G. W. Trucks, H. B. Schlegel, G. E. Scuseria, M. A. Robb, J. R. Cheeseman, G. Scalmani, V. Barone, B. Mennucci, G. A. Petersson, H. Nakatsuji, M. Caricato, X. Li, H. P. Hratchian, A. F. Izmaylov, J. Bloino, G. Zheng, J. L. Sonnenberg, M. Hada, M. Ehara, K. Toyota, R. Fukuda, J. Hasegawa, M. Ishida, T. Nakajima, Y. Honda, O. Kitao, H. Nakai, T. Vreven, J. A. Montgomery, Jr., J. E. Peralta, F. Ogliaro, M. Bearpark, J. J. Heyd, E. Brothers, K. N. Kudin, V. N. Staroverov, R. Kobayashi, J. Normand, K. Raghavachari, A. Rendell, J. C. Burant, S. S. Iyengar, J. Tomasi, M. Cossi, N. Rega, J. M. Millam, M. Klene, J. E. Knox, J. B. Cross, V. Bakken, C. Adamo, J. Jaramillo, R. Gomperts, R. E. Stratmann, O. Yazyev, A. J. Austin, R. Cammi, C. Pomelli, J. W. Ochterski, R. L. Martin, K. Morokuma, V. G. Zakrzewski, G. A. Voth, P. Salvador, J. J. Dannenberg, S. Dapprich, A. D. Daniels, O. Farkas, J. B. Foresman, J. V. Ortiz, J. Cioslowski, and D. J. Fox, Gaussian, Inc., Wallingford CT, 2009.)により計算した。
計算手法として、汎関数にはB3LYPを、基底関数には6-31+G(d,p)を用いた時間依存密度汎関数法を利用した。また、溶媒効果を取り込むため、Gaussian09に設定されているクロロホルムのパラメータに基づくPCM法を併用した。本手法により第1電子励起状態の構造最適化計算を行ってエネルギーが最小となる構造を求め、その構造におけるHOMOのエネルギーを計算した。
【0117】
以下、化合物β(好ましくは化合物B)の代表的な一例について、そのカチオン状態のHOMOエネルギー準位(eV)を示す。なお、併せて分子量も示す。
【0118】
【表1】
【0119】
パターン形成能がより優れる点、及び/又は、形成されるパターンの透湿性がより低くなる点で、感光性層中、化合物β(好ましくは化合物B)の含有量は、感光性層の全質量に対して、0.1~50質量%が好ましい。
なかでも、実施形態X-1-a1の感光性層においては、化合物β(好ましくは化合物B)の含有量は、感光性層の全質量に対して、2.0~40質量%が好ましく、4~35質量%がより好ましく、8~30質量%が更に好ましい。
実施形態X-1-a2の感光性層においては、化合物β(好ましくは化合物B)の含有量は、感光性層の全質量に対して、0.5~20質量%が好ましく、1.0~10質量%がより好ましい。
実施形態X-1-a3の感光性層においては、化合物β(好ましくは化合物B)の含有量は、感光性層の全質量に対して、0.3~20質量%が好ましく、0.5~8質量%がより好ましい。
化合物β(好ましくは化合物B)は、一種単独で使用してもよく、二種以上使用してもよい。
【0120】
化合物βが化合物Bである場合、パターン形成能がより優れる点、及び/又は、形成されるパターンの透湿性がより低くなる点で、感光性層中、化合物Bが有する電子を受容できる構造(特定構造S1)の合計数は、化合物Aが有する酸基(好ましくはカルボキシ基)の合計数に対して、1モル%以上が好ましく、3モル%以上がより好ましく、5モル%以上が更に好ましく、10モル%以上が特に好ましく、20モル%以上が最も好ましい。
化合物Bが有する電子を受容できる構造(特定構造S1)の合計数の上限に特に制限はないが、得られる膜の膜質の点から、化合物Aが有する酸基(好ましくはカルボキシ基)の合計数に対して、200モル%以下が好ましく、100モル%以下がより好ましく、80モル%以下が更に好ましい。
【0121】
<重合性化合物>
感光性層は、重合性化合物を含むことも好ましい。なお、この重合性化合物は、酸基を有する化合物Aとは異なる成分であり、酸基を含まない。
【0122】
重合性化合物は、化合物Aとは異なる成分であることが好ましく、例えば、分子量(分子量分布を有する場合は重量平均分子量)が5,000未満の化合物であることが好ましく、重合性モノマーであることも好ましい。
【0123】
重合性化合物は、一分子中にエチレン性不飽和基を1つ以上(例えば1~15個)有する重合性化合物である。
重合性化合物は、2官能以上の重合性化合物を含むことが好ましい。
ここで、2官能以上の重合性化合物とは、一分子中にエチレン性不飽和基を2つ以上(例えば2~15個)有する重合性化合物を意味する。
エチレン性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、及びスチリル基が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
重合性化合物としては、(メタ)アクリレートが好ましい。
【0124】
感光性層は、2官能の重合性化合物(好ましくは2官能の(メタ)アクリレート)と、3官能以上の重合性化合物(好ましくは3官能以上の(メタ)アクリレート)と、を含むのが好ましい。
【0125】
2官能の重合性化合物としては特に制限はなく、公知の化合物の中から適宜選択できる。
2官能の重合性化合物としては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、及び1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
2官能の重合性化合物としては、より具体的には、例えば、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(A-DCP 新中村化学工業(株)製)、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(DCP 新中村化学工業(株)製)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(A-NOD-N 新中村化学工業(株)製)、及び1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(A-HD-N 新中村化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0126】
3官能以上の重合性化合物としては特に制限はなく、公知の化合物の中から適宜選択できる。
3官能以上の重合性化合物としては、例えば、ジペンタエリスリトール(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸(メタ)アクリレート、及びグリセリントリ(メタ)アクリレート骨格の(メタ)アクリレート化合物、等が挙げられる。
【0127】
ここで、「(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、及びヘキサ(メタ)アクリレートを包含する概念であり、「(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート及びテトラ(メタ)アクリレートを包含する概念である。
【0128】
他にも重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリレート化合物のカプロラクトン変性化合物(日本化薬(株)製KAYARAD(登録商標) DPCA-20、新中村化学工業(株)製A-9300-1CL等)、(メタ)アクリレート化合物のアルキレンオキサイド変性化合物(日本化薬(株)製KAYARAD RP-1040、新中村化学工業(株)製ATM-35E、A-9300、ダイセル・オルネクス製 EBECRYL(登録商標) 135等)、及びエトキシル化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業(株)製A-GLY-9E等)等も挙げられる。
【0129】
重合性化合物としては、ウレタン(メタ)アクリレート(好ましくは3官能以上のウレタン(メタ)アクリレート)も挙げられる。官能基数の下限は、6官能以上がより好ましく8官能以上が更に好ましい。官能基数の上限は、例えば、20官能以下である。
3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、8UX-015A(大成ファインケミカル(株)製):UA-32P、U-15HA、及び、UA-1100H(いずれも新中村化学工業(株)製):共栄社化学(株)製のAH-600(商品名):UA-306H、UA-306T、UA-306I、UA-510H、及びUX-5000(いずれも日本化薬(株)製)等が挙げられる。
【0130】
感光性層が含み得る重合性化合物の重量平均分子量(Mw)としては、200~3000が好ましく、250~2600がより好ましく、280~2200が更に好ましい。
感光性層が重合性化合物を含む場合、感光性層に含まれる全ての重合性化合物のうち、分子量が最小のものの分子量は、250以上が好ましく、280以上がより好ましい。
【0131】
感光性層が重合性化合物を含む場合、その含有量は、感光性層の全質量に対して、3~70質量%が好ましく、10~70質量%がより好ましく、20~55質量%が特に好ましい。
感光性層が重合性化合物及びカルボキシ基含有ポリマーを含む場合、カルボキシ基含有ポリマーに対する重合性化合物の質量割合(重合性化合物の質量/カルボキシ基含有ポリマーの質量)は、0.2~2.0が好ましく、0.4~0.9がより好ましい。
重合性化合物は、一種単独で使用してもよく、二種以上使用してもよい。
【0132】
また、感光性層が2官能の重合性化合物と3官能以上の重合性化合物とを含む場合、2官能の重合性化合物の含有量は、感光性層に含まれる全ての重合性化合物に対して、10~90質量%が好ましく、20~85質量%がより好ましく、30~80質量%がさらに好ましい。
また、この場合、3官能以上の重合性化合物の含有量は、感光性層に含まれる全ての重合性化合物に対し、10~90質量%が好ましく、15~80質量%がより好ましく、20~70質量%がさらに好ましい。
【0133】
また、感光性層が2官能以上の重合性化合物を含む場合、この感光性層は、更に単官能の重合性化合物を含有してもよい。
但し、感光性層が2官能以上の重合性化合物を含む場合、感光性層が含み得る重合性化合物において、2官能以上の重合性化合物が主成分であることが好ましい。
具体的には、感光性層が2官能以上の重合性化合物を含む場合において、2官能以上の重合性化合物の含有量は、感光性層に含まれる重合性化合物の総含有量に対し、60~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましく、90~100質量%が更に好ましい。
【0134】
<光重合開始剤>
感光性層は、光重合開始剤を含むことも好ましい。
光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤でもよく、光カチオン重合開始剤でもよく、光アニオン重合開始剤でもよく、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0135】
光重合開始剤としては特に制限はなく、公知の光重合開始剤を使用できる。
光重合開始剤としては、オキシムエステル化合物(オキシムエステル構造を有する光重合開始剤)、及びアミノアセトフェノン化合物(アミノアセトフェノン構造を有する光重合開始剤)からなる群から選択される1種以上であることが好ましく、その両方の化合物を含むことがより好ましい。その両方の化合物を含む場合、両方の化合物の合計含有量に対する、オキシムエステル化合物の含有量は、5~90質量%が好ましく、15~50質量%がより好ましい。更に他の光重合開始剤を併用してもよく、例えばヒドロキシアセトフェノン化合物、アシルホスフィンオキシド化合物、及びビストリフェニルイミダゾール化合物等が挙げられる。
【0136】
また、光重合開始剤としては、例えば、特開2011-095716号公報の段落0031~0042、特開2015-014783号公報の段落0064~0081に記載された重合開始剤を用いてもよい。
【0137】
光重合開始剤の具体例としては、以下の光重合開始剤が例示できる。
オキシムエステル化合物としては、例えば、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル-,2-(O-ベンゾイルオキシム)](商品名:IRGACURE OXE-01、IRGACUREシリーズはBASF社製品)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)(商品名:IRGACURE OXE-02、BASF製)、[8-[5-(2,4,6-トリメチルフェニル)-11-(2-エチルヘキシル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾイル][2-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)フェニル]メタノン-(O-アセチルオキシム)(商品名:IRGACURE OXE-03、BASF製)、1-[4-[4-(2-ベンゾフラニルカルボニル)フェニル]チオ]フェニル]-4-メチルペンタノン-1-(O-アセチルオキシム)(商品名:IRGACURE OXE-04、BASF製、及び、商品名:Lunar 6、DKSHジャパン(株)製)、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-3-シクロペンチルプロパン-1,2-ジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:TR-PBG-305、常州強力電子新材料社製)、1,2-プロパンジオン,3-シクロヘキシル-1-[9-エチル-6-(2-フラニルカルボニル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,2-(O-アセチルオキシム)(商品名:TR-PBG-326、常州強力電子新材料社製)、3-シクロヘキシル-1-(6-(2-(ベンゾイルオキシイミノ)ヘキサノイル)-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル)-プロパン-1,2-ジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:TR-PBG-391、常州強力電子新材料社製)が挙げられる。
アミノアセトフェノン化合物としては、例えば、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(商品名:Omnirad 379EG、OmniradシリーズはIGM Resins B.V.社製品)、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 907)、APi-307(1-(ビフェニル-4-イル)-2-メチル-2-モルホリノプロパン-1-オン、ShenzhenUV-ChemTech Ltd.製)が挙げられる。
他の光重合開始剤としては、例えば、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(商品名:Omnirad 127)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1(商品名:Omnirad 369)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(商品名:Omnirad 1173)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(商品名:Omnirad 184)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名:Omnirad 651)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(商品名:Omnirad TPO H)、及び、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(商品名:Omnirad 819)が挙げられる。
【0138】
感光性層が光重合開始剤を含む場合、その含有量は、感光性層の全質量に対して、0.1~15質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましく、1~5質量%が特に好ましい。
光重合開始剤は、一種単独で使用してもよく、二種以上使用してもよい。
【0139】
<界面活性剤>
感光性層は、界面活性剤を含んでもよい。
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性(非イオン性)界面活性剤、及び両性界面活性剤が挙げられ、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル類、ポリオキシエチレン高級アルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレングリコールの高級脂肪酸ジエステル類、シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤が挙げられる。
【0140】
界面活性剤としては、例えば、国際公開第2018/179640号の段落0120~段落0125に記載の界面活性剤も使用できる。
また、界面活性剤としては、特許第4502784号公報の段落0017、特開2009-237362号公報の段落0060~段落0071に記載の界面活性剤も使用できる。
フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファック F-171、F-172、F-173、F-176、F-177、F-141、F-142、F-143、F-144、F-437、F-475、F-477、F-479、F-482、F-551-A、F-552、F-554、F-555-A、F-556、F-557、F-558、F-559、F-560、F-561、F-565、F-563、F-568、F-575、F-780、EXP、MFS-330、MFS-578、MFS-579、MFS-586、MFS-587、R-41、R-41-LM、R-01、R-40、R-40-LM、RS-43、TF-1956、RS-90、R-94、RS-72-K、DS-21(以上、DIC株式会社製)、フロラード FC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS-382、SC-101、SC-103、SC-104、SC-105、SC-1068、SC-381、SC-383、S-393、KH-40(以上、AGC(株)製)、PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)、フタージェント 710FL、710FM、610FM、601AD、601ADH2、602A、215M、245F、251、212M、250、209F、222F、208G、710LA、710FS、730LM、650AC、681、683(以上、(株)NEOS製)等が挙げられる。
また、フッ素系界面活性剤としては、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造を有し、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファック DSシリーズ(化学工業日報(2016年2月22日)、日経産業新聞(2016年2月23日))、例えばメガファック DS-21が挙げられる。
また、フッ素系界面活性剤としては、フッ素化アルキル基またはフッ素化アルキレンエーテル基を有するフッ素原子含有ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との重合体を用いることも好ましい。
また、フッ素系界面活性剤としては、ブロックポリマーも使用できる。
また、フッ素系界面活性剤としては、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく使用できる。
また、フッ素系界面活性剤としては、エチレン性不飽和結合含有基を側鎖に有する含フッ素重合体も使用できる。メガファック RS-101、RS-102、RS-718K、RS-72-K(以上、DIC株式会社製)等が挙げられる。
【0141】
フッ素系界面活性剤としては、環境適性向上の観点から、パーフルオロオクタン酸(PFOA)及びパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)等の炭素数が7以上の直鎖状パーフルオロアルキル基を有する化合物の代替材料に由来する界面活性剤であることが好ましい。
ノニオン系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニック(登録商標) L10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(以上、BASF社製)、テトロニック 304、701、704、901、904、150R1(以上、BASF社製)、ソルスパース 20000(以上、日本ルーブリゾール(株)製)、NCW-101、NCW-1001、NCW-1002(以上、富士フイルム和光純薬(株)製)、パイオニン D-6112、D-6112-W、D-6315(以上、竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(以上、日信化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0142】
シリコーン系界面活性剤としては、シロキサン結合からなる直鎖状ポリマー、及び、側鎖や末端に有機基を導入した変性シロキサンポリマーが挙げられる。
【0143】
界面活性剤の具体例としては、DOWSIL 8032 ADDITIVE、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)並びに、X-22-4952、X-22-4272、X-22-6266、KF-351A、K354L、KF-355A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、X-22-6191、X-22-4515、KF-6004、KP-341、KF-6001、KF-6002(以上、信越シリコーン株式会社製)、F-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460、TSF-4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、BYK307、BYK323、BYK330(以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0144】
界面活性剤の含有量は、感光性層の全質量に対して、0.0001~10質量%が好ましく、0.001~5質量%がより好ましく、0.005~3質量%が更に好ましい。
界面活性剤は、一種単独で使用してもよく、二種以上使用してもよい。
【0145】
<その他の添加剤>
感光性層は、必要に応じて、その他の添加剤を含んでいてもよい。
その他の添加剤としては、例えば、可塑剤、増感剤、ヘテロ環状化合物、及びアルコキシシラン化合物等が挙げられる。
可塑剤、増感剤、ヘテロ環状化合物、及びアルコキシシラン化合物としては、例えば、国際公開第2018/179640号の段落0097~段落0119に記載されたものが挙げられる。
【0146】
溶媒を含む感光性材料により感光性層を形成した場合、溶媒が残留することもあるが、感光性層中には、溶媒は含まれないのが好ましい。
感光性層における溶媒の含有量は、感光性層の全質量に対し、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が特に好ましく、0.1質量%以下が最も好ましい。
【0147】
また、感光性層は、その他の添加剤として、防錆剤、金属酸化物粒子、酸化防止剤、分散剤、酸増殖剤、現像促進剤、導電性繊維、着色剤、熱ラジカル重合開始剤、熱酸発生剤、紫外線吸収剤、増粘剤、架橋剤、及び有機又は無機の沈殿防止剤等の公知の添加剤を更に含んでいてもよい。
これらの成分の好ましい態様については特開2014-085643号公報の段落0165~0184にそれぞれ記載があり、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0148】
感光性層は、不純物を含んでいてもよい。
不純物としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、銅、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、亜鉛、スズ、ハロゲン、及びこれらのイオンが挙げられる。なかでも、ハロゲン化物イオン、ナトリウムイオン、及びカリウムイオンは不純物として混入し易いため、下記の含有量にすることが特に好ましい。
【0149】
