(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111205
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】太陽電池モジュールリサイクルシステム、クリーニング装置、および太陽電池モジュールリサイクル方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/30 20220101AFI20240808BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20240808BHJP
B09B 101/16 20220101ALN20240808BHJP
【FI】
B09B3/30
B09B3/40 ZAB
B09B3/40
B09B3/30 ZAB
B09B101:16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024099681
(22)【出願日】2024-06-20
(62)【分割の表示】P 2022178140の分割
【原出願日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2022059581
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「太陽光発電の長期安定電源化技術開発/太陽電池モジュールの分離・マテリアルリサイクル技術開発/太陽電池モジュールの低温熱分解法によるリサイクル技術開発」共同研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 丈晴
(72)【発明者】
【氏名】井上 大輔
(57)【要約】
【課題】一度の処理で効率的に有価物を回収すると共に、回収器具を回収して再利用することができる太陽電池モジュールリサイクルシステムおよび太陽電池モジュールリサイクル方法、並びに太陽電池モジュールリサイクルシステムに用いられるクリーニング装置を提供する。
【解決手段】回収器具に搭載された使用済みの太陽電池モジュールを熱分解処理する熱分解炉と、前記熱分解炉で熱分解された被熱分解太陽電池モジュールを前記回収器具ごと回収するモジュール回収コンベアと、前記モジュール回収コンベアに移載された前記被熱分解太陽電池モジュールに含まれる板ガラスを回収するガラス回収コンベアと、前記板ガラスと前記有価物が回収された後、前記モジュール回収コンベアに残留する前記回収器具を回収する器具回収部とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収器具に搭載された使用済みの太陽電池モジュールを熱分解処理する熱分解炉と、
前記熱分解炉で熱分解された被熱分解太陽電池モジュールを前記回収器具ごと回収するモジュール回収コンベアと、
前記モジュール回収コンベアに移載された前記被熱分解太陽電池モジュールに含まれる板ガラスを回収するガラス回収コンベアと、
前記ガラス回収コンベアで回収された前記板ガラスをクリーニングするクリーニング装置とを備えることを特徴とする太陽電池モジュールリサイクルシステム。
【請求項2】
さらに、前記被熱分解太陽電池モジュールに含まれる前記板ガラス以外の有価物を回収する有価物回収部と、
前記板ガラスと前記有価物が回収された後、前記モジュール回収コンベアに残留する前記回収器具を回収する器具回収部とを備えることを特徴とする請求項1記載の太陽電池モジュールリサイクルシステム。
【請求項3】
前記クリーニング装置は、
前記板ガラスの上面をブラッシングする上ブラシを支持する上ブラシ支持部と、
前記板ガラスの下面をブラッシングする下ブラシを支持する下構造部とを備えることを特徴とする請求項1又は2記載の太陽電池モジュールリサイクルシステム。
【請求項4】
前記クリーニング装置は、ブラッシングされた前記板ガラスに付着する残渣を上下から吸引する上吸引機と下吸引機とを備えることを特徴とする請求項3記載の太陽電池モジュールリサイクルシステム。
【請求項5】
回収器具に搭載された使用済みの太陽電池モジュールを熱分解処理する熱分解炉と、
前記熱分解炉で熱分解された被熱分解太陽電池モジュールを前記回収器具ごと回収するモジュール回収コンベアと、
