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特開2024-111813研磨パッド、それにより得られた熱分解油およびその製造方法
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  • 特開-研磨パッド、それにより得られた熱分解油およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111813
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】研磨パッド、それにより得られた熱分解油およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/24 20120101AFI20240809BHJP
   C08J 5/14 20060101ALI20240809BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
B24B37/24 C ZAB
C08J5/14 CFF
H01L21/304 622F
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024007050
(22)【出願日】2024-01-19
(31)【優先権主張番号】10-2023-0015431
(32)【優先日】2023-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】505232852
【氏名又は名称】エスケー エンパルス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK enpulse Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1043,Gyeonggi-daero,Pyeongtaek-si,Gyeonggi-do 17784, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】イム、チャンギュ
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ジャンウォン
【テーマコード(参考)】
3C158
4F071
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CB05
3C158CB10
3C158DA02
3C158DA12
3C158EB10
3C158EB20
3C158EB28
3C158EB29
3C158EC04
3C158ED10
4F071AA53
4F071AE01
4F071BA02
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4F071BB12
4F071BC01
4F071BC02
4F071BC12
4F071DA17
5F057AA03
5F057AA08
5F057AA19
5F057AA47
5F057BA15
5F057BB25
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5F057CA12
5F057DA03
5F057EB03
5F057EB06
5F057EB07
5F057EB09
5F057EB13
5F057EB30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた物性を有してCMP工程の研磨率などを高め得る研磨パッドと、使用済みの研磨パッドのリサイクル率を高め得る技術を提供する。
【解決手段】研磨層10を含む研磨パッドに関するものであり、研磨パッドから得られた熱分解油を、KS M 2457規格に基づいて分析する際に、塩素成分の含有量が13000mg/kg以上を示し、高周波誘導結合型プラズマ発光分析法(Inductively coupled plasma atomic emission spectrometry)で分析する際、金属成分の含有量が4mg/kg未満である研磨パッド。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨層を含む研磨パッドであって、
前記研磨パッドを320℃にて6時間熱分解して得られた熱分解油を、KS M 2457規格に基づいて分析する際、塩素成分の含有量が13000mg/kg以上である、研磨パッド。
【請求項2】
前記熱分解油を、高周波誘導結合型プラズマ発光分析法(Inductively coupled plasma atomic emission spectrometry)で分析する際、金属成分の含有量が4mg/kg未満である、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記塩素成分の含有量が13000mg/kg~16000mg/kgである、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記熱分解油を、ASTM D2887規格に基づいて分析する際、熱分解油の初留点(Initial boiling point)が53℃~62℃であり、熱分解油の終末点(Final boiling point)が510℃~520℃である、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記研磨層は、ウレタン系プレポリマー、硬化剤および発泡剤を含む組成物から製造されたものである、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項6】
前記硬化剤は、4,4' -メチレンビス(2-クロロアニリン)を含む、請求項5に記載の研磨パッド。
【請求項7】
前記ウレタン系プレポリマーは、イソシアネート末端基の含有量(NCO%)が7.5重量%~11重量%であり、
前記ウレタン系プレポリマーと前記硬化剤との反応比が1:0.75~1.1の当量比である、請求項5に記載の研磨パッド。
【請求項8】
研磨パッドから得られた熱分解油であって、
KS M 2457規格に基づいて分析する際、塩素成分の含有量が13000mg/kg以上である、熱分解油。
【請求項9】
研磨パッドをチャンバーに投入する段階と、
前記チャンバーに投入された研磨パッドを280℃~350℃にて熱分解する段階と、
前記熱分解により形成された気化ストリームを熱交換器に通過させて液状の熱分解油を得る段階と、を含み、
前記熱分解油を、KS M 2457規格に基づいて分析する際、塩素成分の含有量が13000mg/kg以上である、熱分解油の製造方法。
【請求項10】
前記研磨パッドが、使用が完了した廃研磨パッドである、請求項9に記載の熱分解油の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、半導体素子の化学的機械平坦化(CMP)工程に用いられる研磨パッド、前記研磨パッドから得られた熱分解油および前記熱分解油の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程中、化学的機械研磨(CMP)工程は、ウェーハのような半導体基板をヘッドに付着し、定盤(platen)上に固定された研磨パッドの表面に接触するようにした状態で、前記定盤と前記ヘッドとを相対運動させ、半導体基板表面の凹凸部分を平坦化する工程である。
