(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011005
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】EUV光生成システム及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240118BHJP
H05G 2/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 521
H05G2/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112655
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】西村 祐一
(72)【発明者】
【氏名】植野 能史
【テーマコード(参考)】
2H197
4C092
【Fターム(参考)】
2H197CA10
2H197CA12
2H197CA17
2H197DB05
2H197DB06
2H197DC02
2H197DC06
2H197DC12
2H197GA01
2H197GA04
2H197GA05
2H197GA24
4C092AA06
4C092AA15
4C092AB12
4C092AC09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】極端紫外(EUV)光生成システム及び電子デバイスの製造方法に関する。
【解決手段】極端紫外光生成システムは、プリパルスレーザ装置と、メインパルスレーザ装置と、プリパルスレーザ光の照射位置を調整する第1のアクチュエータと、プリパルスレーザ光の照射位置とは独立に、メインパルスレーザ光の照射位置を調整する第2のアクチュエータと、EUVエネルギを検出するEUVセンサと、拡散ターゲットに照射される前のメインパルスレーザ光のレーザエネルギを検出するレーザエネルギセンサと、拡散ターゲットを撮像するターゲットセンサと、拡散ターゲットの画像から算出される拡散ターゲットの特性値に基づいて第1のアクチュエータを制御した後、レーザエネルギに対するEUVエネルギの比率が大きくなるように第2のアクチュエータを制御するコントローラと、を備える。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ内に供給されるターゲットに照射されるプリパルスレーザ光を出力するプリパルスレーザ装置と、
前記プリパルスレーザ光の照射により生成された拡散ターゲットに照射されるメインパルスレーザ光を出力するメインパルスレーザ装置と、
前記プリパルスレーザ光の照射位置を調整する第1のアクチュエータと、
前記プリパルスレーザ光の照射位置とは独立に、前記メインパルスレーザ光の照射位置を調整する第2のアクチュエータと、
前記拡散ターゲットに前記メインパルスレーザ光が照射されて生成されたEUV光のEUVエネルギを検出するEUVセンサと、
前記拡散ターゲットに照射される前の前記メインパルスレーザ光のレーザエネルギを検出するレーザエネルギセンサと、
前記拡散ターゲットを撮像するターゲットセンサと、
前記ターゲットセンサによって得られる前記拡散ターゲットの画像から算出される前記拡散ターゲットの特性値に基づいて前記第1のアクチュエータを制御した後、前記レーザエネルギセンサによって検出される前記レーザエネルギに対する前記EUVエネルギの比率が大きくなるように前記第2のアクチュエータを制御するコントローラと、
を備えるEUV光生成システム。
【請求項2】
請求項1に記載のEUV光生成システムであって、
前記コントローラは、
前記特性値の極値を探索するように前記プリパルスレーザ光の照射位置を調整する、
EUV光生成システム。
【請求項3】
請求項2に記載のEUV光生成システムであって、
前記コントローラは、
前記プリパルスレーザ光の照射位置を異ならせた2点以上の各位置に前記プリパルスレーザ光を照射することにより取得される前記各位置の前記特性値を用いて、前記照射位置の変化に対する前記特性値の変化の割合を示す勾配を評価する、
EUV光生成システム。
【請求項4】
請求項3に記載のEUV光生成システムであって、
前記コントローラは、
前記勾配の評価結果に基づき、前記2点以上の各位置とは異なる位置に前記プリパルスレーザ光を追加照射するための追加照射位置を決定し、
前記追加照射位置への前記追加照射により、前記追加照射位置での前記特性値を取得する、
EUV光生成システム。
【請求項5】
請求項1に記載のEUV光生成システムであって、
前記特性値には、前記拡散ターゲットの大きさ、傾き及び位置のうち少なくとも1つが含まれる、
EUV光生成システム。
【請求項6】
請求項1に記載のEUV光生成システムであって、
前記コントローラは、
前記比率の最大値を探索するように前記メインパルスレーザ光の照射位置を調整する、
EUV光生成システム。
【請求項7】
請求項6に記載のEUV光生成システムであって、
前記コントローラは、
前記メインパルスレーザ光の照射位置を異ならせた2点以上の各位置に前記メインパルスレーザ光を照射することにより取得される前記各位置の前記比率を用いて、前記照射位置の変化に対する前記比率の変化の割合を示す勾配を評価する、
EUV光生成システム。
【請求項8】
請求項7に記載のEUV光生成システムであって、
前記コントローラは、
前記勾配の評価結果に基づき、前記2点以上の各位置とは異なる位置に前記メインパルスレーザ光を追加照射するための追加照射位置を決定し、
前記追加照射位置への前記追加照射により、前記追加照射位置での前記比率を取得する、
EUV光生成システム。
【請求項9】
請求項1に記載のEUV光生成システムであって、
前記コントローラは、
サンプリングにおいてバースト動作のバースト開始から所定期間における前記特性値及び前記比率を排除し、前記所定期間の経過後にサンプリングされた前記特性値及び前記比率に基づき、前記第1のアクチュエータ及び前記第2のアクチュエータを制御する、
を備えるEUV光生成システム。
【請求項10】
請求項9に記載のEUV光生成システムであって、
前記所定期間は、数十msである、
EUV光生成システム。
【請求項11】
請求項9に記載のEUV光生成システムであって、
前記コントローラは、
第1のバーストパターンによるバースト動作によって前記特性値及び前記比率を取得することにより、前記プリパルスレーザ光の照射位置及び前記メインパルスレーザ光の照射位置の調整を行う第1の調整と、
前記第1の調整を実施した後に、第2のバーストパターンによるバースト動作によって前記特性値及び前記比率を取得することにより、前記プリパルスレーザ光の照射位置及び前記メインパルスレーザ光の照射位置の調整を行う第2の調整と、を含む2段階の調整を行うように構成され、
前記第1のバーストパターンは、バーストON時間が1ms未満、デューティが1%未満であり、
前記第2のバーストパターンは、バーストON時間が1sec以上、デューティが30%未満である、
EUV光生成システム。
【請求項12】
請求項1に記載のEUV光生成システムであって、さらに、
前記プリパルスレーザ光と前記メインパルスレーザ光の光路を結合させるコンバイナと、
前記コンバイナにより光路が結合された前記プリパルスレーザ光と前記メインパルスレーザ光をプラズマ生成領域に集光する集光ユニットと、を含み、
前記第2のアクチュエータは、前記コンバイナの上流に配置され、光路が結合される前の前記メインパルスレーザ光の進行方向を変化させる、
EUV光生成システム。
【請求項13】
請求項12に記載のEUV光生成システムであって、
前記第1のアクチュエータは、前記集光ユニットの位置を変更する、
EUV光生成システム。
【請求項14】
請求項12に記載のEUV光生成システムであって、
前記第1のアクチュエータは、前記コンバイナの上流に配置され、光路が結合される前の前記プリパルスレーザ光の進行方向を変化させる、
EUV光生成システム。
【請求項15】
請求項12に記載のEUV光生成システムであって、さらに、
前記集光ユニットによって集光された前記プリパルスレーザ光及び前記メインパルスレーザ光のレーザ照射軸を囲むように配置された複数の前記EUVセンサを備える、
EUV光生成システム。
【請求項16】
請求項1に記載のEUV光生成システムであって、
前記ターゲットセンサは、前記拡散ターゲットの拡散時間内に開閉されるシャッターを備える、
EUV光生成システム。
【請求項17】
請求項1に記載のEUV光生成システムであって、さらに、
前記ターゲットセンサと対向して配置され、前記拡散ターゲットを照明する照明光源を備える、
EUV光生成システム。
【請求項18】
請求項1に記載のEUV光生成システムであって、
複数の前記ターゲットセンサを備え、
前記複数の前記ターゲットセンサにより、前記拡散ターゲットを複数の方向から撮像する、
EUV光生成システム。
【請求項19】
電子デバイスの製造方法であって、
チャンバ内に供給されるターゲットに照射されるプリパルスレーザ光を出力するプリパルスレーザ装置と、
前記プリパルスレーザ光の照射により生成された拡散ターゲットに照射されるメインパルスレーザ光を出力するメインパルスレーザ装置と、
前記プリパルスレーザ光の照射位置を調整する第1のアクチュエータと、
前記プリパルスレーザ光の照射位置とは独立に、前記メインパルスレーザ光の照射位置を調整する第2のアクチュエータと、
前記拡散ターゲットに前記メインパルスレーザ光が照射されて生成されたEUV光のEUVエネルギを検出するEUVセンサと、
前記拡散ターゲットに照射される前の前記メインパルスレーザ光のレーザエネルギを検出するレーザエネルギセンサと、
前記拡散ターゲットを撮像するターゲットセンサと、
前記ターゲットセンサによって得られる前記拡散ターゲットの画像から算出される前記拡散ターゲットの特性値に基づいて前記第1のアクチュエータを制御した後、前記レーザエネルギセンサによって検出される前記レーザエネルギに対する前記EUVエネルギの比率が大きくなるように前記第2のアクチュエータを制御するコントローラと、
を備えるEUV光生成システムによって前記EUV光を生成し、
前記EUV光を露光装置に出力し、
電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に前記EUV光を露光することを含む、
電子デバイスの製造方法。
【請求項20】
電子デバイスの製造方法であって、
チャンバ内に供給されるターゲットに照射されるプリパルスレーザ光を出力するプリパルスレーザ装置と、
前記プリパルスレーザ光の照射により生成された拡散ターゲットに照射されるメインパルスレーザ光を出力するメインパルスレーザ装置と、
前記プリパルスレーザ光の照射位置を調整する第1のアクチュエータと、
前記プリパルスレーザ光の照射位置とは独立に、前記メインパルスレーザ光の照射位置を調整する第2のアクチュエータと、
前記拡散ターゲットに前記メインパルスレーザ光が照射されて生成されたEUV光のEUVエネルギを検出するEUVセンサと、
前記拡散ターゲットに照射される前の前記メインパルスレーザ光のレーザエネルギを検出するレーザエネルギセンサと、
