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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110439
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20240808BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20240808BHJP
   H01L 21/318 20060101ALN20240808BHJP
【FI】
H01L21/31 B
C23C16/455
H01L21/318 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014958
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(72)【発明者】
【氏名】陶山 なぎさ
(72)【発明者】
【氏名】小出 紘之
(72)【発明者】
【氏名】長橋 知也
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA06
4K030AA13
4K030BA40
4K030EA01
4K030EA03
4K030EA06
4K030EA11
4K030FA10
4K030GA06
4K030HA01
4K030JA06
4K030JA09
4K030JA11
4K030LA12
4K030LA15
5F045AA06
5F045AA15
5F045AB31
5F045AB33
5F045AC00
5F045AC03
5F045AC07
5F045AC12
5F045AD05
5F045AD06
5F045AD07
5F045AD08
5F045AD09
5F045AD10
5F045AD11
5F045AD12
5F045AD13
5F045AD14
5F045AD15
5F045AD16
5F045AD17
5F045AD18
5F045AE13
5F045AE15
5F045AE17
5F045AE19
5F045AE21
5F045AE23
5F045AE25
5F045BB02
5F045BB19
5F045DP19
5F045DP28
5F045DQ05
5F045EE02
5F045EE17
5F045EE20
5F045EF02
5F045EF08
5F045EK06
5F045EM08
5F058BA09
5F058BC08
5F058BC09
5F058BD10
5F058BD12
5F058BF04
5F058BF24
5F058BF27
5F058BF30
5F058BF37
5F058BG02
5F058BJ06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】基板に形成される膜の均一性を向上させ、段差被覆性を制御する。
【解決手段】基板処理装置10は、反応管格納室206bを備え、反応管格納室内に、基板Sを処理する区画である処理室201を有し、鉛直方向に延びた円筒形状の反応管210、反応管の外周に設置された加熱部(炉体)としてのヒータ211、ガス供給部としてのガス供給構造212及びガス排気部としてのガス排気構造213を備える。ガス供給構造は、反応管のガス流れ方向上流に設けられ、ガス供給構造から反応管内に、基板に対して水平方向からガスが供給される。ガス排気構造は、反応管のガス流れ方向下流に設けられ、反応管内のガスがガス排気構造から排出される。ガス供給構造と反応管内とガス排気構造とは、水平方向に連通している。反応菅の上流側には供給されたガスの流れを整える上流側整流部214が、下流側には排出されるガスの流れを整える下流側整流部215が設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)第1処理ガスを基板に供給する工程と、
b)第2処理ガスを第2貯留部から前記基板に供給する工程と、を有し、
b)では、前記基板上での前記第2処理ガスの逐次反応が収束するまでの時間を短縮する様に、行われる
基板処理方法。
【請求項2】
a)第1処理ガスを基板に供給する工程と、
b)第2処理ガスを第2貯留部から前記基板に供給する際に、前記基板が存在するエリアの圧力を300~3000Paの圧力とし、前記第2処理ガスを供給する時間を2秒~5秒として、前記第2処理ガスを供給する工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項3】
前記圧力を、2000Pa~2600Paとし、
前記時間を、2~4秒として、
b)を行う
請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
a)では、前記第1処理ガスを第1貯留部から供給する
請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第2処理ガス貯留部を複数設け、
b)では、前記複数の第2貯留部から前記第2処理ガスを供給する
請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記第2処理ガス貯留部の上流側バルブと下流側バルブを開けた状態で行う
請求項2又は5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記第1処理ガス及び前記第2処理ガスは、前記基板を収容する処理容器の側方であって、前記基板の水平方向に突出したガス供給部から供給され、
前記ガス供給部に対向する排気部から排気される
請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記基板は凹部を有し、
c)前記凹部のアスペクト比に基づいて、b)の圧力を更に変更する工程と、
を有する
請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項9】
a)第1処理ガスを、凹部を有する基板に供給する工程と、
b)前記凹部内に形成される窒素含有膜の窒素欠損量が、2.5×1018個/cm以上となる様に、第2処理ガスを第2貯留部から前記基板に供給する工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項10】
a)第1処理ガスを基板に供給する工程と、
b)第2処理ガスを第2貯留部から前記基板に、前記第1原料ガスの供給時間よりも長い時間で供給する工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項11】
a)第1処理ガスを基板に供給する工程と、
b)第2処理ガスを第2貯留部から前記基板に供給する工程と、を有し、
前記基板が存在するエリアを排気する排気バルブの開度であって、a)における開度をb)における開度よりも大きくする
基板処理方法。
【請求項12】
a)第1処理ガスを基板に供給する工程と、
b)第2処理ガスを第2貯留部から前記基板に供給する工程と、を有し、
b)を行う際の前記基板が存在するエリアの圧力を前記a)を行う際の圧力よりも高くする
基板処理方法。
【請求項13】
