(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111238
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】インターロイキン-23産生促進用組成物およびReg3ファミリータンパク質の発現誘導用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/747 20150101AFI20240808BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240808BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240808BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240808BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240808BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240808BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240808BHJP
A61K 35/744 20150101ALI20240808BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20240808BHJP
【FI】
A61K35/747
A61P43/00 111
A61P37/08
A61P37/06
A61P29/00
A61P1/04
A61P31/00
A61K35/744
A61K35/74 A
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024100172
(22)【出願日】2024-06-21
(62)【分割の表示】P 2018568622の分割
【原出願日】2018-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2017027416
(32)【優先日】2017-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】小林 杏輔
(72)【発明者】
【氏名】浅見 幸夫
(57)【要約】
【課題】本発明は、味を変える、カプセル化する等の煩雑な手間を省くことができるインターロイキン-23産生促進用組成物等を提供することにある。
【解決手段】 本発明に係るインターロイキン-23産生促進用組成物は、乳酸菌を有効成分とする。ここで、乳酸菌は、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)菌、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)菌およびラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)菌から成る群から選択される少なくとも一つの乳酸菌であることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)菌を有効成分とするインターロイキン-23産生促進用組成物。
【請求項2】
ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)菌のみを有効成分とするインターロイキン-23産生促進用組成物。
【請求項3】
ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)菌を有効成分とするインターロイキン-23産生促進用組成物。
【請求項4】
ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)菌のみを有効成分とするインターロイキン-23産生促進用組成物。
【請求項5】
ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)菌を有効成分とするインターロイキン-23産生促進用組成物。
【請求項6】
ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)菌のみを有効成分とするインターロイキン-23産生促進用組成物。
【請求項7】
前記ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌は、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌2038株、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌OLL1181株(受託番号:FERM BP-11269)、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌OLL1255株(受託番号:NITE BP-76)またはラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌OLL1073R-1株(受託番号:FERM BP-10741)である
請求項1または2に記載のインターロイキン-23産生促進用組成物。
【請求項8】
前記ストレプトコッカス・サーモフィラス菌は、ストレプトコッカス・サーモフィラス菌1131株である
請求項3または4に記載のインターロイキン-23産生促進用組成物。
【請求項9】
前記ラクトバチルス・ジョンソニー菌は、ラクトバチルス・ジョンソニー菌OLL203565株(受託番号:NITE BP-02003)またはラクトバチルス・ジョンソニー菌OLL204255株(受託番号:NITE BP-02004)である
請求項5または6に記載のインターロイキン-23産生促進用組成物。
【請求項10】
前記菌は、死菌体である
請求項1から9のいずれか1項に記載のインターロイキン-23産生促進用組成物。
【請求項11】
前記死菌体は、加熱死菌体である
請求項10に記載のインターロイキン-23産生促進用組成物。
【請求項12】
ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)菌を有効成分とするReg3ファミリータンパク質の発現誘導用組成物。
【請求項13】
Reg3ファミリータンパク質の発現誘導用組成物は、インターロイキン-23産生促進を介してReg3ファミリータンパク質の発現を誘導する組成物である
請求項12に記載のReg3ファミリータンパク質の発現誘導用組成物。
【請求項14】
前記ラクトバチルス・ジョンソニー菌は、ラクトバチルス・ジョンソニー菌OLL203565株(受託番号:NITE BP-02003)またはラクトバチルス・ジョンソニー菌OLL204255株(受託番号:NITE BP-02004)である
