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特開2024-111850電極製造装置、電極製造システム、電極製造方法、プログラム及び蓄電デバイス製造装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111850
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】電極製造装置、電極製造システム、電極製造方法、プログラム及び蓄電デバイス製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20240813BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240813BHJP
   H01M 4/26 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M4/139
H01M4/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016493
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】山澤 亞也
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA14
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA03
5H050CA05
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CA29
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB16
5H050GA28
5H050GA29
(57)【要約】
【課題】従来の技術では、集電体の一方の面に液体組成物が付与された後に第1の面側に第1の面側の状態を管理するための所定のマークを付加した状態で集電体を再度搬送し、集電体の他方の面に液体組成物を付与する場合、付加した所定のマークが電極製造装置内へ落下することによる異物混入等のリスクが高まる、という課題がある。
【解決手段】電極製造装置3は、集電体320の第1の面側への第1の液体組成物層の付与後に第1の面側の第1の欠陥状態を検出(S12)した後、第2の面側への第2の液体組成物層の付与後に第2の面側の第2の欠陥状態を検出(S22)する。その後、第1の欠陥状態を示す第1の位置情報に基づく第1の所定のマークと、第2の状態を示す第2の位置情報に基づく第2の所定のマークと、を第2の面側に付加する(S24、S26)。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体の第1の面側に第1の液体組成物を付与することにより第1の層を形成した後、前記集電体の第2の面側に第2の液体組成物を付与することにより第2の層を形成する電極製造装置であって、
前記第1の面側に対して前記第1の液体組成物を付与し、前記第2の面側に対して前記第2の液体組成物を付与することにより液体組成物層を形成する付与手段と、
前記付与手段による前記第1の面側への前記第1の液体組成物の付与後に前記第1の面側の第1の状態を検出して第1の情報を出力し、前記付与手段による前記第2の面側への前記第2の液体組成物の付与後に前記第2の面側の第2の状態を検出して第2の情報を出力する検出手段と、
前記第1の情報に基づく第1の所定のマークと、前記第2の情報に基づく第2の所定のマークと、を前記第2の面側に付加する付加手段と、
を備える、
ことを特徴とする電極製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電極製造装置であって、更に、
前記第1の所定のマークは、前記第1の情報に含まれる第1の位置情報に基づき付加され、前記第1の位置情報を前記第2の面側における相対的な位置情報に補正する補正手段、
を備える、
ことを特徴とする電極製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電極製造装置であって、更に、
ロール状に巻かれた前記集電体を巻き出すための巻出手段及び前記集電体を巻き取るための巻取手段、
を備え、
前記付加手段は、
前記第1の面側の前記第1の状態の検出及び前記巻取手段による前記集電体の巻取りが行われ、前記巻出手段により前記集電体が再度巻き出された後に、前記第1の所定のマークと前記第2の所定のマークとを、前記検出手段と前記巻取手段との間で前記第2の面側に付加する、
ことを特徴とする電極製造装置。
【請求項4】
前記付与手段、前記検出手段及び前記付加手段は、前記巻出手段と前記巻取手段との間に配置され、
前記付与手段及び前記検出手段は、
前記第1の面側への前記第1の液体組成物の付与及び前記第1の状態の検出を実行した後、前記巻取手段により巻き取られた前記集電体が前記巻出手段により再度巻き出された際に、前記第2の面側への前記第2の液体組成物の付与及び前記第2の状態の検出を実行し、
前記付加手段は、
前記検出手段による前記第2の状態の検出後に、前記第1の所定のマークと前記第2の所定のマークとを、前記検出手段と前記巻取手段との間で前記第2の面側に付加する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電極製造装置。
【請求項5】
前記付加手段は、
前記第1の所定のマークと前記第2の所定のマークとを、前記集電体の搬送方向に沿った第1の辺の端部又は前記第1の辺の端部と対向する第2の辺の端部に分散させて付加する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電極製造装置。
【請求項6】
前記巻取手段は、
前記集電体が前記巻出手段によって再度巻き出される際に、前記付加手段による前記第2の面側への前記第1の所定のマーク及び前記第2の所定のマークの付加、並びに、前記検出手段による前記第2の面側の前記第2の状態の検出、がそれぞれ可能な状態になるように、前記集電体を巻き取る、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電極製造装置。
【請求項7】
前記相対的な位置情報に含まれる前記集電体の搬送方向に沿った座標情報は、前記集電体の搬送方向に沿った長さ情報から前記第1の位置情報に含まれる前記集電体の搬送方向に沿った座標情報を減算した座標情報である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電極製造装置。
【請求項8】
前記検出手段は、
少なくとも前記集電体の搬送方向において発生する前記第1の面側と前記第2の面側との間のオフセット量を検出し、
前記補正手段は、
前記オフセット量に対応する長さに応じた前記相対的な位置情報を算出する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電極製造装置。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の電極製造装置であって、更に、
前記第1の位置情報、前記相対的な位置情報及び前記第2の位置情報、を記憶手段に記憶させる記憶読出手段、
を備える、
ことを特徴とする電極製造装置。
【請求項10】
前記付与手段は、
前記集電体の一方の面、前記一方の面上に形成された電池電極を構成する第1の電極合材層、前記第1の電極合材層上に形成された第1の機能層のいずれかを有する第1の面側に前記第1の液体組成物を付与するともに、
前記集電体の他方の面、前記他方の面上に形成された前記電池電極を構成する第2の電極合材層、前記第2の電極合材層上に形成された第2の機能層のいずれかを有する第2の面側に第2の液体組成物を付与し、
前記第1の液体組成物の付与は、前記第1の電極合材層の付与及び前記第1の電極合材層を覆うための機能膜を有する前記第1の機能層の付与であり、
前記第2の液体組成物の付与は、前記第2の電極合材層の付与及び前記第2の電極合材層を覆うための機能膜を有する前記第2の機能層の付与である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電極製造装置。
【請求項11】
前記第1の状態及び前記第2の状態は、前記第1の液体組成物が付与された前記集電体の前記第1の面側、及び前記第2の液体組成物が付与された前記集電体の前記第2の面側における欠陥又は異常を含む状態を示す、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電極製造装置。
【請求項12】
前記第1の液体組成物及び前記第2の液体組成物は、同じ液体組成物である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電極製造装置。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の電極製造装置と、前記電極製造装置と通信可能な情報管理装置と、を有する電極製造システムであって、
前記情報管理装置は、
前記電極製造装置による前記集電体への層形成処理の実行に基づいて、前記電極製造装置に対して前記第1の所定のマーク及び前記第2の所定のマークを付加するためのマーク付加要求を送信する第1の送信手段、
を有し、
前記電極製造装置は更に、
前記マーク付加要求を受信する第2の受信手段、
を有し、
前記付加手段は、
前記マーク付加要求に応じて、前記第1の所定のマーク及び前記第2の所定のマークを前記第2の面側に付加する、
ことを特徴とする電極製造システム。
【請求項14】
集電体の第1の面側に第1の液体組成物を付与することにより第1の層を形成した後、前記集電体の第2の面側に第2の液体組成物を付与することにより第2の層を形成する電極製造装置が実行する電極製造方法であって、
前記第1の面側に対して前記第1の液体組成物を付与し、前記第2の面側に対して前記第2の液体組成物を付与することにより液体組成物層を形成する付与ステップと、
前記付与ステップによる前記第1の面側への前記第1の液体組成物の付与後に前記第1の面側の第1の状態を検出して第1の情報を出力し、前記付与ステップによる前記第2の面側への前記第2の液体組成物の付与後に前記第2の面側の第2の状態を検出して第2の情報を出力する検出ステップと、
前記第1の情報に基づく第1の所定のマークと、前記第2の情報に基づく第2の所定のマークと、を前記第2の面側に付加する付加ステップと、
を実行する、
ことを特徴とする電極製造方法。
【請求項15】
集電体の第1の面側に第1の液体組成物を付与することにより第1の層を形成した後、前記集電体の第2の面側に第2の液体組成物を付与することにより第2の層を形成する電極製造装置に、
前記第1の面側に対して前記第1の液体組成物を付与し、前記第2の面側に対して前記第2の液体組成物を付与することにより液体組成物層を形成する付与ステップと、
前記付与ステップによる前記第1の面側への前記第1の液体組成物の付与後に前記第1の面側の第1の状態を検出して第1の情報を出力し、前記付与ステップによる前記第2の面側への前記第2の液体組成物の付与後に前記第2の面側の第2の状態を検出して第2の情報を出力する検出ステップと、
前記第1の情報に基づく第1の所定のマークと、前記第2の情報に基づく第2の所定のマークと、を前記第2の面側に付加する付加ステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項16】
請求項1又は2に記載の電極製造装置を有する、
ことを特徴とする蓄電デバイス製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極製造装置、電極製造システム、電極製造方法、プログラム及び蓄電デバイス製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット技術を用いて、自由な形状でリチウムイオン二次電池用電極などの電気化学素子用部材を製造する技術が知られている。
【0003】
例えば、電極材料を塗工部102aに設置された塗工手段としてのダイコーター103aを用いて、集電用電極箔ロール4から供給される電極箔1の表面に薄く、均一に塗布した後、電極箔1の裏面に接しながら電極箔1を一定速度で搬送するローラー搬送系105を用いて、電極材料が塗布された電極箔1を乾燥室106aに搬送し、続いて、乾燥室106a内で電極材料内の溶剤成分を加熱蒸発させることにより電極材料を乾燥させ、電極層を形成する。次の塗工部102bに設置された塗工手段としてのダイコーター103bを用いて電極箔1の裏面に電極材料を塗布し、ローラー搬送系105を用いて電極箔1を搬送し、裏面に塗布された電極材料を乾燥室106bで乾燥させることにより、電極箔1の両面に電極層が形成された電極シートを製造する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、走行経路4上には第2の検出装置40の下流側に品質管理ユニット60が配置され、この品質管理ユニット60が備えるマーキング装置62に含まれるラベル貼付器によって、走行経路4を走行するウエブWの表面に、ウエブWの表面に欠陥の存在を示す印となるラベル64を貼り付ける技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2記載で開示されている技術では、集電体の一方の面に液体組成物が付与された後に第1の面側に第1の面側の状態を管理するための所定のマークを付加した状態で集電体を再度搬送し、集電体の他方の面に液体組成物を付与する場合、付加した所定のマークが電極製造装置内へ落下することによる異物混入等のリスクが高まる、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、請求項1に係る発明は、集電体の第1の面側に第1の液体組成物を付与することにより第1の層を形成した後、前記集電体の第2の面側に第2の液体組成物を付与することにより第2の層を形成する電極製造装置であって、前記第1の面側に対して前記第1の液体組成物を付与し、前記第2の面側に対して前記第2の液体組成物を付与することにより液体組成物層を形成する付与手段と、前記付与手段による前記第1の面側への前記第1の液体組成物の付与後に前記第1の面側の第1の状態を検出して第1の情報を出力し、前記付与手段による前記第2の面側への前記第2の液体組成物の付与後に前記第2の面側の第2の状態を検出して第2の情報を出力する検出手段と、前記第1の情報に基づく第1の所定のマークと、前記第2の情報に基づく第2の所定のマークと、を前記第2の面側に付加する付加手段と、を備える、ことを特徴とする電極製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように本発明によれば、集電体の一方の面側に所定のマークが付加されても、電極製造装置への異物混入等のリスクを回避することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電極を構成する層構造の一例を示す図である。
図2】電気化学素子の構成の一例を示す図である。
図3】電極製造装置の全体構成(側面図)の一例を示す図である。
図4】電極製造装置の全体構成の一例を示す図であり、(a)は電極製造装置の側面図の一部、(b)は電極製造装置の上面図である。
図5A】実施形態に係る電極製造装置における両面印刷時の集電体搬送パターンの一例を示す図である。
図5B】実施形態に係る電極製造装置における両面印刷時の集電体搬送パターンの他の一例を示す図である。
図5C】実施形態に係る電極製造装置における両面印刷時の集電体搬送パターンの他の一例を示す図である。
図5D】実施形態に係る電極製造装置における両面印刷時の集電体搬送パターンの他の一例を示す図である。
図6】実施形態に係る集電体の第1の面及び第2の面における各原点の一例を示す図である。
図7】第1の実施形態に係る集電体の第1の面及び第2の面における座標変換の概念を示す図である。
図8】実施形態に係る電極製造システムの全体構成の一例を示す図である。
図9】実施形態に係る情報管理装置のハードウエア構成の一例を示す図である。
図10】実施形態に係る電極製造装置の制御部を含むハードウエア構成の一例を示す図である。
図11A】実施形態に係る電極製造システムの機能構成の一例を示す図であり、特に情報管理装置の機能構成を示す図である。