a)第1処理ガスを基板に供給する工程と、
b)第2処理ガスを第2貯留部から前記基板に供給する工程と、を有し、
前記第2処理ガスの供給量を前記第1処理ガスの供給量よりも多くする
基板処理方法。
【請求項14】
a)第1処理ガスを、凹部を有する基板に供給する工程と、
b)第2処理ガスを第2貯留部から前記基板に供給する工程と、を有し、
b)では、前記凹部の上部で生じる前記逐次反応と、前記凹部の底部で生じる前記逐次反応とが、同時に終わる様に前記第2処理ガスが供給される
基板処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板上に形成される副生成物の基板面内における濃度分布に応じた供給時間でそれぞれ原料ガスおよび/または反応ガスを供給する技術がある(例えば特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-208883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、基板に形成される膜の均一性が、半導体デバイス性能が要求する均一性に満たない場合がある。
【0005】
本開示は、基板に形成される膜の均一性を向上させることが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
a)第1処理ガスを基板に供給する工程と、
b)第2処理ガスを第2処理ガス貯留部から前記基板に供給する工程と、を有し、
b)では、前記基板上での前記第2処理ガスの逐次反応が生じるまでの時間を短縮する様に、行われる技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、基板に形成される膜の均一性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の一実施形態における基板処理装置の概略を示す縦断面図である。
図2図2(A)は、本開示の一実施形態における第一ガス供給系を示す図であり、図2(B)は、本開示の一実施形態における第二ガス供給系を示す図であり、図2(C)は、本開示の一実施形態における第三ガス供給系を示す図である。
図3図3(A)は、本開示の一実施形態における処理室排気系を示す図であり、図3(B)は、本開示の一実施形態における移載室排気系を示す図である。
図4図4は、本開示の一実施形態における基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
図5図5は、本開示の一実施形態における基板処理フローを示す図である。
図6図6は、本開示の一実施形態における基板処理シーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一態様について、主に図1図6を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
基板処理装置10の構成について、図1を用いて説明する。
【0011】
基板処理装置10は、反応管格納室206bを備え、反応管格納室206b内に、鉛直方向に延びた円筒形状の反応管210と、反応管210の外周に設置された加熱部(炉体)としてのヒータ211と、ガス供給部としてのガス供給構造212と、ガス排気部としてのガス排気構造213とを備える。ガス供給部には、後述する上流側整流部214やノズル223,224を含めてもよい。また、ガス排気部には、後述する下流側整流部215を含めてもよい。反応管210のうち、基板Sを処理する区画を処理室201と呼ぶ。また、処理室201は、内部に基板Sが配される処理空間と呼ぶこともできる。
【0012】
ガス供給構造212は反応管210のガス流れ方向上流に設けられ、ガス供給構造212から反応管210内にガスが供給され、基板Sに対して水平方向からガスが供給される。ガス排気構造213は反応管210のガス流れ方向下流に設けられ、反応管210内のガスはガス排気構造213から排出される。ガス供給構造212と反応管210内とガス排気構造213とは水平方向に連通している。
【0013】
反応管210とガス供給構造212との間の反応管210の上流側には、ガス供給構造212から供給されたガスの流れを整える上流側整流部214が設けられる。また、反応管210とガス排気構造213との間の反応管210の下流側には、反応管210から排出されるガスの流れを整える下流側整流部215が設けられる。反応管210の下端は、マニホールド216で支持される。
【0014】
反応管210、上流側整流部214、下流側整流部215は連続した構造であり、例えば石英やSiC等の材料で形成される。これらはヒータ211から放射される熱を透過する熱透過性部材で構成される。ヒータ211の熱は、基板Sやガスを加熱する。
【0015】
ガス供給構造212は、ガス供給管251、ガス供給管261が接続されると共に、各ガス供給管から供給されたガスを分配する分配部225を有する。分配部225の下流側には複数のノズル223、ノズル224が設けられる。ガス供給管251とガス供給管261は、後述するように異なる種類のガスを供給する。ノズル223、ノズル224は上下の関係や横並びの関係で配される。本態様においては、ガス供給管251とガス供給管261をまとめてガス供給管221とも呼ぶ。各ノズルはガス吐出部とも呼ぶ。分配部225は、ガス供給管251からノズル223に、ガス供給管261からノズル224に、それぞれのガスが供給されるよう構成されている。
【0016】
上流側整流部214は、筐体227と区画板226を有する。区画板226は水平方向に延伸され、且つ孔の無い連続した構造である。ここでいう水平方向とは、筐体227の側壁方向や、反応管210内の基板Sの面と並行な方向を意味する。区画板226は鉛直方向に複数配される。区画板226は筐体227の側壁に固定され、ガスが区画板226を超えて下方、もしくは上方の隣接領域に移動しないように構成される。
【0017】
それぞれの区画板226は、それぞれの基板Sに対応した位置に設けられる。区画板226の間や区画板226と筐体227との間には、ノズル223、ノズル224が設けられる。ノズル223、ノズル224から吐出されたガスは、区画板226によってガス流れが整えられ、基板Sの表面に供給される。すなわち、基板Sからみれば、基板Sの側方からガスが供給される。
【0018】
下流側整流部215は、後述する基板支持具300に基板Sが支持された状態において、最上位に配された基板Sよりも天井が高くなるよう構成され
、基板支持具300の最下位に配された基板Sよりも底部が低くなるよう構成される。
【0019】
下流側整流部215は、筐体231と区画板232を有する。区画板232は水平方向に延伸され、且つ孔の無い連続した構造である。ここでいう水平方向とは、上述の水平方向と同様である。更には、区画板232は鉛直方向に複数配される。区画板232は筐体231の側壁に固定され、ガスが区画板232を超えて下方、もしくは上方の隣接領域に移動しないように構成される。筐体231のうち、ガス排気構造213と接触する側には、フランジ233が設けられる。
【0020】