請求項12または13に記載のReg3ファミリータンパク質の発現誘導用組成物。
【請求項15】
前記菌は、死菌体である
請求項12から14のいずれか1項に記載のReg3ファミリータンパク質の発現誘導用組成物。
【請求項16】
前記死菌体は、加熱死菌体である
請求項15に記載のReg3ファミリータンパク質の発現誘導用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターロイキン-23産生促進用組成物およびReg3ファミリータンパク質の発現誘導用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
過去に、「酢酸、乳酸またはチオグリコール酸等の低分子量モノカルボン酸を有効成分とするインターロイキン(以下「IL」と略する。)-23分泌(産生)促進剤」が提案されている(例えば、特開2008-127277号公報等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-127277号公報
【特許文献2】国際公開第2015/087919号
【特許文献3】国際公開第2011/145737号
【特許文献4】国際公開第2012/033151号
【特許文献5】特表2012-526751号
【特許文献6】国際公開第2016/136942号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Mariman, R et al., British Journal of Nutrition, (2014), Vol. 112, pp 1088-1097
【非特許文献2】Cinque, B et al, PLoS ONE, (2016) , 11(9), e0163216
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、酢酸、乳酸またはチオグリコール酸等の低分子量モノカルボン酸は比較的酸味が強く、そのまま摂取することは困難である。このため、低分子量モノカルボン酸を違和感なく摂取させるためには、製剤化等の加工の必要が生じる。具体的には、甘味料等を添加して味を変えたり、カプセル化したりする等の煩雑な手間が必要となる。
【0006】
本発明は、味を変える、カプセル化する等の煩雑な手間を省くことができるIL-23産生促進剤やIL-23産生促進用組成物等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1局面に係るIL-23産生促進用組成物は、菌体を有効成分とする。菌体は、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)菌、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)菌、およびラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)菌から成る群から選択される少なくとも一種の乳酸菌である。なお、乳酸菌は、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌2038株、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌OLL1181株(受託番号:FERM BP-11269)、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌OLL1255株(受託番号:NITE BP-76)、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌OLL1073R-1株(受託番号:FERM BP-10741)、ラクトバチルス・ジョンソニー菌OLL203565株(受託番号:NITE BP-02003)、ラクトバチルス・ジョンソニー菌OLL204255株(受託番号:NITE BP-02004)およびストレプトコッカス・サーモフィラス菌1131株から成る群から選択される少なくとも一種であることが好ましく、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌2038株、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌OLL1181株(受託番号:FERM BP-11269)、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌OLL1255株(受託番号:NITE BP-76)、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌OLL1073R-1株(受託番号:FERM BP-10741)、ラクトバチルス・ジョンソニー菌OLL203565株(NITE BP-02003)およびストレプトコッカス・サーモフィラス菌1131株から成る群から選択される少なくとも一種であることがより好ましく、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌OLL1255株(受託番号:NITE BP-76)、およびストレプトコッカス・サーモフィラス菌1131株から成る群から選択される少なくとも一種であることがさらに好ましい。すなわち、上述の菌体をIL-23産生促進用組成物としてまたはその一成分として使用する。なお、菌体は、生菌体であってもよいし、死菌体であってもよい。菌体が死菌体である場合、その死菌体は、加熱死菌体、すなわち熱により死に至った菌体であることが好ましい。また、ここにいう「組成物」には、医薬品,サプリメントおよび食品添加剤等の製剤、飲食品(動植物そのものを除く。)ならびに飲食品組成物(加工された飲食品を含む。)等の動物(ヒトを含む)が摂取し得る物が含まれる。
【0008】
本願発明者らの鋭意検討の結果、本発明の第1局面に係る菌体がIL-23の産生を促進することができることが明らかとされた。すなわち、この菌体は、良好にIL-23の産生を促進することができる。
【0009】
ところで、IL-23は、例えば、ILC3に作用してIL-22の産生を誘導する。IL-22が小腸上皮細胞に認識されると、Reg3ファミリータンパク質等の抗菌ペプチドの発現が誘導される。そして、この抗菌ペプチドにより外来の菌等の微生物が殺傷されて、微生物感染の拡大や過剰な炎症反応を抑制することができる。なお、この効果は、一例に過ぎず、IL-23が他の物質の産生を誘導して他の効果が発現されることも十分に想定され得る。
【0010】
また、この菌体は無味である。このため、IL-23産生促進用組成物を調製するに際して、味を変える、カプセル化する等の煩雑な手間を省くことができる。もちろん、他の観点からIL-23産生促進用組成物の味を変えてもよいし、IL-23産生促進用組成物をカプセル化してもよい。
【0011】
