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特開2024-111270ラジカルトラップ剤を含むレジスト下層膜形成組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111270
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】ラジカルトラップ剤を含むレジスト下層膜形成組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
G03F7/11 503
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024100987
(22)【出願日】2024-06-24
(62)【分割の表示】P 2020572289の分割
【原出願日】2020-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2019024794
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019075868
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】上林 哲
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 貴文
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雄人
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】岸岡 高広
(72)【発明者】
【氏名】坂本 力丸
(57)【要約】
【課題】 半導体製造におけるリソグラフィープロセスにおいて使用される、保存安定性に優れたレジスト下層膜形成組成物を提供する。
【解決手段】 主鎖中にジスルフィド結合を含むポリマーと、ラジカルトラップ剤、及び溶剤を含む、レジスト下層膜形成組成物である。前記ラジカルトラップ剤が、好ましくは環構造又はチオエーテル構造を有する化合物である。前記環構造が、好ましくは炭素原子数6~40の芳香環構造又は2,2,6,6-テトラメチルピペリジン構造である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジスルフィド結合を含むポリマー、ラジカルトラップ剤、及び溶剤を含む、レジスト下層膜形成組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造におけるリソグラフィープロセスにおいて使用されるレジスト下層膜形成組成物に関する。また、前記レジスト下層膜形成組成物を適用したレジストパターン付き基板の製造方法、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造において、基板とその上に形成されるレジスト膜との間にレジスト下層膜を設け、所望の形状のレジストパターンを形成するリソグラフィープロセスは広く知られている。特許文献1には、ジスルフィド結合を主鎖に有するポリマー及び溶剤を含むリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2009/096340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置製造におけるリソグラフィープロセスにおいて使用されるレジスト下層膜形成組成物は、半導体装置の製造が継続して実施される場合、半導体装置製造工程中のリソグラフィー工程における円滑な材料供給のため、一定時間経過後でも組成物の中身(状態)が変化しないこと(保存安定性)が求められる。特に組成物中の主成分であるポリマーは、その分子量(例えば、重量平均分子量)の変化が無いことが求められるが、ジスルフィド結合を主鎖に有するポリマーは、保存中に分子量の減少が起こることで保存安定性に欠けるという問題があった。本発明の目的は、上記の課題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下を包含する。
[1]
ジスルフィド結合を含むポリマー、ラジカルトラップ剤、及び溶剤を含む、レジスト下層膜形成組成物。
[2]
前記ポリマーが、
ジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能以上の化合物(A)と、
上記化合物(A)と異なる2官能以上の化合物(B)との
反応生成物である、[1]に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[3]
前記ラジカルトラップ剤が、環構造又はチオエーテル構造を有する化合物(T)である、[1]に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[4]
前記環構造が、炭素原子数6~40の芳香環構造又は2,2,6,6-テトラメチルピペリジン構造である、[3]に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[5]
前記化合物(T)が、ヒドロキシ基、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数1~20のアルコキシ基を含む、[3]に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[6]
前記2官能以上の化合物(B)が、炭素原子数6~40の芳香環構造、又は複素環構造を含む、[2]に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[7]
架橋触媒をさらに含む、[1]乃至[6]何れか1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[8]
架橋剤をさらに含む、[1]乃至[7]の何れか1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[9]
[1]乃至[8]何れか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物からなる塗布膜の焼成物であることを特徴とするレジスト下層膜。
[10]
半導体基板上に、[1]乃至[8]何れか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を塗布しベークしてレジスト下層膜を形成する工程、前記レジスト下層膜上にレジストを塗布しベークしてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト下層膜と前記レジストで被覆された半導体基板を露光する工程、露光後の前記レジスト膜を現像する工程を含む、半導体装置の製造に用いるレジストパターン付き基板の製造方法。
[11]
半導体基板上に、[1]乃至[8]の何れか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物からなるレジスト下層膜を形成する工程と、
前記レジスト下層膜の上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜を露光する工程と、
露光後の前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程と、
形成された前記レジストパターンを介して前記レジスト下層膜をエッチングすることによりパターン化されたレジスト下層膜を形成する工程と、
パターン化された前記レジスト下層膜により半導体基板を加工する工程と、
を含むことを特徴とする、半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、一定時間経過後でもポリマーの重量平均分子量の変化が少なく、保存安定性に優れるため、材料の安定供給が可能であり、円滑な半導体装置製造に寄与できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
≪用語の説明≫
本発明において用いられる用語は、他に特に断りのない限り、以下の定義を有する。
【0008】
「炭素原子数1~10のアルキル基」としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコデシル基等が挙げられる。
【0009】