区画板232は、それぞれ基板Sに対応した位置であって、それぞれ区画板226に対応した位置に設けられる。対応する区画板226と区画板232は、同等の高さにすることが望ましい。更には、基板Sを処理する際、基板Sの高さと区画板226、区画板232の高さをそろえることが望ましい。
【0021】
上述のような位置関係となるように区画板226と区画板232を設けることで、それぞれの基板Sの上流、下流で、鉛直方向において圧力損失を均一にできる。すなわち、図中の矢印のような、区画板226、基板S上、区画板232にかけて鉛直方向への流れが抑制された水平なガス流れを確実に形成できる。従って、各基板S上におけるガスの圧力の差を減少させることができる。これにより、各基板Sに対して処理を均一に行うことができる。
【0022】
ガス排気構造213は下流側整流部215の下流に設けられる。ガス排気構造213は主に筐体241と排気管接続部242とで構成される。筐体241のうち、下流側整流部215側には、フランジ243が設けられる。筐体231と筐体241は、それぞれの天井部及び底部の高さが連続した構造である。筐体241の下流側であって下側もしくは水平方向には、下流側整流部215を通過したガスを排気する排気孔244が形成されている。ガス排気構造213は、反応管210の横方向に設けられ、基板Sの横方向からガスを排気する横排気構造である。
【0023】
移載室217は、反応管210の下部にマニホールド216を介して設置される。移載室217には、基板搬入口を介して真空搬送ロボットにより基板Sを基板支持具(以下、単にボートと記す場合もある)300に載置(搭載)したり、真空搬送ロボットにより基板Sを基板支持具300から取り出したりすることが行われる。
【0024】
移載室217の内部には、基板支持具300、仕切板支持部310、及び基板支持具300と仕切板支持部310と(これらを合わせて基板保持具と呼ぶ)を上下方向と回転方向に駆動する上下方向駆動機構部400を格納可能である。図1においては、基板支持具300は上下方向駆動機構部400によって上昇され、反応管210内に格納された状態を示す。
【0025】
上下方向駆動機構部400は、基板支持具300と仕切板支持部310とを一緒に回転させる回転駆動機構430と、仕切板支持部310に対して基板支持具300を相対的に上下方向に駆動させるボート上下機構420を備えている。回転駆動機構430とボート上下機構420は、ベースプレート402に側板403で支持されている蓋体としてのベースフランジ401に固定されている。ベースフランジ401の上面には真空シール用のOリング446が設置されており、図1に示すように上下駆動用モータ410で駆動されてベースフランジ401の上面が移載室217に押し当てられる位置まで上昇させることにより、反応管210の内部を気密に保つことができる。仕切板支持部310に固定された支持具440と基板支持具300に固定された支持部441との間は、真空ベローズ443で接続されている。
【0026】
次に、図1を用いて基板支持部の詳細を説明する。
基板支持部は、少なくとも基板Sを支持する基板支持具300で構成され、反応管210内に格納される。反応管210の天板内壁直下に基板Sが配置される。また、基板支持部は、移載室217の内部で図示しない基板搬入口を介して真空搬送ロボットにより基板Sの移し替えを行ったり、移し替えた基板Sを反応管210の内部に搬送して基板Sの表面に薄膜を形成する処理を行ったりする。基板搬入口は、例えば移載室217の側壁に設けられる。なお、基板支持部に、仕切板支持部310を含めて考えても良い。
【0027】
基板支持具300には、基部311に支持された複数の支持ロッド315により複数の基板Sが、鉛直方向(垂直方向)に、所定の間隔で載置されている。この支持ロッド315により支持された複数の基板Sの間は、仕切板支持部310に支持された支柱313に所定に間隔で固定(支持)された円板状の仕切板314によって仕切られている。ここで、仕切板314は、基板Sの直下に配置され、基板Sの上部と下部のいずれか又は両方に配置される。仕切板314は、各基板Sの空間を遮断する。基板支持具300に載置されている複数の基板Sの所定の間隔は、仕切板支持部310に固定された仕切板314の上下の間隔と同じである。また、仕切板314の直径は、基板Sの直径よりも大きく形成されている。
【0028】
基部311、仕切板314及び複数の支持ロッド315は、例えば石英やSiC等の材料で形成される。なお、ここでは、基板支持具300に5枚の基板Sを支持した例を示すが、これに限るものでは無い。例えば、基板Sを5~50枚程度、支持可能に基板支持具300を構成しても良い。なお、仕切板314は、セパレータとも呼ぶ。
【0029】
なお、本明細書における「5~50枚」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「5~50枚」とは「5枚以上50枚以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0030】
基板S上に薄膜を形成する工程において、仕切板314は、区画板226及び/又は区画板232に対応した高さに位置することが好ましい。さらに好ましくは、仕切板314と、区画板226及び区画板232の高さを揃えることが望ましい。
【0031】
このような基板支持部を用いることで、区画板226、基板S上、区画板232にかけて鉛直方向への流れが抑制された水平なガス流れを形成しやすくなる。これにより、各基板S上のガスの圧力の差が均一になるため、各基板Sに対して処理を均一に行うことができる。
【0032】
仕切板支持部310と基板支持具300とは、上下方向駆動機構部400により、反応管210と移載室217との間の上下方向、及び基板支持具300で支持された基板Sの中心周りの回転方向に駆動される。
【0033】
続いて図2(A)~図2(C)を用いてガス供給系の詳細を説明する。図2(A)に記載のように、ガス供給管251には、上流方向から順に、第一ガス源252、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)253、開閉弁であるバルブ275、第1処理ガスを貯留する第1貯留部であるタンク259及び開閉弁であるバルブ254が設けられている。
【0034】
第一ガス源252は、第一元素を含有する第一ガス(「第一元素含有ガス」とも呼ぶ。)源である。第一ガスは、原料ガス、すなわち、処理ガスの一つである。
【0035】
主に、ガス供給管251、MFC253、バルブ275、タンク259、バルブ254により、第一ガス供給系250(原料ガス供給系,処理ガス供給系ともいう)が構成される。第一ガス源252を第一ガス供給系250に含めてもよい。
【0036】
ガス供給管251のうち、バルブ275とタンク259との間には、ガス供給管255が接続される。ガス供給管255には、上流方向から順に、不活性ガス源256、MFC257、及び開閉弁であるバルブ258が設けられている。不活性ガス源256からは不活性ガスが供給される。
【0037】
主に、ガス供給管255、MFC257、バルブ258により、第一不活性ガス供給系が構成される。不活性ガス源256から供給される不活性ガスは、基板処理工程では、反応管210内に留まったガスをパージするパージガスとして作用する。不活性ガス源256を第一不活性ガス供給系に含めてもよい。第一不活性ガス供給系を第一ガス供給系250に加えてもよい。
