IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱レイヨン株式会社の特許一覧

特開2024-110501水素化触媒、およびそれを用いた含酸素化合物の水素化方法
<>
  • 特開-水素化触媒、およびそれを用いた含酸素化合物の水素化方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110501
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】水素化触媒、およびそれを用いた含酸素化合物の水素化方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/62 20060101AFI20240808BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240808BHJP
   B01J 23/89 20060101ALI20240808BHJP
   B01J 23/86 20060101ALI20240808BHJP
   C07C 31/04 20060101ALI20240808BHJP
   C07C 29/157 20060101ALI20240808BHJP
   C07C 29/158 20060101ALI20240808BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240808BHJP
【FI】
B01J23/62 M
B01J37/08 ZAB
B01J23/89 M
B01J23/86 M
C07C31/04
C07C29/157
C07C29/158
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015087
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福本 和貴
(72)【発明者】
【氏名】辻 秀人
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BB08A
4G169BC16A
4G169BC17A
4G169BC17B
4G169BC18A
4G169BC18B
4G169BC21A
4G169BC22A
4G169BC23A
4G169BC25A
4G169BC26A
4G169BC31A
4G169BC32A
4G169BC33A
4G169BC35A
4G169BC35B
4G169BC39A
4G169BC40A
4G169BC42A
4G169BC43A
4G169BC51A
4G169BC58A
4G169BC60A
4G169BC62A
4G169BC64A
4G169BC66A
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC70A
4G169BC71A
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BC74A
4G169BC75A
4G169BD01A
4G169BD03A
4G169BD05A
4G169BD06A
4G169BD08A
4G169BD09A
4G169BD10A
4G169BD12A
4G169BD15A
4G169CB02
4G169CB62
4G169CB70
4G169CC21
4G169CC27
4G169DA06
4G169EA01Y
4G169EA02Y
4G169EC02Y
4G169EC03Y
4G169EC25
4G169FA01
4G169FB09
4G169FB30
4G169FB57
4G169FC07
4G169FC08
4H006AA02
4H006AC41
4H006BA05
4H006BA07
4H006BA09
4H006BA22
4H006BA24
4H006BA25
4H006BA81
4H006BA85
4H006BE20
4H006BE41
4H006FE11
4H039CA60
4H039CB20
(57)【要約】
【課題】効率的に二酸化炭素を水素化するための触媒、及び当該触媒を用いた効率的なメ
タノールの製造方法を提供する。
【解決手段】以下の式1で表される触媒によって解決する。
In(式1)
式1において、Inはインジウム、構成成分AはGa、Al、ホウ素、Znから選ばれ
る少なくとも一種の元素、構成成分Bは、Fe、Ni、Mn、Co、Cr、Zr、Y,S
c、Ce、La、Re、W、Snからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素、
構成成分MはFe、Ni、Co、Mn、Ru、Pt,Pd、Rh、Ir、Au、Cu、
Ag、及びReからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、
構成成分Xは、S、Se、Te、Sb、Bi、Pb、Cl、F、H、N、Si、Geか
らなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を表し、Oは酸素を表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式1で表される触媒。
In (式1)
式1において、
Inはインジウム、
構成成分AはGa、Al、ホウ素、Znから選ばれる少なくとも一種の元素、
構成成分Bは、Fe、Ni、Mn、Co、Cr、Zr、Y,Sc、Ce、La、Re、
W、Snからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素、
構成成分MはFe、Ni、Co、Mn、Ru、Pt,Pd、Rh、Ir、Au、Cu、
Ag、及びReからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、
構成成分Xは、S、Se、Te、Sb、Bi、Pb、Cl、F、H、N、Si、Geか
らなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を表し、
Oは酸素を表し、
a、b、m及びxはInに対するモル比率であり、
Inが1のとき、0<a≦5、0≦b≦5、0<m≦5、0≦x≦5 であり、
nは、上記各成分の原子価を満足させるのに必要な酸素原子のInに対するモル比率数
を表す。
【請求項2】
X線回折測定XRD(CuKα)において、回折角(2θ)20°から40°の範囲に
、Inおよび又はAと酸素の化合物による半値幅が0.2°以上4°未満の回折線ピーク
を有しないものである、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
室温、20kNの圧力下の体積抵抗率が1.0x1010Ω・cm以下である、請求項1
又は2に記載の触媒。
【請求項4】
100℃以上900℃以下の熱処理を経て得られるものである、請求項1又は2に記載
の触媒。
【請求項5】
含酸素化合物の水素化に用いられるものである、請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項6】
前記含酸素化合物が二酸化炭素である、請求項5に記載の触媒。
【請求項7】
50℃以上400℃以下の反応条件で請求項1に記載の触媒を用いることを特徴とする
、二酸化炭素の水素化によるメタノールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化触媒、およびそれを用いた含酸素化合物の水素化方法、特に効率的に
二酸化炭素を水素化してメタノールを製造する方法に関する。第13族元素とZnを主成
分とし、特定の構造を有する固体触媒を用い、その触媒を介して二酸化炭素と水素を接触
させることにより二酸化炭素を水素化する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素は安定な化合物であり、その触媒化学反応的な変換にはエネルギーや水素を
用いなければならいない。しかし、熱や圧力等の助けをかりることで、限られたスペース
で高速に変換できる特徴がある。水素を用いて二酸化炭素を水素化する方法では、生成物
として、一酸化炭素、ギ酸、ホルマリン、メタノール、メタンが考えられ、それぞれに適
した反応技術、触媒などが提案されている。しかし、それぞれの反応機構は完全に解明さ
れておらず、効率の点でも未だ不十分である。
これらのターゲット生成物のうちで最も魅力があるのはメタノールである。メタノール
は常温で液体であることから、地球温暖化の原因となる二酸化炭素ガスを液体として固定
化する役割を担える。さらにメタノールは化学的な反応性も十分であるため、メタノール
を原料とした化学的変換によって有用な化学製品を製造することができる。すなわちメタ
ノールは燃料としてではなく化学品製造のリソースにもなるからである。