前記拡散ターゲットを撮像するターゲットセンサと、
前記ターゲットセンサによって得られる前記拡散ターゲットの画像から算出される前記拡散ターゲットの特性値に基づいて前記第1のアクチュエータを制御した後、前記レーザエネルギセンサによって検出される前記レーザエネルギに対する前記EUVエネルギの比率が大きくなるように前記第2のアクチュエータを制御するコントローラと、
を備えるEUV光生成システムによって前記EUV光を生成し、
前記EUV光をマスクに照射して前記マスクの欠陥を検査し、
前記検査の結果を用いてマスクを選定し、
前記選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写することを含む、
電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、EUV光生成システム及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、10nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、波長約13nmの極端紫外(EUV)光を生成するための装置と縮小投影反射光学系とを組み合わせた半導体露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLaser Produced Plasma(LPP)式の装置の開発が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第10057972号
【特許文献2】米国特許第9778022号
【特許文献3】特開平5-167162号公報
【概要】
【0005】
本開示の1つの観点に係る極端紫外光生成システムは、チャンバ内に供給されるターゲットに照射されるプリパルスレーザ光を出力するプリパルスレーザ装置と、プリパルスレーザ光の照射により生成された拡散ターゲットに照射されるメインパルスレーザ光を出力するメインパルスレーザ装置と、プリパルスレーザ光の照射位置を調整する第1のアクチュエータと、プリパルスレーザ光の照射位置とは独立に、メインパルスレーザ光の照射位置を調整する第2のアクチュエータと、拡散ターゲットにメインパルスレーザ光が照射されて生成されたEUV光のEUVエネルギを検出するEUVセンサと、拡散ターゲットに照射される前のメインパルスレーザ光のレーザエネルギを検出するレーザエネルギセンサと、拡散ターゲットを撮像するターゲットセンサと、ターゲットセンサによって得られる拡散ターゲットの画像から算出される拡散ターゲットの特性値に基づいて第1のアクチュエータを制御した後、レーザエネルギセンサによって検出されるレーザエネルギに対するEUVエネルギの比率が大きくなるように第2のアクチュエータを制御するコントローラと、を備える。
【0006】
本開示の他の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、チャンバ内に供給されるターゲットに照射されるプリパルスレーザ光を出力するプリパルスレーザ装置と、プリパルスレーザ光の照射により生成された拡散ターゲットに照射されるメインパルスレーザ光を出力するメインパルスレーザ装置と、プリパルスレーザ光の照射位置を調整する第1のアクチュエータと、プリパルスレーザ光の照射位置とは独立に、メインパルスレーザ光の照射位置を調整する第2のアクチュエータと、拡散ターゲットにメインパルスレーザ光が照射されて生成されたEUV光のEUVエネルギを検出するEUVセンサと、拡散ターゲットに照射される前のメインパルスレーザ光のレーザエネルギを検出するレーザエネルギセンサと、拡散ターゲットを撮像するターゲットセンサと、ターゲットセンサによって得られる拡散ターゲットの画像から算出される拡散ターゲットの特性値に基づいて第1のアクチュエータを制御した後、レーザエネルギセンサによって検出されるレーザエネルギに対するEUVエネルギの比率が大きくなるように第2のアクチュエータを制御するコントローラと、を備えるEUV光生成システムによってEUV光を生成し、EUV光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、露光装置内で感光基板上にEUV光を露光することを含む。
【0007】
本開示の他の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、チャンバ内に供給されるターゲットに照射されるプリパルスレーザ光を出力するプリパルスレーザ装置と、プリパルスレーザ光の照射により生成された拡散ターゲットに照射されるメインパルスレーザ光を出力するメインパルスレーザ装置と、プリパルスレーザ光の照射位置を調整する第1のアクチュエータと、プリパルスレーザ光の照射位置とは独立に、メインパルスレーザ光の照射位置を調整する第2のアクチュエータと、拡散ターゲットにメインパルスレーザ光が照射されて生成されたEUV光のEUVエネルギを検出するEUVセンサと、拡散ターゲットに照射される前のメインパルスレーザ光のレーザエネルギを検出するレーザエネルギセンサと、拡散ターゲットを撮像するターゲットセンサと、ターゲットセンサによって得られる拡散ターゲットの画像から算出される拡散ターゲットの特性値に基づいて第1のアクチュエータを制御した後、レーザエネルギセンサによって検出されるレーザエネルギに対するEUVエネルギの比率が大きくなるように第2のアクチュエータを制御するコントローラと、を備えるEUV光生成システムによってEUV光を生成し、EUV光をマスクに照射してマスクの欠陥を検査し、検査の結果を用いてマスクを選定し、選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【
図1】
図1は、例示的なLPP式のEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
【
図3】
図3は、比較例に係るEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
【
図4】
図4は、初期調整において実施されるレーザ照射位置の調整動作のフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図4のステップS11及びステップS12のそれぞれに適用されるレーザ照射位置調整処理の例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図5に示されたレーザ照射位置調整処理に適用される照射位置水準群を例示する図表である。
【
図7】
図7は、
図6に示された照射位置水準群に基づいて作成されたEUVエネルギ分布図を例示的に示す図表である。
【
図8】
図8は、
図7に示されたEUVエネルギ分布図から求められた近似曲線を例示する説明図である。
【
図9】
図9は、ドロップレットの中心にプリパルスレーザ光が照射された場合を模式的に示す説明図である。
【
図10】
図10は、ドロップレットの中心から-Y側にずれた位置にプリパルスレーザ光が照射された場合を模式的に示す説明図である。
【
図11】
図11は、ドロップレットの中心から+Y側にずれた位置にプリパルスレーザ光が照射された場合を模式的に示す説明図である。
【
図12】
図12は、実施形態1に係るEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
【
図13】
図13は、ターゲットセンサの配置例を示す説明図である。
【
図14】
図14は、ターゲットセンサによって撮像された拡散ターゲットの観測例を示す。
【
図15】
図15は、ターゲットセンサを用いたバックライト観測のタイミングチャートである。
【
図16】
図16は、実施形態1に係るEUV光生成システムにおいて実施されるレーザ照射位置調整のフローチャートである。
【
図17】
図17は、
図16のステップS14及びステップS15に適用されるレーザ照射位置調整処理の例を示すフローチャートである。
【
図18】
図18は、
図17のステップS103からステップS107の処理に関する説明図であり、勾配の絶対値が閾値よりも大きい場合の例を示す。
【
図19】
図19は、
図17のステップS103からステップS107の処理に関する説明図であり、勾配の絶対値が閾値以下である場合の例を示す。
【
図20】
図20は、実施形態2に係るEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
【
図21】
図21は、レーザ照射位置調整においてバースト初期の過渡期間を排除するサンプリングの例を示す。
【
図22】
図22は、2つのターゲットセンサを備えるEUV光生成システムにおけるセンサ配置例を示す。
【
図23】
図23は、EUV光生成システムと接続された露光装置の構成を概略的に示す。
【
図24】
図24は、EUV光生成システムと接続された検査装置の構成を概略的に示す。
【実施形態】
【0009】
-目次-
1.用語の説明
2.EUV光生成システムの全体説明
2.1 構成
2.2 動作
2.3 バースト動作の説明
3.比較例に係るEUV光生成システムの概要
3.1 構成
3.2 動作
3.3 初期調整の概要
3.4 レーザ照射位置調整処理の例
3.4.1 レーザ照射位置調整処理の概要
3.4.2 フローチャートの説明
3.5 作用・効果
3.6 課題
4.実施形態1
4.1 構成
4.2 動作
4.2.1 拡散ターゲットの観測例
4.2.2 バックライト観測のタイミングチャート
4.2.3 レーザ照射位置調整
4.3 作用・効果
5.実施形態2
5.1 構成
5.2 動作
5.3 作用・効果
6.実施形態3
6.1 ドロップレット位置が変動する現象について
6.2 構成
6.3 動作
6.4 作用・効果
7.実施形態4
7.1 構成
7.2 動作
7.3 作用・効果
8.電子デバイスの製造方法について
9.その他
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0010】
1.用語の説明
「ターゲット」は、チャンバ内に導入されたレーザ光の被照射物である。レーザ光が照射されたターゲットは、プラズマ化してEUV光を放射する。
【0011】
「ドロップレット」は、チャンバ内に供給されたターゲットの一形態である。ドロップレットは、溶融したターゲット物質の表面張力によってほぼ球状となった滴状のターゲットを意味し得る。
【0012】
「プラズマ生成領域」は、チャンバ内の所定領域である。プラズマ生成領域は、チャンバ内に出力されたターゲットに対してレーザ光が照射され、ターゲットがプラズマ化する領域である。
【0013】
「EUV光」という表記は、「極端紫外光」の略語表記である。「極端紫外光生成システム」は「EUV光生成システム」と表記される。
【0014】
2.EUV光生成システムの全体説明
2.1 構成
