IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友化学株式会社の特許一覧

特開2024-111555液晶ポリエステル組成物、フィルム、並びに、積層体及びその製造方法
<>
  • 特開-液晶ポリエステル組成物、フィルム、並びに、積層体及びその製造方法 図1
  • 特開-液晶ポリエステル組成物、フィルム、並びに、積層体及びその製造方法 図2
  • 特開-液晶ポリエステル組成物、フィルム、並びに、積層体及びその製造方法 図3A
  • 特開-液晶ポリエステル組成物、フィルム、並びに、積層体及びその製造方法 図3B
  • 特開-液晶ポリエステル組成物、フィルム、並びに、積層体及びその製造方法 図3C
  • 特開-液晶ポリエステル組成物、フィルム、並びに、積層体及びその製造方法 図3D
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111555
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】液晶ポリエステル組成物、フィルム、並びに、積層体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20240809BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20240809BHJP
   C08L 81/06 20060101ALI20240809BHJP
   B32B 15/09 20060101ALI20240809BHJP
   B32B 15/088 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
C08L67/00
C08L79/08
C08L81/06
B32B15/09 Z
B32B15/088
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016131
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(74)【代理人】
【識別番号】100214215
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼梨 航
(72)【発明者】
【氏名】莇 昌平
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
4F100AB17B
4F100AB33B
4F100AK01A
4F100AK41A
4F100AK49A
4F100BA02
4F100DE01A
4F100EH46
4F100JA11A
4F100JB16A
4F100JK06
4J002CF00W
4J002CF00Z
4J002CF16W
4J002CF16Z
4J002CM04X
4J002CN03Y
4J002GF00
4J002GQ01
(57)【要約】
【課題】金属層との密着強度に優れる液晶ポリエステル組成物を提供する。
【解決手段】液晶ポリエステル(A)と、熱可塑性ポリイミド及び芳香族ポリスルホンからなる群から選択される少なくとも一種の熱可塑性樹脂と、を含有し、前記液晶ポリエステル(A)が、芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位、又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有する、液晶ポリエステル組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリエステル(A)と、
熱可塑性ポリイミド及び芳香族ポリスルホンからなる群から選択される少なくとも一種の熱可塑性樹脂と、を含有し、
前記液晶ポリエステル(A)が、芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位、又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有する、液晶ポリエステル組成物。
【請求項2】
前記液晶ポリエステル(A)が、下記式(A1)で表される繰返し単位と、下記式(A2)で表される繰返し単位と、下記式(A3)で表される繰返し単位とを有する、請求項1に記載の液晶ポリエステル組成物。
(A1)-O-Ar-CO-
(A2)-CO-Ar-CO-
(A3)-X-Ar-Y-
(式中、
Arは、1,4-フェニレン基、2,6-ナフチレン基、又は4,4’-ビフェニレン基を表し、
Arは、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、又は2,6-ナフチレン基を表し、
Arは、1,4-フェニレン基又は1,3-フェニレン基を表し、
Xは-NH-を表し、Yは-O-又は-NH-を表す。
Ar、Ar又はArで表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、又はアリール基で置換されていてもよい。)
【請求項3】
更に、液晶ポリエステル(B)を含む液晶ポリエステル粒子を含有し、
前記液晶ポリエステル(B)が、芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位及び芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有さない、請求項1又は2に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項4】
前記液晶ポリエステル粒子の含有量は、前記液晶ポリエステル組成物に含有される固形分の総含有量100質量%に対して、5質量%以上80質量%以下である、請求項3に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項5】
前記液晶ポリエステル組成物において、液晶ポリエステル(A)100質量部に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量が1質量部以上である、請求項1又は2に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項6】
前記液晶ポリエステル組成物における、液晶ポリエステル(A)の含有量が、前記液晶ポリエステル組成物に含有される固形分の総含有量100質量%に対して、10質量%以上90質量%以下である、請求項1又は2に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項7】
更に、前記液晶ポリエステル(A)を可溶な溶媒を含有する、請求項1又は2に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂が熱可塑性ポリイミドである、請求項1又は2に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項9】
前記熱可塑性ポリイミドが、下記式(I)で表される繰返し単位及び下記式(II)で表される繰返し単位を有する、請求項8に記載の液晶ポリエステル組成物。
【化1】
(式中、Rは少なくとも1つの脂環式炭化水素構造を含む炭素数6~22の2価の基である。Rは炭素数5~16の2価の鎖状脂肪族基である。X及びXは、それぞれ独立に、少なくとも1つの芳香環を含む炭素数6~22の4価の基である。)
【請求項10】
前記熱可塑性ポリイミドの、前記式(I)の繰返し単位と前記式(II)の繰返し単位との合計100モル%に対する、前記式(I)の繰返し単位の含有割合が20モル%以上70モル%以下である、請求項9に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項11】
液晶ポリエステル(A)と、
熱可塑性ポリイミド及び芳香族ポリスルホンからなる群から選択される少なくとも一種の熱可塑性樹脂と、
前記液晶ポリエステル(A)を可溶な溶媒と、を含有する、液晶ポリエステル組成物。
【請求項12】
液晶ポリエステル(A)と、
熱可塑性ポリイミド及び芳香族ポリスルホンからなる群から選択される少なくとも一種の熱可塑性樹脂と、を含有し、
前記液晶ポリエステル(A)が、芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位、又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有する、フィルム。
【請求項13】
金属層と、前記金属層上に積層された請求項12に記載のフィルムと、を備える積層体。
【請求項14】
金属層上に、請求項1、2又は11に記載の液晶ポリエステル組成物を塗布し、前記金属層上にフィルムを形成することを含む、請求項13に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリエステル組成物、フィルム、並びに、積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ポリエステルは、化学的安定性、耐熱性及び寸法精度が高いことが知られており、電気、電子、機械、光学機器、自動車、航空機及び医療分野等の様々な分野で利用されている。これらの分野の中でも、液晶ポリエステルは誘電損失が小さく電気特性にも優れるため、特に電子部品用の材料として注目されている。
【0003】
特許文献1には、液晶性ポリエステルフィルムおよび金属層が積層してなる液晶性ポリエステルフィルム積層体の製造方法であって、芳香族ジアミン由来の構造単位、フェノール性水酸基を有する芳香族アミン由来の構造単位、および芳香族アミノ酸由来の構造単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位を全構造単位に対して10~35モル%含む液晶性ポリエステルの溶液を、フィルム状に流延した後、溶媒を除去することにより、前記液晶性ポリエステルフィルムを得る前記液晶性ポリエステルフィルム積層体の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4479355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、金属層と、液晶ポリエステルを含むフィルムと、の密着強度を向上させる技術については、未だ検討の余地がある。
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解消するためになされたものであり、金属層との密着強度に優れるフィルムを製造可能な液晶ポリエステル組成物、フィルム、並びに、積層体及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、液晶ポリエステルと、熱可塑性ポリイミド及び芳香族ポリスルホンからなる群から選択される少なくとも一種の熱可塑性樹脂とを含有するフィルムが、金属層との密着強度に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
【0008】
<1> 液晶ポリエステル(A)と、
熱可塑性ポリイミド及び芳香族ポリスルホンからなる群から選択される少なくとも一種の熱可塑性樹脂と、を含有し、
前記液晶ポリエステル(A)が、芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位、又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有する、液晶ポリエステル組成物。
<2> 前記液晶ポリエステル(A)が、下記式(A1)で表される繰返し単位と、下記式(A2)で表される繰返し単位と、下記式(A3)で表される繰返し単位とを有する、前記<1>に記載の液晶ポリエステル組成物。
(A1)-O-Ar-CO-
(A2)-CO-Ar-CO-
(A3)-X-Ar-Y-
(式中、
Arは、1,4-フェニレン基、2,6-ナフチレン基、又は4,4’-ビフェニレン基を表し、
Arは、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、又は2,6-ナフチレン基を表し、
Arは、1,4-フェニレン基又は1,3-フェニレン基を表し、
Xは-NH-を表し、Yは-O-又は-NH-を表す。
Ar、Ar又はArで表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、又はアリール基で置換されていてもよい。)
<3> 更に、液晶ポリエステル(B)を含む液晶ポリエステル粒子を含有し、
前記液晶ポリエステル(B)が、芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位及び芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有さない、前記<1>又は<2>に記載の液晶ポリエステル組成物。
