(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111635
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 49/14 20060101AFI20240809BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20240809BHJP
B24B 49/04 20060101ALI20240809BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20240809BHJP
B24B 55/02 20060101ALI20240809BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20240809BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
B24B49/14
B24B41/06 L
B24B49/04 Z
B24B7/04 A
B24B55/02 B
B23Q17/00 A
H01L21/304 622R
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016255
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】現王園 二郎
(72)【発明者】
【氏名】須藤 雄二郎
(72)【発明者】
【氏名】村澤 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】渡部 晃司
【テーマコード(参考)】
3C029
3C034
3C043
3C047
5F057
【Fターム(参考)】
3C029EE01
3C029EE20
3C034AA08
3C034BB73
3C034BB92
3C034CA19
3C034CB01
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3C034CB11
3C034CB13
3C034CB14
3C034CB18
3C034DD05
3C034DD10
3C034DD18
3C043BA03
3C043BA07
3C043BA09
3C043BA12
3C043BA14
3C043BA16
3C043CC04
3C043CC13
3C043DD02
3C043DD03
3C043DD04
3C043DD05
3C043DD06
3C043EE03
3C047FF04
3C047GG01
5F057AA53
5F057BB03
5F057BB07
5F057BB09
5F057BB12
5F057BB40
5F057CA14
5F057FA46
5F057GA03
5F057GA07
5F057GB07
5F057GB40
(57)【要約】
【課題】研削砥石に起因する研削不良を未然に回避可能な研削装置を提供する。
【解決手段】研削装置1は、回転中心を頂点とするゆるやかな円錐状の保持面によってウェーハWを保持し回転するチャックテーブル10と、環状の研削砥石66を回転させ保持面に保持され回転するウェーハWの半径部分に研削砥石66の下面を接触させ研削する研削機構60と、研削機構60を保持面に垂直方向に移動させる加工送り機構70を備える。研削装置1は、さらに、研削加工中の研削砥石66の外側でウェーハWの上方から、ウェーハWの中心部分Cの温度を非接触で測定する非接触温度計80と、非接触温度計80で測定した値が予め設定した上限温度を上方向に超えた場合に、研削加工に異常が発生していると判断する上判断部5と、上判断部5が判断したら作業者に通知する通知部7を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転中心を頂点とするゆるやかな円錐状の保持面によってウェーハを保持し回転するチャックテーブルと、環状の研削砥石を回転させ該保持面に保持され回転する該ウェーハの半径部分に該研削砥石の下面を接触させ研削する研削機構と、該研削機構を該保持面に垂直方向に移動させる移動機構と、を備える研削装置であって、
研削加工中の該研削砥石の外側で該ウェーハの上方から、該ウェーハの中心部分の温度を非接触で測定する非接触温度計と、
該非接触温度計で測定した値が予め設定した上限温度を上方向に超えた場合に、研削加工に異常が発生していると判断する上判断部と、
該上判断部が判断したら作業者に通知する通知部と、を備える、研削装置。
【請求項2】
回転中心を頂点とするゆるやかな円錐状の保持面によってウェーハを保持し回転するチャックテーブルと、環状の研削砥石を回転させ該保持面に保持され回転する該ウェーハの半径部分に該研削砥石の下面を接触させ研削する研削機構と、該研削機構を該保持面に垂直方向に移動させる移動機構と、を備える研削装置であって、
研削加工中の該研削砥石の外側で該ウェーハの上方から、該ウェーハの中心部分の温度を非接触で測定する非接触温度計と、
該非接触温度計で測定した値が予め設定した下限温度を下方向に超えた場合に、研削加工に異常が発生していると判断する下判断部と、