【0003】
このようなCMP工程において、前記研磨パッドは、半導体基板の表面加工品質に大きな影響を与えるため、安定した物性を有することが求められる。特に、前記研磨パッドに含まれている成分とその物性によってCMP工程の研磨率が敏感に変わり得るため、研磨パッドに含まれている成分とその物性を最適化することが必要である。
【0004】
一方、最近環境問題の深刻さが台頭するにつれ、使用済みの研磨パッドをリサイクルしようとする試みがなされている。しかし、研磨パッドは、リサイクルのための加工(例えば、熱を用いた溶融加工)が難しく、それをリサイクルするにおいて満足の行くレベルのリサイクル率を示せていないのである。
【0005】
したがって、優れた物性を有してCMP工程の研磨率などを高め得る研磨パッドと、使用済みの研磨パッドのリサイクル率を高め得る技術の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】大韓民国公開特許第2009-0029336号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、研磨パッドは、主成分としてウレタン系プレポリマー、硬化剤および発泡剤を含む組成物から製造されたポリウレタン硬化物を含むが、本発明者らは、前記ポリウレタン硬化物を含む研磨パッドの熱分解の際、残留塩素成分の含有量によって研磨パッドの物性が変わることと、前記物性変化がCMP工程の研磨率等に影響を与えることを見出した。
【0008】
また、本発明者らは、前記研磨パッドを熱分解することにより、研磨パッドのリサイクル率を高め得ることも見出した。
【0009】
これにより、実現例は、熱分解後の残留塩素成分の含有量が制御され、優れた物性を示し得る研磨パッドを提供することとする。
【0010】
また、実現例は、前記研磨パッドを熱分解して得られた熱分解油およびその製造方法を提供することとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための実現例によると、研磨層を含む研磨パッドであって、前記研磨パッドを320℃にて6時間熱分解して得られた熱分解油をKS M 2457規格に基づいて分析する際、塩素成分の含有量が13000mg/kg以上の研磨パッドを提供する。
【0012】
他の実現例によると、研磨パッドから得られた熱分解油であって、KS M 2457規格に基づいて分析する際、塩素成分の含有量が13000mg/kg以上である熱分解油を提供する。
【0013】
また他の実現例によると、研磨パッドをチャンバーに投入する段階と、前記チャンバーに投入された研磨パッドを280℃~350℃にて熱分解する段階と、前記熱分解により形成された気化ストリームを熱交換器に通過させて液状の熱分解油を得る段階と、を含み、前記熱分解油をKS M 2457規格に基づいて分析する際、塩素成分の含有量が13000mg/kg以上である熱分解油の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
実現例による研磨パッドは、研磨パッドの製造のために使用される原料であるウレタン系プレポリマー、硬化剤、発泡剤等の成分および各成分の含有量を細密に制御して最適化した硬化反応によって得られたものであるため、その熱分解の際に残留塩素成分の含有量が一定範囲内に分析され、これにより硬度、弾性モジュラスなどの機械的物性に優れ得る。したがって、実現例による研磨パッドを用いてCMP工程を行うと、高い研磨率を示すとともに表面加工品質に優れた半導体基板(例えば、ウェーハ)を提供することができる。
【0015】
また、実現例による熱分解油は、研磨パッド(具体的に、使用が完了した廃研磨パッド)を熱分解して得られたものであり、精製過程などを経て高品質の熱源(例えば、暖房油、発電所燃料など)として使用され得る。したがって、実現例は、研磨パッドのリサイクル率を高めながら環境問題を改善することに寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、一実現例による研磨パッドを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実現例により発明を説明する。なお、実現例は、以下に開示される内容に限定されるものではなく、発明の要旨が変更されない限り、様々な形態に変形され得る。
【0018】
本明細書において、ある構成要素が他の構成要素の上/下に形成されるか、もしくは互いに連結または結合されるという記載は、これらの構成要素間に直接、または、また他の構成要素を介して間接的に形成、連結または結合されることを全て含む。また、各構成要素の上/下に関する基準は、対象を観察する方向に応じて変わり得るものと理解するべきである。
【0019】
本明細書において「含む」という記載は、特定の特性、領域、段階、工程、要素および/または成分を具体化するためのものであり、特に反する記載がない限り、他の特性、領域、段階、工程、要素および/または成分の存在や付加を除外するものではない。
【0020】
本明細書に記載されている構成成分の量、反応条件等を示す全ての数字および表現は、特に記載がない限り、全ての場合において「約」という用語により修飾されるものと理解し得る。
【0021】
<研磨パッド>
実現例は研磨層を含み、必要に応じて接着層およびクッション層をさらに含む研磨パッドを提供する。このような実現例による研磨パッドは、熱分解後の残留塩素成分の含有量が制御された特徴を有するものであり、これについて図1を参照して具体的に説明すると、以下の通りである。
【0022】
[研磨層]
実現例による研磨パッドに含まれる研磨層10は、研磨対象である半導体基板(例えば、ウェーハ)を研磨する役割をする。このような研磨層10は、ウレタン系プレポリマー、硬化剤および発泡剤を含む組成物(研磨層形成用組成物)を用いて形成(製造)することができる。
【0023】
前記組成物に含まれるウレタン系プレポリマーは、ポリオール化合物とイソシアネート化合物との反応により得られたポリマーであり得る。このようなウレタン系プレポリマーは、重量平均分子量(Mw)が500g/mol~3000g/molであり、具体的に600g/mol~2000g/mol、700g/mol~1500g/mol、または800g/mol~1000g/molであり得る。
【0024】
また、ウレタン系プレポリマーは、イソシアネート末端基含有量(NCO%)が7.5重量%~11重量%であり、具体的に7.5重量%~10重量%、8重量%~10重量%、または8.5重量%~9.5重量%であり得る。前記NCO%が前記範囲内であることにより、研磨速度、研磨プロファイル等が求められるレベルを示すとともに、CMP工程において半導体基板に欠陥発生を最小化できる研磨パッドを提供することができる。このような研磨パッドは、熱分解後の残留塩素成分の含有量が比較的高く現れ得る。
【0025】