二酸化炭素からのメタノール合成には触媒の存在が不可欠であり、広く知られている銅
亜鉛系酸化物(特許文献1、2)に加えて、近年では種々の触媒が報告されている。たと
えば、酸化インジウムにパラジウムを担持した触媒(非特許文献1)、酸化ジルコニウム
に酸化インジウムを担持した触媒(非特許文献2)などの触媒が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭45-016682号公報
【特許文献2】特開昭49-017391号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】APPLIED CATALYSIS B:ENVIRONMENTAL、218、2017、488-497
【非特許文献2】Angew.Chem.Int.Ed.2016、55、6261-6265
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、技術的な観点でみると、二酸化炭素からメタノールを合成する反応に未だに効
率的な課題があることは明白である。当該反応には、銅亜鉛系酸化物の触媒が活性を有す
るとされ、触媒の課題はないように見えるが、銅亜鉛系酸化物触媒は一酸化炭素の水素化
によるメタノール合成に即して開発された触媒であり、二酸化炭素の水素化を行った場合
はメタノールの選択性は高いとはいえない。銅亜鉛系酸化物触媒においてメタノール選択
性が低い理由は二酸化炭素の一酸化炭素への逆水性ガスシフト反応が進行してしまうから
であるが、それはプロセスを複雑化させる原因にもなりうる。
さらに、本発明者らが銅亜鉛系酸化物触媒以外の公知触媒を用いて二酸化炭素の水素化
反応を行ったところ、二酸化炭素の転化率やメタノールの選択性は低い、つまり、公知触
媒の活性や選択性は満足されるものではなかった。二酸化炭素の水素化においてメタノー
ルが二酸化炭素からダイレクトに生成する触媒、さらには熱力学的平衡において有利な低
温において、より選択的にメタノールを合成する方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは触媒反応機構を考察し、二酸化炭素をメタノールに変換する触媒に求められ
る要素として、二酸化炭素に対しその酸素を1つ奪えること、およびその酸素を水に還元
すると同時に残った炭素をも還元するために、水素から得た電子の供給を促進する機能、
しかもそれらが触媒の同じ粒子中に存在することが重要であるとの見解を得た。そして、
酸素剥奪能、電気伝導性能に優れる第13族元素とZnを主成分とする物質に着目して各
元素の複合化と触媒性能の関係を探索したところ、驚くべきことに特定の組みあわせの第
13族元素とZnを主成分とする物質が触媒として優れていることを見出し、本発明に至
った。
すなわち本発明は、以下の[1]~[7]を要旨とする。
[1]以下の式1で表される触媒。
In (式1)
式1において、
Inはインジウム、
構成成分AはGa、Al、ホウ素、Znから選ばれる少なくとも一種の元素、
構成成分Bは、Fe、Ni、Mn、Co、Cr、Zr、Y,Sc、Ce、La、Re、
W、Snからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素、
構成成分MはFe、Ni、Co、Mn、Ru、Pt,Pd、Rh、Ir、Au、Cu、
Ag、及びReからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、
構成成分Xは、S、Se、Te、Sb、Bi、Pb、Cl、F、H、N、Si、Geか
らなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を表し、
Oは酸素を表し、
a、b、m及びxはInに対するモル比率であり、
Inが1のとき、0<a≦5、0≦b≦5、0<m≦5、0≦x≦5 であり、
nは、上記各成分の原子価を満足させるのに必要な酸素原子のInに対するモル比率数
を表す。
[2]X線回折測定XRD(CuKα)において、回折角(2θ)20°から40°の範囲
に、Inおよび又はAと酸素の化合物による半値幅が0.2°以上4°未満の回折線ピー
クを有しないものである、[1]に記載の触媒。
[3]室温、20kNの圧力下の体積抵抗率が1.0x1010Ω・cm以下である、[1]又
は[2]に記載の触媒。
[4]100℃以上900℃以下の熱処理を経て得られるものである、[1]~[3]のいずれ
かに記載の触媒。
[5]含酸素化合物の水素化に用いられるものである、[1]~[4]のいずれかに記載の触媒

[6]前記含酸素化合物が二酸化炭素である、[5]に記載の触媒。
[7]50℃以上400℃以下の反応条件で[1]~[6]のいずれかに記載の触媒を用いるも
のである、二酸化炭素の水素化によるメタノールの製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1で得られた触媒のXRDチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の説明は、本発明の実施態
様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定され
ない。
【0009】
[触媒]
本発明の触媒は、第13族元素とZnを主要な構成成分とする、式1で表される物質で
ある。本触媒を用いることで、例えば二酸化炭素の温和な条件での水素化が可能となる。
In式1
式1において、Inはインジウム、構成成分AはGa、Al、ホウ素、Znから選ばれ
る少なくとも1種の元素、構成成分Bは、Fe、Ni、Mn、Co、Cr、Zr、Y,S
c、Ce、La、Re、W、Snからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、構成成
分MはFe、Ni、Co、Mn、Ru、Pt,Pd、Rh、Ir、Au、Cu、Ag、及
びReからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、構成成分Xは、S、Se、Te、
Sb、Bi、Pb、Cl、F、H、N、Si、Geからなる群から選ばれる少なくとも1
種の元素を表し、Oは酸素を表す。
a、b、m及びxはInに対するモル比率であり、
Inが1のとき、0<a≦5、0≦b≦5、0<m≦5、0≦x≦5 であり、
nは、上記各成分の原子価を満足させるのに必要な酸素原子のInに対するモル比率数
を表す。
【0010】
第13族元素とZnを主要な構成成分とする物質が水素化触媒として有効である理由の
ひとつに第13族元素とZnを主成分とする物質がn型半導体であり、その電気伝導性が
高いことが挙げられる。特に、In(インジウム)を含む物質は空間的拡がりを有するI
nのs軌道が伝導帯の一部を構成するので、アモルファス構造の(原子が規則正しく並ん
でいない)状態でも、電子が流れる伝導帯バスが形成され、結果として、水素から得た電
子の供給が促進されて還元反応が効率的に進行する。
【0011】
なお、本発明の触媒は第13族元素とZnを主成分とするが、式1で表される物質以外
の支持体や担体、バインダー等の成形体成分を含んでいてもよい。例えば、SiO、G
eO、Al、Re7、Cr、ZnO、MgO、CaO、BaO、Zr
、TiO、CeO、SnO、ITO、STO、BTO、SiC、活性炭、黒鉛
、グラファイト、カーボンなどを用いてそれらと式1の物質を混合するなとの処理を行い
、成形体として用いてもかまわない。
触媒中の式1で表される物質の割合は、本願発明の効果を損なわない範囲であれば特に
限定されないが、触媒全体に対する式1で表される物質の量は通常5wt%以上、好まし
くは10wt%以上、特に好ましくは20wt%以上である。また上限は特に限定されず
、100wt%であってもよい。
【0012】
本発明の触媒は、XRDで回折角(2θ)20°から40°にブロードなピークを与え
るアモルファス構造であることが好ましい。アモルファス構造とは、長周期に渡る秩序を
有する結晶構造が存在しないことを示し、具体的には、第13族元素とZnを主成分とす
る物質に関し、X線回折測定XRD(CuKα)において、回折角(2θ)20°から4
0°の範囲に、式1中のInおよび又はAと酸素の化合物による半値幅が0.2°以上4
°未満、好ましくは2°未満の結晶性物質に基づく回折線ピークを有しないことを指す。
一方で、本発明の触媒では、第13族元素とZnを主成分とする物質がアモルファス構
造(非晶質部)を有するため、そのX線回折測定XRD(CuKα)において、回折角(
2θ)20°から40°の範囲にアモルファス構造に基づくハローと呼ばれるブロードな
ピーク(半値幅が4°以上)を有する。
本発明の触媒をつくるにあたっては、好ましくは100℃以上900℃以下の熱処理を
経て得られる触媒を得るが、その場合は、熱処理を経た後でも、少なくとも水素化反応に
