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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110389
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法および除去装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240807BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240807BHJP
   B23K 26/364 20140101ALI20240807BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/304 601Z
H01L21/78 B
B23K26/364
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023200517
(22)【出願日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2023014660
(32)【優先日】2023-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 良信
【テーマコード(参考)】
4E168
5F057
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AD02
4E168AD18
4E168DA02
4E168HA01
4E168JA12
5F057AA37
5F057AA53
5F057BA11
5F057CA16
5F057DA19
5F057EB26
5F057EC05
5F063AA31
5F063BA02
5F063CB06
5F063CB28
5F063DD27
5F063DD83
5F063DD97
5F063DG21
5F063DG33
5F063DG35
(57)【要約】
【課題】フレームユニットの状態でリング状補強部を除去しても、テープに弛みが残存しないウエーハの加工方法を提供する。
【解決手段】ウエーハの加工方法は、テープ40によってフレーム38とウエーハ2とを一体にしたフレームユニット42を形成するフレームユニット形成工程と、ウエーハ2のリング状補強部をデバイス領域8から分離する分離起点を形成する分離起点形成工程と、テープ40とリング状補強部との隙間に楔状の工具を侵入させてリング状補強部をデバイス領域8から分離して除去する補強部除去工程と、補強部除去工程の前または後に、リング状補強部をデバイス領域8から分離することに起因する弛みがテープ40に残存しないようにテープ40を加熱してシュリンクするシュリンク工程とを備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域を備えた表面と外周にリング状補強部を備えた裏面とを有するウエーハの加工方法であって、
ウエーハを収容する開口部を中央に備えたフレームの該開口部にウエーハを収容しテープによってフレームとウエーハとを一体にしたフレームユニットを形成するフレームユニット形成工程と、
ウエーハのリング状補強部をデバイス領域から分離する分離起点を形成する分離起点形成工程と、
テープとリング状補強部との隙間に楔状の工具を侵入させてリング状補強部をデバイス領域から分離して除去する補強部除去工程と、
該補強部除去工程の前または後に、リング状補強部をデバイス領域から分離することに起因する弛みがテープに残存しないようにテープを加熱してシュリンクするシュリンク工程と、
を備えるウエーハの加工方法。
【請求項2】
該シュリンク工程において、テープに赤外線波長のレーザー光線を照射してテープをシュリンクする請求項1記載のウエーハの加工方法。
【請求項3】
該シュリンク工程において、レーザー光線の集光点をデフォーカスしてテープにレーザー光線を照射する請求項2記載のウエーハの加工方法。
【請求項4】
該分離起点形成工程において、赤外線波長のレーザー光線の集光点をリング状補強部とデバイス領域との境界部に位置づけてウエーハに該レーザー光線を照射して該分離起点を形成し、
該シュリンク工程において、該レーザー光線の集光点をデフォーカスしてテープに該レーザー光線を照射する請求項2記載のウエーハの加工方法。
【請求項5】
該分離起点を形成する前に、該レーザー光線の照射によって生じるデブリがウエーハに付着しないように液状の保護膜を該境界部の領域に被覆し、該レーザー光線の集光点をデフォーカスして該保護膜に該レーザー光線を照射して該保護膜を乾燥させる請求項4記載のウエーハの加工方法。
【請求項6】
