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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010989
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】画像処理装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240118BHJP
   A61B 6/12 20060101ALI20240118BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20240118BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20240118BHJP
   A61B 1/267 20060101ALI20240118BHJP
   A61B 1/045 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
A61B6/00 370
A61B6/12
A61B6/03 360G
A61B1/00 552
A61B1/267
A61B1/045 623
A61B1/045 620
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112631
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 貞登
【テーマコード(参考)】
4C093
4C161
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093AA22
4C093AA25
4C093AA26
4C093CA23
4C093CA35
4C093DA03
4C093FD03
4C093FF35
4C093FF37
4C093FF42
4C093FG13
4C161AA07
4C161HH55
4C161WW04
(57)【要約】
【課題】画像処理装置、方法およびプログラムにおいて、センサを使用することなく、内視鏡を被検体内の所望とする位置にナビゲーションできるようにする。
【解決手段】プロセッサは、被検体の3次元画像を取得し、内視鏡が管腔構造物内に挿入された被検体についての放射線画像を取得し、内視鏡により第1の時刻に撮影された被検体の管腔構造物内の第1の実内視鏡画像を取得し、放射線画像と3次元画像とを用いて、内視鏡の3次元画像内における仮の仮想視点を導出し、仮の仮想視点、第1の実内視鏡画像および3次元画像を用いて、内視鏡の3次元画像内における第1の時刻の仮想視点を導出し、第1の時刻よりも後の第2の時刻に内視鏡により撮影された第2の実内視鏡画像と第1の実内視鏡画像とを用いて、内視鏡の3次元画像内における第2の時刻の仮想視点を導出する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
被検体の3次元画像を取得し、
内視鏡が管腔構造物内に挿入された前記被検体についての放射線画像を取得し、
前記内視鏡により第1の時刻に撮影された前記被検体の管腔構造物内の第1の実内視鏡画像を取得し、
前記放射線画像と前記3次元画像とを用いて、前記内視鏡の前記3次元画像内における仮の仮想視点を導出し、
前記仮の仮想視点、前記第1の実内視鏡画像および前記3次元画像を用いて、前記内視鏡の前記3次元画像内における前記第1の時刻の仮想視点を導出し、
前記第1の時刻よりも後の第2の時刻に前記内視鏡により撮影された第2の実内視鏡画像と前記第1の実内視鏡画像とを用いて、前記内視鏡の前記3次元画像内における前記第2の時刻の仮想視点を導出する画像処理装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記放射線画像に含まれる前記内視鏡の位置を特定し、
前記特定された内視鏡の位置を用いて前記仮の仮想視点の位置を導出し、
前記3次元画像における前記仮の仮想視点の位置を用いて前記仮の仮想視点の姿勢を導出する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記3次元画像を用いて導出される前記第1の時刻の仮想視点における第1の仮想内視鏡画像が前記第1の実内視鏡画像と一致するように前記第1の時刻の仮想視点を調整する請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記第1の実内視鏡画像と前記第2の実内視鏡画像とを用いて視点の変化を導出し、
前記視点の変化と前記第1の時刻の仮想視点とを用いて前記第2の時刻の仮想視点を導出する請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記導出された視点の変化に対する信頼度を表す評価結果があらかじめ定められた条件を満足するか否かを判定し、
前記判定が否定された場合、前記第2の時刻の仮想視点における第2の仮想内視鏡画像が前記第2の実内視鏡画像と一致するように前記第2の時刻の仮想視点を調整する請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記判定が肯定された場合、前記第2の時刻よりも後の第3の時刻に撮影された第3の実内視鏡画像と前記第2の実内視鏡画像とを用いて、前記第3の時刻における内視鏡の第3の仮想視点を導出する請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記内視鏡により新たな時刻の実内視鏡画像を順次取得し、各時刻における前記内視鏡の仮想視点を順次導出する請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記各時刻における前記内視鏡の前記仮想視点と前記3次元画像とを用いて、前記各時刻における仮想内視鏡画像を順次導出し、順次取得される前記実内視鏡画像と順次導出される前記仮想内視鏡画像とを順次表示する請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記各時刻における前記仮想内視鏡画像および前記各時刻における実内視鏡画像を順次表示する請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記3次元画像の管腔構造物内における前記各時刻の前記仮想視点の位置を順次表示する請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
被検体の3次元画像を取得し、