前記ウレタン系プレポリマーを得るための前記ポリオール化合物は、具体的に、ポリエーテル系ポリオール(polyether polyol)、ポリエステル系ポリオール(polyester polyol)、ポリカーボネート系ポリオール(polycarbonate polyol)、およびアクリル系ポリオール(acryl polyol)からなる群より選択される1種以上であり得る。より具体的に、前記ポリオール化合物は、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、およびトリプロピレングリコールからなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0026】
このようなポリオール化合物は、重量平均分子量(Mw)が100g/mol~3000g/molであり、具体的に100g/mol~2500g/mol、200g/mol~2000g/mol、または300g/mol~1800g/molであり得る。例えば、前記ポリオール化合物は、重量平均分子量(Mw)が100g/mol~300未満g/molである低分子量ポリオール化合物と、重量平均分子量(Mw)が300g/mol~1800g/molである高分子量ポリオール化合物とを含み得る。
【0027】
前記ウレタン系プレポリマーを得るための前記イソシアネート化合物は、具体的に、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートおよび脂環式ジイソシアネートからなる群より選択される1種以上であり得る。より具体的に、前記イソシアネート化合物は、2,4-トルエンジイソシアネート(2,4-toluenediisocyanate)、2,6-トルエンジイソシアネート(2,6-toluenediisocyanate)、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート(naphthalene-1,5-diisocyanate)、パラ-フェニレンジイソシアネート(p-phenylenediisocyanate)、トリジンジイソシアネート(tolidinediisocyanate)、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4'-diphenylmethanediisocyanate)、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylenediisocyanate)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(dicyclohexylmethanediisocyanate)、およびイソホロンジイソシアネート(isoporonediisocyanate)からなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0028】
前記硬化剤は、前記ウレタン系プレポリマーと硬化反応をする化合物を含み得る。具体的に、前記硬化剤は、芳香族アミン、脂肪族アミン、芳香族アルコール、および脂肪族アルコールからなる群より選択される1種以上を含み得る。より具体的に、前記硬化剤は、4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)(4,4'-methylenebis(2-chloroaniline))、ジエチルトルエンジアミン(diethyltoluenediamine)、ジアミノジフェニルメタン(diaminodiphenylmethane)、ジメチルチオトルエンジアミン(dimethylthio-toluenediamine)、プロパンジオールビス(p-アミノベンゾエート)(propanediolbis(p-aminobenzoate))、ジアミノジフェニルスルホン(diaminodiphenylsulfone)、m-キシリレンジアミン(m-xylylenediamine)、イソホロンジアミン(isophoronediamine)、エチレンジアミン(ethylenediamine)、ジエチレントリアミン(diethylenetriamine)、トリエチレンテトラアミン(triethylenetetramine)、ポリプロピレンジアミン(polypropylenediamine)、およびポリプロピレントリアミン(polypropylenetriamine)からなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0029】
例えば、前記硬化剤は、4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)を含むものが好ましい。前記硬化剤が、前記4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)を含むことにより硬化反応が最適化され、物性全般に優れるとともに、熱分解後の残留塩素成分が比較的高含有量であり得るように制御された研磨パッドを提供し得る。
【0030】
前記硬化剤の含有量は、前記ウレタン系プレポリマー100重量部に対して18重量部~27重量部であり、具体的に19重量部~26重量部、または20重量部~26重量部であり得る。前記硬化剤の含有量が前記範囲内であることにより、物性に優れた研磨パッドを実現するのにさらに有利であり得る。
【0031】
一方、前記ウレタン系プレポリマーと前記硬化剤との反応比(硬化反応比)は、具体的に1:0.75~1.1の当量比、1:0.8~1.05の当量比、1:0.85~1.05の当量比、または1:0.9~1の当量比であり得る。前記反応比で硬化反応が行われることにより硬化反応が最適化され、物性全般に優れるとともに、熱分解後の残留塩素成分が比較的高含有量であり得るように制御された研磨パッドを提供し得る。
【0032】
前記組成物に含まれる発泡剤は、前記研磨層10内に気孔構造を形成するためのものであって、固相発泡剤、液相発泡剤および気相発泡剤(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス)からなる群より選択される1種以上を含み得る。具体的に、前記発泡剤は、膨張可能な粒子を含有する固相発泡剤であることが好ましい。
【0033】
前記膨張可能な粒子は、熱または圧力などにより膨張が可能な特性を有する粒子である。具体的に、前記膨張可能な粒子は、熱膨張された(expanded)粒子、未膨張(unexpanded)の粒子、またはそれらの組み合わせを含み得る。前記熱膨張された粒子は、熱によって予め膨張された粒子である。前記未膨張の粒子は、前記研磨層10の製造過程で加えられる熱、または圧力によって膨張され最終大きさが決定される粒子のことを意味し得る。そのような膨張可能な粒子は、樹脂材質の外皮と、前記外皮で封入された内部に存在する膨張誘発成分とを含み得る。
【0034】
前記樹脂材質の外皮は、熱可塑性樹脂を含み得る。具体的に、前記熱可塑性樹脂は、塩化ビニリデン系共重合体、アクリロニトリル系共重合体、メタクリロニトリル系共重合体、およびアクリル系共重合体からなる群より選択される1種以上であり得る。
【0035】
前記膨張誘発成分は、炭化水素化合物、クロロフルオロ化合物およびテトラアルキルシラン化合物からなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0036】