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域を備えた表面と外周にリング状補強部を備えた裏面とを有しリング状補強部をデバイス領域から分離する分離起点が形成されたウエーハと、ウエーハを収容する開口部を中央に備えたフレームとにテープが貼着されて一体になったフレームユニットからリング状補強部を除去する除去装置であって、
テープを介してウエーハを支持するウエーハ支持部およびフレームを支持するフレーム支持部を含むフレームユニット支持手段と、
該テープと該リング状補強部との間に楔状の工具を侵入させ該リング状補強部をデバイス領域から分離して除去するリング状補強部除去手段と、
リング状補強部をデバイス領域から分離することに起因する弛みがテープに残存しないようにテープを加熱してシュリンクするシュリンク手段と、
を備える除去装置。
【請求項7】
該シュリンク手段は、テープに赤外線波長のレーザー光線を照射してテープをシュリンクする請求項6記載の除去装置。
【請求項8】
該シュリンク手段は、レーザー光線の集光点をデフォーカスしてテープに照射してテープをシュリンクする請求項7記載の除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域を備えた表面と外周にリング状補強部を備えた裏面とを有するウエーハの加工方法、およびウエーハとフレームとにテープが貼着されて一体になったフレームユニットからリング状補強部を除去する除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域とデバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウエーハは、裏面が研削されて所望の厚みに形成された後、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、分割された各デバイスチップは携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
また、研削されたウエーハの搬送を容易にするために外周余剰領域に対応する裏面にリング状補強部を形成し所定の加工を施した後、ウエーハの裏面にダイシングテープを貼着するとともにフレームでウエーハを支持し、ウエーハからリング状補強部を除去する技術を本出願人が提案した(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに、外周にリング状補強部が形成されたウエーハの裏面にダイシングテープを貼着してフレームと一体にしてフレームユニットを構成する作業が困難であるとともに、リング状補強部を切断しデバイス領域から除去することが困難であり、生産性が悪いという問題があることから、本出願人は、フレームユニットを形成するとともにリング状補強部を除去する加工装置を開発した(たとえば、特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-062375号公報
【特許文献2】特開2022-019392号公報
【特許文献3】特開2022-181953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、フレームユニットの状態でリング状補強部を除去すると、テープに弛みが生じて、フレームユニットを搬送する際や、ウエーハを個々のデバイスチップに分割する際に、不都合が生じるという問題がある。
【0007】
本発明の課題は、フレームユニットの状態でリング状補強部を除去しても、テープに弛みが残存しないウエーハの加工方法および除去装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上記課題を解決する以下のウエーハの加工方法が提供される。すなわち、
「複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域を備えた表面と外周にリング状補強部を備えた裏面とを有するウエーハの加工方法であって、
ウエーハを収容する開口部を中央に備えたフレームの該開口部にウエーハを収容しテープによってフレームとウエーハとを一体にしたフレームユニットを形成するフレームユニット形成工程と、
ウエーハのリング状補強部をデバイス領域から分離する分離起点を形成する分離起点形成工程と、
テープとリング状補強部との隙間に楔状の工具を侵入させてリング状補強部をデバイス領域から分離して除去する補強部除去工程と、
該補強部除去工程の前または後に、
リング状補強部をデバイス領域から分離することに起因する弛みがテープに残存しないようにテープを加熱してシュリンクするシュリンク工程と、
を備えるウエーハの加工方法」が提供される。
【0009】
好ましくは、該シュリンク工程において、テープに赤外線波長のレーザー光線を照射してテープをシュリンクする。該シュリンク工程において、レーザー光線の集光点をデフォーカスしてテープにレーザー光線を照射することができる。
