IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

特開2024-1103感放射線性樹脂組成物の製造方法、パターン形成方法、電子デバイスの製造方法
<>
  • 特開-感放射線性樹脂組成物の製造方法、パターン形成方法、電子デバイスの製造方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001103
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】感放射線性樹脂組成物の製造方法、パターン形成方法、電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/14 20060101AFI20231226BHJP
   G03F 7/26 20060101ALI20231226BHJP
   B01D 65/06 20060101ALI20231226BHJP
   B01D 71/56 20060101ALI20231226BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B01D61/14 500
G03F7/26
B01D65/06
B01D71/56
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023171188
(22)【出願日】2023-10-02
(62)【分割の表示】P 2021550593の分割
【原出願日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】P 2019186185
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020149893
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】田中 匠
(72)【発明者】
【氏名】坂内 隆
(72)【発明者】
【氏名】江副 博之
(72)【発明者】
【氏名】岩ヶ谷 彰一郎
(72)【発明者】
【氏名】本山 寛大
(72)【発明者】
【氏名】原田 憲一
(57)【要約】
【課題】本発明は、フィルターろ過された感放射線性樹脂組成物のロット間での性能ばらつきが抑制された、感放射線性樹脂組成物の製造方法、パターン形成方法、及び、電子デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の感放射線性樹脂組成物の製造方法は、第1有機溶剤を含む第1溶液と第1フィルターとを接触させて、第1フィルターを洗浄する工程1と、工程1で洗浄された第1フィルターを用いて感放射線性樹脂組成物をろ過する工程2を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1有機溶剤を含む第1溶液と第1フィルターとを接触させて、前記第1フィルターを洗浄する工程1と、
前記工程1で洗浄された前記第1フィルターを用いて感放射線性樹脂組成物をろ過する工程2を有する、感放射線性樹脂組成物の製造方法であって、
前記工程1において、50kPa以上の圧力下にて、前記第1フィルターを前記第1溶液に浸漬する浸漬処理を実施する、感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記第1フィルターは、通液方向が鉛直方向下方から上方になるように配置されている、請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
第1有機溶剤を含む第1溶液と第1フィルターとを接触させて、前記第1フィルターを洗浄する工程1と、
前記工程1で洗浄された前記第1フィルターを用いて感放射線性樹脂組成物をろ過する工程2を有する、感放射線性樹脂組成物の製造方法であって、
前記第1フィルターは、通液方向が鉛直方向下方から上方になるように配置されている、製造方法。
【請求項4】
50kPa以上の圧力下にて、前記工程1における前記第1フィルターと前記第1溶液との接触を行う、請求項3に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記感放射線性樹脂組成物が、酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、有機溶剤を含み、
前記第1溶液として、前記感放射線性樹脂組成物を用いる、請求項1~4のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記工程1における前記第1フィルターと前記第1溶液との接触時間が1時間以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記第1有機溶剤のSP値が17.0MPa1/2以上25.0MPa1/2未満である、請求項1~6のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記第1フィルターの少なくとも1つが、ポリアミド系フィルターである、請求項1~7のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記第1有機溶剤を含む第1溶液が前記第1フィルターを通液する際の線速度が40L/(hr・m)以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記工程2が、前記第1フィルターを用いて前記感放射線性樹脂組成物を循環ろ過する工程である、請求項1~9のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
前記工程2の前に、第2有機溶剤を含む第2溶液と第2フィルターとを接触させて、前記第2フィルターを洗浄する工程3と、
前記工程3で洗浄された前記第2フィルターを用いて、前記感放射線性樹脂組成物に含まれる構成成分の少なくとも1つの化合物をろ過する工程4と、
前記工程4で得られた前記化合物を用いて、前記感放射線性樹脂組成物を調製する工程5と、を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
前記工程3における前記第2フィルターと前記第2溶液との接触時間が1時間以上である、請求項11に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
前記第2有機溶剤のSP値が17.0MPa1/2以上25.0MPa1/2未満である、請求項11又は12に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】
50kPa以上の圧力下にて、前記工程3における前記第2フィルターと前記第2溶液との接触を行う、請求項11~13のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項15】
前記第2フィルターは、通液方向が鉛直方向下方から上方になるように配置されている、請求項11~14のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項16】
前記第2フィルターの少なくとも1つが、ポリアミド系フィルターである、請求項11~15のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項17】
前記第2有機溶剤を含む第2溶液が前記第2フィルターを通液する際の線速度が40L/(hr・m)以下である、請求項11~16のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項18】
前記工程4が、前記第2フィルターを用いて前記感放射線性樹脂組成物に含まれる構成成分の少なくとも1つの化合物を循環ろ過する工程である、請求項11~17のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項19】
前記感放射線性樹脂組成物の固形分濃度が10質量%以上である、請求項1~18のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載の製造方法より製造される感放射線性樹脂組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜を露光する工程と、
現像液を用いて、露光された前記レジスト膜を現像し、パターンを形成する工程と、を有する、パターン形成方法。
【請求項21】
請求項20に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性樹脂組成物の製造方法、パターン形成方法、及び、電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit、集積回路)及びLSI(Large Scale Integrated Circuit、大規模集積回路)等の半導体デバイスの製造プロセスにおいては、感放射線性樹脂組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。
リソグラフィーの方法としては、感放射線性樹脂組成物によりレジスト膜を形成した後、得られた膜を露光して、その後、現像する方法が挙げられる。
【0003】
また、特許文献1には、感放射線性樹脂組成物を製造する際にフィルターを用いたろ過処理を実施する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-178566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、フィルターを通過した感放射線性樹脂組成物は、通過順に容器に小分けにして回収され、出荷される。その際、小分けされた感放射線性樹脂組成物は、それぞれ同じ性能を示すことが求められる。
本発明者らは、特許文献1に記載の方法に従って感放射線性樹脂組成物をフィルターでろ過して、ろ過した順に小分けした感放射線性樹脂組成物をそれぞれ用いてパターンを形成したところ、パターン形状(例えば、スペース線幅、又は、ホールのサイズ)にばらつきが生じることが知見された。以下、上記のように、フィルターろ過が施されて、回収順に小分けされた感放射線性樹脂組成物間でパターン形状のばらつきが生じることを、「フィルターろ過された感放射線性樹脂組成物のロット間で性能ばらつきが生じる」という。
【0006】
本発明は、フィルターろ過された感放射線性樹脂組成物のロット間での性能ばらつきが抑制された、感放射線性樹脂組成物の製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、パターン形成方法、及び、電子デバイスの製造方法を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
(1) 第1有機溶剤を含む第1溶液と第1フィルターとを接触させて、第1フィルターを洗浄する工程1と、
工程1で洗浄された第1フィルターを用いて感放射線性樹脂組成物をろ過する工程2を有する、感放射線性樹脂組成物の製造方法。
(2) 感放射線性樹脂組成物が、酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、有機溶剤を含み、
第1溶液として、感放射線性樹脂組成物を用いる、(1)に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
(3) 工程1における第1フィルターと第1溶液との接触時間が1時間以上である、(1)又は(2)に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
(4) 第1有機溶剤のSP値が17.0MPa1/2以上25.0MPa1/2未満である、(1)~(3)のいずれかに記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
(5) 50kPa以上の圧力下にて、工程1における第1フィルターと第1溶液との接触を行う、(1)~(4)のいずれかに記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
(6) 第1フィルターは、通液方向が鉛直方向下方から上方になるように配置されている、(1)~(5)のいずれかに記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
(7) 第1フィルターの少なくとも1つが、ポリアミド系フィルターである、(1)~(6)のいずれかに記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
(8) 第1有機溶剤を含む第1溶液が第1フィルターを通液する際の線速度が40L/(hr・m)以下である、(1)~(7)のいずれかに記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
(9) 工程2が、第1フィルターを用いて感放射線性樹脂組成物を循環ろ過する工程である、(1)~(8)のいずれかに記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
(10) 工程2の前に、第2有機溶剤を含む第2溶液と第2フィルターとを接触させて、第2フィルターを洗浄する工程3と、
工程3で洗浄された第2フィルターを用いて、感放射線性樹脂組成物に含まれる構成成分の少なくとも1つの化合物をろ過する工程4と、
工程4で得られた化合物を用いて、感放射線性樹脂組成物を調製する工程5と、を有する、(1)~(9)のいずれかに記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
(11) 工程3における第2フィルターと第2溶液との接触時間が1時間以上である、(10)に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
(12) 第2有機溶剤のSP値が17.0MPa1/2以上25.0MPa1/2未満である、(10)又は(11)に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
(13) 50kPa以上の圧力下にて、工程3における第2フィルターと第2溶液との接触を行う、(10)~(12)のいずれかに記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
(14) 第2フィルターは、通液方向が鉛直方向下方から上方になるように配置されている、(10)~(13)のいずれかに記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
(15) 第2フィルターの少なくとも1つが、ポリアミド系フィルターである、(10)~(14)のいずれかに記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
(16) 第2有機溶剤を含む第2溶液が第2フィルターを通液する際の線速度が40L/(hr・m)以下である、(10)~(15)のいずれかに記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
(17) 工程4が、第2フィルターを用いて感放射線性樹脂組成物に含まれる構成成分の少なくとも1つの化合物を循環ろ過する工程である、(10)~(16)のいずれかに記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
(18) 感放射線性樹脂組成物の固形分濃度が10質量%以上である、(1)~(17)のいずれかに記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
(19) (1)~(18)のいずれかに記載の製造方法より製造される感放射線性樹脂組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程と、
レジスト膜を露光する工程と、
現像液を用いて、露光されたレジスト膜を現像し、パターンを形成する工程と、を有する、パターン形成方法。
(20) (19)に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フィルターろ過された感放射線性樹脂組成物のロット間での性能ばらつきが抑制された、感放射線性樹脂組成物の製造方法を提供できる。
また、本発明によれば、パターン形成方法、及び、電子デバイスの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の感放射線性樹脂組成物の製造方法で用いられる製造装置の一実施形態の概略図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態の一例を説明する。
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換又は無置換を記していない表記は、置換基を有していない基と共に置換基を有する基をも含む。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも含む。
【0012】
本明細書において表記される二価の基の結合方向は、特に断らない限り制限されない。例えば、「L-M-N」なる一般式で表される化合物中の、Mが-OCO-C(CN)=CH-である場合、L側に結合している位置を*1、N側に結合している位置を*2とすると、Mは、*1-OCO-C(CN)=CH-*2であってもよく、*1-CH=C(CN)-COO-*2であってもよい。
本明細書における、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを含む総称であり、「アクリル及びメタクリルの少なくとも1種」を意味する。同様に「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸を含む総称であり、「アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種」を意味する。
【0013】
本明細書において、樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分散度(分子量分布とも記載する)(Mw/Mn)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)装置(東ソー製HLC-8120GPC)によるGPC測定(溶剤:テトラヒドロフラン、流量(サンプル注入量):10μL、カラム:東ソー社製TSK gel Multipore HXL-M、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/分、検出器:示差屈折率検出器(Refractive Index Detector))によるポリスチレン換算値として定義される。
【0014】
本明細書における「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV:Extreme Ultra Violet)、X線、及び電子線(EB:Electron Beam)等を意味する。本明細書における「光」とは、放射線を意味する。
【0015】
本明細書において酸解離定数(pKa)とは、水溶液中でのpKaを表し、具体的には、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求められる値である。本明細書中に記載したpKaの値は、全て、このソフトウェアパッケージを用いて計算により求めた値を示す。
【0016】
ソフトウェアパッケージ1: Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994-2007 ACD/Labs)。
【0017】
一方で、pKaは、分子軌道計算法によっても求められる。この具体的な方法としては、熱力学サイクルに基づいて、水溶液中におけるH解離自由エネルギーを計算することで算出する手法が挙げられる。H解離自由エネルギーの計算方法については、例えばDFT(密度汎関数法)により計算することができるが、他にも様々な手法が文献等で報告されており、これに制限されるものではない。なお、DFTを実施できるソフトウェアは複数存在するが、例えば、Gaussian16が挙げられる。
【0018】
本明細書中のpKaとは、上述した通り、ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を計算により求められる値を指すが、この手法によりpKaが算出できない場合には、DFT(密度汎関数法)に基づいてGaussian16により得られる値を採用するものとする。
また、本明細書中のpKaは、上述した通り「水溶液中でのpKa」を指すが、水溶液中でのpKaが算出できない場合には、「ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液中でのpKa」を採用するものとする。
【0019】
本発明の感放射線性樹脂組成物(以下、単に「本発明の組成物」又は「組成物」とも記載する。)の製造方法の特徴点の一つとしては、フィルターを使用する前に有機溶剤と接触させて洗浄している点が挙げられる。
本発明者らの検討によれば、従来技術においてフィルターろ過された感放射線性樹脂組成物のロット間で性能ばらつきが生じる理由として、フィルターに不純物が含まれているため、フィルターろ過の初期では不純物の量が多い感放射線性樹脂組成物が得られるのに対して、フィルター中の不純物の量がろ過時間と共に減少していくため、フィルターろ過の後期では不純物の量が少ない感放射線性樹脂組成物が得られる。そのため、フィルターろ過の順に小分けされた感放射線性樹脂組成物間で不純物の量が異なり、結果として、パターン形成の性能差が生じていたと推測される。それに対して、有機溶剤とフィルターとを接触させる洗浄処理を実施することにより、フィルター中の不純物を効率的に除去でき、結果として所望の効果が得られることを知見している。
【0020】
<第1実施形態>
本発明の製造方法の第1実施形態は、以下の工程1~工程2をこの順に有する。
工程1:第1有機溶剤を含む第1溶液と第1フィルターとを接触させて、第1フィルターを洗浄する工程
工程2:工程1で洗浄された第1フィルターを用いて感放射線性樹脂組成物をろ過する工程
以下、各工程の手順について詳述する。
なお、本発明の製造方法は、クリーンルーム内で実施することが好ましい。クリーン度としては、国際統一規格ISO 14644-1におけるクラス6以下が好ましい。
なお、工程2にて用いられる感放射線性樹脂組成物の固形分濃度が10質量%以上の場合、本発明の効果が顕著に発揮される。
【0021】
(工程1)
工程1は、第1有機溶剤を含む第1溶液と第1フィルターとを接触させて、第1フィルターを洗浄する工程である。
以下では、まず、使用される材料・部材について詳述し、その後、工程の手順について詳述する。
【0022】
[第1溶液]
第1溶液は、第1有機溶剤を含む。
第1有機溶剤の種類は特に制限されず、例えば、アミド系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤(置換基を有するグリコールエーテル系溶剤を含む)、ケトン系溶剤、脂環式エーテル系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族エーテル系溶剤、及び、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
なかでも、フィルターろ過された感放射線性樹脂組成物のロット間での性能ばらつきがより抑制される点(以下、単に「本発明の効果がより優れる点」ともいう。)で、SP値(溶解度パラメータ)が17.0MPa1/2以上25.0MPa1/2未満である有機溶剤が好ましい。
本発明のSP値は、「Properties of Polymers、第二番、1976出版」に記載のFedors法を用いて計算されたものである。用いた計算式及び各置換基のパラメーターを以下の表1に示す。
SP値(Fedors法)=[(各置換基の凝集エネルギーの和)/(各置換基の体積の和)]0.5
【0023】
【表1】
【0024】
以下、SP値が17.0MPa1/2以上25.0MPa1/2未満である有機溶剤の具体例を表2~6に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
【表4】
【0028】
【表5】
【0029】
【表6】
【0030】
第1溶液中における第1有機溶剤の含有量は特に制限されないが、フィルターろ過された感放射線性樹脂組成物のロット間での性能ばらつきがより抑制される点(以下、単に「本発明の効果がより優れる点」ともいう。)で、第1溶液全質量に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。上限は、100質量%が挙げられる。
第1溶液は、1種の第1有機溶剤のみを含んでいてもよいし、2種以上の第1有機溶剤を含んでいてもよい。
【0031】
なお、使用される第1有機溶剤は、金属不純物等の不純物を含まないことが好ましい。そのため、第1有機溶剤は、使用する前に、フィルターでろ過されて不純物が除去されていることが好ましい。
使用されるフィルターの種類は特に制限されず、後述する第1フィルターで例示するフィルターが挙げられる。
第1有機溶剤中における金属不純物の含有量としては、1質量ppm以下が好ましく、10質量ppb以下がより好ましく、100質量ppt以下が更に好ましく、10質量ppt以下が特に好ましく、1質量ppt以下が最も好ましい。ここで、金属不純物としては、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mn、Mg、Al、Li、Cr、Ni、Sn、Ag、As、Au、Ba、Cd、Co、Mo、Zr、Pb、Ti、V、W、及び、Zn等が挙げられる。
【0032】
なお、第1有機溶剤として、後述する工程2で使用される感放射線性樹脂組成物に含まれる有機溶剤を用いることが好ましい。
第1溶液と第1フィルターとを接触させて洗浄する際には、接触後に第1フィルター内に第1溶液が残存する場合がある。そのため、例えば、第1溶液が工程2で使用される感放射線性樹脂組成物には含まれない有機溶剤のみからなる場合、この第1溶液と接触した第1フィルターを用いて感放射線性樹脂組成物をろ過する場合、第1フィルターを通過した感放射線性樹脂組成物に第1フィルターに残存していた第1溶液が一部混入して、使用を予定していない有機溶剤が感放射線性樹脂組成物に混入する可能性がある。
それに対して、第1有機溶剤として、後述する工程2で使用される感放射線性樹脂組成物に含まれる有機溶剤を用いた場合、第1フィルター中に第1溶液が残存していたとしても、感放射線性樹脂組成物には使用を予定している有機溶剤のみが含まれることになり、成分組成に影響を与えないため好ましい。
【0033】
また、第1溶液は、第1有機溶剤以外の他の成分が含まれていてもよい。
例えば、第1溶液として、後述する工程2で使用される感放射線性樹脂組成物を用いてもよい。より具体的には、感放射線性樹脂組成物は、酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、有機溶剤を含むことが好ましく、有機溶剤を含む感放射線性樹脂組成物を第1溶液として用いることができる。
第1溶液と第1フィルターとを接触させて洗浄する際には、接触後に第1フィルター内に第1溶液が残存する場合がある。そのため、例えば、第1溶液が第1有機溶剤のみからなる場合、この第1溶液と接触した第1フィルターを用いて感放射線性樹脂組成物をろ過する場合、第1フィルターを通過した感放射線性樹脂組成物に第1フィルターに残存していた第1溶液が一部混入して、固形分濃度が変化する場合がある。
