(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110116
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】芳香族アミノ樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 61/02 20060101AFI20240807BHJP
【FI】
C08G61/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014488
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】迫 雅樹
【テーマコード(参考)】
4J032
【Fターム(参考)】
4J032CA04
4J032CB01
4J032CC01
4J032CD01
4J032CE03
4J032CG06
(57)【要約】
【課題】 ハロゲン原子含有化合物と芳香族アミン化合物とを反応させて芳香族アミノ樹脂を製造するに際し、金属製反応装置の腐食を低減でき、且つ、特殊な反応装置を必要としない製造方法を提供する。
【解決手段】 ベンジルハライド基を2つ以上有する化合物(A)と、芳香族アミン化合物(B)とを塩基性条件下で反応させる工程(工程1)と、工程1の反応生成物を酸性触媒条件下で処理する工程(工程2)とを有する芳香族アミノ樹脂の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンジルハライド基を2つ以上有する化合物(A)と、芳香族アミン化合物(B)とを塩基性条件下で反応させる工程(工程1)と、工程1の反応生成物を酸性触媒条件下で処理する工程(工程2)とを有する芳香族アミノ樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記工程2で用いる酸性触媒が非腐食性の酸性触媒である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記ベンジルハライド基を2つ以上有する化合物(A)が、下記一般式(A-1)又は(A-2)で表される化合物である請求項1記載の製造方法。
【化1】
[一般式(A-1)及び(A-2)中、Ar
1はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい芳香環を表す。R
1はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基である。Xはハロゲン原子である。Yは単結合、炭素原子数1~6の二価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基のいずれかである。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製反応装置の腐食を低減でき、且つ、特殊な反応装置を必要としない芳香族アミノ樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マレイミド樹脂は硬化物における耐熱性が非常に高いことから、パワー半導体用封止材料等、特に高い耐熱性が要求される分野の樹脂材料としてその利用が検討されている。しかしながら、現在市販されているマレイミド樹脂は構造のバリエーションが限られており、未だ開発の余地が広く残されている樹脂材料であると言える。このような背景のもと、より高性能なマレイミド樹脂の開発及びその工業的製法技術の確立が期待されている。
【0003】
マレイミド樹脂の開発における重要な要素技術の一つが、前駆体となるアミノ樹脂の合成技術である。従前から広く検討されているマレイミド樹脂として、複数のアニリンがキシリレン基やジメチルビフェニレン基等で結合された、いわゆるアラルキル構造を有するアミノ樹脂のマレイミド化物がある。前述のような構造を有するアミノ樹脂は、通常、アニリンとキシリレンジクロリド、ジクロロメチルビフェニル等のハロゲン化物とを酸触媒或いは無触媒条件下、加熱して反応させる方法にて製造されるが、このような製造方法ではハロゲン化水素が副生することから、工業用に広く用いられているSUS等の金属製反応装置が腐食されてしまう。そのため、特殊な製造設備を必要とする或いは量産が難しいなど、工業的利用における課題があった(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3-172324号公報
【特許文献2】特開2009-1783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明が解決しようとする課題は、ハロゲン原子含有化合物と芳香族アミン化合物とを反応させて芳香族アミノ樹脂を製造するに際し、金属製反応装置の腐食を低減でき、且つ、特殊な反応装置を必要としない製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討した結果、ハロゲン原子含有化合物と芳香族アミン化合物とを塩基性条件下で反応させる工程(工程1)と、工程1の反応生成物を酸性触媒条件下で処理する工程(工程2)とを有する製造方法にて芳香族アミノ樹脂を製造することにより、金属製反応装置の腐食を低減でき、且つ、特殊な反応装置を必要とせずに、目的の芳香族アミノ樹脂を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、(I)ベンジルハライド基を2つ以上有する化合物(A)と、芳香族アミン化合物(B)とを塩基性条件下で反応させる工程(工程1)と、工程1の反応生成物を酸性触媒条件下で処理する工程(工程2)とを有する芳香族アミノ樹脂の製造方法に関する。