【0010】
該分離起点形成工程において、赤外線波長のレーザー光線の集光点をリング状補強部とデバイス領域との境界部に位置づけてウエーハに該レーザー光線を照射して該分離起点を形成し、
該シュリンク工程において、該レーザー光線の集光点をデフォーカスしてテープに該レーザー光線を照射するのが望ましい。
【0011】
該分離起点を形成する前に、該レーザー光線の照射によって生じるデブリがウエーハに付着しないように液状の保護膜を該境界部の領域に被覆し、該レーザー光線の集光点をデフォーカスして該保護膜に該レーザー光線を照射して該保護膜を乾燥させるのがよい。
【0012】
また、本発明によれば、上記課題を解決する以下の除去装置が提供される。すなわち、
「複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域を備えた表面と外周にリング状補強部を備えた裏面とを有しリング状補強部をデバイス領域から分離する分離起点が形成されたウエーハと、ウエーハを収容する開口部を中央に備えたフレームとにテープが貼着されて一体になったフレームユニットからリング状補強部を除去する除去装置であって、
テープを介してウエーハを支持するウエーハ支持部およびフレームを支持するフレーム支持部を含むフレームユニット支持手段と、
該テープと該リング状補強部との間に楔状の工具を侵入させ該リング状補強部をデバイス領域から分離して除去するリング状補強部除去手段と、
リング状補強部をデバイス領域から分離することに起因する弛みがテープに残存しないようにテープを加熱してシュリンクするシュリンク手段と、
を備える除去装置」が提供される。
【0013】
該シュリンク手段は、テープに赤外線波長のレーザー光線を照射してテープをシュリンクするのが好都合である。該シュリンク手段は、レーザー光線の集光点をデフォーカスしてテープに照射してテープをシュリンクするのが好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のウエーハの加工方法は、
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域を備えた表面と外周にリング状補強部を備えた裏面とを有するウエーハの加工方法であって、
ウエーハを収容する開口部を中央に備えたフレームの該開口部にウエーハを収容しテープによってフレームとウエーハとを一体にしたフレームユニットを形成するフレームユニット形成工程と、
ウエーハのリング状補強部をデバイス領域から分離する分離起点を形成する分離起点形成工程と、
テープとリング状補強部との隙間に楔状の工具を侵入させてリング状補強部をデバイス領域から分離して除去する補強部除去工程と、
該補強部除去工程の前または後に、
リング状補強部をデバイス領域から分離することに起因する弛みがテープに残存しないようにテープを加熱してシュリンクするシュリンク工程と、
を備えるので、フレームユニットの状態でリング状補強部を除去しても、テープに弛みが残存することはない。
【0015】
本発明の除去装置は、
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域を備えた表面と外周にリング状補強部を備えた裏面とを有しリング状補強部をデバイス領域から分離する分離起点が形成されたウエーハと、ウエーハを収容する開口部を中央に備えたフレームとにテープが貼着されて一体になったフレームユニットからリング状補強部を除去する除去装置であって、
テープを介してウエーハを支持するウエーハ支持部およびフレームを支持するフレーム支持部を含むフレームユニット支持手段と、
該テープと該リング状補強部との間に楔状の工具を侵入させ該リング状補強部をデバイス領域から分離して除去するリング状補強部除去手段と、
リング状補強部をデバイス領域から分離することに起因する弛みがテープに残存しないようにテープを加熱してシュリンクするシュリンク手段と、
を備えるので、フレームユニットの状態でリング状補強部を除去しても、テープに弛みが残存することはない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)保護部材配設工程を示す斜視図、(b)保護部材が配設されたウエーハの裏面側斜視図。
図2】(a)リング状補強部形成工程を示す斜視図、(b)外周余剰領域に対応する裏面にリング状補強部が形成されたウエーハの断面図。
図3】(a)フレームユニット形成工程を示す斜視図、(b)フレームユニットの斜視図、(c)(b)に示すフレームユニットの断面図。
図4】(a)分割起点形成工程を示す斜視図、(b)分割起点形成工程を示す正面図。
図5】(a)補強部除去工程において、フレームユニットを支持した状態を示す模式図、(b)テープとリング状補強部との間に楔状の工具を侵入させた状態を示す模式図、(c)リング状補強部がデバイス領域から分離した状態を示す模式図。
