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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111470
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】通信システム及び通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/116 20130101AFI20240809BHJP
   H04B 10/077 20130101ALI20240809BHJP
【FI】
H04B10/116
H04B10/077
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015992
(22)【出願日】2023-02-06
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業(個人型研究(さきがけ))「データ量低減による持続可能なIoT」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】中山 悠
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 幸仁
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA01
5K102AH26
5K102AL23
5K102AL28
5K102KA01
5K102LA04
5K102LA11
5K102LA32
5K102LA52
5K102MA02
5K102MB13
5K102MH03
5K102MH14
5K102PB02
5K102PH31
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】自己位置推定と通信を並行して行うことが可能な通信システム等を提供すること。
【解決手段】通信システムは、送信対象とするデータを変調して光信号を生成し、生成した光信号に基づいて光源を発光させる発光装置と、カメラと、カメラによって撮影された撮影画像から光源に対応する領域を抽出し、抽出した領域の情報を復調してデータを取得するデータ取得部と、撮影画像における光源の座標に基づいて、カメラ又は光源の位置を推定する位置推定部とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信対象とするデータを変調して光信号を生成し、生成した光信号に基づいて光源を発光させる発光装置と、
カメラと、
前記カメラによって撮影された撮影画像から前記光源に対応する領域を抽出し、抽出した前記領域の情報を復調して前記データを取得するデータ取得部と、
前記撮影画像における前記光源の座標に基づいて、前記カメラ又は前記光源の位置を推定する位置推定部とを含むことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
請求項1において、
駆動部を備えた駆動装置を更に含み、
前記カメラは前記駆動装置に備えられ、
前記駆動装置は、
前記データ取得部によって取得された前記データと、前記位置推定部によって推定された前記カメラの位置とに基づいて、前記駆動部を駆動させることを特徴とする通信システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記発光装置は、
前記光源の位置情報を変調して前記光信号を生成し、
前記データ取得部は、
抽出した前記領域の情報を復調して前記位置情報を取得し、
前記位置推定部は、
前記データ取得部によって取得された前記位置情報と前記撮影画像における前記光源の座標とに基づいて、前記カメラの位置を推定することを特徴とする通信システム。
【請求項4】
請求項3において、
前記発光装置は複数あり、
前記データ取得部は、
複数の前記発光装置のそれぞれの前記光源に対応する領域を抽出し、抽出した前記領域の情報を復調して複数の前記発光装置のそれぞれの前記光源の前記位置情報を取得し、
前記位置推定部は、
前記データ取得部によって取得された複数の前記発光装置のそれぞれの前記光源の前記位置情報と前記撮影画像における複数の前記発光装置のそれぞれの前記光源の座標とに基づいて、前記カメラの位置を推定することを特徴とする通信システム。
【請求項5】
請求項3において、
前記位置推定部は、
前記撮影画像における前記光源の大きさに基づいて、前記光源と前記カメラとの距離を求め、前記光源と前記カメラとの距離と前記撮影画像における前記光源の座標とに基づいて、前記光源を原点とした前記カメラの座標を求め、前記光源を原点とした前記カメラの座標と前記データ取得部によって取得された前記位置情報とに基づいて、前記カメラの位置を推定することを特徴とする通信システム。
【請求項6】
請求項5において、
前記位置推定部は、
前記撮影画像における前記光源の大きさを求める際に、ブルーミング効果を除去することを特徴とする通信システム。
【請求項7】
送信対象とするデータを変調して光信号を生成し、生成した光信号に基づいて光源を発光させる発光ステップと、
カメラによって撮影された撮影画像から前記光源に対応する領域を抽出し、抽出した前記領域の情報を復調して前記データを取得するデータ取得ステップと、
