IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社明治の特許一覧

<>
  • 特開-ストレス軽減用組成物 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111390
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】ストレス軽減用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/744 20150101AFI20240809BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240809BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20240809BHJP
   A23L 33/135 20160101ALN20240809BHJP
【FI】
A61K35/744
A61P25/00
C12N1/20 A ZNA
A23L33/135
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015847
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】山田 成臣
(72)【発明者】
【氏名】小林 杏輔
(72)【発明者】
【氏名】狩野 宏
(72)【発明者】
【氏名】府川 明佳
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB07
4B018LE04
4B018MD86
4B018ME14
4B018MF13
4B065AA30X
4B065AC20
4B065BB24
4B065CA42
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA02
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、日常生活において手軽に摂取することができ、安全性が高く、かつ、様々なストレスを軽減する効果を有する組成物を提供することである。
【解決手段】本発明に係るストレス軽減用組成物は、ストレス軽減作用を有するLactobacillus paragasseriを有効成分とする。この組成物は、安全性が高く、飲食品や医薬品に含有することで手軽に摂取することが可能であり、なおかつ、ストレス軽減作用を有する。このため、この組成物を摂取することで日常生活における様々なストレスを軽減することができ、ひいては、ストレス性疾患を予防することができるため、QOLの向上にもつながる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Lactobacillus paragasseriを有効成分として含有する、ストレス軽減用組成物。
【請求項2】
前記Lactobacillus paragasseriが、OLL2716株(受託番号:FERM BP-6999)である、請求項1に記載のストレス軽減用組成物。
【請求項3】
前記組成物が、発酵乳である、請求項1または2に記載のストレス軽減用組成物。
【請求項4】
前記Lactobacillus paragasseriを10個/g以上10個/g以下の範囲内で含む、請求項1または2に記載のストレス軽減用組成物。
【請求項5】
前記ストレスが、慢性ストレスである、請求項1または2に記載のストレス軽減用組成物。
【請求項6】
前記ストレスが、急性ストレスである、請求項1または2に記載のストレス軽減用組成物。
【請求項7】
前記ストレスが、ストレッサーにより誘発されるストレスである、請求項1または2に記載のストレス軽減用組成物。
【請求項8】
前記ストレッサーが、外的ストレッサーである、請求項7に記載のストレス軽減用組成物。
【請求項9】
前記ストレッサーが、内的ストレッサーである、請求項7に記載のストレス軽減用組成物。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Lactobacillus paragasseriを有効成分とするストレス軽減用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、ストレス社会という表現が世間で広く認識されているように、多くの人が何らかのストレスを抱えている。例えば、厚生労働省による労働者のストレス調査(2020年度調査)では、調査対象の労働者のうち、半数以上の労働者が強い不安や悩みなどによるストレスを感じていると回答した結果が報告されている。また、労働環境以外でも、今日では日常生活における様々な変化に伴って、ストレス反応の要因である内的ストレス刺激(内的ストレッサー)あるいは外的ストレス刺激(外的ストレッサー)も多様化しているのが現状である。これらのストレス刺激により過度なストレスを受けた場合には、生活の質、すなわち、QOL(Quality of Life)の低下をもたらすストレス性疾患を引き起こすことにもなる。過去には、ストレスから誘発される身体症状に対する抑制剤についての検証がなされてきた。例えば、特開2014-101288号公報には、ラクトバチルス・ガゼリCP2305株(FERM BP-11331)の殺菌体、その菌体処理物、あるいはその混合物が、ストレス性腸障害、とりわけ該腸障害の下痢症状を抑制することが記載されている。また、医療分野においては、ヒトGPR10受容体アンタゴニスト作用を有している複素環化合物が、ストレス性疾患、とりわけ、ストレス性腸障害の下痢症状およびストレス性過食症の症状を抑制することが記載されている(特表2012-528076号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-101288号公報