樹状細胞がtsDCである場合では、上述の菌体の中でもtsDCに対して30pg/mL以上の濃度のインターロイキン-23を産生させる菌体が好ましく、50pg/mL以上の濃度のインターロイキン-23を産生させる菌体がより好ましく、70pg/mL以上の濃度のインターロイキン-23を産生させる菌体がさらに好ましく、90pg/mL以上の濃度のインターロイキン-23を産生させる菌体が特に好ましい。
【0012】
また、上述の通り、樹状細胞がtsDCである場合、具体的には、tsDCに対して30pg/mL以上の濃度のインターロイキン-23を産生させるラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌、40pg/mL以上の濃度のインターロイキン-23を産生させるラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌、90pg/mL以上の濃度のインターロイキン-23を産生させるラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌、40pg/mL以上の濃度のインターロイキン-23を産生させるストレプトコッカス・サーモフィラス菌、70pg/mL以上の濃度のインターロイキン-23を産生させるストレプトコッカス・サーモフィラス菌、60pg/mL以上の濃度のインターロイキン-23を産生させるストレプトコッカス・サーモフィラス菌が挙げられる。
【0013】
また、樹状細胞がBMDCである場合では、上述の菌体の中でもBMDCに対して300pg/mL以上の濃度のインターロイキン-23を産生させる菌体が好ましく、600pg/mL以上の濃度のインターロイキン-23を産生させる菌体がより好ましく、900pg/mL以上の濃度のインターロイキン-23を産生させる菌体がさらに好ましく、1200pg/mL以上の濃度のインターロイキン-23を産生させる菌体がさらに好ましく、1500pg/mL以上の濃度のインターロイキン-23を産生させる菌体がさらに好ましく、2000pg/mL以上の濃度のインターロイキン-23を産生させる菌体が特に好ましい。
【0014】
また、上述の通り、樹状細胞がBMDCである場合、具体的には、BMDCに対して800pg/mL以上の濃度のインターロイキン-23を産生させるラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌、1000pg/mL以上の濃度のインターロイキン-23を産生させるラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌、1300pg/mL以上の濃度のインターロイキン-23を産生させるラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌、1600pg/mL以上の濃度のインターロイキン-23を産生させるラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌、2000pg/mL以上の濃度のインターロイキン-23を産生させるストレプトコッカス・サーモフィラス菌、300pg/mL以上の濃度のインターロイキン-23を産生させるラクトバチルス・ジョンソニー菌、800pg/mL以上の濃度のインターロイキン-23を産生させるラクトバチルス・ジョンソニー菌が挙げられる。
【0015】
本発明の第2局面に係る方法は、上述の菌体をIL-23産生促進剤として使用する方法である。すなわち、IL-23産生促進剤としての使用のための上述の菌体を提供することである。ただし、人を治療する行為は除かれる。
【0016】
本発明の第3局面に係る方法は、上述のIL-23産生促進用組成物を経口投与することにより生体内のIL-23の産生を促進する方法である。ただし、人を治療する行為は除かれる。なお、投与期間は、1週間以上であることが好ましく、2週間以上であることがより好ましく、3週間以上であることがさらに好ましく、4週間以上であることが特に好ましい。
【0017】
本発明の第3局面に係るIL-23の産生促進方法では、樹状細胞に上述の菌体が接触させられる。すなわち、樹状細胞に菌体が接触させられてIL-23の産生が促進される。ただし、人を治療する行為は除かれる。
【0018】
本発明の第4局面に係る上述の菌体の使用は、IL-23の産生を促進するための組成物の製造のための行為である。ただし、人を治療する行為は除かれる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】tsDCを各種乳酸菌加熱死菌体で刺激した際のIL-23分泌量(pg/mL)を示す棒グラフ図である。
【
図2】BMDCを各種乳酸菌加熱死菌体で刺激した際のIL-23分泌量(pg/mL)を示す棒グラフ図である。
【
図3】BMDCを各種乳酸菌およびビフィズス菌の加熱死菌体で刺激した際のIL-23分泌量(pg/mL)を示す棒グラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明の実施の形態を示すことにより本発明を詳細に説明するが、本発明は、以下に記載する個々の形態には限定されない。
【0021】
本発明の実施の形態に係るIL-23産生促進用組成物は、菌体を有効成分として含む。ここで、菌体は、生菌であってもよいし、死菌体であってもよい。菌体が死菌体である場合、その死菌体は、加熱死菌体であることが好ましい。ここいう「加熱死菌体」とは、その文字通り、菌体が加熱により死滅した後の物体である。なお、このIL-23産生促進用組成物は、菌体のみからなっていてもよいし、他の成分を含んでいてもよい。ここで、菌体には、例えば、乳酸菌やビフィズス菌等が含まれ得る。乳酸菌とは、分類学的に乳酸菌と認定されたもの、もしくはその類縁の細菌の全てを総称し、菌種や菌株などにおける制限はない。また、ビフィズス菌とは、分類学的にビフィズス菌と認定されたもの、もしくはその類縁の細菌の全てを総称し、菌種や菌株などにおける制限はない。なお、乳酸菌はその由来により、植物由来および動物由来と分類されることもあるが、本発明の乳酸菌は植物由来も動物由来もどちらも使用することができる。
【0022】
なお、本発明の実施の形態において、乳酸菌は、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)菌、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)菌、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)菌、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)菌およびラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)菌から成る群から選択される少なくとも一つの乳酸菌であることがより好ましい。