それに対して、第1溶液として、工程2で使用される感放射線性樹脂組成物を用いた場合、第1フィルター中に感放射線性樹脂組成物が残存していたとしても、第1フィルターを通過した感放射線性樹脂組成物の成分組成に対して影響を与えないため好ましい。
従って、第1溶液の組成は、工程2で使用される感放射線性樹脂組成物の組成と同じであることが好ましい。
感放射線性樹脂組成物の構成成分である、酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、有機溶剤等については、後段で詳述する。
【0034】
[第1フィルター]
使用される第1フィルターの種類は特に制限されず、公知のフィルターが用いられる。
第1フィルターの孔径(ポアサイズ)としては、0.50μm以下が好ましく、0.30μmがより好ましい。下限は特に制限されないが、0.001μm以上の場合が多い。
第1フィルターの材質としては、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、ポリビニリデンフルオライド、及び、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー等のフッ素樹脂、ポリプロピレン、及び、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ナイロン6、及び、ナイロン66等のポリアミド樹脂、並びに、ポリイミド樹脂(ポリイミドフィルターとしては、例えば、特開2017-064711号公報、特開2017-064712号公報に記載されるポリイミドフィルターが挙げられる。)が好ましい。
なかでも、第1フィルターとしては、ポリアミド系フィルター(ポリアミド樹脂で構成されるフィルター)が好ましい。
【0035】
[工程1の手順]
第1フィルターと第1溶液との接触時間は特に制限されないが、本発明効果がより優れる点で、1時間以上が好ましく、2時間以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、感光性樹脂組成物を製造する設備にて本工程を行う場合は設備の占有時間を考え、15時間以内が好ましい。
【0036】
第1溶液と第1フィルターとの接触の方法としては、第1溶液中に第1フィルターを浸漬する方法であってもよいし、第1溶液を第1フィルターに通液させながら接触させる方法であってもよい。第1溶液中に第1フィルターを浸漬する方法の場合には、上述した接触時間は浸漬時間に該当し、第1溶液を第1フィルターに通液させる方法の場合には、上述した接触時間は通液時間に該当する。
なお、本発明の効果がより優れる点で、第1溶液中にフィルターを浸漬して、第1フィルターを洗浄する処理が好ましい。
【0037】
第1フィルターは、通液方向が鉛直方向下方から上方になるように配置されていることが好ましい。つまり、第1フィルターに第1溶液を通液させる際には、鉛直方向下方から上方に向かって第1溶液が通液するように、第1フィルターを配置することが好ましい。上記配置であれば、第1フィルターに含まれる気泡が効率的に除去できる。
【0038】
第1溶液と第1フィルターとの接触は、常圧下にて実施されてもよいし、加圧下にて実施されてもよい。
加圧の条件としては、50kPa以上が好ましく、100kPa以上がより好ましく、200kPaが更に好ましい。上限は特に制限されないが、使用するフィルターの最大許容差圧による。
なお、加圧下にて接触を行う方法としては、後述するように、感放射線性樹脂組成物の製造装置内に第1フィルターを配置して、第1フィルターよりも下流側である2次側のバルブを閉めて、第1フィルターよりも上流側である1次側から加圧する方法が挙げられる。
なお、第1フィルターよりも上流側とは、第1フィルターに対して被精製物を供給する側を意味し、第1フィルターよりも下流側とは、被精製物が第1フィルターを通過した側を意味する。
上記のように、本明細書では、上流側とは流入部側を意味し、下流側とはその反対側を意味する。
【0039】
また、上記接触処理の後、必要に応じて、第1溶液を第1フィルターに所定量通液させてもよい。第1溶液の通液量は、第1フィルター当たり、5kg以上が好ましく、10kg以上がより好ましく、15kg以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、生産性の点から、100kg以下が好ましい。
【0040】
第1溶液を第1フィルターに通液させる際の線速度(第1溶液の線速度)は特に制限されないが、40L/(hr・m)以下が好ましく、25L/(hr・m)以下がより好ましく、10L/(hr・m)以下が更に好ましい。
上記線速度は、第1溶液が通液する際の流量を市販の流量計で測定し、得られた流量を第1フィルターの膜面積で除して得られる。
【0041】
上述した工程1は、感放射線性樹脂組成物の製造装置内で実施してもよいし、接触用の別の設備内で実施してもよい。
以下、感放射線性樹脂組成物の製造装置を用いた形態について詳述する。
図1において、感放射線性樹脂組成物の製造装置の一実施形態の概略図を表す。
製造装置100は、撹拌槽10と、撹拌槽10内に回転可能に取り付けられた撹拌軸12と、撹拌軸12に取り付けられた撹拌翼14と、撹拌槽10の底部と一端が連結し、他端が撹拌槽10の上部に連結している循環配管16と、循環配管16の途中に配置された第1フィルター18A及び第1フィルター18Bと、循環配管16と連結した排出配管20と、排出配管20の端部に配置された排出ノズル22とを有する。
なお、図1には示さないが、第1フィルター18Aと第1フィルター18Bとの間、及び、第1フィルター18Bの下流側には、配管内の溶液の流れを制御するためのバルブ、及び、配管内の溶液を排出できる排出口が設けられている。
また、撹拌槽10と第1フィルター18Aとの間には、図示しない、バルブが配置されている。
また、排出配管20上には、図示しない、バルブが配置されている。
また、製造装置100においては、循環配管16とは別に、第1フィルター18Aを通液した溶液を、撹拌槽10と第1フィルター18Aとの間の位置に戻すことができる循環配管を有する。また、製造装置100においては、循環配管16とは別に、第1フィルター18Bを通液した溶液を、撹拌槽10と第1フィルター18Aとの間の位置、又は、第1フィルター18Aと第1フィルター18Bとの間の位置に戻すことができる循環配管(以下、「循環配管X」ともいう。)を有する。
なお、製造装置100は循環配管Xを有するが、製造装置はその態様には限定されず、上記循環配管Xを有していなくともよい。
【0042】
撹拌槽10としては、感放射線性樹脂組成物に含まれる、酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、溶剤等を収容できる撹拌槽であれば特に制限されず、公知の撹拌槽が挙げられる。
撹拌槽10の底部の形状は特に制限されず、皿形鏡板形状、半楕円鏡板形状、平鏡板形状、及び、円錐鏡板形状が挙げられ、皿型鏡板形状、又は、半楕円鏡板形状が好ましい。
撹拌槽10内には、撹拌効率を高めるために、邪魔板を設置してもよい。
邪魔板の枚数は特に制限されず、2~8枚が好ましい。
邪魔板の幅は特に制限されず、撹拌槽の径の1/8~1/2が好ましい。
撹拌槽の高さ方向における邪魔板の長さは特に制限されないが、撹拌槽の底部から投入される成分の液面までの高さの1/2以上が好ましく、2/3以上がより好ましく、3/4以上が更に好ましい。
【0043】
撹拌軸12には、図示しない駆動源(例えばモータ等)が取り付けられていることが好ましい。駆動源により撹拌軸12が回転することで、撹拌翼14が回転し、撹拌槽10内に投入された各成分が撹拌される。
撹拌翼14の形状は特に制限されないが、例えば、パドル翼、プロペラ翼、及び、タービン翼が挙げられる。
なお、撹拌槽10は、各種材料を撹拌槽内に投入するための材料投入口を有していてもよい。
【0044】
製造装置100には、第1フィルター18A及び第1フィルター18Bの2つの第1フィルターが配置されている。
製造装置100において、第1フィルター18A及び第1フィルター18Bの洗浄を実施する方法としては、以下の方法が挙げられる。まず、第1フィルター18Bの下流側のバルブを閉めて、第1フィルター18A及び第1フィルター18Bが第1溶液に浸漬するように、撹拌槽10側から第1溶液を供給する。その後、所定時間浸漬して、バルブを開けて、第1溶液を第1フィルター18Bの下流側に配置されている図示しない排出口から排出する。
上記では、第1フィルター18A及び第1フィルター18Bともに第1溶液に浸漬する形態について述べたが、この形態に限定されず、フィルター毎に浸漬処理を実施してもよい。例えば、第1フィルター18Aと第1フィルター18Bとの間のバルブを閉めて、撹拌槽側から第1溶液を供給し、第1フィルター18Aを第1溶液に浸漬させる。浸漬処理後、バルブを開けて、第1フィルター18Aと第1フィルター18Bとの間に配置される図示しない排出口から浸漬処理後の第1溶液を排出する。次に、第1フィルター18Bの下流側にあるバルブを閉めて、撹拌槽側から第1溶液を供給し、第1フィルター18Bを第1溶液に浸漬させる。浸漬処理後、バルブを開けて、第1フィルター18Bの下流側に配置される図示しない排出口から浸漬処理後の第1溶液を排出する。
【0045】
また、第1溶液として、感放射線性樹脂組成物を用いる場合には、撹拌槽10にて感放射線性樹脂組成物を製造した後、第1フィルター18Bの下流側のバルブを閉めて、撹拌槽10と第1フィルター18Aとの間に配置される図示しないバルブを開けて、撹拌槽10中の感放射線性樹脂組成物の一部を第1フィルター18A側に供給することにより、第1フィルター18Aを感放射線性樹脂組成物で浸漬させることができる。浸漬処理後の感放射線性樹脂組成物は製造装置100より排出して、その後、撹拌槽10に残存している感放射線性樹脂組成物を第1フィルター18A側に供給して、後述する工程2を実施することができる。
上記のように、第1溶液は浸漬処理後には廃棄され、後述する工程2では用いられない。例えば、第1溶液として感放射線性樹脂組成物を用いた場合、工程1で使用された感放射線性樹脂組成物は、工程2では使用されない。
【0046】
なお、上記図1においては、2つの第1フィルターを用いる形態について述べたが、第1フィルターの数は2つに限定されず、1つであっても、3つ以上であってもよい。
3つ以上の第1フィルターを用いる場合、製造装置においては、各第1フィルターの下流側にバルブ及び排出口が配置されることが好ましい。
また、上述したように、3つ以上の第1フィルターを用いる場合であっても、第1フィルターの浸漬処理は、第1フィルター毎に行ってもよいし、一括して行ってもよい。
【0047】
上記では、後述する工程2で使用される第1フィルターを全て洗浄する形態について述べたが、工程2で使用される少なくとも1つの第1フィルターに対して工程1を実施すればよい。
【0048】
また、上記では、製造装置を用いて第1フィルターの浸漬処理を実施する場合について述べたが、この形態には限定されず、第1フィルターに第1溶液を通液させながら第1溶液と第1フィルターとの接触を実施してもよい。
【0049】
更に、第1溶液と第1フィルターとを接触させる際には、第1溶液を循環させながら第1溶液と第1フィルターとの接触処理を実施してもよい。つまり、第1フィルターを通過した第1溶液を第1フィルターの上流側に戻して、再度、第1フィルターに通液させる循環処理を実施してもよい。
【0050】
また、工程1で第1溶液と接触して洗浄された第1フィルターは、一旦、容器等の内部に保管されてもよい。また、図1のような感放射線性樹脂組成物の製造装置を用いて工程1を実施した場合には、そのまま第1フィルターを配置したまま、後述する工程2を実施してもよい。
【0051】
(工程2)
工程2は、工程1で洗浄された第1フィルターを用いて感放射線性樹脂組成物をろ過する工程である。本工程を実施することにより、感放射線性樹脂組成物中の不純物を除去できる。
【0052】
工程2で用いられる感放射線性樹脂組成物に含まれる構成成分については、後段で詳述するが、代表的には、感放射線性樹脂組成物は、酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、有機溶剤を含むことが好ましい。
【0053】
ろ過の方法は特に制限されず、例えば、図1に示す製造装置100においては、撹拌槽10内に製造された感放射線性樹脂組成物を循環配管16に送液し、第1フィルター18A及び第1フィルター18Bでろ過する方法が挙げられる。なお、撹拌槽10から循環配管16に感放射線性樹脂組成物を送液する際には、図示しないバルブを開放して、感放射線性樹脂組成物を循環配管16内に送液することが好ましい。
【0054】
撹拌槽10から循環配管16に感放射線性樹脂組成物を送液する方法は特に制限されず、重力を利用した送液方法、感放射線性樹脂組成物の液面側から圧力を加える方法、循環配管16側を負圧にする方法、及び、これらを2つ以上組み合わせた方法が挙げられる。
感放射線性樹脂組成物の液面側から圧力を加える方法の場合、送液で生じる流液圧を利用する方法、及び、ガスを加圧する方法が挙げられる。
流液圧は、例えば、ポンプ(送液ポンプ、及び、循環ポンプ等)等により発生させることが好ましい。ポンプとしては、ロータリーポンプ、ダイヤフラムポンプ、定量ポンプ、ケミカルポンプ、プランジャーポンプ、ベローズポンプ、ギアポンプ、真空ポンプ、エアーポンプ、及び、液体ポンプが挙げられ、そのほかにも適宜、市販のポンプが挙げられる。ポンプが配置される位置は特に制限されない。
加圧に用いるガスとしては、感放射線性樹脂組成物に対して不活性又は非反応性のガスが好ましく、具体的には、窒素、並びに、ヘリウム及びアルゴン等の希ガス等が挙げられる。なお、循環配管16側は減圧せず、大気圧であることが好ましい。
【0055】
循環配管16側を負圧にする方法としては、ポンプによる減圧が好ましく、真空にまで減圧することがより好ましい。
【0056】
第1フィルターにかかる差圧(上流側と下流側との圧力差)は200kPa以下が好ましく、100kPa以下がより好ましい。
また、第1フィルターでろ過する際、ろ過中における差圧の変化が少ないことが好ましい。第1フィルターに通液を開始した時点から、ろ過される溶液の90質量%の通液が終了する時点までの、ろ過前後の差圧を、通液を開始した時点のろ過前後の差圧の±50kPa以内に維持することが好ましく、±20kPa以内に維持することがより好ましい。
第1フィルターでろ過する際、線速度は3~150L/(hr・m)が好ましく、5~120L/(hr・m)がより好ましく、10~100L/(hr・m)が更に好ましい。
【0057】
第1フィルターで感放射線性樹脂組成物をろ過する際には、循環ろ過を実施してもよい。つまり、第1フィルターを通過した感放射線性樹脂組成物を第1フィルターの上流側に戻して、再度、第1フィルターを通過させてもよい。
また、循環ろ過を実施せずに、第1フィルターを1回だけ通液させてもよい。
【0058】
工程2においては、上述したように、第1フィルターを1つのみ用いてもよいし、第1フィルターを2つ以上用いてもよい。
【0059】
<第2実施形態>
本発明の感放射線性樹脂組成物の製造方法の第2実施形態としては、以下の工程3~5、及び、工程1~2を有する形態が挙げられる。
工程3:工程2の前に、第2有機溶剤を含む第2溶液と第2フィルターとを接触させて、第2フィルターを洗浄する工程3
工程4:工程3で洗浄された第2フィルターを用いて、感放射線性樹脂組成物に含まれる構成成分の少なくとも1つの化合物をろ過する工程
工程5:工程4で得られた化合物を用いて、感放射線性樹脂組成物を調製する工程
工程1:第1有機溶剤を含む第1溶液と第1フィルターとを接触させて、第1フィルターを洗浄する工程
工程2:工程1で洗浄された第1フィルターを用いて感放射線性樹脂組成物をろ過する工程
工程1及び2の手順は上述した通りであり、説明を省略する。
工程3~5は、通常、工程1~2の前に実施されることが好ましい。工程3~5は、この順に実施される。
上記形態においては、感放射線性樹脂組成物を調製する前に、感放射線性樹脂組成物の原料を第2フィルターでろ過して、原料中の不純物を除去している。特に、上記形態においては、原料のろ過に使用される第2フィルターを、上述した第1実施形態と同様に、有機溶剤を含む溶液と接触させて洗浄することにより、感放射線性樹脂組成物中に含まれる不純物をより低減させている。
以下、工程3~5について詳述する。
【0060】
(工程3)
工程2の前に、第2有機溶剤を含む第2溶液と第2フィルターとを接触させて、第2フィルターを洗浄する工程である。本工程は、工程2の前に実施されればよく、工程1の前であっても後であってもよい。
工程3で用いられる第2有機溶剤の好適形態は、工程1で用いられる第1有機溶剤の好適形態と同じである。つまり、第2有機溶剤としては、SP値が17.0MPa1/2以上25.0MPa1/2未満の有機溶剤が好ましい。
【0061】
第2溶液中における第2有機溶剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、第2溶液全質量に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。上限は、100質量%が挙げられる。
第2溶液は、1種の第2有機溶剤のみを含んでいてもよいし、2種以上の第2有機溶剤を含んでいてもよい。
【0062】
なお、第2有機溶剤として、後述する工程4で調製される感放射線性樹脂組成物に含まれる有機溶剤を用いることが好ましい。
第2溶液と第2フィルターとを接触させて洗浄する際には、洗浄後に第2フィルター内に第2溶液が残存する場合がある。そのため、例えば、第2溶液が工程4で調製される感放射線性樹脂組成物には含まれない有機溶剤のみからなる場合、この第2溶液と接触した第2フィルターを用いて感放射線性樹脂組成物に含まれる構成成分の少なくとも1つの化合物をろ過する場合、第2フィルターを通過した感放射線性樹脂組成物に含まれる構成成分の少なくとも1つの化合物に第2フィルターに残存していた第2溶液が一部混入して、使用を予定していない有機溶剤が感放射線性樹脂組成物に混入する可能性がある。
それに対して、第2有機溶剤として、後述する工程4で調製される感放射線性樹脂組成物に含まれる有機溶剤を用いた場合、第2フィルター中に第2溶液が残存していたとしても、感放射線性樹脂組成物には使用を予定している有機溶剤のみが含まれることになり、成分組成に影響を与えないため好ましい。
【0063】
第2溶液は、第2有機溶剤以外の他の成分が含まれていてもよい。
【0064】
第2フィルターの定義及び好適形態は、第1フィルターの定義及び好適形態と同じである。
【0065】
[工程3の手順]
第2溶液と第2フィルターとの接触時間は特に制限されないが、本発明効果がより優れる点で、1時間以上が好ましく、2時間以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、生産性の点から、15時間以内が好ましい。
【0066】
第2溶液と第2フィルターとの接触の方法としては、第2溶液中に第2フィルターを浸漬する方法であってもよいし、第2溶液を第2フィルターに通液させながら接触させる方法であってもよい。第2溶液中に第2フィルターを浸漬する方法の場合には、上述した接触時間は浸漬時間に該当し、第2溶液を第2フィルターに通液させる方法の場合には、上述した接触時間は通液時間に該当する。
なお、本発明の効果がより優れる点で、第2溶液中にフィルターを浸漬して、第2フィルターを洗浄する処理が好ましい。
【0067】
第2フィルターは、通液方向が鉛直方向下方から上方になるように配置されていることが好ましい。つまり、第2フィルターに第2溶液を通液させる際には、鉛直方向下方から上方に向かって第2溶液が通液するように、第2フィルターを配置することが好ましい。上記配置であれば、第2フィルターに含まれる気泡が効率的に除去できる。
【0068】
第2溶液と第2フィルターとの接触は、常圧下にて実施されてもよいし、加圧下にて実施されてもよい。
加圧の条件としては、50kPa以上が好ましく、100kPa以上がより好ましく、200kPaが更に好ましい。上限は特に制限されないが、使用するフィルターの最大許容差圧による。
【0069】
更に、第2溶液と第2フィルターとを接触させる際には、第2溶液を循環させながら第2溶液と第2フィルターとの接触処理を実施してもよい。つまり、第2フィルターを通過した第2溶液を第2フィルターの上流側に戻して、再度、第2フィルターに通液させる循環処理を実施してもよい。
【0070】
また、上記接触処理の後、必要に応じて、第2溶液を第2フィルターに所定量通液させてもよい。第2溶液の通液量は、第1フィルター当たり、5kg以上が好ましく、10kg以上がより好ましく、15kg以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、生産性の点から、100kg以下が好ましい。
【0071】
第2溶液を第2フィルターに通液させる際の線速度(第2溶液の線速度)は特に制限されないが、40L/(hr・m)以下が好ましく、25L/(hr・m)以下がより好ましく、10L/(hr・m)以下が更に好ましい。
上記線速度は、第2溶液が通液する際の流量を市販の流量計で測定し、得られた流量を第2フィルターの膜面積で除して得られる。
【0072】
(工程4)
工程4は、工程3で洗浄された第2フィルターを用いて、感放射線性樹脂組成物に含まれる構成成分の少なくとも1つの化合物をろ過する工程である。
【0073】
工程4で用いられる感放射線性樹脂組成物に含まれる構成成分については、後段で詳述するが、例えば、酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、有機溶剤が挙げられる。
なお、ろ過の対象物が固形分である場合、必要に応じて、対象物と有機溶剤とを混合して溶液として、ろ過処理を施してもよい。
使用される有機溶剤の種類は特に制限されないが、後述する工程5にて調製される感放射線性樹脂組成物に含まれる有機溶剤が好ましい。
【0074】
ろ過の方法は特に制限されず、公知の方法が挙げられる。
第2フィルターにかかる差圧(上流側と下流側との圧力差)は200kPa以下が好ましく、100kPa以下がより好ましい。
また、第2フィルターでろ過する際には、ろ過中における差圧の変化が少ないことが好ましい。第2フィルターに通液を開始した時点から、ろ過される溶液の90質量%の通液が終了する時点までの、ろ過前後の差圧を、通液を開始した時点のろ過前後の差圧の±50kPa以内に維持することが好ましく、±20kPa以内に維持することがより好ましい。
第2フィルターでろ過する際には、線速度は3~150L/(hr・m)が好ましく、5~120L/(hr・m)がより好ましく、10~100L/(hr・m)が更に好ましい。
【0075】
第2フィルターで上記化合物をろ過する際には、循環ろ過を実施してもよい。つまり、第2フィルターを通過した化合物を第2フィルターの上流側に戻して、再度、第2フィルターを通過させてもよい。
工程4においては、第2フィルターを1つのみ用いてもよいし、第2フィルターを2つ以上用いてもよい。
【0076】
工程4は、感放射線性樹脂組成物に含まれる構成成分の少なくとも1つの化合物に対して実施すればよく、感放射線性樹脂組成物に含まれる全ての構成成分に対して実施してもよい。
【0077】
(工程5)
工程5は、工程4で得られた化合物を用いて、感放射線性樹脂組成物を調製する工程である。
工程4でフィルターろ過された化合物を用いて、感放射線性樹脂組成物を調製する方法は特に制限されず、公知の方法が挙げられる。例えば、工程4で得られた化合物、及び、その他必要な成分を混合して、感放射線性樹脂組成物を調製する方法が挙げられる。
【0078】
<パターン形成方法>
上述した製造方法によって製造された感放射線性樹脂組成物は、パターン形成に用いられる。
より具体的には、本発明の組成物を用いたパターン形成方法の手順は特に制限されないが、以下の工程を有することが好ましい。
工程A:本発明の組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程
工程B:レジスト膜を露光する工程
工程C:現像液を用いて、露光されたレジスト膜を現像し、パターンを形成する工程
以下、上記それぞれの工程の手順について詳述する。
【0079】
(工程A:レジスト膜形成工程)
工程Aは、本発明の組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程である。
本発明の組成物については、上述のとおりである。
【0080】
組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する方法としては、組成物を基板上に塗布する方法が挙げられる。
組成物は、集積回路素子の製造に使用されるような基板(例:シリコン、二酸化シリコン被覆)上に、スピナー又はコーター等の適当な塗布方法により塗布できる。塗布方法としては、スピナーを用いたスピン塗布が好ましい。
組成物の塗布後、基板を乾燥し、レジスト膜を形成してもよい。なお、必要により、レジスト膜の下層に、各種下地膜(無機膜、有機膜、又は、反射防止膜)を形成してもよい。
【0081】
乾燥方法としては、加熱する方法(プリベーク:PB)が挙げられる。加熱は通常の露光機、及び/又は、現像機に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
加熱温度は80~150℃が好ましく、80~140℃がより好ましい。
加熱時間は30~1000秒間が好ましく、40~800秒間がより好ましい。
【0082】
レジスト膜の膜厚は特に制限されないが、KrF露光用のレジスト膜の場合、0.2~15μmが好ましく、0.3~5μmがより好ましい。
また、ArF露光用又はEUV露光用のレジスト膜の場合、30~700nmが好ましく、40~400nmがより好ましい。
【0083】
なお、レジスト膜の上層にトップコート組成物を用いてトップコートを形成してもよい。
トップコート組成物は、レジスト膜と混合せず、更にレジスト膜上層に均一に塗布できることが好ましい。
トップコートの膜厚は、10~200nmが好ましく、20~100nmがより好ましい。
トップコートについては、特に制限されず、従来公知のトップコートを、従来公知の方法によって形成でき、例えば、特開2014-059543号公報の段落0072~0082の記載に基づいてトップコートを形成できる。
【0084】
(工程B:露光工程)
工程Bは、レジスト膜を露光する工程である。
露光の方法としては、形成したレジスト膜に所定のマスクを通して放射線を照射する方法が挙げられる。
放射線としては、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、極紫外光、X線、及び、EB(Electron Beam)が挙げられ、好ましくは250nm以下、より好ましくは220nm以下、更に好ましくは1~200nmの波長の遠紫外光、具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、Fエキシマレーザー(157nm)、EUV(13nm)、X線、及び、EBが挙げられる。
【0085】
露光後、現像を行う前にベーク(ポストエクスポージャーベーク:PEB)を行うことが好ましい。
加熱温度は80~150℃が好ましく、80~140℃がより好ましい。
加熱時間は10~1000秒間が好ましく、10~180秒間がより好ましい。
加熱は通常の露光機、及び/又は現像機に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
この工程は露光後ベークとも記載する。
【0086】
(工程C:現像工程)
工程Cは、現像液を用いて、露光されたレジスト膜を現像し、パターンを形成する工程である。
【0087】
