(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111000
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】感光性転写材料、樹脂パターンの製造方法、回路配線の製造方法及びタッチパネルの製造方法、並びに、ポリエチレンテレフタレートフィルム
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20240808BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20240808BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20240808BHJP
【FI】
G03F7/004 512
G06F3/041 660
B32B7/06
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024092553
(22)【出願日】2024-06-06
(62)【分割の表示】P 2022518031の分割
【原出願日】2021-04-23
(31)【優先権主張番号】P 2020081212
(32)【優先日】2020-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020171962
(32)【優先日】2020-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020207767
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 進二
(72)【発明者】
【氏名】有冨 隆志
(72)【発明者】
【氏名】両角 一真
(57)【要約】
【課題】欠陥が低減された樹脂パターンを製造できる感光性転写材料、上記感光性転写材料を用いた樹脂パターンの製造方法、回路配線の製造方法及びタッチパネルの製造方法、並びに、ポリエチレンテレフタレートフィルムを提供する。
【解決手段】仮支持体と、仮支持体上に配置された感光性樹脂層とを備え、仮支持体に含まれる長径3μm以上の異物の個数が0.5個/mm2以下である、感光性転写材料及びその応用。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮支持体と、前記仮支持体上に配置された感光性樹脂層とを備え、
前記仮支持体に含まれる長径3μm以上の異物の個数が0.5個/mm2以下である、感光性転写材料。
【請求項2】
前記仮支持体に含まれる、F、Mg、Si、Ca、Ti、Fe及びSbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有する長径3μm以上の異物の個数が0.5個/mm2以下である、請求項1に記載の感光性転写材料。
【請求項3】
前記仮支持体に含まれる長径3μm以上の異物のうち、レーザーラマン分光法において1580cm-1及び1360cm-1の2つのピークが観察される異物の個数が0.5個/mm2以下である、請求項1に記載の感光性転写材料。
【請求項4】
前記仮支持体に含まれる長径3μm以上の異物のうち、明度が、その周辺における正常領域の明度よりも10%以上低い異物の個数が0.5個/mm2以下である、請求項1に記載の感光性転写材料。
【請求項5】
前記仮支持体は、樹脂を含む単一層であり、
前記感光性樹脂層は、前記仮支持体上に直接配置されている請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
【請求項6】
前記感光性樹脂層の厚さは、10μm以下である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の感光性転写材料における前記感光性樹脂層の前記仮支持体と対向していない側の面と基板とを貼り合わせる工程と、
前記貼り合わせる工程後の感光性転写材料における前記感光性樹脂層をパターン露光する工程と、
前記パターン露光する工程後の感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程と、を含む、樹脂パターンの製造方法。
【請求項8】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の感光性転写材料における前記感光性樹脂層の前記仮支持体と対向していない側の面と基板とを貼り合わせる工程と、
前記貼り合わせる工程後の感光性転写材料における前記感光性樹脂層をパターン露光する工程と、
前記パターン露光する工程後の感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程と、
前記樹脂パターンが配置されていない領域における基板をエッチング処理する工程と、を含む、回路配線の製造方法。
【請求項9】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の感光性転写材料における前記感光性樹脂層の前記仮支持体と対向していない側の面と基板とを貼り合わせる工程と、
前記貼り合わせる工程後の感光性転写材料における前記感光性樹脂層をパターン露光する工程と、
前記パターン露光する工程後の感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程と、
前記樹脂パターンが配置されていない領域における基板をエッチング処理する工程と、を含む、タッチパネルの製造方法。
【請求項10】
長径3μm以上の異物の個数が0.5個/mm2以下であるポリエチレンテレフタレートフィルム。
【請求項11】
F、Mg、Si、Ca、Ti、Fe及びSbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有する長径3μm以上の異物の個数が0.5個/mm2以下である、請求項10に記載のポリエチレンテレフタレートフィルム。
【請求項12】
前記長径3μm以上の異物のうち、レーザーラマン分光法において1580cm-1及び1360cm-1の2つのピークが観察される異物の個数が0.5個/mm2以下である、請求項10に記載のポリエチレンテレフタレートフィルム。
【請求項13】
前記長径3μm以上の異物のうち、明度が、その周辺における正常領域の明度よりも10%以上低い異物の個数が0.5個/mm2以下である、請求項10に記載のポリエチレンテレフタレートフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感光性転写材料、樹脂パターンの製造方法、回路配線の製造方法及びタッチパネルの製造方法、並びに、ポリエチレンテレフタレートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量型入力装置等のタッチパネルを備えた表示装置(有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、液晶表示装置等)では、視認部のセンサーに相当する電極パターン、周辺配線部分及び取り出し配線部分の配線等の導電層パターンがタッチパネル内部に設けられている。
【0003】
一般的にパターン化した層の形成には、必要とするパターン形状を得るための工程数が少ないことから、感光性転写材料を用いて基板上に感光性樹脂組成物の層(感光層)を設け、感光層に対して所望のパターンを有するマスクを介して露光した後、現像する方法が広く採用されている。
【0004】
特開2012-123394号公報には、支持フィルムと、支持フィルム上に形成された感光性樹脂組成物からなる層と、を備え、支持フィルムのヘーズが0.01~2.0%であり、かつ支持フィルム中に含まれる直径5μm以上の粒子及び直径5μm以上の凝集物の総数が5個/mm2以下であり、感光性樹脂組成物からなる層が、バインダーポリマー、エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物及び光重合開始剤を含有し、かつ、感光性樹脂組成物からなる層の厚さが3~30μmである感光性エレメントが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一の実施形態によれば、欠陥が低減された樹脂パターンを製造できる感光性転写材料が提供される。また、本発明の他の実施形態によれば、上記感光性転写材料を用いた樹脂パターンの製造方法、回路配線の製造方法及びタッチパネルの製造方法、並びに、ポリエチレンテレフタレートフィルムが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の態様を含む。
<1>仮支持体と、仮支持体上に配置された感光性樹脂層とを備え、仮支持体に含まれる長径3μm以上の異物の個数が0.5個/mm2以下である、感光性転写材料。
<2>仮支持体に含まれる、F、Mg、Si、Ca、Ti、Fe及びSbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有する長径3μm以上の異物の個数が0.5個/mm2以下である、<1>に記載の感光性転写材料。
<3>仮支持体に含まれる長径3μm以上の異物のうち、レーザーラマン分光法において1580cm-1及び1360cm-1の2つのピークが観察される異物の個数が0.5個/mm2以下である、<1>に記載の感光性転写材料。
<4>仮支持体に含まれる長径3μm以上の異物のうち、明度が、その周辺における正常領域の明度よりも10%以上低い異物の個数が0.5個/mm2以下である、<1>に記載の感光性転写材料。
<5>仮支持体は、樹脂を含む単一層であり、感光性樹脂層は、仮支持体上に直接配置されている<1>~<4>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<6>感光性樹脂層の厚さは、10μm以下である<1>~<5>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<7><1>~<6>のいずれか1つに記載の感光性転写材料における感光性樹脂層の仮支持体と対向していない側の面と基板とを貼り合わせる工程と、貼り合わせる工程後の感光性転写材料における感光性樹脂層をパターン露光する工程と、パターン露光する工程後の感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程と、を含む、樹脂パターンの製造方法。
<8><1>~<6>のいずれか1つに記載の感光性転写材料における感光性樹脂層の仮支持体と対向していない側の面と基板とを貼り合わせる工程と、貼り合わせる工程後の感光性転写材料における感光性樹脂層をパターン露光する工程と、パターン露光する工程後の感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程と、樹脂パターンが配置されていない領域における基板をエッチング処理する工程と、を含む、回路配線の製造方法。
<9><1>~<6>のいずれか1つに記載の感光性転写材料における感光性樹脂層の仮支持体と対向していない側の面と基板とを貼り合わせる工程と、
貼り合わせる工程後の感光性転写材料における感光性樹脂層をパターン露光する工程と、パターン露光する工程後の感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程と、樹脂パターンが配置されていない領域における基板をエッチング処理する工程と、を含む、タッチパネルの製造方法。
<10>長径3μm以上の異物の個数が0.5個/mm2以下であるポリエチレンテレフタレートフィルム。
<11>F、Mg、Si、Ca、Ti、Fe及びSbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有する長径3μm以上の異物の個数が0.5個/mm2以下である、<10>に記載のポリエチレンテレフタレートフィルム。
<12>長径3μm以上の異物のうち、レーザーラマン分光法において1580cm-1及び1360cm-1の2つのピークが観察される異物の個数が0.5個/mm2以下である、<10>に記載のポリエチレンテレフタレートフィルム。
<13>長径3μm以上の異物のうち、明度が、その周辺における正常領域の明度よりも10%以上低い異物の個数が0.5個/mm2以下である、<10>に記載のポリエチレンテレフタレートフィルム。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一の実施形態によれば、欠陥が低減された樹脂パターンを製造できる感光性転写材料を提供することができる。また、本発明の他の実施形態によれば、上記感光性転写材料を用いた樹脂パターンの製造方法、回路配線の製造方法及びタッチパネルの製造方法、並びに、ポリエチレンテレフタレートフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態の感光性転写材料の構成の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、第2実施形態の感光性転写材料の構成の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、パターンAを示す概略平面図である。
【
図4】
図4は、パターンBを示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の内容について説明する。なお、添付の図面を参照しながら説明するが、符号は省略する場合がある。
【0010】
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含する。例えば「アルキル基」との表記は、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸及びメタクリル酸の双方又はいずれか一方を表し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの双方又はいずれか一方を表し、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイル及びメタクリロイルの双方、又は、いずれかを表す。
また、本明細書における化学構造式は、水素原子を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
【0011】
本明細書において、各成分の量(含有量等)は、各成分に含まれる物質が複数存在する場合、特に断らない限り、それら複数の物質の合計量(合計含有量等)を意味する。
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
【0012】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程のみを意味せず、他の工程と明確に区別できない場合であっても所期の目的が達成される工程であれば、本用語に含まれる。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線及びイオンビーム等の粒子線を用いた描画も含む。また、露光に用いられる光としては、一般的に、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV(Extreme ultraviolet lithography)光)、及び、X線等の活性光線(活性エネルギー線)が挙げられる。
【0013】
本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC:Gel Permeation Chromatography)分析装置により、THF(テトラヒドロフラン)溶剤中の化合物を示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、特段の断りがない限り、屈折率は、波長550nmでエリプソメーターを用いて測定した値である。
本明細書において、組成物の「固形分」とは、組成物を用いて作製する層を形成する成分を意味し、組成物が溶剤(有機溶剤、水等)を含む場合、溶剤を除いたすべての成分を意味する。また、上記層を形成する成分であれば、液体状の成分も固形分とみなす。
本明細書において、感光性転写材料が備える各層の層厚は、感光性転写材料の主面に対し垂直な方向の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、得られた観察画像に基づいて各層の厚さを任意の5点以上計測し、その平均値を算出することにより、測定される。
【0014】
[感光性転写材料]
本開示に係る感光性転写材料は、仮支持体と、仮支持体上に配置された感光性樹脂層とを備え、仮支持体に含まれる長径3μm以上の異物の個数が0.5個/mm2以下である。
【0015】
本発明者らは、感光性転写材料に用いる仮支持体に含まれる異物が露光障害となり、樹脂パターンに欠陥を生じさせるという知見を得た。特に、長径3μm以上の異物は、欠陥になりやすい傾向にある。本開示に係る感光性転写材料は、仮支持体に含まれる長径3μm以上の異物の個数を0.5個/mm2以下であるため、欠陥が低減された樹脂パターンを製造できる。
【0016】
以下、本開示に係る感光性転写材料について、詳細に説明する。
【0017】
本開示に係る感光性転写材料は、仮支持体と、感光性樹脂層とを有する。
感光性転写材料は、仮支持体と感光性樹脂層とが他の層を介さずに直接積層されていてもよいし、仮支持体と感光性樹脂層とが他の層を介して積層されていてもよい。また、感光性樹脂層の仮支持体に対向する面とは反対側の面に他の層が積層していてもよい。
仮支持体及び感光性樹脂層以外の他の層としては、例えば、熱可塑性樹脂層、中間層、屈折率調整層及びカバーフィルムが挙げられる。
また、各層は、単層であっても、2層以上の複層であってもよい。
【0018】
本開示に係る感光性転写材料の態様の一例を以下に示すが、これに制限されない。
(1)「仮支持体/感光性樹脂層/屈折率調整層/カバーフィルム」
(2)「仮支持体/感光性樹脂層/カバーフィルム」
(3)「仮支持体/中間層/感光性樹脂層/カバーフィルム」
(4)「仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層/感光性樹脂層/カバーフィルム」
なお、上記各構成において、感光性樹脂層は、ネガ型感光性樹脂層であることが好ましい。また、感光性樹脂層が着色樹脂層であることも好ましい。本開示に係る感光性転写材料は、後述するように配線保護膜用感光性転写材料として使用されてもよいし、エッチングレジスト用感光性転写材料として使用されてもよい。
配線保護膜用感光性転写材料とする場合、感光性転写材料の構成としては、例えば、上述した(1)又は(2)の構成であることが好ましい。
また、エッチングレジスト用感光性転写材料とする場合、感光性転写材料の構成としては、例えば、上述した(2)~(4)の構成であることが好ましい。
【0019】
感光性転写材料において、感光性樹脂層の仮支持体側とは反対側に他の層をさらに有する構成の場合、感光性樹脂層の仮支持体側とは反対側に配置される他の層の合計厚さは、感光性樹脂層の層厚に対して、0.1%~30%であることが好ましく、0.1%~20%であることがより好ましい。
【0020】
後述する貼り合わせ工程時における気泡発生抑止の観点から、感光性転写材料のうねりの最大幅は、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、60μm以下であることがさらに好ましい。なお、感光性転写材料のうねりの最大幅の下限値としては、0μm以上であり、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。
感光性転写材料のうねりの最大幅は、以下の手順により測定される値である。
まず、感光性転写材料を縦20cm×横20cmのサイズとなるように主面に垂直な方向に裁断し、試験サンプルを作製する。なお、感光性転写材料がカバーフィルムを有する場合には、カバーフィルムを剥離する。次いで、表面が平滑で且つ水平なステージ上に、上記試験サンプルを仮支持体の表面がステージに対向するように静置する。静置後、試験サンプルの中心10cm角の範囲について、試験サンプルの表面をレーザー顕微鏡(例えば、(株)キーエンス製VK-9700SP)で走査して3次元表面画像を取得し、得られた3次元表面画像で観察される最大凸高さから最低凹高さを引き算する。上記操作を10個の試験サンプルについて行い、その算術平均値を「感光性転写材料のうねり最大幅」とする。
【0021】
以下において、具体的な実施形態の一例を挙げて、本開示に係る感光性転写材料について説明する。なお、以下の第1実施形態の感光性転写材料は、エッチングレジスト用感光性転写材料に好適に使用できる構成であり、以下の第2実施形態の感光性転写材料は、配線保護膜用感光性転写材料に好適に使用できる構成である。
【0022】
〔〔第1実施形態の感光性転写材料〕〕
以下において、第1実施形態の感光性転写材料について、一例を挙げて説明する。
図1に示す感光性転写材料20は、仮支持体11と、熱可塑性樹脂層13、中間層15、及び、感光性樹脂層17を含む転写層12と、カバーフィルム19とを、この順に有する。
なお、
図1で示す感光性転写材料20は、カバーフィルム19を配置した形態であるが、カバーフィルム19は、配置されなくてもよい。
また、
図1で示す感光性転写材料20は熱可塑性樹脂層13及び中間層15を配置した形態であるが、熱可塑性樹脂層13及び中間層15は、配置されなくてもよい。
以下において、第1実施形態の感光性転写材料を構成する各要素について説明する。
【0023】
〔仮支持体〕
本開示に係る感光性転写材料は、仮支持体を備える。
仮支持体は、感光性樹脂層又は感光性樹脂層を含む積層体を支持し、かつ、剥離可能な支持体である。
【0024】
仮支持体は、感光性樹脂層をパターン露光する際に、仮支持体を介した感光性樹脂層の露光を可能にする観点から、光透過性を有することが好ましい。なお、本明細書において「光透過性を有する」とは、パターン露光に使用する波長の光の透過率が50%以上であることを意味する。
【0025】
仮支持体は、感光性樹脂層の露光感度向上の観点から、パターン露光に使用する波長(好ましくは波長365nm)の光の透過率が60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
【0026】
なお、感光性転写材料が備える層の透過率とは、層の主面に垂直な方向(すなわち、厚さ方向)に光を入射させたときの、入射光の強度に対する層を通過して出射した出射光の強度の比率である。透過率は、大塚電子社製の製品名「MCPD Series」を用いて測定される。
【0027】
仮支持体は1層であってもよく2層以上が積層された積層体であってもよい。
仮支持体としては、例えば、基材のみからなるもの;基材と、基材の一方の面に配置されている粒子含有層と、を備える積層体;及び、基材と、基材の両面に配置されている粒子含有層と、を備える積層体が挙げられる。中でも、欠陥が低減された樹脂パターンを得る観点から、仮支持体は基材のみからなることが好ましい。
【0028】
仮支持体を構成する基材としては、例えば、ガラス、樹脂及び紙が挙げられる。仮支持体を構成する基材は、強度、可撓性及び光透過性の観点から、樹脂であることが好ましい。樹脂は、シート状又はフィルム状であることが好ましい。
【0029】
樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET:polyethylene terephthalate)フィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム及びポリカーボネートフィルムが挙げられる。中でも、樹脂フィルムは、PETフィルムであることが好ましく、2軸延伸PETフィルムであることがより好ましい。
【0030】
基材の一方の面又は両面に粒子含有層が配置されている場合には、粒子含有層は1層であってもよく、2層以上であってもよい。
【0031】
粒子含有層は、例えば、基材上に、粒子含有層用組成物を塗布して乾燥させることにより形成される。また、粒子含有層は樹脂フィルムを製膜する際に共押し出し法により配置することもできる。粒子含有層用組成物は、バインダーポリマー及び粒子を含むことが好ましい。バインダーポリマーの種類は特に限定されず、例えば、目的に応じて適宜選択することができる。バインダーポリマーとしては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、スチレンブタジエン系樹脂、エステル樹脂、塩化ビニル樹脂、及び塩化ビニリデン樹脂が挙げられる。共押し出し法により粒子含有層を配置する場合には、バインダーポリマーとしてPETを用いることが好ましい。
【0032】
粒子含有層は、バインダーポリマー及び粒子をそれぞれ1種単独で含有してもよいし、2種以上含有してもよい。
【0033】
粒子含有層に含まれる粒子は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。粒子含有層における粒子の含有量は、粒子含有層用組成物への粒子の添加量によって適宜調整可能である。本明細書では、粒子含有層に含まれる粒子を「添加粒子」という。
【0034】
添加粒子は、仮支持体の製造工程中に予期せず混入した不純物、及び、仮支持体の製造工程中に形成される粒子とは区別されるものである。添加粒子は、200℃で溶融しない特性を有する粒子であることが好ましい。
【0035】
仮支持体において、添加粒子であるか否かについては、例えば、以下の方法で判別することができる。添加粒子は、通常、形状及び分布に均一性があるため、光学顕微鏡で観察することにより判別することができる。
【0036】
添加粒子としては、例えば、無機粒子及び有機粒子が挙げられる。
【0037】
無機粒子としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン(チタニア)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化アルミニウム(アルミナ)等の無機酸化物の粒子が挙げられる。
【0038】
有機粒子としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリスチレン等のポリマーの粒子が挙げられる。
【0039】
仮支持体が粒子含有層を有する場合には、粒子含有層に含まれる添加粒子は、無機酸化物の粒子であることが好ましい。
【0040】
添加粒子の平均粒径は特に限定されないが、例えば、0.1μm~10μmである。平均粒径は、ウルトラミクロトームで100nmの厚さの切片を切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定される。
【0041】
本開示に係る感光性転写材料では、仮支持体に含まれる長径3μm以上の異物の個数が0.5個/mm2以下であり、0.2個/mm2以下であることが好ましく、0.1個/mm2以下であることがより好ましく、0.05個/mm2以下であることがさらに好ましい。
【0042】
本明細書において「異物」とは、仮支持体を偏光顕微鏡で観察した際に、周囲の領域との偏光の違いが観察可能な領域を有するものを意味する。異物としては、例えば、基材の製造中に形成される樹脂の炭化物、及び、基材の製造に用いられる触媒が挙げられる。また、上記のような粒子含有層を設ける場合に、粒子含有層に含まれる添加粒子も、偏光顕微鏡で偏光の違いが観察されれば、異物としてみなす。
【0043】
仮支持体に異物が含まれると、露光障害となり、樹脂パターンに欠陥が生じる場合がある。また、樹脂パターンを形成した後に、樹脂パターンが配置されていない領域における基板をエッチング処理し、配線パターンを得た場合に、配線パターンにも欠陥が生じる場合がある。特に、仮支持体に長径3μm以上の異物が含まれていると、樹脂パターンに欠陥が生じやすい。本開示に係る感光性転写材料では、仮支持体に含まれる長径3μm以上の異物の個数が0.5個/mm2以下であるため、樹脂パターンにおける欠陥を低減することができる。
【0044】
本開示に係る感光性転写材料では、仮支持体に含まれる、F、Mg、Si、Ca、Ti、Fe及びSbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有する長径3μm以上の異物の個数が0.5個/mm2以下であることが好ましく、0.2個/mm2以下であることがより好ましく、0.1個/mm2以下であることがさらに好ましく、0.05個/mm2以下であることが特に好ましい。
【0045】
本発明者らは、仮支持体を構成する基材が樹脂フィルム(好ましくは、ポリエチレンテレフタレートフィルム)である場合に、仮支持体に含まれる、F、Mg、Si、Ca、Ti、Fe、Sbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有する異物が黒く着色されている傾向にあるという知見を得た。黒く着色した異物は、露光障害となり、断線、ピンホールといった配線欠陥を生じる可能性が高い。したがって、仮支持体に含まれる、F、Mg、Si、Ca、Ti、Fe及びSbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有する長径3μm以上の異物の個数が0.5個/mm2以下であると、樹脂パターンにおける欠陥がより低減される。
【0046】
本開示に係る感光性転写材料では、仮支持体に含まれる長径3μm以上の異物のうち、レーザーラマン分光法において1580cm-1及び1360cm-1の2つのピークが観察される異物の個数が0.5個/mm2以下であることが好ましく、0.2個/mm2以下であることがより好ましく、0.1個/mm2以下であることがさらに好ましく、0.05個/mm2以下であることが特に好ましい。
【0047】
本発明者らは、仮支持体を構成する基材が樹脂フィルム(好ましくは、ポリエチレンテレフタレートフィルム)である場合に、仮支持体に含まれる黒く着色された異物を解析したところ、レーザーラマン分光法において1580cm-1及び1360cm-1の2つのピークが観察されることが分かった。レーザーラマン分光法における1580cm-1のピークは、グラファイト構造に由来し、Gバンドともいう。レーザーラマン分光法における1360cm-1のピークは、ダイヤモンド構造に由来し、Dバンドともいう。
【0048】
仮支持体を構成する基材が樹脂フィルム(好ましくは、ポリエチレンテレフタレートフィルム)である場合に、仮支持体の製造中に、F、Mg、Si、Ca、Ti、Fe及びSbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有する化合物が混入すると、混入した化合物の周囲に存在する樹脂が炭化されて炭化物となると推定される。この炭化物が仮支持体中の異物になると考えられる。仮支持体に含まれる長径3μm以上の異物のうち、レーザーラマン分光法において1580cm-1及び1360cm-1の2つのピークが観察される異物の個数が0.5個/mm2以下であると、樹脂パターンにおける欠陥がより低減される。
【0049】
本開示に係る感光性転写材料では、仮支持体に含まれる長径3μm以上の異物のうち、明度が、その周辺における正常領域の明度よりも10%以上低い異物の個数が0.5個/mm2以下であることが好ましい。ここで、明度とは、光学顕微鏡を用いて透過モードで観察して得られた画像における明度のことであり、HSV表色系のV値を意味する。明度が、その周辺における正常領域の明度よりも10%以上低いということは、黒く着色していることを意味する。黒く着色した異物は、露光障害となり、断線、ピンホールといった配線欠陥を生じる可能性が高い。したがって、仮支持体に含まれる長径3μm以上の異物のうち、明度が、その周辺における正常領域の明度よりも10%以上低い異物の個数が0.5個/mm2以下であると、樹脂パターンにおける欠陥がより低減される。
【0050】
仮支持体における異物の個数及び異物の長径は、例えば、以下の方法で計測される。
【0051】
まず、仮支持体を偏光顕微鏡(製品名「BX60」に「U-POT」フィルターと「U-AN360」フィルターを挿入して簡易偏光顕微鏡としたもの、対物レンズ10倍、オリンパス社製)で観察し、偏光の乱れが発生している部分を異物として特定する。また、光学顕微鏡(製品名「BX60」、対物レンズ100倍、オリンパス社製)で異物の長径を測定し、観察領域250mm2に含まれる、長径が3μm以上である異物の個数を計測する。なお、異物に空隙が含まれる場合には、空隙を含めて長径を測定する。長径とは、異物を構成する領域の中で、最も長い部分の長さを意味する。異物、及び、異物の周辺における正常領域の明度は、光学顕微鏡を用いて透過モードで観察して得られた画像をHSV表色系で表示したV値で測定される。HSV表色系で画像を表示する際に、例えば、GIMP等の画像編集処理ソフトを用いることができる。
【0052】
また、仮支持体に含まれる、F、Mg、Si、Ca、Ti、Fe及びSbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有する長径3μm以上の異物の個数は、例えば、以下の方法で計測される。
【0053】
まず、仮支持体を偏光顕微鏡(製品名「BX60」に「U-POT」フィルターと「U-AN360」フィルターを挿入して簡易偏光顕微鏡としたもの、対物レンズ10倍、オリンパス社製)で観察し、偏光の乱れが発生している部分を異物として特定する。また、光学顕微鏡(製品名「BX60」、対物レンズ100倍、オリンパス社製)で異物の長径を測定し、長径3μm以上の異物を特定する。観察領域250mm2に含まれる、長径が3μm以上である異物をミクロトームで切断し、SEM-EDX装置(製品名「JSM-7200F」、日本電子社製)を用いてSEM-EDX法により元素分析を行う。異物と、異物の周辺における正常領域とを比較し、F、Mg、Si、Ca、Ti、Fe及びSbからなる群より選択される少なくとも1種の元素が検出された異物の個数を計測する。なお、異物の周辺における正常領域とは、上記偏光顕微鏡で観察し、偏光の乱れが発生していない領域のことである。
【0054】
また、仮支持体に含まれる異物のうち、レーザーラマン分光法において1580cm-1及び1360cm-1の2つのピークが観察される異物の個数は、例えば、以下の方法で計測される。
【0055】
まず、仮支持体を偏光顕微鏡(製品名「BX60」に「U-POT」フィルターと「U-AN360」フィルターを挿入して簡易偏光顕微鏡としたもの、対物レンズ10倍、オリンパス社製)で観察し、偏光の乱れが発生している部分を異物として特定する。また、光学顕微鏡(製品名「BX60」、対物レンズ100倍、オリンパス社製)で異物の長径を測定し、長径3μm以上の異物を特定する。観察領域250mm2に含まれる、長径が3μm以上である異物をミクロトームで切断し、SEM-EDX装置(製品名「JSM-7200F」、日本電子社製)を用いてレーザーラマン分光分析法により分析する。開口数(NA)が0.90で、倍率が100倍の対物レンズを用い、励起波長785nmで分析を行う。異物と、異物の周辺における正常領域との差スペクトルをとり、1580cm-1及び1360cm-1の2つのピークが観察された異物の個数を計測する。
【0056】
本開示に係る感光性転写材料では、仮支持体は、欠陥が低減された樹脂パターンを得る観点から、添加粒子を実質的に含まないことが好ましい。すなわち、支持体は、基材中に添加粒子を実質的に含まないことが好ましい。
【0057】
また、本開示に係る感光性転写材料では、仮支持体は、上記粒子含有層を備えていないことが好ましい。仮支持体は、樹脂を含む単一層であり、感光性樹脂層は、仮支持体上に直接配置されていることが好ましい。仮支持体が樹脂を含む単一層であるか否かは、仮支持体を厚さ方向に向かって切断し、断面を確認することにより判断することができる。
【0058】
仮支持体の厚さは、特に制限されず、支持体としての強度、回路配線形成用基板との貼り合わせに求められる可撓性、及び、最初の露光工程で要求される光透過性の観点から、材質に応じて適宜選択すればよい。
【0059】
仮支持体の厚さは、5μm~100μmが好ましく、取扱い易さ及び汎用性の点から、10μm~50μmがより好ましい。
【0060】
〔感光性樹脂層〕
本開示に係る感光性転写材料は、感光性樹脂層を備える。感光性樹脂層を被転写体上に転写した後、露光及び現像を行うことにより、被転写体上にパターンを形成できる。
【0061】
静電容量型入力装置等のタッチパネルを備えた表示装置(有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置及び液晶表示装置等)では、視認部のセンサーに相当する電極パターン、周辺配線部分及び取り出し配線部分の配線等の導電層パターンがタッチパネル内部に設けられている。一般的にパターン化した層の形成には、感光性転写材料等を用いて基板上にネガ型感光性樹脂層を設け、その感光性樹脂層に対して所望のパターンを有するマスクを介して露光した後、現像する方法が広く採用されている。