内視鏡が管腔構造物内に挿入された前記被検体についての放射線画像を取得し、
前記内視鏡により第1の時刻に撮影された前記被検体の管腔構造物内の第1の実内視鏡画像を取得し、
前記放射線画像と前記3次元画像とを用いて、前記内視鏡の前記3次元画像内における仮の仮想視点を導出し、
前記仮の仮想視点、前記第1の実内視鏡画像および前記3次元画像を用いて、前記内視鏡の前記3次元画像内における前記第1の時刻の仮想視点を導出し、
前記第1の時刻よりも後の第2の時刻に前記内視鏡により撮影された第2の実内視鏡画像と前記第1の実内視鏡画像とを用いて、前記内視鏡の前記3次元画像内における前記第2の時刻の仮想視点を導出する画像処理方法。
【請求項12】
被検体の3次元画像を取得する手順と、
内視鏡が管腔構造物内に挿入された前記被検体についての放射線画像を取得する手順と、
前記内視鏡により第1の時刻に撮影された前記被検体の管腔構造物内の第1の実内視鏡画像を取得する手順と、
前記放射線画像と前記3次元画像とを用いて、前記内視鏡の前記3次元画像内における仮の仮想視点を導出する手順と、
前記仮の仮想視点、前記第1の実内視鏡画像および前記3次元画像を用いて、前記内視鏡の前記3次元画像内における前記第1の時刻の仮想視点を導出する手順と、
前記第1の時刻よりも後の第2の時刻に前記内視鏡により撮影された第2の実内視鏡画像と前記第1の実内視鏡画像とを用いて、前記内視鏡の前記3次元画像内における前記第2の時刻の仮想視点を導出する手順とをコンピュータに実行させる画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像処理装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡観察部および超音波観察部を先端に有する内視鏡を被検体の消化器官あるいは気管支内等の管腔構造物に挿入し、管腔構造物内の内視鏡画像および管腔構造物の外壁の外側にある病変等の部位の超音波画像を撮像することが行われている。また、病変の組織を鉗子等の処置具により採取する生検も行われている。
【0003】
このような内視鏡を用いた処置を行う際には、内視鏡を被検体内の目標位置に正確に到達させることが重要である。このため、処置中に放射線を放射線源から被検体に連続的に照射し、これにより取得される透視画像をリアルタイムで表示する透視撮影を行うことにより、内視鏡と人体構造との位置関係を把握することが行われている。
【0004】
ここで、透視画像は被検体内の臓器、血管および骨等の解剖構造が重なり合った状態で含まれるため、管腔および病変の認識が容易ではない。このため、CT(Computed Tomography)装置およびMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等により、被検体の3次元画像を処置前にあらかじめ取得し、3次元画像において内視鏡の挿入経路および病変の位置等を事前にシミュレーションすることが行われている。
【0005】
また、特許文献1には、3次元画像から気管支内部の仮想内視鏡画像を生成し、処置中に位置センサを用いて内視鏡の先端位置を検出し、内視鏡により撮影される実内視鏡画像とともに仮想内視鏡画像を表示して内視鏡の気管支への挿入ナビゲーションを行う手法が提案されている。
【0006】
また、特許文献2には、内視鏡の先端に位置センサを設けて内視鏡の先端位置を検出し、格子状のマーカを用いて透視画像を撮影する撮影デバイスの姿勢を検出し、取得した複数の透視画像から3次元画像を再構成し、再構成した3次元画像と事前に取得したCT画像等の3次元画像とを位置合わせする手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-056239号公報
【特許文献2】特開2021-030073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1,2に記載された手法は内視鏡の位置を検出するために内視鏡にセンサを設ける必要がある。センサを使用しないようにするために、透視画像に写る内視鏡の像から内視鏡の位置を検出することが考えられる。しかしながら、透視画像は透視画像に直交する奥行き方向の位置が分からないため、透視画像からは内視鏡の3次元的な位置を検出することができない。このため、内視鏡を被検体内の所望とする位置に精度よくナビゲーションすることができない。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、センサを使用することなく、内視鏡を被検体内の所望とする位置にナビゲーションできるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第1の態様に係る画像処理装置は、少なくとも1つのプロセッサを備え、プロセッサは、被検体の3次元画像を取得し、
内視鏡が管腔構造物内に挿入された被検体についての放射線画像を取得し、
内視鏡により第1の時刻に撮影された被検体の管腔構造物内の第1の実内視鏡画像を取得し、
放射線画像と3次元画像とを用いて、内視鏡の3次元画像内における仮の仮想視点を導出し、
仮の仮想視点、第1の実内視鏡画像および3次元画像を用いて、内視鏡の3次元画像内における第1の時刻の仮想視点を導出し、
第1の時刻よりも後の第2の時刻に内視鏡により撮影された第2の実内視鏡画像と第1の実内視鏡画像とを用いて、内視鏡の3次元画像内における第2の時刻の仮想視点を導出する。
【0011】
本開示の第2の態様に係る画像処理装置は、本開示の第1の態様に係る画像処理装置において、プロセッサは、放射線画像に含まれる内視鏡の位置を特定し、
特定された内視鏡の位置を用いて仮の仮想視点の位置を導出し、
3次元画像における仮の仮想視点の位置を用いて仮の仮想視点の姿勢を導出するものであってもよい。
【0012】
本開示の第3の態様に係る画像処理装置は、本開示の第1または第2の態様に係る画像処理装置において、プロセッサは、3次元画像を用いて導出される第1の時刻の仮想視点における第1の仮想内視鏡画像が第1の実内視鏡画像と一致するように第1の時刻の仮想視点を調整するものであってもよい。なお、「一致するように」とは、完全に一致する場合のみならず、実質的に一致するほど位置が近くなるようにすることも含む。
【0013】
本開示の第4の態様に係る画像処理装置は、本開示の第1から第3のいずれか1つの態様に係る画像処理装置において、プロセッサは、第1の実内視鏡画像と第2の実内視鏡画像とを用いて視点の変化を導出し、
視点の変化と第1の時刻の仮想視点とを用いて第2の時刻の仮想視点を導出するものであってもよい。
【0014】