現像方法としては、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、及び、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)が挙げられる。
また、現像を行う工程の後に、他の溶剤に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
現像時間は未露光部の樹脂が十分に溶解する時間であれば特に制限はなく、10~300秒間が好ましく、20~120秒間がより好ましい。
現像液の温度は0~50℃が好ましく、15~35℃がより好ましい。
【0088】
現像液としては、アルカリ現像液、及び、有機溶剤現像液が挙げられる。
アルカリ現像液としては、アルカリを含むアルカリ水溶液を用いることが好ましい。中でも、アルカリ現像液は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)に代表される4級アンモニウム塩の水溶液であることが好ましい。アルカリ現像液には、アルコール類、界面活性剤等を適当量添加してもよい。アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常、0.1~20質量%である。また、アルカリ現像液のpHは、通常、10.0~15.0である。
【0089】
有機溶剤現像液とは、有機溶剤を含む現像液である。
有機溶剤現像液に用いられる有機溶剤としては、公知の有機溶剤が挙げられ、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、及び、炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0090】
(他の工程)
上記パターン形成方法は、工程Cの後に、リンス液を用いて洗浄する工程を含むことが好ましい。
現像液を用いて現像する工程の後のリンス工程に用いるリンス液としては、例えば、純水が挙げられる。なお、純水には、界面活性剤を適当量添加してもよい。
リンス液には、界面活性剤を適当量添加してもよい。
【0091】
また、形成されたパターンをマスクとして、基板のエッチング処理を実施してもよい。つまり、工程Cにて形成されたパターンをマスクとして、基板(又は、下層膜及び基板)を加工して、基板にパターンを形成してもよい。
基板(又は、下層膜及び基板)の加工方法は特に制限されないが、工程Cで形成されたパターンをマスクとして、基板(又は、下層膜及び基板)に対してドライエッチングを行うことにより、基板にパターンを形成する方法が好ましい。
ドライエッチングは、1段のエッチングであっても、複数段からなるエッチングであってもよい。エッチングが複数段からなるエッチングである場合、各段のエッチングは同一の処理であっても異なる処理であってもよい。
エッチングは、公知の方法をいずれも用いることができ、各種条件等は、基板の種類又は用途等に応じて、適宜、決定される。例えば、国際光工学会紀要(Proc.of SPIE)Vol.6924,692420(2008)、特開2009-267112号公報等に準じて、エッチングを実施できる。また、「半導体プロセス教本 第四版 2007年刊行 発行人:SEMIジャパン」の「第4章 エッチング」に記載の方法に準ずることもできる。
中でも、ドライエッチングとしては、酸素プラズマエッチングが好ましい。
【0092】
<感放射線性樹脂組成物>
感放射線性樹脂組成物に含まれる構成成分は特に制限されないが、酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、溶剤が挙げられる。
以下、感放射線性樹脂組成物に含まれる成分について詳述する。
【0093】
<酸の作用により極性が増大する樹脂>
感放射線性樹脂組成物は、酸の作用により極性が増大する樹脂(以下、単に「樹脂(A)」とも記載する。)を含むことが好ましい。
【0094】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位(A-a)(以下、単に「繰り返し単位(A-a)」とも記載する)を有することが好ましい。
酸分解性基とは、酸の作用により分解し、極性基を生じる基をいう。酸分解性基は、酸の作用により脱離する脱離基で極性基が保護された構造を有することが好ましい。つまり、樹脂(A)は、酸の作用により分解し、極性基を生じる基を有する繰り返し単位(A-a)を有する。この繰り返し単位(A-a)を有する樹脂は、酸の作用により極性が増大してアルカリ現像液に対する溶解度が増大し、有機溶剤に対する溶解度が減少する。
【0095】
極性基としては、アルカリ可溶性基が好ましく、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸性基、並びに、アルコール性水酸基等が挙げられる。
中でも、極性基としては、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、又は、スルホン酸基が好ましい。
【0096】
酸の作用により脱離する脱離基としては、例えば、式(Y1)~(Y4)で表される基が挙げられる。
式(Y1):-C(Rx)(Rx)(Rx
式(Y2):-C(=O)OC(Rx)(Rx)(Rx
式(Y3):-C(R36)(R37)(OR38
式(Y4):-C(Rn)(H)(Ar)
【0097】
式(Y1)及び式(Y2)中、Rx~Rxは、それぞれ独立に、アルキル基(直鎖状もしくは分岐鎖状)、シクロアルキル基(単環もしくは多環)、アルケニル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、又はアリール基(単環若しくは多環)を表す。なお、Rx~Rxの全てがアルキル基(直鎖状もしくは分岐鎖状)である場合、Rx~Rxのうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
中でも、Rx~Rxは、それぞれ独立に、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表すことが好ましく、Rx~Rxは、それぞれ独立に、直鎖状のアルキル基を表すことがより好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して、単環又は多環を形成してもよい。
Rx~Rxのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及び、t-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
Rx~Rxのシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、並びに、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx~Rxのアリール基としては、炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等が挙げられる。
Rx~Rxのアルケニル基としては、ビニル基が好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、並びに、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましく、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基がより好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
式(Y1)又は式(Y2)で表される基は、例えば、Rxがメチル基又はエチル基であり、RxとRxとが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
本発明の組成物が、例えば、EUV露光用レジスト組成物である場合、Rx~Rxで表されるアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、及び、Rx~Rxの2つが結合して形成される環は、更に、置換基として、フッ素原子又はヨウ素原子を有しているのも好ましい。
【0098】
式(Y3)中、R36~R38は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。R37とR38とは、互いに結合して環を形成してもよい。1価の置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び、アルケニル基等が挙げられる。R36は水素原子であることも好ましい。
【0099】
式(Y3)としては、下記式(Y3-1)で表される基が好ましい。
【0100】
【化1】
【0101】
ここで、L及びLは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は、これらを組み合わせた基(例えば、アルキル基とアリール基とを組み合わせた基)を表す。
Mは、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、ヘテロ原子を有していてもよいアルキル基、ヘテロ原子を有していてもよいシクロアルキル基、ヘテロ原子を有していてもよいアリール基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、シアノ基、アルデヒド基、又は、これらを組み合わせた基(例えば、アルキル基とシクロアルキル基とを組み合わせた基)を表す。
アルキル基及びシクロアルキル基は、例えば、メチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
なお、L及びLのうち一方は水素原子であり、他方はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は、アルキレン基とアリール基とを組み合わせた基であることが好ましい。
Q、M、及び、Lの少なくとも2つが結合して環(好ましくは、5員又は6員環)を形成してもよい。
パターンの微細化の点では、Lが2級又は3級アルキル基であることが好ましく、3級アルキル基であることがより好ましい。2級アルキル基としては、イソプロピル基、シクロヘキシル基、及び、ノルボルニル基が挙げられ、3級アルキル基としては、tert-ブチル基、及び、アダマンタン環基が挙げられる。これらの態様では、Tg(ガラス転移温度)及び活性化エネルギーが高くなるため、膜強度の担保に加え、かぶりの抑制ができる。
【0102】
式(Y4)中、Arは、芳香環基を表す。Rnは、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。RnとArとは互いに結合して非芳香族環を形成してもよい。Arはより好ましくはアリール基である。
【0103】
繰り返し単位(A-a)としては、式(A)で表される繰り返し単位も好ましい。
【0104】
【化2】
【0105】
は、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい2価の連結基を表し、Rは水素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基、又は、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアリール基を表し、Rは酸の作用によって脱離し、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい脱離基を表す。ただし、L、R、及び、Rのうち少なくとも1つは、フッ素原子又はヨウ素原子を有する。
は、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい2価の連結基を表す。フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい2価の連結基としては、-CO-、-O-、-S-、-SO-、-SO-、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい炭化水素基(例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基等)、及び、これらの複数が連結した連結基等が挙げられる。中でも、本発明の効果がより優れる点で、Lとしては、-CO-、又は、-アリーレン基-フッ素原子もしくはヨウ素原子を有するアルキレン基-が好ましい。
アリーレン基としては、フェニレン基が好ましい。
アルキレン基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルキレン基の炭素数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。
フッ素原子又はヨウ素原子を有するアルキレン基に含まれるフッ素原子及びヨウ素原子の合計数は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、2以上が好ましく、2~10がより好ましく、3~6が更に好ましい。
【0106】
は、水素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、フッ素原子もしくはヨウ素原子が有していてもよいアルキル基、又は、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアリール基を表す。
アルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルキル基の炭素数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。
フッ素原子又はヨウ素原子を有するアルキル基に含まれるフッ素原子及びヨウ素原子の合計数は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、1以上が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましい。
上記アルキル基は、ハロゲン原子以外の酸素原子等のヘテロ原子を有していてもよい。
【0107】
は、酸の作用によって脱離し、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい脱離基を表す。
中でも、脱離基としては、式(Z1)~(Z4)で表される基が挙げられる。
式(Z1):-C(Rx11)(Rx12)(Rx13
式(Z2):-C(=O)OC(Rx11)(Rx12)(Rx13
式(Z3):-C(R136)(R137)(OR138
式(Z4):-C(Rn)(H)(Ar
【0108】
式(Z1)、(Z2)中、Rx11~Rx13は、それぞれ独立に、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基(直鎖状もしくは分岐鎖状)、又は、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいシクロアルキル基(単環もしくは多環)を表す。なお、Rx11~Rx13の全てがアルキル基(直鎖状もしくは分岐鎖状)である場合、Rx11~Rx13のうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
Rx11~Rx13は、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい点以外は、上述した(Y1)、(Y2)中のRx~Rxと同じであり、アルキル基及びシクロアルキル基の定義及び好適範囲と同じである。
【0109】
式(Z3)中、R136~R138は、それぞれ独立に、水素原子、又は、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよい1価の有機基を表す。R137とR138とは、互いに結合して環を形成してもよい。フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい1価の有機基としては、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよいアルキル基、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよいシクロアルキル基、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよいアリール基、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよいアラルキル基、及び、これらを組み合わせた基(例えば、アルキル基とシクロアルキル基とを組み合わせた基)が挙げられる。
なお、上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及び、アラルキル基には、フッ素原子及びヨウ素原子以外に、酸素原子等のヘテロ原子が含まれていてもよい。つまり、上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及び、アラルキル基は、例えば、メチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
【0110】
式(Z3)としては、下記式(Z3-1)で表される基が好ましい。
【0111】
【化3】
【0112】
ここで、L11及びL12は、それぞれ独立に、水素原子;フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を有していてもよいアルキル基;フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を有していてもよいシクロアルキル基;フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を有していてもよいアリール基;又は、これらを組み合わせた基(例えば、フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を有していてもよい、アルキル基とシクロアルキル基とを組み合わせた基)を表す。
は、単結合又は2価の連結基を表す。
は、フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を有していてもよいアルキル基;フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を有していてもよいシクロアルキル基;フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を有していてもよいアリール基;アミノ基;アンモニウム基;メルカプト基;シアノ基;アルデヒド基;又は、これらを組み合わせた基(例えば、フッ素原子、ヨウ素原子及び酸素原子からなる群より選択されるヘテロ原子を有していてもよい、アルキル基とシクロアルキル基とを組み合わせた基)を表す。
【0113】
式(Y4)中、Arは、フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい芳香環基を表す。Rnは、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいシクロアルキル基、又は、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアリール基を表す。RnとArとは互いに結合して非芳香族環を形成してもよい。
【0114】
繰り返し単位(A-a)としては、一般式(AI)で表される繰り返し単位も好ましい。
【0115】
【化4】
【0116】
一般式(AI)において、
Xaは、水素原子、又は、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
Tは、単結合、又は、2価の連結基を表す。
Rx~Rxは、それぞれ独立に、アルキル基(直鎖状、又は、分岐鎖状)、シクロアルキル基(単環、又は、多環)、アルケニル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)、又はアリール(単環若しくは多環)基を表す。ただし、Rx~Rxの全てがアルキル基(直鎖状、又は、分岐鎖状)である場合、Rx~Rxのうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して、シクロアルキル基(単環もしくは多環)を形成してもよい。
【0117】
Xaにより表される、置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基又は-CH-R11で表される基が挙げられる。R11は、ハロゲン原子(フッ素原子等)、水酸基又は1価の有機基を表し、例えば、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数5以下のアルキル基、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数5以下のアシル基、及び、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数5以下のアルコキシ基が挙げられ、炭素数3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。Xaとしては、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、又は、ヒドロキシメチル基が好ましい。
【0118】
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、芳香環基、-COO-Rt-基、及び、-O-Rt-基等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基、又は、シクロアルキレン基を表す。
Tは、単結合又は-COO-Rt-基が好ましい。Tが-COO-Rt-基を表す場合、Rtは、炭素数1~5のアルキレン基が好ましく、-CH-基、-(CH-基、又は、-(CH-基がより好ましい。
【0119】
Rx~Rxのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及び、t-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
Rx~Rxのシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx~Rxのアリール基としては、炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等が挙げられる。
Rx~Rxのアルケニル基としては、ビニル基が好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基が好ましく、その他にも、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。中でも、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
一般式(AI)で表される繰り返し単位は、例えば、Rxがメチル基又はエチル基であり、RxとRxとが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
【0120】
上記各基が置換基を有する場合、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1~4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1~4)、カルボキシル基、及び、アルコキシカルボニル基(炭素数2~6)等が挙げられる。置換基中の炭素数は、8以下が好ましい。
【0121】
一般式(AI)で表される繰り返し単位としては、好ましくは、酸分解性(メタ)アクリル酸3級アルキルエステル系繰り返し単位(Xaが水素原子又はメチル基を表し、かつ、Tが単結合を表す繰り返し単位)である。
【0122】
樹脂(A)は、繰り返し単位(A-a)を1種単独で有していてもよく、2種以上を有していてもよい。
繰り返し単位(A-a)の含有量(2種以上の繰り返し単位(A-a)が存在する場合は合計含有量)は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、15~80モル%が好ましく、20~70モル%がより好ましい。
【0123】
樹脂(A)は、繰り返し単位(A-a)として、下記一般式(A-VIII)~(A-XII)で表される繰り返し単位からなる群より選択される少なくとも1つの繰り返し単位を有することが好ましい。
【0124】
【化5】
【0125】
一般式(A-VIII)中、Rは、tert-ブチル基、-CO-O-(tert-ブチル)基を表す。
一般式(A-IX)中、R及びRは、それぞれ独立に、1価の有機基を表す。1価の有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び、アルケニル基等が挙げられる。
一般式(A-X)中、pは、1~5を表し、1又は2が好ましい。
一般式(A-X)~(A-XII)中、Rは、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表し、Rは、炭素数1~3のアルキル基を表す。
一般式(A-XII)中、R10は、炭素数1~3のアルキル基又はアダマンチル基を表す。
【0126】
(酸基を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、酸基を有する繰り返し単位を有してもよい。
酸基としては、pKaが13以下の酸基が好ましい。上記酸基の酸解離定数は、上記のように、13以下が好ましく、3~13がより好ましく、5~10が更に好ましい。
酸分解性樹脂が、pKaが13以下の酸基を有する場合、酸分解性樹脂中における酸基の含有量は特に制限されないが、0.2~6.0mmol/gの場合が多い。なかでも、0.8~6.0mmol/gが好ましく、1.2~5.0mmol/gがより好ましく、1.6~4.0mmol/gが更に好ましい。酸基の含有量が上記範囲内であれば、現像が良好に進行し、形成されるパターン形状に優れ、解像性にも優れる。
酸基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、スルホン酸基、又はスルホンアミド基等が好ましい。
また、上記ヘキサフルオロイソプロパノール基において、フッ素原子の1つ以上(好ましくは1~2つ)がフッ素原子以外の基で置換されてなる基も酸基として好ましい。このような基としては、例えば、-C(CF)(OH)-CF-を含む基が挙げられる。なお、上記-C(CF)(OH)-CF-を含む基は、-C(CF)(OH)-CF-を含む環基であってもよい。
酸基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(B)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0127】
【化6】
【0128】
は、水素原子、又は、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよい1価の置換基を表す。フッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい1価の置換基としては、-L-Rで表される基が好ましい。Lは、単結合、又は、エステル基を表す。Rは、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいシクロアルキル基、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアリール基、又は、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0129】