【0062】
感光性樹脂層は、例えば、感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥させることにより得られる。
感光性樹脂層は、重合体A、重合性化合物B、及び光重合開始剤を含むことが好ましい。感光性樹脂層は、感光性樹脂層の全質量に対して、重合体Aを10質量%~90質量%、重合性化合物Bを5質量%~70質量%、光重合開始剤を0.01質量%~20質量%含むことが好ましい。以下、各成分を順に説明する。
【0063】
<成分>
(重合体A)
重合体Aは、アルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。アルカリ可溶性樹脂は、アルカリ物質に溶け易い高分子を意味する。なお、本明細書において、「アルカリ可溶性」とは、22℃において炭酸ナトリウムの1質量%水溶液100gへの溶解度が0.1g以上であることを意味する。
【0064】
重合体Aの酸価は、現像液による感光性樹脂層の膨潤を抑制すると、解像性がより優れることから、220mgKOH/g以下が好ましく、200mgKOH/g未満がより好ましく、190mgKOH/g未満がさらに好ましい。
【0065】
重合体Aの酸価の下限値は特に制限されない。重合体Aの酸価は、現像性がより優れる点から、60mgKOH/g以上が好ましく、120mgKOH/g以上がより好ましく、150mgKOH/g以上がさらに好ましく、170mgKOH/g以上が特に好ましい。
【0066】
なお、酸価は、試料1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの質量[mg]である。
本明細書においては、酸価の単位をmgKOH/gと記載する。酸価は、例えば、化合物中における酸基の平均含有量から算出できる。
【0067】
重合体Aの酸価は、重合体Aを構成する構成単位の種類及び酸基を含有する構成単位の含有量により調整すればよい。
【0068】
重合体Aの重量平均分子量は、5,000~500,000であることが好ましい。重量平均分子量が500,000以下であると、解像性及び現像性が向上するため好ましい。重合体Aの重量平均分子量は、100,000以下であることがより好ましく、60,000以下であることがさらに好ましく、50,000以下であることが特に好ましい。一方で、重量平均分子量が5,000以上であると、現像凝集物の性状、並びに感光性樹脂積層体とした場合のエッジフューズ性、カットチップ性等の未露光膜の性状を制御できるため好ましい。重合体Aの重量平均分子量は、10,000以上であることがより好ましく、20,000以上であることがさらに好ましく、30,000以上であることが特に好ましい。エッジフューズ性とは、感光性樹脂積層体としてロール状に巻き取った場合に、ロールの端面からの、感光性樹脂層のはみ出し易さの程度をいう。カットチップ性とは、未露光膜をカッターで切断した場合に、チップの飛び易さの程度をいう。このチップが感光性樹脂積層体の上面等に付着すると、後の露光工程等でマスクに転写して、不良品の原因となる。
【0069】
重合体Aの分散度は、1.0~6.0であることが好ましく、1.0~5.0であることがより好ましく、1.0~4.0であることがさらに好ましく、1.0~3.0であることが特に好ましい。本開示で、分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定される値である。また分散度は、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)である。
【0070】
重合体Aは、露光時の焦点位置がずれたときの線幅太り、及び、解像度の低下を抑制する観点から、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。芳香族炭化水素基としては、例えば、置換又は非置換のフェニル基、及び、置換又は非置換のアラルキル基が挙げられる。重合体Aにおける芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位の含有量は、重合体Aの全質量に対して、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、45質量%以上であることが特に好ましく、50質量%以上であることが最も好ましい。上記含有量の上限値は特に限定されない。上記含有量は、重合体Aの全質量を基準として、95質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましい。なお、重合体Aを複数種類含有する場合には、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位の含有量は、重量平均値として求めた。
【0071】
芳香族炭化水素基を有する単量体としては、例えば、アラルキル基を有するモノマー、スチレン、及び重合可能なスチレン誘導体(例えば、メチルスチレン、ビニルトルエン、tert-ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、4-ビニル安息香酸、スチレンダイマー、及びスチレントリマー)が挙げられる。中でも、芳香族炭化水素基を有する単量体は、アラルキル基を有するモノマー、又はスチレンであることが好ましい。芳香族炭化水素基を有する単量体がスチレンである場合、スチレンに由来する構成単位の含有量は、重合体Aの全質量を基準として、20質量%~50質量%であることが好ましく、25質量%~45質量%であることがより好ましく、30質量%~40質量%であることがさらに好ましく、30質量%~35質量%であることが特に好ましい。なお、感光性樹脂層が複数の種類の重合体Aを含む場合、芳香族炭化水素基を有する構成単位の含有率は、重量平均値として求められる。
【0072】
アラルキル基としては、置換又は非置換のフェニルアルキル基(ベンジル基を除く)、及び置換又は非置換のベンジル基が挙げられる。アラルキル基は、置換又は非置換のベンジル基であることが好ましい。
【0073】
フェニルアルキル基を有する単量体としては、フェニルエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0074】
ベンジル基を有する単量体としては、ベンジル基を有する(メタ)アクリレート及びベンジル基を有するビニルモノマーが挙げられる。ベンジル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート及びクロロベンジル(メタ)アクリレートが挙げられる。ベンジル基を有するビニルモノマーとしては、例えば、ビニルベンジルクロリド及びビニルベンジルアルコールが挙げられる。中でも、ベンジル基を有する単量体はベンジル(メタ)アクリレートであることが好ましい。芳香族炭化水素基を有する単量体がベンジル(メタ)アクリレートである場合、ベンジル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量は、重合体Aの全質量を基準として、50質量%~95質量%であることが好ましく、60質量%~90質量%であることがより好ましく、70質量%~90質量%であることがさらに好ましく、75質量%~90質量%であることが特に好ましい。
【0075】
芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を含有する重合体Aは、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位と、後述する第一の単量体及び後述する第二の単量体からなる群より選択される少なくとも1種の単量体に由来する構成単位とを含有する重合体であることが好ましい。
【0076】
芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を含有しない重合体Aは、第一の単量体及び第二の単量体からなる群より選択される少なくとも1種の単量体に由来する構成単位を含有する重合体であることが好ましく、少なくとも1種の第一の単量体に由来する構成単位と少なくとも1種の第二の単量体に由来する構成単位とを含有する重合体であることがより好ましい。
【0077】
第一の単量体は、アニオン性基を有し、かつ、分子中に少なくとも1つの重合性不飽和基を有する単量体である。第一の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、4-ビニル安息香酸、マレイン酸無水物、及びマレイン酸半エステルが挙げられる。中でも、第一の単量体は、(メタ)アクリル酸であることが好ましい。
【0078】
重合体Aにおける第一の単量体に由来する構成単位の含有量は、重合体Aの全質量に対して、5質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~40質量%であることがより好ましく、15質量%~30質量%であることがさらに好ましい。
【0079】
第二の単量体は、アニオン性基を有さず、かつ、分子中に少なくとも1個の重合性不飽和基を有する単量体である。第二の単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;酢酸ビニル等のビニルエステル;及び(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。中でも、第二の単量体は、メチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、又はn-ブチル(メタ)アクリレートであることが好ましく、メチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0080】
重合体Aにおける第二の単量体に由来する構成単位の含有量は、重合体Aの全質量に対して、5質量%~60質量%であることが好ましく、15質量%~50質量%であることがより好ましく、20質量%~45質量%であることがさらに好ましい。
【0081】
重合体Aは、露光時の焦点位置がずれたときの線幅太り、及び、解像度の低下を抑制する観点からアラルキル基を有する単量体及びスチレンからなる群より選択される少なくとも1種の単量体に由来する構成単位を含有することが好ましい。具体的には、重合体Aは、スチレンに由来する構成単位、メチルメタクリレートに由来する構成単位及びメタクリル酸に由来する構成単位を含む共重合体であることが好ましい。
【0082】
第1の態様として、重合体Aは、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を25質量%~40質量%、第一の単量体に由来する構成単位を20質量%~35質量%、第二の単量体に由来する構成単位を30質量%~45質量%含む重合体であることが好ましい。また、第2の態様として、重合体Aは、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を70質量%~90質量%、第一の単量体に由来する構成単位を10質量%~25質量%含む重合体であることが好ましい。また、第3の態様として、重合体Aは、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を40質量%~60質量%、第一の単量体に由来する構成単位を20質量%~35質量%、第二の単量体に由来する構成単位を10質量%~25質量%含む重合体であることが好ましい。
【0083】
重合体Aは、側鎖に直鎖構造、分岐構造、及び、脂環構造のいずれかを有してもよい。側鎖に分岐構造を有する基を含有するモノマー、又は、側鎖に脂環構造を有する基を含有するモノマーを使用することによって、重合体Aの側鎖に分岐構造又は脂環構造を導入することができる。
【0084】
側鎖に分岐構造を有する基を含有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸i-プロピル、(メタ)アクリル酸i-ブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸i-アミル、(メタ)アクリル酸t-アミル、(メタ)アクリル酸sec-iso-アミル、(メタ)アクリル酸2-オクチル、(メタ)アクリル酸3-オクチル及び(メタ)アクリル酸t-オクチルが挙げられる。中でも、側鎖に分岐構造を有する基を含有するモノマーは、(メタ)アクリル酸i-プロピル、(メタ)アクリル酸i-ブチル、又は(メタ)アクリル酸t-ブチルが好ましく、(メタ)アクリル酸i-プロピル又は(メタ)アクリル酸t-ブチルがより好ましい。
【0085】
側鎖に脂環構造を有する基を含有するモノマーとしては、例えば、炭素原子数5個~20個の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、側鎖に脂環構造を有する基を含有するモノマーとして、(メタ)アクリル酸(ビシクロ[2.2.1]ヘプチル-2)、(メタ)アクリル酸-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3-メチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3,5-ジメチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3-エチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸-3-メチル-5-エチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3,5,8-トリエチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3,5-ジメチル-8-エチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸2-メチル-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸2-エチル-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシ-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ-4,7-メンタノインデン-5-イル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ-4,7-メンタノインデン-1-イルメチル、(メタ)アクリル酸-1-メンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、(メタ)アクリル酸-3-ヒドロキシ-2,6,6-トリメチル-ビシクロ[3.1.1]ヘプチル、(メタ)アクリル酸-3,7,7-トリメチル-4-ヒドロキシ-ビシクロ[4.1.0]ヘプチル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェンチル、(メタ)アクリル酸-2,2,5-トリメチルシクロヘキシル及び(メタ)アクリル酸シクロヘキシルが挙げられる。中でも、側鎖に脂環構造を有する基を含有するモノマーは、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸フェンチル、(メタ)アクリル酸1-メンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカンが好ましく、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸-2-アダマンチル又は(メタ)アクリル酸トリシクロデカンが特に好ましい。
【0086】
感光性樹脂層は、重合体Aを、1種単独で含有してもよいし、2種以上含有してもよい。重合体Aを2種以上含む場合には、感光性樹脂層は、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を含む重合体Aを2種含むことが好ましい。また、感光性樹脂層は、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を含む重合体A1と、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を含まない重合体A2と、を含むことが好ましい。後者の場合、重合体A1の含有量は、重合体Aの全質量を基準として、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0087】
重合体Aの合成は、上記の一又は複数の単量体を、アセトン、メチルエチルケトン、イソプロパノール等の溶剤で希釈した溶液に、過酸化ベンゾイル、アゾイソブチロニトリル等のラジカル重合開始剤を適量添加し、加熱しながら攪拌することにより行われることが好ましい。反応終了後、さらに溶剤を加えて、所望の濃度に調整してもよい。重合方法としては、溶液重合以外に、塊状重合、懸濁重合、及び乳化重合が挙げられる。
【0088】
重合体Aのガラス転移温度Tgは、30℃~135℃であることが好ましい。感光性樹脂層に、135℃以下のTgを有する重合体Aを含有させることによって、露光時の焦点位置がずれたときの線幅太り、及び、解像度の低下を抑制することができる。重合体AのTgは、130℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることがさらに好ましく、110℃以下であることが特に好ましい。また、感光性樹脂層に、30℃以上のTgを有する重合体Aを含有させることは、耐エッジフューズ性を向上させる観点から好ましい。重合体AのTgは、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましく、60℃以上であることが特に好ましく、70℃以上であることが最も好ましい。
【0089】
重合体Aの含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、10質量%~90質量%の範囲であることが好ましく、30質量%~70質量%であることがより好ましく、40質量%~60質量%であることがさらに好ましい。感光性樹脂層の全質量に対する重合体Aの含有量が90質量%以下であると、現像時間を制御することができるため好ましい。一方、感光性樹脂層の全質量に対する重合体Aの含有量が10質量%以上であると、耐エッジフューズ性が向上するため好ましい。
【0090】
(重合性化合物B)
感光性樹脂層は、重合性基を有する重合性化合物Bを含有する。
本明細書において「重合性化合物」とは、後述する重合開始剤の作用を受けて重合する化合物であって、上述した重合体Aとは異なる化合物を意味する。
【0091】
重合性化合物Bが有する重合性基としては、重合反応に関与する基であれば特に制限されず、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、マレイミド基等のエチレン性不飽和基;及び、エポキシ基、オキセタン基等のカチオン重合性基が挙げられる。
【0092】
重合性基は、エチレン性不飽和基であることが好ましく、アクリロイル基又はメタアクリロイル基であることがより好ましい。
【0093】
重合性化合物Bとしては、感光性樹脂層の感光性がより優れる点で、1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(すなわち、エチレン性不飽和化合物)が好ましく、一分子中に2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(すなわち、多官能エチレン性不飽和化合物)がより好ましい。
【0094】
また、解像性及び剥離性により優れる点で、エチレン性不飽和化合物が一分子中に有するエチレン性不飽和基の数は、6つ以下が好ましく、3つ以下がより好ましく、2つ以下がさらに好ましい。
【0095】
感光性樹脂層は、感光性樹脂層の感光性と、解像性及び剥離性とのバランスがより優れる点で、一分子中に2つのエチレン性不飽和基を有する2官能エチレン性不飽和化合物、又は3つのエチレン性不飽和基を有する3官能エチレン性不飽和化合物を含有することが好ましく、2官能エチレン性不飽和化合物を含有することがより好ましい。
【0096】
2官能エチレン性不飽和化合物の含有量は、剥離性に優れる点から、重合性化合物Bの全質量に対して60質量%以上が好ましく、70質量%超がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。2官能エチレン性不飽和化合物の含有量の上限値は特に制限されず、100質量%であってもよい。すなわち、感光性樹脂層に含まれる重合性化合物Bが全て2官能エチレン性不飽和化合物であってもよい。
【0097】
また、エチレン性不飽和化合物は、(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0098】
-重合性化合物B1-
感光性樹脂層は、一分子中に少なくとも1つの芳香環を有し、かつ、2つのエチレン性不飽和基を有する重合性化合物B1を含有することが好ましい。
【0099】
感光性樹脂層中、重合性化合物B1の含有量は、解像性がより優れる点から、重合性化合物Bの全質量に対して、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることがさらに好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。重合性化合物B1の含有量の上限値は特に制限されない。重合性化合物B1の含有量は、剥離性の点から、重合性化合物Bの全質量に対して、99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下がさらに好ましく、85質量%以下が特に好ましい。
【0100】
重合性化合物B1が有する芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環等の芳香族炭化水素環;チオフェン環、フラン環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環等の芳香族複素環;及びこれらの縮合環が挙げられる。重合性化合物B1が有する芳香環は、芳香族炭化水素環であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。なお、上記芳香環は、置換基を有していてもよい。
【0101】
重合性化合物B1は、現像液による感光性樹脂層の膨潤を抑制して、解像性を向上させる観点から、ビスフェノール骨格を有することが好ましい。
【0102】
ビスフェノール骨格としては、例えば、ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)に由来するビスフェノールA骨格、ビスフェノールF(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン)に由来するビスフェノールF骨格、及び、ビスフェノールB(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン)に由来するビスフェノールB骨格が挙げられる。中でも、ビスフェノール骨格は、ビスフェノールA骨格であることが好ましい。
【0103】
ビスフェノール骨格を有する重合性化合物B1としては、例えば、ビスフェノール骨格と、ビスフェノール骨格の両端に結合した2つの重合性基(好ましくは(メタ)アクリロイル基)とを有する化合物が挙げられる。
【0104】
ビスフェノール骨格と重合性基とは、直接結合してもよく、1つ以上のアルキレンオキシ基を介して結合してもよい。ビスフェノール骨格と結合するアルキレンオキシ基は、エチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基であることが好ましく、エチレンオキシ基であることがより好ましい。ビスフェノール骨格と結合するアルキレンオキシ基の付加数は特に制限されない。アルキレンオキシ基の付加数は1分子あたり4個~16個が好ましく、6個~14個がより好ましい。
【0105】
ビスフェノール骨格を有する重合性化合物B1については、特開2016-224162号公報の段落0072~0080に記載されており、この公報に記載の内容は本明細書に組み込まれる。
【0106】
重合性化合物B1は、ビスフェノールA骨格を有する2官能エチレン性不飽和化合物であることが好ましく、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリアルコキシ)フェニル)プロパンであることがより好ましい。
【0107】
2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリアルコキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2-ビス(4-(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(FA-324M、日立化成社製)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシエトキシプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン(BPE-500、新中村化学工業社製)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシドデカエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン(FA-3200MY、日立化成社製)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン(BPE-1300、新中村化学工業社製)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(BPE-200、新中村化学工業社製)、及び、エトキシ化(10)ビスフェノールAジアクリレート(NKエステルA-BPE-10、新中村化学工業社製)が挙げられる。
【0108】
重合性化合物B1としては、下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
【化1】
式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、AはC
2H
4であり、BはC
3H
6であり、n1及びn3はそれぞれ独立に1~39の整数であり、かつn1+n3は2~40の整数であり、n2及びn4はそれぞれ独立に0~29の整数であり、かつn2+n4は0~30の整数であり、-(A-O)-及び-(B-O)-の繰り返し単位の配列は、ランダムであってもブロックであってもよい。ブロックの場合、-(A-O)-と-(B-O)-のいずれがビスフェニル基側であってもよい。
【0109】
n1+n2+n3+n4は、2~20であることが好ましく、2~16であることがより好ましく、4~12であることがさらに好ましい。また、n2+n4は、0~10であることが好ましく、0~4であることがより好ましく、0~2であることがさらに好ましく、0であることが特に好ましい。
【0110】
感光性樹脂層は、重合性化合物B1を、1種単独で含有してもよいし、2種以上含有してもよい。
【0111】
重合性化合物B1の含有量は、解像性がより優れる点から、感光性樹脂層の全質量に対して、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。重合性化合物B1の含有量の上限値は特に制限されない。重合性化合物B1の含有量は、転写性及び耐エッジフューズ性を向上させる観点から、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
【0112】
感光性樹脂層は、重合性化合物B1以外の重合性化合物Bを含有してもよい。
重合性化合物B1以外の重合性化合物Bは、特に制限されず、公知の化合物の中から適宜選択できる。例えば、重合性化合物B1以外の重合性化合物Bとしては、一分子中に1つのエチレン性不飽和基を有する化合物(すなわち、単官能エチレン性不飽和化合物)、芳香環を有さない2官能エチレン性不飽和化合物、及び、3官能以上のエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
【0113】
単官能エチレン性不飽和化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及び、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0114】
芳香環を有さない2官能エチレン性不飽和化合物としては、例えば、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、及び、トリメチロールプロパンジアクリレートが挙げられる。
【0115】
アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(A-DCP、新中村化学工業社製)、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(DCP、新中村化学工業社製)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(A-NOD-N、新中村化学工業社製)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(A-HD-N、新中村化学工業社製)、エチレングリコールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、及び、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0116】
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、及び、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0117】
ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、プロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、並びに、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。市販品としては、例えば、8UX-015A(大成ファインケミカル社製)、UA-32P(新中村化学工業社製)、及び、UA-1100H(新中村化学工業社製)が挙げられる。
【0118】
3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、例えば、ジペンタエリスリトール(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、並びに、これらのアルキレンオキサイド変性物が挙げられる。
【0119】
ここで、「(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、及びヘキサ(メタ)アクリレートを包含する概念であり、「(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート及びテトラ(メタ)アクリレートを包含する概念である。
【0120】
感光性樹脂層は、重合性化合物B1及び3官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、重合性化合物B1及び2種以上の3官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことがより好ましい。この場合、重合性化合物B1と3官能以上のエチレン性不飽和化合物との質量比(重合性化合物B1の全質量:3官能以上のエチレン性不飽和化合物の全質量)は1:1~5:1が好ましく、1.2:1~4:1がより好ましく、1.5:1~3:1がさらに好ましい。
【0121】
3官能以上のエチレン性不飽和化合物のアルキレンオキサイド変性物としては、例えば、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート化合物(KAYARAD(登録商標)DPCA-20、日本化薬社製;A-9300-1CL、新中村化学工業社製)、アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化合物(KAYARAD RP-1040、日本化薬社製;ATM-35E及びA-9300、新中村化学工業社製;EBECRYL(登録商標)135、ダイセル・オルネクス社製)、エトキシ化グリセリントリアクリレート(A-GLY-9E、新中村化学工業社製)、アロニックス(登録商標)TO-2349(東亞合成社製)、アロニックスM-520(東亞合成社製)、及び、アロニックスM-510(東亞合成社製)が挙げられる。
【0122】
また、重合性化合物B1以外の重合性化合物Bは、特開2004-239942号公報の段落0025~0030に記載の酸基を有する重合性化合物であってもよい。
【0123】
感光性樹脂層は、重合性化合物Bを、1種単独で含有してもよいし、2種以上含有してもよい。
【0124】
重合性化合物Bの含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、10質量%~70質量%が好ましく、20質量%~60質量%がより好ましく、20質量%~50質量%がさらに好ましい。
【0125】
重合性化合物B1を含む重合性化合物Bの重量平均分子量(Mw)は、200~3,000が好ましく、280~2,200がより好ましく、300~2,200がさらに好ましい。
【0126】
(任意成分)
感光性樹脂層は、重合体A及び重合性化合物B以外の成分を含有してもよい。
【0127】
-光重合開始剤-
感光性樹脂層は、光重合開始剤を含有することが好ましい。
【0128】
光重合開始剤は、紫外線、可視光線、X線等の活性光線によって、重合性化合物の重合を開始させる作用を有する化合物である。光重合開始剤としては、特に制限されず、公知の光重合開始剤を用いることができる。
【0129】
光重合開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤が挙げられる。中でも、光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0130】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、オキシムエステル骨格を有する光重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン骨格を有する光重合開始剤、α-ヒドロキシアルキルフェノン骨格を有する光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド骨格を有する光重合開始剤、及び、N-フェニルグリシン骨格を有する光重合開始剤が挙げられる。
【0131】
また、感光性樹脂層は、感光性、露光部及び非露光部の視認性、並びに、解像性の観点から、光ラジカル重合開始剤として、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。なお、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体及びその誘導体における2つの2,4,5-トリアリールイミダゾール骨格は、同一であっても異なっていてもよい。
2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体の誘導体としては、例えば、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、及び、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体が挙げられる。
【0132】
光ラジカル重合開始剤は、特開2011-95716号公報の段落0031~0042、及び、特開2015-14783号公報の段落0064~0081に記載の重合開始剤であってもよい。
【0133】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジメチルアミノ安息香酸エチル(DBE、CAS No.10287-53-3)、ベンゾインメチルエーテル、アニシル(p,p’-ジメトキシベンジル)、及びベンゾフェノンが挙げられる。