感光性層における不純物の含有量は、感光性層の全質量に対して、80質量ppm以下が好ましく、10質量ppm以下がより好ましく、2質量ppm以下が更に好ましい。感光性層における不純物の含有量は、感光性層の全質量に対して、1質量ppbとしてもよく、0.1質量ppm以上としてもよい。
【0150】
不純物を上記範囲内とする方法としては、例えば、感光性材料の原料として不純物の含有量が少ないものを選択すること、感光性材料の形成時に不純物の混入を防ぐこと、及び洗浄して除去することが挙げられる。このような方法により、不純物量を上記範囲内とすることができる。
【0151】
不純物は、例えば、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法、原子吸光分光法、及びイオンクロマトグラフィー法等の公知の方法で定量できる。
【0152】
また、感光性層における、ベンゼン、ホルムアルデヒド、トリクロロエチレン、1,3-ブタジエン、四塩化炭素、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びヘキサン等の化合物の含有量は、少ないことが好ましい。これら化合物の感光性層における含有量としては、感光性層の全質量に対して、それぞれ、100質量ppm以下が好ましく、20質量ppm以下がより好ましく、4質量ppm以下が更に好ましい。
上記含有量の下限は、感光性層の全質量に対して、それぞれ、10質量ppb以上としてもよく、100質量ppb以上としてもよい。これら化合物は、上記の金属の不純物と同様の方法で含有量を抑制できる。また、公知の測定法により定量できる。
【0153】
感光性層における水の含有量は、パターニング性を向上させる点から、感光性層の全質量に対して、0.01~1.0質量%が好ましく、0.05~0.5質量%がより好ましい。
【0154】
<<感光性層の平均厚さ>>
感光性層の平均厚さとしては、0.5~20μmが好ましい。感光性層の平均厚みが20μm以下であるとパターンの解像度がより優れ、感光性層の平均厚みが0.5μm以上であるとパターン直線性の点から好ましい。感光性層の平均厚さとしては、0.8~15μmがより好ましく、1.0~10μmが更に好ましい。感光性層の平均厚さの具体例として、3.0μm、5.0μm、及び8.0μmが挙げられる。
【0155】
<<感光性層の形成方法>>
感光性層は、感光性層の形成に用いる成分と、溶媒とを含む感光性材料を調製し、塗布及び乾燥して形成できる。各成分を、それぞれ予め溶媒に溶解させた溶液とした後、得られた溶液を所定の割合で混合して組成物を調製することもできる。以上の如くして調製した組成物は、例えば、孔径0.2~30μmのフィルター等を用いて濾過されることが好ましい。
感光性材料を仮支持体又はカバーフィルム上に塗布し、乾燥させることで、感光性層を形成できる。
塗布方法としては特に制限されず、スリット塗布、スピン塗布、カーテン塗布、及びインクジェット塗布等の公知の方法が挙げられる。
また、仮支持体又はカバーフィルム上に後述するその他の層を形成する場合、感光性層は、上記その他の層の上に形成されてもよい。
【0156】
感光性層の365nm透過率としては、パターン形成能がより優れる点、及び/又は、形成されるパターンの透湿性がより低くなる点で、20%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。なお、上限値としては特に制限されないが、100%以下である。
【0157】
また、感光性層の313nm透過率に対する感光性層の365nm透過率の比(感光性層の365nm透過率/感光性層の313nm透過率で表される比)としては、パターン形成能がより優れる点、及び/又は、形成されるパターンの透湿性がより低くなる点で、1以上が好ましく、1.5以上がより好ましい。なお、上限値としては特に制限されないが、例えば、1000以下である。
【0158】
感光性層中、化合物Aが有する酸基はカルボキシ基であるのが好ましい。更に、感光性層は、活性光線又は放射線の照射によって、感光性層中のカルボキシ基の含有量が5モル%以上の減少率で減少するのが好ましい。このような感光性層としては、上述した要件(V1-C)及び要件(W1-C)のいずれかを満たす感光性層であるのがより好ましい。
また、感光性層の実施形態としては、なかでも、上述した、実施形態X-1-a1-C~実施形態X-1-a3-Cの感光性層であるのがより好ましい。
【0159】
感光性層の膜厚1.0μmあたりの可視光透過率は、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上が最も好ましい。
可視光透過率としては、波長400nm~800nmの平均透過率、波長400nm~800nmの透過率の最小値、波長400nmmの透過率、いずれもが上記を満たすことが好ましい。
感光性層の膜厚1.0μmあたりの可視光透過率の好ましい値としては、例えば、87%、92%、98%等を挙げることができる。
感光性層の炭酸ナトリウム1.0質量%水溶液に対する溶解速度は、現像時の残渣抑制の観点から、0.01μm/秒以上が好ましく、0.10μm/秒以上がより好ましく、0.20μm/秒以上がより好ましい。また、パターンのエッジ形状の観点から、5.0μm/秒以下が好ましい。具体的な好ましい数値としては、例えば、1.8μm/秒、1.0μm/秒、0.7μm/秒等を挙げることができる。
1.0質量%炭酸ナトリウム水溶液に対する感光性層の単位時間あたりの溶解速度は、以下のように測定するものとする。
ガラス基板に形成した、溶媒を十分に除去した感光性層(膜厚1.0~10μmの範囲内)に対し、1.0質量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて25℃で、感光性層が溶け切るまでシャワー現像を行う(但し、最長で2分までとする)。
感光性層の膜厚を、感光性層が溶け切るまでに要した時間で割り算することで求める。なお、2分で溶け切らない場合は、それまでの膜厚変化量から同様に計算する。
現像は、(株)いけうち製1/4MINJJX030PPのシャワーノズルを使用し、シャワーのスプレー圧は0.08MPaとする。上記条件の時、単位時間当たりのシャワー流量は1,800mL/minとする。
【0160】
パターン形成性の観点から、感光性層中の直径1.0μm以上の異物の数は、10個/mm以下であることが好ましく、5個/mm以下であることがより好ましい。
異物個数は以下のように測定するものとする。
感光性層の表面の法線方向から、感光性層の面上の任意の5か所の領域(1mm×1mm)を、光学顕微鏡を用いて目視にて観察して、各領域中の直径1.0μm以上の異物の数を測定して、それらを算術平均して異物の数として算出する。
具体的な好ましい数値としては、例えば、0個/mm、1個/mm、4個/mm、8個/mm等を挙げることができる。
現像時の凝集物発生抑止の観点から、1.0質量%炭酸ナトリウムの30℃水溶液1.0リットルに1.0cmの感光性層を溶解させて得られる溶液のヘイズは60%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが最も好ましい。
ヘイズは以下のように測定するものとする。
まず、1.0質量%の炭酸ナトリウム水溶液を準備し、液温を30℃に調整する。炭酸ナトリウム水溶液1.0Lに1.0cmの感光性層を入れる。気泡を混入しないように注意しながら、30℃で4時間撹拌する。撹拌後、感光性樹脂層が溶解した溶液のヘイズを測定する。ヘイズは、ヘイズメーター(製品名「NDH4000」、日本電色工業社製)を用い、液体測定用ユニット及び光路長20mmの液体測定専用セルを用いて測定される。
具体的な好ましい数値としては、例えば、0.4%、1.0%、9%、24%等を挙げることができる。
【0161】
<感光性材料>
感光性材料は、感光性層の形成に用いる成分と、溶媒とを含むことが好ましい。各成分と溶媒とを混合して粘度を調節し、塗布及び乾燥することで、感光性層を好適に形成できる。
【0162】
(感光性層の形成に用いる成分)
感光性層の形成に用いる成分については既述のとおりである。感光性材料中における各成分の含有量の好適数値範囲は、上述した「感光性層の全質量に対する各成分の含有量(質量%)」を「感光性材料の全固形分に対する各成分の含有量(質量%)」に読み替えた好適範囲と同じである。なお、感光性材料の固形分とは、感光性材料中の溶剤以外の成分を意味する。したがって、例えば、「感光性層中、化合物Aの含有量は、感光性層の全質量に対して、25質量%以上が好ましい。」との記載は、「感光性材料中、化合物Aの含有量は、感光性材料の全固形分に対して、25質量%以上が好ましい。」と読み替える。なお、固形分とは、感光性材料の溶媒を除くすべての成分を意図する。また、感光性材料が液状であったとしても、溶媒以外の成分は固形分とみなす。
【0163】
(溶媒)
溶媒としては、通常用いられる溶媒を特に制限なく使用できる。
溶媒としては、有機溶媒が好ましい。
有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(別名:1-メトキシ-2-プロピルアセテート)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、乳酸エチル、乳酸メチル、カプロラクタム、n-プロパノール、2-プロパノール、及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
溶媒としては、メチルエチルケトンとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとの混合溶媒、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとの混合溶媒、又はメチルエチルケトンとプロピレングリコールモノメチルエーテルとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとの混合溶媒が好ましい。
【0164】
感光性材料が溶媒を含む場合、感光性材料の固形分含有量は、5~80質量%が好ましく、8~40質量%がより好ましく、10~30質量%が更に好ましい。つまり、感光性材料が溶媒を含む場合、溶媒の含有量は、感光性材料の全質量に対して、20~95質量%が好ましく、60~95質量%がより好ましく、70~95質量%が更に好ましい。
溶媒は、一種単独で使用してもよく、二種以上使用してもよい。
【0165】
感光性材料が溶媒を含む場合、感光性材料の粘度(25℃)は、塗布性の点から、1~50mPa・sが好ましく、2~40mPa・sがより好ましく、3~30mPa・sが更に好ましい。
粘度は、例えば、VISCOMETER TV-22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて測定する。
感光性材料が溶媒を含む場合、感光性材料の表面張力(25℃)は、塗布性の点から、5~100mN/mが好ましく、10~80mN/mがより好ましく、15~40mN/mが更に好ましい。
表面張力は、例えば、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学(株)製)を用いて測定する。
【0166】
溶媒としては、米国出願公開2005/282073号明細書の段落0054及び0055に記載のSolventを用いることもでき、この明細書の内容は本明細書に組み込まれる。
また、溶媒として、必要に応じて沸点が180~250℃である有機溶媒(高沸点溶媒)を使用することもできる。
【0167】
<<<その他の層>>>
また、仮支持体又はカバーフィルム上に後述する高屈折率層及び/又はその他の層を形成する場合、感光性層は、上記高屈折率層及び/又はその他の層の上に形成されてもよい。
【0168】
<<高屈折率層>>
転写フィルムは、更に、高屈折率層を有することも好ましい。
高屈折率層は、感光性層に隣接して配置されることが好ましく、感光性層からみて仮支持体とは反対側に配置されることも好ましい。
高屈折率層は、波長550nmにおける屈折率が1.50以上である層であること以外は特に制限はない。
高屈折率層の上記屈折率は、1.55以上が好ましく、1.60以上がより好ましい。
高屈折率層の屈折率の上限は特に制限されないが、2.10以下が好ましく、1.85以下がより好ましく、1.78以下が更に好ましく、1.74以下が特に好ましい。
また、高屈折率層の屈折率は、感光性層の屈折率よりも高いことが好ましい。
【0169】
高屈折率層は、光硬化性(即ち、感光性)を有してもよいし、熱硬化性を有していてもよいし、光硬化性及び熱硬化性の両方を有してもよい。
高屈折率層が感光性を有する態様は、転写後において、基材上に転写された感光性層及び高屈折率層を、一度のフォトリソグラフィによってまとめてパターニングできるという利点を有する。
高屈折率層は、アルカリ可溶性(例えば、弱アルカリ水溶液に対する溶解性)を有することが好ましい。
また、高屈折率層は、透明層であることが好ましい。
【0170】
高屈折率層の膜厚としては、500nm以下が好ましく、110nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましい。
また、高屈折率層の膜厚は、20nm以上が好ましく、55nm以上がより好ましく、60nm以上が更に好ましく、70nm以上が特に好ましい。
【0171】
高屈折率層は、転写後において、透明電極パターン(好ましくはITOパターン)と感光性層との間に挟まれることにより、透明電極パターン及び感光性層とともに積層体を形成する場合がある。この場合、透明電極パターンと高屈折率層との屈折率差、及び高屈折率層と感光性層との屈折率差を小さくすることにより、光反射がより低減される。これにより、透明電極パターンの隠蔽性がより向上する。
例えば、透明電極パターン、高屈折率層、及び感光性層をこの順に積層した場合において、透明電極パターン側からみた時に、この透明電極パターンが視認されにくくなる。
【0172】
高屈折率層の屈折率は、透明電極パターンの屈折率に応じて調整することが好ましい。
透明電極パターンの屈折率が、例えばIn及びSnの酸化物(ITO)を用いて形成した場合のように1.8~2.0の範囲である場合は、高屈折率層の屈折率は、1.60以上が好ましい。この場合の高屈折率層の屈折率の上限は特に制限されないが、2.1以下が好ましく、1.85以下がより好ましく、1.78以下が更に好ましく、1.74以下が特に好ましい。
透明電極パターンの屈折率が、例えばIn及びZnの酸化物(IZO;Indium Zinc Oxide)を用いて形成した場合のように2.0を超える場合は、高屈折率層の屈折率は、1.70以上1.85以下が好ましい。
【0173】
高屈折率層の屈折率を制御する方法は特に制限されず、例えば、所定の屈折率の樹脂を単独で用いる方法、樹脂と金属酸化物粒子又は金属粒子とを用いる方法、及び金属塩と樹脂との複合体を用いる方法、等が挙げられる。
【0174】
金属酸化物粒子又は金属粒子の種類としては、特に制限はなく、公知の金属酸化物粒子又は金属粒子を使用できる。金属酸化物粒子又は金属粒子における金属には、B、Si、Ge、As、Sb、及びTe等の半金属も含まれる。
【0175】
粒子(金属酸化物粒子又は金属粒子)の平均一次粒子径は、例えば、透明性の観点から、1~200nmであることが好ましく、3~80nmであることがより好ましい。
粒子の平均一次粒子径は、電子顕微鏡を用いて任意の粒子200個の粒子径を測定し、測定結果を算術平均することにより算出される。なお、粒子の形状が球形でない場合には、最も長い辺を粒子径とする。
金属酸化物粒子としては、具体的には、酸化ジルコニウム粒子(ZrO粒子)、Nb粒子、酸化チタン粒子(TiO粒子)、及び二酸化珪素粒子(SiO粒子)、及びこれらの複合粒子よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
これらの中でも、金属酸化物粒子としては、例えば、高屈折率層の屈折率を1.6以上に調整しやすいという観点から、酸化ジルコニウム粒子及び酸化チタン粒子よりなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0176】
高屈折率層が金属酸化物粒子を含む場合、高屈折率層は、金属酸化物粒子を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0177】
粒子(金属酸化物粒子又は金属粒子)の含有量は、電極パターン等の被隠蔽物の隠蔽性が良好になり、被隠蔽物の視認性を効果的に改善できる点で、高屈折率層の全質量に対し、1~95質量%であることが好ましく、20~90質量%であることがより好ましく、40~85質量%であることが更に好ましい。
金属酸化物粒子として酸化チタンを用いる場合、酸化チタン粒子の含有量は、高屈折率層の全質量に対し、1~95質量%であることが好ましく、20~90質量%であることがより好ましく、40~85質量%であることが更に好ましい。
【0178】
金属酸化物粒子の市販品としては、焼成酸化ジルコニウム粒子(CIKナノテック株式会社製、製品名:ZRPGM15WT%-F04)、焼成酸化ジルコニウム粒子(CIKナノテック株式会社製、製品名:ZRPGM15WT%-F74)、焼成酸化ジルコニウム粒子(CIKナノテック株式会社製、製品名:ZRPGM15WT%-F75)、焼成酸化ジルコニウム粒子(CIKナノテック株式会社製、製品名:ZRPGM15WT%-F76)、酸化ジルコニウム粒子(ナノユースOZ-S30M、日産化学工業(株)製)酸化ジルコニウム粒子(ナノユースOZ-S30K、日産化学工業(株)製)が挙げられる。
【0179】
高屈折率層は、屈折率が1.50以上(より好ましくは1.55以上、更に好ましくは1.60以上)である無機粒子(金属酸化物粒子又は金属粒子)、屈折率が1.50以上(より好ましくは1.55以上、更に好ましくは1.60以上)である樹脂、及び屈折率が1.50以上(より好ましくは1.55以上、更に好ましくは1.60以上)である重合性化合物からなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
この態様であると、高屈折率層の屈折率を1.50以上(より好ましくは1.55以上、特に好ましくは1.60以上)に調整し易い。
【0180】
また、高屈折率層は、バインダーポリマー、重合性モノマー、及び粒子を含むことが好ましい。
高屈折率層の成分については、特開2014-108541号公報の段落0019~0040及び0144~0150に記載されている硬化性透明樹脂層の成分、特開2014-010814号公報の段落0024~0035及び0110~0112に記載されている透明層の成分、国際公開第2016/009980号の段落0034~段落0056に記載されているアンモニウム塩を有する組成物の成分、等を参照できる。
【0181】
また、高屈折率層は、金属酸化抑制剤を含むことも好ましい。
金属酸化抑制剤は、高屈折率層と直接接する部材(例えば、基材上に形成された導電性部材)を表面処理することができる化合物である(ただし、化合物βを除く)。
高屈折率層が金属酸化抑制剤を含む場合には、高屈折率層を基材(即ち、転写対象物)上に転写する際に、高屈折率層と直接接する部材(例えば、基材上に形成された導電性部材)を表面処理できる。この表面処理は、高屈折率層と直接接する部材に対し金属酸化抑制機能(保護性)を付与する。
【0182】
金属酸化抑制剤は、窒素原子を含む芳香環を有する化合物であることが好ましい。窒素原子を含む芳香環を有する化合物は、置換基を有してもよい。
金属酸化抑制剤は、環員原子として窒素原子を有する5員環の芳香環を有する化合物であることが好ましい。
窒素原子を含む芳香環としては、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、又はこれらのいずれか1つと他の芳香環との縮合環が好ましく、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環又はこれらのいずれか1つと他の芳香環との縮合環であることがより好ましい。
縮合環を形成する「他の芳香環」は、単素環でも複素環でもよいが、単素環が好ましく、ベンゼン環又はナフタレン環がより好ましく、ベンゼン環が更に好ましい。
【0183】
金属酸化抑制剤としては、イミダゾール、ベンズイミダゾール、テトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、メルカプトチアジアゾール、又はベンゾトリアゾールが好ましく、イミダゾール、ベンズイミダゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール又はベンゾトリアゾールがより好ましい。
金属酸化抑制剤としては市販品を用いてもよく、市販品としては、例えばベンゾトリアゾールを含む城北化学工業(株)製BT120を好ましく使用できる。
【0184】
高屈折率層が金属酸化抑制剤を含む場合、金属酸化抑制剤の含有量は、高屈折率層の全固形分に対し、0.1~20質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましく、1~5質量%が更に好ましい。
【0185】
高屈折率層は、上述した成分以外のその他の成分を含有していてもよい。
高屈折率層が含み得るその他の成分としては、感光性層が含み得る得るその他の成分と同様の成分が挙げられる。
高屈折率層は、界面活性剤を含むことも好ましい。
【0186】
高屈折率層の形成方法には特に限定はない。
高屈折率層の形成方法としては、例えば、仮支持体上に形成された上述の感光性層上に、水系溶媒を含む態様の高屈折率層形成用組成物を塗布し、必要に応じ乾燥させることにより形成する方法が挙げられる。
【0187】
高屈折率層形成用組成物は、上述した高屈折率層の各成分を含有し得る。
高屈折率層形成用組成物は、例えば、バインダーポリマー、重合性モノマー、粒子、及び水系溶媒を含む。
また、高屈折率層形成用組成物としては、国際公開第2016/009980号の段落0034~0056に記載されている、アンモニウム塩を有する組成物も好ましい。
【0188】
感光性層及び高屈折率層は無彩色であることが好ましい。具体的には、全反射(入射角8°、光源:D-65(2°視野))が、CIE1976(L、a、b)色空間において、L値は10~90であることが好ましく、a値は-1.0~1.0であることが好ましく、b値は-1.0~1.0であることが好ましい。
【0189】
<<カバーフィルム>>
本発明の転写フィルムは、更に、感光性層からみて仮支持体とは反対側に、カバーフィルムを有していてもよい。
本発明の転写フィルムが高屈折率層を備える場合には、カバーフィルムは、高屈折率層からみて仮支持体とは反対側(即ち、感光性層とは反対側)に配置されることが好ましい。この場合、転写フィルムは、例えば「仮支持体/感光性層/高屈折率層/カバーフィルム」の順で積層された積層体である。
【0190】
カバーフィルムは、カバーフィルム中に含まれる直径80μm以上のフィッシュアイ数が5個/m以下であることが好ましい。なお、「フィッシュアイ」とは、材料を熱溶融し、混練、押し出し、及び/又は、2軸延伸及びキャスティング法等の方法によりフィルムを製造する際に、材料の異物、未溶解物、及び/又は、酸化劣化物等がフィルム中に取り込まれたものである。
【0191】
カバーフィルムに含まれる直径3μm以上の粒子の数が30個/mm以下が好ましく、10個/mm以下がより好ましく、5個/mm以下が更に好ましい。これにより、カバーフィルムに含まれる粒子に起因する凹凸が感光性樹脂層に転写されることにより生じる欠陥を抑制できる。
【0192】
カバーフィルムの表面の算術平均粗さRaは、0.01μm以上が好ましく、0.02μm以上がより好ましく、0.03μm以上が更に好ましい。Raがこのような範囲内であれば、例えば、転写フィルムが長尺状である場合に、転写フィルムを巻き取る際の巻き取り性を良好にできる。
また、転写時の欠陥抑制の観点から、Raは、0.50μm未満が好ましく、0.40μm以下がより好ましく、0.30μm以下が更に好ましい。
【0193】
カバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、及びポリカーボネートフィルムが挙げられる。
カバーフィルムとしては、例えば、特開2006-259138号公報の段落0083~0087及び0093に記載のものを用いてもよい。
【0194】
カバーフィルムとしては、例えば、王子エフテックス(株)製のアルファン(登録商標)FG-201、王子エフテックス(株)製のアルファン(登録商標)E-201F、東レフィルム加工(株)製のセラピール(登録商標)25WZ、又は、東レ(株)製のルミラー(登録商標)16QS62(16KS40)を使用してもよい。
【0195】
<<その他の層>>
転写フィルムは、上述した層以外のその他の層(以下、「その他の層」ともいう。)を含んでいてもよい。その他の層としては、例えば、中間層、及び熱可塑性樹脂層等が挙げられ、公知のものを適宜採用できる。
【0196】
熱可塑性樹脂層の好ましい態様については特開2014-085643号公報の段落0189~0193、及び上記以外の他の層の好ましい態様については特開2014-085643号公報の段落0194~0196にそれぞれ記載があり、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0197】
<<<転写フィルムの製造方法>>>
転写フィルムの製造方法は、特に制限されず、公知の製造方法が適用できる。
転写フィルムの製造方法としては、仮支持体上に、溶媒を含む感光性材料を塗布及び乾燥することによって感光性層を形成する工程を含むことが好ましく、上記感光性層を形成する工程の後に、更に、上記感光性層上にカバーフィルムを配置する工程を含むことがより好ましい。
また、上記感光性層を形成する工程の後に、更に、高屈折率層形成用組成物を塗布及び乾燥することによって高屈折率層を形成する工程を含んでもよい。この場合、上記高屈折層を形成する工程の後に、更に、上記高屈折層にカバーフィルムを配置する工程を含むことがより好ましい。
【0198】
[パターン形成方法]