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、又は、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基を表す。
【0130】
は、単結合、又は、エステル基を表す。
は、(n+m+1)価の芳香族炭化水素環基、又は、(n+m+1)価の脂環式炭化水素環基を表す。芳香族炭化水素環基としては、ベンゼン環基、及び、ナフタレン環基が挙げられる。脂環式炭化水素環基としては、単環であっても、多環であってもよく、例えば、シクロアルキル環基が挙げられる。
は、水酸基、又は、フッ素化アルコール基(好ましくは、ヘキサフルオロイソプロパノール基)を表す。なお、Rが水酸基の場合、Lは(n+m+1)価の芳香族炭化水素環基であることが好ましい。
は、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられる。
mは、1以上の整数を表す。mは、1~3の整数が好ましく、1~2の整数がより好ましい。
nは、0又は1以上の整数を表す。nは、1~4の整数が好ましい。
なお、(n+m+1)は、1~5の整数が好ましい。
【0131】
酸基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(I)で表される繰り返し単位も好ましい。
【0132】
【化7】
【0133】
一般式(I)中、
41、R42及びR43は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R42はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は単結合又はアルキレン基を表す。
は、単結合、-COO-、又は-CONR64-を表し、R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
は、単結合又はアルキレン基を表す。
Arは、(n+1)価の芳香環基を表し、R42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。
nは、1~5の整数を表す。
【0134】
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、及び、ドデシル基等の炭素数20以下のアルキル基が好ましく、炭素数8以下のアルキル基がより好ましく、炭素数3以下のアルキル基が更に好ましい。
【0135】
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のシクロアルキル基としては、単環型でも、多環型でもよい。中でも、シクロプロピル基、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の炭素数3~8個で単環型のシクロアルキル基が好ましい。
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のアルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基としては、上記R41、R42、R43におけるアルキル基と同様のものが好ましい。
【0136】
Arは、(n+1)価の芳香環基を表す。nが1である場合における2価の芳香環基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、及び、アントラセニレン基等の炭素数6~18のアリーレン基、又は、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾピロール環、トリアジン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、トリアゾール環、チアジアゾール環、及び、チアゾール環等のヘテロ環を含む芳香環基が好ましい。
【0137】
nが2以上の整数である場合における(n+1)価の芳香環基の具体例としては、2価の芳香環基の上記した具体例から、(n-1)個の任意の水素原子を除してなる基が挙げられる。(n+1)価の芳香環基は、更に置換基を有していてもよい。
【0138】
上述したアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルキレン基、及び、(n+1)価の芳香環基が有し得る置換基としては、例えば、一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43で挙げたアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、及び、ブトキシ基等のアルコキシ基;フェニル基等のアリール基;等が挙げられる。
により表わされる-CONR64-(R64は、水素原子又はアルキル基を表す)におけるR64のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、及び、ドデシル基等の炭素数20以下のアルキル基が挙げられ、炭素数8以下のアルキル基が好ましい。
としては、単結合、-COO-、又は、-CONH-が好ましく、単結合、又は、-COO-がより好ましい。
【0139】
におけるアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、及び、オクチレン基等の炭素数1~8のアルキレン基が好ましい。
Arとしては、炭素数6~18の芳香環基が好ましく、ベンゼン環基、ナフタレン環基、及び、ビフェニレン環基がより好ましい。
【0140】
以下、一般式(I)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明は、これに制限されるものではない。式中、aは1又は2を表す。
【0141】
【化8】
【0142】
【化9】
【0143】
【化10】
【0144】
(ヒドロキシスチレンに由来する繰り返し単位(A-1))
樹脂(A)は、酸基を有する繰り返し単位として、ヒドロキシスチレンに由来する繰り返し単位(A-1)を有することが好ましい。
ヒドロキシスチレンに由来する繰り返し単位(A-1)としては、下記一般式(1)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0145】
【化11】
【0146】
一般式(1)中、
Aは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、又はシアノ基を表す。
Rは、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基を表し、複数個ある場合には同じであっても異なっていてもよい。複数のRを有する場合には、互いに共同して環を形成していてもよい。Rとしては水素原子が好ましい。
aは1~3の整数を表し、bは0~(5-a)の整数を表す。
【0147】
繰り返し単位(A-1)としては、下記一般式(A-I)で表される繰り返し単位が好ましい。
【化12】
【0148】
繰り返し単位(A-1)を有する樹脂(A)を含む組成物は、KrF露光用、EB露光用又はEUV露光用として好ましい。この場合の繰り返し単位(A-1)の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、30~100モル%が好ましく、40~100モル%がより好ましく、50~100モル%が更に好ましい。
【0149】
(ラクトン構造、スルトン構造、カーボネート構造、及びヒドロキシアダマンタン構造からなる群より選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位(A-2))
樹脂(A)は、ラクトン構造、カーボネート構造、スルトン構造、及びヒドロキシアダマンタン構造からなる群より選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位(A-2)を有していてもよい。
【0150】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位におけるラクトン構造又はスルトン構造は、特に制限されないが、5~7員環ラクトン構造又は5~7員環スルトン構造が好ましく、5~7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているもの、又は5~7員環スルトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものがより好ましい。
ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位としては、WO2016/136354号の段落0094~0107に記載の繰り返し単位が挙げられる。
【0151】
樹脂(A)は、カーボネート構造を有する繰り返し単位を有していてもよい。カーボネート構造は、環状炭酸エステル構造であることが好ましい。
カーボネート構造を有する繰り返し単位としては、WO2019/054311号の段落0106~0108に記載の繰り返し単位が挙げられる。
【0152】
樹脂(A)は、ヒドロキシアダマンタン構造を有する繰り返し単位を有していてもよい。ヒドロキシアダマンタン構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AIIa)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0153】
【化13】
【0154】
一般式(AIIa)中、Rcは、水素原子、メチル基、トリフロロメチル基又はヒドロキメチル基を表す。Rc~Rcは、それぞれ独立に、水素原子又は水酸基を表す。但し、Rc~Rcのうちの少なくとも1つは、水酸基を表す。Rc~Rcのうちの1つ又は2つが水酸基で、残りが水素原子であることが好ましい。
【0155】
(フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位を有していてもよい。
フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位としては、特開2019-045864号公報の段落0080~0081に記載の繰り返し単位が挙げられる。
【0156】
(光酸発生基を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、上記以外の繰り返し単位として、放射線の照射により酸を発生する基を有する繰り返し単位を有していてもよい。
このような繰り返し単位としては、例えば、下記式(4)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0157】
【化14】
【0158】
41は、水素原子又はメチル基を表す。L41は、単結合、又は2価の連結基を表す。L42は、2価の連結基を表す。R40は、活性光線又は放射線の照射により分解して側鎖に酸を発生させる構造部位を表す。
光酸発生基を有する繰り返し単位を以下に例示する。
【0159】
【化15】
【0160】
そのほか、式(4)で表される繰り返し単位としては、例えば、特開2014-041327号公報の段落[0094]~[0105]に記載された繰り返し単位、及び国際公開第2018/193954号公報の段落[0094]に記載された繰り返し単位が挙げられる。
【0161】
光酸発生基を有する繰り返し単位の含有量は、酸分解性樹脂中の全繰り返し単位に対して、1モル%以上が好ましく、2モル%以上がより好ましい。また、その上限値としては、20モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましく、5モル%以下が更に好ましい。
光酸発生基を有する繰り返し単位としては、特開2019-045864号公報の段落0092~0096に記載の繰り返し単位も挙げられる。
【0162】
(アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を有していてもよい。
アルカリ可溶性基としては、カルボキシル基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、ビスルスルホニルイミド基、及び、α位が電子吸引性基で置換された脂肪族アルコール(例えば、ヘキサフロロイソプロパノール基)が挙げられ、カルボキシル基が好ましい。樹脂(A)がアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を有することにより、コンタクトホール用途での解像性が増す。
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸及びメタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接アルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、又は、連結基を介して樹脂の主鎖にアルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位が挙げられる。なお、連結基は、単環又は多環の環状炭化水素構造を有していてもよい。
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸又はメタクリル酸による繰り返し単位が好ましい。
【0163】
(酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位)
樹脂(A)は、更に、酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位を有してもよい。酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位は、脂環式炭化水素を有することが好ましい。
【0164】
酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位としては、例えば、米国特許出願公開第2016/0026083号明細書の段落0236~0237に記載された繰り返し単位、及び、米国特許出願公開第2016/0070167号明細書の段落0433に記載された繰り返し単位が挙げられる。
【0165】
樹脂(A)は、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性、標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、解像力、耐熱性、及び、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を有していてもよい。
【0166】
(樹脂(A)の特性)
樹脂(A)としては、繰り返し単位のすべてが、エチレン性不飽和結合を有する化合物に由来する繰り返し単位で構成されることが好ましい。特に、樹脂(A)としては、繰り返し単位のすべてが(メタ)アクリレート系モノマー((メタ)アクリル基を有するモノマー)に由来する繰り返し単位で構成されることが好ましい。この場合、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系モノマーに由来するもの、繰り返し単位のすべてがアクリレート系モノマーに由来するもの、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系モノマー及びアクリレート系モノマーに由来するもののいずれの樹脂でも用いることができる。アクリレート系モノマーに由来する繰り返し単位が、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して50モル%以下であることが好ましい。
【0167】
組成物がフッ素アルゴン(ArF)露光用であるとき、ArF光の透過性の観点から、樹脂(A)は実質的には芳香族基を有さないことが好ましい。より具体的には、芳香族基を有する繰り返し単位が、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、理想的には0モル%、すなわち芳香族基を有する繰り返し単位を有さないことが更に好ましい。
また、組成物がArF露光用であるとき、樹脂(A)は、単環又は多環の脂環炭化水素構造を有することが好ましく、また、フッ素原子及び珪素原子のいずれも含まないことが好ましい。
【0168】
組成物がフッ化クリプトン(KrF)露光用、EB露光用又はEUV露光用であるとき、樹脂(A)は芳香族炭化水素基を有する繰り返し単位を有することが好ましく、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。
フェノール性水酸基を有する繰り返し単位としては、上記ヒドロキシスチレン由来の繰り返し単位(A-1)、及び、ヒドロキシスチレン(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位を挙げることができる。
また、組成物が、KrF露光用、EB露光用又はEUV露光用であるとき、樹脂(A)は、フェノール性水酸基の水素原子が酸の作用により分解し脱離する基(脱離基)で保護された構造を有する繰り返し単位を有することも好ましい。
組成物が、KrF露光用、EB露光用又はEUV露光用であるとき、樹脂(A)に含まれる芳香族炭化水素基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、30~100モル%が好ましく、40~100モル%がより好ましく、50~100モル%が更に好ましい。
【0169】
樹脂(A)は、常法(例えばラジカル重合)に従って合成できる。
樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、1,000~200,000が好ましく、3,000~20,000がより好ましく、5,000~15,000が更に好ましい。樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)を、1,000~200,000とすることにより、耐熱性及びドライエッチング耐性の劣化を防ぐことができ、更に、現像性の劣化、及び、粘度が高くなって製膜性が劣化することを防ぐことができる。なお、樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、上述のGPC法により測定されたポリスチレン換算値である。
樹脂(A)の分散度(分子量分布)は、通常1~5であり、1~3が好ましく、1.1~2.0がより好ましい。分散度が小さいものほど、解像度、及び、レジスト形状が優れ、更に、パターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。
【0170】
本発明の組成物において、樹脂(A)の含有量は、組成物の全固形分に対して、50~99.9質量%が好ましく、60~99.0質量%がより好ましい。
また、樹脂(A)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において、固形分とは溶剤を除いたレジスト膜を構成し得る成分を意味する。上記成分の性状が液状であっても、固形分として扱う。
【0171】
<光酸発生剤(P)>
本発明の組成物は、光酸発生剤(P)を含んでいてもよい。光酸発生剤(P)は、放射線の照射により酸を発生する化合物であれば特に制限されない。
光酸発生剤(P)は、低分子化合物の形態であってもよく、重合体の一部に組み込まれた形態であってもよい。また、低分子化合物の形態と重合体の一部に組み込まれた形態を併用してもよい。
光酸発生剤(P)が、低分子化合物の形態である場合、重量平均分子量(Mw)が3000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましく、1000以下であることが更に好ましい。
光酸発生剤(P)が、重合体の一部に組み込まれた形態である場合、樹脂(A)の一部に組み込まれてもよく、樹脂(A)とは異なる樹脂に組み込まれてもよい。
本発明において、光酸発生剤(P)は、低分子化合物の形態であることが好ましい。
光酸発生剤(P)としては、公知のものであれば特に制限されないが、放射線の照射により、有機酸を発生する化合物が好ましく、分子中にフッ素原子又はヨウ素原子を有する光酸発生剤がより好ましい。
上記有機酸として、例えば、スルホン酸(脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸、及び、カンファースルホン酸等)、カルボン酸(脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、及び、アラルキルカルボン酸等)、カルボニルスルホニルイミド酸、ビス(アルキルスルホニル)イミド酸、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチド酸等が挙げられる。
【0172】
光酸発生剤(P)より発生する酸の体積は特に制限されないが、露光で発生した酸の非露光部への拡散を抑制し、解像性を良好にする点から、240Å以上が好ましく、305Å以上がより好ましく、350Å以上が更に好ましく、400Å以上が特に好ましい。なお、感度又は塗布溶剤への溶解性の点から、光酸発生剤(P)より発生する酸の体積は、1500Å以下が好ましく、1000Å以下がより好ましく、700Å以下が更に好ましい。
上記体積の値は、富士通株式会社製の「WinMOPAC」を用いて求める。上記体積の値の計算にあたっては、まず、各例に係る酸の化学構造を入力し、次に、この構造を初期構造としてMM(Molecular Mechanics)3法を用いた分子力場計算により、各酸の最安定立体配座を決定し、その後、これら最安定立体配座についてPM(Parameterized Model number)3法を用いた分子軌道計算を行うことにより、各酸の「accessible volume」を計算できる。
【0173】
光酸発生剤(P)より発生する酸の構造は特に制限されないが、酸の拡散を抑制し、解像性を良好にする点で、光酸発生剤(P)より発生する酸と樹脂(A)との間の相互作用が強いことが好ましい。この点から、光酸発生剤(P)より発生する酸が有機酸である場合、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、カルボニルスルホニルイミド酸基、ビススルホニルイミド酸基、及び、トリススルホニルメチド酸基等の有機酸基、以外に、更に極性基を有することが好ましい。
極性基としては、例えば、エーテル基、エステル基、アミド基、アシル基、スルホ基、スルホニルオキシ基、スルホンアミド基、チオエーテル基、チオエステル基、ウレア基、カーボネート基、カーバメート基、ヒドロキシル基、及び、メルカプト基が挙げられる。
発生する酸が有する極性基の数は特に制限されず、1個以上であることが好ましく、2個以上であることがより好ましい。ただし、過剰な現像を抑制する観点から、極性基の数は、6個未満であることが好ましく、4個未満であることがより好ましい。
【0174】
中でも、本発明の効果がより優れる点で、光酸発生剤(P)は、アニオン部及びカチオン部からなる光酸発生剤であることが好ましい。
光酸発生剤(P)としては、特開2019-045864号公報の段落0144~0173に記載の光酸発生剤が挙げられる。
【0175】
光酸発生剤(P)の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、組成物の全固形分に対して、5~50質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましく、10~35質量%が更に好ましい。
光酸発生剤(P)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。光酸発生剤(P)を2種以上併用する場合は、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0176】
本発明の組成物は、光酸発生剤(P)として、化合物(I)及び(II)で定義される特定光酸発生剤を含んでもよい。
【0177】
(化合物(I))
化合物(I)は、1つ以上の下記構造部位X及び1つ以上の下記構造部位Yを有する化合物であって、活性光線又は放射線の照射によって、下記構造部位Xに由来する下記第1の酸性部位と下記構造部位Yに由来する下記第2の酸性部位とを含む酸を発生する化合物である。
構造部位X:アニオン部位A とカチオン部位M とからなり、且つ活性光線又は放射線の照射によってHAで表される第1の酸性部位を形成する構造部位
構造部位Y:アニオン部位A とカチオン部位M とからなり、且つ活性光線又は放射線の照射によってHAで表される第2の酸性部位を形成する構造部位
但し、化合物(I)は、下記条件Iを満たす。
【0178】
条件I:上記化合物(I)において上記構造部位X中の上記カチオン部位M 及び上記構造部位Y中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなる化合物PIが、上記構造部位X中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなるHAで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1と、上記構造部位Y中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなるHAで表される酸性部位に由来する酸解離定数a2を有し、且つ、上記酸解離定数a1よりも上記酸解離定数a2の方が大きい。
【0179】
以下において、条件Iをより具体的に説明する。
化合物(I)が、例えば、上記構造部位Xに由来する上記第1の酸性部位を1つと、上記構造部位Yに由来する上記第2の酸性部位を1つ有する酸を発生する化合物である場合、化合物PIは「HAとHAを有する化合物」に該当する。
このような化合物PIの酸解離定数a1及び酸解離定数a2とは、より具体的に説明すると、化合物PIの酸解離定数を求めた場合において、化合物PIが「A とHAを有する化合物」となる際のpKaが酸解離定数a1であり、上記「A とHAを有する化合物」が「A とA を有する化合物」となる際のpKaが酸解離定数a2である。
【0180】
また、化合物(I)が、例えば、上記構造部位Xに由来する上記第1の酸性部位を2つと、上記構造部位Yに由来する上記第2の酸性部位を1つ有する酸を発生する化合物である場合、化合物PIは「2つのHAと1つのHAとを有する化合物」に該当する。
このような化合物PIの酸解離定数を求めた場合、化合物PIが「1つのA と1つのHAと1つのHAとを有する化合物」となる際の酸解離定数、及び「1つのA と1つのHAと1つのHAとを有する化合物」が「2つのA と1つのHAとを有する化合物」となる際の酸解離定数が、上述の酸解離定数a1に該当する。また、「2つのA と1つのHAとを有する化合物」が「2つのA とA を有する化合物」となる際の酸解離定数が酸解離定数a2に該当する。つまり、このような化合物PIの場合、上記構造部位X中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなるHAで表される酸性部位に由来する酸解離定数を複数有する場合、複数の酸解離定数a1のうち最も大きい値よりも、酸解離定数a2の値の方が大きい。なお、化合物PIが「1つのA と1つのHAと1つのHAとを有する化合物」となる際の酸解離定数をaaとし、「1つのA と1つのHAと1つのHAとを有する化合物」が「2つのA と1つのHAとを有する化合物」となる際の酸解離定数をabとしたとき、aa及びabの関係は、aa<abを満たす。
【0181】
酸解離定数a1及び酸解離定数a2は、上述した酸解離定数の測定方法により求められる。