前記モジュール回収コンベアに移載された前記被熱分解太陽電池モジュールに含まれる板ガラスを回収するガラス回収コンベアとを備える太陽電池モジュールリサイクルシステムに用いられ、
前記板ガラスの上面をブラッシングする上ブラシを支持する上ブラシ支持部および前記板ガラスの下面をブラッシングする下ブラシを支持する下構造部を備え、前記ガラス回収コンベアで回収された前記板ガラスをクリーニングすることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項6】
ブラッシングされた前記板ガラスに付着する残渣を上下から吸引する上吸引機と下吸引機とを備えることを特徴とする請求項5記載のクリーニング装置。
【請求項7】
回収器具に搭載された使用済みの太陽電池モジュールを熱分解炉で熱分解処理する熱分解工程、
前記熱分解炉で熱分解された被熱分解太陽電池モジュールを前記回収器具ごとモジュール回収コンベアに移載して回収するモジュール回収工程、
前記モジュール回収コンベアに移載された前記被熱分解太陽電池モジュールに含まれる板ガラスを回収するガラス回収工程、
前記ガラス回収工程において回収された前記板ガラスをクリーニングするクリーニング工程を含むことを特徴とする太陽電池モジュールリサイクル方法。
【請求項8】
さらに、前記被熱分解太陽電池モジュールに含まれる前記板ガラス以外の有価物を回収する有価物回収工程、
前記板ガラスと前記有価物が回収された後、前記モジュール回収コンベアに残留する前記回収器具を回収する器具回収工程を含むことを特徴とする請求項7記載の太陽電池モジュールリサイクル方法。
【請求項9】
前記クリーニング工程において、回収された前記板ガラスの表裏両面をブラッシングすることを特徴とする請求項7又は8記載の太陽電池モジュールリサイクル方法。
【請求項10】
前記ブラッシングの後、前記板ガラスの上下に配置された吸引機により、前記板ガラスに付着する残渣を吸引することを特徴とする請求項9記載の太陽電池モジュールリサイクル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回収器具に載せたまま熱分解された使用済みの太陽電池モジュールからガラスと有価物を回収すると共に、回収器具を回収して再利用する太陽電池モジュールリサイクルシステム、これに用いられるクリーニング装置、および太陽電池モジュールリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低炭素社会の実現に向け、太陽光発電を始めとした再生可能エネルギーの活用によるCO2削減の加速化が進行しようとしている。太陽光発電の導入が大幅に進む一方で、太陽電池モジュールの廃棄時におけるリサイクルの課題が指摘されている。
【0003】
一般的な太陽電池モジュールの構造は、表面が板ガラス、内側に封止用樹脂層、裏面がバックシートの三層で構成されている。封止用樹脂層には、セル同士をつなぐリボン線が配線されている。封止用樹脂は、透明性、柔軟性、接着性、引張強度、および耐候性などが要求され、エチレン酢酸ビニル共重合体(以下「EVA」と略す)が一般的に用いられており、加熱および加圧することで板ガラス、セルおよびバックシートを接着させる役割を果たしている。
【0004】
この太陽電池モジュールを酸化性雰囲気下で電気炉等により加熱して、EVAを熱分解させることで封止材を除去して、セル部とガラス基板を分離する、太陽電池モジュールをリサイクルする技術が提案されている。
【0005】
本出願人も、太陽電池モジュールから有価物を回収する方法であって、触媒として遷移金属酸化物を担持させた耐熱性材料からなる多孔質成形体の上にバックシート面を下側にして太陽電池モジュールを載せて、酸素濃度15%以上の酸化性雰囲気下の加熱炉内で、前記太陽電池モジュールを加熱して樹脂成分を溶融した後、燃焼させる処理方法を提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上述の処理方法が実現できたしたとしても、さらに熱分解された太陽電池モジュールから有価物の一つである板ガラスを回収するのには、高温の板ガラスを冷却して取り除く必要がある上、それ以外の有価物であるセルとリボン線が散乱した状態にあるため、これらを一度に回収するには多くの手間と時間が必要であった。
【0008】
