(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110117
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】硬化性組成物、硬化物、繊維強化複合材料、成形品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 59/50 20060101AFI20240807BHJP
【FI】
C08G59/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014489
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】小林 厚子
(72)【発明者】
【氏名】木村 真実
(72)【発明者】
【氏名】河崎 顕人
【テーマコード(参考)】
4J036
【Fターム(参考)】
4J036AB01
4J036AB02
4J036AB03
4J036AB07
4J036AB09
4J036AF06
4J036AF07
4J036AF26
4J036AF27
4J036AG03
4J036AG06
4J036AG07
4J036AH07
4J036AH10
4J036AJ18
4J036DA05
4J036DC03
4J036DC04
4J036DC05
4J036DC09
4J036DC10
4J036DC40
4J036HA11
4J036HA12
4J036JA11
(57)【要約】
【課題】 可使用時間が長く、硬化物における耐熱性や機械物性に優れる硬化性組成物とその硬化物、繊維強化複合材料、繊維強化樹脂成形品、及び繊維強化樹脂成形品の製造方法を提供すること。
【解決手段】 エポキシ化合物(A)、活性水素を有するアミン化合物(B)、及びイミダゾール化合物(C)を含有し、前記活性水素を有するアミン化合物(B)がポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物(B1)と芳香族アミン化合物(B2)を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物(A)、活性水素を有するアミン化合物(B)、及びイミダゾール化合物(C)を含有し、前記活性水素を有するアミン化合物(B)がポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物(B1)と芳香族アミン化合物(B2)を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
前記エポキシ化合物(A)が、炭素原子数8~20の脂肪族炭化水素基を有する芳香族モノエポキシ化合物を含有する請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記エポキシ化合物(A)の総質量に対する前記炭素原子数8~20の脂肪族炭化水素基を有する芳香族モノエポキシ化合物の割合が0.1~20質量%の範囲である請求項2記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記エポキシ化合物(A)中のエポキシ基のモル数Eと、前記活性水素を有するアミン化合物(B)中の活性水素のモル数Hとの比率H/Eが0.2~0.8の範囲である請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記イミダゾール化合物(C)の割合が、前記エポキシ化合物(A)100質量部に対して、0.1~2質量部の範囲である請求項1項記載の硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項7】
請求項1~5の何れか1項記載の硬化性組成物と、強化繊維とを含有する繊維強化複合材料。
【請求項8】
請求項7記載の硬化物と強化繊維とを必須成分とする繊維強化樹脂成形品。
【請求項9】
請求項7記載の繊維強化複合材料を硬化させる繊維強化樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可使用時間が長く、硬化物における耐熱性や機械物性に優れ、かつ、当該硬化物の機械物性が環境温度によって変化しない硬化性組成物とその硬化物、繊維強化複合材料、繊維強化樹脂成形品、及び繊維強化樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維やアラミド繊維などを強化繊維とし、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とする繊維強化複合材料は、高い比強度および比弾性率を活かし、自動車や風車などの一般産業用途、航空宇宙産業用途、スポーツ用途に広く利用されており、近年では、金属の軽量化として繊維強化複合材料の開発が盛んに行われている。
【0003】
繊維強化複合材料には、オートクレーブ成形、レジントランスファーモールディング成形(以下「RTM成形」と呼ぶことがある)、バキュームアシストレジントランスファー・モールディング成形(以下「VaRTM成形」と呼ぶことがある)、プレス成形、シートモールディングコンパウンド成形、シートワインディング成形、フィラメントワインディング成形、ブルトルージョン成形、射出成型など様々な成形法があり、成形品の形状や所望の物性等に応じて適宜選択されている。また、各成形法に適した繊維強化複合材料はそれぞれ異なっており、強化繊維の種類や形状、マトリクス樹脂の種類などが適宜選択されて用いられている。
【0004】
前記各種の成形法のうちVaRTM成形は、成形型の形状や大きさの自由度が高いことから、比較的大きなサイズの成形品用途にも適用できる利点があり、風車等の屋外構造物や自動車部材等に広く用いられている。これら大型の成形品用途に用いるマトリックス樹脂には、低粘度で繊維強化の含浸性に優れることはもちろん、可使用時間が長いこと、硬化物が靱性や曲げ強度等の機械物性に優れること、当該機械物性が環境温度によって変化しないことなど様々な要求性能がある。