前記撮影画像における前記光源の座標に基づいて、前記カメラ又は前記光源の位置を推定する位置推定ステップとを含むことを特徴とする通信方法。
【請求項8】
送信対象とするデータを変調して光信号を生成し、生成した光信号に基づいて複数の光源を発光させる発光ステップと、
カメラによって撮影された撮影画像から複数の前記光源に対応する複数の領域を抽出し、抽出した複数の前記領域の情報を復調して複数の前記データを取得するデータ取得ステップと、
前記撮影画像における複数の前記光源の座標に基づいて、前記カメラの位置を推定する位置推定ステップとを含むことを特徴とする通信方法。
【請求項9】
請求項8において、
前記カメラに備わる駆動部を駆動させて前記カメラを移動し、前記カメラによって複数の前記光源を撮影する撮影ステップを更に含むことを特徴とする通信方法。
【請求項10】
請求項7又は8において、
前記位置推定ステップでは、
前記撮影画像における前記光源の座標及び大きさに基づいて前記カメラの位置を推定し、前記撮影画像における前記光源の大きさを求める際に、ブルーミング効果を除去することを特徴とする通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光信号を用いる通信の中でも、光空間通信(或いは光無線通信)は光信号の伝送媒体として光ファイバではなく空間を用いるため、柔軟性に優れている。これは、電波を用いる無線通信の代替技術でもあり、周波数資源の逼迫が課題となっている昨今、IoTなどにおける活用が期待されている。従来のレーザなどを用いた光空間通信に加えて、近年ではLEDを用いた可視光通信が盛んに検討されるようになった。LEDのような可視光を用いることで、低コスト化のほか、天井照明などの照明用途との複合的な利用など、柔軟な運用が可能になるメリットがある。
【0003】
可視光による光空間通信の一手法として、光カメラ通信(OCC:Optical Camera Communication)がある。OCCとは、送信機にLEDやディスプレイのような光源、受信機にカメラを用いた可視光通信のことである。送信機として3色LEDを用い、データを光信号へと変調して送信するのが、最も一般的な適用形態といえる。受信側の動作としては、カメラで撮影した動画像の中から光源の占めるピクセルを抽出し、抽出した領域のRGB値などから信号を復調する。
【0004】
OCCの適用により、スマートフォン等をはじめとしたLEDライトやカメラを搭載したスマートデバイスのほか、照明やWebカメラなど既存のデバイスを用いて通信を行えるようになる。すなわち、スマートフォン等を用いた日常生活での簡易的な通信に加え、室内灯などを用いた照明機能と通信機能の両立、自動運転などをサポートするV2X通信など、様々な場面での応用が可能となる。
【0005】
OCCの関連技術として、Blooming effect(ブルーミング効果)と呼ばれる光の拡散による干渉を回避する手法(非特許文献1参照)がある。OCCでは、CMOSイメージセンサを用いて光信号を受光し、画像内で光源に該当する領域の画素ごとのRGB値を用いて信号の復調を行う。このとき、複数の光源が画像上で重なっていれば光の重なり、或いは光源そのものの遮蔽により干渉が起こる。そして機種や環境によっては更に、Blooming effectと呼ばれる光の拡散現象による干渉が生じる。この課題に対して非特許文献1の技術では、カメラと物体の座標と近似的なサイズに加えて、画素数やCMOSイメージセンササイズ、画角などカメラのパラメータを考慮し、透視変換などの数学的手法により画像上での干渉条件を理論的に定式化した。更に、Blooming effectを考慮した画像上での光の減衰を表す近似式を用いて、光源間の干渉を回避することが可能である。
【0006】
また、OCCの通信レート向上技術として、ローリングシャッターを用いた手法(非特許文献2参照)がある。スマートフォンなどのカメラを含め、近年はローリングシャッターを採用したカメラデバイスが多く存在する。ローリングシャッターは、イメージセンサを構成する画素について、縦又は横方向に順番に露光及び読み取りを行う手法である。OCCに対してローリングシャッターを適用することで、グローバルシャッターを用いた場合と比較して、大幅な転送レートの向上が可能となる。
【0007】
人間の活動の支援や代替のために産業用ロボットやサービスロボットなどが注目されている。どちらのロボットも、基本的な機能として自己位置推定と通信の機能を備えることが一般的である。自己位置推定はLiDARなどを用いて事前にSLAM(Simultaneous
Localization and Mapping)を行い、マッピングされた地図をもとに自己位置を推定す
る。通信に関してはWi-Fi(登録商標)やモバイル回線を用いた無線通信やイーサネット(登録商標)ケーブルやUSBなどを用いた有線通信があり、ロボットの制御や異常探知を行う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Yukito Onodera, Hiroki Takano, Daisuke Hisano, Yu Nakayama, "Avoiding Inter-Light Sources Interference in Optical Camera Communication", IEEE Global Telecommunications Conference (GLOBECOM), Madrid, Spain, Dec. 2021.
