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特開2024-111831ワークの保持装置及びワークの保持方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111831
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】ワークの保持装置及びワークの保持方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 41/06 20120101AFI20240809BHJP
   B23Q 3/08 20060101ALI20240809BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20240809BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240809BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
B24B41/06 Z
B24B41/06 L
B23Q3/08 A
B23Q17/00 A
H01L21/78 N
H01L21/68 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024015568
(22)【出願日】2024-02-05
(31)【優先権主張番号】P 2023016059
(32)【優先日】2023-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植山 博光
【テーマコード(参考)】
3C016
3C029
3C034
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
3C016DA01
3C029EE01
3C034AA08
3C034AA19
3C034BB73
3C034BB94
3C034CA30
3C034CB20
3C034DD18
5F063AA26
5F063BA17
5F063CA04
5F063FF04
5F131AA12
5F131BA52
5F131CA38
5F131EA05
5F131EB02
5F131KA22
5F131KA54
(57)【要約】
【課題】ワークを吸引保持する装置において、ワークを適切に保持することができ、さらに、過剰な電力消費を防止する。
【解決手段】ワークを保持する保持面111を有する保持テーブル13と、モータ141と、モータの回転数を調整するインバータ142と、を有する吸引ポンプ14と、保持面111と吸引ポンプ14とを連通する吸引路15と、吸引路15の圧力を測定する圧力計16と、制御ユニット17と、を備え、制御ユニット17は、ワークを保持面111に吸引保持した際に圧力計16が測定した値に応じて、モータ141の回転数を変更し保持テーブル13の吸引力を調整する吸引力調整部171を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持する保持面を有する保持テーブルと、
モータと、該モータの回転数を調整するインバータと、を有する吸引ポンプと、
該保持面と該吸引ポンプとを連通する吸引路と、
該吸引路の圧力を測定する圧力計と、
制御ユニットと、を備え、
該制御ユニットは、
該ワークを該保持面に吸引保持した際に該圧力計が測定した値に応じて、該モータの回転数を変更し該保持テーブルの吸引力を調整する吸引力調整部を有することを特徴とするワークの保持装置。
【請求項2】
該制御ユニットは、
該ワークを該保持面に吸引保持した際に該圧力計が測定する圧力が所定のしきい値に至るように、該モータの回転数を調整することを特徴とする
請求項1に記載のワークの保持装置。
【請求項3】
該制御ユニットは、
該モータの回転数を上限値に設定しても、該ワークを該保持面に保持した際に該圧力計が測定する圧力が所定のしきい値に至らない場合、該モータの回転数を上限値に維持することを特徴とする
請求項1に記載のワークの保持装置。
【請求項4】
ワークを保持する保持面を有する保持テーブルと、
モータと、該モータの回転数を調整するインバータと、を有する吸引ポンプと、
該保持面と該吸引ポンプとを連通する吸引路と、
該吸引路の圧力を測定する圧力計と、
制御ユニットと、を備え、
該制御ユニットは、
該モータの回転数を変更可能に設定する回転数設定部を有し、
該回転数設定部に設定された該回転数によって、該ワークを該保持面に吸引保持する吸引力が変更されることを特徴とする
ワークの保持装置。
【請求項5】
ワークを保持する保持面を有する保持テーブルと、
モータと、該モータの回転数を調整するインバータと、を有する吸引ポンプと、
該保持面と該吸引ポンプとを連通する吸引路と、
該吸引路の圧力を測定する圧力計と、
制御ユニットと、
を備える保持装置におけるワークの保持方法であって、
該モータの初期回転数を設定する初期回転数設定工程と、
該初期回転数の下で該吸引ポンプを作動させて該保持テーブルにおいて該ワークを吸引保持する保持工程と、
該ワークの吸引保持中における該圧力計の測定値を取得する圧力値取得工程と、
該測定値に応じて該モータの回転数を調整する調整工程と、
を備えるワークの保持方法。
【請求項6】
該調整工程では、該ワークを該保持面に吸引保持した際に該圧力計の測定値が所定のしきい値に至るように、該モータの回転数を調整することを特徴とする
請求項5に記載のワークの保持方法。
【請求項7】
該調整工程では、該モータの回転数を上限値まで上昇させても、該圧力計の測定値が所定のしきい値に至らない場合、該モータの回転数を上限値に維持することを特徴とする
請求項5に記載のワークの保持方法。
【請求項8】
ワークを保持する保持面を有する保持テーブルと、
モータと、該モータの回転数を調整するインバータと、を有する吸引ポンプと、
該保持面と該吸引ポンプとを連通する吸引路と、
該吸引路の圧力を測定する圧力計と、
制御ユニットと、
を備える保持装置におけるワークの保持方法であって、
該ワークに応じて該モータの回転数を設定する回転数設定工程と、
該回転数の下で該吸引ポンプを作動させて該保持テーブルにおいて該ワークを吸引保持する保持工程と、
該ワークの吸引保持中における該圧力計の測定値を取得する圧力値取得工程と、
該圧力計の測定値が所定のしきい値より高い場合はエラーを報知し、該圧力計の測定値が所定のしきい値より高くない場合は該回転数を維持する判断工程と、
を備えるワークの保持方法。
【請求項9】
ワークを保持する保持面を有する保持テーブルと、
モータと、該モータの回転数を調整するインバータと、を有する吸引ポンプと、
該保持面と該吸引ポンプとを連通する吸引路と、
該吸引路を流れる流体の流速を測定する流速計と、
制御ユニットと、を備え、
該制御ユニットは、
該ワークを該保持面によって吸引保持した際に該流速計によって測定された流速値に応じて、該モータの回転数を変更し該保持テーブルの吸引力を調整する吸引力調整部を有することを特徴とするワークの保持装置。
【請求項10】
該制御ユニットは、
該ワークを該保持面によって吸引保持した際に該流速計によって測定される流速値が、所定のしきい値以下となるように、該モータの回転数を調整することを特徴とする、
請求項9に記載のワークの保持装置。
【請求項11】
該制御ユニットは、
該モータの回転数を上限値に設定しても、該ワークを該保持面によって保持した際に該流速計によって測定される流速値が該しきい値以下とならない場合、該モータの回転数を上限値に維持することを特徴とする、
請求項9に記載のワークの保持装置。
【請求項12】
ワークを保持する保持面を有する保持テーブルと、
モータと、該モータの回転数を調整するインバータと、を有する吸引ポンプと、
該保持面と該吸引ポンプとを連通する吸引路と、
該吸引路を流れる流体の流速を測定する流速計と、
制御ユニットと、を備え、
該制御ユニットは、該モータの回転数を変更可能に設定する回転数設定部を有し、
該回転数設定部に設定された該回転数によって、該ワークを該保持面に吸引保持する吸引力が変更されることを特徴とするワークの保持装置。
【請求項13】
ワークを保持する保持面を有する保持テーブルと、
モータと、該モータの回転数を調整するインバータと、を有する吸引ポンプと、
該保持面と該吸引ポンプとを連通する吸引路と、
該吸引路を流れる流体の流速を測定する流速計と、
制御ユニットと、
を備える保持装置におけるワークの保持方法であって、
該モータの初期回転数を設定する初期回転数設定工程と、
該初期回転数の下で該吸引ポンプを作動させて、該保持テーブルにおいて該ワークを吸引保持する保持工程と、
該ワークの吸引保持中における該流速計の測定値を取得する流速値取得工程と、
該測定値に応じて該モータの回転数を調整する調整工程と、
を備えるワークの保持方法。
【請求項14】
ワークを保持する保持面を有する保持テーブルと、
