IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社明治の特許一覧

特開2024-110669カカオ含有菓子及びカカオ含有菓子の製造方法
<>
  • 特開-カカオ含有菓子及びカカオ含有菓子の製造方法 図1
  • 特開-カカオ含有菓子及びカカオ含有菓子の製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110669
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】カカオ含有菓子及びカカオ含有菓子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 1/48 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
A23G1/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015381
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 晴香
(72)【発明者】
【氏名】向山 和博
(72)【発明者】
【氏名】島村 輝太郎
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GB04
4B014GG01
4B014GG06
4B014GG07
4B014GG11
4B014GG14
4B014GG17
4B014GK03
4B014GK06
4B014GL10
4B014GP12
4B014GT07
(57)【要約】
【課題】砂糖、糖アルコール、合成甘味料及び乳原料の総含有量が少量である(あるいは、これらを含有しなくてもよい)にもかかわらず、カカオ原料に由来する苦みが抑制されたカカオ含有菓子及びカカオ含有菓子の製造方法を提供する。
【解決手段】 無脂カカオ分の含有量が15.0質量%以上であり、非カカオ由来の水溶性食物繊維の含有量が0.35質量%以上であり、砂糖、糖アルコール、合成甘味料及び乳原料の総含有量が5.00質量%以下である、カカオ含有菓子。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無脂カカオ分の含有量が15.0質量%以上であり、
非カカオ由来の水溶性食物繊維の含有量が0.35質量%以上であり、
砂糖、糖アルコール、合成甘味料及び乳原料の総含有量が5.00質量%以下である、カカオ含有菓子。
【請求項2】
カカオバター及びカカオ代替脂の総含有量が20.0質量%以上であり、かつ40℃下における応力が0.10kg以上である、請求項1に記載のカカオ含有菓子。
【請求項3】
前記非カカオ由来の水溶性食物繊維が、オーツ麦由来の水溶性食物繊維を含む、請求項1又は2に記載のカカオ含有菓子。
【請求項4】
原材料をエクストルーダーにより混合して得られる混合物を、前記エクストルーダーにより押出成形してなる、請求項1又は2に記載のカカオ含有菓子。
【請求項5】
無脂カカオ分を含むカカオ原料と非カカオ由来の水溶性食物繊維とを混合して混合物を生成すること、及び
前記混合物を成形すること
を含む、カカオ含有菓子の製造方法であって、
前記混合物は、砂糖、糖アルコール、合成甘味料及び乳原料の総含有量が5.00質量%以下である、前記製造方法。
【請求項6】
前記混合と前記成形とをエクストルーダーにより行う、請求項5に記載のカカオ含有菓子の製造方法。
【請求項7】
前記混合を冷却下で行う、請求項5又は6に記載のカカオ含有菓子の製造方法。
【請求項8】
前記カカオ原料が、カカオバター及びカカオ代替脂からなる群から選択される1種以上を含む、請求項5又は6に記載のカカオ含有菓子の製造方法。
【請求項9】
請求項1~3のいずれかに記載のカカオ含有菓子を製造する、請求項5又は6に記載のカカオ含有菓子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カカオ含有菓子及びカカオ含有菓子の製造方法に関する。