【0023】
乳酸菌は、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌である場合、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌2038株、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌OLL1181株(受託番号:FERM BP-11269)、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌MEP201701株、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌OLL1255株(受託番号:NITE BP-76)、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌OLL1073R-1株(受託番号:FERM BP-10741)であることが好ましく、ラクトバチルス・ガセリ菌である場合、ラクトバチルス・ガセリ菌OLL2716株(受託番号:FERM BP-6999)、ラクトバチルス・ガセリ菌OLL2809株(受託番号:NITE BP-72)、ラクトバチルス・ガセリ菌OLL2959株(受託番号:NITE BP-224)、ラクトバチルス・ガセリ菌MEP201801株であることが好ましく、ストレプトコッカス・サーモフィラス菌である場合、ストレプトコッカス・サーモフィラス菌1131株およびストレプトコッカス・サーモフィラス菌MEP201702株であることが好ましく、ラクトバチルス・プランタラム菌である場合、ラクトバチルス・プランタラム菌OLL2712株(受託番号:FERM BP-11262)、ラクトバチルス・プランタラム菌MEP201802株であることが好ましく、ラクトバチルス・ジョンソニー菌である場合、ラクトバチルス・ジョンソニー菌OLL203565株(受託番号:NITE BP-02003)、ラクトバチルス・ジョンソニー菌OLL204255株(受託番号:NITE BP-02004)、ラクトバチルス・ジョンソニー菌MEP201803株であることが好ましい。
【0024】
また、本発明の実施の形態において、ビフィズス菌は、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)菌であることが好ましい。
【0025】
ビフィドバクテリウム・ビフィダム菌は、ビフィドバクテリウム・ビフィダム菌OLB6378株(受託番号:NITE BP-31)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム菌MEP201804株であることが好ましい。
【0026】
なお、ここで、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌2038株は、株式会社明治製のブルガリアヨーグルトLB81(登録商標)から通常の方法によって単離することによって入手することができる。また、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌MEP201701株は、ブルガリア共和国産の発酵乳から通常の方法によって単離して入手することができる。また、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌OLL1255株は、2005年2月10日付(原寄託日)で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、受託番号:NITE BP-76として、ブタペスト条約に基づき国際寄託されている(2009年4月1日に原寄託よりブダペスト条約に基づく寄託へ移管)。また、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌OLL1073R-1株は、1999年2月22日付(国内受託日)で、独立行政法人産業総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)(後に、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に一元化)に、受託番号:FERM BP-10741として、ブタペスト条約に基づき国際寄託されている(2006年11月29日に原寄託よりブダペスト条約に基づく寄託へ移管)。また、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌OLL1181株は、2010年7月16日付で、独立行政法人産業総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)(後に、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に一元化)に、受託番号:FERM BP-11269として、ブタペスト条約に基づき国際寄託されている。また、ラクトバチルス・ガセリ菌OLL2716株は、1999年5月24日付(原寄託日)で、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号)(後に、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に一元化)に、受託番号:FERM BP-6999として、ブタペスト条約に基づき国際寄託されている(2000年1月14日に原寄託よりブダペスト条約に基づく寄託へ移管)。また、ラクトバチルス・ガセリ菌OLL2809株は、2005年2月1日付(原寄託日)で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、受託番号:NITE BP-72として、ブタペスト条約に基づき国際寄託されている(2006年1月18日に原寄託よりブダペスト条約に基づく寄託へ移管)。また、ラクトバチルス・ガセリ菌OLL2959株は、2006年3月31日付(原寄託日)で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、受託番号:NITE BP-224として、ブタペスト条約に基づき国際寄託されている(2007年11月21日に原寄託よりブダペスト条約に基づく寄託へ移管)。ラクトバチルス・ガセリ菌MEP201801株は、健康成人の糞便から通常の方法によって単離することによって入手することができる。また、ストレプトコッカス・サーモフィラス菌1131株は、株式会社明治製のブルガリアヨーグルトLB81(登録商標)から通常の方法によって単離することによって入手することができる。また、ストレプトコッカス・サーモフィラス菌MEP201702株は、ブルガリア共和国産の発酵乳から通常の方法によって単離して入手することができる。