また、太陽電池モジュールを熱分解して板ガラスとそれ以外の有価物を回収するというサイクルを連続的に繰り返すためには、太陽電池モジュールを網などの回収器具に載せた状態で上述のサイクルを行うのが便宜であるが、回収器具を回収する際にも上述の手順で板ガラスとそれ以外の有価物を取り除く必要があるため、多大な手間と時間を要した。
【0009】
さらに、板ガラスは純度の高いリサイクルガラスの原料として活用できるため、板ガラスのままの状態で分別して回収できることが望ましい。
本発明の目的は、一度の処理で効率的に有価物を回収すると共に、回収器具を回収して再利用することができる太陽電池モジュールリサイクルシステムおよび太陽電池モジュールリサイクル方法、並びに太陽電池モジュールリサイクルシステムに用いられるクリーニング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の太陽電池モジュールリサイクルシステムによれば、
回収器具に搭載された使用済みの太陽電池モジュールを熱分解処理する熱分解炉と、
前記熱分解炉で熱分解された被熱分解太陽電池モジュールを前記回収器具ごと回収するモジュール回収コンベアと、
前記モジュール回収コンベアに移載された前記被熱分解太陽電池モジュールに含まれる板ガラスを回収するガラス回収コンベアと、
前記ガラス回収コンベアで回収された前記板ガラスをクリーニングするクリーニング装置とを備えることを特徴とする。
また、本発明の太陽電池モジュールリサイクルシステムによれば、
さらに、前記被熱分解太陽電池モジュールに含まれる前記板ガラス以外の有価物を回収する有価物回収部と、
前記板ガラスと前記有価物が回収された後、前記モジュール回収コンベアに残留する前記回収器具を回収する器具回収部とを備えることを特徴とする。
【0011】
このように、モジュール回収コンベアにより、被熱分解太陽電池モジュールを回収器具ごと回収し、さらに板ガラスとそれ以外の有価物を分離回収した後、器具回収部によってモジュール回収コンベアに残留する回収器具を回収することにより、一度の処理で効率的にガラスとそれ以外の有価物を回収すると共に、回収器具を回収して再利用することができる。
【0012】
また、本発明の太陽電池モジュールリサイクルシステムによれば、
前記クリーニング装置は、
前記板ガラスの上面をブラッシングする上ブラシを支持する上ブラシ支持部と、
前記板ガラスの下面をブラッシングする下ブラシを支持する下構造部とを備えることを特徴とする。
また、本発明の太陽電池モジュールリサイクルシステムによれば、
前記クリーニング装置は、ブラッシングされた前記板ガラスに付着する残渣を上下から吸引する上吸引機と下吸引機とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明のクリーニング装置によれば、
回収器具に搭載された使用済みの太陽電池モジュールを熱分解処理する熱分解炉と、
前記熱分解炉で熱分解された被熱分解太陽電池モジュールを前記回収器具ごと回収するモジュール回収コンベアと、
前記モジュール回収コンベアに移載された前記被熱分解太陽電池モジュールに含まれる板ガラスを回収するガラス回収コンベアとを備える太陽電池モジュールリサイクルシステムに用いられ、
前記板ガラスの上面をブラッシングする上ブラシを支持する上ブラシ支持部および前記板ガラスの下面をブラッシングする下ブラシを支持する下構造部を備え、前記ガラス回収コンベアで回収された前記板ガラスをクリーニングすることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のクリーニング装置によれば、
ブラッシングされた前記板ガラスに付着する残渣を上下から吸引する上吸引機と下吸引機とを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の太陽電池モジュールリサイクル方法によれば、
回収器具に搭載された使用済みの太陽電池モジュールを熱分解炉で熱分解処理する熱分解工程、
前記熱分解炉で熱分解された被熱分解太陽電池モジュールを前記回収器具ごとモジュール回収コンベアに移載して回収するモジュール回収工程、
前記モジュール回収コンベアに移載された前記被熱分解太陽電池モジュールに含まれる板ガラスを回収するガラス回収工程、
前記ガラス回収工程において回収された前記板ガラスをクリーニングするクリーニング工程を含むことを特徴とする。
また、本発明の太陽電池モジュールリサイクル方法によれば、
さらに、前記被熱分解太陽電池モジュールに含まれる板ガラス以外の有価物を回収する有価物回収工程、