具体的には、本発明は、砂糖、糖アルコール、合成甘味料及び乳原料の総含有量が少量である(あるいは、これらを含有しなくてもよい)にもかかわらず、カカオ原料に由来する苦みが抑制されたカカオ含有菓子及びカカオ含有菓子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カカオにはカカオポリフェノール、食物繊維、ミネラルなどの様々な栄養素が含まれており、その健康効果が広く認知されている。カカオ原料はそのままでは苦みや渋みが強いため、砂糖や人工甘味料で甘味を付けたり、乳原料でミルク風味を付与することで、苦みや渋みを抑えて食べやすい風味に変化させている。
【0003】
特許文献1には、水分含量が20重量%以下であり、水分活性が0.7以下であり、かつ水中油型に乳化されている混合物を含む含水チョコレート様菓子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/111270号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1をはじめとする従来の技術には、カカオ原料に由来する苦みを抑制する観点でさらなる改善の余地が見出された。
【0006】
本発明の目的の1つは、砂糖、糖アルコール、合成甘味料及び乳原料の総含有量が少量である(あるいは、これらを含有しなくてもよい)にもかかわらず、カカオ原料に由来する苦みが抑制されたカカオ含有菓子及びカカオ含有菓子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討の結果、特定量の非カカオ由来の水溶性食物繊維を配合したカカオ含有菓子において、カカオ原料に由来する苦みが抑制されることを見出し、本発明を完成した。
本発明によれば、以下のカカオ含有菓子等を提供できる。
1.無脂カカオ分の含有量が15.0質量%以上であり、
非カカオ由来の水溶性食物繊維の含有量が0.35質量%以上であり、
砂糖、糖アルコール、合成甘味料及び乳原料の総含有量が5.00質量%以下である、カカオ含有菓子。
2.カカオバター及びカカオ代替脂の総含有量が20.0質量%以上であり、かつ40℃下における応力が0.10kg以上である、1に記載のカカオ含有菓子。
3.前記非カカオ由来の水溶性食物繊維が、オーツ麦由来の水溶性食物繊維を含む、1又は2に記載のカカオ含有菓子。
4.原材料をエクストルーダーにより混合して得られる混合物を、前記エクストルーダーにより押出成形してなる、1又は2に記載のカカオ含有菓子。
5.無脂カカオ分を含むカカオ原料と非カカオ由来の水溶性食物繊維とを混合して混合物を生成すること、及び
前記混合物を成形すること
を含む、カカオ含有菓子の製造方法であって、
前記混合物は、砂糖、糖アルコール、合成甘味料及び乳原料の総含有量が5.00質量%以下である、前記製造方法。
6.前記混合と前記成形とをエクストルーダーにより行う、5に記載のカカオ含有菓子の製造方法。
7.前記混合を冷却下で行う、5又は6に記載のカカオ含有菓子の製造方法。
8.前記カカオ原料が、カカオバター及びカカオ代替脂からなる群から選択される1種以上を含む、5又は6に記載のカカオ含有菓子の製造方法。
9.1~3のいずれかに記載のカカオ含有菓子を製造する、5又は6に記載のカカオ含有菓子の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、砂糖、糖アルコール、合成甘味料及び乳原料の総含有量が少量である(あるいは、これらを含有しなくてもよい)にもかかわらず、カカオ原料に由来する苦みが抑制されたカカオ含有菓子及びカカオ含有菓子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】20℃、30℃及び40℃の各温度での保管後のカカオ含有菓子の写真である。
図2】40℃での保管後のカカオ含有菓子を指で押圧(フィンガープッシュ)した後の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のカカオ含有菓子及びカカオ含有菓子の製造方法について詳述する。
尚、本明細書において、「x~y」は「x以上、y以下」の数値範囲を表すものとする。数値範囲に関して記載された上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0011】
1.カカオ含有菓子
本発明の一態様に係るカカオ含有菓子は、
無脂カカオ分の含有量が15.0質量%以上であり、
非カカオ由来の水溶性食物繊維の含有量が0.35質量%以上であり、
砂糖、糖アルコール、合成甘味料及び乳原料の総含有量が5.00質量%以下である。
【0012】