【特許文献2】特表2012-528076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、様々なストレス性疾患に対する抑制剤の検証がなされている。一方で、ストレスは様々な身体疾患の原因となるため、ストレスそのものを軽減できる飲食品や医薬品が渇望されている。
【0005】
本発明の課題は、日常生活において手軽に摂取することができ、安全性が高く、かつ、様々なストレスを軽減する効果を有する組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、Lactobacillus paragasseri(ラクトバチルス・パラガッセリ)を有効成分とする組成物が様々なストレスに対する軽減作用を発揮することを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の通りとなる。
【0008】
(1)Lactobacillus paragasseriを有効成分として含有する、ストレス軽減用組成物。
【0009】
(2)Lactobacillus paragasseriが、OLL2716株(FERM BP-6999、以下、「LG21」と称することがある。)である、(1)に記載のストレス軽減用組成物。
【0010】
(3)ストレス軽減用組成物が、発酵乳である、(1)または(2)に記載のストレス軽減用組成物。
【0011】
(4)Lactobacillus paragasseriを10個/g以上10個/g以下(前記Lactobacillus paragasseriが生菌である場合は10cfu(Colony forming unit)/g以上10cfu/g以下)の範囲内で含む、(1)または(2)に記載のストレス軽減用組成物。
【0012】
(5)ストレスが、慢性ストレスである、(1)または(2)に記載のストレス軽減用組成物。
【0013】
(6)ストレスが、急性ストレスである、(1)または(2)に記載のストレス軽減用組成物。
【0014】
(7)ストレスが、ストレッサーにより誘発されるストレスである、(1)または(2)に記載のストレス軽減用組成物。
【0015】
(8)ストレッサーが、外的ストレッサーである、(7)に記載のストレス軽減用組成物。
【0016】
(9)ストレッサーが、内的ストレッサーである、(7)に記載のストレス軽減用組成物。
【0017】
また、本発明には、以下の発明も包含される。
【0018】
(10)Lactobacillus paragasseriを有効成分とするストレス軽減用組成物を摂取させる、ストレスの軽減方法。
【0019】
(11)Lactobacillus paragasseriを有効成分とするストレス軽減用組成物を摂取させることにより、ストレスを軽減する方法。
【0020】
(12)Lactobacillus paragasseriを有効成分とするストレス軽減用組成物を、ストレスを軽減するために使用する方法。
【0021】
(13)Lactobacillus paragasseriを含む組成物を、それを必要とする対象者に投与する、前記対象者のストレスを軽減する方法。
【0022】
(14)Lactobacillus paragasseriを有効成分とする組成物のストレスを軽減するための使用。
【0023】
(15)ストレスを軽減する組成物の製造のための、Lactobacillus paragasseriの使用。
【0024】
(16)ストレスを軽減する組成物の製造における、Lactobacillus paragasseriの使用。
【0025】
(17)ストレスを軽減するためのLactobacillus paragasseri。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、様々なストレスの軽減が可能な、Lactobacillus paragasseriを有効成分とするストレス軽減用組成物を提供する。この組成物は、安全性が高く、飲食品や医薬品に含有することで手軽に摂取することが可能であり、なおかつ、ストレス軽減作用を有する。このため、この組成物を摂取することで日常生活における様々なストレスを軽減することができ、ひいては、ストレス性疾患を予防することができるため、QOLの向上にもつながる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本試験におけるLG21乳酸菌群とプラセボ群の「ストレス」の変化を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態に係るストレスの軽減用、緩和用、抑制用または予防用組成物(以下、「ストレス軽減用組成物」と称することがある。)は、Lactobacillus paragasseriを有効成分とする。以下、本発明の各文言の定義について詳述する。
【0029】
1.Lactobacillus paragasseri