図1に、例示的なLPP式のEUV光生成システム11の構成を概略的に示す。EUV光生成装置1は、レーザ装置3と共に用いられる。本開示においては、EUV光生成装置1及びレーザ装置3を含むシステムを、EUV光生成システム11と称する。EUV光生成装置1は、チャンバ2及びターゲット供給装置26を含む。チャンバ2は、密閉可能な容器である。ターゲット供給装置26は、ターゲット物質をチャンバ2内部に供給する。ターゲット物質の材料は、スズ、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、キセノン、インジウム、又は、それらの内のいずれか2つ以上の組合せを含んでもよい。
【0015】
チャンバ2の壁には、貫通孔が備えられている。その貫通孔はウインドウ21によって塞がれ、ウインドウ21をレーザ装置3から出力されるパルスレーザ光32が透過する。チャンバ2の内部には、回転楕円面形状の反射面を備えたEUV集光ミラー23が配置される。EUV集光ミラー23は、第1及び第2の焦点を備える。EUV集光ミラー23の表面には、モリブデンとシリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成される。EUV集光ミラー23は、その第1の焦点がプラズマ生成領域25に位置し、その第2の焦点が中間集光点292に位置するように配置されている。EUV集光ミラー23の中央部には貫通孔24が備えられ、貫通孔24をパルスレーザ光33が通過する。
【0016】
EUV光生成装置1は、プロセッサ5、ターゲットセンサ4等を含む。ターゲットセンサ4は、ターゲット27の存在、軌跡、位置、速度のうち少なくとも1つを検出する。ターゲットセンサ4は、撮像機能を備えてもよい。
【0017】
また、EUV光生成装置1は、チャンバ2の内部と露光装置6の内部とを連通させる接続部29を含む。接続部29内部には、アパーチャ293が形成された壁291が備えられる。壁291は、そのアパーチャ293がEUV集光ミラー23の第2の焦点に位置するように配置される。
【0018】
さらに、EUV光生成装置1は、レーザ光伝送装置34、レーザ光集光ミラー22、ターゲット27を回収するためのターゲット回収器28等を含む。レーザ光伝送装置34は、レーザ光の伝送状態を規定するための光学素子と、この光学素子の位置、姿勢等を調整するためのアクチュエータとを備える。
【0019】
2.2 動作
図1を参照して、例示的なLPP式のEUV光生成システム11の動作を説明する。レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31は、レーザ光伝送装置34を経て、パルスレーザ光32としてウインドウ21を透過してチャンバ2内に入射する。パルスレーザ光32は、レーザ光経路に沿ってチャンバ2内を進み、レーザ光集光ミラー22で反射されて、パルスレーザ光33としてターゲット27に照射される。
【0020】
ターゲット供給装置26は、ターゲット物質によって形成されたターゲット27をチャンバ2内部のプラズマ生成領域25に向けて出力する。ターゲット27には、パルスレーザ光33が照射される。パルスレーザ光33が照射されたターゲット27はプラズマ化し、そのプラズマから放射光251が放射される。放射光251に含まれるEUV光252は、EUV集光ミラー23によって選択的に反射される。EUV集光ミラー23によって反射されたEUV光252は、中間集光点(IF)292で集光され、露光装置6に出力される。なお、1つのターゲット27に、パルスレーザ光33に含まれる複数のパルスが照射されてもよい。
【0021】
プロセッサ5は、EUV光生成システム11全体を制御する。プロセッサ5は、ターゲットセンサ4の検出結果を処理する。ターゲットセンサ4の検出結果に基づいて、プロセッサ5は、ターゲット27が出力されるタイミング、ターゲット27の出力方向等を制御してもよい。さらに、プロセッサ5は、レーザ装置3の発振タイミング、パルスレーザ光32の進行方向、パルスレーザ光33の集光位置等を制御してもよい。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて他の制御が追加されてもよい。
【0022】
2.3 バースト動作の説明
図2は、バースト動作の説明図である。
図2の横軸は時間、縦軸はEUVエネルギを表す。EUV光生成システム11は、バースト動作によってEUV光252を出力することがある。バースト動作とは、ある期間所定の繰り返し周波数でEUV光252を出力するバースト期間と、所定の期間EUV光252を出力しない休止期間とを繰り返す動作である。
【0023】
バースト期間中は、レーザ光が出力される。休止期間中はレーザ光の出力が停止されるか、又はプラズマ生成領域25へのレーザ光の伝搬が抑制される。
【0024】
バーストパターンは、バースト期間のEUVエネルギ、繰り返し周波数、パルス数とバースト休止期間の長さ、バースト数のうちいずれか又は複数を含んだパラメータによって定義される。バーストパターンは露光装置6によって指示されることがある。
【0025】
バースト動作についてのデューティ(Duty)は、バースト1周期(バースト期間+休止期間)に占めるバースト期間の割合であり、例えば、次式のように百分率で表される。
【0026】
Duty(%)={バースト期間/(バースト期間+休止期間)}×100(%)
3.比較例に係るEUV光生成システムの概要
3.1 構成
図3は、比較例に係るEUV光生成システム11Aの構成を概略的に示す。本開示の比較例とは、出願人のみによって知られていると出願人が認識している形態であって、出願人が自認している公知例ではない。
【0027】
EUV光生成システム11Aは、チャンバ2Aと、ターゲット供給装置26と、タイミングセンサ41と、メインパルスレーザ(MPL)装置3Mと、プリパルスレーザ(PPL)装置3Pと、レーザ光伝送装置34Aと、複数のEUVセンサ70a、70bと、コントローラ5Aと、を含む。EUVセンサ70a、70bは、チャンバ2Aの内部に配置される。
【0028】
ターゲット供給装置26は、チャンバ2A内にターゲット27としてのドロップレットDLを出力する。ターゲット供給装置26は、チャンバ2Aの壁面に形成された貫通孔を貫通するように配置されている。ターゲット供給装置26は、溶融されたターゲット物質を貯蔵するタンク262と、タンク262と連通しターゲット物質をチャンバ2A内に出力するノズルと、ノズル付近に配置されたピエゾ素子と、を含む。タンク262の外側壁面部にはヒータと温度センサとが配置され、ヒータによってタンク262内のターゲット物質を加熱してターゲット物質を溶融させる。
【0029】
ターゲット供給装置26は、タンク262の圧力を調整する圧力制御器76と接続されている。圧力制御器76は、不活性ガス供給部77とタンク262との間の配管78に配置される。不活性ガス供給部77は、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが充填されているガスボンベを含んでいてもよい。不活性ガス供給部77は、圧力制御器76を介してタンク262内に不活性ガスを供給する。圧力制御器76は、給気及び排気用の電磁弁や圧力センサ等を内部に含む。圧力制御器76はコントローラ5Aに接続され、ターゲット供給装置26のドロップレット吐出圧を調整する。溶融されたターゲット物質をノズルから噴射し、ピエゾ素子によって加振することにより、ドロップレットDLが生成される。
【0030】
チャンバ2Aの内部には、プラズマ生成領域25に供給されたドロップレットDLに対し、集光したレーザ光を照射するための集光ユニット(Focus Unit:FU)22Aと、集光ユニット22Aの位置を調整するためのステージ72と、EUV集光ミラー23と、EUV集光ミラーホルダ81と、ターゲット回収器28と、が配置されている。
【0031】
EUV集光ミラー23で集光されたEUV光252の出力方向をZ軸のプラス方向(+Z方向)とする。
図3に示すように、プラズマ生成領域25に供給されたドロップレットDLに対し、集光されたパルスレーザ光33を照射する際のパルスレーザ光33の進行方向は+Z方向とほぼ同方向であってよい。ターゲット供給装置26から出力されるドロップレットDLの出力方向と反対方向をY軸のプラス方向(+Y方向)とする。チャンバ2A内に供給されたドロップレットDLは-Y方向に進行する。Z軸方向とY軸方向との両方に垂直な方向をX軸方向とする。
【0032】
ターゲット供給装置26は、X軸方向及びZ軸方向に移動可能なXZステージ264を介してチャンバ2Aに配置される。コントローラ5Aは、ターゲットセンサ4(
図1参照)の出力に基づいてXZステージ264を制御する。XZステージ264の制御により、ドロップレットDLがプラズマ生成領域25を通るようにドロップレットDLの軌道を調整することができる。
【0033】
タイミングセンサ41は、ドロップレット検出領域を通過するドロップレットDLを検出するセンサである。ドロップレット検出領域は、チャンバ2A内の所定領域であって、ターゲット供給装置26とプラズマ生成領域25との間にあるターゲット軌道上の所定位置に位置する領域である。タイミングセンサ41は、ドロップレットDLの通過タイミングを計測する。
【0034】
プリパルスレーザ装置3Pは、プリパルスレーザ光31Pを出力するように構成されている。プリパルスレーザ装置3Pは、例えば、媒質YAG、YLF、YVO4のいずれかに不純物をドープした結晶を用いた固体レーザ装置、あるいは、CO2レーザ装置で構成されてもよい。メインパルスレーザ装置3Mは、メインパルスレーザ光31Mを出力するように構成されている。メインパルスレーザ装置3Mは、例えば、YAGレーザ装置、あるいは、CO2レーザ装置で構成されてもよい。
【0035】
レーザ光伝送装置34Aは、高反射ミラー341~346と、アクチュエータ347と、コンバイナ348と、を含む。高反射ミラー341及び342は、プリパルスレーザ光31Pの光路に配置されている。
【0036】
高反射ミラー343、344及び345は、メインパルスレーザ光31Mの光路に配置されている。アクチュエータ347は、高反射ミラー344の位置及び/又は角度を調整する。なお、アクチュエータ347は、高反射ミラー344に限らず、メインパルスレーザ光31Mの光路中に配置される他の高反射ミラーの位置及び/又は角度を調整するように構成されてもよい。アクチュエータ347は、メインパルスレーザ光31Mの照射位置を調整する手段として機能する。コンバイナ348の上流に配置されるアクチュエータ347は、プリパルスレーザ光31Pとは独立に、メインパルスレーザ光31Mの進行方向を変化させることができる。
【0037】
コンバイナ348は、メインパルスレーザ光31Mとプリパルスレーザ光31Pとを合波するための光学素子である。コンバイナ348は、例えば、ダイクロイックミラーであってもよいし、偏光子であってもよい。コンバイナ348は、高反射ミラー342によって反射されたプリパルスレーザ光31Pの光路に位置している。また、コンバイナ348は、高反射ミラー345によって反射されたメインパルスレーザ光31Mの光路に位置している。コンバイナ348は、プリパルスレーザ光31Pを高い反射率で反射し、メインパルスレーザ光31Mを高い透過率で透過させるように構成されている。コンバイナ348は、プリパルスレーザ光31P及びメインパルスレーザ光31Mの光路軸をほぼ一致させるように構成されている。すなわち、コンバイナ348によってプリパルスレーザ光31Pとメインパルスレーザ光31Mの光路が結合される。あるいはコンバイナ348は、プリパルスレーザ光31Pを高い透過率で透過させ、メインパルスレーザ光31Mを高い反射率で反射するように構成されてもよく、これに合わせてレーザ光伝送装置34Aを構成してもよい。