【0038】
図2(B)に記載のように、ガス供給管261には、上流方向から順に、第二ガス源262、MFC263、バルブ276、第2処理ガスを貯留する第2貯留部としてのタンク269及びバルブ264が設けられている。
【0039】
第二ガス源262は第二元素を含有する第二ガス(以下、「第二元素含有ガス」とも呼ぶ。)源である。第二ガスは、第一ガスとは異なるガスであり、処理ガスの一つとしてもよい。なお、第二ガスは、原料ガスである第一ガスの前駆体と反応する反応ガスまたは基板Sの表面を改質する改質ガスとして考えてもよい。
【0040】
主に、ガス供給管261、MFC263、バルブ276、タンク269、バルブ264により、第二ガス供給系260(反応ガス供給系、処理ガス供給系ともいう)が構成される。第二ガス源262を第二ガス供給系260に含めてもよい。なお、図2(B)では、第二ガス供給系260を一つ示しているが、これに限るものでは無い。第二ガス供給系260を、複数、並列的に接続可能に構成しても良い。
【0041】
ガス供給管261のうち、バルブ276とタンク269との間には、ガス供給管265が接続される。ガス供給管265には、上流方向から順に、不活性ガス源266、MFC267、及び開閉弁であるバルブ268が設けられている。不活性ガス源266からは不活性ガスが供給される。
【0042】
主に、ガス供給管265、MFC267、バルブ268により、第二不活性ガス供給系が構成される。不活性ガス源266から供給される不活性ガスは、基板処理工程では、反応管210内に留まったガスをパージするパージガスとして作用する。不活性ガス源266を第二不活性ガス供給系に含めてもよい。第二不活性ガス供給系を第二ガス供給系260に加えてもよい。
【0043】
図2(C)に記載のように、ガス供給管271には、上流方向から順に、第三ガス源272、MFC273、及びバルブ274が設けられている。ガス供給管271は移載室217に接続される。移載室217を不活性ガス雰囲気としたり、移載室217を真空状態にしたりする際、不活性ガスを供給する。
【0044】
第三ガス源272は不活性ガス源である。主に、ガス供給管271、MFC273、バルブ274により、第三ガス供給系270が構成される。第三ガス源272を第三ガス供給系270に含めてもよい。第三ガス供給系270は、移載室供給系とも呼ぶ。
【0045】
続いて図3(A)及び図3(B)を用いて排気系を説明する。反応管210の雰囲気を排気する排気系280は、反応管210と連通する排気管281を有し、排気管接続部242を介して筐体241に接続される。
【0046】
図3(A)に記載のように、排気管281には、バルブ282、圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ283を介して、真空排気装置としての真空ポンプ284が接続されており、反応管210内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。排気管281、バルブ282、APCバルブ283をまとめて排気系280と呼ぶ。排気系280は処理室排気系とも呼ぶ。なお、排気系280に真空ポンプ284を含めてもよい。移載室217の雰囲気を排気する排気系290は、移載室217に接続されると共に、その内部と連通する排気管291を有する。
【0047】
図3(B)に記載のように、排気管291には、バルブ292、APCバルブ293を介して、真空ポンプ294が接続されており、移載室217内の圧力が所定の圧力となるよう真空排気し得るように構成されている。排気管291、バルブ292、APCバルブ293をまとめて排気系290と呼ぶ。排気系290は移載室排気系とも呼ぶ。なお、排気系290に真空ポンプ294を含めてもよい。
【0048】
続いて図4を用いて制御部(制御手段)であるコントローラを説明する。基板処理装置10は、基板処理装置10の各部の動作を制御するコントローラ600を有している。
【0049】
コントローラ600の概略を図4に示す。コントローラ600は、CPU(Central Processing Unit)601、RAM(Random Access Memory)602、記憶部としての記憶装置603、I/Oポート604を備えたコンピュータとして構成されている。RAM602、記憶装置603、I/Oポート604は、内部バス605を介して、CPU601とデータ交換可能なように構成されている。
【0050】
記憶装置603は、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置603内には、基板処理装置10の動作を制御する制御プログラムや、基板処理の手順や条件などが記載されたプロセスレシピ等が読み出し可能に格納されている。
【0051】
なお、プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ600に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM602は、CPU601によって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0052】
I/Oポート604は、上述の上下方向駆動機構部400、ヒータ211、APCバルブ283,293、真空ポンプ284,294、MFC253,257,263,267,273、バルブ254,258,264,268,274,275,276、回転駆動機構430等に接続されている。
【0053】
CPU601は、記憶装置603からの制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置681からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置603からプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU601は、読み出されたプロセスレシピの内容に沿うように、上下方向駆動機構部400による基板支持具300の昇降動作、ヒータ211による加熱動作、APCバルブ283,293の開閉動作、真空ポンプ284,294の起動及び停止、MFC253,257,263,267,273による各種ガスの流量調整動作、バルブ254,258,264,268,274,275,276の開閉動作、回転駆動機構430による基板支持具300の回転及び回転速度調節動作等を制御するように構成されている。
【0054】