図6図5に示すリング状補強部除去手段の部分斜視図。
図7】補強部除去工程の後にシュリンク工程を実施する場合の模式図。
図8】補強部除去工程の前にシュリンク工程を実施する場合の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るウエーハの加工方法および除去装置の好適実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1には、本発明のウエーハの加工方法によって加工が施されるウエーハ2が示されている。厚みが700μm程度である円板状のウエーハ2は、たとえばシリコン等の適宜の半導体材料から形成され得る。ウエーハ2の表面2aには、IC、LSI等の複数のデバイス4が格子状の分割予定ライン6によって区画されたデバイス領域8と、デバイス領域8を囲繞する外周余剰領域10とが形成されている。図1では、便宜的にデバイス領域8と外周余剰領域10との環状の境界部12を二点鎖線で示しているが、実際には境界部12を示す線は存在しない。
【0019】
(保護部材配設工程)
図示の実施形態においては、図1に示すとおり、まず、デバイス4を保護するための保護部材14をウエーハ2の表面2aに配設する保護部材配設工程を実施する。保護部材14としては、たとえば、ウエーハ2の直径と同一の直径を有する円形の粘着テープを用いることができる。
【0020】
(リング状補強部形成工程)
保護部材配設工程を実施した後、保護部材14側を保持しデバイス領域8に対応する裏面2bを研削して、外周余剰領域10に対応する裏面2bにリング状補強部を形成するリング状補強部形成工程を実施する。
【0021】
リング状補強部形成工程は、たとえば図2(a)に示す研削装置16を用いて実施することができる。研削装置16は、ウエーハ2を吸引保持する円形のチャックテーブル18と、チャックテーブル18に吸引保持されたウエーハ2を研削する研削手段20とを備える。
【0022】
チャックテーブル18は、チャックテーブル18の径方向中心を通って上下方向に延びる軸線を回転中心として回転自在に構成されている。また、チャックテーブル18の上端部分には、吸引手段(図示していない。)に接続された多孔質部材(図示していない。)が設けられている。そして、チャックテーブル18においては、吸引手段で多孔質部材の上面に吸引力を生成し、上面に載せられたウエーハ2を吸引保持する。
【0023】
研削手段20は、スピンドルハウジング22と、上下方向に延びる軸線を中心として回転自在にスピンドルハウジング22に支持されたスピンドル24と、スピンドル24の下端に固定された円板状のホイールマウント26とを含む。
【0024】
ホイールマウント26の下面には、ボルト28によって環状の研削ホイール30が締結されている。研削ホイール30の直径は、ウエーハ2の半径とほぼ同一である。また、研削ホイール30の下面の外周縁部には、周方向に間隔をおいて環状に配置された複数の研削砥石32が固定されている。
【0025】
図2(a)を参照して説明を続けると、リング状補強部形成工程では、まず、保護部材14側を下に向けて、チャックテーブル18の上面でウエーハ2を吸引保持する。この際は、ウエーハ2の中心とチャックテーブル18の回転中心とを整合させる。
【0026】
次いで、研削砥石32がウエーハ2の回転中心(チャックテーブル18の回転中心)を通過するとともに、ウエーハ2の外周よりも径方向内側に研削砥石32の外側が位置するように、研削砥石32に対するウエーハ2の位置を調整する。
【0027】
次いで、矢印R1で示す方向に所定の回転速度(たとえば6000rpm)でスピンドル24を回転させる。また、矢印R2で示す方向に所定の回転速度(たとえば300rpm)でチャックテーブル18を回転させる。
【0028】
次いで、スピンドル24を下降させ、ウエーハ2の裏面2bに研削砥石32を接触させるとともに、裏面2bに研削砥石32を接触させる部分に研削水を供給する。その後、所定の研削送り速度(たとえば1μm/s)でスピンドル24を下降させる。
【0029】
これによって、図2(b)に示すように、デバイス領域8に対応するウエーハ2の裏面2bを研削して薄化部34を形成するとともに、外周余剰領域10に対応するウエーハ2の裏面2bにリング状補強部36を形成することができる。リング状補強部36を形成したら、ウエーハ2の裏面2bに所定の加工を施した後、ウエーハ2の表面2aから保護部材14を剥離する。
【0030】
研削後の薄化部34の厚みは、たとえば30μm程度である。リング状補強部36は研削砥石32によって研削されないので、リング状補強部36の厚みは研削前のウエーハ2の厚みと同一(たとえば700μm程度)である。なお、リング状補強部36の幅(径方向寸法)は2~3mm程度でよい。