図11B】実施形態に係る電極製造システムの機能構成の一例を示す図であり、特に電極製造装置の機能構成を示す図である。
図12】実施形態に係る欠陥座標管理テーブルの一例を示す概念図である。
図13】実施形態に係る相対位置情報算出処理を含むシーケンス図である。
図14】第1の実施形態に係る相対位置情報算出処理の一例を示すフローチャートである。
図15】第1の実施形態に係る集電体の第1の面及び第2の面における座標変換の概念を示す図である。
図16】第2の実施形態に係る電極製造装置における両面印刷時の集電体搬送パターンの他の一例を示す図である。
図17】第2の実施形態に係る相対位置情報算出処理の一例を示すフローチャートである。
図18】第3の実施形態に係る電極製造装置における両面印刷時の集電体搬送パターンの他の一例を示す図である。
図19】第3の実施形態に係る集電体の第1の面及び第2の面における座標変換の概念を示す図である。
図20】第3の実施形態に係る集電体の第1の面及び第2の面における座標変換の他の概念を示す図である。
図21】実施形態に係る集電体の面に所定のマークが付加された状態の一例を示す図である。
図22】実施形態に係る集電体の面に所定のマークが付加された状態の他の一例を示す図である。
図23】実施形態に係る所定のマークを集電体の片側又は両側に付加した場合の集電体の巻取りイメージの一例を示す図である。
図24】実施形態に係る集電体の面の両側に所定のマークが付加された状態の一例を示す図である。
図25】実施形態に係る集電体の面の両側に所定のマークが付加された状態の他の一例を示す図である。
図26】実施形態に係る所定のマークを集電体の片側又は両側に付加した場合の集電体の巻取りイメージの他の一例を示す図である。
図27】転写方式を採用した印刷部の一例を示す図であり、(a)はドラム状の中間転写体を用いた印刷部を示す図、(b)は無端ベルト状の中間転写体を用いた印刷部を示す図である。
図28】液体吐出ヘッドの一例を示す概略分解図である。
図29】液体吐出ヘッドの流路構成の一例を示す説明図である。
図30】液体吐出ヘッドの流路構成の一例を示す断面斜視図である。
図31】平行四辺形状のノズル板を備えたヘッドの一例を示す構成図である。
図32図31のヘッドを複数並べた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて、発明を実施するための形態について説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する部分があればその説明を省略する。
【0010】
〔第1の実施形態〕
以下、図1乃至図15を用いて第1の実施形態について説明する。
【0011】
〔電極を構成する層構造〕
第1の実施形態では、電極製造装置の一例として電極印刷装置について説明する。但し、以降の説明においては、電極製造装置として記載する。電極製造装置は、集電体と、集電体上に設けられた電極合材層と、電極合材層上または集電体上に設けられた機能層と、を有する電極を製造するための装置である。具体的には、電極製造装置は、樹脂層又は無機層を形成するための液体組成物を用いて、集電体Bの表面上に形成された電極合材層L1の表面における一部若しくは全体、又は集電体上の少なくとも一部に機能層L2としての樹脂層又は無機層を形成するものである。なお、電極合材層L1は活物質を含み、集電体と、当該集電体上に形成された電極合材層L1と、を有する電極は液体吐出対象に対応する。電極合材層L1は第1の膜領域に対応し、樹脂層又は無機層を含む機能層L2は第2の膜領域に対応する。機能層が含む材料は、例えば絶縁性材料である。なお本明細書及び特許請求の範囲において機能層とは、電極又は上述した電極を有する電気化学素子としたときに、絶縁性や電気化学素子特性、例えば出力特性やサイクル特性等に寄与する機能を発現する層である。
【0012】
なお、液体を吐出することで電極基体上に機能層(樹脂層又は無機層)を形成するとは、液体を吐出することのみで電極基体上に機能層(樹脂層又は無機層)を形成する場合だけでなく、液体を吐出することで機能層前駆体(樹脂層前駆体又は無機層前駆体)が形成され、その後の工程(例えば、加熱工程等)で機能層(樹脂層又は無機層)が形成される場合等も含む。以下、電極を構成する各構成要素について説明する。
【0013】
<電極基体>
電極基体は、集電体と、当該集電体上に設けられた電極合材層と、を有する。
【0014】
<集電体>
集電体は、例えばアルミ箔、銅箔などで構成される。
【0015】
<電極合材層>
電極合材層L1は、集電体上に設けられた活物質を含む層である。電極合材層L1は、粉体状の活性物質や触媒組成物を液体中に分散及び又は溶解し、この液体を集電体B上に塗布、固定、乾燥することによって形成されている。電極合材層L1を形成するには、スプレー、ディスペンサ、ダイコータや引き上げ塗工等を用いられ、塗布後に乾燥して電極合材層を形成する。
【0016】
更に電極合材層L1は、例えば電子写真方式や、液体現像型電子写真等のオンデマンド印刷によって形成される場合、電極形状が自由に変えられることに加えて、更に、集電体がアルミ箔のような薄い導電性箔である場合、非接触で特定のパターンを位置制御して印刷できることから、液体吐出ヘッドを用いたインクジェット法や、ディスペンサ、ジェットノズル等、液体吐出系の手法で印刷することが好ましく、特にインクジェット法は好ましいものとなる。
【0017】
正極活物質は、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出できる材料であれば特に限定されない。典型的には、アルカリ金属含有遷移金属化合物を正極用活物質として使用できる。例えばリチウム含有遷移金属化合物として、コバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄及びバナジウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素とリチウムとを含む複合酸化物が挙げられる。例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム等のリチウム含有遷移金属酸化物、LiFePO4等のオリビン型リチウム塩、二硫化チタン、二硫化モリブデン等のカルコゲン化合物、二酸化マンガン等が挙げられる。
【0018】
リチウム含有遷移金属酸化物は、リチウムと遷移金属とを含む金属酸化物又は該金属酸化物中の遷移金属の一部が異種元素によって置換された金属酸化物である。異種元素としては、例えばNa、Mg、Se、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、B等が挙げられ、なかでもMn、Al、Co、Ni及びMgが好ましい。異種元素は、1種でもよく又は2種以上でもよい。これらの正極活物質は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ニッケル水素電池における上記活物質としては水酸化ニッケル等が挙げられる。
【0019】
負極活物質は、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出できる材料であれば特に限定されない。典型的には、結晶構造を有するグラファイトを含む炭素材料を負極活物質として使用できる。そのような炭素材料としては、天然黒鉛、球状又は繊維状の人造黒鉛、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)等が挙げられる。炭素材料以外の材料としては、チタン酸リチウムが挙げられる。また、リチウムイオン電池のエネルギー密度を高める観点から、シリコン、錫、シリコン合金、錫合金、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化錫等の高容量材料も負極活物質として好適に使用できる。
【0020】
ニッケル水素電池における上記活物質としては水素吸蔵合金としては、Zr-Ti-Mn-Fe-Ag-V-Al-WやTi15Zr21V15Ni29Cr5Co5Fe1Mn8等で代表されるAB2系或いはA2B系の水素吸蔵合金が例示される。
【0021】
正極又は負極の結着剤には、例えばPVDF、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース等が使用可能である。また、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンより選択された2種以上の材料の共重合体を用いてもよい。また、これらのうちから選択された2種以上を混合して用いてもよい。
【0022】
電極に含ませる導電剤には、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維や金属繊維等の導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛やチタン酸カリウム等の導電性ウィスカー類、酸化チタン等の導電性金属酸化物、フェニレン誘導体、グラフェン誘導体等の有機導電性材料等が用いられる。
【0023】
燃料電池での活物質は、一般に、カソード電極やアノード電極の触媒として、白金、ルテニウム或いは白金合金等の金属微粒子をカーボン等の触媒担体に担持させたものを用いる。触媒担体の表面に触媒粒子を担持させるには、例えば触媒担体を水中に懸濁させ、触媒粒子の前駆体を添加、(塩化白金酸、ジニトロジアミノ白金、塩化第二白金、塩化第一白金、ビスアセチルアセトナート白金、ジクロロジアンミン白金、ジクロロテトラミン白金、硫酸第二白金塩化ルテニウム酸、塩化イリジウム酸、塩化ロジウム酸、塩化第二鉄、塩化コバルト、塩化クロム、塩化金、硝酸銀、硝酸ロジウム、塩化パラジウム、硝酸ニッケル、硫酸鉄、塩化銅等の合金成分を含むものを用い)懸濁液中に溶解させアルカリを加え金属の水酸化物を生成させると共に、触媒担体表面に担持させた触媒担体を得る。かかる触媒担体を電極上に塗布し、水素雰囲気下等で還元させることで、表面に触媒粒子(活物質)が塗布された電極を得る。
【0024】
<樹脂層及び無機層>
樹脂層又は無機層は、集電体上に形成されている電極合材層に、液体吐出ヘッドにより液体組成物を吐出することにより形成される機能層の一例である。本実施形態に係る機能層は、蓄電デバイスとしたときに電極同士を物理的に絶縁し、短絡の発生を抑制する絶縁層としての機能を有するが、絶縁層としての機能を奏する範囲であれば、絶縁層としての機能以外の機能を更に有していてもよい。なお、集電体に、まず、比較的正確な精度をもつ塗工方法、例えばスクリーン印刷やグラビア塗工、インクジェット塗工やディスペンサ描画等によって、絶縁性枠状等の所望の電極形状のパターンの樹脂層又は無機層を形成してもよい。この場合、樹脂層又は無機層を形成した後、上記活物質をスラリー状にしたものを上記パターン上に塗布し、乾燥する。これにより、電極合材層の形成速度を極端に上昇させたり、或いは粘度の限られたスラリーから比較的厚い膜を形成したりする場合にも、後の乾燥工程での所望のサイズ幅の活物質が、集電体上に常に接する状態を作れることにより、結果として目的とする塗工寸法が常に実現できるため、好ましいものとなる。
【0025】
従って、かかる樹脂層又は無機層に要求される性能は、集電体に対して、正確に塗布乾燥できることと、上記活物質や、最終的にデバイスにしたときに用いられる電解液に対して反応又は溶解しないものであることが好ましい。即ち、電極合材層の周辺部の樹脂層又は無機層は、絶縁性膜であることを特徴とするものである。ここでいう絶縁性膜は、通常厚さ方向で、メガオーム[/cm]以上の絶縁性を有するものであることが好ましい。また、デバイスの中において長く絶縁性を保つ必要があるため、上記電解液に溶解しにくい必要がある。従って、通常の有機溶媒に溶解した樹脂のみではこれらの性能を達成することは難しく、塗布した後に、熱や電離放射線等によって架橋不要化性能等を有する樹脂群が好ましい。或いは、無機材料は絶縁性を有する微粒子であり、微粒子が溶媒に分散していて、塗布後に乾燥させ絶縁性を有する膜であることが好ましい。また、無機材料は固体電解質材料や半固体電解質材料であってもよい。更に、この樹脂層又は無機層は、電極加工の過程で、最大250[kN]程度の線圧によるプレス工程等が存在するため、上記線圧に対して耐性を有することが好ましい。
【0026】
なお集電体上において電極合材層を形成する領域の周囲(枠領域)に先に樹脂層又は無機層を形成しておき、枠領域に樹脂層又は無機層が形成されている集電体上に活物質をスラリー状にしたものを塗布し、乾燥させてもよい。これにより、電極合材層の形成速度を極端に上昇させたり、或いは粘度の限られたスラリーから比較的厚い膜を形成したりする場合にも、後の乾燥工程における所望のサイズ幅の活物質が、集電体上に常に接する状態を作ることができる。その結果、目的とする塗工寸法が常に実現できるため、好ましいものとなる。従って、樹脂層又は無機層に要求される性能は、集電体に対して、正確に塗布乾燥できることと、活物質や、最終的にデバイスにしたときに用いられる電解液に対して溶解しないものであることが好ましい。即ち、電極合材層の周辺部の樹脂層又は無機層は、上述したように絶縁性膜で構成される。
【0027】
<樹脂形成用液体組成物>
次に、上述の樹脂層を形成するため液体組成物である、樹脂及び該樹脂の前駆体(モノマー)の少なくとも何れか一方(樹脂又は該樹脂の前駆体)と、溶媒と、を含む樹脂層形成用液体組成物を先に説明する。
【0028】
樹脂及び該樹脂の前駆体としては、分子内に電離放射線や赤外線(熱)によって架橋性の構造を保有する樹脂類やオリゴマー類を液体である有機溶剤(有機溶媒)に溶解せしめたものが好ましい。樹脂及び該樹脂の前駆体としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂のうち低分子量のオリゴマー前駆体や、その一部に例えば脂肪族不飽和結合を有する炭化水素基で修飾したものが好ましく、例えばアクリル系共重合体の一部の側鎖にアリル基、アリルオキシ基、アクリロイル基、ブテニル基、シンナミル基、シンナモイル基、クロトメイル基、シクロヘキサジェニル基、インプロペニル基、メタクリロイル基、ペンテニル基、プロペニル基、スチリル基、ビニル基、ブタジェニル基等の不飽和結合を有するもの等が好ましい。
【0029】
更にポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリルニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリビニルピロリドン、及びセルロース等についても分子量1万以下の比較的低分子量の分散前駆体やセルロースナノファイバーを用い、それらを電離放射線や赤外線によって加熱することにより定着後の不溶性及び架橋性を高めることができる。
【0030】
更にこれらの前駆体は、架橋性を高めるために最大30重量部程度のアジド化合物を含有させても構わない。例えば、3.3′-ジクロロ-4.4′-ジアジドジフェニルメタン、4.4′-ジアジドジフェニルエーテル、4.4′-ジアジドジフェニルジスルフィド、4.4′-ジアジドジフェニルスルフィド、4.4′-ジアジドジフェニルスルホン、4-アジドカルコン、4-アジド-4′-ヒドロキシカルコン、4-アジド-4′-メトキシカルコン、4-アジド-4′-モルホリノカルコン、4-ジメチルアミノ-4′-アジドカルコン、2.6-ビス(4′-アジドベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン、2.6-ビス(4′-アジドベンザル)-シクロヘキサノン、シンナミリデン-4-アジドアセトフェノン、4-アジドシンナミリデンアセトフェノン、4-アジド-4′-ジメチルアミノシンナミリデンアセトフェノン、シンナミリデン-4-アジドシンナミリデンアセトン、2.6-ビス(4′-アジドシンナミリデン)-4-メチルシクロヘキサノン、2.6-ビス(4′-アジドシンナミリデン)-シクロヘキサノン、1.4′-アジドベンジリデンインデン、1.4′-アジドベンジリデンインデン、1.4′-アジドベンジリデン-3-α-ヒドロキシ-4″-アジドベンジルインデン、9.4′-アジドベンジリデンフルオレン、9.4′-アジドシンナミリデンフルオレン、4.4′-ジアジドスチルベン-2.2′-ジスルホニル-N-(p-メトキシフェニル)アミド、4.4′-ジアジドスチルベン-2.2′-ジスルホニル-N-(p-ヒドロキシエチルフェニル)アミド、4.4′-ジアジドスチルベン-2.2′-ジスルホニル-N-(p-ヒドロキシフェニル)アミド、4.4′-ジアジドスチルベン-2.2′-ジスルホニルアミド、4.4′-ジアジドベンゾフェノン、4.4′-ジアジドスチルベン、4.4′-ジアジドカルコン、4.4′-ジアジドベンザルアセトン、6-アジド-2-(4'-アジドスチリル)ベンゾイミダゾール、3-アジドベンジリデンアニリン-N-オキシp~(4-アジドベンジリデンアミド)安息香酸、1.4-ビス(3′-アジ1ζスチリル)ベンゼン、3.3′-ジアジドジフェニルスルホン、4.4′-ジアジドジフェニルメタン等が挙げられる。