コントローラ600は、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、DVD等の光ディスク、MOなどの光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ)682を用いてコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本態様に係るコントローラ600を構成することができる。なお、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置682を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置682を介さずにプログラムを供給するようにしても良い。なお、記憶装置603や外部記憶装置682は、プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において、記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置603単体のみを含む場合、外部記憶装置682単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0055】
次に、半導体製造工程の一工程として、上述した構成の基板処理装置10を用いて基板S上に薄膜を形成する工程について、図5図6を用いて説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置10を構成する各部の動作はコントローラ600により制御される。
【0056】
ここでは、第一ガスと第二ガスを用いて、基板Sの、トレンチやホール等の凹部に膜を形成する成膜処理について説明する。第一ガスとして、例えば、ハロゲン元素を含むガスを用いることができる。六塩化二ケイ素(SiCl、ヘキサクロロジシラン、略称:HCDS)ガスを用いることができる。
【0057】
本明細書において用いる「基板」という用語は、基板そのものを意味する場合や、基板とその表面上に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において用いる「基板の表面」という言葉は、基板そのものの表面を意味する場合や、基板上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「基板上に所定の層を形成する」と記載した場合は、基板そのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、基板上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合も、「基板」という言葉を用いた場合と同義である。
【0058】
(S102)
移載室圧力調整工程S102を説明する。ここでは、移載室217内の圧力を移載室217に隣接する図示しない真空搬送室と同レベルの圧力とする。具体的には、排気系290を作動させ、移載室217の雰囲気が真空レベルとなるよう、移載室217の雰囲気を排気する。
【0059】
(S104)
続いて基板搬入工程S104を説明する。移載室217が真空レベルとなったら、基板Sの搬送を開始する。基板Sが真空搬送室に到着したらゲートバルブを解放し、真空搬送ロボットは基板Sを移載室217に搬入する。
【0060】
このとき基板支持具300は移載室217中に待機され、基板Sは基板支持具300に移載される。所定枚数の基板Sが基板支持具300に移載されたら真空搬送ロボットを退避させると共に、上下方向駆動機構部400により基板支持具300を上昇させ基板Sを反応管210内に移動させる。このとき、基板Sの表面が区画板226、区画板232の高さとそろうよう、位置決めされる。
【0061】
(S106)
続いて加熱工程S106を説明する。反応管210内に基板Sを搬入したら、反応管210内を所定の圧力となるように制御するとともに、基板Sの表面温度が所定の温度となるように制御する。第一ガスとして、例えばHCDSガスを用いる場合、ヒータ211の温度は、基板Sの温度が、例えば100℃~1500℃であり、好ましくは200℃~1000℃であって、さらに好ましくは400℃~800℃となるよう制御する。また、反応管210内の圧力は、例えば0.01Pa~1kPaとすることが考えられる。
【0062】
(S108)
続いて膜処理工程S108について説明する。膜処理工程S108では、プロセスレシピに応じて、基板Sの凹部に対して、後述する第一ガスを基板Sにフラッシュ供給する第一ガス供給工程と、第二ガスを基板Sにフラッシュ供給する第二ガス供給工程と、を1回以上行って、表面に凹部を有する基板S上に所定の膜を形成する。
【0063】
<第一ガス供給工程、ステップS1>
本ステップでは、内部に基板Sが配される処理室201に対して、第一ガスをフラッシュ供給する。ここで、フラッシュ供給とは、短時間で大流量のガスを反応管210内に供給することをいう。
【0064】
具体的には、本ステップでは、ガス供給管251に設けられたタンク259に予め第一ガスを溜めておく。第一ガスとして、例えばHCDSガスを用いる場合、このときのタンク259内の圧力は、例えば0.01~100kPa、好ましくは0.1~1.0kPaとする。
【0065】
そして、第一ガスを供給する際に、タンク259とノズル223の間の、タンク259の下流側に設けられたバルブ254を開き、予め第一ガスが貯留されたタンク259から、ガス供給管251内に第一ガスを供給する。このとき処理室201内の圧力(全圧)を例えば、0.01~100kPa、好ましくは0.1~1.0kPaとする。そして、第一ガスの供給を開始してから所定時間経過後にバルブ254を閉じてガス供給管251内への第一ガスの供給を停止する。第一ガスとして、例えばHCDSガスを用いる場合、例えば0.01~10秒の範囲内の時間が経過後にバルブ254を閉じてガス供給管251内への第一ガスの供給を停止する。
【0066】
第一ガスは、ガス供給構造212から、上流側整流部214を介して、反応管210内に短時間で大量に供給される。その後、基板S上の空間、下流側整流部215、ガス排気構造213、排気管281を介して排気される。このときバルブ282とAPCバルブ283は開放された状態である。ここでは、第一ガスを処理室201内に供給する間、バルブ275は開いた状態でも閉じた状態でもよい。
【0067】
このとき、処理室201内の第一ガスの分解率は小さくなるように、処理室201内に供給することが好ましい。
【0068】
また、基板S上に形成された凹部(または、溝部、トレンチ、ホール)内に膜を形成する場合、ガスの反応性が高いほど、凹部の開口側への吸着しやすさが高くなり、凹部の深部側には吸着しづらくなる。そのため、分解することでより反応性が高い物質が生成するようなガス(例えば、HCDSガス)を、第一ガスとして凹部への成膜を行う場合、第一ガスの滞在時間τを短くする、または/及び、第一ガスの流速vを上げるほど、分解率Xが低くなり、ステップカバレッジを向上させることができる。なお、第一ガスの分解率Xが0%となるように、第一ガスの滞在時間τ、または/及び、第一ガスの流速vを制御すると、ステップカバレッジの改善にとって好ましい。第一ガスの滞在時間τを短く、第一ガスの流速vを上げる方法としては、タンク259を用いて、APCバルブ283の開度を上げて供給する方法がある。
【0069】