<4> 前記液晶ポリエステル粒子の含有量は、前記液晶ポリエステル組成物に含有される固形分の総含有量100質量%に対して、5質量%以上80質量%以下である、前記<3>に記載の液晶ポリエステル組成物。
<5> 前記液晶ポリエステル組成物において、液晶ポリエステル(A)100質量部に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量が1質量部以上である、前記<1>~<4>のいずれか一つに記載の液晶ポリエステル組成物。
<6> 前記液晶ポリエステル組成物における、液晶ポリエステル(A)の含有量が、前記液晶ポリエステル組成物に含有される固形分の総含有量100質量%に対して、10質量%以上90質量%以下である、前記<1>~<5>のいずれか一つに記載の液晶ポリエステル組成物。
<7> 更に、前記液晶ポリエステル(A)を可溶な溶媒を含有する、前記<1>~<6>のいずれか一つに記載の液晶ポリエステル組成物。
<8> 前記熱可塑性樹脂が熱可塑性ポリイミドである、前記<1>~<7>のいずれか一つに記載の液晶ポリエステル組成物。
<9> 前記熱可塑性ポリイミドが、下記式(I)で表される繰返し単位及び下記式(II)で表される繰返し単位を有する、前記<8>に記載の液晶ポリエステル組成物。
【化1】
(式中、Rは少なくとも1つの脂環式炭化水素構造を含む炭素数6~22の2価の基である。Rは炭素数5~16の2価の鎖状脂肪族基である。X及びXは、それぞれ独立に、少なくとも1つの芳香環を含む炭素数6~22の4価の基である。)
<10> 前記熱可塑性ポリイミドの、前記式(I)の繰返し単位と前記式(II)の繰返し単位との合計100モル%に対する、前記式(I)の繰返し単位の含有割合が20モル%以上70モル%以下である、前記<9>に記載の液晶ポリエステル組成物。
<11> 液晶ポリエステル(A)と、
熱可塑性ポリイミド及び芳香族ポリスルホンからなる群から選択される少なくとも一種の熱可塑性樹脂と、
前記液晶ポリエステル(A)を可溶な溶媒と、を含有する、液晶ポリエステル組成物。
<12> 液晶ポリエステル(A)と、
熱可塑性ポリイミド及び芳香族ポリスルホンからなる群から選択される少なくとも一種の熱可塑性樹脂と、を含有し、
前記液晶ポリエステル(A)が、芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位、又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有する、フィルム。
<13> 金属層と、前記金属層上に積層された前記<12>に記載のフィルムと、を備える積層体。
<14> 金属層上に、前記<1>~<11>のいずれか一つに記載の液晶ポリエステル組成物を塗布し、前記金属層上にフィルムを形成することを含む、前記<13>に記載の積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液晶ポリエステルを含み、金属層との密着強度に優れるフィルムを製造可能な液晶ポリエステル組成物を提供できる。
また、本発明によれば、金属層との密着強度に優れるフィルムを提供できる。
また、本発明によれば、金属層とフィルムとを備え、金属層との密着強度に優れる積層体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態のフィルムの構成を示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態の積層体の構成を示す断面図である。
図3A】本発明の一実施形態のフィルム及び積層体の製造過程を示す模式図である。
図3B】本発明の一実施形態のフィルム及び積層体の製造過程を示す模式図である。
図3C】本発明の一実施形態のフィルム及び積層体の製造過程を示す模式図である。
図3D】本発明の一実施形態のフィルムの製造過程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の液晶ポリエステル組成物、フィルム、並びに、積層体及びその製造方法の実施形態を説明する。
【0012】
≪液晶ポリエステル組成物≫
実施形態の液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリエステル(A)と、熱可塑性ポリイミド及び芳香族ポリスルホンからなる群から選択される少なくとも一種の熱可塑性樹脂と、を含有し、前記液晶ポリエステル(A)が、芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位、又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有する。
【0013】
実施形態の液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリエステルと、熱可塑性ポリイミド及び芳香族ポリスルホンからなる群から選択される少なくとも一種の熱可塑性樹脂とを含有することで、該熱可塑性樹脂を含有しない場合に比べ、フィルムとして金属層と積層された場合の、金属層との密着強度が向上する。
【0014】
前記液晶ポリエステル組成物において、液晶ポリエステル(A)100質量部に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量は、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。
上記の上限値以上で熱可塑性樹脂を含有する液晶ポリエステル組成物は、金属層との密着強度の向上効果により一層優れる。
【0015】
前記液晶ポリエステル組成物において、液晶ポリエステル(A)100質量部に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量は、80質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、65質量部以下がさらに好ましい。
上記上限値以下で熱可塑性樹脂を含有する液晶ポリエステル組成物は、金属層との密着強度の向上効果により一層優れる。
【0016】
前記液晶ポリエステル組成物における、液晶ポリエステル(A)100質量部に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量の上記値の数値範囲の一例としては、1質量部以上80質量部以下であってよく、3質量部以上70質量部以下であってよく、5質量部以上65質量部以下であってよい。
【0017】
また、液晶ポリエステル(A)が、芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位、又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有することで、後述の溶媒への溶解が良好である。また、フィルムとして金属層と積層された場合の、金属層との密着強度も向上する。
【0018】
液晶ポリエステル(A)は、アミド結合を含むものであってもよく、イミノ基(-NH-)を有する繰り返し単位を含むものであってもよい。
【0019】
液晶ポリエステル(A)は、後述の溶媒に可溶であってよい。
【0020】
液晶ポリエステルが溶媒に可溶であることは、下記の試験を行うことにより確認できる。
【0021】
・試験方法
液晶ポリエステル5質量部を溶媒95質量部中で180℃の温度で、アンカー翼を用いて200rpmの撹拌条件で6時間撹拌した後、室温まで冷却する。次いで、目開き5μmのメンブレンフィルターおよび加圧式のろ過機を用いてろ過をした後、メンブレンフィルター上の残留物を確認する。この時、残留物が確認されない場合を溶媒に可溶と判断する。
【0022】
実施形態の液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリエステル(A)と、前記熱可塑性樹脂と、必要に応じて含有されてよい任意成分とを、液晶ポリエステル組成物におけるそれらの含有量(質量%)の合計が、実施形態の液晶ポリエステル組成物の総質量(100質量%)を超えないように含有することができる。
【0023】
<液晶ポリエステル(A)>
液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示す液晶ポリエステルであり、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。
【0024】
液晶ポリエステルは、芳香族化合物に由来する繰返し単位のみを有する全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
【0025】
なお、本明細書において「由来」とは、原料モノマーの重合において、重合に寄与する官能基の化学構造が変化し、その他の化学構造は変化しないことを意味する。ここでの由来は、原料モノマーの重合可能な誘導体を由来とする場合も包含する概念である。
【0026】
芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、カルボキシル基をアルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基に変換したエステル;カルボキシル基をハロホルミル基に変換した酸ハロゲン化物;カルボキシル基をアシルオキシカルボニル基に変換した酸無水物等が挙げられる。
【0027】
芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシアミンのようなヒドロキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシル基をアシル化してアシルオキシル基に変換したアシル化物等が挙げられる。
芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンのようなアミノ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換したアシル化物等が挙げられる。
【0028】
前記液晶ポリエステル(A)は、芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位、又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有する。
【0029】
芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位、又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有する液晶ポリエステル(A)の一例として、下記式(A1)で表される繰返し単位と、下記式(A2)で表される繰返し単位と、下記式(A3)で表される繰返し単位とを有する液晶ポリエステルを例示できる。
【0030】
(A1) -O-Ar-CO-
(A2) -CO-Ar-CO-
(A3) -X-Ar-Y-
(式中、Arは、1,4-フェニレン基、2,6-ナフチレン基、又は4,4’-ビフェニレン基を表し、Arは、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、又は2,6-ナフチレン基を表し、Arは、1,4-フェニレン基又は1,3-フェニレン基を表し、Xは-NH-を表し、Yは-O-又は-NH-を表す。Ar、ArまたはArで表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。)
【0031】
Ar、ArまたはArが有する水素原子と置換可能なハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0032】
Ar、ArまたはArが有する水素原子と置換可能なアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基等が挙げられ、炭素数1~10のアルキル基が好ましい。アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐していてもよい。
【0033】
Ar、ArまたはArが有する水素原子と置換可能なアリール基としては、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられ、炭素数6~20のアリール基が好ましい。アリール基は、単環であってもよく、縮環であってもよい。また、アリール基は、トリル基のように、芳香環の水素原子がアルキル基で置換された基でもよい。
【0034】
Ar、ArまたはArが有する水素原子が上述した基で置換されている場合、置換数は、好ましくは1個又は2個であり、より好ましくは1個である。Ar、ArまたはArが有する水素原子は、上述した基で置換されていなくともよい。
【0035】
本実施形態においては、一例として、前記Arが、2,6-ナフチレン基であり、Arは、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、又は2,6-ナフチレン基であり、Arは、1,4-フェニレン基又は1,3-フェニレン基であることが好ましい。
