(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110111
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】ドーナツ類及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A21D 2/36 20060101AFI20240807BHJP
A21D 13/60 20170101ALI20240807BHJP
【FI】
A21D2/36
A21D13/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014481
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】大柳 杏里
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB24
4B032DG20
4B032DK15
4B032DK32
4B032DK33
4B032DL20
(57)【要約】
【課題】本発明は、口中でホロホロとした崩れるような食感を有し、口どけの良いドーナツ類を提供することを課題とする。
【解決手段】菽穀粉、架橋澱粉、及び任意成分としての菽穀粉以外の穀粉からなるドーナツ類用原料粉であって、菽穀粉の含有率が、前記原料粉全量に対して8~50質量%、架橋澱粉の含有率が、前記原料粉全量に対して38~77質量%、菽穀粉と架橋澱粉との合計が前記原料粉全量に対して68質量%以上であり、前記架橋澱粉が糊化しない架橋澱粉、又は前記架橋澱粉がその原料澱粉よりも3℃以上高い糊化開始温度を有する架橋澱粉である、ドーナツ類用原料粉を使用することで上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
菽穀粉、架橋澱粉、及び任意成分としての菽穀粉以外の穀粉からなるドーナツ類用原料粉であって、菽穀粉の含有率が前記原料粉全量に対して8~50質量%、架橋澱粉の含有率が前記原料粉全量に対して38~77質量%、菽穀粉と架橋澱粉との合計含有率が前記原料粉全量に対して68質量%以上であり、前記架橋澱粉が糊化しない架橋澱粉、又は前記架橋澱粉がその原料澱粉よりも3℃以上高い糊化開始温度を有する架橋澱粉である、ドーナツ類用原料粉。
【請求項2】
菽穀粉が大豆粉である、請求項1に記載のドーナツ類用原料粉。
【請求項3】
架橋澱粉がリン酸架橋澱粉である、請求項1に記載のドーナツ類用原料粉。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のドーナツ類用原料粉を含有する、ドーナツ類用ミックス粉。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載のドーナツ類用原料粉を含有する、ドーナツ類用生地。
【請求項6】
請求項5に記載のドーナツ類用生地を揚げてなる、ドーナツ類。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1項に記載のドーナツ類用原料粉を使用する、ドーナツ類用生地の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドーナツ類及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にドーナツ類は、穀粉や澱粉、糖類等の粉末原料と任意に油脂原料とを混合して得られるドーナツミックスを使用し、水や卵等の液体原料を加えて混合して生地を作成し、成形した生地を液油やショートニングで油ちょうして製造される。このようにして得られるドーナツ類は、柔らかく或いはサックリとして口どけのよい食感を有している。近年の食の多様化に伴い、ドーナツ類にも特徴ある食感が求められるようになってきた。
一方、ソフトクッキー等は、口中でホロホロとした崩れるような食感を有していることから人気のある焼菓子である。このような食感をドーナツ類で再現しようとすると、フライヤーでの油ちょう時にドーナツ類用生地の保形性を保つことができずバラバラになってしまうという問題があった。ドーナツ類用生地が油ちょう時にバラバラにならないように保形性を高める手段(生地の骨格を補強する手段)として、小麦粉の使用割合を高めること、卵白粉や小麦蛋白(活性グルテン)等の蛋白質素材を用いること等が挙げられる。しかしながら、骨格補強と共にホロホロとした崩れるような食感が得られ難くなり、食感と生地の保形性を両立させることは困難であった。
