(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110918
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】シリカゾル
(51)【国際特許分類】
C01B 33/141 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
C01B33/141
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023196490
(22)【出願日】2023-11-20
(31)【優先権主張番号】P 2023015022
(32)【優先日】2023-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坪田 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 昌明
(72)【発明者】
【氏名】芦▲高▼ 圭史
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 雄介
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 一晃
【テーマコード(参考)】
4G072
【Fターム(参考)】
4G072AA28
4G072CC01
4G072DD06
4G072EE01
4G072GG02
4G072GG03
4G072HH30
4G072JJ23
4G072LL06
4G072LL11
4G072MM06
4G072PP01
4G072PP15
4G072RR05
4G072RR12
4G072TT01
4G072TT19
4G072TT30
4G072UU30
(57)【要約】
【課題】ゲル化せず、高純度であり、かつ高濃度のシリカ粒子を含むシリカゾルを提供する。
【解決手段】シリカ粒子および水を含み、前記シリカ粒子の平均一次粒子径と前記シリカ粒子の平均円形度との積が15.0以上31.2以下であり、前記シリカ粒子の濃度が20質量%以上であり、前記シリカ粒子あたりの全有機炭素量が10質量ppm未満であり、前記シリカ粒子の濃度が20質量%である場合、25℃における粘度が300mPa・s以下であり、金属不純物の濃度が1質量ppm未満である、シリカゾル
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ粒子および水を含み、
前記シリカ粒子の平均一次粒子径と前記シリカ粒子の平均円形度との積が15.0以上31.2以下であり、
前記シリカ粒子の濃度が20質量%以上であり、
前記シリカ粒子あたりの全有機炭素量が10質量ppm未満であり、
前記シリカ粒子の濃度が20質量%である場合、25℃における粘度が300mPa・s以下であり、
金属不純物の濃度が1質量ppm未満である、シリカゾル。
【請求項2】
pHが5.0以上8.0以下である、請求項1に記載のシリカゾル。
【請求項3】
前記シリカ粒子の濃度が25質量%以上である、請求項1または2に記載のシリカゾル。
【請求項4】
前記シリカ粒子の平均一次粒子径が39nm以下である、請求項1または2に記載のシリカゾル。
【請求項5】
アルコキシシランまたはその縮合物を、水およびアルカリ触媒を含む有機溶媒中で反応させて、シリカ粒子を含む反応液を得る反応工程と、
前記反応液を濃縮して、前記シリカ粒子の濃度を20質量%以上にする濃縮工程と、を含み、
前記反応工程において、前記シリカ粒子の平均一次粒子径と前記シリカ粒子の平均円形度との積が15.0以上31.2以下に制御される、シリカゾルの製造方法。
【請求項6】
前記反応工程後、前記反応液中の有機溶媒を水で置換する水置換工程をさらに含み、
前記水置換工程は、前記濃縮工程前に、前記濃縮工程と同時に、または前記濃縮工程後に行われる、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記アルコキシシランがテトラメトキシシランである、請求項5または6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記有機溶媒がメタノールである、請求項5または6に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカゾルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属、半金属、非金属、およびこれらの酸化物等の材料表面に対して研磨用組成物を用いた化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)が行われている。この研磨用組成物には、化学的研磨の作用を有する水溶液と、機械的研磨の作用を有する粒子(砥粒)とを混合・分散させた構成が一般的であり、砥粒としてシリカゾルを使用することが知られている。
【0003】
製造効率、貯蔵運搬効率などの向上を目的として、シリカゾル中のシリカ粒子の濃度を高める試みがなされている。しかし、一般的にシリカゾルは、含有されるシリカ粒子の濃度が高くなる(例えば20質量%以上)と、ゲル化することが知られている。
【0004】
これに対し、特許文献1では、アルコキシド法によって合成されるシリカゾルに分散剤を添加して、ゲル化を起こすことなくシリカゾル中のシリカ粒子の濃度を20重量%以上にする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のシリカゾルは、分散剤が添加されているため、ゲル化を防止できる一方、高純度化という点で課題があった。