【非特許文献2】T. Nguyen, C. H. Hong, N. T. Le, and Y. M. Jang, “Highspeed asynchronous optical camera communication using LED and rolling shutter camera,” in 2015 Seventh International Conference on Ubiquitous and Future Networks. IEEE, 2015, pp. 214-219.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のロボットは、自己位置推定と通信にそれぞれ専用のモジュールを使用する必要がある。従来のシステム構成では、自己位置推定の高精度化や道路状況の把握にLiDARを、Wi-Fi(登録商標)やモバイル回線など接続する回線が増えるほど通信モジュールを増加させる必要があり、コストや故障率が増加する課題があった。また、ロボットに異常や故障があった際には、通信で伝える又は事前に備わっている光源の点灯や音で知らせるしかないという課題もあった。しかし、このような機能を統合するシステムや発明はこれまでになかった。
【0010】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、自己位置推定と通信を並行して行うことが可能な通信システム等を提供することになる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明は、送信対象とするデータを変調して光信号を生成し、生成した光信号に基づいて光源を発光させる発光装置と、カメラと、前記カメラによって撮影された撮影画像から前記光源に対応する領域を抽出し、抽出した前記領域の情報を復調して前記データを取得するデータ取得部と、前記撮影画像における前記光源の座標に基づいて、前記カメラ又は前記光源の位置を推定する位置推定部とを含むことを特徴とする通信システムに関する。
【0012】
また本発明は、送信対象とするデータを変調して光信号を生成し、生成した光信号に基づいて光源を発光させる発光ステップと、カメラによって撮影された撮影画像から前記光源に対応する領域を抽出し、抽出した前記領域の情報を復調して前記データを取得するデータ取得ステップと、前記撮影画像における前記光源の座標に基づいて、前記カメラ又は前記光源の位置を推定する位置推定ステップとを含むことを特徴とする通信方法に関する。
【0013】
本発明によれば、カメラの撮影画像から光源を抽出し、撮影画像内の光源の座標からカメラや光源の位置を測位するとともに、光信号として変調されたデータをOCCにより受信することで、これまで別の機構で行っていた自己位置推定と通信を並行して行うことが可能となる。
【0014】
(2)また本発明に係る通信システムでは、駆動部を備えた駆動装置を更に含み、前記カメラは前記駆動装置に備えられ、前記駆動装置は、前記データ取得部によって取得された前記データと、前記位置推定部によって推定された前記カメラの位置とに基づいて、前
記駆動部を駆動させてもよい。
【0015】
また本発明に係る通信方法では、前記カメラは駆動部を備えた駆動装置に備えられ、前記データ取得部によって取得された前記データと、前記位置推定部によって推定された前記カメラの位置とに基づいて、前記駆動部を駆動させる駆動ステップを更に含んでもよい。
【0016】
(3)また本発明に係る通信システムでは、前記発光装置は、前記光源の位置情報を変調して前記光信号を生成し、前記データ取得部は、抽出した前記領域の情報を復調して前記位置情報を取得し、前記位置推定部は、前記データ取得部によって取得された前記位置情報と前記撮影画像における前記光源の座標とに基づいて、前記カメラの位置を推定してもよい。
【0017】
また本発明に係る通信方法では、前記発光ステップでは、前記光源の位置情報を変調して前記光信号を生成し、前記データ取得ステップでは、抽出した前記領域の情報を復調して前記位置情報を取得し、前記位置推定ステップでは、前記データ取得ステップによって取得された前記位置情報と前記撮影画像における前記光源の座標とに基づいて、前記カメラの位置を推定してもよい。
【0018】
(4)また本発明に係る通信システムでは、前記発光装置は複数あり、前記データ取得部は、複数の前記発光装置のそれぞれの前記光源に対応する領域を抽出し、抽出した前記領域の情報を復調して複数の前記発光装置のそれぞれの前記光源の前記位置情報を取得し、前記位置推定部は、前記データ取得部によって取得された複数の前記発光装置のそれぞれの前記光源の前記位置情報と前記撮影画像における複数の前記発光装置のそれぞれの前記光源の座標とに基づいて、前記カメラの位置を推定してもよい。
【0019】