以下の配列表に示す配列番号1は、Lactobacillus paragasseri OLL2716の16S rRNA遺伝子の塩基配列(ヌクレオチド配列ということもある。)を示している。本発明の実施の形態に係るLactobacillus paragasseriは、同配列番号1の塩基配列と90%以上の配列同一性を有する16S rRNA遺伝子を有するラクトバチルス属乳酸菌のことを指す。また、本発明の実施の形態に係るLactobacillus paragasseriは、同配列番号1の塩基配列と95%以上の配列同一性を有する16S rRNA遺伝子を有する乳酸菌であることが好ましく、同配列番号1の塩基配列と98%以上の配列同一性を有する16S rRNA遺伝子を有する乳酸菌であることがより好ましく、同配列番号1の塩基配列と99%以上の配列同一性を有する16S rRNA遺伝子を有する乳酸菌であることがさらに好ましい。
【0030】
(配列表)
<16S rRNA gene(配列番号1)>
AGAAAGGAGGTGATCCAGCCGCAGGTTCTCCTACGGCTACCTTGTTACGACTTCACCCTAATCATCTGTCCTACCTTAGACGGCTGACTCCTATAAAGGTTATCCCACCGGCTTTGGGTGTTACAGACTCTCATGGTGTGACGGGCGGTGTGTACAAGGCCCGGGAACGTATTCACCGCGGCGTGCTGATCCGCGATTACTAGCGATTCCAGCTTCGTGTAGGCGAGTTGCAGCCTACAGTCCGAACTGAGAACGGCTTTCAGAGATCCGCTTGCCTTCGCAGGTTCGCTTCTCGTTGTACCGTCCATTGTAGCACGTGTGTAGCCCAGGTCATAAGGGGCATGATGACTTGACGTCATCCCCACCTTCCTCCGGTTTGTCACCGGCAGTCTCATTAGAGTGCCCAACTTAATGATGGCAACTAATGACAAGGGTTGCGCTCGTTGCGGGACTTAACCCAACATCTCACGACACGAGCTGACGACAGCCATGCACCACCTGTCTCAGCGTCCCCGAAGGGAACTCCTAATCTCTTAGGTTTGCACTGGATGTCAAGACCTGGTAAGGTTCTTCGCGTTGCTTCGAATTAAACCACATGCTCCACCGCTTGTGCGGGCCCCCGTCAATTCCTTTGAGTTTCAACCTTGCGGTCGTACTCCCCAGGCGGAGTGCTTAATGCGTTAGCTGCAGCACTGAGAGGCGGAAACCTCCCAACACTTAGCACTCATCGTTTACGGCATGGACTACCAGGGTATCTAATCCTGTTCGCTACCCATGCTTTCGAGCCTCAGCGTCAGTTGCAGACCAGAGAGCCGCCTTCGCCACTGGTGTTCTTCCATATATCTACGCATTCCACCGCTACACATGGAGTTCCACTCTCCTCTTCTGCACTCAAGTTCAACAGTTTCTGATGCAATTCTCCGGTTGAGCCGAAGGCTTTCACATCAGACTTATTGAACCGCCTGCACTCGCTTTACGCCCAATAAATCCGGACAACGCTTGCCACCTACGTATTACCGCGGCTGCTGGCACGTAGTTAGCCGTGACTTTCTAAGTAATTACCGTCAAATAAAGGCCAGTTACTACCTCTATCTTTCTTCACTACCAACAGAGCTTTACGAGCCGAAACCCTTCTTCACTCACGCGGCGTTGCTCCATCAGACTTGCGTCCATTGTGGAAGATTCCCTACTGCTGCCTCCCGTAGGAGTTTGGGCCGTGTCTCAGTCCCAATGTGGCCGATCAGTCTCTCAACTCGGCTATGCATCATTGCCTTGGTAAGCCGTTACCTTACCAACTAGCTAATGCACCGCAGGTCCATCCAAGAGTGATAGCAGAACCATCTTTTAAACTCTAGACATGCGTCTAGTGTTGTTATCCGGTATTAGCATCTGTTTCCAGGTGTTATCCCAGTCTCTTGGGCAGGTTACCCACGTGTTACTCACCCGTCCGCCGCTCGCTTGTATCTAGTTTCATTTGGTGCAAGCACCAAATTCATCTAGGCAAGCTCGCTCGACTTGCATGTATTAGGCACGCCGCCAGCGTTCGTCCTGAGCCAGGATCAAACTCTCATTTTCCTTC
【0031】
本発明に係る実施の形態において、配列同一性というときは、特に記載した場合を除き、2つの配列を最適に整列させた場合に、配列間で共有する一致した塩基の個数の割合を意味する。塩基配列の同一性に関する解析は、当業者には周知のアルゴリズム又はプログラム(例えば、BLASTN、BLASTP、BLASTX、ClustalW)、により行うことができる。プログラムを用いる場合のパラメーターは、当業者であれば適切に設定することができ、また各プログラムのデフォルトパラメーターを用いてもよい。これらの解析方法の具体的な手法もまた、当業者には周知である。同一性の計算には市販の遺伝子情報処理ソフトウェアを用いてもよい。
【0032】
また、Lactobacillus paragasseriと同一の菌学的性質を有する菌株も利用することができる。その菌学的性質は以下のとおりである。
【0033】
形態:桿菌、グルコースよりガス産生せず、GC含量36.4%、グラム陽性、カタラーゼ陰性、乳酸旋光性DL型、15℃で生育せず、グルコース、マンノース、フルクトース、ガラクトース、シュクロース、セロビオース、ラクトース、トレハロース、スターチ、デキストリンを資化して酸を生成する。
【0034】