【0008】
本発明は更に、(II)前記工程2で用いる酸性触媒が非腐食性の酸性触媒である前記(I)記載の製造方法に関する。
【0009】
本発明は更に、(III)前記ベンジルハライド基を2つ以上有する化合物(A)が、下記一般式(A-1)又は(A-2)で表される化合物である前記(I)又は(II)記載の製造方法に関する。
【0010】
【0011】
[一般式(A-1)及び(A-2)中、Ar1はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい芳香環を表す。R1はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基である。Xはハロゲン原子である。Yは単結合、炭素原子数1~6の二価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基のいずれかである。]
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ハロゲン原子含有化合物と芳香族アミン化合物とを反応させて芳香族アミノ樹脂を製造するに際し、金属製反応装置の腐食を低減でき、且つ、特殊な反応装置を必要としない製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1で得られたアミノ樹脂のアセトアミド化物のGPCチャート図である。
【
図2】実施例1で得られたアミノ樹脂の質量分析(FD-MS)チャート図である。
【
図3】実施例1で得られたアミノ樹脂のFT-IRチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明の芳香族アミノ樹脂の製造方法は、ベンジルハライド基を2つ以上有する化合物(A)と、芳香族アミン化合物(B)とを塩基性条件下で反応させる工程(工程1)と、工程1の反応生成物を酸性触媒条件下で処理する工程(工程2)とを有することを特徴とする。
【0016】
前記ベンジルハライド基を2つ以上有する化合物(A)は、前記芳香族アミン化合物(B)と反応して結合を生じるためのベンジルハライド基を2つ以上有するものであればよく、その他の具体構造は特に限定されず、様々な化合物を用いることができる。また、前記化合物(A)は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0017】
前記ベンジルハライド基を2つ以上有する化合物(A)のうち、好ましいものの一例としては、例えば、下記一般式(A-1)又は(A-2)で表される化合物が挙げられる。
【0018】
【0019】
[一般式(A-1)及び(A-2)中、Ar1はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい芳香環を表す。R1はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基である。Xはハロゲン原子である。Yは単結合、炭素原子数1~6の二価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基のいずれかである。]
【0020】
前記一般式(A-1)及び(A-2)中、Ar1はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい芳香環を表す。前記芳香環は、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン環等のベンゼン系芳香族化合物、フラン、イミダゾール、ピリジン等の複素芳香族化合物等が挙げられる。中でも、得られるアミノ樹脂の利用可能性の幅広さから、前記ベンゼン系芳香族化合物が好ましく、ベンゼン又はナフタレンが好ましい。
【0021】
前記Ar1が有する芳香環上の置換基は、例えば、脂肪族炭化水素基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。前記脂肪族炭化水素基は直鎖型、分岐型、環状構造のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。具体的には、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、アリル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。前記アリール基は、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基等が置換した構造部位等が挙げられる。前記アラルキル基は、ベンジル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基等が置換した構造部位等が挙げられる。中でも、得られるアミノ樹脂の利用可能性の幅広さや原料入手の容易性から、前記Ar1は無置換の芳香環或いは前記脂肪族炭化水素基を一つ乃至複数有する芳香環であることが好ましい。
【0022】