本発明のパターン形成方法としては、上述の転写フィルムを使用したパターン形成方法であれば特に制限されないが、基材上に感光性層を形成する工程と、上記感光性層をパターン露光する工程と、露光された上記感光性層を現像(アルカリ現像又は有機溶剤現像)する工程と、をこの順に含むことが好ましい。なお、上記現像が有機溶剤現像である場合、得られたパターンを更に露光する工程を含むのが好ましい。
本発明のパターン形成方法の具体的な実施形態としては、上述した実施形態1及び実施形態2のパターン形成方法が挙げられる。
以下において、実施形態1及び実施形態2のパターン形成方法の各工程について詳述する。
【0199】
〔実施形態1のパターン形成方法〕
実施形態1のパターン形成方法は、工程X1~工程X3を有する。なお、下記工程X2は、露光により、感光性層中の化合物Aに由来する酸基の含有量を減少させる工程に該当する。但し、工程X3の現像液が有機溶剤系現像液である場合、工程X3の後にさらに工程X4を有する。
工程X1:転写フィルム中の感光性層の仮支持体側とは反対側の表面を基材に接触させて、転写フィルムと基材とを貼り合わせる工程
工程X2:感光性層をパターン露光する工程
工程X3:感光性層を、現像液を用いて現像する工程
工程X4:工程X3の現像工程の後に、更に、現像により形成されたパターンを露光する工程
【0200】
工程X3の現像液としてアルカリ現像液を使用する場合は、上記感光性層は実施形態X-1-a1及び実施形態X-1-a2の感光性層であることが好ましい。工程X3の現像液として有機溶剤系現像液を使用する場合は、上記感光性層は実施形態X-1-a1の感光性材料であることが好ましい。
実施形態1のパターン形成方法は、上述した実施形態X-1-a1及び実施形態X-1-a2の感光性層を含む転写フィルムに適用されるのが好ましい。
【0201】
<<<工程X1>>>
実施形態1のパターン形成方法は、転写フィルム中の感光性層の仮支持体側とは反対側の表面を基材に接触させて、転写フィルムと基材とを貼り合わせる工程を有する。
【0202】
<<基材>>
基材としては特に制限されず、例えば、ガラス基板、シリコン基板、及び樹脂基板、並びに、導電層を有する基板が挙げられる。導電層を有する基板が含む基板としては、ガラス基板、シリコン基板、及び樹脂基板が挙げられる。
上記基材は、透明であることが好ましい。
上記基材の屈折率は、1.50~1.52であることが好ましい。
上記基材は、ガラス基板等の透光性基板で構成されていてもよく、例えば、コーニング社のゴリラガラスに代表される強化ガラス等も使用できる。また、上記基材に含まれる材料としては、特開2010-086684号公報、特開2010-152809号公報、及び特開2010-257492号公報に用いられている材料も好ましい。
上記基材が樹脂基板を含む場合、樹脂基板としては、光学的な歪みが小さい及び/又は透明度が高い樹脂フィルムを使用することがより好ましい。具体的な素材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、及びシクロオレフィンポリマー等が挙げられる。
【0203】
導電層を有する基板が含む基板としては、ロールツーロール方式で製造する点から、樹脂基板が好ましく、樹脂フィルムがより好ましい。
【0204】
導電層としては、一般的な回路配線又はタッチパネル配線に用いられる任意の導電層が挙げられる。
導電層としては、導電性及び細線形成性の点から、金属層、導電性金属酸化物層、グラフェン層、カーボンナノチューブ層、及び導電ポリマー層からなる群より選ばれる1種以上の層が好ましく、金属層がより好ましく、銅層又は銀層が更に好ましい。
また、導電層を有する基板中の導電層は、1層であっても、2層以上であってもよい。
導電層を有する基板が、導電層を2層以上含む場合、各導電層は、互いに異なる材質の導電層であることが好ましい。
導電層の材料としては、金属単体及び導電性金属酸化物等が挙げられる。
金属単体としては、Al、Zn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mo、Ag、及びAu等が挙げられる。
導電性金属酸化物としては、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、及びSiO等が挙げられる。なお、「導電性」とは、体積抵抗率が1×10Ωcm未満であることをいい、体積抵抗率が1×10Ωcm未満が好ましい。
【0205】
導電層を有する基板中の導電層が2層以上である場合、導電層のうち少なくとも一つの導電層は導電性金属酸化物を含むことが好ましい。
導電層としては、静電容量型タッチパネルに用いられる視認部のセンサーに相当する電極パターン又は周辺取り出し部の配線であることが好ましい。
また、導電層は、透明層であることが好ましい。
【0206】
<<工程X1の手順>>
工程X1は、ロール等による加圧及び加熱による貼り合わせ工程であるのが好ましい。
貼り合わせには、ラミネーター、真空ラミネーター、及びオートカットラミネーター等の公知のラミネーターを使用できる。
工程X1工程は、ロールツーロール方式により行われることが好ましく、このため、転写フィルムを貼り合わせる対象となる基材は、樹脂フィルム、又は導電性層を有する樹脂フィルムであるのが好ましい。
以下において、ロールツーロール方式について説明する。
ロールツーロール方式とは、基材として、巻き取り及び巻き出しが可能な基材を用い、本発明のパターン形成方法に含まれるいずれかの工程の前に、基材を巻き出す工程(「巻き出し工程」ともいう。)と、いずれかの工程の後に、基材を巻き取る工程(「巻き取り工程」ともいう。)と、を含み、少なくともいずれかの工程(好ましくは、全ての工程、又は加熱工程以外の全ての工程)を、基材を搬送しながら行う方式をいう。
巻き出し工程における巻き出し方法、及び巻き取り工程における巻取り方法としては、特に制限されず、ロールツーロール方式を適用する製造方法において、公知の方法を用いればよい。
【0207】
<<工程X2>>
実施形態1のパターン形成方法は、上記工程X1の後、感光性層をパターン露光する工程(工程X2)を含む。工程X2は、露光により、感光性層中の化合物Aに由来する酸基の含有量を減少させる工程に該当する。より具体的には、感光性層中の化合物β(好ましくは化合物B)中の特定構造S0(好ましくは特定構造S1)(要件V01の場合)及び化合物A中の特定構造S0(好ましくは特定構造S1)(要件W01の場合)を励起させる波長の光を用いて、感光性層をパターン露光することが好ましい。
【0208】
露光工程において、パターンの詳細な配置及び具体的サイズは特に制限されない。
例えば、実施形態1のパターン形成方法を回路配線の製造に適用する場合、実施形態1のパターン形成方法により製造される回路配線を有する入力装置を備えた表示装置(例えばタッチパネル)の表示品質を高め、また、取り出し配線の占める面積をできるだけ小さくできる点から、パターンの少なくとも一部(特に、タッチパネルの電極パターン及び取り出し配線の部分に相当する部分)は100μm以下の細線であることが好ましく、70μm以下の細線であることがより好ましい。
【0209】
露光に使用する光源としては、感光性層中の化合物Aに由来する酸基の含有量を減少させることが可能な波長域の光(感光性層中の化合物β(好ましくは化合物B)中の特定構造S0(好ましくは特定構造S1)(要件V01の場合)及び化合物A中の特定構造S0(好ましくは特定構造S1)(要件W01の場合)を励起させる波長の光。例えば、感光性層が上述の感光性層である場合、254nm、313nm、365nm、405nm等の波長域の光が挙げられる。)を照射するものであれば、適宜選定し得る。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、及びLED(Light Emitting Diode)等が挙げられる。
【0210】
露光量としては、10~10000mJ/cmが好ましく、50~3000mJ/cmがより好ましい。
【0211】
工程X2においては、感光性層から仮支持体を剥離した後にパターン露光してもよく、仮支持体を剥離する前に、仮支持体を介してパターン露光し、その後、仮支持体を剥離してもよい。感光性層とマスクとの接触によるマスク汚染の防止、及びマスクに付着した異物による露光への影響を避けるためには、仮支持体を剥離せずにパターン露光することが好ましい。なお、パターン露光は、マスクを介した露光でもよいし、レーザー等を用いたダイレクト露光でもよい。
なお、後述する工程X3の前には、感光性層から仮支持体は剥離する。
【0212】
<<工程X3>>
実施形態1のパターン形成方法は、上記工程X2の後、パターン露光された感光性層を、現像液(アルカリ現像液又は有機溶剤系現像液)を用いて現像する工程(工程X3)を含む。
工程X2を経た感光性層は、露光部の感光性層中の酸基の含有量が減少することにより、露光部と未露光部との間で現像液に対する溶解性の差(溶解コントラスト)が生じている。感光性層に溶解コントラストが形成されることで、工程X3においてパターンの形成が可能となる。なお、上記工程X3の現像液がアルカリ現像液である場合、上記工程X3を実施することで、未露光部が除去されてネガパターンが形成される。一方、上記工程X3の現像液が有機溶剤系現像液である場合、上記工程X3を実施することで露光部が除去されてポジパターンが形成される。得られたポジパターンに対しては、後述する工程X4により、化合物Aに由来する酸基の含有量を減少させる処理を実施する必要がある。
【0213】
(アルカリ現像液)
アルカリ現像液としては、感光性樹脂層の未露光部を除去することができれば特に制限はなく、例えば、特開平5-072724号公報に記載の現像液等、公知の現像液を使用できる。
アルカリ現像液としては、例えば、pKa=7~13の化合物を0.05~5mol/L(リットル)の濃度で含むアルカリ水溶液系の現像液が好ましい。
また、アルカリ現像液は、更に、水溶性の有機溶剤及び界面活性剤等を含んでいてもよい。アルカリ現像液としては、例えば、国際公開第2015/093271号の段落0194に記載の現像液が好ましい。
【0214】
(有機溶剤系現像液)
有機溶剤系現像液としては、感光性樹脂層の露光部を除去することができれば特に制限はなく、例えば、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、及び炭化水素系溶剤等の有機溶剤を含む現像液を使用できる。
有機溶剤系現像液において、有機溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤又は水と混合し使用してもよい。但し、本発明の効果を十二分に奏するためには、有機溶剤系現像液全体としての含水率が10質量%未満であることが好ましく、実質的に水分を含有しないことがより好ましい。有機溶剤系現像液における有機溶剤(複数混合の場合は合計)の濃度は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、85質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が特に好ましく、95質量%以上が最も好ましい。なお、上限値としては、例えば、100質量%以下である。
【0215】
現像方式としては特に制限はなく、パドル現像、シャワー現像、スピン現像、及びディップ現像等のいずれでもよい。ここで、シャワー現像について説明すると、露光後の感光性樹脂層に現像液をシャワーにより吹き付けることにより、不要部分を除去できる。また、現像の後に、洗浄剤等をシャワーにより吹き付け、ブラシ等で擦りながら、現像残渣を除去することも好ましい。現像液の液温度としては、20~40℃が好ましい。
【0216】
実施形態1のパターン形成方法は、更に、現像して得られた感光性層を含むパターンを加熱処理するポストベーク工程を有していてもよい。
ポストベークは8.1~121.6kPaの環境下で行うことが好ましく、50.66kPa以上の環境下で行うことがより好ましい。一方、111.46kPa以下の環境下で行うことがより好ましく、101.3kPa以下の環境下で行うことが更に好ましい。
ポストベークの温度は、80~250℃が好ましく、110~170℃がより好ましく、130~150℃が更に好ましい。
ポストベークの時間は、1~60分が好ましく、2~50分がより好ましく、5~40分が更に好ましい。
ポストベークは、空気環境下で行っても、窒素置換環境下で行ってもよい。
【0217】
<<工程X4>>
上記工程X3の現像液が有機溶剤系現像液である場合、得られたポジパターンに対して工程X4を実施する。工程X4は、工程X3で得られたポジパターンを露光し、化合物Aに由来する酸基の含有量を減少させる工程に該当する。より具体的には、感光性層中の化合物β(好ましくは化合物B)中の特定構造S0(好ましくは特定構造S1)(要件V01の場合)及び化合物A中の特定構造S0(好ましくは特定構造S1)(要件W01の場合)を励起させる波長の光を用いて、感光性層をパターン露光することが好ましい。
【0218】
露光に使用する光源及び露光量としては、工程X1にて述べた光源及び露光量と同じであり、好適態様も同じである。
【0219】
〔実施形態2のパターン形成方法〕
実施形態2のパターン形成方法は、工程Y1、工程Y2P、及び工程Y3をこの順で有し、さらに、工程Y2Q(工程Y2Pにおいて露光された感光性層を、更に、露光する工程)を、工程Y2Pと工程Y3との間、又は、工程Y3の後に有する。
工程Y1:転写フィルム中の感光性層の仮支持体側とは反対側の表面を基材に接触させて、転写フィルムと上記基材とを貼り合わせる工程
工程Y2P:感光性層を、露光する工程
工程Y3:感光性層を、を用いて現像する工程
【0220】
実施形態2のパターン形成方法としては、上述したとおり、感光性層が、更に、光重合開始剤及び重合性化合物を含む場合に適用可能な態様に該当する。したがって、実施形態2のパターン形成方法は、上述した実施形態X-1-a3の感光性層を含む転写フィルムに適用されるのが好ましい。
以下において、実施形態2のパターン形成方法について説明するが、工程Y1及び工程Y3については、工程X1及び工程X3とそれぞれ同様であり、説明を割愛する。
なお、工程Y3は、少なくとも工程Y2Pよりも後に実施されていればよく、工程Y2Pと工程Y2Qとの間に工程Y3が実施されていてもよい。
なお、実施形態2のパターン形成方法は、工程Y3の後、更に、現像して得られた感光性層を含むパターンを加熱処理するポストベーク工程を有していてもよい。ポストベーク工程については、上述した実施形態1のパターン形成方法が有していてもよいポストベーク工程と同様の方法により実施できる。工程Y2Pと工程Y2Qとの間に工程Y3が実施される場合、ポストベーク工程は、工程Y3の後に実施されていれば、工程Y2Qの前に実施されていてもよいし、工程Y2Qの後に実施されていてもよい。
【0221】
<<工程Y2P、工程Y2Q>>
実施形態2のパターン形成方法は、工程Y1を経た感光性層を露光する工程(工程Y2P)と、露光された感光性層を、更に、露光する工程(工程Y2Q)とを含む。
露光処理(工程Y2P及び工程Y2Q)のうち一方は、主に、露光により化合物Aに由来する酸基の含有量を減少させるための露光であり、露光処理(工程Y2P及び工程Y2Q)のうち他方は、主に、光重合開始剤に基づく重合性化合物の重合反応を生起するための露光に該当する。また、露光処理(工程Y2P及び工程Y2Q)は、それぞれ、全面露光及びパターン露光のいずれであってもよいが、露光処理のうちのいずれかはパターン露光である。
例えば、工程Y2Pが露光により化合物Aに由来する酸基の含有量を減少させるためのパターン露光である場合、工程Y3で使用される現像液はアルカリ現像液であってもよく有機溶剤系現像液であってもよい。ただし、有機溶剤系現像液で現像をする場合、工程Y2Qは、通常、工程Y3の後に実施され、現像された感光性層(パターン)において、光重合開始剤に基づく重合性化合物の重合反応を生起されるとともに、化合物Aに由来する酸基(好ましくはカルボキシ基)の含有量が減少する。
また、例えば、工程Y2Pが光重合開始剤に基づく重合性化合物の重合反応を生起するためのパターン露光である場合、工程Y3で使用される現像液は通常アルカリ現像液である。この場合、工程Y2Qは、工程Y3の前後のいずれで実施されてもよく、工程Y3の前に実施される場合の工程Y2Qは、通常パターン露光である。
【0222】
工程Y2P及び工程Y2Qにおいて、露光に使用する光源としては、感光性層中の化合物Aに由来する酸基の含有量を減少させることが可能な波長域の光(感光性層中の化合物β(好ましくは化合物B)中の特定構造S0(好ましくは特定構造S1)(要件V01の場合)及び化合物A中の特定構造S0(好ましくは特定構造S1)(要件W01の場合)を励起させる波長の光。例えば、感光性層が上述の感光性層である場合、254nm、313nm、365nm、405nm等の波長域の光が挙げられる。)、又は、感光性層中の光重合開始剤に基づく重合性化合物の反応を生起させることが可能な波長域の光(光重合開始剤を感光させる波長の光。例えば、254nm、313nm、365nm、405nm等)を照射するものであれば、適宜選定し得る。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、及びLED(Light Emitting Diode)等が挙げられる。
【0223】
感光性層中の化合物Aに由来する酸基の含有量を減少させるための露光において、露光量としては、10~10000mJ/cmが好ましく、50~3000mJ/cmがより好ましい。
感光性層中の光重合開始剤に基づく重合性化合物の反応を生起させるための露光において、露光量としては、5~200mJ/cmが好ましく、10~150mJ/cmがより好ましい。
【0224】
工程Y2P及び工程Y2Qにおいては、感光性層から仮支持体を剥離した後にパターン露光してもよく、仮支持体を剥離する前に、仮支持体を介してパターン露光し、その後、仮支持体を剥離してもよい。感光性層とマスクとの接触によるマスク汚染の防止、及びマスクに付着した異物による露光への影響を避けるためには、仮支持体を剥離せずにパターン露光することが好ましい。なお、パターン露光は、マスクを介した露光でもよいし、レーザー等を用いたダイレクト露光でもよい。
【0225】
露光工程において、パターンの詳細な配置及び具体的サイズは特に制限されない。
例えば、実施形態2のパターン形成方法を回路配線の製造に適用する場合、実施形態2のパターン形成方法により製造される回路配線を有する入力装置を備えた表示装置(例えばタッチパネル)の表示品質を高め、また、取り出し配線の占める面積をできるだけ小さくできる点から、パターンの少なくとも一部(特に、タッチパネルの電極パターン及び取り出し配線の部分に相当する部分)は100μm以下の細線であることが好ましく、70μm以下の細線であることがより好ましい。
【0226】
<<好適態様>>
実施形態2のパターン形成方法としては、なかでも、工程Y1、工程Y2A、工程Y3、及び工程Y2Bをこの順に有しているのが好ましい。なお、工程Y2A及び工程Y2Bは、一方は、露光により化合物Aに由来する酸基の含有量を減少させるための露光工程であり、他方は、光重合開始剤に基づく重合性化合物の重合反応を生起するための露光工程に該当する。
工程Y1:転写フィルム中の感光性層の仮支持体側とは反対側の表面を基材に接触させて、転写フィルムと上記基材とを貼り合わせる工程
工程Y2A:感光性層をパターン露光する工程
工程Y3:感光性層を、アルカリ現像液を用いて現像して、パターン化された感光性層を形成する工程
工程Y2B:パターン化された感光性層を露光する工程
【0227】
上記工程Y2Aは、光重合開始剤に基づく重合性化合物の重合反応を生起するための露光工程であるのが好ましく、上記工程Y2Bは、露光により化合物Aに由来する酸基の含有量を減少させるための露光工程であるのが好ましい。
【0228】
〔実施形態1及び実施形態2のパターン形成方法が有していてもよい任意の工程〕
実施形態1及び実施形態2のパターン形成方法は、上述した以外の任意の工程(その他の工程)を含んでもよい。例えば、以下のような工程が挙げられるが、これらの工程に制限されない。
【0229】
<<カバーフィルム剥離工程>>
上記パターン形成方法は、転写フィルムがカバーフィルムを有する場合、上記転写フィルムのカバーフィルムを剥離する工程(以下、「カバーフィルム剥離工程」ともいう。)を含むことが好ましい。カバーフィルムを剥離する方法は特に制限されず、公知の方法を適用できる。
【0230】
<<可視光線反射率を低下させる工程>>
基板が導電層を有する基板である場合、上記パターン形成方法は、更に、導電層の可視光線反射率を低下させる処理をする工程を含んでいてもよい。なお、上記基板が複数の導電層を有する基板である場合、可視光線反射率を低下させる処理は、一部の導電層に対して実施してもよいし、全ての導電層に対して実施してもよい。
可視光線反射率を低下させる処理としては、酸化処理が挙げられる。例えば、銅を酸化処理して酸化銅とすることで、黒化することにより、導電層の可視光線反射率を低下させることができる。
可視光線反射率を低下させる処理の好ましい態様については、特開2014-150118号公報の段落0017~0025、並びに、特開2013-206315号公報の段落0041、段落0042、段落0048及び段落0058に記載があり、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0231】
<<エッチング工程>>
基板が導電層を有する基板である場合、上記パターン形成方法は、工程X3(又は工程X4)及び工程Y3により形成されたパターンをエッチングレジスト膜として、このエッチングレジスト膜が配置されていない領域における導電層をエッチング処理する工程(エッチング工程)を含むことが好ましい。
エッチング処理の方法としては、特開2010-152155号公報の段落0048~0054等に記載のウェットエッチングによる方法、及び公知のプラズマエッチング等のドライエッチングによる方法等を適用できる。
【0232】
例えば、エッチング処理の方法としては、一般的に行われている、エッチング液に浸漬するウェットエッチング法が挙げられる。ウェットエッチングに用いられるエッチング液は、エッチングの対象に合わせて酸性タイプ又はアルカリ性タイプのエッチング液を適宜選択すればよい。
酸性タイプのエッチング液としては、塩酸、硫酸、フッ酸、及びリン酸等の酸性成分単独の水溶液、並びに、酸性成分と塩化第二鉄、フッ化アンモニウム、又は過マンガン酸カリウム等の塩との混合水溶液等が例示される。酸性成分は、複数の酸性成分を組み合わせた成分を使用してもよい。
アルカリ性タイプのエッチング液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、有機アミン、及びテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の有機アミンの塩等のアルカリ成分単独の水溶液、並びに、アルカリ成分と過マンガン酸カリウム等の塩との混合水溶液等が例示される。アルカリ成分は、複数のアルカリ成分を組み合わせた成分を使用してもよい。
【0233】
エッチング液の温度は特に制限されないが、45℃以下が好ましい。本発明の回路配線の製造方法において、エッチングレジスト膜として使用される、工程X3(又は工程X4)及び工程Y3により形成されたパターンは、45℃以下の温度域における酸性及びアルカリ性のエッチング液に対して特に優れた耐性を発揮することが好ましい。上記構成により、エッチング工程中にエッチングレジスト膜が剥離することが防止され、エッチングレジスト膜の存在しない部分が選択的にエッチングされることになる。
エッチング工程後、工程ラインの汚染を防ぐために、必要に応じて、エッチング処理された基板を洗浄する洗浄工程、及び洗浄された基板を乾燥する乾燥工程を行ってもよい。
【0234】
<<その他の実施形態>>
上記パターン形成方法は、両方の表面にそれぞれ複数の導電層を有する基板を用い、両方の表面に形成された導電層に対して逐次又は同時にパターン形成することも好ましい。
このような構成により、基板の一方の表面に第一の導電パターン、もう一方の表面に第二の導電パターンを形成できる。ロールツーロールで基材の両面から形成することも好ましい。
【0235】
〔パターン〕
上述した実施形態1及び実施形態2のパターン形成方法により形成されるパターンは、酸基の含有量が低減されているため、極性が低く、透湿性及び比誘電率が低い。
上記パターン中の酸基の含有量は、工程X1又は工程Y1で形成される感光性層中の酸基の含有量に対して、5モル%以上減少していることが好ましく、10モル%以上減少していることがより好ましく、20モル%以上減少していることが更により好ましく、31モル%以上減少していることが更に好ましく、40モル%以上減少していることが特に好ましく、51モル%以上減少していることが特により好ましく、71モル%以上減少していることが最も好ましい。なお、上限値としては特に制限されないが、例えば、100モル%以下である。
上記パターンの透湿度は、工程X1又は工程Y1で形成される感光性層の透湿度に対して、5%以上減少していることが好ましく、10%以上減少していることがより好ましく、20%以上減少していることが更に好ましい。なお、上限値としては特に制限されないが、例えば、100%以下である。
上記パターンの比誘電率は、工程X1又は工程Y1で形成される感光性層の比誘電率に対して、5%以上減少していることが好ましく、10%以上減少していることがより好ましく、15%以上減少していることが更に好ましい。なお、上限値としては特に制限されないが、例えば、100%以下である。
【0236】
上述したパターン形成方法により形成されるパターンの平均厚さとしては、0.5~20μmが好ましい。パターンの平均厚さとしては、0.8~15μmがより好ましく、1.0~10μmが更に好ましい。
【0237】
上述したパターン形成方法により形成されるパターンは無彩色であることが好ましい。