【0005】
耐熱性に優れる繊維強化複合材料のマトリックス樹脂材料として、例えば、エポキシ樹脂、脂肪族又は脂環式アミン化合物、イミダゾール化合物を含有し、エポキシ樹脂中のエポキシ基のモル数に対するアミン化合物中の活性水素のモル数を0.2~0.9とした硬化性組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、当該組成物は可使用時間が短く、大型成形品用途等に適したものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、可使用時間が長く、硬化物における耐熱性や機械物性に優れ、かつ、当該硬化物の機械物性が環境温度によって変化しない硬化性組成物とその硬化物、繊維強化複合材料、繊維強化樹脂成形品、及び繊維強化樹脂成形品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討した結果、エポキシ化合物、アミン化合物、及びイミダゾール化合物を含有する硬化性組成物において、前記アミン化合物としてポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物と芳香族アミン化合物とを併用することにより、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、(I)エポキシ化合物(A)、活性水素を有するアミン化合物(B)、及びイミダゾール化合物(C)を含有し、前記活性水素を有するアミン化合物(B)がポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物(B1)と芳香族アミン化合物(B2)を含有することを特徴とする硬化性組成物に関する。
【0010】
本発明は更に、(II)前記エポキシ化合物(A)が、炭素原子数8~20の脂肪族炭化水素基を有する芳香族モノエポキシ化合物を含有する前記(I)記載の硬化性組成物に関する。
【0011】
本発明は更に、(III)前記エポキシ化合物(A)の総質量に対する前記炭素原子数8~20の脂肪族炭化水素基を有する芳香族モノエポキシ化合物の割合が0.1~20質量%の範囲である前記(II)記載の硬化性組成物に関する。
【0012】
本発明は更に、(IV)前記エポキシ化合物(A)中のエポキシ基のモル数Eと、前記活性水素を有するアミン化合物(B)の活性水素のモル数Hとの比率H/Eが0.2~0.8の範囲である前記(I)~(III)のいずれか一つに1記載の硬化性組成物に関する。
【0013】
本発明は更に、(V)前記イミダゾール化合物(C)の割合が、前記エポキシ化合物(A)100質量部に対して、0.1~2質量部の範囲である前記(I)~(IV)のいずれか一つに記載の硬化性組成物に関する。
【0014】
本発明は更に、(VI)前記(I)~(V)のいずれか一つに記載の硬化性組成物の硬化物に関する。
【0015】
本発明は更に、(VII)前記(I)~(V)のいずれか一つに記載の硬化性組成物と、強化繊維とを含有する繊維強化複合材料に関する。
【0016】
本発明は更に、(VIII)前記(VII)記載の硬化物と強化繊維とを必須成分とする繊維強化樹脂成形品に関する。
【0017】
本発明は更に、(IX)前記(VII)記載の繊維強化複合材料を硬化させる繊維強化樹脂成形品の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、可使用時間が長く、硬化物における耐熱性や機械物性に優れる硬化性組成物とその硬化物、繊維強化複合材料、繊維強化樹脂成形品、及び繊維強化樹脂成形品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の硬化性組成物は、エポキシ化合物(A)、活性水素を有するアミン化合物(B)、及びイミダゾール化合物(C)を含有し、前記活性水素を有するアミン化合物(B)がポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物(B1)と芳香族アミン化合物(B2)を含有することを特徴とする。
【0020】
前記エポキシ化合物(A)は、分子構造中にエポキシ基を有するものであれば、その具体構造は特に制限なく、多種多様なものを用いることができる。また、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。中でも、硬化性組成物の硬化性や、硬化物における耐熱性及び機械物性に優れることから、2官能以上のエポキシ化合物が好ましい。前記エポキシ化合物(A)全体に占める前記2官能以上のエポキシ化合物の割合は80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。また、98質量%以下であることが好ましく、93%以下であることがより好ましい。
【0021】
更に、前記硬化性組成物の粘度や硬化物物性を調製するために、前記エポキシ化合物(A)として1官能のエポキシ化合物を用いてもよい。この場合、前記エポキシ化合物(A)全体に占める前記1官能のエポキシ化合物の割合は0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが特に好ましい。また、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下であることが特に好ましい。
【0022】
前記エポキシ基含有化合物(A)のうち、1官能のエポキシ化合物としては、フェニルグリシジルエーテル、ナフチルグリシジルエーテル、及びこれらの芳香環上に脂肪族炭化水素基、アルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、水酸基を一つないし複数有する1官能の芳香族エポキシ化合物等が挙げられる。