モータと、該モータの回転数を調整するインバータと、を有する吸引ポンプと、
該保持面と該吸引ポンプとを連通する吸引路と、
該吸引路を流れる流体の流速を測定する流速計と、
制御ユニットと、
を備える保持装置におけるワークの保持方法であって、
該ワークに応じて該モータの回転数を設定する回転数設定工程と、
該回転数の下で該吸引ポンプを作動させて該保持テーブルにおいて該ワークを吸引保持する保持工程と、
該ワークの吸引保持中における該流速計の測定値を取得する流速値取得工程と、
該流速計の測定値が所定のしきい値よりも大きい場合にはエラーを報知し、該流速計の測定値が所定のしきい値以下である場合には該回転数を維持する判断工程と、
を備えるワークの保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを保持する保持装置及びワークの保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
保持テーブルの保持面にワークを吸引保持するワークの保持装置において、吸引力を発生させるポンプには、モータとモータの回転数を制御するインバータとが含まれており、吸引力を発生させるモータの回転数が一定となるように制御されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-010996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、容量が大きなポンプを利用すると、ワークを吸引保持するのには過剰であり、モータを回転させるための電力が余計にかかってしまうという問題があった。また、モータの回転数が固定されていると、反りが大きいワークの場合に吸引保持できないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題にかんがみなされたもので、ワークを吸引保持する装置において、ワークを適切に保持することができ、さらに、過剰な電力消費を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のワークの保持装置は、ワークを保持する保持面を有する保持テーブルと、モータと、該モータの回転数を調整するインバータと、を有する吸引ポンプと、該保持面と該吸引ポンプとを連通する吸引路と、該吸引路の圧力を測定する圧力計と、制御ユニットと、を備え、該制御ユニットは、該ワークを該保持面に吸引保持した際に該圧力計が測定した値に応じて、該モータの回転数を変更し該保持テーブルの吸引力を調整する吸引力調整部を有することを特徴とする。
該制御ユニットは、該ワークを該保持面に吸引保持した際に該圧力計が測定する圧力が所定のしきい値に至るように、該モータの回転数を調整するようにしてもよい。
該制御ユニットは、該モータの回転数を上限値に設定しても、該ワークを該保持面に保持した際に該圧力計が測定する圧力が所定のしきい値に至らない場合、該モータの回転数を上限値に維持するようにしてもよい。
また、本発明のワークの保持装置は、ワークを保持する保持面を有する保持テーブルと、モータと、該モータの回転数を調整するインバータと、を有する吸引ポンプと、該保持面と該吸引ポンプとを連通する吸引路と、該吸引路の圧力を測定する圧力計と、制御ユニットと、を備え、該制御ユニットは、該モータの回転数を変更可能に設定する回転数設定部を有し、該回転数設定部に設定された該回転数によって、該ワークを該保持面に吸引保持する吸引力が変更されることを特徴とする。
【0007】
本発明のワークの保持方法は、ワークを保持する保持面を有する保持テーブルと、モータと、該モータの回転数を調整するインバータと、を有する吸引ポンプと、該保持面と該吸引ポンプとを連通する吸引路と、該吸引路の圧力を測定する圧力計と、制御ユニットと、を備える保持装置におけるワークの保持方法であって、該モータの初期回転数を設定する初期回転数設定工程と、該初期回転数の下で該吸引ポンプを作動させて該保持テーブルにおいて該ワークを吸引保持する保持工程と、該ワークの吸引保持中における該圧力計の測定値を取得する圧力値取得工程と、該測定値に応じて該モータの回転数を調整する調整工程と、を備える。
該調整工程では、該ワークを該保持面に吸引保持した際に該圧力計の測定値が所定のしきい値に至るように、該モータの回転数を調整するようにしてもよい。
該調整工程では、該モータの回転数を上限値まで上昇させても、該圧力計の測定値が所定のしきい値に至らない場合、該モータの回転数を上限値に維持するようにしてもよい。
また、本発明のワークの保持方法は、ワークを保持する保持面を有する保持テーブルと、モータと、該モータの回転数を調整するインバータと、を有する吸引ポンプと、該保持面と該吸引ポンプとを連通する吸引路と、該吸引路の圧力を測定する圧力計と、制御ユニットと、を備える保持装置におけるワークの保持方法であって、該ワークに応じて該モータの回転数を設定する回転数設定工程と、該回転数の下で該吸引ポンプを作動させて該保持テーブルにおいて該ワークを吸引保持する保持工程と、該ワークの吸引保持中における該圧力計の測定値を取得する圧力値取得工程と、該圧力計の測定値が所定のしきい値より高い場合はエラーを報知し、該圧力計の測定値が所定のしきい値より高くない場合は該回転数を維持する判断工程と、を備える。
【0008】
また、本発明のワークの保持装置は、ワークを保持する保持面を有する保持テーブルと、モータと、該モータの回転数を調整するインバータと、を有する吸引ポンプと、該保持面と該吸引ポンプとを連通する吸引路と、該吸引路を流れる流体の流速を測定する流速計と、制御ユニットと、を備え、該制御ユニットは、該ワークを該保持面によって吸引保持した際に該流速計によって測定された流速値に応じて、該モータの回転数を変更し該保持テーブルの吸引力を調整する吸引力調整部を有することを特徴とする。
該制御ユニットは、該ワークを該保持面によって吸引保持した際に該流速計によって測定される流速値が、所定のしきい値以下となるように、該モータの回転数を調整してもよい。
該制御ユニットは、該モータの回転数を上限値に設定しても、該ワークを該保持面によって保持した際に該流速計によって測定される流速値が該しきい値以下とならない場合、該モータの回転数を上限値に維持してもよい。
【0009】
また、本発明のワークの保持装置は、ワークを保持する保持面を有する保持テーブルと、モータと、該モータの回転数を調整するインバータと、を有する吸引ポンプと、該保持面と該吸引ポンプとを連通する吸引路と、該吸引路を流れる流体の流速を測定する流速計と、制御ユニットと、を備え、該制御ユニットは、該モータの回転数を変更可能に設定する回転数設定部を有し、該回転数設定部に設定された該回転数によって、該ワークを該保持面に吸引保持する吸引力が変更されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のワークの保持方法は、ワークを保持する保持面を有する保持テーブルと、モータと、該モータの回転数を調整するインバータと、を有する吸引ポンプと、該保持面と該吸引ポンプとを連通する吸引路と、該吸引路を流れる流体の流速を測定する流速計と、制御ユニットと、を備える保持装置におけるワークの保持方法であって、該モータの初期回転数を設定する初期回転数設定工程と、該初期回転数の下で該吸引ポンプを作動させて、該保持テーブルにおいて該ワークを吸引保持する保持工程と、該ワークの吸引保持中における該流速計の測定値を取得する流速値取得工程と、該測定値に応じて該モータの回転数を調整する調整工程と、を備える。
【0011】
また、本発明のワークの保持方法は、ワークを保持する保持面を有する保持テーブルと、モータと、該モータの回転数を調整するインバータと、を有する吸引ポンプと、該保持面と該吸引ポンプとを連通する吸引路と、該吸引路を流れる流体の流速を測定する流速計と、制御ユニットと、を備える保持装置におけるワークの保持方法であって、該ワークに応じて該モータの回転数を設定する回転数設定工程と、該回転数の下で該吸引ポンプを作動させて該保持テーブルにおいて該ワークを吸引保持する保持工程と、該ワークの吸引保持中における該流速計の測定値を取得する流速値取得工程と、該流速計の測定値が所定のしきい値よりも大きい場合にはエラーを報知し、該流速計の測定値が所定のしきい値以下である場合には該回転数を維持する判断工程と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本保持装置では、ワークを保持面に吸引保持した際に吸引路の圧力計あるいは流速計の測定値に応じてモータの回転数を変更し保持テーブルの吸引力を調整するため、過剰にモータを回転させて過剰な吸引力を発生させるのを防ぐことにより省電力を実現することができ、吸引力が不足している場合はモータの回転数を上昇させて吸引力を高めることにより吸引力不足により処理が停止するのを防ぐことができる。