具体的には、全反射(入射角8°、光源:D-65(2°視野))が、CIE1976(L、a、b)色空間において、パターンのL値は10~90であることが好ましく、パターンのa値は-1.0~1.0であることが好ましく、パターンのb値は-1.0~1.0であることが好ましい。
【0238】
上述したパターン形成方法により形成されるパターンの用途としては特に制限されず、各種の保護膜又は絶縁膜として使用できる。
具体的には、導電パターンを保護する保護膜(永久膜)としての用途、導電パターン間の層間絶縁膜としての用途、及び、回路配線の製造の際のエッチングレジスト膜としての用途等が挙げられる。上記パターンは低透湿性に優れることから、なかでも、導電パターンを保護する保護膜(永久膜)又は導電パターン間の層間絶縁膜としての用途が好ましい。
なお、上記パターンは、例えば、タッチパネル内部に設けられた、視認部のセンサーに相当する電極パターン、周辺配線部分、及び取り出し配線部分の配線等の導電パターンを保護する保護膜(永久膜)又は導電パターン間の層間絶縁膜としての用途として使用できる。
【0239】
[回路配線の製造方法]
本発明の回路配線の製造方法は、上述の転写フィルムを使用した回路配線の製造方法であれば特に制限されないが、上述した転写フィルム中の感光性層の仮支持体側とは反対側の表面を、導電層を有する基板中の導電層に接触させて、転写フィルムと導電層を有する基板とを貼り合わせる工程(貼り合わせ工程)と、貼り合わせた転写フィルムにおける感光性層をパターン露光する工程(第1の露光工程)と、露光された感光性層をアルカリ現像液を用いて現像して、パターン化された感光性層を形成する工程(アルカリ現像工程)と、パターン化された感光性層を露光してエッチングレジスト膜を形成する工程(第2の露光工程)と、エッチングレジスト膜が配置されていない領域における上記導電層をエッチング処理する工程(エッチング処理工程)と、をこの順に含むのが好ましい。
本発明の回路配線の製造方法において、貼り合わせ工程、第1の露光工程、アルカリ現像工程、及び第2の露光工程は、いずれも上述した実施形態2のパターン形成方法の工程Y1、工程Y2A、工程Y3、及び工程Y2Bと同様の手順により実施できる。また、本発明の回路配線の製造方法において使用される導電層を有する基板は、上述した工程X1で使用される導電層を有する基板と同様である。また、本発明の回路配線の製造方法は、上述の工程以外のその他の工程を有していてもよい。その他の工程としては、第1実施形態及び第2実施形態のパターン形成方法が有していてもよい任意の工程と同様のものが挙げられる。
【0240】
本発明の回路配線の製造方法は、上記貼り合わせ工程、上記第1の露光工程、上記現像工程、上記第2の露光工程、及び上記エッチング工程の4工程を1セットとして、複数回繰り返す態様であることも好ましい。
エッチングレジスト膜として使用した膜は、形成された回路配線の保護膜(永久膜)としても使用できる。
【0241】
[タッチパネルの製造方法]
本発明のタッチパネルの製造方法は、上述の転写フィルムを使用したタッチパネルの製造方法であれば特に制限されないが、上述した転写フィルム中の感光性層の仮支持体側とは反対側の表面を、導電層(好ましくはパターン化された導電層であり、具体的には、タッチパネル電極パターン又は配線等の導電パターン)を有する基板中の導電層に接触させて、転写フィルムと導電層を有する基板とを貼り合わせる工程(貼り合わせ工程)と、貼り合わせた転写フィルムにおける感光性層をパターン露光する工程(第1の露光工程)と、露光された感光性層をアルカリ現像液を用いて現像して、パターン化された感光性層を形成する工程(アルカリ現像工程)と、パターン化された感光性層を露光して導電層の保護膜又は絶縁膜を形成する工程(第2の露光工程)と、をこの順に含むのが好ましい。
第2の露光工程により形成される保護膜は、導電層の表面を保護する膜としての機能を有する。また、絶縁膜は、導電層間の層間絶縁膜としての機能を有する。なお、第2の露光工程が導電層の絶縁膜を形成する工程である場合、本発明のタッチパネルの製造方法は、更に、第2の露光工程により形成された絶縁膜上に導電層(好ましくはパターン化された導電層であり、具体的には、タッチパネル電極パターン又は配線等の導電パターン)を形成する工程を有するのが好ましい。
本発明のタッチパネルの製造方法において、貼り合わせ工程、第1の露光工程、アルカリ現像工程、及び第2の露光工程は、いずれも上述した実施形態2のパターン形成方法の工程Y1、工程Y2A、工程Y3、及び工程Y2Bと同様の手順により実施できる。また、本発明のタッチパネルの製造方法において使用される導電層を有する基板は、上述した工程X1で使用される導電層を有する基板と同様である。その他の工程としては、第1実施形態及び第2実施形態のパターン形成方法が有していてもよい任意の工程と同様のものが挙げられる。
【0242】
本発明のタッチパネルの製造方法としては、上述した態様以外の構成は、公知のタッチパネルの製造方法を参照できる。
【0243】
本発明のタッチパネルの製造方法により製造されたタッチパネルは、透明基板と、電極と、保護層(保護膜)とを有することが好ましい。
上記タッチパネルにおける検出方法としては、抵抗膜方式、静電容量方式、超音波方式、電磁誘導方式、及び光学方式等公知の方式いずれでもよい。なかでも、静電容量方式が好ましい。
タッチパネル型としては、いわゆる、インセル型(例えば、特表2012-517051号公報の図5図6図7図8に記載のもの)、いわゆる、オンセル型(例えば、特開2013-168125号公報の図19に記載のもの、特開2012-089102号公報の図1及び図5に記載のもの)、OGS(One Glass Solution)型、TOL(Touch-on-Lens)型(例えば、特開2013-054727号公報の図2に記載のもの)、その他の構成(例えば、特開2013-164871号公報の図6に記載のもの)、及び各種アウトセル型(いわゆる、GG、G1・G2、GFF、GF2、GF1、G1F等)等が挙げられる。
【0244】
[他の実施形態に係る感光性材料、並びに、それを用いた転写フィルム、パターン形成方法、回路基板の製造方法、及びタッチパネルの製造方法]
本発明は、更に、パターン形成性に優れる感光性材料(以下「本発明の感光性材料」ともいう。)にも関する。
以下において、本発明の感光性材料、並びに、それを用いた転写フィルム、パターン形成方法、回路基板の製造方法、及びタッチパネルの製造方法について説明する。
【0245】
〔感光性材料〕
本発明の感光性材料の特徴点としては、カルボキシ基を有する化合物A(以下「化合物A」ともいう。)を含む感光性材料であって、下記2つが挙げられる。
(1)上記化合物Aが、(メタ)アクリル酸由来の繰り返し単位を含むポリマーを含む。
(2)活性光線又は放射線の照射によって、上記感光性材料から形成される感光性層中の上記カルボキシ基の含有量が減少する。言い換えると、上記感光性材料から形成される感光性層は、活性光線又は放射線の照射(露光)によって、感光性層中の化合物Aに由来するカルボキシ基の含有量が減少する。
本発明の感光性材料は、上記構成により、パターン形成性に優れる。具体的には、解像性に優れ、且つ、膜減り抑制性に優れる。
また、今般の発明者らの検討により、上記感光性材料から形成される感光性層は、露光により化合物Aに由来するカルボキシ基の含有量が減少することで、露光前と比べて、露光後の比誘電率も低下することも確認している。
【0246】
本発明の感光性材料が(2)の機構を発現する方法としては、例えば、以下に示す、要件(V02)又は要件(W02)を満たす感光性材料とする方法が挙げられる。
要件(V02):感光性材料が、カルボキシ基を有する化合物Aと、露光により化合物Aが含むカルボキシ基の量を減少させる構造(特定構造S0)を有する化合物βと、を含む。
要件(W02):感光性材料が、カルボキシ基を有する化合物Aを含み、且つ、化合物Aは、露光によりカルボキシ基の量を減少させる構造(特定構造S0)を含む。
上記要件(V02)及び要件(W02)における特定構造S0とは、上述した転写フィルムの要件(V01)及び要件(W01)における特定構造S0と同義である。
【0247】
上記要件(V02)としては、以下に示す要件(V2)であるのが好ましく、上記要件(W02)としては、以下に示す要件(W2)であるのが好ましい。つまり、上記要件(V02)において、上記化合物βは、光励起状態において、化合物Aが含むカルボキシ基から電子を受容できる構造を有する化合物Bであるのが好ましい。また、上記要件(W02)において、上記構造は、光励起状態において、化合物Aが含むカルボキシ基から電子を受容できる構造であるのが好ましい。
なお、上記要件(V2)及び要件(W2)における特定構造S1とは、上述した転写フィルムの要件(V1)及び要件(W1)における特定構造S1と同義である。
【0248】
要件(V2):感光性材料が、カルボキシ基を有する化合物Aと、光励起状態において、上記化合物Aが含むカルボキシ基から電子を受容できる構造(特定構造S1)を有する化合物Bと、を含み、上記化合物Aが、(メタ)アクリル酸由来の繰り返し単位を含むポリマーを含む。
要件(W2):上記感光性材料が、カルボキシ基を有する化合物Aを含み、且つ、上記化合物Aは、(メタ)アクリル酸由来の繰り返し単位と、光励起状態において、上記カルボキシ基から電子を受容できる構造(特定構造S1)と、を含む。
【0249】
上記感光性材料から形成される感光性層は、特定構造S0を起点とした作用機構によって、露光により化合物Aに由来するカルボキシ基の含有量を減少させ得る。
以下では、特定構造S1を例に挙げて、露光により化合物Aに由来するカルボキシ基の含有量を減少させ得る推定機構を説明する。
上記特定構造は、露光されると電子の受容性が増大し、化合物Aが有するカルボキシ基から電子を受け渡される。なお、電子を受け渡す際、上記カルボキシ基はアニオンになっていてもよい。
上記アニオンになっていてもよいカルボキシ基が、特定構造S1に電子を受け渡すと、上記カルボキシ基は不安定化し、二酸化炭素になって脱離する。酸基であるカルボキシ基が二酸化炭素になって脱離すると、その部分の極性が低下する。つまり、上記作用機構により、感光性層は、露光部で化合物Aのカルボキシ基が脱離することによる極性の変化が生じており、現像液に対する溶解性が変化している(露光部は、アルカリ現像液に対する溶解性が低下し、有機溶剤系現像液に対する溶解性が増大する)。一方で未露光部においては現像液に対する溶解性は概ね変化していない。この結果として、感光性層は、優れたパターン形成を有する。また、現像液がアルカリ現像液である場合、カルボキシ基の含有量が低減された低透湿性のパターンの形成が可能となる。更に、現像液が有機溶剤系現像液である場合、更に、現像後のパターンに露光処理を実施することで、カルボキシ基の含有量が低減された低透湿性のパターンの形成が可能となる。
【0250】
また、感光性材料は、後述するとおり、重合性化合物を含んでいることも好ましい。
上述のように、上記カルボキシ基が、特定構造S1に電子が受け渡すと、上記カルボキシ基は不安定化し、二酸化炭素になって脱離する。この際、化合物A上の、カルボキシ基が二酸化炭素になって脱離した個所にはラジカルが生じており、このようなラジカルによって重合性化合物のラジカル重合反応が生起される。この結果として、感光性材料から形成される感光性層は、特に、アルカリ現像液に対して、より優れたパターン形成能を有し、形成されるパターンは膜強度も優れている。
【0251】
更に、感光性材料は、後述するとおり、重合性化合物と光重合開始剤とを含むことも好ましい。
感光性材料が光重合開始剤を含む場合、上述したような、カルボキシ基の脱離と、重合反応とを異なるタイミングで生じさせることができる。例えば、感光性材料から形成される感光性層に、まず、カルボキシ基の脱離がほとんど生じないような波長又は露光量で第1の露光をし、光重合開始剤に基づく重合性化合物の重合反応を進行させて硬化させてもよい。その後、硬化させられた感光性層に第2の露光をし、カルボキシ基の脱離を生じさせてもよい。
【0252】
以下、化合物Aとしてポリアクリル酸及び化合物Bとしてキノリンを一例に挙げて、上述の脱炭酸プロセスの推定機構(特定構造S1を起点として、露光により化合物Aに由来するカルボキシ基の含有量を減少させ得る推定機構)について詳述する。
以下に図示するように、ポリアクリル酸のカルボキシ基とキノリンの窒素原子とは、共存下において水素結合を形成する。キノリンは、露光されると電子の受容性が増大し、ポリアクリル酸が有するカルボキシ基から電子を受け渡される(step1:光励起)。ポリアクリル酸が有するカルボキシ基は、キノリンに電子を受け渡すと不安定化し、二酸化炭素になって脱離する(step2:脱炭酸反応)。上述の脱炭酸反応を経るとポリアクリル酸の残基にはラジカルが発生し、ラジカル反応が進行する。ラジカル反応は、ポリアクリル酸の残基同士、ポリアクリル酸の残基と任意で含まれる重合性化合物(モノマー(M))、雰囲気中の水素原子との間で生じ得る(step3:極性変換・架橋・重合反応)。そして、ラジカル反応の終了後、化合物Bが再生されて、再度化合物Aの脱炭酸プロセスに寄与し得る(step4:化合物B(触媒)再生)。
【0253】
【化7】
【0254】
上記感光性材料から形成される感光性層は、特に、アルカリ現像液に対して、より優れたパターン形成能を有する点で、露光により化合物Aに由来するカルボキシ基の含有量が5モル%以上の減少率で減少しているのが好ましく、5モル%以上の減少率で減少していることが好ましく、10モル%以上の減少率で減少していることがより好ましく、20モル%以上の減少率で減少していることが更により好ましく、31モル%以上の減少率で減少していることが更に好ましく、40モル%以上の減少率で減少していることが特に好ましく、51モル%以上の減少率で減少していることが特により好ましく、71モル%の減少率で以上減少していることが最も好ましい。なお、上限値としては特に制限されないが、例えば、100モル%以下である。
なお、感光性層における化合物Aに由来するカルボキシ基の含有量の減少率は、露光前後における感光性層のカルボキシ基の量を測定することで算出できる。露光前の感光性層のカルボキシ基の量の測定に際しては、例えば、電位差滴定により分析定量できる。露光後の感光性層のカルボキシ基の量の測定に際しては、カルボキシ基の水素原子をリチウム等の金属イオンに置換し、この金属イオンの量をICP-OES((Inductivity coupled plasma optical emission spectrometer)により分析定量することで算出できる。
また、感光性層における化合物Aに由来する酸基の含有量の減少率は、露光前後における感光性層のIR(infrared)スペクトルを測定し、酸基に由来するピークの減少率を算出することでも得られる。
【0255】
<<感光性材料の実施形態>>
以下において、感光性材料の実施形態の一例を示す。
<実施形態Y-1-a1の感光性材料>
要件(V02)又は要件(W02)のいずれかを満たし、且つ、重合性化合物及び光重合開始剤を実質的に含まない感光性材料である。
<実施形態Y-1-a2の感光性材料>
要件(V02)又は要件(W02)のいずれかを満たし、且つ、光重合開始剤を実質的に含まない感光性材料である。
<実施形態Y-1-a3の感光性材料>
要件(V02)又は要件(W02)のいずれかを満たし、且つ、重合性化合物及び光重合開始剤を含む感光性材料である。
【0256】
なお、実施形態Y-1-a1の感光性材料において、「感光性材料が重合性化合物を実質的に含まない」とは、重合性化合物の含有量が、感光性材料の全固形分に対して、3質量%未満であればよく、0~1質量%であることが好ましく、0~0.1質量%であることがより好ましい。
また、実施形態Y-1-a1及び実施形態Y-1-a2の感光性材料において、「感光性材料が光重合開始剤を実質的に含まない」とは、光重合開始剤の含有量が、感光性材料の全固形分に対して、0.1質量%未満であればよく、0~0.05質量%であることが好ましく、0~0.01質量%であることがより好ましい。
なお、固形分とは、上述のとおり、感光性材料の溶媒を除くすべての成分を意図する。
【0257】
実施形態Y-1-a1及び実施形態Y-1-a2の感光性材料は、後述する実施形態1’のパターン形成方法に適用されるのが好ましい。また、実施形態Y-1-a3の感光性材料は、後述する実施形態2’のパターン形成方法に適用されるのが好ましい。
【0258】
なお、実施形態Y-1-a1~実施形態Y-1-a3において、要件(V02)及び要件(W02)が、それぞれ上述の要件(V2)及び要件(W2)であるのが好ましい。
【0259】
以下において、本発明の感光性材料について説明する。
【0260】
<<<各種成分>>>
<<酸基を有する化合物A>>
本発明の感光性材料は、カルボキシ基を有する化合物Aを含む。
カルボキシ基を有する化合物Aとしては、上述の本発明の転写フィルム中の感光性層が含む「カルボキシ基を有する化合物」と同様のものが挙げられる。
本発明の感光性材料中、カルボキシ基を有する化合物Aは、(メタ)アクリル酸由来の繰り返し単位を含むポリマー(以下、「ポリマーA1」ともいう。)を含む。
【0261】
通常、ポリマーA1は、アルカリ可溶性樹脂である。
なお、「アルカリ可溶性」の定義及び測定方法については、既述のとおりである。
【0262】
ポリマーA1は、カルボキシ基以外の酸基を更に有してもよい。カルボキシ基以外の酸基としては、例えば、フェノール性水酸基、リン酸基、及びスルホン酸基が挙げられる。
【0263】
現像性の点から、ポリマーA1の酸価は、60~300mgKOH/gが好ましく、60~275mgKOH/gがより好ましく、75~250mgKOH/gが更に好ましい。
【0264】
ポリマーA1中、(メタ)アクリル酸由来の繰り返し単位の含有量は、ポリマーA1の全繰り返し単位に対して、5~100モル%が好ましく、10~65モル%がより好ましく、15~45モル%が更に好ましい。
【0265】
ポリマーA1は、(メタ)アクリル酸由来の繰り返し単位以外のその他の繰り返し単位を含んでいてもよい。
その他の繰り返し単位としては、例えば、上述の本発明の転写フィルム中の感光性層が含む酸基を有する化合物Aが含んでいてもよい「カルボキシ基含有ポリマー」が含み得る繰り返し単位(但し、「(メタ)アクリル酸由来の繰り返し単位」以外の繰り返し単位)が挙げられ、なかでも、特定構造S0(好ましくは特定構造S1)を含む繰り返し単位、重合性基を有する繰り返し単位、芳香環を有する繰り返し単位、脂環式構造を有する繰り返し単位、及びその他の繰り返し単位が挙げられる。
ポリマーA1中の各繰り返し単位の好適範囲は以下のとおりである。
【0266】
ポリマーA1が特定構造S0(好ましくは特定構造S1)を含む繰り返し単位を含む場合、その含有量は、ポリマーA1の全繰り返し単位に対して、3~75モル%が好ましく、5~60モル%がより好ましく、10~50モル%が更に好ましい。
ポリマーA1が、特定構造S0(好ましくは特定構造S1)を有する繰り返し単位を有する場合、その含有量は、ポリマーA1の全繰り返し単位に対して、1~75質量%が好ましく、3~60質量%がより好ましく、5~30質量%が更に好ましい。
特定構造S0(好ましくは特定構造S1)を含む繰り返し単位は、一種単独で使用してもよく、二種以上使用してもよい。
【0267】
ポリマーA1中、重合性基を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマーA1の全繰り返し単位に対して、3~60モル%が好ましく、5~40モル%がより好ましく、10~30モル%が更に好ましい。
ポリマーA1中、重合性基を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマーA1の全繰り返し単位に対して、1~70質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましく、12~45質量%が更に好ましい。
重合性基を有する繰り返し単位は、一種単独で使用してもよく、二種以上使用してもよい。
【0268】
ポリマーA1中、芳香環を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマーA1の全繰り返し単位に対して、5~80モル%が好ましく、15~75モル%がより好ましく、30~70モル%が更に好ましい。
ポリマーA1中、芳香環を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマーA1の全繰り返し単位に対して、5~90質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましく、30~70質量%が更に好ましい。
芳香環を有する繰り返し単位は、一種単独で使用してもよく、二種以上使用してもよい。
【0269】
ポリマーA1中、脂環式構造を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマーA1の全繰り返し単位に対して、3~70モル%が好ましく、5~60モル%がより好ましく、10~55モル%が更に好ましい。
ポリマーA1中、脂環式構造を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマーA1の全繰り返し単位に対して、3~90質量%が好ましく、5~70質量%がより好ましく、25~60質量%が更に好ましい。
脂環式構造を有する繰り返し単位は、一種単独で使用してもよく、二種以上使用してもよい。
【0270】
ポリマーA1中、その他の繰り返し単位の含有量は、ポリマーA1の全繰り返し単位に対して、1~70モル%が好ましく、2~50モル%がより好ましく、3~20モル%が更に好ましい。
ポリマーA1中、その他の繰り返し単位の含有量は、ポリマーA1の全繰り返し単位に対して、1~70質量%が好ましく、2~50質量%がより好ましく、5~35質量%が更に好ましい。
その他の繰り返し単位は、一種単独で使用してもよく、二種以上使用してもよい。
【0271】
ポリマーA1の重量平均分子量の下限値としては、感光性層の形成性に優れる(言い換えると、感光性層を形成するための製膜能に優れる)点で、5,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく、15,000以上が更に好ましい。上限値としては特に制限されないが、任意の基材と貼り合わせる際(転写の際)の密着性(ラミネート密着性)がより優れる点で、50,000以下であるのが好ましい。
ポリマーA1の重量平均分子量の好適な一態様としては、5,000~200,000が好ましく、10,000~100,000がより好ましく、11,000~49,000が最も好ましい。
【0272】
本発明の感光性材料において、化合物Aの含有量は、感光性材料の全固形分に対して、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、45質量%以上が更により好ましく、50質量%以上が特に好ましい。化合物Aの含有量の上限値としては、感光性材料の全固形分に対して、100質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましく、97質量%以下が更に好ましく、93質量%以下が特に好ましく、85質量%以下がより特に好ましく、75質量%以下が最も好ましい。なお、感光性材料が要件W02を満たす場合、化合物Aの含有量の上限値としては、感光性材料の全固形分に対して、99質量%以下が好ましい。
化合物Aは、一種単独で使用してもよく、二種以上使用してもよい。
【0273】
なかでも、実施形態Y-1-a1の感光性材料においては、化合物Aの含有量は、感光性材料の全固形分に対して、40~98質量%が好ましく、50~96質量%がより好ましく、60~93質量%がより好ましい。
実施形態Y-1-a2の感光性材料においては、化合物Aの含有量は、感光性材料の全固形分に対して、30~85質量%が好ましく、45~75質量%がより好ましい。
実施形態Y-1-a3の感光性材料においては、化合物Aの含有量は、感光性材料の全固形分に対して、30~85質量%が好ましく、45~75質量%がより好ましい。
【0274】
<<化合物β>>
感光性材料は、化合物βを含むのが好ましい。
化合物βとしては、上述の本発明の転写フィルム中の感光性層が含み得る化合物βと同様であり、またその好適態様も同じである。
パターン形成能がより優れる点で、感光性材料中、化合物β(好ましくは、化合物B)の含有量は、感光性材料の全固形分に対して、0.1~50質量%が好ましい。
なかでも、実施形態Y-1-a1の感光性材料においては、化合物β(好ましくは、化合物B)の含有量は、感光性材料の全固形分に対して、例えば0.2~45質量%であり、2.0~40質量%が好ましく、4~35質量%がより好ましく、8~30質量%が更に好ましい。
実施形態Y-1-a2の感光性材料においては、化合物β(好ましくは、化合物B)の含有量は、感光性材料の全固形分に対して、0.5~20質量%が好ましく、1.0~10質量%がより好ましい。
実施形態Y-1-a3の感光性材料においては、化合物β(好ましくは、化合物B)の含有量は、感光性材料の全固形分に対して、0.3~20質量%が好ましく、0.5~8質量%がより好ましい。
化合物β(好ましくは、化合物B)は、一種単独で使用してもよく、二種以上使用してもよい。
【0275】
化合物βが化合物Bである場合、パターン形成能がより優れる点で、感光性材料中、化合物Bが有する電子を受容できる構造(特定構造S1)の合計数は、化合物Aが有するカルボキシ基の合計数に対して、1モル%以上が好ましく、3モル%以上がより好ましく、5モル%以上が更に好ましく、10モル%以上が特に好ましく、20モル%以上が最も好ましい。
化合物Bが有する電子を受容できる構造(特定構造S1)の合計数の上限に特に制限はないが、得られる膜の膜質の点から、化合物Aが有するカルボキシ基の合計数に対して、200モル%以下が好ましく、100モル%以下がより好ましく、80モル%以下が更に好ましい。
【0276】
<<重合性化合物>>
感光性材料は、重合性化合物を含むのが好ましい。