本開示の第5の態様に係る画像処理装置は、本開示の第4の態様に係る画像処理装置において、プロセッサは、導出された視点の変化に対する信頼度を表す評価結果があらかじめ定められた条件を満足するか否かを判定し、
判定が否定された場合、第2の時刻の仮想視点における第2の仮想内視鏡画像が第2の実内視鏡画像と一致するように第2の時刻の仮想視点を調整するものであってもよい。なお、「一致するように」とは、完全に一致する場合のみならず、実質的に一致するほど位置が近くなるようにすることも含む。
【0015】
本開示の第6の態様に係る画像処理装置は、本開示の第5の態様に係る画像処理装置において、判定が肯定された場合、第2の時刻よりも後の第3の時刻に撮影された第3の実内視鏡画像と第2の実内視鏡画像とを用いて、第3の時刻における内視鏡の第3の仮想視点を導出するものであってもよい。
【0016】
本開示の第7の態様に係る画像処理装置は、本開示の第1から第6のいずれか1つの態様に係る画像処理装置において、プロセッサは、内視鏡により新たな時刻の実内視鏡画像を順次取得し、各時刻における内視鏡の仮想視点を順次導出するものであってもよい。
【0017】
本開示の第8の態様に係る画像処理装置は、本開示の第7の態様に係る画像処理装置において、プロセッサは、各時刻における内視鏡の仮想視点と3次元画像とを用いて、各時刻における仮想内視鏡画像を順次導出し、順次取得される実内視鏡画像と順次導出される仮想内視鏡画像とを順次表示するものであってもよい。
【0018】
本開示の第9の態様に係る画像処理装置は、本開示の第8の態様に係る画像処理装置において、プロセッサは、各時刻における仮想内視鏡画像および各時刻における実内視鏡画像を順次表示するものであってもよい。
【0019】
本開示の第10の態様に係る画像処理装置は、本開示の第9の態様に係る画像処理装置において、プロセッサは、3次元画像の管腔構造物内における各時刻の仮想視点の位置を順次表示するものであってもよい。
【0020】
本開示の画像処理方法は、被検体の3次元画像を取得し、
内視鏡が管腔構造物内に挿入された被検体についての放射線画像を取得し、
内視鏡により第1の時刻に撮影された被検体の管腔構造物内の第1の実内視鏡画像を取得し、
放射線画像と3次元画像とを用いて、内視鏡の3次元画像内における仮の仮想視点を導出し、
仮の仮想視点、第1の実内視鏡画像および3次元画像を用いて、内視鏡の3次元画像内における第1の時刻の仮想視点を導出し、
第1の時刻よりも後の第2の時刻に内視鏡により撮影された第2の実内視鏡画像と第1の実内視鏡画像とを用いて、内視鏡の3次元画像内における第2の時刻の仮想視点を導出する。
【0021】
本開示の画像処理プログラムは、被検体の3次元画像を取得する手順と、
内視鏡が管腔構造物内に挿入された被検体についての放射線画像を取得する手順と、
内視鏡により第1の時刻に撮影された被検体の管腔構造物内の第1の実内視鏡画像を取得する手順と、
放射線画像と3次元画像とを用いて、内視鏡の3次元画像内における仮の仮想視点を導出する手順と、
仮の仮想視点、第1の実内視鏡画像および3次元画像を用いて、内視鏡の3次元画像内における第1の時刻の仮想視点を導出する手順と、
第1の時刻よりも後の第2の時刻に内視鏡により撮影された第2の実内視鏡画像と第1の実内視鏡画像とを用いて、内視鏡の3次元画像内における第2の時刻の仮想視点を導出する手順とをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、センサを使用することなく、内視鏡を被検体内の所望とする位置にナビゲーションできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示の実施形態による画像処理装置を適用した医療情報システムの概略構成を示す図
図2】本実施形態による画像処理装置の概略構成を示す図
図3】本実施形態による画像処理装置の機能構成図
図4】透視画像を示す図
図5】実内視鏡画像の視点の3次元的な位置の導出を説明するための図
図6】Shenらの手法を説明するための図
図7】Zhouらの手法を説明するための図
図8】第2導出部が行う処理を模式的に示す図
図9】視点の変化の信頼度を表す評価結果の導出を説明するための図
図10】視点の変化の信頼度を表す評価結果の導出の他の例を説明するための図
図11】ナビゲーション画面を示す図
図12】本実施形態において行われる処理を示すフローチャート
図13】本実施形態において行われる処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。まず、本実施形態による画像処理装置を適用した医療情報システムの構成について説明する。図1は、医療情報システムの概略構成を示す図である。図1に示す医療情報システムは、本実施形態による画像処理装置を内包するコンピュータ1、3次元画像撮影装置2、透視画像撮影装置3および画像保管サーバ4が、ネットワーク5を経由して通信可能な状態で接続されている。
【0025】
コンピュータ1は、本実施形態による画像処理装置を内包するものであり、本実施形態の画像処理プログラムがインストールされている。コンピュータ1は、後述するように被検体に対して処置を行う処置室に設置される。コンピュータ1は、処置を行う医療従事者が直接操作するワークステーションあるいはパーソナルコンピュータでもよいし、それらとネットワークを介して接続されたサーバコンピュータでもよい。画像処理プログラムは、ネットワークに接続されたサーバコンピュータの記憶装置、あるいはネットワークストレージに、外部からアクセス可能な状態で記憶され、要求に応じて医師が使用するコンピュータ1にダウンロードされ、インストールされる。または、DVD(Digital Versatile Disc)あるいはCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の記録媒体に記録されて配布され、その記録媒体からコンピュータ1にインストールされる。
【0026】
3次元画像撮影装置2は、被検体Hの診断対象となる部位を撮影することにより、その部位を表す3次元画像を生成する装置であり、具体的には、CT装置、MRI装置、およびPET(Positron Emission Tomography)装置等である。3次元画像撮影装置2により生成された、複数の断層画像からなる3次元画像は画像保管サーバ4に送信され、保存される。なお、本実施形態においては、被検体Hの処置対象部位は肺であり、3次元画像撮影装置2はCT装置であり、後述するように被検体Hに対する処置の前に、被検体Hの胸部を撮影することにより、被検体Hの胸部を含むCT画像を3次元画像としてあらかじめ取得し、画像保管サーバ4に保存しておく。