具体的に、前記炭化水素化合物は、エタン(ethane)、エチレン(ethylene)、プロパン(propane)、プロペン(propene)、n-ブタン(n-butane)、イソブタン(isobutane)、n-ブテン(n-butene)、イソブテン(isobutene)、n-ペンタン(n-pentane)、イソペンタン(isopentane)、ネオペンタン(neopentane)、n-ヘキサン(n-hexane)、ヘプタン(heptane)、および石油エーテル(petroleum ether)からなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0037】
前記クロロフルオロ化合物は、トリクロロフルオロメタン(trichlorofluoromethane、CClF)、ジクロロジフルオロメタン(dichlorodifluoromethane、CCl)、クロロトリフルオロメタン(chlorotrifluoromethane、CClF)、およびジクロロテトラフルオロエチレン(dichlorotetrafluoroethylene、CClF-CClF)からなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0038】
前記テトラアルキルシラン化合物は、テトラメチルシラン(tetramethylsilane)、トリメチルエチルシラン(trimethylethylsilane)、トリメチルイソプロピルシラン(trimethylisopropylsilane)、およびトリメチル-n-プロピルシラン(trimethyl-n-propylsilane)からなる群より選択される1種以上含み得る。
【0039】
例えば、前記膨張誘発成分は、前記クロロフルオロ化合物であることが好ましい。前記膨張誘発成分が前記クロロフルオロ化合物であることにより、前記研磨層10内に気孔構造が均一で且つ求められるレベルに形成され、物性全般に優れるとともに、熱分解後の残留塩素成分が比較的高含有量であり得るように制御された研磨パッドを提供し得る。
【0040】
このような固相発泡剤は、平均粒径が5μm~200μmであり、具体的に10μm~100μm、15μm~70μm、または20μm~45μmであり得る。なお、固相発泡剤が、前記膨張可能な粒子として、前記熱膨張された粒子を含む場合、前記平均粒径は、前記熱膨張された粒子自体の平均粒径のことを意味し得る。また、前記固相発泡剤が、前記膨潤可能粒子として、前記未膨張の粒子を含有する場合、前記平均粒径は、熱または圧力によって膨張された後の粒子の平均粒径のことを意味し得る。
【0041】
前記固相発泡剤の含有量は、前記ウレタン系プレポリマー100重量部に対して0.5重量部~10重量部であり、具体的に0.7重量部~5重量部、0.9重量部~3重量部、または1重量部~2重量部であり得る。前記固相発泡剤の含有量が前記範囲内であることにより、物性に優れた研磨パッドを実現するのにさらに有利であり得る。
【0042】
一方、前記研磨層10を形成するための前記組成物は、界面活性剤、反応速度調整剤のような添加剤をさらに含み得る。
前記界面活性剤は、具体的にシリコーン系界面活性剤であり得る。
【0043】
前記反応速度調整剤は、具体的に、トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルブタンジアミン、2-メチル-トリエチレンジアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロパノールアミン、1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、ビス(2-メチルアミノエチル)エーテル、トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N,N,N,N''-ペンタメチルジエチルジメチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ベンジルジメチルアミン、N-エチルモルホリン、N,N-ジメチルアミノエチルモルホリン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、2-メチル-2-アザノルボルネン、ジブチルスズジラウレート、スタナスオクトエート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジアセテート、ジブチルスズマレート、ジブチルスズビス(2-エチルヘキサノエート)、およびジブチルスズジメルカプチドからなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0044】
このような組成物から形成される研磨層10の厚さは特に限定されないが、具体的に0.5mm~5mm、1mm~4.5mm、1.5mm~4mm、または2mm~3mmであり得る。前記研磨層10の厚さが前記範囲内であることにより、CMP工程が安定して行われるとともに、研磨パッドの軽量化を実現し得る。
【0045】
[クッション層]
実現例による研磨パッドにさらに含まれるクッション層30は、前記研磨層10下部に設けられ、前記研磨層10を安定的に支持しながら、研磨層10に加えられる衝撃を吸収および/または分散させる役割をする。このようなクッション層30は、不織布または多孔質パッドを用いて形成(製造)し得る。
【0046】
前記クッション層30の厚さは特に限定されないが、具体的に0.5mm~2.5mm、0.6mm~2.3mm、0.7mm~2mm、または1mm~1.5mmであり得る。前記クッション層30の厚さが前記範囲内であることにより、研磨層10を安定的に支持しながら、研磨パッドの軽量化を実現することができる。
【0047】
[接着層]
実現例による研磨パッドにさらに含まれる接着層20は、前記研磨層10と前記クッション層30との間に設けられ、前記研磨層10と前記クッション層30とを結合させる役割をする。さらに、前記接着層20は、前記研磨層10に供給される研磨スラリーが前記クッション層30に流出するのを防止する役割も果たし得る。このような接着層20は、ホットメルト接着剤組成物を用いて形成(製造)することができる。
【0048】
前記ホットメルト接着剤組成物は、通常公知のホットメルト接着剤を含み得る。前記ホットメルト接着剤は、具体的に、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリオレフィン系樹脂からなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0049】
このような接着層20の厚さは特に限定されないが、具体的に5μm~30μm、10μm~30μm、20μm~27μm、または23μm~25μmであり得る。前記接着層20の厚さが前記範囲内であることにより、研磨層10とクッション層30との間の結合力(接着力)を求められるレベルに確保することができる。
【0050】
一方、実現例による研磨パッドは、熱分解の際に残留塩素成分を含み得る。すなわち、実現例による研磨パッドは、熱分解後の塩素成分の含有量が特定の範囲を示すように制御されたものであって、これにより、硬度、弾性モジュラスなどの物性に優れ、CMP工程において高い研磨率と研磨平坦度を示し得る。