上記化合物PIとは、化合物(I)に活性光線又は放射線を照射した場合に、発生する酸に該当する。
化合物(I)が2つ以上の構造部位Xを有する場合、構造部位Xは、各々同一であっても異なっていてもよい。また、2つ以上の上記A 、及び2つ以上の上記M は、各々同一であっても異なっていてもよい。
また、化合物(I)中、上記A 及び上記A 、並びに、上記M 及び上記M は、各々同一であっても異なっていてもよいが、上記A 及び上記A は、各々異なっているのが好ましい。
【0182】
形成されるパターンのLWR性能がより優れる点で、上記化合物PIにおいて、酸解離定数a1(酸解離定数a1が複数存在する場合はその最大値)と酸解離定数a2との差は、0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、1.0以上が更に好ましい。なお、酸解離定数a1(酸解離定数a1が複数存在する場合はその最大値)と酸解離定数a2との差の上限値は特に制限されないが、例えば、16以下である。
【0183】
また、形成されるパターンのLWR性能がより優れる点で、上記化合物PIにおいて、酸解離定数a2は、例えば、20以下であり、15以下が好ましい。なお、酸解離定数a2の下限値としては、-4.0以上が好ましい。
【0184】
また、形成されるパターンのLWR性能がより優れる点で、上記化合物PIにおいて、酸解離定数a1は、2.0以下が好ましく、0以下がより好ましい。なお、酸解離定数a1の下限値としては、-20.0以上が好ましい。
【0185】
アニオン部位A 及びアニオン部位A は、負電荷を帯びた原子又は原子団を含む構造部位であり、例えば、以下に示す式(AA-1)~(AA-3)及び式(BB-1)~(BB-6)からなる群から選ばれる構造部位が挙げられる。アニオン部位A としては、酸解離定数の小さい酸性部位を形成し得るものが好ましく、なかでも、式(AA-1)~(AA-3)のいずれかであるのが好ましい。また、アニオン部位A としては、アニオン部位A よりも酸解離定数の大きい酸性部位を形成し得るものが好ましく、式(BB-1)~(BB-6)のいずれかから選ばれるのが好ましい。なお、以下の式(AA-1)~(AA-3)及び式(BB-1)~(BB-6)中、*は、結合位置を表す。
式(AA-2)中、Rは、1価の有機基を表す。Rで表される1価の有機基としては、シアノ基、トリフルオロメチル基、及びメタンスルホニル基等が挙げられる。
【0186】
【化16】
【0187】
また、カチオン部位M 及びカチオン部位M は、正電荷を帯びた原子又は原子団を含む構造部位であり、例えば、電荷が1価の有機カチオンが挙げられる。なお、有機カチオンとしては特に制限されないが、後述する式(Ia-1)中のM11 及びM12 で表される有機カチオンと同様のものが挙げられる。
【0188】
化合物(I)の具体的な構造としては特に制限されないが、例えば、後述する式(Ia-1)~式(Ia-5)で表される化合物が挙げられる。
以下において、まず、式(Ia-1)で表される化合物について述べる。式(Ia-1)で表される化合物は以下のとおりである。
【0189】
11 11 -L-A12 12 (Ia-1)
【0190】
化合物(Ia-1)は、活性光線又は放射線の照射によって、HA11-L-A12Hで表される酸を発生する。
【0191】
式(Ia-1)中、M11 及びM12 は、各々独立に、有機カチオンを表す。
11 及びA12 は、各々独立に、1価のアニオン性官能基を表す。
は、2価の連結基を表す。
11 及びM12 は、各々同一であっても異なっていてもよい。
11 及びA12 は、各々同一であっても異なっていてもよいが、互いに異なっているのが好ましい。
但し、上記式(Ia-1)において、M11 及びM12 で表される有機カチオンをHに置き換えてなる化合物PIa(HA11-L-A12H)において、A12Hで表される酸性部位に由来する酸解離定数a2は、HA11で表される酸性部位に由来する酸解離定数a1よりも大きい。なお、酸解離定数a1と酸解離定数a2の好適値については、上述した通りである。また、化合物PIaと、活性光線又は放射線の照射によって式(Ia-1)で表される化合物から発生する酸は同じである。
また、M11 、M12 、A11 、A12 、及びLの少なくとも1つが、置換基として、酸分解性基を有していてもよい。
【0192】
式(Ia-1)中、M 及びM で表される有機カチオンについては、後述のとおりである。
【0193】
11 で表される1価のアニオン性官能基とは、上述したアニオン部位A を含む1価の基を意図する。また、A12 で表される1価のアニオン性官能基とは、上述したアニオン部位A を含む1価の基を意図する。
11 及びA12 で表される1価のアニオン性官能基としては、上述した式(AA-1)~(AA-3)及び式(BB-1)~(BB-6)のいずれかのアニオン部位を含む1価のアニオン性官能基であるのが好ましく、式(AX-1)~(AX-3)、及び式(BX-1)~(BX-7)からなる群から選ばれる1価のアニオン性官能基であるのがより好ましい。A11 で表される1価のアニオン性官能基としては、なかでも、式(AX-1)~(AX-3)のいずれかで表される1価のアニオン性官能基であるのが好ましい。また、A12 で表される1価のアニオン性官能基としては、なかでも、式(BX-1)~(BX-7)のいずれかで表される1価のアニオン性官能基が好ましく、式(BX-1)~(BX-6)のいずれかで表される1価のアニオン性官能基がより好ましい。
【0194】
【化17】
【0195】
式(AX-1)~(AX-3)中、RA1及びRA2は、各々独立に、1価の有機基を表す。*は、結合位置を表す。
【0196】
A1で表される1価の有機基としては、シアノ基、トリフルオロメチル基、及びメタンスルホニル基等が挙げられる。
【0197】
A2で表される1価の有機基としては、直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基、又はアリール基が好ましい。
上記アルキル基の炭素数は1~15が好ましく、1~10がより好ましく、1~6が更に好ましい。
上記アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、フッ素原子又はシアノ基が好ましく、フッ素原子がより好ましい。上記アルキル基が置換基としてフッ素原子を有する場合、パーフルオロアルキル基であってもよい。
【0198】
上記アリール基としては、フェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
上記アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、フッ素原子、ヨウ素原子、パーフルオロアルキル基(例えば、炭素数1~10が好ましく、炭素数1~6がより好ましい。)、又はシアノ基が好ましく、フッ素原子、ヨウ素原子、パーフルオロアルキル基がより好ましい。
【0199】
式(BX-1)~(BX-4)及び式(BX-6)中、Rは、1価の有機基を表す。*は、結合位置を表す。
で表される1価の有機基としては、直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基、又はアリール基が好ましい。
上記アルキル基の炭素数は1~15が好ましく、1~10がより好ましく、1~6が更に好ましい。
上記アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基として特に制限されないが、置換基としては、フッ素原子又はシアノ基が好ましく、フッ素原子がより好ましい。上記アルキル基が置換基としてフッ素原子を有する場合、パーフルオロアルキル基であってもよい。
なお、アルキル基において結合位置となる炭素原子(例えば、式(BX-1)及び(BX-4)の場合、アルキル基中の式中に明示される-CO-と直接結合する炭素原子が該当し、式(BX-2)及び(BX-3)の場合、アルキル基中の式中に明示される-SO-と直接結合する炭素原子が該当し、式(BX-6)の場合、アルキル基中の式中に明示されるNと直接結合する炭素原子が該当する。)が置換基を有する場合、フッ素原子又はシアノ基以外の置換基であるのも好ましい。
また、上記アルキル基は、炭素原子がカルボニル炭素で置換されていてもよい。
【0200】
上記アリール基としては、フェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
上記アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、フッ素原子、ヨウ素原子、パーフルオロアルキル基(例えば、炭素数1~10が好ましく、炭素数1~6がより好ましい。)、シアノ基、アルキル基(例えば、炭素数1~10が好ましく、炭素数1~6がより好ましい。)、アルコキシ基(例えば、炭素数1~10が好ましく、炭素数1~6がより好ましい。)、又はアルコキシカルボニル基(例えば、炭素数2~10が好ましく、炭素数2~6がより好ましい。)が好ましく、フッ素原子、ヨウ素原子、パーフルオロアルキル基、アルキル基、アルコキシ基、又はアルコキシカルボニル基がより好ましい。
【0201】
式(Ia-1)中、Lで表される2価の連結基としては特に制限されず、-CO-、-NR-、-CO-、-O-、-S-、-SO-、-SO-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~6。直鎖状でも分岐鎖状でもよい)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~15)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~6)、2価の脂肪族複素環基(少なくとも1つのN原子、O原子、S原子、又はSe原子を環構造内に有する5~10員環が好ましく、5~7員環がより好ましく、5~6員環が更に好ましい。)、2価の芳香族複素環基(少なくとも1つのN原子、O原子、S原子、又はSe原子を環構造内に有する5~10員環が好ましく、5~7員環がより好ましく、5~6員環が更に好ましい。)、2価の芳香族炭化水素環基(6~10員環が好ましく、6員環が更に好ましい。)、及びこれらの複数を組み合わせた2価の連結基が挙げられる。上記Rは、水素原子又は1価の有機基が挙げられる。1価の有機基としては特に制限されないが、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1~6)が好ましい。
また、上記アルキレン基、上記シクロアルキレン基、上記アルケニレン基、上記2価の脂肪族複素環基、2価の芳香族複素環基、及び2価の芳香族炭化水素環基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)が挙げられる。
【0202】
で表される2価の連結基としては、なかでも式(L1)で表される2価の連結基であるのが好ましい。
【0203】
【化18】
【0204】
式(L1)中、L111は、単結合又は2価の連結基を表す。
111で表される2価の連結基としては特に制限されず、例えば、-CO-、-NH-、-O-、-SO-、-SO-、置換基を有していてもよいアルキレン基(好ましくは炭素数1~6がより好ましい。直鎖状及び分岐鎖状のいずれでもよい)、置換基を有していてもよいシクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~15)、置換基を有していてもよいアリール(好ましくは炭素数6~10)、及びこれらの複数を組み合わせた2価の連結基が挙げられる。置換基としては特に制限されず、例えば、ハロゲン原子等が挙げられる。
pは、0~3の整数を表し、1~3の整数を表すのが好ましい。
vは、0又は1の整数を表す。
Xfは、各々独立に、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。このアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。また、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロアルキル基が好ましい。
Xfは、各々独立に、水素原子、置換基としてフッ素原子を有していてもよいアルキル基、又はフッ素原子を表す。このアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。Xfとしては、なかでも、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表すのが好ましく、フッ素原子、又はパーフルオロアルキル基がより好ましい。
なかでも、Xf及びXfとしては、各々独立に、フッ素原子又は炭素数1~4のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、フッ素原子又はCFであることがより好ましい。特に、Xf及びXfが、いずれもフッ素原子であることが更に好ましい。
*は結合位置を表す。
式(Ia-1)中のL11が式(L1)で表される2価の連結基を表す場合、式(L1)中のL111側の結合手(*)が、式(Ia-1)中のA12 と結合するのが好ましい。
【0205】
(Ia-1)中、M11 及びM12 で表される有機カチオンの好ましい形態について詳述する。
11 及びM12 で表される有機カチオンは、各々独立に、式(ZaI)で表される有機カチオン(カチオン(ZaI))又は式(ZaII)で表される有機カチオン(カチオン(ZaII))が好ましい。
【0206】
【化19】
【0207】
上記式(ZaI)において、
201、R202、及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
201、R202、及びR203としての有機基の炭素数は、通常1~30であり、1~20が好ましい。また、R201~R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル基、アミド基、又はカルボニル基を含んでいてもよい。R201~R203の内の2つが結合して形成する基としては、例えば、アルキレン基(例えば、ブチレン基及びペンチレン基)、及び-CH-CH-O-CH-CH-が挙げられる。
【0208】
式(ZaI)における有機カチオンの好適な態様としては、後述する、カチオン(ZaI-1)、カチオン(ZaI-2)、式(ZaI-3b)で表される有機カチオン(カチオン(ZaI-3b))、及び式(ZaI-4b)で表される有機カチオン(カチオン(ZaI-4b))が挙げられる。
【0209】
まず、カチオン(ZaI-1)について説明する。
カチオン(ZaI-1)は、上記式(ZaI)のR201~R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニウムカチオンである。
アリールスルホニウムカチオンは、R201~R203の全てがアリール基でもよいし、R201~R203の一部がアリール基であり、残りがアルキル基又はシクロアルキル基であってもよい。
また、R201~R203のうちの1つがアリール基であり、R201~R203のうちの残りの2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル基、アミド基、又はカルボニル基を含んでいてもよい。R201~R203のうちの2つが結合して形成する基としては、例えば、1つ以上のメチレン基が酸素原子、硫黄原子、エステル基、アミド基、及び/又はカルボニル基で置換されていてもよいアルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基、又は-CH-CH-O-CH-CH-)が挙げられる。
アリールスルホニウムカチオンとしては、例えば、トリアリールスルホニウムカチオン、ジアリールアルキルスルホニウムカチオン、アリールジアルキルスルホニウムカチオン、ジアリールシクロアルキルスルホニウムカチオン、及びアリールジシクロアルキルスルホニウムカチオンが挙げられる。
【0210】
アリールスルホニウムカチオンに含まれるアリール基としては、フェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。アリール基は、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子等を有するヘテロ環構造を有するアリール基であってもよい。ヘテロ環構造としては、ピロール残基、フラン残基、チオフェン残基、インドール残基、ベンゾフラン残基、及びベンゾチオフェン残基等が挙げられる。アリールスルホニウムカチオンが2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウムカチオンが必要に応じて有しているアルキル基又はシクロアルキル基は、炭素数1~15の直鎖状アルキル基、炭素数3~15の分岐鎖状アルキル基、又は炭素数3~15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、及びシクロヘキシル基等がより好ましい。
【0211】
201~R203のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基が有していてもよい置換基は、各々独立に、アルキル基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3~15)、アリール基(例えば炭素数6~14)、アルコキシ基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキルアルコキシ基(例えば炭素数1~15)、ハロゲン原子(例えばフッ素、ヨウ素)、水酸基、カルボキシル基、エステル基、スルフィニル基、スルホニル基、アルキルチオ基、及びフェニルチオ基等が好ましい。
上記置換基は可能な場合更に置換基を有していてもよく、例えば、上記アルキル基が置換基としてハロゲン原子を有して、トリフルオロメチル基などのハロゲン化アルキル基となっていることも好ましい。
また、上記置換基は任意の組み合わせにより、酸分解性基を形成することも好ましい。
なお、酸分解性基とは、酸の作用により分解して酸基を生じる基を意図し、酸の作用により脱離する脱離基で酸基が保護された構造であるのが好ましい。上記の酸基及び脱離基としては、既述のとおりである。
【0212】
次に、カチオン(ZaI-2)について説明する。
カチオン(ZaI-2)は、式(ZaI)におけるR201~R203が、各々独立に、芳香環を有さない有機基を表すカチオンである。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含む芳香族環も包含する。
201~R203としての芳香環を有さない有機基は、一般的に炭素数1~30であり、炭素数1~20が好ましい。
201~R203は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、又はビニル基が好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、又はアルコキシカルボニルメチル基がより好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の2-オキソアルキル基が更に好ましい。
【0213】
201~R203のアルキル基及びシクロアルキル基は、例えば、炭素数1~10の直鎖状アルキル基又は炭素数3~10の分岐鎖状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基)、並びに、炭素数3~10のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びノルボルニル基)が挙げられる。
201~R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1~5)、水酸基、シアノ基、又はニトロ基によって更に置換されていてもよい。
また、R201~R203の置換基は、各々独立に、置換基の任意の組み合わせにより、酸分解性基を形成することも好ましい。
【0214】
次に、カチオン(ZaI-3b)について説明する。
カチオン(ZaI-3b)は、下記式(ZaI-3b)で表されるカチオンである。
【0215】
【化20】
【0216】
式(ZaI-3b)中、
1c~R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基(t-ブチル基等)、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアリール基を表す。
及びRは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリル基、又はビニル基を表す。
また、R1c~R7c、並びに、R及びRの置換基は、各々独立に、置換基の任意の組み合わせにより、酸分解性基を形成することも好ましい。
【0217】
1c~R5c中のいずれか2つ以上、R5cとR6c、R6cとR7c、R5cとR、及びRとRは、それぞれ互いに結合して環を形成してもよく、この環は、各々独立に、酸素原子、硫黄原子、ケトン基、エステル結合、又はアミド結合を含んでいてもよい。
上記環としては、芳香族又は非芳香族の炭化水素環、芳香族又は非芳香族のヘテロ環、及びこれらの環が2つ以上組み合わされてなる多環縮合環が挙げられる。環としては、3~10員環が挙げられ、4~8員環が好ましく、5又は6員環がより好ましい。
【0218】
1c~R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRとRが結合して形成する基としては、ブチレン基及びペンチレン基等のアルキレン基が挙げられる。このアルキレン基中のメチレン基が酸素原子等のヘテロ原子で置換されていてもよい。
5cとR6c、及びR5cとRが結合して形成する基としては、単結合又はアルキレン基が好ましい。アルキレン基としては、メチレン基及びエチレン基等が挙げられる。
【0219】
1c~R5c、R6c、R7c、R、R、並びに、R1c~R5c中のいずれか2つ以上、R5cとR6c、R6cとR7c、R5cとR、及びRとRがそれぞれ互いに結合して形成する環は、置換基を有していてもよい。
【0220】
次に、カチオン(ZaI-4b)について説明する。
カチオン(ZaI-4b)は、下記式(ZaI-4b)で表されるカチオンである。
【0221】
【化21】
【0222】
式(ZaI-4b)中、
lは0~2の整数を表す。
rは0~8の整数を表す。
13は、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、ヨウ素原子等)、水酸基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又はシクロアルキル基を有する基(シクロアルキル基そのものであってもよく、シクロアルキル基を一部に含む基であってもよい)を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
14は、水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、又はシクロアルキル基を有する基(シクロアルキル基そのものであってもよく、シクロアルキル基を一部に含む基であってもよい)を表す。これらの基は置換基を有してもよい。R14は、複数存在する場合は各々独立して、水酸基等の上記基を表す。
15は、各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基、又はナフチル基を表す。2つのR15が互いに結合して環を形成してもよい。2つのR15が互いに結合して環を形成するとき、環骨格内に、酸素原子、又は窒素原子等のヘテロ原子を含んでもよい。一態様において、2つのR15がアルキレン基であり、互いに結合して環構造を形成するのが好ましい。なお、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、及び上記ナフチル基、並びに、2つのR15が互いに結合して形成する環は置換基を有してもよい。
【0223】
式(ZaI-4b)において、R13、R14、及びR15のアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状である。アルキル基の炭素数は、1~10が好ましい。アルキル基は、メチル基、エチル基、n-ブチル基、又はt-ブチル基等がより好ましい。
また、R13~R15、並びに、R及びRの各置換基は、各々独立に、置換基の任意の組み合わせにより、酸分解性基を形成するのも好ましい。
【0224】
次に、式(ZaII)について説明する。
式(ZaII)中、R204及びR205は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
204及びR205のアリール基は、フェニル基、又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。R204及びR205のアリール基は、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子等を有するヘテロ環を有するアリール基であってもよい。ヘテロ環を有するアリール基の骨格としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、及びベンゾチオフェン等が挙げられる。
204及びR205のアルキル基及びシクロアルキル基は、炭素数1~10の直鎖状アルキル基又は炭素数3~10の分岐鎖状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、又はペンチル基)、又は炭素数3~10のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、又はノルボルニル基)が好ましい。
【0225】
204及びR205のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基は、各々独立に、置換基を有していてもよい。R204及びR205のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3~15)、アリール基(例えば炭素数6~15)、アルコキシ基(例えば炭素数1~15)、ハロゲン原子、水酸基、及びフェニルチオ基等が挙げられる。また、R204及びR205の置換基は、各々独立に、置換基の任意の組み合わせにより、酸分解性基を形成することも好ましい。
【0226】
次に、式(Ia-2)~(Ia-4)で表される化合物について説明する。
【0227】
【化22】
【0228】
式(Ia-2)中、A21a 及びA21b は、各々独立に、1価のアニオン性官能基を表す。ここで、A21a 及びA21b で表される1価のアニオン性官能基とは、上述したアニオン部位A を含む1価の基を意図する。A21a 及びA21b で表される1価のアニオン性官能基としては特に制限されないが、例えば、上述の式(AX-1)~(AX-3)からなる群から選ばれる1価のアニオン性官能基等が挙げられる。
22 は、2価のアニオン性官能基を表す。ここで、A22 で表される2価のアニオン性官能基とは、上述したアニオン部位A を含む2価の基を意図する。A22 で表される2価のアニオン性官能基としては、例えば、以下に示す式(BX-8)~(BX-11)で表される2価のアニオン性官能基等が挙げられる。
【0229】
【化23】
【0230】
21a 、M21b 、及びM22 は、各々独立に、有機カチオンを表す。M21a 、M21b 、及びM22 で表される有機カチオンとしては、上述のM と同義であり、好適態様も同じである。
21及びL22は、各々独立に、2価の有機基を表す。
【0231】