「炭素原子数1~20のアルコキシ基」としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、1-メチル-n-ブトキシ基、2-メチル-n-ブトキシ基、3-メチル-n-ブトキシ基、1,1-ジメチル-n-プロポキシ基、1,2-ジメチル-n-プロポキシ基、2,2-ジメチル-n-プロポキシ基、1-エチル-n-プロポキシ基、n-ヘキシルオキシ基、1-メチル-n-ペンチルオキシ基、2-メチル-n-ペンチルオキシ基、3-メチル-n-ペンチルオキシ基、4-メチル-n-ペンチルオキシ基、1,1-ジメチル-n-ブトキシ基、1,2-ジメチル-n-ブトキシ基、1,3-ジメチル-n-ブトキシ基、2,2-ジメチル-n-ブトキシ基、2,3-ジメチル-n-ブトキシ基、3,3-ジメチル-n-ブトキシ基、1-エチル-n-ブトキシ基、2-エチル-n-ブトキシ基、1,1,2-トリメチル-n-プロポキシ基、1,2,2-トリメチル-n-プロポキシ基、1-エチル-1-メチル-n-プロポキシ基、及び1-エチル-2-メチル-n-プロポキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ノルボルニオキシ基、アダマンチルオキシ基、アダマンタンメチルオキシ基、アダマンタンエチルオキシ基、テトラシクロデカニルオキシ基、トリシクロデカニルオキシ基等が挙げられる。
【0010】
「炭素原子数3~6のアルケニル基」としては、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-エテニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-n-プロピルエテニル基、1-メチル-1-ブテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-3-ブテニル基、2-エチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-3-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-3-ブテニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、1-i-プロピルエテニル基、1,2-ジメチル-1-プロペニル基、1,2-ジメチル-2-プロペニル基、1-シクロペンテニル基、2-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-メチル-1-ペンテニル基、1-メチル-2-ペンテニル基、1-メチル-3-ペンテニル基、1-メチル-4-ペンテニル基、1-n-ブチルエテニル基、2-メチル-1-ペンテニル基、2-メチル-2-ペンテニル基、2-メチル-3-ペンテニル基、2-メチル-4-ペンテニル基、2-n-プロピル-2-プロペニル基、3-メチル-1-ペンテニル基、3-メチル-2-ペンテニル基、3-メチル-3-ペンテニル基、3-メチル-4-ペンテニル基、3-エチル-3-ブテニル基、4-メチル-1-ペンテニル基、4-メチル-2-ペンテニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、4-メチル-4-ペンテニル基、1,1-ジメチル-2-ブテニル基、1,1-ジメチル-3-ブテニル基、1,2-ジメチル-1-ブテニル基、1,2-ジメチル-2-ブテニル基、1,2-ジメチル-3-ブテニル基、1-メチル-2-エチル-2-プロペニル基、1-s-ブチルエテニル基、1,3-ジメチル-1-ブテニル基、1,3-ジメチル-2-ブテニル基、1,3-ジメチル-3-ブテニル基、1-i-ブチルエテニル基、2,2-ジメチル-3-ブテニル基、2,3-ジメチル-1-ブテニル基、2,3-ジメチル-2-ブテニル基、2,3-ジメチル-3-ブテニル基、2-i-プロピル-2-プロペニル基、3,3-ジメチル-1-ブテニル基、1-エチル-1-ブテニル基、1-エチル-2-ブテニル基、1-エチル-3-ブテニル基、1-n-プロピル-1-プロペニル基、1-n-プロピル-2-プロペニル基、2-エチル-1-ブテニル基、2-エチル-2-ブテニル基、2-エチル-3-ブテニル基、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル基、1-t-ブチルエテニル基、1-メチル-1-エチル-2-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-2-プロペニル基、1-i-プロピル-1-プロペニル基、1-i-プロピル-2-プロペニル基、1-メチル-2-シクロペンテニル基、1-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-1-シクロペンテニル基、2-メチル-2-シクロペンテニル基、2-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-4-シクロペンテニル基、2-メチル-5-シクロペンテニル基、2-メチレン-シクロペンチル基、3-メチル-1-シクロペンテニル基、3-メチル-2-シクロペンテニル基、3-メチル-3-シクロペンテニル基、3-メチル-4-シクロペンテニル基、3-メチル-5-シクロペンテニル基、3-メチレン-シクロペンチル基、1-シクロヘキセニル基、2-シクロヘキセニル基及び3-シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0011】
「炭素原子数1~10のアルキレン基」としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、シクロプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、s-ブチレン基、t-ブチレン基、シクロブチレン基、1-メチル-シクロプロピレン基、2-メチル-シクロプロピレン基、n-ペンチレン基、1-メチル-n-ブチレン基、2-メチル-n-ブチレン基、3-メチル-n-ブチレン基、1,1-ジメチル-n-プロピレン基、1,2-ジメチル-n-プロピレン基、2,2-ジメチル-n-プロピレン、1-エチル-n-プロピレン基、シクロペンチレン基、1-メチル-シクロブチレン基、2-メチル-シクロブチレン基、3-メチル-シクロブチレン基、1,2-ジメチル-シクロプロピレン基、2,3-ジメチル-シクロプロピレン基、1-エチル-シクロプロピレン基、2-エチル-シクロプロピレン基、n-ヘキシレン基、1-メチル-n-ペンチレン基、2-メチル-n-ペンチレン基、3-メチル-n-ペンチレン基、4-メチル-n-ペンチレン基、1,1-ジメチル-n-ブチレン基、1,2-ジメチル-n-ブチレン基、1,3-ジメチル-n-ブチレン基、2,2-ジメチル-n-ブチレン基、2,3-ジメチル-n-ブチレン基、3,3-ジメチル-n-ブチレン基、1-エチル-n-ブチレン基、2-エチル-n-ブチレン基、1,1,2-トリメチル-n-プロピレン基、1,2,2-トリメチル-n-プロピレン基、1-エチル-1-メチル-n-プロピレン基、1-エチル-2-メチル-n-プロピレン基、シクロヘキシレン基、1-メチル-シクロペンチレン基、2-メチル-シクロペンチレン基、3-メチル-シクロペンチレン基、1-エチル-シクロブチレン基、2-エチル-シクロブチレン基、3-エチル-シクロブチレン基、1,2-ジメチル-シクロブチレン基、1,3-ジメチル-シクロブチレン基、2,2-ジメチル-シクロブチレン基、2,3-ジメチル-シクロブチレン基、2,4-ジメチル-シクロブチレン基、3,3-ジメチル-シクロブチレン基、1-n-プロピル-シクロプロピレン基、2-n-プロピル-シクロプロピレン基、1-イソプロピル-シクロプロピレン基、2-イソプロピル-シクロプロピレン基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピレン基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピレン基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピレン基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピレン基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピレン基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピレン基、2-エチル-3-メチル-シクロプロピレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基又はn-デカニレン基が挙げられる。
【0012】
「炭素原子数1~6のアルキルチオ基」としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基及びヘキシルチオ基等が挙げられる。
【0013】
「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0014】