本態様のカカオ含有菓子によれば、砂糖、糖アルコール、合成甘味料及び乳原料の総含有量が少量である(あるいは、これらを含有しなくてもよい)にもかかわらず、カカオ原料に由来する苦みが抑制される効果が得られる。
そのような効果が得られる理由は必ずしも明かではないが、非カカオ由来の水溶性食物繊維を0.35質量%以上含有することによって耐熱性が高まり、口中において、苦み成分が融け出しにくくなったと考えられる。
また、砂糖、糖アルコール、合成甘味料及び乳原料の総含有量が少量である(あるいは、これらを含有しなくてもよい)ことにより、健康志向のニーズに応えることができ、またカカオ原料本来の風味が良好に付与される。
【0013】
(無脂カカオ分)
本明細書において、「無脂カカオ分」とは、カカオ分(カカオ原料)からココアバターを除いたものを意味する。
一実施形態において、カカオ含有菓子は、無脂カカオ分の含有量が、15.0質量%以上、16.0質量%以上、17.0質量%以上、18.0質量%以上、19.0質量%以上又は20.0質量%以上であり、また、45質量%以下、44質量%以下又は43質量%以下である。
カカオ含有菓子における無脂カカオ分の含有量は、カカオ含有菓子におけるカカオ分の含有量から、カカオ含有菓子におけるココアバターの含有量を差し引いた値である。
【0014】
(水溶性食物繊維)
本明細書において、「非カカオ由来の水溶性食物繊維」とは、水溶性食物繊維のうち、カカオ由来の水溶性食物繊維以外のものを意味する。尚、本態様のカカオ含有菓子は、非カカオ由来の水溶性食物繊維を含むが、カカオ由来の水溶性食物繊維をさらに含むことを排除しない。
「水溶性食物繊維」とは、11以上の糖が鎖状に結合した多糖類である。
非カカオ由来の水溶性食物繊維を0.35質量%以上含有することで、カカオ含有菓子の耐熱性が顕著に向上する効果が得られる。
【0015】
非カカオ由来の水溶性食物繊維として、例えば、カカオ以外の植物由来の水溶性食物繊維が挙げられる。
カカオ以外の植物として、例えば、β-グルカン含有植物等が挙げられる。また、カカオ以外の植物として、例えば、穀物類(オーツ麦、大麦、ひえ、きび、あわ、米、玄米、小麦)、ナッツ類(アーモンド、カシューナッツ、くるみ、マカダミア、ピスタチオ)、豆類(大豆、黒豆)等が挙げられる。これらはいずれもβ-グルカンを含有する。原料の段階において、これらの形状(形態)は格別限定されず、例えば、パウダー、パフ、フレーク等のいずれであってもよい。
【0016】
一実施形態において、非カカオ由来の水溶性食物繊維は、穀物由来の水溶性食物繊維、ナッツ由来の水溶性食物繊維及び豆由来の水溶性食物繊維からなる群から選択される1種以上を含む。
一実施形態において、非カカオ由来の水溶性食物繊維は、β-グルカンを含む。
一実施形態において、非カカオ由来の水溶性食物繊維は、オーツ麦由来の水溶性食物繊維を含む。この場合、カカオ含有菓子に含有される非カカオ由来の水溶性食物繊維のうち、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上又は100質量%が、オーツ麦由来の水溶性食物繊維であってもよい。
【0017】
一実施形態において、カカオ含有菓子は、非カカオ由来の水溶性食物繊維の含有量が、0.35質量%以上、0.36質量%以上、0.37質量%以上、0.38質量%以上、0.39質量%以上、0.40質量%以上、0.41質量%以上、0.42質量%以上、0.43質量%以上、0.44質量%以上、0.45質量%以上、0.46質量%以上又は0.47質量%以上である。上限は格別限定されず、例えば、2.0質量%以下、1.9質量%以下又は1.8質量%以下であり得る。
尚、カカオ含有菓子における非カカオ由来の水溶性食物繊維の含有量は、非カカオ由来の原料における水溶性食物繊維の含有量に基づいて計算される値である。非カカオ由来の原料における水溶性食物繊維の含有量は、「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」(文部科学省 科学技術・学術審議会 資源調査分科会 報告)に記載された数値とすることができる。
【0018】
一実施形態において、非カカオ由来の水溶性食物繊維は、カカオ含有菓子中(生地中)に混合又は分散されている。カカオ含有菓子は、非カカオ由来の水溶性食物繊維を被混合物として含む混合物(生地)によって構成され得る。カカオ含有菓子中において、非カカオ由来の水溶性食物繊維、又は非カカオ由来の水溶性食物繊維を含む原料(例えば穀物、ナッツ、豆等)の平均粒子径は、例えば、4mm以下又は1mm以下である。下限は格別限定されず、例えば0.1mm以上である。