【0007】
したがって、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ゲル化せず、高純度であり、かつ高濃度のシリカ粒子を含むシリカゾルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を積み重ねた。その結果、シリカ粒子および水を含み、前記シリカ粒子の平均一次粒子径と前記シリカ粒子の平均円形度との積が15.0以上31.2以下であり、前記シリカ粒子の濃度が20質量%以上であり、前記シリカ粒子あたりの全有機炭素量が10質量ppm未満であり、前記シリカ粒子の濃度が20質量%である場合、25℃における粘度が300mPa・s以下であり、金属不純物の濃度が1質量ppm未満である、シリカゾルにより、上記課題が解決することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ゲル化せず、高純度であり、かつ高濃度のシリカ粒子を含むシリカゾルが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一形態に係る実施の形態を説明する。本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
【0011】
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で測定する。
【0012】
<シリカゾル>
本発明の一態様は、シリカ粒子および水を含み、前記シリカ粒子の平均一次粒子径と前記シリカ粒子の平均円形度との積が15.0以上31.2以下であり、前記シリカ粒子の濃度が20質量%以上であり、前記シリカ粒子あたりの全有機炭素量が10質量ppm未満であり、前記シリカ粒子の濃度が20質量%である場合、25℃における粘度が300mPa・s以下であり、金属不純物の濃度が1質量ppm未満である、シリカゾルに関する。本発明によれば、ゲル化せず、高純度であり、かつ高濃度のシリカ粒子を含むシリカゾルが提供される。
【0013】
本発明者らは、上記課題が解決されるメカニズムを以下のように推定している。
【0014】
シリカゾル中のシリカ粒子の濃度が同一である場合、粒子径が小さいほど粒子個数が多くなる。そのため、濃縮を進めてシリカ粒子の濃度を上げていくと、粒子個数が多いシリカゾルは、粒子間距離が短いため、粒子個数が少ないシリカゾルよりも先にゲル化すると考えられる。
【0015】
しかし、シリカゾル中のシリカ粒子の分散および凝集は、シリカ粒子のゼータ電位に由来する静電反発斥力と、シリカ粒子間のファンデルワールス力に由来する引力とによって説明することができる。これは、DLVO理論(デリャーギン・ランダウ・フェルウェー・オーバービーク理論)とも呼ばれ、静電反発斥力がファンデルワールス力に由来する引力より強いとシリカゾル中でシリカ粒子が分散され、その逆は凝集傾向となる。
【0016】
ここで、本発明者らの検討によれば、シリカ粒子の濃度が20質量%以上であるシリカゾルにおいて、粒子径および形状と凝集および分散との関係は、以下のとおりであると考えられる:
(1)シリカ粒子の粒子径が一定の粒子径範囲よりも小さくなると、粒子間距離が短くなりすぎ、粒子間距離由来のファンデルワールス力が大きくなる。したがって、ファンデルワールス力由来の引力が静電反発作用の斥力よりも強くなり、シリカ粒子が凝集する傾向となる。
(2)シリカ粒子の粒子径が一定の粒子径範囲であると、粒子間距離由来のファンデルワールス力ならびに粒子径および形状由来のファンデルワールス力があまり大きくならない。したがって、ファンデルワールス力由来の引力が静電反発作用の斥力よりも弱くなり、シリカ粒子が凝集せず、高濃縮が可能となる。
(3)シリカ粒子の粒子径が一定の粒子径範囲よりも大きくなると、粒子間距離由来のファンデルワールス力は小さくなるが、粒子径および形状由来のファンデルワールス力は大きくなる。したがって、ファンデルワールス力由来の引力が静電反発作用の斥力よりも強くなり、シリカ粒子が凝集する傾向となる。
【0017】
以上より、シリカゾル中のシリカ粒子の凝集は、粒子径の値だけではなく、粒子形状も影響を与えると考えられる(同一粒子径であれば、ファンデルワールス力由来の引力は、異形状の方が大きくなる)。そのため、シリカ粒子の粒子径を一定の範囲とすることに加えて、シリカ粒子の形状を制御することで、分散剤の添加、シリカ粒子の表面修飾、シリカゾルのpHの調整などを行うことなく、ゲル化せず、高純度であり、かつ高濃度のシリカ粒子を含むシリカゾルを得ることができると考えられる。
【0018】
なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術的範囲に影
響を及ぼすものではない。
【0019】
本発明に係るシリカゾルは、シリカ粒子および水を含む。
【0020】
シリカ粒子の平均一次粒子径(nm)とシリカ粒子の平均円形度との積は、15.0以上31.2以下である。シリカ粒子の平均一次粒子径とシリカ粒子の平均円形度との積をこのような範囲とすることにより、シリカ粒子の濃度が20質量%以上であってもゲル化を防止することができる。シリカ粒子の平均一次粒子径とシリカ粒子の平均円形度との積は、好ましくは16.0以上31.1以下であり、より好ましくは16.5以上30.0以下であり、さらに好ましくは20.0以上27.0以下である。かかる範囲であれば、シリカ粒子の濃度がより高いシリカゾルを得ることができる。
【0021】