【0134】
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(4-メチルフェニル)エテニル]-1,3,5-トリアジン(商品名:TAZ-110、みどり化学社製)、(商品名:TAZ-111、みどり化学社製)、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール(東京化成工業社製)、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:Irgacure(登録商標)OXE-01、BASFジャパン社製)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチルオキシム)(商品名:Irgacure OXE-02、BASFジャパン社製)、Irgacure OXE-03(BASFジャパン社製)、OXE-04(BASFジャパン社製)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン(商品名:Omnirad 379EG、IGM Resins B.V.社製)、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 907、IGM Resins B.V.製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 127、IGM Resins B.V.製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン-1(商品名:Omnirad 369、IGM Resins B.V.社製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 1173、IGM Resins B.V.製)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:Omnirad 184、IGM Resins B.V.社製)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名:Omnirad 651、IGM Resins B.V.社製)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド(商品名:Omnirad TPO H、IGM Resins B.V.製)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(商品名:Omnirad 819、IGM Resins B.V.製)、オキシムエステル系の光重合開始剤(商品名:Lunar 6、DKSHジャパン(株)製)、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビスイミダゾール(2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体)(商品名:B-CIM、Hampford社製)、及び、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体(商品名:BCTB、東京化成工業社製)が挙げられる。
【0135】
光カチオン重合開始剤(光酸発生剤)は、活性光線を受けて酸を発生する化合物である。光カチオン重合開始剤は、特に制限されないが、波長300nm以上、好ましくは波長300nm~450nmの活性光線に感応し、酸を発生する化合物であることが好ましい。また、波長300nm以上の活性光線に直接感応しない化合物であっても、増感剤と併用することによって波長300nm以上の活性光線に感応し、酸を発生する化合物であれば、増感剤と組み合わせて好ましく用いることができる。
【0136】
光カチオン重合開始剤は、pKaが4以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤が好ましく、pKaが3以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤がより好ましく、pKaが2以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤が特に好ましい。pKaの下限値は特に制限されず、例えば、-10.0が好ましい。
【0137】
光カチオン重合開始剤としては、イオン性光カチオン重合開始剤及び非イオン性光カチオン重合開始剤が挙げられる。
【0138】
イオン性光カチオン重合開始剤として、例えば、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等のオニウム塩化合物、及び、第4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0139】
イオン性光カチオン重合開始剤は、特開2014-85643号公報の段落0114~0133に記載のイオン性光カチオン重合開始剤であってもよい。
【0140】
非イオン性光カチオン重合開始剤としては、例えば、トリクロロメチル-s-トリアジン化合物、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、及び、オキシムスルホネート化合物が挙げられる。トリクロロメチル-s-トリアジン化合物、ジアゾメタン化合物及びイミドスルホネート化合物は、特開2011-221494号公報の段落0083~0088に記載の化合物であってもよい。また、オキシムスルホネート化合物は、国際公開第2018/179640号の段落0084~0088に記載の化合物であってもよい。
【0141】
感光性樹脂層は、光重合開始剤を、1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
【0142】
光重合開始剤の含有量は、特に制限されないが、感光性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上がさらに好ましい。光重合開始剤の含有量の上限値は特に制限されない。光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0143】
-色素-
感光性樹脂層は、露光部及び非露光部の視認性、現像後のパターン視認性、並びに、解像性の観点から、発色時の波長範囲400nm~780nmにおける最大吸収波長が450nm以上であり、かつ、酸、塩基、又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素(以下、単に「色素N」ともいう。)を含有することが好ましい。色素Nを含有すると、詳細なメカニズムは不明であるが、隣接する層(例えば仮支持体及び中間層)との密着性が向上し、解像性により優れる。
【0144】
本明細書において、色素が「酸、塩基又はラジカルにより極大吸収波長が変化する」とは、発色状態にある色素が酸、塩基又はラジカルにより消色する態様、消色状態にある色素が酸、塩基又はラジカルにより発色する態様、及び、発色状態にある色素が他の色相の発色状態に変化する態様のいずれの態様を意味してもよい。
【0145】
具体的には、色素Nは、露光により消色状態から変化して発色する化合物であってもよく、露光により発色状態から変化して消色する化合物であってもよい。この場合、露光により酸、塩基又はラジカルが感光性樹脂層内で発生することにより、発色又は消色の状態が変化する色素であってもよく、酸、塩基又はラジカルにより感光性樹脂層内の状態(例えばpH)が変化することで発色又は消色の状態が変化する色素であってもよい。また、色素Nは、露光を受けず、酸、塩基又はラジカルを刺激として直接受けて発色又は消色の状態が変化する色素でもよい。
【0146】
中でも、露光部及び非露光部の視認性、並びに解像性の観点から、色素Nは、酸又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素が好ましく、ラジカルにより最大吸収波長が変化する色素がより好ましい。
【0147】
感光性樹脂層は、露光部及び非露光部の視認性、並びに解像性の観点から、色素Nとしてラジカルにより最大吸収波長が変化する色素、及び、光ラジカル重合開始剤の両者を含有することが好ましい。
【0148】
また、露光部及び非露光部の視認性の観点から、色素Nは、酸、塩基、又はラジカルにより発色する色素であることが好ましい。
【0149】
色素Nの発色機構の例としては、感光性樹脂層に光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤(光酸発生剤)又は光塩基発生剤を添加して、露光後に光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤又は光塩基発生剤から発生するラジカル、酸又は塩基によって発色する態様が挙げられる。
【0150】
色素Nは、露光部及び非露光部の視認性の観点から、発色時の波長範囲400nm~780nmにおける極大吸収波長が、550nm以上であることが好ましく、550~700nmであることがより好ましく、550nm~650nmであることがさらに好ましい。
【0151】
また、色素Nは、発色時の波長範囲400nm~780nmにおける極大吸収波長を1つのみ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。色素Nが発色時の波長範囲400~780nmにおける極大吸収波長を2つ以上有する場合は、2つ以上の極大吸収波長のうち吸光度が最も高い極大吸収波長が450nm以上であればよい。
【0152】
色素Nの極大吸収波長は、大気雰囲気下で、分光光度計(UV3100、島津製作所製)を用いて、400nm~780nmの範囲で色素Nを含有する溶液(液温25℃)の透過スペクトルを測定し、光の強度が極小となる波長(すなわち、極大吸収波長)を検出することにより得られる。
【0153】
露光により発色又は消色する色素としては、例えば、ロイコ化合物が挙げられる。露光により消色する色素としては、例えば、ロイコ化合物、ジアリールメタン系色素、オキザジン系色素、キサンテン系色素、イミノナフトキノン系色素、アゾメチン系色素及びアントラキノン系色素が挙げられる。中でも、色素Nは、露光部及び非露光部の視認性の観点から、ロイコ化合物であることが好ましい。
【0154】
ロイコ化合物としては、例えば、トリアリールメタン骨格を有するロイコ化合物(トリアリールメタン系色素)、スピロピラン骨格を有するロイコ化合物(スピロピラン系色素)、フルオラン骨格を有するロイコ化合物(フルオラン系色素)、ジアリールメタン骨格を有するロイコ化合物(ジアリールメタン系色素)、ローダミンラクタム骨格を有するロイコ化合物(ローダミンラクタム系色素)、インドリルフタリド骨格を有するロイコ化合物(インドリルフタリド系色素)、及び、ロイコオーラミン骨格を有するロイコ化合物(ロイコオーラミン系色素)が挙げられる。
【0155】
中でも、ロイコ化合物は、トリアリールメタン系色素又はフルオラン系色素であることが好ましく、トリフェニルメタン骨格を有するロイコ化合物(トリフェニルメタン系色素)又はフルオラン系色素がより好ましい。
【0156】
ロイコ化合物は、露光部及び非露光部の視認性の観点から、ラクトン環、スルチン環又はスルトン環を有することが好ましい。ロイコ化合物が有するラクトン環、スルチン環又はスルトン環は、光ラジカル重合開始剤から発生するラジカル又は光カチオン重合開始剤から発生する酸と反応することにより、閉環状態から開環状態へ変化して発色するか、又は、開環状態から閉環状態へ変化して消色する。ロイコ化合物は、ラクトン環、スルチン環又はスルトン環を有し、ラジカル又は酸により開環して発色する化合物が好ましく、ラクトン環を有し、ラジカル又は酸により開環して発色する化合物がより好ましい。
【0157】
色素Nとしては、例えば、以下の染料及びロイコ化合物が挙げられる。
染料としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーレッド、ベンゾプルプリン4B、α-ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイトグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルー-ナフタレンスルホン酸塩、ビクトリアピュアブルーBOH(保土谷化学工業社製)、オイルブルー#603(オリヱント化学工業社製)、オイルピンク#312(オリヱント化学工業社製)、オイルレッド5B(オリヱント化学工業社製)、オイルスカーレット#308(オリヱント化学工業社製)、オイルレッドOG(オリヱント化学工業社製)、オイルレッドRR(オリヱント化学工業社製)、オイルグリーン#502(オリヱント化学工業社製)、スピロンレッドBEHスペシャル(保土谷化学工業社製)、m-クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4-p-ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2-カルボキシアニリノ-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2-カルボキシステアリルアミノ-4-p-N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノ-フェニルイミノナフトキノン、1-フェニル-3-メチル-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノ-5-ピラゾロン、及び、1-β-ナフチル-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノ-5-ピラゾロンが挙げられる。
【0158】
ロイコ化合物としては、p,p’,p”-ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、Pergascript Blue SRB(チバガイギー社製)、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、2-(N-フェニル-N-メチルアミノ)-6-(N-p-トリル-N-エチル)アミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-(N-エチル-p-トルイジノ)フルオラン、3,6-ジメトキシフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-5-メチル-7-(N,N-ジベンジルアミノ)フルオラン、3-(N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メチル-7-キシリジノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メトキシ-7-アミノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7-(4-クロロアニリノ)フルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7-クロロフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7-ベンジルアミノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7,8-ベンゾフロオラン、3-(N,N-ジブチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジブチルアミノ)-6-メチル-7-キシリジノフルオラン、3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3,3-ビス(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-フタリド、3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、及び、3’,6’-ビス(ジフェニルアミノ)スピロイソベンゾフラン-1(3H),9’-[9H]キサンテン-3-オンが挙げられる。
【0159】
色素Nは、露光部及び非露光部の視認性、現像後のパターン視認性、並びに、解像性の観点から、ラジカルにより最大吸収波長が変化する色素であることが好ましく、ラジカルにより発色する色素であることがより好ましい。
【0160】
色素Nは、ロイコクリスタルバイオレット、クリスタルバイオレットラクトン、ブリリアントグリーン、又は、ビクトリアピュアブルー-ナフタレンスルホン酸塩であることが好ましい。
【0161】
感光性樹脂層は、色素Nを、1種単独で含有してもよいし、2種以上含有してもよい。
【0162】
色素Nの含有量は、露光部及び非露光部の視認性、現像後のパターン視認性、並びに、解像性の観点から、感光性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.1質量%~10質量%がより好ましく、0.1質量%~5質量%がさらに好ましく、0.1質量%~1質量%が特に好ましい。
【0163】
色素Nの含有量は、感光性樹脂層に含まれる色素Nの全てを発色状態にした場合の色素の含有量を意味する。以下に、ラジカルにより発色する色素を例として、色素Nの含有量の定量方法について説明する。
【0164】
メチルエチルケトン100mLに、色素0.001g及び0.01g溶解させた溶液を調製する。得られた各溶液に、光ラジカル重合開始剤(Irgacure OXE01、BASFジャパン社製)を加え、365nmの光を照射することによりラジカルを発生させ、全ての色素を発色状態にする。その後、大気雰囲気下で、分光光度計(UV3100、島津製作所製)を用いて、液温が25℃である各溶液の吸光度を測定し、検量線を作成する。
【0165】
次に、色素に代えて感光性樹脂層3gをメチルエチルケトンに溶解させること以外は上記と同様の方法で、色素を全て発色させた溶液の吸光度を測定する。得られた感光性樹脂層を含有する溶液の吸光度から、検量線に基づいて感光性樹脂層に含まれる色素の含有量を算出する。
【0166】
<熱架橋性化合物>
感光性樹脂層は、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、熱架橋性化合物を含むことが好ましい。なお、本明細書においては、後述するエチレン性不飽和基を有する熱架橋性化合物は、エチレン性不飽和化合物としては扱わず、熱架橋性化合物として扱うものとする。
熱架橋性化合物としては、メチロール化合物、及びブロックイソシアネート化合物が挙げられる。中でも、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、ブロックイソシアネート化合物が好ましい。
ブロックイソシアネート化合物は、ヒドロキシ基及びカルボキシ基と反応するため、例えば、アルカリ可溶性樹脂及び/又はエチレン性不飽和化合物等が、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有する場合には、形成される膜の親水性が下がり、感光性樹脂層を硬化した膜を保護膜として使用する場合の機能が強化される傾向がある。
なお、ブロックイソシアネート化合物とは、「イソシアネートのイソシアネート基をブロック剤で保護(いわゆる、マスク)した構造を有する化合物」を指す。
【0167】
ブロックイソシアネート化合物の解離温度は、特に制限されないが、100℃~160℃が好ましく、130℃~150℃がより好ましい。
ブロックイソシアネートの解離温度とは、「示差走査熱量計を用いて、DSC(Differential scanning calorimetry)分析にて測定した場合における、ブロックイソシアネートの脱保護反応に伴う吸熱ピークの温度」を意味する。
示差走査熱量計としては、例えば、セイコーインスツルメンツ(株)製の示差走査熱量計(型式:DSC6200)を好適に使用できる。但し、示差走査熱量計は、これに限定されない。
【0168】
解離温度が100℃~160℃であるブロック剤としては、活性メチレン化合物〔マロン酸ジエステル(マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジ2-エチルヘキシル等)〕、オキシム化合物(ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、及びシクロヘキサノンオキシム等の分子内に-C(=N-OH)-で表される構造を有する化合物)が挙げられる。
これらの中でも、解離温度が100℃~160℃であるブロック剤としては、例えば、保存安定性の観点から、オキシム化合物を含むことが好ましい。
【0169】
ブロックイソシアネート化合物は、例えば、膜の脆性改良、被転写体との密着力向上等の観点から、イソシアヌレート構造を有することが好ましい。
イソシアヌレート構造を有するブロックイソシアネート化合物は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートをイソシアヌレート化して保護することにより得られる。
イソシアヌレート構造を有するブロックイソシアネート化合物の中でも、オキシム化合物をブロック剤として用いたオキシム構造を有する化合物が、オキシム構造を有さない化合物よりも解離温度を好ましい範囲にしやすく、且つ、現像残渣を少なくしやすいという観点から好ましい。
【0170】
ブロックイソシアネート化合物は、重合性基を有していてもよい。
重合性基としては、特に制限はなく、公知の重合性基を用いることができ、ラジカル重合性基が好ましい。
重合性基としては、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、スチリル基等のエチレン性不飽和基、並びに、グリシジル基等のエポキシ基を有する基が挙げられる。
中でも、重合性基としては、エチレン性不飽和基が好ましく、(メタ)アクリロキシ基がより好ましく、アクリロキシ基がさらに好ましい。
【0171】
ブロックイソシアネート化合物としては、市販品を使用できる。
ブロックイソシアネート化合物の市販品の例としては、カレンズ(登録商標) AOI-BM、カレンズ(登録商標) MOI-BM、カレンズ(登録商標) MOI-BP等(以上、昭和電工(株)製)、ブロック型のデュラネートシリーズ(例えば、デュラネート(登録商標) TPA-B80E、デュラネート(登録商標) WT32-B75P等、旭化成ケミカルズ(株)製)が挙げられる。
また、ブロックイソシアネート化合物として、下記の構造の化合物を用いることもできる。
【0172】
【0173】
熱架橋性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
感光性樹脂層が熱架橋性化合物を含む場合、熱架橋性化合物の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、1質量%~50質量%が好ましく、5質量%~30質量%がより好ましい。
【0174】
<界面活性剤>
感光性樹脂層は、厚さ均一性の観点から、界面活性剤を含有することが好ましい。
【0175】
界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及び、両性界面活性剤が挙げられる。中でも、界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤であることが好ましい。
【0176】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレングリコールの高級脂肪酸ジエステル、シリコーン系ノニオン性界面活性剤、及び、フッ素系ノニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0177】
感光性樹脂層は、解像性を向上させる観点から、フッ素系ノニオン性界面活性剤を含有することが好ましい。感光性樹脂層がフッ素系ノニオン性界面活性剤を含有することにより、エッチング液の感光性樹脂層への浸透が抑制され、サイドエッチングが低減するためであると考えられる。
【0178】
界面活性剤は、国際公開第2018/179640号の段落0120~0125に記載の界面活性剤、特許第4502784号公報の段落0017に記載の界面活性剤、及び、特開2009-237362号公報の段落0060~0071に記載の界面活性剤であってもよい。
【0179】
フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファック(商品名)F-171、F-172、F-173、F-176、F-177、F-141、F-142、F-143、F-144、F-437、F-444、F-475、F-477、F-479、F-482、F-551-A、F-552、F-554、F-555-A、F-556、F-557、F-558、F-559、F-560、F-561、F-565、F-563、F-568、F-575、F-780、EXP、MFS-330、MFS-578、MFS-579、MFS-586、MFS-587、R-41、R-41-LM、R-01、R-40、R-40-LM、RS-43、TF-1956、RS-90、R-94、RS-72-K、DS-21(以上、DIC(株)製)、フロラード(商品名)FC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロン(商品名)S-382、SC-101、SC-103、SC-104、SC-105、SC-1068、SC-381、SC-383、S-393、KH-40(以上、AGC(株)製)、PolyFox(商品名)PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)、フタージェント(商品名)710FL、710FM、610FM、601AD、601ADH2、602A、215M、245F、251、212M、250、209F、222F、208G、710LA、710FS、730LM、650AC、681、683(以上、(株)ネオス製)等が挙げられる。
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造を有し、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファック(商品名)DSシリーズ(化学工業日報(2016年2月22日)、日経産業新聞(2016年2月23日))、例えばメガファック(商品名)DS-21が挙げられる。
【0180】
また、フッ素系界面活性剤としては、フッ素化アルキル基又はフッ素化アルキレンエーテル基を有するフッ素原子含有ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との重合体を用いることも好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、ブロックポリマーを用いることもできる。フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができる。
フッ素系界面活性剤としては、エチレン性不飽和基を側鎖に有する含フッ素重合体を用いることもできる。メガファック(商品名)RS-101、RS-102、RS-718K、RS-72-K(以上、DIC(株)製)等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤として、例えば、炭素数が7以上の直鎖状パーフルオロアルキル基を有する化合物が使用されてもよい。ただし、環境適性向上の観点から、フッ素系界面活性剤として、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)又はペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)の代替材料が使用されることが好ましい。
【0181】
ノニオン性界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニック(商品名)L10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(以上、BASF社製)、テトロニック(商品名)304、701、704、901、904、150R1(以上、BASF社製)、ソルスパース(商品名)20000(以上、日本ルーブリゾール(株)製)、NCW-101、NCW-1001、NCW-1002(以上、富士フイルム和光純薬(株)製)、パイオニン(商品名)D-6112、D-6112-W、D-6315(以上、竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(以上、日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0182】
シリコーン系界面活性剤としては、シロキサン結合からなる直鎖状ポリマー、及び、側鎖や末端に有機基を導入した変性シロキサンポリマーが挙げられる。
シリコーン系界面活性剤の具体例としては、DOWSIL(商品名)8032 ADDITIVE、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)並びに、X-22-4952、X-22-4272、X-22-6266、KF-351A、K354L、KF-355A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、X-22-6191、X-22-4515、KF-6004、KP-341、KF-6001、KF-6002(以上、信越化学工業(株)製)、F-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460、TSF-4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、BYK307、BYK323、BYK330(以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0183】
感光性樹脂層は、界面活性剤を、1種単独で含有してもよいし、2種以上含有してもよい。
【0184】
界面活性剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.01質量%~3質量%がより好ましい。
【0185】
-添加剤-
感光性樹脂層は、上記成分以外に、必要に応じて公知の添加剤を含有してもよい。
【0186】
添加剤としては、例えば、ラジカル重合禁止剤、増感剤、可塑剤、ヘテロ環状化合物、ベンゾトリアゾール類、カルボキシベンゾトリアゾール類、重合体A以外の樹脂、及び、溶剤が挙げられる。感光性樹脂層は、各添加剤を1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
【0187】
感光性樹脂層は、ラジカル重合禁止剤を含有してもよい。
【0188】
ラジカル重合禁止剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落0018に記載の熱重合防止剤が挙げられる。また、ラジカル重合禁止剤としては、フェノチアジン、フェノキサジン、4-メトキシフェノール、ナフチルアミン、塩化第一銅、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、及び、ジフェニルニトロソアミンが挙げられる。中でも、ラジカル重合禁止剤は、フェノチアジン、フェノキサジン、4-メトキシフェノール又はニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩であることが好ましい。
【0189】
ベンゾトリアゾール類としては、例えば、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-クロロ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、ビス(N-2-エチルヘキシル)アミノメチレン-1,2,3-ベンゾトリアゾール、ビス(N-2-エチルヘキシル)アミノメチレン-1,2,3-トリルトリアゾール、及び、ビス(N-2-ヒドロキシエチル)アミノメチレン-1,2,3-ベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0190】
カルボキシベンゾトリアゾール類としては、例えば、4-カルボキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、5-カルボキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、N-(N,N-ジ-2-エチルヘキシル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N-(N,N-ジ-2-ヒドロキシエチル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、及び、N-(N,N-ジ-2-エチルヘキシル)アミノエチレンカルボキシベンゾトリアゾールが挙げられる。カルボキシベンゾトリアゾール類の市販品としては、例えば、CBT-1(城北化学工業社製)が挙げられる。
【0191】
ラジカル重合禁止剤、ベンゾトリアゾ-ル類、及びカルボキシベンゾトリアゾ-ル類の合計含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~3質量%であることが好ましく、0.05質量%~1質量%であることがより好ましい。上記含有量が0.01質量%以上であると、感光性樹脂組成物の保存安定性が優れる。一方、上記含有量が3質量%以下であると、感度を維持し、染料の脱色を抑制することができる。
【0192】
感光性樹脂層は、増感剤を含有してもよい。
【0193】
増感剤としては、特に制限されず、公知の増感剤、染料及び顔料を用いることができる。増感剤としては、例えば、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、ピラゾリン化合物、アントラセン化合物、クマリン化合物、キサントン化合物、チオキサントン化合物、アクリドン化合物、オキサゾール化合物、ベンゾオキサゾール化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、トリアゾール化合物(例えば、1,2,4-トリアゾール)、スチルベン化合物、トリアジン化合物、チオフェン化合物、ナフタルイミド化合物、トリアリールアミン化合物、及び、アミノアクリジン化合物が挙げられる。
【0194】
感光性樹脂層は、増感剤を1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
【0195】
感光性樹脂層が増感剤を含有する場合、増感剤の含有量は、目的により適宜選択できる。増感剤の含有量は、光源に対する感度の向上、及び、重合速度と連鎖移動のバランスによる硬化速度の向上の観点から、感光性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~5質量%であることが好ましく、0.05質量%~1質量%であることがより好ましい。
【0196】
感光性樹脂層は、可塑剤及びヘテロ環状化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有してもよい。
【0197】
可塑剤及びヘテロ環状化合物としては、国際公開第2018/179640号の段落0097~0103及び0111~0118に記載の化合物が挙げられる。
【0198】
感光性樹脂層は、重合体A以外の樹脂を含有してもよい。
【0199】
重合体A以外の樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン-アクリル共重合体(ただし、スチレンに由来する構成単位の含有量が40質量%以下であるもの)、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリアセタール、ポリヒドロキシスチレン、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシロキサン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、及び、ポリアルキレングリコールが挙げられる。
【0200】
感光性樹脂層は、溶剤を含有してもよい。溶剤を含む感光性樹脂組成物を乾燥させて感光性樹脂層を形成した場合、感光性樹脂層に溶剤が残留することがある。
【0201】
また、感光性樹脂層は、金属酸化物粒子、酸化防止剤、連鎖移動剤、分散剤、酸増殖剤、現像促進剤、導電性繊維、熱ラジカル重合開始剤、熱酸発生剤、紫外線吸収剤、増粘剤、架橋剤、有機又は無機の沈殿防止剤等の公知の添加剤をさらに含有してもよい。