重合性化合物としては、上述の本発明の転写フィルム中の感光性層が含み得る重合性化合物と同様であり、好適態様も同じである。なお、この重合性化合物は、カルボキシ基を有する化合物Aとは異なる成分であり、カルボキシ基を含まない。
感光性材料が重合性化合物を含む場合、その含有量は、感光性材料の全固形分に対して、3~70質量%が好ましく、10~70質量%がより好ましく、20~55質量%が特に好ましい。
感光性材料が重合性化合物を含む場合、ポリマーAに対する重合性化合物の質量割合(重合性化合物の質量/ポリマーAの質量)は、0.2~2.0が好ましく、0.4~0.9がより好ましい。
重合性化合物は、一種単独で使用してもよく、二種以上使用してもよい。
【0277】
また、感光性材料が2官能の重合性化合物と3官能以上の重合性化合物とを含む場合、2官能の重合性化合物の含有量は、感光性材料に含まれる全ての重合性化合物に対して、10~90質量%が好ましく、20~85質量%がより好ましく、30~80質量%がさらに好ましい。
また、この場合、3官能以上の重合性化合物の含有量は、感光性材料に含まれる全ての重合性化合物に対し、10~90質量%が好ましく、15~80質量%がより好ましく、20~70質量%がさらに好ましい。
【0278】
また、感光性材料が2官能以上の重合性化合物を含む場合、この感光性材料は、更に単官能の重合性化合物を含有してもよい。
但し、感光性材料が2官能以上の重合性化合物を含む場合、感光性材料が含み得る重合性化合物において、2官能以上の重合性化合物が主成分であることが好ましい。
具体的には、感光性材料が2官能以上の重合性化合物を含む場合において、2官能以上の重合性化合物の含有量は、感光性材料に含まれる重合性化合物の総含有量に対し、60~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましく、90~100質量%が更に好ましい。
【0279】
<<光重合開始剤>>
感光性材料は、光重合開始剤を含むことも好ましい。
重合性化合物としては、上述の本発明の転写フィルム中の感光性層が含み得る光重合開始剤と同様であり、好適態様も同じである。
感光性材料が光重合開始剤を含む場合、その含有量は、感光性材料の全固形分に対して、0.1~15質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましく、1~5質量%が特に好ましい。光重合開始剤は、一種単独で使用してもよく、二種以上使用してもよい。
【0280】
<<界面活性剤>>
感光性材料は、界面活性剤を含んでもよい。
界面活性剤としては、上述の本発明の転写フィルム中の感光性層が含み得る界面活性剤と同様であり、好適態様も同じである。
界面活性剤の含有量は、感光性材料の全固形分に対して、0.0001~10質量%が好ましく、0.001~5質量%がより好ましく、0.005~3質量%が更に好ましい。界面活性剤は、一種単独で使用してもよく、二種以上使用してもよい。
【0281】
<<溶媒>>
本発明の感光性材料は、塗布による感光性層の形成の点から、溶媒を含んでもよい。
【0282】
溶媒としては、通常用いられる溶媒を特に制限なく使用できる。
溶媒としては、有機溶媒が好ましい。
有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(別名:1-メトキシ-2-プロピルアセテート)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、乳酸エチル、乳酸メチル、カプロラクタム、n-プロパノール、2-プロパノール、及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
溶媒としては、メチルエチルケトンとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとの混合溶媒、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとの混合溶媒、又はメチルエチルケトンとプロピレングリコールモノメチルエーテルとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとの混合溶媒が好ましい。
【0283】
本発明の感光性材料が溶媒を含む場合、感光性材料の固形分含有量は、5~80質量%が好ましく、8~40質量%がより好ましく、10~30質量%が更に好ましい。つまり、本発明の感光性材料が溶媒を含む場合、溶媒の含有量は、感光性材料の全質量に対して、20~95質量%が好ましく、60~95質量%がより好ましく、70~95質量%が更に好ましい。溶媒は、一種単独で使用してもよく、二種以上使用してもよい。
【0284】
本発明の感光性材料が溶媒を含む場合、感光性材料の粘度(25℃)は、塗布性の点から、1~50mPa・sが好ましく、2~40mPa・sがより好ましく、3~30mPa・sが更に好ましい。
粘度は、例えば、VISCOMETER TV-22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて測定する。
本発明の感光性材料が溶媒を含む場合、感光性材料の表面張力(25℃)は、塗布性の点から、5~100mN/mが好ましく、10~80mN/mがより好ましく、15~40mN/mが更に好ましい。
表面張力は、例えば、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学(株)製)を用いて測定する。
【0285】
溶媒としては、米国出願公開2005/282073号明細書の段落0054及び0055に記載のSolventを用いることもでき、この明細書の内容は本明細書に組み込まれる。
また、溶媒として、必要に応じて沸点が180~250℃である有機溶媒(高沸点溶媒)を使用することもできる。
【0286】
なお、本発明の感光性材料が後述する転写フィルムにおける感光性層(感光性材料を用いて形成される層)を形成している場合、感光性層である感光性材料は、実質的に溶媒を含まないことも好ましい。実質的溶媒を含まないとは、溶媒の含有量が、感光性材料全質量に対して、1質量%未満であればよく、0~0.5質量%であることが好ましく、0~0.001質量%であることがより好ましい。
【0287】
<<その他の添加剤>>
感光性材料は、必要に応じて、その他の添加剤を含んでいてもよい。
その他の添加剤としては、上述の本発明の転写フィルム中の感光性層が含み得るその他の添加剤と同様であり、好適態様も同じである。
【0288】
〔感光性層〕
本発明の感光性材料は、各種パターン形成の際の感光性層(例えば、転写フィルムの感光性層)として適用できる。以下、本発明の感光性材料を感光性層として使用する場合の態様について説明する。
【0289】
<<<感光性層の形成方法>>>
感光性層は、感光性層の形成に用いる成分と、溶媒とを含む感光性材料を調製し、塗布及び乾燥して形成できる。各成分を、それぞれ予め溶媒に溶解させた溶液とした後、得られた溶液を所定の割合で混合して組成物を調製することもできる。以上のようにして調製した組成物は、例えば、孔径0.2~30μmのフィルター等を用いて濾過されることが好ましい。
感光性材料を仮支持体又はカバーフィルム上に塗布し、乾燥させることで、感光性層を形成できる。
塗布方法としては特に制限されず、スリット塗布、スピン塗布、カーテン塗布、及びインクジェット塗布等の公知の方法が挙げられる。
また、仮支持体又はカバーフィルム上に後述するその他の層を形成する場合、感光性層は、上記その他の層の上に形成されてもよい。
【0290】
感光性層の平均厚さとしては、0.5~20μmが好ましい。感光性層の平均厚みが20μm以下であるとパターンの解像度がより優れ、感光性層の平均厚みが0.5μm以上であるとパターン直線性の点から好ましい。感光性層の平均厚さとしては、0.8~15μmがより好ましく、1.0~10μmが更に好ましい。感光性層の平均厚さの具体例として、3.0μm、5.0μm、及び8.0μmが挙げられる。
【0291】
感光性層は無彩色であることが好ましい。具体的には、全反射(入射角8°、光源:D-65(2°視野))が、CIE1976(L、a、b)色空間において、L値は10~90であることが好ましく、a値は-1.0~1.0であることが好ましく、b値は-1.0~1.0であることが好ましい。
【0292】
〔転写フィルム〕
本発明の感光性材料は、転写フィルムの感光性層に好ましく適用できる。
なお、転写フィルムの構成については、上述したとおりである。上述の転写フィルムにおける感光性層を本発明の感光性材料により形成することで、パターン形成性に優れた転写フィルムが得られる。なお、転写フィルムの製造方法についても、上述した方法と同様である。
【0293】
〔パターン形成方法〕
本発明のパターン形成方法としては上述の感光性材料を使用したパターン形成方法であれば特に制限されないが、基材上に感光性層を形成する工程と、上記感光性層をパターン露光する工程と、露光された上記感光性層を現像(アルカリ現像又は有機溶剤現像)する工程と、をこの順に含むことが好ましい。なお、上記現像が有機溶剤現像である場合、得られたパターンを更に露光する工程を含むのが好ましい。
本発明のパターン形成方法の具体的な実施形態としては、後述する実施形態1’及び実施形態2’のパターン形成方法が挙げられる。
【0294】
<<<実施形態1’のパターン形成方法>>>
実施形態1’のパターン形成方法は、工程X1’~工程X3’を有する。なお、下記工程X2’は、露光により、感光性層中の化合物Aに由来するカルボキシ基の含有量を減少させる工程に該当する。但し、工程X3’の現像液が有機溶剤系現像液である場合、工程X3の後にさらに工程X4’を有する。
工程X1’:基材上に、感光性材料を用いて感光性層を形成する工程
工程X2’:感光性層をパターン露光する工程
工程X3’:パターン露光された感光性層を、現像液を用いて現像する工程
工程X4’:工程X3’の現像工程の後に、更に、現像により形成されたパターンを露光する工程
【0295】
工程X3の現像液としてアルカリ現像液を使用する場合は、上記感光性層は実施形態X-1-a1及び実施形態X-1-a2の感光性層であることが好ましい。工程X3の現像液として有機溶剤系現像液を使用する場合は、上記感光性層は実施形態X-1-a1の感光性材料であることが好ましい。
実施形態1’のパターン形成方法は、上述した実施形態Y-1-a1及び実施形態Y-1-a2の感光性材料に適用されるのが好ましい。
【0296】
実施形態1’のパターン形成方法の具体的な手順及び好適態様については、工程X1’以外は、実施形態1のパターン形成方法と同じである。
工程X1’は、上述の感光性層の形成方法に記載した方法により実施できる。また、本発明の感光性材料から形成された感光性層を含む転写フィルムを予め作製し、転写フィルム中の感光性層の仮支持体側とは反対側の表面を基材に接触させて、上記転写フィルムと基材とを貼り合わせる工程としてもよい。なお、工程X1’が転写フィルムを使用する貼り合わせ工程である場合、その具体的な手順及び好適態様については、実施形態1のパターン形成方法の工程Xと同じである。
【0297】
<<<実施形態2’のパターン形成方法>>>
実施形態2のパターン形成方法は、工程Y1’、工程Y2P’、及び工程Y3’をこの順で有し、さらに、工程Y2Q’(工程Y2P’において露光された感光性層を、更に、露光する工程)を、工程Y3’の前又は工程Y3’の後に有する。
工程Y1’:転写フィルム中の感光性層の仮支持体側とは反対側の表面を基材に接触させて、転写フィルムと上記基材とを貼り合わせる工程
工程Y2P’:感光性層を、露光する工程
工程Y3’:感光性層を、を用いて現像する工程
【0298】
実施形態2’のパターン形成方法は、上述した実施形態Y-1-a3の感光性樹脂層を含む転写フィルムに適用されるのが好ましい。
なお、実施形態2’のパターン形成方法の具体的な手順及び好適態様については、工程Y1’以外は、実施形態2のパターン形成方法と同じである。すなわち、工程Y2P’は工程Y2Pと同じであり、工程Y2Q’は工程Y2Qと同じであり、工程Y3’は工程Y3と同じである。
工程Y1’は、上述の感光性層の形成方法に記載した方法により実施できる。また、本発明の感光性材料から形成された感光性層を含む転写フィルムを予め作製し、転写フィルム中の感光性層の仮支持体側とは反対側の表面を基材に接触させて、上記転写フィルムと基材とを貼り合わせる工程としてもよい。なお、工程Y1’が転写フィルムを使用する貼り合わせ工程である場合、その具体的な手順及び好適態様については、実施形態2のパターン形成方法の工程Y1と同じである。
【0299】
<<好適態様>>
実施形態2’のパターン形成方法としては、なかでも、工程Y1’、工程Y2A’、工程Y3’、工程Y2B’をこの順に有しているのがこのましい。なお、工程Y2A’及び工程Y2B’は、一方は、露光により化合物Aに由来するカルボキシ基の含有量を減少させるための露光工程であり、他方は、光重合開始剤に基づく重合性化合物の重合反応を生起するための露光工程に該当する。
工程Y1’:基材上に、感光性材料を用いて感光性層を形成する工程
工程Y2A’:感光性層をパターン露光する工程
工程Y3’:感光性層を、アルカリ現像液を用いて現像して、パターン化された感光性層を形成する工程
工程Y2B’:パターン化された感光性層を露光する工程
【0300】
上記工程Y2A’は、光重合開始剤に基づく重合性化合物の重合反応を生起するための露光工程であるのが好ましく、上記工程Y2B’は、露光により化合物Aに由来するカルボキシ基の含有量を減少させるための露光工程であるのが好ましい。
【0301】
〔実施形態1’及び実施形態2’のパターン形成方法が有していてもよい任意の工程〕
実施形態1’及び実施形態2’のパターン形成方法は、上述した以外の任意の工程(その他の工程)を含んでもよい。任意の工程としては、上述した実施形態1及び実施形態2のパターン形成方法が有し得る任意の工程と同じであり、好適態様も同じである。
【0302】
〔パターン〕
上述した実施形態1’及び実施形態2’のパターン形成方法により形成されるパターンは、カルボキシ基の含有量が低減されているため、極性が低く、透湿性及び比誘電率が低い。
実施形態1’及び実施形態2’のパターン形成方法により形成されるパターンの物性及び用途については、上述した実施形態1及び実施形態2のパターン形成方法から形成されるパターンの物性及び用途と同じであり、好適態様も同じである。
【0303】
〔回路配線の製造方法〕
本発明の回路配線の製造方法は、上述の感光性材料を使用した回路配線の製造方法であれば特に制限されず、導電層を有する基板上に上述の感光性材料を用いて感光性層を形成する工程(感光性層形成工程)と、感光性層をパターン露光する工程(第1の露光工程)と、露光された感光性層をアルカリ現像液を用いて現像して、パターン化された感光性層を形成する工程(アルカリ現像工程)と、パターン化された感光性層を露光してエッチングレジスト膜を形成する工程(第2の露光工程)と、エッチングレジスト膜が配置されていない領域における上記導電層をエッチング処理する工程(エッチング処理工程)と、をこの順に含むのが好ましい。
【0304】
本発明の回路配線の製造方法において、感光性層形成工程は、上述した実施形態1’のパターン形成方法の工程X1’と同様の手順により実施できる。また、第1の露光工程、アルカリ現像工程、及び第2の露光工程は、いずれも上述した実施形態2のパターン形成方法の工程Y1、工程Y2A、工程Y3、及び工程Y2Bと同様の手順により実施できる。また、本発明の回路配線の製造方法において使用される導電層を有する基板は、上述した工程X1で使用される導電層を有する基板と同様である。また、本発明の回路配線の製造方法は、上述の工程以外のその他の工程を有していてもよい。その他の工程としては、第1実施形態及び第2実施形態のパターン形成方法が有していてもよい任意の工程と同様のものが挙げられる。
【0305】
本発明の回路配線の製造方法は、上記感光性層形成工程、上記第1の露光工程、上記現像工程、上記第2の露光工程、及び上記エッチング工程の4工程を1セットとして、複数回繰り返す態様であることも好ましい。エッチングレジスト膜として使用した膜は、形成された回路配線の保護膜(永久膜)としても使用できる。
【0306】
〔タッチパネルの製造方法〕
本発明のタッチパネルの製造方法は、上述の感光性材料を使用したタッチパネルの製造方法であれば特に制限されないが、導電層(好ましくはパターン化された導電層であり、具体的には、タッチパネル電極パターン又は配線等の導電パターン)を有する基板中の導電層上に上述の感光性材料を用いて感光性層を形成する工程(感光性層形成工程)と、感光性層をパターン露光する工程(第1の露光工程)と、露光された感光性層をアルカリ現像液を用いて現像して、パターン化された感光性層を形成する工程(アルカリ現像工程)と、パターン化された感光性層を露光して導電層の保護膜又は絶縁膜を形成する工程(第2の露光工程)と、をこの順に含むのが好ましい。
第2の露光工程により形成される保護膜は、導電層の表面を保護する膜としての機能を有する。また、絶縁膜は、導電層間の層間絶縁膜としての機能を有する。なお、第2の露光工程が導電層の絶縁膜を形成する工程である場合、本発明のタッチパネルの製造方法は、更に、第2の露光工程により形成された絶縁膜上に導電層(好ましくはパターン化された導電層であり、具体的には、タッチパネル電極パターン又は配線等の導電パターン)を形成する工程を有するのが好ましい。
本発明のタッチパネルの製造方法において、感光性層形成工程は、上述した実施形態1’のパターン形成方法の工程X1’と同様の手順により実施できる。また、第1の露光工程、アルカリ現像工程、及び第2の露光工程は、いずれも上述した実施形態2のパターン形成方法の工程Y1、工程Y2A、工程Y3、及び工程Y2Bと同様の手順により実施できる。また、本発明のタッチパネルの製造方法において使用される導電層を有する基板は、上述した工程X1で使用される導電層を有する基板と同様である。その他の工程としては、第1実施形態及び第2実施形態のパターン形成方法が有していてもよい任意の工程と同様のものが挙げられる。
【0307】
本発明のタッチパネルの製造方法としては、上述した態様以外の構成は、公知のタッチパネルの製造方法を参照できる。
【0308】
本発明のタッチパネルの製造方法により製造されたタッチパネルは、透明基板と、電極と、保護層(保護膜)とを有することが好ましい。
上記タッチパネルにおける検出方法としては、抵抗膜方式、静電容量方式、超音波方式、電磁誘導方式、及び光学方式等公知の方式いずれでもよい。なかでも、静電容量方式が好ましい。
タッチパネル型としては、いわゆる、インセル型(例えば、特表2012-517051号公報の図5図6図7図8に記載のもの)、いわゆる、オンセル型(例えば、特開2013-168125号公報の図19に記載のもの、特開2012-89102号公報の図1及び図5に記載のもの)、OGS(One Glass Solution)型、TOL(Touch-on-Lens)型(例えば、特開2013-54727号公報の図2に記載のもの)、その他の構成(例えば、特開2013-164871号公報の図6に記載のもの)、及び各種アウトセル型(いわゆる、GG、G1・G2、GFF、GF2、GF1、G1F等)等が挙げられる。
【実施例0309】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更できる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
なお、以下の実施例において、樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算で求めた重量平均分子量である。
【0310】
以下の実施例において、特に断りのない限り、高圧水銀ランプとしては、アイグラフィックス社製 H03-L31を使用した。上記高圧水銀ランプは、波長365nmを主波長として、254nm、313nm、405nm、及び436nmに強い線スペクトルを有する。また、特に断りのない限り、超高圧水銀ランプとしては、USHIO電気社製 USH-2004MBを使用した。上記超高圧水銀ランプは、313nm、365nm、405nm、及び436nmに強い線スペクトルを有する。
【0311】
[実施例1系]
<感光性材料の調製>
カルボキシ基を有する化合物Aとして、スチレン/アクリル酸共重合体 (酸価:200、Mw:8500、東亞合成社製、ARUFON UC3910(商品名))、及び第2表に示す化合物βを、後段に示す第2表に記載の配合量を満たし、且つ、最終的に得られる感光性材料の固形分濃度が25質量%になるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/メチルエチルケトン=50/50(質量比)の混合溶媒に、混合及び溶解させて、混合液を得た。上記混合液に、界面活性剤としてメガファックF551(DIC社製フッ素含有ノニオン系界面活性剤)を、感光性材料の全固形分に対して100質量ppmの濃度になるように添加して、各実施例又は比較例の感光性材料を調製した。
なお、表中に示した配合量(質量部)は、各成分の固形分量である。
【0312】
<化合物βの物性評価>
(化合物βの基底状態でのpKaの測定)
化合物βの基底状態でのpKaは平沼産業社製自動滴定装置を用いて以下の方法で測定した。なお、化合物βが含窒素芳香族化合物である場合、化合物βの基底状態でのpKaとは、化合物βの共役酸のpKaを意図する
0.1gの化合物βをメタノール20mlに溶解させ、これに超純水20mlを加えた。これを0.1N-HCL水溶液を用いて滴定し、当量点までに要した滴定量の1/2時点のpHをpKa(化合物βの基底状態でのpKa)とした。
【0313】
(ε365、及び、ε365/ε313の測定・評価)
化合物βの365nmのモル吸光係数((cm・mol/L)-1、「ε365」)と313nmのモル吸光係数((cm・mol/L)-1、「ε313」)を求め、ε365をε313で割った値(ε365/ε313)を求めた。
化合物βのε365及びε313は、化合物βをアセトニトリル中に溶解して測定するモル吸光係数である。化合物βがアセトニトリルに溶解しない場合、化合物βを溶解させる溶媒は適宜変更してよい。ただし、1以下が好ましい。
【0314】
<感光性材料の評価>
(感光性層の作製)
各実施例又は比較例の感光性材料を、シリコンウェハにスピン塗布し、その後、得られた塗布膜をホットプレートで80℃で乾燥して、膜厚5μmの感光性層を得た。
得られた感光性層を以下のように評価した。
【0315】
(カルボキシ基消費率評価(IR測定))
高圧水銀ランプを用いて、得られた感光性層を全面露光した。365nmの照度計で計測した積算露光量は1000mJ/cmであった。なお、上記高圧水銀ランプから発される光は、波長365nmを主波長として、254nm、313nm、405nm、及び436nmに強い線スペクトルを有する。
露光前及び露光後にそれぞれ感光性層のIRスペクトルを測定し、カルボキシ基のC=O伸縮のピーク(1710cm-1のピーク)の減少率からカルボキシ基消費率(モル%)を算出した。
カルボキシ基消費率が高いほど脱炭酸反応が進行していることを表す。
結果を第2表中に示す(「カルボキシ基消費率(モル%)〔IR測定〕」欄参照。)
【0316】
(カルボキシ基消費率評価(灰化測定))
以下の手順により、カルボキシ基消費率を測定した。
【0317】
・露光後の感光性層のカルボキシ基量の測定(露光後のカルボキシ基量の測定)
上段部で得られた感光性層を以下の露光条件により露光した。
≪露光条件≫
高圧水銀ランプを用いて、得られた感光性層を全面露光した。365nmの照度計で計測した積算露光量は1000mJ/cmであった。なお、上記高圧水銀ランプから発される光は、波長365nmを主波長として、254nm、313nm、405nm、及び436nmに強い線スペクトルを有する。
次いで、露光後の感光性層を計20mg程度かきとってこれを凍結粉砕した後、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)150μLを添加後、炭酸リチウム(LiCO)水溶液(1.2g/100mL。炭酸リチウムを超純水に溶解した後、フィルターろ過したもの。)中で6日間攪拌した。
攪拌終了後、超遠心(140,000rpm×30min)にて粒子を沈降させ、上澄みを超純水で置換した(置換を5回繰り返した)後、得られた沈殿物を乾固して、分析試料とした(n=2で試料作製)。この分析試料を、ICP-OES(パーキンエルマー製 Optima7300DV)で分析した。
なお、上述のICP-OES測定は以下の手順により実施した。
上記分析用試料約1.5mg~2mgを秤量(n=3)し、60% HNO水溶液5mLを添加した後、MWテフロン灰化(マイクロ波試料分解装置UltraWAVE max:260℃)を行った。
灰化後、超純水を加え、50mLにし、Li量はICP-OES(パーキンエルマー製 Optima7300DV)を用いて、絶対検量線法で定量した。
【0318】
・露光前の感光性材料のカルボキシ基量の測定(露光前のカルボキシ基量の測定)
以下の手順に従い、上記感光性層の形成に使用した各実施例及び比較例の感光性材料のカルボキシ基量を測定した。
感光性材料1gをテトラヒドロフラン63mlに溶解させ、これに超純水12ml加えた。次いで、平沼産業社製自動滴定装置を使用して、得られた溶液を0.1N-NaOH水溶液で滴定した。滴定により得られたカルボキシ基量を固形分濃度で換算することにより、感光性材料中のカルボキシ基量を算出した。
【0319】
・脱炭酸率の算出
上記露光前後でのカルボキシ基量の測定結果に基づいて、以下の数式により脱炭酸率を算出した。
脱炭酸率(%):{(露光前のカルボキシ基量-露光後のカルボキシ基量)/露光前のカルボキシ基量}×100(%)
得られた数値に基づいて、下記評価基準により評価を実施した。
ただし、上記手法の場合、検出限界が存在する。カルボキシ基含有量が1.05mmol/g以下では90%以上のLi置換可能である。それ以上の領域では、酸価が既知の架橋ポリマーを用いて検量線作製し、算出した。
【0320】
・評価基準
A 脱炭酸率71モル%以上