【0023】
前記脂肪族炭化水素基は直鎖型、分岐型、環状構造のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。また、その炭素原子数は特に限定なく、炭素原子数1~7の比較的小さなもの、炭素原子数8~20の比較的大きいもののいずれでもよい。前記アルキルオキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。前記アルケニルオキシ基は、例えば、アリルオキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられる。前記アリール基は、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した構造部位等が挙げられる。前記アリールオキシ基は、例えば、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した構造部位等が挙げられる。前記アラルキル基は、ベンジル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及びこれらの芳香核上に前記アルキル基やアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換した構造部位等が挙げられる。
【0024】
中でも、可使用時間が長く、機械物性に優れる硬化物が得られることから前記脂肪族炭化水素基を有する1官能の芳香族エポキシ化合物が好ましく、炭素原子数8~20の脂肪族炭化水素基を有する芳香族モノエポキシ化合物がより好ましい。炭素原子数8~20の脂肪族炭化水素基の数は1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0025】
前記2官能以上のエポキシ化合物は、例えば、ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルオキシナフタレン、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノール又はナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン又はナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、オキゾリドリドン変性エポキシ樹脂、これらを臭素化したエポキシ樹脂、及びこれらのエポキシ基含有化合物を伸長剤にて伸長したエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0026】
前記ビフェノール型エポキシ樹脂は、例えば、ビフェノール、テトラメチルビフェノール等のビフェノール化合物や、これらビフェノール化合物のアルキレンオキサイド付加物の一種乃至複数種をエピハロヒドリンでポリグリシジルエーテル化したものが挙げられる。
【0027】
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、ビスクレゾールフルオレン等のビスフェノール化合物や、これらビスフェノール化合物のアルキレンオキサイド付加物の一種乃至複数種をエピハロヒドリンでポリグリシジルエーテル化したものが挙げられる。
【0028】
前記脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテルは、例えば、各種の脂肪族ポリオール化合物や、これらのアルキレンオキサイド付加物の一種乃至複数種をエピハロヒドリンでポリグリシジルエーテル化したものが挙げられる。脂肪族ポリオール化合物は、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチルプロパンジオール、1,2,2-トリメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-3-イソプロピル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘサン、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール等の脂肪族ジオール化合物;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等の脂環族ジオール化合物;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等の3官能以上の脂肪族ポリオール化合物等が挙げられる。
【0029】
前記ノボラック型エポキシ樹脂は、例えば、フェノール、ジヒドロキシベンゼン、クレゾール、キシレノール、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、ビスフェノール、ビフェノール等、各種フェノール化合物の一種乃至複数種からなるノボラック樹脂をエピハロヒドリンでポリグリシジルエーテル化したものが挙げられる。
【0030】
脂環式エポキシ樹脂は、例えば、前記ビフェノール化合物やビスフェノール化合物に水素添加したものや、そのアルキレンオキサイド付加物の一種乃至複数種をエピハロヒドリンでポリグリシジルエーテル化したものの他、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、1-エポキシエチル-3,4-エポキシシクロヘキサン等が挙げられる。
【0031】
前記グリシジルアミン型エポキシ樹脂は、例えば、N,N-ジグリシジルアニリン、トリグリシジルアミノフェノール、テトラグリシジルキシレンジアミン、4,4’-メチレンビス[N,N-ジグリシジルアニリン]等が挙げられる。