【0031】
なかでも特に2.6-ビス-(4′アジドベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン等を好適に用いることができる。これらの材料が溶解される溶媒は特に規定されるものではないが、上記化合物が溶解できて沸点や表面張力が後の塗布や乾燥工程に対して好適なものを単独又は混合して調整し用いることができる。
【0032】
<無機層形成用液体組成物>
次に、上述の無機層を形成するため液体組成物である、無機粒子と、溶媒と、を含む無機層形成用液体組成物を説明する。
【0033】
無機粒子を構成する無機酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、二酸化チタン、チタン酸バリウム、二酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化マンガン、二酸化バナジウム、二酸化ケイ素、ゼオライトなどの鉱物資源由来物質、又はこれらの人造物等が挙げられる。中でも、電気抵抗の大きさや安定性の観点から、酸化アルミニウム、二酸化チタンが好ましく、酸化アルミニウムがより好ましく、α-アルミナがさらに好ましい。
【0034】
溶媒としては、上述した無機酸化物を分散可能な溶媒であることが好ましい。
【0035】
また、無機層形成用液体組成物は、必要に応じて無機粒子同士を結着するバインダーを含んでいてもよい。
【0036】
<電気化学素子の構成>
続いて、電気化学素子(電池)の構成について説明する。図2は、電気化学素子の構成の一例を示す図である。電気化学素子100が液系の電気化学素子である場合は、電極素子140に電解質水溶液又は非水電解質を注入することにより電解質層151が形成されており、外装152により封止されている。電気化学素子100において、引き出し線141及び142は、外装152の外部に引き出されている。また電気化学素子100が固体電気化学素子である場合は、セパレータを固体電解質又はゲル電解質に置き換えればよい。
【0037】
なお、電気化学素子100の形状としては特に制限はない。電気化学素子100の形状は、例えば、ラミネートタイプ、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダタイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダタイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプ等が挙げられる。
【0038】
<電気化学素子の用途>
また、電気化学素子の用途としても特に制限はない。例えば、車両、スマートフォン、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤ、携帯電話、携帯ファクシミリ、携帯コピー、携帯プリンタ、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナ、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバ、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダ、ラジオ、バックアップ電源、モータ、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、ストロボ、カメラ等の電気機器などが挙げられる。これらの中でも、車両、電気機器が特に好ましい。車両としては、例えば、普通自動車、大型特殊自動車、小型特殊自動車、トラック、大型自動二輪車、普通自動二輪車などが挙げられる。
【0039】
●用語について●
本実施形態における「所定のマーク」とは、集電体(電極基体)の第1の面側に対して第1の液体組成物を付与して第1の液体組成物層を形成し、第2の面側に対して第2の液体組成物を付与することにより第2の液体組成物層を形成後、集電体の各面側の状態を示す位置情報に基づいて得られたマーク、印、ラベル等をいう。このときの各面側の状態には、液体組成物層における欠陥を示す欠陥座標情報が含まれる。また、マーク、印、ラベル等には、液体組成物層上の欠陥座標情報で示される位置に貼付可能な付箋も含まれる。
【0040】
また、本実施形態における集電体の第1の面側は、集電体の一方の面、一方の面上に形成された電池電極を構成する第1の電極合材層、第1の電極合材層上に形成された第1の機能層のいずれかを有する第1の面側をいう。また、集電体における第2の面側は、集電体の他方の面、他方の面上に形成された電池電極を構成する第2の電極合材層、第2の電極合材層上に形成された第2の機能層のいずれを有する第2の面側をいう。なお、第1の面側は、集電体(電極基体)の表面側、第2の面側は、集電体(電極基体)の裏面側を表すものとして説明するが、第1の面側が集電体(電極基体)の裏面側、第2の面側が集電体(電極基体)の表面側を表すものであってもよい。
【0041】
〔電極製造装置の装置構成〕
続いて、図3及び図4を用いて、実施形態に係る電極製造装置の装置構成について説明する。
【0042】
まず電極製造装置の全体構成について説明する。図3は、電極製造装置の全体構成(側面図)の一例を示す図である。図4は、電極製造装置の全体構成の一例を示す図であり、(a)は電極製造装置の側面図の一部、(b)は電極製造装置の上面図である。具体的には、図3及び図4(a)は、XYZ軸の-X方向側からみた電極製造装置3の側面図の一部であり、図4(b)は、XYZ軸の-Z方向側からみた電極製造装置3の上面図である。本実施形態では、XYZ軸におけるY軸は、集電体(電極基体)の搬送方向(MD: Media Direction)を示す方向である。またX軸は、集電体(電極基体)の搬送方向を示すY軸と直行する方向、すなわち集電体(電極基体)を矩形とみた場合の幅方向(CMD:Cross Media Direction)を示す方向である。またZ軸は、電極製造装置3を地面(床面等)に設置した場合の鉛直方向を示す方向と定義する。
【0043】
電極製造装置3は、集電体の第1の面側に第1の液体組成物を付与することにより第1の層を形成した後、集電体の第2の面側に第2の液体組成物を付与することにより第2の層を形成する。本実施形態において、第1の液体組成物及び第2の液体組成物は、同じ液体組成物が用いられる。電極製造装置3は、制御部300と、後述する層形成部330と、外観検査ユニット380と、マーキングユニット385と、操作部390と、を備えている。層形成部330は、駆動ローラ340aと従動ローラ340bとを有する搬送ユニット340と、塗工ユニット350(インクジェットヘッド)と、硬化ユニット365と、ヒータ370とを含む。但し、マーキングユニット385は、外観検査ユニット380と一体型ではなく、オプションとして設けられてもよい。また搬送ユニット340は、駆動ローラ340aと従動ローラ340bとにより、集電体320、又は集電体320と集電体320上に設けられた電極合材層とを有する電極基体、を+Y方向に搬送する。塗工ユニット350、硬化ユニット365、ヒータ370、外観検査ユニット380及びマーキングユニット385は、+Y方向における上流側から下流側に上述した順で配置されている。
【0044】
制御部300は、搬送ユニット340に含まれる塗工ユニット350、硬化ユニット365、ヒータ370、外観検査ユニット380及びマーキングユニット385等の動作を制御すると共に、外観検査ユニット380により出力される複数の検査結果に基づく検査結果情報等を処理する。なお制御部300は、電極製造装置3との間において信号又はデータの送受が可能であれば、電極製造装置3の内部又は外部のいずれに配置されていてもよいし、電極製造装置3から離れた遠隔場所に配置されていてもよい。
【0045】
集電体320は、Y方向に沿って延伸する長尺シート状の導電性箔である。導電性箔は、例えばアルミ箔、銅箔である。集電体320と、集電体320上に設けられた電極合材層と、を有する電極基体は、集電体上に、性状が異なる点を+Y方向と交差するX方向に沿って複数有する。この性状には、電極基体の厚み、色及び反射率等が挙げられるが、これらの少なくとも一つが含まれることが好ましい。具体的には、集電体320上には電極合材層が形成されている。そのため、電極基体において、電極合材層が形成されている領域と形成されていない領域との間では厚み、色及び反射率の少なくとも一つが異なっている。性状が異なる点は、電極合材層が形成されている領域と、電極合材層が形成されていない領域と、の境界に含まれる点である。
【0046】
搬送ユニット340は、電極基体が塗工ユニット350、硬化ユニット365、ヒータ370、外観検査ユニット380及びマーキングユニット385の正面(Z軸方向における-Z方向)を順次通過するように電極基体を搬送する。搬送ユニット340は更に、駆動ローラ340aと、従動ローラ340bと、駆動ローラ340aの回転角度信号を出力するエンコーダと、駆動ローラ340aを駆動させるモータと、を含んでいる。電極基体は、少なくとも駆動ローラ340a及び従動ローラ340bに架け回されており、駆動ローラ340aの回転に従って+Y方向に走行することによって搬送される。なお、搬送ユニット340は、電極基体の移動を補助するガイド部材等を更に備えてもよい。
【0047】
塗工ユニット350は、+Y方向に搬送される電極基体が有する集電体320上に形成されている電極合材層上に液体組成物を吐出して付与することにより、電極基体上に機能層としての樹脂層を形成する液体吐出手段の一例である。
【0048】
塗工ユニット350(インクジェットヘッド)は、機能層としての樹脂層を形成するための元データとなる画像データに基づいて液体組成物を吐出し、樹脂層の前駆状態である樹脂前駆層を形成する。
【0049】
塗工ユニット350としては、X方向における電極基体の幅以上の幅を有するライン状に並べたヘッドを使用することができる。塗工ユニット350から液体組成物を吐出する圧力発生手段及び駆動方法には特に制限はない。例えば、発熱体の熱により発生する蒸気の圧力を利用して液体組成物滴を飛翔させるサーマルアクチュエータ、圧電素子によって発生する機械的な圧力パルスを利用して液体組成物滴を飛翔させる圧電アクチュエータ、或いは、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータ等を使用することができる。塗工ユニット350は更に、必要に応じて液体組成物の供給系を圧力オンオフすることにより液体組成物を飛翔させてもよい。
【0050】
硬化ユニット365は光源を含む。硬化ユニット365は、電極基体上に形成された液体組成物層(樹脂前駆層)に光を照射し、樹脂前駆層に含まれるモノマーの重合を促進させることで、液体組成物層を樹脂層に硬化させる。光源としては、例えば、低、中、高圧水銀ランプのような水銀ランプ、タングステンランプ、アーク灯、エキシマランプ、エキシマレーザ、半導体レーザ、高出力UV-LED、YAGレーザ、レーザと非線形光学結晶とを組み合わせたレーザシステム、高周波誘起紫外線発生装置、EBキュア等の電子線照射装置、X線照射装置等を使用することができる。但し、システムを簡便化できる観点では、高周波誘起紫外線発生装置、高・低圧水銀ランプ、半導体レーザ等を使用することが好ましい。また、光源に集光用ミラーや走査光学系を設けてもよい。
【0051】
光源の例として、例えばライトハンマーシリーズ(フュージョンUVシステムズ社製)等が例示される。また、日亜化学工業株式会社に代表されるLEDメーカから1W以上の高輝度のUV-LEDやレーザーダイオード等が販売されており、これらを線又は平面上に並べることによって好適に用いることができる。また、活物質粉体の隙間にしみ込んだり(入り込んだり)して光が届きにくい場合には、電子線、X線照射装置等を光源として用いることができる。この場合、例えば岩崎電気株式会社製の小型EB射装置等が好適に用いられる。
【0052】
ヒータ370は、電極基体上に形成された樹脂層形成用液体組成物の吐出によって形成される樹脂前駆層を加熱することにより、硬化の促進、溶媒の除去、乾燥等を行う。ヒータ370としては、例えば、赤外ランプ、発熱体を内蔵したローラ(熱ローラ)、温風又は熱風を吹き出すブロワ、水蒸気等を用いたボイラー型熱風を導入した炉等を使用することができる。
【0053】
なお、ヒータ370は、熱源として知られ制御可能なものであればいかなるものでもよい。例えば、光源として、可視光に加えて赤外光を発生し得るものを使用した場合には、光照射と同時に加熱を行うことができる。この場合にはヒータ370は硬化、即ち樹脂前駆層に含まれるモノマーの重合を促進させることができるため、より好ましい。なお、樹脂前駆層に光を照射すると、光源から発生する熱によって樹脂前駆層が加熱されるため、加熱手段は、ヒータ370のように必ずしも独立した部材として設ける必要はない。しかし、光源からの熱のみにより常温で放置して樹脂前駆層を完全に硬化させるには長時間を要する。したがって、常温放置は、完全硬化までに充分に長い時間を確保できる用途に適用することが望まれる。
【0054】
外観検査ユニット380は、図4(a)に示すようにヒータ370とマーキングユニット385との間に設けられ、一般的に知られているようなラインセンサカメラを有する。また外観検査ユニット380は、層形成部330による集電体320の第1の面への液体組成物層の膜の付与後に第1の面の第1の状態を検出し、層形成部330による集電体320の第2の面への液体組成物層の膜の付与後に第2の面の第2の状態を検出する。ここで、本実施形態では、以降「液体組成物層の膜」を便宜上「液体組成物層の膜」と記載する。また、「付与」には、液体組成物層の膜の形成、及び液体組成物層の膜の印刷が含まれる。
【0055】
また層形成部330及び外観検査ユニット380は、集電体320の第1の面側への第1の液体組成物の付与及び第1の状態の検出を実行して第1の情報を出力した後、巻取部342により巻き取られた集電体320が巻出部341により再度巻き出された際に、集電体320の第2の面への第2の液体組成物の付与及び第2の状態の検出を実行して第2の情報を出力する。また外観検査ユニット380は、少なくとも集電体320の搬送方向において発生する第1の面と第2の面との間のオフセット量を検出する。なお、上述した第1の状態及び第2の状態は、第1の液体組成物が付与された集電体320の第1の面側、及び第2の液体組成物が付与された第2の面側における欠陥又は異常を含む状態を示す。また、オフセット量とは、第1の面側における原点及び第2の面側における原点の各座標値のずれ量、各座標値の相対的な差分を表す。なお、外観検査ユニット380における状態の検出とは、集電体320の第1の面側、第2の面側にそれぞれ付与された液体組成物層の状態をラインセンサカメラ等により撮影し、第1の面側、第2の面側の異常(ベタ上の塗膜における点状の異常、スジ状の異常、等)が無いか、すなわち液体組成物層の表面の欠陥を検査することをいう。このとき、外観検査ユニット380は、各面側における状態が異常であるか否かの判断を、所定の閾値に基づいて行うようにしてもよい。本実施形態において外観検査ユニット380は、検出手段の一例として機能する。
【0056】