尚、非カカオ由来の水溶性食物繊維、又は非カカオ由来の水溶性食物繊維を含む原料の平均粒子径は、振とう機を用いたふるい分け法により測定される値である。
【0019】
一実施形態において、カカオ含有菓子は、カカオ由来の水溶性食物繊維の含有量が、0.30質量%以上、0.31質量%以上又は0.32質量%以上であり、また、4.5質量%以下、4.4質量%以下又は4.3質量%以下である。
尚、カカオ含有菓子におけるカカオ由来の水溶性食物繊維の含有量は、カカオ含有菓子における食物繊維の総量より、難溶性食物繊維及び非カカオ由来の水溶性食物繊維の総量を差し引いた値である。
【0020】
(砂糖、糖アルコール、合成甘味料及び乳原料)
一実施形態において、カカオ含有菓子は、砂糖、糖アルコール、合成甘味料及び乳原料のそれぞれの含有量、好ましくはこれらの総含有量が、5.00質量%以下、4.00質量%以下、3.00質量%以下、2.00質量%以下、1.00質量%以下、0.50質量%以下、0.30質量%以下、0.01質量%以下又は0質量%である。
糖アルコールとしては、例えば、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、グリセロール等が挙げられる。
合成甘味料としては、例えば、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース、ネオテーム等が挙げられる。
乳原料としては、例えば、全脂粉乳、脱脂粉乳、乳タンパク質、生クリーム、バター、練乳、牛乳、ホエイ、チーズ、ヨーグルト、クリームパウダー、バターパウダー、練乳パウダー、ホエイパウダー、チーズパウダー、ヨーグルトパウダー等が挙げられる。
【0021】
カカオ含有菓子は、ハチミツ、メープルシロップ及び含蜜糖からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
一実施形態において、カカオ含有菓子において、ハチミツ、メープルシロップ及び含蜜糖の総含有量;ハチミツの含有量;メープルシロップの含有量;又は含蜜糖の含有量;は、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、10質量%以上、12質量%以上、15質量%以上又は18質量%以上であり、また、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、28質量%以下、25質量%以下又は23質量%以下である。
【0022】
一実施形態において、カカオ含有菓子は、乳化剤の含有量が、5.00質量%以下、4.00質量%以下、3.00質量%以下、2.00質量%以下、1.00質量%以下、0.50質量%以下、0.30質量%以下、0.01質量%以下であるか、又は、乳化剤を含まない(0質量%である。)。
【0023】
カカオ含有菓子は、カカオバター及びカカオ代替脂からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
一実施形態において、カカオ含有菓子は、カカオバター及びカカオ代替脂(「カカオバター代替脂」ともいう。)の総含有量が20.0質量%以上であり、かつ40℃下における応力が0.10kg以上である。
カカオ含有菓子におけるカカオバター及びカカオ代替脂の総含有量が20.0質量%以上である場合、従来のカカオ含有菓子では耐熱保形性を得ることが困難であったが、本態様のカカオ含有菓子においては、非カカオ由来の水溶性食物繊維の含有量が0.35質量%以上であることによって、良好な耐熱保形性が発揮され、40℃下における応力が0.10kg以上を達成できる。
【0024】
一実施形態において、カカオ含有菓子におけるカカオバター及びカカオ代替脂の総含有量は、2質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上又は29質量%以上であり得、また、50質量%以下、49質量%以下又は48質量%以下である。
カカオ含有菓子におけるカカオバター及びカカオ代替脂の総含有量は、カカオ含有菓子における総油分から、「カカオバター及びカカオ代替脂」以外の油脂の配合量(総量)を引いた値である。
【0025】