また、モータの回転数を変更可能に設定することにより、ワークの種類に応じた回転数に設定することができるため、過剰にモータを回転させて過剰な吸引力を発生させるのを防ぎ、省電力を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】保持装置の第1実施形態を示すブロック図である。
図2】半導体ウェーハの例を示す斜視図である。
図3】半導体ウェーハを含むワークユニットの例を示す斜視図である。
図4】(a)はパッケージ基板の例を示す底面図であり、(b)は同パッケージ基例を示す平面図であり、(c)は同パッケージ基板を示す側面図である。
図5】保持装置の第2実施形態を示すブロック図である。
図6】モータの回転数と負圧との関係の例を示すグラフである。
図7】切削装置の例を示す斜視図である。
図8】第1実施形態の保持装置におけるワークの保持手順を示すフローチャートである。
図9】切削装置において半導体ウェーハを切削する状態を示す側面図である。
図10】第2実施形態の保持装置におけるワークの保持手順を示すフローチャートである。
図11】第1実施形態の保持装置における他のワークの保持手順を示すフローチャートである。
図12】第2実施形態の保持装置における他のワークの保持手順を示すフローチャートである。
図13】研削装置の例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1 第1実施形態
図1に示す保持装置1は、各種のワークを吸引保持する装置である。この保持装置1は、加工装置、検査装置、洗浄装置等に搭載される。
【0015】
図1に示すように、保持装置1は、半導体ウェーハ100等のワークを保持する保持面111を有する吸引部材11と吸引部材11を収容し支持する枠体12とを備えた保持テーブル13と、吸引力を発生させる吸引ポンプ14と、吸引部材11の保持面111と吸引ポンプ14とを連通させる吸引路15と、吸引路15の圧力を測定する圧力計16と、吸引ポンプ14を制御する制御ユニット17と、制御ユニット17に対するデータ入力に用いる入力ユニット18とを備えている。
【0016】
吸引ポンプ14は、モータ141と、モータ141の回転数を調整するインバータ142とを備えている。一方、制御ユニット17には、インバータ142を制御して吸引部材11の吸引力を調整する吸引力調整部171と、モータ141の回転数の初期値を設定する初期回転数設定部174とを備えている。
【0017】
吸引力調整部171は、圧力計16における測定値を取得する圧力値取得部172と、圧力計16の圧力値に応じてインバータ142に対して指令を発するインバータ指令部173とを備えている。
【0018】
制御ユニット17は、プロセッサ及びメモリを備えており、プロセッサにおいて制御プログラムを実行することにより吸引ポンプ14を制御する。制御ユニット17には、制御ユニット17に対するデータ入力に用いる入力ユニット18が、有線又は無線によって接続されている。入力ユニット18には、例えばキーボード、タッチパネル等の入力デバイスを備えている。
【0019】
保持テーブル13に保持されるワークとしては、例えば、図2に示す半導体ウェーハ100、図3に示すテープ106に貼着されフレーム107によって支持された半導体ウェーハ100、図4に示すパッケージ基板200等がある。
【0020】
図2に示す半導体ウェーハ100は、縦横の分割予定ライン103によって区画されて表面101にデバイス104が形成されて構成されている。
図3に示す半導体ウェーハ100は、図2に示した半導体ウェーハ100の裏面102にテープ106が貼着されるとともに半導体ウェーハ100の外周側においてフレーム107がテープ106に貼着されており、テープ106を介してフレーム107に支持されている。このように半導体ウェーハ100がテープ106に貼着されフレーム107によって支持されたユニットを、全体としてワークユニット105と称する。
【0021】
図4に示すパッケージ基板200は、図4(b)に示すように、金属からなる基板201の表面202にチップ204が実装され樹脂205によって封止されて構成されている。図4(a)に示すように、裏面203には、チップ204が実装された実装領域206が分割予定ライン207によって区画されている。
【0022】
2 第2実施形態
図5に示す保持装置1aは、図1に示した保持装置1における初期回転数設定部174に代えて、制御ユニット17aに回転数設定部175を備えている。制御ユニット17aが圧力値取得部172とインバータ指令部173とを備える点は、第1実施形態の保持装置1と同様である。
【0023】
第2実施形態の保持装置1aにおいては、モータ141の回転数を一定としており、圧力値取得部172が圧力計16の測定値を読み出すが、その測定値に応じた制御を行わないため、回転数設定部175に一度設定された回転数は変更されない。インバータ指令部173は、回転数設定部175に設定された回転数をインバータ142に設定する。
【0024】
制御ユニット17aにおける回転数設定部175には、複数の回転数の値を記憶する機能を有しており、オペレータは、入力ユニット18を用いて、記憶された回転数の値の中から1つの回転数を選択することができる。
【0025】
モータ141の回転数と圧力(負圧)の値との関係は、例えば図6のグラフに示す関係データ19のようにあらかじめ把握されている。この関係データ19は、回転数設定部175に記憶されており、モータ141の回転数が高くなるほど圧力値が小さくなる(負圧値が大きくなる)ことを示している。オペレータは、この関係データ19を参照し、入力ユニット18を操作して、所望の圧力値に対応するモータの回転数を選択する。第2実施形態の保持装置1aでは、モータ141の回転数を一定とするため、第1実施形態のようにしきい値を基準とした処理を行わない。
【0026】
第2実施形態の保持装置1aにおいても、図2に示した半導体ウェーハ100、図3に示したワークユニット105、図4に示したパッケージ基板200等を吸引保持することができる。なお、図5の保持装置1aにおいて、図1の保持装置1と同様に構成される部位については図1と同様の符号を付し、その説明は省略することとする。
【0027】
3 第1実施形態の保持装置を備えた加工装置
図7に示す切削装置2は、図1に示した保持装置1又は図5に示した保持装置1aが搭載される加工装置の一例である。ここでは、切削装置2が図1に示した第1実施形態の保持装置1を搭載している場合について説明する。
【0028】
切削装置2は、基台21と、基台21から立設された門型の第1壁体22及び第2壁体23とを備えている。
【0029】
基台21の前部(-Y方向側)には、カセットステージ30が設けられている。カセットステージ30には、切削対象の被加工物を収容するカセット31が載置される。カセット31の内部には、複数段のスロットが設けられており、それぞれのスロットに被加工物が収容される。被加工物としては、図2に示した半導体ウェーハ100、図3に示したワークユニット105、図4に示したパッケージ基板200等がある。以下では、カセット31にワークユニット105が収容されている場合を例に挙げて説明する。
【0030】
カセットステージ30の後方(+Y方向側)には、ワークユニット105が載置される一対のガイドレール32が配設されている。ガイドレール32は、縦断面がL字型に形成されており、互いが接近する方向及び離反する方向に移動可能となっている。
【0031】
ガイドレール32の下方には、図1に示した保持装置1を構成する保持テーブル13がX軸方向に移動可能に配設されている。保持テーブル13の周囲には、ワークユニット105を構成するフレーム107を保持するクランプ131が配設されている。なお、図1においては、テープ106、フレーム107及びクランプ131の図示を省略している。保持テーブル13の+X方向側及び-X方向側には蛇腹132が連結されており、保持テーブル13は、蛇腹132の伸縮をともなって+X方向又は-X方向に移動する。
【0032】
ガイドレール32の後方(-Y方向側)には、洗浄ユニット40が配設されている。洗浄ユニット40は、半導体ウェーハ100等のワークを保持して回転する回転テーブル41と、フレームを固定するクランプ機構42と、回転するワークに洗浄水を噴射する洗浄水ノズル43と、ワークを乾燥させるための高圧エアを噴射する図示しないエアノズルとを備えている。
【0033】
第1壁体22の+X方向側には、カセット31とガイドレール32との間及びガイドレール32と洗浄ユニット40との間でワークユニット105を搬送する第1搬送ユニット50が配設されている。第1搬送ユニット50は、フレーム107を側方から把持する把持部51と、フレーム107の上面を吸着する吸着パッド52aを有する第1吸着部52と、第1壁体22のY軸方向に沿って配設されたレール53と、把持部51及び第1吸着部52を支持しレール53に沿ってY軸方向に移動する第1移動機構54とを備えている。第1移動機構54には、把持部51及び第1吸着部52を昇降させる第1昇降機構55を備えている。
