(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110908
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】フラワーペースト及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 9/20 20160101AFI20240808BHJP
A23C 13/14 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
A23L9/20
A23C13/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023174951
(22)【出願日】2023-10-10
(31)【優先権主張番号】P 2023015596
(32)【優先日】2023-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000103840
【氏名又は名称】オリエンタル酵母工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】川上 香織
(72)【発明者】
【氏名】村田 瑞季
【テーマコード(参考)】
4B001
4B025
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC03
4B001AC05
4B001AC09
4B001AC15
4B001AC43
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4B025LP01
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4B025LP16
(57)【要約】
【課題】糖質や糖類の含量が低い場合であっても、適度な硬さと耐熱性を備え、なめらかな口当たりを有し、口溶けが良好であり、適度な甘さを感じられるフラワーペースト及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】架橋澱粉2.0~4.2質量%と、環状オリゴ糖4.5~15質量%と、乳清たん白1.5~4質量%とを含有するフラワーペースト、及び架橋澱粉2.0~4.2質量%と、環状オリゴ糖4.5~15質量%と、乳清たん白1.5~4質量%とを含有するフラワーペースト原料を乳化処理した後、加熱し、冷却することを含むフラワーペーストの製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋澱粉2.0~4.2質量%と、環状オリゴ糖4.5~15質量%と、乳清たん白1.5~4質量%とを含有することを特徴とするフラワーペースト。
【請求項2】
前記環状オリゴ糖が、環状四糖とシクロデキストリンとの組合せ、及び環状四糖のいずれかである請求項1に記載のフラワーペースト。
【請求項3】
前記架橋澱粉がヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉及び/またはアセチル化アジピン酸架橋澱粉である請求項1または2に記載のフラワーペースト。
【請求項4】
糖質の含有量が14.5~18質量%である請求項1または2に記載のフラワーペースト。
【請求項5】
架橋澱粉2.0~4.2質量%と、環状オリゴ糖4.5~15質量%と、乳清たん白1.5~4質量%とを含有するフラワーペースト原料を乳化処理した後、加熱し、冷却することを含むことを特徴とするフラワーペーストの製造方法。
【請求項6】
前記環状オリゴ糖が、環状四糖とシクロデキストリンとの組合せ、及び環状四糖のいずれかである請求項5に記載のフラワーペーストの製造方法。
【請求項7】
前記架橋澱粉がヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉及び/またはアセチル化アジピン酸架橋澱粉である請求項5または6に記載のフラワーペーストの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラワーペースト及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、肥満や糖尿病等の生活習慣病の予防の観点、低カロリー志向などから、飲食品中の低糖質化に対する消費者の要求が強くなっている。小麦粉を主原料とするパンや菓子類の低糖質化が進む中、それらの副原料として使用されるフラワーペーストについても同様に低糖質化が求められている。
【0003】
これまでに、含有される糖質や糖類を低減した場合であっても、良好な食感、風味、物性を有するフラワーペーストとして、油分含量が1~30質量%、糖アルコールの含量が固形分として3~38質量%、食物繊維を1~20質量%含有するフラワーペーストが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
小麦粉や澱粉、砂糖の使用量を減らしても、適度な硬さと甘みがあって、糊っぽさも少なく、フラワーペースト100g中の糖質含量が8~20gである低糖質のフラワーペーストとして、大豆粉、澱粉、油脂、及び水を含有するフラワーペーストで、フラワーペースト100g中の糖質含量が8~20gであるフラワーペーストが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
エネルギーと血糖値上昇を少なくした菓子類でありながら、ショ糖や小麦粉を使用した一般的な菓子類と同等の品質を有するだけでなく、工業的生産に耐えうる生地安定性や最終製品の保存性を実現した菓子類として、糖類を使用した菓子類において、糖アルコール、高甘味度甘味料により前記糖類を全量置換した低エネルギー、低糖質の菓子類が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-124157号公報