該下判断部が判断したら作業者に通知する通知部と、を備える、研削装置。
【請求項3】
回転中心を頂点とするゆるやかな円錐状の保持面によってウェーハを保持し回転するチャックテーブルと、環状の研削砥石を回転させ該保持面に保持され回転する該ウェーハの半径部分に該研削砥石の下面を接触させ研削する研削機構と、該研削機構を該保持面に垂直方向に移動させる移動機構と、を備える研削装置であって、
研削加工中の該研削砥石の外側で該ウェーハの上方から、該ウェーハの中心部分の温度を非接触で測定する非接触温度計と、
該非接触温度計で測定した値が予め設定した上限温度を上方向に超えた場合に、研削加工に異常が発生していると判断する上判断部と、
該非接触温度計で測定した値が予め設定した下限温度を下方向に超えた場合に、研削加工に異常が発生していると判断する下判断部と、
制御部と、を備え、
該制御部は、
該非接触温度計で測定した研削加工中のウェーハ上面の温度が、該上限温度と該下限温度との間の制御範囲に納まるように、
該チャックテーブルを回転させるテーブル回転機構による回転速度を可変する制御、該研削砥石を回転させる砥石回転機構の回転速度を可変する制御、該移動機構による下降速度を可変する制御、または、該研削砥石に研削水を噴射する研削水流量を可変する制御の少なくとも一つを制御する、研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハを研削砥石で研削する研削装置では、ウェーハと研削砥石の間の温度が過度に上昇するとウェーハの表面が焼けてしまう面焼けと呼ばれる現象が生じることが知られている。このような技術的な課題に対して、ウェーハの上面の温度または研削砥石の下面の温度を測定することで、ウェーハの面焼けの兆候を検知して面焼けを未然に防止する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ウェーハがSiC、サファイアなどの硬い材質の場合には、研削砥石の研削面の目つぶれが発生した後に面焼けが発生する。そのため、面焼けを未然に防止することに主眼をおいて面焼けの兆候を検知した際には、ウェーハに面焼けは生じていなくても、すでに研削砥石に目つぶれが生じているといったことが起こりうる。その場合、研削砥石のドレッシングが必要であり、ドレッシングを行うことなく研削が継続されると、ウェーハには十分な研削が行われず研削不良が生じてしまう。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、研削砥石に起因する研削不良を未然に回避可能な研削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の研削装置は、回転中心を頂点とするゆるやかな円錐状の保持面によってウェーハを保持し回転するチャックテーブルと、環状の研削砥石を回転させ該保持面に保持され回転する該ウェーハの半径部分に該研削砥石の下面を接触させ研削する研削機構と、該研削機構を該保持面に垂直方向に移動させる移動機構と、を備える研削装置であって、研削加工中の該研削砥石の外側で該ウェーハの上方から、該ウェーハの中心部分の温度を非接触で測定する非接触温度計と、該非接触温度計で測定した値が予め設定した上限温度を上方向に超えた場合に、研削加工に異常が発生していると判断する上判断部と、該上判断部が判断したら作業者に通知する通知部と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様の研削装置は、回転中心を頂点とするゆるやかな円錐状の保持面によってウェーハを保持し回転するチャックテーブルと、環状の研削砥石を回転させ該保持面に保持され回転する該ウェーハの半径部分に該研削砥石の下面を接触させ研削する研削機構と、該研削機構を該保持面に垂直方向に移動させる移動機構と、を備える研削装置であって、研削加工中の該研削砥石の外側で該ウェーハの上方から、該ウェーハの中心部分の温度を非接触で測定する非接触温度計と、該非接触温度計で測定した値が予め設定した下限温度を下方向に超えた場合に、研削加工に異常が発生していると判断する下判断部と、該下判断部が判断したら作業者に通知する通知部と、を備える。
【0008】
本発明のさらに別の態様の研削装置は、回転中心を頂点とするゆるやかな円錐状の保持面によってウェーハを保持し回転するチャックテーブルと、環状の研削砥石を回転させ該保持面に保持され回転する該ウェーハの半径部分に該研削砥石の下面を接触させ研削する研削機構と、該研削機構を該保持面に垂直方向に移動させる移動機構と、を備える研削装置であって、研削加工中の該研削砥石の外側で該ウェーハの上方から、該ウェーハの中心部分の温度を非接触で測定する非接触温度計と、該非接触温度計で測定した値が予め設定した上限温度を上方向に超えた場合に、研削加工に異常が発生していると判断する上判断部と、該非接触温度計で測定した値が予め設定した下限温度を下方向に超えた場合に、研削加工に異常が発生していると判断する下判断部と、制御部と、を備え、該制御部は、該非接触温度計で測定した研削加工中のウェーハ上面の温度が、該上限温度と該下限温度との間の制御範囲に納まるように、該チャックテーブルを回転させるテーブル回転機構による回転速度を可変する制御、該研削砥石を回転させる砥石回転機構の回転速度を可変する制御、該移動機構による下降速度を可変する制御、または、該研削砥石に研削水を噴射する研削水流量を可変する制御の少なくとも一つを制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、研削砥石に起因する研削不良を未然に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本実施形態に係る研削装置の研削機構とチャックテーブルとの関係の説明図である。