前記R1はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基である。前記脂肪族炭化水素基は直鎖型、分岐型、環状構造のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。具体的には、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、アリル基、ブチル基、等が挙げられる。中でも、より反応性に優れる化合物(A)となることから、R1は水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0023】
前記Yは単結合、炭素原子数1~6の二価の脂肪族炭化水素基、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基のいずれかである。前記炭素原子数1~6の二価の脂肪族炭化水素基は直鎖型、分岐型、環状構造のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。
【0024】
前記芳香族アミン化合物(B)は、芳香環上にNH2基やNHR基を一つ以上有する化合物であれば、その他の具体構造は特に限定なく、多種多様な化合物を用いることができる。また、芳香族アミン化合物(B)は一種類を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。前記NHR基におけるRは脂肪族炭化水素基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、反応性の高さ等の理由から、炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基又はフェニル基が好ましい。前記芳香族アミン化合物(B)の具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン等のベンゼン系芳香族化合物の芳香環上にNH2基やNHR基を一つ以上有する化合物や、NH2基やNHR基に加えて更にその他の置換基を一つ乃至複数有する化合物等が挙げられる。前記その他の置換基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、アリール基、アラルキル基、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基等が挙げられる。
【0025】
前記脂肪族炭化水素基は直鎖型、分岐型、環状構造のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。具体的には、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、アリル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。前記アリール基は、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基等が置換した構造部位等が挙げられる。前記アラルキル基は、ベンジル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基等が置換した構造部位等が挙げられる。
【0026】
前記芳香族アミン化合物(B)の中でも、得られるアミノ樹脂の利用可能性の幅広さから、アニリン又はアニリンの芳香核上に前記その他の置換基を一つないし複数有する化合物が好ましい。置換基を一つ乃至複数有するアニリン化合物の場合、前記化合物(A)との反応性に優れるものとなることから、アミノ基に対する2つのオルソ位及びパラ位の何れか一つ以上は無置換であることが好ましい。
【0027】
前記工程1は、前記ベンジルハライド基を2つ以上有する化合物(A)と、前記芳香族アミン化合物(B)とを塩基性条件下で反応させる工程である。ここで用いる塩基性化合物は特に限定されず、工業用途で一般的に使用されている各種の塩基性化合物を用いることができる。また、塩基性化合物は一種類を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。塩基性化合物の一例としては、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属水酸化物、4級アンモニウム塩等が挙げられる。中でも、活性により優れる点からアルカリ金属水酸化物が好ましく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。使用に際しては、これらの塩基性化合物を10質量%~55質量%程度の水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用してもよい。塩基性化合物の使用量は、前記化合物(A)中のベンジルハライド基1モルに対し、1.0モル以上用いることが好ましい。
【0028】
また、触媒能を一層高めるために、アルカリ金属水酸化物と4級アンモニウム塩とを併用することが好ましい。前記4級アンモニウム塩の使用量は、前記ベンジルハライド基を2つ以上有する化合物(A)と前記芳香族アミン化合物(B)との合計質量に対し0.05~2質量%の範囲であることが好ましく、0.1~1質量%の範囲であることがより好ましい。
【0029】
更に、触媒能を一層高めるために、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム等のアルカリ金属ハロゲン化物を併用することが好ましい。前記アルカリ金属ハロゲン化物の使用量は、前記ベンジルハライド基を2つ以上有する化合物(A)と前記芳香族アミン化合物(B)との合計質量に対し0.05~2質量%の範囲であることが好ましく、0.1~1質量%の範囲であることがより好ましい。