前記板ガラスと前記有価物が回収された後、前記モジュール回収コンベアに残留する前記回収器具を回収する器具回収工程を含むことを特徴とする。
【0016】
このように、モジュール回収コンベアにより、被熱分解太陽電池モジュールを回収器具ごと回収し、さらに板ガラスとそれ以外の有価物を分離回収した後、器具回収部によってモジュール回収コンベアに残留する回収器具を回収することにより、一度の処理で効率的にガラスとそれ以外の有価物を回収すると共に、回収器具を回収して再利用することができる。
【0017】
また、本発明の太陽電池モジュールリサイクル方法によれば、
前記クリーニング工程において、回収された前記板ガラスの表裏両面をブラッシングすることを特徴とする。
また、本発明の太陽電池モジュールリサイクル方法によれば、
前記ブラッシングの後、前記板ガラスの上下に配置された吸引機により、前記板ガラスに付着する残渣を吸引することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、一度の処理で効率的に有価物を回収すると共に、回収器具を回収して再利用することができる太陽電池モジュールリサイクルシステムおよび太陽電池モジュールリサイクル方法、並びに太陽電池モジュールリサイクルシステムに用いられるクリーニング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施の形態に係る太陽電池モジュールを示す概要図である。
【
図2】実施の形態に係る太陽電池モジュールリサイクルシステムを示す概要図である。
【
図3】実施の形態に係る基板に載置された太陽電池モジュールの層構造を示す概要図である。
【
図4】実施の形態に係る太陽電池モジュールリサイクル方法のフローを示す概要図である。
【
図5】実施の形態に係る回収網(回収器具)の構造を示す概要図である。
【
図6】実施の形態に係る太陽電池モジュールが熱分解炉で分解される過程を示す概要図である。
【
図7】実施の形態に係るモジュール回収コンベアを示す概要図である。
【
図8】実施の形態に係るモジュール回収コンベアに固定された回収網を示す概要図である。
【
図9】実施の形態に係るモジュール回収コンベアに載置された板ガラス、セルとリボン線、回収網が分離される状況を示す概要図である。
【
図10】実施の形態に係るガラス回収コンベアで回収された板ガラスをクリーニングするクリーニング装置を示す概要図である。
【
図11】他の実施の形態に係るモジュール回収コンベアに固定された回収網を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールリサイクルシステム(以下リサイクルシステムと略す。)について説明する。
図1(a)は、実施の形態に係る太陽電池モジュールを上方から視た概要図であり、
図1(b)は、この断面を示す概要図である。
【0021】
図1(a)に示すように、太陽電池モジュール2は、矩形状を有しており、マトリクス状にセル(太陽電池素子)4が配置され、外枠としてフレーム5が配置されている。フレーム5には主にアルミ枠が用いられる。また、太陽電池モジュール2は、
図1(b)に示すように、上から板ガラス6、封止用樹脂層8、バックシート10の三層が積層されて構成され、その下部に、セル4による発電電力を図示しない蓄電池等に供給するための端子ボックス9が添え付けられている。なお、封止用樹脂としてはEVAが一般的に用いられ、バックシート10にはポリエチレンテレフタレート(PET)が一般的に用いられる。
【0022】
封止用樹脂層8には、セル4、およびセル4同士を接続するリボン線14が封止されており、封止用樹脂層8においては、封止用樹脂、セル4、およびリボン線14が一体的に強固に結合している。このため、このままの状態で太陽電池モジュール2を分解して、板ガラス6(強化ガラス)、セル4、およびリボン線14を分離することは極めて困難である。
【0023】
なお、本発明に適用できる太陽電池モジュール2は、両面ガラスタイプではない樹脂製のバックシートを有する太陽電池モジュールであれば、すべて利用することができる。具体的には、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池、ヘテロ接合型太陽電池、CIS太陽電池、CIGS太陽電池、CdTe太陽電池等が挙げられる。
【0024】