【
図3】本実施形態に係る研削装置が有する研削ホイールとウェーハとの関係の説明図である。
【
図4】本実施形態に係る研削装置の研削面高さとウェーハ温度の関係の一例を示した図である。
【
図5】本実施形態に係る研削装置が行う温度制御により研削加工が継続される場合のウェーハ温度遷移の一例を示した図である。
【
図6】本実施形態に係る研削装置が行う温度制御により研削加工が中止される場合のウェーハ温度遷移の一例を示した図である。
【
図7】本実施形態に係る研削装置における温度制御の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態に係る研削装置の斜視図である。
図2は、本実施形態に係る研削装置の研削機構とチャックテーブルとの関係の説明図である。
図3は、本実施形態に係る研削装置が有する研削ホイールとウェーハとの関係の説明図である。
図1に示すX軸方向、Y軸方向、Z軸方向は互いに垂直な関係にある。X軸方向とY軸方向は略水平な方向であり、Z軸方向は上下方向(略鉛直な方向)である。以下、
図1から
図3を参照しながら、本実施形態に係る研削装置1について説明する。
【0012】
研削装置1は、研削砥石66が環状に配列された研削ホイール64を用いてチャックテーブル10に保持されるウェーハWを研削する装置である。研削装置1は、
図1に示すような研削加工専用の装置構成に限定されず、例えば、研削加工、研磨加工、洗浄加工等の一連の加工が全自動で実施されるフルオートタイプの加工装置に組み込まれてもよい。
【0013】
研削装置1が研削するウェーハWは、特に限定しない。ウェーハWは、例えば、シリコン、ガリウムヒ素等の半導体基板やその他の基板でもあってもよい。研削装置1は、ウェーハWが、例えば、サファイア、炭化ケイ素等の硬い材質の基板であり、研削砥石66に目つぶれが生じやすい場合に特に好適である。また、ウェーハWが、樹脂の基板であり、研削砥石66に目詰まりが生じやすい場合に特に好適である
【0014】
研削装置1は、
図1及び
図2に示すように、保持面14によってウェーハWを保持し回転するチャックテーブル10と、ウェーハWを研削する研削機構60と、研削機構60を保持面14に対して垂直方向に移動させる移動機構である加工送り機構70と、を備えている。
【0015】
研削装置1の基台2の上面には、
図1に示すように、Y軸方向に延在する長方形状の開口が形成されていて、チャックテーブル10は、この開口内をY軸方向に移動する。この開口は、チャックテーブル10と共に移動可能な蛇腹状の防水カバー3に覆われている。防水カバー3の下方には、チャックテーブル10をY軸方向に移動させる移動機構20と、チャックテーブル10を回転させるテーブル回転機構30と、チャックテーブル10の傾きを調整する傾き調整機構40が設けられている。
【0016】
チャックテーブル10は、
図2に示すように、枠体11と、枠体11の上面に形成された凹部内に嵌め込まれたポーラス板12と、枠体11下方に設けられた円柱形状のチャックスピンドル13を備えている。枠体11には、ポーラス板12が嵌め込まれた凹部上面と図示しない吸引源とを連通させる吸引路が形成されていて、吸引源の吸引動作によってポーラス板12の表面に負圧が発生する。チャックテーブル10は、負圧が発生したポーラス板12の表面を保持面14としてウェーハWを吸引保持する。
【0017】
なお、
図1では、ウェーハWが平坦に描かれているが、
図2に示すように、実際の保持面14はチャックテーブル10の回転中心を頂点とする緩やかな円錐状であり、ウェーハWも保持面14に沿って円錐状に保持される。
【0018】
移動機構20は、ボールねじ式の電動スライダであり、
図1に示すように、Y軸方向に延びたボールねじ21及びガイドレール22と、ボールねじ21の一端に接続されたモータ23と、ガイドレール22にスライド可能に設置されたスライド部24を備えている。スライド部24の背面には、ボールねじ21に螺合した図示しないナット部が形成されている。移動機構20では、モータ23の回転によりスライド部24がY軸方向に移動し、これに伴って、スライド部24に固定されたチャックテーブル10がY軸方向に移動する。
【0019】
チャックテーブル10は、さらに、テーブル回転機構30に連結されており、テーブル回転機構30の駆動によってZ軸方向の回転軸周りに回転可能に構成されている。テーブル回転機構30は、