供する前にはアモルファス構造であることが望ましい。
アモルファス構造であることの水素化触媒としての利点は、第13族元素とZnを主成
分とする物質がアモルファス構造でも電気伝導性を有する特徴に関連する。電気伝導性が
確保されることによって触媒反応時に二酸化炭素の還元に寄与する電子が供給されやすく
なることに加え、アモルファス構造が最密充填構造になることを阻むことに起因し、ある
程度の表面積が保たれる、つまり、気相分子との有効な接触点が確保され、触媒反応が効
率的に進行するのである。
【0013】
本発明の触媒は、比較的高い表面積を有することが好ましい。BET法によって測定さ
れる比表面積として表せば、好ましくは0.1m/g以上、より好ましくは0.5m
/g以上、さらに好ましくは1m/g以上であり、好ましくは300m/g以下、よ
り好ましくは250m/g以下、さらに好ましくは200m/g以下である。表面積
がある程度大きければ、気相分子との接点が十分に確保され、触媒反応が効率的に進行す
る。また、表面積がある程度の範囲内の大きさにあることで、二酸化炭素の吸着点に対し
てニ酸化炭素の還元に必要な電子の供給が追い付く状態が保たれ、最も還元電子数の多い
メタノールへの還元反応が促進され、結果としてメタノールへの高選択性が維持される。
また、表面積がある程度の範囲内の大きさにあれば、表面欠陥の数も抑制され、伝導電子
が欠陥にトラップされる等の現象で電気伝導性が損なわれることもなくなり、結果として
還元反応の進行が保たれる。
【0014】
<式1で表される物質>
(A)
式1中の構成成分Aは、本触媒の第13族元素とZnを主成分とする物質を構成する重
要な役割を担う。AはGa、Al、ホウ素、Znから選ばれる、少なくとも1種であり、
好ましくはGa、Al、Znから選ばれる1種、より好ましくは2種以上、特に好ましく
はGa、Alから選ばれる1種とZnを用いるのがよい。軽い元素より重い元素のほうが
好ましい理由は、軽い元素は酸素との結合が強くなり、二酸化炭素から酸素を奪うために
必要な欠陥が形成しにくくなるためである。一方、2種以上が好ましい理由は第13族元
素とZnを主成分とする物質のキャリア(余剰電子)の数と移動度に関係する。特に、Z
nを導入する場合は、Znだけが2価であるためにキャリア(電子)が余剰になり、欠損
が増加しキャリアの移動に悪影響が生じる恐れがあるが、Inよりも酸素との結合の強い
GaやAlの導入により、キャリアの生成や移動と、二酸化炭素から酸素を奪う欠陥生成
とのバランスが向上する。
構成成分AのInに対するモル比率aは、0より大であり、好ましくは0.01以上、
より好ましくは0.02以上、さらに好ましくは0.05以上、よりさらに好ましくは0
.1以上、特に好ましくは0.2以上であり、好ましくは8以下、より好ましくは6以下
、さらに好ましくは4以下、よりさらに好ましくは3以下、特に好ましくは2以下である
。これらの範囲であることで、アモルファス構造になりやすく、表面積を大きくできるた
め好ましい。
【0015】
Aの量は特に限定されないが、式1の全体に対する重量(wt)%として、好ましくは0
.1wt%以上、より好ましくは0.2wt%以上、さらに好ましくは0.5wt%以上
、特に好ましくは1wt%以上であり、好ましくは90wt%以下、より好ましくは80
wt%以下、さらに好ましくは75wt%以下、よりさらに好ましくは70wt%以下、
特に好ましくは65wt%以下である。
【0016】
(M)
式1中の構成成分Mは、Fe、Ni、Co、Mn、Ru、Pt,Pd、Rh、Ir、A
u、Cu、Ag、及びReからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。Mは
二酸化炭素の水素化反応においては、主に水素を解離活性化して水素から電子を奪う機能
を担う。Mは、より好ましくはRh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag及びReから
なる群から選択される少なくとも一種の元素であり、さらに好ましくは、Rh、Ir、P
d、Cu及びAgからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、特に好ましく
は、Rh、Pd、Ir及びCuからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。
複数種類のMを用いてもよい。また、Mは0価のメタル状態でもかまわないし、1価や2
価などの価数を有していてもよい。また、他の元素、例えば式1のBやXとの化合物やも
う一つの別のMとの化合物として存在していてもよい。
また、Mは、それがメタルであってもXや酸素との化合物においても、(半)導体性を
示すことが好ましい。それらが、第13族元素とZnを主成分とする物質からなる半導体
性を示す化合物と接合することにより、ニ酸化炭素の水素化(還元)がスムーズに進行す
るようになる。その際、水素の活性化と二酸化炭素の還元は、触媒粒子上の同一サイトで
はなく、離れたサイトで起こることになるが、第13族元素とZnを主成分とする物質に
おいては、水素の活性化により得られた電子をバルクを介して供給することが可能であり
、表面でマイグレートする吸着水素及び吸着カーボネートを還元する反応が促進され、二
酸化炭素のメタノールへの反応が効率よく進行する。
【0017】
Mの量は特に限定されないが、式1の全体に対する重量(wt)%として、好ましくは0
.1wt%以上、より好ましくは0.2wt%以上、さらに好ましくは0.5wt%以上
、特に好ましくは1wt%以上であり、好ましくは60wt%以下、より好ましくは40
wt%以下、さらに好ましくは30wt%以下、よりさらに好ましくは20wt%以下、
特に好ましくは10wt%以下である。
Inに対するモル比率としては、0より大であり、好ましくは0.01以上、より好ま
しくは0.02以上、さらに好ましくは0.04以上、特に好ましくは0.1以上であり
、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下、特に好ましくは
2以下である。これらの範囲であることで、水素化反応における水素の活性化による電子
供給と水素の酸化による水生成のバランスが好ましい範囲となる。
【0018】
(B)
式1中の構成成分BはFe、Ni、Mn、Co、Cr、Zr、Y,Sc、Ce、La、
Re、W、Snからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。これらは、式1中
のMとの組み合わせで、水素から得た電子を13族元素とZnを主成分とする物質に受け
渡す役割を担う。
Bの量は特に限定されない。Mの種類によってはBは必要ない場合がある。式1の全体
に対する重量(wt)%として、好ましくは0.1wt%以上、より好ましくは0.2wt
%以上、さらに好ましくは0.5wt%以上、特に好ましくは1wt%以上であり、好ま
しくは60wt%以下、より好ましくは40wt%以下、さらに好ましくは30wt%以
下、よりさらに好ましくは20wt%以下、特に好ましくは10wt%以下である。
Inに対するモル比率bとしては、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、さらに
好ましくは3以下、よりさらに好ましくは2以下、特に好ましくは1以下である。また、
0以上であり、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、さらに好ましく
は0.04以上、特に好ましくは0.05以上である。これらの範囲であることで、水素
化反応における水素の活性化による電子供給と水素の酸化による水生成のバランスが好ま
しい範囲となる。
【0019】
(X)
本発明の触媒は、式1中のMやBの種類によって、構造の安定化のためにXを含むこと
ができる。Xは、S、Se、Te、Sb、Bi、Pb、Cl、F、H、Si、Geからな
る群から選択される少なくとも1種であり、複数種類のXを用いてもよい。
Xの量は特に限定されない。MやBの種類によっては、Xは必要ない場合もある。上述
のMと同じかそれよりも少ないモル比率であることが好ましい。式1の全体に対する重量
(wt)%として、好ましくは0.1wt%以上、より好ましくは0.2wt%以上、さら
に好ましくは0.3wt%以上、よりさらに好ましくは0.5wt%以上、特に好ましく
は1wt%以上であり、好ましくは60wt%以下、より好ましくは40wt%以下、さ
らに好ましくは30wt%以下、よりさらに好ましくは20wt%以下、特に好ましくは
10wt%以下、最も好ましくは5wt%以下である。
Inに対するモル比率xとしては、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、さらに
好ましくは3以下、特に好ましくは2以下である。また、0以上であり、好ましくは0.