図2は、実施の形態に係るリサイクルシステム16を示す概要図である。
図2に示すように、リサイクルシステム16は、フレーム5と端子ボックス9を除去するための除去ゾーン17、太陽電池モジュール2を搭載する搭載ゾーン18、熱分解炉20、太陽電池モジュール2を熱分解炉20に投入するための待機ゾーン22、熱分解炉20で熱分解された被熱分解太陽電池モジュール24が排出される排出ゾーン26、後述する回収網40を回収するための回収ゾーン28、モジュール回収コンベア30、板ガラス6をローラーコンベア32a(
図9参照)で回収するガラス回収コンベア32、板ガラス6以外の有価物を回収する有価物回収部33、板ガラス6以外の有価物をセル4とリボン線14とに選別する選別機71、および回収された板ガラス6をクリーニングするクリーニング装置74等を備えている。
【0025】
次に、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールリサイクル方法について説明する。
まず、工場に搬入された使用済みの太陽電池モジュール2は、除去ゾーン17に移送され、図示しないフレーム除去装置によって、フレーム5と端子ボックス9が除去される。なお、熱分解前にフレーム5を除去する場合、フレーム5の大きさに合わせて後述する第1フィルタ42を切断する必要がなく作業が簡便になるという利点があるが、取り外し時に板ガラス6が割れる可能性を低減するために熱分解後にフレーム5を取り外してもよい。
【0026】
次に、太陽電池モジュール2は、搭載ゾーン18に搭載される。ここで、搭載ゾーン18には、
図3に示すように、上から回収網40(回収器具)、第1フィルタ42、第2フィルタ44、トレイ46の順に積層された基板50が予め待機しており、太陽電池モジュール2は、かかる基板50の最上層に位置する回収網40の上に載置される(
図2、
図4(a)参照)。
【0027】
ここで、第1フィルタ42には、主に耐熱性を有する多孔質成形体が使用される。具体的な材料としてはアルミナ、ジルコニア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、コーディエライト、フェライト、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、フォルステライト、ジルコン、ムライト、ステアタイト、窒化アルミニウム等の安定かつ一般的なセラミック材料が挙げられる。
【0028】
また、第2フィルタ44には、第1フィルタ42に酸化チタンや酸化鉄などの触媒を添付したものが用いられる。
トレイ46は、基板50の最下層に位置し、中央の網状部分を外枠で囲った部材であり、主に鉄製の物が用いられる。
【0029】
なお、回収網40と第1フィルタ42の間には、熱分解を加速するための隙を確保する格子等の部材が配置されていてもよい。
図5(a)は、回収網40を示す図である。回収網40は、矩形状の金網54の長辺縁をフラットバー56で挟持されて構成されている。このため、回収網40は、短辺方向には弯曲するが長辺方向には弯曲しない性質を有している。
【0030】
また、フラットバー56の上面には、リフト57(
図2参照)によって回収網40を懸吊するための被懸吊部58が形成されている。
なお、フラットバー56は、
図5(b)に示すように、金網54の上下に位置し、上下のフラットバー56をビス60で固定することにより金網54を挟持している。
【0031】
また、上下のフラットバー56の間には、金網54の端部を挟み込む断面C字型のフラットバーなど、金網54の端部全体を保持する構造を持つフラットバーが追加されていてもよい。これにより、金網54が加重された際にビス60に集中する荷重負荷を分散させることができ、金網54の耐久性を向上させることができる。
【0032】
搭載ゾーン18において基板50上に載置された太陽電池モジュール2は、保温槽61で保温されて待機ゾーン22に移送され後(
図2参照)、
図4(b)に示すように、熱分解炉20に投入される。熱分解炉20に投入された太陽電池モジュール2は、回収網40に搭載された状態で熱分解処理される(熱分解工程)。
【0033】
図6は、熱分解炉20に投入された太陽電池モジュール2が熱分解される過程を示す図である。すなわち、熱分解炉20に太陽電池モジュール2が投入されると、当初
図6(a)に示す状態の層構造において、