第一ガスとして、例えばHCDSガスを用いる場合、第一ガスの流速を例えば10m/秒以上とすることで、分解率Xを0%~25%と比較的低い値にすることができ、ステップカバレッジの改善に有利である。また、第一ガスの流速を例えば15m/秒以上とすることで、分解率を0%~15%の範囲内とさらに低い値にすることができ、ステップカバレッジの改善にとって好ましい。また、20.0m/秒以上に制御することで、分解率を0%、すなわち第一ガスを未分解とすることができ、ステップカバレッジの改善にとってさらに好ましい。
【0070】
すなわち、本ステップでは、第一ガスをフラッシュ供給することにより、基板Sに供給される第一ガスの分解率Xを変化させることができる。また、本ステップでは、第一ガスをフラッシュ供給することにより、第一ガスの流速が制御され、これにより、第一ガスの処理室201内における滞在時間が制御され、第一ガスの分解率Xを制御することが可能となる。
【0071】
また、本ステップでは、第一ガスをフラッシュ供給することにより、第一ガスの供給量を、第一ガスの供給開始時に大きくすることができる。第一ガスとして、例えばHCDSガスを用いる場合、基板S1枚当たりにおける、単位時間当たりの第一ガスの供給量を例えば0.001~15slm、好ましくは0.05~10slm、さらに好ましくは0.010~5slmとしてもよい。0.001slmより小さくすると、処理室201内の第一ガスの分圧が低くなり、成膜レートが低下する場合がある。15slmより大きくすると、処理室201内での第一ガスの分圧上昇により、第一ガスの分解が過剰に進行する場合がある。0.001~15slmとすると、成膜レートの低下と第一ガスの過剰な分解を抑制しつつ、第一ガスの流量の制御によって流速を変化させることができる。また、0.05~10slmとすると、成膜レートの低下と第一ガスの分解をさらに抑制しつつ、第一ガスの流量の制御によって流速を変化させることができる。0.010~5slmとすると、成膜レートの低下と第一ガスの過剰な分解を十分に抑制しつつ、第一ガスの流量の制御によって流速を変化させることができる。
【0072】
また、第一ガスをフラッシュ供給することにより、タンク259内で圧力を高められた(昇圧された)第一ガスを処理室201内に供給することができる。これにより、供給開始時の第一ガスの流速を上げることができる。
【0073】
また、上述したように、本ステップでは、バルブ282及びAPCバルブ283は開放された状態であり、処理室201内に第一ガスを供給する間、真空ポンプ284により反応管210内を排気する。これにより、処理室201内の圧力は低くなり、第一ガスの流速が上がり、処理室201内における第一ガスの滞在時間τを短くすることができる。
【0074】
また、第一ガスを処理室201内に供給する間、バルブ258を開き、ガス供給管255を介してガス供給管251内に、不活性ガスを供給しても良い。不活性ガスとしては、例えば、窒素(N)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)等を用いることができる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述する各ステップにおいても同様である。
【0075】
また、本ステップの前であって、処理室201内へ第一ガスの供給を開始する前に、APCバルブ283を調整して、真空ポンプ284により反応管210内を排気するようにしてもよい。これにより、第一ガスの流速、特に供給開始時における流速が上がり、処理室201内における第一ガスの滞在時間τを短くすることができる。
【0076】
また、本ステップにおける処理室201内の温度は、第一ガスの分解温度よりも高く設定されてもよい。これにより、第一ガスの反応性が増大することで成膜レートが改善される、かつ、処理室201内における第一ガスの滞在時間を短くすることにより第一ガスの分解率が高くなってしまうことを抑制できる。
【0077】
本ステップは、基板S表面の吸着サイトの少なくとも一部が、第一ガスに含まれる第一元素を含む物質である第一元素含有物が化学吸着した第一元素サイトとなるように行われてもよい。
【0078】
上述の実施形態において、例えば、第14族元素であるシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)や、第13族元素であるアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)を、第1元素としてもよい。また、例えば、遷移金属元素を第1元素としてもよい。遷移金属元素としては、例えば、第4族元素であるチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、Hf(ハフニウム)や、第5族元素であるニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、第6族元素であるモリブデン(Mo)、タングステン(W)、第7族元素であるマンガン(Mn)、第8族元素であるルテニウム(Ru)、第9族元素であるコバルト(Co)、第10族元素であるニッケル(Ni)などを、第1元素としてもよい。
【0079】
第一ガスとしては、例えば、第一元素としてのSiを含有するSi含有ガスを用いることができる。Si含有ガスとしては、例えばSi及び塩素(Cl)含有ガスを用いることができる。Si及びCl含有ガスとして、例えばHCDSガス等のSi-Si結合を含む原料ガス等を用いることができる。また、Si及びCl含有ガスとして、例えば1,1,2,2-テトラクロロ-1,2-ジメチルジシラン((CH3)2Si2Cl4、略称:TCDMDS)や、1,2-ジクロロー1,1,2,2-テトラメチルジシラン((CH3)4Si2Cl2、略称:DCTMDS)を用いてもよい。TCDMDSは、Si-Si結合を有し、さらにはクロロ基、アルキレン基を含む。また、DCTMDSは、Si-Si結合を有し、さらにはクロロ基、アルキレン基を含む。第一ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0080】
第一ガスとして例えばHCDSガスを用いる場合、HCDSガスが分解され、Si結合間の結合手が切断されると、HCDSガスに比べて反応性が高いSiClとSiClが生成される。すなわち、HCDSガスは、以下に示すように分解する。
【0081】
HCDS(SiCl)→SiCl+SiCl
【0082】
SiClとSiClは、HCDSに比べて反応性が高いため、HCDSの分解率が高く、HCDSの分解が進むほど反応が進む。そして、後述する第二ガスとして例えばアンモニア(NH)ガスを用いる場合、SiClとSiClがそれぞれ後述するNH基と反応して、SiN層を形成することとなるが、このとき塩化水素(HCl)等の反応副生成物が生成される。
【0083】
基板S表面の吸着サイトの少なくとも一部は、Siを含む物質であるSi含有物が化学吸着したSiサイトとなるが、HCl等の反応副生成物は、基板S上の吸着サイトに吸着され、Si含有物の吸着を阻害する。本ステップでは、第一ガスをフラッシュ供給することにより、供給開始から短時間で、第一ガスが基板Sに対して大量に供給されるため、HCl等の反応副生成物の基板S上への吸着サイトを減少させ、Si含有物の吸着量を増加させることができる。これにより、成膜レートを向上させつつ、ステップカバレッジ性能を向上させることができる。