【0034】
また、第1壁体22の+X方向側には、保持テーブル13と洗浄ユニット40との間でワークユニット105を搬送する第2搬送ユニット60が配設されている。第2搬送ユニット60は、フレーム107の上面を吸着する吸着パッド61aを有する第2吸着部61と、第1壁体22のY軸方向に沿って配設されたレール62と、第2吸着部61を支持しレール62に沿ってY軸方向に移動する第2移動機構63とを備えている。第2移動機構63には、第2吸着部61を昇降させる第2昇降機構64を備えている。
【0035】
第2壁体23の+X方向側には、第1切削ユニット71及び第2切削ユニット72が配設されている。第1切削ユニット71及び第2切削ユニット72は、Y軸方向に延びるスピンドルを有し、それぞれのスピンドルの先端に切削ブレード73が装着されている。なお、図9においては第1切削ユニット71の切削ブレード73のみを図示している。
【0036】
第1切削ユニット71及び第2切削ユニット72の側部には、半導体ウェーハ100の切削すべき箇所を撮像して検出する第1撮像ユニット74及び第2撮像ユニット75がそれぞれ備えられている。
【0037】
第1切削ユニット71及び第2切削ユニット72は、第2壁体23の+X側の面に設けた不図示の移動機構によって駆動されてY軸方向に移動可能となっている。また、第1切削ユニット71及び第2切削ユニット72は、第1昇降機構76及び第2昇降機構77によって駆動されてZ軸方向に昇降可能となっている。
【0038】
切削装置2の前部には、表示機能を有する入力ユニット18が設けられている。入力ユニット18は、例えばタッチパネルであり、オペレータは、タッチパネルの操作により加工条件等を入力したり表示させたりすることができる。
【0039】
切削装置2の上部前側には、オペレータにエラー等を報知する報知部78が設けられている。報知部78は、例えば警告灯によって構成され、切削装置2において何らかの異常が発生して場合に点灯または点滅してオペレータにエラーを報知する。
【0040】
このように構成される切削装置2では、切削しようとする半導体ウェーハ100を含むワークユニット105は、カセット31に複数収容される。そして、カセットステージ30が昇降し、搬出しようとするワークユニット105を所定の高さに位置させた状態で、第1移動機構54が把持部51を-Y方向に移動させ、そのワークユニット105を構成するフレーム107を把持部51が把持する。その後、第1移動機構54が把持部51を+Y方向側に移動させることにより、ワークユニット105がガイドレール32の上に載置されると、把持部51によるフレーム107の把持を解除する。なお、このとき、2つのガイドレールは、互いに離反させておく。
【0041】
次に、2つのガイドレール32を互いが接近する方向に移動させてフレーム107を+X方向及び-X方向に押すことにより、ワークユニット105を所定の位置に位置決めする。その後、第1昇降機構55が第1吸着部52を下降させ、第1吸着部52の吸着パッド52aがフレーム107を吸着した後、第1昇降機構55が第1吸着部52を上昇させる。そして、ガイドレール32を離間させた後、第1吸着部52が下降し、その下方に位置する保持テーブル13にワークユニット105を載置する。
【0042】
次に、図8のフローチャートを参照してワークの保持方法の第1実施形態について説明する。
(1)初期回転数設定工程
切削装置2に備える図1に示した保持装置1においては、制御ユニット17によって、吸引部材11における負圧が所定のしきい値を超えないようにする制御を行う。まず、入力ユニット18からモータ141の回転数の初期値(初期回転数)を入力し、制御ユニット17に備える初期回転数設定部174に記憶させる(ステップS11)。また、入力ユニット18から負圧のしきい値を入力し、その値を吸引力調整部171に備える記憶素子に記憶させておく。例えば、負圧のしきい値を-80kPa、初期回転数を2500rpmとする。
【0043】
(2)保持工程
次に、第1吸着部52の吸着パッド52aがフレーム107を吸引保持した状態で、保持テーブル13の保持面111上においてテープ106を介して半導体ウェーハ100を載置する。そして、制御ユニット17のインバータ指令部173は、初期回転数設定部174に記憶された初期回転数を読み出し、吸引ポンプ14のモータ141がその初期回転数で回転するように、インバータ142を制御する。これにより、その初期回転数に対応した吸引力によって、保持面111において、テープ106を介して半導体ウェーハ100の吸引保持が開始される(ステップS12)。
【0044】
(3)圧力値取得工程
次に、吸着パッド52aによるフレーム107の吸引保持を解除し、第1昇降機構55が第1吸着部52を上昇させてフレーム107から離反させる。そして、制御ユニット17の圧力値取得部172が圧力計16の測定値を読み出し、吸引路15の負圧の圧力値を読み出す(ステップS13)。
【0045】
(4)調整工程
制御ユニット17は、ステップS13において取得した負圧の圧力値とステップS11において吸引力調整部171に設定した負圧のしきい値とを比較する(ステップS14)。そして、取得した圧力値がしきい値よりも高い場合、すなわち、取得した圧力値の負圧の絶対値がしきい値の絶対値よりも小さく、吸引保持力が十分といえない場合は、制御ユニット17のインバータ指令部173が、吸引ポンプ14のインバータ142を制御し、モータ141の回転数を上昇させていく。このとき、モータ141の回転数は、所定間隔ごとに、例えば500rpmごとに上昇させていく(ステップS15)。例えば、圧力値取得部172が取得した測定値が-70kPaであったとすると、しきい値よりも圧力値が高く、吸引力が十分ではないため、例えば500rpmずつ回転数を上げていく。初期回転数が2500rpmであった場合、最初に3000rpmに上昇させ、圧力値取得部172が圧力計16の測定値を読み出す(ステップS13)。そして、読み出した圧力計16の測定値としきい値とを制御ユニット17が比較し(ステップS14)、読み出した圧力値が例えば-75kPaであると、依然としてしきい値よりも圧力値が高いため、回転数をさらに500rpm上昇させて3500rpmとする。そして、圧力値取得部172が圧力計16の測定値を再度読み出し(ステップS13)、読み出した圧力値が例えば-80kPaであり、しきい値に達した場合は、インバータ142は、モータ141の回転数を3500rpmに維持する(ステップS17)。
【0046】
一方、取得した負圧の圧力値とステップS11において吸引力調整部171に設定したしきい値とを制御ユニット17において比較し(ステップS14)、取得した圧力値がしきい値よりも低い場合、すなわち、取得した圧力値の負圧の絶対値がしきい値の絶対値よりも大きく、吸引保持力が過剰である場合は、制御ユニット17のインバータ指令部173は、吸引ポンプ14のインバータ142を制御し、モータ141の回転数を低下させていく(ステップS16)。例えば、圧力値取得部172が取得した測定値が-95kPaであったとすると、しきい値よりも圧力値が低く、吸引力が過剰であるため、例えば500rpmずつ回転数を下げていく。初期回転数が2500rpmであった場合、最初に2000rpmに低下させ、圧力値取得部172が圧力計16の測定値を読み出す(ステップS13)。読み出した圧力計16の測定値としきい値とを制御ユニット17が比較し(ステップS14)、読み出した圧力値が例えば-90kPaであると、依然としてしきい値よりも圧力値が低いため、回転数をさらに500rpm低下させて1500rpmとする(ステップS16)。そして、圧力値取得部172が圧力計16の測定値を再度読み出し(ステップS13)、読み出した圧力値が-85kPaであり、まだしきい値よりも圧力値が低いと(ステップS14)、回転数をさらに500rpm下降させて1000rpmとする(ステップS16)。そして、圧力値取得部172が圧力計16の測定値をもう一度読み出し(ステップS13)、読み出した圧力計16の測定値としきい値とを制御ユニット17が比較する(ステップS14)。読み出した圧力値が-80kPaであると、しきい値と一致しているため、インバータ142は、モータ141の回転数を1000rpmに維持する(ステップS17)。
【0047】
なお、測定した圧力値が少しでもしきい値よりも低いと吸引力が過剰と判断してモータ141の回転数を下げる制御を行うと、次のワークを同じ回転数の下で吸引保持した際に圧力計16の測定値がしきい値より高くなることがある。その場合はモータ141の回転数を上げる制御を行わなければならないところ、かかる制御には時間がかかる。そこで、圧力値取得部172が取得した圧力値がしきい値よりも低い場合であっても、その差が所定の範囲内であれば、吸引力が過剰とは判断せず、そのときの圧力値を維持するようにしてもよい。これにより、圧力値を変更する制御をする必要がなくなり、制御の時間を節約することができる。