【0036】
本実施形態においては、特に、前記Arが1,3-フェニレン基であることが好ましい。Arが1,3-フェニレン基であることで、後述の溶媒への溶解がさらに良好なものとなる。これは、Arが1,3-フェニレン基であることで、重合体に屈曲構造が導入されることによるものと考えられる。
【0037】
本実施形態においては、後述の溶媒への溶解が良好であり、フィルムとして金属層と積層された際の金属層との密着強度及び誘電特性が発現されやすいとの観点から、前記Arが2,6-ナフチレン基であり、前記Arが1,3-フェニレン基であり、前記Arが1,4-フェニレン基であり、前記Yが-O-であることが好ましい。
【0038】
上記式(A1)で示される繰返し単位の数は、前記液晶ポリエステル(A)を構成する全繰返し単位の合計数(100%)に対して、30%以上80%以下であることが好ましく、40%以上70%以下であることがより好ましく、45%以上65%以下であることがよりさらに好ましい。
繰返し単位(A1)の含有数が上記上限値以下であると溶媒への溶解性が良好となり、上記下限値以上であると液晶性が良好となる。
【0039】
上記式(A2)で示される繰返し単位の数は、前記液晶ポリエステル(A)を構成する全繰返し単位の合計数(100%)に対して、10%以上35%以下であることが好ましく、15%以上30%以下であることがより好ましく、17.5%以上27.5%以下であることがよりさらに好ましい。
繰返し単位(A2)の含有数が上記上限値以下であると、液晶性が良好となり、上記下限値以上であると溶媒への溶解性が良好となる。
【0040】
上記式(A3)で示される繰返し単位の数は、前記液晶ポリエステル(A)を構成する全繰返し単位の合計数(100%)に対して、10%以上35%以下であることが好ましく、15%以上30%以下であることがより好ましく、17.5%以上27.5%以下であることがよりさらに好ましい。
繰返し単位(A3)の含有数が上記上限値以下であると、液晶性が良好となり、上記下限値以上であると溶媒への溶解性が良好となる。
【0041】
また、液晶ポリエステル(A)における、繰返し単位(A2)の含有数と繰返し単位(A3)の含有数とは、等しいことが好ましいが、含有数が異なる場合は、繰返し単位(A2)と繰返し単位(A3)の含有数の差は、10%以下が望ましい。
【0042】
液晶ポリエステル(A)における各繰返し単位の好ましい含有数の割合は、前記液晶ポリエステル(A)を構成する全繰返し単位の合計含有数に対して、上記式(A1)で示される繰返し単位の含有数が、30%以上80%以下であることが好ましく、上記式(A2)で示される繰返し単位の含有数が、10%以上35%以下であることが好ましく、上記式(A3)で示される繰返し単位の含有数が、10%以上35%以下であることが好ましい。
【0043】
液晶ポリエステル(A)における各繰返し単位の好ましい含有数の割合は、前記液晶ポリエステル(A)を構成する全繰返し単位の合計含有数に対して、上記式(A1)で示される繰返し単位の含有量が、40%以上70%以下であることがより好ましく、上記式(A2)で示される繰返し単位の含有数が、15%以上30%以下であることがより好ましく、上記式(A3)で示される繰返し単位の含有数が、15%以上30%以下であることがより好ましい。
【0044】
液晶ポリエステル(A)における各繰返し単位の好ましい含有数の割合は、前記液晶ポリエステル(A)を構成する全繰返し単位の合計含有数に対して、上記式(A1)で示される繰返し単位の含有数が、45%以上65%以下であることがさらに好ましく、上記式(A2)で示される繰返し単位の含有数が、17.5%以上27.5%以下であることがさらに好ましく、上記式(A3)で示される繰返し単位の含有数が、17.5%以上27.5%以下であることがさらに好ましい。
【0045】
尚、液晶ポリエステル(A)は、繰返し単位(A1)~(A3)を、それぞれ2種以上有してもよい。また、液晶ポリエステル(A)は、繰返し単位(A1)~(A3)以外の繰返し単位を有してもよいが、その数は、全繰返し単位の合計数に対して、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、0%であってもよい。
【0046】
本明細書において、各繰返し単位の数は、特開2000-19168号公報に記載の分析方法によって求められる。
具体的には、液晶ポリエステルを超臨界状態の低級アルコールと反応させて解重合し、解重合生成物(各繰返し単位を誘導するモノマー)を液体クロマトグラフィーによって定量することで、全繰り返し単位に対する各繰返し単位の数を算出することができる。
【0047】
繰返し単位(A1)は、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位であってよい。繰返し単位(A2)は、芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位であってよい。繰返し単位(A3)は、芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位、又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位であってよい。繰返し単位は、上述した繰返し単位の代わりに、上述した繰返し単位のエステルもしくはアミド形成性誘導体に由来してもよい。
【0048】
本実施形態で含有される液晶ポリエステル(A)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、繰返し単位(A1)に対応する芳香族ヒドロキシ酸、繰返し単位(A3)に対応するフェノール性水酸基を有する芳香族アミン、芳香族ジアミンのフェノール性水酸基やアミノ基を過剰量の脂肪酸無水物によりアシル化してアシル化物を得、得られたアシル化物と、繰返し単位(A2)に対応する芳香族ジカルボン酸とをエステル・アミド交換(重縮合)して溶融重合する方法などが挙げられる(特開2002-220444号公報、特開2002-146003号公報参照)。
【0049】
エステル交換・アミド交換による重縮合は、通常、溶融重合により行なわれる。当該重縮合は、溶融重合と固相重合とを併用して行われてもよい。
【0050】
液晶ポリエステル(A)の含有量は、実施形態の液晶ポリエステル組成物の固形分の総含有量に対して、10質量%以上90質量%以下であってよく、15質量%以上50質量%以下であってよく、25質量%以上40質量%以下であってよい。
上記の数値範囲で液晶ポリエステル(A)を含有する液晶ポリエステル組成物は、製造されるフィルムの、金属層との密着強度及び誘電特性を容易に向上させることができる。
【0051】
本明細書において「固形分」とは、液晶ポリエステル組成物に含まれてもよい溶媒以外の成分を指す。溶媒としては、例えば、後述の非プロトン性溶媒が該当する。
【0052】
<熱可塑性ポリイミド>
本発明の一実施形態として、前記熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂ポリイミドであってよい。
本発明の一実施形態の液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリエステル(A)と、熱可塑性ポリイミドと、を含有し、前記液晶ポリエステル(A)が、芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位、又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有してよい。
【0053】
実施形態の液晶ポリエステル組成物が含有する熱可塑性ポリイミドは、加熱により軟化する性質(熱可塑性)を示す。熱可塑性ポリイミドを、以下単にポリイミドと称することがある。熱可塑性ポリイミドは、結晶性ポリイミドであってもよい。
【0054】
実施形態の液晶ポリエステル組成物が含有する熱可塑性ポリイミドとしては、下記式(I)で示される繰返し単位及び下記式(II)で示される繰返し単位を有してよい。
【0055】
【化2】
【0056】
(式中、Rは少なくとも1つの脂環式炭化水素構造を含む炭素数6~22の2価の基である。Rは炭素数5~16の2価の鎖状脂肪族基である。X及びXは、それぞれ独立に、少なくとも1つの芳香環を含む炭素数6~22の4価の基である。)
【0057】
実施形態の液晶ポリエステル組成物は、上記の特定の異なるポリイミド構成単位の組み合わせを有するポリイミドを含有することで、金属層との密着強度の向上の効果が、より一層効果的に発揮される。
【0058】
式(I)の繰返し単位について、以下に詳述する。
は少なくとも1つの脂環式炭化水素構造を含む炭素数6~22の2価の基である。ここで、脂環式炭化水素構造とは、脂環式炭化水素化合物から誘導される環を意味し、該脂環式炭化水素化合物は、飽和であっても不飽和であってもよく、単環であっても多環であってもよい。
脂環式炭化水素構造としては、シクロヘキサン環等のシクロアルカン環、シクロヘキセン等のシクロアルケン環、ノルボルナン環等のビシクロアルカン環、及びノルボルネン等のビシクロアルケン環が例示されるが、これらに限定されない。これらの中でも、好ましくはシクロアルカン環、より好ましくは炭素数4~7のシクロアルカン環、さらに好ましくはシクロヘキサン環である。
【0059】
は、好ましくは下記式(R1-1)又は(R1-2)で表される2価の基である。
【0060】
【化3】
【0061】
(m11及びm12は、それぞれ独立に、0~2の整数であり、好ましくは0又は1である。m13~m15は、それぞれ独立に、0~2の整数であり、好ましくは0又は1である。)
【0062】
は、特に好ましくは下記式(R1-3)で表される2価の基である。
【0063】
【化4】
【0064】
なお、上記の式(R1-3)で表される2価の基において、2つのメチレン基のシクロヘキサン環に対する位置関係はシスであってもトランスであってもよく、またシスとトランスの比は如何なる値でもよい。
【0065】
は少なくとも1つの芳香環を含む炭素数6~22の4価の基である。前記芳香環は単環でも縮合環でもよく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、及びテトラセン環が例示されるが、これらに限定されない。これらの中でも、好ましくはベンゼン環及びナフタレン環であり、より好ましくはベンゼン環である。
【0066】
は、好ましくは下記式(X-1)~(X-4)のいずれかで表される4価の基である。
【0067】
【化5】
【0068】
(R11~R18は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基である。p11~p
は、それぞれ独立に、0~2の整数であり、好ましくは0である。p14、p15、p16及びp18は、それぞれ独立に、0~3の整数であり、好ましくは0である。p17は0~4の整数であり、好ましくは0である。L11~L13は、それぞれ独立に、単結合、エーテル基、カルボニル基又は炭素数1~4のアルキレン基である。)
なお、Xは少なくとも1つの芳香環を含む炭素数6~22の4価の基であるので、式(X-2)におけるR12、R13、p12及びp13は、式(X-2)で表される4価の基の炭素数が6~22の範囲に入るように選択される。
同様に、式(X-3)におけるL11、R14、R15、p14及びp15は、式(X-3)で表される4価の基の炭素数が6~22の範囲に入るように選択され、式(X-4)におけるL12、L13、R16、R17、R18、p16、p17及びp18は、式(X-4)で表される4価の基の炭素数が6~22の範囲に入るように選択される。
【0069】
は、特に好ましくは下記式(X-5)又は(X-6)で表される4価の基である。
【0070】
【化6】
【0071】
次に、式(II)の繰返し単位について、以下に詳述する。
は炭素数5~16の2価の鎖状脂肪族基であり、好ましくは炭素数6~14、より好ましくは炭素数7~12、更に好ましくは炭素数8~10である。ここで、鎖状脂肪族基とは、鎖状脂肪族化合物から誘導される基を意味し、該鎖状脂肪族化合物は、飽和であっても不飽和であってもよく、直鎖状であっても分岐状であってもよく、酸素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
は、好ましくは炭素数5~16のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数6~14、更に好ましくは炭素数7~12のアルキレン基であり、なかでも好ましくは炭素数8~10のアルキレン基である。前記アルキレン基は、直鎖アルキレン基であっても分岐アルキレン基であってもよいが、好ましくは直鎖アルキレン基である。
は、好ましくはオクタメチレン基及びデカメチレン基から選ばれる少なくとも1種であり、特に好ましくはオクタメチレン基である。
【0072】