一実施形態において、カカオ含有菓子は、「カカオバター及びカカオ代替脂」以外の植物油脂の含有量が、0質量%以上、0.1質量%以上又は0.2質量%以上であり、また、50質量%以下、49質量%以下又は48質量%以下である。
【0026】
一実施形態において、カカオ含有菓子は、ナッツ類を含有する。カカオ含有菓子は、ナッツ類として、アーモンド、カシューナッツ、くるみ、マカダミア及びピスタチオからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
一実施形態において、カカオ含有菓子は、ナッツ類の総含有量が、3質量%以上、5質量%以上、10質量%以上又は12質量%以上であり、また、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、23質量%以下又は20質量%以下である。
【0027】
一実施形態において、カカオ含有菓子は、フルーツを含有する。カカオ含有菓子は、フルーツとして、デーツ、レーズン、プルーン、バナナ、マンゴー、オレンジ、レモン、リンゴ、クランベリー、ストロベリー、ラズベリー、カシス、ブルーベリー、桃、ブドウ、マスカット、ミカン、柚子、梅、チェリー、柿、メロン、スイカ、キウイ、パイナップル、洋梨、グレープフルーツ及びカカオパルプからなる群から選択される1種以上を含むことができる。フルーツは、フルーツソース等の形態でカカオ含有菓子に配合されてもよい。
一実施形態において、カカオ含有菓子は、フルーツの総含有量が、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上又は7質量%以上であり、また、35質量%以下、30質量%以下又は15質量%以下である。
【0028】
一実施形態において、カカオ含有菓子は、40℃下における応力が、0.10kg以上、0.12kg以上、0.14kg以上又は0.16kg以上であり、また、3.50kg以下、3.00kg以下又は2.46kg以下である。
カカオ含有菓子の応力は、実施例に記載の方法により測定される値である。
【0029】
一実施形態において、カカオ含有菓子は、原材料をエクストルーダーにより混合して得られる混合物を、前記エクストルーダーにより押出成形してなる。
これにより、カカオ含有菓子は、カカオ原料に由来する苦みだけでなく渋みも抑制される効果が得られる。そのような効果が得られる理由は必ずしも明かではないが、エクストルーダーによってカカオ原料が均一に分散されることによって、カカオ原料の塊によって苦み及び渋みが強く感じられることが防止されることが考えられる。
エクストルーダーについては後に詳述する。
【0030】
2.カカオ含有菓子の製造方法
本発明の一態様に係るカカオ含有菓子の製造方法は、
無脂カカオ分を含むカカオ原料と非カカオ由来の水溶性食物繊維とを混合して混合物を生成すること、及び
前記混合物を成形すること
を含む、カカオ含有菓子の製造方法であって、
前記混合物は、砂糖、糖アルコール、合成甘味料及び乳原料の総含有量が5.00質量%以下である。
【0031】
本態様のカカオ含有菓子の製造方法によれば、砂糖、糖アルコール、合成甘味料及び乳原料の総含有量が少量である(あるいは、これらを含有しなくてもよい)にもかかわらず、得られるカカオ含有菓子(混合物)において、カカオ原料に由来する苦みが抑制される効果が得られる。また、砂糖、糖アルコール、合成甘味料及び乳原料の総含有量が少量である(あるいは、これらを含有しなくてもよい)ことにより、健康志向のニーズに応えることができ、またカカオ原料本来の風味が良好に付与される。
【0032】
一実施形態において、カカオ原料は、無脂カカオ分と、カカオバター及びカカオ代替脂からなる群から選択される1種以上とを含む。
【0033】
非カカオ由来の水溶性食物繊維と混合されるカカオ原料は、予め調温されていてもよい。カカオ原料は、例えば、30~35℃、35~45℃又は45~55℃に調温されていてもよい。
【0034】
カカオ原料と非カカオ由来の水溶性食物繊維との混合に用いる混合装置は格別限定されず、例えばエクストルーダーやミキサーを用いることができる。
エクストルーダーは、一軸又は複数軸のスクリューを有することができ、好ましくは二軸のスクリューを有する。