01以上、より好ましくは0.02以上、さらに好ましくは0.04以上、特に好ましく
は0.05以上である。これらの範囲であることで、水素化反応における水素の活性化に
よる電子供給と水素の酸化による水生成のバランスが好ましい範囲となる。
【0020】
MやBやXは化合物として導入してもかまわない。その種類や構造には特に限定されな
いが、例えばCuCrOなどのMBOのデラフォサイト型や、MBOのペロブスカ
イト型の酸化物が好適に用いられる。また硫化物やテルル化物等のカルコゲナイドやカル
コパイライト型の化合物とすることもできる。
【0021】
(n)
nは、式1中のIn、A、B、Mの各成分の原子価を満足させるのに必要な酸素原子の
Inに対するモル比率を表す。特に限定されないが、Inとのモル比率において、nは1
.5以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは2.5以上、特に好ましくは3以上
であり、好ましくは14以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは10以下、よ
りさらに好ましくは8以下、特に好ましくは7以下、最も好ましくは6以下である。酸素
量がある程度の範囲内にあることで、アモルファス構造が保たれ、高い表面積や電気伝導
性が維持される。
【0022】
本発明の触媒において、式1の物質を下記の担体に担持してもかまわない。担体の種類
には得に限定されないが、通常、SiO、GeO、Al、Re7、Cr
、ZnO、MgO、CaO、BaO、ZrO、TiO、CeO、SnO、I
TO、STO、BTO、SiC、活性炭、黒鉛、グラファイト、カーボンなどが用いられ
る。好ましくは、SiO、GeO、Cr、ZnO、ZrO、TiO、Ce
、SnO、ITO、STO、BTO、SiCであり、より好ましくは、ZnO、C
、ZrO、TiO2、CeOである。担体は粉体やペレットでもよく、ペー
パー状や基板状でもよい。
【0023】
[触媒の調製」
本発明の触媒の調製に用いる原料としては、通常、ハロゲン物や硝酸塩などの水溶性の
塩、あるいはそれらの酸性溶液が用いられる。炭酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、硝
酸塩、硫酸塩の他、アンミン硝酸塩、エチレンジアミン硝酸塩、アンミンニトロ化合物等
のハロゲン元素を含まない水溶性原料でも構わない。
触媒の調製方法には特にこだわらないが、含浸法、共沈法などが好適に用いられる。例
えば、構成元素の硝酸塩の混合水溶液に、アンモニア水や炭酸ナトリウム水溶液や水酸化
ナトリウム水溶液などの塩基性の水溶液を滴下し、混合水酸化物として沈殿させ、それを
濾過して水洗した後に水酸化物ゲルとして回収し、乾燥した後に熱処理を施して式1の物
質を得ることが行われる。またMやB、Xを含まない金属塩の混合水溶液を用いて、上記
のような手順で第13族元素とZnを主成分とする物質を得たあと、得られた物質を再度
MやB、Xの塩の水溶液に含浸する方法などによって、MやB、Xを後から導入してもか
まわない。さらには、構成元素の混合状態や酸化還元度を調節するための添加物を加える
ことも好適に行われる。具体的には、エタノール、エチレングリコール、グリセリン、ソ
ルビトール、グルコース、クエン酸、アスコルビン酸、エタノールアミン等を用いること
が行われる。
【0024】
焼成等の熱処理を施す際の温度は、好ましくは100℃以上であり、好ましくは150
℃以上であり、さらに好ましくは200℃以上であり、よりさらに好ましくは250℃以
上、特に好ましくは300℃以上である。また、好ましくは900℃以下、より好ましく
は800℃以下、さらに好ましくは700℃以下、特に好ましくは600℃以下であるで
ある。熱処理の際の雰囲気は特に拘らないが、真空、不活性ガス、空気、二酸化炭素の雰
囲気における熱処理が行われる。
目的の水素化反応前に水素雰囲気や水素と二酸化炭素の混合ガス雰囲気中での高温処理
や、NaBHなどの還元剤との混合などを実施し、触媒を部分的な還元状態にすること
も好適に行われる。還元の温度には特にこだわらないが、好ましくは100℃以上、より
好ましくは125℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは200℃以上
であり、好ましくは800℃以下、より好ましくは700℃以下、さらに好ましくは60
0℃以下、特に好ましくは500℃以下である。
【0025】
その他、物理混合法や、フラックス法、ゾルゲル(ディッピング)法、エレクトロンデ
ポジッション法、光電着法、スパッタ法、ALD(アトミックレイヤーデポジッション)
、PLD(パルスレーザーデポジッション)なども用いることができる。これらの方法は
、低い温度で欠陥の少ない良好な物質を得ることができる点で有望である。一方で、固相
反応法、水熱合成法なども用いることができる。前者の場合は、酸化物や塩を原料とし、
ボールミルなどを用いてそれらを粉砕、混合した後、通常200℃以上1200℃未満の
温度で、空気あるいは不活性ガス気流下で焼成して、合成する。
これらの方法で調製したあとに、さらに構成元素を追加する方法も好適に用いられる。
例えば、第13族元素とZnを主成分とする物質を固相反応法で得た後、Mを含む塩の水
溶液に含浸し、熱処理や還元処理を行うことで、Mの酸化物やMを後から導入することも
できる。第13族元素とZnを主成分とする物質とMの酸化物を物理的に混合して本発明
の触媒とすることもできる。
【0026】
上記の方法によって調製された焼成又は還元後の触媒を粉砕、混合して、より粒子間の
接合度を上げて電気伝導性を向上させることも好適に行われる。粉砕には湿式粉砕機、乾
式粉砕機が用いられる。さらには、得られた触媒をプレスして成形する方法や、カーボン
ブラック等の導電性物質と混合する方法等も好適に用いられる。これらにより、二酸化炭
素の活性化サイトに電子を供給するルートが確保され、結果としてメタノール生成が促進
される。
【0027】
[触媒の電気伝導性の評価]