(5)また本発明に係る通信システムでは、前記位置推定部は、前記撮影画像における前記光源の大きさに基づいて、前記光源と前記カメラとの距離を求め、前記光源と前記カメラとの距離と前記撮影画像における前記光源の座標とに基づいて、前記光源を原点とした前記カメラの座標を求め、前記光源を原点とした前記カメラの座標と前記データ取得部によって取得された前記位置情報とに基づいて、前記カメラの位置を推定してもよい。
【0020】
また本発明に係る通信方法では、前記位置推定ステップでは、前記撮影画像における前記光源の大きさに基づいて、前記光源と前記カメラとの距離を求め、前記光源と前記カメラとの距離と前記撮影画像における前記光源の座標とに基づいて、前記光源を原点とした前記カメラの座標を求め、前記光源を原点とした前記カメラの座標と前記データ取得ステップによって取得された前記位置情報とに基づいて、前記カメラの位置を推定してもよい。
【0021】
(6)また本発明に係る通信システムでは、前記位置推定部は、前記撮影画像における前記光源の大きさを求める際に、ブルーミング効果を除去してもよい。
【0022】
また本発明に係る通信方法では、前記位置推定ステップでは、前記撮影画像における前記光源の大きさを求める際に、ブルーミング効果を除去してもよい。
【0023】
(7)本発明は、送信対象とするデータを変調して光信号を生成し、生成した光信号に基づいて複数の光源を発光させる発光ステップと、カメラによって撮影された撮影画像から複数の前記光源に対応する複数の領域を抽出し、抽出した複数の前記領域の情報を復調して複数の前記データを取得するデータ取得ステップと、前記撮影画像における複数の前記光源の座標に基づいて、前記カメラの位置を推定する位置推定ステップとを含むことを
特徴とする通信方法に関する。
【0024】
(8)また本発明に係る通信方法では、前記カメラに備わる駆動部を駆動させて前記カメラを移動し、前記カメラによって複数の前記光源を撮影する撮影ステップを更に含んでもよい。
【0025】
(9)また本発明に係る通信方法では、前記位置推定ステップでは、前記撮影画像における前記光源の座標及び大きさに基づいて前記カメラの位置を推定し、前記撮影画像における前記光源の大きさを求める際に、ブルーミング効果を除去してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1の実施形態に係る通信システムの構成の一例を示す図。
図2】発光装置の機能ブロック図の一例を示す図。
図3】端末装置の機能ブロック図の一例を示す図。
図4】端末装置のカメラで撮影した撮影画像からのデータの取得について説明するための図。
図5】駆動装置の機能ブロック図の一例を示す図。
図6】カメラの座標の量子化誤差を示す図。
図7】第1の実施形態の通信システムの処理の流れを示すフローチャート。
図8】第2の実施形態の構成例を示す図。
図9】第3の実施形態の構成例を示す図。
図10】第4の実施形態の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0028】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る通信システムの構成の一例を示す図である。通信システム1は、1つ又は複数の発光装置10と、カメラ(撮影部)を備え、データ取得部及び位置推定部として機能する端末装置20と、駆動装置30とを含む。
【0029】
発光装置10は、送信対象とするデータを変調して光信号を生成し、生成した光信号(発光パターン)に基づいて光源を発光させる。
【0030】
端末装置20は、カメラによって発光装置10を撮影し、撮影画像から光源に対応する領域の情報(発光パターン)を復調して送信対象のデータを取得する。端末装置20は駆動装置30に備わるものであるが、カメラは、駆動装置30が備えるカメラであってもよいし、監視カメラ等の固定カメラや、スマートフォンなどのモバイルデバイスが備えるカメラであってもよい。また、端末装置20は、撮影画像における光源の座標に基づいて、カメラの位置(自己位置)を推定する。また、端末装置20は、取得したデータを、通信部を用いて他の装置に送信してもよい。
【0031】
駆動装置30は、駆動部(アクチュエータ)を備えた装置であり、例えば、ドローンや自走ロボット、人型ロボット等の移動ロボットや自動車等の移動体であってもよいし、アーム型ロボットや産業用ロボット等の固定ロボットであってもよい。駆動装置30は、端末装置20で取得されたデータと推定された位置とに基づいて駆動部を駆動させる。
【0032】
図2は、発光装置10の機能ブロック図の一例である。発光装置10は、処理部100
、センサ部110、発光部120、記憶部130を含む。
【0033】