図1に示すように、モータ31と、モータ31の出力軸に設けられたベルトプーリー32と、ベルトプーリー32とチャックスピンドル13に掛け渡されたベルト33を備えている。モータ31によってベルトプーリー32を回転駆動させることで、その回転力がベルト33を介してチャックスピンドル13に伝達される。その結果、チャックスピンドル13の回転によりチャックテーブル10が回転する。
【0020】
チャックテーブル10の傾きは、傾き調整機構40により調整可能である。傾き調整機構40は、
図1に示すように、支持台41と、支持台41に連結された位置調整ユニット44及び固定支持部(不図示)とを備えている。支持台41は、チャックスピンドル13が挿入された円筒状の円筒部42と、円筒部42の下部を拡径した円板状のフランジ部43と、を備えている。円筒部42の内側に配されたベアリングがチャックスピンドル13の外周面に接触しており、チャックスピンドル13は、ベアリングを介して円筒部42に回転可能に支持されている。
【0021】
位置調整ユニット44は、支持台41の周方向に位置を異ならせて二箇所以上設けられ、各位置調整ユニット44がフランジ部43に連結されている。
図1の構成では、周方向に120度異なる位置に二つの位置調整ユニット44が設けられ、さらに、120度異なる位置に一つの固定支持部(不図示)が設けられている。固定支持部は、フランジ部43を一定の高さ位置で支持している。二つの位置調整ユニット44は個別に動作して、フランジ部43の高さ位置を変更可能である。傾き調整機構40は、位置調整ユニット44を動作させて固定支持部を支点にしてフランジ部43を傾けることにより、チャックスピンドル13の傾き、つまり、チャックテーブル10の傾きを調整する。
【0022】
また、基台2には、
図1に示すように、チャックテーブル10の近傍位置に配置された高さ検出部50が設けられている。高さ検出部50は、基台2上に垂直に設けられた支持部51と、支持部51の上部に設けられた2つの測定用のプローブ52、プローブ53と、を含んで構成される。一方のプローブ52は、チャックテーブル10に保持されたウェーハWの上面に接触してウェーハWの上面高さを連続的に測定可能な位置に配設されている。他方のプローブ53は、チャックテーブル10の保持面14と同一高さとなる外周エリアに接触し、その上面高さを連続的に測定可能な位置に配設されている。
【0023】
さらに、基台2には、
図1に示すように、コラム4が立設されている。コラム4には、研削機構60を保持面14に垂直方向であるZ軸方向に加工送りする加工送り機構70が設けられている。加工送り機構70は、ボールねじ式の電動スライダであり、
図1に示すように、Z軸方向に延びたボールねじ71及びガイドレール72と、ボールねじ71の一端に接続されたモータ73と、ガイドレール72にスライド可能に設置されたZ軸ステージ74を備えている。Z軸ステージ74の背面側には、ボールねじ71に螺合したナット部(不図示)が形成されている。加工送り機構70は、モータ73の回転によりZ軸ステージ74がZ軸方向に移動し、これに伴って、Z軸ステージ74に固定された研削機構60がガイドレール72に沿ってZ軸方向に移動する。
【0024】
研削機構60は、
図1に示すように、スピンドルユニット61と、スピンドルユニット61の下端に設けられたマウント62と、スピンドルユニット61を囲繞し、Z軸ステージ74に固定されたホルダ63と、マウント62の下面に保持された研削ホイール64と、を備えている。研削機構60は、スピンドルユニット61によって研削ホイール64を中心軸周りに回転させるように構成されている。研削ホイール64には、ホイール基台65と、ホイール基台65の下面に環状に配置された複数の研削砥石66が設けられている。複数の研削砥石66は、例えば、ダイヤモンド砥粒をヴィトリファイドボンド等のボンド剤で固めて形成される。
【0025】
研削装置1では、研削ホイール64がスピンドルユニット61によって高速回転し、チャックテーブル10がテーブル回転機構30によって同方向に低速回転する。これにより、研削砥石66がウェーハWに対して接触しながら移動することで、ウェーハWが研削砥石66によって研削される。
【0026】
より詳細には、研削装置1では、
図2に示すように、ウェーハWを吸引保持したチャックテーブル10は傾き調整機構40で傾けられている。さらに、
図3に示すように、チャックテーブル10は、研削ホイール64がチャックテーブル10の回転中心上を通過するようにチャックテーブル10の回転中心と研削ホイール64の回転中心とをずらして配置されている。このような配置により、環状に配列された研削砥石66は、チャックテーブル10に保持されたウェーハWの外周から回転中心までに至る半径部分(
図3における接触範囲G)に接触する。そして、この状態で、研削機構60は、研削ホイール64に加えてウェーハWを回転させて半径部分に対応するウェーハW上の領域を変化させることで、ウェーハW全体を研削砥石66で研削することができる。即ち、研削機構60は、環状の研削砥石66(つまり、環状に配列された複数の研削砥石66)を回転させ保持面14に保持され回転するウェーハWの半径部分に研削砥石66の下面を接触させて研削を行うように構成されている。
【0027】
研削装置1は、さらに、
図1に示すように、非接触温度計80と、研削水ノズル90と、判断部(上判断部5、下判断部6)と、通知部7と、制御部8を備えている。