本発明に係るシリカゾルにおいて、シリカ粒子の平均一次粒子径および平均円形度は、上記シリカ粒子の平均一次粒子径とシリカ粒子の平均円形度との積の範囲を満たすものであれば、特に制限されない。シリカ粒子の平均一次粒子径および平均円形度は、従来公知の手法により制御することができる。制御方法については、後述のシリカゾルの製造方法において説明する。
【0022】
シリカ粒子の平均一次粒子径の下限は、15.0nm以上であり、好ましくは16.5nm以上であり、より好ましくは20.0nm以上である。シリカ粒子の平均一次粒子径の上限は、好ましくは39.0nm以下であり、より好ましくは34.0nm以下であり、さらに好ましくは32.0nm以下である。シリカ粒子の平均一次粒子径は、好ましくは15.0nm以上39.0nm以下であり、より好ましくは16.5nm以上34.0nm以下であり、さらに好ましくは20.0nm以上32.0nm以下である。シリカ粒子の平均一次粒子径は、例えば、BET法から算出したシリカ粒子の比表面積(SA)と、シリカ粒子の密度とを基に算出することができる。より具体的には、シリカ粒子の平均一次粒子径は、実施例に記載の方法により測定された値を採用する。シリカ粒子の平均一次粒子径は、シリカゾルにて測定を行うだけではなく、後述の濃縮工程前に水置換工程を行う場合、濃縮工程前後にて変化しないため、水置換工程後のシリカ分散水溶液にて測定を行ってもよい。
【0023】
シリカ粒子の平均円形度の下限は、好ましくは0.70以上であり、より好ましくは0.75以上であり、さらに好ましくは0.80以上である。シリカ粒子の平均円形度の上限は、1.00以下であり、0.99以下または0.98以下であってもよい。本明細書において、平均円形度とは、シリカゾルに含まれるシリカ粒子の円形度の平均を算出した値を意味する。本明細書中、平均円形度は、後述の実施例に記載の方法で算出した値を意味する。シリカ粒子の平均円形度は、シリカゾルにて算出を行うだけではなく、後述の濃縮工程前に水置換工程を行う場合、濃縮工程前後にて変化しないため、水置換工程後のシリカ分散水溶液にて算出を行ってもよい。
【0024】
本発明に係るシリカゾル中のシリカ粒子の濃度は、20質量%以上である。シリカ粒子の濃度の下限は、好ましくは25質量%以上であり、26質量%以上、27質量%以上、28質量%以上、29質量%以上、または30質量%以上であってもよい。シリカ粒子の濃度の上限は、例えば40質量%以下であり、好ましくは35質量%以下である。
【0025】
本発明に係るシリカゾルにおいて、シリカ粒子あたりの全有機炭素(TOC)量は、10質量ppm未満である。シリカ粒子あたりのTOC量の上限は、好ましくは9質量ppm以下であり、より好ましくは7質量ppm以下であり、さらに好ましくは5質量ppm以下である。シリカ粒子あたりのTOC量の下限は、例えば0質量ppmであり、1質量ppm以上、または2質量ppm以上であってもよい。本明細書中、TOC量は、後述の実施例に記載の方法で算出した値を意味する。
【0026】
本発明に係るシリカゾルのTOC量は、高純度化の観点から、好ましくは200質量ppm以下である。
【0027】
本発明に係るシリカゾルは、高純度化の観点から、実質的に分散剤を含まない。「実質的に分散剤を含まない」とは、シリカゾル中の分散剤の濃度が10質量ppm未満であることを意味する。シリカゾル中の分散剤の濃度は、好ましくは5質量ppm以下であり、
より好ましくは3質量ppm以下であり、さらに好ましくは0質量ppmである。
【0028】
本明細書において、分散剤とは、無機酸、無機酸塩、有機酸および有機酸塩を意味する。
【0029】
無機酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、アルキルリン酸エステル、ホウ酸、ピロリン酸、ホウフッ酸、4フッ化ホウ酸、6フッ化リン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などが挙げられる。
【0030】
無機酸塩としては、無機アンモニウム塩が挙げられ、具体的には硫酸アンモニウム、塩酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸一アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、ホウ酸アンモニウム八水和物などが挙げられる。
【0031】
有機酸としては、クエン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マレイン酸、酒石酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コハク酸、マロン酸、フマル酸、フタル酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-メチル酪酸、n-ヘキサン酸、3,3-ジメチル酪酸、2-エチル酪酸、4-メチルペンタン酸、n-ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコ-ル酸、サリチル酸、グリセリン酸、乳酸などが挙げられる。
【0032】
有機酸塩としては、有機アンモニウム塩が挙げられ、具体的には安息香酸アンモニウム、クエン酸三アンモニウム、クエン酸水素二アンモニウム、シュウ酸アンモニウム一水和物、ギ酸アンモニウム、サリチル酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、クエン酸テトラメチルアンモニウムが挙げられる。
【0033】