【特許文献2】特開2018-186795号公報
【特許文献3】特開2016-106584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フラワーペーストは原料中に小麦粉、砂糖、澱粉といった糖質を主とする原料を多く含んでおり、低糖質化を目的とし、単にそれらの使用量を減らしてしまうとフラワーペーストの物性、食感、風味の面で問題が生じる。具体的には、硬さ不足による作業適性の低下、経時的な離水、喫食時に感じるボディー感や甘さの不足等が挙げられる。そのため、糖質や糖類の含量が低い場合であっても、物性、食感、風味が良好なフラワーペーストの速やかな提供が強く求められている。
【0008】
本発明は、このような要望に応え、現状を打破し、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、糖質や糖類の含量が低い場合であっても、適度な硬さと耐熱性を備え、なめらかな口当たりを有し、口溶けが良好であり、適度な甘さを感じられるフラワーペースト及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成するべく鋭意検討を行った結果、フラワーペースト原料に、特定量の架橋澱粉と、特定量の環状オリゴ糖と、特定量の乳清たん白とを配合することで、糖質や糖類の含量が低い場合であっても、適度な硬さと耐熱性を備え、なめらかな口当たりを有し、口溶けが良好であり、適度な甘さを感じられるフラワーペーストが提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 架橋澱粉2.0~4.2質量%と、環状オリゴ糖4.5~15質量%と、乳清たん白1.5~4質量%とを含有することを特徴とするフラワーペーストである。
<2> 前記環状オリゴ糖が、環状四糖とシクロデキストリンとの組合せ、及び環状四糖のいずれかである前記<1>に記載のフラワーペーストである。
<3> 前記架橋澱粉がヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉及び/またはアセチル化アジピン酸架橋澱粉である前記<1>または<2>に記載のフラワーペーストである。
<4> 糖質の含有量が14.5~18質量%である前記<1>~<3>のいずれかに記載のフラワーペーストである。
<5> 架橋澱粉2.0~4.2質量%と、環状オリゴ糖4.5~15質量%と、乳清たん白1.5~4質量%とを含有するフラワーペースト原料を乳化処理した後、加熱し、冷却することを含むことを特徴とするフラワーペーストの製造方法である。
<6> 前記環状オリゴ糖が、環状四糖とシクロデキストリンとの組合せ、及び環状四糖のいずれかである前記<5>に記載のフラワーペーストの製造方法である。
<7> 前記架橋澱粉がヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉及び/またはアセチル化アジピン酸架橋澱粉である前記<5>または<6>に記載のフラワーペーストの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、従来における前記諸問題及び新たな前記課題を解決することができ、糖質や糖類の含量が低い場合であっても、適度な硬さと耐熱性を備え、なめらかな口当たりを有し、口溶けが良好であり、適度な甘さを感じられるフラワーペースト及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、試験例の耐熱性の評価における各評価点に該当するフラワーペーストの一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(フラワーペースト)
本発明のフラワーペーストは、架橋澱粉と、環状オリゴ糖と、乳清たん白とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0014】
<糖質>
炭水化物は、糖質と食物繊維に分けることができる。前記糖質には、ブドウ糖、果糖などの単糖類、ショ糖や乳糖の二糖類、オリゴ糖、デキストリン、澱粉等の多糖類、糖アルコールが含まれる。
【0015】
前記フラワーペーストにおける糖質の含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、20質量%以下が好ましく、14.5~18質量%がより好ましい。
【0016】
前記フラワーペーストにおける糖質の含有量は、各原料中の糖質の含有量を合計した値である。
前記糖質の含有量とは、栄養表示基準(平成8年5月20日厚生省告示第146号)に規定されており、食品の重量から、たんぱく質、脂質、食物繊維、灰分及び水分の量を控除して算定した値である。そのため、各原料中の糖質の含有量は、各原料のたんぱく質の含有量、脂質の含有量、食物繊維の含有量、灰分の含有量及び水分の含有量を測定し、原料の重量からそれらの量を控除して求めることができる。
前記たんぱく質の含有量は、例えば、ケルダール法により測定することができる。
前記脂質の含有量は、クロロホルム・メタノール混液抽出法により測定することができる。
前記食物繊維の含有量は、酵素-重量法により測定することができる。
前記灰分の含有量は、直接灰化法により測定することができる。
前記水分の含有量は、常圧加熱乾燥法により測定することができる。
【0017】
<架橋澱粉>
前記架橋澱粉に用いる澱粉の種類としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、甘藷澱粉などが挙げられる。これらの中でも、タピオカ澱粉、コーンスターチが好ましい。
前記架橋澱粉は、前記澱粉、または前記澱粉にエーテル化、エステル化等の加工処理を施した加工澱粉類に、リン酸架橋エーテル化等の公知の架橋処理を施したものである。