【0027】
透視画像撮影装置3は、Cアーム3A、X線源3BおよびX線検出器3Cを有する。X線源3BおよびX線検出器3CはCアーム3Aの両端部にそれぞれ取り付けられている。透視画像撮影装置3においては、被検体Hを任意の方向から撮影可能なようにCアーム3Aが回転および移動可能に構成されている。そして、透視画像撮影装置3は、後述するように被検体Hに対する処置中に、X線を被検体Hに照射し、被検体Hを透過したX線をX線検出器3Cにより検出する透視撮影を行うことにより、被検体HのX線画像を取得する。以降の説明においては、取得されるX線画像を透視画像と称する。透視画像が本開示による放射線画像の一例である。なお、透視画像T0は、あらかじめ定められたフレームレートによりX線を被検体Hに連続的に照射することにより取得してもよく、後述するように内視鏡7が気管支の分岐に到達するようなあらかじめ定められたタイミングでX線を被検体Hに照射することにより取得してもよい。
【0028】
画像保管サーバ4は、各種データを保存して管理するコンピュータであり、大容量外部記憶装置およびデータベース管理用ソフトウェアを備えている。画像保管サーバ4は、有線あるいは無線のネットワーク5を介して他の装置と通信を行い、画像データ等を送受信する。具体的には3次元画像撮影装置2で取得された3次元画像、および透視画像撮影装置3で取得された透視画像の画像データを含む各種データをネットワーク経由で取得し、大容量外部記憶装置等の記録媒体に保存して管理する。なお、画像データの格納形式およびネットワーク5経由での各装置間の通信は、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)等のプロトコルに基づいている。
【0029】
なお、本実施形態においては、被検体Hの透視撮影を行いつつ、被検体Hの肺に存在する肺結節等の病変の一部を切り取って、病気の存在を詳しく調べる生検の処置を行うものとする。このため、透視画像撮影装置3は生検を行うための処置室に配置されている。また、処置室には、超音波内視鏡装置6が設置されている。超音波内視鏡装置6は、先端に超音波プローブおよび鉗子等の処置具が取り付けられた内視鏡7を備える。本実施形態においては、病変の生検を行うべく、操作者は内視鏡7を被検体Hの気管支に挿入し、内視鏡7により気管支内部の内視鏡画像を撮影しつつ、透視画像撮影装置3により被検体Hの透視画像を撮影する。そして、撮影した透視画像をリアルタイムで表示しつつ、透視画像において被検体H内における内視鏡7の位置を確認し、目標となる病変の位置まで内視鏡7の先端を移動させる。気管支が本開示の管腔構造物の一例である。
【0030】
なお、内視鏡画像は、あらかじめ定められたフレームレートにより連続的に取得される。透視画像T0があらかじめ定められたフレームレートで取得される場合、内視鏡画像を取得するフレームレートは透視画像T0が取得されるフレームレートと同一であってもよい。また、透視画像T0が任意のタイミングで取得される場合であっても、内視鏡画像はあらかじめ定められたフレームレートにより取得される。
【0031】
ここで、肺結節等の肺の病変は気管支の内側ではなく気管支の外側に発生する。このため、操作者は内視鏡7を目標位置まで移動させた後、超音波プローブにより気管支の外側の超音波画像を撮影して超音波画像を表示し、超音波画像において病変位置を確認しながら鉗子等の処置具を用いて病変の一部を採取する処置を行う。
【0032】
次いで、本実施形態による画像処理装置について説明する。図2は、本実施形態による画像処理装置のハードウェア構成を示す図である。図2に示すように、画像処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、不揮発性のストレージ13、および一時記憶領域としてのメモリ16を含む。また、画像処理装置10は、液晶ディスプレイ等のディスプレイ14、キーボードとマウス等の入力デバイス15、およびネットワーク5に接続されるネットワークI/F(InterFace)17を含む。CPU11、ストレージ13、ディスプレイ14、入力デバイス15、メモリ16およびネットワークI/F17は、バス18に接続される。なお、CPU11は、本開示におけるプロセッサの一例である。
【0033】
ストレージ13は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、およびフラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としてのストレージ13には、画像処理プログラム12が記憶される。CPU11は、ストレージ13から画像処理プログラム12を読み出してメモリ16に展開し、展開した画像処理プログラム12を実行する。
【0034】
次いで、本実施形態による画像処理装置の機能的な構成を説明する。図3は、本実施形態による画像処理装置の機能的な構成を示す図である。図3に示すように画像処理装置10は、画像取得部20、第1導出部21、第2導出部22、第3導出部23および表示制御部24を備える。そして、CPU11が画像処理プログラム12を実行することにより、CPU11は、画像取得部20、第1導出部21、第2導出部22、第3導出部23および表示制御部24として機能する。
【0035】
画像取得部20は、操作者による入力デバイス15からの指示により、画像保管サーバ4から被検体Hの3次元画像V0を取得する。取得される3次元画像V0は被検体Hに対する処置前に取得されたものである。また、画像取得部20は、被検体Hの処置中に透視画像撮影装置3により取得される透視画像T0を取得する。さらに、画像取得部20は被検体Hの処置中に内視鏡7により取得される内視鏡画像R0を取得する。内視鏡7により取得される内視鏡画像は、実際に被検体Hの気管支内を内視鏡7により撮影することによって取得される。このため、以降の説明において、内視鏡7により取得される内視鏡画像を実内視鏡画像R0と称する。実内視鏡画像R0は透視画像T0の取得のされ方に拘わらず、あらかじめ定められたフレームレートにより取得される。このため、透視画像T0が取得されるタイミングに近いタイミングで実内視鏡画像R0が取得されることとなる。したがって、透視画像T0には取得したタイミングが対応する実内視鏡画像R0が存在することとなる。
【0036】
第1導出部21は、透視画像T0と3次元画像V0とを用いて、内視鏡7の3次元画像V0内における仮の仮想視点を導出する。なお、第1導出部21、第2導出部22および第3導出部23は、例えば内視鏡7の先端が気管支の最初の分岐位置に到達してから取得された透視画像T0および実内視鏡画像R0を用いて処理を開始するものであってもよいが、これに限定されるものではない。被検体Hへの内視鏡7の挿入を開始してから処理を行うものであってもよい。