また、Rの別の好適な様態として、エーテル基を含む炭素数5~16の2価の鎖状脂肪族基が挙げられる。該炭素数は、好ましくは炭素数6~14、より好ましくは炭素数7~12、更に好ましくは炭素数8~10である。その中でも好ましくは下記式(R2-1)又は(R2-2)で表される2価の基である。
【0073】
【化7】
【0074】
(m21及びm22は、それぞれ独立に、1~15の整数であり、好ましくは1~13、
より好ましくは1~11、更に好ましくは1~9である。m23~m25は、それぞれ独立に、1~14の整数であり、好ましくは1~12、より好ましくは1~10、更に好ましくは1~8である。)
なお、Rは炭素数5~16(好ましくは炭素数6~14、より好ましくは炭素数7~12、更に好ましくは炭素数8~10)の2価の鎖状脂肪族基であるので、式(R2-1)におけるm21及びm22は、式(R2-1)で表される2価の基の炭素数が5~16(好ましくは炭素数6~14、より好ましくは炭素数7~12、更に好ましくは炭素数8~10)の範囲に入るように選択される。すなわち、m21+m22は5~16(好ましくは6~14、より好ましくは7~12、更に好ましくは8~10)である。
同様に、式(R2-2)におけるm23~m25は、式(R2-2)で表される2価の基の炭素数が5~16(好ましくは炭素数6~14、より好ましくは炭素数7~12、更に好ましくは炭素数8~10)の範囲に入るように選択される。すなわち、m23+m24+m25は5~16(好ましくは炭素数6~14、より好ましくは炭素数7~12、更に好ましくは炭素数8~10)である。
【0075】
は、式(I)におけるXと同様に定義され、好ましい様態も同様である。
【0076】
式(I)の繰返し単位と式(II)の繰返し単位との合計100モル%に対する、式(I)の繰返し単位の含有割合は20モル%以上70モル%以下であってよく、20モル%以上40モル%未満であってよい。
式(I)の繰返し単位と式(II)の繰返し単位の合計に対する、式(I)の繰返し単位の含有割合は、成形加工性の観点から、好ましくは25モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは32モル%以上であり、耐熱性向上の観点から、好ましくは38モル%以下、より好ましくは36モル%以下、更に好ましくは35モル%以下である。
【0077】
前記ポリイミドを構成する全繰り返し単位100モル%に対する、式(I)の繰返し単位と式(II)の繰返し単位の合計の含有割合は、好ましくは50~100モル%、より好ましくは75~100モル%、更に好ましくは80~100モル%、より更に好ましくは85~100モル%である。
【0078】
前記液晶ポリエステル組成物において、液晶ポリエステル(A)100質量部に対する、熱可塑性ポリイミドの含有量は、1質量部以上80質量部以下であってよく、3質量部以上70質量部以下であってよく、5質量部以上65質量部以下であってよく、5質量部以上15質量部以下であってよい。
【0079】
(熱可塑性ポリイミドの製造方法)
前記熱可塑性ポリイミドは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させることにより製造することができる。該テトラカルボン酸成分は少なくとも1つの芳香環を含むテトラカルボン酸及び/又はその誘導体を含有し、該ジアミン成分は少なくとも1つの脂環式炭化水素構造を含むジアミン及び鎖状脂肪族ジアミンを含有することができる。
【0080】
熱可塑性ポリイミドを製造するための重合方法としては、熱可塑性ポリイミドを製造可能な公知の重合方法を適用でき、例えば溶液重合、溶融重合、固相重合、懸濁重合法等が挙げられる。
【0081】
<芳香族ポリスルホン>
本発明の一実施形態として、前記熱可塑性樹脂は、芳香族ポリスルホンであってよい。
【0082】
本発明の一実施形態の液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリエステル(A)と、芳香族ポリスルホンと、を含有し、前記液晶ポリエステル(A)が、芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位、又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有してよい。
【0083】
本明細書において、芳香族ポリスルホンとは、2価の芳香族基(芳香族化合物から、その芳香環に結合した水素原子を2個除いてなる残基)と、エーテル結合(-O-)と、スルホニル基(-SO-)とを含む繰返し単位を有する樹脂である。
【0084】
芳香族ポリスルホンは、主鎖末端に少なくとも1つのヒドロキシ基、アミノ基、又はハロゲン原子を有していてよく、主鎖末端に少なくとも1つのヒドロキシ基を有していてよい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、塩素原子が好ましい。
【0085】
芳香族ポリスルホンは、耐熱性や耐薬品性に優れる点から、下記式(S1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(S1)」ということがある。)を有するものであることが好ましい。繰返し単位(S1)の他に、さらに、下記式(S2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(S2)」ということがある。)や、下記式(S3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(S3)」ということがある。)等の他の繰返し単位を1種以上有していてもよい。
【0086】
(S1)-Ph-SO-Ph-O-
[式中、Ph及びPhは、それぞれ独立に、フェニレン基を表す。前記フェニレン基にある水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、スルホ基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、又はヒドロキシ基で置換されていてもよい。]
【0087】
(S2)-Ph-R-Ph-O-
[式中、Ph及びPhは、それぞれ独立に、フェニレン基を表す。前記フェニレン基にある水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、スルホ基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、又はヒドロキシ基で置換されていてもよい。Rは、アルキリデン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。]
【0088】
(S3)-(Ph-O-
[式中、Phは、フェニレン基を表す。前記フェニレン基にある水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、スルホ基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、又はヒドロキシ基で置換されていてもよい。nは、1~3の整数を表す。nが2以上である場合、複数存在するPhは、互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【0089】
Ph~Phのいずれかで表されるフェニレン基は、p-フェニレン基であってもよいし、m-フェニレン基であってもよいし、o-フェニレン基であってもよいが、p-フェニレン基であることが好ましい。
【0090】
前記フェニレン基にある水素原子を置換していてもよいアルキル基において、炭素数は、1~10であることが好ましい。具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基等が挙げられる。
【0091】
前記フェニレン基にある水素原子を置換していてもよいアリール基において、炭素数は、6~20であることが好ましい。具体例としては、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。
【0092】
前記フェニレン基にある水素原子を置換していてもよいハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0093】
前記フェニレン基にある水素原子がこれらの基で置換されている場合は、その数は、前記フェニレン基毎に、それぞれ独立に、好ましくは2個以下であり、より好ましくは1個である。
上記の中でも、前記フェニレン基にある水素原子は置換されていないことが好ましい。
【0094】
Rで表されるアルキリデン基において、炭素数は、1~5であることが好ましい。具体例としては、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、1-ブチリデン基等が挙げられる。
【0095】
芳香族ポリスルホンは、繰返し単位(S1)を、全繰返し単位の合計100%に対して、50%以上有することが好ましく、80%以上有することがより好ましく、繰返し単位として実質的に繰返し単位(S1)のみを有することがさらに好ましい。なお、芳香族ポリスルホンは、繰返し単位(S1)~(S3)を、それぞれ独立に、2種以上有してもよい。
【0096】
B型粘度計(例えば、東機産業株式会社製、TV-22)により、試料温度23℃、ローター回転数20rpmの条件で測定される、芳香族ポリスルホンを含む下記測定溶液の粘度は、100mPa・s以上5000mPa・s以下が好ましく、300mPa・s以上4000mPa・s以下がより好ましく、2500mPa・s以上3500mPa・s以下がさらに好ましい。
測定溶液:測定対象の芳香族ポリスルホン粉末25質量部をN-メチルピロリドン75質量部に加え、窒素雰囲気下、100℃で4時間撹拌して得られる溶液。
【0097】
上記測定溶液の粘度が、上記好ましい範囲内であると、芳香族ポリスルホンを含有する場合の液晶ポリエステル組成物の、金属層との密着強度の向上効果に一層優れる。
【0098】
本実施形態で、芳香族ポリスルホンは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0099】
前記液晶ポリエステル組成物における、液晶ポリエステル(A)100質量部に対する、芳香族ポリスルホンの含有量の数値範囲の一例としては、1質量部以上80質量部以下であってよく、3質量部以上70質量部以下であってよく、5質量部以上65質量部以下であってよく、5質量部以上60質量部以下であってよい。
【0100】
[芳香族ポリスルホンの製造方法]
芳香族ポリスルホンは、それを構成する繰返し単位に対応するジハロゲノスルホン化合物とジヒドロキシ化合物とを重縮合させることにより、製造することができる。
【0101】
例えば、繰返し単位(S1)を有する樹脂は、ジハロゲノスルホン化合物として下記式(S4)で表される化合物(以下、「化合物(S4)」ともいう)を用い、ジヒドロキシ化合物として下記式(S5)で表される化合物を用いることにより、製造することができる。
【0102】
例えば、繰返し単位(S1)と繰返し単位(S2)とを有する樹脂は、ジハロゲノスルホン化合物として化合物(S4)を用い、ジヒドロキシ化合物として下記式(S6)で表される化合物を用いることにより、製造することができる。
【0103】
例えば、繰返し単位(S1)と繰返し単位(S3)とを有する樹脂は、ジハロゲノスルホン化合物として化合物(S4)を用い、ジヒドロキシ化合物として下記式(S7)で表される化合物を用いることにより、製造することができる。
【0104】
(S4)X-Ph-SO-Ph-X
[式中、Xは及びXは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を表す。Ph及びPhは、前記と同義である。]
【0105】
(S5)HO-Ph-SO-Ph-OH
[式中、Ph及びPhは、前記と同義である。]
【0106】
(S6)HO-Ph-R-Ph-OH
[式中、Ph、Ph及びRは、前記と同義である。]
【0107】
(S7)HO-(Ph-OH
[式中、Ph及びnは、前記と同義である。]
【0108】
芳香族ポリスルホンの重縮合は、炭酸のアルカリ金属塩を用いて、溶媒中で行うことが好ましい。炭酸のアルカリ金属塩は、正塩である炭酸塩であってもよいし、酸性塩である重炭酸塩(炭酸水素塩)であってもよいし、両者の混合物であってもよい。炭酸塩としては、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムが好ましく用いられ、炭酸水素塩としては、重炭酸ナトリウムや重炭酸カリウムが好ましく用いられる。
【0109】
重縮合の溶媒としては、有機極性溶媒が好ましく用いられる。具体例としては、ジメチルスルホキシド、1-メチル-2-ピロリドン、スルホラン(1,1-ジオキソチラン)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、ジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0110】