前記架橋澱粉は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、老化を起こしにくいという観点から、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉が好ましい。
【0018】
前記架橋澱粉は、市販品を適宜使用することができる。
【0019】
前記架橋澱粉のフラワーペーストにおける含有量としては、2.0~4.2質量%であれば、特に制限はなく、適宜選択することができるが、2.8~4.0質量%が好ましい。前記好ましい範囲内であると、フラワーペーストが十分な耐熱性を有しながら良好な食感が得られる点で、有利である。
【0020】
<環状オリゴ糖>
食物繊維は、「基本的にはプロスキー法(Prosky法、酵素-重量法)によって定量されるもの、すなわち熱安定α-アミラーゼ、プロテアーゼ及びアミログルコシダーゼによる一連の処理によって分解されない多糖類及びリグニン」と定義されており、栄養学的には「ヒトの消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」を指す。
食物繊維は、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に分類される。
前記水溶性食物繊維としては、例えば、ポリデキストロース、アルギン酸、アルギン酸塩、ペクチン、グルコマンナン、キサンタンガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、グアーガム、環状オリゴ糖、イヌリン、イソマルトデキストリン、難消化性デキストリンなどが挙げられる。
【0021】
本発明では、前記環状オリゴ糖を用いる。前記環状オリゴ糖を用いることで、フラワーペーストの食感の滑らかさを損なわず、砂糖等の糖質を食物繊維に置き換えない場合のフラワーペーストに近い物性を維持することができる。
【0022】
前記環状オリゴ糖としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、シクロデキストリン、環状イソマルトオリゴ糖、環状五糖、環状四糖などが挙げられる。これらの中でも、フラワーペーストの食感と物性をより優れたものとすることができる点で、シクロデキストリン、環状四糖が好ましく、環状四糖とシクロデキストリンとの組合せ、環状四糖単独がより好ましい。
【0023】
前記環状四糖としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、シクロニゲロシルニゲロースを主に含有するものが好ましい。前記シクロニゲロシルニゲロースは、グルコース4分子が環状につながったものである。
【0024】
前記環状オリゴ糖は、環状オリゴ糖のみからなるものを用いてもよいし、環状オリゴ糖を含有する糖類(以下、「環状オリゴ糖含有糖類」と称することがある。)を用いることもできる。
【0025】
前記環状オリゴ糖含有糖類としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、環状オリゴ糖を含有する水あめ、環状オリゴ糖を含有する粉末水あめなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記環状オリゴ糖及び環状オリゴ糖含有糖類は、市販品を適宜使用することができる。
【0027】
前記環状オリゴ糖及び/または環状オリゴ糖含有糖類のフラワーペーストにおける合計含有量としては、環状オリゴ糖の量として、4.5~15質量%であれば、特に制限はなく、適宜選択することができるが、5.6~13質量%が好ましい。前記好ましい範囲内であると、フラワーペーストの糖質を低減させた上で、フラワーペーストとして適した物性を維持し、良好な食感と風味が得られる点で、有利である。
【0028】
<乳清たん白>
前記乳清たん白は、乳清たん白のみからなるものを使用してもよいし、乳清たん白を含むものを使用してもよい。
前記乳清たん白のみからなるものとしては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、乳清タンパク質分離物粉末、乳清タンパク質濃縮物粉末などが挙げられる。
前記乳清たん白を含むものとしては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、液体乳、クリーム、ヘビークリーム、コンデンスミルク、エバミルク、液体スキムミルク、液体全乳、無脂肪乾燥乳粉末、全乳粉末、乳たん白質濃縮物粉末、バターミルク粉末乳製品などが挙げられる。
【0029】
前記乳清たん白は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記乳清たん白は、市販品を適宜使用することができる。
【0030】
前記乳清たん白のフラワーペーストにおける含有量としては、1.5~4質量%であれば、特に制限はなく、適宜選択することができるが、2~3質量%が好ましい。前記好ましい範囲内であると、フラワーペーストが十分な耐熱性を有しながら良好な食感と風味が得られるとなる点で、有利である。
【0031】
<その他の成分>
本発明のフラワーペーストには、上記した成分以外にも、糖類、卵黄、卵白、油脂、乳化剤、増粘多糖類、香料、着色料、水等、通常フラワーペーストで使用される原材料を使用することができる。
前記その他の成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分は、市販品を適宜選択することができる。
前記その他の成分のフラワーペーストにおける含有量としては、特に制限はなく、通常フラワーペーストで配合される量に応じて、適宜選択することができる。
【0032】
<<油脂>>