【0202】
感光性樹脂層が含有してもよい添加剤については特開2014-85643号公報の段落0165~0184に記載されており、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0203】
<不純物等>
感光性樹脂層は、所定量の不純物を含んでいてもよい。不純物としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、銅、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、亜鉛、スズ、ハロゲン及びこれらのイオンが挙げられる。中でも、ハロゲン化物イオン、ナトリウムイオン、及び、カリウムイオンは不純物として混入し易いため、下記の含有量にすることが好ましい。
【0204】
感光性樹脂層における不純物の含有量は、質量基準で、80ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、2ppm以下がさらに好ましい。感光性樹脂層における不純物の含有量は、質量基準で、1ppb以上又は0.1ppm以上とすることができる。
【0205】
不純物を上記範囲にする方法としては、感光性樹脂層の原料として不純物の含有量が少ないものを選択すること、感光性樹脂層の形成時に不純物の混入を防ぐこと、及び、不純物を洗浄して除去することが挙げられる。このような方法により、感光性樹脂層における不純物の含有量を上記範囲内とすることができる。
【0206】
不純物は、例えば、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法、原子吸光分光法、イオンクロマトグラフィー法等の公知の方法で定量できる。
【0207】
感光性樹脂層における、ベンゼン、ホルムアルデヒド、トリクロロエチレン、1,3-ブタジエン、四塩化炭素、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及び、ヘキサンの特定化合物の含有量は、少ないことが好ましい。感光性樹脂層における特定化合物の含有量は、質量基準で、100ppm以下が好ましく、20ppm以下がより好ましく、4ppm以下がさらに好ましい。含有量の下限値は、質量基準で、10ppbが好ましく、100ppbがより好ましい。特定化合物の含有量は、上記不純物と同様の方法で抑制できる。また、特定化合物の含有量は、公知の測定法により定量できる。
【0208】
感光性樹脂層における水の含有量は、信頼性及びラミネート性を向上させる点から、0.01質量%~1.0質量%が好ましく、0.05質量%~0.5質量%がより好ましい。
【0209】
<残存モノマー>
感光性樹脂層は、上述したアルカリ可溶性樹脂の各構成単位に対応する残存モノマーを含む場合がある。
残存モノマーの含有量は、パターニング性、及び、信頼性の点から、アルカリ可溶性樹脂全質量に対して、5,000質量ppm以下が好ましく、2,000質量ppm以下がより好ましく、500質量ppm以下がさらに好ましい。下限は特に制限されないが、1質量ppm以上が好ましく、10質量ppm以上がより好ましい。
アルカリ可溶性樹脂の各構成単位の残存モノマーは、パターニング性、及び、信頼性の点から、感光性樹脂層の全質量に対して、3,000質量ppm以下が好ましく、600質量ppm以下がより好ましく、100質量ppm以下がさらに好ましい。下限は特に制限されないが、0.1質量ppm以上が好ましく、1質量ppm以上がより好ましい。
【0210】
高分子反応でアルカリ可溶性樹脂を合成する際のモノマーの残存モノマー量も、上記範囲とすることが好ましい。例えば、カルボン酸側鎖にアクリル酸グリシジルを反応させてアルカリ可溶性樹脂を合成する場合には、アクリル酸グリシジルの含有量を上記範囲にすることが好ましい。
残存モノマーの量は、液体クロマトグラフィー、及び、ガスクロマトグラフィー等の公知の方法で測定できる。
【0211】
<物性等>
感光性樹脂層の厚さは、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることがさらに好ましい。感光性樹脂層の厚さが10μm以下であると、感光性樹脂層の現像性が向上し、解像性が向上する。感光性樹脂層の厚さの下限値は、例えば、0.5μmである。
【0212】
感光性転写材料が備える各層の厚さは、感光性転写材料の主面に対し垂直な方向の断面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)により観察し、得られた観察画像に基づいて各層の厚さを10点以上計測し、その平均値として算出される。
【0213】
密着性により優れる点から、感光性樹脂層の波長365nmの光透過率は、10%以上が好ましく、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。感光性樹脂層の波長365nmの光透過率の上限値は特に制限されないが、99.9%が好ましい。
【0214】
<形成方法>
感光性樹脂層の形成方法は、上記の成分を含有する層を形成可能な方法であれば特に制限されない。
【0215】
感光性樹脂層の形成方法としては、例えば、重合体A、重合性化合物B及び溶剤を含有する感光性樹脂組成物を調製し、仮支持体等の表面に感光性樹脂組成物を塗布し、感光性樹脂組成物の塗膜を乾燥させることにより形成する方法が挙げられる。
【0216】
感光性樹脂層の形成に使用される感光性樹脂組成物としては、例えば、重合体A、重合性化合物B、上記の任意成分及び溶剤を含有する組成物が挙げられる。
【0217】
感光性樹脂組成物は、感光性樹脂組成物の粘度を調節し、感光性樹脂層の形成を容易にするため、溶剤を含有することが好ましい。
【0218】
(溶剤)
感光性樹脂組成物に含有される溶剤としては、重合体A、重合性化合物B及び上記の任意成分を溶解又は分散可能であれば特に制限されず、公知の溶剤を使用できる。
【0219】
溶剤としては、例えば、アルキレングリコールエーテル、アルキレングリコールエーテルアセテート、アルコール(例えば、メタノール及びエタノール)、ケトン(例えば、アセトン及びメチルエチルケトン)、芳香族炭化水素(例えば、トルエン)、非プロトン性極性溶剤(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド)、環状エーテル(例えば、テトラヒドロフラン)、エステル、アミド、ラクトン、及びこれらの2種以上を含む混合溶剤が挙げられる。
【0220】
仮支持体、熱可塑性樹脂層、中間層及び感光性樹脂層を備える感光性転写材料を作製する場合、感光性樹脂組成物は、アルキレングリコールエーテル及びアルキレングリコールエーテルアセテートからなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。中でも、溶剤は、アルキレングリコールエーテル及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤からなる群より選択される少なくとも1種と、ケトン及び環状エーテルからなる群より選択される少なくとも1種とを含む混合溶剤であることがより好ましく、アルキレングリコールエーテル及びアルキレングリコールエーテルアセテートからなる群より選択される少なくとも1種、ケトン、並びに環状エーテルを少なくとも含む混合溶剤がさらに好ましい。
【0221】
アルキレングリコールエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル及びジプロピレングリコールジアルキルエーテルが挙げられる。
【0222】
アルキレングリコールエーテルアセテートとしては、例えば、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート及びジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートが挙げられる。
【0223】
溶剤は、国際公開第2018/179640号の段落0092~0094に記載の溶剤、及び、特開2018-177889公報の段落0014に記載の溶剤であってもよく、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0224】
感光性樹脂組成物は、溶剤を1種単独で含有してもよく、2種以上を含有してもよい。
感光性樹脂組成物における溶剤の含有量は、感光性樹脂組成物中の全固形分100質量部に対し、50質量部~1,900質量部が好ましく、100質量部~900質量部がより好ましい。
【0225】
感光性樹脂組成物の調製方法は特に制限されず、例えば、各成分を上記溶剤に溶解させた溶液を予め調製し、得られた溶液を所定の割合で混合することにより、感光性樹脂組成物を調製する方法が挙げられる。
【0226】
感光性樹脂組成物は、感光性樹脂層を形成する前に、孔径0.2μm~30μmのフィルターを用いてろ過することが好ましい。
【0227】
感光性樹脂組成物の塗布方法は特に制限されず、公知の方法で塗布すればよい。塗布方法としては、例えば、スリット塗布、スピン塗布、カーテン塗布及びインクジェット塗布が挙げられる。
【0228】
また、感光性樹脂層は、感光性樹脂組成物を後述するカバーフィルム上に塗布し、乾燥させることにより形成してもよい。
【0229】
〔熱可塑性樹脂層〕
本開示に係る感光性転写材料は、仮支持体と感光性樹脂層との間に、熱可塑性樹脂層を備えることが好ましい。仮支持体と感光性樹脂層との間に熱可塑性樹脂層が配置されると、基板との貼り合わせ工程における基板への追従性が向上して、基板と感光性転写材料との間の気泡の混入が抑制され、隣接する層(例えば仮支持体)との密着性が向上する。
【0230】
<成分>
(アルカリ可溶性樹脂)
熱可塑性樹脂層は、熱可塑性樹脂として、アルカリ可溶性樹脂を含有する。
なお、本明細書において、「アルカリ可溶性」とは、22℃において炭酸ナトリウムの1質量%水溶液100gへの溶解度が0.1g以上であることを意味する。
【0231】
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン、スチレン-アクリル共重合体、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリアセタール、ポリヒドロキシスチレン、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシロキサン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン及びポリアルキレングリコールが挙げられる。
【0232】
アルカリ可溶性樹脂としては、現像性及び隣接する層との密着性の観点から、アクリル樹脂が好ましい。
【0233】
ここで、アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位、及び、(メタ)アクリル酸アミドに由来する構成単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構成単位を有する樹脂を意味する。
【0234】
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位、及び、(メタ)アクリル酸アミドに由来する構成単位の合計含有量が、アクリル樹脂の全質量に対して50質量%以上であることが好ましい。
【0235】
中でも、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の合計含有量が、アクリル樹脂の全質量に対して30質量%~100質量%であることが好ましく、50質量%~100質量%であることがより好ましい。
【0236】
また、アルカリ可溶性樹脂は、酸基を有する重合体であることが好ましい。酸基としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基及びホスホン酸基が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。
【0237】
アルカリ可溶性樹脂は、現像性の観点から、酸価60mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂がより好ましく、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂がさらに好ましい。
【0238】
アルカリ可溶性樹脂の酸価の上限値は、特に制限されない。アルカリ可溶性樹脂の酸価は、200mgKOH/g以下が好ましく、150mgKOH/g以下がより好ましい。
【0239】
酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂としては、特に制限されず、公知の樹脂から適宜選択して用いることができる。
【0240】
酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂としては、例えば、特開2011-95716号公報の段落0025に記載のポリマーのうち酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂であるアルカリ可溶性樹脂、特開2010-237589号公報の段落0033~0052に記載のポリマーのうちの酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂、及び、特開2016-224162号公報の段落0053~0068に記載のバインダーポリマーのうちの酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂が挙げられる。
【0241】
上記カルボキシ基含有アクリル樹脂におけるカルボキシ基を有する構成単位の含有量は、アクリル樹脂の全質量に対して、5質量%~50質量%が好ましく、10質量%~40質量%がより好ましく、12質量%~30質量%がさらに好ましい。
【0242】
アルカリ可溶性樹脂は、現像性及び隣接する層との密着性の観点から、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有するアクリル樹脂が特に好ましい。
【0243】
アルカリ可溶性樹脂は、反応性基を有していてもよい。反応性基としては、付加重合可能な基であればよく、エチレン性不飽和基;ヒドロキシ基、カルボキシ基等の重縮合性基;エポキシ基、(ブロック)イソシアネート基等の重付加反応性基が挙げられる。
【0244】
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上が好ましく、1万~10万がより好ましく、2万~5万がさらに好ましい。
【0245】
熱可塑性樹脂層は、アルカリ可溶性樹脂を1種単独で含有してもよく、2種以上を含有してもよい。
アルカリ可溶性樹脂の含有量は、現像性及び隣接する層との密着性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、10質量%~99質量%が好ましく、20質量%~90質量%がより好ましく、40質量%~80質量%がさらに好ましく、50質量%~70質量%が特に好ましい。
【0246】
(色素)
熱可塑性樹脂層は、発色時の波長範囲400nm~780nmにおける最大吸収波長が450nm以上であり、酸、塩基、又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素(単に「色素B」ともいう。)を含有することが好ましい。色素Bの好ましい態様は、後述する点以外は、色素Nの好ましい態様と同様である。
【0247】
色素Bは、露光部及び非露光部の視認性並びに解像性の観点から、酸又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素が好ましく、酸により最大吸収波長が変化する色素であることがより好ましい。
【0248】
熱可塑性層は、露光部及び非露光部の視認性並びに解像性の観点から、色素Bとしての酸により最大吸収波長が変化する色素、及び、後述する光により酸を発生する化合物の両者を含有することが好ましい。
【0249】
熱可塑性樹脂層は、色素Bを、1種単独で含有してもよいし、2種以上含有してもよい。
【0250】
色素Bの含有量は、露光部及び非露光部の視認性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、0.2質量%以上が好ましく、0.2質量%~6質量%がより好ましく、0.2質量%~5質量%がさらに好ましく、0.25質量%~3.0質量%が特に好ましい。
【0251】
ここで、色素Bの含有量は、熱可塑性樹脂層に含まれる色素Bの全てを発色状態にした場合の色素の含有量を意味する。以下に、ラジカルにより発色する色素を例に、色素Bの含有量の定量方法を説明する。
【0252】
メチルエチルケトン100mLに、色素0.001g及び0.01gを溶解させた溶液を調製する。得られた各溶液に、光ラジカル重合開始剤(Irgacure OXE01、BASFジャパン社製)を加え、365nmの光を照射することによりラジカルを発生させ、全ての色素を発色状態にする。その後、大気雰囲気下で、分光光度計(UV3100、島津製作所製)を用いて、液温が25℃である各溶液の吸光度を測定し、検量線を作成する。
【0253】
次に、色素に代えて熱可塑性樹脂層0.1gをメチルエチルケトンに溶解させること以外は上記と同様の方法で、色素を全て発色させた溶液の吸光度を測定する。得られた熱可塑性樹脂層を含有する溶液の吸光度から、検量線に基づいて熱可塑性樹脂層に含まれる色素の量を算出する。
【0254】
(光により酸、塩基又はラジカルを発生する化合物)
熱可塑性樹脂層は、光により酸、塩基又はラジカルを発生する化合物(単に「化合物C」ともいう。)を含有してもよい。
【0255】
化合物Cとしては、紫外線及び可視光線等の活性光線を受けて、酸、塩基、又はラジカルを発生する化合物が好ましい。
【0256】
化合物Cは、公知の、光酸発生剤、光塩基発生剤、及び、光ラジカル重合開始剤(光ラジカル発生剤)であってもよい。中でも、化合物Cは光酸発生剤であることが好ましい。
【0257】
-光酸発生剤-
熱可塑性樹脂層は、解像性の観点から、光酸発生剤を含有することが好ましい。
光酸発生剤としては、上述した感光性樹脂層が含有してもよい光カチオン重合開始剤が挙げられ、後述する点以外は好ましい態様も同じである。
【0258】
光酸発生剤は、感度及び解像性の観点から、オニウム塩化合物、及び、オキシムスルホネート化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物であることが好ましく、感度、解像性及び密着性の観点から、オキシムスルホネート化合物であることがより好ましい。
また、光酸発生剤は、以下の構造を有する光酸発生剤も好ましい。
【0259】
【0260】
-光ラジカル重合開始剤-
熱可塑性樹脂層は、光ラジカル重合開始剤を含有してもよい。
光ラジカル重合開始剤としては、上述した感光性樹脂層が含有してもよい光ラジカル重合開始剤が挙げられ、好ましい態様も同じである。
【0261】
-光塩基発生剤-
熱可塑性樹脂層は、光塩基発生剤を含有してもよい。
光塩基発生剤としては、公知の光塩基発生剤であれば特に制限されず、例えば、2-ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、トリフェニルメタノール、O-カルバモイルヒドロキシルアミド、O-カルバモイルオキシム、[[(2,6-ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、ビス[[(2-ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサン1,6-ジアミン、4-(メチルチオベンゾイル)-1-メチル-1-モルホリノエタン、(4-モルホリノベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン、N-(2-ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン、ヘキサアンミンコバルト(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2,6-ジメチル-3,5-ジアセチル-4-(2-ニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジン、及び、2,6-ジメチル-3,5-ジアセチル-4-(2,4-ジニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジンが挙げられる。
【0262】
熱可塑性樹脂層は、化合物Cを、1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
化合物Cの含有量は、露光部及び非露光部の視認性並びに解像性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%~10質量%が好ましく、0.5質量%~5質量%がより好ましい。
【0263】
(可塑剤)
熱可塑性樹脂層は、解像性、隣接する層との密着性及び現像性の観点から、可塑剤を含有することが好ましい。
【0264】
可塑剤は、アルカリ可溶性樹脂よりも分子量(オリゴマー又はポリマーである場合は重量平均分子量(Mw))が小さいことが好ましい。可塑剤の分子量(重量平均分子量(Mw))は、200~2,000が好ましい。
【0265】
可塑剤は、アルカリ可溶性樹脂と相溶して可塑性を発現する化合物であれば特に制限されない。可塑剤は、可塑性付与の観点から、分子中にアルキレンオキシ基を有することが好ましく、ポリアルキレングリコール化合物がより好ましい。可塑剤に含まれるアルキレンオキシ基は、ポリエチレンオキシ構造又はポリプロピレンオキシ構造を有することがより好ましい。
【0266】
また、可塑剤は、解像性及び保存安定性の観点から、(メタ)アクリレート化合物を含有することが好ましい。相溶性、解像性及び隣接する層との密着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂がアクリル樹脂であり、かつ、可塑剤が(メタ)アクリレート化合物を含有することがより好ましい。
【0267】
可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物としては、上述した感光性樹脂層に含有される重合性化合物Bとして記載した(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0268】
感光性転写材料において、熱可塑性樹脂層と感光性樹脂層とが直接接触して積層される場合、熱可塑性樹脂層及び感光性樹脂層が同じ(メタ)アクリレート化合物を含有することが好ましい。熱可塑性樹脂層及び感光性樹脂層がそれぞれ、同じ(メタ)アクリレート化合物を含有すると、層間の成分拡散が抑制され、保存安定性が向上する。
【0269】
熱可塑性樹脂層が可塑剤として(メタ)アクリレート化合物を含有する場合、隣接する層との密着性の観点から、露光後の露光部においても(メタ)アクリレート化合物が重合しないことが好ましい。
【0270】
また、可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物は、解像性、隣接する層との密着性及び現像性の観点から、一分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。
【0271】
さらに、可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物は、酸基を有する(メタ)アクリレート化合物、又は、ウレタン(メタ)アクリレート化合物であることも好ましい。
【0272】
熱可塑性樹脂層は、可塑剤を1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
【0273】
可塑剤の含有量は、解像性、隣接する層との密着性及び現像性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、1質量%~70質量%が好ましく、10質量%~60質量%がより好ましく、20質量%~50質量%が特に好ましい。
【0274】
(界面活性剤)
熱可塑性樹脂層は、厚さ均一性の観点から、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、上述した感光性樹脂層が含有してもよい界面活性剤が挙げられ、好ましい態様も同じである。
【0275】
熱可塑性樹脂層は、界面活性剤を1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
【0276】
界面活性剤の含有量は、熱可塑性樹脂層の全質量に対し、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.01質量%~3質量%がより好ましい。
【0277】
(増感剤)
熱可塑性樹脂層は、増感剤を含有してもよい。増感剤としては、特に制限されず、上述した感光性樹脂層が含有してもよい増感剤が挙げられる。
【0278】
熱可塑性樹脂層は、増感剤を、1種単独で含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
【0279】
増感剤の含有量は、目的により適宜選択できるが、光源に対する感度の向上、及び、露光部及び非露光部の視認性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対し、0.01質量%~5質量%の範囲が好ましく、0.05質量%~1質量%の範囲がより好ましい。
【0280】
(添加剤等)
熱可塑性樹脂層は、上記成分以外に、必要に応じて公知の添加剤を含有してもよい。また、熱可塑性樹脂層については、特開2014-85643号公報の段落0189~0193に記載されており、この公報に記載の内容は本明細書に組み込まれる。
【0281】
<物性等>
熱可塑性樹脂層の厚さは、特に制限されないが、隣接する層との密着性の観点から、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましい。熱可塑性樹脂層の厚さの上限値は特に制限されない。熱可塑性樹脂層の厚さは、現像性及び解像性の観点から、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。
【0282】
<形成方法>
熱可塑性樹脂層の形成方法は、上記の成分を含有する層を形成可能な方法であれば特に制限されない。
【0283】
熱可塑性樹脂層の形成方法としては、例えば、上記の成分と溶剤とを含有する熱可塑性樹脂組成物を調製し、仮支持体等の表面に熱可塑性樹脂組成物を塗布し、熱可塑性樹脂組成物の塗膜を乾燥させることにより形成する方法が挙げられる。
【0284】
熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂組成物の粘度を調節し、熱可塑性樹脂層の形成を容易にするため、溶剤を含有することが好ましい。
【0285】
(溶剤)
熱可塑性樹脂組成物に含有される溶剤としては、熱可塑性樹脂層に含有される上記成分を溶解又は分散可能であれば特に制限されない。
【0286】
熱可塑性樹脂組成物に含有される溶剤としては、上述した感光性樹脂組成物が含有してもよい溶剤が挙げられ、好ましい態様も同じである。
【0287】
熱可塑性樹脂組成物に含有される溶剤は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0288】
熱可塑性樹脂組成物における溶剤の含有量は、熱可塑性樹脂組成物中の全固形分100質量部に対し、50質量部~1,900質量部が好ましく、100質量部~900質量部がより好ましい。
【0289】
熱可塑性樹脂組成物の調製及び熱可塑性樹脂層の形成は、上述した感光性樹脂組成物の調製方法及び感光性樹脂層の形成方法に準じて行えばよい。
【0290】
例えば、熱可塑性樹脂層に含有される各成分を上記溶剤に溶解させた溶液を予め調製し、得られた溶液を所定の割合で混合することにより、熱可塑性樹脂組成物が調製した後、得られた熱可塑性樹脂組成物を仮支持体の表面に塗布し、熱可塑性樹脂組成物の塗膜を乾燥させることにより、熱可塑性樹脂層が形成される。
【0291】
また、後述するカバーフィルム上に、感光性樹脂層及び中間層を形成した後、中間層の表面に熱可塑性樹脂層を形成してもよい。
【0292】
〔中間層〕
感光性転写材料は、熱可塑性樹脂層と感光性樹脂層との間に、中間層を備えることが好ましい。中間層を配置することにより、複数層を塗布する際及び塗布後の保存の際における成分の混合を抑制できる。
【0293】
中間層は、現像性、並びに、複数層を塗布する際及び塗布後の保存の際における成分の混合を抑制する観点から、水溶性の層であることが好ましい。
なお、本明細書において「水溶性」とは、液温が22℃であるpH7.0の水100gへの溶解度が0.1g以上であることを意味する。
【0294】
中間層としては、特開平5-72724号公報に「分離層」として記載されている、酸素遮断機能のある酸素遮断層が挙げられる。中間層が酸素遮断層であると、露光時の感度が向上し、露光機の時間負荷が低減し、生産性が向上する。
【0295】
中間層として用いられる酸素遮断層は、上記公報等に記載された公知の層から適宜選択すればよい。中でも、中間層は、低い酸素透過性を示し、水又はアルカリ水溶液(22℃の炭酸ナトリウムの1質量%水溶液)に分散又は溶解する酸素遮断層であることが好ましい。
【0296】
中間層は、樹脂を含有することが好ましい。
中間層に含有される樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリルアミド系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ゼラチン、ビニルエーテル系樹脂、ポリアミド、及び、これらの共重合体等の樹脂が挙げられる。
【0297】
中間層に含有される樹脂としては、水溶性樹脂が好ましい。
また、中間層に含有される樹脂は、複数層間の成分の混合を抑制する観点から、感光性樹脂層に含有される重合体A、及び、熱可塑性樹脂層に含有される熱可塑性樹脂(アルカリ可溶性樹脂)のいずれとも異なる樹脂であることが好ましい。
【0298】
中間層は、酸素遮断性、並びに、複数層を塗布する際及び塗布後の保存の際における成分の混合を抑制する観点から、ポリビニルアルコールを含有することが好ましく、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンの両者を含有することがより好ましい。
【0299】
中間層は、上記樹脂を1種単独で含有してもよく、2種以上を含有してもよい。
【0300】
中間層における樹脂の含有量は、特に制限されないが、酸素遮断性、並びに、複数層を塗布する際及び塗布後の保存の際における成分の混合を抑制する観点から、中間層の全質量に対し、50質量%~100質量%が好ましく、70質量%~100質量%がより好ましく、80~100質量%がさらに好ましく、90質量%~100質量%が特に好ましい。
また、中間層は、必要に応じて界面活性剤等の添加剤を含有してもよい。
【0301】
中間層の厚さは、特に制限されないが、0.1μm~5μmが好ましく、0.5μm~3μmがより好ましい。
【0302】
中間層の厚さが上記の範囲内であると、酸素遮断性を低下させることがなく、複数層を塗布する際及び塗布後の保存の際における成分の混合を抑制できる。また、中間層の厚さが上記の範囲内であると、現像時の中間層除去時間の増大を抑制できる。
【0303】
中間層の形成方法は、特に制限されず、例えば、上記樹脂及び任意の添加剤を含有する中間層組成物を調製し、熱可塑性樹脂層又は感光性樹脂層の表面に塗布し、中間層組成物の塗膜を乾燥させることにより、中間層を形成する方法が挙げられる。
【0304】
中間層組成物は、中間層組成物の粘度を調節し、中間層の形成を容易にするため、溶剤を含有することが好ましい。
【0305】
中間層組成物に含有される溶剤としては、上記樹脂を溶解又は分散可能であれば特に制限されず、水及び水混和性の有機溶剤からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、水又は水と水混和性の有機溶剤との混合溶剤がより好ましい。
【0306】
水混和性の有機溶剤としては、例えば、炭素数1~3のアルコール、アセトン、エチレングリコール及びグリセリンが挙げられ、炭素数1~3のアルコールが好ましく、メタノール又はエタノールがより好ましい。
【0307】
〔カバーフィルム〕
感光性転写材料は、感光性樹脂層の仮支持体に対向していない面に接するカバーフィルムを備えることが好ましい。
以下、本明細書において、感光性樹脂層の仮支持体に対向する面を「第1面」ともいい、第1面とは反対側の面を「第2面」ともいう。
【0308】
カバーフィルムを構成する材料としては、樹脂フィルム及び紙が挙げられる。中でも、カバーフィルムを構成する材料は、強度及び可撓性の観点から、樹脂フィルムであることが好ましい。
【0309】
樹脂フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、及び、ポリカーボネートフィルムが挙げられる。中でも、樹脂フィルムは、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、又は、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
【0310】
カバーフィルムの厚さは、特に制限されないが、5μm~100μmが好ましく、10μm~50μmがより好ましい。
【0311】
また、カバーフィルムの感光性樹脂層に接する面(以下単に「カバーフィルムの表面」ともいう)の算術平均粗さRa値は、解像性により優れる点から、0.3μm以下が好ましく、0.1μm以下がより好ましく、0.05μm以下がさらに好ましい。カバーフィルムの表面のRa値が上記範囲であることにより、感光性樹脂層及び形成される樹脂パターンの層厚の均一性が向上すると考えられる。
【0312】
カバーフィルムの表面のRa値の下限値は特に制限されない。カバーフィルムの表面のRa値は、0.001μm以上が好ましい。
【0313】
カバーフィルムの表面のRa値は、以下の方法で測定される。
3次元光学プロファイラー(New View7300、Zygo社製)を用いて、以下の条件にてカバーフィルムの表面を測定し、光学フィルムの表面プロファイルを得る。測定・解析ソフトとしては、MetroPro ver8.3.2のMicroscope Applicationを用いる。次に、上記解析ソフトにてSurface Map画面を表示し、Surface Map画面中でヒストグラムデータを得る。得られたヒストグラムデータから、算術平均粗さを算出し、カバーフィルムの表面のRa値を得る。
カバーフィルムが感光性転写材料に貼り合わされている場合は、感光性転写材料からカバーフィルムを剥離して、剥離した側の表面のRa値を測定すればよい。
【0314】
さらに、カバーフィルムを感光性樹脂層等に貼り合わせることにより、感光性転写材料を製造できる。
カバーフィルムを感光性樹脂層等に貼り合わせる方法は特に制限されず、公知の方法が挙げられる。
カバーフィルムを感光性樹脂層に貼り合わせる装置としては、真空ラミネーター、及び、オートカットラミネーター等の公知のラミネーターが挙げられる。
ラミネーターはゴムローラー等の任意の加熱可能なローラーを備え、加圧及び加熱ができるものであることが好ましい。
【0315】
感光性転写材料は、上述した層以外の層(以下「その他の層」ともいう。)を備えてもよい。その他の層としては、例えば、コントラストエンハンスメント層が挙げられる。
コントラストエンハンスメント層については、国際公開第2018/179640号の段落0134に記載されている。また、その他の層については特開2014-85643号公報の段落0194~0196に記載されている。これらの公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0316】
感光性転写材料における仮支持体及びカバーフィルムを除く各層の総厚さは、解像性、及び、基板との密着性の観点から、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、8μm以下であることがさらに好ましく、2μm以上8μm以下であることが特に好ましい。
また、感光性転写材料における感光性樹脂層、中間層及び熱可塑性樹脂層の総厚さは、解像性、及び、基板との密着性の観点から、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、8μm以下であることがさらに好ましく、2μm以上8μm以下であることが特に好ましい。