【0031】
(フレームユニット形成工程)
ウエーハ2の裏面2bに所定の加工を施した後、図3に示すように、ウエーハ2を収容する開口部38aを中央に備えたフレーム38の開口部38aにウエーハ2を収容し、テープ40によってフレーム38とウエーハ2とを一体にしたフレームユニット42を形成するフレームユニット形成工程を実施する。
【0032】
フレームユニット形成工程では、まず、環状のフレーム38の内周縁に、円形のテープ40の外周縁を貼り付ける。次いで、図3(a)に示すように、フレーム38に固定されたテープ40に、ウエーハ2の裏面2bを貼り付ける。このようにして、図3(b)、(c)に示すとおり、ウエーハ2とフレーム38とにテープ40を貼着して一体になったフレームユニット42を形成する。
【0033】
(分離起点形成工程)
フレームユニット形成工程を実施した後、ウエーハ2のリング状補強部36をデバイス領域8から分離する分離起点を形成する分離起点形成工程を実施する。
【0034】
分離起点形成工程は、たとえば、図4に示すレーザー加工装置44を用いて実施することができる。レーザー加工装置44は、フレームユニット42を保持する保持手段46(図4(b)参照)と、保持手段46に保持されたフレームユニット42のウエーハ2にレーザー光線LBを照射するレーザー光線照射手段48とを備える。
【0035】
図4(b)に示すとおり、保持手段46は、上下方向に延びる回転軸50と、回転軸50の下端に固定された円形の保持部材52とを含む。保持部材52の下面には、フレーム38の大きさに対応する円周上に周方向に間隔をおいて複数の吸引孔(図示していない。)が形成され、各吸引孔は吸引手段に接続されている。そして、保持手段46においては、吸引手段で保持部材52の下面に吸引力を生成し、フレーム38を吸着してフレームユニット42を保持する。
【0036】
レーザー光線照射手段48は、赤外線波長(たとえば、1300nm)のレーザー光線LBを発振する発振器(図示していない。)と、発振器が発振したレーザー光線LBを集光する集光器54とを含む。
【0037】
図4を参照して説明を続けると、分離起点形成工程では、まず、ウエーハ2の表面2aを下に向けた状態で、保持部材52によりフレームユニット42を保持する。次いで、保持部材52で保持したフレームユニット42を集光器54の上方に位置づけた後、赤外線波長のレーザー光線LBの集光点をリング状補強部36とデバイス領域8との境界部12に位置づける。
【0038】
次いで、矢印R3で示す方向に回転軸50を回転させながら、境界部12にレーザー光線LBを照射する。これによって、境界部12にアブレーション加工を施して、リング状補強部36をデバイス領域8から分離する分離起点56としてのリング状の加工溝を形成することができる。
【0039】
図示の実施形態では、フレームユニット42の上面側を保持し、フレームユニット42の下面側からレーザー光線LBを照射しているが、これとは反対に、フレームユニット42の下面側を保持し、フレームユニット42の上面側からレーザー光線LBを照射してもよい。
【0040】
上記のようにして分離起点56を形成する際には、分離起点56を形成する前に、レーザー光線LBの照射によって生じるデブリがウエーハ2に付着しないように、液状の保護膜(図示していない。)を境界部12の領域に被覆しておくのが好ましい。
【0041】
保護膜を被覆する領域は、レーザー光線LBの照射によって生じるデブリがウエーハ2の表面2aに付着するおそれのある領域である。具体的には、境界部12を含む環状の領域であって、内径が境界部12の直径よりも小さく、外径が境界部12の直径よりも大きい領域である。
【0042】
また、液状の保護膜をウエーハ2に被覆した際には、レーザー光線LBの集光点をデフォーカスして保護膜にレーザー光線LBを照射し、保護膜を乾燥させるのがよい。これにより、分離起点56を形成するためのレーザー加工装置44を用いて、保護膜を素早く乾燥させることができる。なお、集光点のデフォーカス量は、レーザー光線LBの照射によってアブレーションが発生しないとともに、レーザー光線LBの照射に起因する熱によって保護膜の乾燥時間を軽減可能な程度に適宜調整する。
【0043】
(補強部除去工程)
分離起点形成工程を実施した後、テープ40とリング状補強部36との隙間に楔状の工具を侵入させてリング状補強部36をデバイス領域8から分離して除去する補強部除去工程を実施する。
【0044】
(除去装置58)
補強部除去工程は、たとえば図5図7に示す除去装置58を用いて実施することができる。除去装置58は、フレームユニット支持手段60(図5参照)と、リング状補強部除去手段62(図5図6参照)と、シュリンク手段64(図7参照)とを備える。
【0045】
(フレームユニット支持手段60)