前記油脂としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、大豆油、菜種油、パーム油、米油などの植物性油脂、牛脂、豚脂、乳脂などの動物性油脂、並びに植物性油脂と動物性油脂とを混合する又はエステル交換などの処理が施される食用精製加工油脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、複数種を適宜組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、解乳化を起こしにくい点で、大豆油、ひまわり油、菜種油が好ましい。
前記油脂は、公知の方法により調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記油脂のフラワーペーストにおける含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、加熱処理前の保形性がより優れる点で、14~18質量%が好ましい。
【0033】
<<増粘多糖類>>
本発明のフラワーペーストには、加熱処理前の保形性を向上させるために、さらに増粘多糖類を含有させることが好ましい。
【0034】
前記増粘多糖類としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、キサンタンガム、タマリンドシードガム、グアーガム、タラガム、アルギン酸エステル(「アルギン酸プロピレングリコールエステル」と称することもある。)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、キサンタンガム、タマリンドシードガムが好ましい。
前記増粘多糖類は、市販品を適宜使用することができる。
【0035】
前記増粘多糖類のフラワーペーストにおける合計含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、0.05~0.3質量%が好ましい。
前記増粘多糖類を2種以上用いる場合の各増粘多糖類の質量比としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0036】
本発明のフラワーペーストは、製菓・製パンあるいは料理材料の一種として用いることができ、例えば、惣菜パン、菓子パンやサンドイッチ、ケーキ、パイ、包みピザなどのいわゆる具や、中身・詰め物として、またはこれらの食品において上のせの具材としてのトッピングとして、使用することができる。
【0037】
本発明のフラワーペーストは、糖質や糖類の含量が低い場合であっても、適度な硬さと耐熱性を備え、なめらかな口当たりを有し、口溶けが良好であり、適度な甘さを感じられる。そのため、本発明のフラワーペーストは、糖質や糖類の含量が低いフラワーペーストとして、好適に用いることができる。
【0038】
本発明のフラワーペーストを製造する方法としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、後述の本発明のフラワーペーストの製造方法により、好適に製造することができる。
【0039】
(フラワーペーストの製造方法)
本発明のフラワーペーストの製造方法は、フラワーペースト原料を乳化処理した後、加熱し、冷却することを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0040】
前記フラワーペースト原料は、架橋澱粉2.0~4.2質量%と、環状オリゴ糖4.5~15質量%と、乳清たん白1.5~4質量%とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0041】
前記架橋澱粉、前記環状オリゴ糖、前記乳清たん白、及び前記その他の成分は、上記した本発明のフラワーペーストの項目に記載の各成分と同様であり、好ましい態様も同様である。また、本発明のフラワーペーストの製造方法により製造されるフラワーペーストにおける糖質の含有量も上記した本発明のフラワーペーストの項目に記載したものと同様である。
【0042】
<乳化>
前記乳化は、フラワーペースト原料を混合、乳化し、乳化物を得る処理である。
前記混合、乳化の方法としては、特に制限はなく、公知のフラワーペーストの製造における方法を適宜選択することができ、例えば、各種原料を調合タンクに投入し、高速撹拌にて予備乳化物或いは混合物を調製し、次いで、インラインミキサー、高圧ホモゲナイザーなどにより、乳化する方法などが挙げられる。
前記混合、乳化における条件としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0043】
<加熱>
前記加熱は、前記乳化物を加熱殺菌する処理である。
前記加熱殺菌の方法としては、特に制限はなく、公知のフラワーペーストの製造における方法を適宜選択することができ、例えば、蒸気を直接注入するスチームインジェクション式加熱、掻き取り式熱交換器等の間接加熱などが挙げられる。
前記加熱殺菌の条件としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0044】
<冷却>
前記冷却は、前記加熱殺菌した前記乳化物を冷却する処理である。
前記冷却の方法としては、特に制限はなく、公知のフラワーペーストの製造における方法を適宜選択することができ、例えば、掻き取り式熱交換器による方法、冷水中への浸漬による方法などが挙げられる。
前記冷却における条件としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0045】
<その他の処理>
前記その他の処理としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、充填などが挙げられる。
-充填-