マーキングユニット385は、図4(a)に示すように、集電体320の搬送方向に対して外観検査ユニット380の下流側に設けられる。またマーキングユニット385は、外観検査装置38によるkをもとに液体組成物層の膜で発生した欠陥の欠陥座標を示すマーク(印、ラベル等)を集電体320上に記録(貼付)する。すなわち、マーキングユニット385は、第1の情報に基づく第1の所定のマークと、第2の情報に基づく第2の所定のマークと、を第2の面側に付加する。またマーキングユニット385は、第1の面側の第1の状態の検出及び巻取部342による集電体320の巻取りが行われ、巻出部341により集電体320が再度巻き出された後に、第1の所定のマークと第2の所定のマークとを、外観検査ユニット380と巻取部342との間で第2の面側に付加する。またマーキングユニット385は、外観検査ユニット380による集電体320の第2の面側の第2の状態の検出後に、第1の所定のマークと第2の所定のマークとを、外観検査ユニット380と巻取部342との間で第2の面に付加する。またマーキングユニット385は、第1の所定のマークと第2の所定のマークとを、集電体320の搬送方向に沿った第1の辺の端部又は第1の端部と対向する第2の端部に分散させて付加する。マーキングユニット385は更に、情報管理装置2が送信したマーク付加要求に応じて、第1の所定のマーク及び第2の所定のマークを集電体320の第2の面側に付加する。なお、第1の所定のマークは、第1の情報に含まれる第1の位置情報に基づき付加される。本実施形態においてマーキングユニット385は、付加手段の一例として機能する。
【0057】
電極製造装置3は、外観検査ユニット380により得られた検査結果に含まれる、欠陥が発生した欠陥位置を示す欠陥座標情報及び欠陥画像データをマーキングユニット385に送る。マーキングユニット385は、欠陥座標情報及び欠陥画像データに基づいて、液体組成物層の膜に欠陥があることを示すマーク(印、ラベル等)を付加する。なお上述したように、マークは、集電体(電極基体)に対して貼り付けられるラベルを含む。
【0058】
本実施形態では、図4(a)及び図4(b)において、集電体320を含む電極基体、電極基体上に設けられた電極合材層、電極合材層上に塗布された液体組成物層の膜を含めて、「被塗布材」と呼ぶ。
【0059】
電極製造装置3は更に、操作部390を備えている。操作部390は、タッチパネル等により構成されており、電極製造装置3のユーザ(利用者)による電極製造装置3への操作入力を受け付けると共に、電極製造装置3の状態情報、設定情報等を操作部390の画面上に表示する。
【0060】
なお、本実施形態に係る電極製造装置3は、必要に応じて塗工ユニット(液体吐出ヘッド)350の前段又は後段に各種工程を実行する装置を備えることで蓄電デバイス製造装置としてもよい。
【0061】
上述の蓄電デバイス製造装置は、電極基体に液体を付与する電極製造装置3を有し、更に、例えば、樹脂層又は無機層が形成された電極基体をセル(電池)化に向けて加工する電極基体加工部などを含む。
【0062】
<電極基体加工部>
電極基体加工部は、塗工ユニット(液体吐出ヘッド)350よりも下流において、樹脂層又は無機層が形成された電極基体を加工する。電極基体加工部は、裁断、折畳み、及び貼合せの少なくとも一つを実施してもよい。電極基体加工部は、例えば、樹脂層又は無機層が形成された電極基体を裁断し、電極基体積層体を作製することができる。電極基体加工部は、樹脂層又は無機層が形成された電極基体を巻回又は積層することができる。絶縁層が融点又はガラス転移点を有する材料を含む場合、電極基体加工部では、例えば、一の電極基体積層体と他の電極基体積層体は、加熱により少なくとも一部が接着される。
【0063】
電極基体加工部は、例えば、電極基体加工装置を有し、樹脂層又は無機層が形成された電極基体の裁断やつづら折り、積層や巻回、積層や巻回後の電極基体間の熱接着等を目的の電池形態に応じて実施する。電極基体加工部において樹脂層又は無機層が形成された電極基体の加工が行われるときは、加工後の電極基体にシワ等のダメージを低減させることが可能となる理由から、電極基体の搬送速度は比較的遅いことが好ましい。
【0064】
電極基体加工部によって行われる電極基体加工工程は、例えば、塗工ユニット(液体吐出ヘッド)350よりも下流において、樹脂層又は無機層が形成された電極基体を加工する工程である。電極基体加工工程は、裁断工程、折畳み工程、及び貼合せ工程の少なくとも一つを含んでもよい。
【0065】
<電極製造装置における両面印刷時の集電体搬送パターン>
次に、実施形態に係る電極製造装置における両面印刷時の集電体搬送パターンについて説明する。以下に示す図5A乃至図5Dの集電体搬送パターンは、集電体320(電極基体)の第1の面側及び第2の面側のそれぞれに対して、集電体320(電極基体)を巻き出すための巻出部341及び集電体320(電極基体)を巻き取るための巻取部342の一対を用いて、液体組成物層の膜を付与する際の各パターンを示している。なお本実施形態において、巻出部341は、上述した駆動ローラ340aを含み、ロール状に巻かれた集電体(電極基体)を巻き出す機構であり、巻出手段の一例として機能する。また巻取部342は、上述した従動ローラ340bを含み、搬送された電極基体を巻き取る機構であり、巻取手段の一例として機能する。なお、巻取部342は、集電体320が巻出部341によって再度巻き出される際に、マーキングユニット385による集電体320の第2の面への第1の所定のマーク及び第2の所定のマークの付加、並びに、外観検査ユニット380による第2の面の第2の状態の検出、がそれぞれ可能な状態になるように、集電体320を巻き取る。
【0066】
以下、集電体320の巻出し及び巻取りに係る巻出部341及び巻取部342の回転方向を適宜変更して、集電体320の第1の面側に第1の液体組成物、及び第2の面側に第2の液体組成物を付与する場合について説明する。
【0067】
図5Aは、実施形態に係る電極製造装置における両面印刷時の集電体搬送パターンの一例を示す図である。図5Aでは、まずロール状に巻かれた集電体320(電極基体)が、集電体320(電極基体)を巻き出すための巻出部341からY方向への搬送時に-X方向からみて反時計回りに巻き出される。これにより、集電体320(電極基体)は、塗工ユニットによって集電体320(電極基体)の第1の面側(塗工ユニットに対向する面側)に液体組成物層の膜が付与される。その後、集電体320(電極基体)は、外観検査ユニットの下方を通過して第1の面側の外観を検査された後、集電体320(電極基体)を巻き取るための巻取部342によって-X方向からみて時計回りに巻き取られる。これにより、集電体320(電極基体)の第1の面が巻取部342の中心に対して内側に巻き取られる。つまり、集電体320(電極基体)の第1の面と第2の面とがここで反転されてロール状に巻き取られる。その後、ロール状に巻き取られた集電体320(電極基体)は、X軸方向の向きを変えずに同じ巻出部341に再度セットされることで、Y方向への搬送時にその巻出部341から-X方向からみて反時計回りに巻き出される。これにより、集電体320(電極基体)は、塗工ユニットによって集電体320(電極基体)の第2の面側(塗工ユニットに対向する面側)に液体組成物層の膜が付与される。その後、集電体320(電極基体)は、外観検査ユニット380及びマーキングユニット385の下方をそれぞれ通過して第2の面に所定のマークが付加された後、集電体320(電極基体)を巻き取るための巻取部342によって同じく-X方向からみて反時計回りに巻き取られる。なお、以降の説明において、集電体320の巻出及び巻取りにおける「-X方向からみて」の記載を省略する。
【0068】
図5Bは、実施形態に係る電極製造装置における両面印刷時の集電体搬送パターンの他の一例を示す図である。図5Bでは、図5Aにおいて説明した第1の面側への液体組成物層の膜の付与後の巻取方向と、第2の面側への液体組成物層の膜の付与前の巻出方向とが逆になっている。すなわち、第1の面側への液体組成物層の膜の付与後の巻取方向が時計回りから反時計回りに、第2の面側への液体組成物層の膜の付与前の巻出方向が反時計回りから時計回りにそれぞれ変更されている。これにより、図5Aに示した場合と同様に、一対の巻出部341及び巻取部342を用いて集電体320(電極基体)の第1の面側及び第2の面側にそれぞれ液体組成物層の膜が付与され、第2の面に所定のマークが付加される。
【0069】
図5Cは、実施形態に係る電極製造装置における両面印刷時の集電体搬送パターンの他の一例を示す図である。図5Cでは、図5Bにおいて説明した第1の面側への液体組成物層の膜の付与前の巻出方向が逆になっている。すなわち、第1の面側への液体組成物層の膜の付与前の巻出方向が反時計回りから時計回りに変更されている。これにより、図5A及び図5Bに示した場合と同様に、一対の巻出部341及び巻取部342を用いて集電体320(電極基体)の第1の面側及び第2の面側にそれぞれ液体組成物層の膜が付与され、第2の面に所定のマークが付加される。
【0070】
図5Dは、実施形態に係る電極製造装置における両面印刷時の集電体搬送パターンの他の一例を示す図である。図5Dでは、図5Cにおいて説明した第1の面側への液体組成物層の膜の付与後の巻取方向と、第2の面側への液体組成物層の膜の付与前の巻出方向とが逆になっている。すなわち、第1の面側への液体組成物層の膜の付与後の巻取方向が反時計回りから時計回りに、第2の面側への液体組成物層の膜の付与前の巻出方向が時計回りから反時計回りにそれぞれ変更されている。これにより、図5A乃至図5C示した場合と同様に、一対の巻出部341及び巻取部342を用いて集電体320(電極基体)の第1の面及び第2の面にそれぞれ液体組成物層の膜が付与され、第2の面に所定のマークが付加される。
【0071】
以上説明したように、本実施形態では、集電体320(電極基体)の第1の面側に対する液体組成物層の膜を付与した後、集電体320(電極基体)の第2の面側に対する液体組成物層の膜の付与が可能な状態で集電体320(電極基体)を巻き取る構成若しくは巻き出す構成を備えていればよい。
【0072】
<集電体の第1の面及び第2の面における原点>
次に、集電体の第1の面及び第2の面における原点について説明する。図6は、実施形態に係る集電体の第1の面及び第2の面における各原点の一例を示す図である。図6に示すように、集電体320(電極基体)の第1の面(例えば、表面)及び集電体320(電極基体)の第2の面(例えば、裏面)における原点座標は、同じ集電体320(電極基体)を巻出部341及び巻取部342を用いて搬送させるため、原点座標の把握が必要となる。そのため、本実施形態では、集電体320(電極基体)の各面の原点座標の関係は、図6に示した位置関係を取ることになる。
【0073】
<集電体の第1の面及び第2の面における座標変換の概念>
ここで、集電体の第1の面及び第2の面における座標変換の概念について説明する。これまでに説明したように、本実施形態では、集電体320の第1の面に対する液体組成物層の膜の付与、液体組成物層の表面の検査、及び欠陥に係る情報を含む検査結果を表すためのマーキングを同一パスライン上で行う。その結果、巻取部342によって巻き取られた電極基体のロールを巻出部341に再度セットすることで、集電体320の第1の面に2回以上重ねて液体組成物層の膜を付与することや、集電体320の第1の面及び第2の面の両面に液体組成物層の膜を付与することが可能となる。但し、このとき、液体組成物層の膜の付与、液体組成物層の膜の検査ごとにマーキングを行うと、2回目以降の搬送時に搬送しにくくなるほか、マーキングに用いた付箋状のラベルが集電体320の再搬送中に剥がれて電極製造装置3へ異物として混入してしまうという課題が生じる。
【0074】
上記の課題を解決する方法として、集電体320の第1の面及び第2の面の両面に液体組成物層の膜を付与した後にマーキングを行うことで、電極製造装置3へのラベル混入を回避する方法を示す。図7は、第1の実施形態に係る集電体の第1の面及び第2の面における座標変換の概念を示す図である。図7に示すように、第1の面の欠陥座標を表す「1面の欠陥座標(X1,Y1)」は、第1の面を裏返して第2の面から見た場合の相対的な座標を表している。これに対して、第2の面の欠陥座標を表す「2面の欠陥座標(X2,Y2)」は、第2の面をそのまま斜め上方から見た場合の座標を表している。これにより、検査結果としての「検査結果(丸1)(補正)+(丸2)」は、第1の面の補正欠陥座標を表す「1面の欠陥座標(Xm,Ym)」、第2の面の欠陥座標を表す「2面の欠陥座標(X2,Y2)」の各座標情報に基づいて、それぞれのラベルが生成されることになる。
【0075】
つまり、第1の面及び第2の面が電極基体の表面と裏面の関係である場合、第2の面は第1の面をY軸方向に沿って反転させるため、欠陥座標には補正が必要となる。具体的には、第1の面及び第2の面における液体組成物層の膜の付与位置が完全に一致していた場合、第1の面の欠陥のマーキング用の座標(Xm,Ym)は、第1の面の欠陥座標(X1,Y1)、検査長yを用いて、それぞれ(式1)、(式2)のように算出される。
【0076】
Xm=X1・・・(式1)
Ym=y-Y1・・・(式2)
このように、集電体320の第1の面と第2の面との間の相対的な位置情報に含まれる集電体320の搬送方向に沿った座標情報(第1の面で検出された欠陥に係る第2の面における相対的なY座標の座標情報:Ym)は、集電体320の搬送方向に沿った長さ情報:yから第1の面における欠陥の欠陥位置情報に含まれる集電体320の搬送方向に沿った座標情報:Y1を減算した値となる。
【0077】
〔電極製造システムの全体構成〕
図8は、実施形態に係る電極製造システムの全体構成の一例を示す図である。図8に示されているように、電極製造システム1は、情報管理装置2及び上述した電極製造装置3を有している。更に、電極製造システム1では、情報管理装置2及び電極製造装置3は、通信ネットワーク150を介してそれぞれ互いに接続されている。
【0078】
通信ネットワーク150は、不特定多数の通信が行われる通信ネットワークであり、インターネット、イントラネット、LAN(Local Area Network)等によって構築されている。なお、通信ネットワーク150には、有線通信だけでなく、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、LTE(Long Term Evolution)等の無線通信による通信ネットワークが含まれてもよい。なお、情報管理装置2及び電極製造装置3は、専用の有線ケーブルで直接接続されていてもよい。
【0079】
ここで、情報管理装置2の役割について説明する。電池電極製造に係る本実施形態では、情報管理装置2は、図8に示した電極製造システム1における電極製造装置3の各種データ(情報)の一括管理を行うことも可能である。したがって、後述するように、電極製造システム1は、情報管理装置2が、電極製造装置3で管理されるデータテーブル及び各種画像データを一括管理するようなシステムとして構築されてもよい。
【0080】
上述したような電極製造システムを構築することにより、本実施形態では、従来のように付加した所定のマークが電極製造装置内へ落下することによる異物混入等のリスクを回避する電極製造装置又は電極製造システムを提供する。
【0081】
〔ハードウエア構成〕
続いて、図9及び図10を用いて、実施形態に係る情報処理システムを構成する通信端末又は装置のハードウエア構成について説明する。なお、図9及び図10に示されている各装置のハードウエア構成は、必要に応じて構成要素が追加又は削除されてもよい。
【0082】
<情報管理装置のハードウエア構成>
図9は、実施形態に係る情報管理装置のハードウエア構成の一例を示す図である。図9に示されているように、情報管理装置2は、例えばコンピュータによって構築されており、CPU201、ROM202、RAM203、EEPROM204、HD(Hard Disk)205、HDD(Hard Disk Drive)コントローラ206、ディスプレイ207、近距離通信I/F208、CMOSセンサ209、撮像素子I/F210を備えている。情報管理装置2は更に、ネットワークI/F211、キーボード212、ポインティングデバイス213、メディアI/F215、外部機器接続I/F216、音入出力I/F217、マイク218、スピーカ219及びバスライン220を備えている。
【0083】
これらのうち、CPU201は、情報管理装置2全体の動作を制御する。ROM202は、CPU201の駆動に用いられるプログラム等を記憶する。RAM203は、CPU201のワークエリアとして使用される。EEPROM204は、CPU201の制御にしたがって、アプリ等の各種データの読出し又は書込みを行う。HD205は、プログラム等の各種データを記憶する。HDDコントローラ206は、CPU201の制御にしたがってHD205に対する各種データの読出し又は書込みを制御する。ここで、情報管理装置2は、HD205及びHDDコントローラ206に代えて、SSD(Solid State Drive)を搭載したハードウエア構成であってもよい。ディスプレイ207は、カーソル、メニュー、ウィンドウ、文字又は画像などの各種情報を表示する。本実施形態において、ディスプレイ207は、表示手段の一例として機能する。近距離通信I/F208は、NFC(Near Field Communication)、Bluetooth(登録商標。以下省略)、Wi-Fi(登録商標。以下省略)等の無線通信インターフェイスを備える通信装置又は通信端末等とデータ通信を行うための通信回路である。CMOSセンサ209は、CPU201の制御にしたがって被写体を撮像して画像データ又は動画データを得る内蔵型の撮像手段の一種である。なお、撮像手段は、CMOSセンサではなく、CCD(Charge Coupled Device)センサ等で構成される撮像手段であってもよい。撮像素子I/F210は、CMOSセンサ209の駆動を制御する回路である。