また、上記式(Ia-2)において、M21a 、M21b 、及びM22 で表される有機カチオンをHに置き換えてなる化合物PIa-2において、A22Hで表される酸性部位に由来する酸解離定数a2は、A21aHに由来する酸解離定数a1-1及びA21bHで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1-2よりも大きい。なお、酸解離定数a1-1と酸解離定数a1-2は、上述した酸解離定数a1に該当する。
なお、A21a 及びA21b は、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、M21a 、M21b 、及びM22 は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
また、M21a 、M21b 、M22 、A21a 、A21b 、L21、及びL22の少なくとも1つが、の少なくとも1つが、置換基として、酸分解性基を有していてもよい。
【0232】
式(Ia-3)中、A31a 及びA32 は、各々独立に、1価のアニオン性官能基を表す。なお、A31a で表される1価のアニオン性官能基の定義は、上述した式(Ia-2)中のA21a 及びA21b と同義であり、好適態様も同じである。
32 で表される1価のアニオン性官能基は、上述したアニオン部位A を含む1価の基を意図する。A32 で表される1価のアニオン性官能基としては特に制限されないが、例えば、上述の式(BX-1)~(BX-7)からなる群から選ばれる1価のアニオン性官能基等が挙げられる。
31b は、2価のアニオン性官能基を表す。ここで、A31b で表される2価のアニオン性官能基とは、上述したアニオン部位A を含む2価の基を意図する。A31b で表される2価のアニオン性官能基としては、例えば、以下に示す式(AX-4)で表される2価のアニオン性官能基等が挙げられる。
【0233】
【化24】
【0234】
31a 、M31b 、及びM32 は、各々独立に、1価の有機カチオンを表す。M31a 、M31b 、及びM32 有機カチオンとしては、上述のM と同義であり、好適態様も同じである。
31及びL32は、各々独立に、2価の有機基を表す。
【0235】
また、上記式(Ia-3)において、M31a 、M31b 、及びM32 で表される有機カチオンをHに置き換えてなる化合物PIa-3において、A32Hで表される酸性部位に由来する酸解離定数a2は、A31aHで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1-3及びA31bHで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1-4よりも大きい。なお、酸解離定数a1-3と酸解離定数a1-4は、上述した酸解離定数a1に該当する。
なお、A31a 及びA32 は、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、M31a 、M31b 、及びM32 は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
また、M31a 、M31b 、M32 、A31a 、A32 、L31、及びL32の少なくとも1つが、置換基として、酸分解性基を有していてもよい。
【0236】
式(Ia-4)中、A41a 、A41b 、及びA42 は、各々独立に、1価のアニオン性官能基を表す。なお、A41a 及びA41b で表される1価のアニオン性官能基の定義は、上述した式(Ia-2)中のA21a 及びA21b と同義である。また、A42 で表される1価のアニオン性官能基の定義は、上述した式(Ia-3)中のA32 と同義であり、好適態様も同じである。
41a 、M41b 、及びM42 は、各々独立に、有機カチオンを表す。
41は、3価の有機基を表す。
【0237】
また、上記式(Ia-4)において、M41a 、M41b 、及びM42 で表される有機カチオンをHに置き換えてなる化合物PIa-4において、A42Hで表される酸性部位に由来する酸解離定数a2は、A41aHで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1-5及びA41bHで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1-6よりも大きい。なお、酸解離定数a1-5と酸解離定数a1-6は、上述した酸解離定数a1に該当する。
なお、A41a 、A41b 、及びA42 は、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、M41a 、M41b 、及びM42 は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
また、M41a 、M41b 、M42 、A41a 、A41b 、A42 、及びL41の少なくとも1つが、置換基として、酸分解性基を有していてもよい。
【0238】
式(Ia-2)中のL21及びL22、並びに、式(Ia-3)中のL31及びL32で表される2価の有機基としては特に制限されず、例えば、-CO-、-NR-、-O-、-S-、-SO-、-SO-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~6。直鎖状でも分岐鎖状でもよい)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~15)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~6)、2価の脂肪族複素環基(少なくとも1つのN原子、O原子、S原子、又はSe原子を環構造内に有する5~10員環が好ましく、5~7員環がより好ましく、5~6員環が更に好ましい。)、2価の芳香族複素環基(少なくとも1つのN原子、O原子、S原子、又はSe原子を環構造内に有する5~10員環が好ましく、5~7員環がより好ましく、5~6員環が更に好ましい。)、2価の芳香族炭化水素環基(6~10員環が好ましく、6員環が更に好ましい。)、及びこれらの複数を組み合わせた2価の有機基が挙げられる。上記Rは、水素原子又は1価の有機基が挙げられる。1価の有機基としては特に制限されないが、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1~6)が好ましい。
また、上記アルキレン基、上記シクロアルキレン基、上記アルケニレン基、上記2価の脂肪族複素環基、2価の芳香族複素環基、及び2価の芳香族炭化水素環基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)が挙げられる。
【0239】
式(Ia-2)中のL21及びL22、並びに、式(Ia-3)中のL31及びL32で表される2価の有機基としては、例えば、下記式(L2)で表される2価の有機基であるのも好ましい。
【0240】
【化25】
【0241】
式(L2)中、qは、1~3の整数を表す。*は結合位置を表す。
Xfは、各々独立に、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。このアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。また、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロアルキル基が好ましい。
Xfは、フッ素原子又は炭素数1~4のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、フッ素原子又はCFであることがより好ましい。特に、双方のXfがフッ素原子であることが更に好ましい。
【0242】
は、単結合又は2価の連結基を表す。
で表される2価の連結基としては特に制限されず、例えば、-CO-、-O-、-SO-、-SO-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~6。直鎖状でも分岐鎖状でもよい)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~15)、2価の芳香族炭化水素環基(6~10員環が好ましく、6員環が更に好ましい。)、及びこれらの複数を組み合わせた2価の連結基が挙げられる。
また、上記アルキレン基、上記シクロアルキレン基、及び2価の芳香族炭化水素環基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)が挙げられる。
【0243】
式(L2)で表される2価の有機基としては、例えば、*-CF-*、*-CF-CF-*、*-CF-CF-CF-*、*-Ph-O-SO-CF-*、*-Ph-O-SO-CF-CF-*、及び*-Ph-O-SO-CF-CF-CF-*、*-Ph-OCO-CF-*等が挙げられる。なお、Phとは、置換基を有していてもよいフェニレン基であり、1,4-フェニレン基であるのが好ましい。置換基としては特に制限されないが、アルキル基(例えば、炭素数1~10が好ましく、炭素数1~6がより好ましい。)、アルコキシ基(例えば、炭素数1~10が好ましく、炭素数1~6がより好ましい。)、又はアルコキシカルボニル基(例えば、炭素数2~10が好ましく、炭素数2~6がより好ましい。)が好ましい。
式(Ia-2)中のL21及びL22が式(L2)で表される2価の有機基を表す場合、式(L2)中のL側の結合手(*)が、式(Ia-2)中のA21a 及びA21b と結合するのが好ましい。
また、式(Ia-3)中のL31及びL32が式(L2)で表される2価の有機基を表す場合、式(L2)中のL側の結合手(*)が、式(Ia-3)中のA31a 及びA32 と結合するのが好ましい。
【0244】
式(Ia-4)中のL41で表される3価の有機基としては特に制限されず、例えば、下記式(L3)で表される3価の有機基が挙げられる。
【0245】
【化26】
【0246】
式(L3)中、Lは、3価の炭化水素環基又は3価の複素環基を表す。*は結合位置を表す。
【0247】
上記炭化水素環基は、芳香族炭化水素環基であっても、脂肪族炭化水素環基であってもよい。上記炭化水素環基に含まれる炭素数は、6~18が好ましく、6~14がより好ましい。上記複素環基は、芳香族複素環基であっても、脂肪族複素環基であってもよい。上記複素環は、少なくとも1つのN原子、O原子、S原子、又はSe原子を環構造内に有する5~10員環であることが好ましく、5~7員環がより好ましく、5~6員環が更に好ましい。
としては、なかでも、3価の炭化水素環基が好ましく、ベンゼン環基又はアダマンタン環基がより好ましい。ベンゼン環基又はアダマンタン環基は、置換基を有していてもよい。置換基としては特に制限されないが、例えば、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)が挙げられる。
【0248】
また、式(L3)中、LB1~LB3は、各々独立に、単結合又は2価の連結基を表す。LB1~LB3で表される2価の連結基としては特に制限されず、例えば、-CO-、-NR-、-O-、-S-、-SO-、-SO-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~6。直鎖状でも分岐鎖状でもよい)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~15)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~6)、2価の脂肪族複素環基(少なくとも1つのN原子、O原子、S原子、又はSe原子を環構造内に有する5~10員環が好ましく、5~7員環がより好ましく、5~6員環が更に好ましい。)、2価の芳香族複素環基(少なくとも1つのN原子、O原子、S原子、又はSe原子を環構造内に有する5~10員環が好ましく、5~7員環がより好ましく、5~6員環が更に好ましい。)、2価の芳香族炭化水素環基(6~10員環が好ましく、6員環が更に好ましい。)、及びこれらの複数を組み合わせた2価の連結基が挙げられる。上記Rは、水素原子又は1価の有機基が挙げられる。1価の有機基としては特に制限されないが、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1~6)が好ましい。
また、上記アルキレン基、上記シクロアルキレン基、上記アルケニレン基、上記2価の脂肪族複素環基、2価の芳香族複素環基、及び2価の芳香族炭化水素環基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)が挙げられる。
B1~LB3で表される2価の連結基としては、上記のなかでも、-CO-、-NR-、-O-、-S-、-SO-、-SO-、置換基を有していてもよいアルキレン基、及びこれらの複数を組み合わせた2価の連結基が好ましい。
【0249】
B1~LB3で表される2価の連結基としては、なかでも式(L3-1)で表される2価の連結基であるのがより好ましい。
【0250】
【化27】
【0251】
式(L3-1)中、LB11は、単結合又は2価の連結基を表す。
B11で表される2価の連結基としては特に制限されず、例えば、-CO-、-O-、-SO-、-SO-、置換基を有していてもよいアルキレン基(好ましくは炭素数1~6。直鎖状でも分岐鎖状でもよい)、及びこれらの複数を組み合わせた2価の連結基が挙げられる。置換基としては特に制限されず、例えば、ハロゲン原子等が挙げられる。
rは、1~3の整数を表す。
Xfは、上述した式(L2)中のXfと同義であり、好適態様も同じである。
*は結合位置を表す。
【0252】
B1~LB3で表される2価の連結基としては、例えば、*-O-*、*-O-SO-CF-*、*-O-SO-CF-CF-*、*-O-SO-CF-CF-CF-*、及び*-COO-CH-CH-*等が挙げられる。
式(Ia-4)中のL41が式(L3-1)で表される2価の有機基を含み、且つ、式(L3-1)で表される2価の有機基とA42 とが結合する場合、式(L3-1)中に明示される炭素原子側の結合手(*)が、式(Ia-4)中のA42 と結合するのが好ましい。
【0253】
次に、式(Ia-5)で表される化合物について説明する。
【0254】
【化28】
【0255】
式(Ia-5)中、A51a 、A51b 、及びA51c は、各々独立に、1価のアニオン性官能基を表す。ここで、A51a 、A51b 、及びA51c で表される1価のアニオン性官能基とは、上述したアニオン部位A を含む1価の基を意図する。A51a 、A51b 、及びA51c で表される1価のアニオン性官能基としては特に制限されないが、例えば、上述の式(AX-1)~(AX-3)からなる群から選ばれる1価のアニオン性官能基等が挙げられる。
52a 及びA52b は、2価のアニオン性官能基を表す。ここで、A52a 及びA52b で表される2価のアニオン性官能基とは、上述したアニオン部位A を含む2価の基を意図する。A22 で表される2価のアニオン性官能基としては、例えば、例えば、上述の式(BX-8)~(BX-11)からなる群から選ばれる2価のアニオン性官能基等が挙げられる。
【0256】
51a 、M51b 、M51c 、M52a 、及びM52b は、各々独立に、有機カチオンを表す。M51a 、M51b 、M51c 、M52a 、及びM52b で表される有機カチオンとしては、上述のM と同義であり、好適態様も同じである。
51及びL53は、各々独立に、2価の有機基を表す。L51及びL53で表される2価の有機基としては、上述した式(Ia-2)中のL21及びL22と同義であり、好適態様も同じである。
52は、3価の有機基を表す。L52で表される3価の有機基としては、上述した式(Ia-4)中のL41と同義であり、好適態様も同じである。
【0257】
また、上記式(Ia-5)において、M51a 、M51b 、M51c 、M52a 、及びM52b で表される有機カチオンをHに置き換えてなる化合物PIa-5において、A52aHで表される酸性部位に由来する酸解離定数a2-1及びA52bHで表される酸性部位に由来する酸解離定数a2-2は、A51aHに由来する酸解離定数a1-1、A51bHで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1-2、及びA51cHで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1-3よりも大きい。なお、酸解離定数a1-1~a1-3は、上述した酸解離定数a1に該当し、酸解離定数a2-1及びa2-2は、上述した酸解離定数a2に該当する。
なお、A51a 、A51b 、及びA51c は、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、A52a 及びA52b は、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、M51a 、M51b 、M51c 、M52a 、及びM52b は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
また、M51b 、M51c 、M52a 、M52b 、A51a 、A51b 、A51c 、L51、L52、及びL53の少なくとも1つが、置換基として、酸分解性基を有していてもよい。
【0258】
(化合物(II))
化合物(II)は、2つ以上の上記構造部位X及び1つ以上の下記構造部位Zを有する化合物であって、活性光線又は放射線の照射によって、上記構造部位Xに由来する上記第1の酸性部位を2つ以上と上記構造部位Zとを含む酸を発生する化合物である。
構造部位Z:酸を中和可能な非イオン性の部位
【0259】
化合物(II)中、構造部位Xの定義、並びに、A 及びM の定義は、上述した化合物(I)中の構造部位Xの定義、並びに、A 及びM の定義と同義であり、好適態様も同じである。
【0260】
上記化合物(II)において上記構造部位X中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなる化合物PIIにおいて、上記構造部位X中の上記カチオン部位M をHに置き換えてなるHAで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1の好適範囲については、上記化合物PIにおける酸解離定数a1と同じである。
なお、化合物(II)が、例えば、上記構造部位Xに由来する上記第1の酸性部位を2つと上記構造部位Zとを有する酸を発生する化合物である場合、化合物PIIは「2つのHAを有する化合物」に該当する。この化合物PIIの酸解離定数を求めた場合、化合物PIIが「1つのA と1つのHAとを有する化合物」となる際の酸解離定数、及び「1つのA と1つのHAとを有する化合物」が「2つのA を有する化合物」となる際の酸解離定数が、酸解離定数a1に該当する。
【0261】
酸解離定数a1は、上述した酸解離定数の測定方法により求められる。
上記化合物PIIとは、化合物(II)に活性光線又は放射線を照射した場合に、発生する酸に該当する。
なお、上記2つ以上の構造部位Xは、各々同一であっても異なっていてもよい。また、2つ以上の上記A 、及び2つ以上の上記M は、各々同一であっても異なっていてもよい。
【0262】
構造部位Z中の酸を中和可能な非イオン性の部位としては特に制限されず、例えば、プロトンと静電的に相互作用し得る基又は電子を有する官能基を含む部位であることが好ましい。
プロトンと静電的に相互作用し得る基又は電子を有する官能基としては、環状ポリエーテル等のマクロサイクリック構造を有する官能基、又はπ共役に寄与しない非共有電子対をもった窒素原子を有する官能基等が挙げられる。π共役に寄与しない非共有電子対を有する窒素原子とは、例えば、下記式に示す部分構造を有する窒素原子である。
【0263】
【化29】
【0264】
プロトンと静電的に相互作用し得る基又は電子を有する官能基の部分構造としては、例えば、クラウンエーテル構造、アザクラウンエーテル構造、1~3級アミン構造、ピリジン構造、イミダゾール構造、及びピラジン構造等が挙げられ、なかでも、1~3級アミン構造が好ましい。
【0265】
化合物(II)としては特に制限されないが、例えば、下記式(IIa-1)及び下記式(IIa-2)で表される化合物が挙げられる。
【0266】
【化30】
【0267】
上記式(IIa-1)中、A61a 及びA61b は、各々上述した式(Ia-1)中のA11 と同義であり、好適態様も同じである。また、M61a 及びM61b は、各々上述した式(Ia-1)中のM11 と同義であり、好適態様も同じである。
上記式(IIa-1)中、L61及びL62は、各々上述した式(Ia-1)中のLと同義であり、好適態様も同じである。
【0268】
式(IIa-1)中、R2Xは、1価の有機基を表す。R2Xで表される1価の有機基としては特に制限されず、例えば、-CH-が、-CO-、-NH-、-O-、-S-、-SO-、及び-SO-よりなる群より選ばれる1種又は2種以上の組み合わせで置換されていてもよい、アルキル基(好ましくは炭素数1~10。直鎖状でも分岐鎖状でもよい)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~15)、又はアルケニル基(好ましくは炭素数2~6)等が挙げられる。
また、上記アルキレン基、上記シクロアルキレン基、及び上記アルケニレン基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、特に制限されないが、例えば、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)が挙げられる。
【0269】
また、上記式(IIa-1)において、M61a 及びM61b で表される有機カチオンをHに置き換えてなる化合物PIIa-1において、A61aHで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1-7及びA61bHで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1-8は、上述した酸解離定数a1に該当する。
なお、上記化合物(IIa-1)において上記構造部位X中の上記カチオン部位M61a 及びM61b をHに置き換えてなる化合物PIIa-1は、HA61a-L61-N(R2X)-L62-A61bHが該当する。また、化合物PIIa-1と、活性光線又は放射線の照射によって式(IIa-1)で表される化合物から発生する酸は同じである。
また、M61a 、M61b 、A61a 、A61b 、L61、L62、及びR2Xの少なくとも1つが、置換基として、酸分解性基を有していてもよい。
【0270】
上記式(IIa-2)中、A71a 、A71b 、及びA71c は、各々上述した式(Ia-1)中のA11 と同義であり、好適態様も同じである。また、M71a 、M71b 、及び、M71c は、各々上述した式(Ia-1)中のM11 と同義であり、好適態様も同じである。
上記式(IIa-2)中、L71、L72、及びL73は、各々上述した式(Ia-1)中のLと同義であり、好適態様も同じである。
【0271】
また、上記式(IIa-2)において、M71a 、M71b 、及び、M71c で表される有機カチオンをHに置き換えてなる化合物PIIa-2において、A71aHで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1-9、A71bHで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1-10、及びA71cHで表される酸性部位に由来する酸解離定数a1-11は、上述した酸解離定数a1に該当する。
なお、上記化合物(IIa-1)において上記構造部位X中の上記カチオン部位M71a 、M71b 、及び、M71c に置き換えてなる化合物PIIa-2は、HA71a-L71-N(L73-A71cH)-L72-A71bHが該当する。また、化合物PIIa-2と、活性光線又は放射線の照射によって式(IIa-2)で表される化合物から発生する酸は同じである。
また、M71a 、M71b 、M71c 、A71a 、A71b 、A71c 、L71、L72、及びL73の少なくとも1つが、置換基として、酸分解性基を有していてもよい。
【0272】
以下に、特定光酸発生剤が有し得る、有機カチオン及びそれ以外の部位を例示する。
上記有機カチオンは、例えば、式(Ia-1)~式(Ia-5)で表される化合物における、M11 、M12 、M21a 、M21b 、M22 、M31a 、M31b 、M32 、M41a 、M41b 、M42 でM51a 、M51b 、M51c 、M52a 、又はM52b として使用できる。
上記それ以外の部位とは、例えば、式(Ia-1)~式(Ia-5)で表される化合物における、M11 、M12 、M21a 、M21b 、M22 、M31a 、M31b 、M32 、M41a 、M41b 、M42 でM51a 、M51b 、M51c 、M52a 、及びM52b 以外の部分として使用できる。
以下に示す有機カチオン及びそれ以外の部位を適宜組み合わせて、特定光酸発生剤として使用できる。
【0273】
まず、特定光酸発生剤が有し得る、有機カチオンを例示する。
【0274】
【化31】
【0275】
【化32】
【0276】
【化33】
【0277】
次に、特定光酸発生剤が有し得る、有機カチオン以外の部位を例示する。
【0278】
【化34】
【0279】
【化35】
【0280】
特定光酸発生剤の分子量は100~10000が好ましく、100~2500がより好ましく、100~1500が更に好ましい。
【0281】
本発明の組成物が特定光酸発生剤を含有する場合、その含有量(化合物(I)及び(II)の合計含有量)は、組成物の全固形分に対して、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。また、その上限値としては、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましい。
特定光酸発生剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。2種以上使用する場合は、その合計含有量が、上記好適含有量の範囲内であるのが好ましい。
【0282】
(化合物(III))
本発明の組成物は、光酸発生剤(P)として、下記化合物(III)を有してもよい。
化合物(III)は、2つ以上の下記構造部位Xを有する化合物であって、活性光線又は放射線の照射によって、下記構造部位Xに由来する2つの酸性部位を発生する化合物である。
構造部位X:アニオン部位A とカチオン部位M とからなり、且つ活性光線又は放射線の照射によってHAで表される酸性部位を形成する構造部位
【0283】
化合物(III)に含まれる2つ以上の構造部位Xは、各々同一であっても異なっていてもよい。また、2つ以上の上記A 、及び2つ以上の上記M は、各々同一であっても異なっていてもよい。
【0284】
化合物(III)中、構造部位Xの定義、並びに、A 及びM の定義は、上述した化合物(I)中の構造部位Xの定義、並びに、A 及びM の定義と同義であり、好適態様も同じである。
【0285】
光酸発生剤は、「M」で表される化合物であることが好ましい。Mは、有機カチオンを表す。
上記有機カチオンは、上述した式(ZaI)で表されるカチオン(カチオン(ZaI))又は上述した式(ZaII)で表されるカチオン(カチオン(ZaII))が好ましい。
【0286】
<酸拡散制御剤(Q)>
本発明の組成物は、酸拡散制御剤(Q)を含んでいてもよい。