エクストルーダーは、回転するスクリューによって、カカオ原料と非カカオ由来の水溶性食物繊維とにせん断応力を作用させて混合する。また、スクリューがこれらを吐出口に向けて押圧することで、圧力が作用する。このようなせん断応力や圧力が作用することによって、カカオ原料と非カカオ由来の水溶性食物繊維とが良好に均一分散される。このようにして得られる混合物を、エクストルーダーの吐出口から押出成形することもできる。
一実施形態において、前記混合と前記成形とをエクストルーダーにより行う。
ここで、前記混合と前記成形とには同一のエクストルーダーを用いることができる。前記成形は、エクストルーダーによる押出成形であり得る。
【0035】
一実施形態において、前記混合を冷却下で行う。これにより、カカオ含有菓子におけるカカオ原料に由来する苦みをさらに低減できる。
ここで、「冷却」は、混合中の原料に、該原料より低い温度の物体を接触させるものであればよい。この物体の温度(原料と接触する前の温度)は、カカオ原料が予め調温されている場合があることや、混合に伴う温度上昇等を考慮して、適宜設定することができ、例えば、-10~0℃、0~10℃又は10~20℃である。
例えば、混合にエクストルーダーを用いる場合であれば、エクストルーダーは、混合されるカカオ原料と非カカオ由来の水溶性食物繊維とを冷却するための冷却手段を備えることができる。冷却手段は格別限定されず、例えば、冷媒を流通する流路が形成されたジャケット構造等を用いることができる。冷却手段は、冷却混練部を通過する原料を冷却可能であればよい。冷却手段は、例えば、エクストルーダーのスクリューを取り囲むハウジング側に設けてもよいし、スクリュー側に設けてもよい。
【0036】
本態様に係るカカオ含有菓子の製造方法により得られるカカオ含有菓子(混合物)については、本発明の一態様に係るカカオ含有菓子についてした説明が適宜援用される。
一実施形態において、本態様に係るカカオ含有菓子の製造方法により得られるカカオ含有菓子(混合物)は、本発明の一態様に係るカカオ含有菓子である。
【実施例0037】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
【0038】
実施例及び比較例において用いた原料は以下のとおりである。
・カカオ原料:株式会社明治製、カカオマス、ココアパウダー及びカカオニブの混合物)
・植物油脂:不二製油株式会社製「メラノSS」
・全乳粉:株式会社明治製
・乳化剤:不二製油株式会社製、レシチン
・アーモンド原料:東海ナッツ株式会社製、アーモンドペースト等
・ココナッツ:昭栄食品工業株式会社製、トーストココナッツ
・オーツパウダー:日本食品製造合資会社製、オーツパウダー
・ハチミツ:ハチミツは、ブドウ糖(単糖)33.2質量%、果糖(単糖)39.7質量%、砂糖(二糖)0.3質量%、麦芽糖(二糖)1.5質量%を含有する。
・フルーツ原料:オタフクソース株式会社製、フルーツソース等
【0039】
1.カカオ含有菓子
(実施例1)
予め40℃に調温されたカカオ原料と、その他原料とを表1に示す配合で、ミキサーで1分間撹拌し、混合物を得た。尚、カカオ原料は表1において「無脂カカオ分」及び「ココアバター又はココア代替脂」に該当する(後述する他の実施例及び比較例においても同様)。
次いで、混合物をエクストルーダーに投入し、エクストルーダー内部の冷却域を通過させながら混練し、エクストルーダーの吐出口から吐出して、カカオ含有菓子を得た。エクストルーダーの冷却域の内部温度は3~12℃、吐出時のカカオ含有菓子の表面温度は23~24℃であった。
【0040】
(実施例2)
予め40℃に調温されたカカオ原料と、その他原料とを表1に示す配合で、ミキサーで1分間撹拌し、混合物を得た。
次いで、混合物を20℃の水で冷却して、27℃に調整した。
次いで、27℃に調整された混合物を、ミキサーで1分間撹拌した。
次いで、混合物を20℃の水で冷却して、24℃に調整した。
次いで、24℃に調整された混合物を、ミキサーで1分間撹拌した。
次いで、混合物を容器に取出し、クーラーで固化させて、カカオ含有菓子を得た。
【0041】
(実施例3、比較例1)
予め40℃に調温されたカカオ原料と、その他原料とを表1に示す配合で、ミキサーで2分間撹拌し、混合物を得た。得られた混合物の温度は30℃であった。
次いで、混合物を容器に取出し、クーラーで固化させて、カカオ含有菓子を得た。
【0042】
(比較例2)
一般的なチョコレートとして、株式会社明治製「ブラックチョコレート」を、比較例2のカカオ含有菓子とした。
【0043】