【0028】
非接触温度計80は、
図3に示すように、ホイール基台65に環状に配列された複数の研削砥石66の外側で且つチャックテーブル10上方に配置されている。より詳細には、非接触温度計80は、研削加工中において、その研削砥石66の外側で且つチャックテーブル10に保持されたウェーハWの上方から、チャックテーブル10に保持されたウェーハWの中心部分Cの温度を非接触で測定する。
【0029】
なお、ウェーハWの中心部分Cの温度を測定する理由は、ウェーハWの回転中心は、常に研削砥石66が接触していて、ウェーハWの中心部分Cは研削加工中に研削砥石66の接触頻度が大きい領域であるため、ウェーハWの中心部分Cは、温度が上昇しやすいからである。
【0030】
研削水ノズル90は、水源91から供給された研削水を研削領域に向けて噴射する。より詳細には、研削水ノズル90は、
図3に示すように、ホイール基台65に環状に配列された複数の研削砥石66の内側に設けられていて、研削加工中にウェーハWの中心部分Cに向けて研削水を噴射する。
【0031】
各判断部は、非接触温度計80で測定した温度に基づいて、研削加工の異常発生の判断を含む、各種判断を行う。上判断部5は、非接触温度計80で測定した値が予め設定した上限温度を上方向に超えた場合に、研削加工に異常が発生していると判断する。また、下判断部6は、非接触温度計80で測定した値が予め設定した下限温度を下方向に超えた場合に、研削加工に異常が発生していると判断する。
【0032】
なお、本明細書において、研削加工の異常発生、または、研削加工に異常が発生しているとは、発生した異常により研削加工が正常に行えない状態にあること、または、発生した異常がある程度継続すると研削加工が正常に行えなくなることが予想される状態にあることをいう。また、研削加工が正常に行えない原因は、典型的には、研削砥石66に起因するものであり、例えば、研削砥石66の目つぶれ、研削砥石66の目詰まり、または、研削砥石66の欠損(欠け)などである。
【0033】
従って、研削加工に異常が発生している状態の一例は、異常が継続すると研削砥石66に目つぶれ、目詰まりが生じることが予想される状態であり、研削砥石66に目つぶれ、目詰まりが実際に発生する前の、目つぶれが発生する兆候が生じている状態である。上判断部5は、非接触温度計80で測定した値が予め設定した上限温度を上方向に超えた場合に、研削砥石66に目つぶれ、目詰まりが発生する兆候が生じている、即ち、研削加工に異常が発生していると判断してもよい。また、研削加工に異常が発生している状態の別の例は、研削砥石66が欠けている状態である。下判断部6は、非接触温度計80で測定した値が予め設定した下限温度を下方向に超えた場合に、研削砥石66の欠損が生じている、即ち、研削加工に異常が発生していると判断してもよい。
【0034】
通知部7は、各判断部が判断すると、研削加工の異常発生を作業者に通知する。通知部7は、上判断部5が研削加工に異常が発生していると判断した場合に、作業者に通知してもよい。この場合、研削加工に生じた異常として研削砥石66の目つぶれ、目詰まりの兆候を通知してもよい。これにより、作業者は、ウェーハWに研削不良が実際に生じる前に、ドレッシングなどのメンテナンスの必要性を認識することができる。また、通知部7は、下判断部6が研削加工に異常が発生していると判断した場合に、作業者に通知してもよい。この場合、研削加工に生じた異常として研削砥石66の欠損の可能性を通知してもよい。これにより、作業者は、欠損した研削砥石66を含む研削ホイール64を用いて研削加工を継続することでウェーハWに研削不良が生じてしまう前に、研削ホイール64の交換などの必要性を認識することができる。
【0035】
なお、通知部7は、作業者に異常発生を通知することができるものであればよく、例えば、表示装置であってもよく、LEDなどの発光装置であってもよく、スピーカなどの音声出力装置であってもよい。
【0036】
制御部8は、非接触温度計80で測定した研削加工中のウェーハW上面の温度が予め設定した上限温度と下限温度との間の制御範囲に納まるように制御を実行する。ここで、制限範囲の上限温度と下限温度は、上判断部5と下判断部6が異常発生を判断するために非接触温度計80で測定した温度と比較する閾値(上限温度、下限温度)と同じである。制御部8が、閾値としての上限温度と下限温度によって画定される温度範囲を制御範囲として制御を実行することで、研削加工中の異常発生を抑制することができるため、高いスループットを実現することが可能であり、作業者への不要な通知も回避することができる。
【0037】
なお、制御部8が実行する制御は、チャックテーブル10を回転させるテーブル回転機構30による回転速度を可変する制御、研削砥石66を回転させる砥石回転機構であるスピンドルユニット61の回転速度を可変する制御、移動機構である加工送り機構70による下降速度を可変する制御、または、研削砥石66に研削水を噴射する研削水流量を可変する制御の少なくとも一つを含んでいればよい。
【0038】