酸拡散制御剤(Q)は、露光時に光酸発生剤(P)等から発生する酸をトラップし、余分な発生酸による、未露光部における酸分解性樹脂の反応を抑制するクエンチャーとして作用するものである。酸拡散制御剤(Q)としては、例えば、塩基性化合物(DA)、放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)、光酸発生剤(P)に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(DD)、及び、カチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE)等が使用できる。
本発明の組成物においては、公知の酸拡散制御剤を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167号明細書の段落0627~0664、米国特許出願公開2015/0004544号明細書の段落0095~0187、米国特許出願公開2016/0237190号明細書の段落0403~0423、及び、米国特許出願公開2016/0274458号明細書の段落0259~0328に開示された公知の化合物を、酸拡散制御剤(Q)として好適に使用できる。
【0287】
塩基性化合物(DA)としては、特開2019-045864号公報の段落0188~0208に記載の繰り返し単位が挙げられる。
【0288】
本発明の組成物では、光酸発生剤(P)に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)を酸拡散制御剤(Q)として使用できる。
光酸発生剤(P)と、光酸発生剤(P)から生じた酸に対して相対的に弱酸である酸を発生するオニウム塩とを混合して用いた場合、活性光線性又は放射線の照射により光酸発生剤(P)から生じた酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると、塩交換により弱酸を放出して強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため、見かけ上、酸が失活して酸拡散を制御できる。
【0289】
光酸発生剤(P)に対して相対的に弱酸となるオニウム塩としては、特開2019-070676号公報の段落0226~0233に記載のオニウム塩が挙げられる。
【0290】
本発明の組成物に酸拡散制御剤(Q)が含まれる場合、酸拡散制御剤(Q)の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全固形分に対して、0.1~10.0質量%が好ましく、0.1~5.0質量%がより好ましい。
本発明の組成物において、酸拡散制御剤(Q)は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0291】
<疎水性樹脂(E)>
本発明の組成物は、疎水性樹脂(E)として、上記樹脂(A)とは異なる疎水性の樹脂を含んでいてもよい。
疎水性樹脂(E)は、レジスト膜の表面に偏在するように設計されることが好ましいが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性物質及び非極性物質を均一に混合することに寄与しなくてもよい。
疎水性樹脂(E)を添加することの効果として、水に対するレジスト膜表面の静的及び動的な接触角の制御、並びに、アウトガスの抑制等が挙げられる。
【0292】
疎水性樹脂(E)は、膜表層への偏在化の観点から、“フッ素原子”、“珪素原子”、及び、“樹脂の側鎖部分に含まれたCH部分構造”のいずれか1種以上を有することが好ましく、2種以上を有することがより好ましい。また、疎水性樹脂(E)は、炭素数5以上の炭化水素基を有することが好ましい。これらの基は樹脂の主鎖中に有していても、側鎖に置換していてもよい。
【0293】
疎水性樹脂(E)が、フッ素原子及び/又は珪素原子を含む場合、疎水性樹脂における上記フッ素原子及び/又は珪素原子は、樹脂の主鎖中に含まれていてもよく、側鎖中に含まれていてもよい。
【0294】
疎水性樹脂(E)がフッ素原子を有している場合、フッ素原子を有する部分構造としては、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、又は、フッ素原子を有するアリール基が好ましい。
フッ素原子を有するアルキル基(好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~4)は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するシクロアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された単環又は多環のシクロアルキル基であり、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するアリール基としては、フェニル基、及び、ナフチル基等のアリール基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられ、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
フッ素原子又は珪素原子を有する繰り返し単位の例としては、US2012/0251948の段落0519に例示されたものが挙げられる。
【0295】
また、上記したように、疎水性樹脂(E)は、側鎖部分にCH部分構造を有することも好ましい。
ここで、疎水性樹脂中の側鎖部分が有するCH部分構造は、エチル基、及び、プロピル基等を有するCH部分構造を含む。
一方、疎水性樹脂(E)の主鎖に直接結合しているメチル基(例えば、メタクリル酸構造を有する繰り返し単位のα-メチル基)は、主鎖の影響により疎水性樹脂(E)の表面偏在化への寄与が小さいため、本発明におけるCH部分構造に含まれないものとする。
【0296】
疎水性樹脂(E)に関しては、特開2014-010245号公報の段落0348~0415の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0297】
なお、疎水性樹脂(E)としては、特開2011-248019号公報、特開2010-175859号公報、特開2012-032544号公報に記載された樹脂も、好ましく用いることができる。
【0298】
本発明の組成物が疎水性樹脂(E)を含む場合、疎水性樹脂(E)の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.01~20質量%が好ましく、0.1~15質量%がより好ましい。
【0299】
<溶剤(F)>
本発明の組成物は、溶剤(F)を含んでいてもよい。
本発明の組成物がEUV用の感放射線性樹脂組成物である場合、溶剤(F)は、(M1)プロピレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、並びに、(M2)プロピレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸エステル、酢酸エステル、アルコキシプロピオン酸エステル、鎖状ケトン、環状ケトン、ラクトン、及び、アルキレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1つの少なくとも一方を含むことが好ましい。この場合の溶剤は、成分(M1)及び(M2)以外の成分を更に含んでいてもよい。
成分(M1)又は(M2)を含む溶剤は、上述した樹脂(A)とを組み合わせて用いると、組成物の塗布性が向上すると共に、現像欠陥数の少ないパターンが形成可能となるため、好ましい。
【0300】
また、本発明の組成物がArF用の感放射線性樹脂組成物である場合、溶剤(F)としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4~10)、環を含んでいてもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4~10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及び、ピルビン酸アルキル等の有機溶剤が挙げられる。
【0301】
本発明の組成物中の溶剤(F)の含有量は、固形分濃度が0.5~40質量%となるように定めることが好ましい。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、固形分濃度は10質量%以上であることが好ましい。
【0302】
<界面活性剤(H)>
本発明の組成物は、界面活性剤(H)を含んでいてもよい。界面活性剤(H)を含むことにより、密着性により優れ、現像欠陥のより少ないパターンを形成できる。
界面活性剤(H)としては、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤が好ましい。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤としては、例えば、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落0276に記載の界面活性剤が挙げられる。また、エフトップEF301又はEF303(新秋田化成(株)製);フロラードFC430、431又は4430(住友スリーエム(株)製);メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120又はR08(DIC(株)製);サーフロンS-382、SC101、102、103、104、105又は106(旭硝子(株)製);トロイゾルS-366(トロイケミカル(株)製);GF-300又はGF-150(東亞合成化学(株)製)、サーフロンS-393(セイミケミカル(株)製);エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、EF352、EF801、EF802又はEF601((株)ジェムコ製);PF636、PF656、PF6320又はPF6520(OMNOVA社製);KH-20(旭化成(株)製);FTX-204G、208G、218G、230G、204D、208D、212D、218D又は222D((株)ネオス製)を用いてもよい。なお、ポリシロキサンポリマーKP-341(信越化学工業(株)製)も、シリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0303】
また、界面活性剤(H)は、上記に示すような公知の界面活性剤の他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)又はオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物を用いて合成してもよい。具体的には、このフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を備えた重合体を、界面活性剤(H)として用いてもよい。このフルオロ脂肪族化合物は、例えば、特開2002-90991号公報に記載された方法によって合成できる。
フルオロ脂肪族基を有する重合体としては、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート及び/又は(ポリ(オキシアルキレン))メタクリレートとの共重合体が好ましく、不規則に分布しているものでも、ブロック共重合していてもよい。また、ポリ(オキシアルキレン)基としては、ポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基、及び、ポリ(オキシブチレン)基が挙げられ、また、ポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとオキシエチレンとのブロック連結体)やポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック連結体)等同じ鎖長内に異なる鎖長のアルキレンを有するようなユニットでもよい。更に、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体は2元共重合体ばかりでなく、異なる2種以上のフルオロ脂肪族基を有するモノマー、及び、異なる2種以上の(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)等を同時に共重合した3元系以上の共重合体でもよい。
例えば、市販の界面活性剤としては、メガファックF178、F-470、F-473、F-475、F-476、F-472(DIC(株)製)、C13基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体が挙げられる。
また、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落0280に記載されているフッ素系及び/又はシリコン系以外の界面活性剤を使用してもよい。
【0304】
これら界面活性剤(H)は、1種を単独で用いてもよく、又は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0305】
界面活性剤(H)の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.0001~2質量%が好ましく、0.0005~1質量%がより好ましい。
【0306】
本発明の組成物は、EUV光用感光性組成物としても好適に用いられる。
EUV光は波長13.5nmであり、ArF(波長193nm)光等に比べて、より短波長であるため、同じ感度で露光された際の入射フォトン数が少ない。そのため、確率的にフォトンの数がばらつく“フォトンショットノイズ”の影響が大きく、LERの悪化およびブリッジ欠陥を招く。フォトンショットノイズを減らすには、露光量を大きくして入射フォトン数を増やす方法があるが、高感度化の要求とトレードオフとなる。
【0307】
下記式(1)で求められるA値が高い場合は、組成物より形成されるレジスト膜のEUV光及び電子線の吸収効率が高くなるなり、フォトンショットノイズの低減に有効である。A値は、レジスト膜の質量割合のEUV光及び電子線の吸収効率を表す。
式(1):A=([H]×0.04+[C]×1.0+[N]×2.1+[O]×3.6+[F]×5.6+[S]×1.5+[I]×39.5)/([H]×1+[C]×12+[N]×14+[O]×16+[F]×19+[S]×32+[I]×127)
A値は0.120以上が好ましい。上限は特に制限されないが、A値が大きすぎる場合、レジスト膜のEUV光及び電子線透過率が低下し、レジスト膜中の光学像プロファイルが劣化し、結果として良好なパターン形状が得られにくくなるため、0.240以下が好ましく、0.220以下がより好ましい。
【0308】
なお、式(1)中、[H]は、感放射線性樹脂組成物中の全固形分の全原子に対する、全固形分由来の水素原子のモル比率を表し、[C]は、感放射線性樹脂組成物中の全固形分の全原子に対する、全固形分由来の炭素原子のモル比率を表し、[N]は、感放射線性樹脂組成物中の全固形分の全原子に対する、全固形分由来の窒素原子のモル比率を表し、[O]は、感放射線性樹脂組成物中の全固形分の全原子に対する、全固形分由来の酸素原子のモル比率を表し、[F]は、感放射線性樹脂組成物中の全固形分の全原子に対する、全固形分由来のフッ素原子のモル比率を表し、[S]は、感放射線性樹脂組成物中の全固形分の全原子に対する、全固形分由来の硫黄原子のモル比率を表し、[I]は、感放射線性樹脂組成物中の全固形分の全原子に対する、全固形分由来のヨウ素原子のモル比率を表す。
例えば、組成物が酸の作用により極性が増大する樹脂(酸分解性樹脂)、光酸発生剤、酸拡散制御剤、及び溶剤を含む場合、上記樹脂、上記光酸発生剤、及び上記酸拡散制御剤が固形分に該当する。つまり、全固形分の全原子とは、上記樹脂由来の全原子、上記光酸発生剤由来の全原子、及び上記酸拡散制御剤由来の全原子の合計に該当する。例えば、[H]は、全固形分の全原子に対する、全固形分由来の水素原子のモル比率を表し、上記例に基づいて説明すると、[H]は、上記樹脂由来の全原子、上記光酸発生剤由来の全原子、及び上記酸拡散制御剤由来の全原子の合計に対する、上記樹脂由来の水素原子、上記光酸発生剤由来の水素原子、及び上記酸拡散制御剤由来の水素原子の合計のモル比率を表すことになる。
【0309】
A値の算出は、組成物中の全固形分の構成成分の構造、及び含有量が既知の場合には、含有される原子数比を計算し、算出できる。また、構成成分が未知の場合であっても、組成物の溶剤成分を蒸発させて得られたレジスト膜に対して、元素分析等の解析的な手法によって構成原子数比を算出可能である。
【0310】
<その他の添加剤>
本発明の組成物は、架橋剤、アルカリ可溶性樹脂、溶解阻止化合物、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、及び/又は、現像液に対する溶解性を促進させる化合物を更に含んでいてもよい。
【実施例0311】
以下に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されない。
【0312】
<樹脂(A)の合成>
実施例及び比較例において、樹脂(A)として、以下に例示する樹脂A-1~A-61を用いた。樹脂A-1~A-61はいずれも、公知技術に基づいて合成したものを用いた。
表7に、樹脂(A)中の各繰り返し単位の組成比(モル比;左から順に対応)、重量平均分子量(Mw)、及び、分散度(Mw/Mn)を示す。
なお、樹脂A-1~A-61の重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)は、上述のGPC法(キャリア:テトラヒドロフラン(THF))により測定したポリスチレン換算値である。また、樹脂中の繰り返し単位の組成比(モル%比)は、13C-NMR(nuclear magnetic resonance)により測定した。
【0313】
【表7】
【0314】
【表8】
【0315】
【化36】
【0316】
【化37】
【0317】
【化38】
【0318】
【化39】
【0319】
【化40】
【0320】
【化41】
【0321】
【化42】
【0322】
【化43】
【0323】
【化44】
【0324】
【化45】
【0325】
【化46】
【0326】
【化47】
【0327】
【化48】
【0328】
【化49】
【0329】
【化50】
【0330】
【化51】
【0331】
【化52】
【0332】
<光酸発生剤>
実施例及び比較例において光酸発生剤として使用した化合物P-1~P-63の構造を以下に示す。
【0333】
【化53】
【0334】
【化54】
【0335】
【化55】
【0336】
【化56】
【0337】
【化57】
【0338】
【化58】
【0339】
【化59】
【0340】
【化60】
【0341】
【化61】
【0342】
【化62】
【0343】
【化63】
【0344】
【化64】
【0345】
【化65】
【0346】
【化66】
【0347】
【化67】
【0348】
【化68】
【0349】
【化69】
【0350】
【化70】
【0351】
<酸拡散制御剤(Q)>
実施例及び比較例において酸拡散制御剤として使用した化合物Q-1~Q-23の構造を以下に示す。
【0352】
【化71】
【0353】
【化72】
【0354】
【化73】
【0355】
【化74】
【0356】
<疎水性樹脂(E)>
実施例及び比較例において疎水性樹脂(E)として使用した樹脂E-1~E-17の構造を以下に示す。樹脂E-1~E-17はいずれも、公知技術に基づいて合成したものを用いた。
表8に、疎水性樹脂(E)中の各繰り返し単位の組成比(モル比;左から順に対応)、重量平均分子量(Mw)、及び、分散度(Mw/Mn)を示す。
なお、樹脂E-1~E-17の重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)は、上述のGPC法(キャリア:テトラヒドロフラン(THF))により測定したポリスチレン換算値である。また、樹脂中の繰り返し単位の組成比(モル%比)は、13C-NMR(nuclear magnetic resonance)により測定した。
【0357】
【表9】
【0358】
【化75】
【0359】
【化76】
【0360】
【化77】
【0361】
【化78】
【0362】
【化79】
【0363】
<溶剤>
実施例及び比較例において使用した溶剤を以下に示す。
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
EL:エチルラクテート
BA:酢酸ブチル
MAK:2-ヘプタノン
MMP:3-メトキシプロピオン酸メチル
γ-BL:γ-ブチロラクトン
CyHx:シクロヘキサノン
【0364】
<界面活性剤(H)>
実施例及び比較例において使用した界面活性剤を以下に示す。
H-1:メガファックR-41(DIC(株)製)
H-2:メガファックF176(DIC(株)製)
H-3:メガファックR08(DIC(株)製)
【0365】
<添加剤(X)>
実施例及び比較例において使用した添加剤を以下に示す。
【0366】
【化80】
【0367】
X-5:ポリビニルメチルエーテルルトナールM40(BASF社製)
X-6:KF-53(信越化学工業株式会社製)
X-7:サリチル酸
【0368】
<実施例及び比較例>
温度22.1℃、湿度60%、気圧101.2kPaである、クラス6(国際統一規格ISO 14644-1のクラス表記)のクリーンルーム内において後述する操作を実施した。
まず、以下の手順に従って、感放射線性樹脂組成物(以下、「レジスト組成物」ともいう。)の原料のろ過を実施するためのフィルターを用意した。
具体的には、まず、表12~13中の「第2フィルター」欄に記載のフィルターを用意した。なお、表12~13中に記載の「樹脂」欄は、表9~11に記載の樹脂をろ過するための用いられる第2フィルターを表し、「低分子成分」欄は、表9~11に記載の樹脂及び溶剤以外の他の成分をろ過するために用いられる第2フィルターを表し、「溶剤」欄は、表9~11に記載の溶剤をろ過するために用いられる第2フィルターを表す。例えば、製造法KJ-23においては、樹脂のろ過に使用するためのフィルターとして「0.5umNylon」及び「0.3umPE」を用意し、低分子成分のろ過に使用するためのフィルターとして「0.01umNylon」及び「0.005umPE」を用意し、溶剤のろ過に使用するためのフィルターとして「0.01umNylon」及び「0.005umPE」を用意した。
次に、製造法KJ-21~KJ-28、及び、製造法AJ-21~AJ-28に関しては、更に以下の操作を実施した。まず、図1に記載の装置と同様の装置を用意して、第1フィルター18Aの位置に0.1μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルターを配置して、第1フィルター18Bの位置に表12~13中の「第2フィルター」欄に記載のフィルターを1種配置する。次に、配置された第2フィルターの下流側に配置されるバルブを閉めて、ポンプを使用して、表12~13に記載の第2溶液を撹拌槽から第2フィルター側に供給して、第2フィルターを所定の溶液にて浸漬させた。浸漬時間及び圧力の条件は表12~13の「時間」及び「圧力」の通りである。なお、「時間」欄の「1h」は1時間を表す。また、表12~13において「循環回数」欄に記載がある場合、その数値の回数だけ、第2フィルターを通液した第2溶液を第2フィルターの上流側に戻して、再度、第2フィルターに通液させる処理を繰り返した。また、第2溶液が第2フィルターを通液する際の線速度を、表12~13に記載の「線速度」欄に示す値となるように調整した。
上記操作によって、原料をろ過するための第2フィルターを用意した。上記処理は第2フィルター1つずつ実施し、複数の第2フィルターを洗浄する際には、第2フィルター毎に実施した。
【0369】
なお、表12~13中の「第2溶液」欄の「特定溶剤」とは、各製造法が適用されるレジスト組成物中の有機溶剤と同じ溶液を意味する。例えば、表14の実施例K-21においては「レジスト1」(レジスト組成物1に該当)を製造する際に、製造法KJ-21を採用している。よって、その際の第2溶液としては、レジスト組成物1で使用されているPGMEAとPGMEとの混合液(質量比:50/50)を用いた。
【0370】
次に、レジスト組成物のろ過を実施するためのフィルターを用意した。
具体的には、まず、表12~13中の「第1フィルター」欄に記載のフィルターを用意した。例えば、製造法KJ-23においては、樹脂のろ過に使用するためのフィルターとして「0.2umNylon」及び「0.15umPE」を用意した。
次に、後述する洗浄方法1~3のいずれかの方法で第1フィルターの洗浄を実施した。
なお、洗浄方法1においては、感放射線性樹脂組成物の製造装置内で第1フィルターの洗浄を実施して、第1フィルターを取り出さずに、そのまま後述する感放射線性樹脂組成物のろ過処理を実施した。
【0371】
(洗浄方法1)
表12~13に記載の第1溶液を図1に記載の撹拌槽10に投入した。
なお、表12~13中の「第1溶液」欄の「特定溶剤」とは、各製造法が適用されるレジスト組成物中の有機溶剤と同じ溶液を意味する。例えば、表14の実施例K-4においては「レジスト1」(レジスト組成物1に該当)を製造する際に、製造法KJ-4を採用している。よって、その際の第1溶液としては、レジスト組成物1で使用されているPGMEAとPGMEとの混合液(質量比:50/50)を用いた。
また、表12~13中の「第1溶液」欄の「製造レジスト」とは、各製造法が適用されるレジスト組成物自体を第1溶液として用いることを意味する。例えば、表14の実施例K-8においては「レジスト1」(レジスト組成物1に該当)を製造する際に、製造法KJ-8を採用している。よって、その際の第1溶液としては、レジスト組成物1を用いた。
【0372】
第1溶液が「製造レジスト」以外の場合、第1溶液を0.1μmのPTFEフィルターを通して、撹拌槽10に投入した。
また、第1溶液が「製造レジスト」の場合、後述する(レジスト組成物の調製)に記載のレジスト組成物の調製方法に従って、撹拌槽10内でレジスト組成物を調製した。
【0373】
次に、図1の製造装置100中の1段目の第1フィルター18Aの位置に、所定のフィルターを配置した。例えば、製造法KJ-1においては、「0.2umNylon」及び「0.15umPE」が使用されるが、1段目の第1フィルターとして、「0.2umNylon」を配置した。
その後、1段目の第1フィルターの2次側のバルブを閉めて、ハウジング内を第1溶液で満たし、表12~13中の「時間」欄に記載の時間(なお、「h」は時間を表す。)だけ保持して、第1フィルターを第1溶液中に浸漬させた。その際、表12~13において「圧力」欄の表示がある場合、ポンプによる送液を続けた状態で、第1フィルターを配置するハウジング内が表12~13中の圧力となるようポンプの送液レートを調節した。
循環ろ過を実施しない場合には、上記浸漬処理後、製造装置100中の全てのバルブを開き、ポンプを使用して、第1溶液を1段目の第1フィルターに15kg送液し、第1フィルターを通過した第1溶液を充填ノズルより排出(廃棄)した。
また、循環ろ過を実施する場合には、上記浸漬処理後、浸漬処理に用いた第1溶液を排出して、新たな第1溶液を用いて、第1フィルター18Aの位置に配置した第1フィルターを通液した第1溶液を、撹拌槽と第1フィルター18Aとの間に戻して、第1溶液を循環させる循環ろ過を実施した。その際、第1溶液15kg×表中の回数分の液量が第1フィルターを流れるまで第1溶液を循環した。その後、充填ノズルより第1溶液を排出した。
また、第1溶液が第1フィルターを通液する際の線速度を、表12~13に記載の「線速度」欄に示す値となるように調整した。
なお、第1溶液が「製造レジスト」以外の場合、上記処理終了後、撹拌槽内の残液を廃棄した。
また、第1溶液が「製造レジスト」である場合、後述する(レジスト組成物の調製)の手順に従って撹拌槽内に調製したレジスト組成物の一部を使用して、上記処理を実施した。