【0051】
具体的に、実現例による研磨パッドは、320℃にて6時間熱分解して得られた熱分解油を、KS M 2457規格に基づいて分析する際、塩素成分の含有量が13000mg/kg(=ppm)以上を示し得る。より具体的に、前記塩素成分の含有量は、13300mg/kg以上、13500mg/kg以上、13800mg/kg以上、または14000mg/kg以上であり得る。例えば、前記塩素成分の含有量は、13000mg/kg~16000mg/kg、13300mg/kg~15800mg/kg、13500mg/kg~15700mg/kg、13800mg/kg~15500mg/kg、または14000mg/kg~15300mg/kgであり得る。前記研磨パッドを熱分解して得られた熱分解油に含まれている残留塩素成分の含有量が前記範囲内であることにより、研磨パッドは塩素成分による環境問題を誘発しないとともに、高い硬度および弾性モジュラス等を示し得る。
【0052】
また、実現例による研磨パッドは、熱分解の際に残留金属成分を含み得る。具体的に、実現例による研磨パッドは、320℃にて6時間熱分解して得られた熱分解油を、高周波誘導結合型プラズマ発光分析法(Inductively coupled plasma atomic emission spectrometry)で分析する際、金属成分の含有量が4mg/kg(=ppm)未満であり得る。より具体的に、前記金属成分の含有量は、1μg/kg(=ppb)~2mg/kg、10μg/kg~1mg/kg、100μg/kg~800μg/kg、または300μg/kg~500μg/kgであり得る。前記金属成分は、研磨パッドの製造時に使用される触媒成分等に由来するものであり、金属成分の検出は、物性に優れた研磨パッドが製造されたことを意味し得る。具体的に、前記研磨パッドを熱分解して得られた熱分解油に含まれている金属成分の含有量が前記範囲内であることにより、研磨パッドは高い強度および硬度などを示し得る。一方、前記金属成分は特に限定されないが、具体的に、カドミウム(Cd)、クロム(Cr)、鉛(Pb)およびヒ素(As)からなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0053】
一方、実現例による研磨パッドを熱分解して得られた熱分解油は、様々な物質を含むことがあり、これを蒸留すると、熱分解油に含まれている各物質によって特定範囲の沸点を示し得る。具体的に、前記熱分解油(熱分解油に含まれている物質)の沸点をASTM D2887(具体的に、ASTM D2887-19a)規格に基づいて分析する際、初留点(initial boiling point)が53℃~62℃であり、終末点(final boiling point)が510℃~520℃であり得る。例えば、前記熱分解油の初留点は、54℃~61℃、55℃~60℃、56℃~59℃、または57℃~58℃であり得る。また、前記熱分解油の終末点は、511℃~519℃、512℃~518℃、513℃~517℃、または514℃~516℃であり得る。
【0054】
また、前記熱分解油を蒸留して沸点を分析すると、前記熱分解油の5重量%を占める物質の沸点は、62℃~73℃(例えば、63℃~72℃、または65℃~70℃)であり、前記熱分解油の10重量%を占める物質の沸点は、73℃~90℃(例えば、74℃~85℃、または75℃~80℃)であり、前記熱分解油の20重量%を占める物質の沸点は、90℃~110℃(例えば、92℃~105℃、または95℃~100℃)であり、前記熱分解油の30重量%を占める物質の沸点は、110℃~130℃(例えば、112℃~125℃、または115℃~120℃)であり、前記熱分解油の40重量%を占める物質の沸点は、130℃~185℃(例えば、135℃~175℃、または145℃~155℃)であり、前記熱分解油の50重量%を占める物質の沸点は、185℃~225℃(例えば、190℃~210℃、または192℃~200℃)であり得る。また前記熱分解油の60重量%を占める物質の沸点は、225℃~265℃(例えば、228℃~245℃、または230℃~235℃)であり、前記熱分解油の70重量%を占める物質の沸点は、265℃~325℃(例えば、270℃~310℃、または275℃~285℃)であり、前記熱分解油の80重量%を占める物質の沸点は、325℃~350℃(例えば、328℃~340℃、または330℃~335℃)であり、前記熱分解油の90重量%を占める物質の沸点は、350℃~420℃(例えば、370℃~400℃、または385℃~395℃)であり、前記熱分解油の95重量%を占める物質の沸点は、420℃~505℃(例えば、425℃~480℃、または430℃~440℃)であり得る。
【0055】
このような実現例による研磨パッドは、ショアD硬度が50超、52以上、54以上、または56以上(具体的に、50超~65、52~63、54~62、または55~60)であり得る。
【0056】
また、実現例による研磨パッドは、弾性モジュラスが、90N/mm以上、95N/mm以上、100N/mm以上、110N/mm以上、120N/mm以上、または130N/mm以上(具体的に、90N/mm~160N/mm、95N/mm~158N/mm、100N/mm~155N/mm、110N/mm~153N/mm、または120N/mm~150N/mm)であり得る。
【0057】
このような実現例による研磨パッドは、CMP工程において優れた研磨率および研磨平坦度を示し得る。
【0058】
具体的に、実現例による研磨パッドは、研磨率(Å/分)が3700Å/分以上、3800Å/分以上、3900Å/分以上、3950Å/分以上、または4000Å/分以上(具体的に、3700Å/分~4500Å/分、3800Å/分~4400Å/分、3900Å/分~4350Å/分、または4000Å/分~4300Å/分)であり得る。
【0059】
また、実現例による研磨パッドは、研磨平坦度(%)が4.9%以上、5.0%以上、5.1%以上、5.2%以上、または5.3%以上(具体的に、4.9%~6.5%、5.0%~6.3%、5.1%~6.2%、5.2%~6.1%、または5.3%~6.0%)であり得る。
【0060】
一方、実現例による研磨パッドの熱分解温度は、具体的に280℃~345℃、290℃~340℃、295℃~330℃、300℃~325℃、または310℃~320℃であり得る。
【0061】
実現例による研磨パッドは、ウレタン系プレポリマー、硬化剤および発泡剤を順次または同時に混合して組成物を製造する段階と、前記組成物をモールド内に注入し硬化して研磨層を形成する段階と、を経て製造し得る。
【0062】
前記混合は、具体的に1000rpm~10000rpm、または4000rpm~7000rpmの速度で行われ得る。このような混合により、前記組成物を製造する際の温度は50℃~150℃であり、必要に応じて真空脱泡が行われ得る。
【0063】
前記研磨層を形成する段階は、具体的に60℃~150℃の温度および50kg/m~260kg/mの圧力条件下で行われ得る。
【0064】