【0030】
前記工程1において、前記化合物(A)と前記芳香族アミン化合物(B)との反応比率は、得られるアミノ樹脂における所望の分子量等に応じて適宜調整が可能である。例えば、前記化合物(A)が有するベンジルハライド基のモル数に対し前記芳香族アミン化合物(B)大過剰量用いる場合には、比較的低分子量のアミノ樹脂が得られる。他方、前記化合物(A)が有するベンジルハライド基のモル数に対する前記芳香族アミン化合物(B)のモル数の比率が少ないほど、比較的高分子量のアミノ樹脂が得られる。中でも、得られるアミノ樹脂の利用可能性の幅広さから、前記化合物(A)が有するベンジルハライド基1モルに対する前記芳香族アミン化合物(B)のモル数は0.5モル以上であることが好ましい。また、10モル以下であることが好ましい。
【0031】
前記工程1は、より効率的に反応が進行することから、反応温度を50℃以上とすることが好ましく、80℃以上とすることがより好ましい。また、反応温度を150℃以下とすることが好ましく、110℃以下とすることがより好ましい。前記工程1の反応時間は、前記化合物(A)や前記芳香族アミン化合物(B)の種類、使用する触媒等にもよるが、数時間~数十時間程度が好ましく、1~20時間の範囲であることが好ましい。
【0032】
前記工程1は必要に応じて有機溶媒中で行ってもよい。用いる有機溶媒は前記化合物(A)、前記芳香族アミン化合物(B)及び反応生成物を溶解し得るものであり、かつ、反応温度以上の沸点を有する物であれば特に限定なく、工業用途で一般的に使用されている各種の有機溶媒を用いることができる。一例としてはトルエンやキシレン、ソルベントナフサ等の高沸点炭化水素溶剤等が挙げられる。有機溶媒の使用量は、前記化合物(A)と前記芳香族アミン化合物(B)との合計質量に対し50~200質量%の範囲であることが好ましい。
【0033】
前記工程1の終了後は、反応で生成した塩を水洗等により除去することが好ましい。
【0034】
前記工程2は、前記工程1の反応生成物を酸性触媒条件下で処理する工程である。ここで用いる酸性触媒は特に限定されず、工業用途で一般的に使用されている各種の酸性触媒を用いることができる。一例としては、塩酸、硫酸、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、シュウ酸、リン酸、パラトルエンスルホン酸、ヒドロキシ-p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、活性白土、イオン交換樹脂等の固体触媒等が挙げられる。これらは一種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。中でも、金属製反応装置の腐食防止の観点から、パラトルエンスルホン酸、ヒドロキシ-p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、活性白土、イオン交換樹脂等、低腐食性の酸触媒が好ましい。酸性触媒の使用量は、前記化合物(A)と前記芳香族アミン化合物(B)との合計質量に対し、1質量%以上用いることが好ましく、10質量%以上用いることが好ましい。また、50質量%以下用いることが好ましく、40質量%以下用いることが好ましい。
【0035】
前記工程2は、より効率的に反応が進行することから、反応温度を150℃以上とすることが好ましく、200℃以上とすることがより好ましい。また、反応温度を250℃以下とすることが好ましい。前記工程2の反応時間は、前記化合物(A)や前記芳香族アミン化合物(B)の種類、使用する触媒等にもよるが、数十分~十数時間程度が好ましく、0.5~5時間の範囲であることが好ましい。
【0036】
前記工程2は必要に応じて有機溶媒中で行ってもよい。用いる有機溶媒は前記化合物(A)と前記芳香族アミン化合物(B)との反応生成物及び目的のアミノ樹脂を溶解し得るものであり、工業用途で一般的に使用されている各種の有機溶媒を用いることができる。また、前記工程1で有機溶媒を用いた場合には、工程1で用いたものを引き続き使用してもよい。工程2で用いる有機溶媒の一例としてはトルエンやキシレン、ソルベントナフサ等の高沸点炭化水素溶剤等が挙げられる。有機溶媒の使用量は、前記化合物(A)と前記芳香族アミン化合物(B)との合計或いは前記化合物(A)と前記芳香族アミン化合物(B)との反応生成物の質量に対し50~200質量%の範囲であることが好ましい。溶剤は、反応温度に応じて、適宜留去し、その量を調整することもできる。
【0037】
工程2の終了後は、酸性触媒として活性白土等を用いた場合には、濾過等によりこれを除去する工程を設けてもよい。また、必要に応じて、余剰のモノマーや有機溶媒等を留去する工程を設けてもよい。
【0038】
本発明の製造方法にて得られるアミノ樹脂の具体構造は、前記化合物(A)及び前記芳香族アミン化合物(B)の種類や反応比率等によって様々である。一例として、前記化合物(A)としてパラキシレンジクロリドを用い、前記化合物(B)としてアニリンを用いた場合には、下記一般式(1)で表される2官能成分や、下記一般式(2)で表される構造を主鎖の繰り返し単位或いは分岐鎖として有する成分等が生成し得る。なお、下記一般式(1)及び(2)はあくまでも本願発明の製造方法にて得られるアミノ樹脂の具体例の一部に過ぎず、本願発明はこれに限定解釈されるべきものではない。
【0039】
【0040】