本発明に係るシリカゾルの粘度は、シリカ粒子の濃度が20質量%である場合、25℃において、300mPa・s以下である。シリカゾルの粘度の上限は、25℃において、好ましくは200mPa・s以下であり、より好ましくは150mPa・s以下である。シリカゾルの粘度の下限は、特に制限されないが、25℃において、例えば1mPa・s以上である。シリカゾルの粘度は、30mPa・s以上135mPa・s以下、または35mPa・s以上65mPa・s以下であってもよい。シリカゾルの粘度は、B型粘度計を用いて測定することができ、具体的には、実施例に記載の方法によって測定された値を採用する。
【0034】
本発明に係るシリカゾルにおいて、金属不純物の濃度は、1質量ppm未満であり、好ましくは0.5質量ppm以下である。金属不純物としては、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、銀、タングステン、鉛などが挙げられる。本明細書において、金属不純物の濃度は、上記金属不純物の合計の濃度を意味する。金属不純物の濃度は、実施例に記載の方法によって測定された値を採用する。
【0035】
本発明に係るシリカゾルのpHは、特に制限されない。本発明に係るシリカゾルは、ゲル化防止のためのpH領域の調整を必要としない。シリカゾルのpHは、好ましくは5.0以上8.0以下であり、より好ましくは6.5以上7.5以下である。本明細書において、シリカゾルのpHは、実施例に記載の方法によって測定された値を採用する。
【0036】
本発明に係るシリカゾルの製造方法は、特に制限されないが、高純度化の観点から、ゾルゲル法を用いることが好ましい。ゾルゲル法によるシリカゾルの製造は、従来公知の手法を用いて行うことができる。
【0037】
以下、本発明の一態様であるシリカゾルの製造方法について説明する。ただし、本発明に係るシリカゾルの製造方法は、以下の態様に限定されない。
【0038】
<シリカゾルの製造方法>
本発明の一態様は、アルコキシシランまたはその縮合物を、水およびアルカリ触媒を含む有機溶媒中で反応させて、シリカ粒子を含む反応液を得る反応工程と、前記反応液を濃縮して、前記シリカ粒子の濃度を20質量%以上にする濃縮工程と、を含み、前記反応工程において、前記シリカ粒子の平均一次粒子径と前記シリカ粒子の平均円形度との積が15.0以上31.2以下に制御される、シリカゾルの製造方法に関する。本発明の一態様によれば、ゲル化せず、高純度であり、かつ高濃度のシリカ粒子を含むシリカゾルを製造することができる。
【0039】
本発明に係るシリカゾルの製造方法では、アルコキシシランまたはその縮合物を、水およびアルカリ触媒を含む有機溶媒中で反応させて、シリカ粒子を含む反応液を得る反応工程を含む。
【0040】
反応工程において使用されるアルコキシシランまたはその縮合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、またはそれらの縮合物が挙げられる。これらは、1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。アルコキシシランは、適当な加水分解反応性を有する観点から、好ましくはテトラメトキシシランである。
【0041】
反応工程において使用される水は、金属不純物等の混入を極力低減する観点から、純水または超純水を使用することが好ましい。
【0042】
反応工程において使用されるアルカリ触媒としては、従来公知のものを使用することができる。アルカリ触媒は、金属不純物等の混入を極力低減できるという観点から、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウムその他のアンモニウム塩などの少なくとも1つであることが好ましい。これらの中でも、優れた触媒作用の観点から、アンモニアがより好ましい。アンモニアは揮発性が高いため、容易に除去することができる。なお、アルカリ触媒は、単独で用いてもよいし、または2種以上を混合して使用してもよい。
【0043】
反応工程において使用される有機溶媒としては、親水性の有機溶媒が用いられることが好ましく、具体的には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などが挙げられる。有機溶媒は、単独で使用してもよいし、または2種以上を混合して使用してもよい。
【0044】
有機溶媒としては、アルコール類が好ましい。アルコール類を用いることで、シリカゾルを後述する水置換する際に、加熱蒸留によりアルコール類と水とを容易に置換することができるという効果がある。また、有機溶媒の回収や再利用の観点から、アルコキシシランの加水分解により生じるアルコールと同一種類のアルコールを用いることが好ましい。
【0045】
アルコール類の中でもとりわけ、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどの少なくとも一種がより好ましい。アルコキシシランとしてテトラメトキシシランを用いる場合、有機溶媒は、メタノールであることが好ましい。
【0046】
反応工程において、アルコキシシランまたはその縮合物を、水およびアルカリ触媒を含む有機溶媒中で反応させる方法は、特に制限されず、従来公知の手法を用いることができる。アルコキシシランまたはその縮合物と、水およびアルカリ触媒を含む有機溶媒とを混合することにより、アルコキシシランまたはその縮合物が加水分解および重縮合することでシリカ粒子が生成される。
【0047】
以下、反応工程の一実施形態について説明する。
【0048】
一実施形態において、反応工程は、アルカリ触媒、水および第1の有機溶媒を含む液(A)に、アルコキシシランまたはその縮合物および第2の有機溶媒を含む液(B)と、必要に応じて水を含む液(C)と、を混合して、シリカ粒子を含む反応液を作製することを含む。
