(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011165
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ワイヤロープ巻取装置
(51)【国際特許分類】
B66D 1/30 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
B66D1/30 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112954
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】武内 秀明
(57)【要約】
【課題】ワイヤロープの交換作業を行う作業者の安全性の向上を図ることのできるワイヤロープ巻取装置を提供する。
【解決手段】クレーン装置2から取り外されたワイヤロープ4aを巻き取るワイヤロープ巻取装置1であって、水平面に載置される基台10と、基台10に対して鉛直方向を中心として回転自在に構成され、ワイヤロープ4aを巻き取る巻取体20と、基台10に対して巻取体20を回転させる駆動力を付与する駆動機構30と、を備え、基台10は、荷役運搬機械の爪部分が係合可能な基台側爪係合部(一対の基台側角筒部11)を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーン装置から取り外されるワイヤロープを巻き取るワイヤロープ巻取装置であって、
水平面に載置される基台と、
前記基台に対して鉛直方向を中心として回転自在に構成され、前記ワイヤロープを巻き取る巻取体と、
前記基台に対して前記巻取体を回転させる駆動力を付与する駆動機構と、を備え、
前記基台は、荷役運搬機械の爪部分が係合可能な基台側爪係合部を有している
ワイヤロープ巻取装置。
【請求項2】
前記巻取体は、
前記基台に対して着脱自在に構成され、
前記荷役運搬機械の前記爪部分が係合可能な巻取体側爪係合部を有している
請求項1に記載のワイヤロープ巻取装置。
【請求項3】
前記基台側爪係合部および前記巻取体側爪係合部は、それぞれ、前記荷役運搬機械の前記爪部分を挿入可能な角筒状に形成されている
請求項2に記載のワイヤロープ巻取装置。
【請求項4】
前記駆動機構は、前記基台に対する前記巻取体の回転数の調整および回転方向の切り替えを行う制御部を有する
請求項1に記載のワイヤロープ巻取装置。
【請求項5】
前記巻取体に向けて送られる前記ワイヤロープを所定位置において案内するロープガイドを備えた
請求項1に記載のワイヤロープ巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンから取り外されるワイヤロープを巻き取るためのワイヤロープ巻取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、港湾の岸壁に着岸している船舶に対する荷物の積み込みや荷下ろしに、水平引込式クレーン等のクレーン装置が用いられている。
【0003】
クレーン装置は、荷物の吊下用のフックブロックまたは荷物の把持用のバケットと、フックブロックまたはバケットを吊り下げるワイヤロープと、ワイヤロープが巻き付けられるドラムと、を有している。
【0004】
クレーン装置は、安全性の確保の観点から、点検によって不具合が発見された場合、または、定期的にワイヤロープを交換する作業が発生する(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ワイヤロープを交換する作業では、まず、ブームの先端から垂下されている古いワイヤロープの先端部に新たにドラムに巻き付ける新しいワイヤロープの基端部を連結し、ワイヤロープを巻き上げる方向にドラムを回転させて、新しいワイヤロープの基端部をドラムの近傍に位置させる。次に、新しいワイヤロープと古いワイヤロープとの連結を解除して、ワイヤロープを繰り出す方向にドラムを回転させて、ドラムに巻き付けられた古いワイヤロープをドラムから取り外し、最後に、新しいワイヤロープをドラムに巻き付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
クレーン装置のワイヤロープが巻き付けられるドラムは、例えば地上10m等、高所に設置されている。即ち、ドラムに巻き付けられた古いワイヤロープを地上に下ろす作業では、ドラムが設置されている高所および地上のそれぞれに作業者を配置して行うことになる。このため、古いワイヤロープを地上に下ろす作業では、古いワイヤロープが高所から誤って落下した場合に、古いワイヤロープが地上の作業者に接触するおそれがある。