【0084】
<パージ、ステップS2>
本ステップでは、内部に基板Sが配される処理室201に対して、パージガスを供給する。すなわち、ステップS1の第一ガスのフラッシュ供給後に、吸着サイトに吸着されなかったSi含有物や、基板S表面に再吸着した反応副生成物を脱離し、反応管210内から除去する。
【0085】
具体的には、バルブ254を開いた状態で、バルブ275を閉じ、バルブ258、268、264を開いて、ガス供給管255、265を介してガス供給管251、261内に、パージガスとしての不活性ガスを供給すると共に、排気管281のバルブ282、APCバルブ283は開いたままとして、真空ポンプ284により反応管210内を真空排気する。
【0086】
<第二ガス供給工程、ステップS3>
次に、内部に基板Sが配される処理室201に対して、第一ガスと反応する第二ガスを供給する。具体的には、本ステップでは、ガス供給管261に設けられたタンク269に予め第二ガスを溜めておく。そして、第二ガスを供給する際に、タンク269とノズル224の間の、タンク269の下流側に設けられたバルブ264を開き、予め第二ガスが貯留されたタンク269から、ガス供給管261内に第二ガスを供給する。そして、第二ガスの供給を開始してから所定時間経過後にバルブ264を閉じてガス供給管261内への第二ガスの供給を停止する。
【0087】
第二ガスは、ガス供給構造212から、上流側整流部214を介して、反応管210内に短時間で大量に供給された後、基板S上の空間、下流側整流部215、ガス排気構造213、排気管281を介して排気される。このときバルブ282は開放された状態である。APCバルブ283は所定の開度に調整された状態である。ここでは、第二ガスを処理室201内に供給する間、バルブ276は開いた状態でも閉じた状態でもよい。好ましくは、バルブ276は開いた状態とする。また、バルブ268を開き、ガス供給管265を介してガス供給管261内に不活性ガスを流してもよい。また、ガス供給管251内への第二ガスの侵入を防止するために、バルブ258、254を開き、ガス供給管251内に不活性ガスを流してもよい。このとき、反応管210内に連通されるガス供給構造212を介して、基板Sの側方から、基板Sに対して水平方向に第二ガスが一度に大量に供給されることとなる。
【0088】
本ステップでは、第二ガスをフラッシュ供給することによる。タンク269内で圧力を高められた第二ガスを処理室201内に供給することにより、基板Sの面内に均一に第二ガスを供給することができる。特に、基板Sに半導体デバイス構造となる凹部が形成されている場合には、凹部の底部にまで第二ガスを供給することができる。
【0089】
また、本ステップでは、APCバルブ283は所定の開度に調整された状態であり、処理室201内に第二ガスを供給する間、真空ポンプ284により反応管210内を排気する。これにより、処理室201内は所定の圧力に到達させることができる。また、処理室201内を所定の圧力に維持することができる。
【0090】
具体的には、本ステップでは、ガス供給管261に設けられたタンク269に予め第二ガスを溜めておく。第二ガスとして、例えば、NHガスを用いる場合、このときのタンク269内の圧力は、例えば、0.01~100kPa、好ましくは0.1~50kPaとする。
【0091】
そして、第二ガスを供給する際に、タンク269の下流側に設けられたバルブ264(下流側バルブとも呼ぶ)を開き、タンク269からガス供給管261内に第二ガスを供給する。このとき、処理室201内の圧力(全圧)を例えば、0.1~100kPa、好ましくは、300~5kPa、更に好ましくは、300~3kPa、更に好ましくは、2kPa~2.6kPaとする。そして、第二ガスの供給を開始してから所定時間経過後にバルブ264を閉じてガス供給管261内への第二ガスの供給を停止する。また、このステップでは、タンク269の上流側のバルブ276(上流側バルブとも呼ぶ)を開けて行っても良い。ここで、第二ガスを供給する時間は、0.1秒~5秒程度であり、好ましくは、2~5秒で、更に好ましくは、2~4秒とする。
【0092】
第二ガスは、ガス供給構造212から、上流側整流部214を介して、反応管210内に短時間で大量に供給される。その後、基板S上の空間、下流側整流部215、ガス排気構造213、排気管281を介して排気される。
【0093】
なお、このときの処理室201内の温度を、第二ガスの分解温度よりも高く設定するようにしてもよい。また、本ステップにおいて、上述したステップS1と同様に、処理室201内の第二ガスの分解率Xと、処理室201内での第二ガスの滞在時間τとの所定の関係に基づいて、第二ガスの滞在時間τを設定することにより、第二ガスの分解率Xを制御するようにしてもよい。
【0094】
第二ガスとしては、例えば、第一ガスとは異なる第二元素を含有するガスを用いてもよい。第二元素は、例えば、N、酸素(O)、炭素(C)のいずれか一つである。第二ガスとしては、例えば水素(H)及びN含有ガスを用いることができる。H及びN含有ガスとしては、例えば、アンモニア(NH)ガス、ジアゼン(N)ガス、ヒドラジン(N)ガス、Nガス等のN-H結合を含む窒化水素系ガスを用いることができる。第二ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0095】
第二ガスとしての、N-H結合を含む窒化水素系ガスであって、NH3や、N2H4等の窒素に複数の水素が結合しているガスを用いる場合、基板Sの表面では、以下の逐次反応が生じることがある。以下のモデルで、x、y、zは整数であり、x>y>zの関係があり、zが1になるまでN-H結合の分子(リガンド)から、Hが離脱する反応が生じることがある。zが1になるまで、NHx,NHy,H,等(本開示では脱離物とも呼ぶ)が脱離することがある。この脱離は、本ステップS3のみならず、他のステップでも生じている場合がある。
【0096】
逐次反応モデル:NHx→NHy→NHz
【0097】
この様な逐次的な反応が生じる膜形成プロセスでは、基板Sに形成する膜の特性の均一性を向上させることが困難になる場合がある。特に、基板Sに凹部が形成されている場合には、凹部の上部に形成される膜と、凹部の底部に形成される膜との、膜特性が異なってしまう課題を生じる。ここで、膜特性では、膜厚,窒素欠損量、屈折率、等である。
【0098】
上述の脱離物は、本ステップS3のみならず、他のステップで生じている場合がある。例えば、ステップS3の後に行われるステップS1で生じた場合、脱離物と、第一ガスとが反応(気相反応)を生じることがある。この様な気相反応が生じた場合、意図せぬ膜形成となり、基板Sの膜特性の均一性を向上できなくなることがある。例えば、凹部内に形成される膜のステップカバレッジ(S/C)を向上させることが困難となる。
【0099】
この様な課題に対して、本開示のステップS3では、第二ガスを上述の条件でフラッシュ供給することにより、上述の逐次反応が収束するまでの時間を短縮することができ、逐次反応により生じる上述の課題を解決することができる。特に、凹部が形成された基板Sでは、凹部内に形成される膜のS/Cを100%に近付けることが可能となる。また、凹部内に形成される膜が窒素含有膜の場合、膜中の窒素欠損量が、2.5×1018個/cm以上となる膜を、凹部の上部から底部に渡って形成することが可能となる。