【0317】
<仮支持体、感光性樹脂層及びカバーフィルムの関係>
本開示に係る感光性転写材料は、
感光性樹脂層を硬化した硬化膜の120℃における破断伸びが15%以上であり、
仮支持体の感光性樹脂層側の表面の算術平均粗さRaが50nm以下であり、
カバーフィルムの感光性樹脂層側の表面の算術平均粗さRaが150nm以下であることが好ましい。
【0318】
また、本開示に係る感光性転写材料は、下記式(R1)を満たすことが好ましい。
X×Y<1,500 式(R1)
ここで、上記式(R1)中、Xは、感光性樹脂層を硬化した硬化膜の120℃における破断伸びの値(%)を表し、Yは、仮支持体の感光性樹脂層側の表面の算術平均粗さRaの値(nm)を表す。
X×Yは、750以下がより好ましい。
【0319】
感光性樹脂層を硬化した硬化膜の23℃での破断伸びに対し、120℃での破断伸びが2倍以上大きいことが好ましい。
破断伸びは、厚さ20μmの感光性樹脂層を超高圧水銀ランプにより120mJ/cm2で露光して硬化した後、高圧水銀ランプで400mJ/cm2でさらに追加露光し、145℃で30分間加熱した後の硬化膜を用い、引っ張り試験によって測定する。
【0320】
また、本開示に係る感光性転写材料は、下記式(R2)を満たすことが好ましい。
Y≦Z 式(R2)
ここで、上記式(R2)中、Yは、仮支持体の感光性樹脂層側の表面の算術平均粗さRaの値(nm)を表し、Zは、カバーフィルムの感光性樹脂層側の表面の算術平均粗さRaの値(nm)を表す。
【0321】
〔感光性転写材料の製造方法〕
本開示に係る感光性転写材料の製造方法は、特に制限されず、公知の製造方法、例えば、公知の各層の形成方法を用いることができる。
【0322】
以下、
図1を参照しながら、本開示に係る感光性転写材料の製造方法について説明する。但し、本開示に係る感光性転写材料は、
図1に示す構成を有するものに制限されない。
図1は、本開示に係る感光性転写材料の一実施態様における層構成の一例を示す概略断面図である。
図1に示す感光性転写材料20は、仮支持体11と、熱可塑性樹脂層13と、中間層15と、感光性樹脂層17と、カバーフィルム19とがこの順に積層された構成を有する。また、転写される層である、熱可塑性樹脂層13と、中間層15と、感光性樹脂層17とを合わせて転写層12ともいう。
【0323】
上記の感光性転写材料20の製造方法としては、例えば、仮支持体11の表面に熱可塑性樹脂組成物を塗布した後、熱可塑性樹脂組成物の塗膜を乾燥させることにより、熱可塑性樹脂層13を形成する工程と、熱可塑性樹脂層13の表面に中間層組成物を塗布した後、中間層組成物の塗膜を乾燥させて中間層15を形成する工程と、中間層15の表面に感光性樹脂組成物を塗布した後、感光性樹脂組成物の塗膜を乾燥させて感光性樹脂層17を形成する工程と、感光性樹脂層17にカバーフィルム19を圧着させる工程と、を含む方法が挙げられる。
【0324】
仮支持体上に、感光性樹脂層を直接設ける場合には、仮支持体の表面に感光性樹脂組成物を塗布する。
【0325】
上記の製造方法において、アルキレングリコールエーテル溶剤及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有する熱可塑性樹脂組成物と、水及び水混和性の有機溶剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有する中間層組成物と、重合体A、重合性化合物B、並びに、アルキレングリコールエーテル溶剤及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有する感光性樹脂組成物とを使用することが好ましい。これにより、熱可塑性樹脂層13の表面への中間層組成物の塗布、及び/又は、中間層組成物の塗膜を有する積層体の保存期間における、熱可塑性樹脂層13に含有される成分と中間層15に含有される成分との混合を抑制できる。また、中間層15の表面への感光性樹脂組成物の塗布、及び/又は、感光性樹脂組成物の塗膜を有する積層体の保存期間における、中間層15に含有される成分と感光性樹脂層17に含有される成分との混合を抑制できる。
【0326】
本開示に係る感光性転写材料の製造方法としては、感光性樹脂層17の第2面に接するようにカバーフィルム19を設ける工程を含むことにより、仮支持体11、熱可塑性樹脂層13、中間層15、感光性樹脂層17及びカバーフィルム19を備える感光性転写材料20を製造することが好ましい。
【0327】
感光性転写材料20を製造した後、感光性転写材料20を巻き取ることにより、ロール形態の感光性転写材料を作製し、保管してもよい。ロール形態の感光性転写材料は、後述するロールツーロール方式での基板との貼り合わせ工程にそのままの形態で提供できる。
【0328】
また、第1実施形態の感光性転写材料は、感光性樹脂層が顔料を含む着色樹脂層である態様も好ましく挙げられる。
着色樹脂層の用途としては、上述した以外に、例えば、液晶表示装置(LCD)、並びに、固体撮像素子〔例えば、CCD(charge-coupled device)及びCMOS(complementary metal oxide semiconductor)〕に用いられるカラーフィルタ等の着色画素又はブラックマトリクスを形成する用途に好適である。
近年の電子機器が有する液晶表示窓には、液晶表示窓を保護するために、透明なガラス基板等の裏面周縁部に黒色の枠状遮光層が形成されたカバーガラスが取り付けられている場合がある。このような遮光層を形成するために着色樹脂層が使用し得る。
着色樹脂層における顔料以外の態様については、上述した態様と同様である。
【0329】
<顔料>
着色樹脂層に用いられる顔料としては、所望とする色相に合わせて適宜選択すればよく、黒色顔料、白色顔料、黒色及び白色以外の有彩色の顔料の中から選択できる。中でも、黒色系のパターンを形成する場合には、顔料として黒色顔料が好適に選択される。
【0330】
黒色顔料としては、本開示における効果を損なわない範囲であれば、公知の黒色顔料(有機顔料又は無機顔料等)を適宜選択することができる。中でも、光学濃度の観点から、黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、チタンカーバイド、酸化鉄、及び黒鉛等が好適に挙げられ、カーボンブラックが特に好ましい。カーボンブラックとしては、表面抵抗の観点から、表面の少なくとも一部が樹脂で被覆されたカーボンブラックが好ましい。
【0331】
黒色顔料の粒径は、分散安定性の観点から、数平均粒径で0.001μm~0.1μmが好ましく、0.01μm~0.08μmがより好ましい。
ここで、粒径とは、電子顕微鏡で撮影した顔料粒子の写真像から顔料粒子の面積を求め、顔料粒子の面積と同面積の円を考えた場合の円の直径を指し、数平均粒径は、任意の100個の粒子について上記の粒径を求め、求められた100個の粒径を平均して得られる平均値である。
【0332】
黒色顔料以外の顔料として、白色顔料については、特開2005-007765号公報の段落0015及び0114に記載の白色顔料を使用できる。具体的には、白色顔料のうち、無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、リトポン、軽質炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、又は硫酸バリウムが好ましく、酸化チタン又は酸化亜鉛がより好ましく、酸化チタンがさらに好ましい。無機顔料としては、ルチル型又はアナターゼ型の酸化チタンがさらに好ましく、ルチル型の酸化チタンが特に好ましい。
また、酸化チタンの表面は、シリカ処理、アルミナ処理、チタニア処理、ジルコニア処理、又は有機物処理が施されていてもよく、二つ以上の処理が施されてもよい。これにより、酸化チタンの触媒活性が抑制され、耐熱性及び褪光性等が改善される。
加熱後の感光性樹脂層の厚さを薄くする観点から、酸化チタンの表面への表面処理としては、アルミナ処理及びジルコニア処理の少なくとも一方が好ましく、アルミナ処理及びジルコニア処理の両方が特に好ましい。
【0333】
また、感光性樹脂層が着色樹脂層である場合、転写性の観点から、感光性樹脂層は、黒色顔料及び白色顔料以外の有彩色の顔料をさらに含んでいることも好ましい。有彩色の顔料を含む場合、有彩色の顔料の粒径としては、分散性がより優れる点で、0.1μm以下が好ましく、0.08μm以下がより好ましい。
有彩色の顔料としては、例えば、ビクトリア・ピュアーブルーBO(Color Index(以下C.I.)42595)、オーラミン(C.I.41000)、ファット・ブラックHB(C.I.26150)、モノライト・エローGT(C.I.ピグメント・エロー12)、パーマネント・エローGR(C.I.ピグメント・エロー17)、パーマネント・エローHR(C.I.ピグメント・エロー83)、パーマネント・カーミンFBB(C.I.ピグメント・レッド146)、ホスターバームレッドESB(C.I.ピグメント・バイオレット19)、パーマネント・ルビーFBH(C.I.ピグメント・レッド11)、ファステル・ピンクBスプラ(C.I.ピグメント・レッド81)、モナストラル・ファースト・ブルー(C.I.ピグメント・ブルー15)、モノライト・ファースト・ブラックB(C.I.ピグメント・ブラック1)及びカーボン、C.I.ピグメント・レッド97、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド149、C.I.ピグメント・レッド168、C.I.ピグメント・レッド177、C.I.ピグメント・レッド180、C.I.ピグメント・レッド192、C.I.ピグメント・レッド215、C.I.ピグメント・グリーン7、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:4、C.I.ピグメント・ブルー22、C.I.ピグメント・ブルー60、C.I.ピグメント・ブルー64、及びC.I.ピグメント・バイオレット23等が挙げられる。中でも、C.I.ピグメント・レッド177が好ましい。
【0334】
感光性樹脂層が顔料を含む場合、顔料の含有量としては、感光性樹脂層の全質量に対して、3質量%を超え40質量%以下が好ましく、3質量%を超え35質量%以下がより好ましく、5質量%を超え35質量%以下がさらに好ましく、10質量%以上35質量%以下が特に好ましい。
【0335】
感光性樹脂層が黒色顔料以外の顔料(白色顔料及び有彩色の顔料)を含む場合、黒色顔料以外の顔料の含有量は、黒色顔料に対して、30質量%以下が好ましく、1質量%~20質量%がより好ましく、3質量%~15質量%がさらに好ましい。
【0336】
なお、感光性樹脂層が黒色顔料を含み、且つ、感光性樹脂層が感光性樹脂組成物で形成される場合、黒色顔料(好ましくはカーボンブラック)は、顔料分散液の形態で感光性樹脂組成物に導入されることが好ましい。
分散液は、黒色顔料と顔料分散剤とをあらかじめ混合して得られる混合物を、有機溶剤(又はビヒクル)に加えて分散機で分散させることによって調製されるものでもよい。顔料分散剤は、顔料及び溶剤に応じて選択すればよく、例えば市販の分散剤を使用することができる。なお、ビヒクルとは、顔料分散液とした場合に顔料を分散させている媒質の部分を指し、液状であり、黒色顔料を分散状態で保持するバインダー成分と、バインダー成分を溶解及び希釈する溶剤成分(有機溶剤)と、を含む。
【0337】
分散機としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー、ロールミル、アトライター、スーパーミル、ディゾルバ、ホモミキサー、及びサンドミル等の公知の分散機が挙げられる。さらに、機械的摩砕により摩擦力を利用して微粉砕してもよい。分散機及び微粉砕については、「顔料の事典」(朝倉邦造著、第一版、朝倉書店、2000年、438頁、310頁)の記載を参照することができる。
【0338】
〔〔第2実施形態の感光性転写材料〕〕
以下において、第2実施形態の感光性転写材料について、一例を挙げて説明する。
図2に示す感光性転写材料10は、仮支持体1と、感光性樹脂層3及び屈折率調整層5を含む転写層2と、カバーフィルム7とを、この順に有する。また、転写される層である、感光性樹脂層3及び屈折率調整層5を転写層2ともいう。
また、
図2で示す感光性転写材料10は屈折率調整層5を配置した形態であるが、屈折率調整層5は、配置されなくてもよい。
以下において、第2実施形態の感光性転写材料を構成する各要素について説明する。
第2実施形態の感光性転写材料に用いられる仮支持体及びカバーフィルムは、第1実施形態の感光性転写材料における仮支持体及びカバーフィルムと同様であり、好ましい態様も同様である。
【0339】
〔感光性樹脂層〕
感光性転写材料は、感光性樹脂層を有する。
感光性樹脂層を被転写体上に転写した後、露光及び現像を行うことにより、被転写体上にパターンを形成できる。
【0340】
以下、感光性樹脂層に含まれ得る成分について詳述する。
【0341】
<重合体C>
感光性樹脂層は、重合体Cを含むことが好ましい。重合体Cは、アルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂、アミドエポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応で得られるエポキシアクリレート樹脂、及び、エポキシアクリレート樹脂と酸無水物との反応で得られる酸変性エポキシアクリレート樹脂が挙げられる。
【0342】
アルカリ可溶性樹脂の好適態様の一つとして、アルカリ現像性及びフィルム形成性に優れる点で、(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。
【0343】
なお、本明細書において、(メタ)アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位を有する樹脂を意味する。(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位の含有量は、(メタ)アクリル樹脂の全構成単位に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
【0344】
(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位のみで構成されていてもよく、(メタ)アクリル化合物以外の重合性単量体に由来する構成単位を有していてもよい。すなわち、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位の含有量の上限は、(メタ)アクリル樹脂の全構成単位に対して、100質量%以下である。
【0345】
(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、及び、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、及び、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレートが挙げられ、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミドが挙げられる。
【0346】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、及び、(メタ)アクリル酸ドデシル等の炭素数が1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0347】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル又は(メタ)アクリル酸エチルがより好ましい。
【0348】
(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位以外の構成単位を有していてもよい。
上記構成単位を形成する重合性単量体としては、(メタ)アクリル化合物と共重合可能な(メタ)アクリル化合物以外の化合物であれば特に制限されず、例えば、スチレン、ビニルトルエン、及び、α-メチルスチレン等のα位又は芳香族環に置換基を有してもよいスチレン化合物、アクリロニトリル及びビニル-n-ブチルエーテル等のビニルアルコールエステル、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、及び、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマル酸、ケイ皮酸、α-シアノケイ皮酸、イタコン酸、並びに、クロトン酸が挙げられる。
これらの重合性単量体は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0349】
また、(メタ)アクリル樹脂は、アルカリ現像性をより良好にする点から、酸基を有する構成単位を有することが好ましい。酸基としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、及び、ホスホン酸基が挙げられる。
中でも、(メタ)アクリル樹脂は、カルボキシ基を有する構成単位を有することがより好ましく、上記の(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有することがさらに好ましい。
【0350】
(メタ)アクリル樹脂における酸基を有する構成単位(好ましくは(メタ)アクリル酸に由来する構成単位)の含有量は、現像性に優れる点で、(メタ)アクリル樹脂の全質量に対して、10質量%以上が好ましい。また、上限値は特に制限されないが、アルカリ耐性に優れる点で、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
【0351】
また、(メタ)アクリル樹脂は、上述した(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有することがより好ましい。
【0352】
(メタ)アクリル樹脂における(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有量は、(メタ)アクリル樹脂の全構成単位に対して、50質量%~90質量%が好ましく、60質量%~90質量%がより好ましく、65質量%~90質量%がさらに好ましい。
【0353】
(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の両者を有する樹脂が好ましく、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位のみで構成されている樹脂がより好ましい。
また、(メタ)アクリル樹脂としては、メタクリル酸に由来する構成単位、メタクリル酸メチルに由来する構成単位、及び、アクリル酸エチルに由来する構成単位を有するアクリル樹脂も好ましい。
【0354】
また、(メタ)アクリル樹脂は、解像性の観点から、メタクリル酸に由来する構成単位及びメタクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位よりなる群から選択される少なくとも1種を有することが好ましく、メタクリル酸に由来する構成単位及びメタクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の両者を有することが好ましい。
【0355】
(メタ)アクリル樹脂におけるメタクリル酸に由来する構成単位及びメタクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の合計含有量は、解像性の観点から、(メタ)アクリル樹脂の全構成単位に対して、40質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。上限は特に制限されず、100質量%以下であってもよく、80質量%以下が好ましい。
【0356】
また、(メタ)アクリル樹脂は、解像性の観点から、メタクリル酸に由来する構成単位及びメタクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位よりなる群から選択される少なくとも1種と、アクリル酸に由来する構成単位及びアクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位よりなる群から選択される少なくとも1種とを有することも好ましい。
解像性の観点から、メタクリル酸に由来する構成単位及びメタクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の合計含有量は、アクリル酸に由来する構成単位及びアクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の合計含有量に対して、質量比で60/40~80/20が好ましい。
【0357】
(メタ)アクリル樹脂は、転写後の感光性樹脂層の現像性に優れる点で、末端にエステル基を有することが好ましい。
なお、(メタ)アクリル樹脂の末端部は、合成に用いた重合開始剤に由来する部位により構成される。末端にエステル基を有する(メタ)アクリル樹脂は、エステル基を有するラジカルを発生する重合開始剤を用いることにより合成できる。
【0358】
また、重合体Cは、例えば、現像性の点から、酸価60mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
また、重合体Cは、例えば、加熱により架橋成分と熱架橋し、強固な膜を形成しやすいという点から、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基を有する樹脂(いわゆる、カルボキシ基含有樹脂)であることがより好ましく、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基を有する(メタ)アクリル樹脂(いわゆる、カルボキシ基含有(メタ)アクリル樹脂)であることがさらに好ましい。
重合体Cがカルボキシ基を有する樹脂であると、例えば、ブロックイソシアネート化合物等の熱架橋性化合物を添加して熱架橋することで、3次元架橋密度を高めることができる。また、カルボキシ基を有する樹脂のカルボキシ基が無水化され、疎水化すると、湿熱耐性が改善し得る。
【0359】
酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有(メタ)アクリル樹脂としては、上記酸価の条件を満たす限りにおいて、特に制限はなく、公知の(メタ)アクリル樹脂から適宜選択できる。
【0360】
例えば、特開2011-095716号公報の段落0025に記載のポリマーのうち、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂、特開2010-237589号公報の段落0033~0052に記載のポリマーのうち、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂等を好ましく使用できる。
【0361】
重合体Cの他の好適態様としては、スチレン-アクリル共重合体が挙げられる。なお、本明細書において、スチレン-アクリル共重合体とは、スチレン化合物に由来する構成単位と、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位とを有する樹脂を指し、上記スチレン化合物に由来する構成単位、及び、上記(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位の合計含有量は、上記共重合体の全構成単位に対して、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。
【0362】
また、スチレン化合物に由来する構成単位の含有量は、上記共重合体の全構成単位に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、5質量%~80質量%がさらに好ましい。
【0363】
また、上記(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位の含有量は、上記共重合体の全構成単位に対して、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%~95質量%がさらに好ましい。
【0364】
重合体Cは、得られる硬化膜の透湿度及び強度の観点から、芳香環構造を有することが好ましく、芳香環構造を有する構成単位を有することがより好ましい。
【0365】
芳香環構造を有する構成単位を形成するモノマーとしては、スチレン、tert-ブトキシスチレン、メチルスチレン、及び、α-メチルスチレン等のスチレン化合物、並びに、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
中でも、スチレン化合物が好ましく、スチレンがより好ましい。
また、重合体Cは、得られる硬化膜の透湿度及び強度の観点から、下記式(S)で表される構成単位(スチレンに由来する構成単位)を有することがより好ましい。
【0366】
【0367】
重合体Cが芳香環構造を有する構成単位を有する場合、芳香環構造を有する構成単位の含有量は、得られる硬化膜の透湿度及び強度の観点から、重合体Cの全構成単位に対して、5質量%~90質量%が好ましく、10質量%~70質量%より好ましく、20質量%~60質量%がさらに好ましい。
【0368】
また、重合体Cにおける芳香環構造を有する構成単位の含有量は、得られる硬化膜の透湿度及び強度の観点から、重合体Cの全構成単位に対して、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~60モル%がより好ましく、20モル%~60モル%がさらに好ましい。
【0369】
さらに、重合体Cにおける上記式(S)で表される構成単位の含有量は、得られる硬化膜の透湿度及び強度の観点から、重合体Cの全構成単位に対して、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~60モル%がより好ましく、20モル%~60モル%がさらに好ましく、20モル%~50モル%が特に好ましい。
【0370】
なお、本明細書において、「構成単位」の含有量をモル比で規定する場合、上記「構成単位」は「モノマー単位」と同義であるものとする。また、本明細書において、上記「モノマー単位」は、高分子反応等により重合後に修飾されていてもよい。以下においても同様である。
【0371】
重合体Cは、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、脂肪族炭化水素環構造を有することが好ましい。つまり、重合体Cは、脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位を有することが好ましい。中でも、重合体Cは、2環以上の脂肪族炭化水素環が縮環した環構造を有することがより好ましい。
【0372】
脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位における脂肪族炭化水素環構造を構成する環としては、トリシクロデカン環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環、ノルボルナン環、及び、イソボロン環が挙げられる。
中でも、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、2環以上の脂肪族炭化水素環が縮環した環が好ましく、テトラヒドロジシクロペンタジエン環(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環)がより好ましい。
脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位を形成するモノマーとしては、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及び、イソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、重合体Cは、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、下記式(Cy)で表される構成単位を有することがより好ましく、上記式(S)で表される構成単位、及び、下記式(Cy)で表される構成単位を有することがより好ましい。
【0373】
【0374】
式(Cy)中、RMは水素原子又はメチル基を表し、RCyは脂肪族炭化水素環構造を有する一価の基を表す。
【0375】
式(Cy)におけるRMは、メチル基であることが好ましい。
式(Cy)におけるRCyは、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、炭素数5~20の脂肪族炭化水素環構造を有する一価の基であることが好ましく、炭素数6~16の脂肪族炭化水素環構造を有する一価の基であることがより好ましく、炭素数8~14の脂肪族炭化水素環構造を有する一価の基であることがさらに好ましい。
式(Cy)のRCyにおける脂肪族炭化水素環構造は、単環構造であっても、多環構造であってもよい。
また、式(Cy)のRCyにおける脂肪族炭化水素環構造は、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、シクロペンタン環構造、シクロヘキサン環構造、テトラヒドロジシクロペンタジエン環構造、ノルボルナン環構造、又は、イソボロン環構造であることが好ましく、シクロヘキサン環構造、又は、テトラヒドロジシクロペンタジエン環構造であることがより好ましく、テトラヒドロジシクロペンタジエン環構造であることがさらに好ましい。
さらに、式(Cy)のRCyにおける脂肪族炭化水素環構造は、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、2環以上の脂肪族炭化水素環が縮環した環構造であることが好ましく、2~4環の脂肪族炭化水素環が縮環した環であることがより好ましい。
さらに、式(Cy)におけるRCyは、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、式(Cy)における-C(=O)O-の酸素原子と脂肪族炭化水素環構造とが直接結合する基、すなわち、脂肪族炭化水素環基であることが好ましく、シクロヘキシル基、又は、ジシクロペンタニル基であることがより好ましく、ジシクロペンタニル基であることがさらに好ましい。
【0376】
重合体Cは、脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位を1種単独で有していても、2種以上有していてもよい。
【0377】
重合体Cが脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位を有する場合、脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位の含有量は、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、重合体Cの全構成単位に対して、5質量%~90質量%が好ましく、10質量%~80質量%がより好ましく、20質量%~70質量%がさらに好ましい。
【0378】
また、重合体Cにおける脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位の含有量は、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、重合体Cの全構成単位に対して、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~60モル%がより好ましく、20モル%~50モル%がさらに好ましい。
【0379】
さらに、重合体Cにおける上記式(Cy)で表される構成単位の含有量は、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、重合体Cの全構成単位に対して、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~60モル%がより好ましく、20モル%~50モル%がさらに好ましい。
【0380】
重合体Cが芳香環構造を有する構成単位及び脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位を有する場合、芳香環構造を有する構成単位及び脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位の総含有量は、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、重合体Cの全構成単位に対して、10質量%~90質量%が好ましく、20質量%~80質量%がより好ましく、40質量%~75質量%がさらに好ましい。
【0381】
また、重合体Cにおける芳香環構造を有する構成単位及び脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位の総含有量は、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、重合体Cの全構成単位に対して、10モル%~80モル%が好ましく、20モル%~70モル%がより好ましく、40モル%~60モル%がさらに好ましい。
【0382】
さらに、重合体Cにおける上記式(S)で表される構成単位及び上記式(Cy)で表される構成単位の総含有量は、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、重合体Cの全構成単位に対して、10モル%~80モル%が好ましく、20モル%~70モル%がより好ましく、40モル%~60モル%がさらに好ましい。
【0383】
また、重合体Cにおける上記式(S)で表される構成単位のモル量nSと上記式(Cy)で表される構成単位のモル量nCyは、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、下記式(SCy)に示す関係を満たすことが好ましく、下記式(SCy-1)を満たすことがより好ましく、下記式(SCy-2)を満たすことがさらに好ましい。
0.2≦nS/(nS+nCy)≦0.8 式(SCy)
0.30≦nS/(nS+nCy)≦0.75 式(SCy-1)
0.40≦nS/(nS+nCy)≦0.70 式(SCy-2)
【0384】
重合体Cは、現像性、及び、基板との密着性の観点から、酸基を有する構成単位を有することが好ましい。
上記酸基としては、カルボキシ基、スルホ基、ホスホン酸基、及び、リン酸基が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。
上記酸基を有する構成単位としては、下記に示す、(メタ)アクリル酸由来の構成単位が好ましく、メタクリル酸由来の構成単位がより好ましい。
【0385】
【0386】
重合体Cは、酸基を有する構成単位を1種単独で有していても、2種以上有していてもよい。
重合体Cが酸基を有する構成単位を有する場合、酸基を有する構成単位の含有量は、現像性、及び、基板との密着性の観点から、重合体Cの全構成単位に対して、5質量%~50質量%が好ましく、5質量%~40質量%がより好ましく、10質量%~30質量%がさらに好ましい。
また、重合体Cにおける酸基を有する構成単位の含有量は、現像性、及び、基板との密着性の観点、重合体Cの全構成単位に対して、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~50モル%がより好ましく、20モル%~40モル%がさらに好ましい。
さらに、重合体Cにおける(メタ)アクリル酸由来の構成単位の含有量は、現像性、及び、基板との密着性の観点から、重合体Cの全構成単位に対して、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~50モル%がより好ましく、20モル%~40モル%がさらに好ましい。
【0387】
重合体Cは、硬化性、及び、得られる硬化膜の強度の観点から、反応性基を有することが好ましく、反応性基を有する構成単位を有することがより好ましい。
【0388】
反応性基としては、ラジカル重合性基が好ましく、エチレン性不飽和基がより好ましい。また、重合体Cがエチレン性不飽和基を有している場合、重合体Cは、側鎖にエチレン性不飽和基を有する構成単位を有することが好ましい。
【0389】
本明細書において、「主鎖」とは、樹脂を構成する高分子化合物の分子中で相対的に最も長い結合鎖を表し、「側鎖」とは、主鎖から枝分かれしている原子団を表す。
エチレン性不飽和基としては、アリル基又は(メタ)アクリロキシ基がより好ましい。