前記充填は、前記乳化物を包装容器に充填する処理である。前記充填では、必要に応じて、充填後の最終製品を冷却してもよい。
前記充填の方法としては、特に制限はなく、公知のフラワーペーストの製造における方法を適宜選択することができ、例えば、前記乳化物をピロー包装形態で充填する方法などが挙げられる。
前記充填における条件としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0046】
本発明のフラワーペーストの製造方法によれば、糖質や糖類の含量が低い場合であっても、適度な硬さと耐熱性を備え、なめらかな口当たりを有し、口溶けが良好であり、適度な甘さを感じられるフラワーペーストを効率よく製造することができる。
【実施例0047】
以下、試験例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらの試験例に何ら限定されるものではない。
【0048】
(試験例1)
下記のようにして、試験例1-1~1-4のフラワーペーストを製造した。
【0049】
<乳化工程>
表1に記載の各種原料を調合タンクに投入し、調合タンクに備え付けの撹拌機で、5分間以上高速撹拌にて、予備乳化物を作製した。次いで、高圧ホモゲナイザー(150Kgf/平方センチメートル)にて、乳化を行い、乳化物を得た。
【0050】
<加熱殺菌工程>
前記乳化物を、掻き取り式熱交換器にて98~104℃設定で加熱殺菌を行った。
【0051】
<冷却工程>
加熱殺菌した前記乳化物を、掻き取り式熱交換器にて冷却した。
【0052】
<充填工程>
前記乳化物をピロー包装形態で充填し、冷水中に浸漬し、試験例1-1~1-4のフラワーペーストとした。
【0053】
<評価>
-耐熱性-
試験例1-1~1-4のフラワーペーストの耐熱性について、下記のようにして試験した。
フラワーペーストを普通紙(PPC用紙)上に15g絞り出し、耐熱カップを被せ、120℃で10分間焼成し、下記の評価基準で評価した。なお、下記評価基準における各点に該当するフラワーペーストの一例を
図1に示す。また、試験例1-1~1-4のフラワーペーストの耐熱性の評価結果を表1に示す。
[評価基準]
3点 : 焼成後も形を保っており、焼成前とほぼ変化なし。
2点 : 焼成後に一部分離が生じて、焼成前に比べ若干崩れたり、油染みが見られる。
1点 : 焼成後の分離が激しく、形を保っていない。
分離 : 乳化不良で焼成前から分離が生じていた。
【0054】
-官能評価-
焼成後のフラワーペーストについて、10名の評価者により、下記の評価基準で食感および風味を評価した。10名の評価者による評価の中で、最も多い評価となった結果を表1に示す。なお、試験例1-1のフラワーペースト(低糖質ではないフラワーペースト)をコントロールとした。
[評価基準]
--食感--
3点 : コントロールと同程度に滑らかで良好な口溶けである。
2点 : コントロールよりもややザラつき、ボソつきを感じる。
1点 : コントロールよりもザラつき、ボソつきが強く口溶けも悪い。
分離 : 乳化不良で分離が生じたため、食感の評価を実施しなかった。
--風味--
3点 : コントロールと同程度に甘さを感じられる。
2点 : コントロールよりも甘さはやや弱いが、異味異臭はない。
1点 : コントロールよりも甘さが弱く、苦み等の異味異臭を感じる。
分離 : 乳化不良で分離が生じたため、風味の評価を実施しなかった。
【0055】
【0056】
(試験例2)
表2に記載の原料を用いた以外は、試験例1と同様にして、試験例2-1~2-4のフラワーペーストを製造した。また、試験例1-1のフラワーペーストをコントロールとして、試験例1と同様にして各評価を行った。結果を表2に示す。
【0057】
【0058】
(試験例3)
表3~4に記載の原料を用いた以外は、試験例1と同様にして、試験例3-1~3-7のフラワーペーストを製造した。また、試験例1-1のフラワーペーストをコントロールとして、試験例1と同様にして各評価を行った。結果を表3~4に示す。
【0059】
【0060】
【0061】
(試験例4)
表5に記載の原料を用いた以外は、試験例1と同様にして、試験例4-1~4-5のフラワーペーストを製造した。また、試験例1-1のフラワーペーストをコントロールとして、試験例1と同様にして各評価を行った。結果を表5に示す。
【0062】
【0063】
(試験例5)
表6~7に記載の原料を用いた以外は、試験例1と同様にして、試験例5-1~5-6のフラワーペーストを製造した。また、試験例1-1のフラワーペーストをコントロールとして、試験例1と同様にして各評価を行った。結果を表6~7に示す。
【0064】
【0065】
【0066】
(試験例6)
表8に記載の原料を用いた以外は、試験例1と同様にして、試験例6-1~6-4のフラワーペーストを製造した。また、試験例1-1のフラワーペーストをコントロールとして、試験例1と同様にして各評価を行った。結果を表8に示す。
【0067】
【0068】
なお、上記試験例1~6において使用した成分の詳細は、以下のとおりである。また、試験例1~6における環状四糖は、シクロニゲロシルニゲロースである。
・ ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉 : コーンスターチ由来
・ アセチル化アジピン酸架橋澱粉 : タピオカ澱粉由来
・ ヒドロキシプロピル澱粉 : タピオカ澱粉由来
・ 乳清たん白 : チーズホエー
・ 増粘多糖類 : キサンタンガムとタマリンドシードガムとを質量比3:1で使用
・ 水あめ(Brix71) : 環状四糖不含有の水あめ
【0069】
以上のように、本発明によれば、糖質や糖類の含量が低い場合であっても、適度な硬さと耐熱性を備え、なめらかな口当たりを有し、口溶けが良好であり、適度な甘さを感じられるフラワーペーストを得ることができることが確認された。