【0032】
前記複素環型エポキシ樹脂は、例えば、1,3-ジグリシジル-5,5-ジメチルヒダントイン、トリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0033】
前記グリシジルエステル型エポキシ樹脂は、例えば、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル-p-オキシ安息香酸、ダイマー酸グリシジルエステル等が挙げられる。
【0034】
エポキシ樹脂の伸長剤としては、例えば、前記各種のビフェノール化合物やその水素添加物、前記各種のビスフェノール化合物やその水素添加物、二塩基酸化合物、酸基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0035】
これらの中でも、硬化物の耐熱性や強度、繊維強化複合材料に用いた際の繊維含浸性に優れることから、前記ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、エポキシ当量が160~260g/当量の範囲であるビスフェノール型エポキシ樹脂がより好ましい。前記2官能以上のエポキシ化合物の総質量に占める前記ビスフェノール型エポキシ樹脂の割合は60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。また、98質量%以下であることが好ましく、93%以下であることがより好ましい。前記エポキシ基含有化合物(A)全体に占める前記ビスフェノール型エポキシ樹脂の割合は50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。また、95質量%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましい。
【0036】
更に、硬化物の耐熱性や強度に優れることから、ビスフェノール型エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂とを併用することが好ましい。両者の質量比は40/60~60/40の範囲であることが好ましい。
【0037】
また、繊維強化複合材料に用いた際の繊維含浸性に一層優れる点では、前記脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテルが好ましく、炭素原子数2~6の脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテルがより好ましい。前記2官能以上のエポキシ化合物の総質量に占める前記脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテルの割合は1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが特に好ましい。前記エポキシ基含有化合物(A)全体に占める前記脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテルの割合は1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが特に好ましい。
【0038】
前記2官能以上のエポキシ化合物の総質量に占める前記ビスフェノール型エポキシ樹脂と前記脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテルとの合計質量は70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。
【0039】
前記エポキシ化合物(A)全体に占める炭素原子数8~20の脂肪族炭化水素基を有する芳香族モノエポキシ化合物、前記ビスフェノール型エポキシ樹脂及び前記脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテルとの合計質量は70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。
【0040】
前記活性水素を有するアミン化合物(B)について、活性水素とは窒素原子と結合した水素原子のことを言い、当該アミン化合物(B)は前記エポキシ化合物(A)の硬化剤として働く。本願発明では前記活性水素を有するアミン化合物(B)がポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物(B1)と芳香族アミン化合物(B2)を含有することにより、可使用時間の長さと、硬化物における耐熱性や機械物性とを両立することができる。
【0041】
前記ポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物(B1)は、分子構造中にポリオキシアルキレン構造を有するものであれば、その他の具体構造や官能基数等は特に限定なく、多種多様な化合物を用いることができる。また、一種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。中でも、硬化性に優れる組成物となることから、アミノ基を2つ以上有する多官能アミン化合物であることが好ましく、アミノ基を2つ有するものがより好ましい。当該アミノ基は一級アミンと二級アミンとのどちらであってもよい。前記ポリオキシアルキレン構造は、例えば、ポリオキシエチレン構造、ポリオキシプロピレン構造、及び(ポリ)オキシエチレン構造と(ポリ)オキシプロピレン構造との両方を有する構造等が挙げられる。ポリオキシアルキレン構造部位の鎖長は特に限定されないが、可使用時間が長く、硬化物における機械物性に優れる硬化性組成物となることから、オキシアルキレン構造の繰り返し数が2~10の範囲であることが好ましく、2~5の範囲であることがより好ましい。またポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物(B1)の分子量は140~1000の範囲であることが好ましい。