【0049】
(A)液中のアルカリ触媒、水および第1の有機触媒の含有量は、特に制限されないが、所望の粒子径(平均一次粒子径)に合わせて用いるアルカリ触媒、水および第1の有機溶媒を変更でき、それぞれの含有量も用いるものにより適宜調整できる。
【0050】
例えば、アルカリ触媒としてアンモニアを用いる場合、(A)液中のアンモニアの含有量の下限は、加水分解触媒としての作用またはシリカ粒子の成長の観点で、(A)液全量(100質量%)に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、アンモニアの含有量の上限は特に制限はされないが、生産性とコストの観点で、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0051】
(A)液中の水の含有量の下限は、反応に用いるアルコキシシランまたはその縮合物の量に合わせて調整されるが、アルコキシシランの加水分解の観点から、(A)液全量(100質量%)に対して、5質量%以上であることが好ましい。また、水の含有量の上限は、(B)液に対する相溶性の観点で、(A)液全量(100質量%)に対して、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。第1の有機溶媒としてメタノールを用いる場合、メタノールの含有量の下限は、(B)液に対する相溶性の観点で、(A)液全量(100質量%)に対して、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。また、第1の有機溶媒の含有量の上限は、分散性の観点で、(A)液全量(100質量%)に対して、98質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。
【0052】
(B)液中のアルコキシシランまたはその縮合物および第2の有機溶媒の含有量は、特に制限されず、所望の形状や粒子径などに合わせて適宜調整できる。例えば、アルコキシシランとしてテトラメトキシシランを、および第2の有機溶媒としてメタノールを用いた場合、テトラメトキシシランの含有量の上限は、(B)液の全量(100質量%)に対して、98質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。また、テトラメトキシシランの含有量の下限は、(B)液の全量(100質量%)に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。
【0053】
(C)液中の水の含有量は、好ましくは95質量%以上であり、より好ましくは98質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。
【0054】
(A)液に、(B)液と、必要に応じて(C)液とを混合して、シリカ粒子を含む反応液を作製する。(A)液に、(B)液と、必要に応じて(C)液とを混合することにより、アルコキシシランまたはその縮合物が加水分解および重縮合することでシリカ粒子を含む反応液を得ることができる。
【0055】
(A)液に、(B)液を混合する際の、(B)液の添加方法は特に制限されず、連続添加でも分割添加(例えば滴下)でもよい。
【0056】
(A)液に、(B)液と(C)液とを混合する際の、(B)液および(C)液の添加方
法は特に制限されない。それぞれほぼ一定量を同時に(A)液に添加してもよいし、(B)液と(C)液とを交互に(A)液に添加してもよい。あるいは、(B)液と(C)液とをアトランダムに添加してもよい。
【0057】
(B)液および(C)液の液量によっても異なるが、(B)液の全量または(B)液および(C)液の全量を(A)液に添加する際に要する時間は、例えば10分以上であればよい。
【0058】
シリカ粒子を含む反応液を作製する際の(A)液、(B)液および(C)液の温度は、特に制限されない。各液の温度の下限は、0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましい。また、各液の温度の上限は、同じであってもよいし、異なってもよいが、70℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。
【0059】
(A)液と(B)液と(C)液との温度は、同じでもよく、異なってもよい。(A)液と(B)液と(C)液との温度の差は、シリカ粒子の粒子径の制御の観点から、20℃以内であることが好ましい。ここで、温度の差は、3液の中で、最も高い温度と、最も低い温度との差を意味する。
【0060】
反応工程は、減圧下、常圧下、加圧下のいずれの圧力条件下で行なうことも可能である。ただし、生産コストの観点から、常圧下で実施することが好ましい。
【0061】
シリカ粒子を含む反応液中のアルコキシシランまたはその縮合物、水、アルカリ触媒ならびに第1および第2の有機溶媒のモル比は、特に制限されず、(A)液に含まれるアルカリ触媒や(B)液に含まれるアルコキシシランまたはその縮合物の含有量により、適宜調整することができる。
【0062】
モル比は、反応に用いられる各液のすべて、すなわち(A)液、(B)液および必要に応じて(C)液の全量を混合したときの混合液全量に含まれるアルコキシシランまたはその縮合物、水、アルカリ触媒および有機溶媒(第1および第2の有機溶媒の合計量)のモル比である。平たく言えば、(A)液に、(B)液または(B)液と(C)液とを添加した後の混合液全量((A)液+(B)液、または(A)液+(B)液+(C)液)中のモル比ということである。