【0038】
高反射ミラー346は、コンバイナ348によって反射されたプリパルスレーザ光31Pとコンバイナ348を透過したメインパルスレーザ光31Mとの光路に配置されている。高反射ミラー346は、プリパルスレーザ光31P及びメインパルスレーザ光31Mを、チャンバ2Aの内部に向けて反射するように構成されている。
【0039】
集光ユニット22Aは、ドロップレットDL及び後述する拡散ターゲットに対して集光したパルスレーザ光33を照射するための集光光学系を含むユニットである。集光ユニット22Aは、レーザ光集光ミラー221、222を含む。レーザ光集光ミラー221、222のそれぞれはミラーホルダに保持され、プレート224に固定される。ステージ72は、例えば、X軸、Y軸及びZ軸の互いに直交する3軸の方向にプレート224を移動可能なアクチュエータを含む。ステージ72は、チャンバ2A内におけるレーザ光の照射位置を、コントローラ5Aから指定された位置にX軸、Y軸及びZ軸の各軸の方向において移動できるように構成される。
【0040】
EUV集光ミラー23は、EUV集光ミラーホルダ81に保持される。EUV集光ミラーホルダ81はチャンバ2Aに固定される。
【0041】
EUVセンサ70a、70bは、生成されたEUV光252のエネルギを計測するエネルギセンサである。EUVセンサ70a、70bは、Z軸の周りにZ軸を囲うように配置される。
【0042】
コントローラ5Aは、プリパルスレーザ装置3P、メインパルスレーザ装置3M、アクチュエータ347、圧力制御器76、ターゲット供給装置26、XZステージ264、タイミングセンサ41、及びステージ72のそれぞれと接続されている。また、コントローラ5Aは、露光装置6や後述の検査装置661などの外部装置と接続され得る。コントローラ5Aは、プロセッサを含んで構成される。本開示におけるプロセッサとは、制御プログラムが記憶された記憶装置と、制御プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)とを含む処理装置である。プロセッサは本開示に含まれる各種処理を実行するために特別に構成又はプログラムされている。
【0043】
3.2 動作
コントローラ5Aは、ターゲット供給装置26に制御信号を出力する。ターゲット供給装置26の内部に貯蔵されたターゲット物質は、ヒータによって当該ターゲット物質の融点以上の温度に維持される。ターゲット供給装置26の内部のターゲット物質は、圧力制御器76からターゲット供給装置26内に供給される不活性ガスによって加圧される。コントローラ5Aが圧力制御器76によってドロップレット吐出圧を上げると、不活性ガスによって加圧されたターゲット物質は、ノズルから噴流として出力される。ピエゾ素子によってノズル周辺の構成要素が振動することにより、ターゲット物質の噴流は複数のドロップレットDLに分離される。
【0044】
ターゲット供給装置26からチャンバ2A内に出力されたドロップレットDLは、ターゲット供給装置26からプラズマ生成領域25までのターゲット軌道に沿って-Y方向に移動する。ドロップレットDLは、ドロップレット検出領域を通過して、プラズマ生成領域25に供給される。プラズマ生成領域25を通過したドロップレットDLはターゲット回収器28に回収される。
【0045】
タイミングセンサ41は、ドロップレットDLがドロップレット検出領域を通過したタイミングを検出する。コントローラ5Aは、タイミングセンサ41から送信された通過タイミング信号を受信する。
【0046】
コントローラ5Aは、タイミングセンサ41を用いて所定位置におけるドロップレットDLの通過タイミングを計測し、これを基準にプリパルスレーザ装置3Pからプリパルスレーザ光31Pを出力するタイミングを制御する。
【0047】
ドロップレットDLがプラズマ生成領域25の位置に達した時点でプリパルスレーザ光31PがドロップレットDLに照射される。するとドロップレットDLは破壊され、微粒子、マイクロドロップレットやクラスタを含んだ拡散ターゲットを形成する。
【0048】
コントローラ5Aは、拡散ターゲットにメインパルスレーザ光31Mを照射してEUV光252を生成する。メインパルスレーザ装置3Mからのメインパルスレーザ光31Mの出力タイミングもタイミングセンサ41の計測結果を用いて決定される。生成されたEUV光252はEUV集光ミラー23によって反射され、露光装置6や検査装置等の外部装置に供給される。
【0049】
コントローラ5Aは、例えば、初期調整時に複数のEUVセンサ70a、70bの出力に基づいて、ステージ72とアクチュエータ347とを制御する。
【0050】
3.3 初期調整の概要
初期調整を実施するタイミングは、EUV光生成装置1のメンテナンス後であってもよいし、EUV光252の出力が所望の値を下回った場合や、ユーザから性能リカバリの指令を受信した場合であってもよい。EUV光生成装置1のメンテナンスには、例えば、EUV集光ミラー23の交換、ターゲット供給装置26の交換、レーザ伝搬系の交換などがあり得る。性能リカバリの指令とは、ユーザが性能回復を要求する指令である。
【0051】
初期調整では、EUVセンサ70a、70bの出力に基づいて、プリパルスレーザ光31P及びメインパルスレーザ光31Mのそれぞれのレーザ照射位置調整機構を調整する。EUV光生成装置1におけるステージ72は、プリパルスレーザ光31Pのレーザ照射位置調整機構として機能する。EUV光生成装置1におけるアクチュエータ347はメインパルスレーザ光31Mのレーザ照射位置調整機構として機能する。
【0052】
図4は、初期調整において実施されるレーザ照射位置の調整動作のフローチャートである。ステップS10において、コントローラ5Aは、初期条件の設定及び記録を行う。初期条件の設定として具体的には、レーザ照射条件やレーザ発振条件についての設定が行われる。レーザ照射条件には、例えば、プリパルス-メインパルスの遅延時間、プリパルスエネルギ、メインパルスエネルギ、メインパルスレーザ光31Mのスポット直径Dなどが含まれる。レーザ発振条件は過去のデータや実験によって求められた値でよい。
【0053】
また、コントローラ5Aは、照射位置調整量の許容値Rを設定し、パルスレーザ光33のスポットの現在位置S0(SMPL,SFU)を記録する。SMPLはメインパルスレーザ光31Mの照射位置を示しており、アクチュエータ347の位置と対応している。SFUはプリパルスレーザ光31Pの照射位置を示しており、集光ユニット22Aのステージ72の位置と対応している。以後、メインパルスレーザ光31Mの照射位置を「MPL照射位置」と表記し、プリパルスレーザ光31Pの照射位置を「PPL照射位置」と表記する場合がある。
【0054】
レーザ照射位置調整量の許容値Rは、集光ユニット22Aで集光されたメインパルスレーザ光31Mのスポット直径をDとした場合、例えば、R=D/20であってもよく、D/20≦R≦D/4であってもよい。
【0055】
ステップS10後のステップS11において、コントローラ5Aは、MPL照射位置調整を行う。その後、ステップS12において、コントローラ5Aは、集光ユニット22Aの位置調整を行う。つまり、コントローラ5Aは、EUV発光への寄与度が高いMPL照射位置を先に調整する。したがって、MPL照射位置調整(ステップS11)→集光ユニット位置調整(ステップS12)の順に各調整工程で共通のレーザ照射位置調整サブルーチン(
図5参照)を順次実施する。ここで、MPL照射位置の調整はアクチュエータ347を用い、集光ユニット位置の調整はステージ72を用いる。このような初期調整の処理により、MPLの最適照射位置Sa
MPL→集光ユニットの最適位置Sa
FUの順でそれぞれの照射位置が決定される。
【0056】
3.4 レーザ照射位置調整処理の例
図5から
図8を用いて、レーザ照射位置調整処理の例について説明する。
図5は、
図4のステップS11及びステップS12のそれぞれに適用されるレーザ照射位置調整処理の例を示すフローチャートである。
図6は、
図5に示されたレーザ照射位置調整処理に適用される照射位置水準群を例示する図表である。
図7は、
図6に示された照射位置水準群に基づいて作成されたEUVエネルギ分布図を例示的に示す図表である。
図8は、
図7に示されたEUVエネルギ分布図から求められた近似曲線を例示する説明図である。
【0057】
3.4.1 レーザ照射位置調整処理の概要
図5に示すフローチャートを説明する前に、レーザ照射位置調整処理の概要を説明する。EUV光生成システム11Aは、高い変換効率(Conversion Efficiency:CE)でEUV光252を生成するために、ターゲット27に対するレーザ光の照射位置を調整する。この調整動作は、EUV光252を露光装置6に出力する前に行われてもよい。コントローラ5Aは、アクチュエータ347又はステージ72を駆動してレーザ光の照射位置を、XY平面内で走査(スキャン)しながらEUVセンサ70a、70bで計測されるEUVエネルギを記録する。以下、照射位置の調整に関して「XY平面」という記載は、プラズマ生成領域25と交差するXY平面を意味する。
【0058】
例えば、
図6のように、XY平面における照射位置の水準をX軸方向に関して7水準、Y軸方向に関して7水準の合計で7×7のマトリクス状に規定された照射位置水準が用いられてもよい。この水準は、現在の照射位置を原点(中心)として規定されてもよいし、あるいは計算上の最適位置を原点として規定されてもよい。X軸方向及びY軸方向のそれぞれの方向についての照射位置を走査する範囲(領域)、水準の刻み幅及び水準の個数などは、
図6に示す例に限らない。X軸方向とY軸方向とで水準の刻み幅や水準の個数を異ならせてもよい。なお、
図6に例示されるような、照射位置の走査範囲を定めた水準の集まりを「照射位置水準群」と呼ぶ。また、XY平面上の照射位置を座標(1x,1y)で表す。
【0059】
コントローラ5Aは、レーザ光の照射位置を調整する場合、レーザ光の照射位置がプラズマ生成領域25と交差するXY平面上で走査されるように、アクチュエータ347又はステージ72を制御する。そして、コントローラ5Aは、照射位置ごとにEUVセンサ70a、70bの計測結果を取得する。
【0060】
すなわち、コントローラ5Aは、照射位置水準群で定められた各照射位置にレーザ光を照射して、検出されるEUVエネルギを照射位置と対応付けて記録する。照射位置毎に記録されるEUVエネルギは、複数パルスあるいは複数バーストの平均値でもよい。コントローラ5Aは、ある照射位置でレーザ光を照射後、次の照射位置にレーザ光が照射されるようにアクチュエータ347又はステージ72を駆動してEUVエネルギの計測値を取得する動作を繰り返す。コントローラ5Aは、照射位置水準群のマトリクスの各位置(各水準)について順次、EUVエネルギの計測値を取得し、計測結果をマッピングしてゆく。ここでの「マッピング」はEUVエネルギの分布図を作成することを含む。EUVエネルギ分布図は、照射位置とEUVエネルギとの対応関係をマップ画像化したものである。