【0084】
ネットワークI/F211は、通信ネットワーク150を利用してデータ通信をするためのインターフェイスである。キーボード212は、文字、数値、各種指示などの入力のための複数のキーを備えた入力手段の一種である。なお、キーボード212に代えて又は加えて、所定のボタン、アイコン等を操作するタッチパネル等の入力手段を用いてもよい。ポインティングデバイス213は、各種指示の選択や実行、処理対象の選択、カーソルの移動などを行う入力手段の一種である。メディアI/F215は、フラッシュメモリ等の記録メディア214に対するデータの読出し又は書込み(記憶)を制御する。外部機器接続I/F216は、各種の外部機器を接続するためのインターフェイスであり、電極製造装置3と専用の有線ケーブルを用いて接続される。なお、外部機器は、USB(Universal Serial Bus)メモリ等であってもよい。音入出力I/F217は、CPU201の制御にしたがってマイク218及びスピーカ219との間で音信号の入出力を処理する回路である。マイク218は、音を電気信号に変える内蔵型の回路であり、外部のスピーカ等から発する音声や音波を取得し電気信号を用いた情報を取得する。スピーカ319は、電気信号を物理振動に変えて音楽や音声などの音を生み出す内蔵型の回路である。バスライン220は、CPU201等の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等である。
【0085】
<電極製造装置のハードウエア構成>
図10は、実施形態に係る電極製造装置の制御部を含むハードウエア構成の一例を示す図である。電極製造装置3は、例えばコンピュータによって構築されており、制御部300、層形成部330、外観検査ユニット380、マーキングユニット385及び操作部390を備えている。制御部300は、CPU301、ROM302、RAM303、HDD304、I/F305、バスライン310を備えている。層形成部330は、搬送ユニット340、塗工ユニット350(インクジェットヘッド)、硬化ユニット365及びヒータ370を備えている。
【0086】
本実施形態において、層形成部330(付与手段の一例)、外観検査ユニット380(検出手段の一例)及びマーキングユニット385(付加手段の一例)は、上述した巻出部341(巻出手段の一例)と巻取部342(巻取手段の一例)との間に配置される。
【0087】
これらのうち、CPU301は、電極製造装置3全体の動作を制御する。ROM302は、CPU301の駆動に用いられるプログラム等を記憶する。RAM303は、CPU301のワークエリアとして使用される。HDD304は、CPU301の制御にしたがって、アプリ等の各種データの読出し又は書込みを行う。I/F305は、NFC(Near Field Communication)、Bluetooth(登録商標。以下省略)、Wi-Fi(登録商標。以下省略)等の無線通信インターフェイスを備える通信装置又は通信端末等とデータ通信を行うための通信回路である。I/F305は更に、専用の有線ケーブルを介して接続された装置(情報管理装置2)とデータ通信を行うための通信回路である。
【0088】
搬送ユニット340、塗工ユニット350、硬化ユニット365、ヒータ370、外観検査ユニット380、マーキングユニット385及び操作部390の各ハードウエア構成は、電極製造装置3の装置構成において説明したとおりであるため、ここでの説明を省略する。
【0089】
なお、上記プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルで、コンピュータで読取り可能な記録媒体に記録、又はネットワークを介してダウンロードを行い流通させるようにしてもよい。記録媒体の例として、CD-R(Compact Disc Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)、Blu-ray Disc(Blu-rayは登録商標。以下省略)、SDカード、USBメモリ等が挙げられる。また、記録媒体は、プログラム製品(Program Product)として、国内又は国外へ提供されることができる。例えば、電極製造装置3は、本発明に係るプログラムが実行されることで、本発明に係る電極製造方法を実現する。
【0090】
〔電極製造システムの機能構成〕
次に、図11及び図12を用いて、本実施形態の機能構成について説明する。図11Aは、実施形態に係る電極製造システムの機能構成の一例を示す図であり、特に情報管理装置の機能構成を示す図である。図11Bは、実施形態に係る電極製造システムの機能構成の一例を示す図であり、特に電極製造装置の機能構成を示す図である。なお、図11は、図8に示されている情報管理装置2又は電極製造装置3のうち、後述する処理又は動作に関連するものを示す。
【0091】
<情報管理装置の機能構成>
次に、情報管理装置の機能構成について説明する。図11Aに示されているように、情報管理装置2は、送受信部21、操作受付部22、取得部23、表示制御部24、生成部27及び記憶読出部29を有する。これら各機能部は、図9に示された各ハードウエア資源のいずれかが、ROM202、EEPROM204、HD205及び記録メディア214のうち少なくとも一つからRAM203に展開された情報管理装置2用のプログラムに従ったCPU201からの命令により動作することで実現される機能又は手段である。また、情報管理装置2は、図9に示されているROM202、EEPROM204、HD205及び記録メディア214のうち少なくとも一つにより構築される記憶部2000を有している。更に、記憶部2000には、電極製造装置3と通信ネットワーク150を介して通信を行うための通信プログラム(通信アプリ)、ブラウザアプリ等が記憶されている。
【0092】
<<情報管理装置の各機能構成>>
次に、情報管理装置2の各機能構成について詳細に説明する。図11Aに示されている情報管理装置2の送受信部21は、主に、ネットワークI/F211及び近距離通信I/F208に対するCPU201の処理によって実現され、通信ネットワーク150を介して電極製造装置3との間で各種データ(又は情報)の送受信を行う。また、送受信部21は、電極製造装置3による集電体320への層形成処理の実行に基づいて、電極製造装置3に対して第1の所定のマーク及び第2の所定のマークを付加するためのマーキング実行要求を送信する。本実施形態において送受信部21は、第1の送信手段及び第1の受信手段のうち少なくとも一方の手段の一例として機能する。
【0093】
操作受付部22は、主に、ディスプレイ207、キーボード212及びポインティングデバイス213のうち少なくとも一方が受け付けた各種操作により生成された信号をCPU201が処理することによって実現される。なお、操作受付部22は、ディスプレイ207及びポインティングデバイス213に代えて、タッチパネル等の入力手段が受け付けた各種操作により生成された信号が用いられてもよい。本実施形態において操作受付部22は、受付手段の一例として機能する。
【0094】
取得部23は、主に、CPU201の処理によって実現され、送受信部21によって受信された印刷完了通知に含まれる各種情報を取得する。本実施形態において取得部23は、取得手段の一例として機能する。
【0095】
表示制御部24は、主に、ディスプレイ207に対するCPU201の処理によって実現され、情報管理装置2における各種画面及び情報(データ)の表示制御を行う。また、表示制御部24は、例えば、ブラウザを用いて、HTML等により生成された表示画面を、ディスプレイ207に表示させる。本実施形態において表示制御部24は、表示制御手段の一例として機能する。
【0096】
生成部27は、主に、CPU201の処理によって実現され、電極製造装置3に対して送信される印刷実行要求に含まれる各種情報を生成する。本実施形態において生成部27は、生成手段の一例として機能する。
【0097】
記憶読出部29は、主に、ROM202、EEPROM204、HD205及び記録メディア214のうち少なくとも一つに対するCPU201の処理によって実現され、記憶部2000に各種データ(又は情報)を記憶したり、記憶部2000から各種データ(又は情報)を読み出したりする。本実施形態において記憶読出部29は、記憶読出手段の一例として機能する。
【0098】
<電極製造装置の機能構成>
続いて、電極製造装置の機能構成について説明する。図11Bに示されているように、電極製造装置3は、制御部300に、送受信部31、計測部32、取得部33、判定部35、補正変換部36、生成部37及び記憶読出部39を有する。また、電極製造装置3は、制御部300に、層形成制御部40を有する。層形成制御部40は更に、搬送制御部41、吐出制御部42、照射制御部43、加熱制御部44、操作制御部49を有する。これら各機能部は、図10に示された各ハードウエア資源のいずれかが、ROM302及びHDD304のうち少なくとも一つからRAM303に展開された電極製造装置3用のプログラムに従ったCPU301からの命令により動作することで実現される機能又は手段である。また、電極製造装置3は、図10に示されているROM302及びHDD304のうち少なくとも一つにより構築される記憶部3000を有している。更に、記憶部3000には、情報管理装置2と通信ネットワーク150を介して通信を行うための通信プログラム(通信アプリ)、ブラウザアプリ等が記憶されている。
【0099】
<<電極製造装置の各機能構成>>
次に、電極製造装置3の各機能構成について詳細に説明する。図11Bに示されている電極製造装置3の制御部300は、電極合材層上又は集電体320上に液体組成物層の膜(機能層の一例としての樹脂層又は無機層)を形成するよう、層形成部330を制御する。本実施形態において制御部300は、制御手段の一例として機能する。
【0100】
一方、層形成制御部40は、層形成部330を制御して電極合材層上又は集電体320上に液体組成物層の膜を付与する。本実施形態において層形成制御部40は、層形成制御手段の一例として機能する。
【0101】
以下、制御部300に含まれる各機能について説明する。送受信部31は、主に、I/F305に対するCPU301の処理によって実現され、通信ネットワーク150を介して情報管理装置2との間で各種データ(又は情報)の送受信を行う。また送受信部31は、情報管理装置2が送信した、第1の所定のマーク及び第2の所定のマークを付与するためのマーク付与要求を受信する。本実施形態において送受信部31は、第2の送信手段及び第2の受信手段のうち少なくとも一方の手段の一例として機能する。
【0102】
計測部32は、主に、CPU301の処理によって実現され、CPU301のクロックをカウントすることにより時間を計測し、時間計測結果を得る。計測部32は更に、エンコーダから入力した駆動ローラ340aの回転角度信号に基づき、電極基体が搬送された距離(走行した距離)を計測し、搬送距離計測結果を取得部33に出力することもできる。本実施形態において計測部32は、計測手段の一例として機能する。
【0103】
取得部33は、主に、CPU301の処理によって実現され、情報管理装置2が送信した印刷実行要求を取得する。取得部33は更に、ユーザによる操作部390を用いた操作入力に係る情報を取得する。本実施形態において取得部33は、取得手段の一例として機能する。
【0104】
判定部35は、主に、CPU301の処理によって実現され、電極製造装置3における各種判定、判断を行う。本実施形態において判定部35は、判定手段の一例として機能する。
【0105】
補正変換部36は、主に、CPU301の処理によって実現され、取得部33により取得された結合検知情報に基づき、記憶部3000に記憶されている画像データを補正し、補正後の画像データを制御部15に出力する。また補正変換部36は、第1の位置情報を第2の面側における相対的な位置情報に補正する。また補正変換部36は、外観検査ユニット380によって検出された、少なくとも集電体320の搬送方向において発生する第1の面と第2の面との間のオフセット量に対応する長さに応じた相対的な位置情報を算出する。本実施形態において補正変換部36は、補正手段の一例として機能する。
【0106】
生成部37は、主に、CPU301の処理によって実現され、所定のマークを構成する各種情報を生成する。本実施形態において生成部37は、生成手段の一例として機能する。
【0107】
記憶読出部39は、主に、ROM302及びHDD304のうち少なくとも一つに対するCPU301の処理によって実現され、記憶部3000に各種データ(又は情報)を記憶したり、記憶部3000から各種データ(又は情報)を読み出したりする。また記憶読出部39は、集電体320の第1の面における欠陥を表す第1の位置情報、オフセット量に対応する長さに応じた相対的な位置情報及び集電体320の第1の面における欠陥を表す第2の位置情報、を記憶部3000の所定領域に記憶させる。本実施形態において記憶読出部39は、記憶読出手段の一例として機能する。
【0108】
次に、層形成制御部40の各機能について説明する。搬送制御部41は、主に、CPU301の処理によって実現され、搬送ユニット340を制御して巻出部341及び巻取部342による被塗布材の搬送の開始及び停止、並びに被塗布材の搬送速度等を制御する。本実施形態において搬送制御部41は、搬送制御手段の一例として機能する。
【0109】
吐出制御部42は、主に、CPU301の処理によって実現され、塗工ユニット350による吐出条件を制御する。吐出制御部42は、補正変換部36から入力した補正後の画像データに基づいて、塗工ユニット350による吐出条件(液体組成物の吐出タイミング、吐出量等)を制御する。本実施形態において吐出制御部42は、吐出制御手段の一例として機能する。
【0110】
照射制御部43は、主に、CPU301の処理によって実現され、硬化ユニット365(光源)による樹脂前駆層への光の照射を制御する。本実施形態において照射制御部43は、照射制御手段の一例として機能する。
【0111】
加熱制御部44は、主に、CPU301の処理によって実現され、ヒータ370による樹脂前駆層への加熱を制御する。本実施形態において加熱制御部44は、加熱制御手段の一例として機能する。
【0112】
操作制御部49は、主に、CPU301の処理によって実現され、操作部390に対する各種操作により生成された信号をCPU301が処理することによって実現される。本実施形態において操作制御部49は、操作制御手段の一例として機能する。
【0113】
また、上述した層形成制御部40によって制御される層形成部330は、搬送ユニット340、塗工ユニット350、硬化ユニット365及びヒータ370をそれぞれ制御して、電極合材層上又は集電体上に層を形成する。また層形成部330は、第1の面側への第1の液体組成物の付与として、第1の電極合材層の付与及び第1の電極合材層を覆うための機能膜を有する第1の機能層を付与し、第2の面側への第2の液体組成物の付与として、第2の電極合材層の付与及び第2の電極合材層を覆うための機能膜を有する第2の機能層を付与する。本実施形態において層形成部330は、第1の面側に対して第1の液体組成物を付与し、第2の面側に対して第2の液体組成物を付与することによりそれぞれの液体組成物層を形成する付与手段の一例として機能する。
【0114】
●欠陥座標管理テーブル●