【0063】
混合液に含まれる水のモル比は、アルコキシシランのモル数を1.0とした場合、好ましくは2.0~20.0モルである。なお、N量体(Nは2以上の整数を表す)のアルコキシシランの縮合物を用いる場合、反応液中の水のモル比は、アルコキシシランを用いる場合と比べて、N倍となる。つまり、2量体のアルコキシシランの縮合物を用いる場合、反応液中の水のモル比は、アルコキシシランを用いる場合と比べて、2倍となる。
【0064】
混合液に含まれるアルカリ触媒のモル比は、アルコキシシランまたはその縮合物のモル数を1.0とした場合、好ましくは0.1~5.0モルである。
【0065】
混合液に含まれる第1および第2の有機溶媒の合計量のモル比は、アルコキシシランまたはその縮合物のモル数を1.0とした場合、好ましくは2.0~60.0モルである。
【0066】
反応工程において、シリカ粒子の平均一次粒子径とシリカ粒子の平均円形度との積が15.0以上31.2以下に制御される。シリカ粒子の平均一次粒子径および平均円形度は、従来公知の手法により制御することができる。
【0067】
シリカ粒子の平均一次粒子径は、例えば反応温度により制御することができる。反応温
度とは、反応時の液温である。反応温度を高くすることにより、平均一次粒子径を小さくすることができる(実施例2および3を参照)。また、反応温度を低くすることにより、平均一次粒子径を大きくすることができる(実施例2および比較例1を参照)。
【0068】
シリカ粒子の平均円形度は、例えば混合液中のアルカリ触媒の含有量および水分量により制御することができる。アルカリ触媒の含有量を多くすることにより、平均円形度を高くすることができる(実施例1および5を参照)。また、アルカリ触媒の含有量を少なくすることにより、平均円形度を低くすることができる(実施例2および比較例2を参照)
本発明に係るシリカゾルの製造方法では、反応液を濃縮して、シリカ粒子の濃度を20質量%以上にする濃縮工程を含む。
【0069】
反応液を濃縮する方法は、特に制限されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、加熱濃縮法、膜濃縮法などが挙げられる。
【0070】
加熱濃縮法では、シリカ粒子を含む反応液を常圧下または減圧下で加熱濃縮することで、シリカ粒子の濃度を高くすることができる。
【0071】
膜濃縮法では、例えば、シリカ粒子を濾過することができる限外濾過法による膜分離により、シリカ粒子の濃度を高くすることができる。限外濾過膜の分画分子量は、特に制限されないが、生成する粒径に合わせて分画分子量を選別することができる。限外濾過膜を構成する材質は、特に制限されないが、例えばポリスルホン、ポリアクリルニトリル、焼結金属、セラミック、カーボンなどが挙げられる。限外濾過膜の形態は、特に制限されないが、スパイラル型、チューブラー型、中空糸型などが挙げられる。限外濾過法では、操作圧力は、特に制限されないが、使用する限外濾過膜の使用圧力以下に設定することができる。
【0072】
本発明に係るシリカゾルの製造方法では、反応工程後、反応液中の有機溶媒を水で置換する水置換工程をさらに含む。水置換工程は、濃縮工程前に、濃縮工程と同時に、または濃縮工程後に行うことができる。
【0073】
水置換工程では、有機溶媒を水で置換することによって、アンモニアをアルカリ触媒として選択した場合、シリカゾルのpHを中性域に調整することができるとともに、シリカゾル中に含まれていた未反応物を除去することにより、より高純度のシリカゾルを得ることができる。
【0074】
有機溶媒を水で置換する方法は、従来公知の方法を用いることができる。例えば、シリカ粒子を含む反応液の液量を一定量以上に保ちながら、水を滴下して加熱蒸留によって置換する方法が挙げられる。この際、置換操作は、液温および塔頂温が置換する水の沸点に達するまで行なうことが好ましい。
【0075】
水置換工程で用いる水は、金属不純物等の混入を極力低減する観点から、純水または超純水を用いることが好ましい。
【0076】
また、有機溶媒を水で置換する方法としては、シリカゾルを遠心分離によりシリカ粒子を分離後、水に再分散させる方法も挙げられる。
【0077】
本発明に係るシリカゾルの製造方法では、水置換工程後に濃縮工程を行ってもよく、水置換工程と濃縮工程とを同時に行ってもよく、濃縮工程後に水置換工程を行ってもよい。また、濃縮工程および水置換工程は、複数回行ってもよい。例えば、濃縮工程と濃縮工程の間で水置換工程を行ってもよく、濃縮工程後、濃縮した液中の有機溶媒を水で置換する
水置換工程を行い、さらにその水で置換した液を濃縮する濃縮工程を行ってもよい。
【0078】
<シリカゾルの用途>
本発明に係るシリカゾルおよび本発明に係る製造方法で製造されたシリカゾルは、ゲル化せず、高純度であり(分散剤を必要とせず、シリカ粒子および水以外の成分の濃度が極めて低い)、かつ高濃度(20質量%以上)のシリカ粒子を含むため、従来よりも幅広い用途で使用できる。特に、分散剤などの添加剤成分を実質的に含まないため、半導体基板などの研磨対象物を研磨する砥粒として好適に用いることができる。研磨対象物としては、例えばシリコン材料、アルミニウム、ニッケル、タングステン、鋼、タンタル、チタン、ステンレス鋼等の金属もしくは半金属、またはこれらの合金;石英ガラス、アルミノシリケー卜ガラス、ガラス状カーボン等のガラス状物質;アルミナ、シリカ、サファイア、窒化ケイ素、窒化タンタル、炭化チタン等のセラミック材料;炭化ケイ素、窒化ガリウム、ヒ化ガリウム等の化合物半導体基板材料;ポリイミド樹脂等の樹脂材料;等が挙げられる。また、本発明に係るシリカゾルおよび本発明に係る製造方法で製造されたシリカゾルは、樹脂用フィラー(例えば半導体素子の封止用フィラー)、ハードコート剤、樹脂改質剤、表面処理剤、塗料、顔料、触媒、スリップ防止剤、液晶表示装置のスペーサー、繊維処理剤、結合剤、接着剤、高分子凝集剤、トナー、洗浄剤、化粧品、歯科材料、ナノコンボジット、感熱記録体、感光性フィルム、澱下げ剤などに用いることができる。