反応性基を有する構成単位の一例としては、下記に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0390】
【0391】
重合体Cは、反応性基を有する構成単位を1種単独で有していても、2種以上有していてもよい。
【0392】
重合体Cが反応性基を有する構成単位を有する場合、反応性基を有する構成単位の含有量は、硬化性、及び、得られる硬化膜の強度の観点から、重合体Cの全構成単位に対して、5質量%~70質量%が好ましく、10質量%~50質量%がより好ましく、20質量%~40質量%がさらに好ましい。
【0393】
また、重合体Cにおける反応性基を有する構成単位の含有量は、硬化性、及び、得られる硬化膜の強度の観点から、重合体Cの全構成単位に対して、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~60モル%がより好ましく、20モル%~50モル%がさらに好ましい。
【0394】
反応性基を重合体Cに導入する手段としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、アセトアセチル基、及び、スルホ基等の官能基に、エポキシ化合物、ブロックイソシアネート化合物、イソシアネート化合物、ビニルスルホン化合物、アルデヒド化合物、メチロール化合物、及び、カルボン酸無水物等の化合物を反応させる方法が挙げられる。
【0395】
反応性基を重合体Cに導入する手段の好ましい例としては、カルボキシ基を有するポリマーを重合反応により合成した後、高分子反応により、得られた樹脂のカルボキシ基の一部にグリシジル(メタ)アクリレートを反応させて、(メタ)アクリロキシ基をポリマーに導入する手段が挙げられる。この手段により、側鎖に(メタ)アクリロキシ基を有する重合体Cを得ることができる。
【0396】
上記重合反応は、70℃~100℃の温度条件で行うことが好ましく、80℃~90℃の温度条件で行うことがより好ましい。上記重合反応に用いる重合開始剤としては、アゾ系開始剤が好ましく、例えば、富士フイルム和光純薬(株)製のV-601(商品名)又はV-65(商品名)がより好ましい。上記高分子反応は、80℃~110℃の温度条件で行うことが好ましい。上記高分子反応においては、アンモニウム塩等の触媒を用いることが好ましい。
【0397】
重合体Cとしては、本開示における効果がより優れる点から、以下に示す樹脂が好ましい。なお、以下に示す各構成単位の含有比率(a~d)及び重量平均分子量Mw等は目的に応じて適宜変更できる。
【0398】
【0399】
上記樹脂において、aは20質量%~60質量%、bは10質量%~50質量%、cは5.0質量%~25質量%、dは10質量%~50質量%であることが好ましい。
【0400】
【0401】
上記樹脂において、aは20質量%~60質量%、bは10質量%~50質量%、cは5.0質量%~25質量%、dは10質量%~50質量%であることが好ましい。
【0402】
【0403】
上記樹脂において、aは30質量%~65質量%、bは1.0質量%~20質量%、cは5.0質量%~25質量%、dは10質量%~50質量%であることが好ましい。
【0404】
【0405】
上記化合物において、aは1.0質量%~20質量%、bは20質量%~60質量%、cは5.0質量%~25質量%、dは10質量%~50質量%であることが好ましい。
【0406】
また、重合体Cは、カルボン酸無水物構造を有する構成単位を有する重合体(以下、「重合体C1」ともいう。)を含んでいてもよい。
カルボン酸無水物構造は、鎖状カルボン酸無水物構造、及び、環状カルボン酸無水物構造のいずれであってもよいが、環状カルボン酸無水物構造であることが好ましい。
環状カルボン酸無水物構造の環としては、5員環~7員環が好ましく、5員環又は6員環がより好ましく、5員環がさらに好ましい。
【0407】
カルボン酸無水物構造を有する構成単位は、下記式P-1で表される化合物から水素原子を2つ除いた2価の基を主鎖中に含む構成単位、又は、下記式P-1で表される化合物から水素原子を1つ除いた1価の基が主鎖に対して直接又は2価の連結基を介して結合している構成単位であることが好ましい。
【0408】
【0409】
式P-1中、RA1aは、置換基を表し、n1a個のRA1aは、同一でも異なっていてもよく、Z1aは、-C(=O)-O-C(=O)-を含む環を形成する2価の基を表し、n1aは、0以上の整数を表す。
【0410】
RA1aで表される置換基としては、例えば、アルキル基が挙げられる。
Z1aとしては、炭素数2~4のアルキレン基が好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基がより好ましく、炭素数2のアルキレン基がさらに好ましい。
n1aは、0以上の整数を表す。Z1aが炭素数2~4のアルキレン基を表す場合、n1aは、0~4の整数であることが好ましく、0~2の整数であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。
n1aが2以上の整数を表す場合、複数存在するRA1aは、同一でも異なっていてもよい。また、複数存在するRA1aは、互いに結合して環を形成してもよいが、互いに結合して環を形成していないことが好ましい。
【0411】
カルボン酸無水物構造を有する構成単位としては、不飽和カルボン酸無水物に由来する構成単位が好ましく、不飽和環式カルボン酸無水物に由来する構成単位がより好ましく、不飽和脂肪族環式カルボン酸無水物に由来する構成単位がさらに好ましく、無水マレイン酸又は無水イタコン酸に由来する構成単位が特に好ましく、無水マレイン酸に由来する構成単位が最も好ましい。
【0412】
以下、カルボン酸無水物構造を有する構成単位の具体例を挙げるが、カルボン酸無水物構造を有する構成単位は、これらの具体例に限定されるものではない。下記の構成単位中、Rxは、水素原子、メチル基、CH2OH基、又は、CF3基を表し、Meは、メチル基を表す。
【0413】
【0414】
【0415】
重合体C1におけるカルボン酸無水物構造を有する構成単位は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0416】
カルボン酸無水物構造を有する構成単位の総含有量は、重合体C1の全構成単位に対して、0モル%~60モル%が好ましく、5モル%~40モル%がより好ましく、10モル%~35モル%がさらに好ましい。
【0417】
感光性樹脂層は、重合体C1を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
感光性樹脂層が重合体C1を含む場合、解像性及び現像性の観点から、重合体C1の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%~30質量%が好ましく、0.2質量%~20質量%がより好ましく、0.5質量%~20質量%がさらに好ましく、1質量%~20質量%がさらに好ましい。
【0418】
重合体Cの重量平均分子量(Mw)は、解像性及び現像性を向上させる観点から5,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく、10,000~50,000がさらに好ましく、20,000~30,000が特に好ましい。
【0419】
重合体Cの酸価は、10mgKOH/g~200mgKOH/gが好ましく、60mgKOH/g~200mgKOH/gがより好ましく、60mgKOH/g~150mgKOH/gがさらに好ましく、60mgKOH/g~110mgKOH/gが特に好ましい。
なお、重合体Cの酸価は、JIS K0070:1992に記載の方法に従って、測定される値である。
重合体Cの分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、現像性の観点から、1.0~6.0が好ましく、1.0~5.0がより好ましく、1.0~4.0がさらに好ましく、1.0~3.0が特に好ましい。
【0420】
感光性樹脂層は、重合体Cを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
重合体Cの含有量は、感光性、解像性及び現像性の観点から、感光性樹脂層の全質量に対して、10質量%~90質量%が好ましく、20質量%~80質量%がより好ましく、30質量%~70質量%がさらに好ましい。
【0421】
<重合性化合物D>
感光性樹脂層は、重合性化合物Dを含んでいてもよい。
重合性化合物Dは、重合性基を有する化合物である。重合性基としては、例えば、ラジカル重合性基、及び、カチオン重合性基が挙げられ、ラジカル重合性基が好ましい。
【0422】
重合性化合物Dは、エチレン性不飽和基を有する重合性化合物(以下、単に「エチレン性不飽和化合物」ともいう。)を含むことが好ましい。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロキシ基が好ましい。
なお、本明細書における重合性化合物Dは、上記重合体C以外の化合物であり、分子量5,000未満であることが好ましい。
また、第2実施形態の感光性樹脂層に用いられる重合性化合物Dの好ましい態様としては、上述した第1実施形態の感光性樹脂層に用いられる重合性化合物Bの好ましい態様が挙げられる。
【0423】
エチレン性不飽和化合物の好適態様の一つとして、下記式(M)で表される化合物(単に、「化合物M」ともいう。)が挙げられる。
Q2-R1-Q1 式(M)
式(M)中、Q1及びQ2はそれぞれ独立に、(メタ)アクリロイルオキシ基を表し、R1は鎖状構造を有する二価の連結基を表す。
【0424】
式(M)におけるQ1及びQ2は、合成容易性の点から、Q1及びQ2は同じ基であることが好ましい。
また、式(M)におけるQ1及びQ2は、反応性の点から、アクリロイルオキシ基であることが好ましい。
式(M)におけるR1としては、現像残渣抑制性、防錆性、得られる硬化膜の曲げ耐性の観点から、アルキレン基、アルキレンオキシアルキレン基(-L1-O-L1-)、又は、ポリアルキレンオキシアルキレン基(-(L1-O)p-L1-)が好ましく、炭素数2~20の炭化水素基、又は、ポリアルキレンオキシアルキレン基がより好ましく、炭素数4~20のアルキレン基がさらに好ましく、炭素数6~18の直鎖アルキレン基が特に好ましい。
上記炭化水素基は、少なくとも一部に鎖状構造を有していればよく、上記鎖状構造以外の部分としては、特に制限はなく、例えば、分岐鎖状、環状、又は、炭素数1~5の直鎖状アルキレン基、アリーレン基、エーテル結合、及び、それらの組み合わせのいずれであってもよく、アルキレン基、又は、2以上のアルキレン基と1以上のアリーレン基とを組み合わせた基が好ましく、アルキレン基がより好ましく、直鎖アルキレン基がさらに好ましい。
なお、上記L1はそれぞれ独立に、アルキレン基を表し、エチレン基、プロピレン基、又は、ブチレン基が好ましく、エチレン基又は1,2-プロピレン基がより好ましい。
pは2以上の整数を表し、2~10の整数であることが好ましい。
【0425】
また、化合物MにおけるQ1とQ2との間を連結する最短の連結鎖の原子数は、現像残渣抑制性、防錆性、得られる硬化膜の曲げ耐性の観点から、3個~50個が好ましく、4個~40個がより好ましく、6個~20個がさらに好ましく、8個~12個が特に好ましい。
本明細書において、「Q1とQ2の間を連結する最短の連結鎖の原子数」とは、Q1に連結するR1における原子からQ2に連結するR1における原子までを連結する最短の連結鎖の原子数である。
【0426】
化合物Mの具体例としては、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7-ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、及び、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。上記エステルモノマーは混合物としても使用できる。
上記化合物の中でも、現像残渣抑制性、防錆性、得られる硬化膜の曲げ耐性の観点から、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、及び、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが好ましく、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、及び、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることがより好ましく、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、及び、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることがさらに好ましい。
【0427】
また、エチレン性不飽和化合物の好適態様の一つとして、2官能以上のエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
本明細書において、「2官能以上のエチレン性不飽和化合物」とは、一分子中にエチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物を意味する。
エチレン性不飽和化合物におけるエチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0428】
2官能のエチレン性不飽和化合物としては、特に制限はなく、公知の化合物の中から適宜選択できる。
上記化合物M以外の2官能のエチレン性不飽和化合物としては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、及び、1,4-シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0429】
2官能のエチレン性不飽和化合物の市販品としては、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(商品名:NKエステル A-DCP、新中村化学工業(株)製)、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(商品名:NKエステル DCP、新中村化学工業(株)製)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(商品名:NKエステル A-NOD-N、新中村化学工業(株)製)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(商品名:NKエステル A-HD-N、新中村化学工業(株)製)が挙げられる。
【0430】
3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、特に制限はなく、公知の化合物の中から適宜選択できる。
3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、ジペンタエリスリトール(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸(メタ)アクリレート、及び、グリセリントリ(メタ)アクリレート骨格の(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0431】
エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリレート化合物のカプロラクトン変性化合物(日本化薬(株)製KAYARAD(登録商標) DPCA-20、新中村化学工業(株)製A-9300-1CL等)、(メタ)アクリレート化合物のアルキレンオキサイド変性化合物(日本化薬(株)製KAYARAD(登録商標) RP-1040、新中村化学工業(株)製ATM-35E、A-9300、ダイセル・オルネクス社のEBECRYL(登録商標) 135等)、エトキシル化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業(株)製NKエステル A-GLY-9E等)も挙げられる。
【0432】
エチレン性不飽和化合物としては、ウレタン(メタ)アクリレート化合物も挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、ウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられ、例えば、プロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、並びに、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、ウレタン(メタ)アクリレートとしては、3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートも挙げられる。官能基数の下限としては、6官能以上がより好ましく、8官能以上がさらに好ましい。なお、官能基数の上限としては、20官能以下が好ましい。3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、8UX-015A(大成ファインケミカル(株)製)、UA-32P(新中村化学工業(株)製)、U-15HA(新中村化学工業(株)製)、UA-1100H(新中村化学工業(株)製)、共栄社化学(株)製のAH-600(商品名)、並びに、UA-306H、UA-306T、UA-306I、UA-510H、及びUX-5000(いずれも日本化薬(株)製)等が挙げられる。
【0433】
エチレン性不飽和化合物の好適態様の一つとして、酸基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
酸基としては、リン酸基、スルホ基、及び、カルボキシ基が挙げられる。
これらの中でも、酸基としては、カルボキシ基が好ましい。
酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、酸基を有する3官能~4官能のエチレン性不飽和化合物〔ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート(PETA)骨格にカルボキシ基を導入したもの(酸価:80mgKOH/g~120mgKOH/g)〕、酸基を有する5官能~6官能のエチレン性不飽和化合物(ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(DPHA)骨格にカルボキシ基を導入したもの〔酸価:25mgKOH/g~70mgKOH/g)〕等が挙げられる。
これら酸基を有する3官能以上のエチレン性不飽和化合物は、必要に応じ、酸基を有する2官能のエチレン性不飽和化合物と併用してもよい。
【0434】
酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、カルボキシ基を有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物及びそのカルボン酸無水物よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
酸基を有するエチレン性不飽和化合物が、カルボキシ基を有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物及びそのカルボン酸無水物よりなる群から選ばれる少なくとも1種であると、現像性及び膜強度がより高まる。
カルボキシ基を有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物は、特に制限されず、公知の化合物の中から適宜選択できる。
カルボキシ基を有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、アロニックス(登録商標)TO-2349(東亞合成(株)製)、アロニックス(登録商標)M-520(東亞合成(株)製)、アロニックス(登録商標)M-510(東亞合成(株)製)が挙げられる。
【0435】
酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、特開2004-239942号公報の段落0025~0030に記載の酸基を有する重合性化合物が好ましく、この公報に記載の内容は、本明細書に組み込まれる。
【0436】
エチレン性不飽和化合物としては、例えば、多価アルコールにα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、グリシジル基含有化合物にα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー、γ-クロロ-β-ヒドロキシプロピル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート、β-ヒドロキシエチル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート、及び、β-ヒドロキシプロピル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート等のフタル酸系化合物、並びに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルも挙げられる。
これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0437】
多価アルコールにα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、及び、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等のビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、エチレンオキサイド基の数が2~14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド基の数が2~14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド基の数が2~14であり、かつ、プロピレンオキサイド基の数が2~14であるポリエチレンポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンペンタエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、並びに、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
中でも、テトラメチロールメタン構造又はトリメチロールプロパン構造を有するエチレン不飽和化合物が好ましく、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、又は、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレートがより好ましい。
【0438】
エチレン性不飽和化合物としては、エチレン性不飽和化合物のカプロラクトン変性化合物(例えば、日本化薬(株)製KAYARAD(登録商標)DPCA-20、新中村化学工業(株)製A-9300-1CL等)、エチレン性不飽和化合物のアルキレンオキサイド変性化合物(例えば、日本化薬(株)製KAYARAD RP-1040、新中村化学工業(株)製ATM-35E、A-9300、ダイセル・オルネクス社製EBECRYL(登録商標)135等)、エトキシル化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業(株)製A-GLY-9E等)等も挙げられる。
【0439】
エチレン性不飽和化合物としては、現像性に優れる観点から、エステル結合を含むものも好ましい。
エステル結合を含むエチレン性不飽和化合物としては、分子内にエステル結合を含むものであれば特に制限されないが、硬化性及び現像性に優れる観点から、テトラメチロールメタン構造又はトリメチロールプロパン構造を有するエチレン不飽和化合物が好ましく、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、又は、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレートがより好ましい。
信頼性付与の点からは、エチレン性不飽和化合物としては、炭素数6~20の脂肪族基を有するエチレン性不飽和化合物と、上記のテトラメチロールメタン構造又はトリメチロールプロパン構造を有するエチレン不飽和化合物と、を含むことが好ましい。
炭素数6以上の脂肪族構造を有するエチレン性不飽和化合物としては、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、及び、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0440】
エチレン性不飽和化合物の好適態様の一つとしては、脂肪族炭化水素環構造を有するエチレン性不飽和化合物(好ましくは、2官能エチレン性不飽和化合物)が挙げられる。
上記エチレン性不飽和化合物としては、2環以上の脂肪族炭化水素環が縮環した環構造(好ましくは、トリシクロデカン構造及びトリシクロデセン構造よりなる群から選択される構造)を有するエチレン性不飽和化合物が好ましく、2環以上の脂肪族炭化水素環が縮環した環構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物がより好ましく、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
上記脂肪族炭化水素環構造としては、得られる硬化膜の透湿度及び曲げ耐性、並びに、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、トリシクロデカン構造、トリシクロデセン構造、ノルボルナン構造、又は、イソボロン構造が好ましい。
【0441】
エチレン性不飽和化合物の分子量は、200~3,000が好ましく、250~2,600がより好ましく、280~2,200がさらに好ましく、300~2,200が特に好ましい。
感光性樹脂層に含まれるエチレン性不飽和化合物のうち、分子量300以下のエチレン性不飽和化合物の含有量の割合は、感光性樹脂層に含まれる全てのエチレン性不飽和化合物の含有量に対して、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。
【0442】
感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、3官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことがより好ましく、3官能又は4官能のエチレン性不飽和化合物を含むことがさらに好ましい。
【0443】
また、感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、脂肪族炭化水素環構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物と、脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位を有する重合体とを含むことが好ましい。
【0444】
また、感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、式(M)で表される化合物と、酸基を有するエチレン性不飽和化合物とを含むことが好ましく、1,9-ノナンジオールジアクリレートと、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートと、カルボン酸基を有する多官能エチレン性不飽和化合物とを含むことがより好ましく、1,9-ノナンジオールジアクリレートと、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートと、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートのコハク酸変性体とを含むことがさらに好ましい。
【0445】
また、感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、式(M)で表される化合物と、酸基を有するエチレン性不飽和化合物と、後述する熱架橋性化合物とを含むことが好ましく、式(M)で表される化合物と、酸基を有するエチレン性不飽和化合物と、後述するブロックイソシアネート化合物とを含むことがより好ましい。
【0446】
また、感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、現像残渣抑制性、及び、防錆性の点から、2官能のエチレン性不飽和化合物(好ましくは、2官能の(メタ)アクリレート化合物)と、3官能以上のエチレン性不飽和化合物(好ましくは、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物)と、を含むことが好ましい。
2官能のエチレン性不飽和化合物と、3官能以上のエチレン性不飽和化合物の含有量の質量比は10:90~90:10が好ましく、30:70~70:30がより好ましい。
全てのエチレン性不飽和化合物の合計量に対する、2官能のエチレン性不飽和化合物の含有量は、20質量%~80質量%が好ましく、30質量%~70質量%がより好ましい。
感光性樹脂層における2官能のエチレン性不飽和化合物の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対し、10質量%~60質量%が好ましく、15質量%~40質量%がより好ましい。
【0447】
また、感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、防錆性の点から、化合物M、及び、脂肪族炭化水素環構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物を含むことが好ましい。
また、感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、基板密着性、現像残渣抑制性、及び、防錆性の点から、化合物M、及び、酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、化合物M、脂肪族炭化水素環構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物、及び、酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含むことがより好ましく、化合物M、脂肪族炭化水素環構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物、3官能以上のエチレン性不飽和化合物、及び、酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含むことがさらに好ましく、化合物M、脂肪族炭化水素環構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物、3官能以上のエチレン性不飽和化合物、酸基を有するエチレン性不飽和化合物、及び、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含むことが特に好ましい。
また、感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、基板密着性、現像残渣抑制性、及び、防錆性の点から、1,9-ノナンジオールジアクリレート、及び、カルボン酸基を有する多官能エチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、及び、カルボン酸基を有する多官能エチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及び、カルボン酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含むことがさらに好ましく、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、カルボン酸基を有するエチレン性不飽和化合物、及び、ウレタンアクリレート化合物を含むことが特に好ましい。
【0448】
感光性樹脂層は、エチレン性不飽和化合物として、単官能エチレン性不飽和化合物を含んでいてもよい。
上記エチレン性不飽和化合物における2官能以上のエチレン性不飽和化合物の含有量は、感光性樹脂層に含まれる全てのエチレン性不飽和化合物の総含有量に対し、60質量%~100質量%が好ましく、80質量%~100質量%がより好ましく、90質量%~100質量%がさらに好ましい。
【0449】
エチレン性不飽和化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
感光性樹脂層におけるエチレン性不飽和化合物の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、1質量%~70質量%が好ましく、5質量%~70質量%がより好ましく、5質量%~60質量%がさらに好ましく、5質量%~50質量%が特に好ましい。
【0450】
<重合開始剤>
感光性樹脂層は、重合開始剤を含む。
重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましい。
第2実施形態の感光性樹脂層に用いられる重合開始剤の好ましい態様としては、上述した第1実施形態の感光性樹脂層に用いられる重合開始剤の好ましい態様が挙げられる。
重合開始剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
重合開始剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることがさらに好ましい。また、その上限値としては、感光性樹脂層の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることより好ましい。
【0451】
<複素環化合物>
感光性樹脂層は、複素環化合物を含んでいてもよい。
複素環化合物が有する複素環は、単環及び多環のいずれの複素環でもよい。
複素環化合物が有するヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が挙げられる。複素環化合物は、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種の原子を有することが好ましく、窒素原子を有することがより好ましい。
【0452】
複素環化合物としては、例えば、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、トリアジン化合物、ローダニン化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ベンゾオキサゾール化合物、及び、ピリミジン化合物が挙げられる。
上記の中でも、複素環化合物としては、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、トリアジン化合物、ローダニン化合物、チアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、及び、ベンゾオキサゾール化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましく、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、及び、ベンゾオキサゾール化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物がより好ましい。
【0453】
複素環化合物の好ましい具体例を以下に示す。トリアゾール化合物及びベンゾトリアゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0454】
【0455】
【0456】
テトラゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0457】
【0458】
【0459】
チアジアゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0460】
【0461】
トリアジン化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0462】