【0061】
こうして得られたEUVエネルギ分布図の中から、高いEUVエネルギを実現できる照射位置を選択してレーザ照射位置とする。このとき、コントローラ5Aは、カーブフィッティング等により、最も高いEUVエネルギを実現できる照射位置を特定してもよい。
【0062】
3.4.2 フローチャートの説明
レーザ照射位置調整の処理が開始されると、
図5のステップS21において、コントローラ5Aは、照射位置の水準を読み込む。
図6は、レーザ照射位置水準図の例である。コントローラ5Aは、MPL照射位置及び集光ユニット位置のそれぞれの水準図を持つ。
図6に示す各数値はXY平面におけるMPL照射位置又はステージ72の駆動先の位置を表す。照射位置の水準図は、現在位置S
0(S
MPL,S
FU)を中心として設定する。
【0063】
照射位置水準群は、
図6に例示されるように、調整前のSm(0,0)を中心としてマトリクス状にセルが配列されたテーブルを用いて作成されてもよい。
図6では、Sm(0,0)を中心にして、X軸方向とY軸方向の各方向について「-30μm」から「+30μm」まで「10μm」の刻み幅で7段階に照射位置の水準が規定され、7×7のマトリクス状に並ぶ49箇所の照射位置水準の範囲内で照射位置を変更する例が示されている。
【0064】
図6中の矢印は、水準実施の順序の例であり、レーザ光を照射する位置の移動順序、つまり、水準の実施順番を示している。コントローラ5Aは、例えば、
図6のような2次元配列による照射位置水準に従ってX軸方向に照射位置を移動させた後、Y軸方向に照射位置を移動させる。
【0065】
コントローラ5Aは、予め複数の照射位置水準図を保持し、レーザ光の出力条件及びスポット直径Dに応じて、適用する照射位置水準図を読み込んでもよい。
【0066】
ステップS22において、コントローラ5Aは、読み込んだ照射位置水準に基づいて、アクチュエータ347又はステージ72を駆動させる。コントローラ5Aは、例えば、
図6の矢印で示す順に、照射位置Sm(1x,1y)が変更されるように、アクチュエータ347又はステージ72を駆動して、各水準の値を照射位置として順次実現する。
【0067】
ステップS23において、コントローラ5Aは、通過タイミング信号に同期してトリガ信号をプリパルスレーザ装置3P及びメインパルスレーザ装置3Mに送信することで、EUV光252を生成させる。
【0068】
ステップS24において、コントローラ5AはEUVセンサ70a、70bの計測結果を取得する。コントローラ5Aは、照射位置Sm(1x,1y)毎にEUVセンサ70a、70bによって計測されたEUVエネルギの値を取得する。EUVエネルギは複数のEUVセンサ70a、70bの出力値の合計値又は平均値でよい。コントローラ5Aは、複数のEUVセンサ70、70bから送信された複数の計測値に統計処理を施し、EUV光252のエネルギ及び必要に応じてそのばらつきを取得してもよい。
【0069】
コントローラ5Aは、EUVセンサ70a、70bの計測結果として取得したEUVエネルギを各照射位置Sm(1x,1y)に対応付けて記録する。
【0070】
なお、コントローラ5Aは、1つの照射位置水準においてEUVセンサ70a、70bの計測結果を取得するために、100パルス以上100,000パルス以下のパルス数のEUV光252を生成させてもよい。100,000パルスのEUV光252を生成させる場合のEUV光生成システム11の運転条件は、デューティを50%、1バースト当たりのEUV光252のパルス数を10,000パルスとし、10バーストだけ運転させるような条件であってもよい。
【0071】
ステップS25において、コントローラ5Aは、読み込まれた照射位置水準図に含まれる全ての照射位置水準でEUVエネルギ計測値の取得が終了したか否かを判定する。
【0072】
ステップS25の判定結果がNO判定である場合、すなわち、全ての照射位置水準でEUVエネルギ計測値の取得を終了していなければ、コントローラ5AはステップS22に戻り、残りの水準を照射位置とする動作を続ける。
【0073】
ステップS22からステップS25を繰り返すことにより、照射位置水準毎のEUVエネルギ計測値(EUVセンサ70a、70bの計測結果)のデータが蓄積されていく。コントローラ5Aは、各照射位置水準に対応付けて記録されたEUVセンサ70a、70bの計測結果に基づいて、EUV光252のエネルギの分布図を作成する(
図7参照)。
【0074】
一方、ステップS25の判定結果がYES判定である場合、すなわち、全ての照射位置水準でEUVエネルギ計測値の取得を終了した場合、コントローラ5AはステップS26に進む。
【0075】
ステップS26に進む場合、各照射位置水準に対応付けて記録されたEUVセンサ70a、70bの計測結果に基づいて、
図7に例示されるようなEUV光252のエネルギの分布図が得られている。コントローラ5Aは、ステップS22からステップS25を繰り返す過程で、順次に分布図の作成を進めてもよいし、ステップS25の判定結果がYES判定となった段階で分布図を作成してもよい。
【0076】
図7は、照射位置Sm(1x,1y)のセルにEUV平均エネルギの値が入力されたEUVエネルギ分布図の例である。
図7の各照射位置のセルに示された数値は、複数のEUVセンサ70a、70bの計測結果から算出される平均エネルギを表す。ここで、EUV平均エネルギの単位は[mJ]である。
【0077】
図5のステップS26において、コントローラ5Aは、得られたEUVエネルギ分布図に基づいて、レーザ光の照射位置Sm(1x,1y)の最適位置Smoptを計算し、最適位置Smoptを記憶する。例えば、コントローラ5Aは、作成されたEUVエネルギ分布図のデータを用いた数値解析によって最適位置Smoptを決定してもよい。
【0078】
最適位置Smoptは、例えば、最小二乗法によるカーブフィッティング(ガウシアン近似又は二次近似など)や分布の重心位置を用いて求めてもよい。
図8に示すように、コントローラ5Aは、最もEUVエネルギが高い水準を含むX方向及びY方向の水準の列をそれぞれ最小二乗法によるカーブフィッティングによって関数化し極大値を算出して、これを最適位置Smoptとしてもよい。最適位置Smoptは、目標照射位置として設定され、コントローラ5A内のメモリに記憶される。
【0079】
なお、
図8のような最適位置Smoptの計算方法の代わりに、コントローラ5Aは、作成されたEUVエネルギ分布図のうちでEUV光252のエネルギが最大である照射位置水準の照射位置Sm(1x,1y)を、最適位置Smoptに決定してもよい。
【0080】
ステップS27において、コントローラ5Aは、最適位置Smoptにレーザ光が照射されるように、アクチュエータ347又はステージ72を調整する。
【0081】
ステップS28において、コントローラ5Aは、アクチュエータ347又はステージ72の現在位置からの調整量が許容値R以下であるか否かを判定する。
【0082】
ステップS28の判定結果がYES判定である場合、つまり、調整量が許容値Rより小さい場合、適切な調整が行われたとみなし、コントローラ5Aは、
図5のフローチャートを終了し、
図4のフローチャートに復帰する。MPL照射位置調整の場合、最適位置Sa
MPLと調整前のS
MPLとの差分の絶対値が許容値R内であれば照射位置調整を終了する。集光ユニット照射位置調整の場合、最適位置Sa
FUと調整前のS
FUとの差分の絶対値が許容値R内であれば照射位置調整を終了する。
【0083】
一方、ステップS28の判定結果がNO判定である場合、つまり、調整量が許容値Rを超える場合は、調整照射を再度行うように、コントローラ5Aは、ステップS29に進む。
【0084】
ステップS29において、コントローラ5Aは、最適位置Smoptを現在位置として、最適位置Smoptを中心とした照射位置水準に更新する。すなわち、コントローラ5Aは、最適位置Smoptを中心に設定して水準を展開し、新たなレーザ照射位置水準図を作成する。これにより、最適位置Smopt周辺にアクチュエータ347あるいはステージ72の制御マージンが確保される。
【0085】
ステップS29の後、コントローラ5Aは、ステップS21に戻り、ステップS21~ステップS28を繰り返す。
【0086】
図5のフローチャートは、
図4のフローチャートに従い、MPL照射位置調整(ステップS11)→集光ユニット位置調整(ステップS12)の順に実施され、それぞれの水準のEUVエネルギ分布図からMPLの最適照射位置Sa
MPL及び集光ユニットの最適位置Sa
FUが決定される。
【0087】
3.5 作用・効果
比較例に係るEUV光生成システム11Aのレーザ照射位置調整によれば、レーザ照射位置を、EUVセンサ70a、70bの出力を指標とした同一のアルゴリズムと数値解析によって求めるため、再現性良く高CEの発光条件を導くことが可能である。
【0088】
3.6 課題
EUVエネルギを指標にPPL照射位置を最適化すると、ドロップレットDLに対するPPL照射位置が中心部からずれてレーザ照射軸に対して非対称な拡散ターゲットを形成する可能性がある。最適化の指標とするEUVエネルギは、複数のEUVセンサ70a、70bで計測されたエネルギの合計値あるいは平均値として算出されることがある。これは、発生したEUV光252の総量を把握するためにZ軸を囲むよう配置されたEUVセンサ70a、70bの合計出力又は平均出力を制御に用いるためである。EUVエネルギを1つのEUVセンサで計測する場合も同様に、例えば、中間集光点292における集光出力を反映するように計測系が構成されることがある。
【0089】
図9は、ドロップレットDLの中心にプリパルスレーザ光31Pが照射された場合を模式的に示す。ドロップレットDLにプリパルスレーザ光31Pが照射されることによって生成される拡散ターゲットDTは円板状に拡散することが多く、拡散ターゲットDTの平面状の部分にメインパルスレーザ光31Mが照射される。
図9中の「PPL」は、プリパルスレーザ光31Pを表し、「MPL」はメインパルスレーザ光31Mを表す。
図10、
図11においても同様である。
図10は、ドロップレットDLの中心から-Y側にずれた位置にプリパルスレーザ光31Pが照射された場合を模式的に示す。
図11は、ドロップレットDLの中心から+Y側にずれた位置にプリパルスレーザ光31Pが照射された場合を模式的に示す。
【0090】
図9に示すように、PPL照射位置がターゲット中心である場合、拡散ターゲットDTの短径方向軸とレーザ照射軸(Z軸)とが一致し、拡散ターゲットDTの位置は、Z方向距離最大、Y方向偏差無しとなる。また、拡散ターゲットDTの径は長径が最大となる。Y方向偏差とは、Y方向における拡散ターゲットDT位置のZ軸からのずれを表す。このときの拡散ターゲットDTの密度分布は内側から外側にかけて疎から密となる。この拡散ターゲットDTに対してメインパルスレーザ光MPLが照射されることにより、EUV光252が放射される。