【0079】
本発明は、下記態様および形態を包含する。
[1]シリカ粒子および水を含み、
前記シリカ粒子の平均一次粒子径と前記シリカ粒子の平均円形度との積が15.0以上31.2以下であり、
前記シリカ粒子の濃度が20質量%以上であり、
前記シリカ粒子あたりの全有機炭素量が10質量ppm未満であり、
前記シリカ粒子の濃度が20質量%である場合、25℃における粘度が300mPa・s以下であり、
金属不純物の濃度が1質量ppm未満である、シリカゾル。
[2]pHが5.0以上8.0以下である、上記[1]に記載のシリカゾル。
[3]前記シリカ粒子の濃度が25質量%以上である、上記[1]または[2]に記載のシリカゾル。
[4]前記シリカ粒子の平均一次粒子径が39nm以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のシリカゾル。
[5]アルコキシシランまたはその縮合物を、水およびアルカリ触媒を含む有機溶媒中で反応させて、シリカ粒子を含む反応液を得る反応工程と、
前記反応液を濃縮して、前記シリカ粒子の濃度を20質量%以上にする濃縮工程と、を含み、
前記反応工程において、前記シリカ粒子の平均一次粒子径と前記シリカ粒子の平均円形度との積が15.0以上31.2以下に制御される、シリカゾルの製造方法。
[6]前記反応工程後、前記反応液中の有機溶媒を水で置換する水置換工程をさらに含み、
前記水置換工程は、前記濃縮工程前に、前記濃縮工程と同時に、または前記濃縮工程後に行われる、上記[5]に記載の製造方法。
[7]前記アルコキシシランがテトラメトキシシランである、上記[5]または[6]に記載の製造方法。
[8]前記有機溶媒がメタノールである、[5]~[7]のいずれかに記載の製造方法。
【実施例0080】
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。また、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件下で行われた。
【0081】
<実施例1および5>
フラスコ内でメタノール(関東化学株式会社製)5513gに純水455gおよびアンモニアを混合した溶液(A液)に、メタノール201gとテトラメトキシシラン(TMOS、多摩化学工業株式会社製)602gとを混合した溶液(B液)および純水150g(C液)を、各液の温度を20℃に保ち、25分かけて滴下し、シリカ粒子を含む反応液を作製した。
【0082】
A液中のアンモニアの含有量は、実施例1(103g)<実施例5となるように調整した。
【0083】
得られた反応液を、常圧下、反応液が沸騰状態となる温度で加熱濃縮した。加熱濃縮を行う際に、液面を一定に保ちながら、純水を添加して加熱蒸留することで反応液中のメタノールを純水で置換して、水置換されたシリカ分散水溶液(シリカ粒子濃度:6質量%)を得た。
【0084】
シリカ分散水溶液を、常圧下、反応液が沸騰状態となる温度で加熱し、シリカ粒子濃度が30質量%となるように熱濃縮を行い、シリカゾルを得た。この際、乾燥ゲルが発生しないよう、蓋付フラスコを用いて、蓋上部に取り付けた冷却管で蒸気を回収した。
【0085】
<実施例2~4>
フラスコ内でメタノール5885g、純水1071gおよびアンモニア186gを混合した溶液(A液)に、メタノール194gとテトラメトキシシラン(TMOS)582gとを混合した溶液(B液)を、各液の温度を一定に保ち、60分かけて滴下し、シリカ粒子を含む反応液を作製した。
【0086】
各液の温度は、実施例2(55℃)>実施例4>実施例3となるように調整した。
【0087】
得られた反応液を、常圧下、反応液が沸騰状態となる温度で加熱濃縮した。加熱濃縮を行う際に、液面を一定に保ちながら、純水を添加して加熱蒸留することで反応液中のメタノールを純水で置換して、水置換されたシリカ分散水溶液(シリカ粒子濃度:6質量%)を得た。
【0088】
シリカ分散水溶液を、常圧下、反応液が沸騰状態となる温度で加熱し、シリカ粒子濃度が25質量%(実施例2および3)または30質量%(実施例4)となるように熱濃縮を行い、シリカゾルを作製した。この際、乾燥ゲルが発生しないよう、蓋付フラスコを用いて、蓋上部に取り付けた冷却管で蒸気を回収した。
【0089】
<比較例1>
各液の温度を比較例1>実施例2となるように調整したこと以外は、実施例2と同様の方法にて、シリカ粒子を含む反応液を作製した。
【0090】
得られた反応液を、常圧下、反応液が沸騰状態となる温度で加熱濃縮した。加熱濃縮を行う際に、液面を一定に保ちながら、純水を添加して加熱蒸留することで反応液中のメタノールを純水で置換して、水置換されたシリカ分散水溶液(シリカ粒子濃度:6質量%)を得た。
【0091】
シリカ分散水溶液を、常圧下、反応液が沸騰状態となる温度で加熱して、熱濃縮を行った。しかし、シリカ粒子濃度が18質量%付近となった際、急激な粘度上昇が発生し、ゲル化した。
【0092】
<比較例2>
A液中のアンモニアの含有量を実施例2>比較例2となるように調整したこと以外は、実施例2と同様の方法にて、シリカ粒子を含む反応液を作製した。
【0093】