【0463】
ローダニン化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0464】
【0465】
チアゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0466】
【0467】
ベンゾチアゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0468】
【0469】
ベンゾイミダゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0470】
【0471】
【0472】
ベンゾオキサゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
【0473】
【0474】
複素環化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
感光性樹脂層が複素環化合物を含む場合、複素環化合物の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~20.0質量%が好ましく、0.10質量%~10.0質量%がより好ましく、0.30質量%~8.0質量%がさらに好ましく、0.50質量%~5.0質量%が特に好ましい。
【0475】
<脂肪族チオール化合物>
感光性樹脂層は、脂肪族チオール化合物を含んでいてもよい。
感光性樹脂層が脂肪族チオール化合物を含むことで、脂肪族チオール化合物がエチレン性不飽和化合物との間でエン-チオール反応することで、形成される膜の硬化収縮が抑えられ、応力が緩和される。
【0476】
脂肪族チオール化合物としては、単官能の脂肪族チオール化合物、又は、多官能の脂肪族チオール化合物(すなわち、2官能以上の脂肪族チオール化合物)が好ましい。
上記の中でも、脂肪族チオール化合物としては、形成されるパターンの密着性(特に、露光後における密着性)の点から、多官能の脂肪族チオール化合物がより好ましい。
本明細書において、「多官能の脂肪族チオール化合物」とは、チオール基(「メルカプト基」ともいう。)を分子内に2個以上有する脂肪族化合物を意味する。
【0477】
多官能の脂肪族チオール化合物としては、分子量が100以上の低分子化合物が好ましい。具体的には、多官能の脂肪族チオール化合物の分子量は、100~1,500がより好ましく、150~1,000がさらに好ましい。
【0478】
多官能の脂肪族チオール化合物の官能基数としては、例えば、形成されるパターンの密着性の点から、2官能~10官能が好ましく、2官能~8官能がより好ましく、2官能~6官能がさらに好ましい。
【0479】
多官能の脂肪族チオール化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、トリス[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビスチオプロピオネート、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,6-ヘキサメチレンジチオール、2,2’-(エチレンジチオ)ジエタンチオール、meso-2,3-ジメルカプトコハク酸、及び、ジ(メルカプトエチル)エーテルが挙げられる。
【0480】
上記の中でも、多官能の脂肪族チオール化合物としては、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、及び、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0481】
単官能の脂肪族チオール化合物としては、例えば、1-オクタンチオール、1-ドデカンチオール、β-メルカプトプロピオン酸、メチル-3-メルカプトプロピオネート、2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート、メトキシブチル-3-メルカプトプロピオネート、及び、ステアリル-3-メルカプトプロピオネートが挙げられる。
【0482】
感光性樹脂層は、1種単独の脂肪族チオール化合物を含んでいてもよく、2種以上の脂肪族チオール化合物を含んでいてもよい。
感光性樹脂層が脂肪族チオール化合物を含む場合、脂肪族チオール化合物の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、5質量%以上が好ましく、5質量%~50質量%がより好ましく、5質量%~30質量%がさらに好ましく、8質量%~20質量%が特に好ましい。
【0483】
<熱架橋性化合物>
感光性樹脂層は、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の点から、熱架橋性化合物を含むことが好ましい。
第2実施形態の感光性樹脂層に用いられる熱架橋性化合物としては、第1実施形態の感光性樹脂層において上述した熱架橋性化合物が好適に用いられる。
熱架橋性化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
感光性樹脂層が熱架橋性化合物を含む場合、熱架橋性化合物の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、1質量%~50質量%が好ましく、5質量%~30質量%がより好ましい。
【0484】
<界面活性剤>
感光性樹脂層は、界面活性剤を含んでいてもよい。
第2実施形態の感光性樹脂層に用いられる界面活性剤としては、第1実施形態の感光性樹脂層において上述した界面活性剤が好適に用いられる。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
感光性樹脂層が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~3.0質量%が好ましく、0.01質量%~1.0質量%がより好ましく、0.05質量%~0.80質量%がさらに好ましい。
【0485】
<ラジカル重合禁止剤>
感光性樹脂層は、ラジカル重合禁止剤を含んでいてもよい。
第2実施形態の感光性樹脂層に用いられるラジカル重合禁止剤としては、第1実施形態の感光性樹脂層において上述したラジカル重合禁止剤が好適に用いられる。
ラジカル重合禁止剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
感光性樹脂層がラジカル重合禁止剤を含む場合、ラジカル重合禁止剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~3質量%が好ましく、0.05質量%~1質量%がより好ましい。含有量が0.01質量%以上の場合、感光性樹脂層の保存安定性がより優れる。一方、含有量が3質量%以下である場合、感度の維持及び染料の脱色の抑制がより優れる。
【0486】
<水素供与性化合物>
感光性樹脂層は、水素供与性化合物を含んでいてもよい。
水素供与性化合物は、光重合開始剤の活性光線に対する感度を一層向上させる、及び、酸素による重合性化合物の重合阻害を抑制する等の作用を有する。
水素供与性化合物としては、例えば、アミン類、及び、アミノ酸化合物が挙げられる。
【0487】
アミン類としては、例えば、M.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44-020189号公報、特開昭51-082102号公報、特開昭52-134692号公報、特開昭59-138205号公報、特開昭60-084305号公報、特開昭62-018537号公報、特開昭64-033104号公報、及び、Research Disclosure 33825号等に記載の化合物が挙げられる。より具体的には、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、トリス(4-ジメチルアミノフェニル)メタン(別名:ロイコクリスタルバイオレット)、トリエタノールアミン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p-ホルミルジメチルアニリン、及び、p-メチルチオジメチルアニリンが挙げられる。
中でも、感度、硬化速度、及び、硬化性の観点から、アミン類としては、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、及び、トリス(4-ジメチルアミノフェニル)メタンよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0488】
アミノ酸化合物としては、例えば、N-フェニルグリシン、N-メチル-N-フェニルグリシン、N-エチル-N-フェニルグリシンが挙げられる。
中でも、感度、硬化速度、及び、硬化性の観点から、アミノ酸化合物としては、N-フェニルグリシンが好ましい。
【0489】
また、水素供与性化合物としては、例えば、特公昭48-042965号公報に記載の有機金属化合物(トリブチル錫アセテート等)、特公昭55-034414号公報に記載の水素供与体、及び、特開平6-308727号公報に記載のイオウ化合物(トリチアン等)も挙げられる。
【0490】
水素供与性化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
感光性樹脂層が水素供与性化合物を含む場合、水素供与性化合物の含有量は、重合成長速度と連鎖移動のバランスとによる硬化速度の向上の点から、感光性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~10.0質量%が好ましく、0.01質量%~8.0質量%がより好ましく、0.03質量%~5.0質量%がさらに好ましい。
【0491】
<不純物等>
感光性樹脂層は、所定量の不純物を含んでいてもよい。
第2実施形態の感光性樹脂層における不純物については、第1実施形態の感光性樹脂層において上述した不純物の好ましい態様と同様である。
【0492】
<残存モノマー>
感光性樹脂層は、上述した重合体Cの各構成単位に対応する残存モノマーを含む場合がある。
第2実施形態の感光性樹脂層における重合体Cの各構成単位に対応する残存モノマーについては、第1実施形態の感光性樹脂層において上述した重合体Aの各構成単位に対応する残存モノマーの好ましい態様と同様である。
【0493】
<他の成分>
感光性樹脂層は、既述の成分以外の成分(以下、「他の成分」ともいう。)を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、着色剤、酸化防止剤、及び、粒子(例えば、金属酸化物粒子)が挙げられる。また、他の成分としては、特開2000-310706号公報の段落0058~0071に記載のその他の添加剤も挙げられる。
【0494】
-粒子-
粒子としては、金属酸化物粒子が好ましい。
金属酸化物粒子における金属には、B、Si、Ge、As、Sb、及び、Te等の半金属も含まれる。
粒子の平均一次粒子径は、例えば、硬化膜の透明性の点から、1nm~200nmが好ましく、3nm~80nmがより好ましい。
粒子の平均一次粒子径は、電子顕微鏡を用いて任意の粒子200個の粒子径を測定し、測定結果を算術平均することにより算出される。なお、粒子の形状が球形でない場合には、最も長い辺を粒子径とする。
【0495】
感光性樹脂層が粒子を含む場合、金属種、及び、大きさ等の異なる粒子を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
感光性樹脂層は、粒子を含まないか、又は、感光性樹脂層が粒子を含む場合には、粒子の含有量が感光性樹脂層の全質量に対して、0質量%超35質量%以下が好ましい。また、感光性樹脂層は、粒子を含まないか、又は、粒子の含有量が感光性樹脂層の全質量に対して、0質量%超10質量%以下がより好ましい。さらに、感光性樹脂層は、粒子を含まないか、又は、粒子の含有量が感光性樹脂層の全質量に対して0質量%超5質量%以下がさらに好ましい。また、感光性樹脂層は、粒子を含まないか、又は、粒子の含有量が感光性樹脂層の全質量に対して0質量%超1質量%以下がさらに好ましく、粒子を含まないことが特に好ましい。
【0496】
-着色剤-
感光性樹脂層は、着色剤(顔料、染料等)を含んでいてもよいが、例えば、透明性の点からは、着色剤を実質的に含まないことが好ましい。
感光性樹脂層が着色剤を含む場合、着色剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、1質量%未満が好ましく、0.1質量%未満がより好ましい。
【0497】
-酸化防止剤-
酸化防止剤としては、例えば、1-フェニル-3-ピラゾリドン(別名:フェニドン)、1-フェニル-4,4-ジメチル-3-ピラゾリドン、及び、1-フェニル-4-メチル-4-ヒドロキシメチル-3-ピラゾリドン等の3-ピラゾリドン類;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、及び、クロルハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類;パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、パラヒドロキシフェニルグリシン、及び、パラフェニレンジアミンが挙げられる。
中でも、保存安定性、及び、硬化性の観点から、酸化防止剤としては、3-ピラゾリドン類が好ましく、1-フェニル-3-ピラゾリドンがより好ましい。
【0498】
感光性樹脂層が酸化防止剤を含む場合、酸化防止剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上がさらに好ましい。上限は特に制限されないが、1質量%以下が好ましい。
【0499】
<感光性樹脂層の厚さ>
感光性樹脂層の厚さ(層厚)は、特に制限されないが、現像性及び解像性の観点から、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、15μm以下がさらに好ましく、10μm以下が特に好ましく、5.0μm以下が最も好ましい。下限としては、感光性樹脂層を硬化して得られる膜の強度が優れる点で、0.60μm以上が好ましく、1.5μm以上がより好ましい。
【0500】
<感光性樹脂層の屈折率>
感光性樹脂層の屈折率は、1.47~1.56が好ましく、1.49~1.54がより好ましい。
【0501】
<感光性樹脂層の色>
感光性樹脂層は無彩色であることが好ましい。具体的には、全反射(入射角8°、光源:D-65(2°視野))が、CIE1976(L*,a*,b*)色空間において、L*値は10~90であることが好ましく、a*値は-1.0~1.0であることが好ましく、b*値は-1.0~1.0であることが好ましい。
【0502】
なお、感光性樹脂層を硬化して得られるパターン(感光性樹脂層の硬化膜)は、無彩色であることが好ましい。
具体的には、全反射(入射角8°、光源:D-65(2°視野))が、CIE1976(L*,a*,b*)色空間において、パターンのL*値は10~90であることが好ましく、パターンのa*値は-1.0~1.0であることが好ましく、パターンのb*値は-1.0~1.0であることが好ましい。
【0503】
<感光性樹脂層の透湿度>
感光性樹脂層を硬化して得られるパターン(感光性樹脂層の硬化膜)の層厚40μmでの透湿度は、防錆性の観点から、500g/(m2・24hr)以下であることが好ましく、300g/(m2・24hr)以下であることがより好ましく、100g/(m2・24hr)以下であることがさらに好ましい。
なお、透湿度は、感光性樹脂層を、i線によって露光量300mJ/cm2にて露光した後、145℃、30分間のポストベークを行うことにより、感光性樹脂層を硬化させた硬化膜で測定する。
【0504】
〔屈折率調整層〕
感光性転写材料は、屈折率調整層を有していることが好ましい。
屈折率調整層としては、公知の屈折率調整層を適用できる。屈折率調整層に含まれる材料としては、例えば、アルカリ可溶性樹脂、エチレン性不飽和化合物、金属塩、及び、粒子が挙げられる。
屈折率調整層の屈折率を制御する方法は、特に制限されず、例えば、所定の屈折率の樹脂を単独で用いる方法、樹脂と粒子とを用いる方法、及び、金属塩と樹脂との複合体を用いる方法が挙げられる。
【0505】
アルカリ可溶性樹脂及びエチレン性不飽和化合物としては、例えば、上記「感光性樹脂層」の項において説明したアルカリ可溶性樹脂及びエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
【0506】
粒子としては、例えば、金属酸化物粒子、及び、金属粒子が挙げられる。
金属酸化物粒子の種類は特に制限はなく、公知の金属酸化物粒子が挙げられる。金属酸化物粒子における金属には、B、Si、Ge、As、Sb、及び、Te等の半金属も含まれる。
【0507】
粒子の平均一次粒子径は、例えば、硬化膜の透明性の点から、1nm~200nmが好ましく、3nm~80nmがより好ましい。
粒子の平均一次粒子径は、電子顕微鏡を用いて任意の粒子200個の粒子径を測定し、測定結果を算術平均することにより算出される。なお、粒子の形状が球形でない場合には、最も長い辺を粒子径とする。
【0508】
金属酸化物粒子としては、具体的には、酸化ジルコニウム粒子(ZrO2粒子)、Nb2O5粒子、酸化チタン粒子(TiO2粒子)、二酸化珪素粒子(SiO2粒子)、及び、これらの複合粒子よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
これらの中でも、金属酸化物粒子としては、例えば、屈折率を調整しやすいという点から、酸化ジルコニウム粒子及び酸化チタン粒子よりなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0509】
金属酸化物粒子の市販品としては、焼成酸化ジルコニウム粒子(CIKナノテック(株)製、製品名:ZRPGM15WT%-F04)、焼成酸化ジルコニウム粒子(CIKナノテック(株)製、製品名:ZRPGM15WT%-F74)、焼成酸化ジルコニウム粒子(CIKナノテック(株)製、製品名:ZRPGM15WT%-F75)、焼成酸化ジルコニウム粒子(CIKナノテック(株)製、製品名:ZRPGM15WT%-F76)、酸化ジルコニウム粒子(ナノユースOZ-S30M、日産化学工業(株)製)、及び、酸化ジルコニウム粒子(ナノユースOZ-S30K、日産化学工業(株)製)が挙げられる。
【0510】
粒子は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
屈折率調整層における粒子の含有量は、屈折率調整層の全質量に対し、1質量%~95質量%が好ましく、20質量%~90質量%がより好ましく、40質量%~85質量%がさらに好ましい。
金属酸化物粒子として酸化チタンを用いる場合、酸化チタン粒子の含有量は、屈折率調整層の全質量に対して、1質量%~95質量%が好ましく、20質量%~90質量%がより好ましく、40質量%~85質量%がさらに好ましい。
【0511】
屈折率調整層の屈折率は、感光性樹脂層の屈折率よりも高いことが好ましい。
屈折率調整層の屈折率は、1.50以上が好ましく、1.55以上がより好ましく、1.60以上がさらに好ましく、1.65以上が特に好ましい。屈折率調整層の屈折率の上限は、2.10以下が好ましく、1.85以下がより好ましく、1.78以下が特に好ましい。
【0512】
屈折率調整層の厚さは、50nm~500nmが好ましく、55nm~110nmがより好ましく、60nm~100nmがさらに好ましい。
【0513】
<仮支持体、感光性樹脂層及びカバーフィルムの関係>
第2実施形態においても、第1実施形態で記載した、仮支持体、感光性樹脂層及びカバーフィルムの関係を満たすことが好ましい。
【0514】
<第2実施形態の感光性転写材料の製造方法>
第2実施形態の感光性転写材料の製造方法は特に制限されず、公知の方法を使用できる。
図2に示す感光性転写材料10の製造方法としては、例えば、仮支持体1の表面に感光性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、さらにこの塗膜を乾燥して感光性樹脂層3を形成する工程と、感光性樹脂層3の表面に屈折率調整層形成用組成物を塗布して塗膜を形成し、さらにこの塗膜を乾燥して屈折率調整層5を形成する工程と、を含む方法が挙げられる。
【0515】
上述の製造方法により製造された積層体の屈折率調整層5上に、カバーフィルム7を圧着させることにより、感光性転写材料10が製造される。
第1実施形態の感光性転写材料の製造方法としては、屈折率調整層5の仮支持体1を有する側とは反対側の面に接するようにカバーフィルム7を設ける工程を含むことにより、仮支持体1、感光性樹脂層3、屈折率調整層5、及びカバーフィルム7を備える感光性転写材料10を製造することが好ましい。
上記の製造方法により感光性転写材料10を製造した後、感光性転写材料10を巻き取ることにより、ロール形態の感光性転写材料を作製及び保管してもよい。ロール形態の感光性転写材料は、後述するロールツーロール方式での基板との貼合工程にそのままの形態で提供できる。
【0516】
また、上記の感光性転写材料10の製造方法としては、カバーフィルム7上に、屈折率調整層5を形成した後、屈折率調整層5の表面に感光性樹脂層3を形成する方法であってもよい。
また、上記の感光性転写材料10の製造方法としては、仮支持体1上に感光性樹脂層3を形成し、別途、カバーフィルム7上に屈折率調整層5を形成し、感光性樹脂層3とに屈折率調整層5とを貼り合わせて形成する方法であってもよい。
【0517】
第2実施形態における感光性樹脂組成物及び感光性樹脂層の形成方法については、第1実施形態において上述した感光性樹脂組成物及び感光性樹脂層の形成方法と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0518】
<屈折率調整層形成用組成物及び屈折率調整層の形成方法>
屈折率調整層形成用組成物としては、上述した屈折率調整層を形成する各種成分と溶剤とを含むことが好ましい。なお、屈折率調整層形成用組成物において、組成物の全固形分に対する各成分の含有量の好適範囲は、上述した屈折率調整層の全質量に対する各成分の含有量の好適範囲と同じである。
溶剤としては、屈折率調整層に含まれる成分を溶解又は分散可能であれば特に制限されず、水及び水混和性の有機溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、水又は水と水混和性の有機溶剤との混合溶剤がより好ましい。
水混和性の有機溶剤としては、例えば、炭素数1~3のアルコール、アセトン、エチレングリコール、及びグリセリンが挙げられ、炭素数1~3のアルコールが好ましく、メタノール又はエタノールがより好ましい。
溶剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
溶剤の含有量は、組成物の全固形分100質量部に対して、50質量部~2,500質量部が好ましく、50質量部~1,900質量部がより好ましく、100質量部~900質量部がさらに好ましい。
【0519】
屈折率調整層の形成方法は、上記の成分を含む層を形成可能な方法であれば特に制限されず、例えば、公知の塗布方法(スリット塗布、スピン塗布、カーテン塗布及びインクジェット塗布等)が挙げられる。
【0520】
また、カバーフィルムを屈折率調整層に貼り合わせることにより、第2実施形態の感光性転写材料を製造できる。
カバーフィルムを屈折率調整層に貼り合わせる方法は、特に制限されず、公知の方法が挙げられる。
カバーフィルムを屈折率調整層に貼り合わせる装置としては、真空ラミネーター、及び、オートカットラミネーター等の公知のラミネーターが挙げられる。
ラミネーターはゴムローラー等の任意の加熱可能なローラーを備え、加圧及び加熱ができるものであることが好ましい。
【0521】
[樹脂パターンの製造方法、及び、回路配線の製造方法]
樹脂パターンの製造方法は、上記の感光性転写材料を用いる樹脂パターンの製造方法であれば、特に制限されない。
【0522】
樹脂パターンの製造方法は、感光性転写材料における感光性樹脂層の仮支持体と対向していない側の面(すなわち、第2面)と基板とを貼り合わせる工程と(以下「貼り合わせ工程」ともいう。)と、感光性樹脂層をパターン露光する工程(以下「露光工程」ともいう。)と、パターン露光する工程後の感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程(以下「現像工程」ともいう。)と、をこの順に含む方法であることが好ましい。
【0523】
回路配線の製造方法は、上記の感光性転写材料を用いる回路配線の製造方法であれば、特に制限されない。
【0524】
回路配線の製造方法は、上記貼り合わせ工程と、上記露光工程と、上記現像工程と、樹脂パターンが配置されていない領域における基板をエッチング処理する工程(以下「エッチング工程」ともいう。)を含む方法であることが好ましい。
【0525】
以下、樹脂パターンの製造方法及び回路配線の製造方法が含む各工程について説明する。特に言及した場合を除き、樹脂パターンの製造方法に含まれる各工程について説明した内容は、回路配線の製造方法に含まれる各工程についても適用されるものとする。
【0526】
〔貼り合わせ工程〕
樹脂パターンの製造方法は、貼り合わせ工程を含むことが好ましい。
貼り合わせ工程においては、感光性樹脂層の第2面に基板(基板の表面に導電層が設けられている場合は導電層)を接触させ、感光性転写材料と基板とを圧着させることが好ましい。上記態様であると、感光性樹脂層の第2面と基板との密着性が向上するため、露光及び現像後のパターン形成された感光性樹脂層を、エッチングする際のエッチングレジストとして好適に用いることができる。
【0527】
なお、感光性転写材料がカバーフィルムを備える場合は、感光性樹脂層の表面からカバーフィルムを除去した後、貼り合わせればよい。
【0528】
また、貼り合わせ工程は、感光性転写材料が感光性樹脂層の第2面にカバーフィルム以外の層(例えば、高屈折率層及び低屈折率層からなる群より選択される少なくとも1種の層)をさらに備える場合、感光性樹脂層の第2面と基板とがその層を介して貼り合わされる態様となる。
【0529】
基板と感光性転写材料とを圧着する方法としては、特に制限されず、公知の転写方法、及び、ラミネート方法を用いることができる。
【0530】
感光性転写材料の基板への貼り合わせは、感光性樹脂層の第2面側に基板を重ね、ロール等の手段を用いて加圧及び加熱を施すことにより行われることが好ましい。貼り合わせには、ラミネーター、真空ラミネーター、及び、より生産性を高めることができるオートカットラミネーター等の公知のラミネーターが使用できる。
【0531】
貼り合わせ工程を含む樹脂パターンの製造方法及び回路配線の製造方法は、ロールツーロール方式により行われることが好ましい。
【0532】
以下、ロールツーロール方式について説明する。
ロールツーロール方式とは、基板として、巻き取り及び巻き出しが可能な基板を用い、樹脂パターンの製造方法又は回路配線の製造方法に含まれるいずれかの工程の前に、基板又は基板を含む構造体を巻き出す工程(「巻き出し工程」ともいう。)と、いずれかの工程の後に、基板又は基板を含む構造体を巻き取る工程(「巻き取り工程」ともいう。)と、を含み、少なくともいずれかの工程(好ましくは、全ての工程、又は加熱工程以外の全ての工程)を、基板又は基板を含む構造体を搬送しながら行う方式をいう。
【0533】
巻き出し工程における巻き出し方法、及び巻き取り工程における巻取り方法としては、特に制限されず、ロールツーロール方式を適用する製造方法において、公知の方法を用いればよい。
【0534】
<基板>
本開示に係る感光性転写材料を用いる樹脂パターンの形成に用いる基板としては、公知の基板を用いることができる。基板は、導電層を有する基板であることが好ましく、基材の表面に導電層を有する基板であることがより好ましい。
【0535】
基板は、必要に応じて導電層以外の任意の層を有してもよい。
【0536】
基板を構成する基材としては、例えば、ガラス、シリコン及び樹脂フィルムが挙げられる。
基材は透明であることが好ましい。本明細書において「透明である」とは、波長400nm~700nmの光の透過率が80%以上であることを意味する。また、基材の屈折率は、1.50~1.52であることが好ましい。
【0537】
透明なガラス基材としては、コーニング社のゴリラガラスに代表される強化ガラスが挙げられる。また、透明なガラス基材としては、特開2010-86684号公報、特開2010-152809号公報及び特開2010-257492号公報に記載の材料を用いることができる。
【0538】
基材として樹脂フィルムを用いる場合は、基材は、光学的に歪みが小さく、かつ/又は、透明度が高い樹脂フィルムであることが好ましい。そのような樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム及びシクロオレフィンポリマーフィルムが挙げられる。
【0539】
ロールツーロール方式で製造する場合、基材は、樹脂フィルムであることが好ましい。また、ロールツーロール方式によりタッチパネル用の回路配線を製造する場合、基材は、樹脂シートであることが好ましい。
【0540】
基板が有する導電層としては、一般的な回路配線又はタッチパネル配線に用いられる導電層が挙げられる。
【0541】
導電層は、導電性及び細線形成性の観点から、金属層、導電性金属酸化物層、グラフェン層、カーボンナノチューブ層及び導電ポリマー層からなる群より選択される少なくとも1種の層であることが好ましく、金属層であることがより好ましく、銅層又は銀層であることがさらに好ましい。
【0542】
基板は、導電層を1層単独で有してよく、2層以上有してもよい。基板が2層以上の導電層を有する場合は、基板は異なる2種以上の材質の導電層を有することが好ましい。
【0543】
導電層の材料としては、金属及び導電性金属酸化物が挙げられる。
【0544】
金属としては、Al、Zn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mo、Ag及びAuが挙げられる。
【0545】
導電性金属酸化物としては、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)及びSiO2が挙げられる。なお、本明細書において「導電性」とは、体積抵抗率が1×106Ωcm未満であることをいう。導電性金属酸化物の体積抵抗率は、1×104Ωcm未満であることが好ましい。
【0546】
複数の導電層を有する基板を用いて樹脂パターンを製造する場合、複数の導電層のうち少なくとも一つの導電層は導電性金属酸化物を含有することが好ましい。
【0547】
導電層は、静電容量型タッチパネルに用いられる視認部のセンサーに相当する電極パターン又は周辺取り出し部の配線であることが好ましい。
【0548】
〔露光工程〕
樹脂パターンの製造方法は、上記貼り合わせ工程の後、感光性樹脂層をパターン露光する工程(露光工程)を含むことが好ましい。
【0549】
パターン露光におけるパターンの詳細な配置及び具体的なサイズは特に制限されない。パターンの少なくとも一部(好ましくはタッチパネルの電極パターン及び/又は取り出し配線の部分)は幅が20μm以下の細線を含むことが好ましく、幅が10μm以下の細線を含むことがより好ましい。回路配線の製造方法により製造される回路配線を有する入力装置を備えた表示装置(例えば、タッチパネル)の表示品質を高め、かつ、取り出し配線の占める面積を小さくすることができる。
【0550】
露光に使用する光源は、感光性樹脂層を露光可能な波長の光(例えば、365nm又は405nm)を照射する光源であれば特に制限されず、適宜選定して用いることができる。光源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ及びLED(Light Emitting Diode)が挙げられる。
【0551】
露光量は、5mJ/cm2~200mJ/cm2であることが好ましく、10mJ/cm2~100mJ/cm2であることがより好ましい。
【0552】
露光工程においては、感光性樹脂層から仮支持体を剥離した後にパターン露光してもよく、仮支持体を介してパターン露光した後に仮支持体を剥離してもよい。仮支持体を剥離した後に露光する場合には、マスクと感光性樹脂層とを接触させて露光してもよく、マスクと感光性樹脂層とを接触させずに近接させて露光してもよい。仮支持体を剥離せずに露光する場合には、マスクと仮支持体とを接触させて露光してもよく、マスクと仮支持体とを接触させずに近接させて露光してもよい。感光性樹脂層とマスクとの接触によるマスク汚染の防止、及びマスクに付着した異物による露光への影響を避けるためには、仮支持体を剥離せずにパターン露光することが好ましい。なお、露光方式は、接触露光の場合は、コンタクト露光方式、非接触露光方式の場合は、 プロキシミティ露光方式、レンズ系もしくはミラー系のプロジェクション露光方式、又は、露光レーザー等を用いたダイレクト露光方式を適宜選択して用いることができる。レンズ系又はミラー系のプロジェクション露光方式の場合、必要な解像力及び焦点深度に応じて、適当なレンズの開口数(NA)を有する露光機を用いることができる。ダイレクト露光方式の場合は、感光性樹脂層に直接露光してもよく、レンズを介して感光性樹脂層に縮小投影露光をしてもよい。また、露光は大気下で行うだけでなく、減圧下、又は真空下で行ってもよい。また、光源と感光性樹脂層との間に水等の液体を介在させて露光してもよい。
【0553】
〔現像工程〕
樹脂パターンの製造方法は、上記露光工程の後、露光された感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程(現像工程)を含むことが好ましい。
【0554】
感光性転写材料が熱可塑性樹脂及び中間層を有する場合、現像工程において、非露光部の熱可塑性樹脂層及び中間層も、非露光部の感光性樹脂層とともに除去される。また、現像工程において、露光部の熱可塑性樹脂層及び中間層も現像液に溶解又は分散する形で除去されてもよい。
【0555】
露光された感光性樹脂層の現像は、現像液を用いて行うことができる。
【0556】
現像液は、感光性樹脂層の非画像部(非露光部)を除去することができれば特に制限されず、例えば、特開平5-72724号公報に記載の現像液等の公知の現像液が使用できる。
【0557】
現像液は、pKaが7~13の化合物を0.05mol/L(リットル)~5mol/Lの濃度で含むアルカリ水溶液であることが好ましい。現像液は、水溶性の有機溶剤及び界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有してもよい。現像液は、国際公開第2015/093271号の段落0194に記載の現像液も好ましい。
【0558】
現像方式としては、特に制限されず、パドル現像、シャワー現像、シャワー及びスピン現像、並びに、ディップ現像のいずれであってもよい。シャワー現像とは、露光後の感光性樹脂層に現像液をシャワーにより吹き付けることにより、非露光部を除去する現像処理である。
【0559】
現像工程の後に、洗浄剤をシャワーにより吹き付け、ブラシで擦りながら、現像残渣を除去することが好ましい。
【0560】
現像液の液温は特に制限されないが、20℃~40℃が好ましい。
【0561】
〔エッチング工程〕
回路配線の製造方法は、上記貼り合わせ工程と、上記露光工程と、上記現像工程とを含む製造方法により製造された樹脂パターンがこの順で積層された積層体において、樹脂パターンが配置されていない領域における基板をエッチング処理する工程(エッチング工程)を含むことが好ましい。
【0562】
エッチング工程では、感光性樹脂層から形成された樹脂パターンを、エッチングレジストとして使用し、基板のエッチング処理を行う。
【0563】
エッチング処理の方法としては、公知の方法を適用でき、例えば、特開2017-120435号公報の段落0209~段落0210に記載の方法、特開2010-152155号公報の段落0048~段落0054に記載の方法、エッチング液に浸漬するウェットエッチング法、及び、プラズマエッチング等のドライエッチングによる方法が挙げられる。
【0564】
ウェットエッチングに用いられるエッチング液は、エッチングの対象に合わせて酸性又はアルカリ性のエッチング液を適宜選択すればよい。
【0565】
酸性のエッチング液としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、フッ酸、シュウ酸及びリン酸から選択される酸性成分単独の水溶液、並びに、酸性成分と、塩化第2鉄、フッ化アンモニウム及び過マンガン酸カリウムから選択される塩との混合水溶液が挙げられる。酸性成分は、複数の酸性成分を組み合わせた成分であってもよい。
【0566】