本発明では、二酸化炭素の水素化によって直接メタノールを合成するにあたり、二酸化
炭素の活性化サイトへ触媒側から電子を供給して還元を促進する。本発明の触媒が二酸化
炭素のメタノールへの変換に優れている理由について、電子を供給する方向性の制御があ
げられる。二酸化炭素の還元は主に第13族元素とZnを主成分とする物質、つまりn型
半導体上で起こるが、その還元に必要な電子は、反応機構上、同伴する水素からもたらさ
れ、水素から奪われた電子が第13族元素とZnを主成分とする物質に供給されなくては
ならない。本発明の触媒では、MやXの金属あるいはそれら金属と酸素からなる化合物(
いわばp型半導体)が存在し、かつ第13族元素とZnを主成分とする物質(n型半導体
)と接触することで、MやXの金属あるいはそれら金属と酸素からなる化合物上で水素か
ら奪われた電子が、第13族元素とZnを主成分とする物質に供給される特徴を有する。
つまり、本発明の触媒においては二酸化炭素を活性化できるサイトを有するとともに、
電子の流れが十分に早く行われなくてはならず、すなわち、本発明の触媒は電気伝導性を
有する。電気伝導性の測定方法にはこだわらないが、ハイレスタ、ロレスタなどの抵抗率
測定器を用いることができる。例えば、三菱化学アナリティク製の粉体用低抵抗または高
抵抗プローブユニットを備えた粉体抵抗率測定システムMCP-PD-51を用いて、室
温、20kNの圧力下で触媒粉体を測定した場合、その体積抵抗率は通常1.0×10
Ω・cm以下、より好ましくは1.0×10Ω・cm以下、さらに好ましくは1.0×
10Ω・cm以下である。体積抵抗率が1.0×10Ω・cm以下であれば触媒が半
導体としての性質を示しており、導電性が良いといえる。
【0028】
また、二酸化炭素に電子を供給する機構を担っているのは主に第13族元素とZnを主
成分とする物質(n型半導体)であることから、第13族元素とZnを主成分とする物質
の電気伝導性をもって、触媒の電気伝導性を評価することも可能である。触媒を構成する
第13族元素とZnを主成分とする物質の電気伝導性を室温で評価した場合、例えば、三
菱化学アナリティク製の粉体用低抵抗または高抵抗プローブユニットを備えた粉体抵抗率
測定システムMCP-PD-51を用いて、室温、20kNの圧力下での体積抵抗率は、
通常1.0×1010Ω・cm以下、より好ましくは1.0×10Ω・cm以下、さらに
好ましくは1.0×10Ω・cm以下である。体積抵抗率が1.0×10Ω・cm以下
であれば担体が半導体としての性質を示しており、導電性が良いといえる。
【0029】
さらには、酸化物の電気伝導性、および二酸化炭素への電子の供給には、主に伝導帯の
電子が関与するが、伝導帯電子の存在割合は、電気伝導性や抵抗率のみならず、バンドギ
ャップからも予測することができる。バンドギャップは各種の吸収発光スペクトルや電導
度の温度依存性(傾き)から求めることができる。本発明の触媒のバンドギャップは、通
常1eV以上、7eV以下、好ましくは1.5eV以上、6eV以下、より好ましくは2
eV以上、5eV以下である。
また、Mが水素から電子を奪って、第13族元素とZnを主成分とする物質(n型半導
体)に電子を供給し、二酸化炭素を還元する機構の場合、第13族元素とZnを主成分と
する物質とMの仕事関数の差は、電子のスムーズな受け渡しが起こるかどうかの指標とな
る。n型半導体の仕事関数は通常1.0eV以上、7.0eV以下であり、Mの仕事関数
は通常1.5eV以上、6.0eV以下である。In、Ga、Znの酸化物とMの仕事関
数の差は通常、0.0eV以上、3.0eV以下、好ましくは0.05eV以上、2.0
eV以下、より好ましくは0.1eV以上、1.5eV以下である。
【0030】
[水素化触媒による含酸素化合物の水素化反応]
本発明の触媒を用いて含酸素化合物の水素化反応を行うに際し、原料としては、二酸化
炭素、一酸化炭素や、ホルミル基、ケトン基、カルボン酸基、エステル基またはアミド基
などのカルボニル基を一つ以上有する有機や無機化合物を用いることができる。なかでも
地球上に豊富に存在し、安価で、その物質的な変換に多数の電子が必要となる、二酸化炭
素を原料とする場合に、本発明の触媒は大きな効用を示す。
二酸化炭素の水素化の実施様態は気相でも液相でもかまわない。気相の場合は、管状の
反応器に本発明の触媒を装填し、二酸化炭素と水素の混合ガスを通じることによって行わ
れる。その際に不活性ガスや微量の酸素を同伴させてもかまわない。
【0031】
二酸化炭素と水素からメタノールを合成する反応は、熱力学的な平衡が存在し、高温で
は平衡転化率が小さくなる。それゆえ、好ましくは50℃以上、より好ましくは100℃
以上、さらに好ましくは125℃以上であり、好ましくは400℃以下、より好ましくは
300℃以下、さらに好ましくは275℃以下である。
また、圧力を高めるほうが平衡転化率も高くなるため有利であり、好ましくは0.1M
Pa以上、より好ましくは0.2MPa以上、さらに好ましくは0.5MPa以上であり
、好ましくは10MPa以下、より好ましくは8MPa以下、さらに好ましくは6MPa
以下である。
【0032】
水素/二酸化炭素の比は高いほうが平衡的に有利である。好ましくは0.2以上、より
好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1.0以上であり、好ましくは10以下、より
好ましくは6.0以下、さらに好ましくは5.0以下である。下限値以上であることで、
逆反応を抑制することができ、上限値以下であることで、未反応の水素を分離回収して循
環させるための設備を小型化することができる。
副生物として生成する一酸化炭素などをメタノールと分けた後、別の反応器で一酸化炭
素をメタノールなどに変換する、あるいは、未反応の二酸化炭素と一緒にもう一度反応器
に通じることも好適に行われる。
【0033】
以上説明した本発明の触媒、およびそれを用いた二酸化炭素の水素化方法では、第13
族元素とZnを主成分とする電気伝導性の高い触媒を用いることによって、より温和な条
件で二酸化炭素を選択的にメタノールに変換することができる。平衡的に有利な低温で反