【0037】
まず、第1導出部21は、透視画像T0から内視鏡7の位置を検出する。図4は透視画像を示す図である。図4に示すように透視画像T0には内視鏡7の像30が含まれる。第1導出部21は、例えば透視画像T0から内視鏡像30の先端31を検出するように学習がなされた学習済みモデルを用いて透視画像T0から内視鏡像30の先端31を検出する。なお、透視画像T0からの内視鏡像30の先端31の検出は、これに限定されるものではない。テンプレートマッチングを用いる手法等、任意の手法を用いることができる。このようにして検出された内視鏡像30の先端31が透視画像T0における内視鏡7の位置となる。
【0038】
ここで、本実施形態においては、3次元画像V0から気管支領域が予め抽出されて、病変の位置の確認、気管支内における病変に至る経路(すなわち、内視鏡7をどのような向きでどのように挿入していくか)の計画が事前にシミュレーションされているものとする。なお、3次元画像V0からの気管支領域の抽出は、公知のコンピュータ支援画像診断(CAD: Computer Aided Diagnosis、以下CADと称する)のアルゴリズムを用いて行われる。また、例えば特開2010-220742号公報等に記載された任意の手法を用いて行われる。
【0039】
また、第1導出部21は、透視画像T0と3次元画像V0との位置合わせを行う。ここで、透視画像T0は2次元画像である。このため、第1導出部21は、2次元画像と3次元画像との位置合わせを行う。本実施形態において、第1導出部21は、まず、透視画像T0の撮影方向と同一の方向に3次元画像V0を投影して2次元の疑似透視画像VT0を導出する。そして第1導出部21は、2次元の疑似透視画像VT0を透視画像T0に位置合わせする。位置合わせの手法としては、剛体位置合わせあるいは非剛体位置合わせ等、任意の手法を用いることができる。
【0040】
一方、透視画像T0は2次元であるため、3次元画像V0内における仮の仮想視点を導出するためには透視画像T0に直交する方向の位置、すなわち奥行き方向の位置が必要である。本実施形態においては、事前のシミュレーションにより3次元画像V0から気管支領域が抽出されている。また、第1導出部21により、透視画像T0と3次元画像V0とは位置合わせされている。このため、図5に示すように、透視画像T0において検出された内視鏡像30の先端31を3次元画像V0の気管支領域B0に逆投影する。これにより、3次元画像V0内における内視鏡7の位置、すなわち仮の仮想視点VPs0の3次元的な位置を導出することができる。
【0041】
また、内視鏡7の気管支への挿入方向は口または鼻から気管支の末端に向かう方向である。3次元画像V0から抽出された気管支領域内における位置が分かれば、その位置における内視鏡7の向き、すなわち仮の仮想視点VPs0の方向が分かる。また、内視鏡7の被検体Hへの挿入の仕方はあらかじめ定められている。例えば、内視鏡7の挿入開始時には、被検体Hの腹側が実内視鏡画像の上側となるように内視鏡7の挿入の仕方があらかじめ定められている。このため、導出された視点の位置において、どの程度内視鏡7がその長軸周りにねじれているかを、気管支領域の形状に基づいて上述した事前のシミュレーションにより導出することができる。したがって、第1導出部21は、シミュレーションの結果を用いて、導出された仮の仮想視点の位置において、内視鏡7のねじれの程度を導出する。これにより、第1導出部21は、3次元画像V0における仮の視点VPs0の姿勢を導出する。なお、本実施形態において、仮の仮想視点VPs0を導出する、とは仮の仮想視点VPs0の3次元画像V0における3次元的な位置、および視点の姿勢(すなわち視線の方向およびねじれ)を導出することを意味する。
【0042】
第2導出部22は、第1導出部21が導出した仮の仮想視点VPs0、第1の時刻t1の実内視鏡画像R1および3次元画像V0を用いて、内視鏡7の3次元画像V0内における第1の時刻t1の第1の仮想視点VP1を導出する。本実施形態においては、第2導出部22は、「Context-Aware Depth and Pose Estimation for Bronchoscopic Navigation IEEE Robotics and Automation Letters、Mali Shenら、 vol. 4、no. 2、pp. 732-739、April 2019」に記載された手法を用いて、第1の仮想視点VP1を導出する。ここで、実内視鏡画像R0はあらかじめ定められたフレームレートにより連続して取得されるが、本実施形態においては第2導出部22における処理のために便宜的に設定した第1の時刻t1により取得された実内視鏡画像R0を第1の実内視鏡画像R1とする。
【0043】
図6はShenらの手法を用いた仮想視点の調整を説明するための図である。図6に示すように、第2導出部22は、3次元画像V0を解析することにより、仮の仮想視点VPs0での内視鏡7の進行方向における深度マップ(第1深度マップとする)DM1を導出する。具体的には、上述したように3次元画像V0から予め抽出された気管支領域を用いて仮の仮想視点VPs0での第1深度マップDM1を導出する。なお、図6においては3次元画像V0における仮の仮想視点VPs0のみを示し、気管支領域は省略している。また、第2導出部22は、第1の実内視鏡画像R1を解析することにより、第1の実内視鏡画像R1の深度マップ(第2深度マップとする)DM2を導出する。深度マップとは、視点が向く方向における物体の深さを画素値で表した画像であり、画像における奥行き方向の距離の分布を表す。
【0044】
第2の深度マップDM2の導出には、例えば「Unsupervised Learning of Depth and Ego-Motion from Video、Tinghui Zhouら、April 2017」に記載された手法を用いることができる。図7はZhouらの手法を説明するための図である。図7に示すように、Zhouらの文献には、深度マップを導出する第1学習済みモデル41および視線の変化を導出する第2学習済みモデル42を学習させる方法が開示されている。第2導出部22は、Zhouらの文献に記載された方法で学習させた第1学習済みモデル41を用いて深度マップを導出する。第1学習済みモデル41は、動画像を構成する1つのフレームからそのフレームの奥行き方向の距離の分布を表す深度マップを導出するようにニューラルネットワークを機械学習することにより構築される。
【0045】
