(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110323
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法
(51)【国際特許分類】
B09C 1/08 20060101AFI20240807BHJP
C02F 1/72 20230101ALN20240807BHJP
【FI】
B09C1/08 ZAB
C02F1/72 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014853
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】晴山 渉
(72)【発明者】
【氏名】緒方 浩基
(72)【発明者】
【氏名】西田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】森 一星
【テーマコード(参考)】
4D004
4D050
【Fターム(参考)】
4D004AA41
4D004AB05
4D004CA34
4D004CA35
4D004CC11
4D004CC12
4D004DA03
4D050AA02
4D050AB13
4D050BB13
4D050BB20
4D050CA13
(57)【要約】
【課題】新規な汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法を提供すること。
【解決手段】汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法であって、ケイ酸塩を含むpH12~14の水溶液のpHを2~10に調整する工程と、pHを2~10に調整したケイ酸塩を含む水溶液及び過硫酸塩を汚染土壌及び/又は汚染水に添加する工程とを有することを特徴とする、汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法であって、
ケイ酸塩を含むpH12~14の水溶液のpHを2~10に調整する工程と、
pHを2~10に調整したケイ酸塩を含む水溶液及び過硫酸塩を汚染土壌及び/又は汚染水に添加する工程と、
を有することを特徴とする、汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法。
【請求項2】
汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法であって、
ケイ酸塩を含む水溶液のpHを12~14に調整する工程と、
pHを12~14に調整したケイ酸塩を含む水溶液のpHを2~10に調整する工程と、
pHを2~10に調整したケイ酸塩を含む水溶液及び過硫酸塩を汚染土壌及び/又は汚染水に添加する工程と、
を有することを特徴とする、汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法。
【請求項3】
前記汚染土壌及び/又は汚染水が、1,4-ジオキサンによって汚染されている汚染土壌及び/又は汚染水である、請求項1に記載の汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法。
【請求項4】
前記過硫酸塩が、KHSO5を含む、請求項1に記載の汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法。
【請求項5】
汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法であって、
ケイ酸塩を含むpH12~14の水溶液を汚染土壌及び/又は汚染水に添加する工程と、
ケイ酸塩、並びに、汚染土壌及び/又は汚染水を含む水溶液のpHを2~10に調整する工程と、
これに過硫酸塩を添加する工程と、
を有することを特徴とする、汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法。
【請求項6】
汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法であって、
ケイ酸塩を含む水溶液のpHを12~14に調整する工程と、
pHを12~14に調整したケイ酸塩を含む水溶液を汚染土壌及び/又は汚染水に添加する工程と、
ケイ酸塩、並びに、汚染土壌及び/又は汚染水を含む水溶液のpHを2~10に調整する工程と、
これに過硫酸塩を添加する工程と、
を有することを特徴とする、汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法。
【請求項7】
汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法であって、
ケイ酸塩を含むpH12~14の水溶液及び過硫酸塩を、汚染土壌及び/又は汚染水に添加する工程と、
ケイ酸塩、過硫酸塩、並びに、汚染土壌及び/又は汚染水を含む水溶液のpHを2~10に調整する工程と、
を有することを特徴とする、汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法。
【請求項8】
汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法であって、