本発明の実施の形態に係るLactobacillus paragasseriは、Lactobacillus paragasseri OLL 2716(受託番号:FERM BP-6999)乳酸菌(つまり、OLL2716株)であることが好ましい。
【0035】
ここで、「Lactobacillus paragasseriは、Lactobacillus paragasseri OLL 2716乳酸菌(OLL2716株)」は、1999年5月24日付(原寄託日)で、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号)(後に、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に一元化)に、受託番号:FERM BP-6999として、ブタペスト条約に基づき国際寄託されている(2000年1月14日に原寄託よりブダペスト条約に基づく寄託へ移管)。
【0036】
2.ストレス
本発明の実施の形態に係るストレス(あるいは、ストレス反応)は、外部環境から心や身体に与えられた刺激に応答し、心や身体に生じた様々な歪みや変調などをきたした状態または反応をいう。なお、ここでいう「外部環境から心や身体に与えられた刺激」のことをストレッサーという。
【0037】
上述のストレッサーは外的ストレッサーと内的ストレッサーに大別される。なお、本発明で軽減されるストレスの要因となるストレッサーの種類は、特に限定はされない。
【0038】
(1)外的ストレッサー
外的ストレッサーとしては、暑さ、寒さ、明るさ、騒音、混雑、においなどといった物理的なもの(物理的ストレッサー)、公害物質、アルコール、たばこ、薬物、酸素欠乏、酸素過剰、一酸化炭素、その他身体に害を与える化学物質などの化学的なもの(化学的ストレッサー)、飢餓、感染、花粉、ほこり、アレルギー、過労、睡眠不足などの生物的なもの(生物的ストレッサー)、経済状況の変化、友人や職場の人間関係、職場上の問題、家庭の問題などの社会的なもの(社会的ストレッサー)等が挙げられる。
【0039】
(2)内的ストレッサー
内的ストレッサーは、個人的な心理状態や生理的・身体的状況の変化を要因とする。内的ストレッサーとしては、例えば、緊張、不安、恐怖、悩み、あせり、さみしさ、怒り、失望、欲求不満、憎しみ、葛藤などといった心理的なもの(心理的ストレッサー)や、疲労、不眠、健康障害(生理的状況の変化)などといった身体的なもの(身体的ストレッサー)等が挙げられる。
【0040】
31日から半年、あるいは31日から数年もの長期間にわたるストレッサーにより持続的にもたらされるストレスのことを慢性ストレスという。慢性ストレスの例としては、学校、勤務先、家庭内などでの長期間の不満、人間関係のあつれきなどといった長期間持続するストレスが挙げられる。
【0041】
上記の慢性ストレスに対して、1日、15日間、30日間程度までの短期的なストレッサーによりもたらされるストレスのことを急性ストレスという。急性ストレスの例としては、急なトラブル、転勤、異動、離別、自然災害、事故などの突然の変化や予期せぬ事態、仕事上の期日や試験などの短期的なプレッシャー、朝の満員電車、長時間残業のストレスなどの比較的短期間のストレスが挙げられる。
【0042】
本発明の実施の形態に係るストレス軽減用組成物は、慢性ストレス、急性ストレスのいずれに対してもストレス軽減効果を有する。また、本発明の実施の形態に係るストレス軽減用組成物は、特に急性ストレスに対して高いストレス軽減効果を有する。
【0043】
これらのストレスにより身体に引き起こされる疾患および症状のことをストレス性疾患(あるいは、心因反応)という。
【0044】
本発明の実施の形態に係るストレス軽減用組成物は、上述のような日常生活における様々なストレスに対してストレス軽減効果を発揮することができる。そのため、本発明の実施の形態に係るストレス軽減用組成物は、ストレス性疾患(あるいは、心因反応)の予防あるいは治療にも用いることができる。ここで、ストレス性疾患としては、例えば、片頭痛、緊張型頭痛、慢性疼痛、浮動性めまい、メニエール病、更年期障害、季節性感情障害(Seasonal Affective Disorder: SAD)、甲状腺機能亢進症、器官支喘息、過喚起症候群、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性蕁麻疹、帯状疱疹(ヘルペス)、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、多汗症、高血圧、狭心症、心筋梗塞、不整脈、起立性低血圧、顎関節症、口内炎、下痢・便秘、十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群、心因性嘔吐、疝痛、夜驚症、夜泣き、慢性関節リウマチ、腰痛症、筋収縮性頭痛、痙性斜頚、書痙、眼精疲労,本態性眼瞼痙攣、夜尿症、過活動膀胱炎、心因性インポテンス、過食症等が挙げられる。
【0045】
また、本発明の実施の形態に係るストレス軽減用組成物は、ストレスを軽減することにより、気力、活力、集中力等を向上させるために用いることができる。そのため、本発明の実施の形態に係るストレス軽減用組成物は、気力向上用組成物、活力向上用組成物、集中力向上用組成物等ともいうことができる。
【0046】
3.組成物
また、ここにいう「組成物」には、流動食、医薬品、サプリメントおよび食品添加剤等の製剤、飲食品(動植物そのものを除く。)ならびに飲食品組成物(加工された飲食品を含む。)等の動物(ヒトを含む)が摂取し得る物が含まれる。
【0047】