図12は、欠陥座標管理テーブルの一例を示す概念図である。なお、以下に説明するデータテーブルは一例であり、これに限るものではない。記憶部3000には、図12に示されているような欠陥座標管理テーブルによって構成された欠陥座標管理DB3001が構築されている。エッジ位置情報管理テーブルでは、印刷ジョブIDごとに、集電体長、1面目の欠陥座標、オフセット量、相対的な座標及び2面目の欠陥座標が関連付けられて記憶、管理されている。これらのうち、印刷ジョブIDは、電極製造装置3において実行される電極を製造するための印刷ジョブを識別する識別情報である。集電体長は、実行される各ジョブにおける集電体の長さを表す。1面目の欠陥座標は、集電体320の第1の面に付与された液体組成物層の膜で発生した欠陥の位置を示し、XY座標平面の値で示される。なお、XY座標の各値は、印刷実行時のドット、ピクセル、若しくは集電体長の単位(例えば[mm])で示されてよい。オフセット量は、集電体320の第1の面(一方の面。例えば表面)の印刷時と第2の面(他方の面。例えば裏面)の印刷時における原点のずれ量に相当する量を表し、例えば[mm]で示される。相対的な座標は、集電体320の第1の面(例えば表面)で発生した欠陥の位置に対して、上述したオフセット量を考慮して補正変換した座標値を表す。ここで、相対的な座標は、1面目の原点座標と2面目の原点座標との関係に基づいて得られるが、原点座標が一致しているかどうかは、ユーザが予め操作部390を介して入力してもよいし、所定のセンサの出力により得られた位置情報によって与えられてもよい。2面目の欠陥座標は、集電体320の第2の面に付与された液体組成物層の膜で発生した欠陥の位置を示し、XY座標平面の値で示される。
【0115】
本実施形態において欠陥座標管理テーブル(欠陥座標管理DB3001)は、欠陥座標管理手段の一例として機能する。
【0116】
〔実施形態の処理又は動作〕
次に、図13乃至図15を用いて、第1の実施形態に係る電極製造システムにおける各処理又は動作を説明する。
【0117】
<情報管理装置と電極製造装置との間で実行されるシーケンス処理>
図13は、実施形態に係る実施形態に係る相対位置情報算出処理を含むシーケンス図である。なお、以下に示すシーケンス図では、情報管理装置2と電極製造装置3との間において予め必要な通信セッション等が確立し、通信可能な状態であることを前提とする。まず、集電体320の第1の面に液体組成物層の膜を付与する処理について説明する。
【0118】
情報管理装置2の送受信部21は、電極製造装置3に対して印刷実行要求を送信する(ステップS11)。これにより、電極製造装置3の送受信部31は、情報管理装置2が送信した印刷実行要求を受信する。このときの印刷実行要求には、電極製造装置3で所定の集電体320に対して印刷処理を実行するための印刷ジョブデータ、印刷制御条件等の各種データが含まれる。これにより、取得部33は、受信した印刷実行要求に含まれる印刷ジョブデータ、印刷制御条件等の各種データを所得する。
【0119】
続いて、電極製造装置3の層形成制御部40を含む制御部300は、層形成部330を制御して塗工及び外観検査処理を実行する(ステップS12)。具体的には、制御部300は、層形成制御部40を介して層形成部330を制御し、ステップS11で取得した印刷ジョブデータ、印刷制御条件等の各種データに基づいて、集電体320の第1の面側に液体組成物層の膜を付与する。このとき、照射制御部43は、
硬化ユニット365を制御して硬化処理を実行する。この処理は具体的には、照射制御部43は、液体組成物層が形成された電極合材層が硬化ユニット365を構成する光源に向き合う位置に到達したタイミングにおいて、光源を駆動させる、これにより照射制御部43は、液体組成物層に向けて光を照射し、例えば、樹脂前駆層を硬化させることで硬化処理を実行する。
【0120】
その後、取得部33は、外観検査ユニット380によって得られた欠陥を示す位置情報を取得する。その後、補正変換部36は、集電体320の第1の面側に対して付与された液体組成物層の膜で発生した欠陥の位置に基づいて、1面目の欠陥座標として変換する。補正変換部36は更に、記憶読出部39を介して欠陥座標管理DB(図12参照)で管理されている印刷ジョブIDに対応する項目に、1面目の欠陥座標情報を登録する。
【0121】
続いて、送受信部31は、情報管理装置2に対して、ステップS11で受信した印刷実行要求に対する応答としての印刷完了通知を送信する(ステップS13)。これにより、情報管理装置2の送受信部21は、電極製造装置3が送信した印刷完了通知を受信する。
【0122】
続いて、集電体320の第2の面に液体組成物層の膜を付与する処理について説明する。ここでは、利用者又は所定の装置が集電体320の第1の面側(1面目)に対する印刷処理が実行された電極基体を巻取部342から外し、再度巻出部341にセットする。その後、電極製造装置3は、集電体320の第2の面(2面目)に対する印刷処理を実行する。なお、第2の面に対する液体組成物層の膜の付与処理であるステップS21-S23までの処理は、ステップS11-S13までの処理と同様であるので、説明を省略する。但し、ステップS22で実行される塗工及び外観検査処理における欠陥座標管理DB(図12参照)への2面目の欠陥座標情報の記憶処理は、1面目と2面目との間にオフセット量が発生している場合は、補正変換部36は、オフセット量を含めた座標変換処理を実行し、対応する相対的な座標の項目に変換された座標値を登録する。
【0123】
<相対位置情報算出処理>
次に、補正変換部36は、相対位置情報算出処理を実行する(ステップS24)。
【0124】
<<相対位置情報算出処理の詳細>>
ここで、ステップS24の相対位置情報算出処理の詳細について説明する。図14は、第1の実施形態に係る相対位置情報算出処理の一例を示すフローチャートである。なお、以降に示すフローチャートは、本実施形態を説明するための一例であり、これに限らない。電極製造装置3の補正変換部36は記憶読出部39を介して、ステップS22で実行した外観検査処理において得られた検査結果としての、集電体320の各面において発生した欠陥の欠陥座標情報を入力する(ステップS24-1-1)。具体的には、記憶読出部39は、集電体320の各面において発生した欠陥の欠陥座標情報を、記憶部3000の所定領域に記憶させる。
【0125】
続いて、判定部35は、外観検査結果に異状が含まれているかを判定する(ステップS24-1-2)。外観検査結果に異常が含まれていない場合(ステップS24-1-2:NO)、判定部35は実行されたジョブにおいて付与された液体組成物層の膜には欠陥が無いとしてマーキング不要と判定してこのフローを抜ける。
【0126】
他方、外観検査結果に異常が含まれている場合(ステップS24-1-2:YES)、判定部は更に、第1の検査原点座標と第2の検査原点座標とは一致しているかを判定する(ステップS24-1-3)。具体的には、判定部35は、例えば、欠陥座標管理DB(図12参照)で管理され、実行された所定の印刷ジョブIDに対応するオフセット量を確認して、ゼロでなければ一致していないと判定する。なお、オフセット量は、1面目の原点座標と2面目の原点座標とに基づいて得られる。これを利用して、原点座標が一致しているかどうかは、ユーザが予め操作部390を介してオフセット量を入力することにより与えられてもよい。
【0127】
第1の検査原点座標と第2の検査原点座標とが一致している場合(ステップS24-1-3:YES)、生成部37は、欠陥座標信号を生成してこのフローを抜ける(ステップS24-1-4)。具体的には、生成部37は、記憶読出部39を介して欠陥座標管理DB(図12参照)で管理されている1面目の欠陥座標(この場合は相対的な座標でもよい)と、2目の欠陥座標のそれぞれの値に基づいて、欠陥座標信号を生成する。このとき、欠陥座標信号には、マーキングユニット385によって付加される所定のマークを構成する情報が含まれる。なお所定のマークを構成する情報には、欠陥が発生した集電体320上のXY座標値(座標情報)、欠陥として認められた部分の画像データ、欠陥の種類を示す情報、欠陥の大きさを示す情報等が含まれてもよい。
【0128】
他方、第1の検査原点座標と第2の検査原点座標とが一致していない場合(ステップS24-1-3:NO)、補正変換部36は、相対的な位置情報を算出(欠陥座標変換)(ステップS24-1-5)した後、ステップS24-1-4の処理を実行する。具体的には、補正変換部36は取得部33を介して、第1の検査原点座標と第2の検査原点座標との不一致分、すなわち、オフセット量を取得し、取得したオフセット量に基づく相対的な位置情報を上述した(式1)乃至(式4)を用いて算出して、欠陥座標管理DB(図12参照)で管理されている項目に登録する。
【0129】
ここで、第1の面(1面目)、第2の面(2面目)が電極基体に対して表と裏の配置で、特に第1の面と第2の面との印刷位置と長さが不一致であった場合の座標変換のイメージについて説明する。特に、第1の面と第2の面との印刷位置が不一致であった場合とは、例えば、第1の面における検査結果の終端のY座標と第2の面における検査結果の始端のY座標との間にゼロ以上のオフセット量が発生した場合が含まれる。
【0130】
図15は、第1の実施形態に係る集電体の第1の面及び第2の面における座標変換の概念を示す図である。第1の面の欠陥のマーキング用の座標(Xm,Ym)は、第1の面の欠陥座標(X1,Y1)、検査長y、第2の面に相対する一面の終端座標(Xe,Ye)を用いて、それぞれ(式3)、(式4)のように算出される。
【0131】
Xm=Xe+X1・・・(式3)
Ym=Ye+(y-Y1)・・・(式4)
以上の処理を行うことにより、第1の面で検出された欠陥座標と第2の面で検出された欠陥座標との間の欠陥座標に係る相対位置情報の算出が行われる。
【0132】
図13に戻り、情報管理装置2の送受信部21は、マーキング実行要求(マーク付加要求の一例)を電極製造装置3に対して送信する(ステップS25)。具体的には、送受信部21は、例えば、利用者による入力操作に応じて、電極製造装置3に対して、電極基体上に貼付するマークのマーキング実行要求を送信する。これにより、電極製造装置3の送受信部31は、情報管理装置2が送信したマーキング実行要求(マーク付加要求の一例)を受信する。
【0133】
次に、生成部37は、ステップS25で受信したマーキング実行要求に応じてマーキング処理を実行する(ステップS26)。具体的には、生成部37は、集電体320の第1の面側及び第2の面側に付与された液体組成物層の膜において発見された各欠陥の位置を示す位置情報を含む所定のラベルを生成する。その後、電極製造装置3は、各欠陥が発生した座標に対応する所定のラベルを各欠陥が発生した近傍に貼付するよう、マーキングユニット385を制御する。なお、ラベルは、2色以上異なる色のラベルを用いてもよく、色の使い分けとして、第1の面側の欠陥位置を表すラベルと第2の面側の欠陥位置を区別するラベルとしてもよい。このような色分けをすることにより、どの面において発生した欠陥であるかを一目で認識させることが可能となり、視認性向上の効果が期待できる。
【0134】
電極製造装置3は、ステップS26のマーキング処理後、情報管理装置2に対して、ステップS25で受信したマーキング実行要求に対する応答としてマーキング実行応答を送信してもよい。これにより、情報管理装置2の送受信部21は、電極製造装置3が送信したマーキング実行応答を受信することができる。
【0135】
本実施形態に係る電極製造システムでは、例えば、上述したステップS11及びS13、ステップS21及びS23の各処理が通信ネットワーク150を介して実行される場合、情報管理装置2と電極製造装置3との間に他の装置等が存在してもよい。つまり、情報管理装置2と電極製造装置3との間で送受信される各情報(データ)は、一度他の装置等を介して送受信されるような構成であってもよい。上述した構成は、情報管理装置2と電極製造装置3との間に他の処理ステップが存在した場合でも適用することが可能である。
【0136】
なお、図13に示したシーケンス図は一例であり、これに限らない。
【0137】
〔第1の実施形態の主な効果〕
以上説明したように本実施形態によれば、電極製造装置3は、集電体320の第1の面側への第1の液体組成物層の付与後に第1の面側の第1の欠陥状態を検出(ステップS12)した後、第2の面側への第2の液体組成物層の付与後に第2の面側の第2の欠陥状態を検出(ステップS22)する。その後、第1の欠陥状態を示す第1の位置情報に基づく第1の所定のマークと、第2の状態を示す第2の位置情報に基づく第2の所定のマークと、を第2の面側に付加する(ステップS24、S26)。これにより、集電体の一方の面側に所定のマークが付加されても、電極製造装置への異物混入等のリスクを回避することが可能になる、という効果を奏する。
【0138】
〔第2の実施形態〕
続いて、図16及び図17を用いて、第2の実施形態に係る電極製造システムにおける各処理又は動作を説明する。第2の実施形態では、集電体(電極基体)の第1の面と第2の面とのオフセット量を検出する際、電極製造装置3に別途設けられたセンサ(例えば、ラインセンサ)によりオフセットを検出し、検出された検出信号を利用してマーキング処理のための相対的な座標を求める場合について説明する。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態に係る電極製造システム1を構成する情報管理装置2及び電極製造装置3の各ハードウエア構成、並びに機能構成を共通に実施することができるため、これらの説明を省略する。
【0139】
図16は、第2の実施形態に係る電極製造装置における両面印刷時の集電体搬送パターンの他の一例を示す図である。図16では、集電体(電極基体)の第2の面に相対する第1の面の終端座標を検出するために、集電体(電極基体)の第2の面(裏面)を検出可能に配置されたセンサ(例えば、ラインセンサ)を用いて実現する場合が示されている。なお、センサ(ラインセンサ)は、例えば、集電体(電極基体)の第1の面(表面)の塗膜と第2の面(裏面)の塗膜と境界(例えば、コントラストの変化)を検出可能であれば、センサの種類及びセンサの配置位置は、図16に示した例に限らない。更に、より高精度なセンサを採用してオフセット量を正確に検出するようにしてもよい。取得部33及び記憶読出部39は、このセンサによる塗膜の境界を示す検出結果を取得して電極製造装置3の記憶部(記憶部3000)の所定領域に記憶させる。そして、補正変換部36は、集電体(電極基体)の第1の面における欠陥の検査結果(丸1)に係る座標情報を、外観検査ユニット380によって得られた検査結果(とセンサにより得られた検出結果とを用いて変換し補正変換結果を得る。その後、補正変換部36は、補正変換結果と集電体(電極基体)の第2の面における欠陥の検査結果(丸2)とに基づいて、第1の面及び第2の面において発生した各欠陥を示すそれぞれの所定のマークを付加するための座標変換を行う。
【0140】
図17は、第2の実施形態に係る相対位置情報算出処理の一例を示すフローチャートである。なお、以降に示すフローチャートは、本実施形態を説明するための一例であり、これに限らない。但し、図17におけるステップS24-2-1乃至S24-2-4の処理は、上述した図16の処理におけるステップS24-1-1乃至S24-1-4の処理と同様であるため、それらの説明を省略する。
【0141】
これに対し、第2の実施形態では、ステップS24-2-3の判定処理後の処理が異なる。具体的には、第1の検査原点座標と第2の検査原点座標とが一致していない場合(ステップS24-1-3:NO)、補正変換部36は、第1の面と第2の面とのオフセット量を検出する(ステップS24-2-5)。具体的には、例えば、取得部33は、電極製造装置3に別途設けられたセンサ(例えば、ラインセンサ)からの検出信号を取得する。
【0142】
その後、補正変換部36は、取得した検出信号から得られたオフセット量に基づいて、相対的な位置情報を算出(欠陥座標変換)(ステップS24-2-6)した後、ステップS24-2-4の処理を実行する。具体的には、補正変換部36は取得部33を介して、第1の検査原点座標と第2の検査原点座標との不一致分、すなわち、オフセット量を取得し、取得したオフセット量に基づく相対的な位置情報を上述した(式1)乃至(式4)を用いて算出して、欠陥座標管理DB(図12参照)で管理されている項目に登録する。
【0143】
〔第2の実施形態の主な効果〕
以上説明したように本実施形態によれば、電極製造装置3は、第1の検査原点座標と第2の検査原点座標とが一致していない場合に、別途設けられたセンサ(例えば、ラインセンサ)からの検出信号を取得して第1の面と第2の面とのオフセット量を検出し(ステップS24-2-6)、取得した検出信号から得られたオフセット量に基づいて、相対的な位置情報を算出(欠陥座標変換)する(ステップS24-2-6)。これにより、電極基体を巻出部に再度セットして他方の面に対する液体組成物層の膜の付与処理を行う場合に、発生し得る第1の面と第2の面との間の検査原点座標のオフセットに対して、より正確な座標変換を行うことが可能になるという効果を奏する。