図9の最下段にはEUV放射角度分布が模式的に示されている。
図9の場合、Z軸に対して対称にEUV光252が放射される。このため、Z軸を囲むように配置される2つのEUVセンサA、Bのそれぞれのセンサ出力(EUVエネルギ計測値)は、ほぼ同等となる。EUVセンサA、Bは、
図3におけるEUVセンサ70a、70bであってよい。
【0091】
これに対し、
図10に示すようにPPL照射位置がドロップレットDLの-Y側である場合、拡散ターゲットDTの長径軸はレーザ照射軸に対して傾き、拡散ターゲットDTのメインパルスレーザ光31Mが照射される面は-Y側を向いてしまう。この拡散ターゲットDTの位置は、正常な場合(
図9)と比べて、Z方向距離が減少し、Y方向偏差が増大する。また、このときの拡散ターゲットDTの長径は縮小し、密度分布は+Y方向に密な部分が偏る。
【0092】
図10の中段に示す非対称な拡散ターゲットDTに対してメインパルスレーザ光MPLが照射されると、-Y側でEUV放射に最適なターゲット密度分布が形成されているため、その方向に(-Y側に)多くEUV光252が放射される。このため、
図10に示すように複数のEUVセンサA、Bを配置する場合、EUVセンサBの計測値は、EUVセンサAの計測値に対して大きく計測される。
【0093】
一方、
図11に示すようにPPL照射位置がドロップレットDLの+Y側である場合、拡散ターゲットDTのメインパルスレーザ光31Mが照射される面は+Y側を向いてしまう。この拡散ターゲットDTの位置は、正常な場合(
図9)と比べて、Z方向距離が減少し、Y方向偏差が増大する。また、このときの拡散ターゲットDTの長径は縮小し、密度分布は-Y方向に密な部分が偏る。
【0094】
図11に示す非対称な拡散ターゲットDTに対してメインパルスレーザ光MPLが照射されると、+Y側でEUV放射に最適なターゲット密度分布が形成されているため、その方向に(+Y側に)多くEUV光252が放射される。このため、
図11のように複数のEUVセンサA、Bを配置する場合、EUVセンサAの計測値は、EUVセンサBの計測値に対して大きく計測される。
【0095】
しかし、
図10や
図11の場合であっても、複数のEUVセンサA、Bのセンサ出力値の合計値又は平均値では、センサ間の計測値の違いが相殺されるため、
図9に示す正常な照射状態との区別がつかない。
【0096】
また、
図10や
図11に示すように、非対称な拡散ターゲットDTにメインパルスレーザ光31Mを照射すると、高密度な領域から残留フラグメントRfgが発生してEUV集光ミラー23に付着し、EUV集光ミラー23の反射率を低下させる。さらに、ターゲット物質の高エネルギイオンが発生してEUV集光ミラー23の反射膜の損耗を早めたりする。
【0097】
つまり、比較例のように、EUVエネルギを指標にPPL照射位置を最適化すると、ドロップレットDLに対するPPL照射位置が中心部からずれて非対称な拡散ターゲットDTを形成する可能性がある。このような非対称な拡散ターゲットDTにメインパルスレーザ光31Mを照射すると、残留フラグメントRfgや高エネルギイオンに起因したEUV集光ミラー23の劣化に繋がるという課題がある。複数のEUVセンサA、Bが配置される場合に限らず、EUVセンサが1つの場合も非対称な拡散ターゲットDTを形成する可能性は同様に存在する。
【0098】
4.実施形態1
4.1 構成
図12は、実施形態1に係るEUV光生成システム11Bの構成を概略的に示す。
図12に示す構成について、
図3に示す構成と異なる点を説明する。実施形態1に係るEUV光生成システム11Bは、
図3に示す比較例のEUV光生成システム11Aに対して、MPLエネルギセンサ90とターゲットセンサ92とを備える。また、EUV光生成システム11Bは、
図3に示す高反射ミラー343の代わりに、ビームスプリッタBSが配置される。MPLエネルギセンサ90は、ビームスプリッタBSを透過した光を受光する位置に配置され、メインパルスレーザ光31Mのパルスエネルギ(メインパルスエネルギ)を検出する。MPLエネルギセンサ90は、本開示における「レーザエネルギセンサ」の一例である。
【0099】
実施形態1では、ターゲット27へのPPL照射位置及びMPL照射位置を評価する指標として、メインパルスエネルギに対するEUVエネルギの比率CEを用いる。CEは次式で定義され、エネルギ変換効率を示す。
【0100】
CE=EUVエネルギ/プラズマ生成点におけるメインパルスエネルギ
レーザ照射位置を評価する指標としてCEを用いる理由は、CEが拡散ターゲットDTに対するMPL照射状態を反映するという知見に基づく。高いCEが得られる場合は残留フラグメントRfgの発生が低減され、EUV集光ミラー23等の汚染が抑制される。
【0101】
実施形態1に係るEUV光生成システム11Bでは、CEを評価するためにMPLエネルギセンサ90を備える。
図12では、
図3に示す高反射ミラー343の代わりに、ビームスプリッタBSを配置した例を示すが、MPLエネルギセンサ90は、メインパルスレーザ装置3Mからコンバイナ348までのメインパルスレーザ光31Mの光路のいずれかの高反射ミラーをビームスプリッタBSに変更し、その透過光を計測するように配置してもよい。
【0102】
ターゲットセンサ92は、例えば、撮像素子としてCCDと、高速シャッターとしてイメージインテンシファイアユニット(Image intensifier unit:IIU)シャッターとを含んで構成される。IIUシャッターは本開示における「シャッター」の一例である。その他の構成は、
図3に示すEUV光生成システム11と同様であってよい。集光ユニット22Aのステージ72は本開示における「第1のアクチュエータ」の一例である。アクチュエータ347は本開示における「第2のアクチュエータ」の一例である。
【0103】
図13は、ターゲットセンサ92の配置例を示す説明図である。PPL照射位置を評価する指標としては、ターゲットセンサ92で撮像される拡散ターゲットDTの特性値を用いる。PPL照射位置の調整方法は集光ユニット22Aのステージ72を用いてもよい。
【0104】
ターゲットセンサ92は、プラズマ生成領域25から中間集光点292までのEUV光路に干渉しない位置で、プラズマ生成領域25を視野に含むように配置される。例えば、
図13のように、ターゲットセンサ92は、θy=90deg、φ=0degとしてY-Z平面を撮像するように配置してもよい。照明光源93は、ターゲットセンサ92に対向するように配置される。ターゲットセンサ92と照明光源93とは、コントローラ5Aに接続される。
【0105】
4.2 動作
4.2.1 拡散ターゲットの観測例
図14は、ターゲットセンサ92によって撮像された拡散ターゲットDTの観測例を示す。コントローラ5Aは、プリパルスレーザ光31Pの出力後のタイミングでターゲットセンサ92に撮像させることで、
図14に例示するような画像IMを得ることができる。このとき、IIUシャッターと照明光源93とも同期して動作させる。拡散ターゲットDTは、照明光源93によって背後から照明(バックライト照明)され、その透過光がターゲットセンサ92によって受光される。このため、ターゲットセンサ92によって撮像される画像IMは拡散ターゲットDTの部分が暗部(影)となる。
【0106】
コントローラ5Aは、画像IMを解析することで拡散ターゲットDTの特性値を得る。特性値は、例えば、拡散ターゲットDTの径、位置、角度などでよい。拡散ターゲットDTの径は、拡散ターゲットDTの大きさを示す指標の1つである。例えば、
図14のように拡散ターゲットDTが楕円形の影として撮像される場合を考える。得られた画像IMをブロブ処理した後に楕円近似する。拡散ターゲット径は、近似された楕円の長径等でよい。Y-Z平面を撮像する場合にはY軸及び/又はZ軸に対する射影サイズでもよい。また、拡散ターゲットDTの位置は、画像IM上の拡散ターゲットDTの重心座標等でよい。図中の点Gは画像IM上の拡散ターゲットDTから算出される重心を表す。さらに拡散ターゲットDTの角度θは、レーザ照射軸(Z軸)と短径を含む軸AXmとの成す角度でもよい。コントローラ5Aは、拡散ターゲットDTの大きさ、位置及び角度のうち1つ以上の特性値を取得し得る。
【0107】
4.2.2 バックライト観測のタイミングチャート
図15は、ターゲットセンサ92を用いたバックライト観測のタイミングチャートである。ドロップレットDLへのPPL照射後からMPL照射までの数百ns間、拡散ターゲットDTは拡散し続ける。ゲート開(ON)直後のPPL照射タイミングを起点とした所定の遅延時間(t
1+t
2)を経てバックライト(照明光源93)を点灯させる。t
1は、ゲート内の任意のタイミングでプリパルスレーザ光31Pが照射された拡散ターゲットDTの撮像を指定するもので、ドロップレットDLへのPPL照射時間間隔のn倍である。t
2は、PPL照射タイミングからの遅延時間である。
【0108】
同様に、同起点から所定の遅延時間(t1+t3)を経てターゲットセンサ92のIIUシャッターを開く。t3は、PPL照射タイミングからの遅延時間である。このシャッター動作は、ターゲット拡散時間以内のタイミング及び露光時間で動作する。すなわち、IIUシャッターは、拡散ターゲットDTの拡散時間において開閉される。ここで、t1、t2、t3は定数である。このため、バースト毎に、バースト開始を基準とした特定のタイミングで画像を取得することになる。
【0109】
バックライトの点灯、及びIIUシャッターの繰り返し周波数は概ね100Hz程度のため、バースト運転時には1バースト当たり1回程度の撮像回数となる。バースト期間が比較的長いバーストあるいは連続運転時には複数回の撮像結果を統計処理してもよい。なお、露光時間を長くして1回の撮像において複数の拡散ターゲットDTを多重に露光したり、複数回の撮影画像の平均画像(積算画像)などを作成したりすると、拡散ターゲットDTのばらつきによって特性値がなまるため、多重露光や画像の積算処理(重ね書き)は行わない方がよい。
【0110】
このような構成によれば、撮像デバイスの応答が遅いCCD動作でも短時間で発生する拡散ターゲットDTの生成を撮像できる。なお、
図13から
図15ではバックライト観測を例に説明したが、反射光観測の場合も同様のタイミングチャートが適用される。
【0111】
4.2.3 レーザ照射位置調整
図16は、実施形態1に係るEUV光生成システム11Bにおいて実施されるレーザ照射位置調整のフローチャートである。
図16のフローチャートについて、
図4と異なる点を説明する。
図16のフローチャートでは、
図4のステップS11及びステップS12の代わりに、ステップS14及びステップS15を含む。
【0112】
すなわち、ステップS10の後、ステップS14において、コントローラ5Aは、PPL照射位置調整の処理を行い、その後、ステップS15において、MPL照射位置調整を行う。
【0113】