【0048】
なお、モータ141の回転数を上限値まで上げてもしきい値に至らない場合は、以下の2通りの処理が可能である。第1の方法としては、しきい値に至らなくても次工程に問題がないとし、その上限値による吸引のままで処理を進める。第2の方法としては、処理を中止し、吸引力が十分でない旨のメッセージを入力ユニット18のタッチパネル等に表示させたり、図示しないスピーカーから音声を発したり、報知部78を点灯又は点滅させたり、無線または有線で接続された情報通信装置にメッセージを送信するなどして、オペレータに報知する。
【0049】
また、圧力計16が取得した圧力の測定値がしきい値を上回る場合であっても、測定値としきい値との差が所定の範囲内である場合は、回転数を低下させた後に再度回転数を上昇させるのに時間がかかることを考慮し、上記ステップS16のモータ141の回転数を低下させる処理を行わないようにしてもよい。
【0050】
上記のようにして保持装置1にワークユニット105が保持されると、保持テーブル13が-X方向に移動して、半導体ウェーハ100の切削すべき分割予定ライン103が第1撮像ユニット74、第2撮像ユニット75によって撮像されて検出される。そして、検出された分割予定ライン103と切削ブレード73とのY軸方向の位置合わせがなされた後、第1切削ユニット71及び第2切削ユニット72が下降するとともに保持テーブル13がさらに-X方向に移動することにより、図9に示すように、回転する2つの切削ブレード73によって2本の分割予定ライン103がそれぞれ切削される。切削時には、加工部位に対して加工液供給ノズル79から切削水が供給される。なお、図7においては、加工液供給ノズル79の図示を省略している。
【0051】
こうして2本の分割予定ライン103が切削された後、保持テーブル13が+X方向に移動して元の位置に戻るとともに、隣り合う分割予定ライン103の間隔ずつ第1切削ユニット71及び第2切削ユニット72をY軸方向に送り、再び保持テーブル13を-X方向に送りつつ、2つの切削ブレード73によって次の未切削の分割予定ライン103を切削する。これを繰り返し、同方向のすべての分割予定ライン103が切削されると、保持テーブル13が90度回転した後、同様の切削が行われる。そうすると、すべての分割予定ライン103が縦横に切削され、個々のチップに分割される。
【0052】
半導体ウェーハ100が分割された後、保持テーブル13を+X方向に移動させて一対のガイドレール32の下方に位置させる。そして、一対のガイドレール32を互いに離反させた状態で、第1昇降機構55が第1吸着部52を下降させ、吸着パッド52aによってフレーム107を吸着し、第1吸着部52をガイドレール32の上方まで上昇させる。そして、ガイドレール32を若干接近させた後、第1昇降機構55が第1吸着部52を下降させて、ワークユニット105をガイドレール32の上に載置し、吸着パッド52aによる吸着を解除し、第1昇降機構55によって第1吸着部52を上昇させる。そして、ガイドレール32を互いに接近させてワークユニット105を所定の位置に位置決めする。
【0053】
次に、第1昇降機構55が第1吸着部52を下降させて吸着パッド52aがフレーム107を吸着する。そして、ガイドレール32を互いに離反させた後、第1昇降機構55が第1吸着部52を上昇させる。その後、第1移動機構54が第1吸着部52を+Y方向に移動させ、ワークユニット105を洗浄ユニット40の上方に位置させる。次に、第1昇降機構55が第1吸着部52を下降させ、ワークユニット105を洗浄ユニット40の回転テーブル41に載置する。回転テーブル41は、テープ106を介して半導体ウェーハ100を吸引保持するとともに、クランプ機構42によってフレーム107を固定する。
【0054】
次に、回転テーブル41が回転するとともに、洗浄水ノズル43からワークユニット105に向けて高圧水が噴射され、切削屑等が除去される。その後、洗浄水ノズル43からの高圧水の噴射を停止した後、エアノズルから高圧エアを噴射して高圧水を除去する。
【0055】
なお、洗浄ユニット40の回転テーブル41による保持機構を、図1に示した保持装置1と同様に構成し、図8に示したステップS11~S17の処理を行ってもよい。これにより、回転テーブル41において半導体ウェーハ100を吸引保持するための吸引力が過剰になるのを防ぎ、省電力を実現可能となる。
【0056】
このようにしてワークユニット105の洗浄及び乾燥が終了すると、第2搬送ユニット60の第2吸着部61が第2移動機構63によって駆動されて回転テーブル41の上方まで移動する。そして、第2昇降機構64が第2吸着部61を下降させて吸着パッド61aがフレーム107を吸着する。次に、回転テーブル41における吸着を解除した後、第2昇降機構64が第2吸着部61を上昇させ、第2移動機構63が第2吸着部61を-Y方向に移動させて、ワークユニット105をガイドレール32の上方に位置させる。次に、ガイドレール32を離反させた状態としておき、第2昇降機構64が第2吸着部61を下降させてワークユニット105をガイドレール32に載置し、吸着パッド61aにおける吸着を解除する。そして、ガイドレール32を互いに接近させることによりワークユニット105を所定の位置に位置決めする。
【0057】
こうしてワークユニット105が所定の位置に位置決めされると、第1移動機構54が把持部51を-Y方向に移動させ、フレーム107をカセット31に向けて押していく。これにより、ワークユニット105がカセット31の所定のスロットに収容される。
【0058】
なお、カセット31から搬出されたワークユニット105を保持装置1において1枚吸引保持するごとに図8のステップS11~S17の処理を行ってもよいし、同じロットのワークユニット105であれば半導体ウェーハ100の反りが同程度とみなし、最初の1枚について上記ステップS11~S17の処理を行い、その後は1枚目のワークについて設定した回転数で吸引保持してもよい。
【0059】
4 第2実施形態の保持装置を備えた加工装置
ここでは、図7に示した切削装置2が図5に示した第2実施形態の保持装置1aを搭載している場合について説明する。なお、保持装置1a以外については、第1実施形態と同様であるため、その説明は省略する。保持装置1aにおけるワークの保持は、図10のフローチャートに示す手順に沿って行われる。
【0060】
(1)回転数設定工程
まず、保持面111においてテープ106を介して半導体ウェーハ100を保持する前に、回転数設定部175に任意の回転数を設定する(ステップS21)。ここで、オペレータは、図6に示した関係データ19の関係に基づき、目的とする負圧に対応する回転数を入力ユニット18から入力し、その回転数を回転数設定部175に設定する。オペレータが入力ユニット18を用いて回転数の数値を入力してもよいし、回転数設定部175にあらかじめ複数の回転数の値の選択肢が設定されており、オペレータが入力ユニット18を操作してその中から選択するようにしてもよい。また、回転数の設定とともに、入力ユニット18から負圧のしきい値を入力し、その値を制御ユニット17aに備えた記憶素子に記憶させておく。
【0061】
(2)保持工程
図7に示したガイドレール32に載置されたワークユニット105のフレーム107が第1吸着部52の吸着パッド52aによって吸着されて保持テーブル13の保持面111上に載置されると、制御ユニット17aのインバータ指令部173は、回転数設定部175に記憶された回転数を読み出し、吸引ポンプ14のモータ141がその初期回転数で回転するように、インバータ142を制御する。これにより、その回転数に対応した吸引力によって、保持面111における半導体ウェーハ100の吸引が開始される(ステップS22)。
【0062】
(3)圧力値取得工程
次に、吸着パッド52aにおけるフレーム107の吸引保持を解除し、第1吸着部52を上昇させる。また、制御ユニット17aの圧力値取得部172が圧力計16の測定値を読み出し、吸引路15の負圧の圧力値を取得する(ステップS23)。
【0063】
(4)判断工程
ステップS23において取得した負圧の圧力値と制御ユニット17aに記憶させたしきい値とを制御ユニット17aが比較し(ステップS24)、取得した負圧の圧力値がしきい値を上回る場合、すなわち、取得した圧力値の負圧の絶対値がしきい値の絶対値よりも小さい場合は、制御ユニット17aは、半導体ウェーハ100を正常に吸引保持できていないと判断し、インバータ指令部173による制御をせずに、エラーとして扱い、吸引力が不足している旨のメッセージを図7に示した入力ユニット18のタッチパネル等に表示させたり、報知部78を点灯又は点滅させたりして、オペレータに報知する(ステップS25)。
【0064】