第2学習済みモデル42は、動画像を構成する2つのフレームから2つのフレーム間の視点の変化を導出するようにニューラルネットワークを機械学習することにより構築される。視点の変化は、フレーム間の視点の平行移動量tおよび姿勢の変化量、すなわち回転量Kである。
【0046】
なお、Zhouらの手法においては、複数のフレーム間で視点の変化と深度マップが満たすべき関係式に基づいて、教師データを用いることなく、第1学習済みモデル41および第2学習済みモデル42が同時に学習される。なお、Zhouらの手法を用いることなく、学習用の画像と学習用の画像についての正解データとしての深度マップからなる多数の学習データを用いて第1学習済みモデル41を構築してもよい。また、学習用の2つの画像と正解データである2つの画像の視点の変化との組み合わせからなる多数の学習データを用いて第2学習済みモデル42を構築するようにしてもよい。
【0047】
そして、第2導出部22は、仮の仮想視点VPs0を変更しつつ、変更した仮の仮想視点VPs0における第1深度マップDM1を導出する。また、第2導出部22は、第1の時刻t1の第1の実内視鏡画像R1から第2深度マップDM2を導出する。続いて、第2導出部22は、第1深度マップDM1と第2深度マップDM2との類似度を導出する。そして、類似度が最大となる仮の仮想視点VPs0を第1の時刻t1の第1の仮想視点VP1として導出する。
【0048】
第3導出部23は、第1の時刻t1よりも後の第2の時刻t2において内視鏡7により撮影された第2の実内視鏡画像R2と第1の時刻t1により取得された第1の実内視鏡画像R1とを用いて、内視鏡7の3次元画像V0内における第2の時刻t2の第2の仮想視点VP2を導出する。
【0049】
図8は第3導出部23が行う処理を模式的に示す図である。図8に示すように、まず、第3導出部23は、上述したZhouらの文献に記載された第2学習済みモデル42を用いて第1の実内視鏡画像R1から第2の実内視鏡画像R2への視点の変化を導出する。なお、第2学習済みモデル42への画像の第1の実内視鏡画像R1および第2の実内視鏡画像R2の入力順序を入れ替えることにより、第2の実内視鏡画像R2から第1の実内視鏡画像R1への視点の変化を導出することも可能である。視点の変化は第1の実内視鏡画像R1から第2の実内視鏡画像R2への視点の平行移動量tおよび回転量Kとして導出される。
【0050】
そして、第3導出部23は、導出した視点の変化を用いて、第2導出部22が導出した第1の仮想視点VP1を変換することにより、第2の仮想視点VP2を導出する。さらに、第3導出部23は、第2の仮想視点VP2における第2の仮想内視鏡画像VG2を導出する。第3導出部23は、例えば特開2020-010735号公報に記載された手法を用いて仮想内視鏡画像VG2を導出する。具体的には、第2の仮の仮想視点VP2から内視鏡の視線方向に放射線状に伸ばした複数の視線上の3次元画像V0を、あらかじめ定められた投影面に投影する中心投影を行うことにより、投影画像を生成する。この投影画像が、内視鏡の先端位置において撮影を行ったものとして仮想的に生成された仮想内視鏡画像VG2となる。なお、中心投影の具体的な方法としては、例えば公知のボリュームレンダリング手法等を用いることができる。
【0051】
本実施形態においては、画像取得部20は、内視鏡7があらかじめ定められたフレームレートにより撮影した実内視鏡画像R0が順次取得される。第3導出部23は、最新の実内視鏡画像R0を第2の時刻t2の第2の実内視鏡画像R2、これよりも1つ前の時刻に取得された実内視鏡画像R0を第1の時刻t1の第1の実内視鏡画像R1として用いて、第2の実内視鏡画像R2を取得した時刻における第2の仮想視点VP2を導出する。導出される第2の仮想視点VP2が内視鏡7の視点となる。また、第3導出部23は、順次導出される第2の仮想視点VP2における仮想内視鏡画像VG2を順次導出する。
【0052】
ここで、内視鏡7が気管支内で比較的ゆっくりと移動している場合、第3導出部23による視点の変化は比較的精度よく導出できる。一方、内視鏡7が気管支内において素早く移動した場合、第3導出部23による視点の変化の導出精度が低下する場合がある。このため、本実施形態において、第3導出部23は、導出された視点の変化の信頼度を表す評価結果を導出し、評価結果があらかじめ定められた条件を満足するか否かの判定を行う。
【0053】
図9は視点の変化の信頼度を表す評価結果の導出を説明するための図である。信頼度を表す評価結果を導出するに際し、第3導出部23は、上述したようにして導出した第1の実内視鏡画像R1から第2の実内視鏡画像R2への視点の変化(すなわち、t,K)を用いて、第1の時刻t1の実内視鏡画像R1を変換することにより、視点を変換した変換実内視鏡画像R2rを導出する。変換実内視鏡画像R2rは第2の時刻t2の第2の実内視鏡画像R2に相当する。そして、第3導出部23は、第2の時刻t2の第2の実内視鏡画像R2と変換実内視鏡画像R2rとの差分ΔR2を視点の変化の信頼度を表す評価結果として導出する。差分ΔR2としては、第2の実内視鏡画像R2と変換実内視鏡画像R2rとの対応する画素間の画素値の差分値の絶対値の総和、あるいは差分値の二乗和等を用いることができる。
【0054】
ここで、第1の実内視鏡画像R1と第2の実内視鏡画像R2との視点の変化が精度よく導出されていれば、変換実内視鏡画像R2rは第2の実内視鏡画像R2と一致するため、差分ΔR2は小さくなる。一方、第1の実内視鏡画像R1と第2の実内視鏡画像R2との視点の変化の導出精度が低いと、変換実内視鏡画像R2rは第2の実内視鏡画像R2と一致しなくなるため、差分ΔR2は大きくなる。このため、信頼度を表す評価結果である差分ΔR2が小さいほど視点の変化の信頼度は高いものとなる。
【0055】
したがって、第3導出部23は、差分ΔR2があらかじめ定められたしきい値Th1より小さいか否かに基づいて、視点の変化に対する信頼度を表す評価結果があらかじめ定められた条件を満足するか否かを判定する。
【0056】
判定が否定されると、第3導出部23は、第2の時刻t2の仮想視点VP2の第2の仮想内視鏡画像VG2が第2の実内視鏡画像R2と一致するように第2の仮想視点VP2を調整する。第2の仮想視点VP2の調整は、上述したShenらの手法を用いて行う。すなわち、第3導出部23は、仮想視点VP2を変更しつつ、3次元画像V0から抽出された気管支領域を用いて深度マップDM3を導出し、深度マップDM3と第2の実内視鏡画像R2の深度マップDM2との類似度を導出する。そして、類似度が最大となる仮想視点VP2を第2の時刻t2の新たな仮想視点VP2に決定する。
【0057】