図6(b)に示すように、封止用樹脂層8の封止用樹脂が熱分解され、酢酸ガス8aとポリエチレン(PE)8bが封止用樹脂から排出される。
【0034】
次に、
図6(c)に示すように、封止用樹脂が溶融し、これに続いて、
図6(d)に示すように、バックシート10が溶融する。そして、熱分解が完了すると、
図6(e)に示すように、第1フィルタ42上には、封止用樹脂内に混入していた白色顔料8cの他、回収網40、板ガラス6、セル4、およびリボン線14のみが残されることになる。なお、熱分解炉20では、一度に三枚の太陽電池モジュール2を熱分解することができる。
【0035】
次に、
図4(b)に示すように、熱分解された被熱分解太陽電池モジュール24が排出ゾーン26に排出された後、
図4(c)に示すように、回収ゾーン28へと移送される。そして、リフト57の図示しないフックを被懸吊部58に係合させることによって回収網40が懸吊され、被熱分解太陽電池モジュール24が回収網40に載置された状態で基板50から取り外され、
図7に示すように、モジュール回収コンベア30に回収網40ごと移載(回収)される(モジュール回収工程)。回収ゾーン28には、回収網40の存在しない第1フィルタ42以下の基板50がそのまま待機する(
図4(c)参照)。
【0036】
なお、回収網40がモジュール回収コンベア30に移載されると(
図8参照)、回収網40は、図示しない固定部によって、その四隅がコンベアベルト30aに固定される(固定工程)。これにより、コンベアベルト30aが回転して回収網40がモジュール回収コンベア30の下部に位置した場合に、回収網40が落下することを防止できる。
【0037】
モジュール回収コンベア30に移載された被熱分解太陽電池モジュール24は、コンベアベルト30a上で自然冷却された後、
図9に示すように、そのままガラス回収コンベア32上にスライドした後に回収される(ガラス回収工程、
図2参照)。
【0038】
一方で、回収網40はコンベアベルト30aに固定されたままそのまま回転を続ける。また、被熱分解太陽電池モジュール24に含まれるセル4とリボン線14は、コンベアベルト30aから落下し、有価物回収部33によって回収される(有価物回収工程)。有価物回収部33によって回収されたセル4とリボン線14は、有価物用コンベア67によって選別機71に搬送され、セル4とリボン線14とに選別されて有価物としてリサイクルされる。
【0039】
図10は、ガラス回収コンベア32で回収された板ガラス6をクリーニングするクリーニング装置74を示す概要図である。
図10に示すように、クリーニング装置74は、上ブラシ76aを支持する上ブラシ支持部78aと下ブラシ76bを支持する下構造部78bとを備えている。また、ブラシ76によってブラッシングされた板ガラス6の残渣を吸引する上吸引機80a、下吸引機80bをそれぞれ備えている。
ガラス回収工程において、ガラス回収コンベア32で回収された板ガラス6は、さらにクリーニングするクリーニング装置74に搬送され、表裏両面をブラッシングされる。ガラス回収コンベア32で回収された板ガラス6には、セル4やリボン線14、およびフレーム5を接着した際の樹脂の残渣などが付着している場合があるが、ブラシ76によって板ガラス6がブラッシングされることで、これらの残渣が板ガラス6から除去される。
そして、ブラッシング後に、さらに上下の吸引機80から吸引され、板ガラス6に付着している残渣が吸引される。
これにより、ガラス回収コンベア32で回収された板ガラス6は、有機物や金属類などの付着物を除去された後、新たな板ガラス等の材料としてリサイクルされる(クリーニング工程)。
【0040】
なお、廃棄された太陽電池モジュール2の中には、最初から板ガラス6が割れている物も含まれており、板ガラス6は強化ガラスであるため、1cm程度の粒状に破砕している。これを熱分解にて処理した場合は、板ガラス6という形は回収されず、セル4とリボン線14と共に粒状ガラスとして有価物回収部33によって回収され、選別機71で破砕ガラス、セル4とリボン線14に選別されて、有価物もしくは廃ガラスとしてリサイクルされる。
【0041】
一方、モジュール回収コンベア30のコンベアベルト30aに固定された回収網40は、元の位置に戻ると、
図4(d)に示すように、再度リフト57(器具回収部)のフックを被懸吊部58に係合させることによって懸吊され、回収ゾーン28で待機する基板50上に戻される(器具回収工程)。