実現例による研磨パッドは、前記研磨層を形成した後、接着層およびクッション層を形成する段階をさらに経て製造し得る。また、研磨層表面を切削する工程、研磨層の表面に溝(groove)を加工する工程、検査工程、包装工程などをさらに経ても良く、これらの工程には研磨パッドを製造する通常の方法が適用され得る。
【0065】
<熱分解油>
実現例は、研磨パッドから得られた熱分解油を提供する。具体的に、実現例による熱分解油は、研磨パッドから得られた熱分解油であり、KS M 2457規格に基づいて分析する際、塩素成分の含有量が13000mg/kg(=ppm)以上を示し得る。具体的に、前記塩素成分の含有量は、13300mg/kg以上、13500mg/kg以上、13800mg/kg以上、または14000mg/kg以上であり得る。例えば、前記塩素成分の含有量は、13000mg/kg~16000mg/kg、13300mg/kg~15800mg/kg、13500mg/kg~15700mg/kg、13800mg/kg~15500mg/kg、または14000mg/kg~15300mg/kgであり得る。前記熱分解油に含まれている残留塩素成分の含有量が前記範囲内であることにより、熱分解油を高品質の熱源に転換され得る。
【0066】
具体的に、前記研磨パッドを熱分解して得られた熱分解油は、精製過程(例えば、蒸留など)を経て重質油、ナフサ等に転換されることができ、この際、前記重質油は暖房油、発電所燃料等の熱源として使用され得る。また、前記ナフサは、クラッキング(Cracking)工程などを経てベンゼン、トルエン、キシレン、ブタンジオール等のような石油化学基礎原料に転換され、産業に使用され得る。
【0067】
その外に、前記研磨パッドを熱分解して得られた熱分解油は、金属成分を含み得る。具体的に、実現例による熱分解油は、高周波誘導結合型プラズマ発光分析法(Inductively coupled plasma atomic emission spectrometry)で分析する際、金属成分の含有量が4mg/kg(=ppm)未満であり得る。より具体的に、前記金属成分の含有量は、1μg/kg(=ppb)~2mg/kg、10μg/kg~1mg/kg、100μg/kg~800μg/kg、または300μg/kg~500μg/kgであり得る。前記金属成分は特に限定されないが、具体的に、カドミウム、クロム、鉛、およびヒ素からなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0068】
また、実現例による熱分解油は様々な物質を含むことがあり、これを蒸留すると、熱分解油に含まれている各物質によって特定範囲の沸点を示し得る。具体的に、前記熱分解油(熱分解油に含まれている物質)の沸点をASTM D2887(具体的に、ASTM D2887-19a)規格に基づいて分析する際、初留点が53℃~62℃であり、終末点が510℃~520℃であり得る。例えば、前記熱分解油の初留点は、54℃~61℃、55℃~60℃、56℃~59℃、または57℃~58℃であり得る。また、前記熱分解油の終末点は、511℃~519℃、512℃~518℃、513℃~517℃、または514℃~516℃であり得る。
【0069】
また、前記熱分解油を蒸留して沸点を分析すると、前記熱分解油の5重量%を占める物質の沸点は、62℃~73℃(例えば、63℃~72℃、または65℃~70℃)であり、前記熱分解油の10重量%を占める物質の沸点は、73℃~90℃(例えば、74℃~85℃、または75℃~80℃)であり、前記熱分解油の20重量%を占める物質の沸点は、90℃~110℃(例えば、92℃~105℃、または95℃~100℃)であり、前記熱分解油の30重量%を占める物質の沸点は、110℃~130℃(例えば、112℃~125℃、または115℃~120℃)であり、前記熱分解油の40重量%を占める物質の沸点は、130℃~185℃(例えば、135℃~175℃、または145℃~155℃)であり、前記熱分解油の50重量%を占める物質の沸点は、185℃~225℃(例えば、190℃~210℃、または192℃~200℃)であり得る。また、前記熱分解油の60重量%を占める物質の沸点は、225℃~265℃(例えば、228℃~245℃、または230℃~235℃)であり、前記熱分解油の70重量%を占める物質の沸点は265℃~325℃(例えば、270℃~310℃、または275℃~285℃)であり、前記熱分解油の80重量%を占める物質の沸点は、325℃~350℃(例えば、328℃~340℃、または330℃~335℃)であり、前記熱分解油の90重量%を占める物質の沸点は、350℃~420℃(例えば、370℃~400℃、または385℃~395℃)であり、前記熱分解油の95重量%を占める物質の沸点は、420℃~505℃(例えば、425℃~480℃、または430℃~440℃)であり得る。
【0070】
このような熱分解油を得るために前記研磨パッドを熱分解する温度は特に限定されないが、具体的に280℃~350℃であり、より具体的に280℃~345℃、290℃~340℃、295℃~330℃、300℃~325℃、または310℃~320℃であり得る。
【0071】
一方、前記研磨パッドの熱分解が完了すると、残留固形物が残ることとなるが、それは固形燃料として使用され得る。
【0072】
このような熱分解油は、前述の研磨パッドから得られるものであり、この際、研磨パッドはCMP工程で使用が完了した廃研磨パッドであり得る。これにより、実現例は、廃研磨パッドのリサイクルが困難であった従来の問題を改善することができ、さらには、再生エネルギーの提供および環境問題の低減に寄与することができる。
【0073】
<熱分解油の製造方法>
実現例は、前述の熱分解油の製造方法を提供する。具体的に、前記熱分解油の製造方法は、研磨パッドをチャンバーに投入する段階(S-1段階)と、前記チャンバーに投入された研磨パッドを280℃~350℃にて熱分解する段階(S-2段階)と、前記熱分解によって形成された気化ストリームを熱交換器に通過させて液状の熱分解油を得る段階(S-3段階)と、を含む。
【0074】
前記S-1段階は、研磨パッド、具体的に廃研磨パッドをチャンバーに投入する過程からなり得る。すなわち、CMP工程において使用が完了した廃研磨パッドが前記チャンバーに投入され得る。なお、廃研磨パッドが研磨層以外にクッション層および接着層をさらに含む場合、各層を分離する過程なく、廃研磨パッドは廃棄された状態(研磨層/接着層/クッション層が結合した状態)のままでチャンバーに投入され得る。また、前記チャンバーには、1枚以上、具体的に1~5枚、または2~3枚の廃研磨パッドが同時に投入され得る。これにより、実現例は、廃研磨パッドのリサイクル(処理)を容易に行うことができる。
【0075】
前記チャンバーは、前記研磨パッドの熱分解を行い得る反応器に取り付けられるものであって、耐熱材料からなり、熱分解が完了すると反応器から分離する構造を有し得る。このようなチャンバーには、前記研磨パッド(具体的に廃研磨パッド)の外、研磨パッドの製造時に発生した廃材(スクラップ)がさらに投入されてもよい。
【0076】