第3導出部23は、新たな仮想視点VP2を用いて、仮想視点VP1から新たな仮想視点VP2への新たな視点の変化を導出する。第3導出部23は、新たな視点の変化を用いて第1の時刻t1の実内視鏡画像R1を変換することにより、新たな変換実内視鏡画像R2rを導出する。そして、第3導出部23は、第2の時刻t2の第2の実内視鏡画像R2と新たな変換実内視鏡画像R2rとの新たな差分ΔR2を新たな信頼度を表す評価結果として導出し、新たな信頼度を表す評価結果が上記あらかじめ定められた条件を満足するか否かを再度判定する。
【0058】
2度目の判定が否定されると、画像取得部20が新たな透視画像T0を取得し、第1導出部21による仮の仮想視点の導出、第2導出部22による第1の時刻t1の仮想視点VP1の導出、および第3導出部23による第2の時刻t2の仮想視点VP2の導出が改めて行われる。
【0059】
1度目の判定が肯定された場合、または1度目の判定が否定された後に2度目の判定が肯定された場合、第3導出部23は、第2の時刻t2よりも後の時刻(第3の時刻t3とする)に取得された第3の実内視鏡画像R3と第2の実内視鏡画像R2とを、それぞれ上記第2の実内視鏡画像R2および第1の実内視鏡画像R1に更新して、第3の時刻t3の仮想視点VP3すなわち更新された第2の時刻t2の第2の仮想視点VP2を導出する。これを、連続して取得される実内視鏡画像R0について繰り返すことにより、内視鏡7の仮想視点VP0が順次導出され、順次導出される仮想視点VP0における仮想内視鏡画像VG0が順次導出される。
【0060】
なお、第3導出部23は、視点の変化の信頼度の判定を1度のみ行い、判定が否定されると、新たな仮想視点VP2の調整を行うことなく、新たな透視画像T0を用いて第1導出部21,第2導出部22および第3導出部23の処理を行うようにしてもよい。
【0061】
一方、第3導出部23は視点の変化の信頼度を表す評価結果を以下のように導出してもよい。図10は視点の変化の信頼度の他の導出を説明するための図である。第3導出部23は上記と同様に第2学習済みモデル42を用いてまず差分ΔR2を導出する。また、第3導出部23は、第2学習済みモデル42への画像の入力順序を入れ替えることにより、第2の実内視鏡画像R2から第1の実内視鏡画像R1への視点の変化を導出する。この視点の変化をt′、K′とする。第3導出部23は、この視点の変化をt′、K′を用いて第2の時刻t2の第2の実内視鏡画像R2を変換することにより、視点を変換した変換実内視鏡画像R1rを導出する。変換実内視鏡画像R1rは第1の時刻t1の第1の実内視鏡画像R1に相当する。そして、第1の時刻t1の第1の実内視鏡画像R1と変換実内視鏡画像R1rとの差分ΔR1を導出する。差分ΔR1としては、第1の実内視鏡画像R1と変換実内視鏡画像R1rとの対応する画素間の画素値の差分値の絶対値の総和、あるいは差分値の二乗和等を用いることができる。
【0062】
そして、第3導出部23は、差分ΔR2および差分ΔR1の双方を用いて視点の変化の信頼度を表す評価結果を導出する。この場合、評価結果としては、差分ΔR2と差分ΔR1との平均あるいは差分ΔR2と差分ΔR1との小さい方の差分等の、差分ΔR2と差分ΔR1との代表値を用いることができる。そして、第3導出部23は、導出した評価結果があらかじめ定められた条件を満足するか否かを判定し、判定結果に応じて上記と同様の処理を行う。
【0063】
表示制御部24は、透視画像T0、実内視鏡画像R0、仮想内視鏡画像VG0を含むナビゲーション画面をディスプレイ14に表示する。また、必要な場合には超音波内視鏡装置6により取得された超音波画像をナビゲーション画面に含めて表示する。図11はナビゲーション画面を示す図である。図11に示すように、ナビゲーション画面50は、3次元画像V0に含まれる気管支領域の画像51、透視画像T0、実内視鏡画像R0および仮想内視鏡画像VG0が表示される。実内視鏡画像R0は内視鏡7によりあらかじめ定められたフレームレートにより取得される画像であり、仮想内視鏡画像VG0実内視鏡画像R0と対応して導出される画像である。また、透視画像T0はあらかじめ定められたフレームレートまたはあらかじめ定められたタイミングで取得される画像である。
【0064】
ナビゲーション画面50において、気管支領域の画像51には内視鏡7を病変54が存在する目標点Ptまでナビゲーションするための経路52が表示されている。また、経路52上には現在の内視鏡7の位置53が示されている。位置53は第3導出部23が導出した最新の仮想視点VP0に対応する。表示される実内視鏡画像R0および仮想内視鏡画像VG0は、位置53における実内視鏡画像および仮想内視鏡画像である。
【0065】
また、図11において、内視鏡7が通過済みの経路52を実線、未通過の経路52を破線で示している。また、ナビゲーション画面50は超音波画像の表示領域55を有し、超音波内視鏡装置6により取得された超音波画像は表示領域55に表示される。
【0066】
次いで、本実施形態において行われる処理について説明する。図12および図13は本実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。まず、画像取得部20が画像保管サーバ4から3次元画像V0を取得し(ステップST1)、透視画像T0を取得し(ステップST2)、さらに実内視鏡画像R0を取得する(ステップST3)。なお、ステップST3において取得される実内視鏡画像は,処理の開始時においては取得時刻が隣接する第1の時刻t1の第1の実内視鏡画像R1および第2の時刻t2の第2の実内視鏡画像R2である。処理が開始された以降は最も撮影時刻が新しい実内視鏡画像である。
【0067】
次いで、第1導出部21が、透視画像T0と3次元画像V0とを用いて、内視鏡7の3次元画像V0内における仮の仮想視点VPs0を導出する(ステップST4)。続いて、第2導出部22が、第1導出部21が導出した仮の仮想視点VPs0、第1の実内視鏡画像R1および3次元画像V0を用いて、内視鏡7の3次元画像V0内における第1の時刻t1の第1の仮想視点VP1を導出する(ステップST5)。
【0068】
次いで、第3導出部23が、第1の時刻t1よりも後の第2の時刻t2において内視鏡7により撮影された第2の実内視鏡画像R2と第1の時刻t1により取得された第1の実内視鏡画像R1とを用いて、内視鏡7の3次元画像V0内における第2の時刻t2の第2の仮想視点VP2を導出する(ステップST6)。
【0069】