【0008】
本発明の目的とするところは、ワイヤロープの交換作業を行う作業者の安全性の向上を図ることのできるワイヤロープ巻取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のワイヤロープ巻取装置は、クレーン装置から取り外されるワイヤロープを巻き取るワイヤロープ巻取装置であって、水平面に載置される基台と、前記基台に対して鉛直方向を中心として回転自在に構成され、前記ワイヤロープを巻き取る巻取体と、前記基台に対して前記巻取体を回転させる駆動力を付与する駆動機構と、を備え、前記基台は、荷役運搬機械の爪部分が係合可能な基台側爪係合部を有している。
【0010】
また、本発明のワイヤロープ巻取装置は、前記巻取体が、前記基台に対して着脱自在に構成され、前記荷役運搬機械の前記爪部分が係合可能な巻取体側爪係合部を有している。
【0011】
また、本発明のワイヤロープ巻取装置は、前記基台側爪係合部および前記巻取体側爪係合部が、それぞれ、前記荷役運搬機械の前記爪部分を挿入可能な角筒状に形成されている。
【0012】
また、本発明のワイヤロープ巻取装置は、前記駆動機構が、前記基台に対する前記巻取体の回転数の調整および回転方向の切り替えを行う制御部を有する。
【0013】
また、本発明のワイヤロープ巻取装置は、前記巻取体に向けて送られる前記ワイヤロープを所定位置において案内するロープガイドを備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、クレーン装置から取り外される古いワイヤロープを直接的に作業者が把持することなく巻取体によって巻き取ることが可能となるとともに、ワイヤロープ巻取装置自体をフォークリフト等の荷役運搬機械によって移動させることが可能となるので、ワイヤロープの交換作業を行う作業者の安全性を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るワイヤロープ巻取装置の概略図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明の一実施形態に係るワイヤロープ巻取装置を構成する基台の平面図であり、
図2(b)は基台の側面図である。
【
図3】
図3(a)は、本発明の一実施形態に係るワイヤロープ巻取装置を構成する巻取体の平面図であり、
図3(b)は巻取体の側面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態を係る制御系を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係るワイヤロープの交換方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1乃至
図5は、本発明の一実施形態を示すものであり、
図1はワイヤロープ巻取装置の概略図であり、
図2(a)はワイヤロープ巻取装置を構成する基台の平面図であり、
図2(b)は基台の側面図であり、
図3(a)はワイヤロープ巻取装置を構成する巻取体の平面図であり、
図3(b)は巻取体の側面図であり、
図4は制御系を示すブロック図であり、
図5はワイヤロープの交換方法を説明する図である。
【0017】
本発明のワイヤロープ巻取装置1は、
図5に示すように、例えば、港湾の岸壁に設置される水平引込式クレーン等のクレーン装置2において、ドラム3に巻き付けられたワイヤロープ4を交換する作業に用いられるものである。
【0018】
このワイヤロープ巻取装置1は、
図1に示すように、地面等の水平面に設置される基台10と、基台10に対して鉛直方向を中心として回転自在に構成され、ワイヤロープ4を巻き取る巻取体20と、基台10に対して巻取体20を回転させる駆動力を付与する駆動機構30と、巻取体20に向けて送られるワイヤロープ4を所定位置において案内するロープガイド40と、を備えている。
【0019】
基台10は、両端部が開口された角筒状に形成された幅方向一対の基台側角筒部11と、一対の基台側角筒部11の間を幅方向に延びるように設けられ、一対の基台側角筒部11を互いに連結する一対の基台側連結部12と、一対の基台側角筒部11および一対の基台側連結部12の上面の中央部から上方に延びるように形成された基台側立設部13と、一対の基台側角筒部11および一対の基台側連結部12の上面において基台側立設部13の外周側に配置されたリング状の旋回ベアリング14と、を有している。
【0020】