【0042】
ポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物(B1)の一例としては、例えば下記一般式(1)~(4)の何れかで表されるものが挙げられる。
【0043】
【化1】
[式(1)~(4)中のnは2以上の整数]
【0044】
前記活性水素を有するアミン化合物(B)の総質量に占める前記ポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物(B1)の割合は、可使用時間と硬化物における機械物性に優れる硬化性組成物となることから、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。また、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。
【0045】
前記芳香族アミン化合物(B2)は、芳香族性を有する炭素原子に結合しているアミノ基を一つ以上有するものであれば、その他の具体構造や官能基数等は特に限定なく、多種多様な化合物を用いることができる。前記芳香族アミン化合物(B2)は、分子構造中に脂肪族性炭素原子に結合したアミノ基を有していてもよい。前記芳香族アミン化合物(B2)は一種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。中でも、可使用時間が長く、硬化物における耐熱性に優れる組成物となることから、アミノ基を2つ以上有する多官能アミン化合物であることが好ましく、アミノ基を2つ有するものがより好ましい。更に、2つのアミノ基がいずれも芳香族性炭素原子に結合したアミノ基であることが好ましい。当該アミノ基は一級アミンと二級アミンとのどちらであってもよい。芳香族アミン化合物(B2)の具体例としては、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン、4,4’-メチレンビス[n-(1-メチルプロピル)アニリン]、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビスアニリン-M、ビスアニリン-P、アミノベンジルアミン等が挙げられる。
【0046】
前記活性水素を有するアミン化合物(B)の総質量に占める前記芳香族アミン化合物(B2)の割合は、可使用時間と硬化物における耐熱性や機械物性とのバランスに優れる硬化性組成物となることから、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好まい。また、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0047】
また、前記前記ポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物(B1)と前記芳香族アミン化合物(B2)との質量比は、可使用時間と硬化物における耐熱性や機械物性とのバランスに優れる硬化性組成物となることから、40/60~90/10の範囲であることが好ましく、60/40~80/20の範囲であることがより好ましい。
【0048】
前記活性水素を有するアミン化合物(B)は、前記ポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物(B1)と前記芳香族アミン化合物(B2)以外のその他のアミン化合物を含有していてもよい。この時、前記活性水素を有するアミン化合物(B)の総質量に占める前記ポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物(B1)と前記芳香族アミン化合物(B2)との合計質量の割合は、可使用時間が長く、硬化物における耐熱性や機械物性に優れるという本願発明の効果が十分に発揮されることから、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。
【0049】
前記その他のアミン化合物は、例えば、脂肪族アミン化合物、脂環式アミン化合物等が挙げられる。前記その他のアミン化合物は一種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記脂肪族アミン化合物は、例えば、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン等のアルキレンジアミン化合物;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアルキルポリアミン化合物;N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、N,N-ジエチルアミノプロピルアミン、N,N-ジイソプロピルアミノプロピルアミン、N,N-ジアリルアミノプロピルアミン、N,N-ビスアミノプロピルアリルアミン、ビス〔3-(N,N-ジメチルアミノプロピル)〕アミン、ビス〔3-(N,N-ジエチルアミノプロピル)〕アミン、ビス〔3-(N,N-ジイソプロピルアミノプロピル)〕アミン、ビス〔3-(N,N-ジブチルアミノプロピル)〕アミン、N,N-ジメチルアミノエチルアミン、N,N-ジエチルアミノエチルアミン、N,N-ジイソプロピルアミノエチルアミン、N,N-ジアリルアミノエチルアミン、N,N-(ビスアミノプロピル)-N-メチルアミン、N,N-ビスアミノプロピルエチルアミン、N,N-ビスアミノプロピルプロピルアミン、N,N-ビスアミノプロピルブチルアミン、N,N-ビスアミノプロピルペンチルアミン、N,N-ビスアミノプロピルヘキシルアミン、N,N-ビスアミノプロピル-2-エチルヘキシルアミン、N,N,N’-トリメチルエチレンジアミン、N’-エチル-N,N-ジメチルエチレンジアミン、N’-エチル-N,N-ジメチルプロパンジアミン;N,N-ベンジルメチルアミノエチルアミン、N,N-ジベンジルアミノエチルアミン、N,N-ベンジルメチルアミノプロピルアミン、N,N-ジベンジルアミノプロピルアミン、4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンジルアミン、4-(N,N-ジエチルアミノ)ベンジルアミン、4-(N,N-ジイソプロピルアミノ)ベンジルアミン、N’-エチル-N,N-ジベンジルアミノプロピルアミン、N,N-ビスアミノプロピルベンジルアミン等が挙げられる。