回収網40が戻された基板50は、再度搭載ゾーン18に移送された後、新たな太陽電池モジュール2が搭載される。
【0042】
この実施の形態に係る発明によれば、一度の処理で効率的にガラスとそれ以外の有価物を回収すると共に、回収器具を回収して再利用することができる太陽電池モジュールリサイクルシステムおよび太陽電池モジュールリサイクル方法を提供することができる。
【0043】
具体的には、モジュール回収コンベア30により、被熱分解太陽電池モジュール24を回収網40ごと回収し、さらに板ガラス6とそれ以外の有価物とを分離回収した後、再度リフト57によってモジュール回収コンベア30に残留する回収網40を回収することにより、一度の処理で効率的にガラスとそれ以外の有価物を回収すると共に、回収網40を回収して再利用することができる。
【0044】
また、回収網40は、回収されるまでコンベアベルト30aに固定されたまま回転するため、回収網40を回収する際には、回収網40をコンベアベルト30aに移載した時と同じ位置でピックアップすれば足り、効率的に回収網40を回収することができる。
【0045】
なお、上述の実施の形態においては、固定部により、回収網40をモジュール回収コンベア30のコンベアベルト30aから離脱しないように固定しているが、
図11に示すように、モジュール回収コンベア30の上面以外の外周側両端部に、二条の固定用ベルト72を平行して配置してもよい。なお、固定用ベルト72はコンベアベルト30aと共に回転することはなく、その素材として金属製の板が好ましく用いられる。
【0046】
この場合、回収網40は、モジュール回収コンベア30の下部と側方において、進行方向と直交する両端部がコンベアベルト30aと固定用ベルト72の間に挟まれた状態で移動する。これによっても、コンベアベルト30aが回転して回収網40がモジュール回収コンベア30の下部に位置した場合に、回収網40が落下することを防止できる。
【0047】
なお、固定用ベルト72は上方が開放されているため、板ガラス6とそれ以外の有価物とが分離回収されて一回転し終わった回収網40は、容易にピックアップすることが可能である。
【0048】
また、回収網40は、コンベアベルト30aとの間の摩擦力をもってコンベアベルト30aと共に回転させることもできるが、固定部と併用し、コンベアベルト30aに固定した状態で回転させてもよい。
【0049】
また、上述の実施の形態においては、太陽電池モジュール2を回収するための回収器具として回収網40を用いる場合を例示しているが、回収器具は、必ずしも上述の実施の形態に示したものでなくともよい。すなわち、熱分解炉20による加熱に耐え得る耐熱性と溶融した樹脂を通過させる構造を有すると共に、加熱処理後のセル4、リボン線14、板ガラス6の積載に対する耐荷重性を備え、さらにセル4と、リボン線14が隙間から落下することなく、かつコンベアベルト30aに固定して回転させることができるようなものであればよい。かかる条件を満たす具体例としては、薄板のパンチングメタルや格子をつなぎ合わせたものなどが挙げられる。
【0050】
また、上述の実施の形態においては、モジュール回収コンベア30から回収網40を回収する器具回収部として再度リフト57を用いているが、器具回収部は、モジュール回収コンベア30に回収網40を載置し、モジュール回収コンベア30に回収網40を回収する機能を有していればリフト状の物に限定されない。
【符号の説明】
【0051】
2 太陽電池モジュール
4 セル
5 フレーム
6 板ガラス
8 封止用樹脂層
8a 酢酸ガス
8c 白色顔料
9 端子ボックス
10 バックシート
14 リボン線
15 酸素濃度
16 リサイクルシステム
17 除去ゾーン
18 搭載ゾーン
20 熱分解炉
22 待機ゾーン
24 被熱分解太陽電池モジュール
26 排出ゾーン
28 回収ゾーン
30 モジュール回収コンベア
30a コンベアベルト
32 ガラス回収コンベア
32a ローラーコンベア
33 有価物回収部
40 回収網
42 第1フィルタ
44 第2フィルタ
46 トレイ
50 基板
54 金網
56 フラットバー
57 リフト
58 被懸吊部
60 ビス
61 保温槽
67 有価物用コンベア
71 選別機
72 固定用ベルト
74 クリーニング装置
76 ブラシ
76a 上ブラシ
76b 下ブラシ
78a 上ブラシ支持部
78b 下構造部
80 吸引機
80a 上吸引機
80b 下吸引機