応を進行させることにより、副生物の分離や未反応原料のリサイクル等の負荷を低減する
ことも可能で、効率的に二酸化炭素を変換することができる。したがって二酸化炭素から
メタノールを合成する上で工業的にも有利な方法である。
【実施例0034】
以下に、本発明をより具体的に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例によ
り何ら限定されるものではない。
本発明の触媒をガラスあるいはSUS製の反応管に装填し、当該反応管にガスを流通させ
ながら触媒装填部を管状炉で加熱した。さらには所定の反応温度において、二酸化炭素と
水素、および内部標準の窒素を含む原料ガスを流通させた。なお、生成物や未反応の原料
は、反応管出口に設けたガスサンプリングコックより直列に設置した2台のTCDガスク
ロ(島津GC14B(CO2とメタノール等用)、島津GC8A(水素、CO、メタン用
))に送り、内部標準ガスの窒素との相対クロマト面積比より定量した。なお、ガスクロ
の運転条件等は以下である。
【0035】
<有機物の測定方法>
装置:TCD-GC 島津GC14B(中極性カラム、3m)
測定条件:カラム部プログラム昇温使用
・無機ガスの測定方法
装置:TCD-GC 島津GC8A(モレキュラーシーブ、3m)
測定条件:カラム部70℃
【0036】
得られたクロマト面積を各々のファクターによって補正したの後に比を求め、選択率を
以下のように求めた。
メタノール選択率(%)=メタノール(mmol)/(メタノール+一酸化炭素+メタ
ン)x100
メタノール生成速度mmol/h/g 触媒1g、1hあたりに生成するメタノール量
【0037】
また、調製された触媒のX線回折測定と電導度測定は以下のように行った。
<X線回折測定方法>
触媒を細かく粉砕後、PANalytical製X′PertProMPDを用いて線
源CuKα、走査範囲(2θ)5゜-90゜で評価した。
【0038】
<体積抵抗率測定方法>
触媒を細かく粉砕後、粉体抵抗率測定装置を用いて評価した。ロレスタを用いる場合、
三菱化学アナリテック社製のロレスタGP粉体抵抗率測定システムMCP-PD-51を
用い、粉体1.0gとし、四探針プローブ、電極間隔3.0mm、電極半径0.7mm、
試料半径10.0mm、印加電圧リミッタを90Vとして、20kNの圧力下における触
媒粉体の体積抵抗率の値について評価を行った。またハイレスタを用いる場合、三菱化学
アナリテック社製のハイレスタUP粉体抵抗率測定システムMCP-PD-51を用い、
二重リング電極方法により、試料半径10.0mm、粉体1.0gを20kNの圧力下で
、電圧を印加した状態で測定することにより評価した。粉体の密度は、20kNで加圧し
た際の厚みと試料の重量から算出した。
【0039】
(実施例1)
触媒を以下のように調製した。300mLのガラス製容器に200mLの水を入れ、1
2mmolの硝酸インジウム、10mmolの硝酸ガリウム、10mmolの硝酸亜鉛を
溶解させて均一な混合水溶液とした。さらに2mmolの硝酸パラジウム硝酸溶液(Pd
10wt%)を加え、40℃に温めた。その後、激しく撹拌しながら3.0Mの炭酸ナト
リウム水溶液を滴下し、pH7-9に調節した。そのまま、40℃で1h保持し、生じた
沈殿を一晩放置して熟成した。その後、室温で濾過、水洗して炭酸水酸化物ゲルを得た。
得られたゲルを110℃で7h乾燥した後、粉砕し、空気流通下において500℃で4
h焼成し、茶色のInGaZnPdOn(Inに対する各金属のモル比率、In=1、G
a=0.83、Zn=0.83、Pd=0.17、Pd量6.7wt%)の触媒を得た。
なお、焼成後の触媒について、粉末X線回折測定を行ったところ、回折角2θ 20°
~40°の間に鋭い回折線観察されず、ブロードな凸ピークのみであり、半値幅が0.2
°以上4°未満の回折線ピークを有しなかった。従って、アモルファス構造であることが
確認された。得られたXRDチャートを図1に示す。
得られた触媒を用いて二酸化炭素の水素化反応を次のように行った。上記の触媒1.0
gを内径8mmΦの反応管に装填し、原料ガスとして二酸化炭素/水素/窒素=6/48
/6、合計で60Nml/minを流しながら、約30分で300℃まで昇温し30分保
持して反応前処理をした後、ガスの組成は変えずに反応温度190℃まで降温した。圧力
は0.15MPaとした。所定温度になってから約25分後に、反応管出口に直結したサ
ンプリングコックを介して出口ガスの一部をGCに導入し、メタノール、二酸化炭素、窒
素、一酸化炭素およびその他の生成物を分析した。また、反応温度の変更においては、原
料ガスの組成等は変更することなく反応温度を上げ、所定温度になってから約25分後に
同様に分析を行った。結果を表1に示す。
さらに、反応後の触媒について、室温でロレスタを用いて体積抵抗率を測定したところ
、20kNの圧力下における体積抵抗率は1.6x10Ω・cmの値であった。
【0040】
(実施例2)
実施例1で得られた触媒を用いて、反応時の圧力を0.9MPaとし、原料ガスを二酸
化炭素/水素/窒素=6/49/5とした以外は実施例1と同様に二酸化炭素の水素化反
応を実施した。結果を表1に示す。
【0041】
(実施例3)
実施例1と同様な方法で、InGaZnPdOn(Inに対する各金属のモル比率、I
n=1、Ga=1、Zn=1、Pd=0.2、Pd量6.8wt%)の触媒を調製した。
得られた触媒を用いて、反応温度190℃とした以外は実施例1と同様に二酸化炭素の水
素化反応を実施した。結果を表1に示す。
【0042】
(実施例4)
実施例1と同様な方法で、InGaZnPdOn(Inに対する各金属のモル比率、I
n=1、Ga=0.66、Zn=1.8、Pd=0.2、Pd量7.0wt%)の触媒を
調製した。得られた触媒を用いて、反応温度230℃とした以外は実施例1と同様に二酸
化炭素の水素化反応を実施した。結果を表1に示す。
【0043】
(実施例5)
実施例1と同様な方法で、InZnPdOn(Inに対する各金属のモル比率、In=