本発明の実施形態では、ヒトに対して1日あたり、その有効量(摂取量)として、ストレス軽減用組成物に有効成分の乳酸菌の菌数を、好ましくは2×10個以上5×1010個以下の範囲内、より好ましくは5×10個以上5×1010個以下の範囲内、さらに好ましくは1×10個以上5×1010個以下の範囲内、もっと好ましくは5×10個以上5×1010個以下の範囲内、一層好ましくは5×10個以上2×1010個以下の範囲内で摂取されるように含有させることが望ましい。なお、本発明の実施の形態に係る乳酸菌は、生菌でも死菌であってもよく、好ましくは生菌である。
【0048】
また、本発明の実施形態では、ヒトに対して1日あたり、その有効量(摂取量)として、乳酸菌の培養物1g当たりに10個以上の乳酸菌を含める場合、ストレス軽減用組成物に乳酸菌の培養物を、好ましくは5g以上1000g以下の範囲内、より好ましくは10g以上1000g以下の範囲内、さらに好ましくは50g以上500g以下の範囲内、もっと好ましくは70g以上300g以下の範囲内、一層好ましくは70g以上250g以下の範囲内、特に好ましくは80g以上200g以下の範囲内で摂取されるように含有させることが望ましい。ここで、本発明の実施形態において、ヒトに対して1日あたり、その有効量(摂取量)を1回で摂取してもよく、2回以上の複数回で摂取してもよい。
【0049】
乳酸菌の培養物1g当たりに含める乳酸菌の菌数は10個以上であれば良く、10や10個、10個等であっても良い。乳酸菌の培養物1g当たりに含める乳酸菌の菌数を増加させれば、ストレス軽減用組成物に有効量の乳酸菌の菌数を含めつつ、乳酸菌の培養物の有効量を低減させることができ、乳酸菌の培養物をより少量摂取することで、同等のヒトのストレス性疾患の予防及び/又は改善効果を得ることが可能となる。
【0050】
本発明の実施形態における乳酸菌の培養物は、公知の培地成分で乳酸菌を培養(増殖)させて得ることができる。また、得られた乳酸菌の培養液を遠心分離することなどにより、培養液の単位重量あたりの乳酸菌の数を高めることができる。本発明の実施形態における乳酸菌は、培養(増殖)させたばかりの状態でもよく、凍結保護剤などと混合して凍結させた状態でもよく、凍結乾燥させた状態でもよい。また、本発明の実施形態における乳酸菌は、生菌でも死菌であってもよく、好ましくは生菌である。
【0051】
また、本発明の実施形態における乳酸菌が含有されている市販商品を便宜的に使用してもよい。例えば、Lactobacillus paragasseri(ラクトバチルス・パラガッセリ) OLL 2716(受託番号:FERM BP-6999)は、株式会社明治が販売している「明治プロビオヨーグルトLG21」から分離することができる。本発明の実施形態におけるLactobacillus paragasseriと、その他の摂取可能な成分を一緒に摂取する場合、その他の摂取可能な成分に制限はないが、例えば乳性成分が好適に用いられる。乳性成分とは、乳(獣乳)そのもの又は乳を加工した乳成分を含む組成物を意味し、例えば、生乳(牛乳など)、還元乳(粉乳、クリーム、バター)、発酵乳(ヨーグルト、チーズ)、乳調製品(ホエイ、カゼイン、乳糖、乳清ミネラル、パーミエイト)などの乳成分を含んでいる全ての成分を含み、その由来や形態は特に限定されない。
【0052】
また、本発明の実施形態に係るストレス軽減用組成物は、ストレスの軽減効果、抑制効果、緩和効果あるいは予防効果を高める観点から、1日以上継続して摂取することが好ましく、3日以上継続して摂取することがより好ましく、1週間以上継続して摂取することがより好ましく、2週間以上継続して摂取することがより好ましく、3週間以上継続して摂取することがさらに好ましく、6週間以上継続して摂取することがさらに好ましく、8週間以上継続して摂取することがもっと好ましく、12週間以上継続して摂取することが一層好ましく、16週間以上継続して摂取することがより一層好ましく、20週間以上継続して摂取することが特に好ましい。
【0053】
さらに、本発明の実施形態に係るストレス軽減用組成物は、その摂取方法及び摂取頻度に特段の制限はない。後述する実施例では、一例としてストレス軽減用組成物を毎日摂取しており、また上記実施形態において1日あたりの乳酸菌の好ましい菌数を示しているが、必ず毎日摂取しなければ本発明の実施形態によるストレス軽減効果が認められないわけではない。その効果が認められる限り、摂取頻度を、例えば2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、7日(1週間)に1回、10日に1回、1月に1回等、適宜調整することができる。
【0054】
本発明の実施形態に係るストレス軽減用組成物は、1食当たりの単位包装形態からなるものとすることができ、該単位包装あたりに有効な乳酸菌の個数を含めた形態とすることもできる。
【0055】
例えば、該単位包装あたりに有効成分である乳酸菌を、2×10個以上5×1010個以下の範囲内で摂取されるように含有させることが好ましく、5×10個以上5×1010個以下の範囲内で摂取されるように含有させることがより好ましく、1×10個以上5×1010個以下の範囲内で摂取されるように含有させることがさらに好ましく、5×10個以上5×1010個以下の範囲内で摂取されるように含有させることがもっと好ましく、5×10個以上2×1010個以下の範囲内で摂取されるように含有させることが一層好ましい。
【0056】