ドーナツ類の食感を改良するために種々検討されている。例えば特許文献1には、使用する小麦粉100に対して穀粉の粗粒粉を4~25%(重量)未満を添加し、これに必要な材料及び遅効性膨剤を加入したことを特徴とするケーキドーナツ用組成物が開示されており、小麦粉100重量部に対して3.4~4.7重量部の大豆粉を用いてケーキドーナツを製造し、比較的小型で低加水でもソフトで口どけの良好なケーキドーナツを得ることができることが記載されている。特許文献2には、穀粉類100質量部に対して、豆粉0.5~4質量部、グルテン粉末0.5~5質量部およびローストフラワー0.5~5質量部を添加混合してなる、イーストドーナツ用ミックスが開示されており、油っこくなく、外側がサックリとしかつ内側がもっちりとした食感を有するイーストドーナツが得られることが記載されている。特許文献3には、リポキシゲナーゼ力価12単位/g以下であり、かつ平均粒径が20~70μmである全脂大豆粉を20~60質量%含有するベーカリー食品用ミックスが開示されており、風味及びボリュームが良好なドーナツ類を得ることができることが記載されている。特許文献4には、低糖質食品原料と、活性グルテンと、還元処理グルテンと、イーストに資化可能な糖質原料とを含有することを特徴とするイースト発酵食品用組成物が開示されており、実施例6では低糖質食品原料の一部としての大豆粉10質量%とα化エーテル架橋タピオカ澱粉3質量%を含むミックス粉を用いて得られたドーナツ類の食味、食感(ソフトでしっとりとした食感)が良好であったことが記載されている。
しかしながら、ホロホロとした食感を有するドーナツ類については検討されてこなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-228664号公報
【特許文献2】特開2012-200193号公報
【特許文献3】特開2015-164413号公報
【特許文献4】特開2016-28554号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、製造時において生地のつながりが良く容易に成型することができ、また安定してフライすることができ、且つ喫食時に口中でホロホロとした崩れるような食感を有し、口どけの良いドーナツ類を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、ドーナツ類の製造において所定量の菽穀粉、架橋澱粉、及び任意成分としての菽穀粉以外の穀粉からなるドーナツ類用原料粉を使用することにより、生地のつながりが良く容易に成型することができ、安定してフライすることができ、喫食した際に口中でホロホロとした崩れるような食感があり、口どけの良いドーナツ類を得ることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
〔1〕菽穀粉、架橋澱粉、及び任意成分としての菽穀粉以外の穀粉からなるドーナツ類用原料粉であって、菽穀粉の含有率が前記原料粉全量に対して8~50質量%、架橋澱粉の含有率が前記原料粉全量に対して38~77質量%、菽穀粉と架橋澱粉との合計含有率が前記原料粉全量に対して68質量%以上であり、前記架橋澱粉が糊化しない架橋澱粉、又は前記架橋澱粉がその原料澱粉よりも3℃以上高い糊化開始温度を有する架橋澱粉である、ドーナツ類用原料粉。
〔2〕菽穀粉が大豆粉である、〔1〕記載のドーナツ類用原料粉。
〔3〕架橋澱粉がリン酸架橋澱粉である、〔1〕又は〔2〕記載のドーナツ類用原料粉。
〔4〕〔1〕~〔3〕のいずれか1記載のドーナツ類用原料粉を含有する、ドーナツ類用ミックス粉。
〔5〕〔1〕~〔3〕のいずれか1記載のドーナツ類用原料粉又は〔4〕記載のドーナツ類用ミックス粉を含有する、ドーナツ類用生地。
〔6〕〔5〕記載のドーナツ類用生地を揚げてなる、ドーナツ類。
〔7〕〔1〕~〔3〕のいずれか1記載のドーナツ類用原料粉又は〔4〕記載のドーナツ類用ミックス粉を使用する、ドーナツ類の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、製造時において生地のつながりが良く容易に成型することができ、また安定してフライすることができ、且つ喫食した際に口中でホロホロとした崩れるような食感があり、口どけの良いドーナツ類を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<ドーナツ類>
一般にドーナツ類は、いわゆるイーストドーナツ、ケーキドーナツ、シュードーナツに分類される。イーストドーナツとはイーストで発酵させたパン生地を用いたドーナツである。ケーキドーナツとは、基本的にパン酵母の発酵力に頼らず、膨張剤を使用したケーキ生地を用いたドーナツである。シュードーナツとはシュー生地と呼ばれる、穀粉及び油脂、水分を主体とする生地を加熱して糊化させた生地を用いて製造されるドーナツである。