本発明の製造方法にて得られるアミノ樹脂は、特に限定なく様々な用途に用いることができる。一例としては、塗料や接着剤等、一般的なアミノ樹脂と同様の用途が挙げられる。また、マレイミド樹脂等を得るための反応原料として当該アミノ樹脂を用いることもできる。マレイミド化反応は公知一般的な反応条件が利用でき、例えば、前記アミノ樹脂と無水マレイン酸とを酸触媒条件下で反応させる方法等が挙げられる。
【実施例0041】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。
【0042】
本願実施例で用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の測定条件は以下の通りである
<ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の測定条件>
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC-8320 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0043】
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)
【0044】
本願実施例において、質量分析(FD-MS)は以下の測定装置、測定条件にて行った。
測定装置:JMS-T100GC AccuTOF
測定条件
測定範囲:m/z=4.00~2000.00
変化率:51.2mA/min
最終電流値:45mA
カソード電圧:-10kV
記録間隔:0.07sec
【0045】
本願実施例において、FT-IR測定は以下の測定装置、測定条件にて行った。
測定装置:日本分光株式会社製FT/IR-4100
試料:樹脂をKBrプレートへ塗布し、熱風にて乾燥したもの
【0046】
本願実施例において、アミノ樹脂のアミン当量は以下の要領で測定した値である。
<アミン当量の測定>
500mL共栓付き三角フラスコに、試料であるアミノ樹脂を約2.5g入れ、ピリジン7.5g、無水酢酸2.5g、トリフェニルホスフィン7.5gを精秤後、冷却管を装着し、120℃に設定したオイルバスにて150分加熱還流する。
混合物を冷却した後、蒸留水5.0mL、プロピレングリコールモノメチルエーテル100mL、テトラヒドロフラン75mL、0.5mol/L水酸化カリウム-エタノール溶液(~50mL)を加え、電位差滴定法により滴定した。同様の方法で空試験を行なって補正した。
【0047】
アミン当量(g/eq.)=(S×2,000)/(Blank-A)
S:試料の量(g)
A:0.5mol/L水酸化カリウム-エタノール溶液の消費量(mL)
Blank:空試験における0.5mol/L水酸化カリウム-エタノール溶液の消費量(mL)
【0048】
本願実施例において、アミノ樹脂の全塩素量は以下の要領で測定した値である。
<全塩素量の測定>
JIS K7246に従って算出した。具体的には、樹脂をジエチレングリコールモノブチルエーテルに溶解し、1規定の水酸化カリウムープロピレングリコール溶液を加え、20分煮沸した後に、硝酸銀で電位差滴定を行った。
【0049】
実施例1 本願発明の製造方法を用いたアミノ樹脂の製造
撹拌機、温度計、滴下ロート、SUS316L製金属板およびコンデンサーを備えた容量2リットルの4つ口フラスコに、2-エチルアニリン121g(1.0mol)、パラキシレンジクロリド87.6g(0.5mol)、トルエン197g、20%NaOH水溶液210g(NaOHが1.05mol相当)、テトラブチルアンモニウムブロミド1.04g、ヨウ化カリウム1.04gを仕込んだ。撹拌しながら反応混合物の内温が90℃になるまで徐々に加熱し、同温度で10時間維持した。終了後、水121gを用いて3回水洗し、生成した塩を除去した。ここに活性白土(水澤化学工業社製「ガレオンアースV2」)59gを仕込み、揮発分を排出させながら、反応混合物の内温が230℃になるまで加熱し、同温度で3時間維持した。反応混合物をトルエンで希釈したのち、ろ過により活性白土を除去した。更に加熱減圧条件下で余剰のモノマーと溶剤を取り除き、目的とするアミノ樹脂120gを得た。得られたアミノ樹脂のアミン当量は175g/当量であった。
【0050】
反応終了後にフラスコ内のSUS316L製金属板の状態を確認したところ、光沢のある表面を維持しており、腐食は見られなかった。また、合成したアミノ樹脂の全塩素量を測定したところ、検出下限(10ppm)以下であった。
【0051】
得られたアミノ樹脂を無水酢酸にてアセトアミド化したものについて測定したGPCのチャート図を
図1に示す。また、得られたアミノ樹脂の質量分析(FD-MS)チャート図を
図2に、FT-IRチャート図を
図3に示す。
【0052】
比較例1 従来技術によるアミノ樹脂の製造方法
撹拌機、温度計、滴下ロート、SUS316L製金属板およびコンデンサーを備えた容量2リットルの4つ口フラスコに、2-エチルアニリン145g(1.2mol)、トルエン130g、36%塩酸32.4gを仕込んだ。ディーンスターク装置をセットし、撹拌しながら加熱し、トルエンを還流させることで系内の水を除去した。その後トルエンを910g追加したのち、パラキシレンジクロリド35.0g(0.2mol)、2-エチルアニリン145gを仕込んだ。揮発分を排出させながら反応混合物の内温が230℃になるまで加熱した。同温度で7時間維持した後、フラスコ内のSUS316L製金属板の状態を確認したころ、表面が黒色に変化し、著しい腐食が見られたため、反応を中断した。