また、例えば、乳酸菌の培養物1g当たりに10個以上の乳酸菌を含める場合、単位包装あたりに有効成分である乳酸菌の培養物を5g以上1000g以下の範囲内で摂取されるように含有させることが好ましく、10g以上1000g以下の範囲内で摂取されるように含有させることがより好ましく、50g以上500g以下の範囲内で摂取されるように含有させることがさらに好ましく、70g以上300g以下の範囲内で摂取されるように含有させることがもっと好ましく、70g以上250g以下の範囲内で摂取されるように含有させることが一層好ましく、80g以上200g以下の範囲内で摂取されるように含有させることが特に好ましい。
【0057】
本発明の実施形態に係るストレス軽減用組成物は、単位包装あたりで包装する場合に、公知の包装を使用することができる。例えば、紙、プラスチック、ガラス、ナイロン、ステンレス、アルミニウム、鉄、銅、銀、竹、など特に制限はない。ただし、乳酸菌は通性嫌気性菌であることも鑑み、空気や酸素に触れない形態とすることが好ましい。例えば、本発明の実施形態に係るストレス軽減用組成物の製造工程や包装工程において、酸素に触れる可能性を除去する工程を設けることが好ましく、また包装後の保存において包装内部に酸素が透過しない包装材を選択することが好ましい。
【0058】
本発明の実施の形態に係るストレス軽減用組成物は、摂取経路は特に限定されないが、経口摂取されるのが好ましい。また、前記組成物を経口摂取する際の前記組成物の摂取形態は特に限定はされないが、前記組成物を含む「発酵乳」として経口摂取されることが特に好ましい。なお、ここでいう「発酵乳」とは、上述の通り、乳(獣乳)を発酵させたものをいい、例えば、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)で定義される「発酵乳」、「乳酸菌飲料」、「乳飲料」、「ナチユラルチーズ」等を包含するがこれらに限定されない。例えば、発酵乳は、乳等省令で定義される「発酵乳」、すなわち、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳および加工乳などの乳またはこれと同等以上の無脂乳固形分を含む乳等を、乳酸菌または酵母で発酵させ、固形状(ハードタイプ)、糊状(ソフトタイプ)または液状(ドリンクタイプ)にしたもの、または、これらを凍結したものをいうが、これに限定されない。
【0059】
また、上記でも記載の通り、本発明の実施の形態に係るストレス軽減用組成物の摂取形態は上述の「発酵乳」に限定されることはなく、例えば、前記組成物を含むチョコレート、ゼリー、アイスクリーム、氷菓、飲料、チュアブル錠、錠剤、グミ、チーズ、スプレッド、健康食品(栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品、サプリメント等)、医薬品、医薬部外品等であってもよい。また、本発明において「機能性食品」とは、コーデックス(FAO/WHO合同食品規格委員会)の食品規格に基づく健康強調表示(Health claim)が適用される健康食品を包含している。
【0060】
本発明の実施形態において、ストレス軽減用組成物を摂取するときのストレス軽減用組成物の温度を、-30℃以上50℃以下の範囲内とすることが好ましく、-20℃以上45℃以下の範囲内とすることがより好ましく、0℃以上45℃以下の範囲内とすることがさらに好ましく、0℃以上30℃以下の範囲内とすることがもっと好ましく、0℃以上20℃以下の範囲内とすることが一層好ましく、0℃以上10℃以下の範囲内とすることが特に好ましい。
【0061】
ところで、本発明の実施の形態に係るストレス軽減用組成物に、その用途、効能、機能、有効成分の種類、使用方法などの説明を表示することが好ましい。ここにいう「表示」には、需要者に対して上記効果の説明を知らしめるための全ての表示が含まれる。この表示は、上述の表示内容を想起・類推させ得るような表示であればよく、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体などの如何に拘わらない全てのあらゆる表示を含み得る。例えば、製品の包装・容器に上記説明を表示すること、製品に関する広告・価格表もしくは取引書類に上記説明を表示して展示もしくは頒布すること、またはこれらを内容とする情報を電磁気的(インターネットなど)方法により提供することが挙げられる。
【0062】
本発明の実施の形態に係るストレス軽減用組成物を包装してなる製品には、例えば、「ストレスを軽減する」、「ストレスを緩和する」、「ストレスを低減する」「ストレスによる症状を軽減する」、「ストレスによる症状を抑制する」、「ストレスによる症状を軽減する」、「ストレスによる症状の軽減用」、「ストレスによる症状の緩和用」、「ストレスによる症状の予防用」等との表示が付されることが好ましい。なお、それぞれの文言の先頭に、「一時的な」、「長期的な」といった期間を適宜表示してもよい。
【0063】
なお、以上のような表示を行うために使用する文言は、上述の例に限定されず、そのような意味と同義である文言であってもかまわない。そのような文言としては、例えば、需要者に対して、「ストレスによる症状を患った後の体調(コンディション)の回復を促進する」、「ストレスによる不快感を緩和する」、「ストレスからあなたを解放する」、「今日も一日活力UP」、「あなたの集中力を高める」、「ストレス社会に負けられないあなたをサポートする」、「ストレスを取り除くことでQOL(Quality Of Life:生活の質)を高める」等の種々の文言が許容され得る。
【0064】
なお、上述のストレス軽減用組成物は、特別用途食品、総合栄養食品、栄養補助食品、特定保健用食品、機能性表示食品、加工食品等の形態にすることもできる。
【0065】