チャックテーブル10の回転速度、スピンドルユニット61の回転速度、加工送り機構70による下降速度を可変することで、研削で発生する熱量を調整することができる。また、研削水流量を可変することで、冷却する能力を調整することができる。制御部8は、上述した制御の少なくともいずれかを行うことで、ウェーハW上における発熱と冷却の少なくとも一方を制御して、ウェーハW上面の温度を調整可能である。
【0039】
以上のように構成された研削装置1では、各判断部によって検知された研削加工の異常発生を通知部7が作業者に通知することで、研削不良が生じる前に、作業者が研削加工を中止することができる。また、研削装置1では、制御部8が制御範囲内にウェーハW上面の温度を制御することで研削加工の異常発生を抑制することができる。従って、研削装置1によれば、目つぶれ、目詰まりまたは欠損などの研削砥石に起因する研削不良を未然に回避することができる。
【0040】
図4は、本実施形態に係る研削装置の研削面高さとウェーハ温度の関係の一例を示した図である。
図5は、本実施形態に係る研削装置が行う温度制御により研削加工が継続される場合のウェーハ温度遷移の一例を示した図である。
図6は、本実施形態に係る研削装置が行う温度制御により研削加工が中止される場合のウェーハ温度遷移の一例を示した図である。
図4から
図6を参照しながら、研削装置1の動作方法について詳細に説明する。
【0041】
まず、
図4を参照しながら、研削装置1が実行する研削処理の手順と研削処理中に非接触温度計80で測定される温度(以降、測定温度と記す。)の推移について説明する。なお、
図4に示す実線は、研削面の高さの推移を示し、
図4に示す破線は、ウェーハWの中心部分Cの測定温度の推移を示している。また、
図4に示す上限温度111と下限温度112の間の制限範囲110は、制御部8が測定温度の目標とする上述した制御範囲である。さらに、
図4に示す接触検知温度100は、ウェーハWと研削砥石66の接触判定の基準となる温度である。
【0042】
図4に示すように、ウェーハWの研削処理は、期間TAから期間TGの計7つの期間において実行される、7つの工程で構成される。なお、7つの工程は、期間TAと期間TBからなる研削準備工程と、期間TCと期間TDからなる研削加工工程と、期間TEと期間TFと期間TGからなる研削終了工程に大別される。このうちの研削加工工程が上述した研削加工に対応する工程である。
【0043】
1つ目の工程は、研削砥石66の下面(研削面)をエアカット開始位置へ移動する工程であり、期間TA中に行われる。研削装置1は、
図4に示すように、加工送り機構70によって研削機構60を一定の速度VAでウェーハW付近(エアカット開始位置)まで下降させる。なお、この工程では、研削面とウェーハWはまだ接触していない。そのため、ウェーハW上面の温度は十分に低く、測定温度も図示されない低い値で推移する。
【0044】
2つ目の工程は、エアカット工程であり、期間TB中に行われる。研削装置1は、
図4に示すように、加工送り機構70により研削機構60をゆっくりとした速度VB(<VA)で下降させ、研削面とウェーハWを接触させる。エアカット工程でも、測定温度は低い値で推移するが、
図4に示すように、ウェーハW上面と研削砥石66が接触したタイミングで、接触検知温度100を超えて急激に上昇する。
【0045】
3つ目の工程は、第1の研削工程であり、期間TC中に行われる。研削装置1は、研削面とウェーハWの接触を検知すると、
図4に示すように、加工送り機構70により研削機構60を一定の速度VC(<VB)で送りながら、テーブル回転機構30によりチャックテーブル10を回転させ、さらに、研削機構60により研削ホイール64を回転させて、ウェーハWの研削を行う。第1の研削工程では、測定温度は、
図4に示すように、制限範囲110内を推移する。
【0046】
4つ目の工程は、第2の研削工程であり、期間TD中に行われる。研削装置1は、ウェーハWを所定の厚さまで研削すると、
図4に示すように、加工送り機構70により研削機構60をよりゆっくりとした速度VD(<VC)で送りながら、さらに研削を行う。第2の研削工程でも、測定温度は、
図4に示すように、制限範囲110内を推移する。
【0047】
5つ目の工程は、スパークアウト工程であり、期間TE中に行われる。研削装置1は、ウェーハWを目的の厚さまで研削すると、
図4に示すように、加工送り機構70の下降を停止し(つまり、速度VE=0)、チャックテーブル10の回転と研削ホイール64の回転によりウェーハW上面を研削する。スパークアウト工程では、前工程までに加わっていた荷重による弾性変形を解放することでウェーハW上面がなぞるように研削され、その結果、上面に残っていた研削痕が目立たなくなる。測定温度は、
図4に示すように、スパークアウト工程において、急速に低下し、以降の工程では低い温度で推移する。
【0048】
6つ目の工程は、エスケープカット工程であり、期間TF中に行われる。研削装置1は、スパークアウト工程が終了すると、
図4に示すように、加工送り機構70により研削機構60の上昇を開始する。研削機構60の上昇中も残存していた荷重による変形が解放されることで研削が継続されることがあるため、研削装置1は、ゆっくりとした速度VFで研削機構60を上昇させて、ウェーハWと研削面を離間させる。