【0144】
〔第3の実施形態〕
続いて、図18乃至図20を用いて、第3の実施形態に係る電極製造システムにおける各処理又は動作を説明する。第3の実施形態では、集電体(電極基体)に対して同一の面に電極合材層及び液体組成物層のうちいずれかを重ねて付与する場合について説明する。なお、第3の実施形態においても、第1の実施形態に係る電極製造システム1を構成する情報管理装置2及び電極製造装置3の各ハードウエア構成、並びに機能構成を共通に実施することができるため、これらの説明を省略する。
【0145】
図18は、第3の実施形態に係る電極製造装置における両面印刷時の集電体搬送パターンの他の一例を示す図である。図18では、集電体(電極基体)の一方の面(第1の面)に液体組成物層の膜が重ねて付与されている状態が示されている。つまり、集電体320を含む電極基体は、巻出部341によって2回巻き出され、巻取部342によって1回巻き取られることにより、図示したような液体組成物層の膜が重ねて付与されることになる。本実施形態では、この状態になった場合に、集電体(電極基体)の一方の面(第1の面)への液体組成物層の膜の付与が終了した状態であることを示している。したがって、集電体(電極基体)の他方の面(第2の面)に対する液体組成物層の膜の付与が未実行である状態では、マーキングユニットによる欠陥座標に対するマーキング処理は行われない。但し、他方の面(第2の面)に対する液体組成物層の膜の付与が実行された後であれば、第1又は第2の実施形態と同様に、集電体(電極基体)上の欠陥座標に対するマーキング処理が実行される。つまり、電極製造装置3は、集電体(電極基体)の一方の面(第1の面)及び他方の面(第2の面)の少なくとも一方に対して液体組成物層の膜が重ねて付与される場合、各面に対する液体組成物層の膜の付与処理が終了した時点で、マーキングユニット385による所定のマークの付加処理を行うことになる。なお、本実施形態は、集電体320上に液体組成物層の膜を重ねて付与するほかに、集電体320に塗工された電極合材層上に液体組成物層の膜を付与する場合においても適用される。その場合は、電極合材層上の状態を検出する活物質検査モードと、液体組成物層上の状態を検出する機能層検査モードと独立して設けておき、それらの検査モードを所定のタイミングで分けて実行するようにしてもよい。これにより、電極合材層(活物質)に対する検査も行うことができるようになるため、より高精度な検査方法を提供することも可能になる。
【0146】
図19は、第3の実施形態に係る集電体の第1の面及び第2の面における座標変換の概念を示す図である。図19では、第1の面に対する液体組成物層の膜の付与位置と、第2の面に対する液体組成物層の膜の付与位置と、が一致し、集電体(電極基体)の長さも一致している場合が示されている。なお、第1の面における欠陥座標及び第2の面における欠陥座標、並びに、第1の面における相対的な欠陥座標の算出は、図7に示した場合と同様である。
【0147】
図20は、第3の実施形態に係る集電体の第1の面及び第2の面における座標変換の他の概念を示す図である。図20に示した例についても、第1の実施形態の図15及び第2の実施形態に示したように、第2の面に相対する第1の面の終端座標をユーザが予め任意の値を設定してもよい。更に、塗工ユニット350(インクジェットヘッド)の上流に所定のセンサを設置し、第2の面に相対する第1の面の終端座標に係る座標情報を検出させるようにしてもよい。
一面と二面の印刷位置が完全一致していた場合、
一面の欠陥のマーキング用の座標(Xm,Ym)は一面の欠陥座標(X1,Y1)、検査長yを用いて
Xm=X1
Ym=y-Y1
と算出すればよい。
なお、第1の面における欠陥座標及び第2の面における欠陥座標、並びに、第1の面における相対的な欠陥座標の算出は、(式1)及び(式2)に示した場合と同様である。
【0148】
〔第3の実施形態の主な効果〕
以上説明したように本実施形態によれば、電極製造装置3は、集電体(電極基体)の一方の面(第1の面)及び他方の面(第2の面)の少なくとも一方に対して液体組成物層の膜が重ねて付与される場合、各面に対する液体組成物層の膜の付与処理が終了した時点で、マーキングユニット385による所定のマークの付加処理を行う。これにより、すべての液体組成物層の膜の付与処理において発生した欠陥の欠陥座標を表す所定のマークを与えることが可能になるという効果を奏する。
【0149】
<付加される所定のマークの具体例>
続いて、集電体320の第2の面に付加される所定のマークの具体例について説明する。図21は、実施形態に係る集電体の面に所定のマークが付加された状態の一例を示す図である。図21に示すように、所定のマーク(ラベル)は、集電体(電極基体)の片面に集約付加される。これにより、欠陥の確認の手間を半減させる効果が期待できる。また、所定のマーク(ラベル)は、2色以上異なる色のラベルを用いてもよく、色の使い分けとして、第1の面の欠陥位置を表す所定のマーク(ラベル)と、第2の面の欠陥位置を表す所定のマーク(ラベル)と、をそれぞれ色分けするようにしてもよい。この場合、色分けには色相の関係で補色を利用した色分けを行ってもよい。これにより、視認性向上の効果が期待できる。また、図21に示すように、集電体(電極基体)の辺の片側に集約付加されることにより、テスト用の簡易的な印刷の場合などにおいては、印刷後にロール状に巻き取られた電極基体を、ラベルが付加されていない辺を下にして立てて保管することも可能になる。
【0150】
図22は、実施形態に係る集電体の面に所定のマークが付加された状態の他の一例を示す図である。図22に示すように、所定のマーク(ラベル)は、集電体(電極基体)の幅方向(X軸方向)端部の電極基体上に貼付されることが多い。そこで、フチなし印刷の場合には、間欠の未塗工部を利用して欠陥が検出された座標の近傍に(欠陥検出位置からずらして)直前の間欠部の欠陥の存在を表すラベルを貼付してもよい。このようにすることで、集電体(電極基体)が巻取部342によって巻き取られた場合に、所定のマーク(ラベル)に多少の厚みがある場合でも、ロール状となった集電体(電極基体)の厚みの偏りを抑制する効果が見込める。更に、液体組成物層に比べてラベルの粘着性が高い電極基体上に貼付することで、ラベルの落下防止効果も期待できる。
【0151】
図23は、実施形態に係る所定のマークを集電体の片側又は両側に付加した場合の集電体の巻取りイメージの一例を示す図である。図23では、集電体の片側に所定のマークを付加した後にロール状に巻き取られた場合、付加された側が膨らむ様子を模式的に表したものである。図23に示すように、所定のマーク(ラベル)は、集電体(電極基体)の幅方向(X方向)の片側に集約せず両側に分散させて貼付されてもよい。所定のマーク(ラベル)が両側に分散されることで、集電体(電極基体)が巻取部342によって巻き取られた場合に、ロール状となった集電体(電極基体)の厚みの左右差を低減する効果が見込める。
【0152】
図24は、実施形態に係る集電体の面の両側に所定のマークが付加された状態の一例を示す図である。図24に示すように、図23における所定のマーク(ラベル)の貼付を両側に分散させてもよい。具体的には、第1の面における欠陥座標を表すラベルを電極基体の搬送方向の左側(右側)に貼付し、第2の面における欠陥座標を表すラベルを電極基体の搬送方向の右側(左側)に貼付する。これにより、集電体(電極基体)が巻取部342によって巻き取られた場合に、ロール状となった集電体(電極基体)の厚みの左右差を低減する効果が見込めるとともに、第1の面における欠陥の発生数と第2の面における欠陥の発生数との差異の把握もしやすくなるという効果が見込める。
【0153】
図25は、実施形態に係る集電体の面の両側に所定のマークが付加された状態の他の一例を示す図である。図25に示すように、集電体(電極基体)の第1の面における欠陥座標と第2の面における欠陥座標とを統合し、集電体(電極基体)の搬送方向の座標順に降られた通し番号の偶数番目を記録する側と奇数番目を記録する側とを分けて所定のマーク(ラベル)を貼付してもよい。これにより、図23と同様に、集電体(電極基体)が巻取部342によって巻き取られた場合に、ロール状となった集電体(電極基体)の厚みの左右差を低減する効果が見込める。
【0154】
図26は、実施形態に係る所定のマークを集電体の片側又は両側に付加した場合の集電体の巻取りイメージの他の一例を示す図である。図26図23と同様に、集電体の片側に所定のマークを付加した後にロール状に巻き取られた場合、付加された側が膨らむ様子を模式的に表したものである。図26では、集電体(電極基体)の一方の面(第1の面)及び他方の面(第2の面)に液体組成物層の膜が重ねて付与された後、電極基体の搬送方向の片側又は両側に所定のマーク(ラベル)が貼付された状態でロール状にしたものが示されている。この場合も、電極基体の搬送方向の両側にラベルを貼付した方が、集電体(電極基体)が巻取部342によって巻き取られロール状となった場合に、集電体(電極基体)の厚みの左右差を低減できる見込みがあることを示している。
【0155】
〔その他の実施形態〕
次に、その他の実施形態について図27乃至図32を用いて説明する。
【0156】
<転写方式を採用した印刷部>
図27は、転写方式を採用した印刷部の一例を示す構成図であり、(a)は、ドラム状の中間転写体を用いた印刷部を示す図、(b)は、無端ベルト状の中間転写体を用いた印刷部を示す図である。
【0157】
図27(a)に示した印刷部400´は、中間転写体4001を介して基材に液体組成物を転写することで基材の表面に機能層を形成する、インクジェットプリンタである。
【0158】
印刷部400´は、インクジェット部420、転写ドラム4000、前処理ユニット4002、吸収ユニット4003、加熱ユニット4004及び清掃ユニット4005を備える。
【0159】
インクジェット部420は、複数のヘッド101を保持したヘッドモジュール422を備える。ヘッド101は、転写ドラムに4000に支持された中間転写体4001に液体インクを吐出し、中間転写体4001上にインク層を形成する。各ヘッド101は、ラインヘッドであり、使用可能な最大サイズの基材の記録領域の幅をカバーする範囲にノズルが配列されている。ヘッド101は、その下面に、ノズルが形成されたノズル面を有しており、ノズル面は、微小間隙を介して中間転写体4001の表面と対向している。本実施形態の場合、中間転写体4001は円軌道上を循環移動する構成であるため、複数のヘッド101は、放射状に配置される。
【0160】
転写ドラム4000は、圧胴621と対向し、転写ニップ部を形成する。前処理ユニット4002は、ヘッド101によるインクの吐出前に、例えば、中間転写体4001上に、インクの粘度を高めるための反応液を付与する。吸収ユニット4003は、転写前に、中間転写体4001上のインク層から液体成分を吸収する。加熱ユニット4004は、転写前に、中間転写体4001上のインク層を加熱する。インク層を加熱することで、インク層中の樹脂が溶融し、基材への転写性が向上する。清掃ユニット4005は、転写後に中間転写体4001上を清掃し、中間転写体4001上に残留したインクやごみ等の異物を除去する。
【0161】
圧胴621の外周面は、中間転写体4001に圧接しており、圧胴621と中間転写体4001との転写ニップ部を基材が通過するときに、中間転写体4001上のインク層が基材に転写される。なお、圧胴621は、その外周面に基材の先端部を保持するグリップ機構を少なくとも一つ備えた構成としてもよい。
【0162】
図27(b)に示した印刷部400´´は、中間転写ベルト4006を介して基材に液体組成物を転写することで基材の表面に機能層を形成する、インクジェットプリンタである。
【0163】
印刷部400´´は、インクジェット部420に設けた複数のヘッド101からインク滴を吐出して、中間転写ベルト4006の外周表面上にインク層を形成する。中間転写ベルト4006に形成されたインク層は、乾燥ユニット4007によって乾かされ、インク層は中間転写ベルト4006上で膜化する。
【0164】
中間転写ベルト4006が転写ローラ622と対向する転写ニップ部において、中間転写ベルト4006上の膜化したインク層は基材に転写される。転写後の中間転写ベルト4006の表面は、清掃ローラ4008によって清掃される。
【0165】
中間転写ベルト4006は、駆動ローラ4009a、対向ローラ4009b、複数(本例では4つ)の形状維持ローラ4009c,4009d,4009e,4009f、及び複数(本例では4つ)の支持ローラ4009gに架け渡され、図中矢印方向に移動する。ヘッド101に対向して設けられる支持ローラ4009gは、ヘッド101からインク滴が吐出される際の中間転写ベルト4006の引張状態を維持する。
【0166】
<液体吐出ヘッドの一例を示す概略分解図>
次に、図28乃至図30を用いて液体吐出ヘッドの構成を説明する。図28は、液体吐出ヘッドの一例を示す概略分解図、図29は、液体吐出ヘッドの流路構成の一例を示す説明図、図30は、液体吐出ヘッドの流路構成の一例を示す断面斜視図である。ヘッド3601は、ノズル板3510、流路板(個別流路部材)3520、振動板部材3530、共通流路部材3550、ダンパ部材3560、フレーム部材3580及び駆動回路3604を実装した基板(フレキシブル配線基板)3605などを備える。
【0167】
ノズル板3510は、インクを吐出する複数のノズル3537を備え、複数のノズル3537は、ノズル板短手方向及びこれと直交するノズル板長手方向に二次元状に並んで配置されている。
【0168】
流路板3520には、複数のノズル3537に各々連通する複数の液室(個別圧力室)3526と、複数の液室3526に各々通じる複数の供給流路(個別供給流路)3527及び回収流路(個別回収流路)3528とが設けられている。なお、以降の説明では便宜上、一つの液室3526と、当該液室3526に通じる供給流路3527及び回収流路3528と、を併せて個別流路3525とも称する。
【0169】
振動板部材3530は、液室3526の変形が可能な壁面である振動板3535を形成し、振動板3535には圧電素子3536が一体に設けられている。振動板部材3530には、供給流路3527に通じる供給側開口3532と、回収流路3528に通じる回収側開口3533と、が形成されている。圧電素子3536は、振動板3535を変形させて液室26内のインクを加圧する。
【0170】
なお、流路板3520と振動板部材3530は、別部材であることに限定されるものではない。例えばSOI(Silicon on Insulator)基板を使用して流路板3520及び振動板部材3530を同一部材で一体に形成することも可能である。
【0171】
つまり、シリコン基板上に、シリコン酸化膜、シリコン層、シリコン酸化膜の順に成膜されたSOI基板を使用し、シリコン基板を流路板3520とし、シリコン酸化膜、シリコン層及びシリコン酸化膜で振動板3535を形成できる。この構成では、SOI基板のシリコン酸化膜、シリコン層及びシリコン酸化膜の層構成が振動板部材3530となる。このように、振動板部材3530は流路板3520の表面に成膜された材料で構成されるものを含む。
【0172】
共通流路部材3550は、2以上の供給流路3527に通じる複数の共通供給流路支流52と、2以上の回収流路3528に通じる複数の共通回収流路支流3553とを、ノズル板長手方向において交互に隣接して形成している。共通流路部材3550には、供給流路3527の供給側開口3532と共通供給流路支流3552を通じる供給口3554となる貫通孔と、回収流路3528の回収側開口3533と共通回収流路支流3553を通じる回収口3555となる貫通孔が形成されている。
【0173】
共通流路部材3550は、複数の共通供給流路支流3552に通じる1又は複数の共通供給流路本流3556と、複数の共通回収流路支流3553に通じる1又は複数の共通回収流路本流3557を形成している。
【0174】
ダンパ部材3560は、共通供給流路支流3552の供給口3554と対面する供給側ダンパ3562と、共通回収流路支流3553の回収口3555と対面する回収側ダンパ3563を備える。共通供給流路支流3552及び共通回収流路支流3553は、同じ部材である共通流路部材3550に交互に並べて配列された溝部を、ダンパ部材3560の供給側ダンパ3562又は回収側ダンパ3563で封止することで構成している。なお、ダンパ部材3560のダンパ材料としては、有機溶剤に強い金属薄膜又は無機薄膜を用いることが好ましい。ダンパ部材3560の供給側ダンパ3562、回収側ダンパ3563の部分の厚みは10[μm]以下が好ましい。