【0050】
前記前記脂環式アミン化合物は、例えば、N,N-ジメチルビスアミノシクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-3,6-ジエチルシクロヘキサン、N,N-シクロヘキシルメチルアミノエチルアミン、N,N-ジシクロヘキシルアミノエチルアミン、N,N-シクロヘキシルメチルアミノプロピルアミン、N,N-ジシクロヘキシルアミノプロピルアミン、N,N-ビスアミノプロピルシクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、N,N,-ジメチルイソホロンジアミン等が挙げられる。
【0051】
前記エポキシ化合物(A)中のエポキシ基のモル数Eと、前記活性水素を有するアミン化合物(B)中の活性水素のモル数Hとの比率H/Eは、可使用時間と硬化物における耐熱性や機械物性とのバランスに優れる硬化性組成物となることから、0.2以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、0.4以上であることが特に好ましい。また、0.8以下であることが好ましく、0.7以下であることが好ましく、0.55以下であることがより好ましい。
【0052】
前記イミダゾール化合物(C)はエポキシ基のアニオン重合触媒として働く。イミダゾール化合物(C)の種類は特に限定されず、多種多様なものを用いることができる。また、イミダゾール化合物(C)は一種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記イミダゾール化合物(C)の具体例としては、例えば、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-アミノプロピルイミダゾール等が挙げられる。これらの中でも、可使用時間と硬化物における耐熱性や機械物性とのバランスに優れる硬化性組成物となることから、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールが好ましい。
【0053】
前記イミダゾール化合物(C)の添加量は、可使用時間と硬化物における耐熱性や機械物性とのバランスに優れる硬化性組成物となることから、前記エポキシ化合物(A)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましい。また、2質量部以下であることが好ましく、1.5質量部以下であることがより好ましい。
【0054】
本発明の硬化性組成物は、前記エポキシ化合物(A)、前記活性水素を有するアミン化合物(B)、及び前記イミダゾール化合物(C)以外のその他の成分を含有していてもよい。、前記その他の成分は、例えば、前記(A)~(C)成分以外の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、無機充填剤、低収縮剤、離型剤、増粘剤、減粘剤、顔料、酸化防止剤、可塑剤、難燃剤、抗菌剤、紫外線安定剤、補強材、有機溶剤等が挙げられる。これらその他の成分は、硬化性組成物の所望の性能や用途に応じて適宜添加され、また、その添加量も任意である。中でも、本発明が奏する効果がより顕著に発現することから、前記硬化性組成物に占める前記エポキシ化合物(A)、前記活性水素を有するアミン化合物(B)、及び前記イミダゾール化合物(C)の合計質量が80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0055】
本発明の硬化性組成物は、すべての配合成分を配合し、混合することにより得ることができる。各成分は一括で配合してもよいし、分割して配合してもよい。また、混合方法は特に限定されず、例えば、押出機、加熱ロール、ニーダー、ローラミキサー、バンバリーミキサー等の混練機を用いることができる。本発明の硬化性組成物は、繊維強化複合材料に用いた際の繊維含浸性に優れることから、25℃での粘度が100mPa・s以上であることが好ましい。また、500mPa・s以下であることが好ましく、300mPa・s以下であることがより好ましい。
【0056】
本発明の硬化性組物は硬化性の樹脂材料として有用であり、その硬化物は耐熱性や機械物性に優れる特徴を有する。その硬化方法は一般的なエポキシ樹脂組成物同様、適当な温度(50~250℃程度)条件下で数分~数時間加熱する方法が挙げられる。また、本願発明の硬化性組成物は強化繊維と合わせて繊維強化複合材料とすることもできる。
【0057】
本願発明の繊維強化複合材料が含有する強化繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、シリコンカーバイド繊維、パルプ、麻、綿、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、ポリイミド、あるいはケブラー、ノーメックス等のアラミド等からなるポリアミド繊維等が挙げられる。中でも、強度に優れ、且つ軽量な成形品が得られることから、炭素繊維が好ましい。当該炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル系、ピッチ系、レーヨン系などの各種のものが使用できる。