また、ラクトバチルス・プランタラム菌OLL2712株は、2010年7月2日付で、独立行政法人産業総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)(後に、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に一元化)に、受託番号:FERM BP-11262として、ブタペスト条約に基づき国際寄託されている。また、ラクトバチルス・プランタラム菌MEP201802株は、北海道産の生乳から通常の方法によって単離することによって入手することができる。また、ラクトバチルス・ジョンソニー菌OLL203565株は、2015年2月3日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、受託番号:NITE BP-02003として、ブタペスト条約に基づき国際寄託されている。また、ラクトバチルス・ジョンソニー菌OLL204255株は、2015年2月3日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、受託番号:NITE BP-02004として、ブタペスト条約に基づき国際寄託されている。また、ラクトバチルス・ジョンソニー菌MEP201803株は、神奈川県の山中に生息するミズキの蕾から通常の方法によって単離することによって入手することができる。また、ビフィドバクテリウム・ビフィダム菌OLB6378株は、2004年10月26日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に、受託番号:NITE BP-31として、ブタペスト条約に基づき国際寄託されている。ビフィドバクテリウム・ビフィダム菌MEP201804株は、健康成人の糞便から通常の方法によって単離することによって入手することができる。
【0027】
菌体の形態は、凍結や凍結乾燥をしたものであっても使用することができる。さらに、菌体は、菌体のみ、菌体に菌体以外の成分(例えば、凍結保護剤や凍結乾燥保護剤など)が含まれた形態であってもよく、医薬品の素材や飲食品の素材などとして使用実績のある澱粉や水などの各種媒体に分散されている状態であってもよい。
【0028】
本発明の実施の形態に係るIL-23産生促進用組成物は、ヒトを始めとする哺乳動物に摂取されることによって、その機能を発揮する。なお、ここにいう「摂取」とは、ヒトの体内に入るものであれば投与経路に限定はなく、例えば、経口投与、経管投与、経腸投与など、公知の投与方法の全てによって実現され得る。このとき、典型的には、消化管を経由する経口摂取、経腸摂取が挙げられるが、経口摂取が好ましく、飲食による摂取がより好ましい。
【0029】
本発明の実施の形態に係るIL-23産生促進用組成物には、菌体が含まれていればそれでよく、その数量は特に限定されないが、単位包装当たり菌体が1億個以上存在することが好ましく、5億個以上存在することがより好ましく、10億個以上存在することが更に好ましい。菌体の数量は多ければ多いほどその効果を期待することできるが、上限は10兆個である。
【0030】
本発明の実施の形態に係るIL-23産生促進用組成物の単位包装あたりの重量は特に限定されないが、IL-23産生促進用組成物1g当たりに菌体が1億個以上存在するとき、その重量は10g以上500g以下の範囲内であることが好ましく、25g以上250g以下の範囲内であることがより好ましく、50g以上200g以下の範囲内であることがさらに好ましく、75g以上150g以下の範囲内であることが最も好ましい。また、上述の単位包装とは、袋、箱、容器当たりの単位包装のみならず、それらに含まれる一回あたりの単位包装であってもよいし、一日当たりの単位包装であってもよい。なお、複数の日数、例えば1週間分の摂取に適切な数量をまとめて包装したもの、または複数の個包装を含むもの等とすることもできる。
【0031】
本発明の実施の形態において、IL-23産生促進用組成物は、3週間以上、好ましくは5週間以上、より好ましくは8週間以上で継続して摂取することが望ましい。なお、IL-23産生促進用組成物は安全に摂取できるため、摂取期間は特に限定されず、永久的に継続することができる。十分に有効なIL-23産生効果が得られる観点から、摂取期間は8週間を目安とすることが好ましい。
【0032】
本発明の実施の形態に係るIL-23産生促進用組成物は、医薬品または飲食品として使用することができる。その医薬品または飲食品は、IL-23産生促進効果を有する点で有用であり、例えば、微生物感染予防または感染治療用の医薬品または飲食品として使用することができる。本発明の実施の形態に係るIL-23産生促進用組成物を医薬品または飲食品として使用する場合には、単独の菌株の菌体を使用してもよく、または2以上の菌株の菌体を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
本発明の実施の形態に係るIL-23産生促進用組成物を医薬品または飲食品として利用するに際し、IL-23産生促進用組成物の状態は限定されず、ペースト化物、噴霧乾燥物、凍結乾燥物、真空乾燥物、ドラム乾燥物、媒体に分散させた液状物、希釈剤で希釈した希釈物、乾燥物をミルなどで破砕した破砕物などの状態のものを使用することができる。
【0034】
さらに、本発明の実施の形態に係るIL-23産生促進用組成物は、保健機能食品や病者用食品とすることもできる。保健機能食品制度は、内外の動向、従来からの特定保健用食品制度との整合性を踏まえて、通常の食品のみならず錠剤、カプセル等の形状をした食品を対象として設けられたものである。そして、同制度では、特定保健用食品(個別許可型)と栄養機能食品(規格基準型)の2種類の類型が規定されている。本発明の実施の形態に係るIL-23産生促進用組成物を、特定保健用食品等の特別用途食品や栄養機能食品として、ヒト等の動物に投与することにより、例えば、各種の感染に対する予防が可能となる。
【0035】
本発明の実施の形態に係るIL-23産生促進用組成物に、その用途、効能、機能、有効成分の種類、機能性成分の種類、摂取方法などの説明を表示することが好ましい。ここにいう「表示」は、医薬品、医薬部外品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、一般食品、健康補助食品、健康食品、サプリメント、経腸栄養剤、口腔化粧品、および飼料それぞれにおいて適した表示とすべきである。また、ここにいう「表示」には、需要者に対して上記説明を知らしめるための全ての表示が含まれる。この表示は、上述の表示内容を想起・類推させ得るような表示であればよく、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体などの如何に拘わらない全てのあらゆる表示を含み得る。例えば、製品の包装・容器に上記説明を表示すること、製品に関する広告・価格表もしくは取引書類に上記説明を表示して展示もしくは頒布すること、またはこれらを内容とする情報を電磁気的(インターネットなど)方法により提供することが挙げられる。