センサ部110は、何らかのデータをセンシングするセンサであり、例えば人感センサや温度センサである。センサ部110は、複数のセンサを含んでもよい。センサ部110でセンシングされたデータは処理部100に伝送される。
【0034】
発光部120は、光源であり、単色光源であってもよいし、多色光源であってもよい。また、発光部120は、単光源に限られず、複数光源を1つのアレイ光源のように扱ってもよい。例えば、LEDパネルや液晶ディスプレイ、デジタルサイネージ、天井灯や街灯などを発光部120として利用してもよい。
【0035】
記憶部130は、処理部100の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラムや各種データを記憶するとともに、処理部100のワーク領域として機能し、その機能はハードディスク、実装メモリなどにより実現できる。また、記憶部130は、発光装置10(光源)の位置情報(座標)を発光装置10のIDに関連付けて記憶する。
【0036】
処理部100の機能は各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。処理部100は、信号生成部101を含む。
【0037】
信号生成部101は、送信対象とする(端末装置20に伝えるデータ)を符号化・変調して光信号を生成する。送信対象とするデータは、センサ部110でセンシングされたデータ或いは当該データに基づき生成した制御信号(駆動装置30を駆動させるための制御信号)と、記憶部130に記憶された発光装置10のID及び位置情報である。信号生成部101で生成された光信号は発光部120に伝送され、発光部120は光信号に基づいて発光する。データの符号化及び変調方式としては何を用いてもよい。例えば、データの変調方式として、光のON/OFFやRGBの3色光源等の各光源のON/OFFを用いてビットを表現する手法を用いてもよいし、光色によってビットを表現するCSK(Color Shift Keying)等の手法を用いてもよい。また、一般的なカメラに用いられるローリングシャッター機構を応用した変調方式を用いてもよい。いずれにしても、データの送受信を行う両者(発光装置10と端末装置20)の間で合意がとれていればデータの符号化及び変調方式はどのようなものが用いられてもよい。また、光空間変調や時空間多重を行うことも可能である。また、複数光源を1つの光源として扱う場合、複数光源の全てを同じ色で発光させてもよいし、複数光源の一部をデータの送信用として用いてもよい。後者の場合、複数光源の一部を検出用のマーカとして用いて、他の光源をデータの送信用として用いてもよい。また、ある時間に、センサ部110でセンシングされたデータや制御信号を送信し、他の時間に、発光装置10のIDと位置情報を送信するなど、時間ごとに送信するデータが変わるようにしてもよい。
【0038】
図3は、端末装置20の機能ブロック図の一例である。端末装置20は、処理部200、カメラ210、通信部220、記憶部230を含む。
【0039】
通信部220は、駆動装置30や他のデバイスと通信を行うための各種制御を行うものであり、その機能は、各種プロセッサ又は通信用ASICなどのハードウェアや、プログラムなどにより実現できる。
【0040】
記憶部230は、処理部200の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラムや各種データを記憶するとともに、処理部200のワーク領域として機能し、その機能はハードディスク、実装メモリなどにより実現できる。
【0041】
処理部200の機能は各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。処理部200は、データ取得部201、位置推定部202を含む。なお、カメラ210と処理部200を同一端末内に実装することを想定するが、カメラ210と処理部200を別の端末として実装してもよい。この場合、カメラ210と処理部200をネットワークにより接続し、ストリーミング通信などによって撮影画像(動画像)を伝送する形態が考えられる。また、カメラ210により撮影された動画像をまず記憶部230に保存し、それを処理部200が読み出す方法も考えられる。
【0042】
データ取得部201は、カメラ210によって撮影された撮影画像(動画像)から、発光装置10の光源に対応する領域(光信号領域)を抽出する。光信号領域の抽出手法としては、撮影画像の二値化処理やパターン認識、特徴量抽出や物体検出アルゴリズム等を用いた機械学習など、光源を検出できればどのような手法を用いてもよい、また、Blooming
effectのような画像のぼやけを考慮してもよい。いずれの方法を用いる場合でも、光信号領域を抽出した結果は、撮影画像内のピクセルの範囲として特定される。なお、撮影画像から光信号領域を切り出して記憶部230に記憶してもよいし、しなくてもよい。