<任意成分>
実施形態の液晶ポリエステル組成物が必要に応じて更に含有してもよい任意成分として、前記液晶ポリエステル(A)に該当しない液晶ポリエステル、充填材等の粒子、前記液晶ポリエステル(A)を可溶な溶媒、添加剤等を例示できる。
【0111】
添加剤としては、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、難燃剤、着色剤等が挙げられる。
【0112】
液晶ポリエステル(A)に該当しない液晶ポリエステルとして、後述の液晶ポリエステル(B)を例示する。また、前記粒子は、液晶ポリエステル(B)を含む液晶ポリエステル粒子であってよい。
【0113】
液晶ポリエステル(B)は、後述の溶媒に不溶であってよく、液晶ポリエステル組成物が溶媒を含む場合であっても、組成物中に粒子として存在してよい。
【0114】
(液晶ポリエステル(B))
液晶ポリエステル組成物は、更に、液晶ポリエステル(B)を含有することができる。
【0115】
液晶ポリエステル(B)は、前記液晶ポリエステル(A)に該当しない液晶ポリエステルである。前記液晶ポリエステル(B)は、芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位、及び芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有さない液晶ポリエステルであってよい。
液晶ポリエステル(B)は、下記式(B1)で表される繰返し単位を有し、芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位、及び芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有さない液晶ポリエステルであってよい。
【0116】
前記液晶ポリエステル(B)は、
下記式(B1)で表される繰返し単位を有する液晶ポリエステルであることが好ましい。
(B1)-O-Arb1-CO-
(Arb1は、フェニレン基、ナフチレン基またはビフェニリレン基を表す。
Arb1で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。)
【0117】
前記Arb1におけるフェニレン基、ナフチレン基、及びビフェニリレン基としては、上記液晶ポリエステル(A)において例示したものが挙げられる。
【0118】
Arb1におけるハロゲン原子、及びアルキル基またはアリール基としては、上記液晶ポリエステル(A)において例示したものが挙げられる。
【0119】
液晶ポリエステル(B)において、前記式(B1)で表される繰返し単位の含有割合が多いほど、液晶ポリエステル組成物に含有されて、温度降下による粘度上昇を抑制する作用に優れ、加工特性が向上する。
かかる観点から、前記液晶ポリエステル(B)を構成する全繰返し単位の合計数(100%)に対して、前記式(B1)で表される繰返し単位の数は、80%超であることが好ましく、85%以上100%以下であることが好ましく、90%以上100%以下であることが好ましく、95%以上100%以下であることがより好ましく、98%以上100%以下であることがさらに好ましく、前記液晶ポリエステル(B)は実質的に前記式(B1)で表される繰返し単位のみからなる、即ち、前記式(B1)で表される繰返し単位の数が100%であることが特に好ましい。
【0120】
液晶ポリエステル組成物に含有されて、温度降下による粘度上昇を抑制する作用に、より一層優れるとの観点から、上記で挙げた液晶ポリエステル(B)としては、
前記式(B1)で表される繰返し単位が、
下記式(B1-1)で表される繰返し単位を含むことが好ましい。
(B1-1)-O-Arb1-1-CO-
(Arb1-1は、ナフチレン基を表す。
Arb1-1で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。)
【0121】
前記式(B1)に該当する繰返し単位の合計数(100%)に対し、前記式(B1-1)で表される繰返し単位の数が50%超90%以下であることが好ましく、65~80%であることがより好ましい。
液晶ポリエステル(B)において、前記式(B1-1)で表される繰返し単位の含有割合が上記数値範囲内であると、液晶ポリエステル組成物に含有されて、温度降下による粘度上昇を抑制する作用により一層優れるとともに、優れた誘電正接を発揮できる。
【0122】
より具体的には、上記で挙げた液晶ポリエステル(B)としては、前記式(B1)で表される繰返し単位が、下記式(B1-1)で表される繰返し単位、及び下記式(B1-2)で表される繰返し単位を含むことが好ましく、下記式(B1-1)で表される繰返し単位、及び下記式(B1-2)で表される繰返し単位のみからなることがより好ましい。
(B1-1)-O-Arb1-1-CO-
(B1-2)-O-Arb1-2-CO-
(Arb1-1は、ナフチレン基を表す。
Arb1-2は、フェニレン基を表す。
Arb1-1又はArb1-2で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。)
【0123】
前記Arb1-1におけるナフチレン基としては、上記液晶ポリエステル(A)において例示したものが挙げられる。
前記Arb1-2におけるフェニレン基としては、上記液晶ポリエステル(A)において例示したものが挙げられる。
【0124】
Arb1-1及びArb1-2におけるハロゲン原子、アルキル基またはアリール基としては、上記液晶ポリエステル(A)において例示したものが挙げられる。
【0125】
さらに具体的には、上記で挙げた液晶ポリエステル(B)としては、前記式(B1)で表される繰返し単位のみからなり、前記式(B1)で表される繰返し単位が、下記式(B1-1)で表される繰返し単位、及び下記式(B1-2)で表される繰返し単位を含むことが好ましく、下記式(B1-1)で表される繰返し単位、及び下記式(B1-2)で表される繰返し単位のみからなることがより好ましい。
(B1-1)-O-Arb1-1-CO-
(B1-2)-O-Arb1-2-CO-
(Arb1-1は、2,6-ナフチレン基を表す。
Arb1-2は、1,4-フェニレン基を表す。
Arb1-1又はArb1-2で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。)
【0126】
上記式(B1)で表される繰返し単位は、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位である。芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位としては、上記式(A1)で表される繰返し単位として例示したものが挙げられる。
【0127】
前記式(B1)で表される繰返し単位が、下記式(B1-1)で表される繰返し単位、及び下記式(B1-2)で表される繰返し単位を含む場合、前記液晶ポリエステル(B)を構成する全繰返し単位の合計数(100%)に対して、一例として、
前記式(B1-1)で表される繰返し単位の数が50%超90%以下で、
前記式(B1-2)で表される繰返し単位の数は、10%以上50%未満であってよく、
前記式(B1-1)で表される繰返し単位の数が65%以上80%以下で、
前記式(B1-2)で表される繰返し単位の数は、20%以上35%以下であってよい。
【0128】
尚、液晶ポリエステル(B)は、前記式(B1)で表される繰返し単位を、それぞれ独立に、2種以上有してよい。また、液晶ポリエステルは、前記式(B1)で表される繰返し単位以外の繰返し単位を有してもよいが、その含有量は、液晶ポリエステル(B)を構成する全繰返し単位の合計数(100%)に対して、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、0%であってもよい。
【0129】
前記液晶ポリエステル組成物が、前記液晶ポリエステル(A)と、前記液晶ポリエステル(B)とを含有する場合、前記液晶ポリエステル組成物における、前記液晶ポリエステル(A)と、前記液晶ポリエステル(B)との含有量の比率は、誘電特性と上記の密着強度とのバランスに優れるとの観点から、質量比で、液晶ポリエステル(A)/液晶ポリエステル(B)=80/20~10/90であることが好ましく、70/30~20/80であることがより好ましく、50/50~30/70であることがさらに好ましい。
【0130】
また、実施形態の液晶ポリエステル組成物に含有される液晶ポリエステルの総質量(100質量%)に対する、液晶ポリエステル(A)及び液晶ポリエステル(B)の合計含有量率の割合は、50質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0131】
前記液晶ポリエステル組成物が前記液晶ポリエステル(A)と、前記液晶ポリエステル(B)とを含有する場合、前記液晶ポリエステル組成物における、液晶ポリエステル(A)及び液晶ポリエステル(B)の合計100質量部に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量は、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、2質量部以上がさらに好ましい。
上記下限値以上で熱可塑性樹脂を含有する液晶ポリエステル組成物は、金属層との密着強度の向上効果により一層優れる。
【0132】
前記液晶ポリエステル組成物において、液晶ポリエステル(A)及び液晶ポリエステル(B)の合計100質量部に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量は、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、25質量部以下がさらに好ましい。
上記上限値以下で熱可塑性樹脂を含有する液晶ポリエステル組成物は、誘電特性により一層優れる。
【0133】
前記液晶ポリエステル組成物における、液晶ポリエステル(A)及び液晶ポリエステル(B)の合計100質量部に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量の上記値の数値範囲の一例としては、0.5質量部以上50質量部以下であってよく、1質量部以上30質量部以下であってよく、2質量部以上25質量部以下であってよい。
【0134】
本発明の一実施形態の液晶ポリエステル組成物の一例として、液晶ポリエステル(B)を更に含み、前記液晶ポリエステル組成物における、前記液晶ポリエステル(A)と、前記液晶ポリエステル(B)との含有量の比率が、質量比で、液晶ポリエステル(A)/液晶ポリエステル(B)=80/20~10/90であり、液晶ポリエステル(A)及び液晶ポリエステル(B)の合計100質量部に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量が、0.5質量部以上50質量部以下である、前記<1>~<11>のいずれか一つに記載の液晶ポリエステル組成物を例示する。
【0135】
ここでの、液晶ポリエステル(A)及び液晶ポリエステル(B)の合計とは、液晶ポリエステル(A)及び液晶ポリエステル(B)を含む後述の液晶ポリエステル粒子の合計であることが好ましく、その含有量の値も、上記で例示した数値と同一の数値を例示できる。
【0136】
液晶ポリエステル(A)及び液晶ポリエステル(B)を含有する実施形態の液晶ポリエステル組成物の流動開始温度は、260℃以上が好ましく、260℃以上400℃以下がより好ましく、260℃以上380℃以下がさらに好ましい。
かかる液晶ポリエステル組成物の流動開始温度が高いほど、液晶ポリエステル組成物の耐熱性並びに強度が向上する傾向がある。一方で、液晶ポリエステル組成物の流動開始温度が400℃を超えると、液晶ポリエステル組成物の溶融温度や溶融粘度が高くなる傾向がある。そのため、液晶ポリエステル組成物の成形に必要な温度が高くなる傾向がある。
【0137】
また、前記液晶ポリエステル(A)の流動開始温度の値としては、実施形態の液晶ポリエステル組成物の流動開始温度として例示した各数値と同一の数値が挙げられる。
【0138】
また、前記液晶ポリエステル(B)の流動開始温度の値としては、実施形態の液晶ポリエステル組成物の流動開始温度として例示した各数値と同一の数値が挙げられる。
【0139】
本明細書において、液晶ポリエステル組成物の流動開始温度は、フロー温度又は流動温度とも呼ばれ、液晶ポリエステルの分子量の目安となる温度である(小出直之編、「液晶ポリマー-合成・成形・応用-」、株式会社シーエムシー、1987年6月5日、p.95参照)。
流動開始温度は、フローテスターを用いて、液晶ポリエステル組成物を9.8MPa(100kg/cm)の荷重下4℃/分の速度で昇温しながら溶融させ、内径1mmおよび長さ10mmのノズルから押し出すときに、液晶ポリエステル組成物が4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度である。