【0049】
7つ目の工程は、研削機構60を待機位置へ移動する工程であり、期間TG中に行われる。研削装置1は、エスケープカット工程が終了すると、
図4に示すように、エスケープカット工程よりも速い速度VG(>VF)で加工送り機構70により研削機構60を上昇させて、研削機構60を待機位置まで移動する。
【0050】
次に、
図4及び
図5を参照しながら、研削不良を未然に回避するために研削加工中(研削加工工程中)に研削装置1が行う制御処理について説明する。なお、
図5は、第1の研削工程中の
図4に示す領域RにおけるウェーハWの測定温度の推移を拡大して示した図であり、ラインLは各時刻における測定温度を示している。
【0051】
研削装置1は、研削加工が開始されると、非接触温度計80から出力される測定温度の推移(
図5のラインL)を監視する。具体的には、研削装置1は、測定温度が、制限範囲110内の予め設定された温度であって上限温度111よりも低い温度である上制限温度121を超えたかどうかを監視する。つまり、上制限温度121以下の温度から上制限温度121を超える温度への温度上昇を監視する。これは、目つぶれまたは目詰まりが生じると研削負荷が上昇し温度が大きく上昇することを踏まえ、本格的な目つぶれまたは目詰まりが生じる前の温度上昇をとらえて目つぶれまたは目詰まりの兆候を検出するためである。
【0052】
また、研削装置1は、測定温度が制限範囲110内の予め設定された温度であって下限温度112よりも高い温度である下制限温度122を下回ったかどうかも監視する。つまり、下制限温度122よりも高い温度から下制限温度122以下の温度への温度低下も監視する。これは、研削ホイール64に欠けが生じると研削負荷が減少し、測定温度も減少するからである。
【0053】
そして、研削加工中に、
図5のポイントPAで示すように、測定温度が上制限温度121を超えたことを研削装置1が検知すると、制御部8は、下降速度が低下するように加工送り機構70を制御する。これにより、ウェーハWと研削砥石66の間で生じる熱量が抑制される。このため、
図5に示すように、測定温度が上限温度111を超える前に測定温度の推移が上昇から下降へ転じて、測定温度が上制限温度121以下まで低下する。
【0054】
また、
図5のポイントPBで示すように、測定温度が下制限温度122を下回ったことを研削装置1が検知すると、制御部8は、下降速度が増加するように加工送り機構70を制御する。これにより、研削砥石66がウェーハWに十分な荷重で接触する。このため、
図5に示すように、測定温度が下限温度112を下回る前に測定温度の推移が下降から上昇へ転じて、測定温度が下制限温度122以上まで回復する。
【0055】
研削加工中に制御部8がこのような制御を行うことで、研削装置1は、測定温度を制限範囲110内で安定的に推移させることができる。これにより、研削加工の異常発生、ひいては研削不良の発生を未然に回避して、研削加工を正常に行うことができる。具体的には、研削ホイール64をウェーハWに接近させる研削送り速度(下降速度)が対応できない速い速度のために研削砥石66に異常な荷重がかかってしまい、研削砥石66が欠けてしまうことを防止することができる。また、研削面に目つぶれまたは目詰まりを生じさせないことで、目つぶれまたは目詰まりの解消のためのドレッシングによる研削砥石66の消耗も防止することができる。
【0056】
なお、監視開始の契機となる研削加工の開始を特定する方法は特に限定しない。研削加工の開始は、例えば、研削処理の開始からの経過時間に基づいて特定されてもよく、ウェーハWと研削ホイール64の接触を検知することで特定されてもよい。また、ウェーハWと研削ホイール64の接触は、図示しない荷重センサの測定値に基づいて特定されてもよく、非接触温度計80で測定した測定温度に基づいて特定されてもよい。
【0057】
非接触温度計80で測定した測定温度に基づいて特定する場合には、接触検知温度100を超える急激な温度上昇を検知することで、ウェーハWと研削ホイール64の接触を検知すればよい。非接触温度計80で測定した測定温度に基づいて研削加工の開始を特定することで、研削加工の開始を特定するために荷重センサを設ける必要がなく、垂直に荷重が加わるように研削装置1内に設けられる荷重センサを省略することが可能となる。従って、研削装置1の剛性を向上させることができる。また、測定温度に基づいて研削加工の開始を特定することで、経過時間に基づいて特定する場合や荷重センサの測定値に基づいて特定する場合よりも、遅延なくかつ精度よく研削加工の開始を特定することも可能である。
【0058】
さらに、
図4及び
図6を参照しながら、研削不良を未然に回避するために研削装置1で行われる処理の別の例について説明する。なお、
図6も、
図5と同様に、第1の研削工程中の
図4に示す領域RにおけるウェーハWの測定温度の推移を拡大して示した図であり、ラインM、ラインNは各時刻における測定温度を示している。
【0059】
研削装置1は、研削加工が開始されると、非接触温度計80から出力される測定温度の推移を監視する。例えば、研削加工中に、測定温度が上制限温度121を超えたことを研削装置1が検知すると、制御部8は、下降速度が低下するように加工送り機構70を制御する。この点は、