【0036】
本発明の実施の形態に係るIL-23産生促進用組成物を包装してなる製品が例えば飲食品である場合、その飲食品には、例えば「IL-23産生促進用」との表示や、「IL-23の産生を促進する乳酸菌を含有する」との表示、「抗菌ペプチド増強用」との表示、「感染症予防用」との表示、その他これらの表示に類する等が付されることが好ましい。
【0037】
なお、以上のような表示を行うために使用する文言は、上述の例に限定されず、そのような意味と同義である文言であってもかまわない。そのような文言としては、例えば、需要者に対して、IL-23の産生促進や、抗菌ペプチドの増強、感染症予防効果などを認識させるような種々の文言が許容され得る。
【0038】
本発明の実施の形態に係るIL-23産生促進用組成物を飲食品とする場合、飲食品の種類は特に限定されない。飲食品は、例えば、牛乳、加工乳、清涼飲料、発酵乳、ヨーグルト、チーズ、その他の乳製品、パン、ビスケット、クラッカー、ピッツァクラスト、調製粉乳、流動食、病者用食品、乳幼児用粉乳等食品、妊産婦・授乳婦用粉乳等食品、栄養食品等であってよい。このような飲食品の製造にあたっては、本発明の実施の形態に係るIL-23産生促進用組成物の有効成分である菌体をそのまま使用したり、他の飲食品ないし食品成分と混合したりするなど、通常の食品組成物における製法を利用することができる。また、飲食品の形状についても特に限定されず、通常用いられる飲食品の形状であればかまわない。例えば、固体状(粉末、顆粒状を含む)、ペースト状、液状、懸濁状などのいずれの形状でもよく、またこれらに限定されない。このとき、乳飲料、発酵乳、清涼飲料、ゼリー飲料、タブレット、粉末食品がより好ましく、ヨーグルトはさらに好ましい。
【0039】
本発明の実施の形態に係るIL-23産生促進用組成物の有効成分である菌体には、水、タンパク質、糖質、脂質、ビタミン類、ミネラル類、有機酸、有機塩基、果汁、フレーバー、機能性成分、食品添加物等、通常の食品に含まれる成分であれば問題なく添加することができる。上記飲食物の製造において、タンパク質源として、例えば全脂粉乳、脱脂粉乳、部分脱脂粉乳、カゼイン、ホエイ粉、ホエイタンパク質、ホエイタンパク質濃縮物、ホエイタンパク質分離物、α―カゼイン、β―カゼイン、κ-カゼイン、β―ラクトグロブリン、α―ラクトアルブミン、ラクトフェリン、大豆タンパク質、鶏卵タンパク質、肉タンパク質等の動植物性タンパク質、これら加水分解物等の、食品製造に通常使用されるタンパク質またはタンパク質含有原材料を使用することができる。糖類の供給源の例としては、加工澱粉(テキストリンのほか、可溶性澱粉、ブリティッシュスターチ、酸化澱粉、澱粉エステル、澱粉エーテル等)、食物繊維などが挙げられる。脂質源としては、例えば、ラード、魚油等、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の動物性油脂;パーム油、サフラワー油、コーン油、ナタネ油、ヤシ油、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の植物性油脂などが挙げられる。ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、カロテン類、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD群、ビタミンE、ビタミンK群、ビタミンP、ビタミンQ、ナイアシン、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン、イノシトール、コリン、葉酸などが挙げられ、ミネラル類としては、例えば、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、銅、鉄、マンガン、亜鉛、セレンなどが挙げられる。有機酸としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸などが挙げられる。機能性成分として、例えばオリゴ糖、グルコサミン、コラーゲン、セラミド、ローヤルゼリー、ポリフェノールなどが挙げられる。食品添加物として、例えば乳化剤、安定剤、増粘剤、ゲル化剤、甘味剤、酸味料、保存料、抗酸化剤、pH調整剤、着色剤などが挙げられる。バター、乳性ミネラル、クリーム、ホエイ、非タンパク態窒素、シアル酸、リン脂質、乳糖等の各種乳由来成分などは本発明の実施の形態に係る飲食品の製造に好適に用いることのできる成分の例である。
【0040】
これらの成分は、2種以上を組み合わせて使用することができる。また上記原材料は、天然物、天然物加工品、合成品および/またはこれらを多く含む食品のいずれを用いてもよい。
【0041】
本発明の実施の形態に係るIL-23産生促進用組成物の有効成分である菌体は、感染予防用医薬品または治療用医薬品とすることができる。このような医薬品を製造する場合、菌体は、破砕あるいは未粉砕した処理物として使用することができる。また、使用する菌体は単独でも、複数種であってもよい。
【0042】
上記医薬品中における菌体の量は、その目的、用途(予防剤、治療剤等)に応じて任意に定めることができる。含量の一例として、全体量に対して0.001~100%(w/w)、特に0.1~100%を示すことができるが、本発明はこれに限定されない。
【0043】
上述の菌体を有効成分とする医薬品の投与量は、投与経路、ヒトを含む投与対象動物の年齢、体重、症状など、種々の要因を考慮して、適宜設定することができる。適当な投与量の一例として、有効成分として1~1000mg/kg/dayを挙げることができるが、本発明はこれに限定されない。例えば、長期間に亘って予防目的で摂取する場合には、上記範囲よりも少量であってもよい。また本有効成分は安全性の問題が見当たらないため、上記範囲よりも多量に使用してもさしつかえない。
【0044】
上記医薬品の剤型は、本発明の菌体を腸内に到達させるため、経口投与が可能な剤型が好ましい。本発明による医薬品の好ましい剤型の例としては、例えば錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤、シロップ剤、トローチ剤等を挙げることができる。これらの各種製剤は、常法に従って主薬である菌体に、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤などの、医薬の製剤技術分野において通常使用しうる補助剤を混ぜ合わせることによって製剤化することができる。
【0045】
上述の菌体を医薬品として使用する場合には、例えば、経口投与の場合、菌体をそのまま投与(摂取)することができるが、例えば医薬品の一般的な製法に従い、錠剤、顆粒剤、粉末剤、カプセル剤、散剤として使用することができる。
【0046】