一対の基台側角筒部11は、それぞれ、フォークリフトの爪部分を内側に挿入可能な大きさの角筒状部材からなり、フォークリフトの一対の爪部分のそれぞれを同時に挿入可能な間隔をおいて配置されている。一対の基台側角筒部11は、荷役運搬機械としてのフォークリフトの爪部分が係合可能な基台側爪係合部として機能する。
【0021】
旋回ベアリング14は、一対のリング状部材と、一対のリング状部材の間に配置された転動体と、からなり、基台10と巻取体20との間に配置することで、巻取体20を基台10に対して鉛直方向を中心に回転自在とするものである。
【0022】
巻取体20は、両端部が開口された角筒状に形成された幅方向一対の巻取体側角筒部21と、一対の巻取体側角筒部21の間を幅方向に延びるように設けられ、一対の巻取体側角筒部21を互いに連結する一対の巻取体側連結部22と、一対の巻取体側角筒部21および一対の巻取体側連結部22の上面の中央部から上方に延びるように形成された巻取体側立設部23と、巻取体側立設部23の外周側に配置され、ワイヤロープ4が巻き付けられるロープ巻付部24と、ロープ巻付部24の外周側に配置され、ロープ巻付部24にワイヤロープ4が巻き付けられた状態を保持するロープ保持部25と、を有している。
【0023】
巻取体20は、基台10に対して着脱自在である。
【0024】
一対の巻取体側角筒部21は、それぞれ、フォークリフトの爪部分を内側に挿入可能な大きさの角筒状部材からなり、互いに、フォークリフトの一対の爪部分のそれぞれを同時に挿入可能な間隔をおいて配置されている。一対の巻取体側角筒部21は、荷役運搬機械としてのフォークリフトの爪部分が係合可能な巻取体側爪係合部として機能する。即ち、巻取体20は、基台10に取り付けられた状態から、フォークリフトによって基台10に対して取り外したり、基台10に対して取り付けたりすることが可能である。
【0025】
ロープ巻付部24は、巻取体側立設部23の外周側において、周方向に間隔をおいて配置され、それぞれ、一対の巻取体側角筒部21および一対の巻取体側連結部22の上面から上方に延びる複数の棒状部材からなる。ワイヤロープ4は、周方向に間隔をおいて配置された複数の棒状部材によって形成される円の外周側に巻き付けられる。
【0026】
ロープ保持部25は、ロープ巻付部24の外周側において、周方向にわたって配置され、一対の巻取体側角筒部21および一対の巻取体側連結部22の上面から上方に延びる部材からなる。ロープ保持部25は、ロープ巻付部24に巻き付けられたワイヤロープ4の外周側に位置することで、ワイヤロープ4の脱落を防止する。
【0027】
駆動機構30は、基台10の基台側立設部13の上部に設けられた電動モータ31と、電動モータ31の回転力を巻取体20に伝達する動力伝達機構32と、を有している。また、駆動機構30は、
図4に示すように、電動モータ31の回転軸の回転数および回転方向を調整するための制御部33と、巻取体20の回転数および回転方向の操作を入力するための操作入力部34と、を有している。
【0028】
制御部33は、CPU等の演算処理部、ROM、RAM等の記憶部を有し、入力側に接続された機器からの入力信号を受信すると、入力信号に基づいて記憶部に記憶されたプログラムを読み出すとともに、入力信号によって検出された状態を記憶部に記憶したり、出力側に接続された機器に出力信号を送信したりする。制御部33の入力側には、操作入力部34が接続され、制御部33の出力側には、電動モータ31が接続されている。
【0029】
操作入力部34は、例えば、ワイヤロープ4を交換する作業を行う作業者がワイヤロープ巻取装置1から離れた位置において巻取体20の回転数および巻取体20の回転方向の操作の入力が可能な遠隔操作装置に設けられている。
【0030】
ロープガイド40は、基台10の近傍において、基台10が設置される水平面と同一平面上に設置される。ロープガイド40は、設置面から上方に延びるガイド本体41と、ガイド本体41の上部に回転自在に支持されたプーリ42と、を有し、プーリ42にワイヤロープ4が掛けられる。ロープガイド40は、基台10および巻取体20の近傍における巻取体20の上端部よりも高い所定位置から巻取体20に向けて斜め下方にワイヤロープ4を送るようになっている。
【0031】
以上のように構成されたワイヤロープ巻取装置1において、クレーン装置2のドラム3に巻き掛けられているワイヤロープ4を交換する方法を、
図5を用いて説明する。
【0032】
第1工程では、
図5(a)に示すように、クレーン装置2のブームの先端部から下方に垂れ下がる古いワイヤロープ4aの先端部に、新たなワイヤロープ4bの基端部を、スイベルジョイント5を介して連結する。
【0033】
第2工程では、