図5に示す例と同様である。
【0060】
制御部8が下降速度を低下させる制御を行っても測定温度の上昇が止まらず、
図6のラインMに示すように測定温度が上限温度111を超えて上昇した場合には、研削装置1では、上判断部5が異常発生を判断し、通知部7が作業者に異常発生を通知する。これにより、作業者が異常発生を早期に認識することができる。このため、作業者が研削加工の中止等の措置を講じることで、研削砥石66の目つぶれまたは目詰まりによるウェーハWの面焼けを回避することができる。従って、ウェーハWの研削不良も未然に回避することができる。
【0061】
また、研削加工中に、測定温度が下制限温度122を下回ったことを研削装置1が検知すると、制御部8は、下降速度が増加するように加工送り機構70を制御する。この点は、
図5に示す例と同様である。
【0062】
制御部8が下降速度を増加させる制御を行っても測定温度の下降が止まらず、
図6のラインNに示すように測定温度が下限温度112を下回る温度まで下降した場合には、研削装置1では、下判断部6が異常発生を判断し、通知部7が作業者に異常発生を通知する。これにより、作業者が異常発生を早期に認識することができる。このため、作業者が研削加工を中止して研削ホイール64の交換等の措置を講じることができる。この場合も、ウェーハWの研削不良も未然に回避することができる。
【0063】
なお、本発明の実施の形態は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0064】
図6を参照しながら上述した例では、測定温度を調整するために制御部8が行う制御処理と、研削加工の異常発生を通知するために判断部(上判断部5、下判断部6)及び通知部7が行う判断通知処理の両方が実行される例を示したが、これらの少なくとも一方が行われればよく、したがって、制御部8の制御処理は省略されてもよい。即ち、研削装置1では、制御部8の制御処理のみが行われてもよく、判断部及び通知部7の判断通知処理のみが行われてもよく、制御部8の制御処理と判断部及び通知部7の判断通知処理の両方が行われてもよい。
【0065】
また、
図5及び
図6を参照しながら上述した例では、測定温度に基づいて加工送り機構70の下降速度を制御する場合を例示したが、制御部8は、研削加工中に、下降速度の代わりに、チャックテーブル10の回転速度、スピンドルユニット61の回転速度、または研削水量を制御することで、測定温度が制御範囲内を推移するように調整してもよい。また、これらを組み合わせた制御を実行してもよい。
【0066】
さらに、上述した例では、研削加工中の測定温度が1つの制限範囲110内に収まるように制御部8が制御を行う例を示したが、研削加工中に測定温度が推移すべき制御範囲は、1つの制御範囲に限らない。研削加工中の設定に応じて制御範囲を切り替えながら制御が行われてもよく、例えば、
図7に示すように、下降速度に応じて複数の制御範囲を切り替えて制御が行われてもよい。研削加工中の設定に応じて制御範囲を切り替えながら制御を行うことで、ウェーハWの温度を加工条件等に応じて異なる適正な温度範囲内に収めることができる。
【0067】
なお、
図7は、研削装置1における温度制御の変形例を説明するための図であり、
図7には、第1の研削工程と第2の研削工程で異なる制御範囲内に測定温度を制御する例が示されている。第1の研削工程における制御範囲は、上限温度131と下限温度132の間の制限範囲130であり、第2の研削工程における制御範囲は、上限温度141と下限温度142の間の制限範囲140である。
図7では、下降速度に応じて制限範囲が設定されていて、より速い下降速度(速度VC)で研削機構60を送る第1の研削工程の制限範囲130が、より遅い下降速度(速度VD)で研削機構60を送る第2の研削工程の制限範囲140よりも高い温度範囲に設定されている。
【0068】
また、
図7では、第1の研削工程と第2の研削工程で、つまり、研削加工中の設定に応じて、制御範囲の上限温度と下限温度の両方を切り替える例を示したが、制御範囲の上限温度と下限温度の一方のみを切り替えてもよい。例えば、上限温度については一定に維持しながら、下限温度のみを切り替えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上に説明したように、本発明の研削装置は、研削加工の異常発生を作業者に通知することが可能であり、または、ウェーハ上面の温度が制御範囲内に納めることが可能である。このため、削砥石に起因する研削不良を未然に回避可能な研削装置1として非常に有用である。
【符号の説明】
【0070】
1 研削装置
5 上判断部
6 下判断部
7 通知部
8 制御部
10 チャックテーブル
13 チャックスピンドル
14 保持面
60 研削機構
61 スピンドルユニット
64 研削ホイール
66 研削砥石
70 加工送り機構
80 非接触温度計
90 研削水ノズル
100 接触検知温度
110、130、140 制限範囲
111、131、141 上限温度
112、132、142 下限温度
121 上制限温度
122 下制限温度
C 中心部分
W ウェーハ