「炭素原子数6~40の芳香環構造」としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、アセナフテン、フルオレン、トリフェニレン、フェナレン、フェナントレン、インデン、インダン、インダセン、ピレン、クリセン、ペリレン、ナフタセン、ペンタセン、コロネン、ヘプタセン、ベンゾ[a]アントラセン、ジベンゾフェナントレン、ジベンゾ[a,j]アントラセン等から誘導される芳香環構造である。
【0015】
「炭素原子数6~40の芳香環構造」は、例えば「炭素原子数6~40のアリール基」から誘導されてもよく、「炭素原子数6~40のアリール基」の具体的としては、フェニル基、o-メチルフェニル基、m-メチルフェニル基、p-メチルフェニル基、o-クロルフェニル基、m-クロルフェニル基、p-クロルフェニル基、o-フルオロフェニル基、p-フルオロフェニル基、o-メトキシフェニル基、p-メトキシフェニル基、p-ニトロフェニル基、p-シアノフェニル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基、o-ビフェニリル基、m-ビフェニリル基、p-ビフェニリル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基及び9-フェナントリル基が挙げられる。
【0016】
「複素環構造」としては、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ピラン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、インドール、プリン、キノリン、イソキノリン、キヌクリジン、クロメン、チアントレン、フェノチアジン、フェノキサジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン、カルバゾール、トリアジンオン、トリアジンジオン及びトリアジントリオンが挙げられる。
【0017】
「官能」とは、物質の化学的属性や化学反応性に着目した概念で、官能基というときにはそれぞれに固有の物性や化学反応性が想定されているが、本願では、他の化合物と結合できる反応性置換基のことを言う。すなわち例えば3官能とは、化合物中に3つの反応性置換基を有する。本願において官能の数は、整数で表される。反応性置換基の具体例としては、ヒドロキシ基、エポキシ基、アシル基、アセチル基、ホルミル基、ベンゾイル基、カルボキシ基、カルボニル基、アミノ基、イミノ基、シアノ基、アゾ基、アジ基、チオール基、スルホ基及びアリル基が挙げられる。
【0018】
<レジスト下層膜形成組成物>
本願のレジスト下層膜形成組成物は、ジスルフィド結合を含むポリマー、好ましくは主鎖中にジスルフィド結合を含むポリマーと、ラジカルトラップ剤と、溶剤とを含む。
以下に順に詳細を説明する。
【0019】
<ジスルフィド結合を含むポリマー>
本願のジスルフィド結合を含むポリマーは、例えば国際公開第2009/096340号公報に記載のポリマーや、国際公開第2019/151471号公報に記載のジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能以上の化合物と、3官能以上の化合物との反応生成物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
前記ポリマーが、ジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能の化合物(A)と、上記化合物(A)と異なる2官能の化合物(B)との反応生成物である場合、前記ポリマー中の主鎖にジスルフィド結合が存在する。
前記ポリマーは、下記式(1)で表される繰り返し単位構造を有してもよい。
【0021】
【化1】
【0022】
(上記式(1)中、Rは直接結合、又はメチル基を表し、
nは繰り返し単位構造の数であって、0ないし1の整数を表し、
mは0又は1の整数を表す。
は下記式(2)、式(3)又は式(2-1)で表される基を表し、
【0023】
【化2】
【0024】
上記式(3)中、Xは下記式(4)、式(51)又は式(6)で表される基を表し、
【0025】
【化3】
【0026】
上記式(4)、式(51)及び式(6)中、R、R、R、R51及びR61はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数3~6のアルケニル基、ベンジル基又はフェニル基を表し、
前記フェニル基は、炭素原子数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1~6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基で置換されていてもよく、
またRとR、RとRは互いに結合して炭素原子数3~6の環を形成していてもよい。
~Aはそれぞれ独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、
はジスルフィド結合で中断されている炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、
lは繰り返し単位構造の数であって、5ないし100の整数を表す。)
【0027】
はジスルフィド結合で中断されている炭素原子数2から6のアルキレン基であることが好ましい。
【0028】
上記「炭素原子数3~6の環」としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン及びシクロヘキサンが挙げられる。
【0029】
前記式(1)は下記式(5)で表されてもよい。
【0030】
【化4】
【0031】
〔上記式(5)中、Xは前記式(4)、式(51)又は式(6)で表される基を表し、
6及びR7はそれぞれ独立に炭素原子数1~3のアルキレン基又は直接結合を表し、
pは繰り返し単位構造の数であって、5ないし100の整数を表す。〕
【0032】
本願のポリマーは下記(式P-6)~(式P-8)で表されることが好ましい。
【0033】
【化5】
【0034】
【化6】
【0035】
【化7】
【0036】
前記ポリマーが、ジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能以上の化合物(A)と、化合物(A)とは異なる2官能以上の化合物(B)とを、自体公知の方法で反応させて合成した、反応生成物であることが好ましい。
ジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能以上の化合物(A)と、化合物(A)とは異なる2官能以上の化合物(B)各々が2官能である場合、反応時のモル比は0.7:1.0~1.0:0.7であることが好ましい。
上記ポリマーの重量平均分子量としては、例えば1,000~100,000であり、又は1,100~50,000であり、又は1,200~30,000であり、又は1,300~20,000であり、又は1,500~10,000である。
【0037】
<ジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能以上の化合物(A)>
ジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能以上の化合物(A)は2つ以上の上記官能基を有していればよいが、好ましくは2官能又は3官能であり、最も好ましくは2官能である。官能基としては、カルボン酸基であることが好ましい。
上記化合物(A)は、ジスルフィド結合を含むジカルボン酸であることが好ましい。
上記化合物(A)は、ジスルフィド結合によって中断された炭素原子数2以上のアルキレン基を有するジカルボン酸であることがさらに好ましい。上記化合物(A)は、ジスルフィド結合によって中断された炭素原子数2~6のアルキレン基を有するジカルボン酸であることがさらに好ましい。
前記ジスルフィド結合を含むジカルボン酸は、下記式(1-1)で表されることが好ましい。
【0038】
【化8】
【0039】
(式(1-1)中、X及びXは各々置換されてもよい炭素原子数1~10のアルキレン基、各々置換されてもよい炭素原子数6~40のアリーレン基又はそれらの組み合わせを示す。)
【0040】
上記「置換されてもよい」とは、上記炭素原子数1~10のアルキレン基又は上記炭素原子数6~40のアリーレン基中に存在する水素原子の一部又は全部が、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、メチレンジオキシ基、アセトキシ基、メチルチオ基、アミノ基又は炭素原子数1~9のアルコキシ基で置換されてもよいことを意味する。
ジスルフィド結合を少なくとも1つ以上有する2官能以上の化合物(A)は、例えば下記式(A-1)~(A-4)を例示することができる。
【0041】
【化9】
【0042】
<2官能以上の化合物(B)>(2官能の化合物)