一方、ステップS23において取得した負圧の圧力値としきい値とを制御ユニット17aが比較し(ステップS24)、取得した圧力値がしきい値以下である場合、すなわち、取得した圧力値の負圧の絶対値がしきい値の絶対値以上である場合は、半導体ウェーハ100を正常に吸引保持できているとして、モータ141の回転数を維持し、吸引保持を続行する(ステップS26)。そして、第1実施形態と同様に、第1切削ユニット71及び第2切削ユニット72による切削、洗浄ユニット40による洗浄を経て、分割された半導体ウェーハ100を含むワークユニット105がカセット31に収容される。
【0065】
なお、保持装置1aにおいてワークユニット105を1枚吸引保持するごとに図10のステップS21~S26の処理を行ってもよいし、同じロットのワークユニット105であれば半導体ウェーハ100の反りが同程度と判断し、最初の1枚について上記ステップS21~S26の処理を行い、ワークユニット105を正常に保持できている場合は、そのロットの他のワークユニット105については、1枚目のワークについて設定した回転数で吸引保持できると判断し、ステップS21~S26の処理を省略してもよい。一方、ステップS24における処理の結果、エラーとなった場合は、同じロットの他のワークユニット105については、ステップS21において回転数設定部175に設定する回転数を変更し、ステップS21~S26を実施しなおしてもよい。
【0066】
なお、上記切削装置2では、第1搬送ユニット50を用いてワークユニット105を保持テーブル13に載置したが、第1搬送ユニット50に相当するものを備えない装置においては、オペレータがワークユニット105を手に持って保持テーブル13に載置し、第1実施形態のステップS11~S17又は第2実施形態のステップS21~S26を実施する。
【0067】
なお、図1に示した保持装置1は、圧力計16に代えて、流速計25を有していてもよい。この流速計25は、吸引路15を流れる流体の流速を測定するためのものである。この場合、制御ユニット17の吸引力調整部171は、圧力値取得部172に代えて、流速計25における測定値(流速値)を取得する流速値取得部176を有する。なお、吸引路15を流れる流体は、たとえば、保持面111から吸引されたエア(空気)および加工液の少なくともいずれかを含む。
【0068】
この場合、吸引力調整部171は、保持面111によってワークを吸引保持した際の吸引路15の圧力値に代えて、吸引路15内を流れる流体の流速に応じて、モータ141の回転数を調整する。すなわち、制御ユニット17は、ワークを保持面111によって吸引保持した際に流速計によって測定された流速値に応じて、モータ141の回転数を変更し保持テーブル13の吸引力を調整する吸引力調整部171を有する。
【0069】
以下に、流速計25を有する保持装置1が図7に示した切削装置2に備えられている場合における保持装置1によるワークの保持方法を、図11を用いて説明する。この保持方法(保持処理)は、たとえば、ワークユニット105の半導体ウェーハ100に対する切削装置2による切削加工プロセスの冒頭部分となるものである。
【0070】
(1)初期回転数設定工程
この工程では、モータ141の初期回転数を設定する。具体的には、まず、オペレータが、図1および図7に示した入力ユニット18を用いて、モータ141の回転数の初期値(初期回転数)を入力し、制御ユニット17に備えられる初期回転数設定部174に記憶させる(ステップS31)。また、オペレータは、入力ユニット18を用いて流速値の所定のしきい値を入力し、その値を吸引力調整部171に備えられる記憶素子に記憶させておく。例えば、初期回転数は2500rpmである。また、流速値のしきい値は、ワークの種類等に応じて定められるが、たとえば、20L/min~80L/minの範囲内の値である。
【0071】
(2)保持工程
初期回転数設定工程の後、保持工程が実施される。保持工程では、初期回転数の下で吸引ポンプ14を作動させて、保持テーブル13においてワークである半導体ウェーハ100を吸引保持する。具体的には、半導体ウェーハ100を含むワークユニット105が、図7に示したカセット31から取り出されてガイドレール32に載置される。そして、このワークユニット105のフレーム107が、第1吸着部52の吸着パッド52aによって吸着される。さらに、この状態で、保持テーブル13の保持面111上に、テープ106を介して半導体ウェーハ100が載置され、クランプ131によってフレーム107が保持される。
【0072】
その後、図1に示した制御ユニット17のインバータ指令部173が、初期回転数設定部174に記憶された初期回転数を読み出し、吸引ポンプ14のモータ141がこの初期回転数で回転するように、インバータ142を制御する。
【0073】
これにより、初期回転数に対応した吸引力によって、保持面111における半導体ウェーハ100の吸引が開始される(ステップS32)。
その後、吸着パッド52aによるフレーム107の吸引保持が解除され、第1昇降機構55が、第1吸着部52を上昇させてフレーム107から離反させる。
【0074】
(3)流速値取得工程
保持工程の後、流速値取得工程が実施される。流速値取得工程では、半導体ウェーハ100の吸引保持中における流速計25の測定値を取得する。具体的には、制御ユニット17の吸引力調整部171における流速値取得部176が、流速計25の測定値を読み出し、吸引路15を流れる流体の流速値を測定する(ステップS33)。
【0075】
(4)調整工程
流速値取得工程の後、調整工程が実施される。調整工程では、測定された流速値に応じてモータ141の回転数を調整する。すなわち、吸引力調整部171が、半導体ウェーハ100を保持面111によって吸引保持した際に流速計25によって測定された流速値に応じて、モータ141の回転数を変更し、保持テーブル13の吸引力を調整する。具体的には、吸引力調整部171(制御ユニット17)は、半導体ウェーハ100を保持面111によって吸引保持した際に流速計25によって測定される流速値が、所定のしきい値以下となるように、モータ141の回転数を調整する。
【0076】
この工程では、まず、制御ユニット17が、ステップS33において取得した流速値とステップS11において吸引力調整部171の記憶素子に設定された所定のしきい値とを比較する(ステップS34)。
【0077】
取得された流速値がしきい値以下である場合、制御ユニット17は、保持面111による半導体ウェーハ100の吸引に関する吸引力(保持テーブル13の吸引力)が十分であり、保持面111と半導体ウェーハ100との間に隙間が生じておらず、バキュームリークが発生していないと判断する。このため、制御ユニット17の吸引力調整部171のインバータ指令部173が、吸引ポンプ14のインバータ142を制御し、モータ141の回転数を維持する(S35)。
【0078】
一方、取得された流速値がしきい値よりも大きい場合、制御ユニット17は、保持面111による半導体ウェーハ100の吸引に関する吸引力が弱いために、保持面111と半導体ウェーハ100との間に隙間が生じて次工程の処理に影響を及ぼすほどのバキュームリークが発生しており、保持面111がエアおよび加工液を過剰に吸引してしまっていると判断する。
【0079】
このため、制御ユニット17の吸引力調整部171のインバータ指令部173が、吸引ポンプ14のインバータ142を制御し、モータ141の回転数を上昇させていく(ステップS36)。このとき、インバータ指令部173は、モータ141の回転数を、例えば、所定間隔ごとに500rpmずつ上昇させていく。
【0080】
例えば、流速値取得部176が取得した流速値がしきい値よりも大きい場合、吸引力が十分ではないため、インバータ指令部173は、モータ141の回転数を上げる。たとえば初期回転数が2500rpmである場合、インバータ指令部173は、モータ141の回転数を、まず3000rpmに上昇させる。その後、流速値取得部176が流速計25の測定値を読み出す(ステップS33)。そして、制御ユニット17が、測定された流速値がしきい値以下であるか否かを判断する(ステップS34)。
【0081】
たとえば、測定された流速値が依然としてしきい値よりも大きい場合、インバータ指令部173は、モータ141の回転数を、さらに500rpm上昇させて3500rpmとする。そして、流速値取得部176が流速計25の測定値を再度読み出し(ステップS33)、制御ユニット17が、測定された流速値がしきい値以下であるか否かを判断する(ステップS34)。測定された流速値がしきい値以下の値となった場合、制御ユニット17は、半導体ウェーハ100に対する保持面111の吸引力(保持テーブル13の吸引力)が十分に強くなったと判断し、インバータ指令部173が、モータ141の回転数を3500rpmに維持する(ステップS35)。
【0082】
このようにして、保持装置1によってワークユニット105が保持されて、ワークの保持方法(保持処理)が終了する。その後、切削加工プロセスが次段階に進み、図7および図9を用いて上述したように、ワークユニット105の半導体ウェーハ100に対する切削加工および洗浄・乾燥が実施され、ワークユニット105がカセット31の所定のスロットに収容される。