ケイ酸塩を含む水溶液のpHを12~14に調整する工程と、
pHを12~14に調整したケイ酸塩を含む水溶液及び過硫酸塩を、汚染土壌及び/又は汚染水に添加する工程と、
ケイ酸塩、過硫酸塩、並びに、汚染土壌及び/又は汚染水を含む水溶液のpHを2~10に調整する工程と、
を有することを特徴とする、汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、1,4-ジオキサン等の有機汚染物質は、電子部品や金属製品の洗浄剤等種々の用途で工業的に使用されており、その一部が土壌や地下水等に漏洩し汚染を引き起こしている。
【0003】
有機汚染物質の1つである1,4-ジオキサンは発がん性が疑われており、2009年に水質環境基準及び地下水環境基準に追加され、2017年に土壌環境基準に追加された。有機汚染物質の中でも1,4-ジオキサンは難分解性物質で、生分解性がほとんどなく、また水に近い物性を持っており通常の排水処理法で除去することが困難である。このため、1,4-ジオキサンによって汚染された汚染土壌及び/又は汚染水の新たな浄化方法が望まれている。
【0004】
特許文献1には、有機化合物で汚染された土壌や地下水に、過硫酸塩と、重亜硫酸塩、亜硫酸塩、アルコルビン酸塩、エリソルビン酸塩等の還元剤と、を添加することによって、汚染土壌及び/又は地下水を浄化する方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、新規な汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ケイ酸塩を含む水溶液のpHを12~14に調整した後、さらに前記ケイ酸塩を含む水溶液のpHを2~10に調整し、かかるケイ酸塩を含む水溶液と過硫酸塩とを、汚染土壌及び/又は汚染水に添加することにより、汚染土壌及び/又は汚染水を浄化できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の各発明に関する。
[1]汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法であって、
ケイ酸塩を含むpH12~14の水溶液のpHを2~10に調整する工程と、
pHを2~10に調整したケイ酸塩を含む水溶液及び過硫酸塩を汚染土壌及び/又は汚染水に添加する工程と、
を有することを特徴とする、汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法。
[2]汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法であって、
ケイ酸塩を含む水溶液のpHを12~14に調整する工程と、
pHを12~14に調整したケイ酸塩を含む水溶液のpHを2~10に調整する工程と、
pHを2~10に調整したケイ酸塩を含む水溶液及び過硫酸塩を汚染土壌及び/又は汚染水に添加する工程と、
を有することを特徴とする、汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法。
[3]前記汚染土壌及び/又は汚染水が、1,4-ジオキサンによって汚染されている汚染土壌及び/又は汚染水である、[1]に記載の汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法。
[4]前記過硫酸塩が、KHSO5を含む、[1]に記載の汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法。
[5]汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法であって、
ケイ酸塩を含むpH12~14の水溶液を汚染土壌及び/又は汚染水に添加する工程と、
ケイ酸塩、並びに、汚染土壌及び/又は汚染水を含む水溶液のpHを2~10に調整する工程と、
これに過硫酸塩を添加する工程と、
を有することを特徴とする、汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法。
[6]汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法であって、
ケイ酸塩を含む水溶液のpHを12~14に調整する工程と、
pHを12~14に調整したケイ酸塩を含む水溶液を汚染土壌及び/又は汚染水に添加する工程と、
ケイ酸塩、並びに、汚染土壌及び/又は汚染水を含む水溶液のpHを2~10に調整する工程と、
これに過硫酸塩を添加する工程と、
を有することを特徴とする、汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法。
[7]汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法であって、
ケイ酸塩を含むpH12~14の水溶液及び過硫酸塩を、汚染土壌及び/又は汚染水に添加する工程と、
ケイ酸塩、過硫酸塩、並びに、汚染土壌及び/又は汚染水を含む水溶液のpHを2~10に調整する工程と、
を有することを特徴とする、汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法。