図5に示すように、除去装置58のフレームユニット支持手段60は、テープ40を介してウエーハ2を支持するウエーハ支持部66と、フレーム38を支持するフレーム支持部68とを含む。
【0046】
フレームユニット支持手段60のウエーハ支持部66は、上下方向に延びる回転軸70と、回転軸70の下端に固定された円形の支持部材72とを有する。支持部材72の直径は、ウエーハ2のデバイス領域8の直径よりも僅かに小さい。支持部材72の下端部分には、吸引手段(図示していない。)に接続された多孔質部材(図示していない。)が設けられている。そして、ウエーハ支持部66は、吸引手段で多孔質部材の下面に吸引力を生成することにより、テープ40を介してウエーハ2を吸着して支持する。
【0047】
図6に示すとおり、フレームユニット支持手段60のフレーム支持部68は、互いに間隔をおいて複数個(図示の実施形態では4個)設けられている。フレーム支持部68は、後述する一対の昇降板76の上面に装着されている。そして、フレーム支持部68は、図5(b)および図5(c)に示すように、フレーム38の下方からフレーム38を支持するようになっている。
【0048】
(リング状補強部除去手段62)
図5および図6に示すように、除去装置58のリング状補強部除去手段62は、水平方向に移動自在に配置された一対の可動片74と、一対の可動片74を水平方向に移動させる水平方向送り手段(図示していない。)と、一対の可動片74に昇降自在に支持された一対の昇降板76と、一対の昇降板76を昇降させる昇降手段(図示していない。)とを含む。水平方向送り手段および昇降手段のそれぞれは、エアシリンダまたは電動シリンダ等の適宜のアクチュエータから構成され得る。
【0049】
(楔状の工具78)
図6に示すとおり、各昇降板76の上面には、上記フレーム支持部68が装着されているとともに、上下方向に延びる軸線Aを中心として回転自在に一対の楔状の工具78が装着されている。楔状の工具78は、上方から下方に向かって直径が次第に減少する逆円錐台形状であり、工具78の上面78aと側面78bとによって楔が構成されている。
【0050】
そして、リング状補強部除去手段62においては、図5(b)および図5(c)に示すとおり、テープ40とリング状補強部36との間に楔状の工具78を侵入させ、分離起点56からリング状補強部36とデバイス領域8とを分離して、リング状補強部38をデバイス領域8から除去するようになっている。
【0051】
(シュリンク手段64)
図7に示すとおり、除去装置58のシュリンク手段64は、赤外線波長(たとえば、1300nm)のレーザー光線LB’を発振する発振器(図示していない。)と、発振器が発振したレーザー光線LB’を集光する集光器80とを有する。
【0052】
シュリンク手段64は、リング状補強部36をデバイス領域8から分離することに起因する弛みがテープ40に残存しないように、フレームユニット支持手段60に支持されたフレームユニット42のテープ40に赤外線波長のレーザー光線LB’を照射して、レーザー光線LB’の熱によりテープ40を加熱してシュリンクするようになっている。
【0053】
シュリンク手段64は、レーザー光線LB’の集光点をデフォーカスしてテープ40にレーザー光線LB’を照射し、テープ40をシュリンクするのが好適である。これによって、テープ40に照射するレーザー光線LB’のパワー密度を容易に調整することができる。
【0054】
なお、シュリンク手段は、上述したシュリンク手段64に限定されず、テープ40を加熱してシュリンクできるものであればよい。たとえば、シュリンク手段は、テープ40を加熱してシュリンクするヒーターであってもよい。
【0055】
図5(a)に示すとおり、補強部除去工程においては、まず、ウエーハ2の表面2aを下に向けた状態で、フレームユニット支持手段60のウエーハ支持部66によって、テープ40を介してウエーハ2を吸着して支持する。
【0056】
次いで、水平方向送り手段および昇降手段を作動させ、可動片74および昇降板76を移動させる。これによって、図5(b)に示すとおり、テープ40とリング状補強部36との隙間に楔状の工具78を侵入させる。また、フレームユニット支持手段60のフレーム支持部68にフレーム38の下面を接触させ、フレーム支持部68によってフレーム38を支持する。
【0057】
そして、図5(c)に示すとおり、矢印R4で示す方向にフレームユニット42を回転させ、楔状の工具78でリング状補強部36をテープ40から剥がして落下させる。すなわち、リング状補強部36をデバイス領域8から分離して除去する。リング状補強部36を分離する際は、フレームユニット42の回転に伴って、楔状の工具78が軸線Aを中心として回転するため、フレームユニット42の回転がスムーズに行われる。
【0058】
なお、補強部除去工程では、図示の実施形態とは反対に、フレームユニット42の周りを昇降板76が周回するようにしてもよい。