【0083】
このように、保持装置1では、圧力値に代えて流速値を用いてモータ141の回転数を調整してもよい。この場合、吸引路15内の流体の流速値が、保持面111と半導体ウェーハ100との間からのバキュームリークに非常に敏感であるため、バキュームリークが次工程で処理可能な微小な程度である状態と、次工程での処理に影響を及ぼす程度にリークが発生している状態とを、良好に区別することができる。
【0084】
また、吸引路15内の流体の流速は、圧力値(圧力計16の測定値)とは異なり、気圧の変動による変動が発生しにくい。したがって、圧力値よりも正確に保持装置1の半導体ウェーハ100の保持状態を確認することができ、保持装置1は、より安定的に半導体ウェーハ100を保持することが可能となる。
【0085】
なお、ステップS34において、取得された流速値がしきい値以下であると判定された場合、半導体ウェーハ100に対する保持面111の吸引力が過剰である可能性がある。このため、吸引力調整部171は、吸引路15内の流体の流速値を確認しながら、段階的にモータ141の回転数を下げて、流速値がしきい値以下となる範囲でのできるだけ小さい回転数(たとえば最小の回転数)を取得して、この回転数でモータ141を回転させてもよい。
【0086】
また、モータ141の回転数を上限値に設定しても、半導体ウェーハ100を保持面111によって保持した際に流速計25によって測定される流速値が所定のしきい値以下とならない場合もある。この場合には、以下の2通りの対応が可能である。
第1の対応としては、制御ユニット17は、流速値がしきい値以下にならなくても次工程に問題がないとし、モータ141の回転数を上限値に維持する。そして、このままの状態で、切削加工が実施される。
【0087】
第2の対応としては、切削加工プロセスを中止し、吸引力が十分でない旨をオペレータに報知する。この報知の方法としては、たとえば、吸引力が十分でない旨のメッセージを入力ユニット18のタッチパネルあるいは図示しないスピーカーによって表示すること、切削装置2の報知部78を点灯又は点滅させること、および、無線または有線で切削装置2に接続されたオペレータの情報通信装置にメッセージを送信すること、が挙げられる。
【0088】
また、上述した所定のしきい値は、半導体ウェーハ100の品種(反り量および/または硬さなどの状態)によって異なる。このため、しきい値を変更しながら半導体ウェーハ100を実際に加工して加工結果を確認し、加工結果が良好であった場合のしきい値を、同種の半導体ウェーハ100の保持に用いてもよい。このことは、吸引路15内の流体の流速値に応じてモータ141の回転数を変更する構成だけでなく、吸引路15の圧力値に応じてモータ141の回転数を変更する構成でも同様である。
【0089】
また、図5に示した保持装置1aも、圧力計16に代えて、吸引路15を流れる流体の流速を測定する流速計25を有していてもよい。この場合、制御ユニット17aは、圧力値取得部172に代えて、流速計25における測定値を取得する流速値取得部176を有する。
【0090】
この場合、制御ユニット17は、モータ141の回転数を変更可能に設定する回転数設定部175を有しており、回転数設定部175に設定された回転数によって、半導体ウェーハ100を保持面111によって吸引保持する吸引力が変更される。
【0091】
以下に、流速計25を有する保持装置1aが図7に示した切削装置2に備えられている場合における保持装置1aによるワークの保持方法を、図12を用いて説明する。この保持方法(保持処理)は、たとえば、ワークユニット105の半導体ウェーハ100に対する切削装置2による切削加工プロセスの冒頭部分となるものである。
【0092】
(1)回転数設定工程
この工程では、ワークである半導体ウェーハ100に応じてモータ141の回転数を設定する。具体的には、まず、オペレータが、図1および図7に示した入力ユニット18を用いて、回転数設定部175に任意の回転数を設定する(ステップS41)。
【0093】
ここで、オペレータは、たとえば、半導体ウェーハ100の品種に応じて、適切であると考えられる負圧(保持面111によって半導体ウェーハ100を吸引するための適切な負圧)を選択する。そして、オペレータは、図6に示した関係データ19の関係に基づき、選択した負圧に対応するモータ141の回転数を取得する。さらに、オペレータは、入力ユニット18を用いて、取得した回転数を回転数設定部175に設定する。
【0094】
この際、オペレータは、入力ユニット18を用いて回転数の数値を入力してもよい。あるいは、回転数設定部175にあらかじめ複数の回転数の値の選択肢が設定されている場合、オペレータは、入力ユニット18を操作して、それらの中から所望の回転数の値を選択してもよい。
また、オペレータは、入力ユニット18を用いて流速値の所定のしきい値を入力し、その値を制御ユニット17aに備えられる記憶素子に記憶させておく。流速値のしきい値は、上述したように、たとえば、20L/min~80L/minの範囲内の値である。
【0095】
(2)保持工程
回転数設定工程の後、保持工程が実施される。保持工程では、設定された回転数の下で吸引ポンプ14を作動させて、保持テーブル13においてワークである半導体ウェーハ100を吸引保持する。具体的には、半導体ウェーハ100を含むワークユニット105が、図7に示したカセット31から取り出されてガイドレール32に載置される。そして、このワークユニット105のフレーム107が、第1吸着部52の吸着パッド52aによって吸着される。さらに、この状態で、保持テーブル13の保持面111上に、テープ106を介して半導体ウェーハ100が載置され、クランプ131によってフレーム107が保持される。
【0096】
その後、図5に示した制御ユニット17aのインバータ指令部173が、回転数設定部175に設定された回転数を読み出し、吸引ポンプ14のモータ141がこの回転数で回転するように、インバータ142を制御する。
【0097】
これにより、設定された回転数に対応した吸引力によって、保持面111における半導体ウェーハ100の吸引が開始される(ステップS42)。
その後、吸着パッド52aにおけるフレーム107の吸引保持が解除され、第1昇降機構55が、第1吸着部52を上昇させてフレーム107から離反させる。
【0098】
(3)流速値取得工程
保持工程の後、流速値取得工程が実施される。流速値取得工程では、半導体ウェーハ100の吸引保持中における流速計25の測定値を取得する。具体的には、制御ユニット17の流速値取得部176が、流速計25の測定値を読み出し、吸引路15を流れる流体の流速値を測定する(ステップS43)。
【0099】
(4)判断工程
流速値取得工程の後、判断工程が実施される。判断工程では、流速計25の測定値が所定のしきい値よりも大きい場合にはエラーを報知し、流速計25の測定値が所定のしきい値以下である場合にはモータ141の回転数を維持する。
【0100】
この工程では、制御ユニット17が、ステップS43において取得した流速値とステップS41において制御ユニット17の記憶素子に設定された所定のしきい値とを比較する(ステップS44)。
【0101】
取得された流速値がしきい値以下である場合、制御ユニット17は、保持面111による半導体ウェーハ100の吸引に関する吸引力(保持テーブル13の吸引力)が十分であり、保持面111と半導体ウェーハ100との間に隙間が生じておらず、バキュームリークが発生していないと判断する。このため、制御ユニット17のインバータ指令部173が、吸引ポンプ14のインバータ142を制御し、モータ141の回転数を維持する(S45)。
【0102】
このようにして、保持装置1によってワークユニット105が保持されて、ワークの保持方法(保持処理)が終了する。その後、切削加工プロセスが次段階に進み、図7および図9を用いて上述したように、ワークユニット105の半導体ウェーハ100に対する切削加工および洗浄・乾燥が実施され、ワークユニット105がカセット31の所定のスロットに収容される。
【0103】
一方、ステップS44において、取得された流速値がしきい値よりも大きい場合、制御ユニット17は、半導体ウェーハ100に対する保持面111の吸引力が弱いために、保持面111と半導体ウェーハ100との間に次工程の処理に影響を及ぼすほどの隙間が生じてバキュームリークが発生しており、保持面111からエアおよび加工液を過剰に吸引してしまっていると判断する。
【0104】
この場合、制御ユニット17は、インバータ指令部173による制御を実施せずに、エラーが生じていると判断する。そして、制御ユニット17は、吸引力が十分でなくエラーが生じている旨を、オペレータに報知する(ステップS46)。
【0105】
この報知の方法としては、たとえば、吸引力が十分でない旨のメッセージを入力ユニット18のタッチパネルあるいは図示しないスピーカーによって表示すること、切削装置2の報知部78を点灯又は点滅させること、および、無線または有線で切削装置2に接続されたオペレータの情報通信装置にメッセージを送信すること、が挙げられる。