本発明の実施の形態に係るIL-23産生促進用組成物は、消化管全ての部位で効果の発現を期待することができる。消化管とは、すなわち、口腔、咽頭、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、盲腸、肛門までの一連を部位である。ここで、代表的な消化管の名称を例示しているが、例えば、結腸(小腸下部)、回腸、空腸(小腸上部)、上腹部消化管、下腹部消化管、大腸上位部、大腸下位部など、公知および/または技術常識の範疇の名称の消化管であれば、上述のIL-23産生促進用組成物の摂取(投与)による効果の発現を期待することができる。
【0047】
本発明の実施の形態に係るIL-23産生促進用組成物は、ヒトを始めとする哺乳動物の全てに対して効果がある。このため、このIL-23産生促進用組成物を摂取または/および投与することにより各種疾患を治療したり予防したりすることができる。ここでいう、哺乳動物とは、ヒト、ウシ、ブタ、ヒツジ、イルカ、クジラ、トラ、ライオン、チーター、カバ、キリン、ラクダ、アルパカ、イヌ、ネコ、サル、キツネ、タヌキ、クマ、リス、オットセイ、アシカ、パンダ、イノシシ、シカ、ウマ、オラウータン、カンガルーなど、公知の家畜、愛玩動物、鑑賞動物、野生動物などで哺乳類と分類されるものの全てが挙げられる。また、哺乳動物以外においても、消化管を有する動物、例えば、昆虫、爬虫類、鳥類、魚類、両生類、軟体動物などに対しても本発明の実施の形態に係るIL-23産生促進用組成物を投与および/または摂取することも可能であり、上記と同様の効果を得ることができることが期待される。また、ここでいう各種疾患は、特に限定されず、例えば、抗菌ペプチドを誘導することにより治療および/または予防することができる疾患であればよい。そのような疾患としては、例えば、日和見細菌による感染症、病原細菌・真菌による感染症、ピロリ菌への感染症、バクテリアトランスロケーション、腸粘膜の炎症の持続・腸内フローラのバランスの変化(腸内フローラのバランスの破綻など)およびこれらの炎症等から誘導される疾病、クローン病、潰瘍性大腸炎などの炎症性大腸炎、制御性T細胞の分化を誘導する過剰な炎症やアレルギー症状が挙げられる。
【実施例0048】
以下では、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これにより限定されない。
【0049】
(実施例1)
1.乳酸菌加熱死菌体の調製
先ず、一例として以下の9株の乳酸菌を用意した。
・ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)菌2038株
・ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)菌MEP201701株
・ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)菌OLL1255株(受託番号:NITE BP-76)
・ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)菌OLL1073R-1株(受託番号:FERM BP-10741)
・ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)菌OLL2716株(受託番号:FERM BP-6999)
・ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)菌OLL2809株(受託番号:NITE BP-72)
・ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)菌OLL2959株(NITE BP-224)
・ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)菌1131株
・ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)菌MEP201702株
【0050】
次いで、各種ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌および各種ラクトバチルス・ガセリ菌をそれぞれMRS培地に接種すると共に、各種ストレプトコッカス・サーモフィラス菌をそれぞれ0.5%ラクトース含有M17培地に接種した後、各培地をアネロパック入りのジャーに格納し、嫌気環境下、37℃で各乳酸菌を1回賦活培養した。その後、各培地に各乳酸菌の懸濁液を1%添加して18時間かけて各乳酸菌を本培養した。各乳酸菌の本培養完了後、各培地をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した。そして、分光光度計により波長650nmでその洗浄液の濁度を測定し、ODが2となるように乳酸菌懸濁液を調製した。最後に、各乳酸菌懸濁液を65℃の湯浴にて1時間インキュベートして、目的の乳酸菌加熱死菌体を調製した。
【0051】
2.樹状細胞の準備
(1)tsDCの採取
SV40 large T抗原遺伝子を導入したマウスの骨髄からtsDC(ECACC)を採取した。
【0052】
(2)正常マウスの骨髄由来樹状細胞(BMDC)の調製
セルソーター(auto MACS(登録商標)、ミルテニーバイオテク社製)を用いて、8週齢の雄Balb/cマウス(日本SLC社提供)の下肢骨髄から未分化樹状細胞のみを分離した後、その未分化樹状細胞を、granulocyte macrophage colony-stimulating factor(GM-CSF)を含むRPMI培地にて、5%CO2の環境下、37℃で8日間培養して、目的の正常マウスのBMDCを得た。
【0053】
3.乳酸菌加熱死菌体による樹状細胞への刺激付与
樹状細胞が1×105セル/ウェルとなり且つその液量が500μLとなるように、24ウェルプレートに樹状細胞を播種し、その翌日、各ウェルに5μLの乳酸菌加熱死菌体を添加した。その後、tsDCを9%CO2環境下、33℃で24時間インキュベートすると共に、BMDCを5%CO2環境下、37℃で24時間インキュベートした。なお、このとき、tsDCおよびBMDCそれぞれにつき3つの試料を調製した。そして、各培養液から上清を回収した。なお、樹状細胞としてtsDCを用いた場合には上記9株の乳酸菌の加熱死菌体全てを使用し、樹状細胞としてBMDCを用いた場合には上記9株の乳酸菌の加熱死菌体のうちラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌2038株およびストレプトコッカス・サーモフィラス菌1131株の加熱死菌体のみを使用した。
【0054】
4.対照試料の調製
樹状細胞が1×105セル/ウェルとなり且つその液量が500μLとなるように、24ウェルプレートに樹状細胞を播種し、その翌日、各ウェルに5μLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を添加した。その後、tsDC樹状細胞を9%CO2環境下、33℃で24時間培養すると共に、BMDCを5%CO2環境下、37℃で24時間インキュベートした。なお、このとき、tsDC樹状細胞およびBMDCそれぞれにつき3つの試料を調製した。そして、各培養液から上清を回収した。