【0140】
(粒子)
実施形態の液晶ポリエステル組成物は、粒子を含有してもよい。粒子としては、充填材の他、液晶ポリエステル粒子を例示できる。
【0141】
液晶ポリエステル組成物が粒子を含有する場合、フィルムとして金属層と積層された場合の金属層との密着強度が低下することがある。しかし、本発明の一実施形態の液晶ポリエステル組成物は、熱可塑性ポリイミド及び芳香族ポリスルホンからなる群から選択される少なくとも一種の熱可塑性樹脂を含有することにより、金属層との密着強度に優れたものとできる。
【0142】
・液晶ポリエステル粒子
液晶ポリエステル粒子は、上記液晶ポリエステル(B)を含む液晶ポリエステル粒子であることが好ましい。
【0143】
液晶ポリエステル粒子のD50は、30μm以下が好ましく、20μm以下が好ましく、18μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましく、12μm以下であることが特に好ましい。また、液晶ポリエステルのD50が20μm以下であると、電子部品用フィルムとして好適な厚さ(例えば50μm以下)で、フィルム表面の平滑性が良好なフィルムを容易に製造可能である。
また、粒子の取り扱い易さの観点から、液晶ポリエステル粒子のD50の下限値は、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、3μm以上であることがさらに好ましく、5μm以上であることが特に好ましい。
上記の液晶ポリエステル粒子のD50の値の上限値と下限値とは、自由に組み合わせることができる。上記の液晶ポリエステル粒子のD50の値の数値範囲は0.1以上30μm以下であってよく、0.5μm以上30μm以下であってもよく、0.5μm以上20μm以下であってもよく、3μm以上18μm以下であってもよく、5μm以上15μm以下であってもよく、5μm以上12μm以下であってもよい。
【0144】
液晶ポリエステル粒子の粒子径D50は、以下の測定方法により求めた値である。
【0145】
〔液晶ポリエステル粒子の粒子径D50の測定〕
散乱式粒子径分布測定装置(例えば、株式会社堀場製作所製、LA-950V2)を用いて、液晶ポリエステル粒子の粒子径D50を測定する。純水の屈折率を1.333として、液晶ポリエステル粒子の体積基準の累積粒度分布を測定し、累積体積割合が50%となる粒子径(μm)を粒子径D50として算出する。
【0146】
本発明の一実施形態の液晶ポリエステル組成物として、液晶ポリエステル(A)と、熱可塑性ポリイミドと、液晶ポリエステル(B)を含む液晶ポリエステル粒子とを含有し、前記液晶ポリエステル(A)が、芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位、又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有し、前記液晶ポリエステル(B)が、芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位及び芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有さない、前記<1>~<11>のいずれか一つに記載の液晶ポリエステル組成物を例示する。
【0147】
本発明の一実施形態の液晶ポリエステル組成物として、液晶ポリエステル(A)と、芳香族ポリスルホンと、液晶ポリエステル(B)を含む液晶ポリエステル粒子とを含有し、前記液晶ポリエステル(A)が、芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位、又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有し、前記液晶ポリエステル(B)が、芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位及び芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有さない、前記<1>~<11>のいずれか一つに記載の液晶ポリエステル組成物を例示する。
【0148】
・充填材
充填材は、繊維状充填材であってもよいし、板状充填材であってもよいし、粒状充填材であってもよい。
充填材の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等の無機充填材;及び硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリル樹脂等の有機充填材が挙げられる。
【0149】
実施形態の液晶ポリエステル組成物が粒子を含む場合、前記粒子(好ましくは液晶ポリエステル粒子)の含有量は、液晶ポリエステル組成物の固形分の総含有量100質量%に対して、5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、50質量%以上が特に好ましい。
実施形態の液晶ポリエステル組成物における前記粒子(好ましくは液晶ポリエステル粒子)の含有量は、液晶ポリエステル組成物の固形分の総含有量100質量%に対して、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。
実施形態の液晶ポリエステル組成物における前記粒子(好ましくは液晶ポリエステル粒子)の含有量の上記数値の数値範囲の一例としては、5質量%以上80質量%以下であってよく、20質量%以上70質量%以下であってよく、30質量%以上60質量%以下であってよく、50質量%以上60質量%以下であってよい。
【0150】
上記下限値以上で、例えば液晶ポリエステル粒子を含有することで、粒子の特性が良好に発揮される。例えば、製造されるフィルムの誘電特性をより一層向上できる。また、上記上限値以下で液晶ポリエステル粒子を含有する液晶ポリエステル組成物を使用することで、製造されるフィルムの金属層との密着強度をより一層良好なものとできる。
【0151】
(溶媒)
実施形態の液晶ポリエステル組成物は、前記液晶ポリエステル(A)を可溶な溶媒を更に含有することができる。
【0152】
本発明の一実施形態として、液晶ポリエステル(A)と、熱可塑性ポリイミド及び芳香族ポリスルホンからなる群から選択される少なくとも一種の熱可塑性樹脂と、前記液晶ポリエステル(A)を可溶な溶媒と、を含有する、液晶ポリエステル組成物を提供できる。
当該<11>の液晶ポリエステル組成物は、前記<1>の液晶ポリエステル組成物に代えて、前記<2>~<10>の液晶ポリエステル組成物により引用されてよい。
【0153】
前記溶媒は、非プロトン性溶媒であってよい。非プロトン性溶媒は、腐食性が低く、扱い易いという利点を有する。
本実施形態において、非プロトン性溶媒とは、非プロトン性化合物を含む溶媒である。
本実施形態においては、該非プロトン性溶媒としては、例えば、1-クロロブタン、クロロベンゼン、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、1,1,2,2-テトラクロロエタンなどのハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどのエーテル系溶媒、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、γ-ブチロラクトンなどのラクトン系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒、トリエチルアミン、ピリジンなどのアミン系溶媒、アセトニトリル、サクシノニトリルなどのニトリル系溶媒、N,N’-ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N-メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ系溶媒、ジメチルスルホキシド、スルホランなどのスルフィド系溶媒、ヘキサメチルリン酸アミド、トリn-ブチルリン酸などのリン酸系溶媒などが挙げられ、それらの2種以上の混合物を用いてもよい。
【0154】
これらの中で、ハロゲン原子を有しない非プロトン性化合物が環境への影響面から好ましく使用され、双極子モーメントが3以上5以下の溶媒が溶解性の観点から好ましく使用される。具体的には、N,N’-ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N-メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、又はγ-ブチロラクトンなどのラクトン系溶媒がより好ましく使用され、N,N’-ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、又はN-メチルピロリドンがさらに好ましく使用される。
【0155】
実施形態の液晶ポリエステル組成物において、液晶ポリエステル組成物の総質量に対する、溶媒の含有量の割合は、液晶ポリエステル組成物の粘度を低下させて支持体への塗工を容易とする観点から、20質量%以上であってもよく、20質量%以上99質量%以下であってよく、50質量%以上95質量%以下であってもよい。
【0156】
実施形態の液晶ポリエステル組成物が前記溶媒を更に含む場合、液晶ポリエステル組成物は液状組成物であってよい。
【0157】
本明細書において「液状組成物」とは、常温常圧(25℃、1atm)にて液体である溶液又は分散液を意味する。分散液は、溶液中に溶解されていない固形分を分散させたものを意味する。分散される固形分としては、例えば、上記の液晶ポリエステル粒子や、熱可塑性ポリイミド、充填材等が挙げられる。
【0158】
本発明の一実施形態の液晶ポリエステル組成物として、液晶ポリエステル(A)と、熱可塑性ポリイミドと、液晶ポリエステル(B)を含む液晶ポリエステル粒子と、前記液晶ポリエステル(A)を可溶な溶媒と、を含有し、前記液晶ポリエステル(A)が、芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位、又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有し、前記液晶ポリエステル(B)が、芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位及び芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有さない、前記<1>~<11>のいずれか一つに記載の液晶ポリエステル組成物を例示する。
【0159】
本発明の一実施形態の液晶ポリエステル組成物として、液晶ポリエステル(A)と、芳香族ポリスルホンと、液晶ポリエステル(B)を含む液晶ポリエステル粒子と、前記液晶ポリエステル(A)を可溶な溶媒と、を含有し、前記液晶ポリエステル(A)が、芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位、又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有し、前記液晶ポリエステル(B)が、芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位及び芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有さない、前記<1>~<11>のいずれか一つに記載の液晶ポリエステル組成物を例示する。
【0160】
実施形態の液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリエステルと、熱可塑性ポリイミド及び芳香族ポリスルホンからなる群から選択される少なくとも一種の熱可塑性樹脂とを含有することで、該熱可塑性樹脂を含有しない場合に比べ、フィルムとして金属層と積層された場合の、金属層との密着強度が向上する。
【0161】
実施形態の液晶ポリエステル組成物が、液晶ポリエステル(B)を更に含有することで、液晶ポリエステル(B)の有する特性を付与可能である。特性としては、液晶ポリエステル(B)の構成にもよるが、例えば、誘電特性に優れること、加工特性が良好であること等が挙げられる。
【0162】
また、液晶ポリエステル(B)を含む液晶ポリエステル粒子の形態で含有されることで、液晶ポリエステル(B)を不溶な溶媒を含有する場合でも、組成物中の液晶ポリエステル(B)の分散性を向上させ、高品質なフィルムが得られる。
【0163】
≪フィルム≫
実施形態のフィルムは、液晶ポリエステル(A)と、熱可塑性ポリイミド及び芳香族ポリスルホンからなる群から選択される少なくとも一種の熱可塑性樹脂と、を含有し、前記液晶ポリエステル(A)が、芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位、又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有する。