【0175】
共通供給流路支流3552と共通回収流路支流3553の内壁面、及び共通供給流路本流3556と共通回収流路本流3557との内壁面には、流路内を流れるインクに対して内壁面を保護するための保護膜が形成されている。例えば、共通供給流路支流3552と共通回収流路支流3553との内壁面、及び共通供給流路本流3556と共通回収流路本流3557との内壁面は、Si基板が熱処理されることで、表面に酸化シリコン膜が形成される。酸化シリコン膜の上にはインクに対してSi基板の表面を保護するタンタルシリコン酸化膜が形成される。
【0176】
フレーム部材3580は、その上部に供給ポート3581と排出ポート3582を備える。供給ポート3581は共通供給流路本流3556にインクを供給し、排出ポート3582は共通回収流路本流3557より排出されるインクを排出する。
【0177】
上述のようにヘッド3601は、インクを吐出するノズル3537、ノズル3537に通じる液室3526、液室3526にインクを供給する供給流路3527、及び液室3526からインクを回収する回収流路3528を有する。ここで、ヘッド3601は「液体吐出ヘッド」の一例、液室3526は「液室」の一例、供給流路3527は「供給流路」の一例、回収流路3528は「回収流路」の一例である。
【0178】
なお、ヘッド3601の構成として、ノズル板3510のノズル面(ノズル3537が形成された面)の形状は長方形に限らず、台形、ひし形、平行四辺形など、長方形以外の形状であってもよい。その一例を、図31及び図32を用いて説明する。図31は、平行四辺形状のノズル板を備えたヘッドの一例を示す構成図、図32は、図31のヘッドを複数並べた状態を示す図である。ヘッド1001Rは、ノズル板短手方向に対して角度θ傾斜した外形(稜線)を有し、ヘッド1001Rの液体吐出部1101R及びノズル板1010Rもこの稜線に沿う形状に形成されている。つまり、液体吐出部1101Rは、外形形状が平行四辺形をしたノズル板1010Rを有し、ノズル板1010Rには複数のノズルが規則的に二次元状に配列されている。ノズルの配列は、例えば、N個のノズルによって1列のノズル列が構成され、このノズル列を、上述の稜線と平行に、且つノズル板短手方向と直交するノズル板長手方向に複数列設けた配列となっている。
【0179】
上述した構成のヘッド101Rは、図32に示すように複数のヘッド1001Ra,1001Rbをノズル板長手方向に1列に並べることが可能であり、これにより、使用する基材の記録幅に合わせて、所望の長さのラインヘッドを得ることができる。
【0180】
実施形態に係る液体吐出装置は、電極製造装置に限定されるものではない。例えば、実施形態に係る液体吐出装置は、用紙等の記録媒体に画像を形成する画像形成装置等であってもよい。
【0181】
〔実施形態の補足〕
上述した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウエアによって各機能を実行するようプログラミングされたデバイスを含むものとする。このデバイスとは、例えば、プロセッサ、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)、SOC(System on a chip)、GPU(Graphics Processing Unit)、及び従来の回路モジュール等をいう。
【0182】
これまで本発明の一実施形態に係る電極製造装置、電極製造システム、電極製造方法、プログラム及び蓄電デバイス製造装置について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態の追加、変更又は削除等、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。なお、上述した各構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。
【0183】
■まとめ■
本発明に係る態様は、例えば、以下のとおりである。
【0184】
<第1態様>
第1態様としての電極製造装置3(電極製造装置の一例。以下省略)は、集電体320の第1の面側に第1の液体組成物を付与することにより第1の層を形成した後、集電体320の第2の面側に第2の液体組成物を付与することにより第2の層を形成し、第1の面側に対して第1の液体組成物を付与し、第2の面側に対して第2の液体組成物を付与することにより液体組成物層を形成する層形成部330(付与手段の一例。以下省略)と、層形成部330による第1の面側への第1の液体組成物の付与後に第1の面側の第1の状態を検出し、層形成部330による第2の面側への第2の液体組成物の付与後に第2の面側の第2の状態を検出する外観検査ユニット380(検出手段の一例。以下省略)と、第1の情報に基づく第1の所定のマークと、第2の情報に基づく第2の所定のマークと、を第2の面側に付加するマーキングユニット385(付加手段の一例。以下省略)と、を備える。
【0185】
第1態様によれば、集電体の一方の面側に所定のマークが付加されても、電極製造装置への異物混入等のリスクを回避することが可能になる。
【0186】
<第2態様>
第2態様としての電極製造装置3は、第1態様において、第1の所定のマークは、第1の情報に含まれる第1の位置情報に基づき付加され、第1の位置情報を第2の面側における相対的な位置情報に補正する補正変換部36(補正手段の一例。以下省略)、を備える。
【0187】
第2態様によれば、第1態様による効果に加えて、更に、付与された液体組成物層の欠陥位置を正確に把握することが可能になる。
【0188】
<第3態様>
第3態様としての電極製造装置3は、第1態様又は第2態様において、ロール状に巻かれた集電体320を巻き出すための巻出部341(巻出手段の一例。以下省略)及び集電体320を巻き取るための巻取部342(巻取手段の一例。以下省略)を備え、層形成部330は、第1の面側の第1の状態の検出及び巻取部342による集電体320の巻取りが行われ、巻出部341により集電体320が再度巻き出された後に、第1の所定のマークと第2の所定のマークとを、外観検査ユニット380と巻取部342との間で第2の面側に付加する。
【0189】
第3態様によれば、第1態様又は第2態様による効果に加えて、一度の工程で第1の面及び第2の面において発生した欠陥位置への所定のマークの付加が可能になる。
【0190】
<第4態様>
第4態様としての電極製造装置3の層形成部330、外観検査ユニット380及びマーキングユニット385は、第1態様乃至第3態様のいずれかにおいて、巻出部341と巻取部342との間に配置され、層形成部330及び外観検査ユニット380は、第1の面側への第1の液体組成物の付与及び第1の状態の検出を実行した後、巻取部342により巻き取られた集電体320が巻出部341により再度巻き出された際に、第2の面側への第2の液体組成物の付与及び第2の状態の検出を実行し、マーキングユニット385は、外観検査ユニット380による第2の状態の検出後に、第1の所定のマークと第2の所定のマークとを、外観検査ユニット380と巻取部342との間で第2の面側に付加する。
【0191】
第4態様によれば、第3態様による効果と同様の効果を得ることが可能になる。
【0192】
<第5態様>
第5態様としての電極製造装置3のマーキングユニット385は、第1態様乃至第4態様のいずれかにおいて、第1の所定のマークと第2の所定のマークとを、集電体320の搬送方向に沿った第1の辺の端部又は第1の辺の端部と対向する第2の辺の端部に分散させて付加する。
【0193】
第5態様によれば、第4態様による効果に加えて、集電体320が巻取部342によって巻き取られた場合に、ロール状となった集電体320の厚みの左右差を低減する効果が見込めるとともに、第1の面における欠陥の発生数と第2の面における欠陥の発生数との差異の把握も容易にすることが可能になる。
【0194】
<第6態様>
第6態様としての電極製造装置3の巻取部342は、第1態様乃至第5態様のいずれかにおいて、集電体320が巻出部341によって再度巻き出される際に、マーキングユニット385による第2の面側への第1の所定のマーク及び第2の所定のマークの付加、並びに、外観検査ユニット380による第2の面側の第2の状態の検出、がそれぞれ可能な状態になるように、集電体320を巻き取る。
【0195】
第6態様によれば、第1態様乃至第5態様による効果に加えて、集電体320を再度巻き出す工程の負荷を軽減させることが可能になる。
【0196】
<第7態様>
第7態様としての電極製造装置3は、第1態様乃至第6態様のいずれかにおいて、相対的な位置情報に含まれる集電体320の搬送方向に沿った座標情報は、集電体320の搬送方向に沿った長さ情報から第1の位置情報に含まれる集電体320の搬送方向に沿った座標情報を減算した座標情報である。
【0197】
第7態様によれば、第2態様による効果と同様に、付与された液体組成物層の欠陥位置を正確に把握することが可能になる。
【0198】
<第8態様>
第8態様としての電極製造装置3の外観検査ユニット380は、第1態様乃至第7態様のいずれかにおいて、少なくとも集電体320の搬送方向において発生する第1の面側と第2の面側との間のオフセット量を検出し、補正変換部36は、オフセット量に対応する長さに応じた相対的な位置情報を算出する。
【0199】
第8態様によれば、集電体320の再度の巻出し時等に発生する第1の面の原点と第2の面の原点のずれを吸収させることが可能になる。
【0200】
<第9態様>
第9態様としての電極製造装置3は更に、第1態様乃至第8態様のいずれかにおいて、第1の位置情報、相対的な位置情報及び第2の位置情報、を記憶部3000(記憶手段の一例。以下省略)の所定領域に記憶させる記憶読出部39(記憶読出手段の一例。以下省略)、を備える。
【0201】
第9態様によれば、所定のマークの付加処理の処理負荷を軽減させることも可能になる。
【0202】
<第10態様>
第10態様としての電極製造装置3の層形成部330は、第1態様乃至第9態様のいずれかにおいて、集電体320の一方の面、一方の面上に形成された電池電極を構成する第1の電極合材層、第1の電極合材層上に形成された第1の機能層のいずれかを有する第1の面側に第1の液体組成物を付与するともに、集電体320の他方の面、他方の面上に形成された電池電極を構成する第2の電極合材層、第2の電極合材層上に形成された第2の機能層のいずれかを有する第2の面側に第2の液体組成物を付与し、第1の面側への第1の液体組成物の付与は、第1の電極合材層の付与及び第1の電極合材層を覆うための機能膜を有する第1の機能層の付与であり、第2の面への第2の液体組成物の付与は、第2の電極合材層の付与及び第2の電極合材層を覆うための機能膜を有する第2の機能層の付与である。
【0203】
第10態様によれば、集電体320を含む電極基体上のいずれに付与された液体組成物層の膜に対しても第1態様による効果を得ることが可能になる。
【0204】
<第11態様>
第11態様としての電極製造装置3における第1の状態及び第2の状態は、第1の液体組成物が付与された集電体320の第1の面側、及び第2の液体組成物が付与された集電体320の第2の面側における欠陥又は異常を含む状態を示す。
【0205】
第11態様によれば、第1態様による効果に加えて、更に、付与された液体組成物層の欠陥又は異常を把握することが可能になる。
【0206】
<第12態様>
第12態様としての電極製造装置3で付与される第1の液体組成物及び第2の液体組成物は、第1態様乃至第11態様のいずれかにおいて、同じ液体組成物が用いられる。
【0207】
第12態様によれば、液体組成物自体のコスト低減、及び層形成部330の設備投資のコスト低減を実現することが可能になる。
【0208】
<第13態様>
第13態様としての電極製造システム1(電極製造システムの一例。以下省略)は、電極製造装置(電極製造装置3。以下省略)と、電極製造装置3と通信可能な情報管理装置2(情報管理装置の一例。以下省略)と、を有し、情報管理装置2は、電極製造装置3による集電体320への層形成処理の実行に基づいて、電極製造装置3に対して第1の所定のマーク及び第2の所定のマークを付加するためのマーク付加要求を送信する送受信部21(第1の送信手段の一例。以下省略)、を有し、電極製造装置3は更に、マーク付加要求を受信する送受信部31(第2の受信手段の一例。以下省略)、を有し、マーキングユニット385は、マーク付加要求に応じて、第1の所定のマーク及び第2の所定のマークを第2の面側に付加する。
【0209】
第13態様によれば、情報管理装置2を含む情報管理システムにおいても第1態様による効果と同様の効果を得ることが可能になる。
【0210】
<第14態様>
第14態様としての電極製造装置3(電極製造装置の一例。以下省略)が実行する電極製造方法は、電極製造装置3が、集電体320の第1の面側に第1の液体組成物を付与することにより第1の層を形成した後、集電体320の第2の面側に第2の液体組成物を付与することにより第2の層を形成し、第1の面側に対して第1の液体組成物を付与し、第2の面側に対して第2の液体組成物を付与することにより液体組成物層を形成する付与ステップと、層形成部330による第1の面側への第1の液体組成物の付与後に第1の面の第1の状態を検出して第1の情報を出力し、層形成部330による第2の面への第2の液体組成物の付与後に第2の面側の第2の状態を検出して第2の情報を出力する検出ステップと、第1の情報に基づく第1の所定のマークと、第2の情報に基づく第2の所定のマークと、を第2の面側に付加する付加ステップと、を実行する。
【0211】
第14態様によれば、第1態様と同様に、集電体の一方の面側に所定のマークが付加されても、電極製造装置への異物混入等のリスクを回避することが可能になる。
【0212】
<第15態様>
第15態様としての電極製造装置3(電極製造装置の一例。以下省略)に実行させるプログラムは、集電体320の第1の面側に第1の液体組成物を付与することにより第1の層を形成した後、集電体320の第2の面側に第2の液体組成物を付与することにより第2の層を形成し、第1の面側に対して第1の液体組成物を付与し、第2の面側に対して第2の液体組成物を付与することにより液体組成物層を形成する付与ステップと、層形成部330による第1の面側への第1の液体組成物の付与後に第1の面の第1の状態を検出して第1の情報を出力し、層形成部330による第2の面への第2の液体組成物の付与後に第2の面側の第2の状態を検出して第2の情報を出力する検出ステップと、第1の情報に基づく第1の所定のマークと、第2の情報に基づく第2の所定のマークと、を第2の面側に付加する付加ステップと、を実行させる。
【0213】
第15態様によれば、第1態様と同様に、集電体の一方の面側に所定のマークが付加されても、電極製造装置への異物混入等のリスクを回避することが可能になる。
【0214】
<第16態様>
第16態様としての蓄電デバイス製造装置は、第1態様乃至第12態様のいずれかにおいて、電極製造装置を有する。
【0215】
第16態様によれば、第1態様と同様に、集電体の面上又は集電体上に所定のマークが付加されても、電極製造装置への異物混入等のリスクを回避可能な蓄電デバイス製造装置を提供することが可能になる。
【符号の説明】
【0216】
1 電極製造システム
2 情報管理装置
3 電極製造装置
21 送受信部(第1の送信手段の一例、第1の受信手段の一例)
31 送受信部(第2の送信手段の一例、第2の受信手段の一例)
32 計測部(計測手段の一例)
33 取得部(取得手段の一例)
35 判定部(判定手段の一例)
36 補正変換部(補正手段の一例)
37 生成部(生成手段の一例)
39 記憶読出部(記憶読出手段の一例)
40 層形成制御部(層形成制御手段の一例)
300 制御部(制御手段の一例)
330 層形成部(付与手段の一例)
341 巻出部(巻出手段の一例)
342 巻取部(巻取手段の一例)
380 外観検査ユニット(検出手段の一例)
385 マーキングユニット(付加手段の一例)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0217】
【特許文献1】特開2014-194863号公報
【特許文献2】WO2012/056568号公報
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32