本願の2官能以上の化合物(B)は、上記化合物(A)と異なる化合物である。本願の2官能以上の化合物(B)は、2つ以上の上記官能基を有していればよいが、好ましくは2官能又は3官能であり、最も好ましくは2官能である。官能基としては、グリシジル基を有することが好ましい。3官能以上の化合物については、後述する。
上記2官能以上の化合物(B)は、ジスルフィド結合を含まないことが好ましい。
上記2官能以上の化合物(B)は、炭素原子数6~40の芳香環構造、又は複素環構造を含むことが好ましい。
【0043】
前記複素環構造は、ヘテロ原子が窒素原子及び/又は酸素原子であることが好ましく、炭素原子数4~24であることが好ましく、トリアジンオン、トリアジンジオン及びトリアジントリオンであることが好ましく、トリアジントリオンであることが最も好ましい。
2官能の化合物(B)は、下記の化合物(a)~(z)及び(aa)から選ばれることが好ましいが、これらに限定されない。式(n)において、Rは炭素原子数1~10のアルキレン基を表す。
【0044】
【化10】
【0045】
【化11】
【0046】
<2官能以上の化合物(B)>(3官能以上の化合物)
本願の2官能以上の化合物(B)は、3官能以上の化合物を含んでもよいが、3~10官能の化合物を含んでもよく、3~8官能の化合物を含んでもよく、3~6官能の化合物を含んでもよく、好ましくは3官能又は4官能の化合物を含む。
【0047】
前記3官能以上の化合物は、好ましくは3つ以上のエポキシ基を含む化合物である。
【0048】
言うまでもなく、「3つ以上のエポキシ基を含む」とは、一分子中に「3つ以上のエポキシ基を含む」ことを意味する。
前記3官能以上の化合物が、3~10つのエポキシ基を含む化合物であることが好ましい。3~8つのエポキシ基を含む化合物であることが好ましい。3~6つのエポキシ基を含む化合物であることが好ましい。3つ又は4つのエポキシ基を含む化合物であることがさらに好ましい。3つのエポキシ基を含む化合物であることが最も好ましい。
【0049】
3つ以上のエポキシ基を含む化合物(B)としては例えば、グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物、グリシジルアミン化合物、グリシジル基含有イソシアヌレートを挙げることができる。
本願発明に用いられるエポキシ基を含む化合物(B)として、下記式(A-1)~(A-15)を例示することができる。
【0050】
【化12】
【0051】
【化13】
【0052】
式(A-1)は日産化学(株)製、商品名TEPIC-G、TEPIC-S、TEPIC-SS、TEPIC-HP、TEPIC-L(いずれも1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌル酸)として入手することができる。
式(A-2)は日産化学(株)製、商品名TEPIC-VLとして入手することができる。
式(A-3)は日産化学(株)製、商品名TEPIC-FLとして入手することができる。
式(A-4)は日産化学(株)製、商品名TEPIC-UCとして入手することができる。
式(A-5)はナガセケムテック(株)製、商品名デナコールEX-411として入手することができる。
式(A-6)はナガセケムテック(株)製、商品名デナコールEX-521として入手することができる。
式(A-7)は三菱ガス化学(株)製、商品名TETRAD-Xとして入手することができる。
式(A-8)は昭和電工(株)製、商品名BATGとして入手することができる。
式(A-9)は新日鉄住金化学(株)製、商品名YH-434Lとして入手することができる。
式(A-10)は旭有機材工業(株)製、商品名TEP-Gとして入手することができる。
式(A-11)はDIC(株)製、商品名EPICLON HP-4700として入手することができる。
式(A-12)は(株)ダイセル製、商品名エポリード GT401として入手することができる。尚、a、b、c、dはそれぞれ0又は1であり、a+b+c+d=1である。
【0053】
上記スルフィド結合を少なくとも1つ以上有する3官能以上の化合物(A)と、化合物(A)とは異なる3官能以上の化合物(B)とのモル比は、例えば1:0.1~10である。好ましくは1:1~5であり、さらに好ましくは1:3である。
【0054】
本願のポリマーは、下記の式(P-1)~式(P-5)の構造を有する反応生成物であってもよいが、これらに限定されない。
【0055】
【化14】
【0056】
【化15】
【0057】
【化16】
【0058】
【化17】
【0059】
<溶剤>
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、上記各成分を、溶剤、好ましくは有機溶剤に溶解させることによって製造でき、均一な溶液状態で用いられる。
本発明に係るレジスト下層膜形成組成物の溶剤としては、上記化合物、又はその反応生成物を溶解できる溶剤であれば、特に制限なく使用することができる。特に、本発明に係るレジスト下層膜形成組成物は均一な溶液状態で用いられるものであるため、その塗布性能を考慮すると、リソグラフィー工程に一般的に使用される溶剤を併用することが推奨される。
前記有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、4-メチル-2-ペンタノール、2―ヒドロキシイソ酪酸メチル、2―ヒドロキシイソ酪酸エチル、エトキシ酢酸エチル、酢酸2-ヒドロキシエチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、2-ヘプタノン、メトキシシクロペンタン、アニソール、γ-ブチロラクトン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、及びN,N-ジメチルアセトアミドが挙げられる。これらの溶剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの溶剤の中でプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、及びシクロヘキサノン等が好ましい。特にプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
【0060】
本願に係るレジスト下層膜形成組成物の固形分は通常0.1~70質量%、好ましくは0.1~60質量%とする。固形分は保護膜形成組成物から溶媒を除いた全成分の含有割合である。固形分中における開環重合物の割合は、1~100質量%、1~99.9質量%、50~99.9質量%、50~95質量%、50~90質量%の順で好ましい。
【0061】
<ラジカルトラップ剤>
本願のレジスト下層膜形成組成物は、ラジカルトラップ剤を含む。ラジカルトラップ剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。ラジカルトラップ剤を含むことで、本願のレジスト下層膜形成組成物が含むポリマーのジスルフィド結合のラジカル開裂を抑制でき、ポリマー分子量の安定化に寄与すると考えられる。
【0062】
前記ラジカルトラップ剤は、環構造又はチオエーテル構造を有する化合物(T)であることが好ましい。前記化合物(T)が、ヒドロキシ基、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数1~20のアルコキシ基を含むことが好ましい。
【0063】
前記ラジカルトラップ剤は、少なくとも1つ以上の環構造を有することが好ましい。前記環構造が、炭素原子数6~40の芳香環構造又は2,2,6,6-テトラメチルピペリジン構造であることが好ましい。
【0064】
本願のレジスト下層膜形成組成物は、ラジカルトラップ剤として、ナフタレン誘導体、チオエーテル化合物、ヒンダードアミン化合物、紫外線吸収剤、酸化防止剤及び熱重合防止剤等から選択される少なくとも1種を含んでもよい。
上記ナフタレン誘導体としては、例えば、ナフトヒドロキノンスルホナートオニウム塩等のナフトヒドロキノン化合物などが挙げられ、1,4-ジヒドロキシナフタレン、6-アミノ-2,3-ジヒドロ-5,8-ジヒドロキシナフタレン-1,4-ジオン、6-メチルアミノ-2,3-ジヒドロ-5,8-ジヒドロキシナフタレン-1,4-ジオン、6-エチルアミノ-2,3-ジヒドロ-5,8-ジヒドロキシナフタレン-1,4-ジオン、6-プロピルアミノ-2,3-ジヒドロ-5,8-ジヒドロキシナフタレン-1,4-ジオン、6-ブチルアミノ-2,3-ジヒドロ-5,8-ジヒドロキシナフタレン-1,4-ジオン、2-(α,α-ジメチル)ナフタレン、2-(α,α-ジメチルベンジル)ナフタレン、2-t-アミルナフタレン、2-トリメチルシリル-1,4,5,8,-ジメチル-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン等が挙げられる。
【0065】