本発明のドーナツ類用原料粉、ドーナツ類用ミックス粉はいわゆるケーキドーナツに使用されることが好ましい。
【0009】
<菽穀粉>
本発明のドーナツ類用原料粉において用いられる菽穀粉とはマメ科植物の種子を粉砕して得られる粉末のことである。本発明において用いる菽穀粉は、食用、食品加工用に供される公知の菽穀粉であれば特に限定されるものではない。そのような菽穀粉としては、大豆粉、インゲンマメ粉、ヒヨコマメ粉、アズキ粉、ラッカセイ粉等が挙げられる。好ましくは、タンパク質含有率が高く、栄養バランスの良い大豆粉を使用する。
菽穀粉を使用することにより、一般的なドーナツで使用される小麦粉を使用する場合と比較して、モチモチとした食感やヒキのある食感が抑制され、ホロホロとした食感となり口どけが良くなる。
【0010】
<架橋澱粉>
本発明のドーナツ類用原料粉において用いられる架橋澱粉とは、公知の架橋剤を用いて架橋処理された澱粉のことである。ただし、本発明において架橋澱粉は糊化しない架橋澱粉、又は前記架橋澱粉がその原料澱粉よりも3℃以上高い糊化開始温度を有する架橋澱粉である。本発明において、糊化開始温度の比較に用いられる架橋澱粉の「原料澱粉」とは、架橋処理される前の澱粉を意味する。例えばエーテル化澱粉をさらに架橋処理した場合、架橋処理される前のエーテル化澱粉が、糊化開始温度の比較に用いられる架橋澱粉の「原料澱粉」となる。
本発明の架橋澱粉の製造に用いられる原料澱粉は、一般に食用に適する澱粉であれば何れであってもよく、特に限定されるものではない。そのような澱粉として、例えば、穀物、塊茎、塊根、樹幹及びこれらのワキシー種又はハイアミロース種から分離精製された澱粉(小麦澱粉、米澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、緑豆澱粉、サゴ澱粉等並びにこれらのワキシー澱粉及びハイアミロース澱粉)が挙げられる。
澱粉の架橋処理は、従来公知の架橋剤を用いて行うことができ、例えば、トリメタリン酸ナトリウム、塩化ホスホリルを用いたリン酸架橋処理、無水酢酸と共にアジピン酸を用いたアジピン酸架橋処理、アクロレインを用いたアクロレイン架橋処理、エピクロヒドリンを用いたエピクロヒドリン架橋処理等が挙げられ、好ましくはリン酸架橋処理である。
用いる架橋剤の添加量、反応時間、反応温度等の処理条件を制御することにより、所望する糊化開始温度になるように調節することができる。一般に、架橋度が高くなるにつれて架橋された澱粉の糊化開始温度は高くなり、ついには糊化しなくなる。なお、澱粉をエーテル化(プロピレンオキシド処理等)、アセチル化(無水酢酸処理、酢酸ビニル処理等)ないしは酸化(次亜塩素酸ナトリウム処理)すると糊化開始温度が低くなる傾向になるため、澱粉の架橋処理と共に施さない方が好ましい。
架橋澱粉の糊化開始温度の測定方法は、公知の測定方法であれば何れも採用することができ、例えば、ブラベンダーアミログラフ、ラピッドビスコグラフあるいはDSCなどの熱分析計を用いて測定することができる。本発明においては、架橋澱粉の糊化開始温度はブラベンダーアミログラフを用いて測定する。すなわち、本発明における糊化開始温度とは、ブラベンダーアミログラフにおいて、澱粉濃度6質量%の水懸濁液(懸濁液30g中に澱粉を絶乾物として1.8gを含有)を50℃で撹拌しながら1分間に12℃の昇温速度で加熱したとき、澱粉の糊化開始によって粘度が発現する温度を機械的に読み取って得られる温度を意味する。
【0011】
本発明のドーナツ類用原料粉において、糊化しない架橋澱粉、又は原料澱粉よりも3℃以上高い糊化開始温度を有する架橋澱粉を使用することにより、未処理澱粉や他の化工澱粉を使用する場合と比較して糊化開始時間が高くなることから、ドーナツ類用生地の加熱時に膨張しづらく安定してフライすることができ、また糊化しにくくなることからドーナツ類のモチモチとした食感が抑制されて、ホロホロした食感となり、口どけが良くなる。
本発明のドーナツ類用原料粉に用いる架橋澱粉は、当該架橋澱粉の原料澱粉(架橋処理していない澱粉)よりも糊化開始温度が3℃以上高く、より好ましくは4℃以上高く、更に好ましくは5℃以上高い。あるいは、当該架橋澱粉は糊化しない。上記範囲内であれば、生地のつながりが良く容易に成型することができ、安定してフライすることができ、喫食した際にホロホロ感があり、口どけの良いドーナツ類を得ることができる。
【0012】
<菽穀粉以外の穀粉>
本発明のドーナツ類用原料粉には任意に菽穀粉以外の穀粉を用いてもよい。本発明において菽穀粉以外の穀粉とは、普通小麦、デュラム小麦、ライ麦、とうもろこし、大麦、米、そば、ひえ、あわ、アマランサス等の穀類の種子を粉砕して得られるものである。それら穀類をまるごと粉砕して得られる全粒粉であってもよい。好ましくは小麦粉、デュラム小麦粉、ライ麦粉、トウモロコシ粉ないしはそれらの全粒粉であり、より好ましくは小麦粉、デュラム小麦粉、ライ麦粉ないしはそれらの全粒粉であり、更に好ましくは小麦粉ないしは小麦全粒粉である。