アルカリ性のエッチング液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、有機アミン、及び、有機アミンの塩(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等)から選択されるアルカリ成分単独の水溶液、並びに、アルカリ成分と塩(例えば、過マンガン酸カリウム)との混合水溶液が挙げられる。アルカリ成分は、複数のアルカリ成分を組み合わせた成分であってもよい。
【0567】
〔除去工程〕
回路配線の製造方法においては、残存する樹脂パターンを除去する工程(除去工程)を行うことが好ましい。
【0568】
除去工程は、特に制限されず、必要に応じて行うことができるが、エッチング工程の後に行うことが好ましい。
【0569】
残存する樹脂パターンを除去する方法としては特に制限されないが、薬品処理により除去する方法が挙げられる。残存する樹脂パターンを除去する方法は、除去液を用いて除去する方法が好ましい。
【0570】
感光性樹脂層の除去方法としては、液温が好ましくは30℃~80℃、より好ましくは50℃~80℃である撹拌中の除去液に、残存する樹脂パターンを有する基板を、1分~30分間浸漬する方法が挙げられる。
【0571】
除去液としては、例えば、無機アルカリ成分又は有機アルカリ成分を、水、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン又はこれらの混合溶液に溶解させた除去液が挙げられる。無機アルカリ成分としては、例えば、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが挙げられる。有機アルカリ成分としては、第1級アミン化合物、第2級アミン化合物、第3級アミン化合物及び第4級アンモニウム塩化合物が挙げられる。
【0572】
また、除去液を使用し、スプレー法、シャワー法及びパドル法等の公知の方法により、残存する樹脂パターンを除去してもよい。
【0573】
〔その他の工程〕
回路配線の製造方法は、上述した工程以外の任意の工程(その他の工程)を含んでもよい。例えば、以下の工程が挙げられるが、これらの工程に制限されない。
【0574】
また、回路配線の製造方法に適用可能な露光工程、現像工程、及びその他の工程としては、特開2006-23696号公報の段落0035~0051に記載の工程が挙げられる。
【0575】
<カバーフィルム剥離工程>
感光性転写材料がカバーフィルムを備える場合、樹脂パターンの製造方法は、感光性転写材料からカバーフィルムを剥離する工程を含むことが好ましい。カバーフィルムを剥離する方法は、特に制限されず、公知の方法を適用することができる。
【0576】
<可視光線反射率を低下させる工程>
回路配線の製造方法は、基板が備える導電層の一部又は全ての可視光線反射率を低下させる処理を行う工程を含んでいてもよい。
【0577】
可視光線反射率を低下させる処理としては、酸化処理が挙げられる。基板が銅を含有する導電層を備える場合、銅を酸化処理して酸化銅とし、導電層を黒化することにより、導電層の可視光線反射率を低下させることができる。
【0578】
可視光線反射率を低下させる処理については、特開2014-150118号公報の段落0017~0025、並びに、特開2013-206315号公報の段落0041、段落0042、段落0048及び段落0058に記載されており、これらの公報に記載の内容は本明細書に組み込まれる。
【0579】
<絶縁膜を形成する工程、絶縁膜の表面に新たな導電層を形成する工程>
回路配線の製造方法は、回路配線の表面に絶縁膜を形成する工程と、絶縁膜の表面に新たな導電層を形成する工程と、を含むことも好ましい。上記の工程により、第一の電極パターンと絶縁した第二の電極パターンを形成することができる。
【0580】
絶縁膜を形成する工程としては、特に制限されず、公知の永久膜を形成する方法が挙げられる。また、絶縁性を有する感光性材料を用いて、フォトリソグラフィにより所望のパターンの絶縁膜を形成してもよい。
【0581】
絶縁膜上に新たな導電層を形成する工程は、特に制限されず、例えば、導電性を有する感光性材料を用いて、フォトリソグラフィにより所望のパターンの新たな導電層を形成してもよい。
【0582】
回路配線の製造方法は、基材の両方の表面にそれぞれ複数の導電層を備える基板を用い、基材の両方の表面に形成された導電層に対して逐次又は同時に回路形成することも好ましい。このような構成により、基材の一方の表面に第一の導電パターン、もう一方の表面に第二の導電パターンを形成したタッチパネル用回路配線を形成できる。また、このような構成のタッチパネル用回路配線を、ロールツーロールで基材の両面から形成することも好ましい。
【0583】
〔回路配線の用途〕
回路配線の製造方法により製造される回路配線は、種々の装置に適用することができる。上記の製造方法により製造される回路配線を備えた装置としては、例えば、入力装置が挙げられ、タッチパネルが好ましく、静電容量型タッチパネルがより好ましい。また、上記入力装置は、有機EL表示装置及び液晶表示装置等の表示装置に適用できる。
【0584】
[タッチパネルの製造方法]
タッチパネルの製造方法は、上記の感光性転写材料を用いるタッチパネルの製造方法であれば特に制限されない。
【0585】
タッチパネルの製造方法は、上記貼り合わせ工程と、上記露光工程と、上記現像工程と、樹脂パターンが配置されていない領域における基板をエッチング処理する工程(以下「エッチング工程」ともいう。)を含む方法であることが好ましい。
【0586】
タッチパネルの製造方法における、各工程の具体的な態様、及び、各工程を行う順序等の実施態様については、上述の「回路配線の製造方法」の項において説明したとおりであり、好ましい態様も同様である。
タッチパネルの製造方法は、上記の方法によりタッチパネル用配線を形成すること以外は、公知のタッチパネルの製造方法を参照すればよい。また、タッチパネルの製造方法は、上記工程以外の任意の工程(その他の工程)を含んでもよい。
【0587】
タッチパネルの製造に用いられるマスクのパターンの一例を、
図3及び
図4に示す。
図3に示されるパターンA、及び、
図4に示されるパターンBにおいて、GRは非画像部(遮光部)であり、EXは画像部(露光部)であり、DLはアライメント合わせの枠を仮想的に示したものである。タッチパネルの製造方法において、例えば、
図3に示されるパターンAを有するマスクを介して上記感光性樹脂層を露光することで、EXに対応するパターンAを有する回路配線が形成されたタッチパネルを製造できる。具体的には、国際公開第2016/190405号の
図1に記載の方法で作製できる。製造されたタッチパネルの一例においては、露光部EXの中央部(資格が連結したパターン部分)は透明電極(タッチパネル用電極)が形成される部分であり、露光部EXの周縁部(細線部分)は周辺取出し部の配線が形成される部分である。
【0588】
上記タッチパネルの製造方法により、タッチパネル用配線を少なくとも有するタッチパネルが製造される。タッチパネルは、透明基板と、電極と、絶縁層又は保護層とを有することが好ましい。
【0589】
タッチパネルにおける検出方法としては、抵抗膜方式、静電容量方式、超音波方式、電磁誘導方式、光学方式等の公知の方式が挙げられる。中でも、タッチパネルにおける検出方法は、静電容量方式であることが好ましい。
タッチパネルにおける検出方法としては、抵抗膜方式、静電容量方式、超音波方式、電磁誘導方式、及び、光学方式等の公知の方式が挙げられる。中でも、静電容量方式が好ましい。
【0590】
タッチパネル型としては、いわゆるインセル型(例えば、特表2012-517051号公報の
図5、
図6、
図7及び
図8に記載のもの)、いわゆるオンセル型(例えば、特開2013-168125号公報の
図19に記載のもの、並びに、特開2012-89102号公報の
図1及び
図5に記載のもの)、OGS(One Glass Solution)型、TOL(Touch-on-Lens)型(例えば、特開2013-54727号公報の
図2に記載のもの)、各種アウトセル型(いわゆる、GG、G1・G2、GFF、GF2、GF1及びG1F等)並びにその他の構成(例えば、特開2013-164871号公報の
図6に記載のもの)が挙げられる。
タッチパネルとしては、例えば、特開2017-120435号公報の段落0229に記載のものが挙げられる。
【0591】
[ポリエチレンテレフタレートフィルム]
本開示のポリエチレンテレフタレートフィルムは、長径3μm以上の異物の個数が0.5個/mm2以下である。特に、本開示のポリエチレンテレフタレートフィルムは、F、Mg、Si、Ca、Ti、Fe及びSbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有する長径3μm以上の異物の個数が0.5個/mm2以下であることが好ましい。また、長径3μm以上の異物のうち、レーザーラマン分光法において1580cm-1及び1360cm-1の2つのピークが観察される異物の個数が0.5個/mm2以下であることが好ましい。さらに、長径3μm以上の異物のうち、明度が、その周辺における正常領域の明度よりも10%以上低い異物の個数が0.5個/mm2以下であることが好ましい。
【0592】
本開示のポリエチレンテレフタレートフィルムは、長径3μm以上の異物の個数が0.5個/mm2以下であるため、感光性転写材料における仮支持体として適している。本開示のポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた感光性転写材料によれば、欠陥が低減された樹脂パターンを製造できる。
【実施例0593】
以下に実施例を挙げて本発明の実施形態をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順は、本発明の実施形態の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本発明の実施形態の範囲は以下に示す具体例に制限されない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0594】
<感光性樹脂組成物の調製>
感光性樹脂組成物を調製するために用いた各成分は以下のとおりである。
〔重合体A〕
以下の方法に従い、重合体Aを合成した。重合体Aの合成方法において、以下の略語は以下の化合物をそれぞれ表す。
St:スチレン(富士フイルム和光純薬社製)
MAA:メタクリル酸(富士フイルム和光純薬社製)
MMA:メタクリル酸メチル(富士フイルム和光純薬社製)
V-601:2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(富士フイルム和光純薬社製、重合開始剤)
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0595】
3つ口フラスコにPGMEA(116.5部)を入れ、窒素雰囲気下において90℃に昇温した。3つ口フラスコ内の液温を90℃±2℃に維持しながら、St(52.0部)、MMA(19.0部)、MAA(29.0部)、V-601(4.0部)及びPGMEA(116.5部)の混合液を、2時間かけて3つ口フラスコ内に滴下した。滴下終了後、液温を90℃±2℃に維持しながら混合液を2時間撹拌することで、重合体Aを30.0質量%含有する組成物を得た。重合体Aの酸価は189mgKOH/g、重量平均分子量は60,000、ガラス転移温度は131℃であった。
【0596】
〔重合性化合物B〕
・重合性化合物B-1:NKエステルBPE-500(2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、新中村化学工業社製)
・重合性化合物B-2:ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均15モルのエチレンオキサイドと平均2モルのプロピレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールのジメタクリレート
・重合性化合物B-3:NKエステルA-TMPT(トリメチロールプロパントリアクリレート、新中村化学工業社製)
・重合性化合物B-4:SR454(エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、アルケマ社製)
・重合性化合物B-5:NKエステルA-9300-1CL(ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、新中村化学工業社製)
【0597】
〔光重合開始剤〕
・B-CIM(光ラジカル重合開始剤、2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、Hampford社製)
【0598】
〔増感剤〕
・SB-PI 701(4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、三洋貿易社製)
【0599】
〔色素N〕
・色素N-1:LCV(ロイコクリスタルバイオレット、東京化成工業社製、ラジカルにより発色する色素)
・色素N-2:ブリリアントグリーン(東京化成工業社製)
【0600】
〔防錆剤〕
・1-(2-ジ-n-ブチルアミノメチル)-5-カルボキシベンゾトリアゾールと1-(2-ジ-n-ブチルアミノメチル)-6-カルボキシベンゾトリアゾールの混合物(質量比1:1)
【0601】
〔酸化防止剤〕
・Irganox245(エチレンビス(オキシエチレン)ビス-(3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート)、BASF社製)
【0602】
〔重合禁止剤〕
・N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩(富士フイルム和光純薬社製)
【0603】
以下の成分を混合して感光性樹脂組成物を調製した。
・重合体A(固形分濃度30.0%): 51.00部
・重合性化合物B-1:15.00部
・重合性化合物B-2:10.00部
・重合性化合物B-3:5.00部
・重合性化合物B-4:5.00部
・重合性化合物B-5:9.77部
・光重合開始剤: 3.00部
・増感剤: 0.30部
・色素N-1:0.60部
・色素N-2:0.02部
・防錆剤:0.10部
・酸化防止剤:0.20部
・重合禁止剤:0.01部
・メチルエチルケトン(三協化学社製):100.00部
・PGMEA(昭和電工社製):50.00部
・メタノール(三菱ガス化学社製):10.00部
【0604】
<仮支持体の準備>
仮支持体として、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを準備した。具体的には、仮支持体の製造工程で使用するメタルフィルターのメッシュサイズを10μm、5μm、2μm、1μmと変更し、かつ、製造した仮支持体を回収する際の回収位置を変更することにより、表1に示す6つの支持体を得た。各支持体に含まれる異物の個数を測定した。測定方法は、以下のとおりである。なお、表1中、F、Mg、Si、Ca、Ti、Fe及びSbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を「特定元素」とし、レーザーラマン分光法における1580cm-1及び1360cm-1の2つのピークを「特定ピーク」とした。
【0605】
(長径3μm以上の異物の個数)
まず、仮支持体を偏光顕微鏡(製品名「BX60」に「U-POT」フィルターと「U-AN360」フィルターを挿入して簡易偏光顕微鏡としたもの、対物レンズ10倍、オリンパス社製)で観察し、偏光の乱れが発生している部分を異物として特定した。また、光学顕微鏡(製品名「BX60」、対物レンズ100倍、オリンパス社製)で異物の長径を測定し、観察領域250mm2に含まれる、長径が3μm以上である異物の個数を計測した。なお、異物に空隙が含まれる場合には、空隙を含めて長径を測定する。長径とは、異物を構成する領域の中で、最も長い部分の長さを意味する。
【0606】
(F、Mg、Si、Ca、Ti、Fe及びSbからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有する長径3μm以上の異物の個数)
まず、仮支持体を偏光顕微鏡(製品名「BX60」に「U-POT」フィルターと「U-AN360」フィルターを挿入して簡易偏光顕微鏡としたもの、対物レンズ10倍、オリンパス社製)で観察し、偏光の乱れが発生している部分を異物として特定した。また、光学顕微鏡(製品名「BX60」、対物レンズ100倍、オリンパス社製)で異物の長径を測定し、長径3μm以上の異物を特定した。観察領域250mm2に含まれる、長径が3μm以上である異物をミクロトームで切断し、SEM-EDX装置(製品名「JSM-7200F」、日本電子社製)を用いてSEM-EDX法により元素分析を行った。異物と、異物の周辺における正常領域とを比較し、F、Mg、Si、Ca、Ti、Fe及びSbからなる群より選択される少なくとも1種の元素が検出された異物の個数を計測した。
【0607】
(レーザーラマン分光法において1580cm-1及び1360cm-1の2つのピークが観察される長径3μm以上の異物の個数)
まず、仮支持体を偏光顕微鏡(製品名「BX60」に「U-POT」フィルターと「U-AN360」フィルターを挿入して簡易偏光顕微鏡としたもの、対物レンズ10倍、オリンパス社製)で観察し、偏光の乱れが発生している部分を異物として特定した。また、光学顕微鏡(製品名「BX60」、対物レンズ100倍、オリンパス社製)で異物の長径を測定し、長径3μm以上の異物を特定した。観察領域250mm2に含まれる、長径が3μm以上である異物をミクロトームで切断し、レーザーラマン分光光度計(製品名「NRS-7500」、日本分光社製)を用いてレーザーラマン分光分析法により分析した。開口数(NA)が0.90で、倍率が100倍の対物レンズを用い、励起波長785nmで分析を行った。異物と、異物の周辺における正常領域との差スペクトルをとり、1580cm-1及び1360cm-1の2つのピークが観察された異物の個数を計測した。
【0608】
(明度が、その周辺における正常領域の明度よりも10%以上低い、長径3μm以上の異物の個数)
まず、仮支持体を偏光顕微鏡(製品名「BX60」に「U-POT」フィルターと「U-AN360」フィルターを挿入して簡易偏光顕微鏡としたもの、対物レンズ10倍、オリンパス社製)で観察し、偏光の乱れが発生している部分を異物として特定した。また、光学顕微鏡(製品名「BX60」、対物レンズ100倍、オリンパス社製)で異物の長径を測定し、長径3μm以上の異物を特定した。観察領域250mm2に含まれる、長径が3μm以上である異物の明度と、異物の周辺における正常領域の明度とを測定した。そして、明度が、その周辺における正常領域の明度よりも10%以上低い異物の個数を計測した。異物、及び、異物の周辺における正常領域の明度は、光学顕微鏡を用いて透過モードで観察して得られた画像をHSV表色系で表示したV値で測定した。
【0609】
【0610】
<感光性転写材料の作製>
[実施例1]
仮支持体5上に、スリット状ノズルを用いて塗布幅が1.0m、かつ、乾燥後の層厚が10μmとなるように感光性樹脂組成物を塗布した。感光性樹脂組成物の塗膜を80℃で40秒間かけて乾燥し、感光性樹脂層を形成し、感光性転写材料を得た。
【0611】
[実施例2~実施例8、比較例1~比較例3]
仮支持体の種類と、感光性樹脂層の厚さを表2に記載のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、感光性転写材料を得た。
【0612】
実施例及び比較例で得られた感光性転写材料を用いて、配線欠陥及び解像度の評価を行った。評価結果を表2に示す。なお、比較例3については、解像度が低く、10μmのラインアンドスペースパターンが作成できなかったため、配線欠陥を測定することができず、表2中、「-」とした。
【0613】
<配線欠陥>
まず、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、スパッタ法にて厚さ200nmの銅層を形成することにより、銅層付きPET基板を作製した。
ロール形態の感光性転写材料を巻き出した後、感光性転写材料と銅層付きPET基板とを、感光性樹脂層と銅層とが互いに接触するように貼り合わせて、積層体を得た。貼り合わせ工程は、ロール温度120℃、線圧1.0MPa、線速度0.5m/minの条件で行った。
得られた積層体の仮支持体側から、フォトマスクを介して超高圧水銀灯(露光主波長:365nm)を照射して、感光性樹脂層を露光した。露光に使用したフォトマスクは、透過領域と遮光領域の幅の比(Duty比)が1:1であり、かつ、ライン幅(及びスペース幅)が10μmであるラインアンドスペースパターンを有していた。
露光された積層体から仮支持体を剥離した後、積層体に対して、液温25℃の1.0%炭酸ナトリウム水溶液を用いて30秒間のシャワー現像を行った。その後、塩化第二鉄系エッチング液(関東化学社製)で銅層を60秒間エッチングし、幅10μmの配線パターンを作製した。光学顕微鏡(製品名「BX60」、対物レンズ100倍、オリンパス社製)で1000mm2の領域を観察し、配線パターンにおける欠陥の数を計測した。線幅の1/2以上が欠損している部分を欠陥とした。評価基準は以下のとおりである。3以上は実用上問題ないレベルである。
5:欠陥が0個である。
4:欠陥が1個又は2個である。
3:欠陥が3個以上5個以下である。
2:欠陥が6個以上10個以下である
1:欠陥が11個以上である。
【0614】
<解像度>
まず、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、スパッタ法にて厚さ200nmの銅層を形成することにより、銅層付きPET基板を作製した。
ロール形態の感光性転写材料を巻き出した後、感光性転写材料と銅層付きPET基板とを、感光性樹脂層と銅層とが互いに接触するように貼り合わせて、積層体を得た。貼り合わせ工程は、ロール温度120℃、線圧1.0MPa、線速度0.5m/minの条件で行った。
得られた積層体の仮支持体側から、フォトマスクを介して超高圧水銀灯(露光主波長:365nm)を照射して、感光性樹脂層を露光した。露光に使用したフォトマスクは、透過領域と遮光領域の幅の比(Duty比)が1:1であり、かつ、ライン幅(及びスペース幅)が1μmから20μmまで1μmおきに段階的に変化するラインアンドスペースパターンを有していた。
なお、フォトマスクのうち、ラインアンドスペースパターンのライン幅及びスペース幅が20μmである領域を通過した照射光によって露光されて形成される樹脂パターンのライン幅が20μmとなるように、感光性樹脂層に対する露光量を調整した。
露光された積層体から仮支持体を剥離した後、積層体に対して、液温25℃の1.0%炭酸ナトリウム水溶液を用いて30秒間のシャワー現像を行った。この現像工程により、積層体から、未露光の感光性樹脂層を除去し、銅層の表面に上記の段階的に変化するラインアンドスペースパターンを有する樹脂パターンを作製した。
【0615】
形成された樹脂パターンについて、パターン形状及びスペース部における感光性樹脂層の残渣の有無を、走査型電子顕微鏡(製品名「S-4800」、日立ハイテクノロジー社製)を用いて各線幅ごとに観察した。ライン部において硬化された感光性樹脂層が剥離せず、かつ、感光性樹脂層の残渣が無い樹脂パターンの線幅のうち最小の線幅を、解像度として判定した。評価基準は以下のとおりである。
5:解像度が4μm以下である。
4:解像度が5μm又は6μmである。
3:解像度が7μm又は8μmである。
2:解像度が9μm又は10μmである。
1:解像度が11μm以上である。
【0616】
【0617】
表2に示すように、実施例1~実施例8では、仮支持体に含まれる長径3μm以上の異物の個数が0.5個/mm2以下であるため、配線パターンにおける欠陥が少ないことが分かった。
【0618】
一方、比較例1~比較例3では、仮支持体に含まれる長径3μm以上の異物の個数が0.5個/mm2超えであるため、配線パターンにおける欠陥が多いことが分かった。
【0619】
また、実施例4では、感光性樹脂層の厚さが10μm以下であるため、実施例1と比較すると、解像度が高い。
【0620】
<感光性樹脂組成物A-1~A-10の調製>
下記表3に記載の成分を混合して、感光性樹脂組成物A-1~A-10を調製した。
【0621】
〔重合体Cの合成〕
(アルカリ可溶性樹脂P-1溶液)
-重合工程-
2000mLのフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(三和化学産業製、商品名PGM-Ac)(60g)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(三和化学産業製、商品名PGM)(240g)を導入した。得られた液体を、撹拌速度250rpm(round per minute;以下同じ。)で撹拌しつつ90℃に昇温した。
滴下液(1)の調製として、メタクリル酸(三菱レイヨン製、商品名アクリエステルM)107.1g、メタクリル酸メチル(三菱ガス化学製、商品名MMA)(5.46g)、及び、シクロヘキシルメタクリレート(三菱ガス化学製、商品名CHMA)(231.42g)を混合し、PGM-Ac(60g)で希釈することにより、滴下液(1)を得た。
滴下液(2)の調製として、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(富士フイルム和光純薬社製、商品名V-601)(9.637g)をPGM-Ac(136.56g)で溶解させることにより、滴下液(2)を得た。
滴下液(1)と滴下液(2)とを同時に3時間かけて、上述した2000mLのフラスコ(詳細には、90℃に昇温された液体が入った2000mLのフラスコ)に滴下した。次に、滴下液(1)の容器をPGM-Ac(12g)で洗浄し、洗浄液を上記2000mLのフラスコに滴下した。次に、滴下液(2)の容器をPGM-Ac(6g)で洗浄し、洗浄液を上記2000mLのフラスコに滴下した。これらの滴下中、上記2000mLのフラスコ内の反応液を90℃に保ち、撹拌速度250rpmで撹拌した。更に、後反応として、90℃で1時間撹拌した。
後反応後の反応液に、開始剤の追加添加1回目として、V-601(2.401g)を添加した。更に、V-601の容器をPGM-Ac(6g)で洗浄し、洗浄液を反応液に導入した。その後、90℃で1時間撹拌した。
次に、開始剤の追加添加2回目として、V-601(2.401g)を反応液に添加した。更にV-601の容器をPGM-Ac(6g)で洗浄し、洗浄液を反応液に導入した。その後90℃で1時間撹拌した。
次に、開始剤の追加添加3回目として、V-601(2.401g)を反応液に添加した。更に、V-601の容器をPGM-Ac(6g)で洗浄し、洗浄液を反応液に導入した。その後90℃で3時間撹拌した。
【0622】
-付加工程-
90℃で3時間撹拌後、PGM-Ac(178.66g)を反応液へ導入した。次に、テトラエチルアンモニウムブロミド(富士フイルム和光純薬社製)(1.8g)とハイドロキノンモノメチルエーテル(富士フイルム和光純薬社製)(0.8g)とを反応液に添加した。更にそれぞれの容器をPGM-Ac(6g)で洗浄し、洗浄液を反応液へ導入した。その後、反応液の温度を100℃まで昇温させた。
次に、グリシジルメタクリレート(日油社製、商品名ブレンマーG)(76.03g)を1時間かけて反応液に滴下した。ブレンマーGの容器をPGM-Ac(6g)で洗浄し、洗浄液を反応液に導入した。この後、付加反応として、100℃で6時間撹拌した。
次に、反応液を冷却し、ゴミ取り用のメッシュフィルター(100メッシュ)でろ過し、アルカリ可溶性樹脂P-1の溶液(1158g)を得た(固形分濃度36.3質量%)。得られたアルカリ可溶性樹脂P-1の重量平均分子量は27000、数平均分子量は15000、酸価は95mgKOH/gであった。
【0623】
アルカリ可溶性樹脂P-1の構造式を以下に示す。式中の繰り返し単位のモル比は、左側の繰り返し単位から順に、51.5:2:26.5:20であった。
【0624】
【0625】
(アルカリ可溶性樹脂P-2溶液)
プロピレングリコールモノメチルエーテル82.4gをフラスコに仕込み窒素気流下90℃に加熱した。この液にスチレン38.4g、ジシクロペンタニルメタクリレート30.1g、メタクリル酸34.0gをプロピレングリコールモノメチルエーテル20gに溶解させた溶液、及び、重合開始剤V-601(富士フイルム和光純薬社製)5.4gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート43.6gに溶解させた溶液を同時に3時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間おきに3回V-601を0.75g添加した。その後更に3時間反応させた。その後プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート58.4g、プロピレングリコールモノメチルエーテル11.7gで希釈した。空気気流下、反応液を100℃に昇温し、テトラエチルアンモニウムブロミド0.53g、p-メトキシフェノール0.26gを添加した。これにグリシジルメタクリレート(日油社製ブレンマーGH)25.5gを20分かけて滴下した。これを100℃で7時間反応させ、アルカリ可溶性樹脂P-2の溶液を得た。得られた溶液の固形分濃度は36.5質量%であった。アルカリ可溶性樹脂P-2の重量平均分子量は17000、数平均分子量は6200、分散度は2.4、ポリマーの酸価は94.5mgKOH/gであった。ガスクロマトグラフィーを用いて測定した残存モノマー量はいずれのモノマーにおいてもポリマー固形分に対し0.1質量%未満であった。
【0626】
アルカリ可溶性樹脂P-2の構造式を以下に示す。式中の繰り返し単位のモル比は、左側の繰り返し単位から順に、41.0:15.2:23.9:19.9であった。
【0627】
【0628】
(アルカリ可溶性樹脂P-3溶液)
プロピレングリコールモノメチルエーテル113.5gをフラスコに仕込み窒素気流下90℃に加熱した。この液にスチレン172g、メタクリル酸メチル4.7g、メタクリル酸112.1gをプロピレングリコールモノメチルエーテル30gに溶解させた溶液、及び、重合開始剤V-601(富士フイルム和光純薬社製)27.6gをプロピレングリコールモノメチルエーテル57.7gに溶解させた溶液を同時に3時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間おきに3回V-601を2.5g添加した。その後更に3時間反応させた。その後プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート160.7g、プロピレングリコールモノメチルエーテル233.3gで希釈した。空気気流下、反応液を100℃に昇温し、テトラエチルアンモニウムブロミド1.8g、p-メトキシフェノール0.86gを添加した。これにグリシジルメタクリレート(日油社製ブレンマーG)71.9gを20分かけて滴下した。これを100℃で7時間反応させ、アルカリ可溶性樹脂P-3の溶液を得た。得られた溶液の固形分濃度は36.2質量%であった。アルカリ可溶性樹脂P-3の重量平均分子量は18000、数平均分子量は7800、分散度は2.3、ポリマーの酸価は124mgKOH/gであった。ガスクロマトグラフィーを用いて測定した残存モノマー量はいずれのモノマーにおいてもポリマー固形分に対し0.1質量%未満であった。
【0629】
アルカリ可溶性樹脂P-3の構造式を以下に示す。式中の繰り返し単位のモル比は、左側の繰り返し単位から順に、55.1:26.5:1.6:16.8であった。
【0630】
【0631】
(アルカリ可溶性樹脂P-4溶液)
アルカリ可溶性樹脂P-3の合成において、モノマーの種類と量を変更することにより、アルカリ可溶性樹脂P-4の固形分36.2質量%溶液(溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を調製した。得られたアルカリ可溶性樹脂P-4の重量平均分子量は18000、数平均分子量は7800、分散度は2.3、酸価は114mgKOH/gであった。
【0632】
アルカリ可溶性樹脂P-4の構造式を以下に示す。式中の繰り返し単位のモル比は、左側の繰り返し単位から順に、55.1:24.6:1.6:17.0:1.7であった。
【0633】
【0634】
【0635】
表3中、化合物B及び化合物Cは、以下の構造を有する。
【0636】
(化合物B)
【0637】
【0638】
(化合物C)
【0639】
【0640】
<屈折率調整層形成用組成物B-1~B-4の調製>
下記表4に記載の成分を混合して、屈折率調整層形成用組成物B-1~B-4を調製した。
【0641】
【0642】
<感光性転写材料の作製>
[実施例9~実施例24]
仮支持体5上に、スリット状ノズルを用いて塗布幅が1.0m、かつ、乾燥後の層厚が、表5に記載の値となるように感光性樹脂組成物を塗布した。感光性樹脂組成物の塗膜を80℃で40秒間かけて乾燥し、感光性樹脂層を形成した。さらに、感光性樹脂組成物上に、スリット状ノズルを用いて塗布幅が1.0m、かつ、乾燥後の層厚が、表5に記載の値となるように屈折率調整層形成用組成物を塗布した。屈折率調整層形成用組成物の塗膜を80℃で40秒間かけて乾燥し、感光性樹脂層を形成し、感光性転写材料を得た。
【0643】
[比較例4~比較例19]
仮支持体1上に感光性樹脂組成物を塗布したこと以外は、実施例9~実施例24と同様の方法で、感光性転写材料を得た。
【0644】
【0645】
得られた感光性転写材料を用いて、ピンホール欠陥の評価を行った。評価結果を表6に示す。
【0646】
<ピンホール欠陥>
まず、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、スパッタ法にて厚さ100nmのITO(酸化インジウムスズ)層を形成することにより、ITO層付きPET基板を作製した。
ロール形態の感光性転写材料を巻き出した後、感光性転写材料とITO層付きPET基板とを、感光性樹脂層とITO層とが互いに接触するように貼り合わせて、積層体を得た。貼り合わせ工程は、ロール温度120℃、線圧1.0MPa、線速度0.5m/minの条件で行った。
得られた積層体の仮支持体側から、フォトマスクを介して超高圧水銀灯(露光主波長:365nm)を照射して、感光性樹脂層を全面露光した。なお、ラインアンドスペースパターンのライン幅及びスペース幅が20μmである領域を通過した照射光によって露光されて形成される樹脂パターンのライン幅が20μmとなるように、感光性樹脂層に対する露光量を調整した。
露光された積層体から仮支持体を剥離した後、積層体に対して、液温25℃の1.0質量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて30秒間のシャワー現像を行った。全面ベタレジストパターンが得られた。光学顕微鏡(製品名「BX60」、対物レンズ100倍、オリンパス社製)で1000mm2の領域を観察し、レジストパターンにおけるピンホール欠陥の数を計測した。直径4μm以上のピンホールをピンホール欠陥とした。評価基準は以下のとおりである。3以上は実用上問題ないレベルである。
4:欠陥が2個以下である。
3:欠陥が3個以上5個以下である。
2:欠陥が6個以上10個以下である
1:欠陥が11個以上である。
【0647】
【0648】
本開示に係る感光性転写材料は、フォトリソグラフィーによる精密微細加工が必要な各種用途に好適に用いることができる。感光性樹脂層をパターニング後に、感光性樹脂層を被膜としてエッチングをしてもよく、電気めっきを主体とするエレクトロフォーミングを行ってもよい。また、パターニングによって得られた硬化膜は、永久膜として使用してもよい。硬化膜は、例えば、層間絶縁膜、配線保護膜、又はインデックスマッチング層を有する配線保護膜として用いてもよい。また、本開示に係る感光性転写材料は、半導体パッケージ、プリント基板、センサー基板等の各種配線を形成するための材料、並びに、タッチパネル、電磁波シールド材、フィルムヒーターのような導電性フィルム、液晶シール材、マイクロマシン、及びマイクロエレクトロニクス分野における構造物を形成するための材料として好適に使用し得る。
【0649】
なお、2020年5月1日に出願された日本国特許出願2020-081212号、2020年10月12日に出願された日本国特許出願2020-171962号、及び2020年12月15日に出願された日本国特許出願2020-207767号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。また、本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。