チオエーテル化合物としては、例えば、分子内に少なくとも一個のチオエーテル基を有する化合物であれば特に限定されない。例えば、3,3’-チオジプロピオン酸ジメチル、ジヘキシルチオジプロピオネート、ジノニルチオジプロピオネート、ジデシルチオジプロピオネート、ジウンデシルチオジプロピオネート、ジドデシルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ジペンタデシルチオジプロピオネート、ヘキサデシルチオジプロピオネート、ジヘプタデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ジヘキシルチオジブチレート、ジノニルチオジブチレート、ジデシルチオジブチレート、ジウンデシルチオジブチレート、ジドデシルチオジブチレート、ジトリデシルチオジブチレート、ジテトラデシルチオジブチレート、ジペンタデシルチオジブチレート、ヘキサデシルチオジブチレート、3-メトキシ-2-[2-[シクロプロピル(3-フルオロフェニルイミノ)メチルチオメチル]フェニル]アクリル酸メチルエステル、ジヘプタデシルチオジブチレート等が挙げられる。
【0066】
市販品としては、ADEKA(株)社製チオエーテル系酸化防止剤であるアデカスタブ〔登録商標〕AO503が好ましい。
【0067】
ヒンダードアミン化合物としては、例えば、下記式(RT1)で表される部分構造を有する化合物が挙げられる。
【0068】
【化18】
【0069】
(式(RT1)において、R11~R41はそれぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、R51はアルキル基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基を表す。)
【0070】
上記アルキル基としては、直鎖状の炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。アルコキシ基に含まれるアルキル基としては、直鎖状の炭素数1~4のアルキル基が好ましい。アリールオキシ基に含まれるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0071】
また、ヒンダードアミン化合物の分子量は、2000以下が好ましく、1000以下がより好ましい。また市場での入手の容易性を考慮すると、ヒンダードアミン化合物の分子量は、400~700が好ましい。
以上のようなヒンダードアミン化合物としては、市販されているBASF社製のTINUVIN〔登録商標〕123、TINUVIN〔登録商標〕144、TINUVIN〔登録商標〕152や、アデカ社製のアデカスタブ〔登録商標〕LA-52、LA-81、LA-82等を好ましく用いることができる。
これらの中では、アデカ社製のアデカスタブ〔登録商標〕LA-81及びLA-82が好ましい。
【0072】
紫外線吸収剤としては、例えば、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、ニッケルキレート系などが挙げられる。
ベンゾトリアゾール系の化合物としては、例えば、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
市販されているベンゾトリアゾール系の化合物としては、BASF社製のTINUVIN〔登録商標〕900、TINUVIN〔登録商標〕928、TINUVIN〔登録商標〕P、TINUVIN〔登録商標〕234、TINUVIN〔登録商標〕326、TINUVIN〔登録商標〕329などを用いることができる。
その他、本願で用いることができる紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、4-t-ブチルフェニルサリシレート、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3 ’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンゾエート、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシベンゾフェノン、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、2,2’-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、ニッケルジブチルジチオカーバメート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピぺリジン)-セバケート、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン縮合物、コハク酸-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン)エステル、7-{[4-クロロ-6-(ジエチルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ}-3-フェニルクマリン等が挙げられる。
紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、ADEKA(株)社製アデカスタブ〔登録商標〕LAシリーズ(LA-24、LA-29、LA-31RG、LA-31G、LA-32、LA-36、LA-36RG、LA-46、LA-F70、1413等)が挙げられる。
【0073】
熱重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ジブチルヒドロキシトルエン、p-メトキシフェノール、ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、フロログリシノール、t-ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2-メルカプトベンズイミダゾール、フェノチアジン、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等が挙げられる。
これらの中でも、ハイドロキノン、ジブチルヒドロキシトルエン、ピロガロール及びフロログリシノールが好ましい。
市販品としては、例えば、ADEKA(株)社製フェノール系酸化防止剤であるアデカスタブ〔登録商標〕AOシリーズ(AO-20、AO-30、AO-40、AO-50、AO-50F、AO-60、AO-60G、AO-80、AO-330等)、BASF社製のヒンダートフェノール系酸化防止剤であるIrganox〔登録商標〕シリーズ(1010/FF、1035/FF、1076/FD、1098、1135、1141、1330、1520 L、245/FF、259、3114等)を用いることができる。
その他の市販品として、例えば、ADEKA(株)社製フォスファイト系酸化防止剤であるアデカスタブ〔登録商標〕PEPシリーズ(PEP-8、PEP-36、HP-10、2112、2112RG、1178、1500、C、135A、3010、TPP等)が挙げられる。
これらの中ではアデカスタブ〔登録商標〕PEP1500が好ましい。
【0074】
本願のレジスト下層膜形成組成物には、上述したラジカルトラップ剤以外にも、特開2011-141534号公報の段落0183~0210に記載の酸化剤、特開2011-253174号公報の段落0103~0153に記載のラジカル捕捉能を有する重合性化合物(例えば、ヒンダードアミン型、ヒンダードフェノール型重合性化合物)等を用いることが出来、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
上記の中でも、下記式(R-1)~(R-8)で表されるラジカルトラップ剤であることが好ましく、下記式(R-1)~(R-4)で表されるラジカルトラップ剤であることが好ましく、下記式(R-1)~(R-3)で表されるラジカルトラップ剤であることが好ましく、特に下記式(R-2)と(R-3)で表されるラジカルトラップ剤であることが好ましい。
【0075】
【化19】
【0076】
【化20】
【0077】
【化21】
【0078】
【化22】
【0079】
【化23】
【0080】
本願のレジスト下層膜形成組成物におけるラジカルトラップ剤の配合量は、全固形分に対し、好ましくは0.1~20質量%であることが好ましく、0.2~10質量%であることがさらに好ましく、0.4~5.0質量%であることが特に好ましい。
【0081】
<架橋触媒>
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、任意成分として、架橋反応を促進させるために、架橋触媒を含有することができる。当該架橋触媒としては、酸性化合物に加え、熱により酸又は塩基が発生する化合物を用いることができる。酸性化合物としては、スルホン酸化合物又はカルボン酸化合物を用いることができ、熱により酸が発生する化合物としては、熱酸発生剤を用いることができる。
【0082】