ステップS14のPPL照射位置調整は、ターゲットセンサ92を用いて撮像される拡散ターゲットDTの画像処理によって得られる拡散ターゲットDTの特性値を指標として集光ユニット22Aのステージ72を調整する集光ユニット位置調整である。このとき、拡散ターゲットDTに対してメインパルスレーザ光31Mを照射しなくてよいため、集光ユニット位置調整は、実質的にPPLの照射位置を調整することになる。ただし、熱負荷を含んだ照射位置調整(いわゆるHot状態の照射位置調整)を実施する場合にはMPLを照射してもよい。
【0114】
ステップS15のMPL照射位置調整は、CEを指標としてMPL光路の高反射ミラー344のアクチュエータ347を調整し、MPL照射位置を調整する。
【0115】
PPL照射位置調整(ステップS14)とMPL照射位置調整(ステップS15)とのそれぞれの位置調整アルゴリズムは共通でよく、それぞれの調整処理において用いる指標と探索幅Δとは、ステップS14とステップS15とで異なるパラメータを用いる。
【0116】
PPL照射位置調整(ステップS14)の指標は、例えば、拡散ターゲット径であってよく、MPL照射位置調整(ステップS15)の指標はCEであってよい。ここで、拡散ターゲット径は、例えば以下のように求めてもよい。
【0117】
コントローラ5Aは、複数バーストにおいて、ターゲットセンサ92により撮像される各画像から各々拡散ターゲット径を求めて平均化し、拡散ターゲット径の平均値を算出する。拡散ターゲット径の算出は、例えば、
図14で説明したように、ブロブ処理結果に楕円近似をした場合の長径を算出してもよいし、基準座標系に射影したサイズを算出してもよい。
【0118】
また、バーストON時間は、数ms~1sec程度、バースト数は3~10程度として、各バーストで撮像サンプルを取得する。この場合、取得される画像数は3~10程度となる。
【0119】
探索方向の決定では、現在位置に対して+方向及び-方向のそれぞれに探索幅Δの分だけ照射位置を変更し、現在位置を含む3点のデータから性能改善方向を判定する。判定には、これらデータ3点の一次近似の傾きを用いてもよい。
【0120】
ステップS15の後、コントローラ5Aは、
図16のフローチャートを終了する。
【0121】
図17は、
図16のステップS14及びステップS15に適用されるレーザ照射位置調整処理の例を示すフローチャートである。
【0122】
ステップS100において、コントローラ5Aは、処理に必要な各種パラメータの初期設定を行う。コントローラ5Aは、勾配の閾値T、探索幅Δ、調整量である照射位置偏差Eの許容値R、追加照射水準数n及び探索回数Nを設定し、現在位置に相当する初期照射位置Sを読み込む。許容値Rは、調整を終了するか否かを判定するための判定値となり得る。
【0123】
ステップS100の後、コントローラ5Aは、ループ処理LP1に移行する。ループ処理LP1は、ステップS102からステップS107を含む。コントローラ5Aは、照射位置偏差Eが許容値Rよりも大きい間はループ処理LP1を続ける。コントローラ5Aは、照射位置偏差Eが許容値R以下となったら(E≦R)、調整収束と判定し、ループ処理LP1を抜ける。ループ処理LP1のループ上限回数は探索回数Nである。
【0124】
ステップS102において、コントローラ5Aは、現在位置±Δの位置に照射位置を変更し、各位置で指標を取得する。コントローラ5Aは、例えば、[1]現在位置→[2]「現在位置-Δ」→[3]「現在位置+Δ」の順に各位置でレーザ照射を行い、指標を取得する。上述のように、指標は調整する対象によって異なる。
【0125】
ステップS103において、コントローラ5Aは、指標の勾配を確認する。勾配は、例えば、現在位置±Δの3点の各位置で取得される指標の値の一次近似による直線の傾き(勾配)でよい(
図18参照)。この勾配は、照射位置の変化に対する指標の値の変化の割合を示す。なお、勾配は、2点以上の各位置で取得される指標の値から求めることができる。
【0126】
ステップS104において、コントローラ5Aは、勾配の絶対値が閾値Tよりも小さいか否かを判定する。ステップS104の判定結果がNo判定である場合、つまり|勾配|≧閾値Tを満たす場合、コントローラ5AはステップS105に移行する。
【0127】
ステップS105において、コントローラ5Aは、性能改善方向で追加照射を行う。追加照射による探索(追加探索)の際の調整量(探索幅)はΔでよい。性能改善方向とは、指標の値が大きくなる方向を意味している。例えば、3点の指標の値から算出される勾配(一次近似の直線の傾き)が正の値である場合、[3]「現在位置+Δ」よりもさらにプラスの方向に追加探索を行う。追加照射水準数nが「n=2」である場合を例示すると、コントローラ5Aは、指標の値が大きくなる方向に、[4]「現在位置+2Δ」→[5]「現在位置+3Δ」の順に各位置で追加のレーザ照射を行い、指標を取得する。
【0128】
その一方で、ステップS104の判定結果がYes判定である場合、つまり|勾配|<閾値Tを満たす場合、コントローラ5AはステップS106に移行する。
【0129】
ステップS106において、コントローラ5Aは、「現在位置+Δ」よりもさらにプラス側及び「現在位置-Δ」よりもさらにマイナス側の両側で追加照射を行う。追加照射水準数nが「n=2」である場合を例示すると、コントローラ5Aは、3点のプラス側における[4]「現在位置+2Δ」と、マイナス側における[5]「現在位置-2Δ」との各位置で追加のレーザ照射を行い、指標を取得する。
【0130】
ステップS105又はステップS106の後、コントローラ5Aは、ステップS107に移行する。
【0131】
ステップS107において、コントローラ5Aは、追加照射を含む「3+n」点の各位置における指標の値を基に、最適位置Saに調整する。コントローラ5Aは、各位置で取得された指標の各プロットを二次近似曲線あるいはガウシアン曲線で近似し、指標が最大となる最適位置Saを算出し、最適位置Saにステージ72又はアクチュエータ347を調整する。
【0132】
コントローラ5Aは、ループ処理LP1の終了条件を判定し、終了条件を満たすまで、ステップS102~ステップS107を繰り返す。この時、最後の調整前の現在位置に相当する初期照射位置Sと、最後の調整時の最適位置Saとの差分を照射位置偏差Eとし許容値Rと比較する。ループ処理LP1の終了条件を満たした場合、コントローラ5Aは、ループ処理LP1を抜けて、
図17のフローチャートを終了し、
図16のフローチャートに復帰する。
【0133】
図18及び
図19は、
図17のステップS103(勾配確認)からステップS107(最適位置Saに調整)の処理に関する説明図である。
図18には、勾配の絶対値が閾値Tよりも大きい場合の例が示されている。
図19には、勾配の絶対値が閾値T以下の場合の例が示されている。
図18及び
図19における横軸は照射位置、縦軸は指標の値を表す。図中の丸印は照射位置を表し、丸印の中の数字は、照射順を表している。例えば、照射順1は「現在位置」、照射順2は「現在位置-Δ」、照射順3は「現在位置+Δ」に相当している。これら3点から一次近似により、破線で示す近似直線AL1の傾き(勾配)を求めることができる。指標の値の勾配は、少なくとも3点のデータに基づいて定義されることが好ましい。
【0134】
図18の例では、近似直線AL1の傾きが正であり、照射位置の「現在位置」に対して、照射位置の値を大きくする方向が指標の値を改善する方向である。したがって、この場合は、ステップS105の処理として、照射順3の「現在位置+Δ」からプラス方向(改善方向)に追加探索を行う。コントローラ5Aは、
図18に示す照射順4「現在位置+2Δ」→照射順5「現在位置+3Δ」のように、追加照射水準数n分の追加照射により、各位置で指標を取得する。
【0135】
そして、コントローラ5Aは、これら5点の各プロットから二次近似曲線AC1又はガウシアン曲線で近似し、最適位置Saを算出する。コントローラ5Aは、近似曲線が極値(ここでは最大値)を取る照射位置を最適位置Saとして算出してもよい。コントローラ5Aは、最適位置Saにステージ72又はアクチュエータ347を調整する。
【0136】
図19の例では、近似直線AL1の傾きの絶対値が閾値T以下である。したがって、この場合は、ステップS106の処理として、コントローラ5Aは、
図19に示す照射順4「現在位置+2Δ」→照射順5「現在位置-2Δ」のように、追加照射水準数n分の追加照射により、各位置で指標の値を取得する。
【0137】
そして、コントローラ5Aは、これら5点の各プロットから二次近似曲線AC1又はガウシアン曲線で近似し、最適位置Saを算出する。コントローラ5Aは、最適位置Saにステージ72又はアクチュエータ347を調整する。
【0138】
図18及び
図19に示す照射順4と照射順5のそれぞれの照射位置は本開示における「追加照射位置」の一例である。なお、
図17~
図19に示した例では、指標の値が最大化する照射位置を探索する場合を説明したが、指標の種類によっては、指標の値が最小化する照射位置を探索する場合もあり得る。例えば、拡散ターゲットDTの特性値として、短径方向軸とレーザ照射軸との成す角度を用いる場合、この角度の大きさが0に近づく(最小値となる)ように、照射位置が探索される。
【0139】
4.3 作用・効果
実施形態1によれば、初期調整において再現性良く、CEを最大化できる。特に、非対称な拡散ターゲット状態に調整してしまう可能性を低減し、EUVエネルギ安定性を高め、フラグメント発生を抑制することができる。
【0140】
5.実施形態2
5.1 構成
図20は、実施形態2に係るEUV光生成システム11Cの構成を概略的に示す。
図20に示す構成について、
図12に示す構成と異なる点を説明する。実施形態2に係るEUV光生成システム11Cは、
図12に示すEUV光生成システム11Bに対して、PPL照射位置を変更する手段として、プリパルスレーザ光31Pの光路を形成する高反射ミラー341の角度を調整可能なアクチュエータ95を備える。高反射ミラー341に限らず、アクチュエータ95は、プリパルスレーザ装置3Pからコンバイナ348までのプリパルスレーザ光路のいずれかの高反射ミラーの角度を調整可能に配置されてよい。アクチュエータ95は、コントローラ5Aに接続される。その他の構成は、
図12で説明した構成と同様であってよい。
【0141】
PPL照射位置を評価する指標として、ターゲットセンサ92で撮像される拡散ターゲットDTの特性値(
図14参照)を用いる点は、実施形態1と同様である。
【0142】
5.2 動作
図20に示すEUV光生成システム11Cの動作は、
図16で説明したPPL照射位置調整(ステップS14)の際に、アクチュエータ95を駆動してプリパルスレーザ光31Pの照射位置を調整する点で、実施形態1のEUV光生成システム11Bの動作と異なる。その他の動作及び処理のアルゴリズムについては、実施形態1と同様である。
【0143】
5.3 作用・効果
実施形態2に係るEUV光生成システム11Cによれば、プリパルスレーザ光31Pをメインパルスレーザ光31Mに対して独立して操作するため、実施形態1の集光ユニット22A駆動型の構成に比べて、MPL照射位置の最適化の外乱が減り、整定時間が短縮される。
【0144】
6.実施形態3
6.1 ドロップレット位置が変動する現象について