【0164】
図1は、実施形態のフィルム10の構成を示す断面図である。
【0165】
液晶ポリエステル(A)としては、上記の≪液晶ポリエステル組成物≫において説明したものが挙げられ、ここでの詳細な説明を省略する。なお、フィルムに成形された状態での液晶ポリエステル(A)は、フィルム化の過程を経た物性の変化などにより、溶媒(例えば非プロトン性溶媒)に可溶でなくともよい。上記の物性の変化とは、例えば重合度の上昇である。
【0166】
熱可塑性ポリイミド及び芳香族ポリスルホンからなる群から選択される少なくとも一種の熱可塑性樹脂としては、上記の≪液晶ポリエステル組成物≫において説明したものが挙げられ、ここでの詳細な説明を省略する。
【0167】
前記<12>に記載のフィルムは、以下の側面を有してよい。
【0168】
<15> 実施形態のフィルムとして、前記液晶ポリエステル(A)が、芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位、又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有し、前記液晶ポリエステル(A)が、下記式(A1)で表される繰返し単位と、下記式(A2)で表される繰返し単位と、下記式(A3)で表される繰返し単位とを有する、前記<12>に記載のフィルム。
(A1)-O-Ar-CO-
(A2)-CO-Ar-CO-
(A3)-X-Ar-Y-
(式中、
Arは、1,4-フェニレン基、2,6-ナフチレン基、又は4,4’-ビフェニレン基を表し、Arは、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、又は2,6-ナフチレン基を表し、Arは、1,4-フェニレン基又は1,3-フェニレン基を表し、Xは-NH-を表し、Yは-O-又は-NH-を表す。
Ar、Ar又はArで表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、又はアリール基で置換されていてもよい。)
【0169】
<16> 更に、液晶ポリエステル(B)を含む液晶ポリエステル粒子を含有し、
前記液晶ポリエステル(B)が、芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位及び芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有さない、前記<12>又は<15>に記載のフィルム。
【0170】
<17> 前記液晶ポリエステル粒子の含有量は、前記液晶ポリエステル組成物に含有される固形分の総含有量100質量%に対して、5質量%以上80質量%以下である、前記<16>に記載のフィルム。
【0171】
<18> 液晶ポリエステル(A)100質量部に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量が1質量部以上である、前記<12>、<15>~<17>のいずれか一つに記載のフィルム。
【0172】
<19> 液晶ポリエステル(A)の含有量が、前記フィルムの総質量100質量%に対して、10質量%以上90質量%以下である、前記<12>、<15>~<18>のいずれか一つに記載のフィルム。
【0173】
<20> 前記熱可塑性樹脂が熱可塑性ポリイミドである、前記<12>、<15>~<19>のいずれか一つに記載のフィルム。
【0174】
<21> 前記熱可塑性ポリイミドが、前記式(I)で表される繰返し単位及び下記式(II)で表される繰返し単位を有する、前記<20>に記載のフィルム。
【0175】
<22> 前記熱可塑性ポリイミドの、前記式(I)の繰返し単位と前記式(II)の繰返し単位との合計100モル%に対する、前記式(I)の繰返し単位の含有割合が20モル%以上70モル%以下である、前記<21>に記載のフィルム。
【0176】
実施形態のフィルムは、上記の実施形態の液晶ポリエステル組成物と同様に、液晶ポリエステル(A)と、熱可塑性ポリイミド及び芳香族ポリスルホンからなる群から選択される少なくとも一種の熱可塑性樹脂との他に、必要に応じてその他の任意成分を含んでもよく、ここでの詳細な説明を省略する。
【0177】
実施形態のフィルムは、液晶ポリエステル(A)と、熱可塑性ポリイミド及び芳香族ポリスルホンからなる群から選択される少なくとも一種の熱可塑性樹脂と、粒子と、を含有することが好ましい。
実施形態のフィルムにおいて、粒子は、液晶ポリエステル粒子であることが好ましい。なお、フィルムに成形された状態での液晶ポリエステル粒子は、フィルム化の過程を経た物性の変化などにより、粒子形状が判別されなくともよい。
【0178】
実施形態のフィルムにおける各種成分の含有量は、上記に例示した、実施形態の液晶ポリエステル組成物の固形分としての各種成分の含有量と同一とすることができる。
【0179】
実施形態のフィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、電子部品用フィルムとして好適な厚さとしては、5~50μmであることが好ましく、7~40μmであることがより好ましく、10~33μmであることがさらに好ましく、15~30μmであることが特に好ましい。
【0180】
実施形態のフィルムの製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、実施形態の液晶ポリエステル組成物をフィルム状に成形して得ることができる。優れた等方性を有するフィルムを製造可能との観点から、実施形態のフィルムは、後述の≪フィルムの製造方法≫により製造されることが好ましい。
【0181】
≪フィルムの製造方法≫
実施形態のフィルムの製造方法は、支持体上に、実施形態の液晶ポリエステル組成物を塗布し、フィルムを得ることを含む。
【0182】
液晶ポリエステル組成物が溶媒を含む場合、実施形態のフィルムの製造方法は、支持体上に、実施形態の液晶ポリエステル組成物を塗布し、前記液晶ポリエステル組成物から溶媒を除去して、フィルムを得ることを含んでよい。
当該製造方法は、溶液キャスト法に該当するものであってよい。
【0183】
実施形態の液晶ポリエステル組成物については、上記の≪液晶ポリエステル組成物≫で例示したものが挙げられる。
【0184】
フィルムの製造方法は、以下の工程を含んでいてもよい。
支持体上に、実施形態の液晶ポリエステル組成物を塗布する工程(塗布工程)。
塗布された液晶ポリエステル組成物から溶媒を除去する工程(乾燥工程)。
【0185】
実施形態のフィルムの製造方法は、上記塗布工程の後、前記液晶ポリエステル組成物、又は溶媒が除去されたフィルムの前駆体を、熱処理する工程(熱処理工程)を含んでいてもよい。
【0186】
実施形態のフィルムの製造方法は、支持体上に、実施形態の液晶ポリエステル組成物を塗布し、前記液晶ポリエステル組成物から溶媒を除去し、熱処理して、フィルムを得ることを含むものであってもよい。熱処理によれば、液晶ポリエステル組成物中の重合体の重合反応を促進させ、更には、溶媒の揮発を促進させることができる。
【0187】
熱処理は、上記の乾燥工程を兼ねることができる。
実施形態のフィルムの製造方法は、支持体上に、実施形態の液晶ポリエステル組成物を塗布し、熱処理して、フィルムを得ることを含むものであってもよい。
【0188】
また、フィルムの製造方法において、更に、前記積層体から支持体を分離する工程(分離工程)を含んでいてもよい。なお、フィルムは、積層体として支持体上に形成されたままでも電子部品用フィルムとして好適に使用可能であるので、分離工程は、フィルムの製造工程において必須の工程ではない。
【0189】
以下、図面を参照して、液晶ポリエステル組成物が溶媒を含む場合の、実施形態のフィルムの製造方法の一例を説明する。
【0190】
図3A~Dは、実施形態のフィルムの製造過程の一例を示す模式図である。
まず、液晶ポリエステル組成物30を支持体12上に塗布する(図3A 塗布工程)。
【0191】
支持体12としては、例えば、ガラス板、樹脂フィルム又は金属箔が挙げられる。中でも、支持体12は、樹脂フィルム又は金属箔が好ましく、特に、耐熱性に優れ、液晶ポリエステル組成物を塗布し易く、また、フィルムから除去し易いことから、銅箔が好ましい。
樹脂フィルムの厚さは、通常25μm以上75μm以下であり、好ましくは50μm以上75μm以下である。
金属箔の厚さは、通常3μm以上75μm以下であり、好ましくは5μm以上30μm以下であり、より好ましくは10μm以上25μm以下ある。
【0192】
次に、支持体12上に塗布された液晶ポリエステル組成物30から溶媒を除去する(図3B 乾燥工程)。溶媒が除去された液晶ポリエステル組成物は、熱処理の対象であるフィルム前駆体40となる。なお、溶媒は液晶ポリエステル組成物から完全に除去される必要はなく、液晶ポリエステル組成物に含まれる溶媒の一部が除去されてもよく、溶媒の全部が除去されていてもよい。
【0193】
溶媒の除去は、溶媒を蒸発させることにより行うことが好ましい。溶媒の除去温度は、液晶ポリエステルの融点未満の温度が好ましく、例えば40℃以上200℃以下である。
【0194】
こうして得られる支持体12とフィルム前駆体40とを有する積層体前駆体22を、熱処理して、支持体12とフィルム10(フィルム前駆体40が熱処理されてなるフィルム)とを有する積層体20を得る(図3C 熱処理工程)。このとき、支持体上に形成された、フィルム10が得られる。
熱処理条件は、例えば、媒体の沸点の-50℃から熱処理温度に達するまで昇温した後、液晶ポリエステルの融点以上の温度で熱処理することが挙げられる。
【0195】
熱処理は、溶媒の除去同様、連続式で行ってもよいし、枚葉式で行ってもよいが、生産性や操作性の点から、連続式で行うことが好ましく、溶媒の除去に続けて連続式で行うことがより好ましい。
【0196】
次いで、支持体12とフィルム10とを有する積層体20から、フィルム10を分離することにより、フィルム10を単層フィルムとして得ることができる(図3D 分離工程)。支持体として金属箔を用いた場合、積層体20からフィルムを分離することなく、積層体20をプリント配線板用の金属張積層板として用いてもよい。
【0197】
実施形態のフィルムの製造方法によれば、金属層との密着強度に優れ、等方性に優れたフィルムを製造可能である。
【0198】
≪積層体≫
実施形態の積層体は、金属層と、前記金属層上に積層された実施形態のフィルムと、を備える。
図2は、本発明の一実施形態の積層体21の構成を示す断面図である。積層体21は、金属層13と、金属層13上に積層されたフィルム10と、を備える。
積層体が備えるフィルム10については、上記に例示したものが挙げられ、説明を省略する。
積層体が備える金属層については、上記の≪フィルムの製造方法≫及び後述の≪積層体の製造方法≫において支持体として例示するものが挙げられ、金属箔が好ましい。金属層を構成する金属としては導電性やコストの観点で銅が好ましく、金属箔としては銅箔が好ましい。
【0199】
実施形態の積層体の厚さは、特に限定されるものではないが、5~130μmであることが好ましく、10~70μmであることがより好ましく、15~60μmであることがさらに好ましい。
【0200】
実施形態の積層体の製造方法は特に限定されるものではないが、実施形態の積層体は、後述の≪積層体の製造方法≫により製造可能である。
【0201】
本発明の一実施形態として、金属層と、前記金属層上に実施形態の液晶ポリエステル組成物を塗布して形成されたフィルムと、を備える積層体を提供できる。
【0202】
実施形態の積層体は、プリント配線板などの電子部品用フィルム用途に好適に使用することができる。
【0203】
≪積層体の製造方法≫
実施形態の積層体の製造方法は、支持体上に、実施形態の液晶ポリエステル組成物を塗布し、前記支持体上にフィルムを形成することにより、前記支持体と前記フィルムとを備える積層体を得ることを含む。支持体は金属箔であってよい。積層された金属箔は前記金属層となる。
【0204】
液晶ポリエステル組成物が溶媒を含む場合、実施形態の積層体の製造方法は支持体上に、実施形態の液晶ポリエステル組成物を塗布し、前記液晶ポリエステル組成物から溶媒を除去して、支持体上にフィルムを形成することにより、前記支持体と前記フィルムとを備える積層体を得ることを含んでよい。
【0205】
実施形態の積層体の製造方法は以下の工程を含んでいてもよい。
支持体上に、実施形態の液晶ポリエステル組成物を塗布する工程(塗布工程)。
塗布された液晶ポリエステル組成物から溶媒を除去する工程(乾燥工程)。
【0206】
上述のフィルムの製造方法と同じく、実施形態の積層体の製造方法は、上記塗布工程の後、前記液晶ポリエステル組成物、又は溶媒が除去されたフィルム前駆体を、熱処理する工程(熱処理工程)を含んでいてもよい。
【0207】