【0100】
また、上述の第二ガスの供給条件(圧力、時間、等)は、基板Sに形成されている凹部のアスペクト比に応じて調整することが好ましい。
【0101】
また、上述の逐次反応モデルを有する膜の形成プロセスでは、第二ガスの供給時間を第一ガスの供給時間よりも長い時間で供給することが好ましい。これにより、第二ガスを基板Sの面内隅々まで供給させることができる。特に凹部の底部に十分な量の第二ガスを供給することができる。
【0102】
また、上述の逐次反応モデルを有する膜の形成プロセスでは、第二ガスを供給する際のAPCバルブ283の開度は、第一ガスを供給する際のAPCバルブ283の開度よりも小さくすることが好ましい。これにより、第二ガスを基板Sの面内隅々まで供給させることができる。特に凹部の底部に十分な量の第二ガスを供給することができる。
【0103】
また、また、上述の逐次反応モデルを有する膜の形成プロセスでは、第二ガスを供給する際の処理室201内の圧力を、第一ガスを供給する際の処理室201内の圧力よりも高くすることが好ましい。これにより、第二ガスを基板Sの面内隅々まで供給させることができる。特に凹部の底部に十分な量の第二ガスを供給することができる。
【0104】
また、上述の逐次反応モデルを有する膜の形成プロセスでは、第二ガスの供給量を、第一ガスの供給量よりも多くすることが好ましい。これにより、第二ガスを基板Sの面内隅々まで供給させることができる。特に凹部の底部に十分な量の第二ガスを供給することができる。ここで、各ガスの供給量とは、圧力,時間,タンク容量,タンク内圧力,等の一つ以上である。
【0105】
また、上述の逐次反応モデルを有する膜の形成プロセスでは、逐次反応が収束する時間を短縮することが望まれる。また、基板Sに凹部が形成されている場合には、凹部の上部(開口側)と、底部(奥側)とで、逐次反応が収束する時間を揃えることが好ましい。このような方法としては、第二ガスを上述の条件でフラッシュ供給することがある。
【0106】
<パージ、ステップS4>
本ステップでは、内部に基板Sが配される処理室201に対して、ステップS2と同様の処理手順によりパージガスを供給する。すなわち、ステップS3の第二ガスのフラッシュ供給後に、吸着サイトに吸着されなかった第二ガスや、第二ガスとの反応により生成され、基板S表面に再吸着した反応副生成物を脱離し、反応管210内から除去する。
【0107】
具体的には、バルブ264を開いた状態で、バルブ276を閉じ、バルブ268、258、254を開いて、ガス供給管255、265を介してガス供給管251、261内に、パージガスとしての不活性ガスを供給すると共に、排気管281のバルブ282、APCバルブ283は開いたままとして、真空ポンプ284により反応管210内を真空排気する。これにより、反応管210内に存在する、気相中の第一ガスと第二ガスの反応を抑制することができる。
【0108】
(所定回数実施)
上述した第一ガス供給工程と、第二ガス供給工程と、を順に非同時に行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことにより、凹部を有する基板S上に、所定の厚さの膜を形成する。例えば、第一ガスとしてHCDSガスを、第二ガスとしてH及びN含有ガスを用いる場合、SiN膜が形成される。これにより、凹部を有する基板S上に、ステップカバレッジ性能が改善され、成膜レートが向上された膜を形成することができる。
【0109】
(S110)
続いて基板搬出工程S110を説明する。S110では、上述した基板搬入工程S104と逆の手順にて、処理済みの基板Sを移載室217の外へ搬出する。
【0110】
(S112)
続いて判定S112を説明する。ここでは所定回数基板を処理したか否かを判定する。所定回数処理していないと判断されたら、基板搬入工程S104に戻り、次の基板Sを処理する。所定回数処理したと判断されたら、処理を終了する。
【0111】
なお、上記ではガス流れの形成において水平と表現したが、全体的に水平方向にガスの主流が形成されればよく、複数の基板の均一処理に影響しない範囲であれば、垂直方向に拡散したガス流れであってもよい。
【0112】
また、上記では同程度、同等、等しい等の表現があるが、これらは実質同じものを含むことは言うまでもない。
【0113】
(他の実施形態)
以上に、本態様の実施形態を具体的に説明したが、それに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0114】
上述の態様では、上述した第一ガス供給系250において、タンク259を備えた場合を用いて説明したが、本態様がこれに限定されることはない。すなわち、第一ガス供給系250において、タンク259を備えず、第一ガスを、フラッシュ供給でない方法で供給するようにしてもよい。この場合であっても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0115】
同様に、上述の第二ガス供給系260において、タンク269を備えた場合を用いて説明したが、本態様がこれに限定されることはない。すなわち、第二ガス供給系260において、タンク269を備えず、第二ガスを、フラッシュ供給でない方法で供給するようにしてもよい。この場合であっても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0116】
また、上述の態様では、基板処理装置が行う成膜処理において、基板S上に第一ガスと第二ガスとを用いて膜を形成する場合を例に挙げたが、本態様がこれに限定されることはない。すなわち、成膜処理に用いる処理ガスとして他の種類のガスを用いて他の種類の薄膜を形成しても構わない。さらには、3種類以上の処理ガスを用いる場合であっても、本態様を適用することが可能である。
【0117】
また、上述の態様では、基板処理装置が行う処理として成膜処理を例に挙げたが、本態様がこれに限定されることはない。すなわち、本態様は、上述の態様で例に挙げた成膜処理以外の成膜処理にも適用できる。
【0118】
また、上述の態様では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。また、上述の態様では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。
【0119】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様や変形例と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の態様や変形例と同様の効果が得られる。
【0120】
上述の態様や変形例は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様や変形例の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
符号の説明
【0121】
S 基板
201 処理室

図1
図2
図3
図4
図5
図6