【0043】
データ取得部201は、光信号領域の情報に基づいて、光信号の復号化及び復調を行うことでデータ(センサ部110でセンシングされたデータや制御信号、発光装置10のIDと位置情報)を取得する。この具体的な手法は、発光装置10におけるデータの符号化及び変調方式に依存する。例えば、光信号領域内に複数の異なる光源がある場合には、光信号領域を更に複数の領域に分割し、分割した各領域において、各ピクセルのRGBの平均値に基づいて復調を行う手法や、ピクセル毎のRGBの分布に基づいて復調を行う手法などを用いる。データ取得部201によって取得されたデータは、駆動装置30に送信される。なお、発光装置10が複数ある場合、データ取得部201は、複数の発光装置10のそれぞれの光源に対応する光信号領域を抽出し、抽出した複数の光信号領域の情報を復号化・復調して複数のデータを取得する。
【0044】
図4は、端末装置20のカメラ210で撮影した撮影画像からのデータの取得について説明するための図である。データ取得部201は、光信号領域を抽出し、これを領域k(k=1,2,…)とする。データ取得部201は、各領域kについて、RGB値を集計し、集計した値(RGB値の平均値、ピクセル毎のRGB値の分布)に基づいてデータの復調を行う。図4に示す例では、撮影画像から、1つの発光装置10に対応する「領域1」と他の発光装置10に対応する「領域2」のそれぞれの情報を復調してデータを取得している。
【0045】
位置推定部202は、撮影画像における光源(光信号領域)の座標と、データ取得部201によって取得されたデータ(発光装置10の位置情報)とに基づいて、カメラ210(すなわち、カメラ210が備わる駆動装置30)の位置(自己位置)を推定する。自己位置の推定手法の詳細については後述する。位置推定部202によって推定された位置のデータは、駆動装置30に送信される。なお、発光装置10が複数ある場合、位置推定部202は、撮影画像における複数の発光装置10のそれぞれの光源の座標と、データ取得部201によって取得された複数の発光装置10のそれぞれの位置情報とに基づいて、カメラ210の位置を推定する。
【0046】
図5は、駆動装置30の機能ブロック図の一例である。駆動装置30は、処理部300、通信部310、駆動部320、記憶部330を含む。
【0047】
通信部310は、端末装置20や他のデバイスと通信を行うための各種制御を行うものであり、その機能は、各種プロセッサ又は通信用ASICなどのハードウェアや、プログ
ラムなどにより実現できる。
【0048】
記憶部330は、処理部300の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラムや各種データを記憶するとともに、処理部300のワーク領域として機能し、その機能はハードディスク、実装メモリなどにより実現できる。
【0049】
処理部300の機能は各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。処理部300は、データ取得部301、制御部302を含む。
【0050】
データ取得部301は、駆動部320の状態に関する情報(モータの回転数や現在位置など、駆動部320のパラメータ)を取得する。
【0051】
制御部302は、端末装置20のデータ取得部201によって取得されたデータ(センサ部110でセンシングされたデータや制御信号)、位置推定部202によって推定された位置(自己位置)、データ取得部301で取得された情報、及び、記憶部330に記憶されたプログラムやデータ等に基づいて、駆動部320を駆動させる制御を行う。制御部302は、データ取得部201によって取得された制御信号を駆動部320に伝えるか否かを、駆動部320の状態や推定された自己位置などに基づいて判断してもよい。駆動部320を駆動させるための制御信号はどのようなものであってもよい。例えば、駆動装置30がドローンや移動ロボットである場合、制御信号は、「進め」、「止まれ」、「高度を上げる/下げる」、「移動速度を上げる/下げる」のような指令信号であってもよいし、駆動装置30が次に進むべき座標を指定する信号であってもよい。例えば、制御部302は、所定の場所(交差点など)に配置された発光装置10から端末装置20を介して、所定の場所に人がいることを検知した旨の信号を受信した場合、駆動部320を停止させる制御や、地図データ及び自己位置に基づき所定の退避場所まで駆動装置30を移動させる制御を行う。また、駆動装置30が産業用ロボットである場合、制御信号は、組み立てを指示する信号や組み立てを停止させる信号であってもよい。なお、制御部302は、駆動装置30に備わるカメラ210による撮影に先立って、駆動部320を駆動させて、1つ又は複数の発光装置10の光源を撮影可能な位置までカメラ210を移動させるようにしてもよい。