実施形態の積層体の製造方法は、支持体上に、実施形態の液晶ポリエステル組成物を塗布し、前記液晶ポリエステル組成物から溶媒を除去し、熱処理して、支持体上にフィルムを形成することにより、前記支持体と前記フィルムとを備える積層体を得ることを含むものであってもよい。熱処理によれば、液晶ポリエステル組成物中の重合体の重合反応を促進させ、更には、溶媒の揮発を促進させることができる。
【0208】
熱処理は、上記の乾燥工程を兼ねることができる。
実施形態の積層体の製造方法は、支持体上に、実施形態の液晶ポリエステル組成物を塗布し、熱処理して、支持体上にフィルムを形成することにより、前記支持体と前記フィルムとを備える積層体を得ることを含むものであってもよい。
【0209】
図3A~Cは、実施形態のフィルム及び積層体の製造過程の一例を示す模式図である。図3A~Cで例示する積層体の製造方法については、上述の分離工程(図3D)を行わないこと以外は、上述のフィルムの製造方法において説明した製造方法と同じである。
【0210】
実施形態の積層体の製造方法によれば、実施形態のフィルムを有する積層体を製造可能である。
【実施例0211】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0212】
〔液晶ポリエステルの流動開始温度の測定〕
フローテスター(株式会社島津製作所製、CFT-500型)を用いて、液晶ポリエステル約2gを、内径1mm及び長さ10mmのノズルを有するダイを取り付けたシリンダーに充填し、9.8MPa(100kg/cm)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、ノズルから押し出し、4800Pa・s(48000P)の粘度を示す温度(FT)を測定した。
【0213】
〔液晶ポリエステル粒子の粒子径D50の測定〕
散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、LA-950V2)を用いて、液晶ポリエステル粒子の粒子径D50を測定した。純水の屈折率を1.333として、液晶ポリエステル粒子の体積基準の累積粒度分布を測定し、累積体積割合が50%となる粒子径(μm)を粒子径D50として算出した。
【0214】
〔ポリエーテルスルホン溶液及び液晶ポリエステル溶液の粘度測定〕
B型粘度計(東機産業株式会社製、TV-22)を用いて、粘度測定を行った。
測定条件:試料温度23℃、ローター回転数20rpm
【0215】
〔銅箔付きフィルムのピール強度測定〕
銅箔付きフィルムを幅10mmの短冊状に切り出して3個の試験片を作製し、それぞれの試験片について、フィルムを固定した状態で、オートグラフ(株式会社島津製作所製、AG-1KNIS)を用い、フィルムに対して90°の方向に銅箔を50mm/分の剥離速度で引き剥がすことにより、銅箔付きフィルムのピール強度(90°ピール強度)を測定した後、3個の試験片の平均値を算出した。
【0216】
〔液晶ポリエステル(a)粉末の製造例〕
撹拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸940.9g(5.0モル)、4-ヒドロキシアセトアニリド377.9g(2.5モル)、イソフタル酸415.3g(2.5モル)及び無水酢酸867.8g(8.4モル)を入れた。反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下、撹拌しながら、室温から140℃まで60分かけて昇温し、140℃で3時間還流させた。次いで、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から300℃まで5時間かけて昇温し、300℃で30分保持した後、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粉砕して、粉末状の液晶ポリエステル(a1)を得た。この液晶ポリエステル(a1)の流動開始温度は、193.3℃であった。
【0217】
液晶ポリエステル(a1)を、窒素雰囲気下、室温から160℃まで2時間20分かけて昇温し、次いで160℃から180℃まで3時間20分かけて昇温し、180℃で5時間保持することにより、固相重合させた後、冷却し、次いで、粉砕機で粉砕して、粉末状の液晶ポリエステル(a2)を得た。この液晶ポリエステル(a2)の流動開始温度は、220℃であった。
【0218】
液晶ポリエステル(a2)を窒素雰囲気下、室温から180℃まで1時間25分かけて昇温し、次いで180℃から255℃まで6時間40分かけて昇温し、255℃で5時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステル(a)を得た。液晶ポリエステル(a)粉末の流動開始温度は、302℃であった。
【0219】
〔液晶ポリエステル溶液(a)の調製〕
液晶ポリエステル(a)粉末8質量部を、N-メチルピロリドン(沸点(1気圧)204℃)92質量部に加え、窒素雰囲気下、140℃で4時間撹拌して、液晶ポリエステル溶液(a)を調製した。この液晶ポリエステル溶液(a)の23℃での粘度は、955mPa・sであった。
【0220】
〔液晶ポリエステル(b2)粉末の製造例〕
撹拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸 1511.1g(8.03モル)、p-ヒドロキシ安息香酸 410.2g(2.97モル)、無水酢酸 1291.4g(12.65モル)および1-メチルイミダゾール 0.057gを添加し、室温で5分間撹拌した後、撹拌しながら昇温した。内温が140℃となったところで、140℃を保持したまま1時間撹拌した。
次に、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら、140℃から275℃まで3時間かけて昇温した。275℃で3時間30分保温して内容物を取り出した。取り出した内容物を室温に冷却し、粉砕機で粉砕して、粉末状の液晶ポリエステル(b1)を得た。この液晶ポリエステル(b1)の流動開始温度は、211.8℃であった。
【0221】
液晶ポリエステル(b1)を、窒素雰囲気下、室温から180℃まで1時間かけて昇温した後、180℃から190℃まで10分かけて昇温し、190℃から240℃まで8時間20分かけて昇温し、次いで240℃で5時間保温し、固相重合を行った。得られた固相重合物を室温まで冷却して、粉末状の液晶ポリエステル(b2)を得た。この液晶ポリエステル(b2)粉末の流動開始温度は266.6℃であった。
【0222】
〔液晶ポリエステル(b3)粉末の製造〕
ジェットミル(栗本鐡工の「KJ-200」)を用いて、液晶ポリエステル(b2)を粉砕し、液晶ポリエステル(b3)粉末を得た。この液晶ポリエステル(b3)粉末の粒子径D50は10μmであった。
【0223】
〔ポリエーテルスルホン(c1)の製造〕
撹拌機、窒素導入管、温度計、および先端に受器を付したコンデンサーを備えた重合槽に、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン(300.3g)、ビス(4-クロロフェニル)スルホン(346.3g)および重合溶媒としてジフェニルスルホン(570.1g)を仕込み、系内に窒素ガスを流通させながら180℃まで昇温して、溶液を得た。
得られた溶液に、炭酸カリウム(170.8g)を添加した後、290℃まで徐々に昇温し、290℃でさらに1時間30分反応させた。得られた反応液を、室温まで冷却して固化させ、細かく粉砕した後、温水による洗浄並びにアセトンおよびメタノールの混合溶媒による洗浄を数回行い、次いで、150℃で加熱乾燥させて、ポリエーテルスルホン(c1)粉末を得た。
【0224】
〔ポリエーテルスルホン溶液(c)の調製〕
ポリエーテルスルホン(c1)粉末25質量部を、N-メチルピロリドン(沸点(1気圧)204℃)75質量部に加え、窒素雰囲気下、100℃で4時間撹拌して、ポリエーテルスルホン溶液(c)を調製した。このポリエーテルスルホン溶液(c)の23℃での粘度は、3194mPa・sであった。
【0225】
〔ポリエーテルスルホン(d1)の製造〕
撹拌機、窒素導入管、温度計、および先端に受器を付したコンデンサーを備えた重合槽に、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン(300.3g)、ビス(4-クロロフェニル)スルホン(330.8g)および重合溶媒としてジフェニルスルホン(560.3g)を仕込み、系内に窒素ガスを流通させながら180℃まで昇温して、溶液を得た。
得られた溶液に、炭酸カリウム(159.7g)を添加した後、290℃まで徐々に昇温し、290℃でさらに3時間反応させた。得られた反応液を、室温まで冷却して固化させ、細かく粉砕した後、温水による洗浄並びにアセトンおよびメタノールの混合溶媒による洗浄を数回行い、次いで、150℃で加熱乾燥させて、芳香族ポリスルホン(d1)粉末を得た。
【0226】
〔ポリエーテルスルホン溶液(d)の調製〕
ポリエーテルスルホン(d1)粉末25質量部を、N-メチルピロリドン(沸点(1気圧)204℃)75質量部に加え、窒素雰囲気下、100℃で4時間撹拌して、ポリエーテルスルホン溶液(d)を調製した。このポリエーテルスルホン溶液(d)の23℃での粘度は、380mPa・sであった。
【0227】
〔熱可塑性ポリイミド(e)の製造〕
撹拌装置、ディーンスターク装置、温度計を有する反応器中で、2-(2-メトキシエトキシ)エタノール600gおよびピロメリット酸二無水物218.58g(1.00モル)を混合し、窒素フロー下で、撹拌速度150rpmで撹拌した。別途、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン49.42g(0.347モル)、1,8-オクタメチレンジアミン93.16g(0.645モル)および2-(2-メトキシエトキシ)エタノール250gを混合し、溶液を得た。前記反応器の撹拌速度を250rpmとして、窒素フロー下で、前記溶液を反応器中へ徐々に滴下した。溶液全てを滴下した後、別途用意した2-(2-メトキシエトキシ)エタノール130gおよびn-オクチルアミン1.934g(0.0149モル)の混合液を加え、前記反応器中でさらに撹拌した。次に、前記反応器の撹拌速度を200rpmとして、反応器の内温を190℃まで昇温し、30分間保持した。反応器中の内容物の温度が室温になるまで放冷した後、内容物の濾過を行い、樹脂を得た。2-(2-メトキシエトキシ)エタノール300gおよびとメタノール300gにより当該樹脂の洗浄および濾過を行った後、180℃の乾燥機中で10時間樹脂を乾燥させた。得られた樹脂を細かく粉砕し、熱可塑性ポリイミド(e)粉末とした。
【0228】
〔分散液の調製〕
(実施例1~12、比較例1)
表1に示す各成分の配合量(質量部)となるよう、上記で得られた液晶ポリエステル溶液(a)に、液晶ポリエステル(b3)粉末と、ポリエーテルスルホン溶液(c)、ポリエーテルスルホン溶液(d)、熱可塑性ポリイミド(e)のいずれかとを添加し、撹拌脱泡装置(株式会社キーエンス製、HM-500)を用いて分散液を調製した。なお、液晶ポリエステル(b3)粉末、及び熱可塑性ポリイミド(e)粉末はN-メチルピロリドンに不溶であった。
【0229】
〔フィルム・積層体の製造〕
実施例1~12、比較例1の分散液を、銅箔(JX金属株式会社製 JXEFL-V2 厚さ12μm)の粗化面に流延膜の厚さが300μmになるように、マイクロメーター付フィルムアプリケーター(テスター産業株式会社製、SA204)と自動塗工装置(テスター産業株式会社製、I型)とを用いて流延した。その後、40℃、常圧(1気圧)にて、4時間乾燥することにより、流延膜から溶媒を部分的に除去した。
【0230】
実施例1~12、比較例1で作製した乾燥後の銅箔付きフィルムをさらに窒素雰囲気下熱風オーブン中で室温から310℃まで4時間で昇温し、その温度で2時間保持する熱処理を行った。その結果、熱処理された銅箔付きフィルム(積層体の総厚42μm)が得られた。この銅箔付きフィルムについて、ピール強度の測定を行い、表1に示した。
【0231】
【表1】
【0232】
液晶ポリエステル(a)と液晶ポリエステル(b3)とを含有する比較例1の組成物から得られた銅箔付きフィルムのピール強度は、4.0N/cmであった。対して、比較例1の組成物に、ポリエーテルスルホン(c1)、ポリエーテルスルホン(d1)、又は熱可塑性樹脂ポリイミド(e)を更に含有する実施例1~12の組成物から得られた銅箔付きフィルムは、いずれも、ピール強度として測定された銅箔(金属層)との密着強度が向上されていた。
【0233】
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換などの変更が可能である。また、本発明は各実施形態に限定されることはなく、請求項(クレーム)にのみ限定される。
【符号の説明】
【0234】
10…フィルム、12…支持体、13…金属層、20,21…積層体、22…積層体前駆体、30…液晶ポリエステル組成物、40…フィルム前駆体
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D