1、Zn=0.2、Pd=0.05、Pd量2.0wt%)の触媒を調製した。得られた
触媒を用いて、反応温度245℃とした以外は実施例1と同様に二酸化炭素の水素化反応
を実施した。結果を表1に示す。
【0044】
(実施例6)
実施例1において硝酸パラジウム硝酸溶液を用いずにInGaZnOn(In=1、G
a=0.83、Zn=0.83)の酸化物を調製後、さらにPd量が5wt%となるよう
に酢酸パラジウムを溶解させたアンモニア水溶液に浸した。得られた混合物から水分を除
去し、110℃で7h乾燥した後、空気流下、500℃で4h焼成し、InGaZnPd
On(Inに対する各金属のモル比率、In=1、Ga=0.83、Zn=0.83、P
d=0.13、Pd量5.0wt%)を調製した。得られた触媒を用いて、反応温度を2
00℃とした以外は実施例1と同様に二酸化炭素の水素化反応を実施した。結果を表1に
示す。
【0045】
(実施例7)
実施例1において硝酸パラジウム硝酸溶液の代わりに硝酸イリジウム硝酸溶液を用いて
InGaZnIrOn(Inに対する各金属のモル比率、In=1、Ga=1、Zn=1
、Ir=1、Ir量61wt%)の触媒を調製した。得られた触媒を用いて、反応温度を
215℃とした以外は実施例1と同様に二酸化炭素の水素化反応を実施した。結果を表1
に示す。
【0046】
(実施例8)
実施例1において硝酸パラジウム硝酸溶液の代わりに硝酸ロジウム硝酸溶液を用いてI
nGaZnRhOn(Inに対する各金属のモル比率、In=1、Ga=1、Zn=1、
Rh=0.2、Rh量6.6wt%)を調製した。得られた触媒を用いて、反応温度を2
45℃とした以外は実施例1と同様に二酸化炭素の水素化反応を実施した。結果を表1に
示す。
【0047】
(実施例9)
実施例1において硝酸ガリウムの代わりに硝酸アルミニウムを用いてInAlZnPd
On(Inに対する各金属のモル比率、In=1、Al=0.83、Zn=0.83、P
d=0.17、Pd量7.6wt%)の触媒を調製した。得られた触媒を用いて、圧力0
.9MPa、反応温度230℃とした以外は実施例1と同様に二酸化炭素の水素化反応を
実施した。結果を表1に示す。
【0048】
(実施例10)
実施例1において硝酸ガリウムの代わりに硝酸鉄を用いてInZnFePdOn(In
に対する各金属のモル比率、In=1、Zn=0.83、Fe=0.83、Pd=0.1
7、Pd量9.1wt%、Fe量24wt%)の触媒を調製した。得られた触媒を用いて
、圧力0.9MPa、反応温度230℃とした以外は実施例1と同様に二酸化炭素の水素
化反応を実施した。結果を表1に示す。
【0049】
(実施例11)
実施例1において硝酸パラジウム硝酸溶液を用いずにInGaZnOn(Inに対する
各金属のモル比率、In=1、Ga=0.83、Zn=0.83)の酸化物を調製後、さ
らに、Cu量6.0wt%、Cr量4.9wt%となるように硝酸銅3水和物と硝酸クロ
ム9水和物を溶解させた水溶液に浸漬した。得られた混合物から水分を除去し、110℃
で7h乾燥した後、空気流通下、500℃で4h焼成し、InGaZnCuCrOn(I
nに対する各金属のモル比率、In=1、Ga=0.83、Zn=0.83、Cu=0.
3、Cr=0.3、Cu量6.0wt%、Cr量4.9wt%)の触媒を調製した。得ら
れた触媒を用いて、反応温度を190℃、反応時の圧力を0.9MPa、原料ガスを二酸
化炭素/水素/窒素=6/49/5とした以外は実施例1と同様に二酸化炭素の水素化反
応を実施した。結果を表1に示す。
【0050】
(実施例12)
実施例1において硝酸亜鉛を用いずにInGaPdOn(Inに対する各金属のモル比
率、In=1、Ga=1、Pd=0.15)を調製した。得られた触媒を用いて、反応温
度を220℃、反応時の圧力を0.9MPa、原料ガスを二酸化炭素/水素/窒素=6/
49/5とした以外は実施例1と同様に二酸化炭素の水素化反応を実施した。結果を表1
に示す。
【0051】
(実施例13)
実施例1において硝酸ガリウムと硝酸亜鉛の代わりに硝酸アルミニウムを用いてInA
lPdOn(Inに対する各金属のモル比率、In=1、Al=1、Pd=0.12)を
調製した。得られた触媒を用いて、反応温度を220℃、反応時の圧力を0.9MPa、
原料ガスを二酸化炭素/水素/窒素=6/49/5とした以外は実施例1と同様に二酸化
炭素の水素化反応を実施した。結果を表1に示す。
【0052】
(実施例14)
実施例1においてInGaZnPdOn(Inに対する各金属のモル比率、In=1、
Ga=4、Zn=4、Pd=0.5)を調製した。得られた触媒を用いて、反応温度を1
90℃、反応時の圧力を0.9MPa、原料ガスを二酸化炭素/水素/窒素=6/49/
5とした以外は実施例1と同様に二酸化炭素の水素化反応を実施した。結果を表1に示す
【0053】
(実施例15)
実施例1においてInGaZnPdOn(Inに対する各金属のモル比率、In=1、
Ga=1、Zn=5、Pd=0.4)を調製した。得られた触媒を用いて、反応温度を2
05℃、反応時の圧力を0.9MPa、原料ガスを二酸化炭素/水素/窒素=6/49/
5とした以外は実施例1と同様に二酸化炭素の水素化反応を実施した。結果を表1に示す
【0054】
(比較例1)
実施例1において硝酸ガリウムと硝酸亜鉛を用いずに調製したInPdO(Inに対す
る各金属のモル比率、In=1、Pd=0.1、Pd量7.7wt%)の触媒を調製した

当該触媒について、粉末X線回折測定を行ったところ、回折角2θ=30.6°付近に
Inの結晶構造に由来する鋭い回折線が検出され、アモルファス構造ではなく、特
定の結晶構造を有していることがわかった。
得られた触媒を用いて、実施例1と同様に二酸化炭素の水素化反応を実施した。結果を
表2に示す。
【0055】
(比較例2)
酸化亜鉛(関東化学製)を硝酸パラジウムの硝酸溶液に浸漬した。得られた混合物から
水分を除去し、110℃で7h乾燥した後、粉砕し、空気流通下において500℃で4h
焼成し放冷、さらに水素流通下において500℃で2h還元して、黒色のZnPdOn(