【0058】
強化繊維の形態としては、強化繊維フィラメントを収束させた強化繊維トウ、強化繊維トウを一方向に引き揃えた一方向材、製織した織物、短く裁断した強化繊維、短く裁断した強化繊維からなる不織布や紙等が挙げられる。
【0059】
繊維強化複合材料における強化繊維含有率は、所望の成形品物性や用途等に応じて任意に設定できるが、より強度に優れる成形品となることから、40~85質量%の範囲であることが好ましく、50~70質量%の範囲であることがより好ましい。
【0060】
本発明の繊維強化複合材料の成形方法は特に限定されず、オートクレーブ成形、RTM成形、VaRTM成形、プレス成形、シートモールディングコンパウンド成形、シートワインディング成形、フィラメントワインディング成形、ブルトルージョン成形、射出成型など様々な成形法にて成形することができる。中でも、可使用時間が長く、硬化物における耐熱性や機械物性に優れる特徴を生かし、VaRTM成形用途に特に好適に用いることができる。
【0061】
本発明の繊維強化複合材料は、自動車や風車などの一般産業用途、航空宇宙産業用途、スポーツ用途等様々な成形品用途に用いることができる。より具体的には、フロントサブフレーム、リアサブフレーム、フロントピラー、センターピラー、サイドメンバー、クロスメンバー、サイドシル、ルーフレール、プロペラシャフトなどの自動車部品、電線ケーブルのコア部材、海底油田用のパイプ材、印刷機用ロール・パイプ材、ロボットフォーク材、航空機の一次構造材、二次構造材などを挙げることができる。
【実施例0062】
次に、本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。
【0063】
実施例1~5及び比較例1、2
下記表1に示す配合に従って各成分を配合し、均一に撹拌混合して硬化性組成物を得た。
【0064】
なお、実施例及び比較例で使用した成分は以下の通り。
エポキシ化合物(A)
840S:DIC株式会社製「EPICLON 840S」
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ基当量184g/当量
830S:DIC株式会社製「EPICLON 830S」
ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ基当量170g/当量
EX-214:ナガセケムテックス株式会社製「デナコールEX-214」
1,4-ブタンジオール型エポキシ樹脂 エポキシ基当量137g/当量
NC-513:Cardlite社製「NC-513」
下記構造式で表される化合物 エポキシ基当量500g/当量
【0065】
【0066】
活性水素を有するアミン化合物(B)
D-230:三菱化学ファイン株式会社製「ポリエーテルアミンD230」
O,O’-ビス(2-アミノプロピル)ポリプロピレングリコール
分子量230(ポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物(B1))
DETDA:ジエチルトルエンジアミン(芳香族アミン化合物(B2))
TETA:トリエチレンテトラミン
1,3-BAC:1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン
【0067】
イミダゾール化合物
1,2-DMZ:1,2-ジメチルイミダゾール
1MI:1-メチルイミダゾール
2E4MZ:2-エチル-4-メチルイミダゾール
【0068】
硬化性組成物の粘度及びポットライフの測定
実施例1~5及び比較例1、2の硬化性組成物について、下記の要領で粘度及びポットライフの測定を行った。結果を表1に示す。
【0069】
硬化性組成物の初期粘度測定
東機産業株式会社製「TV-22」を用いて25℃でのE型粘度を測定した。
【0070】
ポットライフ(1)の測定
硬化性組成物の粘度が初期粘度の2倍になるまでの時間(分)を測定した。
【0071】
ポットライフ(2)の測定
硬化性組成物の粘度が1000mPa・s以上になるまでの時間(分)を測定した。
【0072】
【0073】
VaRTMのポットライフ(1)の目安は凡そ120分以上であり、これを下回る場合には強化繊維への含浸を設計通りに進行させることが困難となる。その結果、繊維強化樹脂成形品の強度や耐熱性が低下する、成形品表面の平滑性が低下する、成形品内部にボイドが発生する等の不具合が生じやすくなる。
【0074】
硬化物の耐熱性及び機械物性の評価
実施例1~5の硬化性組成物について、下記の要領で硬化物を作成し、耐熱性及び機械物性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0075】
硬化物の耐熱性評価(ガラス転移温度)
硬化性組成物を厚さ2mmの型枠内に流し込み、90℃で5時間加熱して硬化物を得た。ダイヤモンドカッターで硬化物から幅5mm、長さ50mmの試験片を切り出した。次に、粘弾性測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製「DMS6100」)を用いて試験片の両持ち曲げによる動的粘弾性を測定し、tanδが最大となる値の温度をガラス転移温度(Tg)として評価した。なお、動的粘弾性測定の測定条件は、温度条件:室温~260℃、昇温速度:3℃/分、周波数:1Hz、歪振幅:10μmとした。
【0076】
硬化物の機械物性の評価(曲げ強度)
硬化性組成物を厚さ4mmの型枠内に流し込み、90℃で5時間加熱して硬化物を得た。JIS K6911に準拠し、25℃及び40℃条件下での曲げ強度を測定した。下記計算式により環境温度変化時の曲げ強度保持率を算出した。
曲げ強度保持率(%)=(40℃の曲げ強度/25℃の曲げ強度)×100
【0077】