【0052】
次に、自己位置の推定手法の詳細について説明する。端末装置20は、1つ又は複数の発光装置10を撮影した撮影画像(動画像)から発光装置10(光源)に対応する領域を抽出して、それぞれの発光装置10のIDと位置情報(座標)を特定し、撮影画像上の光源の座標(位置)及び大きさをもとに自己位置を測位する。
【0053】
まず、Blooming effectを考慮した画像上の光減衰モデルについて説明する。Blooming effectとは、光源を撮影したときに撮影画像上で発生する光の拡散やボケのことである。Blooming effectを考慮せず物体検出アルゴリズム等を利用した半径を用いると理論値より撮影画像上の光源の大きさが大きくなるため、計算誤差も比例的に大きくなる。そこで、Blooming effectを除去した撮影画像上の光源の真の大きさを取得する必要がある。画像上のi番目の光源の中心からある画素までの距離をδ、ある画素の画像上の座標を(u,v)、i番目の光源の中心の座標を(u,v)とすると、δは、次式で表すことができる。
【0054】
【数1】
i番目の光源の画像上での輝度(光源の明るさ)をb、画像上の理論上の半径の大きさをpとしたとき、ある距離δでの明るさf(δ)を、次式で計算することとする。
【0055】
【数2】
ここで、α、β、γは、条件によって変わるパラメータであり、次式を満たすように決定する。
【0056】
【数3】
ここで、Cは、予め設定された閾値である。画素を光源と判断する明るさの閾値をbihと定義する。ある画素において設定したbihよりも明るさが大きい場合を光源とすることで、Blooming effectを除去した光源の大きさrを、次式のように求めることができる。
【0057】
【数4】
以下、自己位置の測位について説明する。i番目の発光装置10の座標(データ取得部201で取得した位置情報)を(x,y,z)とする。i番目の発光装置10の光源の大きさをrとし、i番目の発光装置10の光源の撮影画像上の大きさをrp,i(Blooming effectを除去した光源の大きさ)とし、端末装置20のカメラ210とi番目の発光装置10との距離z’を次式により計算する。
【0058】
【数5】
ここで、fは、カメラ210の焦点距離、ρは、カメラ210に内蔵されているCMOSイメージセンサの大きさである。
【0059】
次に、発光装置10を原点としたカメラ210の座標を求める。x軸、y軸、z軸を基準とした回転角度をそれぞれ(θ,θ,θ)としたとき、カメラ210の回転行列Rは、次式のように表すことができる。
【0060】
【数6】
カメラ210の画角を(fov,fov)、解像度を(pixel,pixel)としたとき、内部パラメータKは、次式で定義することができる。
【0061】
【数7】
i番目の発光装置10の光源の撮影画像上の座標を(u,v)とする。i番目の発光装置10を原点としたカメラ210の座標(xi,c,yi,c,zi,c)は、i番目の発光装置10とカメラ210との距離z’と、撮影画像におけるi番目の発光装置10の光源の座標(u,v)と、カメラ210の回転行列R及び内部パラメータKとに基づいて、次式で求めることができる。
【0062】
【数8】
この座標を、次式のようにi番目の発光装置10の座標(x,y,z)に加算することで世界座標に変換することができる。
【0063】
【数9】
座標(x’i,c,y’i,c,z’i,c)は、撮影画像上に存在している光源の数だけ計算する。実際は、イメージセンサで受光するため光源の大きさが量子化され誤差が生じてしまう。量子化誤差εは、次式で表される。
【0064】
【数10】
そして、図6に示すように、i(i=1,2,3)番目の発光装置10の光源から求めたカメラ210の座標(x’i,c,y’i,c,z’i,c)と量子化誤差εから、次式により、誤差が最も重なり合う部分の中心の座標(x,y,z)を、カメラ210の座標(自己位置)の推測値として求める。
【0065】
【数11】
図7は、本実施形態に係る通信システムの処理の流れを示すフローチャートである。まず、発光装置10の信号生成部101は、送信対象とするデータ(センサ部110でセンシングされたデータ、制御信号、発光装置10のIDと位置情報)を符号化・変調して光信号を生成し発光部120に出力する(ステップS10)。
【0066】
次に、端末装置20のデータ取得部201は、発光装置10を撮影した撮影画像をカメラ210から取得し(ステップS11)、取得した撮影画像から光信号領域を抽出し(ステップS12)、抽出した光信号領域の情報を復号化・復調してデータを取得する(ステップS13)。また、位置推定部202は、撮影画像における光源の位置・大きさ(光信号領域の座標)と発光装置10の位置情報とに基づいて自己位置を推定する(ステップS14)。