スルホン酸化合物又はカルボン酸化合物として、例えば、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート、ピリジニウム-p-トルエンスルホネート、ピリジニウム-4-ヒドロキシベンゼンスルホナート、サリチル酸、カンファースルホン酸、5-スルホサリチル酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ピリジニウム-4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸、4-ニトロベンゼンスルホン酸、クエン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸が挙げられる。
【0083】
熱酸発生剤として、例えば、K-PURE〔登録商標〕CXC-1612、同CXC-1614、同TAG-2172、同TAG-2179、同TAG-2678、同TAG2689(以上、King Industries社製)、及びSI-45、SI-60、SI-80、SI-100、SI-110、SI-150(以上、三新化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0084】
これらの架橋酸触媒は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記レジスト下層膜形成組成物が架橋酸触媒を含む場合、その含有量は、保護膜形成組成物の全固形分に対して、0.0001~20重量%、好ましくは0.01~15重量%、さらに好ましくは0.1~10質量%である。
【0085】
<架橋剤>
本発明のレジスト下層膜形成組成物は架橋剤成分を含むことができる。その架橋剤としては、メラミン系、置換尿素系、またはそれらのポリマー系等が挙げられる。好ましくは、少なくとも2個の架橋形成置換基を有する架橋剤であり、メトキシメチル化グリコールウリル、ブトキシメチル化グリコールウリル、メトキシメチル化メラミン、ブトキシメチル化メラミン、メトキシメチル化ベンゾグワナミン、ブトキシメチル化ベンゾグワナミン、メトキシメチル化尿素、ブトキシメチル化尿素、メトキシメチル化チオ尿素、またはメトキシメチル化チオ尿素等の化合物である。また、これらの化合物の縮合体も使用することができる。
【0086】
また、上記架橋剤としては耐熱性の高い架橋剤を用いることができる。耐熱性の高い架橋剤としては分子内に芳香族環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環)を有する架橋形成置換基を含有する化合物を用いることができる。
この化合物は下記式(5-1)の部分構造を有する化合物や、下記式(5-2)の繰り返し単位を有するポリマー又はオリゴマーが挙げられる。
【0087】
【化24】
【0088】
上記R11、R12、R13、及びR14は水素原子又は炭素数1~10のアルキル基であり、これらのアルキル基の例示は上述のとおりである。
m1は1≦m1≦6-m2、m2は1≦m2≦5、m3は1≦m3≦4-m2、m4は1≦m4≦3である。
式(5-1)及び式(5-2)の化合物、ポリマー、オリゴマーは以下に例示される。
【0089】
【化25】
【0090】
【化26】
【0091】
上記化合物は旭有機材工業(株)、本州化学工業(株)の製品として入手することができる。例えば上記架橋剤の中で式(6-22)の化合物は旭有機材工業(株)、商品名TMOM-BPとして入手することができる。
これらの架橋剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
架橋剤の添加量は、使用する塗布溶剤、使用する下地基板、要求される溶液粘度、要求される膜形状などにより変動するが、保護膜形成組成物の全固形分に対して0.001~80重量%、好ましくは 0.01~50重量%、さらに好ましくは0.1~40重量%である。これら架橋剤は自己縮合による架橋反応を起こすこともあるが、本発明の上記のポリマー中に架橋性置換基が存在する場合は、それらの架橋性置換基と架橋反応を起こすことができる。
【0092】
<界面活性剤>
本発明の保護膜形成組成物は、任意成分として、半導体基板に対する塗布性を向上させるために界面活性剤を含有することができる。前記界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトップ〔登録商標〕EF301、同EF303、同EF352(三菱マテリアル電子化成株式会社製)、メガファック〔登録商標〕F171、同F173、同R-30、同R-40、(DIC株式会社製)、フロラードFC430、同FC431(住友スリーエム株式会社製)、アサヒガード〔登録商標〕AG710、サーフロン〔登録商標〕S-382、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106(旭硝子株式会社製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業株式会社製)を挙げることができる。これらの界面活性剤は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。前記保護膜形成組成物が界面活性剤を含む場合、その含有量は、保護膜形成組成物の全固形分に対して、0.0001~10重量%、好ましくは0.01~5重量%である。
【0093】
<その他の成分>
本発明の保護膜形成組成物には、吸光剤、レオロジー調整剤、接着補助剤などを添加することができる。レオロジー調整剤は、保護膜形成組成物の流動性を向上させるのに有効である。接着補助剤は、半導体基板またはレジストと下層膜の密着性を向上させるのに有効である。
【0094】
吸光剤としては例えば、「工業用色素の技術と市場」(CMC出版)や「染料便覧」(有機合成化学協会編)に記載の市販の吸光剤、例えば、C.I.Disperse Yellow 1,3,4,5,7,8,13,23,31,49,50,51,54,60,64,66,68,79,82,88,90,93,102,114及び124;C.I.D isperse Orange1,5,13,25,29,30,31,44,57,72及び73;C.I.Disperse Red 1,5,7,13,17,19,43,50,54,58,65,72,73,88,117,137,143,199及び210;C.I.Disperse Violet 43;C.I.Disperse Blue 96;C.I.Fluorescent Brightening Agent 112,135及び163;C.I.Solvent Orange2及び45;C.I.Solvent Red 1,3,8,23,24,25,27及び49;C.I.Pigment Green 10;C.I.Pigment Brown 2等を好適に用いることができる。
上記吸光剤は、保護膜形成組成物の全固形分に対して通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下の割合で配合される。
【0095】
レオロジー調整剤は、主に保護膜形成組成物の流動性を向上させ、特にベーキング工程において、レジスト下層膜の膜厚均一性の向上やホール内部への保護膜形成組成物の充填性を高める目的で添加される。具体例としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ブチルイソデシルフタレート等のフタル酸誘導体、ジノルマルブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジイソオクチルアジペート、オクチルデシルアジペート等のアジピン酸誘導体、ジノルマルブチルマレート、ジエチルマレート、ジノニルマレート等のマレイン酸誘導体、メチルオレート、ブチルオレート、テトラヒドロフルフリルオレート等のオレイン酸誘導体、またはノルマルブチルステアレート、グリセリルステアレート等のステアリン酸誘導体を挙げることができる。これらのレオロジー調整剤は、保護膜形成組成物の全固形分に対して通常30質量%未満の割合で配合される。
【0096】
接着補助剤は、主に基板あるいはレジストと保護膜形成組成物の密着性を向上させ、特に現像においてレジストが剥離しないようにする目的で添加される。具体例としては、トリメチルクロロシラン、ジメチルメチロールクロロシラン、メチルジフエニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン等のクロロシラン類、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルメチロールエトキシシラン、ジフエニルジメトキシシラン、フエニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、N,N’-ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール等のシラザン類、メチロールトリクロロシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン類、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン等の複素環式化合物や、1,1-ジメチルウレア、1,3-ジメチルウレア等の尿素、またはチオ尿素化合物を挙げることができる。これらの接着補助剤は、保護膜形成組成物の全固形分に対して通常5質量%未満、好ましくは2質量%未満の割合で配合される。