図5(b)に示すように、ドラム3を駆動し、新たなワイヤロープ4bが連結されている古いワイヤロープ4aの全体をドラム3に巻き付ける。
【0034】
第3工程では、
図5(c)に示すように、古いワイヤロープ4aと新たなワイヤロープ4bとの連結を解除し、ドラム3に巻き付けられている古いワイヤロープ4aを繰り出し、古いワイヤロープ4aの先端部をワイヤロープ巻取装置1の巻取体20に連結して巻取体20を駆動させ、巻取体20に古いワイヤロープ4aを巻き付ける。このとき、ドラム3から繰り出される古いワイヤロープ4aは、ロープガイド40によって案内され、巻取体20の斜め上方から巻取体20に向けて送られる。また、巻取体20に古いワイヤロープ4aを巻き取る際には、作業者が操作入力部34を操作することで、巻取体20の回転数が調整され、回転方向が切り替えられる。
【0035】
第4工程では、
図5(d)に示すように、作業者が、古いワイヤロープ4aの基端部とドラム3との接続を解除し、古いワイヤロープ4aの基端部に麻縄等のロープ6を連結し、ロープ6を利用してワイヤロープ4aの基端部を地面に下ろす。
【0036】
第5工程では、新たなワイヤロープ4bの基端部をドラム3に接続し、ドラム3を駆動させて新たなワイヤロープ4bをドラム3に巻き付け、ワイヤロープ4の交換作業を終了する。
【0037】
このように、本実施形態のワイヤロープ巻取装置1によれば、クレーン装置2から取り外されるワイヤロープ4aを巻き取るワイヤロープ巻取装置1であって、水平面に載置される基台10と、基台10に対して鉛直方向を中心として回転自在に構成され、ワイヤロープ4aを巻き取る巻取体20と、基台10に対して巻取体20を回転させる駆動力を付与する駆動機構30と、を備え、基台10は、荷役運搬機械の爪部分が係合可能な基台側爪係合部(一対の基台側角筒部11)を有している。
【0038】
これにより、クレーン装置2から取り外される古いワイヤロープ4aを直接的に作業者が把持することなく巻取体20によって巻き取ることが可能となるとともに、ワイヤロープ巻取装置1自体をフォークリフト等の荷役運搬機械によって移動させることが可能となるので、ワイヤロープ4の交換作業を行う作業者の安全性を向上することが可能となる。
【0039】
また、巻取体20は、基台10に対して着脱自在に構成され、荷役運搬機械の爪部分が係合可能な巻取体側爪係合部(一対の巻取体側角筒部21)を有している。
【0040】
これにより、基台10に対する巻取体20の着脱を容易に行うことが可能となるので、一台のクレーン装置2に設けられた複数のドラム3のそれぞれについてワイヤロープ4の交換作業を繰り返し行う場合に、巻取体20を交換しながら複数の巻取体20のそれぞれに古いワイヤロープ4aを巻き付けることによって、ワイヤロープ4の交換作業の作業効率を向上させることが可能となる。
【0041】
また、基台側爪係合部および巻取体側爪係合部は、それぞれ、荷役運搬機械の爪部分を挿入可能な角筒状に形成されている。
【0042】
これにより、簡単な構成によって基台側爪係合部および巻取体側爪係合部を形成することが可能となるので、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0043】
また、駆動機構30は、基台10に対する巻取体20の回転数の調整および回転方向の切り替えを行う制御部33を有する。
【0044】
これにより、ワイヤロープの交換作業の状態に応じて、基台10に対する巻取体20の回転数の調整および巻取体20の回転方向の切り替えが可能となるので、ワイヤロープの交換作業の作業効率の向上を図ることが可能となる。
【0045】
また、巻取体20に向けて送られるワイヤロープ4aを所定位置において案内するロープガイド40を備えている。
【0046】
これにより、ワイヤロープ4aを、所定位置から巻取体20に向けて確実に送ることが可能となるので、巻取体20においてワイヤロープ4aが巻き取られない等の不具合の発生を抑制することが可能となる。
【0047】
尚、前記実施形態では、荷役運搬機械の爪部分が係合する基台側爪係合部および巻取体側爪係合部を、それぞれ角筒状に形成したものを示したが、これに限られるものではない。荷役運搬機械の爪部分が係合可能な構造であれば、例えば、基台および巻取体のそれぞれの下面に荷役運搬機械の爪部分を挿入可能な溝を形成してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 ワイヤロープ巻取装置
2 クレーン装置
4,4a ワイヤロープ
10 基台
11 基台側角筒部
20 巻取体
21 巻取体側角筒部
30 駆動機構
33 制御部
40 ロープガイド