上記では、1段目の第1フィルターについてのみその手順を述べたが、第1フィルターが複数使用されている場合、2段目以降の第1フィルターに対しても、上記と同様の洗浄処理を実施した。例えば、製造法KJ-1においては、「0.2umNylon」及び「0.15umPE」が使用されているが、「0.2umNylon」に対してPGMEAを用いた浸漬時間1時間の浸漬処理を実施し、「0.15umPE」に対しても2段目の第1フィルター18Bの位置に「0.15umPE」を配置して上記と同様の手順に従ってPGMEAを用いた浸漬時間1時間の浸漬処理を実施した。
【0374】
(洗浄方法2)
表12~13に記載の第1溶液を、図1の製造装置100中に記載の撹拌槽10に投入した。
なお、第1溶液を0.1μmのPTFEフィルターを通して、撹拌槽10に投入した。
次に、図1中の第1フィルター18Aの位置に0.1μmのPTFEフィルターを配置して、第1フィルター18Bの位置に表12~13の第1フィルター欄に記載の所定のフィルターを1つ配置した。
その後、第1フィルターの2次側のバルブを閉めて、ハウジング内を第1溶液で満たし、表12~13中の「時間」欄に記載の時間(なお、「h」は時間を表す。)だけ保持して、第1フィルターを第1溶液中に浸漬させた。その際、表12~13において「圧力」欄の表示がある場合、ポンプによる送液を続けた状態で、第1フィルターを配置するハウジング内が表12~13中の圧力となるようポンプの送液レートを調節した。
循環ろ過を実施しない場合には、上記浸漬処理後、製造装置100中の全てのバルブを開き、ポンプを使用して、第1溶液を第1フィルターに15kg送液し、第1フィルターを通過した第1溶液を充填ノズルより排出(廃棄)した。
また、循環ろ過を実施する場合には、上記浸漬処理後、浸漬処理に用いた第1溶液を排出して、新たな第1溶液を用いて、第1フィルターを通液した第1溶液を、撹拌槽とPTFEフィルターとの間に戻して、第1溶液を循環させる循環ろ過を実施した。その際、第1溶液15kg×表中の回数分の液量が第1フィルターを流れるまで第1溶液を循環した。その後、充填ノズルより第1溶液を排出した。
また、第1溶液が第1フィルターを通液する際の線速度を、表12~13に記載の「線速度」欄に示す値となるように調整した。
洗浄後の第1フィルターはハウジングから取りだし、内部がフッ素樹脂でコーティングされた容器内に移して、保管した。
なお、各製造法で使用される第1フィルター毎に上記処理を実施した。例えば、製造法KJ-4においては、「0.2umNylon」及び「0.15umPE」をそれぞれ用いて上記処理を実施して、洗浄された第1フィルターを2つ得た。
【0375】
(洗浄方法3)
内部がフッ素樹脂でコーティングされた容器に、0.1μmのPTFEフィルターを通した表12~13の「第1溶液」欄に記載の第1溶液を投入した。
次に、第1溶液中に表12~13の「第1フィルター」欄に記載の第1フィルターが浸漬するように配置し、密閉した状態で表中の「時間」欄に記載の時間(なお、「h」は時間を表す。)だけ浸漬させた。
浸漬後、別途準備した内部がフッ素樹脂でコーティングされた容器内に移して、保管した。
なお、各製造法で使用される第1フィルター毎に上記処理を実施した。例えば、製造法KJ-6においては、「0.2um Nylon」及び「0.15umPE」をそれぞれ用いて上記処理を実施して、洗浄された第1フィルターを2つ得た。
【0376】
(レジスト組成物の調製)
クリーンルーム内に配置された図1と同様のレジスト組成物の製造装置内の撹拌槽(容量200L)に、表9~11に記載のレジスト組成物(レジスト1~64)の組成となるように、各成分を投入した。
なお、上記(洗浄方法1)を実施した場合には、洗浄処理が施された第1フィルターが配置された製造装置を用いた。また、上述したように、(洗浄方法1)において「製造レジスト」を第1溶液とする場合、既にこの方法で撹拌槽内にレジスト組成物が形成されている状態となっている。
【0377】
その際、樹脂の投入に関しては、各レジスト組成物の調製に使用されている溶剤に樹脂を溶解させた溶液を調製して、表12~13の「第2フィルター」欄の「樹脂」欄に記載の第2フィルターに通液させて、撹拌槽に投入した。なお、上記溶液中の樹脂の固形分濃度に関しては、表9中のレジスト組成物(レジスト1~15)の樹脂の場合には50質量%であり、表10中のレジスト組成物(レジスト16~31)の樹脂の場合には10質量%であり、表11中のレジスト組成物(レジスト32~64)の樹脂の場合には5質量であった。
また、溶剤の投入に関しては、表12~13の「第2フィルター」欄の「溶剤」欄に記載の第2フィルターに通液させて、撹拌槽に投入した。
更に、樹脂及び溶剤以外の他の成分(例えば、光酸発生剤)に関しては、各レジスト組成物の調製に使用されている溶剤に他の成分を溶解させた溶液を調製して、表12~13の「第2フィルター」欄の「低分子成分」欄に記載の第2フィルターに通液させて、撹拌槽に投入した。なお、上記溶液中の他の成分の固形分濃度に関しては、表9中のレジスト組成物(レジスト1~15)の場合には20質量%であり、表10中のレジスト組成物(レジスト16~31)の場合には3質量%であり、表11中のレジスト組成物(レジスト32~64)の場合には3質量であった。
各成分が投入された後の撹拌槽内の空隙率(空間(空隙)が占める割合)は15体積%であった。言い換えれば、撹拌槽内の混合物の占有率は85体積%であった。
次に、図1に示すような、撹拌槽内に配置された、撹拌翼が取り付けられた撹拌軸を回転させて、各成分を撹拌混合した。
【0378】
次に、図1に示すような、第1フィルター18A及び第1フィルター18B等の位置(撹拌槽より下流側にある循環配管上の位置)に、表12~13の「第1フィルター」欄に記載の第1フィルターを配置した。その際、後述するように、表12~13の「第1フィルター」欄の左側から右側に向かって記載される順番に基づいて、上流側から第1フィルターを配置した。例えば、製造法KJ-19においては、「0.3umPE」、「0.2umNylon」、「0.15umPE」の順番に上流側からフィルターを配置した。
なお、上述したように、(洗浄方法1)を実施した場合には、既に製造装置の所定の位置に洗浄処理が施された第1フィルターが配置されていた。
【0379】
次に、撹拌槽に調製されたレジスト組成物の一部を1段目の第1フィルターに供給して、1段目の第1フィルター内に残存している溶液を押し出して、製造装置内の1段目の第1フィルターの2次側に配置される排出口から排出した。
製造装置内の配置される2段目以降の第1フィルターに対しても、上記と同様の処理を実施して、各第1フィルター内の残存物を押し出して除去した。
【0380】
その後、撹拌槽に連結した循環配管に、撹拌槽内のレジスト組成物を送液ポンプによって送液した。なお、その際、循環配管を通ってレジスト組成物を循環することによりフィルターによるろ過が実施された。上記循環は、混合物がフィルターを通過した際の液量が、配管の総液量の4倍量となるまで実施した(工程2の実施)。
【0381】
上記循環ろ過終了後、充填バルブを開き、レジスト組成物を容器に充填した。充填の際、5つの容器に小分けしてレジスト組成物を充填した。
【0382】
表9~11中、「TMAH(2.38%)」は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの含有量が2.38質量%である水溶液を表す。
「TMAH(1.00%)」は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの含有量が1.00質量%である水溶液を表す。
「TMAH(3.00%)」は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの含有量が3.00質量%である水溶液を意味する。
「nBA」は、酢酸ブチルを表す。
表9~11中、各成分の「含有量」欄は、各成分のレジスト組成物中の全固形分に対する含有量(質量%)を表す。
表9~11中、「溶剤」欄の数値は、各成分の含有質量比を表す。
表9~11中、「固形分」欄は、レジスト組成物中の全固形分濃度(質量%)を表す。
【0383】
表12~13中、「XumY」の表記において、Xはポアサイズ(μm)を表し、Yはフィルターの材料を表す。「Nylon」は、ナイロン6を表し、「PE」はポリエチレンを表す。例えば、「0.02umNylon」は、ポアサイズ0.02μmのナイロン6からなるフィルターを意味する。
表12~13中、「第1フィルター」欄及び「第2フィルター」欄において、「A+B」という表記は、Aと記載されるフィルター及びBと記載されるフィルターの2つのフィルターを用いることを意味する。フィルターを使用する際に、左側に記載される「A」のフィルターから先に溶液を通液させる。つまり、「A」のフィルターを上流側に配置する。例えば、表12中の製造法KJ-1の「第1フィルター」欄においては「0.2umNylon+0.15umPE」と記載されており、これはポアサイズ0.2μmのナイロン6からなる第1フィルターと、ポアサイズ0.15μmのポリエチレンからなる第1フィルターとを使用することを意味する。また、溶液(例えば、第1溶液、及び、レジスト組成物)を通液させる際には、ポアサイズ0.2μmのナイロン6からなる第1フィルターを先に通液させて、その後、ポアサイズ0.15μmのポリエチレンからなる第1フィルターを通液させることを意味する。
表12~13中、「第1フィルター」欄及び「第2フィルター」欄において、「A+B+C」という表記は、Aと記載されるフィルター、Bと記載されるフィルター、及び、Cと記載されるフィルターの3つのフィルターを用いることを意味する。フィルターを使用する際に、「A」と記載されるフィルター、「B」と記載されるフィルター、及び、「C」と記載されるフィルターの順に溶液を通液させる。
【0384】
表12~13中、「向き」欄は、フィルターを通液する溶液が鉛直方向上方から下方に向かって通液する際には「下向き」、鉛直方向下方から上方に向かって通液する際には「上向き」と記載する。
【0385】
【表10】
【0386】
【表11】
【0387】
【表12】
【0388】
【表13】
【0389】
【表14】
【0390】
【表15】
【0391】
<実施例K-1~K-50、比較例K-1~K-16:KrF露光実験>
上述したように、レジスト組成物は5つの小分けした容器に充填されていた。
そこで、下記(パターン形成1)の方法に従って、小分けられた容器内のレジスト組成物をそれぞれ用いて、孤立スペースパターンを形成した。
具体的には、後述する(パターン形成1)の方法を実施する際、小分けされた5つの容器に充填されているレジスト組成物をそれぞれ用いて、レジスト組成物毎に5枚のシリコンウエハ上に孤立スペースパターンを形成した。つまり、5つの小分けされたレジスト組成物を用いて、小分けされたレジスト組成物毎に5枚のシリコンウエハ上に孤立スペースパターンを形成し、合計25枚のシリコンウエハ上に孤立スペースパターンを形成した。
次に、1つの孤立スペースパターン当たりスペース線幅を60箇所測定し、その平均値を算出する操作を、25枚のシリコンウエハ上の孤立スペースパターンに対して実施して、孤立スペースパターン毎の平均値を求めた。次に、得られた25個の平均値の値を用いて、これらの標準偏差σを求めて、標準偏差の3倍値に該当する3σを算出した。3σの値が小さいほど優れた効果を示す。結果を、表14及び15に示す。
なお、パターンサイズの測定は、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製9380II)を用いた。
【0392】
(パターン形成1)
東京エレクトロン製スピンコーター「ACT-8」を用いて、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理を施したシリコンウエハ(8インチ口径)上に、反射防止膜を設けることなく、表14~15の「レジスト組成物」欄に記載の所定の製造法により調製したレジスト組成物(レジスト1~15)をそれぞれ塗布し、表9に示す各レジスト組成物に対応するPB条件でベークして、表9に示す各レジスト組成物に対応する膜厚のレジスト膜を形成した。
得られたレジスト膜に対して、KrFエキシマレーザースキャナー(ASML製;PAS5500/850C、波長248nm、NA=0.60、σ=0.75)を用いて、パターンのスペース線幅が5μm、ピッチ幅が20μmとなるような、ラインアンドスペースパターンを有するマスクを介して、パターン露光を行った。
露光後のレジスト膜を表9に示す各レジスト組成物に対応するPEB条件でベークした後、表9に示す各レジスト組成物に対応する現像液で30秒間現像し、これをスピン乾燥してスペース線幅が5μm、ピッチ幅が20μmの孤立スペースパターンを得た。
【0393】
【表16】
【0394】
【表17】
【0395】
上記表に示すように、本発明の製造方法によれば、所望の効果が得られることが確認された。例えば、レジスト組成物として「レジスト2」を用いた実施例K-29と比較例K-3との比較のように、本発明の製造方法を実施した実施例K-29のほうが優れた効果を示した。
なかでも、実施例K-1及びK-2の比較より、第1有機溶剤のSP値が17.0MPa1/2以上25.0MPa1/2未満である場合、より効果が優れることが確認された。
また、実施例K-1、K-3及びK-8の比較より、第1溶液として、レジスト組成物を用いた場合、より効果が優れることが確認された。
また、実施例K-8、K-10~12の比較より、所定の圧力下にて第1フィルターの浸漬処理を実施した場合、より効果が優れることが確認された。
また、実施例K-12及びK-13の比較より、フィルターを通液する溶液の通液方向が鉛直方向下方から上方の場合、より効果が優れることが確認された。
また、実施例K-21~K-24と他の実施例との比較より、工程3及び4を実施した場合、より効果が優れることが確認された。
また、実施例K-22、K-43、K-44の比較より、線速度が低いほど、より効果が優れることが確認された。
【0396】
<実施例A-1~A-51、比較例A-1~A-17:ArF露光実験>
上述したように、レジスト組成物は5つの小分けした容器に充填されていた。
そこで、下記(パターン形成2)の方法に従って、小分けられた容器内のレジスト組成物をそれぞれ用いて、ホールパターンを製造した。
具体的には、後述する(パターン形成2)の方法を実施する際には、小分けされた5つの容器に充填されているレジスト組成物をそれぞれ用いて、レジスト組成物毎に5枚のシリコンウエハ上にホールパターンを形成した。つまり、5つの小分けされたレジスト組成物を用いて、小分けされたレジスト組成物毎に5枚のシリコンウエハ上にホールパターンを形成し、合計25枚のシリコンウエハ上にホールパターンを形成した。
次に、1つのホールパターン当たりホール部を60箇所測定し、その平均値を算出する操作を、25枚のシリコンウエハ上のホールパターンに対して実施して、ホールパターン毎の平均値を求めた。次に、得られた25個の平均値の値を用いて、これらの標準偏差σを求めて、標準偏差の3倍値に該当する3σを算出した。3σの値が小さいほど優れた効果を示す。結果を、表16及び17に示す。
なお、パターンサイズの測定は、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製9380II)を用いた。
【0397】
(パターン形成2)
東京エレクトロン製スピンコーター「ACT-12」を用いて、シリコンウエハ(12インチ口径)上に有機反射防止膜形成用組成物ARC29SR(Brewer Science社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークして、膜厚98nmの反射防止膜を形成した。
得られた反射防止膜上に、同装置を用いて表16~17の「レジスト組成物」欄に記載の所定の製造法にて調製したレジスト組成物(レジスト16~31)を塗布し、表10に示す各レジスト組成物に対応するPB条件でベークして、表10に示す各レジスト組成物に対応する膜厚のレジスト膜を形成した。
得られたレジスト膜に対して、ArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製;XT1700i、NA1.20、C-Quad、アウターシグマ0.900、インナーシグマ0.812、XY偏向)を用いて、ホール部分が45nmであり且つホール間のピッチが90nmである正方配列の6%ハーフトーンマスクを介して、パターン露光を行った。液浸液は、超純水を使用した。
露光後のレジスト膜を表10に示す各レジスト組成物に対応するPEB条件でベークした後、表10に示す各レジスト組成物に対応する現像液で30秒間現像し、次いで純水で30秒間リンスした。その後、これをスピン乾燥して孔径45nmのホールパターンを得た。
【0398】
【表18】
【0399】
【表19】
【0400】
上記表に示すように、本発明の製造方法によれば、所望の効果が得られることが確認された。例えば、レジスト組成物として「レジスト17」を用いた実施例A-30と比較例A-3との比較のように、本発明の製造方法を実施した実施例A-30のほうが優れた効果を示した。
なかでも、実施例A-1及びA-2の比較より、第1有機溶剤のSP値が17.0MPa1/2以上25.0MPa1/2未満である場合、より効果が優れることが確認された。
また、実施例A-1、A-3及びA-8の比較より、第1溶液として、感放射線性樹脂組成物を用いた場合、より効果が優れることが確認された。
また、実施例A-8、A-10~12の比較より、所定の圧力下にて第1フィルターの浸漬処理を実施した場合、より効果が優れることが確認された。
また、実施例A-12及びA-13の比較より、フィルターを通液する溶液の通液方向が鉛直方向下方から上方の場合、より効果が優れることが確認された。
また、実施例A-21~A-24と他の実施例との比較より、工程3及び4を実施した場合、より効果が優れることが確認された。
また、実施例A-22、A-43、A-44の比較より、線速度が低いほど、より効果が優れることが確認された。
【0401】
<実施例E-1~E-76、比較例E-1~E-34:EUV露光実験>
上述したように、感放射線性樹脂組成物は5つの小分けした容器に充填されていた。
そこで、下記(パターン形成3)の方法に従って、小分けられた容器内の感放射線性樹脂組成物をそれぞれ用いて、ホールパターンを製造した。
具体的には、後述する(パターン形成3)の方法を実施する際には、小分けされた5つの容器に充填されているレジスト組成物をそれぞれ用いて、レジスト組成物毎に5枚のシリコンウエハ上にホールパターンを形成した。つまり、5つの小分けされたレジスト組成物を用いて、小分けされたレジスト組成物毎に5枚のシリコンウエハ上にホールパターンを形成し、合計25枚のシリコンウエハ上にホールパターンを形成した。
次に、1つのホールパターン当たりホール部を60箇所測定し、その平均値を算出する操作を、25枚のシリコンウエハ上のホールパターンに対して実施して、ホールパターン毎の平均値を求めた。次に、得られた25個の平均値の値を用いて、これらの標準偏差σを求めて、標準偏差の3倍値に該当する3σを算出した。3σの値が小さいほど優れた効果を示す。結果を、表18及び19に示す。
なお、パターンサイズの測定は、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製9380II)を用いた。
【0402】
(パターン形成3)
東京エレクトロン製スピンコーター「ACT-12」を用いて、シリコンウエハ(12インチ口径)上に有機反射防止膜形成用組成物AL412(Brewer Science社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークして、膜厚200nmの反射防止膜を形成した。
得られた反射防止膜上に、同装置を用いて表18~19の「レジスト組成物」欄に記載の所定の製造法にて調製したレジスト組成物(レジスト32~48)を塗布し、表11に示す各レジスト組成物に対応するPB条件でベークして、表11に示す各レジスト組成物に対応する膜厚のレジスト膜を形成した。
得られたレジスト膜に対して、EUV露光装置(Exitech社製、Micro Exposure Tool、NA0.3、Quadrupol、アウターシグマ0.68、インナーシグマ0.36)を用いて、ホール部分が28nmであり且つホール間のピッチが55nmである正方配列のマスクを介して、パターン露光を行った。
露光後のレジスト膜を表11に示す各レジスト組成物に対応するPEB条件でベークした後、表11に示す各レジスト組成物に対応する現像液で30秒間現像し、次いで純水で30秒間リンスした。その後、これをスピン乾燥して孔径28nmのホールパターンを得た。
【0403】
【表20】
【0404】
【表21】
【0405】
【表22】
【0406】
上記表に示すように、本発明の製造方法によれば、所望の効果が得られることが確認された。例えば、レジスト組成物として「レジスト33」を用いた実施例E-33と比較例E-3との比較のように、本発明の製造方法を実施した実施例E-33のほうが優れた効果を示した。
なかでも、実施例E-1及びE-2の比較より、第1有機溶剤のSP値が17.0MPa1/2以上25.0MPa1/2未満である場合、より効果が優れることが確認された。
また、実施例E-1、E-3及びE-8の比較より、第1溶液として、感放射線性樹脂組成物を用いた場合、より効果が優れることが確認された。
また、実施例E-8、E-10~12の比較より、所定の圧力下にて第1フィルターの浸漬処理を実施した場合、より効果が優れることが確認された。
また、実施例E-12及びE-13の比較より、フィルターを通液する溶液の通液方向が鉛直方向下方から上方の場合、より効果が優れることが確認された。
また、実施例E-21~E-24と他の実施例との比較より、工程3及び4を実施した場合、より効果が優れることが確認された。
また、実施例E-22、E-49、E-50の比較より、線速度が低いほど、より効果が優れることが確認された。
【符号の説明】
【0407】
10 撹拌槽
12 撹拌軸
14 撹拌翼
16 循環配管
18A,18B 第1フィルター
20 排出配管
22 排出ノズル
100 製造装置
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1有機溶剤を含む第1溶液と第1フィルターとを接触させて、前記第1フィルターを洗浄する工程1と、
前記工程1で洗浄された前記第1フィルターを用いて感放射線性樹脂組成物をろ過する工程2を有する、感放射線性樹脂組成物の製造方法であって、
前記第1有機溶剤が、アミド系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤(置換基を有するグリコールエーテル系溶剤を含む)、ケトン系溶剤、脂環式エーテル系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族エーテル系溶剤、及び、芳香族炭化水素系溶剤からなる群より選択される少なくとも1つを含み、
前記第1フィルターは、通液方向が鉛直方向下方から上方になるように配置されている、製造方法。
【請求項2】
50kPa以上の圧力下にて、前記工程1における前記第1フィルターと前記第1溶液との接触を行う、請求項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記感放射線性樹脂組成物が、酸の作用により極性が増大する樹脂、光酸発生剤、及び、有機溶剤を含み、
前記第1溶液として、前記感放射線性樹脂組成物を用いる、請求項1又は2に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記工程1における前記第1フィルターと前記第1溶液との接触時間が1時間以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記第1有機溶剤のSP値が17.0MPa1/2以上25.0MPa1/2未満である、請求項1~のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記第1フィルターの少なくとも1つが、ポリアミド系フィルターである、請求項1~のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記第1有機溶剤を含む第1溶液が前記第1フィルターを通液する際の線速度が40L/(hr・m)以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記工程2が、前記第1フィルターを用いて前記感放射線性樹脂組成物を循環ろ過する工程である、請求項1~のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記工程2の前に、第2有機溶剤を含む第2溶液と第2フィルターとを接触させて、前記第2フィルターを洗浄する工程3と、
前記工程3で洗浄された前記第2フィルターを用いて、前記感放射線性樹脂組成物に含まれる構成成分の少なくとも1つの化合物をろ過する工程4と、
前記工程4で得られた前記化合物を用いて、前記感放射線性樹脂組成物を調製する工程5と、を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記工程3における前記第2フィルターと前記第2溶液との接触時間が1時間以上である、請求項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
前記第2有機溶剤のSP値が17.0MPa1/2以上25.0MPa1/2未満である、請求項9又は10に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
50kPa以上の圧力下にて、前記工程3における前記第2フィルターと前記第2溶液との接触を行う、請求項9~11のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
前記第2フィルターは、通液方向が鉛直方向下方から上方になるように配置されている、請求項9~12のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】
前記第2フィルターの少なくとも1つが、ポリアミド系フィルターである、請求項9~13のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項15】
前記第2有機溶剤を含む第2溶液が前記第2フィルターを通液する際の線速度が40L/(hr・m)以下である、請求項9~14のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項16】
前記工程4が、前記第2フィルターを用いて前記感放射線性樹脂組成物に含まれる構成成分の少なくとも1つの化合物を循環ろ過する工程である、請求項9~15のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項17】
前記感放射線性樹脂組成物の固形分濃度が10質量%以上である、請求項1~16のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物の製造方法。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の製造方法より製造される感放射線性樹脂組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜を露光する工程と、
現像液を用いて、露光された前記レジスト膜を現像し、パターンを形成する工程と、を有する、パターン形成方法。
【請求項19】
請求項18に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。