【0067】
次に、駆動装置30の制御部302は、データ取得部201で取得されたデータと、位置推定部202で推定された自己位置と、駆動部320の状態とに基づいて、制御信号を用いて駆動部320を動作させるか否かを決定するなどして、駆動部320の動作を制御する(ステップS15)。
【0068】
本実施形態によれば、カメラ210の撮影画像から光源を抽出し画像上の座標からカメラ210の位置(自己位置)を測位するとともに、光信号として変調されたデータをOCCにより受信する。これにより、同一の光源及びカメラを用いて自己位置推定と通信とを並行して行うことが可能となり、LiDARなどの自己位置を推定する機構を不要とし、低コスト化や簡素化によるメンテナンス容易化などを実現することができる。
【0069】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態の構成例を示す図である。第2の実施形態は、発光装置10の通信データをセンサデータだけでなく、サーバ装置40からも与えられる点で第1の実施形態と異なる。発光装置10は、通信部を備え、ネットワークを介してサーバ装置40に接続される。発光装置10は、サーバ装置40から制御信号等のデータを受信し、受信したデータを符号化・変調して光信号を生成する。サーバ装置40が生成するデータはどのようなデータでもよい。サーバ装置40は、事前に送信データをスケジューリングしておき、一定の間隔でデータを発光装置10に送信してもよいし、サーバ装置40が送信したいときにデータを送信してもよい。第2の実施形態によれば、端末装置20は、インターネットやLANなどのネットワークに直接接続することなく必要な情報を受け取ることが可能となる、また、ローカルなセンサデータだけでなく、サーバ装置40から受信したデータに基づいて駆動装置30を制御することが可能となる。これにより、センシングされたデータのみでは不足する情報を補足し、駆動装置30をより最適に動作させることが実現する。
【0070】
(第3の実施形態)
図9は、第3の実施形態の構成例を示す図である。第3の実施形態は、発光装置10が駆動装置30に備えられ、発光装置10でセンシングされたデータや駆動装置30で取得
された駆動部320の状態を、端末装置20を介してサーバ装置40に送信する点、端末装置20において発光装置10(光源)の位置を推定する点で、第1の実施形態と異なる。各端末装置20は、カメラ210により発光装置10の光源を撮影し、撮影画像における光源に対応する領域の座標及び大きさと、端末装置20(カメラ210)の既知の位置情報(座標)とに基づいて、発光装置10(光源)の位置を推定する。複数の端末装置20を用いることで、位置測位の誤差を小さくすることができる。駆動装置30はなくてもよいが、発光装置10を駆動装置30に備えることで、駆動装置30の位置を特定することが可能となる。
【0071】
(第4の実施形態)
図10は、第4の実施形態の構成例を示す図である。上記の実施形態は片方向の通信であるが、第4の実施形態では、発光装置10と端末装置20を両方向に配置することで、双方向通信を可能としている。それぞれの発光装置10と端末装置20は、単一でもよいし複数でもよい。ここでは2つのネットワークしか示していないが複数のネットワークで通信してもよい。サーバ装置40はなくてもよく、駆動装置30に発光装置10と端末装置20が直接接続されていてもよい。また、駆動装置30はなくてもよく、D2D(端末間通信)のような使い方をしてもよい。端末装置20は、発光装置10’を撮影して、撮影画像における発光装置10’の光源に対応する領域からデータを取得するとともに、当該領域の座標から自己位置又は発光装置10’の位置を推定する。同様に、端末装置20’は、発光装置10を撮影して、撮影画像における発光装置10の光源に対応する領域からデータを取得するとともに、当該領域の座標から自己位置又は発光装置10の位置を推定する。
【0072】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0073】
1…通信システム、10…発光装置、20…端末装置、30…駆動装置、40…サーバ装置、100…処理部、101…信号生成部、110…センサ部、120…発光部、130…記憶部、200…処理部、201…データ取得部、202…位置推定部、210…カメラ、220…通信部、230…記憶部、300…処理部、301…データ取得部、302…制御部、310…通信部、320…駆動部、330…記憶部
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
図8
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図10