本発明の実施形態では、ストレス軽減用組成物に乳酸菌以外の成分として、その他の摂取可能な成分、各種の添加物、医薬品の原材料等を含有させてもよい。
【実施例0066】
以下、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。なお、この実施例は、本発明を何ら限定するものではない。
【0067】
1.被験食品と対照食品について
【0068】
(1)被験食品
被験食品として、Lactobacillus paragasseri OLL2716(以下、「LG21乳酸菌」と称することがある。)含有ヨーグルト(LG21を1.2×10cfu/g以上1.0×10cfu/g以下の範囲内で含む、1個あたり85gの内容量であるカップ入りヨーグルト)を用いた。
【0069】
なお、LG21乳酸菌含有ヨーグルトは、生乳、脱脂粉乳、無塩バター、砂糖、ステビア、原料水およびLG21乳酸菌を含む乳原料を、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricusとStreptococcus thermophilusで発酵させて製造した。
【0070】
(2)対照食品
対照食品(プラセボ)として、LG21乳酸菌非含有ヨーグルト(1個あたり85gの内容量であるカップ入りヨーグルト)を用いた。
【0071】
なお、LG21乳酸菌非含有ヨーグルトは、生乳、脱脂粉乳、無塩バター、砂糖、ステビアおよび原料水を含む乳原料(すなわち、LG21乳酸菌を含まない)を、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricusおよびStreptococcus thermophilusで発酵させて製造した。
【0072】
(4)包装
白色無地の紙カップ(バリア付き)にアルミリッドでシールして包装した。
【0073】
(5)安全性
被験食品および対照食品は以下の原材料を用いて製造しており、安全性は問題ないと判断した。
【0074】
(a)Lactobacillus paragasseri OLL2716
Lactobacillus paragasseri OLL2716は2000年3月より市販されている「明治プロビオヨーグルトLG21」に使用されている菌株であるが、本菌株を含むヨーグルトに関して現在まで問題となった副作用の報告はない。
【0075】
(b)Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus(ラクトバチルス・デルブリッキィ・亜種・ブルガリクス)とStreptococcus thermophilus(ストレプトコッカス・サーモフィルス)
国際的な食品規格によると、ヨーグルトはLactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricusおよびStreptococcus thermophilusの2菌種を使用した発酵乳であると定義されており、これらの菌種で発酵したヨーグルトは伝統的な食品であり食経験が豊富である。また、両菌種ともFDAにおいてGRAS食品として認定されている。
【0076】
(c)その他の原材料および食品添加物
生乳、脱脂粉乳、無塩バター、砂糖およびステビアは、一般に流通している食品素材および食品添加物を使用し、食品衛生法で定められている使用基準を遵守して使用されている。
【0077】
(6)製造後16日目における被験食品中のLG21乳酸菌数
被験食品について、製造後16日目にLG21乳酸菌数を測定した結果、2.9×10cfu/g以上14.6×10cfu/g以下のLG21乳酸菌が含まれていることが確認された。このことから、同被験食品については、製造後16日目においても1.2×10cfu/g以上のLG21乳酸菌数は担保されていることが確認された。
【0078】
(7)保存方法
試験食品の保存は10℃以下冷蔵保存により行った。
【0079】
2.本試験の詳細
上述の通り、本試験はランダム化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験(RCT)により行った。本試験は、試験食品の摂取前、摂取6週間経過後および摂取12週間経過後におけるストレスに関する生体反応のデータ取得を目的として実施した。以下、この試験条件について詳述する。
【0080】
(1)被験者
同意取得時の年齢が20歳以上64歳以下の健常な日本人男女を被験者として以下の基準に従って選別した。
【0081】
被験者の選択基準および除外基準は、以下の通りであった。
【0082】
<選択基準>
a)本試験の目的、内容について十分な説明を受け、同意能力があり、十分に理解した上で自由意思により志願し、文書で参加に同意した者
<除外基準>
a)過去6か月間において、ストレスに関連する精神疾患で医療機関を受診または治療中の者
b)重度の胸やけもしくは酸逆流感を感じている者
c)糖尿病、脂質代謝異常症、消化器疾患(食堂、胃、十二指腸、小腸、大腸、胆嚢、肝臓、膵臓など)ならびに高度の腎障害が疑われる者
d)過去1か月以上前から、ヨーグルト、乳酸菌飲料等の乳酸菌含有食品や特定保健用食品、栄養機能食品、健康食品、サプリメントを常用(週3日以上)している者
e)乳酸菌に影響する医薬品(抗生物質等)を服用している者
f)喫煙習慣がある者
g)通常の飲酒量が1日あたりビール(5%)換算で1000mL(アルコール換算量で40g)を超える者
h)食物アレルギーを有する者(乳アレルギー等)
i)妊娠している者、試験期間中に妊娠の予定・希望がある者、授乳中の者
j)唾液検査時に出血を伴う歯や口腔内のトラブル(口内炎など)がある者