B 脱炭酸率50モル%以上71モル%未満
C 脱炭酸率31モル%以上50モル%未満
D 脱炭酸率5モル%以上31モル%未満
E 脱炭酸率5モル%未満
【0321】
結果を第2表中に示す(「カルボキシ基消費率〔灰化測定〕」欄参照。)
【0322】
(パターン形成性評価1)
得られた感光性層を、下記(1)~(3)のいずれかのマスクを介して高圧水銀ランプで露光した。365nmの照度計で計測した積算露光量は1000mJ/cmであった。
(1)ラインサイズ=25μmであり、且つ、ライン:スペース=1:1であるマスク
(2)ラインサイズ=50μmであり、且つ、ライン:スペース=1:1であるマスク
(3)ラインサイズ=250μmであり、且つ、ライン:スペース=1:1であるマスク
露光された感光性層を、1質量%炭酸ナトリウム水溶液で30秒ディップ現像したのち、20秒純水でリンス、乾燥し、パターン(ラインアンドスペースパターン)を得た。
このように作製された、ライン幅及びスペース幅が25μm、50μm、又は250μmのラインアンドスペースパターンを観察し、以下のように評価した。
A:ラインアンドスペースパターンが解像しており(スペース部の感光性層が除去できており)、パターンは膜減りしていない。
B:ラインアンドスペースパターンが解像しているが、パターンはわずかに膜減りが見られた
C:ラインアンドスペースパターンが解像しているが、パターンは大きく膜減りが見られた
D:ラインアンドスペースパターンは解像していなかった(スペース部の感光性層が残っているか、又は、パターンがすべて溶解して消失していた)
【0323】
(比誘電率評価1)
厚さ0.1mmのアルミ基板上に、感光性材料をスピンコートし、その後、得られた塗布膜をホットプレートで80℃で乾燥して、厚さ8μmの感光性層を作製した。
高圧水銀ランプを用いて、得られた感光性層を全面露光した。365nmの照度計で計測した積算露光量は1000mJ/cmであった。
露光後の感光性層について、Agilent社製LCRメータ4284A、及び誘電体テスト・フィクスチャ16451Bを用いて、1kHzにおける比誘電率を、23℃、50%RH環境下で測定した。
比較例1Aの感光性材料を用いて形成された感光性層の露光後の比誘電率を100%とし、これと比較して、各実施例の感光性材料を用いて形成された感光性層の露光後の比誘電率がどれだけ減少しているか減少率を算出し、下記基準に従って評価した。
減少率の値が大きいほど、比較例1Aに対して比誘電率が低下しており、絶縁膜として有用である。
A:減少率15%以上
B:減少率10%以上15%未満
C:減少率5%以上10%未満
D:減少率5%未満
【0324】
(露光前後の比誘電率評価1)
上記(比誘電率評価1)と同様に露光後の感光性層を作製した。この際、露光の前後においてそれぞれの感光性層の比誘電率を、上記(比誘電率評価1)と同様に測定した。
各感光性層の露光前の比誘電率を100%として、露光によって各感光性層の誘電率がどれだけ減少したかを算出し、下記基準に従って評価した。
減少率が大きいほど、露光による脱炭酸反応による誘電率の低下が進行したと判断できる。
A:減少率15%以上
B:減少率10%以上15%未満
C:減少率5%以上10%未満
D:減少率5%未満
【0325】
<転写フィルムの評価>
(転写フィルムの作製)
厚み16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ製、16KS40(16QS62))(仮支持体)の上に、スリット状ノズルを用いて、各実施例又は比較例の感光性材料を、乾燥後の厚みが5μmになるように調整して塗布し、100℃で2分間乾燥させ、感光性層を形成した。
得られた感光性層上に、厚み16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ製、16KS40(16QS62))(カバーフィルム)を圧着し、実施例1系の転写フィルムを作製した。
【0326】
(カルボキシ基消費率評価(IR測定))
上記にて作製した転写フィルムからカバーフィルムを剥離し、シリコンウェハにラミネートすることにより、シリコンウェハの表面に転写フィルムの感光性層を転写した。ラミネートの条件は、タッチパネル用基板の温度40℃、ゴムローラー温度(つまり、ラミネート温度)110℃、線圧3N/cm、搬送速度2m/分の条件とした。
転写後の感光性層を以下の露光条件により露光した。
≪露光条件≫
仮支持体を剥がした後、高圧水銀ランプを用いて、感光性層を全面露光した。365nmの照度計で計測した積算露光量は1000mJ/cmであった。なお、上記高圧水銀ランプから発される光は、波長365nmを主波長として、254nm、313nm、405nm、及び436nmに強い線スペクトルを有する。
露光前及び露光後にそれぞれ感光性層のIRスペクトルを測定し、カルボキシ基のC=O伸縮のピーク(1710cm-1のピーク)の減少率からカルボキシ基消費率(モル%)を算出した。
カルボキシ基消費率が高いほど脱炭酸反応が進行していることを表す。
結果を第1表中に示す(「カルボキシ基消費率(モル%)〔IR測定〕」欄参照。)
【0327】
(カルボキシ基消費率評価(灰化測定))
上記にて作製した転写フィルムからカバーフィルムを剥離し、ガラス(コーニング社製イーグルXG)10×10cmにラミネートすることにより、ガラスの表面に転写フィルムの感光性層を転写した。ラミネートの条件は、タッチパネル用基板の温度40℃、ゴムローラー温度(つまり、ラミネート温度)110℃、線圧3N/cm、搬送速度2m/分の条件とした。
【0328】
・露光後の感光性層のカルボキシ基量の測定(露光後のカルボキシ基量の測定)
転写後の感光性層を以下の露光条件により露光した。
≪露光条件≫
仮支持体を剥がした後、高圧水銀ランプを用いて、感光性層を全面露光した。365nmの照度計で計測した積算露光量は1000mJ/cmであった。なお、上記高圧水銀ランプから発される光は、波長365nmを主波長として、254nm、313nm、405nm、及び436nmに強い線スペクトルを有する。
次いで、露光後の感光性層を計20mg程度かきとってこれを凍結粉砕した後、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)150μLを添加後、炭酸リチウム(LiCO)水溶液(1.2g/100mL。炭酸リチウムを超純水に溶解した後、フィルターろ過したもの。)中で6日間攪拌した。
攪拌終了後、超遠心(140,000rpm×30min)にて粒子を沈降させ、上澄みを超純水で置換した(置換を5回繰り返した)後、得られた沈殿物を乾固して、分析試料とした(n=2で試料作製)。この分析試料を、ICP-OES(パーキンエルマー製 Optima7300DV)で分析した。
なお、上述のICP-OES測定は以下の手順により実施した。
上記分析用試料約1.5mg~2mgを秤量(n=3)し、60% HNO水溶液5mLを添加した後、MWテフロン灰化(マイクロ波試料分解装置UltraWAVE max:260℃)を行った。
灰化後、超純水を加え、50mLにし、Li量はICP-OES(パーキンエルマー製 Optima7300DV)を用いて、絶対検量線法で定量した。
【0329】
・露光前の感光性層のカルボキシ基量の測定(露光前のカルボキシ基量の測定)
以下の手順に従い、各実施例及び比較例の感光性層中のカルボキシ基量を測定した。
露光前の感光性層1gを掻きとり、テトラヒドロフラン63mlに溶解させ、これに超純水12ml加えた。次いで、平沼産業社製自動滴定装置を使用して、得られた溶液を0.1N-NaOH水溶液で滴定した。滴定により得られたカルボキシ基量を固形分濃度で換算することにより、感光性層中のカルボキシ基量を算出した。
【0330】
・脱炭酸率の算出
上記露光前後でのカルボキシ基量の測定結果に基づいて、以下の数式により脱炭酸率を算出した。
脱炭酸率(%):{(露光前のカルボキシ基量-露光後のカルボキシ基量)/露光前のカルボキシ基量}×100(%)
得られた数値に基づいて、下記評価基準により評価を実施した。
ただし、上記手法の場合、検出限界が存在する。カルボキシ基含有量が1.05mmol/g以下では90%以上のLi置換可能である。それ以上の領域では、酸価が既知の架橋ポリマーを用いて検量線作製し、算出した。
【0331】
・評価基準
A 脱炭酸率71モル%以上
B 脱炭酸率50モル%以上71モル%未満
C 脱炭酸率31モル%以上50モル%未満
D 脱炭酸率5モル%以上31モル%未満
E 脱炭酸率5モル%未満
【0332】
結果を第2表中に示す(「カルボキシ基消費率〔灰化測定〕」欄参照。)
【0333】
(365nm透過率)
島津製作所製紫外可視分光光度計UV1800を用いて感光性層の365nm透過率を測定し、下記評価基準に基づいて評価を実施した。
A 透過率90%以上
B 透過率65%以上90%未満
C 透過率20%以上65%未満
D 透過率20%未満
【0334】
(365nm透過率/313nm透過率
島津製作所製紫外可視分光光度計UV1800を用いて感光性層の365nm透過率と313nm透過率を測定し、365nm透過率を313nm透過率で割って算出した値を以下の通り評価した。
A 1.5以上
B 1以上、1.5未満
C 1未満
【0335】
(ラミネート適性評価)
上記にて作製した転写フィルムからカバーフィルムを剥離し、ジオマテック社の銅箔が積層されたPETフィルム(タッチパネル用基板)にラミネートすることにより、銅箔の表面に転写フィルムの感光性層を転写し、「仮支持体/感光性層/銅箔/基板(PETフィルム)」の積層構造を有する積層体を得た。ラミネートの条件は、タッチパネル用基板の温度40℃、ゴムローラー温度(つまり、ラミネート温度)110℃、線圧3N/cm、搬送速度2m/分の条件とした。なお、銅箔は、タッチパネルの配線を想定した膜である。
感光性層が銅箔に、泡、及び浮きがなく密着している面積を目視評価し、下記式に基づいて、密着した面積の割合(%)を求め、下記基準に従って評価した。密着した面積(%)が大きいほどラミネート適性に優れるといえる。
密着した面積の割合(%)=感光性層が密着した面積÷ラミネートした転写フィルムの面積×100
A:密着した面積の割合(%)が95%以上
B:密着した面積の割合(%)が95%未満
【0336】
(パターン形成性評価2)
次に、上記積層体から、仮支持体を剥離し、露出した感光性層に対して、高圧水銀ランプを用いて露光した。露光の際は、下記(1)~(3)のいずれかのマスクを介して露光した。365nmの照度計で計測した積算露光量は1000mJ/cmであった。
(1)ラインサイズ=25μmであり、かつ、ライン:スペース=1:1であるマスク
(2)ラインサイズ=50μmであり、且つ、ライン:スペース=1:1であるマスク
(3)ラインサイズ=250μmであり、且つ、ライン:スペース=1:1であるマスク
次に、露光された感光性層を、現像液として炭酸ナトリウム1質量%水溶液(液温:32℃)を用いて40秒間現像した。現像後、20秒純水でリンスし、更に、エアを吹きかけて水分を除去し、パターン(ラインアンドスペースパターン)を得た。
このように作製された、ライン幅及びスペース幅が25μm、50μm、又は250μmのラインアンドスペースパターンを、上記(パターン形成性評価1)と同様にして評価した。
【0337】
(比誘電率評価2)
上記にて作製した転写フィルムからカバーフィルムを剥離し、厚さ0.1mmのアルミ基板上に、上記(ラミネート適性評価)と同じ条件でラミネートし、「仮支持体/感光性層/アルミ基板」の積層構造を有する積層体を得た。次に、積層体から仮支持体を剥離した。露出した感光性層に対して、高圧水銀ランプを用い、全面露光した。365nmの照度計で計測した積算露光量は1000mJ/cmであった。
露光後の感光性層について、Agilent社製LCRメータ4284A、及び誘電体テスト・フィクスチャ16451Bを用いて、1kHzにおける比誘電率を、23℃、50%RH環境下で測定した。
比較例1Aの感光性材料を用いて形成された感光性層の露光後の比誘電率を100%とし、これと比較して、各実施例の感光性材料を用いて形成された感光性層の露光後の比誘電率がどれだけ減少しているか減少率を算出し、下記基準に従って評価した。
減少率の値が大きいほど、比較例1Aに対して比誘電率が低下しており、絶縁膜として有用である。
A:減少率15%以上
B:減少率10%以上15%未満
C:減少率5%以上10%未満
D:減少率5%未満
【0338】
(露光前後の比誘電率評価2)
上記(比誘電率評価2)と同様に露光後の感光性層を作製した。この際、露光の前後においてそれぞれの感光性層の比誘電率を、上記(比誘電率評価2)と同様に測定した。
各感光性層の露光前の比誘電率を100%として、露光によって各感光性層の誘電率がどれだけ減少したかを算出し、下記基準に従って評価した。
減少率が大きいほど、露光による脱炭酸反応による誘電率の低下が進行したと判断できる。
A:減少率15%以上
B:減少率10%以上15%未満
C:減少率5%以上10%未満
D:減少率5%未満
【0339】
(透湿度(WVTR)の評価)
・透湿度測定用試料の作製
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(仮支持体)の上に、スリット状ノズルを用いて、各実施例又は比較例の感光性材料を塗布し、次いで乾燥させることにより、厚さ8μmの感光性層を形成し、試料作製用転写フィルムを得た。
【0340】
次に、試料作製用転写フィルムを、住友電工製PTFE(四フッ化エチレン樹脂)メンブレンフィルターFP-100-100上にラミネートし、「仮支持体/厚さ8μmの感光性層/メンブレンフィルター」の層構造を有する積層体Aを形成した。ラミネートの条件は、メンブレンフィルター温度40℃、ラミロール温度110℃、線圧3N/cm、搬送速度2m/分とした。
次に、積層体Aから仮支持体を剥離した。
積層体Aの露出した感光性層の上に、更に、試料作製用転写フィルムを同様にラミネートし、得られた積層体から仮支持体を剥離することを4回繰り返し、「合計膜厚40μmの感光性層/メンブレンフィルター」の積層構造を有する積層体Bを形成した。
得られた積層体Bの感光性層を、高圧水銀ランプを用い、全面露光した。365nmの照度計で計測した積算露光量は1000mJ/cmであった。
以上により、「合計膜厚40μmの露光後の感光性層/メンブレンフィルター」の積層構造を有する透湿度測定用試料を得た。
【0341】
・透湿度(WVTR)の測定
透湿度測定用試料を用い、JIS-Z-0208(1976)を参考にして、カップ法による透湿度測定を実施した。以下、詳細を説明する。
まず、透湿度測定用試料から直径70mmの円形試料を切り出した。次に、測定カップ内に乾燥させた20gの塩化カルシウムを入れ、次いで上記円形試料によって蓋をすることにより、蓋付き測定カップを準備した。
この蓋付き測定カップを、恒温恒湿槽内にて65℃、90%RHの条件で24時間放置した。上記放置前後での蓋付き測定カップの質量変化から、円形試料の透湿度(WVTR)(単位:g/(m・day))を算出した。
上記測定を3回実施し、3回の測定でのWVTRの平均値を算出した。
比較例1AのWVTRを100%としたときの、各実施例のWVTRの減少率(%)に基づき、透湿度を評価した。なお、減少率の値が大きいほど比較例1Aに比べて透湿度が低減できており、保護膜として好ましい。下記評価基準において、A又はBであることが好ましく、Aであることがより好ましい。
なお、上記測定では、上述のとおり「合計膜厚40μm露光後の感光性層/メンブレンフィルター」の積層構造を有する円形試料のWVTRを測定した。しかし、メンブレンフィルターのWVTRが露光後の感光性層のWVTRと比較して極めて高いことから、上記測定では、実質的には、露光後の感光性層自体のWVTRを測定したことになる。
【0342】
A:WVTRの減少率が20%以上
B:WVTRの減少率が10%以上20%未満
C:WVTRの減少率が7.5%以上10%未満
D:WVTRの減少率が5%以上7.5%未満
E:WVTRの減少率が5%未満
【0343】
<結果>
下記第2表に、実施例1系における、各実施例又は比較例の感光性材料における化合物A及び化合物βの種類及び配合量、並びに、試験の結果を示す。
表中「量」欄は、感光性材料に添加された「酸基を有する化合物A(化合物A)」及び「化合物β」の配合量(質量部)を示す。なお、上記配合量(質量部)は、感光性材料に添加された「酸基を有する化合物A」及び「化合物β」そのもの(固形分)の量である。
表中「化合物Aのカルボキシ基に対するモル比(モル%)」欄は、感光性材料中における、化合物Aが有するカルボキシ基の合計数に対する、化合物βが有する、光励起状態で化合物Aの酸基から電子を受容できる構造(特定構造S1)の合計数の割合(モル%)を示す。
「ε365」欄は、化合物βの、アセトニトリル中における波長365nmの光に対するモル吸光係数(cm・mol/L)-1を示す。
「ε365/ε313」欄は、化合物βの波長365nmの光に対するモル吸光係数(cm・mol/L)-1を化合物βの波長313nmの光に対するモル吸光係数(cm・mol/L)-1で割った値を示す。なお、いずれのモル吸光係数もアセトニトリル中での値である。
「365nm透過率」欄は、感光性層の波長365nmの光に対する透過率を示す。
「365nm透過率/313nm透過率」欄は、感光性層の波長365nmの光に対する透過率を感光性層の波長313nmの光に対する透過率で割った値を示す。
【0344】
【表2】
【0345】
【表3】
【0346】
上記表に示した結果より、本発明の転写フィルムを用いれば、本発明の課題が解決されることが確認された。
また、本発明の転写フィルムにおける感光性層中、化合物βが有する特定構造S1の合計数は、化合物Aが有する酸基の合計数に対して、3モル%以上(好ましくは、5モル%以上、より好ましくは、10モル%以上)の場合、パターン形成性がより優れ、且つ、形成されるパターンの比誘電率がより低いことが確認された(実施例1-4、1-8、1-9、1-10、1-11の結果の比較等を参照)。
また、本発明の転写フィルムにおける感光性層中、化合物βが、波長365nmの光に対するモル吸光係数が1×10(cm・mol/L)-1以下の化合物である場合(好ましくは、波長365nmの光に対するモル吸光係数が1×10(cm・mol/L)-1以下の化合物である場合)、パターン形成性がより優れることが確認された(実施例1-1~1-7の結果の比較等を参照)。
また、本発明の転写フィルムにおける感光性層中、化合物βが、波長365nmの光に対するモル吸光係数(cm・mol/L)-1/波長313nmの光に対するモル吸光係数(cm・mol/L)-1で表される比が3以下の化合物である場合、パターン形成性がより優れることが確認された(実施例1-1~1-7の結果の比較等を参照)。
【0347】
[実施例2系]
<感光性材料の調製、及びその評価>
後段に示す第3表に記載の材料を、第3表に記載の配合量を満たし、且つ、最終的に得られる感光性材料の固形分濃度が25質量%になるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/メチルエチルケトン=50/50(質量比)の混合溶媒に、混合及び溶解させて、感光性材料を調製した。
得られた実施例2系の感光性材料(実施例2-1~2-8の感光性材料)について、実施例1系で示したのと同様にしてIR測定によりカルボキシ基消費率(モル%)を確認したところ、いずれもカルボキシ基消費率は20モル%以上であった。
また、得られた実施例2系における各実施例又は比較例の感光性材料について、実施例1系で示したのと同様にして、カルボキシ基消費率、感光性材料のパターン形成性、比誘電率、及び露光前後の比誘電率変化、並びに、転写フィルムのラミネート適性、パターン形成性、比誘電率、露光前後の比誘電率変化、及び透湿度を評価した。また、実施例1系で示したのと同様にして、転写フィルム中の感光性層について、カルボキシ基消費率、365nmの光に対する透過率、及び、313nmの光に対する透過率に対する365nmの光に対する透過率の比についても評価した。また、実施例1系で示したのと同様にして、感光性材料及び感光性層中に含まれる化合物βのε365/ε313の物性を評価した。
ただし、感光性材料に関する比誘電率の評価、並びに、転写フィルムに関する比誘電率及び透湿度の評価における減少率の基準は、比較例2Aの比誘電率又は透湿度とした。
【0348】
下記第3表に、実施例2系における、各実施例又は比較例の感光性材料の固形分の配合、及び試験の結果を示す。
表中、「固形分配合」欄に記載の値は、各実施例又は比較例の感光性材料に含まれる各固形分成分の含有量(質量部)を示す。なお、化合物βにおける丸括弧内の値は、感光性材料中における、酸基を有する化合物A(化合物A)が有するカルボキシ基の合計数に対する、化合物βが有する、化合物Aが含む酸基から電子を受容できる構造(特定構造S1)の合計数の割合(モル%)を示す。
また、化合物βの成分名に併記した鉤括弧内の値(ε365)は、化合物βの、アセトニトリル中における波長365nmの光に対するモル吸光係数((cm・mol/L)-1)を示す。
また、化合物βの成分名に併記した鉤括弧内の値(基底状態でのpKa)は、化合物βの、基底状態でのpKaを意図する。測定方法は既述のとおりである。
また、感光性材料の評価及び転写フィルムの評価における「ε365/ε313」欄は、化合物βの波長365nmの光に対するモル吸光係数(cm・mol/L)-1を化合物βの波長313nmの光に対するモル吸光係数(cm・mol/L)-1で割った値を示す。なお、いずれのモル吸光係数もアセトニトリル中での値である。
また、転写フィルムの評価における「365nm透過率」欄は、感光性層の波長365nmの光に対する透過率を示す。
また、転写フィルムの評価における「365nm透過率/313nm透過率」欄は、感光性層の波長365nmの光に対する透過率を感光性層の波長313nmの光に対する透過率で割った値を示す。
【0349】
【表4】
【0350】
UC3910:ARUFON UC3910(東亞合成社製)
DPHA:ジペンエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学社製A-DPH)
A-NOD-N:1,9-ノナンジオールジアクリレート(新中村化学社製A-NOD-N)
DTMPT:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(日本化薬社製KAYARAD T-1420(T))
A-DCP:ジシクロペンタンジメタノールジアクリレート(新中村化学社製A-DCP)
TMPT:トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学社製A-TMPT)
F551:メガファックF551(DIC社製)
【0351】
上記表の結果から、感光性材料が重合性化合物を含む場合でも、本発明の転写フィルムによれば、本発明の課題を解決できることが確認された。
また、本発明の効果がより優れたものとなる条件についても、実施例1系に関して確認されたのと、同様の傾向であることが確認された。
【0352】
[実施例3系]
<感光性材料の調製、及びその評価>
後段に示す第4表に記載の材料を、第4表に記載の配合量を満たし、且つ、最終的に得られる感光性材料の固形分濃度が25質量%になるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/メチルエチルケトン=50/50(質量比)の混合溶媒に、混合及び溶解させて、感光性材料を調製した。
なお、感光性材料の調製に当たっては、「樹脂Aの合成方法」「樹脂Bの合成方法」として後述する方法で得られた、樹脂Aの溶液、又は、樹脂Bの溶液を用いて、感光性材料中に樹脂A又は樹脂Bを導入した。
【0353】
得られた実施例3系の感光性材料(実施例3-1~3-12の感光性材料)について、実施例1系で示した(カルボキシ基消費率評価(IR測定))と同様にしてIR測定によりカルボキシ基消費率(モル%)を確認したところ、いずれもカルボキシ基消費率は20モル%以上であった。
更に、実施例1系で示した(カルボキシ基消費率評価(IR測定))における高圧水銀ランプを用いた1000mJ/cmの露光の前に、超高圧水銀ランプを用いた100mJ/cmの露光を行い、その後、高圧水銀ランプを用いた1000mJ/cmの露光をする試験も行った。このように事前に100mJ/cmの露光を行っていた場合であっても、1000mJ/cmの露光の前後におけるカルボキシ基消費率は、いずれの実施例3系の感光性材料(実施例3-1~3-12の感光性材料)を用いても、20モル%以上となった。
【0354】
また、得られた実施例3系における各実施例又は比較例の感光性材料について、実施例1系で示したのと同様にして、カルボキシ基消費率、感光性材料の比誘電率、及び露光前後の比誘電率変化、並びに、転写フィルムのラミネート適性、比誘電率、露光前後の比誘電率変化、及び透湿度を評価した。また、実施例1系で示したのと同様にして、転写フィルム中の感光性層について、カルボキシ基消費率、365nmの光に対する透過率、及び、313nmの光に対する透過率に対する365nmの光に対する透過率の比についても評価した。また、実施例1系で示したのと同様にして、感光性材料及び感光性層中に含まれる化合物βのε365/ε313の物性を評価した。
ただし、感光性材料に関する比誘電率の評価、並びに、転写フィルムに関する比誘電率及び透湿度の評価における減少率の基準は、比較例3Aの比誘電率又は透湿度とした。
実施例3系における各実施例又は比較例の感光性材料について、パターン形成性を、パターン形成方法を以下のように変更したこと以外は実施例1系と同様に評価した。
各実施例又は比較例の感光性材料を、シリコンウェハにスピン塗布し、その後、得られた塗布膜をホットプレートで80℃で乾燥して、膜厚5μmの感光性層を得た。
得られた感光性層を、実施例1系と同様のマスクを介して、超高圧水銀ランプで露光した。365nmの照度計で計測した積算露光量は100mJ/cm2であった。
次に、パターン露光された感光性層を、現像液として炭酸ナトリウム1質量%水溶液(液温:32℃)を用いて40秒間現像した。現像後、20秒純水でリンスし、更に、エアを吹きかけて水分を除去し、パターンを得た。