[8]汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法であって、
ケイ酸塩を含む水溶液のpHを12~14に調整する工程と、
pHを12~14に調整したケイ酸塩を含む水溶液及び過硫酸塩を、汚染土壌及び/又は汚染水に添加する工程と、
ケイ酸塩、過硫酸塩、並びに、汚染土壌及び/又は汚染水を含む水溶液のpHを2~10に調整する工程と、
を有することを特徴とする、汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新規な汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ケイ酸カリウム水溶液のpHと1,4-ジオキサン濃度の経時変化との関係を示すグラフである。
【
図2】ケイ酸ナトリウム水溶液のpHと1,4-ジオキサン濃度の経時変化との関係を示すグラフである。
【
図3】ケイ酸ナトリウム水溶液のpHと各種ケイ酸イオン濃度との関係を示すグラフである。
【
図4】分解反応開始前の混合水溶液のpHと1,4-ジオキサン濃度の経時変化との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
[1.汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法]
本実施形態に係る汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法は、
ケイ酸塩を含むpH12~14の水溶液のpHを2~10に調整する工程と、
pHを2~10に調整したケイ酸塩を含む水溶液及び過硫酸塩を汚染土壌及び/又は汚染水に添加する工程と、
を有することを特徴とする。
【0013】
[1-1.汚染土壌及び/又は汚染水]
本明細書における「汚染」物質としては、特に限定されず、例えば、クロロエチレン、1,1-ジクロロエチレン、1,2-ジクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、3-クロロプロペン、ジクロロベンゼン、1,4-ジオキサン等の有機汚染物質が挙げられる。
また本明細書において「浄化」とは、汚染土壌及び/又は汚染水中に含まれる有機汚染物質等の汚染物質を分解する等してその濃度を低減することを意味する。
【0014】
本実施形態に係る浄化方法の対象となる汚染土壌及び/又は汚染水としては、難分解性物質であり、また水に溶けやすく揮発しにくいという点で、有機汚染物質の中でもとりわけ1,4-ジオキサンに汚染された汚染土壌及び/又は汚染水を浄化対象とすることが好ましい。
【0015】
[1-2.ケイ酸塩を含む水溶液のpHを調整する工程]
<ケイ酸塩>
本実施形態で使用するケイ酸塩としては、特に限定されず、公知慣用のものを用いることができる。ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸アンモニウム等が挙げられる。これらのケイ酸塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
ケイ酸塩の市販品としては、関東化学株式会社製のケイ素標準原液Si 1000(化学分析用)、富士フィルム和光純薬株式会社製のケイ素標準液Si 1000(化学分析用)、米山薬品工業株式会社製の水ガラス、関東化学株式会社製のケイ酸カリウム等が挙げられる。
【0017】
ケイ酸塩の添加量としては、特に限定されず、汚染土壌及び/又は汚染水に含まれる汚染物質の種類及び量、過硫酸塩の種類及び量等によって適宜調整することができる。
汚染土壌を浄化対象とする場合には、ケイ酸塩の添加量としては、汚染土壌100質量部に対して、固形分換算で0.0001~10質量部であることが好ましく、0.0005~5質量部であることがより好ましい。
また汚染水を浄化対象とする場合には、ケイ酸塩の添加量としては、汚染水100質量部に対して固形分換算で0.0001~10質量部であることが好ましく、0.0005~5質量部であることがより好ましい。
【0018】
<ケイ酸塩を含む水溶液のpHを12~14に調整する工程>
本実施形態に係るケイ酸塩を含む水溶液は、ケイ酸塩に水道水、脱イオン水、蒸留水、イオン交換水等を用いて、公知慣用の方法で適宜調製することができる。
【0019】
本実施形態に係るケイ酸塩を含む水溶液のpHとしては、汚染物質の分解反応を促進するという観点から、12~14に調整することが好ましく、12.5~14に調整することがより好ましく、13~14に調整することがさらに好ましい。
本実施形態に係る汚染土壌及び/又は汚染水の浄化方法において、ケイ酸塩を含む水溶液のpHを12~14とすることで、ケイ酸イオンの形態をH2SiO4
2-とすることにより、過硫酸塩による汚染物質の浄化反応を促進するものと推測される。
【0020】
本実施形態に係るケイ酸塩を含む水溶液のpHを12~14に調整する方法としては、公知慣用の方法を用いることができる。pH調整剤としては、特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を使用することができる。
【0021】
<ケイ酸塩を含む水溶液のpHを2~10に調整する工程>