得られた反応液を、常圧下、反応液が沸騰状態となる温度で加熱濃縮した。加熱濃縮を行う際に、液面を一定に保ちながら、純水を添加して加熱蒸留することで反応液中のメタノールを純水で置換して、水置換されたシリカ分散水溶液(シリカ粒子濃度:6質量%)を得た。
【0094】
シリカ分散水溶液を、常圧下、反応液が沸騰状態となる温度で加熱して、熱濃縮を行った。しかし、シリカ粒子濃度が19質量%付近となった際、急激な粘度上昇が発生し、ゲル化した。
【0095】
<比較例3>
A液中のアンモニアの含有量が実施例3>比較例3となるように調整したこと以外は、実施例3と同様の方法にて、シリカ粒子を含む反応液を作製した。
【0096】
得られた反応液を、常圧下、反応液が沸騰状態となる温度で加熱濃縮した。加熱濃縮を行う際に、液面を一定に保ちながら、純水を添加して加熱蒸留することで反応液中のメタノールを純水で置換して、水置換されたシリカ分散水溶液(シリカ粒子濃度:6質量%)を得た。
【0097】
シリカ分散水溶液を、常圧下、反応液が沸騰状態となる温度で加熱して、熱濃縮を行った。しかし、シリカ粒子濃度が19.8質量%付近となった際、急激な粘度上昇が発生し、ゲル化した。
【0098】
<平均一次粒子径の測定>
実施例1~5および比較例1~3のシリカ分散水溶液について、シリカ粒子の平均一次粒子径を、株式会社マウンテック製の“Macsorb HM Model-1201”を用いて測定されたBET法によるシリカ粒子の比表面積と、シリカ粒子の密度とから算出した。結果を表1に示す。
【0099】
<平均円形度の測定>
実施例1~5および比較例1~3のシリカ分散水溶液について、シリカ粒子の平均円形度を以下の方法により算出した。
【0100】
走査型電子顕微鏡SU8000(株式会社日立ハイテク製)を用いて、以下の手順に従ってシリカ分散水溶液の画像観察を行った。
【0101】
シリカ分散水溶液をアルコール中に分散させた後、乾燥させたものを走査型電子顕微鏡に設置し、5.0kVにて電子線照射を行い、倍率50000倍から200000倍で観察視野を数点撮影した。
【0102】
撮影されたSEM画像を画像解析式粒度分布測定ソフトウェアMac-View Ver.4(株式会社マウンテック製)を用いて解析した。具体的には、円形度は、SEMにより100個以上のシリカ粒子についてSEM画像を撮影し、その画像を解析したものである。よって、平均円形度は、個々の粒子の面積(S)と個々のシリカ粒子の周囲長(L)とを求め、各粒子の円形度を下記式より(各)円形度を算出して、平均したものである。なお、平均円形度の算出に用いるシリカ粒子は、撮影されたSEM画像のすべての粒子を対象とする。結果を表1に示す:
円形度=4πS/L2 (S=円面積、L=周囲長)。
【0103】
<全有機炭素量の測定>
実施例1~5のシリカゾルについて、全有機炭素計(株式会社島津製作所製、TOC-L)を用いて、製造直後(調製後、24時間以内)のシリカゾル中の全有機炭素(TOC)量(質量ppm)を測定し、シリカ粒子あたりのTOC量を算出した。比較例1~3のシリカ分散水溶液は、熱濃縮時にゲル化したため、測定不可であった。結果を表1に示す。
【0104】
なお、実施例1~5のシリカゾルのTOC量は、200質量ppm以下であった。
【0105】
<pHの測定>
実施例1~5のシリカゾルのpHは、株式会社堀場製作所製の卓上型pHメーター(型番:F-72)で測定した。比較例1~3のシリカ分散水溶液は、熱濃縮時にゲル化したため、測定不可であった。結果を表1に示す。
【0106】
<粘度の測定>
実施例1~5のシリカゾルを東機産業株式会社製のB型粘度計TVB-10に装填し、測定温度25℃、回転数100rpmの条件で粘度を測定した。測定において使用したローターの種類はH3である。結果を表1に示す。
【0107】
また、実施例1~5において、シリカ粒子濃度が20質量%となるように熱濃縮を行い、シリカゾルを作製し、上記と同様にして粘度を測定した。実施例1~5のシリカゾルの粘度は、200mPa・s以下であった。
【0108】
(金属不純物の濃度の測定)
実施例1~5のシリカゾルについて、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法により金属不純物濃度測定をすることで、金属不純物量を確認した。比較例1~3のシリカ分散水溶液は、熱濃縮時にゲル化したため、測定不可であった。なお、使用した装置は株式会社島津製作所製の『ICP-AES(型番:ICPS-8100)』である。測定した金属不純物は、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、銀、タングステンおよび鉛である。実施例1~5のシリカゾルにおいて、金属不純物の合計の濃度は、1質量ppm未満であった。
【0109】
【0110】
表1に示すように、実施例1~5のシリカゾルは、シリカ粒子の平均一次粒子径とシリカ粒子の平均円形度との積が15.0以上31.2以下の範囲内であることにより、シリカ粒子の濃度を25質量%または30質量%としても、ゲル化せず、低い粘度であった。また、実施例1~5のシリカゾルは、シリカ粒子あたりのTOC量が極めて低く、さらに金属不純物の濃度も極めて低いため、高純度であることが分かる。一方、比較例1~3のシリカゾルは、シリカ粒子の平均一次粒子径とシリカ粒子の平均円形度との積が上記範囲外であることにより、シリカ粒子の濃度が20質量%に到達する前にゲル化した。このことから、シリカ粒子の平均一次粒子径とシリカ粒子の平均円形度との積を所定の範囲に制御することにより、ゲル化せず、高純度であり、かつ高濃度のシリカ粒子を含むシリカゾルが得られることが分かる。