得られたパターンに高圧水銀ランプを用いて全面露光した。365nmの照度計で計測した積算露光量は1000mJ/cm2であった。
実施例3系における各実施例又は比較例の転写フィルムについてパターン形成性を、パターン形成方法を以下のように変更したこと以外は実施例1系と同様に評価した。
作製した転写フィルムからカバーフィルムを剥離し、銅箔が積層されたCOPフィルム(タッチパネル用基板)にラミネートすることにより、銅箔の表面に転写フィルムの感光性層を転写し、「仮支持体/感光性層/銅箔/基板(COPフィルム)」の積層構造を有する積層体を得た。ラミネートの条件は、タッチパネル用基板の温度40℃、ゴムローラー温度(即ち、ラミネート温度)110℃、線圧3N/cm、搬送速度2m/分の条件とした。ここで、銅箔は、タッチパネルの配線を想定した膜である。
ラミネート性は良好であった。
次に、超高圧水銀ランプを有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株))を用い、露光マスク面と仮支持体の面との間の距離を125μmに設定し、上記積層体の感光性層を、仮支持体を介して、超高圧水銀ランプで露光量100mJ/cm(i線)の条件でパターン露光した。
マスクは実施例1系と同様のラインアンドスペースパターンマスクである。
露光後、積層体から仮支持体を剥離した。
次に、仮支持体が剥離された積層体の感光性層を、現像液としての炭酸ナトリウム1質量%水溶液(液温:32℃)を用いて40秒間現像した。現像後、純水にて20秒リンスし、エアを吹きかけて水分を除去し、パターンを得た。
得られたパターンに高圧水銀ランプを用いて全面露光した。365nmの照度計で計測した積算露光量は1000mJ/cm2であった。
【0355】
<2回露光条件での比誘電率の評価>
実施例3系では、2回露光条件での比誘電率の評価も行った。なお、1回露光条件での比誘電率の評価とは、実施例1系で示した上記(比誘電率評価2)と同様の条件で評価した比誘電率の評価を意味する。
【0356】
実施例3系の感光性材料について、実施例1系で示した(転写フィルムの作製)と同様にして転写フィルムを作製した。得られた転写フィルムから、カバーフィルムを剥離し、厚さ0.1mmのアルミ基板上に、上記(ラミネート適性評価)と同様の条件で転写フィルムをラミネートし、「仮支持体/感光性層/アルミ基板」の積層構造を有する積層体を得た。
上記積層体に、1回目の露光として、超高圧水銀ランプを用い、仮支持体越しに感光性層を全面露光した。1回目の露光において、365nmの照度計で計測した積算露光量は100mJ/cmであった。なお、1回目の露光は仮支持体(ポリエチレンテレフタラート)越しに露光しているため、320nm以下の波長の光は大部分が遮蔽されている。このため、波長365nmの光に対するモル吸光係数が大きいもの(例えば1×10(cm・mol/L)-1以上)が優先的に反応に関与していると考えられる。
その後、上記積層体から仮支持体を剥離し、2回目の露光として、高圧水銀ランプを用い、感光性層を全面露光した。2回目の露光において、365nmの照度計で計測した積算露光量は1000mJ/cmであった。
このように露光された感光性層について、実施例1系で示した上記(比誘電率評価2)と同様にして比誘電率を測定した。
ただし、比誘電率の基準としては、2回露光条件における比較例3Aの比誘電率とした。
【0357】
下記第4表に、実施例3系における、各実施例又は比較例の感光性材料の固形分の配合、及び試験の結果を示す。
第4表中の、第3表にあるのと同様の記載は、第3表に関して説明したとおりの意味である。
【0358】
【表5】
【0359】
樹脂A:下記構造の樹脂(酸価:94.5mgKOH/g)
【0360】
【化8】
【0361】
・・樹脂Aの合成方法
プロピレングリコールモノメチルエーテル200g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50g、をフラスコに仕込み窒素気流下90℃に加熱した。この液にシクロヘキシルメタクリレート192.9g、メチルメタクリレート4.6g、メタクリル酸89.3gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート60gに溶解させた溶液、及び、重合開始剤V-601(富士フイルム和光純薬社製)9.2gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート114.8gに溶解させた溶液を同時に3時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間おきに3回V-601の2gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gに溶解させた溶液を添加した。その後更に3時間反応させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート168.7gで希釈した。空気気流下、反応液を100℃に昇温し、テトラエチルアンモニウムブロミド1.5g、p-メトキシフェノール0.67gを添加した。これにグリシジルメタクリレート(日油社製ブレンマーGH)63.4gを20分かけて滴下した。これを100℃で6時間反応させ、樹脂Aの溶液を得た。得られた溶液の固形分濃度は36.2%であった。GPCにおける標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は27000、分散度は2.9、ポリマーの酸価は94.5mgKOH/gであった。ガスクロマトグラフィーを用いて測定した残存モノマー量はいずれのモノマーにおいてもポリマー固形分に対し0.1質量%未満であった。
【0362】
樹脂B:下記構造の樹脂(酸価:94.5mgKOH/g)
【0363】
【化9】
【0364】
・・樹脂Bの合成方法
プロピレングリコールモノメチルエーテル82.4gをフラスコに仕込み窒素気流下90℃に加熱した。この液にスチレン38.4g、ジシクロペンタニルメタクリレート30.1g、メタクリル酸34.0gをプロピレングリコールモノメチルエーテル20gに溶解させた溶液、及び、重合開始剤V-601(富士フイルム和光純薬社製)5.4gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート43.6gに溶解させた溶液を同時に3時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間おきに3回V-601を0.75g添加した。その後更に3時間反応させた。その後プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート58.4g、プロピレングリコールモノメチルエーテル11.7gで希釈した。空気気流下、反応液を100℃に昇温し、テトラエチルアンモニウムブロミド0.53g、p-メトキシフェノール0.26gを添加した。これにグリシジルメタクリレート(日油社製ブレンマーGH)25.5gを20分かけて滴下した。これを100℃で7時間反応させ、樹脂Bの溶液を得た。得られた溶液の固形分濃度は36.2%であった。GPCにおける標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は17000、分散度は2.4、ポリマーの酸価は94.5mgKOH/gであった。ガスクロマトグラフィーを用いて測定した残存モノマー量はいずれのモノマーにおいてもポリマー固形分に対し0.1質量%未満であった。
【0365】
DPHA:ジペンエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学社製A-DPH)
A-NOD-N:1,9-ノナンジオールジアクリレート(新中村化学社製A-NOD-N)
DTMPT:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート (日本化薬社製KAYARAD T-1420(T))
A-DCP:ジシクロペンタンジメタノールジアクリレート(新中村化学社製A-DCP)
TMPT:トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学社製A-TMPT)
F551:メガファックF551(DIC社製)
OXE-02:Irgacure OXE02(BASF社製、オキシムエステル化合物)アセトニトリル中における波長365nmの光に対するモル吸光係数2700(cm・mol/L)-1
Omn907:Omnirad 907(IGM Resins B.V.社製、アミノアセトフェノン化合物)アセトニトリル中における波長365nmの光に対するモル吸光係数120(cm・mol/L)-1
【0366】
表に示したとおり、感光性層が光重合開始剤及び重合性化合物を含む場合でも、本発明の転写フィルムによれば、本発明の課題を解決できることが確認された。
また、本発明の効果がより優れたものとなる条件についても、実施例1系に関して確認されたのと、同様の傾向であることが確認された。
【0367】
[実施例3系の感光性材料を用いて形成される感光性層と第二の樹脂層とを有する層の2回露光の条件での評価]
<転写フィルムの作製>
(感光性層の形成)
厚み16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ製、16KS40)(仮支持体)の上に、スリット状ノズルを用いて、実施例3系に示した各実施例の感光性材料液を、乾燥後の厚みが5μmになるように調整して塗布し、100℃で2分間乾燥させて、感光性層を形成した。
【0368】
(第二の樹脂層の形成)
次に、感光性層上に、下記の処方201からなる第二の樹脂層用塗布液を、乾燥後の厚みが70nmになるように調整して塗布し、80℃で1分間乾燥させた後、更に110℃で1分間乾燥させて、感光性層に直接接して配置された第二の樹脂層を形成した。第二の樹脂層の膜厚は70nm、屈折率は1.68であった。
なお、処方201は、酸基を有する樹脂と、アンモニア水溶液を用いて調製しており、酸基を有する樹脂はアンモニア水溶液で中和される。つまり、第二の樹脂層用塗布液は、酸基を有する樹脂のアンモニウム塩を含む水系樹脂組成物である。
【0369】
・第二の樹脂層用塗布液:処方201(水系樹脂組成物)
・アクリル樹脂(酸基を有する樹脂、メタクリル酸/メタクリル酸アリルの共重合樹脂、重量平均分子量2.5万、組成比(モル比)=40/60、固形分99.8%):0.29部
・アロニックス TO-2349(カルボン酸基を有するモノマー、東亞合成(株)製):0.04部
・ナノユースOZ-S30M(ZrO粒子、固形分30.5%、メタノール69.5%、屈折率が2.2、平均粒径:約12nm、日産化学工業(株)製):4.80部
・BT120(ベンゾトリアゾール、城北化学工業(株)製):0.03部
・メガファックF444(フッ素系界面活性剤、DIC(株)製):0.01部
・アンモニア水溶液(2.5質量%):7.80部
・蒸留水:24.80部
・メタノール:76.10部
【0370】
(パターンの形成)
上記のようにして得られた、仮支持体の上に感光性層と、感光性層に直接接して配置された第二の樹脂層とをこの順で設けた積層体に対し、その第二の樹脂層の上に、厚み16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ製、16KS40)(カバーフィルム)を圧着した。これにより、実施例3系の各実施例の感光性材料を用いて感光性層と、第二の樹脂層とを有する転写フィルムを作製した。
上記にて作製した転写フィルムからカバーフィルムを剥離し、ジオマテック社の銅箔が積層されたPETフィルム(タッチパネル用基板)にラミネートすることにより、銅箔の表面に転写フィルムの感光性層を転写し、「仮支持体/感光性層/第二の樹脂層/銅箔/基板(PETフィルム)」の積層構造を有する積層体を得た。ラミネートの条件は、タッチパネル用基板の温度40℃、ゴムローラー温度(即ち、ラミネート温度)110℃、線圧3N/cm、搬送速度2m/分の条件とした。ここで、銅箔は、タッチパネルの配線を想定した膜である。
ラミネート性は第二の樹脂層を有さない実施例3系の各転写フィルムと同等で良好であった。
【0371】
次に、超高圧水銀ランプを有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株))を用い、露光マスク面と仮支持体の面との間の距離を125μmに設定し、上記積層体の感光性層を、仮支持体を介して、超高圧水銀ランプで露光量100mJ/cm(i線)の条件でパターン露光した。
露光の際は、ラインサイズ=50μmであり、且つ、ライン:スペース=1:1であるマスク、又は、ラインサイズ=250μmであり、且つ、ライン:スペース=1:1であるマスクを介して露光した。
【0372】
露光後、積層体から仮支持体を剥離した。
次に、仮支持体が剥離された積層体の感光性層を、現像液としての炭酸ナトリウム1質量%水溶液(液温:32℃)を用いて40秒間現像した。現像後、純水にて20秒リンスし、エアを吹きかけて水分を除去し、パターンを得た。得られたパターンに高圧水銀ランプを用いて全面露光した。365nmの照度計で計測した積算露光量は1000mJ/cmであった。
このように作製されたライン幅及びスペース幅が50μm又は250μmのラインアンドスペースパターンの上記(パターン形成性評価1)と同様にして評価したところ、第二の樹脂層を有さない実施例3系の各転写フィルムで同様にパターンの形成及び評価を行った場合と、同等に良好な評価結果であった。
すなわち、重合性化合物及び光重合開始剤を含む感光性層を備えた本発明の転写フィルムは、2段階露光条件においても良好なパターン形成性を有する。
【0373】
銅箔が積層されたPETフィルムの代わりにタッチパネル透明電極を想定したITO被膜を有するPETフィルムを用いて、実施例3系の感光性組成物を用いた第二の樹脂層有する感光性層の2回露光の条件での評価と同じ評価を行ったところ、銅箔が積層されたPETフィルムを用いた場合と同様に良好なラミネート性、パターン形成性を示した。
【0374】
[実施例4系]
下記第5表に、実施例4系で使用する酸基を有する化合物A(重合体)の構造を示す。なお、化合物Aの合成は、公知の手法により合成したものを使用した。
以下において、代表例として、化合物番号1の重合体の合成方法を示す。
【0375】
(化合物番号1の重合体の合成)
容量2000mLのフラスコに、PGMEA(60部)、PGME(240部)を導入した。得られた液体を、撹拌速度250rpm(round per minute;以下同じ。)で撹拌しつつ90℃に昇温した。
滴下液(1)の調製として、スチレン(47.7部)、メタクリル酸メチル(1.3部)、及びメタクリル酸(51部)を混合し、PGMEA(60部)で希釈することにより、滴下液(1)を得た。
滴下液(2)の調製として、V-601(ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(9.637部)をPGMEA(136.56g)で溶解させることにより、滴下液(2)を得た。
滴下液(1)と滴下液(2)とを同時に3時間かけて、上述した容量2000mLのフラスコ(詳細には、90℃に昇温された液体が入った容量2000mLのフラスコ)に滴下した。滴下終了後、1時間おきにV-601(2.401g)を上記フラスコに3回添加した。その後90℃で更に3時間撹拌した。
その後、上記フラスコ中の得られた溶液(反応液)をPGMEA(178部)で希釈した。次に、テトラエチルアンモニウムブロミド(1.8部)とハイドロキノンモノメチルエーテル(0.8g部)を反応液に添加した。その後、反応液の温度を100℃まで昇温させた。
次に、第5表の化合物番号1の組成となる添加量のグリシジルメタクリレートを1時間かけて反応液に滴下した。上記反応液を100℃で6時間反応させることで、重合体の溶液を得た(固形分濃度36.3質量%)。
【0376】
第5表に示す化合物Aの重量平均分子量は、第5表に示す通り、10,000~50,000の範囲である。
また、第5表中の各構造単位の数値は質量比を表す。
【0377】
第5表、化合物A欄において、化合物A(重合体)の構造単位を形成する各モノマーの略語は以下の通りである。なお、GMA-MAAは、メタクリル酸に由来する構成単位に対してグリシジルメタクリレートが付加した構成単位を意味し、GMA-AAは、アクリル酸に由来する構成単位に対してグリシジルメタクリレートが付加した構成単位を意味する。
【0378】
St:スチレン
CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
CHA:アクリル酸シクロヘキシル
MMA:メタクリル酸メチル
EA::アクリル酸エチル
BzMA:メタクリル酸ベンジル
BzA:アクリル酸ベンジル
HEMA:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
MAA:メタクリル酸
AA:アクリル酸
【0379】
【表6】
【0380】
<感光性材料の調製、及びその評価>
後段に示す第6表に記載の材料を、第6表に記載の配量を満たし、且つ、最終的に得られる感光性材料の固形分濃度が25質量%になるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/メチルエチルケトン=50/50(質量比)の混合溶媒に、混合及び溶解させて、感光性材料を調製した。
【0381】
なお、以下の第6表においては、実施例及び比較例の各番号は、頭番号+通し番号で示す。すなわち、実施例4-1-1とは、頭番号が4-1であり、通し番号が1である実施例に該当する。また、比較例4A-1とは、頭番号が4Aであり、通し番号が1である実施例に該当する。
【0382】
また、得られた実施例4系における各実施例又は比較例の感光性材料について、実施例1系で示したのと同様にして、カルボキシ基消費率、感光性材料のパターン形成性、比誘電率、及び露光前後の比誘電率変化、並びに、転写フィルムのラミネート適性、パターン形成性、比誘電率、露光前後の比誘電率変化、及び透湿度を評価した。また、実施例1系で示したのと同様にして、転写フィルム中の感光性層のカルボキシ基消費率、365nmの光に対する透過率、及び、313nmの光に対する透過率に対する365nmの光に対する透過率の比についても評価した。また、実施例1系で示したのと同様にして、感光性材料及び感光性層中に含まれる化合物βのε365/ε313の物性を評価した。
ただし、感光性材料に関する比誘電率の評価、並びに、転写フィルムに関する比誘電率及び透湿度の評価における減少率の基準は、同一の通し番号の比較例の比誘電率又は透湿度とした。すなわち、例えば、実施例4-1-1の場合、通し番号は1であることから、同一の通し番号を有する比較例4A-1が基準に該当する。また、例えば、実施例4-27-51の場合、通し番号は51であることから、同一の通し番号を有する比較例4A-51が基準に該当する。
【0383】
以下、第6表に、実施例4系における、各実施例又は比較例の感光性材料の固形分の配合、及び試験の結果を示す。
表中、「酸基を有する化合物A」欄の「化合物番号」は、上述した第5表に記載される「化合物番号」に相当する。
表中、「質量部」欄に記載の値は、各成分の固形分成分の含有量(質量部)を示す。なお、上記配合量(質量部)は、感光性材料に添加された「酸基を有する化合物A」及び「化合物β」そのもの(固形分)の量である。
また、表中、「基底状態でのpKa」の測定方法は既述のとおりである。
また、表中、「ε365」欄は、化合物βの、アセトニトリル中における波長365nmの光に対するモル吸光係数((cm・mol/L)-1)を示す。
また、表中、化合物βにおける「酸基を有する化合物Aのカルボキシ基に対するモル比(モル%))」の値は、感光性材料中における、酸基を有する化合物A(化合物A)が有するカルボキシ基の合計数に対する、化合物βが有する、化合物Aが含む酸基から電子を受容できる構造(特定構造S1)の合計数の割合(モル%)を示す。
また、感光性材料の評価及び転写フィルムの評価における「ε365/ε313」欄は、化合物βの波長365nmの光に対するモル吸光係数(cm・mol/L)-1を化合物βの波長313nmの光に対するモル吸光係数(cm・mol/L)-1で割った値を示す。なお、いずれのモル吸光係数もアセトニトリル中での値である。
また、転写フィルムの評価における「365nm透過率」欄は、感光性層の波長365nmの光に対する透過率を示す。
また、転写フィルムの評価における「365nm透過率/313nm透過率」欄は、感光性層の波長365nmの光に対する透過率を感光性層の波長313nmの光に対する透過率で割った値を示す。
【0384】
また、第6表において、感光性材料の調製に使用した化合物βの種類は記号で示す。
化合物βの種類と、記号との対応関係は、以下に示す通りである。以下において、各化合物βについて記載した「基底状態でのpKa」の測定方法は既述のとおりである。「ε365」は、化合物βの、アセトニトリル中における波長365nmの光に対するモル吸光係数((cm・mol/L)-1)を示す。
================================
記号; 種類 基底状態でのpKa ε365
--------------------------------
B1;イソキノリン 4.69 <10
B2;キノリン 4.15 <10
B3;アクリジン 4.67 4900
B4;1-nブチルイソキノリン 5.27 <10
B5;1-nブチル-4-メチルイソキノリン 5.9 <10
B6;1-Meイソキノリン 5.31 <10
B7;2,4,5,7-テトラメチルキノリン 6.23 <10
B8;2-メチル-4-メトキシキノリン 6.51 <10
B9;9-メチルアクリジン 5.4 6300
B10;9-フェニルアクリジン 4.04 >10000
B11;ピリジン 5.25 <10
B12;2,4-ジメチルキノリン 5.67 <10
B13;4-アミノピリジン 9.20 <100
B14;2-クロロピリジン 0.70 <10
===============================
【0385】
【表7】
【0386】
【表8】
【0387】
【表9】
【0388】
【表10】
【0389】
【表11】
【0390】
【表12】
【0391】
【表13】
【0392】
【表14】
【0393】
【表15】
【0394】
【表16】
【0395】
【表17】
【0396】
【表18】
【0397】
【表19】
【0398】
【表20】
【0399】
【表21】
【0400】
【表22】
【0401】
【表23】
【0402】
【表24】
【0403】
【表25】
【0404】
【表26】
【0405】
【表27】
【0406】
【表28】
【0407】
【表29】
【0408】
【表30】
【0409】
【表31】
【0410】
【表32】
【0411】
【表33】
【0412】
【表34】
【0413】
【表35】
【0414】
【表36】
【0415】
【表37】
【0416】
上記表の結果から、本発明の転写フィルムによれば、本発明の課題を解決できることが確認された。
【0417】
また、本発明の効果がより優れたものとなる条件についても、実施例1系に関して確認されたのと、同様の傾向であることが確認された。
【0418】
[実施例5系]
<感光性材料の調製、及びその評価>
後段に示す第7表に記載の材料を、最終的に得られる感光性材料の固形分濃度が25質量%になるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/メチルエチルケトン=50/50(質量比)の混合溶媒に、混合及び溶解させて、感光性材料を調製した。
【0419】
また、得られた実施例5系における各実施例又は比較例の感光性材料について、実施例1系で示したのと同様にして、カルボキシ基消費率、感光性材料のパターン形成性、比誘電率、及び露光前後の比誘電率変化、並びに、転写フィルムのラミネート適性、パターン形成性、比誘電率、露光前後の比誘電率変化、及び透湿度を評価した。また、実施例1系で示したのと同様にして、転写フィルム中の感光性層のカルボキシ基消費率、365nmの光に対する透過率、及び、313nmの光に対する透過率に対する365nmの光に対する透過率の比についても評価した。
ただし、感光性材料に関する比誘電率の評価、並びに、転写フィルムに関する比誘電率及び透湿度の評価における減少率の基準は、比較例5Aの比誘電率又は透湿度とした。
【0420】
以下、第7表に、実施例5系における、各実施例又は比較例の感光性材料の固形分の配合、及び試験の結果を示す。なお、実施例5系で示す各実施例の感光性材料は、酸基及び特定構造S1を有する化合物A(固形分)が100質量%の組成である。
表中「x/y/z」欄は、化合物Aを構成する各構造単位の質量比を示す。
第7表に示す化合物Aの重量平均分子量は、第7表に示す通り、いずれも、10,000~50,000である。
また、転写フィルムの評価における「365nm透過率」欄は、感光性層の波長365nmの光に対する透過率を示す。
また、転写フィルムの評価における「365nm透過率/313nm透過率」欄は、感光性層の波長365nmの光に対する透過率を感光性層の波長313nmの光に対する透過率で割った値を示す。
【0421】
また、表中、St/AAの記載は、スチレン/アクリル酸共重合体(組成比:スチレンに基づく繰り返し単位/アクリル酸に基づく繰り返し単位=80/20(質量比)を意味する。
【0422】
【表38】
【0423】
上記表の結果から、本発明の転写フィルムによれば、本発明の課題を解決できることが確認された。
【0424】
[実施例6系]
<感光性材料の調製、及びその評価>
後段に示す第8表に記載の材料を、第8表に記載の配合量を満たし、且つ、最終的に得られる感光性材料の固形分濃度が25質量%になるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/メチルエチルケトン=50/50(質量比)の混合溶媒に、混合及び溶解させて、感光性材料を調製した。