前記S-2段階は、前記チャンバーに投入された研磨パッドを280℃~350℃にて熱分解する過程からなり得る。具体的に、前記研磨パッドの熱分解温度は、280℃~345℃、290℃~340℃、295℃~330℃、300℃~325℃、または310℃~320℃であり得る。前記研磨パッドを前記温度範囲で熱分解することにより、熱分解油を高収率で得ることができ、熱分解過程でダイオキシン等のような有害成分が発生することを最小化することができる。また、前記熱分解油に塩素成分が求められるレベルで含まれるように制御し得る。
【0077】
一方、前記研磨パッドの熱分解は、触媒の存在下で行われ得る。前記触媒は、高分子の熱分解工程で用いられる通常公知の触媒であれば特に限定されず、具体的にゼオライト、または水酸化カリウムを含み得る。前記触媒の存在下で前記熱分解が行われることにより、熱分解油の収率を高めながら、タール(tar)等のような副産物の生成を抑制することができる。
【0078】
このようなS-2段階が行われることにより、熱分解油は気化して気化ストリームに転換され得る。
【0079】
前記S-3段階は、前記熱分解によって形成された気化ストリームを熱交換器に通過させて液状の熱分解油を得る過程からなり得る。具体的に、前記気化ストリームは、前記熱交換器を経て冷却されることにより、液状の熱分解油に転換され得る。前記熱交換器は、通常公知の構造および材質からなるものであれば特に限定されない。
【0080】
前記S-3段階を経て得られた熱分解油は、塩素成分を含有し得る。具体的に、前記熱分解油は、KS M 2457規格に基づいて分析する際、塩素成分の含有量が13000mg/kg以上を示し得る。より具体的に、前記塩素成分の含有量は、13300mg/kg以上、13500mg/kg以上、13800mg/kg以上、または14000mg/kg以上であり得る。例えば、前記塩素成分の含有量は、13000mg/kg~16000mg/kg、13300mg/kg~15800mg/kg、13500mg/kg~15700mg/kg、13800mg/kg~15500mg/kg、または14000mg/kg~15300mg/kgであり得る。
【0081】
一方、前記S-3段階の終了後、前記チャンバーに残留する固形物は、別途の回収過程を経て固形燃料として使用され得る。
【0082】
また、前記S-3段階を経て得られた熱分解油は、蒸留等の精製過程を経ても良い。
【0083】
(実施例)
以下の実施例により本実現例をより具体的に説明する。ただし、これらの実施例により本実現例の範囲が限定されるものではない。
【0084】
(実施例1)
ウレタン系プレポリマー、硬化剤、不活性ガス注入ラインおよび反応速度調整剤注入ラインが備えられているキャスティング装置を用いて研磨パッドを製造した。
【0085】
具体的に、プレポリマータンクに未反応NCOを9.3重量%で有するウレタン系プレポリマー(SKC社)を充填し、硬化剤タンクに4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)(Isihara社)を充填し、不活性ガスとしては窒素(N)を適用した。また、前記ウレタン系プレポリマー100重量部に対して、1重量部の固相発泡剤(Akzonobel社)および1重量部のシリコーン系界面活性剤(Evonik社)を予め混合した後、プレポリマータンクに注入した。
【0086】
各々の投入ラインを介して原料をミキシングヘッドに一定の速度で投入しながら撹拌した。この際、プレポリマーと硬化剤は1:0.95の当量比で投入し、不活性ガスである窒素(N)は1L/分の速度で投入した。撹拌した原料を80℃に予熱したモールド(1000mm×1000mm×3mm)に、10kg/分の吐出速度で吐出した後、120℃にてキャスティング(casting)して成形体を得た。その後、前記成形体の上端および下端をそれぞれ0.5mm厚さで切削して、厚さ2mmの研磨シート(研磨層)を得た。
【0087】
次いで、ポリエステル繊維不織布にポリウレタン樹脂が含浸されたクッションシートを用意した。
【0088】
その後、ホットメルト接着剤を用いて前記研磨シートと前記クッションシートを結合することにより、研磨層/接着層/クッション層の構造を有する研磨パッド(厚さ:3.4mm)を製造した。
【0089】
(実施例2)
ウレタン系プレポリマー、硬化剤、不活性ガス注入ラインおよび反応速度調整剤注入ラインが備えられているキャスティング装置を用いて研磨パッドを製造した。この際、不活性ガス注入ラインは遮断した。
【0090】
具体的に、プレポリマータンクに未反応NCOを9.3重量%で有するウレタン系プレポリマー(SKC社)を充填し、硬化剤タンクに4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)(Ishihara社)を充填した。また、前記ウレタン系プレポリマー100重量部に対して、2重量部の固相発泡剤(Akzonobel社)を予め混合した後、プレポリマータンクに注入した。
【0091】
各々の投入ラインを介して原料をミキシングヘッドに一定の速度で投入しながら撹拌した。この際、プレポリマーと硬化剤は1:1.05の当量比で投入した。撹拌した原料を80℃に予熱したモールド(1000mm×1000mm×3mm)に、10kg/分の吐出速度で吐出した後、80℃にてキャスティングして成形体を得た。その後、前記成形体の上端および下端をそれぞれ0.5mm厚さで切削して、厚さ2mmの研磨シート(研磨層)を得た。
【0092】
次いで、ポリエステル繊維不織布にポリウレタン樹脂が含浸されたクッションシートを用意した。
【0093】
その後、ホットメルト接着剤を用いて前記研磨シートと前記クッションシートを結合することにより、研磨層/接着層/クッション層の構造を有する研磨パッド(厚さ:3.4mm)を製造した。
【0094】
(比較例1)
ウレタン系プレポリマー、硬化剤、不活性ガス注入ラインおよび反応速度調整剤注入ラインが備えられているキャスティング装置を用いて研磨パッドを製造した。
【0095】
具体的に、プレポリマータンクに未反応NCOを9.3重量%で有するウレタン系プレポリマー(SKC社)を充填し、硬化剤タンクに4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)(Isihara社)を充填し、不活性ガスとしては窒素(N)を適用した。また、前記ウレタン系プレポリマー100重量部に対して、1重量部の固相発泡剤(Akzonobel社)および1重量部のシリコーン系界面活性剤(Evonik社)を予め混合した後、プレポリマータンクに注入した。
【0096】
各々の投入ラインを介して原料をミキシングヘッドに一定の速度で投入しながら撹拌した。この際プレポリマーと硬化剤は1:0.7の当量比で投入し、不活性ガスである窒素(N)は1L/分の速度で投入した。撹拌した原料を80℃に予熱したモールド(1000mm×1000mm×3mm)に、10kg/分の吐出速度で吐出した後、80℃にてキャスティングして成形体を得た。その後、前記成形体の上端および下端をそれぞれ0.5mm厚さで切削して、厚さ2mmの研磨シート(研磨層)を得た。
【0097】
次いで、ポリエステル繊維不織布にポリウレタン樹脂が含浸されたクッションシートを用意した。
【0098】
その後、ホットメルト接着剤を用いて研磨シートとクッションシートとを結合することにより、研磨層/接着層/クッション層の構造を有する研磨パッド(厚さ:3.4mm)を製造した。
【0099】
(比較例2)