Znに対する各金属のモル比率、Zn=1、e=0.076、Pd量10wt%)の触媒
を調製した。
当該触媒について、粉末X線回折測定を行ったところ、回折角2θ=36.4°付近に
ZnOの結晶構造に由来する鋭い回折線が検出され、アモルファス構造ではなく、特定の
結晶構造を有していることがわかった。
得られた触媒を用いて、実施例1と同様に二酸化炭素の水素化反応を実施した。結果を
表2に示す。
【0056】
(比較例3)
酸化ジルコニウム(Saint-Gobain社、モノクリニック型、SZ61143
)を、酸化ジルコニウムに対してインジウム量が9wt%となるように硝酸インジウム水
溶液に浸漬した。得られた混合物から水分を除去し、110℃で7h乾燥した後、空気流
通下において300℃で4h焼成して、InOn/ZrO(In=1、ZrO担体量
86wt%)の触媒を調製した。
当該触媒について、粉末X線回折測定を行ったところ、回折角2θ=30.6°付近に
Inの結晶構造に由来する鋭い回折線が検出され、アモルファス構造ではなく、特
定の結晶構造を有していることがわかった。さらに当該触媒を用いて、反応時の圧力を0
.9MPa、原料ガスを二酸化炭素/水素/窒素=6/49/5とした以外は実施例1と
同様に二酸化炭素の水素化反応を実施した。結果を表2に示す。
【0057】
(比較例4)
酸化ジルコニウム(Saint-Gobain社、モノクリニック型、SZ31164
)を、酸化ジルコニウムに対してインジウム量が4wt%、パラジウム量が4wt%とな
るように調合された硝酸インジウムと硝酸パラジウムの混合水溶液に浸漬した。得られた
混合物から水分を除去し、110℃で7h乾燥した後、空気流通下において500℃で4
h焼成し放冷、さらに水素流通下において450℃で2h還元して、黒色のInPdOn
/ZrO(Inに対する各金属のモル比率、In=1、Pd=0.5、Pd量4wt%
、ZrO担体量90wt%)の触媒を調製した。
当該触媒について、粉末X線回折測定を行ったところ、回折角2θ=30.6°付近に
Inの結晶構造に由来する鋭い回折線が検出され、アモルファス構造ではなく、特
定の結晶構造を有していることがわかった。
得られた触媒を用いて、触媒量を1.8g、圧力を0.18MPaとした以外は実施例
1と同様に二酸化炭素の水素化を実施した。結果を表2に示す。
【0058】
(比較例5)
酸化ジルコニウム(Saint-Gobain社、モノクリニック型、SZ31164
)を、酸化ジルコニウムに対して亜鉛量が4wt%、パラジウム量が4wt%となるよう
に調合された硝酸亜鉛と硝酸パラジウムの混合水溶液に浸漬した。得られた混合物から水
分を除去し、110℃で7h乾燥した後、空気流通下において500℃で4h焼成し放冷
、さらに水素流通下において450℃で2h還元して、黒色のZnPdOn/ZrO
Znに対する各金属のモル比率、Zn=1、Pd=0.5、Pd量4wt%、ZrO
体量90wt%)の触媒を調製した。
当該触媒について、粉末X線回折測定を行ったところ、回折角2θ=41°付近にPd
Znの結晶構造に由来する鋭い回折線が検出され、アモルファス構造ではなく、特定の結
晶構造を有していることがわかった。
得られた触媒を用いて、触媒量を1.8g、圧力を0.18MPaとした以外は実施例
1と同様に二酸化炭素の水素化を実施した。結果を表2に示す。
【0059】
(比較例6)
酸化ジルコニウム(Saint-Gobain社、モノクリニック型、SZ31164
)を、酸化ジルコニウムに対してインジウム量が4wt%、亜鉛量が2.3wt%となる
ように調合された硝酸インジウムと硝酸亜鉛の混合水溶液に浸漬した。得られた混合物か
ら水分を除去し、110℃で7h乾燥した後、空気流通下において500℃で4h焼成し
て放冷、さらに水素流通下において450℃で2h還元して、黄色のInZnOn/Zr
(Inに対する各金属のモル比率、In=1、Zn=1、ZrO担体量90wt%
)の触媒を調製した。
当該触媒について、粉末X線回折測定を行ったところ、回折角2θ=30.6°付近に
Inの結晶構造に由来する鋭い回折線が検出され、アモルファス構造ではなく、特
定の結晶構造を有していることがわかった。
得られた触媒を用いて、触媒量を2.0g、圧力を0.18MPaとした以外は実施例
1と同様に二酸化炭素の水素化を実施した。結果を表2に示す。
【0060】
(比較例7)
実施例1において硝酸インジウムと硝酸亜鉛を用いずに調製したGaPdO(Gaに対
する各金属のモル比率、Ga=1、Pd=0.05、Pd量7.6wt%)の触媒を調製
した。
当該触媒について、粉末X線回折測定を行ったところ、回折角2θ 20°~40°の
間に鋭い回折線観察されず、ブロードな凸ピークのみであり、半値幅が0.2°以上4°
未満の回折線ピークを有しなかった。従って、アモルファス構造であることが確認された

得られた触媒を用いて、反応温度を220℃、反応時の圧力を0.9MPa、原料ガス
を二酸化炭素/水素/窒素=6/49/5とした以外は実施例1と同様に二酸化炭素の水
素化反応を実施した。結果を表2に示す。
【0061】
(比較例8)
実施例1において硝酸インジウムと硝酸亜鉛と硝酸ガリウムのかわりに硝酸アルミニウ
ムを用いて調製したAlPdO(Alに対する各金属のモル比率、Al=1、Pd=0.
04、Pd量7.7wt%)の触媒を調製した。
当該触媒について、粉末X線回折測定を行ったところ、回折角2θ 20°~40°の
間に鋭い回折線観察されず、ブロードな凸ピークのみであり、半値幅が0.2°以上4°
未満の回折線ピークを有しなかった。従って、アモルファス構造であることが確認された

得られた触媒を用いて、反応温度を220℃、反応時の圧力を0.9MPa、原料ガス
を二酸化炭素/水素/窒素=6/49/5とした以外は実施例1と同様に二酸化炭素の水
素化反応を実施した。結果を表2に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
実施例1―15と比較例1―8の対比から、第13族元素とZnを主成分とする触媒が
高いメタノール選択性を示すことがわかる。
図1