バースト期間中、ターゲット27へのレーザ照射によるプラズマ発生に起因して、次に照射するドロップレットDLの位置が変動することがある。このようなドロップレット位置の変動は「ドロップレット位置シフト」と呼ばれる。典型的には、ドロップレット位置シフトの発生時間は、バースト開始後1~20ms程度である。ドロップレット位置はバースト開始後約20ms以降は所定位置で安定化し、変動幅が少なくなることが判っている。
【0145】
一方、レーザ光路を構成する光学素子もレーザ光を透過や反射することでわずかに加熱され、熱レンズ効果によって各レーザ光のスポット径が変動することがある。スポット径の変動は、バースト開始後約1秒以降は所定の径で安定化し、変動幅が少なくなることが判っている。
【0146】
EUV光生成システム11B、11Cは、ウエハ露光用途ではバースト動作、マスク検査用途ではCW動作(所定繰返し周波数での連続運転)で稼働する。ウエハ露光用途のバーストパターンのバーストON時間(バースト期間)は100ms~500ms程度であり、ドロップレット位置シフトが安定化する時間を超える。さらにバースト初期の数10msの期間は露光に使われない。また、マスク検査用途においても、ドロップレット位置シフトが安定化した後にEUV光を検査に使用するようできる。したがって、いずれの用途においても、ドロップレット位置シフトが安定化した状態でのレーザ照射位置調整が望まれる。
【0147】
6.2 構成
実施形態3に係るEUV光生成システムの構成は、
図12で説明した実施形態1に係るEUV光生成システム11Bの構成、又は
図20で説明した実施形態2に係るEUV光生成システム11Cの構成と同様であってよい。
【0148】
6.3 動作
図21は、レーザ照射位置調整においてバースト初期の過渡期間を排除するサンプリングの例を示す。
図21の上段は、バースト初期におけるドロップレット位置シフトの現象の説明図であり、
図21の下段は、ドロップレット位置シフトが安定化してからレーザ照射位置調整を行うことを示す説明図である。
【0149】
初期調整時のバーストパターンはColdとHotとの2段階に分けてもよく、Hotのみでもよい。コントローラ5Aは、各段階でプリパルスレーザ光31Pとメインパルスレーザ光31Mのそれぞれの照射位置を最適化する。バースト数は3~10程度が望ましい。
【0150】
Cold調整のバーストパターンは、バーストON時間が1ms未満であることが望ましい。また、バーストOFF時間(休止期間)は100ms程度で、デューティは1%未満とする。Hot調整のバーストパターンは、バーストON時間が1sec以上であることが望ましい。そして、コントローラ5Aは、バーストON後20ms以降に指標を取得するように制御する(
図21の下段参照)。また、バーストOFF時間は2sec~10sec程度で、デューティは30%未満程度とする。
【0151】
コントローラ5Aは、例えば、次の手順で処理を行う。
【0152】
[手順1:Cold調整]コントローラ5Aは、まず、ColdのバーストパターンでドロップレットDLに対するプリパルスレーザ光31Pとメインパルスレーザ光31Mのそれぞれの照射位置を最適化する。
【0153】
[手順2:Hot調整]その後、コントローラ5Aは、Hotのバーストパターンで同様に、プリパルスレーザ光31Pとメインパルスレーザ光31Mのそれぞれの照射位置を最適化する。Hot調整では、
図21の下段に示すように、バースト初期の過渡期間におけるCEや拡散ターゲット特性値のサンプリングを禁止し、バースト後半部のCEや拡散ターゲット特性値をサンプリングする。ドロップレット位置シフトが安定化するまでの過渡期間は本開示における「所定期間」の一例である。
【0154】
なお、手順1のCold調整を省略し、Hot調整のみを実施してもよい。
【0155】
Coldのバーストパターンは本開示における「第1のバーストパターン」の一例であり、Cold調整は本開示における「第1の調整」の一例である。Hotのバーストパターンは本開示における「第2のバーストパターン」の一例であり、Hot調整は本開示における「第2の調整」の一例である。
【0156】
6.4 作用・効果
Hot調整を実施することによってウエハ露光用途でもマスク検査用途でも稼動に近い状態で照射位置調整が最適化できる。これにより、稼動開始直後から要求仕様を満たすEUV光源性能を実現できる。
【0157】
照射位置調整中、最適位置に対する偏差が大きい位置でのレーザ照射(ミスシューティング)が続くと、この間に残留フラグメントRfgが多く発生する。一方、Cold調整は少ないパルス数で照射位置を調整でき、Cold調整の最適位置とHot調整の最適位置との偏差は少ないことが判っている。したがって、Cold調整後にHot調整を実施することで、ミスシューティングの時間を短縮し、フラグメント発生を最小限にしてEUV集光ミラー23の汚染を抑制できる。
【0158】
7.実施形態4
7.1 構成
図13では、EUV光生成システム11Bが1つのターゲットセンサ92を備える例を説明したが、EUV光生成システム11Bは、複数のターゲットセンサを備える構成であってもよい。
図22に、2つのターゲットセンサ92a、92bを備える場合のセンサ配置例を示す。2つのターゲットセンサ92a、92bを用いて2方向から拡散ターゲットDTを撮像する場合は、各ターゲットセンサ92a、92bの観察軸が90度の角度を成すようにターゲットセンサ92a、92bを配置してもよい。
【0159】
例えば、ターゲットセンサ92aと照明光源93aとはX軸と平行な方向に互いに対向して配置され、ターゲットセンサ92bと照明光源93bとはY軸と平行な方向に互いに対向して配置される。ターゲットセンサ92a、92bのそれぞれは、
図13で説明したターゲットセンサ92と同様の構成であってよい。
【0160】
7.2 動作
ドロップレットDLに対してプリパルスレーザ光31Pの照射位置が最適化された時の拡散ターゲットDTの特性として、以下の3点が挙げられる。
【0161】
[特性1]拡散ターゲットDTのボリュームが最大化される。すなわち、撮像面に射影されたサイズが最大化される。
【0162】
[特性2]重心座標のZ成分がレーザ進行方向(+Z方向)に最大化される。
【0163】
[特性3]レーザ照射軸と拡散ターゲットDTの短径方向軸との成す角度が最小化される。
【0164】
実施形態1では特性1のサイズ最大化を指標とした。サイズの評価は1つのターゲットセンサ92で実現可能である。これに対し、
図22のように、複数のターゲットセンサ92a、92bを用いて2方向から撮像する場合には、特性2の重心位置最大化や、特性3の角度最小化を指標にしてもよい。
【0165】
したがって、拡散ターゲットDTの重心位置座標のZ成分や、拡散ターゲットDTの短径方向軸の成す角度θも拡散ターゲットDTの特性値に含まれる。2方向撮像の場合、特性2の重心位置最大化は、2方向の各方向におけるZ座標の和又は平均値を指標とし、これを最大化するように、X方向及びY方向の各照射位置を調整してもよい。
【0166】
また、2方向撮像の場合、特性3の角度最小化とは2方向の各方向から撮像された各画像のレーザ照射軸と拡散ターゲットDTの短径方向軸との成す角度θ、φを指標とし、これを最小化するように、X方向及びY方向の各照射位置を調整してもよい。
【0167】
なお、2方向から撮像する場合に限らず、3以上のターゲットセンサを用いて3方向以上の方向から拡散ターゲットDTを撮像する構成を採用してもよい。
【0168】
7.3 作用・効果
実施形態4によれば、複数のターゲットセンサ92a、92bを配置し、多方向から撮像した複数の画像によって指標を得るので、拡散ターゲットDTの状態をより正確に把握できる。その結果としてレーザ照射位置調整の精度がより一層向上する。
【0169】
8.電子デバイスの製造方法について
図23は、EUV光生成システム11Bに接続された露光装置660の構成を概略的に示す。露光装置660は、マスク照射部668とワークピース照射部669とを含む。マスク照射部668は、EUV光生成システム11Bから入射したEUV光252によって、反射光学系を介してマスクテーブルMTのマスクパターンを照明する。ワークピース照射部669は、マスクテーブルMTによって反射されたEUV光252を、反射光学系を介してワークピーステーブルWT上に配置された不図示のワークピース上に結像させる。ワークピースはフォトレジストが塗布された半導体ウエハ等の感光基板である。
【0170】
露光装置660は、マスクテーブルMTとワークピーステーブルWTとを同期して平行移動させることにより、マスクパターンを反映したEUV光252をワークピースに露光する。以上のような露光工程によって半導体ウエハにマスクパターンを転写後、複数の工程を経ることで半導体デバイスを製造できる。半導体デバイスは本開示における「電子デバイス」の一例である。EUV光生成システム11Bに限らず、EUV光生成システム11Cなどを用いてもよい。
【0171】
図24は、EUV光生成システム11Bに接続された検査装置661の構成を概略的に示す。検査装置661は、照明光学系663と検出光学系666とを含む。照明光学系663は、EUV光生成システム11Bから入射したEUV光252を反射して、マスクステージ664に配置されたマスク665を照射する。ここでいうマスク665はパターンが形成される前のマスクブランクスを含む。検出光学系666は、照明されたマスク665からのEUV光252を反射して検出器667の受光面に結像させる。EUV光252を受光した検出器667はマスク665の画像を取得する。検出器667は例えばTDI(time delay integration)カメラである。
【0172】
以上のような工程によって取得したマスク665の画像により、マスク665の欠陥を検査し、検査の結果を用いて、電子デバイスの製造に適するマスクを選定する。そして、選定したマスクに形成されたパターンを、露光装置660を用いて感光基板上に露光転写することで電子デバイスを製造できる。
図24に示す構成についても、EUV光生成システム11Bの代わりに、EUV光生成システム11Cなどを用いることができる。
【0173】
9.その他
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。したがって、特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかである。また、本開示の実施形態を組み合わせて使用することも当業者には明らかである。
【0174】
本明細書及び特許請求の範囲全体で使用される用語は、明記が無い限り「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」、「有する」、「備える」、「具備する」などの用語は、「記載されたもの以外の構成要素の存在を除外しない」と解釈されるべきである。また、修飾語「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきである。さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。