続いて、第3導出部23は、視点の変化の信頼度を表す評価結果を導出し(ステップST7)、視点の変化に対する信頼度を表す評価結果があらかじめ定められた条件を満足するか否かを判定する(ステップST8)。ステップST8が否定されると、第3導出部23は、第2の仮想視点VP2を調整し(ステップST9)、調整された新たな仮想視点VP2を用いて新たな信頼度を表す評価結果を導出する(ステップST10)。そして、新たな視点の変化に対する信頼度があらかじめ定められた条件を満足するか否かを判定する(ステップST11)。ステップST11が否定されると、ステップST2に戻り、新たな透視画像T0が取得されて、新たな透視画像T0を用いてのステップST2以降の処理が繰り返される。
【0070】
ステップST8,ST11が肯定されると、第3導出部23は、最新の第2の仮想視点VP2における第2の仮想内視鏡画像VG2を導出する(ステップST12)。そして、表示制御部24が、気管支領域の画像51、実内視鏡画像R0および仮想内視鏡画像VG0を含むナビゲーション画面をディスプレイ14に表示する(画像表示:ステップST13)。この時点で表示される実内視鏡画像R0は最新の第2の実内視鏡画像R2であり、仮想内視鏡画像VG0は最新の第2の実内視鏡画像R2に対応する第2の仮想内視鏡画像VG2である。なお、これらの表示の前に第1の実内視鏡画像R1および第1の仮想内視鏡画像VG1を表示するようにしてもよい。そしてステップST6に戻り、ステップST6以降の処理が繰り返される。これにより、順次取得される実内視鏡画像R0および実内視鏡画像R0の視点と位置合わせがなされた視点における仮想内視鏡画像VG0がナビゲーション画面50に表示されることとなる。
【0071】
このように、本実施形態においては、透視画像T0と3次元画像V0とを用いて内視鏡7の3次元画像V0における仮の仮想視点VPs0を導出し、仮の仮想視点VPs0、第1の実内視鏡画像R1および3次元画像V0を用いて、内視鏡7の3次元画像V0内における第1の時刻t1の仮想視点VP1を導出し、第2の実内視鏡画像R2と第1の実内視鏡画像R1とを用いて、内視鏡7の3次元画像V0内における第2の時刻t2の仮想視点VP2を導出するようにした。このため、センサを用いて内視鏡7の先端を検出しなくても、仮想視点VP2における仮想内視鏡画像VG2を導出することにより、導出した仮想内視鏡画像VG2を用いて内視鏡7を被検体H内の所望とする位置にナビゲーションすることができる。
【0072】
また、第1の時刻t1の仮想視点VP1における第1の仮想内視鏡画像VG1が第1の実内視鏡画像R1と一致するように第1の時刻t1の仮想視点VP1を調整することにより、実際の内視鏡7の視点に一致した視点の仮想内視鏡画像VG1さらには仮想内視鏡画像VG2を導出することができる。
【0073】
また、第1の実内視鏡画像R1と第2の実内視鏡画像R2とを用いて視点の変化を導出し、視点の変化と第1の時刻t1の仮想視点VP1とを用いて第2の時刻t2の仮想視点VP2を導出することにより、新たな仮想視点VP2を精度よく導出することができる。したがって、実際の内視鏡7の視点に一致した視点の仮想内視鏡画像VG2を導出することができる。
【0074】
また、第1の実内視鏡画像R1と第2の実内視鏡画像R2とを用いて視点の変化に対する信頼度を表す評価結果があらかじめ定められた条件を満足するか否かを判定し、判定が否定された場合、第1の時刻t2の仮想視点VP2を調整することにより、精度よく仮想視点VP2を導出することができ、その結果、実際の内視鏡7の視点に一致した視点の仮想内視鏡画像VG2を導出することができる。
【0075】
この場合において、調整された仮想視点VP2に基づく新たな視点の変化の信頼度を表す評価結果があらかじめ定められた条件を満足するか否かをさらに判定し、さらなる判定が否定された場合に、新たな透視画像T0を取得して、第1導出部21、第2導出部22および第3導出部23の処理をやり直すことにより、時間の経過による内視鏡7の位置と仮想視点VP2とのずれを補正することができる。したがって、精度よく仮想視点VP2を導出することができる。
【0076】
なお、上記実施形態においては、本開示の画像処理装置を気管支の観察に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、胃、大腸および血管等の管腔構造物を内視鏡により観察する場合にも、本開示を適用できる。
【0077】
また、上記各実施形態において、例えば、画像取得部20、第1導出部21、第2導出部22、第3導出部23、および表示制御部24といった各種の処理を実行する処理部(Processing Unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(Processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、上述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device :PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0078】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせまたはCPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0079】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントおよびサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアとの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0080】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(Circuitry)を用いることができる。
【符号の説明】
【0081】
1 コンピュータ
2 3次元画像撮影装置
3 透視画像撮影装置
3A アーム
3B X線源
3C X線検出器
4 画像保管サーバ
5 ネットワーク
6 超音波内視鏡装置
7 内視鏡
10 画像処理装置
11 CPU
12 画像処理プログラム
13 ストレージ
14 ディスプレイ
15 入力デバイス
16 メモリ
20 画像取得部
21 第1導出部
22 第2導出部
23 第3導出部
24 表示制御部
30 内視鏡像
31 先端
41 第1学習済みモデル
42 第2学習済みモデル
50 ナビゲーション画面
51 気管支領域の画像
52 経路
53 位置
54 病変
55 超音波画像
R0,R1,R2 実内視鏡画像
T0 透視画像
VG0,VG1,VG2 仮想内視鏡画像
VPs0 仮の仮想視点
Pt 目標点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13