ケイ酸塩を含むpH12~14の水溶液のpHを2~10に調整する場合としては、特に限定されず、例えば、ケイ酸塩を含むpH12~14の水溶液そのもののpHを2~10に調整してもよいし、ケイ酸塩を含むpH12~14の水溶液を汚染土壌及び/又は汚染水に添加した後にpHを2~10に調整してもよいし、あるいはケイ酸塩を含むpH12~14の水溶液と過硫酸塩とを混合した後にpHを2~10に調整してもよい。
【0022】
ケイ酸塩を含む水溶液のpHを2~10に調整する方法としては、公知慣用の方法を用いることができる。
pH調整剤としては、特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸;酢酸、クエン酸、コハク酸、ギ酸等の有機酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩;アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミン類等を使用することができる。あるいは、水道水、脱イオン水、蒸留水、イオン交換水等を用いて水溶液を希釈してもよいし、汚染土壌及び/又は汚染水に水溶液を添加することにより希釈してもよいし、pH調整剤と希釈を組み合わせて調整してもよい。
【0023】
汚染物資の浄化反応に供するケイ酸塩を含む水溶液のpHとしては、汚染物質の分解反応を促進するという観点から、2~10であることが好ましく、4~10であることがより好ましく、6~10であることがさらに好ましい。
【0024】
[1-3.過硫酸塩]
本実施形態で使用する過硫酸塩としては、特に限定されず、公知慣用のものを用いることができる。過硫酸塩としては、例えば、ペルオキソ一硫酸カリウム(過硫酸水素カリウム、一過硫酸カリウム、モノ過硫酸水素カリウムとも呼ばれる。)、ペルオキシ一硫酸ナトリウム、ペルオキシ一硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等が挙げられる。これらの過硫酸塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0025】
過硫酸塩の市販品としては、例えば、富士フィルム和光純薬株式会社製のオキソン(登録商標)、和光純薬工業株式会社製のペルオキソ二硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0026】
過硫酸塩の添加量としては、特に限定されず、汚染土壌及び/又は汚染水に含まれる汚染物質の種類及び量、ケイ酸塩の種類及び量等によって適宜調整することができる。
過硫酸塩の添加量としては、汚染物質を効果的に浄化するという観点から、汚染物質と過硫酸塩のモル比率が1~5:10~100になるように添加することが好ましく、1~3:10~60になるように添加することがより好ましく、1~2:10~50になるように添加することがさらに好ましい。
汚染土壌を浄化対象とする場合には、過硫酸塩の添加量としては、汚染土壌100質量部に対して、固形分換算で0.001~20質量部であることが好ましく、0.01~10質量部であることがより好ましい。
また汚染水を浄化対象とする場合には、過硫酸塩の添加量としては、汚染水100質量部に対して固形分換算で0.001~20質量部であることが好ましく、0.01~10質量部であることがより好ましい。
【0027】
[1-4.ケイ酸塩を含む水溶液及び過硫酸塩を汚染土壌及び/又は汚染水に添加する工程]
本実施形態においてケイ酸塩を含む水溶液及び過硫酸塩は、公知慣用の方法で、汚染土壌及び/又は地下水に添加することができる。ケイ酸塩を含む水溶液と過硫酸塩は、異時又は同時に汚染土壌及び/又は地下水に添加してもよい。
【0028】
ケイ酸塩を含む水溶液及び過硫酸塩を添加する方法としては、特に限定されず、例えば、原位置分解法においては、土壌又は地下水中に直接又はボーリング孔からケイ酸塩を含む水溶液及び過硫酸塩を添加して汚染物質を浄化してもよく、あるいは原位置抽出法においては掘削又は抽出された土壌又は地下水にケイ酸塩を含む水溶液及び過硫酸塩を添加して汚染物質を浄化してもよい。
【0029】
とりわけ本実施形態に係るケイ酸塩を含む水溶液及び過硫酸塩による汚染土壌及び/又は汚染水の浄化反応は、中性域のpHで行うことができるため、後処理等の負荷を軽減することができ好適である。
【実施例0030】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0031】
[1.ケイ酸塩を含む水溶液のpHが汚染物質の浄化に与える影響]
ケイ酸塩を含む水溶液のpHが汚染物質の浄化に与える影響を評価するため、異なるpHを有するケイ酸塩を含む水溶液を用いた場合の汚染物質の濃度の経時変化を測定した。
ここで、汚染物質としては、難分解性有機化合物である1,4-ジオキサン(関東化学株式会社製)を選択し、ケイ酸塩としては、ケイ酸カリウム(関東化学株式会社製)及びケイ酸ナトリウム(米山薬品工業株式会社製)を選択し、過硫酸塩としては、オキソン(2KHSO5・KHSO4・K2SO4、富士フィルム和光純薬株式会社製、登録商標(以下同じ。))を選択した。
またケイ酸塩を含む水溶液のpHに起因して、オキソンが分解してしまうことを避けるために、まず試験用汚染水を調製し、次いで所定のpHに調整したケイ酸塩を含む水溶液を調製し、上記試験用汚染水及びケイ酸塩を含む水溶液を混合し、かかる混合水溶液のpHを10に調整した。その上で、別途調製したオキソン水溶液を上記混合水溶液と混合することにより、1,4-ジオキサンの分解反応を開始させた。分解反応開始後の1,4-ジオキサン濃度の経時変化を測定し、分解反応に与えるケイ酸塩を含む水溶液のpHの影響について評価した。