【0059】
(シュリンク工程)
補強部除去工程を実施した後、リング状補強部36をデバイス領域8から分離することに起因する弛みがテープ40に残存しないようにテープ40を加熱してシュリンクするシュリンク工程を実施する。ただし、シュリンク工程は、補強部除去工程の前に行ってもよい。
【0060】
(シュリンク工程:補強部除去工程の後)
補強部除去工程の後にシュリンク工程を実施する場合には、上記除去装置58を用いてシュリンク工程を実施することができる。この場合のシュリンク工程においては、まず、ウエーハ支持部66によってウエーハ2を支持している状態を保ちつつ、楔状の工具78をフレームユニット42から遠ざける。
【0061】
次いで、テープ40に弛みが生じた部分を確認した上で、シュリンク手段64の集光器80とウエーハ支持部66との相対位置を調整し、フレームユニット42を集光器80の上方に位置づける。次いで、図7に示すように、赤外線波長のレーザー光線LB’の集光点をデフォーカスして、テープ40に弛みが生じた部分にレーザー光線LB’を照射する。これによって、レーザー光線LB’の熱によりテープ40がシュリンクし、テープ40の弛みが除去される。
【0062】
レーザー光線LB’を照射する際は、シュリンク手段64の集光器80とウエーハ支持部66とを相対的に移動させて、テープ40に弛みが生じた部分のすべてにレーザー光線LB’を照射する。また、集光点のデフォーカス量については、レーザー光線LB’の照射によってアブレーションが発生しないとともに、レーザー光線LB’の照射に起因する熱によってテープ40がシュリンクする程度に適宜調整する。
【0063】
なお、シュリンク工程では、レーザー光線LB’を集光せずにテープ40に照射してもよいが、テープ40に照射するレーザー光線LB’のパワー密度の調整が容易になることから、レーザー光線LB’を集光するとともにレーザー光線LB’の集光点をデフォーカスして、テープ40にレーザー光線LB’を照射するのが好ましい。
【0064】
上記のように、補強部除去工程の後にシュリンク工程を実施する場合には、実際にテープ40に弛みが生じた部分を確認し、実際にテープ40に弛みが生じた部分に対して正確にレーザー光線LB’を照射することができる。
【0065】
(シュリンク工程:補強部除去工程の前)
一方、補強部除去工程の前にシュリンク工程を実施する場合には、分離起点形成工程で使用可能な上記レーザー加工装置44を用いてシュリンク工程を実施することができる。この場合、シュリンク工程は、分離起点形成工程の前でも後でもよい。
【0066】
図8に基づいて説明すると、補強部除去工程の前にシュリンク工程を実施する場合には、保持部材52で保持したフレームユニット42を集光器54の上方に位置づける。次いで、R3方向にフレームユニット42を回転させる。次いで、赤外線波長のレーザー光線LBの集光点をデフォーカスして、ウエーハ2とフレーム38との間のテープ40の環状領域にレーザー光線LBを照射し、レーザー光線LBの熱によりテープ40をシュリンクする。このように、あらかじめテープ40をシュリンクさせておくことにより、後でデバイス領域8からリング状補強部36を除去しても、テープ40に弛みが生じるのが抑制される。
【0067】
補強部除去工程の前にシュリンク工程を実施する場合には、分離起点形成工程およびシュリンク工程において同一のレーザー加工装置44を用いることができるため、少ない構成要素で本発明のウエーハの加工方法を実施可能である。また、この場合には、除去装置58のシュリンク手段がレーザー加工装置44によって構成され得る。
【0068】
なお、シュリンク工程においては、シュリンク手段64やレーザー加工装置44に代えて、ヒーターを用いてテープ40を加熱してシュリンクしてもよい。ヒーターを用いてシュリンク工程を実施する場合、補強部除去工程の前でも後でもよい。
【0069】
以上のとおりであり、図示の実施形態においては、フレームユニット42の状態でリング状補強部36を除去しても、テープ40に弛みが残存しないようにすることができる。したがって、フレームユニット42を搬送する際や、ウエーハ2を個々のデバイスチップに分割する際に、不都合が生じるという問題が解消される。
【符号の説明】
【0070】
2:ウエーハ
2a:ウエーハの表面
2b:ウエーハの裏面
4:デバイス
6:分割予定ライン
8:デバイス領域
12:境界部
36:リング状補強部
38:フレーム
38a:フレームの開口部
40:テープ
42:フレームユニット
56:分離起点
58:除去装置
60:フレームユニット支持手段
62:リング状補強部除去手段
64:シュリンク手段
66:ウエーハ支持部
68:フレーム支持部
78:楔状の工具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8