【0013】
<ドーナツ類用原料粉>
本発明のドーナツ類用原料粉は、菽穀粉、架橋澱粉、及び任意成分としての菽穀粉以外の穀粉からなる。本発明のドーナツ類用原料粉における菽穀粉の含有率は、前記原料粉全量に対して8~50質量%である。その下限は好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上であり、更に好ましくは28質量%以上である。その上限は好ましくは質量40質量%以下であり、より好ましくは37質量%以下であり、更に好ましくは33質量%以下である。
本発明のドーナツ類用原料粉における架橋澱粉の含有率は、前記原料粉全量に対して38~77質量%である。その下限は好ましくは45質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、更に好ましくは60質量%以上である。また、その上限は78質量%以下であり、好ましくは76質量%以下であり、より好ましくは73質量%以下であり、更に好ましくは68質量%以下である。
本発明のドーナツ類用原料粉における菽穀粉と架橋澱粉との合計の含有率は、前記原料粉全量に対して68質量%以上であり、好ましくは75質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは85質量%以上である。またドーナツ類用原料粉における菽穀粉と架橋澱粉との合計の含有率が100質量%となってもよい。
本発明のドーナツ類用原料粉において、菽穀粉以外の穀粉は任意成分である。ドーナツ類用原料粉における菽穀粉以外の穀粉の含有量はドーナツ類用原料粉全量に対して32質量%以下である。好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、更に好ましくは15質量%以下である。
上記範囲内であれば、生地のつながりが良く容易に成型することができ、安定してフライすることができ、喫食した際にホロホロ感があり、口どけの良いドーナツ類を得ることができる。
【0014】
<ドーナツ類用ミックス粉>
本発明のドーナツ類用ミックスは、前記ドーナツ類用原料粉を含有する。一般的に、ミックス粉は、その使用用途に応じ、前記ドーナツ類用原料粉以外に糖類、膨張剤、調味料、香料、色素等の粉末原料、油脂類などを混合したものをいう。
本発明のドーナツ類用ミックス粉は、前記ドーナツ類用原料粉に加えて、ブドウ糖、果糖、乳糖、砂糖、イソマルトースなどの糖類;卵黄、卵白、全卵及びそれらを粉末化したものやその他の卵に由来する成分である卵成分;粉乳、脱脂粉乳、大豆粉乳等の乳成分;ショートニング、ラード、マーガリン、バター、パーム油、大豆油、コーン油、菜種油、オリーブ油、アマニ油等の油脂類;ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン、サポニン等の乳化剤;ベーキングパウダー、重曹等の膨張剤;キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、ペクチン、カラギーナン、グアガム、タマリンドガム、アラビアガム等の増粘多糖類;メチルセルロース等のセルロース誘導体;食塩等の無機塩類;保存料;香料;香辛料;ビタミン;カルシウム等の強化剤等の通常ドーナツ類用ミックス粉の製造に用いる副原料を含むことができる。
【0015】
<ドーナツ類用生地>
本発明のドーナツ類用生地は、前記ドーナツ類用原料粉ないしは前記ドーナツ類用ミックス粉を含有する。前記ドーナツ類用原料粉を用いる場合、ドーナツ類用原料粉と、油脂や糖質、食塩、膨脹剤等の通常ドーナツ類用ミックス粉の製造に用いる副原料と、飲料水や液卵、牛乳等の液体原料とを加えてドーナツ類用生地とすることができる。前記ドーナツ類用ミックス粉を用いる場合、飲料水や液卵、牛乳等の液体原料を加えてパン類用生地とすることができる。
液体原料の量は、求める生地の特性やドーナツ類の食感により変動するが、概ねドーナツ類用原料粉100質量部に対して50~90質量部である。
本発明のドーナツ類用生地の加熱膨張には主として膨張剤の反応によって発生するガスが利用されるが、風味付け等の目的でイースト発酵を組合わせても良い。化学膨張剤の反応により発生するガスがドーナツ類用生地から放出されることを極力避けるため、生地製造後できるだけ時間を空けずに油ちょうすることが好ましい。
【実施例0016】
以下本発明を具体的に説明する為に実施例を示すが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0017】