【0032】
<試験用汚染水の調製>
1,4-ジオキサン150mgを秤量し、メスフラスコを用いて蒸留水で200mLに定容し、これを試験用汚染水とした。
【0033】
<ケイ酸塩を含む水溶液の調製>
pH3、5、6、7、10,11、12及び13のケイ酸カリウム水溶液(ケイ酸カリウムの濃度:1000mg/L)をそれぞれ調製した。
また同様にpH5、7、9、11及び13のケイ酸ナトリウム水溶液(ケイ酸ナトリウムの濃度:1000mg/L)をそれぞれ調製した。
pHの調整にあたっては塩酸、水酸化ナトリウム、pHメーターを用いた。
【0034】
<試験用汚染水及びケイ酸塩を含む水溶液の混合水溶液の調製及びpH調整>
上記試験用汚染水2mL、上記所定のpHのケイ酸カリウム水溶液又はケイ酸ナトリウム水溶液3mLを混合し、調製された混合水溶液のpHを10に調整し、メスフラスコを用いて蒸留水で200mLに定容した。
【0035】
<オキソン水溶液の調製>
オキソン209.3mgを、メスフラスコを用いて蒸留水で100mLに定容し、オキソン水溶液を調製した。
【0036】
<混合水溶液とオキソン水溶液の混合>
サンプルボトル(ポリエチレン製、100mL)に、上記混合水溶液20mLを加えた後、オキソン水溶液10mLを加えて、液量合計を30mLとした。
【0037】
<1,4-ジオキサン濃度の経時変化>
混合水溶液が入ったサンプルボトルに、オキソン水溶液10mLを加えた時点を反応開始時とし、サンプルボトルを恒温器(25℃)に入れ、振とう機(150min
-1)により撹拌した。反応開始後、所定の時間経過後、サンプルボトルを取り出し、エタノールを4mL加えて、分解反応を停止させた。1,4-ジオキサンの濃度は、ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS-2010Ultra、株式会社島津製作所製)により測定した。なお、1,4-ジオキサンの初期濃度は、混合水溶液が入ったサンプルボトルに、オキソン水溶液10mLに代えて蒸留水10mLを加えて1,4-ジオキサン濃度を測定した値を用いた。
図1にケイ酸カリウム水溶液のpHと1,4-ジオキサン濃度の経時変化との関係を示し、
図2にケイ酸ナトリウム水溶液のpHと1,4-ジオキサン濃度の経時変化との関係を示す。
【0038】
図1及び
図2から、ケイ酸カリウム又はケイ酸ナトリウム水溶液として、pHを12又は13に調整したケイ酸カリウム又はケイ酸ナトリウム水溶液を用いることにより、その後のオキソンによる1,4-ジオキサンの分解反応が促進されることが分かる。
【0039】
図3は、ケイ酸ナトリウム水溶液のpHと、H
4SiO
4、H
3SiO
4
-及びH
2SiO
4
2-等の各種ケイ酸イオンの濃度との関係を、Visual MINTEQを用いて計算した結果を示したグラフである。
【0040】
図3から、ケイ酸ナトリウムのpHが酸性になると、H
4SiO
4のような電荷のないものが重合あるいはネットワークを構築した状態等で存在するものと考えられる。これに対して、
図1~3から、ケイ酸ナトリウム水溶液のpHを12~14に調整し、H
2SiO
4
2-とし、電荷を帯びさせ分散等させることにより、オキソンによる1,4-ジオキサンの分解反応を促進しているものと推測される。
【0041】
[2.分解反応開始前の混合水溶液のpHが汚染物質の分解に与える影響]
分解反応開始前の混合水溶液のpHが汚染物質の分解に与える影響を評価するため、異なるpHで汚染物質の分解反応を開始させた場合の汚染物質濃度の経時変化を測定した。
【0042】
<各種溶液の調製及び混合>
試験用汚染水及びオキソン水溶液の調製は、上記「1.」の場合と同様の方法で行った。
ケイ酸塩を含む水溶液は、「1.」と同様の方法でpH13のケイ酸カリウム水溶液(ケイ酸カリウムの濃度:1000mg/L)を調製した。
上記試験用汚染水2mLと上記pH13のケイ酸カリウム水溶液3mLとを混合し、調製された混合水溶液のpHを所定のpHに調整し、メスフラスコを用いて蒸留水で200mLに定容した。上記方法により、試験用汚染水及びケイ酸塩を含む水溶液の混合水溶液のpHを2、4、6、8、10及び12に調整した混合水溶液をそれぞれ調製した。
サンプルボトルに、上記所定のpHに調整した混合水溶液20mLを加えた後、オキソン水溶液10mLを加えて、液量の合計を30mLとした。
【0043】
<1,4-ジオキサン濃度の経時変化>
1,4ジオキサン濃度の経時変化については「1.」と同様の方法で測定した。
図4に分解反応開始前の混合水溶液のpHと1,4-ジオキサン濃度の経時変化との関係を示す。
【0044】
図4から、分解反応開始前の混合水溶液のpHが12の場合には、その後のオキソンによる1,4-ジオキサンの分解は非常に緩やかであることが分かる。これに対して、分解反応開始前の混合水溶液のpHが2~10の場合には、その後のオキソンによる1,4-ジオキサンの分解が促進され、とりわけ分解反応開始前のpHが4~10の場合にはオキソンによる1,4-ジオキサンの分解が強く促進されることが分かる。