2.官能評価
実施例1~3及び比較例1、2のカカオ含有菓子について、苦み及び渋みの官能評価を行った。
苦み及び渋みの評価段階は1~7とし、1に近いほど苦み又は渋みが弱く、7に近いほど苦み又は渋みが強いものとした。ここで、比較例2のカカオ含有菓子をコントロールとし、苦み及び渋みのそれぞれの基準(1~7の評価段階における3)とした。
カカオ含有菓子の喫食時の温度は20℃、質量は5gとした。
官能評価は、同じサンプルに対して同評点を付けることが可能な程度に訓練されたチョコレート専門パネル2名により行った。
【0044】
以上の結果を表1に示す。尚、表1において、配合の括弧内数値は水溶性食物繊維の量を示す。「無脂カカオ分」に含まれる水溶性織滅繊維は、非カカオ由来の水溶性食物繊維には該当しない。
【0045】
【表1】
【0046】
砂糖を配合しない比較例1では、砂糖を配合した比較例2に比べ、苦み及び渋みが強くなった。ところが、砂糖を配合しない場合であっても、非カカオ由来の水溶性食物繊維を0.35質量%以上含有する実施例1~3では、比較例1に比べ、苦みが低減された。また、実施例1では、比較例1に比べ、苦みだけでなく、渋みも低減された。
実施例1~3では、非カカオ由来の水溶性食物繊維を0.35質量%以上含有することによって耐熱性が高まり、口中において、苦み成分が融け出しにくくなったと考えられる。また、実施例1では、エクストルーダーによってカカオ原料が均一に分散されたことによって、カカオ原料の塊によって苦み及び渋みが強く感じられることが防止されたことが考えられる。
【0047】
3.可塑性及び耐熱保形性の評価
(比較例3)
国際公開第2020/111270号(特許文献1)の実施例1に記載された方法によりカカオ含有菓子を得た。具体的には以下のとおりである。
カカオマス20質量部、ココアバター20質量部、全脂粉乳20質量部、乳化剤0.5質量部、香料0.1質量部、及びショ糖40質量部を常法により混合、粉砕及びコンチングしてミルクチョコレート生地を得た。
得られたミルクチョコレート生地90.9質量%、及び全卵(水分含量76%)9.1質量%を二軸式エクストルーダーに投入して、下記運転条件で冷却搬送、混練、押出成形を行って、カカオ含有菓子を得た。
エクストルーダー運転条件
・原料投入温度:20℃
・冷却域の内部温度(混練時の混合物の温度):8~19℃
・吐出温度(表面):25.6℃
【0048】
実施例1及び比較例2、3のカカオ含有菓子について、可塑性及び耐熱保形性を評価するために、20℃、30℃及び40℃の各温度下における応力分析を行った。
具体的には、サンプル(カカオ含有菓子)の形状は16.5×16.5×16.5mmの略立方体とし、質量は約4.5gとした。
このサンプルを20℃、30℃又は40℃の恒温機内に3時間保管した。
次いで、保管後のサンプル(サンプルの温度は保管温度を維持している。)の応力をテクスチャーアナライザー(株式会社島津製作所製)を用いて分析した。分析条件は以下のとおりである。
【0049】
<分析条件>
・テストスピード(測定前):1mm/sec
・テストスピード(測定中):2mm/sec
・テストスピード(戻り):10mm/sec
・ターゲットモード:Distance
・Force:100g
・Distance:5mm
・Strain:10%
・トリガータイプ:オート(Force)
・トリガー 荷重:5g
・トリガー 距離:2mm
【0050】
以上の結果を表2に示す。
また、20℃、30℃及び40℃の各温度での保管後のカカオ含有菓子の写真を図1に示す。
さらに、40℃での保管後のカカオ含有菓子を指で押圧(フィンガープッシュ)した後の写真を図2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
保管温度に関して、20℃及び30℃の温度帯では、実施例1は、比較例2より小さく、また比較例3より大きい応力を示した。即ち、実施例1は、比較例2(一般的なチョコレート)程の硬さは無いが、比較例3(特許文献1の技術に対応)のような可塑性は有していないため、20℃及び30℃の温度帯では、保形性がありながらも軟らかな食感を実現している。また、40℃の温度帯では、比較例2、3ともに応力が殆どなく保形性が無い(比較例2は図1に示されるように40℃において融けたため応力測定できなかった。)のに対して、実施例1では保形性の維持に十分な応力が観察された。
図1
図2