【0106】
このようなエラー報知の後、保持装置1におけるワークの保持方法(保持処理)が終了する。また、たとえば、切削加工プロセスにおける次段階以降の処理は中止される。
【0107】
なお、保持装置1aにおいて、ワークユニット105を1枚吸引保持するごとに図12のステップS41~S46の処理を行ってもよいし、同じロット(品種)の半導体ウェーハ100の反りは互いに同程度であると判断し、最初の1枚のワークユニット105について上記ステップS41~S46の処理を行い、半導体ウェーハ100を正常に保持できている場合には、そのロットの他の半導体ウェーハ100を含むワークユニット105については、1枚目のワークユニット105について設定した回転数で吸引保持できると判断し、ステップS41~S46の処理を省略してもよい。
【0108】
一方、ステップS44における処理の結果、エラーとなった場合には、同じロットの他の半導体ウェーハ100を含むワークユニット105については、ステップS41において回転数設定部175に設定する回転数を変更し、ステップS41~S46を実施しなおしてもよい。
【0109】
また、上述した例では、切削装置2において、第1搬送ユニット50を用いて、ワークユニット105の半導体ウェーハ100を保持テーブル13に載置している。これに関し、切削装置2が第1搬送ユニット50に相当するものを備えない場合には、オペレータがワークユニット105を手に持って半導体ウェーハ100を保持テーブル13に載置し、図11に示したステップS31~S36あるいは図12に示したステップS41~S46が実施される。
【0110】
また、図7に示した洗浄ユニット40の回転テーブル41の保持機構を、図1図5)に示した保持装置1(1a)と同様に構成し、図11図12)に示した処理を実施してもよい。これにより、回転テーブル41によって半導体ウェーハ100を良好に吸引保持することができる。
【0111】
また、保持装置1および保持装置1aは、流速計25に代えて、吸引路15を流れる流体の流量を測定する流量計を有していてもよい。
この場合、保持装置1では、流速値取得工程に代えて、半導体ウェーハ100の吸引保持中における流量計の測定値を取得する流量値取得工程が実施される。さらに、調整工程では、制御ユニット17の吸引力調整部171が、ワークを保持面111によって吸引保持した際に流量計によって測定された流量値に応じて、モータ141の回転数を変更し保持テーブル13の吸引力を調整する。すなわち、吸引力調整部171(制御ユニット17)は、半導体ウェーハ100を保持面111によって吸引保持した際に流量計によって測定される流量値が所定のしきい値以下となるように、モータ141の回転数を調整する。
【0112】
また、保持装置1aでも、流速値取得工程に代えて、半導体ウェーハ100の吸引保持中における流量計の測定値を取得する流量値取得工程が実施される。また、判断工程では、制御ユニット17は、流量計の測定値が所定のしきい値よりも大きい場合にはエラーを報知し、流量計の測定値が所定のしきい値以下である場合にはモータ141の回転数を維持する。また、保持装置1は、流速計25と、吸引路15を流れる流体の流量を測定する流量計と、圧力計との少なくともいずれかを有していればよく、複数種類備えていても良い。
【0113】
保持装置1あるいは保持装置1aに関する上述した実施形態では、ワークユニット105を保持する場合について説明したが、フレーム107を用いずに、図2に示した半導体ウェーハ100の裏面にテープを貼着した状態で保持テーブル13において吸引保持することもある。また、図4に示したパッケージ基板200を保持テーブル13において吸引保持する場合は、パッケージ基板200をテープ106に貼着するとともにテープ106にフレーム107を貼着してワークユニットとしてもよいし、保持テーブル13を、パッケージ基板200のサイズ及び個々のデバイスのサイズに対応した吸引孔を備えた治具チャックとし、その治具チャックによってパッケージ基板200を吸引保持してもよい。
【0114】
上記保持装置1又は保持装置1aは、切削装置2以外の加工装置に搭載することもできる。切削装置2以外の加工装置としては、例えば図13に示す研削装置80がある。この研削装置80は、図1に示した保持装置1又は図5に示した保持装置1aを構成する保持テーブル13と、保持テーブル13に保持された半導体ウェーハ100の裏面102を研削する研削ユニット81とを備えている。半導体ウェーハ100の表面101にはテープ108が貼着され、テープ108側が保持テーブル13の保持面111に吸引保持される。
【0115】
研削ユニット81は、スピンドル82の下端に連結されたマウント83に研削ホイール84が装着されて構成されている。研削ホイール84は、マウント83に固定される基台85と、基台85の下面に円環状に複数固着される研削砥石86とから構成されている。
【0116】
保持面111においては、図8又は図10~12に示した手順によって、テープ108を介して半導体ウェーハ100が吸引保持される。そして、保持テーブル13が回転するとともに、スピンドル82が回転しながら研削ユニット81が下降し、回転する研削砥石86が半導体ウェーハ100の裏面102に接触して研削が行われる。研削中は、加工液供給ノズル87から加工部位に研削水が噴射される。
【0117】
保持テーブル13では、図8又は図10~12に示した手順に沿ってワークを吸引保持するため、過剰な吸引力を発生させず、省電力を実現することができる。図8あるいは図11に沿った処理によれば、吸引力が足りない場合は、モータ141の回転数を上げて吸引力を向上させることで、吸引力不足により処理が停止するのを防ぐことができる。図10あるいは図12に沿った処理を行う場合も、ワークに応じたモータ141の回転数を設定することで、過剰な吸引力発生するのを防ぎ、吸引力が足りない場合はエラーとして処理することで、処理が途中で停止するのを防ぐことができる。
【0118】
図7に示した切削装置2、図13に示した研削装置80のような、加工時に加工液を用いる装置では、加工液も保持面111から吸引路15に吸引されるが、加工液が吸引路を通過する際に気化して気化熱によって吸引路15が冷却される。そうすると、吸引路15とその周りの雰囲気との間に温度差が発生し、吸引路15の配管周りに結露が発生し、漏水につながるおそれがある。また、吸引力が強いと、加工液が吸引路を流れる流れも速くなるため、気化も発生しやすくなり、より多くの結露が発生する。このように、加工液を用いる加工装置に用いられる保持テーブルでは、過剰な吸引力は、電力の消費だけではなく、必要以上の結露とそれによる漏水とを発生させる。そこで、吸引ポンプ14のモータ141の回転数を制御して吸引力を適切にすることで、結露や漏水に起因する装置の停止やトラブルを防ぐことができる。
【0119】
なお、保持装置1、1aは、加工装置以外の装置に用いることもできる。例えば、検査装置、撮像装置等において、ワークを保持するのに用いられる。
【符号の説明】
【0120】
1、1a:保持装置
11:吸引部材 111:保持面 12:枠体
13:保持テーブル 131:クランプ 132:蛇腹
14:吸引ポンプ 141:モータ 142:インバータ
15:吸引路 16:圧力計 25:流速計
17、17a:制御ユニット 171:吸引力調整部 172:圧力値取得部、
173:インバータ指令部 174:初期回転数設定部 175:回転数設定部
176:流速値取得部 18:入力ユニット 19:関係データ
2:切削装置
21:基台 22:第1壁体 23:第2壁体
30:カセットステージ 31:カセット 32:ガイドレール
40:洗浄ユニット 41:回転テーブル 42:クランプ機構 43:洗浄水ノズル
50:第1搬送ユニット 51:把持部 52:第1吸着部 52a:吸着パッド
53:レール 54:第1移動機構 55:第1昇降機構
60:第2搬送ユニット 61:第2吸着部 61a:吸着パッド 62:レール
63:第2移動機構 64:第2昇降機構
71:第1切削ユニット 72:第2切削ユニット 73:切削ブレード
74:第1撮像ユニット 75:第2撮像ユニット
76:第1昇降機構 77:第2昇降機構 78:報知部 79:加工液供給ノズル
80:研削装置
81:研削ユニット 82:スピンドル 83:マウント 84:研削ホイール
85:基台 86:研削砥石 87:加工液供給ノズル
100:半導体ウェーハ
101:表面 102:裏面 103:分割予定ライン 104:デバイス
105:ワークユニット 106:テープ 107:フレーム
108:テープ
200:パッケージ基板
201:基板 202:表面 203:裏面 204:チップ
206:実装領域 207:分割予定ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13