【0097】
<レジスト下層膜、レジストパターン付き基板の製造方法、半導体装置の製造方法>
以下、本発明に係る保護膜形成組成物を用いた製造される保護膜、レジストパターン付き基板の製造方法、及び半導体装置の製造方法について説明する。
【0098】
本発明に係るレジストパターン付き基板は、上記した保護膜形成組成物を半導体基板上に塗布し、焼成することにより製造することができる。
【0099】
本発明の保護膜形成組成物が塗布される半導体基板としては、例えば、シリコンウエハ、ゲルマニウムウエハ、及びヒ化ガリウム、リン化インジウム、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化アルミニウム等の化合物半導体ウエハが挙げられる。
【0100】
表面に無機膜が形成された半導体基板を用いる場合、当該無機膜は、例えば、ALD(原子層堆積)法、CVD(化学気相堆積)法、反応性スパッタ法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、スピンコーティング法(スピンオングラス:SOG)により形成される。前記無機膜として、例えば、ポリシリコン膜、酸化ケイ素膜、窒化珪素膜、BPSG(Boro-Phospho Silicate Glass)膜、窒化チタン膜、酸窒化チタン膜、窒化タングステン膜、窒化ガリウム膜、及びヒ化ガリウム膜が挙げられる。
【0101】
このような半導体基板上に、スピナー、コーター等の適当な塗布方法により本発明の保護膜形成組成物を塗布する。その後、ホットプレート等の加熱手段を用いてベークすることにより保護膜を形成する。ベーク条件としては、ベーク温度100℃~400℃、ベーク時間0.3分~60分間の中から適宜、選択される。好ましくは、ベーク温度120℃~350℃、ベーク時間0.5分~30分間、より好ましくは、ベーク温度150℃~300℃、ベーク時間0.8分~10分間である。形成される保護膜の膜厚としては、例えば0.001μm~10μm、好ましくは0.002μm~1μm、より好ましくは0.005μm~0.5μmである。ベーク時の温度が、上記範囲より低い場合には架橋が不十分となり、形成される保護膜の、レジスト溶剤又は塩基性過酸化水素水溶液に対する耐性が得られにくくなることがある。一方、ベーク時の温度が上記範囲より高い場合は、保護膜が熱によって分解してしまうことがある。
【0102】
露光は、所定のパターンを形成するためのマスク(レチクル)を通して行われ、例えば、i線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV(極端紫外線)またはEB(電子線)が使用される。現像にはアルカリ現像液が用いられ、現像温度5℃~50℃、現像時間10秒~300秒から適宜選択される。アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n-プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第4級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類、等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。さらに、上記アルカリ類の水溶液にイソプロピルアルコール等のアルコール類、ノニオン系等の界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。これらの中で好ましい現像液は第四級アンモニウム塩、さらに好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド及びコリンである。さらに、これらの現像液に界面活性剤などを加えることもできる。アルカリ現像液に代えて、酢酸ブチル等の有機溶媒で現像を行い、フォトレジストのアルカリ溶解速度が向上していない部分を現像する方法を用いることもできる。
【0103】
次いで、形成したレジストパターンをマスクとして、前記保護膜をドライエッチングする。その際、用いた半導体基板の表面に前記無機膜が形成されている場合、その無機膜の表面を露出させ、用いた半導体基板の表面に前記無機膜が形成されていない場合、その半導体基板の表面を露出させる。
【0104】
さらに、ドライエッチング後の保護膜(その保護膜上にレジストパターンが残存している場合、そのレジストパターンも)をマスクとして、半導体用ウエットエッチング液を用いてウエットエッチングすることにより、所望のパターンが形成される。
【実施例0105】
合成例、実施例を挙げ本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本明細書に示す重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略称する)による測定結果である。測定には東ソー(株)製GPC装置を用い、測定条件等は次のとおりである。
GPCカラム:Shodex〔登録商標〕・Asahipak〔登録商標〕(昭和電工(株))
カラム温度:40℃
溶媒:N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)
流量:0.6ml/min
標準試料:ポリスチレン(東ソー(株))
【0106】
<合成例1>
テレフタル酸ジグリシジルエステル(製品名:デナコールEX-711、ナガセケムテックス株式会社製)43.86g、3,3’-ジチオプロピオン酸33.34g、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド2.80g、プロピレングリコールモノメチルエーテル320.00gを加えた反応フラスコを窒素雰囲気下、100℃で24時間加熱撹拌した。得られた反応生成物は(式P-6)に相当し、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量は5100であった。
【0107】
【化27】
【0108】
<合成例2>
5,5-ジメチルヒダントインジグリシジル(製品名:DG-DMH、四国化成工業株式会社製、30%プロピレングリコールモノエチルエーテル溶液)131.59g、3,3’-ジチオプロピオン酸37.26g、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド3.13g、プロピレングリコールモノメチルエーテル28.07gを加えた反応フラスコを窒素雰囲気下、100℃で24時間加熱撹拌した。得られた反応生成物は(式P-7)に相当し、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量は3530であった。
【0109】
【化28】
【0110】
<実施例1>
合成例1で得られた反応生成物0.990gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液5.584gに、プロピレングリコールモノメチルエーテル83.526g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート9.900g、ジブチルヒドロキシトルエン(式(R-1)の化合物)0.009gを加え、溶液を調製した。
<実施例2>
合成例1で得られた反応生成物0.990gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液5.584gに、プロピレングリコールモノメチルエーテル83.526g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート9.900g、ヒドロキノン(式(R-2)の化合物)0.009gを加え、溶液を調製した。
<実施例3>
合成例1で得られた反応生成物0.990gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液5.584gに、プロピレングリコールモノメチルエーテル83.526g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート9.900g、ピロガロール(1,2,3-トリヒドロキシベンゼン)(式(R-3)の化合物)0.009gを加え、溶液を調製した。