【0425】
また、得られた実施例6系における各実施例又は比較例の感光性材料について、実施例1系で示したのと同様にして、カルボキシ基消費率、感光性材料のパターン形成性、比誘電率、及び露光前後の比誘電率変化、並びに、転写フィルムのラミネート適性、パターン形成性、比誘電率、露光前後の比誘電率変化、及び透湿度を評価した。また、実施例1系で示したのと同様にして、転写フィルム中の感光性層のカルボキシ基消費率、365nmの光に対する透過率、及び、313nmの光に対する透過率に対する365nmの光に対する透過率の比についても評価した。また、実施例1系で示したのと同様にして、感光性材料及び感光性層中に含まれる化合物βのε365/ε313の物性を評価した。
ただし、感光性材料に関する比誘電率の評価、並びに、転写フィルムに関する比誘電率及び透湿度の評価における減少率の基準は、比較例6Aの比誘電率又は透湿度とした。
【0426】
下記第8表に、実施例6系における、各実施例又は比較例の感光性材料の固形分の配合、及び試験の結果を示す。
表中、「固形分配合」欄に記載の値は、各実施例又は比較例の感光性材料に含まれる各固形分成分の含有量(質量部)を示す。なお、化合物βにおける丸括弧内の値は、感光性材料中における、酸基を有する化合物A(化合物A)が有するカルボキシ基の合計数に対する、化合物βが有する、化合物Aが含む酸基から電子を受容できる構造(特定構造S1)の合計数の割合(モル%)を示す。
また、表中、「化合物βの基底状態でのpKa」の測定方法は既述のとおりである。
また、表中、「化合物βのε365」欄は、化合物βの、アセトニトリル中における波長365nmの光に対するモル吸光係数((cm・mol/L)-1)を示す。
また、感光性材料の評価及び転写フィルムの評価における「ε365/ε313」欄は、化合物βの波長365nmの光に対するモル吸光係数(cm・mol/L)-1を化合物βの波長365nmの光に対するモル吸光係数(cm・mol/L)-1で割った値を示す。なお、いずれのモル吸光係数もアセトニトリル中での値である。
また、転写フィルムの評価における「365nm透過率」欄は、感光性層の波長365nmの光に対する透過率を示す。
また、転写フィルムの評価における「365nm透過率/313nm透過率」欄は、感光性層の波長365nmの光に対する透過率を感光性層の波長313nmの光に対する透過率で割った値を示す。
【0427】
【表39】
【0428】
【表40】
【0429】
【表41】
【0430】
【表42】
【0431】
【表43】
【0432】
【表44】
【0433】
【表45】
【0434】
【表46】
【0435】
【表47】
【0436】
【表48】
【0437】
【表49】
【0438】
(酸基を有する化合物A)
上述した実施例4系と同様の手法により、酸基を有する化合物Aに該当する重合体1~4を合成した。なお、重合体の各構造単位を形成するモノマーの略語については、既述のとおりである。
重合体1:St/MAA/MMA/GMA-MAA=47.7/19.0/1.3/32.0(質量比)
重合体2:CHMA/MAA/BzMA=49/19/32(質量比)
重合体3:St/AA/AA-GMA=53.5/14.5/32(質量比)
重合体4:CHA/AA/HEA=53.5/14.5/32(質量比)
なお、第8表に示す化合物Aの重量平均分子量は、第8表に示す通り、いずれも10,000~50,000の範囲である。
【0439】
(重合性化合物)
DPHA:ジペンエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学社製A-DPH)
A-NOD-N:1,9-ノナンジオールジアクリレート(新中村化学社製A-NOD-N)
DTMPT:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート (日本化薬社製KAYARAD T-1420(T))
A-DCP:ジシクロペンタンジメタノールジアクリレート(新中村化学社製A-DCP)
TMPT:トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学社製A-TMPT)
SR601:エトキシ化(4)ビスフェノールAジアクリレート (巴工業株式会社製SR601)
KRM8904:9官能脂肪族ウレタンアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社製KRM8904)
KRM8452:10官能脂肪族ウレタンアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社製KRM8452)
【0440】
(界面活性剤)
F551:メガファックF551(DIC社製)
R41:メガファックR-41(DIC社製)
710FL:フタージェント710FL(ネオス社製)
【0441】
上記表の結果から、感光性材料が重合性化合物を含む場合でも、本発明の転写フィルムによれば、本発明の課題を解決できることが確認された。
【0442】
[実施例7系]
<感光性材料の調製、及びその評価>
後段に示す第9表に記載の材料を、第9表に記載の配合比を満たし、且つ、最終的に得られる感光性材料の固形分濃度が25質量%になるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/メチルエチルケトン=50/50(質量比)の混合溶媒に、混合及び溶解させて、感光性材料を調製した。
【0443】
また、得られた実施例7系における各実施例又は比較例の感光性材料について、実施例3系で示したのと同様にして、カルボキシ基消費率、感光性材料のパターン形成性、比誘電率、及び露光前後の比誘電率変化、並びに、転写フィルムのラミネート適性、パターン形成性、比誘電率、露光前後の比誘電率変化、透湿度、並びに2回露光後の比誘電率変化を評価した。また、実施例3系で示したのと同様にして、転写フィルム中の感光性層のカルボキシ基消費率、365nmの光に対する透過率、及び、313nmの光に対する透過率に対する313nmの光に対する透過率の比についても評価した。また、実施例1系で示したのと同様にして、感光性材料及び感光性層中に含まれる化合物βのε365/ε313の物性を評価した。
ただし、感光性材料に関する比誘電率の評価、並びに、転写フィルムに関する比誘電率及び透湿度の評価における減少率の基準は、比較例7Aの比誘電率又は透湿度とした。
【0444】
下記第9表に、実施例7系における、各実施例又は比較例の感光性材料の固形分の配合、及び試験の結果を示す。
表中、「固形分配合」欄に記載の値は、各実施例又は比較例の感光性材料に含まれる各固形分成分の含有量(質量部)を示す。なお、化合物βにおける丸括弧内の値は、感光性材料中における、酸基を有する化合物A(化合物A)が有するカルボキシ基の合計数に対する、化合物βが有する、化合物Aが含む酸基から電子を受容できる構造(特定構造S1)の合計数の割合(モル%)を示す。
また、表中、「化合物βの基底状態でのpKa」の測定方法は既述のとおりである。
また、表中、「化合物βのε365」欄は、化合物βの、アセトニトリル中における波長365nmの光に対するモル吸光係数((cm・mol/L)-1)を示す。
また、感光性材料の評価及び転写フィルムの評価における「ε365/ε313」欄は、化合物βの波長365nmの光に対するモル吸光係数(cm・mol/L)-1を化合物βの波長313nmの光に対するモル吸光係数(cm・mol/L)-1で割った値を示す。なお、いずれのモル吸光係数もアセトニトリル中での値である。
また、転写フィルムの評価における「365nm透過率」欄は、感光性層の波長365nmの光に対する透過率を示す。
また、転写フィルムの評価における「365nm透過率/313nm透過率」欄は、感光性層の波長365nmの光に対する透過率を感光性層の波長313nmの光に対する透過率で割った値を示す。
【0445】
【表50】
【0446】
【表51】
【0447】
【表52】
【0448】
【表53】
【0449】
【表54】
【0450】
【表55】
【0451】
【表56】
【0452】
【表57】
【0453】
【表58】
【0454】
【表59】
【0455】
【表60】
【0456】
【表61】
【0457】
【表62】
【0458】
【表63】
【0459】
(酸基を有する化合物A)
上述した実施例4系と同様の手法により、酸基を有する化合物Aに該当する重合体1~4を合成した。なお、重合体の各構造単位を形成するモノマーの略語については、既述のとおりである。
重合体1:St/MAA/MMA/GMA-MAA=47.7/19.0/1.3/32.0(質量比)
重合体2:CHMA/MAA/BzMA=49/19/32(質量比)
重合体3:St/AA/AA-GMA=53.5/14.5/32(質量比)
重合体4:CHA/AA/HEA=53.5/14.5/32(質量比)
なお、第9表に示す化合物Aの重量平均分子量は、第9表に示す通り、10,000~50,000の範囲である。
【0460】
(重合性化合物)
DPHA:ジペンエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学社製A-DPH)
A-NOD-N:1,9-ノナンジオールジアクリレート(新中村化学社製A-NOD-N)
DTMPT:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート (日本化薬社製KAYARAD T-1420(T))
A-DCP:ジシクロペンタンジメタノールジアクリレート(新中村化学社製A-DCP)
TMPT:トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学社製A-TMPT)
SR601:エトキシ化(4)ビスフェノールAジアクリレート (巴工業株式会社製SR601)
KRM8904:9官能脂肪族ウレタンアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社製KRM8904)
KRM8452:10官能脂肪族ウレタンアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社製KRM8452)
【0461】
(光重合開始剤)
Omn379:Omnirad 379(IGM Resins B.V.社製、アルキルフェノン系化合物)
Oxe02:Irgacure OXE02(BASF社製、オキシムエステル化合物)
Api307: (1-(ビフェニル-4-イル)-2-メチル-2-モルホリノプロパン-1-オン(Shenzhen UV-ChemTech LTD社製)
【0462】
(界面活性剤)
F551:メガファックF551(DIC社製)
R41:メガファックR-41(DIC社製)
710FL:フタージェント710FL(ネオス社製)
【0463】
[実施例201~218、比較例201:化合物βの物性評価]
上述した実施例1系~実施例7系で使用する化合物βについて、以下の手順により、感光性層形成時における塗布プロセスでの揮発耐性(塗布プロセス後の感光性層中における残留率)を評価した。
【0464】
<感光性材料の調製>
上述した実施例1系の実施例1-1の感光性材料において化合物βを以下に例示する化合物に変更し、且つ化合物βの配合量を化合物Aのカルボキシ基のモル量に対して0.2当量とした以外は、同様にして、実施例201~218の感光性材料を調製した。
また、上述した実施例1系の実施例1-1の感光性材料において5,6,7,8-テトラヒドロキノリンを添加しなかった以外は同様にして、比較例201の感光性材料を調製した。
【0465】
<感光性材料の評価>
(感光性層の作製)
各実施例及び比較例の感光性材料を、ガラス(コーニング社製イーグルXG)10×10cmにスピン塗布し、その後、得られた塗布膜をホットプレートを使用して80℃で乾燥して、膜厚5μmの感光性層を得た。
得られた感光性層を以下のように評価した。
【0466】
(化合物βの残存率の測定)
まず、以下の2種のサンプルを用意した。
(1)感光性材料を重アセトンで2倍希釈したサンプル(サンプルA)
(2)上記得られた感光性層5mg程度削り取って、重アセトンに溶解させたサンプル(サンプルB)
次いで、Bruker製AVANCE IIIを使用して、各サンプルのH-NMR(ロック溶媒:重アセトン、パルスプログラム:zg30、積算回数32回)を測定し、スチレンと化合物βのピーク面積比に基づいて、以下の式(H)より化合物βの残留率(%)を算出した。
式(H):残留率=(サンプルA中の化合物βの含有量―サンプルB中の化合物βの含有量)/サンプルA中の化合物βの含有量×100[%]」
次いで、以下の評価基準に基づいて評価を実施した。結果を第10表に示す。なお、以下に示す第10表では、化合物βの分子量も併せて示す。
【0467】
(評価基準)
A 残留率が85%以上
B 残留率が60%以上85%未満
C 残留率が20%以上60%未満
D 残留率が20%未満
【0468】
【表64】
【0469】
第10表の結果から、化合物βの分子量が120以上である場合(好ましくは、130以上である場合、より好ましくは、180以上である場合)、塗布プロセスでの揮発性が低い(塗布プロセス後の感光性層中における化合物βの残留率が高い)ことが明らかである。
【0470】
<転写フィルムの評価>
(転写フィルムの作製)
厚み16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ製、16KS40(16QS62))(仮支持体)の上に、スリット状ノズルを用いて、各実施例及び比較例の感光性材料を、乾燥後の厚みが5μmになるように調整して塗布し、100℃で2分間乾燥させ、感光性層を形成した。
得られた感光性層上に、厚み16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ製、16KS40(16QS62))(カバーフィルム)を圧着し、実施例及び比較例の転写フィルムを作製した。
【0471】
上記にて作製した転写フィルムからカバーフィルムを剥離し、ガラス(コーニング社製イーグルXG)10×10cmにラミネートすることにより、ガラスの表面に転写フィルムの感光性層を転写した。ラミネートの条件は、タッチパネル用基板の温度40℃、ゴムローラー温度(つまり、ラミネート温度)110℃、線圧3N/cm、搬送速度2m/分の条件とした。
【0472】
得られた感光性層付きガラスの感光性層5mg程度削り取って、重アセトンに溶解させたサンプル(サンプルC)を作製した。
上述した(化合物βの残存率の測定)において、サンプルBをサンプルCに変更した以外は同様の方法により塗布プロセスでの化合物βの揮発性(塗布プロセス後の感光性層中における化合物βの残留率)を求めたところ、上記第10表に示す結果と同様であった。
【0473】
〔実施例1001(デバイスの作製及び評価)〕
<透明積層体の作製>
シクロオレフィン透明フィルムにITO透明電極パターン、銅の引き回し配線を形成した基板を準備した。
保護フィルムを剥離した実施例1系の実施例1-1の転写フィルムを用いて、ITO透明電極パターン、銅の引き回し配線を、転写フィルムが覆う位置にてラミネートした。ラミネートは、MCK社製真空ラミネーターを用いて、シクロオレフィン透明フィルムの温度:40℃、ゴムローラー温度100℃、線圧3N/cm、搬送速度2m/分の条件で行った。
その後、仮支持体を剥離後、露光マスク(オーバーコート形成用パターンを有す石英露光マスク)高圧水銀灯を用いて、パターン露光した。露光条件としては、365nmの照度計で計測した積算露光量は1000mJ/cmであった。
露光後、仮支持体が剥離された積層体の感光性層を、現像液としての炭酸ナトリウム1質量%水溶液(液温:32℃)を用いて40秒間現像した。
その後、現像処理後の透明フィルム基板に超高圧洗浄ノズルから超純水を噴射することで残渣を除去した。引き続き、エアを吹きかけて透明フィルム基板上の水分を除去し、透明フィルム基板上にITO透明電極パターン、銅の引き回し配線、硬化膜が順に積層された透明積層体を形成した。
作製した透明積層体を用いて、公知の方法によりタッチパネルを製造した。製造したタッチパネルを、特開2009-47936号公報の段落0097~0119に記載の方法で製造した液晶表示素子に貼り合わせることにより、タッチパネルを備えた液晶表示装置を製造した。
得られたタッチパネルを備えた液晶表示装置は、いずれも、表示特性に優れ、問題無く動作することが確認された。
【0474】
〔実施例1002(デバイスの作製及び評価)〕
上記転写フィルムを、上述した実施例1系の実施例1-1以外の実施例の転写フィルム、並びに、上述した実施例2系、実施例4系、実施例5系、及び実施例6系の実施例の転写フィルムのいずれかに代えた以外は、実施例1001と同様の方法により、タッチパネルを備えた液晶表示装置を作製した。
【0475】
得られたタッチパネルを備えた液晶表示装置は、いずれも、表示特性に優れ、問題無く動作することが確認された。
【0476】
〔実施例1003(デバイスの作製及び評価)〕
<透明積層体の作製>
シクロオレフィン透明フィルムにITO透明電極パターン、銅の引き回し配線を形成した基板を準備した。
保護フィルムを剥離した実施例3系の実施例の転写フィルムを用いて、ITO透明電極パターン、銅の引き回し配線を、転写フィルムが覆う位置にてラミネートした。ラミネートは、MCK社製真空ラミネーターを用いて、シクロオレフィン透明フィルムの温度:40℃、ゴムローラー温度100℃、線圧3N/cm、搬送速度2m/分の条件で行った。
その後、得られた感光性層付き基材の仮支持体と、露光マスク(オーバーコート形成用パターンを有する石英露光マスク)とを密着させ、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)を用いて、350nm以下の波長をカットするフィルター越しに、仮支持体を介してパターン露光した。露光条件としては、365nmの照度計で計測した積算露光量は80mJ/cmであった。
露光後、仮支持体を剥離後、仮支持体が剥離された積層体の感光性層を、現像液としての炭酸ナトリウム1質量%水溶液(液温:32℃)を用いて40秒間現像した。
その後、現像処理後の透明フィルム基板に超高圧洗浄ノズルから超純水を噴射することで残渣を除去した。引き続き、エアを吹きかけて透明フィルム基板上の水分を除去した。
次いで、形成されたパターンに対して、高圧水銀灯を用いた2回目の露光を実施した。
高圧水銀灯を用いた2回目の露光において、365nmの照度計で計測した積算露光量は1000mJ/cmであった。
上記手順により、透明フィルム基板上にITO透明電極パターン、銅の引き回し配線、硬化膜が順に積層された透明積層体を形成した。
作製した透明積層体を用いて、公知の方法によりタッチパネルを製造した。製造したタッチパネルを、特開2009-47936号公報の段落0097~0119に記載の方法で製造した液晶表示素子に貼り合わせることにより、タッチパネルを備えた液晶表示装置を製造した。
得られたタッチパネルを備えた液晶表示装置は、いずれも、表示特性に優れ、問題無く動作することが確認された。
【0477】
〔実施例1004(デバイスの作製及び評価)〕
上記転写フィルムを、上述した実施例7系の実施例の転写フィルムに代えた以外は、実施例1003と同様の方法により、タッチパネルを備えた液晶表示装置を作製した。
【0478】
得られたタッチパネルを備えた液晶表示装置は、いずれも、表示特性に優れ、問題無く動作することが確認された。
【符号の説明】
【0479】
12:仮支持体、14:感光性層、16:カバーフィルム、100:転写フィルム
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-06-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシ基を有する化合物Aを含む感光性材料であり、
前記化合物Aは、(メタ)アクリル酸由来の繰り返し単位を含むポリマーを含み、
活性光線又は放射線の照射によって、前記感光性材料から形成される感光性層中の前記カルボキシ基の含有量が減少する、感光性材料であって、
前記ポリマーは、一般式(A)で表される繰り返し単位を有し、
下記要件(V02)を満たす、感光性材料。
要件(V02):前記感光性材料が、前記化合物Aと、露光により前記化合物Aが含む前記カルボキシ基の量を減少させる構造を有する化合物β(ただし、前記化合物βに式(1)で表される化合物は含まれない。)と、を含み、
前記化合物Aの含有量は、前記感光性材料の全固形分に対して45質量%以上であり、
前記化合物βは、光励起状態において、前記化合物Aが含む前記酸基から電子を受容できる構造を有する化合物Bであって、前記化合物Bは、置換基を有していてもよい、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、フェナントリジン、フェナントロリン、及びフェナジンからなる群から選ばれる1種以上を含み、
前記感光性材料中、前記化合物Bが含む前記電子を受容できる構造の合計数が、前記化合物Aが含む酸基の合計数に対して、10~200モル%である。
但し、前記感光性材料は、下記(1)及び(2)の少なくとも一方を満たす重合体を含む重合体成分を含まない。
(1)(a1)酸基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位及び(a2)架橋性基を有する構成単位を有する重合体
(2)(a1)酸基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位を有する重合体及び(a2)架橋性基を有する構成単位を有する重合体。
【化1】

一般式(A)中、R A1 は、水素原子、ハロゲン原子、又はアルキル基を表す。
一般式(A)中、A は、単結合又は2価の連結基を表す。
【化2】

式(1)中、R 及びR は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~18のアリール基又は炭素数7~30のアラルキル基である。但し、上記アルキル基、アリール基及びアラルキル基が有する水素原子の一部又は全部は、アミノ基及び水酸基からなる群より選択される少なくとも1種で置換されていてもよい。また、R 及びR は、互いに結合して、それらが結合する窒素原子と共に環状構造を形成していてもよい。R は、炭素数4~20の窒素含有複素環基である。Wは、単結合又は炭素数1~12のアルカンジイル基である。
【請求項2】
前記ポリマーの重量平均分子量が、50,000以下である、請求項に記載の感光性材料。
【請求項3】
前記化合物βの365nmにおけるモル吸光係数εが、1×10(cm・mol/L)-1以下である、請求項1又は2に記載の感光性材料。
【請求項4】
前記化合物βの313nmにおけるモル吸光係数ε’に対する前記化合物βの365nmにおけるモル吸光係数εの比が、3以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の感光性材料。
【請求項5】
前記化合物βの基底状態でのpKaが、2.0以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の感光性材料。
【請求項6】
前記化合物βの基底状態でのpKaが、9.0以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の感光性材料。
【請求項7】
前記化合物βが、置換基を有する、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、フェナントリジン、フェナントロリン、及びフェナジンからなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項に記載の感光性材料。
【請求項8】
活性光線又は放射線の照射によって、前記感光性材料から形成される感光性層中の前記カルボキシ基の含有量が5モル%以上の減少率で減少する、請求項1~7のいずれか1項に記載の感光性材料。
【請求項9】
活性光線又は放射線の照射によって前記カルボキシ基が脱炭酸する、請求項1~8のいずれか1項に記載の感光性材料。
【請求項10】
活性光線又は放射線の照射によって、前記感光性材料から形成される感光性層の比誘電率が減少する、請求項1~9のいずれか1項に記載の感光性材料。
【請求項11】
基材上に、請求項1~10のいずれか1項に記載の感光性材料を用いて感光性層を形成する工程と、
前記感光性層をパターン状に露光する工程と、
前記露光された感光性層を、現像液を用いて現像する工程と、を含み、
前記現像液が有機溶剤系現像液である場合、更に、前記現像工程の後に、現像により形成されたパターンを露光する工程を含む、パターン形成方法。
【請求項12】
基材上に、請求項1~10のいずれか1項に記載の感光性材料を用いて感光性層を形成する工程と、
前記感光性層をパターン状に露光する工程と、
露光された前記感光性層をアルカリ現像液を用いて現像して、パターン化された感光性層を形成する工程と、
前記パターン化された感光性層を露光する工程と、をこの順に含む、パターン形成方法。
【請求項13】
導電層を有する基材上に、請求項1~10のいずれか1項に記載の感光性材料を用いて感光性層を形成する工程と、
前記感光性層をパターン状に露光する工程と、
露光された前記感光性層をアルカリ現像液を用いて現像して、パターン化された感光性層を形成する工程と、
前記パターン化された感光性層を露光して、エッチングレジスト膜を形成する工程と、
前記エッチングレジスト膜が配置されていない領域における前記導電層をエッチング処理する工程と、をこの順に含む、回路配線の製造方法。
【請求項14】
導電層を有する基材上に、請求項1~10のいずれか1項に記載の感光性材料を用いて感光性層を形成する工程と、
前記感光性層をパターン状に露光する工程と、
露光された前記感光性層をアルカリ現像液を用いて現像して、パターン化された感光性層を形成する工程と、
前記パターン化された感光性層を露光して、前記導電層の保護膜又は絶縁膜を形成する工程と、をこの順に含む、タッチパネルの製造方法。