k)生活習慣の変化が大きい者
l)試験期間中に実施する各種検査の手順を規定どおりに実施できない者(唾液の採取など)
m)本試験期間中に1週間以上の旅行、出張、海外渡航を行う者、またはその可能性がる者
n)過去1か月間において他の臨床試験またはモニター試験に参加した者、試験期間中に他の臨床試験またはモニター試験に参加の予定、希望がある者
o)その他、試験責任医師が被験者として不適当と判断した者
<解析対象除外基準>
a)試験食品摂取率が80%を下回った場合
b)検査前1週間以内で3日以上試験食品を摂取しなかった場合
c)連続4日以上試験食品を摂取しなかった場合
d)生活日誌調査の欠損など、検査結果の信頼性を損なう行為が顕著にみられる場合
e)消化管に影響を及ぼす医薬品を服用した場合(ただし、新型コロナウイルスワクチン副作用軽減のために消化管に影響を及ぼす解熱鎮痛剤を服用した場合は除く)
f)乳酸菌の効果に影響する医薬品(抗生物質等)を服用した場合
g)生活日誌調査の内容変動が大きい場合
h)制限事項を遵守できないことが摂取開始後に明らかとなった場合
i)その他、代表試験責任医師または試験責任医師により、除外することが適当と考えられる明らかな理由があった場合
【0083】
(2)被験者の割付
本試験の試験食品摂取群の割付は、割付責任者が被験者に選抜された健常成人174名の登録者リストを参照し、年齢、性別を層別因子とし並べ替えた後、ブロック法により被験食品摂取群(LG21乳酸菌摂取群)87名と対照食品摂取群(プラセボ摂取群)87名にランダムに割り付けた。この際に、個々の試験実施施設内において、被験食品摂取群と対照食品摂取群の被験者数に大きな乖離がないこと、及びその群間の性別の割合にも大きな乖離がないことを可能な限り配慮した。割付責任者は、割付作業完了後、改めて全ての確認を行い問題ないことを確認した上で、試験食品割付表及び割付決定書を作成した。割付の結果が記載された表、試験食品識別表、試験食品割付表、割付決定書については、割付責任者、試験食品割付責任者、試験食品管理責任者、エマージェンシーキー管理担当者が、キーオープンまで第三者に開示することなく、厳重に保管し、盲検性を維持した。
【0084】
(3)被験者の背景
試験対象者の性別は、被験食品摂取群では男性32人(36.8%)、女性55人(63.2%)、対照食品摂取群では男性31人(35.6%)、女性56人(64.4%)であった。年齢は、被験食品群では平均値37.4歳、対照食品摂取群では平均値37.0歳であった。
【0085】
(4)摂取方法
被験食品摂取群(LG21乳酸菌摂取群)の被験者にはLG21乳酸菌含有ヨーグルトを、対照食品摂取群(プラセボ摂取群)の被験者にはLG21乳酸菌非含有ヨーグルトを1日1個(85g/個)、12週間継続して摂取させた(試験食品を摂取する時刻は被験者の自由とした)。
【0086】
(5)評価方法
本試験の評価は、被験者自身が記入した「ストレス関連の質問を含むQOL尺度に関する質問票」をもとに行った。被験者による各質問票への記入は、「試験食品の摂取前」、「試験食品の摂取を開始してから6週間経過後」、「試験食品の摂取を開始してから12週間経過後」に実施した。なお、各質問票への記入に際しては、質問票記入日の直近2週間(すなわち、「試験食品の摂取を開始してから6週間経過後」に質問票に記入してもらう際は4週間経過後から6週間経過時点までの期間であり、「試験食品の摂取を開始してから12週間経過後」に質問票に記入してもらう際は10週間経過後から12週間経過時点までの期間である。)の被験者のストレス状態を記入してもらった。
【0087】
本発明の実施の形態に係る試験食品の摂取6週間経過後において、「ストレス関連の質問を含むQOL尺度に関する質問票」の直近2週間の「Tension(ストレス)」(すなわち、摂取4週間経過後から6週間経過時点までの期間における被験者のストレス状態)の項目が、プラセボ摂取群と比較してLG21乳酸菌摂取群では有意に改善していることが確認された(図1)。また、改善率に関しても摂取6週間経過後においてプラセボ摂取群と比較してLG21乳酸菌摂取群は有意に高い改善率を示した(表1)。さらに、摂取12週間経過後においても、「ストレス関連の質問を含むQOL尺度に関する質問票」の直近2週間の「Tension(ストレス)」(すなわち、摂取10週間経過後から12週間経過時点までの期間における被験者のストレス状態)の項目が、LG21乳酸菌摂取群は高い改善率を示した(表1)。
【表1】
【0088】
3.結論
以上のランダム化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験(RCT)の結果から、本発明の実施例に係る被験食品を人に摂取させることにより、そのヒトのストレスを軽減、抑制、緩和、あるいは予防できることが示唆された。このことは、Lactobacillus paragasseriを有効成分とするストレス軽減用組成物が、ヒトに対してストレスを軽減、抑制、緩和、あるいは予防できることを示唆している。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明に係るストレス軽減用組成物は、ストレスの軽減用、抑制用、緩和用または予防用組成物であって、ストレスによる体調の不良を軽減したり、抑制したり、緩和したり、予防したりすることができる。そのため、本発明に係るストレス軽減用組成物を摂取することは、QOLの向上につながる。
【受託番号】
【0090】
FERM BP-6999
図1
【配列表】
2024111390000001.xml