<実施例4>
合成例2で得られた反応生成物0.990gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液5.584gに、プロピレングリコールモノメチルエーテル83.526g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート9.900g、ジブチルヒドロキシトルエン(式(R-1)の化合物)0.009gを加え、溶液を調製した。
<実施例5>
合成例2で得られた反応生成物0.990gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液5.584gに、プロピレングリコールモノメチルエーテル83.526g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート9.900g、ヒドロキノン(式(R-2)の化合物)0.009gを加え、溶液を調製した。
<実施例6>
合成例2で得られた反応生成物0.990gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液5.584gに、プロピレングリコールモノメチルエーテル83.526g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート9.900g、ピロガロール(1,2,3-トリヒドロキシベンゼン)(式(R-3)の化合物)0.009gを加え、溶液を調製した。
<実施例7>
再表2009/096340の合成例1に記載の方法で得られた反応生成物((式P-8)に相当し、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量は8900)0.990gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液5.584gに、プロピレングリコールモノメチルエーテル83.526g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート9.900g、ジブチルヒドロキシトルエン(式(R-1)の化合物)0.009gを加え、溶液を調製した。
【0111】
【化29】
【0112】
<実施例8>
再表2009/096340の合成例1に記載の方法で得られた反応生成物((式P-8)に相当し、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量は8900)0.990gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液5.584gに、プロピレングリコールモノメチルエーテル83.526g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート9.900g、ヒドロキノン(式(R-2)の化合物)0.009gを加え、溶液を調製した。
<実施例9>
再表2009/096340の合成例1に記載の方法で得られた反応生成物((式P-8)に相当し、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量は8900)0.990gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液5.584gに、プロピレングリコールモノメチルエーテル83.526g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート9.900g、ピロガロール(1,2,3-トリヒドロキシベンゼン)(式(R-3)の化合物)0.009gを加え、溶液を調製した。
<実施例10>
再表2009/096340の合成例1に記載の方法で得られた反応生成物((式P-8)に相当し、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量は8900)0.990gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液5.584gに、プロピレングリコールモノメチルエーテル83.526g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート9.900g、アデカスタブ〔登録商標〕1500((株)ADEKA)(式(R-5)の化合物)0.009gを加え、溶液を調製した。
<実施例11>
再表2009/096340の合成例1に記載の方法で得られた反応生成物((式P-8)に相当し、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量は8900)0.990gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液5.584gに、プロピレングリコールモノメチルエーテル83.526g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート9.900g、アデカスタブ〔登録商標〕AO503((株)ADEKA)(式(R-6)の化合物)0.009gを加え、溶液を調製した。
<実施例12>
再表2009/096340の合成例1に記載の方法で得られた反応生成物((式P-8)に相当し、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量は8900)0.990gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液5.584gに、プロピレングリコールモノメチルエーテル83.526g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート9.900g、アデカスタブ〔登録商標〕LA-81((株)ADEKA)(式(R-7)の化合物)0.009gを加え、溶液を調製した。
<実施例13>
再表2009/096340の合成例1に記載の方法で得られた反応生成物((式P-8)に相当し、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量は8900)0.990gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液5.584gに、プロピレングリコールモノメチルエーテル83.526g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート9.900g、アデカスタブ〔登録商標〕LA-82((株)ADEKA)(式(R-8)の化合物)0.009gを加え、溶液を調製した。
【0113】
<比較例1>
合成例1の方法で得られた反応生成物1.000gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液5.640gに、プロピレングリコールモノメチルエーテル85.460g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート9.900gを加え、溶液を調製した。
<比較例2>
合成例2の方法で得られた反応生成物1.000gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液5.640gに、プロピレングリコールモノメチルエーテル85.460g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート9.900gを加え、溶液を調製した。
<比較例3>
再表2009/096340の合成例1に記載の方法で得られた反応生成物((式P-8)に相当し、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量は8900)1.000gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液5.640gに、プロピレングリコールモノメチルエーテル85.460g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート9.900gを加え、溶液を調製した。
【0114】
<GPCによる分子量測定>
実施例1~13及び比較例1~3で調製した溶液を、窒素下100℃のナスフラスコ内で6時間反応させた後、GPCにて測定した。下記表1に、初期分子量と反応後の分子量を記載した。この結果、本発明のラジカルトラップ剤を含むレジスト下層膜形成組成物は、ラジカルトラップ剤を含まないレジスト下層膜形成組成物に比べ安定性が向上していることが分かる。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明に係るレジスト下層膜形成組成物は、一定時間経過後でもポリマー分子量の変化がなく、保存安定性に優れた組成物を提供できる。