ウレタン系プレポリマー、硬化剤、不活性ガス注入ラインおよび反応速度調整剤注入ラインが備えられているキャスティング装置を用いて研磨パッドを製造した。
【0100】
具体的に、プレポリマータンクに未反応NCOを7.1重量%で有するウレタン系プレポリマー(SKC社)を充填し、硬化剤タンクに4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)(Isihara社)を充填し、不活性ガスとしては窒素(N)を適用した。また、前記ウレタン系プレポリマー100重量部に対して、1重量部の固相発泡剤(Akzonobel社)および1重量部のシリコーン系界面活性剤(Evonik社)を予め混合した後、プレポリマータンクに注入した。
【0101】
各々の投入ラインを介して原料をミキシングヘッドに一定の速度で投入しながら撹拌した。この際、プレポリマーと硬化剤は1:0.95の当量比で投入し、不活性ガスである窒素(N)は1L/分の速度で投入した。撹拌した原料を80℃で予熱したモールド(1000mm×1000mm×3mm)に、10kg/分の吐出速度で吐出した後、80℃にてキャスティングして成形体を得た。その後、前記成形体の上端および下端をそれぞれ0.5mm厚さで切削して、厚さ2mmの研磨シート(研磨層)を得た。
【0102】
次いで、ポリエステル繊維不織布にポリウレタン樹脂が含浸されたクッションシートを用意した。
【0103】
その後、ホットメルト接着剤を用いて前記研磨シートとクッションシートとを結合することにより、研磨層/接着層/クッション層の構造を有する研磨パッド(厚さ:3.4mm)を製造した。
【0104】
(比較例3)
硬化剤として4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)の代わりにジメチルチオトルエンジアミン(dimethylthio-toluene diamine)(Covestro社)を使用したことを除いては、実施例1と同様の過程を経て研磨パッドを製造した。
【0105】
(試験例1:塩素成分の含有量分析1)
実施例1、2および比較例1~3でそれぞれ製造した研磨パッド3枚をチャンバーに投入し、320℃の温度を6時間加えて研磨パッドを熱分解した。前記熱分解によって形成された気化ストリームを熱交換器に通過させ液状の熱分解油を得た。その後、液状の熱分解油ストリームが消えると冷却する過程を経て、熱分解油の製造を終了した。
【0106】
製造した熱分解油を対象に、KS M 2457規格(KS M 2457:2003)に基づいて塩素成分の含有量を分析し、その結果を下記表1に示した。
【0107】
(試験例2:塩素成分の含有量分析2)
実施例1および2でそれぞれ製造した研磨パッドをCMP装置の定盤に固定し、シリコンウェーハ(直径:300mm)のタングステン(W)膜を下にセットしてCMP工程(研磨荷重:2.8psi、か焼シリカスラリー適用)を行った。次いで、前記研磨パッドの使用が不可能と判定されるまで、前記CMP工程を繰り返した。その後、使用が不可能と判定された研磨パッド(廃研磨パッド)を収集し、試験例1と同様の過程を経て熱分解油を製造した。
【0108】
製造した熱分解油を対象に、KS M 2457規格(KS M 2457:2003)に基づいて塩素成分の含有量を分析し、その結果を下記表1に示した。
【0109】
【表1】
【0110】
前記表1を参照すると、実現例に該当する実施例1および2による研磨パッド(研磨工程前の研磨パッド)は、熱分解後の塩素成分の含有量が13000mg/kg以上と確認されたことに対して、比較例1~3による研磨パッドは、熱分解後の塩素成分の含有量が13000mg/kg未満であることが確認できる。
【0111】
一方、CMP工程を経て収集された実施例1および2による廃研磨パッドもまた、熱分解後の塩素成分の含有量が13000mg/kg以上と確認され、塩素成分は、CMP工程に由来するものではなく研磨パッド自体に由来するものであることが分かる。
【0112】
(試験例3:金属成分の含有量分析)
試験例1により得られた実施例1の熱分解油を、高周波誘導結合型プラズマ発光分析法(分析機器:Perkin-Elmer社、OPTIMA 7300 DV)により分析して金属成分を確認し、その結果を下記表2に示した。
【0113】
【表2】
【0114】
前記表2を参照すると、実現例に該当する実施例1の熱分解油において微量の金属成分が検出されたことを確認できる。
【0115】
(試験例4:熱分解油の物質分析)
試験例1により得られた実施例1の熱分解油を対象に、ASTM D2887-19a規格に基づく高温シミュレーション蒸留試験(SIMDIS)を行い、熱分解油に含まれている各物質の沸点を確認し、その結果を下記表3に示した。
【0116】
【表3】
【0117】
前記表3を参照すると、実現例に該当する実施例1の熱分解油に様々な物質が含まれており、これにより各物質によって特定の沸点を示すことが確認できる。
【0118】
(試験例5:研磨パッドの物性評価)
実施例1、2(研磨工程前の研磨パッド)および比較例1~3でそれぞれ製造した研磨パッドの物性を下記のように評価し、その結果を下記表4に示した。
【0119】
(1)硬度
縦および横が2cm角の研磨パッド試験片を温度25℃および湿度50±5%の環境で16時間放置した。その後、D型硬度計を用いて研磨パッドのショアD硬度を測定した。
【0120】
(2)弾性モジュラス
横および縦が4cm×1cmの研磨パッド試験片を対象に弾性モジュラスを評価した。具体的に、万能試験計(UTM)を用いて50mm/分の速度において、伸び率が70%のときと伸び率が20%のときの線を連結した傾きで示して、弾性モジュラスを算出した。
【0121】
(3)研磨率
CMP装置の定盤上に研磨パッドを固定し、シリコンウェーハ(直径:300mm)のタングステン(W)膜を下にセットしてCMP工程を行った。具体的に、研磨荷重が2.8psiとなるように調整し、研磨パッド上にか焼シリカスラリーを190ml/分の速度で投入しながら、定盤を115rpmで30秒間回転させて、タングステン(W)膜を研磨した。研磨後、シリコンウェーハをキャリアから取り外し、回転式脱水器(spin dryer)に取り付け、精製水で洗浄した後、15秒間乾燥した。乾燥したシリコンウェーハを、接触式面抵抗測定装置(4探針プローブ)を用いて研磨前後の厚さ差を測定し、下記式1に従って研磨率を算出した。
【0122】
[式1]
研磨率(Å/分)=シリコンウェーハ(タングステン膜)の研磨厚さ(Å)/研磨時間(分)
(4)研磨平坦度
前記研磨率測定と同じ研磨条件で1分間研磨した後、98箇所のシリコンウェーハの面内膜厚を測定し、下記式2に従って研磨平坦度(WIWNU:Within Wafer Non Uniformity)を算出した。
【0123】
[式2]
研磨平坦度(%)=(研磨された厚さの標準偏差(Å)/平均研磨厚さ(Å))×100
【0124】
【表4】
【0125】
前記表4を参照すると、実現例に該当する実施例1および2による研磨パッドは、比較例1~3による研磨パッドに比べて硬度および弾性モジュラスが高く、研磨率および研磨平坦度にも優れていることが確認できる。
【符号の説明】
【0126】
10:研磨層
20:接着層
30:クッション層
図1