【0055】
5.樹状細胞培養液上清中に含まれるインターロイキン-23の濃度測定
Mouse IL-23 Quantikine ELISA Kit(R&D Systems社製)を用いて樹状細胞培養液上清中に含まれるインターロイキン-23の濃度を測定した。樹状細胞としてtsDCを採用した場合の結果を表1に、樹状細胞としてBMDCを採用した場合の結果を表2に示した。また、表1に記載の結果を棒グラフ化したものを
図1に、表2に記載の結果を棒グラフ化したものを
図2に示した。表1および表2から明らかなように、樹状細胞を乳酸菌加熱死菌体で刺激することによってインターロイキン-23の分泌が促進されることが明らかとなった。なお、樹状細胞がtsDCである場合、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌OLL1255株、ラクトバチルス・ガセリ菌OLL2959株およびストレプトコッカス・サーモフィラス菌1131株が特に顕著な効果を示した。また、樹状細胞がBMDCである場合、ストレプトコッカス・サーモフィラス菌1131株が特に顕著な効果を示した。
【0056】
【0057】
【0058】
(実施例2)
1.加熱死菌体の調製
先ず、一例として以下の11株の乳酸菌および2株のビフィズス菌を用意した。
・ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)菌OLL1073R-1株(受託番号:FERM BP-10741)
・ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)菌OLL1181株(受託番号:FERM BP-11269)
・ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)菌OLL1255株(受託番号:NITE BP-76)
・ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)菌OLL2716株(受託番号:FERM BP-6999)
・ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)菌OLL2809株(受託番号:NITE BP-72)
・ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)菌MEP201801株
・ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)菌OLL2712株(FERM BP-11262)
・ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)菌MEP201802株
・ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)菌MEP201803株
・ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)菌OLL203565株(NITE BP-02003)
・ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)菌OLL204255株(NITE BP-02004)
・ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)菌OLB6378株(NITE BP-31)
・ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)菌MEP201804株
【0059】
次いで、各種ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス菌、各種ラクトバチルス・ガセリ菌、各種ラクトバチルス・プランタラム菌、各種ラクトバチルス・ジョンソニー菌をそれぞれMRS培地に、各種ビフィドバクテリウム・ビフィダム菌をGAM培地に接種した後、各培地をアネロパック入りのジャーに格納し、嫌気環境下、37℃で各乳酸菌およびビフィズス菌を1回賦活培養した。その後、各培地に各乳酸菌およびビフィズス菌の懸濁液を1%添加して18時間かけて各乳酸菌およびビフィズス菌を本培養した。各乳酸菌およびビフィズス菌の本培養完了後、各培地をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した。そして、分光光度計により波長650nmでその洗浄液の濁度を測定し、ODが2となるように乳酸菌懸濁液およびビフィズス菌懸濁液を調製した。最後に、各乳酸菌懸濁液およびビフィズス菌懸濁液を65℃の湯浴にて1時間インキュベートして、目的の乳酸菌加熱死菌体およびビフィズス菌加熱死菌体を調製した。
【0060】
2.正常マウスの骨髄由来樹状細胞(BMDC)の調製
実施例1の「2.樹状細胞の準備」の「(2)正常マウスの骨髄由来樹状細胞(BMDC)の調製」の欄に記載されている手順と同じ手順に従って目的の正常マウスのBMDCを得た。
【0061】
3.加熱死菌体による樹状細胞への刺激付与
実施例1の「3.乳酸菌加熱死菌体による樹状細胞への刺激付与」に記載されている手順と同じ手順に従ってBMDCに上述の11株の乳酸菌加熱死菌体および2株のビフィズス菌加熱死菌体を添加し、BMDCをインキュベートした。
【0062】
4.対照試料の調製
実施例1の「4.対照試料の調製」に記載されている手順と同じ手順に従って対照試料を調製した。
【0063】
5.樹状細胞培養液上清中に含まれるインターロイキン-23の濃度測定
実施例1の「5.樹状細胞培養液上清中に含まれるインターロイキン-23の濃度測定」に記載されている手順と同じ手順に従ってBMDC培養液上清中に含まれるインターロイキン-23の濃度を測定した。その結果を表3に示した。また、表3に記載の結果を棒グラフ化したものを
図3に示した。表3から明らかなように、BMDCを乳酸菌加熱死菌体およびビフィズス菌加熱死菌体で刺激することによってインターロイキン-23の分泌が促進されることが明らかとなった。ここでは、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)菌OLL1255株(受託番号:NITE BP-76)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)菌OLL2809株(受託番号:NITE BP-72)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)菌OLL2712株(FERM BP-11262)が特に顕著な効果を示した。
【0064】