<製造例1 リン酸架橋澱粉の製造>
水130質量部に硫酸ナトリウム20質量部を溶解した溶液に、下記表1記載の原料澱粉100質量部を分散させたスラリーを調製した。これら各スラリーに、pH11~12のアルカリ条件下、求める糊化開始温度になるように適量のトリメタリン酸ナトリウムを加え、40℃で5時間反応させて架橋処理を行った。架橋処理後、各スラリーを硫酸で中和した後、水洗、脱水及び乾燥を経て表1記載のリン酸架橋澱粉を得た。得られたリン酸架橋澱粉をブラベンダーアミログラフに供し、リン酸架橋澱粉濃度6質量%の水懸濁液(水懸濁液30g中に澱粉を絶乾物として1.8gを含有)を50℃で撹拌しながら1分間に12℃の昇温速度で加熱し、澱粉の糊化開始温度(粘度が発現する温度)を測定した。
結果を表1に示す。リン酸架橋処理した澱粉A、B、Cではブラベンダーアミログラフによる粘度発現が観察されず、糊化しない程度にまでリン酸架橋されたことが分った。澱粉D、E、F、では各々糊化開始温度が5.1℃、5.9℃、2.2℃ずつ高くなった。澱粉Gは未処理の生澱粉である。
【0018】
【0019】
<製造例2 ドーナツの製造>
下記配合に従ってドーナツを製造した。すなわち、
(1)粉末原料、油脂原料及び液体原料をミキサー(KitchenAid社製、KSM5)に投入し、低速で1分間、中速で1分30秒間混捏した。
(2)混捏した生地をドーナツカッター(ベルショー社製、Fカッター及びプレーンプランジャー)で40gのリング状に分割し、190℃のフライ油で潜行2分間フライしてドーナツを得た。
【0020】
【0021】
<評価例1 ドーナツの官能評価>
得られたドーナツについて、10名の熟練パネラーにより下記評価表に従って官能評価を行い、10名の平均点と標準偏差(SD)を算出した。
【0022】
【0023】
<試験例1 ドーナツの食感に与えるリン酸架橋澱粉の影響>
小麦粉、リン酸架橋澱粉及び大豆粉の量を表1記載の量にした以外は製造例2に従ってドーナツを製造し、評価例1に従って評価した。なお、生地の硬さが同じになるように加水量を調節した。
その結果、実施例1~4では、リン酸架橋澱粉の割合が増加するにつれてホロホロ感及び口どけが良好になった。その反面、リン酸架橋澱粉の割合が増加するにつれて作業性の評価点が低くなったが、不適とまでは言えなかった。実施例1から4および比較例1は、ドーナツの形状を保って安定してフライすることができた。比較例1では、生地のつながりと成形性は良好であったが、リン酸架橋澱粉が少ないためにホロホロ感及び口どけがやや物足りず、不適であった。比較例2では、リン酸架橋澱粉の割合が多くなったためにドーナツの形状が保てず崩れてしまいフライすることができなかったため、食感評価することができなかった。
【0024】
表1
*1リン酸架橋澱粉は澱粉Aである。
*2大豆粉はJオイル社のJOYLミルキーSである。
【0025】
<試験例2 ドーナツの食感に与える大豆粉の影響>
小麦粉、リン酸架橋澱粉及び大豆粉の量を表2記載の量にした以外は製造例2に従ってドーナツを製造し、評価例1に従って評価した。試験例1同様に生地の硬さが同じになるように加水で調節した。
その結果、実施例3、5~8ではホロホロ感及び口どけ共に良好であり、リン酸架橋澱粉と大豆粉とのバランスが良かったためか実施例3のドーナツの食感が最良であった。比較例3では、生地のつながりと成形性は良好であったが、ホロホロ感及び口どけが物足りず、不適であった。比較例4では、大豆粉の割合が高くなりすぎたために生地性が幾分悪くなり、ホロホロ感及び口どけも十分ではなかった。実施例3、5から8および比較例3から4は、いずれもドーナツの形状を保って安定してフライすることができた。
【0026】
表2
*1リン酸架橋澱粉は澱粉Aである。
*2大豆粉はJオイル社のJOYLミルキーSである。
【0027】
<試験例3 リン酸架橋澱粉の由来澱粉の検討>
表3記載のリン酸架橋澱粉を用いた以外は実施例3(リン酸架橋澱粉70質量部、大豆粉30質量部)に従ってドーナツを製造し、評価例1に従って評価した。
その結果、糊化しない澱粉A、B、Cでは何れも作業性が良好で、優れたホロホロ感及び口どけのドーナツであった。架橋処理していない原料澱粉よりも糊化開始温度が5℃以上上昇した澱粉D及びEではホロホロ感、口どけ及び作業性共に良好なドーナツであった。それに対して、糊化開始温度が2℃強上昇した澱粉Fでは、ホロホロ感、口どけがやや物足りず、生地のつながりがやや悪かった。未処理の生澱粉である澱粉Gを用いた場合には、ホロホロ感が足りず、また口どけが悪く不適であった。実施例3、9から12および比較例5から6は、ドーナツの形状を保って安定してフライすることができた。
【0028】